JP2013058326A - リチウムイオン電池外装材、リチウムイオン電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも冷間成形により形成された凹部を有する成形部材と、前記凹部の開口を封止する封止部材とから構成され、成形部材が、基材層A1、接着層B1、アルミニウム箔層C1、腐食防止処理層D1、接着層E1、ヒートシール層F1が順次積層したラミネート構成である成形部材用多層フィルムからなり、封止部材が、基材層A2、接着層B2、金属箔層C2、腐食防止処理層D2、接着層E2、ヒートシール層F2が順次積層したラミネート構成である封止部材用多層フィルムからなり、少なくとも、基材層A1が、延伸ポリアミドフィルムを含む単層または複層構成からなり、基材層A2が、延伸ポリアミドフィルムを含まない単層または複層構成からなるリチウムイオン電池外装材。
【選択図】なし
Description
上記のような多層フィルムは一般的に、アルミニウム箔層の一方の面に接着層を介してシーラント層を積層し、他方の面に接着層を介して基材層を積層する構成(基材層/接着層/アルミニウム箔層/接着層/シーラント層)であり、任意にこれらの層間に他の中間層(たとえば腐食防止処理層)が設けられる。接着層としては、ドライラミネート用接着樹脂層からなるドライラミネート構成と、熱可塑性材料からなる熱ラミネート構成の2種類に大きく分類される。ドライラミネート構成に用いられる接着剤はエステル基やウレタン基など加水分解性の高い結合部を有するため、フッ酸による加水分解反応が起こりやすい。したがって高い信頼性が求められる用途には、熱ラミネート構成が用いられる。
現在、上記冷間成形を行う多層フィルムと冷間成形を行わない多層フィルムとは区別されておらず、同一の多層フィルムが用いられている。
これらのうち、薄膜化と放熱性能は正の相関が強く、薄膜化できれば高放熱性が得られる。しかし、薄膜化は、成形性能や、成形性能を維持した上での外層側への耐酸性付与と負の相関が強く、それらの性能を同時に満足させることは難しい。
たとえば成形性能に寄与するものとしては、基材層の材質と膜厚、基材層とアルミニウム箔層等の金属箔層間との接着剤材質、金属箔層の材質と膜厚などが挙げられる。特に基材層の材質と膜厚とが成形性能に強く寄与し、基材層を薄膜化すると成形性能が低下する。このため、リチウムイオン電池用外装材を、成形性能を損なうことなく薄くすることは難しい。
特許文献1に記載の多層フィルム構成は、外側から2軸延伸ポリエステルフィルム層、2軸延伸ナイロンフィルム層、金属箔層をドライラミネート工法で順に積層したものであり、電解液や酸に対する耐性がある2軸延伸ポリエステルフィルムを最外層にして多層フィルムの外側に電解液や酸に対する耐性を付与しつつ、2軸延伸ナイロンフィルムも積層されているため、高衝撃強さを維持できるとされている。
特許文献2に記載の多層フィルム構成においては、ラミネート構成の最外層に、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、セルロースエステル、ウレタン樹脂及びアクリル樹脂から選ばれる少なくとも1種のコーティング層を設けることで、耐酸性と成形性とを達成できるとされている。
しかしこれらの方法では、基材層が厚膜化し、リチウムイオン電池の厚手化、放熱性の減少等の問題が生じる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、成形性能の維持、薄膜化、放熱性能の向上および耐酸性の付与を同時に達成できるリチウムイオン電池外装材および該外装材を用いたリチウムイオン電池を提供することを目的とする。
本発明は上記知見に基づいてなされたものであり、以下の態様を有する。
[1]少なくとも冷間成形により形成された凹部を有する成形部材と、前記凹部の開口を封止する封止部材とから構成されるリチウムイオン電池外装材であって、
前記成形部材が、基材層A1、接着層B1、アルミニウム箔層C1、腐食防止処理層D1、接着層E1、ヒートシール層F1が順次積層したラミネート構成である成形部材用多層フィルムからなり、
前記封止部材が、基材層A2、接着層B2、金属箔層C2、腐食防止処理層D2、接着層E2、ヒートシール層F2が順次積層したラミネート構成である封止部材用多層フィルムからなり、かつ
少なくとも、前記基材層A1が、延伸ポリアミドフィルムを含む単層または複層構成からなり、前記基材層A2が、延伸ポリアミドフィルムを含まない単層または複層構成からなることを特徴とするリチウムイオン電池外装材。
[2]前記金属箔層C2の厚みが30μm以下である、[1]に記載のリチウムイオン電池外装材。
[3]前記基材層A2の厚みが25μm以下である、[1]または[2]に記載のリチウムイオン電池外装材。
[4][1]に記載のリチウムイオン電池外装材を備えるリチウムイオン電池。
なお、特許文献1〜2においては多層フィルムに成形部材用と封止部材用の区別は無く、リチウムイオン電池の厚手化、放熱性の減少の問題は解消できない。
本発明のリチウムイオン電池外装材は、少なくとも冷間成形により形成された凹部を有する成形部材と、前記凹部の開口を封止する封止部材とから構成されるリチウムイオン電池外装材であって、
前記成形部材が、基材層A1、接着層B1、アルミニウム箔層C1、腐食防止処理層D1、接着層E1、ヒートシール層F1が順次積層したラミネート構成である成形部材用多層フィルムからなり、
前記封止部材が、基材層A2、接着層B2、金属箔層C2、腐食防止処理層D2、接着層E2、ヒートシール層F2が順次積層したラミネート構成である封止部材用多層フィルムからなり、かつ
少なくとも、前記基材層A1が、延伸ポリアミドフィルムを含む単層または複層構成からなり、前記基材層A2が、延伸ポリアミドフィルムを含まない単層または複層構成からなることを特徴とする。
たとえば成形部材用多層フィルムとしては成形性能などを持たせる為に、従来用いられているリチウム電池用外装材を用い、一方、封止部位用リチウム電池外装フィルムには成形部位用リチウム電池外装フィルムとは構成の異なったリチウム電池用包材を用いる。
封止部材用多層フィルムについては成形性能を度外視して設計可能である為、設計自由度が増し、構成部材の最適化、フィルムの薄膜化、などが可能となる。
ここで、「構成が異なる」とは、成形部材用多層フィルムと封止部材用多層フィルムとの間で、対応する位置にある層(A1とA2、B1とB2、C1とC2、D1とD2、E1とE2、F1とF2)を構成する材質が異なっていることを意味し、本発明においては少なくとも、基材層A1と基材層A2の構成が異なっている。
図1は、本発明の一実施形態のリチウムイオン電池外装材10の構成を示す概略断面図である。図2は、リチウムイオン電池外装材10が備える成形部材1を構成する成形部材用多層フィルムの構成を示す概略断面図であり、図3は、封止部材2を構成する封止部材用多層フィルムの構成を示す概略断面図である。
リチウムイオン電池外装材1は、成形部材用多層フィルムに冷間成形により凹部1aを形成してなる成形部材1と、封止部材用多層フィルムからなる封止部材2とから構成される。
冷間成形は、常温で行う成形方法であり、たとえば深絞り成形、張り出し成形等のプレス成形などが挙げられる。
成形部材用多層フィルムは、基材層A1、接着層B1、アルミニウム箔層C1、腐食防止処理層D1、接着層E1、ヒートシール層F1が順次積層したラミネート構成を有する。これにより、成形部材用リチウム電池外装フィルムに必要とされる性能を発現できる。
封止部材用多層フィルムは、基材層A2、接着層B2、金属箔層C2、腐食防止処理層D2、接着層E2、ヒートシール層F2が順次積層したラミネート構成を有する。これにより、封止部材用フィルムに必要とされる性能を発現できる。
<基材層A1>
