JP2013043551A - 車両の操舵制御装置及び操舵制御方法 - Google Patents

車両の操舵制御装置及び操舵制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】転舵モータの過熱時に操舵輪と転舵輪とを機械的に結合しても、運転者が負担する操舵トルクの増加を抑制することが可能な、車両の操舵制御装置及び操舵制御方法を提供する。
【解決手段】操舵輪32の操作に基づいて転舵輪24を転舵させる転舵モータ2の温度が、予め設定したクラッチ締結温度を超えているか否かを判定し、転舵モータ2の温度がクラッチ締結温度を超えていると判定すると、操舵輪32と転舵輪24との間のトルク伝達経路を機械的に分離する開放状態にあるクラッチ6を、トルク伝達経路を機械的に連結した締結状態に切り換えた後も、操舵輪32の操作に応じた目標転舵角を算出し、この算出した目標転舵角に応じて転舵トルクを制御する転舵モータ2の駆動制御を継続させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、操舵輪と転舵輪との間のトルク伝達経路を機械的に分離した状態で、転舵輪を、操舵輪の操作に応じた目標転舵角に転舵モータを介して転舵させる、車両の操舵制御装置及び操舵制御方法に関する。
従来から、操舵輪(ステアリングホイール)と転舵輪との間のトルク伝達経路を機械的に分離した状態で、転舵輪を、操舵輪の操作に応じた目標転舵角に転舵モータを介して転舵させる操舵制御装置がある。このような操舵制御装置は、一般的に、ステア・バイ・ワイヤ(SBW:Steer By Wire、以降の説明では、「SBW」と記載する場合がある)と呼称するシステム(SBWシステム)を形成する装置であり、例えば、特許文献1に記載されている。
特許文献1に記載されている操舵制御装置は、転舵モータの温度が予め設定した閾値温度を上回る状態が、予め設定した所定時間継続すると、操舵輪と転舵輪との間に介装したクラッチを開放状態から締結状態に切り換えて、トルク伝達経路を機械的に結合する。例えば、大舵角の操舵が繰り返し行なわれる場合等、転舵モータに高い負荷が加わり転舵モータが過熱した場合に発生する。
特開2003‐252227号公報
しかしながら、特許文献1に記載の操舵制御装置では、転舵モータの過熱時に、開放状態のクラッチを締結状態に切り換えてトルク伝達経路を機械的に結合するとともに、転舵モータの駆動制御を停止するため、運転者が負担する操舵トルクが増加するという問題が発生するおそれがある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、転舵モータの過熱時にトルク伝達経路を機械的に結合しても、運転者が負担する操舵トルクの増加を抑制することが可能な、車両の操舵制御装置及び操舵制御方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、転舵輪を転舵させるための転舵トルクを出力する転舵モータの温度が、予め設定した温度を超えているか否かを判定する。そして、転舵モータの温度が前記温度を超えていると判定すると、開放状態のクラッチを締結状態に切り換えて、トルク伝達経路を機械的に連結する。これに加え、操舵輪の操作に応じた目標転舵角に転舵トルクを制御する転舵モータの駆動制御を継続させる。
本発明によれば、転舵モータの過熱時に、開放状態のクラッチを締結状態に切り換えてトルク伝達経路を機械的に結合した後も、転舵モータの駆動制御を継続させるため、転舵モータが運転者による操舵操作に対する負荷となることを、抑制することが可能となる。
これにより、転舵モータの過熱時に、開放状態のクラッチを締結状態に切り換えてトルク伝達経路を機械的に結合しても、運転者が負担する操舵トルクの増加を抑制することが可能となる。
本発明の第一実施形態の操舵制御装置を備えた車両の概略構成を示す図である。 本発明の第一実施形態の操舵制御装置の概略構成を示すブロック図である。 本発明の第一実施形態の操舵制御装置が行う処理を示すフローチャートである。 本発明の変形例の操舵制御装置が行う処理を示すフローチャートである。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図1は、本実施形態の操舵制御装置1を備えた車両の概略構成を示す図である。また、図2は、本実施形態の操舵制御装置1の概略構成を示すブロック図である。
本実施形態の操舵制御装置1を備えた車両は、SBWシステムを適用した車両である。
ここで、SBWシステムでは、車両の運転者が操舵操作する操舵輪の操作に応じて転舵モータを駆動制御して、転舵輪を転舵する制御を行うことにより、車両の進行方向を変化させる。転舵モータの駆動制御は、操舵輪と転舵輪との間に介装するクラッチを、通常状態である開放状態に切り換えて、操舵輪と転舵輪との間のトルク伝達経路を機械的に分離した状態で行う。
そして、例えば、断線等、SBWシステムの一部に異常が発生した場合には、開放状態のクラッチを締結状態に切り換えて、トルク伝達経路を機械的に接続することにより、運転者が操舵輪に加える力を用いて、転舵輪の転舵を継続する。
図1及び図2中に示すように、本実施形態の操舵制御装置1は、転舵モータ2と、転舵モータ制御部4と、クラッチ6と、反力モータ8と、反力モータ制御部10を備える。
転舵モータ2は、転舵モータ制御部4が出力する転舵モータ駆動電流に応じて駆動するモータであり、回転可能な転舵モータ出力軸12を有する。また、転舵モータ2は、転舵モータ駆動電流に応じて駆動することにより、転舵輪を転舵させるための転舵トルクを出力する。
転舵モータ出力軸12の先端側には、歯車(図示せず)を設けてあり、この歯車は、ラックギア14と噛合する。
また、転舵モータ2には、転舵モータ角度センサ16を設ける。
転舵モータ角度センサ16は、転舵モータ2の回転角度(転舵角度)を検出し、この検出した回転角度(以降の説明では、「転舵モータ回転角」と記載する場合がある)を含む情報信号を、転舵モータ制御部4を介して、反力モータ制御部10へ出力する。
ラックギア14は、転舵モータ出力軸12の回転に応じて車幅方向へ変位するラック軸18を有する。
ラック軸18の両端は、それぞれ、タイロッド20及びナックルアーム22を介して、転舵輪24に連結する。また、ラック軸18とタイロッド20との間には、タイヤ軸力センサ26を設ける。
タイヤ軸力センサ26は、ラック軸18の軸方向(車幅方向)に作用する軸力を検出し、この検出した軸力(以降の説明では、「タイヤ軸力」と記載する場合がある)を含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。
転舵輪24は、車両の前輪(左右前輪)であり、転舵モータ出力軸12の回転に応じてラック軸18が車幅方向へ変位すると、タイロッド20及びナックルアーム22を介して転舵し、車両の進行方向を変化させる。なお、本実施形態では、転舵輪24を、左右前輪で形成した場合を説明する。これに伴い、図1中では、左前輪で形成した転舵輪24を、転舵輪24Lと示し、右前輪で形成した転舵輪24を、転舵輪24Rと示す。
