本発明は、ビット間隔毎に複数のデジタル・サンプルを生成する、オーバサンプリングされたADCを提供する。この方式では、CTF回路は、アンチ・エイリアスおよび雑音帯域制限のフィルタリング、ならびに/または等化処理の少なくとも一部をデジタル領域に移すことによって簡略化することができる。オーバサンプリングされたADCによって、フィルタリングおよび/または等化の一部をアナログ領域で実行すること、ならびにフィルタリングおよび/または等化の一部をデジタル領域で実行することが可能になる。例えば、帯域外雑音を削減する帯域制限フィルタリング、および符号間干渉を補償するパルス整形フィルタリングは、今やデジタル領域の中で実行することができる。
図1は、さまざまなフィードバック・ループを含む、例示的な従来のデータ検出システム100を示す。データ検出システム100は、ACカップリング115経由でアナログ入力信号110を受信するアナログ・フロントエンド(AFE)を含む。例えば、入力信号110が磁気記憶媒体から検出された磁気信号である場合、ACカップリング115は、検出した磁場を対応するアナログ電気信号に変換する能力がある電気回路を含むことができる。
ACカップリング115の出力は可変利得増幅器120を使用して増幅される。可変利得増幅器120によって適用された利得は、利得計算回路130によって供給される利得フィードバック値122によって調節される。利得計算回路130は、入力エラー信号に基づいて可変利得出力を供給する能力がある、当技術分野で知られている任意の回路であり得る。
増幅された入力124は、加算要素140を使用してオフセット値142と加算される。オフセット値142はオフセット回路195によって供給される。合計144は、上述したように受信したアナログ信号から望ましくない雑音をフィルタリングするように働く、連続時間フィルタ(CTF)125に供給される。連続時間フィルタ125は、アナログ入力信号110を代表するデータ入力105を供給する。連続時間フィルタ125は、受信したアナログ信号から雑音を削減または削除する能力がある、当技術分野で知られている任意のフィルタであり得る。例えば、連続時間フィルタ125は、信号から高周波雑音を削減または削除する能力があるローパス・フィルタであり得る。当業者には明白であるように、さまざまなフィルタおよびフィルタ・アーキテクチャを、本発明のさまざまな実施形態に従って使用することができる。
データ入力105はアナログ・デジタル変換器(ADC)150に供給され、ADC150は連続アナログ信号を一連の対応するデジタル・サンプル152に変換する。デジタル・サンプル152は、デジタル位相ロック・ループ回路160により受信データに基づいて生成されたクロック信号154に従って取得される。デジタル・サンプル152はデジタル・フィルタ170に供給され、フィルタリングされた出力172はデータ検出器180に供給される。当技術分野で知られているように、デジタル・フィルタ170は、例えばデジタル有限インパルス応答フィルタとして実装することができる。データ検出器180は理想出力182を供給し、理想出力182は加算要素190を使用して対応するデジタル・サンプル152から減算される。データ検出器180は、ビタビ・アルゴリズム・データ検出器などの任意の既知のデータ検出回路であり得る。
結果として生じた加算要素190の出力は、デジタル位相ロック・ループ回路160、オフセット回路195および利得計算回路130を駆動するために使用されるエラー信号184である。
例示的なデータ検出システム100は3つの適応できるフィードバック・ループを利用する。第1のループはデジタル位相ロック・ループ回路160を含み、アナログ・デジタル変換器150によって使用されるサンプリング周期をサンプル・データ入力105に適応できるように調整する(すなわち、クロック信号154の位相および/または周波数を調整する)働きをする。第2のループは、受信したアナログ入力からの任意の直流オフセットを適応できるように調整するために使用されるオフセット回路195を含む。第3のループは、受信したアナログ入力信号を前処理する際に利用される利得を適応できるように調整するために使用される利得計算回路130を含む。
また、例示的な従来のデータ検出システム100は、例えばCTF125より前に磁気抵抗非対称(MRA)補正フィルタ(図1には示されず)を含むことができる。一般に、磁気記録用に使用される磁気抵抗(MR)ヘッドは非線形伝達関数を表す。理想的には、ヘッドからの出力電流(s)は、読み込まれた磁束(x)に対して線形性を有する。しかしながら、ほとんどのヘッドは二次非線形性を表し、結果として出力電流は、s=kx+αx2として表現される。ここで、kは倍率であり、αはヘッドにおける非線形性のレベルを制御する。この現象はヘッドにおけるMR非線形(MRA)と呼ばれる。従来のリード・チャネルでは、アナログ部分はMRA補正(MRAC)ブロックをもつことができ、図5Aとともに下記でさらに説明するように、これはヘッド出力を線形化するのに必要な逆伝達関数を近似する。
前述したように、本発明は、信号処理負担の一部をアナログ領域(図1のADC150より前)からデジタル領域に移すことができることを認める。本発明の一態様によれば、オーバサンプリングされたADCは、ビット間隔毎に複数のデジタル・サンプルを生成する。その他の利点としては、オーバサンプリングされたデジタル・サンプルによって、等化処理の少なくとも一部をデジタル領域に移すことによりCTF回路設計を簡略化することが可能になる。
図2Aは、本発明のさまざまな態様を組み入れた、例示的なデータ検出システム200を示す。データ検出システム200は、図1の従来のデータ検出システム100と同様の方式で、ACカップリング215経由でアナログ入力信号210を受信する、アナログ・フロントエンド(AFE)を含む。加えて、ACカップリング215の出力は、図1と同様の方式で、フィードバック260によって供給された利得フィードバック値222によって調節された、可変利得増幅器220を使用して増幅される。可変利得増幅器220の出力は、図2Bおよび図2Cとともに下記でさらに説明する。増幅された入力224は、加算要素240を使用してオフセット値242と加算される。オフセット値242は、図1と同様の方式で、フィードバック・ループ260によって供給される。
図2Aに示したように、合計244はオプションのMRA補正フィルタ265に供給され、図5Aとともに下記でさらに説明するように、MRA補正フィルタ265は読取ヘッドの出力を線形化するのに必要な逆伝達関数を近似する。MRA補正フィルタ265の出力はオプションのCTF225に適用され、CTF225は、上述したように受信したアナログ信号から望ましくない雑音をフィルタリングするように働くことができる。本発明の一態様によれば、CTF225は、等化処理の少なくとも一部をデジタル領域に移すことによって簡略化される。例えば、一実施形態では、CTF225は、電子雑音のアンチ・エイリアス・フィルタリングおよび部分帯域制限フィルタリングを実行する。本発明は、図2Fとともに下記でさらに説明するように、電子雑音の別の帯域制限フィルタリング、ならびにISIを削減する信号整形フィルタリングをデジタル領域の中でより適切に実行できることを認める。CTF225用の適切な伝達関数H(s)は、下記「デジタルLPF用の係数決定」と題するセクションで提供され、そこでは分子段が零点を示し、分母が極を示す。
CTF225は、アナログ入力信号210を代表するデータ入力205を供給する。CTF225は、受信したアナログ信号から雑音を削減または削除する能力がある、当技術分野で知られている任意のフィルタであり得る。当業者には明白であるように、さまざまなフィルタおよびフィルタ・アーキテクチャを、本発明のさまざまな実施形態に従って使用することができる。