基材層A1としては、延伸ポリアミドフィルムを含む単層または複層構成の樹脂層が用いられる。前述のように、リチウムイオン電池外装材の成形性には基材層の材質に相関が強い。このような樹脂層を基材層A1として用いることで、冷間成形により成形部材とする際の成形加工性が向上する。
そのような樹脂層としては、例えば、延伸または無延伸ポリアミドフィルム、延伸または無延伸ポリエステルフィルム、延伸ポリアミドフィルムと延伸ポリエステルフィルムとの2層フィルム等が挙げられる。
成形性、耐熱性に優れる点では、延伸ポリアミドフィルムが好ましく、さらに耐酸性を付与する場合は、延伸ポリアミドフィルムと延伸ポリエステルフィルムとの2層フィルムが好適である。
基材層A1の厚みは、成形性、耐熱性、耐ピンホール性、絶縁性を向上させるという点で、6μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。また、薄膜化、高放熱性の点では、60μm以下が好ましく、45μm以下がより好ましい。
耐酸性付与剤としては、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、セルロースエステル、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
スリップ剤としては、脂肪酸アミド、例えば、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド等が挙げられる。
アンチブロッキング剤としては、シリカなどの各種フィラー系のものが好適である。
これらの添加剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
接着層B1は、基材層A1とアルミニウム箔層C1との密着性を高める層である。
接着層B1を構成する材質としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオールなどのポリオールからなる主剤に対し、2官能以上のイソシアネート化合物を作用させたポリウレタン樹脂が挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、少なくとも1種の多塩基酸と、少なくとも1種のジオールを反応させて得られるものを用いることが可能である。多塩基酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸などの脂肪族系二塩基酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族系二塩基酸等の二塩基酸などが挙げられる。ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオールなど脂肪族系ジオール、シクロヘキサンジオール、水添キシリレングリーコルなどの脂環式系ジオール、キシリレングリーコルなどの芳香族系ジオール等が挙げられる。
また、ポリエステルポリオールとして、上記ポリエステルポリオールの両末端の水酸基を、イソシアネート化合物の単体、または少なくとも一種のイソシアネート化合物からなるアダクト体、ビューレット体もしくはイソシアヌレート体を用いて鎖伸長したポリエステルウレタンポリオールなどが挙げられる。イソシアネート化合物としては、例えば2,4−もしくは2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,2,4−もしくは2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネートなどが挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのエーテル系のポリオールや、鎖長伸長剤として上述したイソシアネート化合物を作用させたポリエーテルウレタンポリオールを用いることが可能である。
アクリルポリオールとしては、ポリ(メタ)アクリル酸を主成分とする共重合体が挙げられる。該共重合体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有モノマーを筆頭に、アルキル基としてメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基であるアルキル(メタ)アクリレート系モノマー、さらには、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)、N−アルコキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルコキシ(メタ)アクリルアミド、(アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基等)、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有モノマー、
(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシランなどのシラン含有モノマー、(メタ)アクリロキシプロピルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマーを共重合させたものが挙げられる。
カーボネートポリオールとしては、カーボネート化合物とジオールとを反応させて得られるものを用いることが可能である。前記カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネートなどを用いることができる。前記ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオールなどの脂肪族ジオール、シクロヘキサンジオール、水添キシリレングリール、などの脂環式ジオール、キシリレングリール、など芳香族ジオールなどを用いることができる。
また、上記カーボネートポリオールの末端の水酸基を、上述したイソシアネート化合物により鎖伸長したポリカーボネートウレタンポリオールを用いることが可能である。
これらの各種ポリオールは、求められる機能や性能に応じて、いずれか1種単独で、または2種以上のブレンドの状態で用いても構わない。
これらの主剤に対する硬化剤としては、鎖伸張剤として用いた類のイソシアネート化合物を用いることが可能であり、繰り返しにはなるが、2,4−もしくは2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,2,4−もしくは2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネートなどから選ばれるイソシアネート化合物の単体、あるいは上記イソシアネート化合物から選択される少なくとも一種のイソシアネート化合物からなるアダクト体、ビューレット体、イソシアヌレート体が挙げられる。
カルボジイミド化合物としては、N,N’−ジ−o−トルイルカルボジイミド、N,N’−ジフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、N,N’−ジオクチルデシルカルボジイミド、N−トリイル−N’−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,2−ジ−t−ブチルフェニルカルボジイミド、N−トリイル−N’−フェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、およびN,N’−ジ−p−トルイルカルボジイミドなどが挙げられる。
