JP6581764B2 - 微粉砕ふすまを配合した小麦粉組成物 - Google Patents
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Description
この方法は簡単であるが、胚乳も表皮も同じように挽いてしまうので、小麦粉の中に小さなふすま片が混入し、それが小麦粉の色調、食味、そして食感を損ね、その結果として二次加工製品の外観が劣り、さらに、青臭いふすま臭も呈する。また、ふすまの粉砕性の悪さが影響して粒度構成にばらつきが生じ、その結果として二次加工時の作業性の劣ったものであった。この小さなふすま片の混入という問題を解消したのが、現代の製粉工場で実践されている「段階式製粉方法」である。
そして、最近では、段階式製粉方法の改良として、精麦機によって小麦の表皮を剥離して、前もって胚乳部と表皮を分離する前処理を施し、次いで前記表皮を剥離した小麦を段階式製粉工程に送るという製粉方法(特許文献2)も試みられているが、現在のところは限定的な導入にとどまっている。この精麦機では、表皮を細かく削りとるので、粗挽きふすまは得られない。
そこで特許文献3では、小麦粒(原麦)を開披して粗い外皮と粗い胚乳に分離する製粉の初期段階で発生する表皮を含んだ大きな塊から挽砕(ばんさい)および胚乳部の剥離の各工程を経て胚乳部分がほとんど取り除かれたふすま片となった段階で、該ふすま片を篩いで篩目を通過する小サイズと篩目を通過しない大サイズとに分別し、小サイズを取り除き大サイズのみを回収して製造した粗挽きふすまである焼成食品用食物繊維が本発明者により提案されている。
すなわち、本発明は、食物繊維、ビタミン、ミネラルに富み、かつ、低カロリーである微粉砕ふすまおよび/または焼成微粉砕ふすまを配合した小麦粉組成物、およびそれを用いて製造したパン類等、またはうどん類の提供を目的とする。
本発明は、パン類や小麦粉焼成食品等の焼成食品に用いたときに、食物繊維含有率が、全粒粉のそれとほぼ等しくなる重量比で配合しても、いわゆる「雑味」が気にならない、美味しいといえる、また全粒粉100wt%のようななかなか膨らまないという問題点もない、食感(サクサク感)を増強し、臭覚(風味)および味覚(うまみ)が劣らない焼成食品に焼き上がる微粉砕ふすまおよび/または焼成微粉砕ふすまを配合した小麦粉組成物および該小麦粉組成物を使用して製造したパン類または小麦粉焼成食品の提供を目的とする。
また、本発明は、うどん類に用いたときに、食物繊維、ビタミン、ミネラルに富むが、いわゆる「雑味」が気にならない、美味しいといえるうどん類に仕上がる微粉砕ふすまおよび/または焼成微粉砕ふすまを配合した小麦粉組成物および該小麦粉組成物を使用して製造したうどん類の提供を目的とする。
本発明者は、市販の全粒粉を用いて何度もパンを焼いてみたが、「雑味」が気になり、美味しいとはいえなかった。また全粒粉100wt%では、なかなか膨らまないという問題点もあった。実際のところ、全粒粉が入っている袋の裏面には、「ご使用の際は、パンやピッツァ生地のふくらみに影響しますので、通常の強力粉を、小麦全粒粉と同量以上混ぜてご使用ください」との注意書きがある。全粒粉の使用には多大の創意工夫が求められるのであった。
またこれ以外の理由としては、使用する胚乳部分の違いが影響している。図2は、小麦の中の灰分及びたんぱく質の分布を示しており、小麦の中の部位の違いによる、灰分及びたんぱく含有率の違いがわかる。同じ胚乳部でも、中心部ほど、灰分が少ない傾向に、またたんぱく質も少ない傾向にある。中心部分が多いほど、うどんは滑らかで、喉越しが良く、またパンはふんわりと焼きあがる。一方、たんぱく質は周辺部分の方が多いので、一見、周辺部分が多いほどパンは良く膨らむようであるが、そうではない。同じたんぱく質でも、中心部分と周辺部分では、その性質が異なる。