転舵モータ制御部4は、反力モータ制御部10と、CAN(Controller Area Network)等の通信ライン28を介して、情報信号の入出力を行う。
また、転舵モータ制御部4は、転舵位置サーボ制御部30を有する。
転舵位置サーボ制御部30は、転舵モータ2を駆動させるための転舵モータ駆動電流を演算し、この演算した転舵モータ駆動電流を、転舵モータ2へ出力する。
ここで、転舵モータ駆動電流は、上述した転舵トルクを制御して、操舵輪の操作に応じた目標転舵角目標転舵角を算出し、この算出した目標転舵角に応じて転舵モータ2を駆動制御するための電流である。
転舵モータ駆動電流の演算は、反力モータ制御部10が出力する転舵モータ電流指令と、実際に転舵モータ2へ通電している電流(転舵モータ実電流)の指令値(以降の説明では、「転舵モータ電流指令It」と記載する場合がある)に基づいて行う。具体的には、転舵モータ電流指令Itを用いて転舵モータ電流指令を補正し、転舵モータ駆動電流を演算する。
また、転舵位置サーボ制御部30は、転舵モータ電流指令Itを計測し、この計測した転舵モータ電流指令Itに基づいて、転舵モータ2の温度Ttを推定する。そして、推定した転舵モータ2の温度Ttを含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。これは、モータ類(転舵モータ2、反力モータ8)の過熱は、電流の通電による抵抗発熱に起因する場合が多いためである。
なお、転舵モータ電流指令Itは、例えば、転舵モータ2に基板温度センサ(図示せず)を内蔵し、この内蔵した基板温度センサを用いて計測する。
ここで、転舵モータ電流指令Itに基づいて転舵モータ2の温度Ttを推定する方法としては、例えば、大電流域では、計測した実際の電流値を用いて転舵モータ電流指令Itを求める。具体的には、計測した実際の電流値と予め記憶している電流閾値とを比較し、計測した実際の電流値が電流閾値よりも大きい場合は、計測した実際の電流値を、転舵モータ電流指令Itとして採用する。
一方、小電流域では、転舵モータ2の回転数とトルクとの関係を定めたモータNT特性を用い、転舵モータ2の回転数に基づいて、転舵モータ電流指令Itを推定する。具体的には、計測した実際の電流値を転舵モータ電流指令Itとして採用せず、モータNT特性を用い、転舵モータ2の回転数に基づいて推定した電流値を、転舵モータ電流指令Itとして採用する。
そして、上記のように採用した転舵モータ電流指令Itを用いて、転舵モータ2の温度Ttを推定する。
クラッチ6は、運転者が操作する操舵輪32(ステアリングホイール)と転舵輪24との間に介装し、反力モータ制御部10が出力するクラッチ駆動電流に応じて、開放状態または締結状態に切り換わる。なお、クラッチ6は、通常状態では、開放状態である。
ここで、クラッチ6の状態を開放状態に切り換えると、操舵輪32と転舵輪24との間のトルク伝達経路を機械的に分離させて、操舵輪32の操舵操作が転舵輪24へ伝達されない状態とする。一方、クラッチ6の状態を締結状態に切り換えると、操舵輪32と転舵輪24との間のトルク伝達経路を機械的に結合させて、操舵輪32の操舵操作が転舵輪24へ伝達される状態とする。
また、操舵輪32とクラッチ6との間には、操舵角センサ34と、操舵トルクセンサ36と、反力モータ8と、反力モータ角度センサ38を配置する。
操舵角センサ34は、例えば、操舵輪32を回転可能に支持するステアリングコラムに設ける。
また、操舵角センサ34は、操舵輪32の現在の回転角度(操舵操作量)である現在操舵角を検出する。そして、操舵角センサ34は、検出した操舵輪32の現在操舵角を含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。なお、以降の説明では、現在操舵角を、「現在操舵角θ」と記載する場合がある。
ここで、近年の車両は、操舵輪32の操舵角を検出可能なセンサを、標準的に備えている場合が多い。このため、本実施形態では、操舵角センサ34として、車両に既存のセンサである、操舵輪32の操舵角を検出可能なセンサを用いた場合について説明する。
操舵トルクセンサ36は、操舵角センサ34と同様、例えば、操舵輪32を回転可能に支持するステアリングコラムに設ける。
また、操舵トルクセンサ36は、運転者が操舵輪32に加えているトルクである操舵トルクを検出する。そして、操舵トルクセンサ36は、検出した操舵トルクを含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。なお、以降の説明では、操舵トルクを、「トルクセンサ値Vts」と記載する場合がある。
なお、反力モータ8及び反力モータ角度センサ38に関する説明は、後述する。
また、クラッチ6は、開放状態で互いに離間し、締結状態で互いに噛合する一対のクラッチ板40を有する。なお、図1中及び以降の説明では、一対のクラッチ板40のうち、操舵輪32側に配置するクラッチ板40を、「操舵輪側クラッチ板40a」とし、転舵輪24側に配置するクラッチ板40を、「転舵輪側クラッチ板40b」とする。
操舵輪側クラッチ板40aは、操舵輪32と共に回転するステリングシャフト42に取り付けてあり、ステリングシャフト42と共に回転する。
転舵輪側クラッチ板40bは、ピニオン軸44の一端に取り付けてあり、ピニオン軸44と共に回転する。
ピニオン軸44の他端は、ピニオン46内に配置してある。ピニオン46には、ラックギア14と噛合するピニオンギア(図示せず)を内蔵する。
ピニオンギアは、ピニオン軸44と共に回転する。すなわち、ピニオンギアは、ピニオン軸44を介して、転舵輪側クラッチ板40bと共に回転する。
また、ピニオン46には、ピニオン角度センサ48を設ける。
ピニオン角度センサ48は、ピニオンギアの回転角度を検出し、この検出した回転角度(以降の説明では、「ピニオン回転角」と記載する場合がある)を含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。
反力モータ8は、反力モータ制御部10が出力する反力モータ駆動電流に応じて駆動するモータであり、操舵輪32と共に回転するステリングシャフト42を回転させて、操舵輪32へ操舵反力を出力可能である。ここで、反力モータ8が操舵輪32へ出力する操舵反力は、クラッチ6を開放状態に切り換えて、操舵輪32と転舵輪24との間のトルク伝達経路を機械的に分離させている状態で、転舵輪24に作用しているタイヤ軸力や操舵輪32の操舵状態に応じて演算する。これにより、操舵輪32を操舵する運転者へ、適切な操舵反力を伝達する。すなわち、反力モータ8が操舵輪32へ出力する操舵反力は、運転者が操舵輪32を操舵する操作方向とは反対方向へ作用する反力である。
反力モータ角度センサ38は、反力モータ8に設けるセンサである。
