JP2013065700A - 電気−機械変換素子、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置及び画像形成装置 - Google Patents

電気−機械変換素子、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置及び画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】インクジェット方式の画像形成装置等に備えられ、下地電極にルテニウム酸ストロンチウムを用い、、膜剥がれに対する耐久性を向上し経時的に安定した駆動力を得る電気−機械変換素子、これを備えインク等の液滴を吐出するヘッド、これを備えた液滴吐出装置、これらを備えたかかる画像形成装置の提供。
【解決手段】電気−機械変換素子10が、化学式ABO3で記述されるペロブスカイト構造を有し、A=La、Sr、B=Mn、Al、Ti、Cr、Co、Ni、Ruの何れか1つ以上から構成されている密着層13と、密着層13上に形成されたPt族の金属からなる電極14と、電極14上に形成された電極15と、電極15上に形成された電気−機械変換膜16と、膜16上に形成された電極17と、電極17上に形成されたPt族の金属からなる電極18とを有し、電極15、17は、SRO等からなる。
【選択図】図1

Description

本発明は、インクジェット方式のプリンタ、ファクシミリ、複写機等の画像形成装置等に備えられた、インク等の液滴を吐出する液滴吐出ヘッドの駆動源等として用いられる電気−機械変換素子、これを備えたかかる液滴吐出ヘッド、これを備えかかる画像形成装置等に具備された液滴吐出装置、これらを備えたかかる画像形成装置に関する。
従来より、かかる液滴吐出ヘッドであって、液滴を吐出するノズルと、このノズルが連通し液滴となるインク等(以下インク)を収容した加圧室と、この加圧室内のインクを加圧する駆動源としての、圧電素子などの電気−機械変換素子若しくはヒータなどの電気熱変換素子、又は、インク流路の壁面を形成する振動板とこれに対向する電極からなるエネルギー発生手段とを備え、駆動源又はエネルギー発生手段で発生したエネルギーで加圧室内のインクを加圧することによってノズルからインク滴を吐出させるものが知られている。なお、かかる加圧室は、インク流路、加圧液室、圧力室、吐出室、液室等とも称されることがある。
かかる駆動源として用いられる、または用いられ得るアクチュエータとして、半導体デバイス、電子デバイス等の膜構造体が知られている(たとえば、〔特許文献1〕〜〔特許文献13〕参照)。このようなアクチュエータとして、たとえば、圧電素子の軸方向に伸長、収縮する縦振動モードの圧電アクチュエータを使用したものと、たわみ振動モードの圧電アクチュエータを使用したものとの2種類が実用化されている。
たわみ振動モードの圧電アクチュエータを使用したものとしては、たとえば、振動板の表面全体に亙って成膜技術により均一な圧電材料層を形成し、この圧電材料層をリソグラフィ法により圧力発生室に対応する形状に切り分けて各圧力発生室に独立するように圧電素子を形成したものが知られている。
このような圧電アクチュエータにおいては、圧電膜の自発分極軸のベクトル成分と電界印加方向とが一致するときに、電界印加強度の増減に伴う伸縮が効果的に起こり、大きな圧電定数が得られるため、圧電膜の自発分極軸と電界印加方向とは完全に一致することが最も好ましい。また、インク吐出量のばらつき等を抑制するには、圧電膜の圧電性能の面内ばらつきが小さいことが好ましい。これらの点を考慮すれば、結晶配向性に優れた圧電膜が好ましい。
結晶配向性に関する技術としては、たとえば、MgO結晶膜をベースとしてその上に圧電体結晶を形成していく技術(たとえば、〔特許文献1〕参照)、Zrなどの金属シード層を用いる技術(たとえば、〔特許文献2〕参照)、酸化物膜を形成し、その上にたとえばPt配向電極膜を形成し該Pt配向電極膜の上に圧電体結晶をエピタキシャルに成長させていく技術(たとえば、〔特許文献3〕、〔特許文献4〕参照)、Pt配向電極ではなく、上にのせる圧電体薄膜と同等の格子間距離を持つ酸化物電極を形成した後に圧電体膜を形成しようとする技術(たとえば、〔特許文献5〕参照)が挙げられる。なお、この酸化物電極層に関しては、圧電体素子における下部電極として、SrRuO3などの酸化物電極が用いられている。
その他、配向性に関して、Pb系ペロブスカイト誘電体容量素子において、ペロブスカイト型導電性酸化物LaNiO3と貴金属であるRuを積層にした下部電極を用い、Ru系層とLaNiO3系膜の界面に密着性を向上させるためのRuがLaNiO3系膜中に拡散したミキシング層を有し、強誘電体膜が(100)配向を有する技術(たとえば、〔特許文献6〕参照)、ランタン系層状ペロブスカイト化合物とそれに比べて比抵抗が低い導電材からなる下部電極が構成されており、この上に(001)配向した圧電体層を形成した圧電素子についての技術(たとえば、〔特許文献7〕参照)が提案されているが、これらの技術には、圧電アクチュエータとして連続動作したときの変位特性劣化を抑えるには、圧電体膜の配向性としては(111)が好ましく、(100)配向したものでは十分劣化抑制できないという問題がある。
ところで、圧電アクチュエータの下部電極の下に配置される構成層である下地層として、従来から種々検討がなされており、この下地層には、シード層、コンタクト層あるいは密着層、バッファ層など、さまざまな言い方がある。
これらの表現は、この構成膜の機能から来るものであり、たとえばシード層には下地電極に対して配向性を上げる目的で配置するという意味合いがある。また、コンタクト層あるいは密着層という表現は、Ptなど不活性な下地電極に対して下地電極とSi基板上の振動板との密着性に注目したものである。また、バッファ層とは、Si基板上のSiとPt等の金属電極材料との反応を防止すること、あるいは下部電極上に配置される圧電材料として一般的に用いられるPZTの鉛成分のSi基板側への拡散を防止することを意図したものという意味合いがある。
ごく一般的には、下部電極の下地層にはTiの金属膜が使われる事が多く、膜厚は20〜100nmの範囲とされている場合がある(たとえば、〔特許文献8〕参照)。これは、Ti膜の膜厚が20nm未満であると付着力の確保の点で不十分であり、100nmを超えるとTiの表面粗さが増大するためPt膜の配向性が悪化するといった事情を考慮したものとされている。