オキサゾリン化合物としては、2−オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、2−フェニル−2−オキサゾリン、2,5−ジメチル−2−オキサゾリン、2,4−ジフェニル−2−オキサゾリンなどのモノオキサゾリン化合物、2,2’−(1,3−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−(1,2−エチレン)−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−(1,4−ブチレン)−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−(1,4−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)などのジオキサゾリン化合物が挙げられる。
エポキシ化合物としては、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコールのような脂肪族のジオールのジグリシジルエーテル、ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセロール、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、グリセロール、トリメチロールプロパンなどの脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ポリオールのポリグリシジルエーテル、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族、芳香族の多価カルボン酸のジグリシジルエステルまたはポリグリシジルエステル、レゾルシノール、ビス−(p−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス−(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、トリス−(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(p−ヒドロキシフェニル)エタンなどの多価フェノールのジグリシジルエーテルもしくはポリグリシジルエーテル、N,N’−ジグリシジルアニリン、N,N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−ビス−(p−アミノフェニル)メタンのようにアミンのN−グリシジル誘導体、アミノフェールのトリグリシジル誘導体、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート、オルソクレゾール型エポキシ、フェノールノボラック型エポキシが挙げられる。
リン系化合物としては、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンホスフォナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルホスファイト−5−t−ブチル−フェニル)ブタン、トリス(ミックスドモノおよびジ−ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、4,4’−イソプロピリデンビス(フェニル−ジアルキルホスファイト)などが挙げられる。
シランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなど各種シランカップリング剤を使用することが可能である。
その他、接着剤に求められる性能に応じて、各種添加剤や安定剤も配合しても構わない。
アルミニウム箔層C1を構成するアルミニウム箔としては、一般に用いられている軟質アルミニウム箔を用いることができるが、さらなる耐ピンホール性、及び成形時の延展性を付与させる目的で、鉄含有率が0.1〜9.0質量%、好ましくは0.5〜2.0質量%の範囲内のアルミニウム箔を用いることが好ましい。鉄含有率が0.1質量%以上であると耐ピンホール性、延展性が十分に付与され、9.0質量%以下であると柔軟性が良好である。
アルミニウム箔は脱脂処理が施されたものが好ましい。脱脂処理は大きくウェットタイプ、ドライタイプが挙げられる。
ウェットタイプの脱脂処理としては、酸脱脂、アルカリ脱脂などが挙げられる。
酸脱脂としては、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸などの無機酸を単独で、または2種以上を混合したものを用いる方法などが挙げられる。また、必要に応じてアルミのエッチング効果を向上させるという点でもFeイオンやCeイオンなどの供給源となる各種金属塩を配合するケースもある。アルカリ脱脂としては水酸化ナトリウムなどの強エッチングタイプが挙げられ、また弱アルカリ系や界面活性剤を配合したケースもある。これらの脱脂・エッチングは浸漬法やスプレー法で行われる。
ドライタイプの脱脂処理としては、アルミの焼鈍工程で行う方法が挙げられる。また、フレーム処理やコロナ処理なども挙げられる。さらにはある特定波長の紫外線を照射により発生した活性酸素により汚染物質を酸化分解・除去するような脱脂処理も挙げられる。
脱脂処理が施されるのは、アルミニウム箔の片側面であっても両側面であってもよい。
アルミニウム箔層C1の厚みは、バリア性、耐ピンホール性、加工性を考慮すると、9〜200μmが好ましく、15〜100μmがより好ましい。
腐食防止処理層D1は、基本的には、電解液あるいはフッ酸によるアルミニウム箔層C1の腐食を防止するために設けられる層である。
腐食防止処理としては、脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理、あるいはこれら処理の2種以上の組み合わせが挙げられる。
脱脂処理としては、酸脱脂、アルカリ脱脂が挙げられる。酸脱脂としては上述した硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸などの無機酸を単独あるいはこれらを混合して得られたものを用いる方法などが挙げられる。また酸脱脂として、一ナトリウム二フッ化アンモニウムなどのフッ素含有化合物を上記無機酸で溶解させた酸脱脂剤を用いることで、金属箔の脱脂効果だけでなく不動態である金属のフッ化物を形成させることが可能であり、耐フッ酸性という点で有効である。アルカリ脱脂としては、水酸化ナトリウムなどを用いる方法が挙げられる。
熱水変成処理としては、トリエタノールアミンを添加した沸騰水中に金属箔を浸漬処理することで得られるベーマイト処理が挙げられる。
陽極酸化処理としては、アルマイト処理が挙げられる。
化成処理としては、クロメート処理、ジルコニウム処理、チタニウム処理、バナジウム処理、モリブデン処理、リン酸カルシウム処理、水酸化ストロンチウム処理、セリウム処理、ルテニウム処理、あるいはこれらの混合相からなる各種化成処理が挙げられる。
これらの熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理は、事前に上述した脱脂処理を施した方が好ましい。またこれらの化成処理は湿式型に限らず、これらの処理剤を樹脂成分と混合した塗布型タイプでも適用が可能である。
このコーティングタイプの腐食防止処理は、金属箔の腐蝕防止効果(インヒビター効果)を有し、かつ環境側面的にも好適な材料として、平均粒径100nm以下の酸化セリウムのような希土類元素系酸化物のゾルを用いる方法であり、この方法を用いることで、一般的なコーティング方法でも金属箔腐蝕防止効果を付与させることが可能である。
この酸化セリウムのような希土類元素系酸化物のゾルは、例えば水系、アルコール系、炭化水素系、ケトン系、エステル系、エーテル系など各種溶媒を用いることが可能であるが、後述する理由から水系のゾルを用いることが好ましい。