また、反力モータ角度センサ38は、反力モータ8の回転角度(転舵角度)を検出し、この検出した回転角度(以降の説明では、「反力モータ回転角」と記載する場合がある)を含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。
反力モータ制御部10は、転舵モータ制御部4と、通信ライン28を介して、情報信号の入出力を行う。これに加え、反力モータ制御部10は、通信ライン28を介して、車速センサ50及びエンジンコントローラ52が出力する情報信号の入力を受ける。
また、反力モータ制御部10は、通信ライン28を介して入力を受けた情報信号や、各種センサから入力を受けた情報信号に基づき、反力モータ8を駆動制御する。
車速センサ50は、例えば、公知の車速センサであり、車両の車速を検出し、この検出した車速を含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。
エンジンコントローラ52(エンジンECU)は、エンジン(図示せず)の状態(エンジン駆動、または、エンジン停止)を含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。
また、反力モータ制御部10は、指令演算部54と、反力サーボ制御部56と、クラッチ制御部58を有する。
指令演算部54は、車速センサ50、操舵角センサ34、エンジンコントローラ52、操舵トルクセンサ36、反力モータ角度センサ38、ピニオン角度センサ48、タイヤ軸力センサ26及び転舵モータ角度センサ16が出力した情報信号の入力を受ける。
これに加え、指令演算部54は、入力を受けた各種情報信号に基づき、反力モータ電流指令を演算する。そして、指令演算部54は、演算した反力モータ電流指令を、反力サーボ制御部56へ出力する。
また、指令演算部54は、入力を受けた各種情報信号に基づき、転舵モータ電流指令を演算する。そして、指令演算部54は、この演算した転舵モータ電流指令を、転舵位置サーボ制御部30へ出力する。
また、指令演算部54は、入力を受けた各種情報信号に基づき、クラッチ電流指令を演算する。そして、指令演算部54は、この演算したクラッチ電流指令を、クラッチ制御部58へ出力する。
以下、指令演算部54が行う、各種電流指令の演算について説明する。
(反力モータ電流指令の演算)
反力モータ電流指令の演算は、例えば、車速センサ50及び転舵モータ角度センサ16が出力した情報信号に基づき、転舵モータ回転角θtに、予め設定した反力モータ用ゲインGhを乗算して行う。
ここで、反力モータ用ゲインGhは、反力モータゲイン用マップを用いて、予め設定する。なお、反力モータゲイン用マップは、車速に依存するマップであり、予め形成して、指令演算部54に格納する。
すなわち、反力モータ電流指令を「Ih’」と定義すると、反力モータ電流指令Ih’は、以下の式(1)で演算する。
Ih’=θt×Gh … (1)
(転舵モータ電流指令の演算)
転舵モータ電流指令の演算は、例えば、車速センサ50及び操舵角センサ34が出力した情報信号に基づき、現在操舵角θに、予め設定した転舵モータ用ゲインGtを乗算して行う。
ここで、転舵モータ用ゲインGtは、転舵モータゲイン用マップを用いて、予め設定する。なお、転舵モータゲイン用マップは、車速に依存するマップであり、予め形成して、指令演算部54に格納する。
すなわち、転舵モータ電流指令を「It’」と定義すると、転舵モータ電流指令It’は、以下の式(2)で演算する。
It’=θ×Gt … (2)
(クラッチ電流指令の演算)
クラッチ電流指令の演算は、例えば、転舵モータ制御部4が推定した転舵モータ2の温度Ttと、クラッチ締結温度St1を用いて行う。
具体的には、まず、クラッチ6を開放状態に切り換えた状態で、転舵モータ制御部4が推定した転舵モータ2の温度Ttと、クラッチ締結温度St1とを比較し、転舵モータ2の温度Ttがクラッチ締結温度St1を超えているか否かを判定する。
ここで、クラッチ締結温度St1は、転舵モータ2を正常(通常状態、通常制御)に使用することが困難な使用限界温度よりも、予め設定した温度差分低い温度であり、予め設定して、指令演算部54に記憶させておく。
なお、上記の使用限界温度は、例えば、転舵モータ2に予め設定されている定格や、「JIS C 4003」等を用いて設定する。
本実施形態では、一例として、クラッチ締結温度St1を、転舵モータ2の使用限界温度よりも10[℃]低い温度に設定する場合を説明する。すなわち、本実施形態では、一例として、予め設定した温度差を、「10[℃]」に設定する場合を説明する。
そして、転舵モータ2の温度Ttがクラッチ締結温度St1を超えていると判定すると、開放状態(通常状態)のクラッチ6を締結状態に切り換える指令信号を演算し、この演算した指令信号を、クラッチ電流指令とする。
なお、指令演算部54は、転舵モータ2の温度Ttに応じて、締結状態のクラッチ6を開放状態に切り換える指令信号の演算も行う。
反力サーボ制御部56は、反力モータ8を駆動させるための反力モータ駆動電流を反力モータ8へ出力する。
また、反力サーボ制御部56は、実際に反力モータ8へ通電している電流(反力モータ実電流)の値(以降の説明では、「反力モータ電流値Ih」と記載する場合がある)を計測する。
ここで、反力モータ駆動電流の演算は、指令演算部54が出力する転舵モータ電流指令と、反力モータ電流値Itに基づいて行う。具体的には、反力モータ電流値Ihを用いて反力モータ電流指令を補正し、反力モータ駆動電流を演算する。
また、反力サーボ制御部56は、計測した反力モータ電流値Ihに基づいて、反力モータ8の温度Thを推定する。なお、反力モータ8の温度Thの推定は、例えば、転舵位置サーボ制御部30が行う転舵モータ2の温度Ttの推定と、同様の手順で行う。
クラッチ制御部58は、指令演算部54が出力するクラッチ電流指令に基づいて、開放状態のクラッチ6を締結状態へ切り換えるために必要な電流を、クラッチ駆動電流として演算する。そして、演算したクラッチ駆動電流を、クラッチ6へ出力する。
以下、図1及び図2を参照しつつ、図3を用いて、本実施形態の操舵制御装置1が行なう動作の一例について説明する。
図3は、本実施形態の操舵制御装置1が行う処理を示すフローチャートである。
図3中に示すフローチャートは、車両の運転者がエンジンを始動させた(エンジンON)状態からスタートする(図3中に示す「START」)。エンジンを始動させると、エンジンコントローラ52から、エンジン駆動の状態を含む情報信号が、反力モータ制御部10へ出力される。そして、エンジン駆動の状態を含む情報信号の入力を受けた指令演算部54は、操舵制御装置1を作動させる。なお、操舵制御装置1を作動させた時点では、クラッチ6を開放状態(通常状態)として、操舵輪32と転舵輪24との間のトルク伝達経路を機械的に分離させている。