また、上述した、Zrなどの金属シード層を用いる技術は、下部電極の下地層となる金属層に関して、下部電極の下にZrを含むシード層を形成し、ついで下部電極を形成した場合、下部電極にシード層の成分が下部電極の表層に熱拡散し析出するものとされている。またこの技術において、熱拡散の現象は、Tiについても起こるとされている。このように、下部電極層の下地層として用いられる金属層の材料が熱拡散するということは公知である。
一般的にTiの拡散を抑えるために、密着層としてTiO2やTiN等の酸化膜や窒化膜やTa等のメタル材料を用いる技術、もしくは、Ti同様に密着層を酸化膜や窒化膜にする技術が公知であるが、これらの技術を密着力という観点で評価した場合、従来使用されているようなTiに比べてPt等の金属膜との密着力が十分でなかった。
なお、密着層に関しては、Si基板上に形成された振動板と、該振動板上に設けられ、Ti、Ta、Zr、V、Nb、Moから選ばれる少なくとも1つの金属元素、酸素元素、炭素または窒素の元素から構成される耐熱密着層と、該耐熱密着層上に、下部電極膜、圧電体膜、上部電極膜がこの順番で積層されてなる圧電体素子が提案されている(たとえば、〔特許文献9〕参照)
また、密着層としてSROを用い、SRO/Pt/SROとした構造体(たとえば、〔特許文献10〕参照)が提案されている。具体的には、ペロブスカイト構造を有する(111)配向のルテニウム酸ストロンチウム(SRO)を備えた下部電極であって、2層のSRO間にイリジウム又は白金の層を挟み込んだ構造を有する下部電極と、この下部電極上に形成された、(111)配向のPZTからなる圧電体層と、この圧電体層上に形成された上部電極と、を備えた、圧電アクチュエータにおいて、バッファ層(YSZ、CeO2)を含む下地層とイリジウム又は白金の層界面のSROが密着層に相当し、イリジウム又は白金上のSROが第2の電極に相当する構成が提案されている。
しかしながら、このような構成では、後プロセスでの熱履歴を受けて、密着層のSROに含まれるSrが拡散することがあり、膜剥がれ等のトラブルが発生することがある。すなわち、密着層としてSROを選択した場合においては、イリジウム又は白金との界面での密着力が不十分であり、プロセス過程において剥がれ等の問題が発生する可能性がある。また下地をSiO2等としたとき、その上にSROを成膜すると、後プロセスでの熱履歴を受けて、SrとSiが反応することがあり、膜剥がれの原因となる。
本発明は、インクジェット方式のプリンタ、ファクシミリ、複写機等の画像形成装置等に備えられ、膜剥がれに対する耐久性を向上し、経時的に安定した駆動力を得ることを可能とした電気−機械変換素子、これを備えインク等の液滴を吐出する液滴吐出ヘッド、これを備えた液滴吐出装置、これらを備えたかかる画像形成装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、基板上又は下地膜上に形成された密着層と、この密着層上に形成された第1の電極と、この第1の電極上に形成された第2の電極と、この第2の電極上に形成された電気−機械変換膜と、この電気−機械変換膜上に形成された第3の電極と、この第3の電極上に形成された第4の電極とを有し、第3の電極と第4の電極とは個別電極であり、第1の電極と第4の電極とはPt族の金属からなり、第2の電極と第3の電極とは、化学式ABO3で記述されるペロブスカイト構造を有し、A=Sr、Ba、Ca、La、B=Ru、Co、Niの何れか1つ以上から構成された導電性酸化物からなり、前記密着層は、化学式ABO3で記述されるペロブスカイト構造を有し、A=La、Sr、B=Mn、Al、Ti、Cr、Co、Ni、Ruの何れか1つ以上から構成されている電気−機械変換素子にある。
本発明は、基板上又は下地膜上に形成された密着層と、この密着層上に形成された第1の電極と、この第1の電極上に形成された第2の電極と、この第2の電極上に形成された電気−機械変換膜と、この電気−機械変換膜上に形成された第3の電極と、この第3の電極上に形成された第4の電極とを有し、第3の電極と第4の電極とは個別電極であり、第1の電極と第4の電極とはPt族の金属からなり、第2の電極と第3の電極とは、化学式ABO3で記述されるペロブスカイト構造を有し、A=Sr、Ba、Ca、La、B=Ru、Co、Niの何れか1つ以上から構成された導電性酸化物からなり、前記密着層は、化学式ABO3で記述されるペロブスカイト構造を有し、A=La、Sr、B=Mn、Al、Ti、Cr、Co、Ni、Ruの何れか1つ以上から構成されている電気−機械変換素子にあるので、膜剥がれに対する耐久性が向上し、経時的に安定した駆動力を得ることを可能とした電気−機械変換素子を提供することができる。
本発明を適用した電気−機械変換素子の一例の断面の概略図である。 図1に示した電気−機械変換素子を備えた液滴吐出ヘッドの一例の断面の概略図である。 図1に示した電気−機械変換素子を備えた液滴吐出ヘッドの別の例の断面の概略図である。 図1に示した電気−機械変換素子の配向度を確認するための測定結果を示した図である。 図1に示した電気−機械変換素子の各配向のピークの測定結果を示した図である。 本発明を適用した電気−機械変換素子の他の例の断面の概略図である。 電気-機械変換素子の特性の評価を行った場合の代表的なP−Eヒステリシス曲線を示す図である。 図3に示した液滴吐出ヘッドを備えた画像形成装置の概略図である。
図1に本発明を適用した電気−機械変換素子の一例の断面の概略を示す。
電気−機械変換素子10は、基板11上の下地膜としての振動板12上に形成された密着層13と、密着層13上に形成された第1の電極14と、第1の電極14上に形成された第2の電極15と、第2の電極15上に形成された電気−機械変換膜16と、電気−機械変換膜16上に形成された第3の電極17と、第3の電極17上に形成された第4の電極18とを有している。
電気−機械変換素子10は、基板11上に成膜された成膜振動板である振動板12上に、密着層13、第1の電極14、第2の電極15、電気−機械変換膜16、第3の電極17、第4の電極18が、この順で、半導体製造プロセス等の、膜構造体の製造において用いられる手法によって成膜されることによって形成される。