このような酸化物ゾルは通常その分散を安定化させるために、硝酸、塩酸、リン酸などの無機酸、あるいは酢酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、乳酸などの有機酸を分散安定化剤として用いられる。これらの分散安定化剤のうち、特にリン酸は「ゾルの分散安定化」だけでなく、本用途のリチウム電池用外装材について言うと、リン酸のキレート能力を利用した、「金属箔との密着性向上」、フッ酸の影響で溶出した金属物イオンを捕獲(不動態形成)することよる「電解液耐性の付与」、低温でもリン酸の脱水縮合起こしやすいことによる「酸化物層の凝集力アップ」などが期待される。このようなリン酸あるいはその塩としてはオルトリン酸、ピロリン酸、メタリン酸、あるいはこれらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩が挙げられる。特にはトリメタリン酸、テトラメタリン酸、ヘキサメタリン酸、ウルトラメタリン酸などの縮合リン酸、あるいはこれらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩が、リチウム電池用包材としても機能発現に好ましい。特に、この希土類酸化物のゾルを用いて、各種コーティング法により希土類酸化物からなる層を形成させる時の乾燥造膜性(乾燥能力、熱量)を考慮すると低温での反応性に優れる剤が好ましいことから、低温での脱水縮合性に優れるNaイオン塩などが好適に用いられる。リン酸塩を形成する塩としては、特に制約は受けないが、より好ましくは水溶性の塩であることが好ましい。
酸化セリウムとリン酸(あるいはその塩)の配合比としては、酸化セリウム100質量部に対し、リン酸(あるいはその塩)が1質量部以上であることが好ましい。1質量部より少ないとゾルの安定化に欠けると共に、リチウム電池用外装材としての機能を満たすことが困難になるおそれがある。酸化セリウム100質量部に対するリン酸(あるいはその塩)の配合量は、より好ましくは5質量部以上である。リン酸(あるいはその塩)の配合上限は酸化セリウムゾルの機能低下を伴わない範囲であればよく、酸化セリウム100質量部に対し、100質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。
該アニオン性ポリマーとしては、カルボキシ基を有するポリマーが挙げられ、具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸(あるいはその塩)、あるいは(メタ)アクリル酸を主成分とするモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体が挙げられる。該単量体混合物に(メタ)アクリル酸とともに用いられるモノマーとしては、アルキル基としてメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基であるアルキル(メタ)アクリレート系モノマー、さらには、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)、N−アルコキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルコキシ(メタ)アクリルアミド、(アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基等)、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有モノマー、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有モノマー、(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシランなどのシラン含有モノマー、(メタ)アクリロキシプロピルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマーなどが挙げられる。
上記アニオン性ポリマーは、上述したように希土類元素酸化物ゾルを用いて得られた酸化物層の安定性を向上させるために用いる材料である。その効果としては、硬くて脆い酸化物層をアクリル系樹脂成分で保護するという目的、さらには、希土類酸化物ゾルに含まれるリン酸塩由来のイオンコンタミ(特にナトリウムイオン)をトラップする(カチオンキャッチャー)効果が挙げられる。本発明で用いるリチウムイオン電池用途に限らず、たとえば腐蝕性化合物による金属箔の腐食を防止するために設ける保護層(腐食防止処理層)中に、イオンコンタミ、特にナトリウムなどのアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンが含まれると、このイオンコンタミを起点にして保護層が侵されてしまうという問題点がある。つまり後述する希土類元素酸化物ゾル中に含まれるナトリウムイオンなどのイオンコンタミを固定化させ、皮膜の耐性を向上させるという点で、ポリアクリル酸などのアニオン性ポリマーが有効ということが挙げられる。
アニオン性ポリマーの架橋は、架橋剤を用いて行うことができ、このような架橋剤としては、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシ基、オキサゾリン基を有する化合物が挙げられる。
イソシアネート基を有する化合物の例としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートあるいはその水素添加物、ヘキサメチレンジイソシアネート、4−4’ジフェニルメタンジイソシアネートあるいはその水素添加物、イソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネート類、あるいはこれらのイソシアネート類を、トリメチロールプロパンなどの多価アルコールと反応させたアダクト体、水と反応させることで得られたビューレット体、あるいは三量体であるイソシアヌレート体などのポリイソシアネート類、あるいはこれらのポリイソシアネート類をアルコール類、ラクタム類、オキシム類などでブロック化させたブロックポリイソシアネートなどが挙げられる。
グリシジル基を有する化合物の例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類とエピクロルヒドリンを作用させたエポキシ化合物、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類とエピクロルヒドリンを作用させたエポキシ化合物、フタル酸テレフタル酸、シュウ酸、アジピン酸等のジカルボン酸とエピクロルヒドリンとを作用させたエポキシ化合物などが挙げられる。
カルボキシ基を有する化合物としては、各種脂肪族あるいは芳香族ジカルボン酸などが挙げられ、さらにはポリ(メタ)アクリル酸やポリ(メタ)アクリル酸のアルカリ(土類)金属塩を用いることも可能である。
オキサゾリン基を有する化合物は、オキサゾリンユニットを2つ以上有する低分子化合物やあるいはイソプロペニルオキサゾリンのように重合性モノマーを用いる場合には、アクリル系モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなどと共重合させたものを用いることが可能である。
さらにはシランカップリング剤を用いて架橋点をシロキサン結合にさせることも可能である。シランカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシランが挙げられ、特にアニオン性ポリマーとの反応性を考慮すると、エポキシシラン、アミノシラン、イソシアネートシランが好適に使われる。
これらの架橋剤の配合量は、アニオン性ポリマー100質量部に対し1〜50質量部が適切である。1質量部より少ないと架橋構造が不十分であり、50質量部より多い以上であると塗液ポットライフの低下を伴う恐れがある。好ましくは、10〜20質量部である。