操舵制御装置1を作動させると、転舵位置サーボ制御部30が転舵モータ2の温度Ttを推定し、反力サーボ制御部56が反力モータ8の温度Thを推定(ステップS100に示す「Tt、Th推定」)する。そして、転舵位置サーボ制御部30は、推定した温度Ttを含む情報信号を指令演算部54へ出力し、反力サーボ制御部56は、推定した温度Thを含む情報信号を指令演算部54へ出力する。ステップS100において、温度Tt及び温度Thを推定すると、操舵制御装置1が行う処理は、ステップS102へ移行する。
ステップS102では、指令演算部54が、転舵モータ2の温度Ttとクラッチ締結温度St1とを比較し、転舵モータ2の温度Ttがクラッチ締結温度St1を超えているか否かを判定(ステップS102に示す「Tt>St1?」)する。ここで、ステップS102の処理は、クラッチ6を開放状態(通常状態)として行う。
ステップS102において、温度Ttがクラッチ締結温度St1以上である(図中に示す「No」)と判定すると、操舵制御装置1が行う処理は、ステップS104へ移行する。
一方、ステップS102において、温度Ttがクラッチ締結温度St1を超えている(図中に示す「Yes」)と判定すると、操舵制御装置1が行う処理は、ステップS106へ移行する。
ステップS104では、転舵モータ制御部4及び反力モータ制御部10が、共に、通常時における制御(ステップS104に示す「通常時制御」)を行う。ここで、通常時における制御とは、操舵輪32の操作に基づいて転舵モータ2を駆動させるとともに、操舵輪32を操舵する運転者へ適切な操舵反力を伝達するために、反力モータ8を駆動させる制御である。また、通常時における制御は、クラッチ6を開放状態に維持した状態で行う。
ステップS104において、転舵モータ制御部4及び反力モータ制御部10が、通常時における制御を行うと、操舵制御装置1が行う処理は、ステップS100の処理に復帰(図3中に示す「RETURN」)する。
ステップS106では、指令演算部54が、開放状態のクラッチ6を締結状態に切り換えるクラッチ電流指令を演算し、クラッチ駆動電流の値Ic’を「0」と演算(ステップS106に示す「クラッチ締結:Ic’=0」)する。これにより、開放状態のクラッチ6を締結状態に切り換えて、操舵輪32と転舵輪24との間のトルク伝達経路を機械的に連結する。ステップS106において、開放状態のクラッチ6を締結状態に切り換えると、操舵制御装置1が行う処理は、ステップS108へ移行する。
したがって、ステップS106では、クラッチ制御部58が、転舵モータ2の温度Ttがクラッチ締結温度St1を超えていると判定すると、開放状態のクラッチ6を締結状態に切り換える処理を行う。
ステップS108では、指令演算部54が、高温時(転舵モータ2の過熱時、以降の説明でも同様)における転舵モータ電流指令(以降の説明では、「高温時転舵モータ電流指令It_k’」と記載する場合がある)を演算する。
ここで、高温時転舵モータ電流指令It_k’は、以下の式(3)で演算する。
It_k’=Vts×Gt1−It1’ … (3)
なお、上記の式(3)中では、高温時における転舵モータ用ゲインを、高温時転舵モータ用ゲインGt1と示す。また、高温時転舵モータ用ゲインGt1は、高温時転舵モータゲイン用マップを用いて予め設定し、指令演算部54に記憶させておく。なお、高温時転舵モータゲイン用マップは、車速に依存するマップであり、予め形成して、指令演算部54に格納する。
また、上記の式(3)中では、高温時転舵モータ電流指令It_k’の演算に用いる電流値を、転舵モータ減算電流値It1’と示す。なお、転舵モータ減算電流値It1’は、例えば、通常時制御(ステップS104参照)において転舵モータ2に通電する電流が60[A]である場合には、予め10[A]に設定し、指令演算部54に記憶させておく。
すなわち、ステップS108では、転舵モータ電流指令It’として、高温時転舵モータ電流指令It_k’を演算(ステップS108に示す「It’=It_k’=Vts×Gt1−It1’」)する。ステップS108において、高温時転舵モータ電流指令It_k’を演算すると、操舵制御装置1が行う処理は、ステップS110へ移行する。
したがって、ステップS108では、クラッチ制御部58が開放状態のクラッチ6を締結状態に切り換えると、転舵モータ制御部4が、転舵モータ2の駆動制御を継続させる処理を行う。
これに加え、ステップS108では、クラッチ制御部58が開放状態のクラッチ6を締結状態に切り換えると、転舵モータ制御部4が、転舵トルクを通常状態よりも減少補正する処理を行う。
ステップS110では、指令演算部54が、高温時における反力モータ電流指令(以降の説明では、「高温時反力モータ電流指令Ih_k’」と記載する場合がある)を演算する。
ここで、高温時反力モータ電流指令Ih_k’は、以下の手順で演算する。
まず、以下の式(4)により、転舵モータ減算トルクTRt1’を演算する。なお、転舵モータ減算トルクTRt1’は、例えば、通常時制御において転舵モータ2が出力するトルクから、転舵モータ2の過熱を抑制するためのトルクを減算した値である。また、転舵モータ減算トルクTRt1’は、操舵輪32の操舵角に換算したトルクである。
TRt1’=It1’×TTt … (4)
なお、上記の式(4)中では、予め設定したトルクの定数である転舵モータトルク定数を、「TTt」と示す。
次に、転舵モータ減算トルクTRt1’と同等のトルクを反力モータ8で発生させるための反力モータ電流指令Ih’である高温時反力モータ電流指令Ih_k’を、以下の式(5)を用いて演算する。
Ih_k’=TRt1’/TTh … (5)
なお、上記の式(5)中では、予め設定したトルクの定数である反力モータトルク定数を、「TTh」と示す。
ここで、高温時反力モータ電流指令Ih_k’の符号(+、−)は、高温時転舵モータ電流指令It_k’の符号(+、−)と同じ方向とする。これは、反力モータ8が発生させるトルクを、操舵輪32の操舵操作を補助(アシスト)するトルク(操舵補助トルク)として用いるためである。操舵補助トルクは、運転者による操舵輪32の操作を補助するように、操作方向と同じ方向へ作用するトルクである。
すなわち、ステップS110では、反力モータ電流指令Ih’として、高温時反力モータ電流指令Ih_k’を演算(ステップS110に示す「TRt1’=It1’×TTt」、「Ih’=Ih_k’=TRt1’/TTh」)する。これにより、ステップS110では、開放状態のクラッチ6を締結状態に切り換えた状態で、操舵輪32の操作を補助する操舵補助トルクを、反力モータ8で出力する処理を行う。ステップS110において、高温時反力モータ電流指令Ih_k’を演算すると、操舵制御装置1が行う処理は、ステップS112へ移行する。
したがって、ステップS110では、クラッチ制御部58が開放状態のクラッチ6を締結状態に切り換えると、反力モータ制御部10が、操舵輪32の操作を補助する操舵補助トルクを、反力モータ8で出力する。
これに加え、ステップS110では、操舵輪32の操作を補助する操舵補助トルクを、通常状態よりも減少補正した転舵トルクの大きさと同一または略同一の大きさのトルクとして演算する処理を行う。