データ入力205はオーバサンプリングされたADC250に供給され、ADC250は連続アナログ信号205をビット間隔毎に複数(N)の対応するデジタル・サンプル252に変換する。例えば、オーバサンプリングは、ビット間隔毎にN=2またはN=4のデジタル・サンプル252を生成することができる。本発明は、本明細書においてN=4の例示的なオーバサンプリング・レートを使用して説明したが、当業者には明白であるように、任意のオーバサンプリング・レートを使用することができる。一般に、オーバサンプリング・レートは、1より大きい任意の整数または分数の倍数であり得る。
デジタル・サンプル252は、図1とともに上記で説明したように、例えばループ260内のデジタル位相ロック・ループ回路により受信したデータに基づいて生成されたクロック信号254に従って取得される。
次いで、オーバサンプリングされたデジタル・サンプル252は、図3Aから3Cとともに下記でさらに説明する、デジタル・ローパス・フィルタ(DLPF)275によってフィルタリングされる。一般に、DLPF275は、本発明に従って、電子雑音の別の帯域制限フィルタリング、ならびにISIを削減する信号整形フィルタリングを実行する。
図2Aの例示的な実施形態では、DLPF275によって生成された、フィルタリングされた出力276は、次いでダウンサンプリング回路278によってボーレートまでダウンサンプリングされる。図3Cとともに下記でさらに説明するように、DLPF275およびダウンサンプリング回路278は、単一の回路として適宜実装することができる。ダウンサンプリング回路278によって生成された、ダウンサンプリングされた出力279は、ビット間隔毎に単一のデジタル・サンプルを含む。図1と同様の方式で、ダウンサンプリングされた出力279はデジタルFIRフィルタ270(DFIR)に供給され、フィルタリングされた出力はデータ検出器280に供給される。ビタビ・アルゴリズム・データ検出器のようなデータ検出器280は理想出力282を供給し、理想出力282はフィードバック・ループ260によって処理される。データ検出器280は任意の既知のデータ検出回路であり得る。例示的なデータ検出器680は図8とともに下記でさらに説明する。
フィードバック・ループ260は、例えば、図1と同様の方式で、それぞれ利得フィードバック値222、オフセット値242およびクロック信号254を生成する、図1の利得計算回路130、オフセット回路195およびデジタル位相ロック・ループ回路160を含むことができる。
加えて、フィードバック・ループ260は、図5Aとともに下記でさらに説明するように、既知の方式でMRA補正フィルタ265用のフィードバック値267を生成し、図9Aおよび図9Bとともに下記でさらに説明するように、DFIRフィルタ270用の一組の等化器係数268を生成する。
以下で説明するように、図2Bから2Fは、例示的なデータ検出システム200の中のさまざまなポイントでのさまざまなパワー・スペクトル密度を示す。電子装置およびADCの量子化雑音が例として示されるが、当業者には明白であるように、この説明は、VGA218の入力に存在するその他の雑音要素についてのパワー・スペクトル密度にも当てはまるはずである。
図2Bは、可変利得増幅器220の入力での信号218および雑音287のパワー・スペクトル密度を示す。ここで、fbaudはボーレート周波数であり、fnyqは(ボーレート周波数の半分に等しい)ナイキスト周波数である。一般性をなくさずに、パワー・スペクトル密度は図2Bで理想化されている。通常、雑音287は任意の周波数で存在することができるが、データ伝送信号218は0からナイキスト周波数fnyqまでのナイキスト帯域内にかなりのパワー密度要素を有する。例示目的で、電子雑音287が図2Bに示され、それは通常全周波数にわたり白色で一定である。また、実際の信号218は他の周波数特性を有する雑音源を含む可能性がある。
可変利得増幅器が信号整形または帯域制限のフィルタリングを実行しない場合(すなわち、可変利得増幅器220が高帯域幅を有する場合)、可変利得増幅器220の出力での信号224および雑音287のパワー・スペクトル密度は図2Bと同様に見えるはずである。
図2Cは、図2Aの可変利得増幅器220の出力での信号224および雑音287のパワー・スペクトル密度を、周波数の関数として示す。ここで、可変利得増幅器220は制限された帯域幅を有する。例示的な実施形態では、可変利得増幅器220は、およそボーレート周波数fbaud、およびおよそボーレート周波数でのローパス・コーナ周波数までの周波数をカバーする通過帯域をもつローパス・フィルタ伝達機能を有する。この場合、例示的な可変利得増幅器220は、アナログ信号224をひずみなしでボーレート周波数fbaudまで維持し、ボーレート周波数を超える雑音287を排除するはずである。代替の実施形態では、CTF225が可変利得増幅器220の代わりにローパス・フィルタリング機能を実行するか、またはローパス・フィルタリング機能が可変利得増幅器220とCTF225の間に配置される。
一般に、このローパス・フィルタリングのローパス・コーナ周波数は、ナイキスト周波数と、例示的な実施形態ではボーレート周波数の4倍であるオーバサンプリング周波数の半分との間のどこかに位置するはずである。ローパス・フィルタ・コーナ周波数は、オーバサンプリングADC250の出力での信号のエイリアシングおよび雑音要素を回避するために、オーバサンプリング周波数の半分を超えないはずである。アナログ可変利得増幅器220またはCTF225の実装の複雑さを軽減するために、ボーレート周波数などでのナイキスト周波数を超えるローパス・コーナ周波数を選択することが有利である。この場合、ローパス・コーナ周波数での伝達関数のロールオフは、従来のボーレート・システムにおけるのと同じほど急勾配に設計する必要はない。
図2Dは、量子化雑音のないADC(すなわち、無限精度をもつ理想的なADC)について、図2AのオーバサンプリングされたADC250の出力での信号252および雑音287のパワー・スペクトル密度を、周波数の関数として示す。オーバサンプリングに起因して、信号252の疑似コピー252a、252b、および雑音287の雑音密度287a、287bが、4倍(4x)のボーレート周波数に存在する。例示的な実施形態ではオーバサンプリング比が4であるため、図2Dに示したように、疑似コピー252a、252b、287a、287bは、4fbaudのまわりの両側および中心にある。信号252および雑音287の別の両側疑似コピーは、8xおよび16xなどの4xとは異なる倍数に存在し、説明を容易にするためこれらの疑似コピーは図2Dには示していない。一般に、オーバサンプリング比Nに対して、両側疑似コピーは、Nfbaud、2Nfbaud、および3NfbaudなどのN倍のボーレート周波数の倍数で発生する。有限精度ADCに対して、ADC量子化雑音も存在することに留意されたい。