よって、密着層13は、振動板12上に直接形成されているとともに、基板11上に振動板12を介して間接的に形成されている。また、第1の電極14は、密着層13上に直接形成されている。ただし、振動板12を省略して、密着層13を基板11上に直接形成し、第1の電極14を密着層13を介して基板11上に間接的に形成しても良い。密着層13は、基板11上又は振動板12上に形成されるものである。
電気−機械変換素子10は、密着層13、第1の電極14、第2の電極15を下部電極21として備えており、第3の電極17、第4の電極18を上部電極22として備えており、電気−機械変換膜16を圧電膜として備えた圧電素子となっている。第3の電極17、第4の電極18は個別電極となっており、上部電極22は個別電極となっている。
図2、図3に示すように、電気−機械変換素子10は、液体噴射ヘッドである液滴吐出ヘッド30の一部として用いることが可能である。なお、図2に示す液滴吐出ヘッド30は1ノズルの構成の一例の概略であり、図3は図2に示したエレメントを複数個配列して形成された液滴吐出ヘッド30の概略を示している。
液滴吐出ヘッド30は、その駆動源として機能する電気−機械変換素子10及び振動板12の他、電気−機械変換素子10を形成されている基板11を後述のようにエッチングして形成されインク等の液体(以下、「インク」という)を収容するインク室である加圧室としての圧力室31と、圧力室31内のインクを液滴状に吐出するインク吐出口としてのノズル孔であるノズル32を備えたインクノズルとしてのノズル板33とを有している。
液滴吐出ヘッド30は、電気−機械変換素子10が駆動されることにより、ノズル32からインクの液滴を吐出するヘッドである。具体的には、液滴吐出ヘッド30は、後述のように下部電極21、上部電極22に給電されることで電気−機械変換膜16に応力が発生し、これによって振動板12を振動させ、この振動に伴って、ノズル32から圧力室31内のインクを液滴状に吐出するようになっている。なお、圧力室31内にインクを供給するインク供給手段である液体供給手段、インクの流路、流体抵抗についての図示及び説明は省略している。
電気−機械変換素子10は、概略的には、第1の電極14、第4の電極18を金属電極として備えており、第2の電極15、第3の電極17を酸化物電極として備えている。電気−機械変換膜16はPZTからなっている。
以下、基板11、振動板12、密着層13、第1の電極14、第2の電極15、電気−機械変換膜16、第3の電極17、第4の電極18の材質、成膜条件、配向等について、より具体的に説明する。
基板11としては、シリコン単結晶基板を用いることが好ましく、通常100〜600μmの厚みを持つことが好ましい。面方位としては、(100)、(110)、(111)と3種あるが、半導体産業では一般的に(100)、(111)が広く使用されており、本構成においては、主に(100)の面方位を持つ単結晶基板を使用した。
図2、図3に示した圧力室31のような圧力室を作製していく場合、エッチングを利用してシリコン単結晶基板を加工していくが、この場合のエッチング方法としては、異方性エッチングを用いることが一般的である。異方性エッチングとは結晶構造の面方位に対してエッチング速度が異なる性質を利用したものである。たとえばKOH等のアルカリ溶液に浸漬させた異方性エッチングでは、(100)面に比べて(111)面は約1/400程度のエッチング速度となる。従って、面方位(100)では約54.74°の傾斜を持つ構造体が作製されるのに対して、面方位(110)では深い溝をほることが可能であるため、より剛性を保ちつつ、配列密度を高くすることが可能であることが分かっている。よって本構成としては(110)の面方位を持った単結晶基板を使用することも可能である。但し、この場合、マスク材であるSiO2もエッチングされてしまうため、この点に留意して用いている。
振動板12は、電気−機械変換膜16によって発生した力を受けて変形変位し、圧力室31内のインクをインク滴として吐出させる。そのため、振動板12は所定の強度を有したものであることが好ましい。材料としては、Si、SiO2、Si3N4をCVD法により作製したものが挙げられる。
振動板12の材料としてはさらに、下部電極21、電気−機械変換膜16の線膨張係数に近い材料を選択することが好ましい。とくに、電気−機械変換膜16としては、一般的に材料としてPZTが使用されることから、振動板12は、PZTの線膨張係数8×10^−6(1/K)に近い線膨張係数として、5×10^−6〜10×10^−6の線膨張係数を有した材料が好ましく、さらには7×10^−6〜9×10^−6の線膨張係数を有した材料がより好ましい。
振動板12の具体的な材料としては、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化オスミウム、酸化レニウム、酸化ロジウム、酸化パラジウム及びそれらの化合物等が挙げられ、これらをスパッタ法もしくは、Sol−gel法を用いてスピンコーターにて作製することが可能である。膜厚としては0.1〜10μmが好ましく、0.5〜3μmがさらに好ましい。この範囲より小さいと圧力室31のような圧力室の加工が難しくなり、この範囲より大きいとそれ自身が変形変位しにくくなり、インク滴の吐出が不安定になるためである。
第1の電極14、第4の電極18を構成する金属材料としては従来から高い耐熱性と低い反応性を有する白金が用いられているが、鉛に対しては十分なバリア性を持つとはいえない場合もある。よって、第1の電極14、第4の電極18を構成する金属材料としては、イリジウムや白金−ロジウムなどの白金族元素や、これら合金膜も挙げられ、とくにPt族の元素からなるものとすることが好ましい。
第1の電極14、第4の電極18の作製方法としては、スパッタ法や真空蒸着等の真空成膜が一般的である。第1の電極14、第4の電極18の膜厚としては、0.05〜1μmが好ましく、0.1〜0.5μmがさらに好ましい。またこのとき、電気−機械変換膜16としてPZTを選択したときにその結晶性として(111)配向を有していることが好ましい。そのために第1の電極14の材料としては、(111)配向性が高いPtを選択することが好ましく、よって本構成では第1の電極14を(111)配向性が高いPtによって構成している。