ステップS112では、指令演算部54が、転舵モータ2の温度Ttと転舵モータ2の停止閾値温度Stとを比較し、転舵モータ2の温度Ttが停止閾値温度Stを超えているか否かを判定(ステップS112に示す「Tt>St?」)する。
ここで、転舵モータ2の停止閾値温度Stは、転舵モータ2が正常に駆動することが困難な使用限界温度よりも低い温度であるとともに、クラッチ締結温度St1よりも高い温度であり、予め設定して、指令演算部54に記憶させておく。
ステップS112において、温度Ttが停止閾値温度St以上である(図中に示す「No」)と判定すると、操舵制御装置1が行う処理は、ステップS114へ移行する。
一方、ステップS112において、温度Ttが停止閾値温度Stを超えている(図中に示す「Yes」)と判定すると、操舵制御装置1が行う処理は、ステップS116へ移行する。
なお、ステップS114で行う処理の説明は、後述する。
ステップS116では、指令演算部54が、転舵モータ電流指令It’として用いる高温時転舵モータ電流指令It_k’を「0」とする(ステップS116に示す「It’=It_k’=0」)。なお、特に図示しないが、反力モータ8の駆動制御は継続する。ステップS116において、高温時転舵モータ電流指令It_k’を「0」とすると、操舵制御装置1が行う処理は、ステップS118へ移行する。
ステップS118では、指令演算部54が、反力モータ8の温度Thと反力モータ8の停止閾値温度Shとを比較し、反力モータ8の温度Thが停止閾値温度Shを超えているか否かを判定(ステップS118に示す「Th>Sh?」)する。
ここで、反力モータ8の停止閾値温度Shは、反力モータ8が正常に駆動することが困難な使用限界温度よりも低い温度であり、予め設定して、指令演算部54に記憶させておく。
ステップS118において、温度Thが停止閾値温度Sh以上である(図中に示す「No」)と判定すると、操舵制御装置1が行う処理は、ステップS120へ移行する。
一方、ステップS118において、温度Thが停止閾値温度Shを超えている(図中に示す「Yes」)と判定すると、操舵制御装置1が行う処理は、ステップS122へ移行する。
ステップS122では、指令演算部54が、反力モータ電流指令Ih’として用いる高温時反力モータ電流指令Ih_k’を「0」とする(ステップS122に示す「Ih’=Ih_k’=0」)。ステップS122において、高温時反力モータ電流指令Ih_k’を「0」とすると、操舵制御装置1が行う処理は、ステップS130へ移行する。
ステップS114では、ステップS118と同様、指令演算部54が、反力モータ8の温度Thと反力モータ8の停止閾値温度Shとを比較し、反力モータ8の温度Thが停止閾値温度Shを超えているか否かを判定(ステップS114に示す「Th>Sh?」)する。
ステップS114において、温度Thが停止閾値温度Sh以上である(図中に示す「No」)と判定すると、操舵制御装置1が行う処理は、ステップS120へ移行する。
一方、ステップS114において、温度Thが停止閾値温度Shを超えている(図中に示す「Yes」)と判定すると、操舵制御装置1が行う処理は、ステップS124へ移行する。
なお、ステップS120で行う処理の説明は、後述する。
ステップS124では、ステップS122と同様、指令演算部54が、反力モータ電流指令Ih’として用いる高温時反力モータ電流指令Ih_k’を「0」とする(ステップS124に示す「Ih’=Ih_k’=0」)。ステップS124において、高温時反力モータ電流指令Ih_k’を「0」とすると、操舵制御装置1が行う処理は、ステップS126へ移行する。
ステップS126では、指令演算部54が、転舵モータ電流指令It’として用いる高温時転舵モータ電流指令It_k’を、以下の式(6)で演算する。
It_k’=Vts×Gt1 … (6)
すなわち、ステップS126では、上述したステップS108と異なり、転舵モータ減算電流値It1’を用いずに、高温時転舵モータ電流指令It_k’を演算(ステップS108に示す「It’=It_k’=Vts×Gt1」)する。ステップS126において、高温時転舵モータ電流指令It_k’を演算すると、操舵制御装置1が行う処理は、ステップS120へ移行する。
ステップS120では、指令演算部54が、転舵モータ2の温度Ttと転舵モータ2の停止閾値温度Stとを比較し、転舵モータ2の温度Ttが停止閾値温度Stを超えているか否かを判定(ステップS120に示す「Tt>St?」)する。
ステップS120において、温度Ttが停止閾値温度St以上である(図中に示す「No」)と判定すると、操舵制御装置1が行う処理は、ステップS130へ移行する。
一方、ステップS120において、温度Ttが停止閾値温度Stを超えている(図中に示す「Yes」)と判定すると、操舵制御装置1が行う処理は、ステップS128へ移行する。
ステップS128では、指令演算部54が、転舵モータ電流指令It’として用いる高温時転舵モータ電流指令It_k’を「0」とする(ステップS128に示す「It’=It_k’=0」)。ステップS128において、高温時転舵モータ電流指令It_k’を「0」とすると、操舵制御装置1が行う処理は、ステップS130へ移行する。
ステップS130では、指令演算部54が、転舵モータ2の温度Ttと転舵モータ2の制御復帰閾値温度St2とを比較するとともに、反力モータ8の温度Thと反力モータ8の制御復帰閾値温度Sh1とを比較する。そして、転舵モータ2の温度Ttが制御復帰閾値温度St2を超えているか否かと、反力モータ8の温度Thが制御復帰閾値温度Sh1を超えているか否かを判定(ステップS130に示す「Tt>St2? and Th>Sh1?」)する。
ここで、転舵モータ2の制御復帰閾値温度St2は、上述したクラッチ締結温度St1よりも低い温度であり、予め設定して、指令演算部54に記憶させておく。また、反力モータ8の制御復帰閾値温度Sh1は、上述した停止閾値温度Shよりも低い温度であり、予め設定して、指令演算部54に記憶させておく。制御復帰閾値温度St2をクラッチ締結温度St1よりも低い温度とする理由と、制御復帰閾値温度Sh1を停止閾値温度Shよりも低い温度とする理由は、共に、ヒステリシスを持たせるためである。
ステップS130において、温度Ttが制御復帰閾値温度St2以下であるとともに、温度Thが制御復帰閾値温度Sh1である(図中に示す「No」)と判定すると、操舵制御装置1が行う処理は、ステップS104へ移行する。これにより、締結状態のクラッチ6を開放状態に切り換えるとともに、転舵モータ制御部4及び反力モータ制御部10に、通常時における制御を行わせて、操舵制御装置1が行う処理を、通常時における制御へ復帰させる。
一方、ステップS130において、二つの条件が成立している(図中に示す「Yes」)と判定すると、操舵制御装置1が行う処理は、ステップS100の処理に復帰(図3中に示す「RETURN」)する。ここで、ステップS130で判定する「二つの条件」とは、温度Ttが制御復帰閾値温度St2を超えていることと、温度Thが制御復帰閾値温度Sh1を超えていることである。
