JP2013032689A - 柱梁架構の耐震補強構造 - Google Patents

柱梁架構の耐震補強構造 Download PDF

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Abstract

【課題】現場での溶接を行うことなく、また、柱や梁のフランジに穴をあけることを行うことなく補強部材を取り付けることによって耐震補強が可能であり、長期にわたって安定して補強できる柱梁架構の耐震補強構造を提供すること。
【解決手段】柱のフランジ面12aや梁のフランジ面14aにガセットプレートの固定面部18aが面を合わせて設置され、これらが挟締金具20で挟締されることによって柱12や梁14にガセットプレート18が固定され、このガセットプレート18に補強部材16の端部が取り付けられる。挟締金具20の金具本体22の少なくとも一方の端部22bには雌ネジ孔24bが幅方向に沿って2つ以上形成されており、一方の端部22bにつき2本以上の挟締ボルト20によって2箇所以上で挟締されている。挟締ボルト20には、緩みや取り外しを防止する措置が講じられている。
【選択図】図1

Description

本発明は、建物の柱梁架構を補強する柱梁架構の耐震補強構造に関し、さらに詳しくは、柱および梁が形鋼で構成された建物の柱梁架構を補強する柱梁架構の耐震補強構造に関するものである。
従来、例えば鉄骨造の建物の柱梁架構を補強する方法としては、これらの建物の柱梁架構に方杖やブレースなどの補強部材を設置する方法がある。このような補強部材を建物の柱梁架構に設置することで、水平力に対して建物の耐力を増加させることができる。この際、柱梁架構に生じる応力を補強部材に十分伝達させるためには、補強部材の端部を柱梁架構に接合して一体化させることが必要である。したがって、その接合方法が重要となる。
この種の接合方法としては、溶接が良く知られている。具体的には、方杖やブレースなどの補強部材の端部をボルトなどで固定するガセットプレートを溶接によって柱梁架構の柱あるいは梁に取り付け、取り付けられたガセットプレートに方杖やブレースなどの補強部材の端部をボルトなどで固定する方法などがある。
また、この種の接合方法においては、ボルト接合などの、溶接を用いない接合方法も知られている。
また、本願発明に関連する技術としては、特許文献1に記載の技術がある。特許文献1は、仮設の構造物の鋼材を固定する技術である。具体的には、万力を用いて鉄骨どうしの架設接合部の重合フランジを挟持接合するものである。特許文献1に記載の技術は、仮設の構造物に関するものであるため、使用後には万力を取り外すことが前提となる技術である。
特開平08−284909号公報
ここで、溶接による場合には、現場において柱梁架構の柱あるいは梁にガセットプレートの溶接を行う必要がある。この場合には、火事等の発生を予防する目的から、大規模な溶接養生が必要となり、コストの増加に繋がる。また、現場の環境が悪い場合(例えば、上向きに溶接を行う必要がある場合など)などでは溶接欠陥などが生じることがあり、耐震性能の低下が心配される。そこで、現場での溶接を必要としない接合方法が望まれる。
これに対し、ボルト接合は、現場での溶接を必要としない接合方法ではあるが、この接合方法の場合、柱や梁のフランジにボルトを通すための穴をあける必要がある。これにより、柱や梁の断面積を小さくしてしまうため、柱や梁の耐力を低下させるおそれがある。
特許文献1に記載の技術は、仮設の構造物の鋼材を固定するものであり、建物の耐震補強を行うものではない。この万力は、仮設の構造物に用いるものであることから、簡単に取り外せることが前提となっており、恒久的な建物の構造部材としては不向きである。また、この万力は、共通軸線上に形成された一対の雌螺孔に螺入された一対の螺杆の先端間で1点で鋼材を固定するため、傾きやすいという問題がある。これが傾いた場合には、挟んだ鋼材がずれて架設接合部が外れるおそれがある。