密着層13は、化学式ABO3で記述されるペロブスカイト構造を有しており、A=La、Sr、B=Mn、Al、Ti、Cr、Co、Ni、Ruの何れか1つ以上から構成される材料によって構成されており、導電性酸化物であるたとえばLaNiO3もしくはLaAlO3からなるが、本形態ではLaNiO3からなっている。密着層13は、第1の電極14より先に積層することによって形成されている。これは、第1の電極14に白金を使用する場合には、振動板12等の下地、とくにSiO2によって形成されている下地と、第1の電極14との密着性が低いためである。
密着層13の成膜方法については、スパッタ法により作製される。密着層13の膜厚は、10〜60nmが好ましく、20〜40nmがさらに好ましい。この範囲より小さくなると第1の電極14を成膜した後の膜密着力としては不十分であり、この範囲より大きくなると第1の電極膜の結晶性に影響し、第1の電極14の(111)配向強度が低くなる。また、成膜時のスパッタ条件によっても密着層13と第1の電極14との界面の膜密着力や第1の電極膜の結晶性に影響してくる。かかる膜密着力及び結晶性の両者を両立させるための条件としては、成膜温度としては、300℃〜550℃での基板加熱を行い、成膜することが好ましい。但し、室温成膜を行った場合においても、その後のポストアニール処理(300℃〜550℃)によって両者を両立させることが可能であるが、若干膜密着力としては低下する。
第2の電極15、第3の電極17は、化学式ABO3で記述されるペロブスカイト構造を有しており、A=La、Sr、B=Mn、Al、Ti、Cr、Co、Ni、Ruの何れか1つ以上から構成される導電性酸化物材料によって構成されており、さらに具体的には、Srx(A)(1−x)Ruy(B)(1−y)、A=Ba、Ca、B=Co、Ni、x、y=0〜0.5で記述される材料、本構成ではルテニウム酸ストロンチウムであるSrRuO3を材料として用いている。とくに、第2の電極15は、以下明らかとなるように、ペロブスカイト構造を有する(111)配向を優先配向とするルテニウム酸ストロンチウムからなっている。したがって、第1の電極14は、LaNiO3からなる密着層13とルテニウム酸ストロンチウムからなる第2の電極15という、互いに異なる組成の導電性酸化物に挟まれている。
第2の電極15、第3の電極17の成膜方法はスパッタ法である。スパッタ条件によってSrRuO3薄膜の膜質が変わるが、とくに結晶配向性を重視し、第1の電極のPt(111)にならってSrRuO3膜についても(111)配向させるためには、成膜温度については500℃以上での基板加熱を行い、成膜することが好ましい。
SRO成膜条件については、室温成膜でその後、RTA処理にて結晶化温度(650℃)で熱酸化する技術が知られている。この場合、SRO膜としては、十分結晶化され、電極としての比抵抗としても十分な値が得られるが、膜の結晶配向性としては、(110)が優先配向しやすくなり、その上に成膜したPZTについても(110)配向しやすくなる。
Pt(111)上に作製したSRO結晶性については、PtとSROで格子定数が近いため、通常のθ−2θ測定では、SRO(111)とPt(111)の2θ位置が重なってしまい判別が難しい。Ptについては消滅則の関係からPsi=35°傾けた2θが約32°付近の位置には回折線が打ち消し合い、回折強度が見られない。そのため、Psi方向を約35°傾けて、2θが約32°付近のピーク強度で判断することでSROが(111)に優先配向しているかどうかを確認可能となる。
図4に、2θ=32°に固定し、Psiを振ったときのデータを示す。Psi=0°ではSRO(110)ではほとんど回折強度が見られず、Psi=35°付近において、回折強度が見られることから、本成膜条件にて作製したものについては、SROが(111)配向していることが確認された。また、上述の室温成膜+RTA処理により作製されたSROについては、Psi=0°のときにSRO(110)の回折強度が見られる。
なお、第2の電極15の配向が(110)であるとすると、次のようになる。すなわち、後に詳細を記載するが、電気−機械変換素子10を液滴吐出ヘッド30の圧電アクチュエータとして連続動作したときに、駆動させた後の変位量が、初期変位に比べてどのくらい劣化したかを見積もったところ、PZTの配向性が非常に影響しており、第2の電極15の配向が(110)となっておりこれに伴ってPZTの配向が(110)となっていると、変位劣化抑制において不十分であることがわかった。
また第2の電極15の配向が(110)であると、SRO膜の表面粗さを見たときに、この表面粗さは成膜温度に影響し、室温から300℃では表面粗さが非常に小さく2nm以下になる。粗さについては、本稿において、AFMにより測定される表面粗さ(平均粗さ)を指標としている。表面粗さとしては、非常にフラットにはなっているが結晶性が十分でなく、その後成膜したPZTの圧電アクチュエータとしての初期変位や連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られない。
第2の電極15の表面粗さとしては、4nm〜15nmになっていることが好ましく、6nm〜10nmがさらに好ましい。この範囲を超えると、その後成膜したPZTの絶縁耐圧が非常に悪く、リークしやすくなる。従って上述した結晶性や表面粗さを得るために、成膜温度としては500℃〜700℃、好ましくは520℃〜600℃の範囲で成膜を実施している。
第2の電極15のSRO膜の膜厚としては、40nm以上150nm以下が好ましく、50nm以上80nm以下がさらに好ましい。この膜厚範囲よりも薄いとPZTの配向が不安定となり、初期変位や連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られない。この範囲を超えると、その後成膜したPZTの絶縁耐圧が非常に悪く、リークしやすくなる。
第3の電極17としてSRO膜の膜厚としては、40nm以上80nm以下が好ましく、50nm以上60nm以下がさらに好ましい。この膜厚範囲よりも薄いと初期変位や変位劣化特性については十分な特性が得られない。この範囲を超えると、その後成膜したPZTの絶縁耐圧が非常に悪く、リークしやすくなる。
第2の電極15、第3の電極17の成膜後のSrとRuとの組成比については、Sr/Ruが0.82以上1.22以下であることが好ましい。この範囲から外れると比抵抗が大きくなり、電極として十分な導電性が得られなくなる。