中心部分のたんぱく質の方が、量は少なくても、粘弾性、伸展性に優れているので、パンもふんわりと良く膨れる。全粒粉だと、これらが全部入ってしまうが、「胚乳の中心部分+良質なふすま部分」というようなハイブリッド型にすると、食味食感が維持され、なおかつ食物繊維が摂取できるというのが、本発明における基本的な考えである。例えば一般の強力一等粉の小麦粉歩留りは約60wt%程度、つまりこれは小麦の中心部分約60wt%ということになる。小麦には重量で約83wt%の胚乳が含まれているので、まだ23wt%程度の胚乳が残っているが、この部分は表皮近くに分布するため、グルテンの伸展性が中心部分に比べ劣るなど、品質は中心部分ほど良くない。その部分が丸々入ることによって、好ましくない影響を及ぼすと推察する。簡単にいうと、全粒粉の足を引っ張っているのは、(1)小麦表面に付着した夾雑物と(2)表皮付近に分布する品質の良くない胚乳部分、であると考える。このように考えると表皮部分(大ふすま)は食味的に劣っているのではなく、その処理方法に問題があることになる。よって表皮部分は良質の部分だけを取り出し、適切に処理すれば食味は十分に優れているはずである。言い換えると粗挽きふすま(大ふすま)だから良質であるというよりは、夾雑物を含まない良質の表皮部分が、結果として大きなふすま片であると考えるのが自然である。「粗挽きふすま」同様に、それを粉砕もしくは微粉砕した微粉砕ふすまを使用した商品が、いわゆる「雑味」が気にならない、美味しいといえる、また全粒粉100wt%のようななかなか膨らまないという問題点もない、食感(サクサク感)を増強し、臭覚(風味)および味覚(うまみ)が劣らない焼成食品に焼き上がることがわかった。
(1)小麦粒(原麦)を開披して粗い外皮と粗い胚乳に分離する製粉の初期段階で発生する表皮を含んだ大きな塊から挽砕(ばんさい)および胚乳部の剥離の各工程を経て胚乳部分がほとんど取り除かれたふすま片となった段階で、該ふすま片をステンレス製スクリーンとして目開き0.75mmの篩目を有する篩いで、この篩目を通過する小サイズとこの篩目を通過しない大サイズとに分別し、小サイズを取り除き夾雑物を含まない良質の表皮部分である大サイズのみを回収して粗挽きふすまを製造し、得られた粗挽きふすまを粉砕して微粉砕ふすまとし、これを小麦に付着している夾雑物が含まれない、胚乳部分の良質な部分だけを使用している小麦粉に重量比で2〜12wt%混合したことを特徴とする小麦粉組成物の製造方法。
(2)粗挽きふすまが、大サイズのみを回収した後、焙煎処理して焙煎粗挽きふすまとした粗挽きふすまであることを特徴とする上記(1)に記載の小麦粉組成物の製造方法。
(3)焙煎処理が、100〜150℃の温度で、ふすまの水分が3〜7wt%になるまで焦がさないように行ったものである、上記(2)に記載の小麦粉組成物の製造方法。
(4)上記(1)、(2)または(3)に記載の小麦粉組成物を使用して製造したパン類または小麦粉焼成食品の製造方法。
(5)上記(1)、(2)または(3)に記載の小麦粉組成物を使用して製造したうどん類の製造方法。
日本では、公的機関で、「全粒粉」はどのような基準を満たしていなければならないというふうには決められていない。アメリカではFDA(米国食品医薬品局)およびAACC (穀物化学者学会)という両機関は、全粒穀物(Whole grains)について、「全粒穀物とは、穀物の穎果そのもの、もしくはそれを粉砕、破砕またはフレーク状にしたもので、主要部分である胚乳、胚芽及びふすまが穎果に存在するのと同じ比率で含まれること」のように定義している。そしてこの定義を財団法人製粉振興会では、次のように解釈している。「粉砕などで穀粒を分画したものを再構成して製品を作るケースが多いことを想定し、同じ穎果からのものでなければならないとは定めておらず、小麦の場合は、異なるロットの原料からの画分を配合したものでもよいと解釈できる。また配合比率についても小麦での常識的な割合でよいようである」。