図2Eは、図2AのDLPF275の出力での信号276、雑音287およびADC量子化雑音289のパワー・スペクトル密度を、周波数の関数として示す。説明を容易にするため図2Eには示していないが、当業者には明白であるように、オーバサンプリングに起因して、信号276の疑似コピー276a、276b、雑音密度287の疑似コピー287a、287b、およびADC量子化雑音289の疑似コピー289a、289bが、4倍(4x)のボーレート周波数に存在する。例示的な実施形態ではオーバサンプリング比が4であるため、図2Eに示したように、疑似コピー276a、276b、287a、287b、289a、289bは、4fbaudのまわりの両側および中心にある。DLPFはおよそナイキスト周波数でローパス・コーナ周波数を実装するので、信号276、雑音287およびADC量子化雑音289のパワー・スペクトル密度は帯域制限されて、ゼロとおよそfnyqの間のゼロでない値になる。また、疑似コピー276a、276b、287a、287bはこの帯域制限を反映する。信号276、雑音287およびADC量子化雑音289の別の両側疑似コピーは、8xおよび16xなどの4xとは異なる倍数のボーレート周波数に存在し、これらの疑似コピーは図2Eには示していない。
図2Fは、図2Aのダウンサンプラ278の出力での信号279、雑音287およびADC量子化雑音289のパワー・スペクトル密度を、周波数の関数として示す。そこでは、ダウンサンプラ278は(雑音要素を含む)信号をボーレートまでダウンサンプリングする。説明を容易にするため図2Fには示していないが、当業者には明白であるように、ボーレートへのダウンサンプリングに起因して、信号279の疑似コピー279a、279b、雑音密度287の疑似コピー288a、288b、およびADC量子化雑音289の疑似コピー290a、290bが、さまざまな倍数のボーレート周波数で存在する。図2Fに示したように、疑似コピー279a、279b、288a、288b、290a、290bは、ボーレート周波数fbaudのまわりの両側および中心にある。図2Dとともに上述したように、ダウンサンプリングより前のDLPFによるローパス・フィルタリングに起因して、信号279、雑音287およびADC量子化雑音289のパワー・スペクトル密度は帯域制限されて、ゼロとおよそfnyqの間のゼロでない値になる。また、疑似コピー279a、279b、288a、288b(および全ての他の疑似コピー)はこの帯域制限を反映し、結果としてダウンサンプリングの後にエイリアシングは発生しない。
上述したように、本発明に従って、例示的なDLPF275は、フィルタリング、電子雑音(および他の雑音要素)の帯域制限フィルタリング、ならびに、ISIを削減する信号整形フィルタリングを実行することができる。
一般に、アンチ・エイリアス・フィルタリングは、ダウンサンプラ278の出力でのエイリアシングを回避するために、雑音およびナイキスト周波数を超える任意の残りの信号要素を削除する。したがって、DLPF275は、およそナイキスト周波数fnyqでローパス・コーナ周波数を有するはずである。
VGA220および/またはCTF225は、アンチ・エイリアス・フィルタリングおよび帯域制限フィルタリングを実行して、オーバサンプリングされたADC250の出力でのエイリアシングを回避し、DLPF275は、アンチ・エイリアス・フィルタリングおよび帯域制限フィルタリングを実行して、ダウンサンプラ278の出力でのアンチ・エイリアシングを回避する。VGA220および/またはCTF225のローパス・コーナ周波数は、ナイキスト周波数とオーバサンプリング周波数の半分との間のどこかであるはずであり、一方DLPF275のローパス・コーナ周波数は、ナイキスト周波数のまわりであるはずである。オーバサンプリングされたシステムにとって、ローパス・コーナ周波数でのVGA220またはCTF225の伝達関数の勾配は、オーバサンプリングなしの従来技術のボーレート・システムに比べて緩くなることができるので、VGA220またはCTF225の設計は困難ではないことを、本発明は認める。一般に、オーバサンプリング比が高いほど、勾配は急である必要がない。
図2A〜2Fに示した例示的な実施形態では、VGA220は雑音およびボーレート周波数を超える望ましくない信号要素を制限し、DLPF275は雑音およびナイキスト周波数を超える望ましくない信号要素を制限する。
任意で、VGA220、CTF225またはDLPF275は別の信号整形フィルタリングを実行して、例えば、一部または全部の符号間干渉を削除するために信号を等化することができる。
VGA220が、ナイキスト周波数とオーバサンプリング周波数の半分との間のどこかであるローパス・コーナ周波数をもつローパス・フィルタ機能を実装する場合、CTF225は省略することができることに留意されたい。
さらなる変形形態では、CTF225はローパス・フィルタリングを実行して、オーバサンプリングADC250のサンプリング周波数の半分を超える雑音を削減することができる。例示的な実装形態では、CTF225は、ローパス・フィルタリングを実装するために伝達関数の中に極だけを実装する。別の変形形態では、CTF225は、例えば一部の高周波ブーストを供給することにより、一部のパルス整形または等化を適宜実行することができる。例示的な実装形態では、CTF225は、また、伝達関数の中に零点を実装して高周波ブーストを供給する。
前述したように、CTF225用の適切な伝達関数H(s)は、「デジタルLPF用の係数決定」と題する以下のセクションの中で下記に提供される。そこでは、分子段が零点を示し、分母が極を示す。
デジタルLPF用の係数決定
上述したように、例示的なデータ検出システム200はDLPF275を含む。例示的な実施形態では、DLPF275は有限インパルス応答(FIR)フィルタとして実装される。また、無限インパルス応答(IIR)フィルタなどの他のよく知られているデジタル・フィルタ構造を使用することができる。図3Aおよび図3Bは、DLPF275のFIR実装のフィルタ係数を決定するための例示的な技法を示す。FIRフィルタの設計および実装形態は、例えば、Keshab K. Parhi、「VLSI Digital Signal Processing Systems:Design and Implementation」(1999年1月4日)、またはJohn G. Proakis and Dimitris K. Manolakis、「Digital Signal Processing」(第4版、2006年4月7日)の中で見つけることができる。
本発明の態様によれば、例示的なDLPF275は、従来のリード・チャネルではかつてアナログ領域の中でCTFによって実行された1つまたは複数のフィルタ機能を、デジタル領域の中で実行することに再び留意されたい。本発明の別の態様によれば、DLPF275は、より少ない自由度を使用してプログラミングされる。十分なフィルタリング能力を提供するために、リード・チャネルの中で従来のCTF225の少なくとも一部を置き換えるデジタル・フィルタは、いくつかのタップをもつ必要があり、また、各タップ係数用に広い範囲の値をサポートする必要がある。したがって、アナログCTFを最適化することに比べて、デジタル・フィルタを徹底的に最適化することはより困難である。これに役立つために、本発明はDLPF275の係数空間をアナログCTF225のデジタル等価物に写像し、所望のフィルタ係数を生成する方法を提供する。
以下で説明するように、デジタルDLPF275は、従来のアナログCTF225と同様の方式で、カットオフおよびブーストの2つだけの自由度を使用して最適化することができる。一般に、カットオフ周波数は、伝達関数の分母セクションの振幅特性が直流での伝達関数の分母セクションの振幅特性より3dB低い周波数である。同様に、ブーストは、カットオフ周波数で測定された分子セクションの振幅特性寄与度である。通常、ブーストは、ナイキスト周波数に近い高周波で入力電力を増幅させる。これによって、入力信号の一部が等化される。