電気-機械変換膜16は、PZTを使用した。PZTとはジルコン酸鉛(PbTiO3)とチタン酸(PbTiO3)との固溶体で、その比率により特性が異なる。一般的に優れた圧電特性を示す組成はPbZrO3とPbTiO3との比率が53:47の割合で、化学式で示すとPb(Zr0.53,Ti0.47)O3、一般PZT(53/47)と示される。PZT以外の複合酸化物としてはチタン酸バリウムなどが挙げられ、この場合はバリウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒に溶解させることでチタン酸バリウム前駆体溶液を作製することも可能である。
これら材料は一般式ABO3で記述され、A=Pb、Ba、Sr、B=Ti、Zr、Sn、Ni、Zn、Mg、Nbを主成分とする複合酸化物が該当する。その具体的な記述として(Pb1−x,Ba)(Zr,Ti)O3、(Pb1−x,Sr)(Zr,Ti)O3となり、これはAサイトのPbを一部BaやSrで置換した場合である。このような置換は2価の元素であれば可能であり、その効果は熱処理中の鉛の蒸発による特性劣化を低減させる作用を示す。
作製方法としては、スパッタ法もしくは、Sol−gel法を用いてスピンコーターにて作製することが可能である。その場合は、パターニング化が必要となるので、フォトリソエッチング等により所望のパターンを得る。
PZTをSol−gel法により作製した場合、出発材料に酢酸鉛、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒としてメトキシエタノールに溶解させ均一溶液を得ことで、PZT前駆体溶液が作製される。金属アルコキシド化合物は大気中の水分により容易に加水分解してしまうので、前駆体溶液に安定剤としてアセチルアセトン、酢酸、ジエタノールアミンなどの安定化剤を適量、添加しても良い。
下地基板全面にPZT膜を得る場合、スピンコートなどの溶液塗布法により塗膜を形成し、溶媒乾燥、熱分解、結晶化の各々の熱処理を施すことで得られる。塗膜から結晶化膜への変態には体積収縮が伴うので、クラックフリーな膜を得るには一度の工程で100nm以下の膜厚が得られるように前駆体濃度の調整が必要になる。
また、インクジェット工法により作製していく場合については、第2の電極15と同様の作製フローにてパターニングされた膜を得ることが可能である。表面改質材については、下地である第1の電極14の材料によっても異なるが、酸化物を下地とする場合は主にシラン化合物、金属を下地とする場合は主にアルカンチオールを選定する。
電気−機械変換膜16の膜厚としては0.5〜5μmが好ましく、さらに好ましくは1μm〜2μmとなる。この範囲より小さいと十分な変位を発生することが出来なくなり、この範囲より大きいと何層も積層させていくため、工程数が多くなりプロセス時間が長くなる。
図5に、第2の電極15上にPZTをSol−gel法により作製した溶液を用いてスピンコートにより1μm成膜した後のXRDについて示す。同図より、PZTは(111)面が非常に優先配向した膜が得られていることがわかる。また、PZTの熱処理条件によっては(111)以外の配向膜にもなっており、以下の式を用いたときに、(111)配向度が0.95以上かつ(110)配向度が0.05以下であることが好ましい。
この式は、XRDで得られた各配向のピークの総和を1とした時のそれぞれの配向の比率を表す計算方法を示している。この式によって得られる値は平均配向度を表している。
ρ=I(hkl)/ΣI(hkl)
分母:各ピーク強度の総和
分子:任意の配向のピーク強度
この範囲を超える場合は、連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られないことがわかった。
以上述べたことからわかるように、電気−機械変換素子10は、簡便な製造工程で形成可能であり、バルクセラミックスと同等の性能を持つとともに、その後の圧力室31形成のための裏面からのエッチング除去、ノズル32を有するノズル板33を接合することで、液滴吐出ヘッド30が製造可能である。
以下、本発明の実施例及び実施例と比較される比較例を説明する。
これらの例において、電気−機械変換素子の構成は、図6に示すようになっている。同図(a)は図1ないし図3に対応した断面図、同図(b)は後述するように一層の図示を省略した平面図である。
なお、図1ないし図3に沿ってすでに説明した部分については当該部分に付した符号と同じ符号を付して適宜説明を省略する。図6に沿った以下の説明で述べていない事項については、適宜、すでに述べた事項を援用する。
同図に示されているように、電気−機械変換素子10は、下部電極21、電気−機械変換膜16、上部電極22を上方から覆うように形成された絶縁保護膜23(同図(b)においては図示を省略)と、絶縁保護膜23に形成されたコンタクトホール24、25と、コンタクトホール24内に位置して下部電極21に導通するとともにそれ以外の部分は絶縁保護膜23上に形成された第5の電極26と、コンタクトホール25内に位置して上部電極22に導通するとともにそれ以外の部分は絶縁保護膜23上に形成された第6の電極27とを有している。
第5の電極26は、共通電極となっており、これにより、下部電極21を共通電極として機能させるようになっている。
第6の電極27は、個別電極となっており、これにより、上部電極22を個別電極として機能させるようになっている。
<実施例1>
基板11としてのシリコンウェハに膜厚1ミクロンの熱酸化膜による振動板12を形成し、膜厚20nmのLaNiO3膜による密着層13をスパッタ成膜した。スパッタ成膜時の基板加熱温度については300℃にて成膜を実施した。さらに第1の電極14として膜厚250nmの白金膜をスパッタ成膜した。密着層13であるLaNiO3膜は、熱酸化膜と白金膜との間の密着層となっている。
次に第2の電極15として膜厚50nmのSrRuO膜をスパッタ成膜した。スパッタ成膜時の基板加熱温度については550℃にて成膜を実施した。