「小麦」の場合について、穎果(えいか)とは実の部分、つまり小麦の粒のこと、分画(画分ともいう)とは、「複数の成分が混合された物質を分離させて、その混合物質を構成する成分に分けること」である。つまり小麦の構造は、胚乳、ふすま(表皮)、胚芽の3つの部分(平均的な比率は83%、15%、2%)からできているので、例えばロット1からは胚乳を、ロット2からはふすまを、そしてロット3からは胚芽を抽出して、後でそれらを平均的な比率(胚乳83%、ふすま15%、胚芽2%)で混ぜあわせて小麦全粒粉を作ってもよいという意味である。
また平均的な構成比は、83%、15%、2%となっているが、小麦は色々な種類があり、その種類によって構成比率は異なるし、また同じ小麦でも丸々と太った実とやせ細った実では、その比率は違う。よって後で画分を配合するときは、厳密に83%、15%、2%でなくても、常識的な範囲で混ぜあわせてもよいという意味である。よって「全粒粉」というときに、「同じ小麦をそのまま丸ごと粉にしたもの」という規定だけではなく、「同じ小麦のものではなくても、平均的な小麦粒と成分組成が同じであれば、全粒粉といってもよい」ことになり、これが広義の全粒粉の考え方である。
整理すると次のようになる。
[全粒粉(1)(狭義)]
ある小麦をそのまま丸ごと製粉してできあがった小麦粉。
[全粒粉(2)(広義)]
同じ原料の小麦から作られたものでなくても、その小麦粉の成分組成が全粒粉にほぼ等しいもの、つまりその比率がほぼ、胚乳83%、ふすま15%、胚芽2%となっている小麦粉。
小麦の構造は、胚乳、ふすま(表皮)、胚芽の3つの部分からできているので、例えばロット1からは胚乳を、ロット2からはふすまを、そしてロット3からは胚芽を抽出して、後でそれらを小麦での常識的な割合で混ぜあわせて小麦全粒粉を作ることができる。平均的な構成比は、胚乳83%、ふすま15%、胚芽2%となっているが、小麦は色々な種類があり、その種類によって構成比率は異なるし、また同じ小麦でも丸々と太った実とやせ細った実では、その比率は違う。よって後で画分を配合するときは、厳密に83%、15%、2%でなくても、常識的な範囲で混ぜあわせてもよい。よって「全粒粉」というときに、「同じ小麦をそのまま丸ごと粉にしたもの」という規定だけではなく、「同じ小麦のものではなくても、平均的な小麦粒と成分組成が同じであれば、全粒粉といってもよい」ことになり、これが広義の全粒粉の考え方である。
広義の全粒粉は、狭義の全粒粉よりも食味がずっと良い。小麦の表面にはクリーズ(粒溝)といって縦に深い溝が走っているが、そこは凹んでいるので、当然塵や埃がたまりやすくなる。よって粒のまま小麦を挽き込んでしまうとどうしても雑味が足を引っ張り、全体の食味を損ねることになる。一方、広義の全粒粉の基準を適用すると、胚乳部分はグルテンの伸展性の良い部分だけを、そしてふすま部分は、塵や埃のないきれいな表皮部分だけをとりだし、両者を合わせれば、食味の良い全粒粉ができあがる。食物繊維をたっぷり含んだ全粒粉を摂取することは大切であるが、食物として摂取するのであれば、食味が良くなければ続かない。それが広義の全粒粉を支持する理由である。
粗挽きふすまの製造に用いるふすま片に、胚乳がほとんど付着していないことが重要である。胚乳が付着しているものを用いると、焼き上がったときにその部分だけが固まり「コツコツ」とした硬い食感となり、食感を損ねる原因となるからである。
胚乳の付着したふすま片は、製粉工程上は、付着している胚乳部分が多いときは再度ロール機で挽砕し、付着している胚乳が少なくなってくるとブランフィニッシャーで処理する。ふすまの分別・粒度調整に用いる篩は特に制限はないが、通常、ブランフィニッシャーの排出口の半円筒形のスクリーンを構成するステンレス製スクリーン使用して分別・粒度調整が実施される。ステンレス製スクリーンとして、好ましくは目開き0.75mmの篩目を有し、この篩目を通過させることにより小サイズを取り除き、通過しないものを大サイズとして分別し回収する。微粉砕ふすま製造用に用いる粗挽きふすまは、目開き0.75mmのステンレス製スクリーンを通過する粉状のものを取り除いた粗挽きふすま、すなわち、目開き0.75mmのステンレス製スクリーンを通過しない粗挽きふすまである。