詳細に述べると、DLPF275は、従来のボーレート・システムにおけるCTFの双一次変換されたバージョンになるようにプログラミングされる。このデジタル・フィルタは、一般にIIR(無限インパルス応答)である。有限精度の詳細を説明すると、DLPF275は、それをIIRフィルタの切頭インパルス応答に写像することにより、FIR(有限インパルス応答)形態の中にあるように、さらに修正される。
1つの例示的な実装形態では、DLPF275はユーザ指定のカットオフ値およびブースト値を使用して生成される。ユーザ指定のカットオフ値およびブースト値が与えられると、伝達関数H(s)は、フィルタのアナログ・バージョン用に、以下のように構築される。
ここで、ω
0はフィルタ・カットオフ周波数であり、aは零点位置であり、sはアナログ周波数である。
その後、伝達関数H(s)は、例示的な双一次変換300を使用して周波数領域特性H(z)に変換される。図3Aに示したように、連続時間領域からオーバサンプリングされたデジタル領域への例示的な双一次変換300は、以下のように表現することができる。
1つの例示的な実施形態では、例示的な伝達関数H(s)からの5つの項(2つの一次分子項および3つの二次分母項)は、それぞれ別々に双一次変換300に適用されて、図3Bとともに下記でさらに説明するように、多段式IIRフィルタの所与の段i用の対応する係数の組を生成する。
(α0、α1、β0、β1)
したがって、例示的な変換出力は20個のIIR係数(例示的な5段のIIRフィルタについて段毎に4つの係数)を含む。
さらなる変形形態では、DLPF係数はいくつかのカットオフ/ブーストの組合せについてあらかじめ計算し、参照テーブルに格納することができる。したがって、ユーザ指定のカットオフ値およびブースト値が与えられると、DLPF係数は参照テーブルから取得することができる。この方式では、(テーブルの参照が回路の計算より速いので)係数をより速く取得することができる。
したがって、DLPF275はカットオフ/ブーストの組合せを使用してプログラミングされる。ここで、DLPF係数は、係数計算フィルタまたは参照テーブルを使用して、カットオフおよびブーストのどちらかに基づいて決定される。係数計算フィルタは、例えば図3Aおよび図3Bとともに上述したように、カットオフおよびブーストに基づいてDLPF係数を計算する。あるいは、DLPF係数は、(例えば、前述の係数計算フィルタまたは他の解析手段を使用して)あらかじめ計算し、さまざまなカットオフ/ブーストの組合せ用の参照テーブルに格納することができる。正常動作中、DLPF係数は、次いで、特定のカットオフ/ブーストのペアについて参照テーブルから取り出される。一般に、参照テーブルは、カットオフおよびブーストのペアの値を入力として使用し、DLPF係数を出力として提供する。カットオフ/ブーストの計算フィルタまたは参照テーブルは、ハードウェア、例えばリード・チャネル、またはファームウェアに実装することができる。ハードウェアの実装形態には、より簡単に使用できるという別の利点があり、DLPF係数の計算がより速くできる。一方、ファームウェアの実装形態には柔軟性がある(ファームウェアを再プログラミングすることにより、参照テーブルまたは計算フィルタを容易に変更することができる)。
加えて、双一次変換300または参照テーブルは、ハードウェア、例えばデータ検出システム200、またはファームウェアに実装することができる。ハードウェアの実装形態には、より簡単に使用できるという別の利点があり、DLPF係数の計算がより速くできる。一方、ファームウェアの実装形態には柔軟性がある(例えば、ファームウェアを再プログラミングすることにより、参照テーブルまたは計算フィルタを容易に変更することができる)。
図3Bは、DLPF275用の係数を決定するために使用される、例示的な多段式IIRフィルタ350を示す。図3Bに示したように、例示的な多段式IIRフィルタ350は、360−1から360−5の5段を含む。図3Bに示したように、所与の段360−iはいくつかの加算器(+)、乗算器(×)および遅延要素(D)から構成される。図3Bに示したように、双一次変換300により各段用に生成された係数は、対応する乗算器(×)に適用される。インパルスが5段式IIRフィルタ350の入力に適用され、DLPF275用の係数が5段式IIRフィルタ350の出力で生成される。上述したように、1つの例示的な実装形態では、5段式IIRフィルタ350の出力で生成された係数は、最大24個で切り捨てられる。
したがって、例示的なDLPF275は24個のフィルタ・タップ係数を有する。この方式では、本発明の態様によって、LPFのアナログ実装形態と同様の方式で、24個の係数を2つだけの独立した変数(カットオフおよびブースト(すなわち、零点))から取得することが可能になる。したがって、ユーザは、DLPF275用の所望のカットオフ値およびブースト値を適宜指定することができる。その後、指定されたカットオフ値およびブースト値は、固定点DLPF275を表す24個の係数を計算するために使用される。
図3Cは、図2AのDLPF275およびダウンサンプラ278に対応する、統合型DLPF兼ダウンサンプラ380の例示的な代替の実装形態を示す。一般に、統合型DLPF兼ダウンサンプラ380は、本発明に従って、電子雑音の別の帯域制限フィルタリング、ならびにISIを削減する信号整形フィルタリングも実行しながら、ダウンサンプリングを実行する。
例示的な統合型DLPF兼ダウンサンプラ380は、N=4のオーバサンプリング・レートについて示される。例示的なADC250はビット間隔毎に4個のサンプルを生成することに留意されたい。オーバサンプリングなしのボーレート実装用の各期間1サンプルとは対照的に、オーバサンプリングなしの4分の1レートの実装用には、4個のボーレート・サンプルが各4T期間で処理される(ここでTは1ビットの期間に対応する)。処理速度(スループット)はビット間隔毎に1サンプルのままであるが、ここでサンプルは並行して処理される。N=4のオーバサンプリング・レートをもつ4分の1レートの実装用には、(4分の1レートでの)例示的な統合型DLPF兼ダウンサンプラ380は、4T毎に16個のサンプルを処理し、ダウンサンプリング動作に続くように保持される4個のサンプルを4T毎に生成する。言い換えれば、統合型DLPF兼ダウンサンプラ380は、ダウンサンプラ278によって落とされる別の12個のサンプルは4T毎に生成しない。
図3Cに示したように、例示的な統合型DLPF兼ダウンサンプラ380は、3つの遅延要素390−1から390−3を含み、それぞれが4つのサンプルによりADC250の出力252を遅延させる。加えて、例示的な統合型DLPF兼ダウンサンプラ380は、4個の並行DLPF395−1から395−4を含み、それぞれがADC250の出力252の4個の時間遅延バージョンを処理する。各並行DLPF395は、図3BのIIRフィルタ350によって生成された係数を有するDLPFとして実装することができる。
図4は、デジタルMRA補正フィルタを含む本発明のさまざまな態様を組み入れた、代替の例示的なデータ検出システム400を示す。一般に、図4の実施形態は、オーバサンプリングされたADC出力によって、MRA補正ノードがデジタル領域のDLPF入力まで移動することが可能になることを認める。
データ検出システム400は、図1のデータ検出システム100および図2Aのデータ検出システム200と同様の方式で、ACカップリング415経由でアナログ入力信号410を受信するアナログ・フロントエンドを含む。加えて、ACカップリング415の出力は、図1と同様の方式で、フィードバック・ループ460によって供給された利得フィードバック値422によって調節された、可変利得増幅器420を使用して増幅される。増幅された入力424は、加算要素440を使用してオフセット値442と加算される。オフセット値442は、図1と同様の方式で、フィードバック・ループ460によって供給される。