(動作)
次に、図1から図3を参照して、本実施形態の操舵制御装置1が行なう動作の一例について説明する。
上述したように、操舵制御装置1を作動させると、転舵モータ2の温度Ttと反力モータ8の温度Thを推定し、さらに、クラッチ6を開放状態に切り換えている状態で、転舵モータ2の温度Ttがクラッチ締結温度St1を超えているか否かを判定する。
そして、転舵モータ2の温度Ttがクラッチ締結温度St1を超えていると判定すると、転舵モータ2が過熱していると判定し、開放状態のクラッチ6を締結状態に切り換えて、操舵輪32と転舵輪24とを機械的に連結する。
開放状態のクラッチ6を締結状態に切り換えた後、高温時転舵モータ電流指令It_k’を演算して、転舵モータ2の駆動制御を継続する。これに加え、高温時反力モータ電流指令Ih_k’を演算して、反力モータ8が発生させるトルクを、操舵輪32の操舵操作を補助する操舵補助トルクとして用いる。
すなわち、本実施形態の操舵制御装置1では、転舵モータ2が過熱していると判定し、開放状態のクラッチ6を締結状態に切り換えて、操舵輪32と転舵輪24とを機械的に連結した後も、転舵モータ2の駆動制御を継続することとなる。
このため、転舵モータ2が操舵操作に対する負荷となることを抑制することが可能となり、転舵モータ2の過熱時にトルク伝達経路を機械的に結合しても、運転者が負担する操舵トルクの増加を抑制することが可能となる。
また、本実施形態の操舵制御装置1では、転舵モータ2が過熱していると判定し、開放状態のクラッチ6を締結状態に切り換えて、操舵輪32と転舵輪24とを機械的に連結しても、反力モータ8が発生させる操舵補助トルクにより、操舵操作を補助する。
このため、転舵モータ2の過熱を抑制するために、通常時制御において転舵モータ2が出力するトルクを減算しても、この減算分を、反力モータ8が出力する操舵補助トルクにより補填することが可能となる。これにより、転舵モータ2の過熱時にトルク伝達経路を機械的に結合しても、運転者が負担する操舵トルクの増加を抑制することが可能となる。
開放状態のクラッチ6を締結状態に切り換えた状態で、転舵モータ2の駆動制御を継続している状態で、転舵モータ2の温度Ttが停止閾値温度Stを超えていると判定すると、転舵モータ2の駆動制御を停止させる。
同様に、開放状態のクラッチ6を締結状態に切り換えた状態で、反力モータ8の駆動制御を継続している状態で、反力モータ8の温度Thが停止閾値温度Shを超えていると判定すると、反力モータ8の駆動制御を停止させる。
そして、温度Ttが制御復帰閾値温度St2以下であるとともに、温度Thが制御復帰閾値温度Sh1であると判定すると、締結状態のクラッチ6を開放状態に切り換える。これに加え、転舵モータ2及び反力モータ8の駆動状態を、SBWシステムの通常時における駆動状態とする。
なお、上述したように、本実施形態の操舵制御装置1の動作で実施する操舵制御方法は、転舵モータ2の温度Ttが予め設定したクラッチ締結温度St1を超えているか否かを判定する転舵モータ温度判定ステップを有する。さらに、本実施形態の操舵制御方法は、転舵モータ温度判定ステップで温度Ttがクラッチ締結温度St1を超えていると判定すると、クラッチ6が開放状態にある場合に締結状態に切り換えるクラッチ制御ステップを有する。これに加え、本実施形態の操舵制御方法は、クラッチ制御ステップで開放状態のクラッチ6を締結状態に切り換えた後も、転舵モータ2の駆動制御を継続させる転舵モータ制御ステップを有する。
これに加え、本実施形態の操舵制御装置1の動作で実施する操舵制御方法は、クラッチ制御ステップで開放状態のクラッチ6を締結状態に切り換えると、操舵輪32の操作を補助するように操作方向と同じ方向へ作用する操舵補助トルクを反力モータ8で出力する反力モータ制御ステップを有する。
以上により、転舵位置サーボ制御部30及び指令演算部54は、転舵モータ温度判定部に対応する。
同様に、ステップS102は、転舵モータ温度判定ステップに対応する。また、ステップS106は、クラッチ制御ステップに対応する。また、ステップS108は、転舵モータ制御ステップに対応する。また、ステップS110は、反力モータ制御ステップに対応する。
(第一実施形態の効果)
(1)クラッチ制御部58が、転舵位置サーボ制御部30及び指令演算部54(転舵モータ温度判定部)が転舵モータ2の温度Ttがクラッチ締結温度St1を超えていると判定すると、クラッチ6が開放状態にある場合に締結状態に切り換える。これに加え、転舵モータ制御部4が、クラッチ制御部58が開放状態のクラッチ6を締結状態に切り換えた後も、転舵モータ2の駆動制御を継続させる。
このため、転舵モータ2の温度Ttがクラッチ締結温度St1を超えている状態で、開放状態のクラッチ6を締結状態に切り換えてトルク伝達経路を機械的に結合した後も、転舵モータ2の駆動制御を継続させることが可能となる。
その結果、転舵モータ2の過熱時にトルク伝達経路を機械的に結合しても、転舵モータ2が操舵操作に対する負荷となることを抑制することが可能となり、運転者が負担する操舵トルクの増加を抑制することが可能となる。
また、転舵モータ2の過熱時にトルク伝達経路を機械的に結合するため、トルク伝達経路を機械的に分離する場合と比較して、転舵モータ2の温度Ttが上昇して駆動制御を停止させる必要があるまでに経過する時間を、延長させることが可能となる。
これにより、トルク伝達経路を機械的に分離する場合と比較して、転舵モータ2が操舵操作に対する負荷となるまでに経過する時間を延長させることが可能となり、運転者が負担する操舵トルクの増加を抑制することが可能な時間を延長させることが可能となる。
(2)転舵モータ制御部4が、クラッチ制御部58が開放状態のクラッチ6を締結状態に切り換えると、転舵トルクを通常状態よりも減少補正する。
このため、転舵トルクを通常状態よりも減少補正しない場合と比較して、転舵モータ2の温度Ttの上昇を抑制することが可能となる。
その結果、転舵モータ2の温度Ttが上昇して駆動制御を停止させる必要があるまでに経過する時間を、延長させることが可能となり、転舵モータ2が操舵操作に対する負荷となるまでに経過する時間を延長させることが可能となる。これにより、運転者が負担する操舵トルクの増加を抑制することが可能な時間を延長させることが可能となる。
(3)反力モータ制御部10が、クラッチ制御部58が開放状態のクラッチ6を締結状態に切り換えると、操舵輪32の操作を補助するように操作方向と同じ方向へ作用する操舵補助トルクを、反力モータ8から出力させる。これに加え、操舵補助トルクを、通常状態よりも減少補正した転舵トルクの大きさと同一または略同一の大きさのトルクとする。
このため、転舵モータ2の過熱を抑制するために、通常時制御において転舵モータ2が出力するトルクを減算しても、この減算分を、反力モータ8が発生させる操舵補助トルクにより補填することが可能となる。