ブランフィニッシャーの使い方を説明する。ロール機とシフターを多段階で組み合わせた工程の中で、ブランフィニッシャーにより胚乳と外皮部とを繰り返し分離し、製造するものである。たとえば、ブランフィニッシャーが複数台あるとして、Br1、Br2、Br3、Br4、Br5・・・と符号を付ける。そしてストック(半製品)のひとつの流れとして、「Br1→4BCロール機→シフター4BC→Br2→5Bロール機→シフター5B→Br4」(ロール名、シフター名は略称、以下同様。)が例示される。製粉のスタートロール機1B(1st Break)で挽砕されると、1Bシフターに送られ、ふるいのオーバーは2Bロール、2Bシフターに運ばれ、それで一番粗いストックは3BCに送られる。以下にBr1からBr4までのストックの流れを説明する。
(1)3BCロールで処理されたストックの内、一番粗いストック(16Wの金網ふるいを通過しなかったもの)がBr1へ送られ処理される。
(2)Br1のオーバーは、4BCロールへ送られる。
(3)4BCロールで処理されたストックの内、一番粗いストック(20Wの金網ふるいを通過しなかったもの)がBr2へ送られ処理される。
(4)Br2のオーバーは、5Bロールへ送られる。
(5)5Bロールで処理されたストックの内、一番粗いストック(24GGの絹ふるいを通過しなかったもの)がBr4へ送られ処理される。
(6)Br4のオーバーは、ふすまとして回収される(ふすまになるストックの中では一番粗い)。
ここにBr1とBr2には目開き1.2mm、そしてBr4には目開き0.75mmのスクリーンが入っている。
製粉工程の最初では大きいふすま片が採れるが、これには胚乳も付着している。さらに挽砕(ばんさい)を進め、ふすまの大きさは若干小さくなるものの、胚乳部分がほとんど取り除かれる。本発明で粉砕するために使用するふすま片はBr4のオーバー(Br4は上記に例示したブランフィニッシャー名の略語である。)である。
粗挽きふすまを焙煎することにより、ふすまの有する特異臭(青臭いふすま臭)がなくなり、焙煎による風味が増強されるばかりでなく、焙煎による滅菌、害虫卵の死滅、含有水分の減少等により長期保存性が向上する。
焙煎の手段について、焙煎処理は、通常の焙煎機、ホットプレート、オーブン、フライパンなどで行うことができる。専用の焙煎釜を使用した場合、焙煎温度は100〜150℃で、水分が3〜7%程度になるまで焦がさないように行うのが好ましい。焙煎時間は、小麦の種類や季節または製粉時の小麦の皮離れ向上の為の加水量等により変動する焙煎前のふすまの水分含有量や、処理量、焙煎装置等によって異なってくる。現在、専用の焙煎釜を使用した場合、1バッチ当たり上記の設定温度で15分程度焙煎している。
粉砕方法には特にこだわらない。200μm以下としたのは、その程度にまで粉砕すれば、うどんに添加した場合には、「ザラザラ感」がなくなり、食味を損なわないことが裏付けられたからである。また平均粒度が150μm以下にまで粉砕すれば、つまり普通の小麦粉と同程度になれば、小麦粉と同じように取り扱うことが可能になるので、製粉工場などでの作業適性が良くなる。
全粒粉は、小麦の粒を丸ごと粉砕して粉にしたものである。小麦の主たる部分は、小麦色をした表皮部分と、乳白色をした内側の胚乳部分である。よって普通の小麦粉は、胚乳部分だけの白い小麦粉であるが、全粒粉は表皮部分も一緒に挽きこんでしまうので、一見してくすんだ褐色になり、普通の小麦粉とは全然違うことがわかる。全粒粉は表皮部分(小麦ふすま)を挽きこんでいるため、食物繊維を多く含み、現代の食生活にとってはもってこいの食材であるが、ふすまや胚芽部分の割合が多くなると、例えばパンを焼くとき、生地中のグルテン組織が、殻などの硬い組織で分断されてしまう。その結果、アルコール醗酵によって生地が膨れたときに、そのガス(二酸化炭素)を保持できず、膨らみが悪くなってしまい、食感の良くない硬いパンになってしまう。