電気−機械変換膜16の作成にあたってはPb:Zr:Ti=110:53:47の組成比で調合した溶液を準備した。具体的な前駆体塗布液の合成については、出発材料に酢酸鉛三水和物、イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムを用いた。酢酸鉛の結晶水はメトキシエタノールに溶解後、脱水した。化学両論組成に対し鉛量を過剰にしてある。これは熱処理中のいわゆる鉛抜けによる結晶性低下を防ぐためである。イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムをメトキシエタノールに溶解し、アルコール交換反応、エステル化反応を進め、上述の酢酸鉛を溶解したメトキシエタノール溶液と混合することでPZT前駆体溶液を合成した。このPZT濃度は0.5モル/リットルにした。
電気−機械変換膜16を、この液を用いて、スピンコートにより成膜し、成膜後、120℃乾燥→500℃熱分解を行った。3層目の熱分解処理後に、温度750℃による結晶化熱処理を急速熱処理であるRTAにて行った。このときPZTの膜厚は240nmであった。この工程を計8回実施し、24層で約2μmのPZT膜厚を得た。
次に第3の電極17として膜厚40nmのSrRuO膜、さらに第4の電極18として膜厚125nmのPt膜をスパッタ成膜した。
その後、東京応化社製フォトレジスト(TSMR8800)をスピンコート法で成膜し、通常のフォトリソグラフィーでレジストパターンを形成した後、ICPエッチング装置(サムコ製)を用いて、図6に示した構成とするのに必要なパターンを作製した。
次に絶縁保護膜23として、膜厚2μmのパリレン膜をCVD成膜した。
その後、東京応化社製フォトレジスト(TSMR8800)をスピンコート法で成膜し、通常のフォトリソグラフィーでレジストパターンを形成した後、RIE(サムコ製)を用いて、図6に示した構成とするのに必要なパターンを作製した。
最後に第5の電極26、第6の電極27として膜厚5μmのAl膜をスパッタ成膜した。
このとき、東京応化社製フォトレジスト(TSMR8800)をスピンコート法で成膜し、通常のフォトリソグラフィーでレジストパターンを形成した後、RIE(サムコ製)を用いて、図6に示した構成とするのに必要なパターンを作製した。
以上のようにして、電気−機械変換素子10を作製した。
<実施例2>
密着層13としてLaNiO3膜を実施例1と同様の条件にてスパッタ成膜し、膜厚を60nmとした以外は、実施例1と同様に電気−機械変換素子10を作製した。
<実施例3>
密着層13としてLaNiO3膜を実施例1と同様の条件にてスパッタ成膜し、膜厚を10nmとした以外は、実施例1と同様に電気−機械変換素子10を作製した。
<実施例4>
密着層13としてLaNiO3膜を基板温度550℃の条件にてスパッタ成膜し、膜厚を20nmとした以外は、実施例1と同様に電気−機械変換素子10を作製した。
<実施例5>
密着層13としてLaNiO3膜を室温にてスパッタ成膜し、その後550℃のRTA処理にてスパッタ成膜し、膜厚を20nmとした以外は、実施例1と同様に電気−機械変換素子10を作製した。
<実施例6>
密着層13としてLaNiO3膜を基板加熱温度については300℃にて成膜し、膜厚を20nmとした以外は、実施例1と同様に電気−機械変換素子10を作製した。
<比較例1>
密着層としてLaNiO3膜を実施例1と同様の条件にてスパッタ成膜し、膜厚を5nmとした以外は、実施例1と同様に電気−機械変換素子を作製した。この比較例は、密着層の膜厚等において、実施例と比較されるものである。
<比較例2>
密着層としてLaNiO3膜を実施例1と同様の条件にてスパッタ成膜し、膜厚を100nmとした以外は、実施例1と同様に電気−機械変換素子を作製した。この比較例は、密着層の膜厚等において、実施例と比較されるものである。
<比較例3>
密着層としてTi膜を基板加熱温度については300℃の条件にて成膜し、膜厚を50nmとした以外は、実施例1と同様に電気−機械変換素子を作製した。この比較例は、密着層の材質等において、実施例と比較されるものである。
<比較例4>
密着層としてTiO2膜を基板加熱温度については300℃の条件にて成膜し、膜厚を50nmとした以外は、実施例1と同様に電気−機械変換素子を作製した。この比較例は、密着層の材質等において、実施例と比較されるものである。
実施例1〜6、比較例1〜4で作製した電気−機械変換素子について、プロセス過程において、第2の電極を成膜した直後(比較例3についてはRTA処理後)に、JIS D0202−1988に準拠して碁盤目テープ剥離試験を行った。セロハンテープ(「CT24」、ニチバン(株)製)を用い、指の腹でフィルムに密着させた後剥離した。判定は100マスの内、剥離しないマス目の数で表し、機能層である密着層が剥離しない場合を100/100、完全に剥離する場合を0/100として表した。また電気−機械変換膜を作製した後に、図5に示したような、PZTのXRDデータについて確認を行った。
作製した電気−機械変換素子を用いて電気特性、電気−機械変換能(圧電定数)の評価を行った。代表的なP−Eヒステリシス曲線を図7に示す。電気−機械変換能は電界印加(150kV/cm)による変形量をレーザードップラー振動計で計測し、シミュレーションによる合わせ込みから算出した。初期特性を評価した後に、耐久性(10^10回繰り返し印可電圧を加えた直後の特性)評価を実施した。
これらの詳細結果を表1にまとめた。
なお、同表において、太枠内の数値は、特性が劣っていることを示している。太枠内に数値が記載されていない項目については、試験中に評価不能となった場合を示している。
Figure 2013065700
実施例1〜6については、膜の密着力、PZT(111)の結晶性としても十分な値が得られており、初期特性、耐久性試験後の結果についても一般的なセラミック焼結体と同等の特性を有していた。たとえば、残留分極Pr:20〜25μC/cm2、圧電定数d31:−130〜−160pm/Vの範囲内となっている。
一方、比較例1、4については、剥離率の欄からわかるように一部剥がれが確認されており、また、10^10回後すなわち10^10回繰り返し印加電圧を加える耐久性試験言い換えると劣化試験途中に剥がれが発生し、評価が出来なくなってしまった。比較例2、3については、初期特性において、一般的なセラミックス焼結体に比べて、圧電定数d31で特性が劣っている。この圧電定数の特性については、比較例1、4については、さらに劣っている。
実施例1〜6で作製した電気-機械変換素子10を用いて、図3に示した液滴吐出ヘッド30を作製し液の吐出評価を行った。粘度を5cpに調整したインクを用いて、単純Push波形により−10〜−30Vの印可電圧を加えたときの吐出状況を確認したところ、全てどのノズル孔からも吐出されていることを確認した。