本発明が解決しようとする課題は、現場での溶接を行うことなく、また、柱や梁のフランジに穴をあけることを行うことなく補強部材を取り付けることによって耐震補強が可能であり、長期にわたって安定して補強できる柱梁架構の耐震補強構造を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る柱梁架構の耐震補強構造は、柱および梁が形鋼で構成された建物の柱梁架構に補強部材が設置されて補強される柱梁架構の耐震補強構造において、前記柱または梁のフランジ面に面を合わせて設置される固定面部の面から前記補強部材の端部が取り付けられる取付面部が起立形成された構成のガセットプレートの該固定面部が前記柱または梁のフランジ面に面を合わせて設置され、該フランジとともに該ガセットプレートの固定面部が、コ字型の金具本体の上下端部のうち少なくとも一方の端部にその上下方向に貫通形成された雌ネジ孔を該端部の幅方向に沿って2つ以上有し、該雌ネジ孔に対して一方の端部につき2本以上の挟締ボルトが螺入されることによってコ字型の開口部内に配置された部材を上下方向から2箇所以上で挟締する挟締金具で挟締されて、前記柱または梁に該ガセットプレートが固定され、前記金具本体の雌ネジ孔に螺入された挟締ボルトには、緩みや取り外しを防止する措置が講じられており、この状態で、前記ガセットプレートに前記補強部材の端部が取り付けられていることを要旨とするものである。
この際、前記緩みや取り外しを防止する措置は、前記金具本体の雌ネジ孔に螺入された挟締ボルトにロックナットを用いることによって講じられていることが好ましい。また、前記柱のウェブを境にした同じ面側あるいは前記梁のウェブを境にした同じ面側には前記挟締金具が2個以上用いられて挟締金具同士が連結金具によって連結されていることが好ましい。
そして、本発明に係る柱梁架構の耐震補強構造においては、前記柱および梁を構成する形鋼がH形鋼または溝形鋼であり、柱および梁を構成する形鋼の一対のフランジ間に引張力や圧縮力に作用する耐引張圧縮用鋼材が配置固定されて、前記柱および梁を構成する形鋼の引張耐力や圧縮耐力が向上されていても良い。
本発明に係る柱梁架構の耐震補強構造によれば、柱または梁のフランジとともにガセットプレートの固定面部が上記挟締金具で挟締されることにより柱または梁にガセットプレートが固定され、このガセットプレートに補強部材の端部が取り付けられることにより柱梁架構に補強部材が設置されることから、現場での溶接を行うことなく、また、柱や梁のフランジに穴をあけることを行うことなく補強部材を取り付けることによって耐震補強が可能である。
また、上記挟締金具によれば、コ字型の金具本体の上下端部のうち少なくとも一方の端部につき2本以上の挟締ボルトが用いられており、柱または梁のフランジとともにガセットプレートの固定面部が上下方向から2箇所以上で挟締されているため、従来の万力のように1点で鋼材を固定するときに万力自体が傾きやすいといった現象は起こりにくくなり、長期にわたって安定して補強することができる。
ここで、金具本体の雌ネジ孔に螺入された挟締ボルトに緩みを防止する措置が講じられているものは、長期の使用による挟締ボルトの緩みが抑えられるため、長期にわたって安定して補強することができる。したがって、恒久的な建物の構造部材として好適なものである。また、金具本体の雌ネジ孔に螺入された挟締ボルトに取り外しを防止する措置が講じられているものは、簡単に取り外せないことが前提となっており、恒久的な建物の構造部材として好適なものである。
この際、金具本体の雌ネジ孔に螺入された挟締ボルトにロックナットを用いることによって緩みや取り外しを防止する措置が講じられていれば、長期の使用による挟締ボルトの緩みが確実に抑えられ、長期にわたって安定して補強される。
そして、柱のウェブを境にした同じ面側あるいは梁のウェブを境にした同じ面側に用いられた2個以上の挟締金具同士が連結金具によって連結されていれば、個々の挟締金具が傾くといった現象が起こりにくくなるため、長期にわたって安定して補強することができる。また、このようにして挟締金具が傾くことが抑えられれば、これによる耐力の低下を抑えることができるとともに、柱梁架構全体の曲げ剛性の増加も見込むことができる。
そして、柱および梁を構成する形鋼がH形鋼または溝形鋼であり、柱および梁を構成する形鋼の一対のフランジ間に引張力や圧縮力に作用する耐引張圧縮用鋼材が配置固定されていれば、柱および梁を構成する形鋼の引張耐力や圧縮耐力が向上するため、優れた性能が発揮される。