アニオン性ポリマーを架橋させる方法としては上述した架橋剤に限らず、チタニウムやジルコニウム化合物を用いたイオン架橋などの架橋構造を形成させても構わない。
カチオン性ポリマーとしては、エチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフトさせた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンあるいはこれらの誘導体、アミノフェノール等が挙げられる。
架橋剤としては、カルボキシル基やグリシジル基といったアミン/イミンと反応が可能な官能基を有するものが好ましい。
またポリエチレンイミンとイオン高分子錯体を形成するカルボン酸を有するポリマーも架橋剤として用いることが可能であり、その例としてポリアクリル酸あるいはそのイオン塩などのポリカルボン酸(塩)、あるいはこれにコモノマーを導入させた共重合体や、カルボキシメチルセルロースあるいはそのイオン塩などのカルボキシル基を有する多糖類が挙げられる。ポリアリルアミンとしては、アリルアミン、アリルアミンアミド硫酸塩、ジアリルアミン、ジメチルアリルアミンなどの単独重合体あるいは共重合体を用いることが可能であり、さらに、これらのアミンはフリーのアミンでも酢酸あるいは塩酸による安定化物でも用いることが可能である。またさらに共重合体成分として、マレイン酸、二酸化イオウなどを用いることも可能である。さらには1級アミンを部分メトキシ化させることで熱架橋性を付与させたタイプも用いることが可能である。アミノフェノールも利用することが可能である。特に好適なのはアリルアミンあるいはその誘導体が挙げられる。
なお、ここではこのカチオン性ポリマーも腐食防止処理層を構成する一構成要素として記載しているが、その理由としては、リチウム電池用外装材で要求される電解液耐性、フッ酸耐性を付与させるべく様々な化合物を用い誠意検討を行った結果、カチオン性ポリマー自体も、電解液耐性、耐フッ酸性を付与することが可能な化合物であることを見出したためである。この要因は、フッ素イオンをカチオン性基でトラップする(アニオンキャッチャー)ことで、金属箔のダメージを抑制している為と推測される。そのような理由から、上述した腐食防止処理層として希土類酸化物ゾルを用いた場合に、その保護層として上述したアニオン性ポリマーを用いる変わりに、カチオン性ポリマーを用いても構わない。
(1)希土類酸化物ゾルのみ、
(2)アニオン性ポリマーのみ、
(3)カチオン性ポリマーのみ、
(4)希土類酸化物ゾル+アニオン性ポリマー(積層複合化)、
(5)希土類酸化物ゾル+カチオン性ポリマー(積層複合化)、
(6)(希土類酸化物ゾル+アニオン性ポリマー:積層複合化)/カチオン性ポリマー(多層化)、
(7)(希土類酸化物ゾル+カチオン性ポリマー:積層複合化)/アニオン性ポリマー(多層化)、
等が挙げられる。ただしこれらに限られるわけではない。たとえば腐食防止処理層選択の事例として、カチオン性ポリマーは、後述する接着層E1の説明で挙げる変性ポリオレフィン樹脂との接着性が良好であるという点でも非常に好ましい材料であることから、接着層E1を変性ポリオレフィン樹脂で構成される場合においては、接着層E1に接する面にカチオン性ポリマーを設ける(例えば構成(5)や(6)などの構成)、といった設計が可能である。
なお、上記内容では単位面積あたりの質量で記載しているが、比重がわかればそこから厚みを換算することも可能である。
接着層E1は腐食防止処理層D1とシーラント層F1とを貼り合せる際に用いる層である。
接着層E1を構成する材質としては、熱接着性樹脂と接着剤と大きく2種に大別される。
熱接着性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂に対し、不飽和カルボン酸またはその酸無水物あるいはそのエステルから導かれる不飽和カルボン酸誘導体成分を有機過酸化物の存在下でグラフト変性してなる変性ポリオレフィン樹脂が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、ホモ、ブロック、あるいはランダムポリプロピレン、プロピレン−αオレフィン共重合体などが挙げられる。
ポリオレフィン樹脂をグラフト変性する際に用いる不飽和カルボン酸またはその酸無水物あるいはそのエステルのうち、不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸などが挙げられる。不飽和カルボン酸の酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物などが挙げられる。不飽和カルボン酸のエステルとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、フマール酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、テトラヒドロ無水フタル酸ジメチル、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸ジメチルなどが挙げられる。
上述した変性ポリオレフィン樹脂としては、ベースとなるポリオレフィン樹脂100質量部に対し、上述した不飽和カルボン酸またはその酸無水物あるいはそのエステル0.2〜100質量部を加え、ラジカル開始剤の存在下で加熱することにより製造することができる。この反応温度条件は、通常50〜250℃、好ましくは60〜200℃である。反応時間は製造方法にも左右されるが、二軸押出機による溶融グラフト反応の場合、押出機の滞留時間内、例えば2分〜30分好ましくは5〜10分程度である。また変性反応は、常圧、加圧いずれの条件下においても実施することができる。
前記変性反応において使用されるラジカル開始剤としては有機過酸化物が挙げられる。代表的なものとしては、アルキルパーオキサイド、アリールパーオキサイド、アシルパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシカーボネート、パーオキシエステル、ハイドロパーオキサイドが挙げられ、これらの有機過酸化物は温度条件と反応時間によって種々選択することが可能である。上述した二軸押出機による溶融グラフト反応の場合は、アルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシエステルが好ましい。特に良く使用されるのはジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシ−ヘキシン−3、ジクミルペルオキシドなどが好ましい。
上述したような変性ポリオレフィン樹脂としては、無水マレイン酸により変性されたポリオレフィン樹脂が代表的であり、三井化学製アドマー、三菱化学製モディック、日本ポリエチレン製アドテックスなどが挙げられる。
上述した変性ポリオレフィン樹脂に、さらに、熱可塑性エラストマーを配合してもよい。上記変性ポリオレフィン樹脂は、グラフト化させた不飽和カルボン酸またはその酸無水物あるいはそのエステルから導かれる不飽和カルボン酸誘導体成分と、各種金属あるいは各種官能基を含有するポリマーと反応性を利用して接着性を付与させるものである。このような反応による接着とは異なり、各種熱可塑性エラストマーを配合することで、このグラフト変性ポリオレフィン樹脂をラミネートする際に発生する残留応力を開放し、粘弾性的な接着性の改善を付与することが可能である。このような熱可塑性エラストマーとしては、三井化学製タフマー、三菱化学製ゼラス、モンテル製キャタロイ、三井化学製ノティオや、スチレン系エラストマー、特に水添スチレン系エラストマー(AKエラストマー製タフテック、クラレ製セプトン/ハイブラー、JSR製ダイナロン、住友化学製エスポレックスなど、クレイトンポリマー製クレイトンGなど)が好ましい。また、その他各種添加剤、例えば、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤など各種添加剤を配合しても構わない。