液滴吐出ヘッド30をインクジェット式記録ヘッドとして搭載した画像形成装置であるインクジェット記録装置の一例について図8を参照して説明する。なお、同図(a)は同記録装置の機構部の側面図、同図(b)は同記録装置の斜視図である。
インクジェット記録装置50は、インクジェットプリンタとしてのプリンタであってフルカラーの画像形成を行うことが可能なデジタル印刷装置である。インクジェット記録装置50は、外部から受信した画像情報に対応する画像信号に基づき画像形成処理を行なう。
インクジェット記録装置50は、一般にコピー等に用いられる普通紙の他、OHPシートや、カード、ハガキ等の厚紙や、封筒等の何れをもシート状の記録媒体としてこれに画像形成を行なうことが可能である。インクジェット記録装置50は、記録媒体である用紙としての記録体である転写紙Sの片面に画像形成可能な片面画像形成装置であるが、転写紙Sの両面に画像形成可能な両面画像形成装置であってもよい。
インクジェット記録装置50は、記録装置本体81の内部に、主走査方向に移動可能なキャリッジ93と、キャリッジ93に搭載したインクジェットヘッドとしての記録ヘッドである液滴吐出ヘッド30と、液滴吐出ヘッド30へインクを供給する液体供給部としてのインクカートリッジ95とを有する液滴吐出装置としての印字機構部82等を収納している。
インクジェット記録装置50は、本体81の下方部に前方側から多数枚の用紙83を積載可能な給紙カセット84を抜き差し自在に装着されるようになっている。また、本体81は、用紙83を手差しで給紙するための手差しトレイ85を開倒可能である。給紙カセット84は給紙トレイであっても良い。
インクジェット記録装置50は、給紙カセット84或いは手差しトレイ85から給送される用紙83を取り込み、印字機構部82によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ86に排紙する。
印字機構部82は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド91と従ガイドロッド92とでキャリッジ93を主走査方向に摺動自在に保持している。キャリッジ93には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインクを吐出する液滴吐出ヘッド30が、複数のノズル32を主走査方向と交差する方向に配列した状態で、インク滴吐出方向を下方に向けて装着されている。またキャリッジ93には液滴吐出ヘッド30のそれぞれに各色のインクを供給するためのインクカートリッジ95を交換可能に装着されている。
インクカートリッジ95は、上方に大気と連通する図示しない大気口、下方には液滴吐出ヘッド30へインクを供給する図示しない供給口を有しているとともに、内部にはインクが充填された図示しない多孔質体を有しており、多孔質体の毛管力により液滴吐出ヘッド30へ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。本構成の液滴吐出ヘッド30は各色に対応して複数備えられているが、液滴吐出ヘッド30は、各色のインクを吐出する構成とし、これを1つ備えられていてもよい。
キャリッジ93は後方側に対応した用紙搬送方向下流側を主ガイドロッド91に摺動自在に嵌装され、前方側に対応した用紙搬送方向上流側を従ガイドロッド92に摺動自在に載置されている。キャリッジ93を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ97で回転駆動される駆動プーリ98と従動プーリ99との間に、キャリッジ93を固定したタイミングベルト100を張装し、主走査モータ97の正逆回転によりキャリッジ93が往復駆動するようになっている。
インクジェット記録装置50は、給紙カセット84にセットした用紙83を液滴吐出ヘッド30の下方側に搬送するために、給紙カセット84から用紙83を分離給装する給紙ローラ101及びフリクションパッド102と、用紙83を案内するガイド部材103と、給紙された用紙83を反転させて搬送する搬送ローラ104と、この搬送ローラ104の周面に押し付けられる搬送コロ105及び搬送ローラ104からの用紙83の送り出し角度を規定する先端コロ106とを設けている。搬送ローラ104は副走査モータ107によって図示しないギヤ列を介して回転駆動される。
液滴吐出ヘッド30の下方には、キャリッジ93の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ104から送り出された用紙83を液滴吐出ヘッド30の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材109が設けられている。この印写受け部材109の用紙搬送方向下流側には、用紙83を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ111、拍車112を設け、さらに用紙83を排紙トレイ86に送り出す排紙ローラ113及び拍車114と、排紙経路を形成するガイド部材115、116とを配設している。
記録時には、キャリッジ93を移動させながら画像信号に応じて液滴吐出ヘッド30を駆動することにより、停止している用紙83にインクを吐出して1行分を記録し、用紙83を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または、用紙83の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙83を排紙する。
キャリッジ93の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、液滴吐出ヘッド30の吐出不良を回復するための回復装置117を配置している。回復装置117は、図示を省略するが、キャップ手段と、吸引手段と、クリーニング手段を有している。キャリッジ93は印字待機中にはこの回復装置117側に移動されてキャッピング手段で液滴吐出ヘッド30をキャッピングされ、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段で液滴吐出ヘッド30のノズル32を密封し、図示しないチューブを通して吸引手段でノズル32からインクとともに気泡等を吸い出し、ノズル板33の表面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体81下部に設置された図示しない廃インク溜に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