また小麦の断面をみると、クリーズと言われる溝が中心部分まで深く入り込んでいるのがわかる。この凹んでいる部分には、ちりやほこりが溜まりやすく、全粒粉にした場合にはこの部分も一緒に挽きこんでしまい、小麦粉の食味に良くない影響を与える可能性がある。
また「粗い部分のふすま」を加えるには理由がある。
本発明者は、当初ふすま部分を大きなものから、小さく粉砕したものまでいくつか試してみたところ、ふすま片が大きいほど風味、食感が向上するという感想が多く聞かれた。胚乳と異なり、ふすま部分は、細かくなると、どうしても小麦の風味というよりも「小麦の臭い」がでてくるような気がする。シリアルも、箱の底に溜まっている粉っけの多い小さなものよりも、上部の大きな塊の方が、食感が良いのと同じであると考える。このような商品を取り分けることができるのも、段階式製粉方式の副産物かも知れない。
五訂食品成分表をみると、通常の強力粉と全粒粉に含まれている食物繊維は、それぞれ2.7wt%と11.2wt%とある。一方、ブラウワーには7.2wt%含まれているので、単純に食物繊維の量だけに着目すると、ブラウワーは強力粉と全粒粉をほぼ同量混ぜたものに等しくなる。食物繊維の必要性を意識し、また新食感を希望する場合、ブラウワーを試してみる価値があると考える。
粗挽きふすま(特許文献3)は、小麦のふすま片の内側に付いている胚乳部を剥離しふすまと分離する装置として周知のブランフィニッシャー(剥離・選別機)を用いて胚乳部分を取り除く工程を経て排出口に送られ、半円筒形のスクリーンを構成するステンレス製スクリーンで分別し、好ましくは目開き0.75mmの篩目を通過する小サイズと篩目を通過しない大サイズとに分別し、小サイズを取り除き大サイズのみを回収してなる粒度調整をした「ふすま」である。焙煎処理は、通常の焙煎機、ホットプレート、オーブン、フライパンなどで行うことができる。焙煎温度は100〜150℃で、水分が3〜7wt%程度になるまで焦がさないように行うのが好ましい。
粗挽きふすまを、粉砕機にかけ粉砕するという従来品(特許文献3)より作業工程がひとつ増える。従来品をC(Coarse=粗い)、本発明品をF(Fine=細かい)とする。具体的にいうと、強力粉に粗挽きふすまを混合したものがC(配合比率は3〜6wt%)、そして強力粉に「粗挽きふすまを微粉砕したもの」を混合したものがF(配合比率は5〜12wt%)である。どちらも焙煎ふすまを使用する。
ふすま10wt%混入時の食物繊維を香川県産業技術センターで分析してもらったところ、9.5g/100gであった。一方、五訂食品成分表による全粒粉に含まれる食物繊維は11.2g/100gであるので、12wt%混入すれば、食物繊維含有量は、ほぼ全粒粉に等しくなる。そのことから含有量の上限は12wt%辺りが適量である(もちろんクッキーなど膨らみが気にならない焼成食品であれば、さらに多くの添加が可能である)。
パン類または小麦粉焼成食品の食物繊維含有量5〜15wt%は、小麦粉由来の食物繊維を勘案すると、微粉砕ふすまの配合量2〜12wt%で達成される。微粉砕ふすまの配合量10wt%というのは、かなり多めで、食味の点から言えば6wt%辺りがベストである。12wt%を配合すると、少し「パサパサ感」がでて、食味的にも小麦粉の味が薄まり、劣るようなところもでてくる。それでも12wt%配合する理由は、食物繊維含有量が、全粒粉のそれとほぼ等しくなるからである。
ふすま配合量は、小麦粉に重量比で2〜12wt%混合して用いる小麦粉組成物、それを使用して製造したパン類または小麦粉焼成食品、またはうどん類を提供する。