たとえば、ポリエステルポリオール系接着剤組成物の架橋密度を向上させる手法として、多塩基酸としてダイマー脂肪酸あるいはそのエステルあるいはその水素添加物、あるいはダイマー脂肪酸あるいはそのエステルあるいはその水素添加物の還元グリコールを用いることが挙げられる。ダイマー脂肪酸とは、各種不飽和脂肪酸を2量体化させたものであり、その構造としては非環型、単環型、多環型、芳香環型が挙げられるが、本接着剤で用いるポリエステルポリオールの原料である多塩基酸としては特に制限を受けることはない。ダイマー脂肪酸の出発物質である不飽和脂肪酸としては特に制限受けることはなく、モノ不飽和脂肪酸、ジ不飽和脂肪酸、トリ不飽和脂肪酸、テトラ不飽和脂肪酸、ペンタ不飽和脂肪酸、ヘキサ不飽和脂肪酸等が適宜使用できる。モノ不飽和脂肪酸としては、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸などが挙げられる。ジ不飽和脂肪酸としてはリノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸などが挙げられる。トリ不飽和脂肪酸としては、リノレン酸、ビノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ−γ−リノレン酸、エイコサトリエン酸などが挙げられる。テトラ不飽和脂肪酸としてはステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、アドレン酸などが挙げられる。ペンタ不飽和脂肪酸としては、ボセオペンタエン酸、エイコサベンタエン酸、オズボンド酸、イワシ酸、テトラコサベンタエン酸などが挙げられる。ヘキサ不飽和脂肪酸としてはドコサヘキサエン酸、ニシン酸などが挙げられる。不飽和脂肪酸を二量体するときの不飽和脂肪酸の組み合わせは、どのような組み合わせでもかまわない。このダイマー脂肪酸のバルキーな疎水性ユニットが接着剤としての架橋密度を向上させる。
このような上記ダイマー脂肪酸を必須成分として、通常のポリエステルポリオールで用いられるような二塩基酸も導入してもかまわない。該二塩基酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸などの脂肪族系、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族系から選択することが可能である。
接着剤組成である主剤と硬化剤の比率としては、主剤100質量部に対し硬化剤1〜100質量部が好ましい。1質量部より少ないと、密着性や電解液耐性という点で性能が発現しないおそれがある。100質量部より多いと過剰なイソシアネート基が存在することになり、未反応物の残留による接着剤膜質への影響や、硬さに影響を与えるおそれがある。より好ましくは、5〜50質量部の範囲である。
また、上述した接着促進のためのカルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、リン化合物、シランカップリング剤などを配合することも可能である。
ヒートシール層F1は、接着層E1を介して、アルミニウム箔層C1と貼り合わされる層であり、リチウムイオン電池外装材のヒートシールによる封止性が求められる。
ヒートシール層F1を構成する材質としては、一般的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、ホモ、ブロック、あるいはランダムポリプロピレン、プロピレン−αオレフィン共重合体などのポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体あるいはそのエステル化物あるいはイオン架橋物などが挙げられる。
ヒートシール層F1は上述した樹脂のいずれか1種あるいは2種以上のブレンドからなる材料の単層から構成されても良く、さらにはシーラントに求められる他の要求性能に応じて多層構造を形成しても構わない。この多層構造の例には、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分あるいは完全ケン化物やポリ酢酸ビニル共重合体の部分あるいは完全ケン化物といったガスバリア性を有する樹脂を介在させるということも含まれる。
図2に示す構成の成形部材用多層フィルムは、たとえば以下の工程(1)〜(3)を有する製造方法により製造できるが、これに限定されない。
工程(1):アルミニウム箔に対して腐食防止処理を行い、アルミニウム箔層C1と腐食防止処理層D1とが積層された第一の積層体を得る工程。
工程(2):前記第一の積層体のアルミニウム箔層C1側と基材とを、接着剤を使用して貼り合わせて、基材層A1と接着層B1とアルミニウム箔層C1と腐食防止処理層D1とが積層された第二の積層体を得る工程。
工程(3):前記第二の積層体の腐食防止処理層D1側に、熱接着性樹脂または接着剤を使用してヒートシール層F1を積層する工程。
アルミニウム箔に対する腐食防止処理としては、上述した脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理、あるいは腐食防止性能を有するコーティング剤を塗工するコーティングタイプの腐食防止処理などが挙げられる。
脱脂処理については焼鈍法やスプレー法あるいは浸漬法にて、熱水変成処理や陽極酸化処理については浸漬法にて、化成処理については化成処理のタイプに応じ浸漬法、スプレー法、コート法など選択可能である。
腐食防止性能を有するコーティング剤のコート法についてはグラビアコート、リバースコート、ロールコート、バーコートなど各種方法を用いることが可能である。
なお、腐食防止処理層D1は、図1に示すようにアルミニウム箔層C1の片面のみに設けても、両面に設けてもよいが、少なくともアルミニウム箔層C1の接着層E1側(内層側)に設ける必要がある。
腐食防止処理層D1は、上述したとおり、単位面積あたりの質量が0.005〜0.200g/m2の範囲内となるように設けることが好ましい。
乾燥キュアが必要な場合は、用いる腐食防止処理層の乾燥条件に応じて、母材温度として60℃〜300℃の範囲で行うことができる。腐食防止処理層D1の厚みはドライで0.1〜0.2μmであることが好ましい。これらの層は乾燥ユニットにおいて150〜200℃で焼き付け処理を施して、アルミニウム箔層C1と腐食防止処理層D1とが積層された第一の積層体を製造する。
工程(2)では、工程(1)で得た第一の積層体のアルミニウム箔層C1側と基材とを、接着剤を使用して貼り合わせて、基材層A1と接着層B1とアルミニウム箔層C1と腐食防止処理層D1とが積層された第二の積層体を得る。
接着剤としては、上述した接着層B1で説明したような、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオールなどのポリオールからなる主剤と、2官能以上のイソシアネート化合物とを組み合わせたポリウレタン系の接着剤が好ましい。
貼り合わせの方法としては、ドライラミネートの手法を用いることが好ましい。
工程(3)では、工程(2)で得た第二の積層体の腐食防止処理層D1側に、熱接着性樹脂または接着剤を使用してヒートシール層F1を積層して、基材層A1と接着層B1とアルミニウム箔層C1と腐食防止処理層D1と接着層E1とヒートシール層F1が積層された積層体(成形部材用多層フィルム)を得る。
熱接着性樹脂、接着剤としては、それぞれ上述した接着層E1で説明したものが挙げられる。