その結果、転舵モータ2の過熱時にトルク伝達経路を機械的に結合しても、転舵モータ2の過熱を抑制するとともに、運転者が負担する操舵トルクの増加を抑制することが可能となる。
これに加え、操舵補助トルクを、通常状態よりも減少補正した転舵トルクの大きさと同一または略同一の大きさのトルクとする。
これにより、転舵モータ2の過熱時にトルク伝達経路を機械的に結合しても、転舵モータ2の過熱を抑制するとともに、運転者が負担する操舵トルクの変化を減少させて、運転者が負担する操舵トルクの増加を抑制することが可能となる。
(4)クラッチ締結温度St1を、転舵モータ2に予め設定されている使用限界温度よりも予め設定した温度差分低い温度とする。
このため、転舵モータ2の過熱時に転舵モータ2の温度Ttが上昇しても、使用限界温度へ到達する前に、温度差分の余裕を持ってトルク伝達経路を機械的に結合することが可能となる。
その結果、転舵モータ2の過熱時に、上昇した転舵モータ2の温度Ttが使用限界温度へ到達する可能性を低減させることが可能となり、転舵モータ2の温度Ttが上昇して駆動制御を停止させる必要があるまでに経過する時間を、延長させることが可能となる。
(5)本実施形態の操舵制御方法では、転舵モータ温度判定ステップにおいて、転舵モータ2の温度Ttがクラッチ締結温度St1を超えていると判定すると、クラッチ制御ステップにおいて、クラッチ6が開放状態にある場合に締結状態に切り換える。これに加え、クラッチ制御ステップにおいて、開放状態のクラッチ6を締結状態に切り換えた後も、転舵モータ制御ステップにおいて、転舵モータ2の駆動制御を継続させる。
このため、転舵モータ2の温度Ttがクラッチ締結温度St1を超えている状態で、開放状態のクラッチ6を締結状態に切り換えてトルク伝達経路を機械的に結合しても、転舵モータ2の駆動制御を継続させることが可能となる。
その結果、転舵モータ2の過熱時にトルク伝達経路を機械的に結合しても、転舵モータ2が操舵操作に対する負荷となることを抑制することが可能となり、運転者が負担する操舵トルクの増加を抑制することが可能となる。
これに加え、トルク伝達経路を機械的に分離する場合と比較して、転舵モータ2の温度Ttが上昇して駆動制御を停止させる必要があるまでに経過する時間を、延長させることが可能となる。
これにより、トルク伝達経路を機械的に分離する場合と比較して、転舵モータ2が操舵操作に対する負荷となるまでに経過する時間を延長させることが可能となり、運転者が負担する操舵トルクの増加を抑制することが可能な時間を延長させることが可能となる。
(6)本実施形態の操舵制御方法では、クラッチ制御ステップで開放状態にあるクラッチ6を締結状態に切り換えると、反力モータ制御ステップにおいて、操舵輪32の操作を補助する操舵補助トルクを反力モータ8で出力する。
このため、転舵モータ2の過熱を抑制するために、通常時制御において転舵モータ2が出力するトルクを減算しても、この減算分を、反力モータ8が発生させる操舵補助トルクにより補填することが可能となる。
その結果、転舵モータ2の過熱時にトルク伝達経路を機械的に結合しても、転舵モータ2の過熱を抑制するとともに、運転者が負担する操舵トルクの増加を抑制することが可能となる。
(変形例)
(1)本実施形態の操舵制御装置1では、クラッチ制御部58が開放状態にあるクラッチ6を締結状態に切り換えると、反力モータ制御部10が操舵補助トルクを反力モータ8で出力する処理を行うが、これに限定するものではない。すなわち、クラッチ制御部58が開放状態にあるクラッチ6を締結状態に切り換えると、反力モータ制御部10が反力モータ8を停止させる処理を行ってもよい。
この場合、操舵制御装置1は、図4中に示す処理を行う。なお、図4は、本実施形態の変形例の操舵制御装置1が行う処理を示すフローチャートである。
図4中に示すフローチャートは、車両の運転者がエンジンを始動させた(エンジンON)状態からスタート(図4中に示す「START」)し、ステップS200の処理へ移行する。なお、以降の記載では、図3を用いて説明した処理と同様の処理については、その説明を省略する場合がある。
ステップS200の処理は、上述したステップS100の処理と同様であるため、その説明を省略する。
ステップS202では、指令演算部54が、転舵モータ2の温度Ttとクラッチ締結温度St1とを比較し、転舵モータ2の温度Ttがクラッチ締結温度St1を超えているか否かを判定(ステップS202に示す「Tt>St1?」)する。ここで、ステップS202の処理は、クラッチ6を開放状態(通常状態)として行う。ステップS202において、温度Ttがクラッチ締結温度St1以上である(図中に示す「No」)と判定すると、操舵制御装置1が行う処理は、ステップS204へ移行する。
一方、ステップS202において、温度Ttがクラッチ締結温度St1を超えている(図中に示す「Yes」)と判定すると、操舵制御装置1が行う処理は、ステップS206へ移行する。
ステップS204の処理は、上述したステップS104の処理と同様であり、ステップS206の処理は、上述したステップS106の処理と同様であるため、それぞれ、説明を省略する。
ステップS208では、指令演算部54が、以下の式(7)を用いて、高温時転舵モータ電流指令It_k’を演算する。
It_k’=Vts×Gt1 … (7)
すなわち、ステップS208では、転舵モータ電流指令It’として、高温時転舵モータ電流指令It_k’を演算(ステップS208に示す「It’=It_k’=Vts×Gt1」)する。ステップS208において、高温時転舵モータ電流指令It_k’を演算すると、操舵制御装置1が行う処理は、ステップS210へ移行する。
ステップS210では、指令演算部54が、反力モータ電流指令Ih’として用いる高温時反力モータ電流指令Ih_k’を「0」とする(ステップS210に示す「Ih’=Ih_k’=0」)。ステップS210において、高温時反力モータ電流指令Ih_k’を「0」とすると、操舵制御装置1が行う処理は、ステップS212へ移行する。
ステップS212では、指令演算部54が、転舵モータ2の温度Ttと転舵モータ2の停止閾値温度Stとを比較し、転舵モータ2の温度Ttが停止閾値温度Stを超えているか否かを判定(ステップS212に示す「Tt>St?」)する。
ステップS212において、温度Ttが停止閾値温度Stを超えている(図中に示す「Yes」)と判定すると、操舵制御装置1が行う処理は、ステップS214へ移行する。
一方、ステップS212において、温度Ttが停止閾値温度St以上である(図中に示す「No」)と判定すると、操舵制御装置1が行う処理は、ステップS216へ移行する。
ステップS214では、指令演算部54が、転舵モータ電流指令It’として用いる高温時転舵モータ電流指令It_k’を「0」とする(ステップS214に示す「It’=It_k’=0」)。ステップS214において、高温時転舵モータ電流指令It_k’を「0」とすると、操舵制御装置1が行う処理は、ステップS216へ移行する。