一方、麺類(うどん)については、実施例では、官能検査によると、微粉砕ふすま2wt%入りと3wt%入りのゆでうどんを比較したところ、2wt%入りの方が好評であった。3wt%入りはちょっと風味が強すぎるようであった。実施例では、配合量1〜2wt%辺りが適量といえるが、その範囲に限定されない。
よって微粉砕ふすまの配合量は、小麦粉に重量比で2〜12wt%混合して用いる小麦粉組成物、それを使用してパン類または小麦粉焼成食品、またはうどん類を製造する。
なお、市販の全粒粉は、これまで何度も焼いてみたが、「雑味」が気になり、また全粒粉100%では、なかなか膨らまないという問題点がある。実際、全粒粉の使用方法をみると、少なくとも全粒粉と同量もしくは、それ以上の強力粉を混合してください、との但し書きがある。
(ア)胚乳部分の良質な部分だけを使用しているので、グルテンの伸展性がよく、ふんわりとソフトに仕上がる。(イ)小麦に付着している夾雑物が含まれないので、雑味のないすっきりとした味わいに仕上がる。(ウ)小麦ふすま(表皮部分)の良質な部分だけを使用しているので風味が良い。(エ)上記(ア)〜(ウ)の繰り返しになるが、食味を犠牲にすることなく、十分な食物繊維が摂取できる。
ミックス粉として食塩や糖、イーストなどを添加する場合にも、前記質量比の計算にはそれら資材の質量は加えない。
代表的なパンとしては、食パン、ロールパン(バターロールなど)、食卓パン(コッペパン、ハンバーガーバンズなど)、ハースブレッド(フランスパン、ドイツパンなど)、菓子パン(メロンパン、アンパンなど)、デニッシュ、ペストリー、クロワッサン、揚げパン(カレーパン、ピロシキなど)、イングリッシュマフィン、フラットブレッド、ベーグル、蒸しパンなどが挙げられるが本発明のパンはこれらに限定されるものではない。
うどんといえば、(1)乾麺、(2)半生うどん、(3)生うどん、(4)ゆでうどんなどがあるが、(1)〜(3)に厳密な定義があるわけではない。(1)〜(3)で共通していることは、加熱していないので、調理が必要なことである。一方、ゆでうどんは、スーパーのデイリーコーナーで販売しているチルド麺と同じもので、α化されているので、そのまま食べることが可能である。ここでは、一例として以下のように分類する。
(1)乾麺 ・・・水分14%以下
(2)半生麺 ・・・水分15〜30%
(3)生うどん ・・・水分30%〜
(4)ゆでうどん・・・文字通りゆでたうどんなので、そのまま食べることができる。
いずれにしても上記どの形態のうどんに対して、微粉砕ふすま含有量は、小麦粉に対し1〜3wt%である。
パンの官能検査
次の2種類の小麦粉を使用し、HBで食パンを焼いて官能検査をやってみた(図3参照)。
小麦粉(1)・・・強力粉(木下製粉社製)に粉砕したふすまを12wt%添加(12wt%添加の理由は、食物繊維含有量が全粒粉と同等になるため)。
小麦粉(2) ・・・市販の全粒粉
それぞれ「匂い」、「外観」、「食感」、「食味」の4項目において評価した結果を、表1に示す。24人のテイスターのうち、小麦粉(2)の方に高評価を与えたのは僅か1名(#16)、どちらも同じと評価した者は2名(#8,#10)、そして21名が小麦粉(1)のパンの方が良いとの評価であった。また合計点においては4項目全てにおいて小麦粉(1)が優れていた。この事実より小麦粉(1)の方が小麦粉(2)よりも、製パン性に優れているといえる。
小麦粉(1)の特長は次のようにまとめることができる。
(a)胚乳部分の良質な部分だけを使用しているので、全粒粉に比べグルテンの伸展性がよく、ふんわりとソフトに仕上がる。
(b)小麦に付着している夾雑物が含まれないので、雑味のないすっきりとした味わいに仕上がる。
(c)小麦ふすま(表皮部分)の良質な部分だけを使用しているので風味が良い。