本発明の一実施形態に係る柱梁架構の耐震補強構造の正面図であり、補強部材として方杖を用いた例である。 図1の柱梁架構の耐震補強構造において用いられる挟締金具の一例を示した図である。 図1の柱梁架構の耐震補強構造において挟締金具を用いて形鋼のフランジとガセットプレートの固定面部とが挟締された状態を示した図である。 本発明の柱梁架構の耐震補強構造において用いられる挟締金具の他の例であり、ロックナットを用いて緩みや取り外しを防止する措置が講じられるものを示した図である。 本発明の柱梁架構の耐震補強構造において挟締金具を用いて形鋼のフランジとガセットプレートの固定面部とが挟締された状態を示した図であり、連結金具により挟締ボルトが連結された状態を示した図である。 図1に示す柱梁架構の耐震補強構造において、H形鋼の一対のフランジ間に引張力や圧縮力に作用する耐引張圧縮用鋼材が配置固定された状態を示した図である。 図6のA−A断面図である。 図7の変形例であり、耐引張圧縮用鋼材の形状が異なるものの断面図である。 本発明の柱梁架構の耐震補強構造において用いられる挟締金具の他の例であり、上下方向の両側から挟締ボルトが螺入される構造のものを示した図である。 本発明の他の実施形態に係る柱梁架構の耐震補強構造の正面図であり、補強部材としてブレースを用いた例である。 図10に示す柱梁架構の耐震補強構造において、H形鋼の一対のフランジ間に引張力や圧縮力に作用する耐引張圧縮用鋼材が配置固定された状態を示した図である。
以下に、本発明の実施形態について図を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る柱梁架構の耐震補強構造の正面図であり、補強部材として方杖を用いた例である。図2は、図1の柱梁架構の耐震補強構造において用いられる挟締金具の一例を示した図である。図3は、図1の柱梁架構の耐震補強構造において挟締金具を用いて形鋼のフランジとガセットプレートの固定面部とが挟締された状態を示した図である。なお、下記の挟締金具においては、便宜上、方向を定めて上下方向としているが、これによって建物における取り付け方向を特定するものではない。
図1に示す本発明の一実施形態に係る柱梁架構の耐震補強構造10において、耐震補強を施す建物は鉄骨造よりなるものである。柱梁架構の柱12および梁14は、それぞれH形鋼で構成されている。このような構成の柱梁架構に対して、補強部材としての方杖16を設置することにより柱梁架構の耐震補強が行われる。方杖16には、例えばH形鋼や溝形鋼などの鋼材などが用いられる。
方杖16は、地震等の振動によって建物に作用する水平力(層間変形による力)に対して抵抗するものでもあり、柱梁架構の接合部を補強するものでもあって、柱梁架構の接合部近傍で柱12と梁14の間を繋ぐように設置される。方杖16の端部を柱梁架構の柱12または梁14に取り付けるための取付金具として、ガセットプレート18が用いられる。ガセットプレート18は、柱梁架構の内側のフランジ12a、14aに取り付けられる。
ガセットプレート18には、柱12または梁14のフランジ面に面を合わせて設置される固定面部18aと、固定面部18aの面から起立形成された取付面部18bとが備えられている。取付面部18bには、補強部材としての方杖16の端部をボルト42で固定するために設けられた固定孔が備えられており、ボルト接合によってガセットプレート18の取付面部18bに方杖16の端部が取り付けられる。ガセットプレート18は、固定面部18aと取付面部18bとを備えた構成から、断面形状はT字型になっている。ガセットプレート18は、その固定面部18aで、柱12のフランジ12aまたは梁14のフランジ14aに固定される。ガセットプレート18のフランジ12aまたはフランジ14aへの固定には、挟締金具20が用いられる。
挟締金具20は、図2に示すように、金具本体22がコ字型をしているものであり、コ字型の開口部22c内に配置された部材が上下方向から挟締される。金具本体22の上下端部22a,22bのうち一方の端部22b(図2では、下側の端部22bとして示している。)には、その上下方向に貫通形成された雌ネジ孔24bが備えられている。雌ネジ孔24bは、図3に示すように、一方の端部22b(下側の端部22b)の幅方向に沿って2つ備えられている。一方の端部22b(下側の端部22b)に形成された雌ネジ孔24bのそれぞれには、挟締ボルト26が螺入されている。挟締ボルト26は、一方の端部22b(下側の端部22b)に形成された雌ネジ孔24bの数に対応して、一方の端部22b(下側の端部22b)に2本用いられている。したがって、コ字型の開口部22c内に配置された部材は、2箇所で挟締される。