貼り合わせの方法としては、ドライラミネートまたは押出しラミネートの手法を用いることが好ましい。ドライラミネートの手法を用いる場合は、熱接着性樹脂または接着剤にて第二の積層体およびヒートシール層の両者を貼り合わせて成形部材用多層フィルムを製造する。押出しラミネートの手法を用いる場合は、第二の積層体の腐食防止処理層D1上に熱接着性樹脂層を押出しラミネートし、さらにヒートシール層を積層して成形部材用多層フィルムを製造する。
スリップ材および/またはアンチブロッキング材を塗布することにより、静摩擦係数を低下させることができ、成形性能が向上する。
スリップ剤および/またはアンチブロッキング剤は溶媒に溶解・分散して塗布することが好ましい。塗布は、公知のコーティング手法により実施できる。
<基材層A2>
基材層A2としては、延伸ポリアミドフィルムを含まない単層または複層構成からなる単層または複層構成の樹脂層が用いられる。
前述のようにリチウムイオン電池外装材の成形性能には基材層の材質が強く関係しており、成形性能に注目した場合最も好ましい基材層は延伸ポリアミドフィルムを含むものである。しかしながら延伸ポリアミドフィルムはリチウムイオン電池の電解液から生じるフッ酸に対する耐性が低く、更に耐酸性付与層を設けるのが一般的である。このような問題点を持ちつつも、成形性能の維持・向上のためには延伸ポリアミドフィルムを含む単層または複層構成のものが最適とされる。従来はこのような基材層を用いた多層フィルムを成形部材、封止部材の両方に用いていたが、本発明においては、成形部材用と封止部材用とを区別しており、封止部材用の多層フィルムについては成形性能を度外視できる為、基材層の材質の選択の幅が広がる。
基材層A2としては、延伸ポリアミドフィルムを含まず、かつリチウムイオン電池外装側の耐酸性を向上させるような樹脂層を用いるのが好ましい。また、該樹脂層は、ヒートシール時に発生する熱に対する耐熱性を向上させるものでもあることがより好ましい。そのような樹脂層としては、例えば、延伸ポリエステルフィルム、塩化ビニリデンフィルム、ポリカーボネイトフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、フェノール樹脂フィルム、メラニン樹脂フィルム、エポキシ樹脂フィルム、不飽和ポリエステル樹脂フィルムなどが挙げられる。これらの中でも、延伸ポリエステルフィルムが好ましい。
前述の様に、成形部位用多層フィルムに用いられる基材層は延伸ポリアミドフィルム、若しくは延伸ポリアミドフィルムに耐酸性付与層を付加したフィルムが好ましく用いられる。成形性能は延伸ポリアミドフィルムの厚さと正相関が強く、高成形性を得るためには、延伸ポリアミドフィルムの厚膜化、ひいてはリチウム電池の厚手化を引き起こす。延伸ポリアミドフィルムに耐酸性付与層を付加したフィルムに関しても同様に、高成形性能と耐酸性とを両立させるには、厚手の延伸ポリアミドファイルへの耐酸性付与層の追加が必要であり、基材層の厚膜化、ひいてはリチウムイオン電池の厚手化を引き起こす。従来は成形部材、封止部材の両方に同じ多層フィルムを用いているため、成型性能および耐酸性を確保するためにはリチウムイオン電池の厚手化が避けられなかったが、本発明においては、成形部材用と封止部材用とを区別しており、封止部材用の多層フィルムについては成形性能を度外視できる為、基材層の薄膜化、ひいてはリチウム電池の薄型化が可能となる。
基材層A2の最外層面(接着層B2側とは反対側の表面)には各種添加剤、例えば、耐酸性付与剤、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤などが塗布されていてもよい。耐酸性付与剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤としては、それぞれ前記基材層A1の説明で挙げたものと同様のものが挙げられる。
接着層B2は、基材層A2と金属箔層C2との密着性を高める層である。
接着層B2を構成する材質としては、前記接着層B1で挙げたものと同様のものが挙げられる。
アルミニウム箔は、軽量で展延性に富み、成形およびラミネートなどの加工性に優れると共に、水蒸気その他のバリア性にも優れ、更に、汎用性金属箔として比較的安価で経済性にも優れている。その為、成形部材用の多層フィルムにおいては金属箔層としてアルミニウム箔層C1を用いる他ないが、封止部材用多層フィルムにおいては冷間成形を行わないため加工性は要求されず、金属箔層の金属選択の幅が広がり、例えばアルミニウム、ステンレス箔、鉄箔、銅箔、ニッケル箔、軟質、硬質アルミニウム箔等などを用いることができる。封止部材用多層フィルムの金属箔層C2に要求される特性としては、耐ピンホール性、バリア性、耐酸性であり、これらの特性に優れる点ではアルミニウム箔、ステンレス箔などを用いることが好ましいが、この限りではない。
金属箔は脱脂処理が施されたものが好ましい。該脱脂処理としては、前記アルミニウム箔層C1の説明で挙げたものと同様のものが挙げられる。
脱脂処理が施されるのは、金属箔の片側面であっても両側面であってもよい。
金属箔層C2の厚みは、耐ピンホール性・バリア性・加工性を確保しつつリチウム電池の薄型化に貢献する為には、30μm以下が好ましい。このような構成をとるリチウム電池用包装材を使用する事で、ラミネートなどの加工が容易で、水蒸気その他のバリア性に優れると共に、経済性にも優れたリチウム電池外装材を生産性よく製造することができる。
腐食防止処理層D2は、基本的には、電解液あるいはフッ酸による金属箔層C2の腐食を防止するために設けられる層である。
腐食防止処理層D2に用いられる腐食防止処理としては、前記腐食防止処理層D1の説明で挙げたものと同様のものが挙げられる。
腐食防止処理層D2は、腐食防止処理層D1と同様に、単位面積あたりの質量が0.005〜0.200g/m2の範囲内となるように設けることが好ましく、0.010〜0.100g/m2の範囲内となるように設けることがより好ましい。
接着層E2は腐食防止処理層D2とシーラント層F1とを貼り合せる際に用いる層である。
接着層E2を構成する材質としては、前記接着層E1の説明で挙げたものと同様のものが挙げられる。
ヒートシール層F2は、接着層E2を介して、金属箔層C2と貼り合わされる層であり、リチウムイオン電池外装材のヒートシールによる封止性が求められる。
ヒートシール層F1を構成する材質としては、前記ヒートシール層F1の説明で挙げたものと同様のものが挙げられる。
図3に示す構成の封止部材用多層フィルムは、たとえば以下の工程(1’)〜(3’)を有する製造方法により製造できるが、これに限定されない。
工程(1’):金属箔に対して腐食防止処理を行い、金属箔層C2と腐食防止処理層D2とが積層された第一の積層体を得る工程。
工程(2’):前記第一の積層体の金属箔層C2側と基材とを、接着剤を使用して貼り合わせて、基材層A2と接着層B2と金属箔層C2と腐食防止処理層D2とが積層された第二の積層体を得る工程。
工程(3’):前記第二の積層体の腐食防止処理層D2側に、熱接着性樹脂または接着剤を使用してヒートシール層F2を積層する工程。
工程(1’)〜(3’)はそれぞれ、前記成形部材の製造方法の説明で挙げた工程(1)〜(3)と同様の手順で実施できる。
工程(3’)の後、必要に応じて、得られた積層体の最外層および/または最内層にスリップ材および/またはアンチブロッキング材を塗布する工程を行ってもよい。
本発明のリチウムイオン電池は、本発明のリチウムイオン電池外装材を備えるものである。
本発明のリチウムイオン電池の構成は、外装材として本発明のリチウムイオン電池外装材を用いる以外は公知の構成を採用できる。また、本発明のリチウムイオン電池の製造方法は、外装材として本発明のリチウムイオン電池外装材を用いる以外は公知の製造方法を採用できる。