(d)食味を犠牲にすることなく(あるいは向上させながら)、十分な食物繊維が摂取できる。
なお、全粒粉であるためには、厳密に言えば胚芽部分2wt%も入っている必要があるが、これは製粉工程の中で、小麦粉やふすま部分(主としてふすま部分)に混入してしまうので、無視し得ることである。つまり簡単にいうと「含まれる食物繊維の量が10wt%程度」であれば、それは全粒粉とみなしてよいと考える。
ふすまのうどんへの応用について説明する。粗挽きふすまを生地に練り込んで、うどんにすると、ふすまが見えるため、視覚的には好感がもてるが、実際食べてみると、どうしてもその「イガイガ感」が気になる。この小麦ふすまの強靭な食物繊維は、ゆでるだけでは食感的に良好なものにはならず、粗挽きふすまを、焼成処理することによって、ふすまがそれだけ脆くなり、結果として微粉砕しやすくなる。
そこでこの良質のふすま片(特許文献3の焼成処理した粗挽きふすま)を、200μ程度以下に粉砕したものを、小麦粉に練り込んでうどんをつくった。粉砕することで「イガイガ感」は気にならなくなり、またふすま片の良質な部分だけを使用しているため、うどんの風味向上につながる。
そこで次の2種類の小麦粉を用意し、うどんの官能テストを行なった。小麦粉(1)においてふすまの添加量を2wt%としたが、これには主として2つの理由がある。一つは中力粉100gに含まれる食物繊維は2.8g(五訂食品成分表)であるが、2wt%のふすまを添加することにより、食物繊維が約2倍になること。もう一つはパンのように6wt%も添加すると、これは流石に食味に大きく影響する。
小麦粉(1)・・・うどん用中力粉(木下製粉社製)に粉砕したふすまを2wt%添加
小麦粉(2)・・・うどん用中力粉(木下製粉社製)
結果を表2に示す。「うどんは白いもの」という先入観があるためか、やはり色調、外観についてはかなりハンディがある(図4参照)。ただ食味については同等の評価が得られた。粗挽きふすま使用時は、その粗さが「イガイガ感」につながり、結局食感、食味に悪影響を及ぼすが、粉砕することにより、それはなくなる。またふすまの良質部分だけを使用することにより、全粒粉にあるような雑味がなくなり、普通のうどんよりも風味向上が得られたとの感想もあった。よって小麦ふすまに含まれる食物繊維などの重要性を訴求すれば、「ふすま入りうどん」もそれなりに市場で支持されるものと、期待される。
Claims (5)
- 小麦粒(原麦)を開披して粗い外皮と粗い胚乳に分離する製粉の初期段階で発生する表皮を含んだ大きな塊から挽砕(ばんさい)および胚乳部の剥離の各工程を経て胚乳部分がほとんど取り除かれたふすま片となった段階で、該ふすま片をステンレス製スクリーンとして目開き0.75mmの篩目を有する篩いで、この篩目を通過する小サイズとこの篩目を通過しない大サイズとに分別し、小サイズを取り除き夾雑物を含まない良質の表皮部分である大サイズのみを回収して粗挽きふすまを製造し、得られた粗挽きふすまを粉砕して微粉砕ふすまとし、これを小麦に付着している夾雑物が含まれない、胚乳部分の良質な部分だけを使用している小麦粉に重量比で2〜12wt%混合したことを特徴とする小麦粉組成物の製造方法。
- 粗挽きふすまが、大サイズのみを回収した後、焙煎処理して焙煎粗挽きふすまとした粗挽きふすまであることを特徴とする請求項1に記載の小麦粉組成物の製造方法。
- 焙煎処理が、100〜150℃の温度で、ふすまの水分が3〜7wt%になるまで焦がさないように行ったものである、請求項2に記載の小麦粉組成物の製造方法。
- 請求項1、2または3に記載の製造方法で製造された小麦粉組成物を使用して製造することを特徴とするパン類または小麦粉焼成食品の製造方法。
- 請求項1、2または3に記載の製造方法で製造された小麦粉組成物を使用して製造することを特徴とするうどん類の製造方法。
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