図4に示したように、アナログ入力信号410を代表する合計444は、オーバサンプリングされたADC450に供給され、ADC450は連続アナログ信号444をビット間隔毎に複数(N)の対応するデジタル・サンプル452に変換する。ここで、Nは1より大きい整数または非整数の値であり得る。例えば、オーバサンプリングは、ビット間隔毎にN=2またはN=4のデジタル・サンプル452を生成することができる。
次いで、オーバサンプリングされたデジタル・サンプル452は、図5Bとともに下記でさらに説明する、デジタルMRA補正フィルタ455によって処理される。一般に、DMRA補正フィルタ455は、オーバサンプリングされたデジタル領域に実装され、読取ヘッドの出力を線形化するのに必要な逆伝達関数を近似する。例示的なDMRA補正フィルタ455は、オーバサンプリングされた信号を処理する。加えて、フィードバック・ループ460は、図5Bとともに下記でさらに説明するように、DMRA補正フィルタ455用のフィードバック値456(β)を生成する。
DMRA補正フィルタ455の出力はDLPF475に適用され、DLPF475は図2Aおよび図3Aから3CのDLPF275と同様の方式で実装することができる。しかしながら、アナログCTFを含まない図4の実施形態では、図2Bから2Fとともに上記で説明したように、DLPF475は、アンチ・エイリアシング・フィルタリング、電子雑音の全帯域制限フィルタリング、ならびにデジタル領域の中のISIを削減する信号整形フィルタリングを実行する。DLPF475は、図3Aおよび図3Bとともに上記で説明した技法を使用して実装することができる。
図4の例示的な実施形態では、DLPF475によって生成された、フィルタリングされた出力476は、次いでダウンサンプリング回路478によりボーレートまでダウンサンプリングされる。図3Cとともに上記で説明したように、DLPF475およびダウンサンプリング回路478は、単一の集積回路として適宜実装することができる。ダウンサンプリング回路478によって生成された、ダウンサンプリングされた出力479は、ビット間隔毎に単一のデジタル・サンプルを含む。図1および図2Aと同様の方式で、ダウンサンプリングされた出力479はデジタルFIRフィルタ470に供給され、デジタルFIRフィルタ470はフィルタリングされた出力をデータ検出器480に供給する。ビタビ・アルゴリズム・データ検出器などのデータ検出器480は理想出力482を供給し、理想出力482はフィードバック・ループ460によって処理される。データ検出器480は任意の既知のデータ検出回路であり得る。例示的なデータ検出器680は、図8とともに下記でさらに説明する。
フィードバック・ループ460は、例えば、図1と同様の方式で、それぞれ利得フィードバック値422、オフセット値442およびクロック信号454を生成する、図1の利得計算回路130、オフセット回路195およびデジタル位相ロック・ループ回路160を含むことができる。加えて、フィードバック・ループ460は、図9Aおよび図9Bとともに下記でさらに説明するように、DFIR470用の一組の等化器係数468を生成する。
図5Aは、例示的なアナログMRA補正ブロック265(図2A)のブロック図である。前述したように、磁気記録システムで使用される磁気抵抗(MR)ヘッドは、通常、非線形伝達関数を表す。理想的には、ヘッドからの出力電流(s)は、読み込まれた磁束(x)に対して線形性を有する。しかしながら、ほとんどのヘッドは二次非線形性を表し、結果として出力電流は以下のように表される。
s=kx+αx2
ここで、kは倍率であり、αはヘッドにおける非線形性のレベルを制御する。この現象はヘッドにおけるMR非対称(MRA)と呼ばれる。従来のリード・チャネルでは、アナログ部分はMRA補正(MRAC)ブロック265(図2A)をもつことができ、これは読取ヘッドの出力を線形化するのに必要な逆伝達関数を近似する。具体的には、以下の方程式が、二次伝達関数を使用して線形化伝達関数を近似するMRACブロックの伝達関数である。
y=k2s−βs2
ここで、k2は倍率であり、係数βは、理想的な線形伝達関数に比べてMRACブロック出力の中の残余誤差を最小化するように選択される。図5Aに示したように、図2AのVGA220の出力は、段520でMRAC265によって二乗され、乗算器530で補正因子を使用して倍率変更された後、加算器540によってVGA220の出力から減算される。これによって、連続時間フィルタ(CTF)225への入力が線形化されることが保証される。説明を容易にするために、図2Aの加算器240によって実行されるDC補正が図5Aから省略されていることに留意されたい。
上述したように、本発明は、MRACブロック265(図2A)が、アナログ・デジタル変換器(ADC)250によって生成されたサンプルを使用して、代わりにデジタル領域に実装できることを認める。これによって、デジタルMRAC(DMRAC)ブロック255がもたらされる。
図5Bは、例示的なデジタルMRA補正ブロック455(図4)のブロック図である。これは、図2Aおよび図5AのアナログMRACブロック265によって使用される二次方程式を使用しても実装することができるが、ADC450によるデジタル化より前のアナログ領域におけるフィルタリングのため、線形出力に比べて、他の(線形または非線形)伝達関数を選択して残余誤差を最小化することが有益である。
図5Bに示したように、ADC450からの出力サンプルは、段560でDMRAC455によって二乗され、乗算器570で補正因子βを使用して倍率変更された後、加算器580によってADC450の出力から減算される。これによって、DLPF475への入力が線形化されることが保証される。
図6は、部分的に間隔を空けたDFIRフィルタ670を含む本発明のさまざまな態様を組み入れた、代替の例示的なデータ検出システム600を示す。一般に、図6の部分的に間隔を空けた等化実施形態によって、図9Aおよび図9Bとともに下記でさらに説明するように、フィルタ係数の適応により性能が改善される。加えて、以下で説明するように、図6の部分的に間隔を空けた等化実施形態は、アナログCTF625を適宜使用して、全フィルタリング要件の一部を実行する。例示的な実施形態では、オーバサンプリング・レートはN=2であるが、Nが1より大きい整数(例えば4)または非整数(例えば1.5)である他のオーバサンプリング比を選択することができる。データ検出システム600は、図1のデータ検出システム100、図2Aのデータ検出システム200、および図4のデータ検出システム400と同様の方式で、ACカップリング615経由でアナログ入力信号610を受信するアナログ・フロントエンドを含む。加えて、ACカップリング615の出力は、図1と同様の方式で、フィードバック・ループ660によって供給された利得フィードバック値622によって調節された、可変利得増幅器620を使用して増幅される。増幅された入力624は、加算要素640を使用してオフセット値642と加算される。オフセット値642は、図1と同様の方式で、フィードバック・ループ660によって供給される。
図6に示したように、合計644は、上述したように受信したアナログ信号から望ましくない雑音をフィルタリングするように働く、オプションのCTF625に適用される。CTF625は、アナログ入力信号610を代表するデータ入力605を供給する。CTF625は、受信したアナログ信号から雑音を削減または削除する能力がある、当技術分野で知られている任意のフィルタであり得る。当業者には明白であるように、本発明のさまざまな実施形態に従って、さまざまなフィルタおよびフィルタ・アーキテクチャを使用することができる。