一例を挙げると、まず、成形部材用多層フィルムに冷間成形を行って略方形の凹部を形成し、成形部材を作成する。このとき凹部の内側表面がヒートシール層F1となるようにする。次に、該成形部材の凹部内に電池セル(正極、セパレータ、負極)を収納した後、該凹部開口側に、封止部材用多層フィルムからなる封止部材を、ヒートシール層F1とヒートシール層F2向かい合うように重ね合わせ、3辺をヒートシールする。その後、真空環境下で残った1辺から電解液を注入し、残り1辺を最後にヒートシールし内部を密封することで、リチウムイオン電池とすることができる。
ここで、以下の各例でリチウムイオン電池外装材の製造に用いた材料のうち、基材層A1、A2、アルミニウム箔層C1、金属箔層C2の材料を示す。
G−1:延伸ナイロンフィルム(厚み25μm)。
G−2:延伸ナイロンフィルム(厚み15μm)。
G−3:延伸ポリテトラフルオロエチレンフィルム(厚み25μm)。
G−4:延伸ポリテトラフルオロエチレンフィルム(厚み12μm)。
G−5:延伸ナイロンフィルム(厚み25μm)/延伸ポリテトラフルオロエチレンフィルム(厚み12μm)の2層フィルム。
G−6:延伸ナイロンフィルム(厚み15μm)/延伸ポリテトラフルオロエチレンフィルム(厚み12μm)の2層フィルム。
H−1:アルミニウム箔(厚み40μm)。
H−2:アルミニウム箔(厚み20μm)。
I−1:アルミニウム箔(厚み40μm)。
I−2:アルミニウム箔(厚み20μm)。
I−3:ステンレス箔(厚み20μm)。
I−4:銅箔(厚み20μm)。
下記の手順で、成形部材と封止部材を作成し、それらを組み合わせてリチウムイオン電池外装材とした。また、以下の評価を行った。
[成形部材用多層フィルムの作製]
アルミニウム箔層C1(H−1)に対して、酸化セリウム系希土類酸化物ゾルとポリアクリル酸系アニオン性ポリマーからなる腐食防止処理をコーティング手法により行い、さらにオーバーコートとしてポリアリルアミン系のカチオン性ポリマーを同様にコーティング手法により形成して腐食防止処理層D1を設けた。この腐食防止処理層D1を設けたアルミニウム箔層C1に対し、外層側として基材層A1(G−1)を、接着剤B1を用いてドライラミネート手法により積層させた。接着剤B1としては、ポリエステルウレタン系ドライラミネート用接着剤を用いた。その後、内層側(少なくとも腐食防止処理層D1が形成されている側)に、接着層E1(酸変性ポリオレフィン樹脂からなる層)とヒートシール層F1(ポリプロピレン樹脂からなる最内層)を押出ラミネート手法により形成させ、さらに後工程で熱処理工程を施した。さらに、得られた積層体の最外層及び最内層にスリップ材を塗布することで成型部材のもとになる成型部材用多層フィルムを作成した。
[冷間成形による成形部材の作製]
得られた成形部材用多層フィルムを、50×70mmサイズ、絞り深さ3〜10mmまで調整可能な冷間成形用装置を用いて、絞り深さ5mmで凹部を成形し、成形部材とした。
[封止部材用多層フィルムの作製]
H−1の代わりにI−2を用い、G−1の代わりにG−4を用いた以外は成型部材用多層フィルムの作製と同様のプロセスを経て、封止部材用多層フィルムを製造し、得られた封止部材用多層フィルムはそのまま封止部材として用いた。
上記の成形部材用多層フィルムの成形性能を、50×70mmサイズ、絞り深さ3〜10mmまで調整可能な冷間成形用装置を用いて評価した。結果を表1に示す。
◎:6mm以上の成形性能。
○:5〜6mmの成形性能。
×:5mm以下の成形性能。
上記のうち、○または◎の評価をリチウムイオン電池外装材として十分な成形性能を有すると判定した。なお、成形性能は、クラックなどの不具合なく成型できた絞り深さによって評価し、たとえば6mm以上の成形性能は、6mm以上、不具合なく成型できたことを示す。
上記リチウムイオン電池外装材の最表層(成形部材の基材層A1側および封止部材の基材層A2側)に、電解液(ジエチルカーボネート+ジメチルカーボネート+エチルカーボネート+フッ素含有リチウム塩)3ccを付着させ、更に水道水3ccを滴下させ、一昼夜放置後のフィルムの白化(溶解)状態を目視で観察した。結果を表1に示す。
○:侵食なし(表面状態変化なし)。
△:侵食箇所あり。
×:全面侵食あり。
上記のうち、○の評価をリチウムイオン電池外装材として十分な耐酸性(電解液耐性)を有すると判定し、△をある程度の耐酸性(電解液耐性)を有すると判定した。
上記リチウムイオン電池外装材の総厚み(成形部材と封止部材とを重ね合わせた状態での厚み)を測定した。結果を表1に示す。
◎:現行品よりも薄型。
○:現行品中で薄型。
△:現行品の通常厚み。
×:現行品の通常厚みを越える厚み。
上記のうち、○または◎の評価をリチウムイオン電池外装材として十分な薄型であると判定した。なお、現行品の厚みとは、比較例2の厚み(G−2とH−1あるいはI−1を用いた厚み)であり、G−1〜G−6、H−1〜H−2、I−1〜I−4の組み合わせで、現行品の厚みより厚くなるか薄くなるかの判断を行った。
上記リチウムイオン電池外装材の成形部材の凹部内に電池セル(正極、セパレータ、負極)を収納した後、該凹部開口側に、封止部材用多層フィルムからなる封止部材を、ヒートシール層F1とヒートシール層F2向かい合うように重ね合わせ、3辺をヒートシールした。その後、真空環境下で残った1辺から電解液(ジエチルカーボネート+ジメチルカーボネート+エチルカーボネート+フッ素含有リチウム塩)を注入し、残り1辺を最後にヒートシールし内部を密封してリチウムイオン電池を作成した。
該リチウムイオン電池について、電池使用時の外装表面温度を測定した。
◎:現行品を越える放熱性。
○:現行品中で放熱性に優れる。
△:現行品の通常の放熱性。
×:現行品に及ばない放熱性。
上記のうち、○または◎の評価をリチウムイオン電池外装材として十分な放熱性を有すると判定した。なお、ここでの現行品は、比較例2に相当する。
基材層A1、A2、アルミニウム箔層C1、金属箔層C2の組み合わせを表1に示す組み合わせとした以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン電池外装材を得た。
各例について、実施例1と同様に、成形性能、耐酸性、厚み、放熱性の評価を行った。結果を表1に示す。
2:封止部材
10:リチウムイオン電池外装材
A1:基材層
B1:接着層
C1:アルミニウム箔層
D1:腐食防止処理層
E1:接着層
F1:ヒートシール層
A2:基材層
B2:接着層
C2:金属箔層
D2:腐食防止処理層
E2:接着層
F2:ヒートシール層
Claims (4)
- 少なくとも冷間成形により形成された凹部を有する成形部材と、前記凹部の開口を封止する封止部材とから構成されるリチウムイオン電池外装材であって、
前記成形部材が、基材層A1、接着層B1、アルミニウム箔層C1、腐食防止処理層D1、接着層E1、ヒートシール層F1が順次積層したラミネート構成である成形部材用多層フィルムからなり、
前記封止部材が、基材層A2、接着層B2、金属箔層C2、腐食防止処理層D2、接着層E2、ヒートシール層F2が順次積層したラミネート構成である封止部材用多層フィルムからなり、かつ
少なくとも、前記基材層A1が、延伸ポリアミドフィルムを含む単層または複層構成からなり、前記基材層A2が、延伸ポリアミドフィルムを含まない単層または複層構成からなることを特徴とするリチウムイオン電池外装材。 - 前記金属箔層C2の厚みが30μm以下である、請求項1に記載のリチウムイオン電池外装材。
- 前記基材層A2の厚みが25μm以下である、請求項1または2に記載のリチウムイオン電池外装材。
- 請求項1に記載のリチウムイオン電池外装材を備えるリチウムイオン電池。
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