ステップS216では、指令演算部54が、転舵モータ2の温度Ttと転舵モータ2の制御復帰閾値温度St2とを比較するとともに、反力モータ8の温度Thと反力モータ8の制御復帰閾値温度Sh1とを比較する。そして、転舵モータ2の温度Ttが制御復帰閾値温度St2を超えているか否かと、反力モータ8の温度Thが制御復帰閾値温度Sh1を超えているか否かを判定(ステップS216に示す「Tt>St2? and Th>Sh1?」)する。
ステップS216において、温度Ttが制御復帰閾値温度St2以下であるとともに、温度Thが制御復帰閾値温度Sh1である(図中に示す「No」)と判定すると、操舵制御装置1が行う処理は、ステップS204へ移行する。
一方、ステップS216において、二つの条件が成立している(図中に示す「Yes」)と判定すると、操舵制御装置1が行う処理は、ステップS200の処理に復帰(図4中に示す「RETURN」)する。ここで、ステップS216で判定する「二つの条件」とは、温度Ttが制御復帰閾値温度St2を超えていることと、温度Thが制御復帰閾値温度Sh1を超えていることである。
(2)本実施形態の操舵制御装置1では、操舵補助トルクを、通常状態よりも減少補正した転舵トルクの大きさと同一または略同一の大きさのトルクとしたが、これに限定するものではない。すなわち、反力モータ制御部10が、反力モータ8から出力させる操舵補助トルクを、通常状態よりも減少補正した転舵トルクの大きさと同一または略同一の大きさのどちらでもないトルクとしてもよい。
この場合であっても、転舵モータ2の過熱を抑制するために、通常時制御において転舵モータ2が出力するトルクを減算しても、この減算分を、反力モータ8が発生させる操舵補助トルクにより補填することが可能となる。
その結果、転舵モータ2の過熱時にトルク伝達経路を機械的に結合しても、転舵モータ2の過熱を抑制するとともに、運転者が負担する操舵トルクの増加を抑制することが可能となる。
(3)本実施形態の操舵制御装置1では、転舵モータ2の温度Ttを推定したが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、転舵モータ2の内部に温度センサを設置し、この設置した温度センサにより、転舵モータ2の温度Ttを検出してもよい。
同様に、反力モータ8の内部に温度センサを設置し、この設置した温度センサにより、反力モータ8の温度Thを検出してもよい。
1 操舵制御装置
2 転舵モータ
4 転舵モータ制御部
6 クラッチ
8 反力モータ
10 反力モータ制御部
12 転舵モータ出力軸
14 ラックギア
16 転舵モータ角度センサ
18 ラック軸
20 タイロッド
22 ナックルアーム
24 転舵輪
26 タイヤ軸力センサ
28 通信ライン
30 転舵位置サーボ制御部
32 操舵輪
34 操舵角センサ
36 操舵トルクセンサ
38 反力モータ角度センサ
40 クラッチ板
42 ステリングシャフト
44 ピニオン軸
46 ピニオン
48 ピニオン角度センサ
50 車速センサ
52 エンジンコントローラ
54 指令演算部
56 反力サーボ制御部
58 クラッチ制御部

Claims (7)

  1. 転舵輪を転舵させるための転舵トルクを出力する転舵モータと、
    操舵輪の操作に応じた目標転舵角を算出し、当該目標転舵角に応じて前記転舵モータを駆動制御する転舵モータ制御部と、
    前記操舵輪と前記転舵輪との間のトルク伝達経路を機械的に分離する開放状態と、前記トルク伝達経路を機械的に連結する締結状態と、を切り換え可能なクラッチと、
    前記転舵モータの温度が予め設定した温度を超えているか否かを判定する転舵モータ温度判定部と、
    前記転舵モータ温度判定部が前記転舵モータの温度が前記温度を超えていると判定すると、クラッチが開放状態にある場合に締結状態に切り換えるクラッチ制御部と、を備え、
    前記転舵モータ制御部は、前記クラッチ制御部が開放状態のクラッチを締結状態に切り換えた後も前記転舵モータの駆動制御を継続させることを特徴とする車両の操舵制御装置。
  2. 前記転舵モータ制御部は、前記クラッチ制御部が開放状態のクラッチを締結状態に切り換えると、前記転舵トルクを通常状態よりも減少補正することを特徴とする請求項1に記載した車両の操舵制御装置。
  3. 前記操舵輪を操舵する操作方向とは反対方向へ作用する反力を出力する反力モータと、
    前記反力モータを駆動制御する反力モータ制御部と、を備え、
    前記反力モータ制御部は、前記クラッチ制御部が開放状態のクラッチを締結状態に切り換えると、前記操舵輪の操作を補助するように操作方向と同じ方向へ作用する操舵補助トルクを前記反力モータで出力することを特徴とする請求項1または請求項2に記載した車両の操舵制御装置。
  4. 前記操舵輪を操舵する操作方向とは反対方向へ作用する反力を出力する反力モータと、
    前記反力モータを駆動制御する反力モータ制御部と、を備え、
    前記反力モータ制御部は、前記クラッチ制御部が開放状態のクラッチを締結状態に切り換えると、前記操舵輪の操作を補助するように操作方向と同じ方向へ作用する操舵補助トルクを前記反力モータで出力し、
    前記操舵補助トルクは、前記通常状態よりも減少補正した前記転舵トルクの大きさと同一または略同一の大きさのトルクであることを特徴とする請求項2に記載した車両の操舵制御装置。
  5. 前記温度は、前記転舵モータに予め設定されている使用限界温度よりも予め設定した温度差分低い温度であることを特徴とする特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載した車両の操舵制御装置。
  6. 転舵輪を転舵させるための転舵トルクを出力する転舵モータの温度が予め設定した温度を超えているか否かを判定する転舵モータ温度判定ステップと、
    前記転舵モータ温度判定ステップで前記転舵モータの温度が前記温度を超えていると判定すると、操舵輪と前記転舵輪との間のトルク伝達経路を機械的に分離する開放状態と、前記トルク伝達経路を機械的に連結する締結状態と、を切り換え可能なクラッチが開放状態にある場合に締結状態に切り換えるクラッチ制御ステップと、
    前記クラッチ制御ステップで開放状態のクラッチを締結状態に切り換えた後も、前記操舵輪の操作に応じた目標転舵角を算出し、当該目標転舵角に応じた前記転舵モータの駆動制御を継続させる転舵モータ制御ステップと、を有することを特徴とする車両の操舵制御方法。
  7. 前記操舵輪を操舵する操作方向とは反対方向へ作用する反力を出力する反力モータを駆動制御する反力モータ制御ステップを有し、
    前記反力モータ制御ステップでは、前記クラッチ制御ステップで開放状態にあるクラッチを締結状態に切り換えると、前記操舵輪の操作を補助するように操作方向と同じ方向へ作用する操舵補助トルクを前記反力モータで出力することを特徴とする請求項6に記載した車両の操舵制御方法。
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