挟締金具20は、金具本体22の他方の端部22a(図2では、上側の端部22aとして示している。)にも、一方の端部22b(下側の端部22b)の雌ネジ孔24bと軸線を共通する位置に雌ネジ孔24aが備えられている。他方の端部22a(上側の端部22a)の雌ネジ孔24aには、固定ボルト28の軸部が螺入されている。固定ボルト28は、挟締ボルト26と共通する軸線上に配置され、コ字型の開口部22c内に配置された部材を挟締する際の挟締ボルト26に対する受部となる。
固定ボルト28は、コ字型の開口部22c内から雌ネジ孔24aに螺入されており、固定ボルト28の頭部は、他方の端部22a(上側の端部22a)の内側(コ字型の開口部22c内)に配置されている。したがって、固定ボルト28の頭部が挟締ボルト26に対する受部となる。固定ボルト28の頭部はその軸部よりも径が大きいため、挟締する部材に対する受部の接触面積が大きく、挟締金具20が傾きにくいという利点がある。
挟締ボルト26と同様、固定ボルト28も回すことは可能であるが、通常は、固定ボルト28は回さないで、挟締ボルト26を回すことによって、コ字型の開口部22c内に配置された部材を挟締する。固定ボルト28は、例えば、挟締ボルト26に対する受部としての位置(上下方向の位置)を調整する場合などにおいて回すことができる。したがって、回す必要がなければ、固定ボルト28を金具本体22に完全に固定(締結)しても良い。
柱梁架構の柱12または梁14にガセットプレート18を固定するには、挟締金具20を用いる。まず、柱梁架構の柱12の内側のフランジ面12aまたは梁14の内側のフランジ面14aに、ガセットプレート18の固定面部18aの面を合わせる。次いで、フランジ面12aまたはフランジ面14aとともにガセットプレート18の固定面部18aを挟締金具20で挟締する。この際、金具本体22の雌ネジ孔24bに螺入された挟締ボルト26には、緩みや取り外しを防止する措置が講じられている。緩みや取り外しを防止する措置は、緩みを防止する措置、取り外しを防止する措置、緩みと取り外しの両方を防止する措置のいずれの措置をも含むものである。
緩みを防止する措置は、挟締状態にある挟締ボルト26が緩まないようにするものである。また、長期にわたって耐震補強を施した状態を維持するものであることから、挟締ボルト26は、挟締後には取り外さないか、あるいは簡単には取り外せないようにすることが好ましい。ただし、ガセットプレート18を設置する位置が確定していないときにその位置の変更に対応させる場合などでは、取り外しを許容するものである。
取り外しを防止する措置は、挟締状態にある挟締ボルト26が簡単には取り外せないようにするものである。すなわち、長期にわたって耐震補強を施した状態を維持するものであることから、挟締ボルト26は、挟締後には取り外さないか、あるいは簡単には取り外せないようにするものである。ただし、ガセットプレート18を設置する位置が確定していないときにその位置の変更に対応させる場合などでは、取り外しを許容するものである。
このような緩みや取り外しを防止する措置の一例としては、図4に示す例を挙げることができる。図4には、金具本体22の雌ネジ孔24bに螺入された挟締ボルト26にロックナット30を用いたものを示している。ロックナット30は、一方の端部22b(下側の端部22b)の上下方向外側に設置されている。一方の端部22b(下側の端部22b)に対してロックナット30を締めることにより、一方の端部22bとロックナット30とが互いに締め合う方向(図4中の矢印の方向)に締められており、いわゆるダブルナット構造を形成することでねじが緩みにくくされ、また、挟締ボルト26が簡単には取り外せないようにされている。
挟締金具20は、1つのガセットプレート18に対して複数個用いることができる。ガセットプレート18の取付強度などを考慮してその数を定めれば良い。挟締金具20は、柱12のウェブ12bまたは梁14のウェブ14bを挟んで表裏の両側にバランス良く設置することができる。そして、柱12または梁14に固定されたガセットプレート18に補強部材としての方杖16の端部を取り付けて柱梁架構に方杖16を設置することにより柱梁架構が補強される。