データ入力605はオーバサンプリングされたADC650に供給される。例示的なオーバサンプリングされたADC650は、連続アナログ信号605をビット間隔毎に複数(N)の対応するデジタル・サンプル652に変換する。例示的なオーバサンプリングADC650は、ビット間隔毎にN=2のデジタル・サンプル652を生成する。デジタル・サンプル652は、例えばループ660内のデジタル位相ロック・ループ回路により、受信データに基づいて生成されたクロック信号654に従って取得される。
次いで、オーバサンプリングされたデジタル・サンプル652は、図および5Bとともに上記で説明した、デジタルMRA補正フィルタ655によって処理される。一般に、DMRA補正フィルタ655は、読取ヘッドの出力を線形化するのに必要な逆伝達関数を近似する。加えて、フィードバック・ループ660は、図5Bとともに上記で説明したように、DMRA補正フィルタ655用のフィードバック値656(β)を生成する。
DMRA補正フィルタ655の出力は、部分的に間隔を空けたDFIR670に適用され、DFIR670は、図7とともに下記で説明するように、または図3Cの統合型DLPF兼ダウンサンプラ380と同様の方式で、実装することができる。一般に、統合型DLPF兼ダウンサンプラ380は、本発明に従って、電子雑音および他の雑音要素の別の帯域制限フィルタリング、ならびにISIを削減する信号整形フィルタリングも実行しながら、ダウンサンプリングを実行する。
したがって、図6の例示的な実施形態では、部分的に間隔を空けたDFIR670によって生成された、フィルタリングされた出力676は、すでにボーレートまでダウンサンプリングされている。部分的に間隔を空けたDFIR670によって生成された、フィルタリングされた出力676は、ビット間隔毎に単一のデジタル・サンプルを含む。フィルタリングされた出力676は、図8とともに下記でさらに説明する、データ検出器680に供給される。ビタビ・アルゴリズム・データ検出器などのデータ検出器680は理想出力682を供給し、理想出力682はフィードバック・ループ660および675によって処理される。データ検出器680は、任意の既知のデータ検出回路であり得る。
フィードバック・ループ660は、図1と同様の方式で、例えば、それぞれ利得フィードバック値622、オフセット値642およびクロック信号654を生成する、図1の利得計算回路130、オフセット回路195およびデジタル位相ロック・ループ回路160を含むことができる。フィードバック・ループ675は、図9Aおよび図9Bとともに下記でさらに説明するように、部分的に間隔を空けたDFIR670用の一組の等化器係数678を生成する。
部分的に間隔を空けたDFIR670がまたオーバサンプリングされ、それによって、(係数が適用されたからだけでなく、誤り率性能をより強固にする助けをすることができ、オーバサンプリングADCのサンプリング・エラーから独立した、オーバサンプリングにも起因して、)潜在的に誤り率性能を改善することに留意されたい。
図7は、本発明の特徴を組み入れた、例示的な部分的に間隔を空けたFIR等化器670のブロック図である。図7に示したように、例示的な部分的に間隔を空けたFIR等化器670は、ADC650、またはオーバサンプリングされた領域の中の図6のオプションのDMRA補正フィルタ655からの入力710を処理する。例示的な部分的に間隔を空けたFIR等化器720は、等化器係数730(固定または可変)に基づいて、オーバサンプリングされた領域の中のFIR出力740を中間出力として生成し、最後に、ダウンサンプラ750を使用して、ボーレート領域の中のFIR出力サンプル760を生成する。上述したように、例示的な部分的に間隔を空けたFIR等化器670は、一方、図3Cの統合型DLPF兼ダウンサンプラ380と同様の方式で、部分的に間隔を空けたFIRフィルタ670からのサンプルをボーレート時点で出力する単一ブロックとして、実装することができる。
部分的に間隔を空けたFIRフィルタ670の目的は、(i)信号を等化するか、(ii)信号をパーシャル・レスポンス目標信号に整形するか、または(iii)(前兆符号間干渉などの)符号間干渉の一部もしくは全部を削除することである。部分的に間隔を空けたFIRフィルタ670は、入力サンプル間の間隔がオーバサンプリングに起因して部分的である(例えば、2のオーバサンプリング比について間隔は0.5Tである)ので、部分的と呼ばれる。
図8は、図6の例示的なデータ検出システム600の中の、図7の例示的な部分的に間隔を空けたFIR等化器670とともに使用することができる、例示的な検出器680のブロック図である。例示的な検出器680は、それぞれ図2のデータ検出器280、図4のデータ検出器480、および図10のデータ検出器1080を実装するためにも使用できることに留意されたい。図8に示したように、例示的な検出器680は、部分的に間隔を空けたFIR等化器670からの、ダウンサンプリングされた、フィルタリングされた出力676から構成される入力810を処理する。例示的な検出器680は、ひとそろいの雑音予測FIRフィルタ820を使用して、ボーレート領域の中のFIR出力サンプルのデータ依存等化を提供する。このひとそろいのフィルタ820からの出力830は、ブランチ・メトリック計算装置840によって処理されて、ブランチ・メトリック850を生成する。ブランチ・メトリック850は、既知の方式で、段870でのさらなる処理のために使用されて、出力880として決定および/またはソフト情報を生成する。適切な雑音予測FIRフィルタ820およびブランチ・メトリック計算装置840の説明用には、例えば、「Method and Apparatus for Generating Filter Tap Weights and Biases for Signal Dependent Branch Metric Computation」と題する2004年5月5日出願の米国特許出願公開第2005/0249273号を参照されたい。この特許は参照されることにより本明細書に組み込まれる。
前述したように、図6のフィードバック・ループ675は、部分的に間隔を空けたDFIR670用の一組の等化器係数678を生成する。図9Aおよび図9Bは、一組の等化器係数678を適応する例示的な技法を示す。図9Aおよび図9Bとともに下記でさらに説明するように、一般に、オーバサンプリングされた等化用の適応アルゴリズムは、ボーレート等化用に使用された技法と同様である。ボーレート・システムについて、{xk}を係数
をもつ長さMの有限インパルス応答(FIR)フィルタへの入力列とし、{y
k}を出力列とする。{d
k}を等化目標および決定列に基づいた(検出器から、または事前情報に基づいた)FIRフィルタ出力での所望の列とする。時刻kTでの等化誤差は、e
k=y
k−d
kである。
図9Aは、例示的な最小二乗平均(LMS)適応アルゴリズム900を示す。一般に、例示的なLMS適応アルゴリズム900は、以下のように等化係数を適応させる:fk+1=fk−μekxk、ここでμは適応速度を制御し、fkは時刻kでの等化器係数のベクタであり、xkは最近N回のFIR入力のベクタである。
従来のボーレート・システムのようにT毎に1つのサンプルを収集する代わりに、例示的なオーバサンプリングされた最小二乗平均(LMS)適応アルゴリズム900は、Nのオーバサンプリング・レートに対応するボーレート間隔毎にN個のサンプルを収集する。オーバサンプリングされたシステムについて、ADC650からの出力{xk}を、係数