このような構成のインクジェット記録装置50においては液滴吐出ヘッド30を搭載しており、この液滴吐出ヘッド30が、電気−機械変換素子10、すなわち、密着層が、LNOに代表されるような、化学式ABO3で記述されるペロブスカイト構造を有し、A=La、Sr、B=Mn、Al、Ti、Cr、Co、Ni、Ruの何れか1つ以上から構成されている等の条件を満たした電気−機械変換素子10を備えていることにより、膜剥がれに対する耐久性が向上し、また結晶配向性に優れた電気−機械変換膜を作成することが可能となって、経時的に安定してインク吐出特性が得られ、インク滴吐出不良が防止ないし抑制され、良好な画像品質が得られる。
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
たとえば、電気−機械変換素子は、基板、下地膜、密着層、第1の電極、第2の電極、電気−機械変換膜、第3の電極、第4の電極のうち、少なくとも密着層、第1の電極、第2の電極、電気−機械変換膜、第3の電極、第4の電極を有していれば良く、これに加えて下地膜及び/又は基板を備えていても良い。
本発明を適用する画像形成装置は、上述のタイプの画像形成装置に限らず、他のタイプの画像形成装置、すなわち、複写機、ファクシミリの単体、あるいはこれらの複合機、これらに関するモノクロ機等の複合機、その他、電気回路形成に用いられる画像形成装置、バイオテクノロジー分野において所定の画像を形成するのに用いられる画像形成装置であっても良い。
電気−機械変換素子は、その適用範囲が画像形成装置に限られないが、画像形成装置に適用される場合であっても、画像形成装置において、液滴吐出ヘッドと異なる部分に、アクチュエータとして備えられていても良い。電気−機械変換素子は、インクジェット技術を利用した3次元造型技術等に応用可能である。
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
10 電気−機械変換素子
11 基板
12 下地膜
13 密着層
14 第1の電極
15 第2の電極
16 電気−機械変換膜
17 第3の電極
18 第4の電極
30 液滴吐出ヘッド
50 画像形成装置
82 液滴吐出装置
95 液体供給部
特開2000−299511号公報 特開2008−4782号公報 特開2006−286925号公報 特開2007−242778号公報 特許第3902023号公報 特開2005−197579号公報 特許第4431891号公報 特開2003−17767号公報 特開2011−11516号公報 特許第4099818号公報 特許第4432776号公報 特許第3249496号公報 特許第3817730号公報

Claims (10)

  1. 基板上又は下地膜上に形成された密着層と、
    この密着層上に形成された第1の電極と、
    この第1の電極上に形成された第2の電極と、
    この第2の電極上に形成された電気−機械変換膜と、
    この電気−機械変換膜上に形成された第3の電極と、
    この第3の電極上に形成された第4の電極とを有し、
    第3の電極と第4の電極とは個別電極であり、
    第1の電極と第4の電極とはPt族の金属からなり、
    第2の電極と第3の電極とは、化学式ABO3で記述されるペロブスカイト構造を有し、A=Sr、Ba、Ca、La、B=Ru、Co、Niの何れか1つ以上から構成された導電性酸化物からなり、
    前記密着層は、化学式ABO3で記述されるペロブスカイト構造を有し、A=La、Sr、B=Mn、Al、Ti、Cr、Co、Ni、Ruの何れか1つ以上から構成されている電気−機械変換素子。
  2. 請求項1記載の電気−機械変換素子において、
    前記密着層はペロブスカイト構造を有する導電性酸化物からなり、
    第1の電極は互いに異なる組成の導電性酸化物に挟まれていることを特徴とする電気−機械変換素子。
  3. 請求項1又は2記載の電気−機械変換素子において、
    前記密着層はLaNiO3からなり、
    第2の電極と第3の電極とはルテニウム酸ストロンチウムからなることを特徴とする電気−機械変換素子。
  4. 請求項1ないし3の何れか1つに記載の電気−機械変換素子において、
    前記密着層の厚さが10nm以上60nm以下であることを特徴とする電気−機械変換素子。
  5. 請求項1ないし4の何れか1つに記載の電気−機械変換素子において、
    第2の電極は(111)を優先配向とするルテニウム酸ストロンチウムからなることを特徴とする電気−機械変換素子。
  6. 請求項1ないし5の何れか1つに記載の電気−機械変換素子において、
    前記電気−機械変換膜は(111)を優先配向とするPZTからなることを特徴とする電気−機械変換素子。
  7. 請求項1ないし6の何れか1つに記載の電気−機械変換素子において、
    前記電気−機械変換膜の結晶配向について、
    ρ=I(hkl)/ΣI(hkl)
    [I(hkl):任意の配向のピーク強度、ΣI(hkl)各ピーク強度の総和]
    によって表される、XRDで得られた各配向のピークの総和を1としたときのそれぞれの配向の比率を表す計算方向による平均配向度において、
    (111)配向の配向度が0.95以上であり、(110)配向の配向度が0.05以下であることを特徴とする電気−機械変換素子。
  8. 請求項1ないし7の何れか1つに記載の電気−機械変換素子を備え、この電気−機械変換素子が駆動されることにより液滴を吐出する液滴吐出ヘッド。
  9. 請求項8記載の液滴吐出ヘッドと、この液滴吐出ヘッドに、液滴となる液体を供給する液体供給部とを備えた液滴吐出装置。
  10. 請求項1ないし7の何れか1つに記載の電気−機械変換素子、または、請求項8記載の液滴吐出ヘッド、または、請求項9記載の液滴吐出装置を備えた画像形成装置。
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