をもつ長さMの有限インパルス応答(FIR)フィルタ670への入力列とし、{y
k}をフィルタ670からの出力列とする。M個の係数をもつFIRフィルタ670は、ボーレート・システムのようにMTに及ぶ代わりにMT/Nに及ぶ。検出器680の出力{d
k}を前のようにFIRフィルタ出力での所望のボーレート列とする。オーバサンプリングされたデジタル・サンプルは、フィードバック・ループの中で利用可能であり得ることに留意されたい。したがって、LMS適応アルゴリズム900は、オーバサンプリングされたレートまたはボーレートで係数を計算することができる。LMS適応アルゴリズム900がボーレートで係数を計算する場合、ビット間隔毎に生成された係数はN回繰り返されて、オーバサンプリングされたレートでの等化係数を供給する。
図9Bは、例示的なゼロフォーシング(ZF)アルゴリズム950を示す。一般に、例示的なZFアルゴリズム950は、以下のように等化係数をさまざまに適応させる:fk+1=fk−μekdk。オーバサンプリングされたシステムについて、ADC650からの出力{xk}を、係数
をもつ長さMの有限インパルス応答(FIR)フィルタ670への入力列とし、{y
k}をフィルタ670からの出力列とする。M個の係数をもつFIRフィルタ670は、ボーレート・システムのようにMTに及ぶ代わりにMT/Nに及ぶ。検出器680の出力{d
k}を前のようにFIRフィルタ出力での所望のボーレート列とする。図9Bの実施形態では、DFIR適応ループはボーレートで働くことに留意されたい。したがって、例示的なZFアルゴリズム950はビット間隔毎に単一の等化係数を生成し、生成された係数はN回繰り返されて、オーバサンプリングされたレートでの等化係数を供給する。
一実装形態では、誤差項ekは、ボーレート間隔でオーバサンプリングされたフィルタの出力に基づいて計算され、結果として、オーバサンプリングされたシステムであっても更新方程式がT毎に適用される。これは、オーバサンプリングされたシステムの出力が、検出器および復号器の中でさらに処理される前にボーレートまでダウンサンプリングされるときに有用である。
別の実装形態では、誤差項ekはT/N毎に計算される。これを行うために、ボーレートの所望の列{dk}は、サブボーレート・サンプリング時点に対応する所望の値を生成するように組み入れなければならない。次いで、誤差項ekは補間された所望の値を使用して生成され、T/N毎にLMS方程式の中で使用される。ZFの場合について、補間された所望の値はdkの代わりに更新方程式の中でも使用される。第2の例示的な実装形態は、オーバサンプリングされた領域の中のFIRフィルタ670の出力がダウンサンプリングなしに検出器680の中で処理されるときに望ましい。ボーレート時点でのサンプルのみに等化制約を強化する第1の実装形態とは対照的に、サブボーレート時点に対応する誤差項を更新方程式の中に含むことによって、オーバサンプリングされた領域列全てが所望の等化特性を示すことが保証される。
図10は、データ検出システム1000の全構成要素用の完全オーバサンプリング、および部分的等化を含む本発明のさまざまな態様を組み入れた、代替の例示的なデータ検出システム1000を示す。
データ検出システム1000は、図1のデータ検出システム100および図2Aのデータ検出システム200と同様の方式で、ACカップリング1015経由でアナログ入力信号1010を受信するアナログ・フロントエンドを含む。加えて、ACカップリング1015の出力は、図4と同様の方式で、フィードバック・ループ1075によって供給された利得フィードバック値1022によって調節された、可変利得増幅器1020を使用して増幅される。増幅された入力1024は、加算要素1040を使用してオフセット値1042と加算される。オフセット値1042は、図4と同様の方式で、フィードバック・ループ1075によって供給される。
図10に示したように、アナログ入力信号1010を代表する合計1044は、オーバサンプリングされたADC1050に供給され、ADC1050は連続アナログ信号1044をビット間隔毎に複数(N)の対応するデジタル・サンプル1052に変換する。例示的なオーバサンプリングは、ビット間隔毎にN=4のデジタル・サンプル1052を生成する。デジタル・サンプル1052は、例えばループ1075内のデジタル位相ロック・ループ回路により、受信されたデータに基づいて生成されたクロック信号1054に従って取得される。
次いで、オーバサンプリングされたデジタル・サンプル1052は、図5Aおよび図5Bとともに上記で説明した、デジタルMRA補正フィルタ1055によって処理される。一般に、DMRA補正フィルタ1055は、読取ヘッドの出力を線形化するのに必要な逆伝達関数を近似する。加えて、フィードバック・ループ1075は、図5Bとともに上記で説明したのと同様の方式で、DMRA補正フィルタ1055用のフィードバック値1056(β)を生成する。
DMRA補正フィルタ1055の出力は、オーバサンプリングされたデジタル回路1070に適用される。一般に、例示的なオーバサンプリングされたデジタル回路1070は、タイミング調整、利得補正、ベースライン補正(BLC)、DCオフセット補正および等化を実行する。タイミング調整、利得補正、ならびに、ベースライン補正(BLC)およびDCオフセット補正は、オーバサンプリングされたレートNで、オーバサンプリングされたデジタル回路1070により、例えばN個の並列分岐を使用して、図2Aとともに上記で説明したような各機能を実行することによって、実行することができる。アナログCTFを含まない図10の実施形態では、オーバサンプリングされたデジタル回路1070は、デジタル領域の中でオーバサンプリングされたレートで、例えば図4とともに上記で説明したように、アンチ・エイリアシング・フィルタリング、全帯域制限フィルタリング、および信号整形フィルタリングなどの等化を実行する。
ビタビ・アルゴリズム・データ検出器などのデータ検出器1080は、オーバサンプリングされたレートで働いて理想出力1082を供給し、理想出力1082はフィードバック・ループ1075によって処理される。例示的なデータ検出器680は図8とともに上記で説明した。フィードバック・ループ1075は、オーバサンプリングされたレートで働いて、利得フィードバック値1022、オフセット値1042およびクロック信号1054を生成する。加えて、フィードバック・ループ1075は、オーバサンプリングされたデジタル回路1070用の一組の等化器係数1078を生成する。
さらなる変形形態では、オーバサンプリングされたデジタル回路1070は、その出力で信号をボーレートまでダウンサンプリングすることができ、検出器1080は信号をボーレートで処理することができる。
図11は、本発明のさまざまな実施形態によるストレージ・システム1100を示す。ストレージ・システム1100は、例えばハードディスク・ドライブであり得る。ストレージ・システム1100はリード・チャネル1110を含む。加えて、ストレージ・システム1100は、インタフェース・コントローラ1120、プリアンプ1170、ハードディスク・コントローラ1166、モータ・コントローラ1168、スピンドル・モータ1172、ディスク・プラッタ1178、および読み書きヘッド1176を含む。インタフェース・コントローラ1120は、ディスク・プラッタ1178へ/からのデータのアドレッシングおよびタイミングを制御する。ディスク・プラッタ1178上のデータは磁気信号のグループから構成され、読み書きヘッド・アセンブリ1176がディスク・プラッタ1178の上に正しく位置付けされると、磁気信号のグループは読み書きヘッド・アセンブリ1176によって検出することができる。通常の読み出し動作では、読み書きヘッド・アセンブリ1176は、モータ・コントローラ1168により、ディスク・プラッタ1178上の所望のデータ・トラックの上に正確に位置付けされる。モータ・コントローラ1168は、ハードディスク・コントローラ1166の指示のもとで、ディスク・プラッタ1178と関係して読み書きヘッド・アセンブリ1176を位置付けることと、読み書きヘッド・アセンブリをディスク・プラッタ1178上の適正なデータ・トラックに移動させることによりスピンドル・モータ1172を駆動させることのどちらも行う。スピンドル・モータ1172は、決められた回転速度(RPM)でディスク・プラッタ1178を回転させる。
読み書きヘッド・アセンブリ1178が適正なデータ・トラックの近傍に位置付けされると、ディスク・プラッタ1178上でデータを表す磁気信号は、ディスク・プラッタ1178がスピンドル・モータ1172によって回転すると、読み書きヘッド・アセンブリ1176によって検出される。検出された磁気信号は、ディスク・プラッタ1178上で磁気データを表す連続するわずかなアナログ信号として供給される。このわずかなアナログ信号は、読み書きヘッド・アセンブリ1176からプリアンプ1170を経由してリード・チャネル・モジュール1110に転送される。プリアンプ1170は、ディスク・プラッタ1178からアクセスされたわずかなアナログ信号を増幅するように働く。加えて、プリアンプ1170は、ディスク・プラッタ1178に書き込まれる予定の、リード・チャネル・モジュール1110からのデータを増幅するように働く。そして、リード・チャネル・モジュール1110は、受信したアナログ信号を復号しデジタル化して、もともとはディスク・プラッタ1178に書き込まれた情報を再現する。このデータは、読み取りデータ1103としてリード・チャネル・モジュール1110からハードディスク・コントローラ1166に供給され、引き続き受信回路に供給される。書き込み動作は、実質的に先の読み取り動作とは逆で、書き込みデータ1101がハードディスク・コントローラ1166からリード・チャネル・モジュール1110に供給される。次いで、このデータは符号化され、ディスク・プラッタ1178に書き込まれる。
図12は、本発明の1つまたは複数の実施形態による受信器1220を含む通信システム1200を示す。通信システム1200は、当技術分野で知られているように、転送媒体1230経由で符号化された情報を送信する働きをする送信器を含む。符号化されたデータは、受信器1220により転送媒体1230から受信される。
前述したように、本発明のオーバサンプリングされたADCによって、フィルタリング処理および/または等化処理の少なくとも一部をデジタル領域に移すことにより、CTF回路を簡略化または除去することが可能になる。例えば、(i)アンチ・エイリアス・フィルタリングおよび/または帯域外雑音を削減する帯域制限フィルタリング、ならびに(ii)符号間干渉を補償するパルス整形フィルタリングは、今やデジタル領域の中で実行することができる。
加えて、本発明のオーバサンプリングされたADCによって、オプションの磁気抵抗非対称(MRA)補正フィルタを、アナログ領域の中に、例えば図2Aおよび図5Aに示したようにオプションのCTF225より前に、または、デジタル領域の中に、例えば図4および図5Bに示したようにADCの後に、実装することが可能になる。
他の例示的な変形形態では、本明細書に記載したDLPFおよびダウンサンプリング・デバイスは、図2Aに示したような分かれた別個の回路として、または図3Cに示したような統合型デバイスとして、実装することができる。
1つの例では、開示した方法および装置は、図11のストレージ・システムまたは図12の通信システムの中で使用することができる。
前述したように、本明細書に記載したようなデータ検出システムおよびリード・チャネルの構成には、従来の構成に比べていくつかの利点がある。上述したように、オーバサンプリングされたADCを有するリード・チャネルを実装するための開示した技法によって、等化処理、アンチ・エイリアス・フィルタリング処理および/または雑音帯域制限フィルタリング処理の少なくとも一部をデジタル領域の中で実行することが可能になり、アナログCTF回路の設計の困難さが緩和される。また、処理形態を縮小するのに比例してデジタル回路の領域が減少するが、アナログ回路の領域はそれほど減少しないので、アナログ信号処理機能の一部をデジタル領域に移すための開示した技法は、特に将来の処理形態で従来の技法に比べて少ない領域をもつ、集積回路およびチップを設計する助けになる。
再度、本発明の上記実施形態は例示にすぎないものであることを強調すべきである。一般に、例示的なデータ検出システムは、当業者には明白であるように、オーバサンプリングされたADCを組み入れるように修正することができ、等化処理または他のフィルタリングの少なくとも一部をデジタル領域の中で実行することが可能になる。加えて、ビット間隔毎に複数のデジタル・サンプルを生成するための開示した技法は、任意のデータ検出システムまたはリード・チャネルにおいて使用することができる。
本発明の例示的な実施形態をデジタル論理ブロックに関して記載したが、当業者には明白であるように、さまざまな機能は、ソフトウェア・プログラムの中の処理ステップとしてデジタル領域の中に、回路要素もしくは状態機械によりハードウェアの中に、またはソフトウェアとハードウェア両方の組合せの中に、実装することができる。そのようなソフトウェアは、例えば、デジタル信号プロセッサ、特定用途向け集積回路、マイクロコントローラ、または汎用コンピュータの中で使用することができる。そのようなハードウェアおよびソフトウェアは、集積回路内に実装された回路の中で実施することができる。
本発明の集積回路の実装形態では、複数の集積回路のダイスは、通常、ウェハの表面上に繰り返されたパターンで形成される。そのようなダイスのそれぞれは、本明細書に記載したデバイスを含むことができ、他の構造物または回路を含むことができる。ダイスはウェハからカットまたはさいの目に切られ、次いで集積回路としてパッケージ化される。当業者は、どのようにウェハをさいの目に切り、ダイスをパッケージ化して、パッケージ化された集積回路を製作するかを知っているはずである。そのように製造された集積回路は本発明の一部であると考えられる。
したがって、本発明の機能は、それらの方法を実践するための方法および装置の形態で実装することができる。本発明の1つまたは複数の態様は、例えば、記憶媒体の中に格納され、マシンの中にロードされ、および/もしくはマシンによって実行され、または一部の転送媒体を介して転送されるプログラム・コードの形態で実装することができる。プログラム・コードがコンピュータなどのマシンの中にロードされ、マシンによって実行されると、マシンは本発明を実践するための装置になる。汎用プロセッサに実装されると、プログラム・コード・セグメントはプロセッサと結合して、特定の論理回路に類似した働きをするデバイスを提供する。また、本発明は、集積回路、デジタル信号プロセッサ、マイクロプロセッサ、およびマイクロコントローラのうちの1つまたは複数に実装することができる。
本明細書において示し記載した実施形態および変形形態は、本発明の原理の例示にすぎず、さまざまな修正形態が、本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者によって実装できることを理解されたい。