以上のような柱梁架構の耐震補強構造10によれば、柱12のフランジ12aまたは梁14のフランジ14aとともにガセットプレート18の固定面部18aが挟締金具20で挟締されることにより柱12または梁14にガセットプレート18が固定され、このガセットプレート18に補強部材としての方杖16の端部が取り付けられることにより柱梁架構に補強部材としての方杖16が設置されることから、現場での溶接を行うことなく、また、柱12のフランジ12aや梁14のフランジ14aに穴をあけることを行うことなく補強部材としての方杖16を取り付けることによって耐震補強が可能である。
このとき、挟締金具20では、コ字型の金具本体22の上下端部22a,22bのうち一方の端部22b(例えば下側の端部22b)につき2本の挟締ボルト26が用いられており、柱12のフランジ12aまたは梁14のフランジ14aとともにガセットプレート18の固定面部18aが上下方向から2箇所で挟締されていることから、挟締金具20自体が傾きにくくされており、これによる耐力の低下等の発生も抑えられ、長期にわたって安定して耐震補強構造10が維持されることとなる。
そして、金具本体22の雌ネジ孔24bに螺入された挟締ボルト26に緩みを防止する措置が講じられることで、長期の使用による挟締ボルト26の緩みが抑えられ、長期にわたって安定して耐震補強構造10が維持されることとなる。したがって、恒久的な建物の構造部材として好適である。また、金具本体22の雌ネジ孔24bに螺入された挟締ボルト26に取り外しを防止する措置が講じられることで、挟締ボルト26は簡単には取り外せないものとなる。したがって、恒久的な建物の構造部材として好適である。
ここで、柱梁架構の耐震補強構造10においては、柱12のウェブ12bを境にした同じ面側あるいは梁14のウェブ14bを境にした同じ面側には2個以上の挟締金具20が用いられているが、図5に示すように、2個以上の挟締金具20同士が連結金具32や連結金具33によって連結されていても良い。図5は、連結金具により挟締ボルトが連結された状態を示した図である。図5(a)は、挟締金具20のコ字型の開口部22c側から見た図であり、図5(b)は、挟締金具20の側面側から見た図である。
連結金具32は、隣接する挟締金具20a,20b,・・・を互いにつなぐものであり、挟締金具20a,20b,・・・の一方の端部22b(下側の端部22b)の上下方向外側に設置されている。連結金具32において、挟締金具20a,20b,・・・のそれぞれの雌ネジ孔24bに対応する位置には挟締ボルト26が挿通される挿通孔32aがそれぞれ形成されており、挿通孔32aに挿通された挟締ボルト26が挟締金具20a,20b,・・・の一方の端部22bの上下方向外側から挟締金具20a,20b,・・・のそれぞれの雌ネジ孔24bに螺入された状態で、連結金具32を固定するための連結金具用ナット31が締め込まれると、連結金具用ナット31により連結金具32は挟締金具20a,20b,・・・の一方の端部22bの外側に締結(固定)される。
このとき、連結金具用ナット31は、連結金具32を介しているが、挟締金具20a,20b,・・・の一方の端部22bの外側に締め込まれており、一方の端部22bと連結金具用ナット31とが互いに締め合う方向に締められている。このため、連結金具用ナット31は、挟締ボルト26をロックするロックナットとしての機能も兼ね備えており、ねじが緩みにくくされ、また、挟締ボルト26が簡単には取り外せないようにされている。
連結金具33も、隣接する挟締金具20a,20b,・・・を互いにつなぐものであり、挟締金具20a,20b,・・・の他方の端部22a(上側の端部22a)の上下方向外側に設置されている。連結金具33において、挟締金具20a,20b,・・・のそれぞれの雌ネジ孔24aに対応する位置には連結金具33を固定するための連結金具用ボルト34が挿通される挿通孔33aがそれぞれ形成されており、挿通孔33aに挿通された連結金具用ボルト34が挟締金具20a,20b,・・・の他方の端部22aの上下方向外側から挟締金具20a,20b,・・・のそれぞれの雌ネジ孔24aに螺入されて締め込まれると、連結金具用ボルト34により連結金具33は挟締金具20a,20b,・・・の他方の端部22aの外側に締結(固定)される。
このように、挟締金具20a,20b,・・・は、連結金具32や連結金具33を介して連結される。挟締金具20同士には、連結金具32や連結金具33を介して力が伝達されることとなる。
なお、連結金具32や連結金具33の形状としては、特に限定されるものではない。例えば、板状の鋼材であっても良いし、L形鋼や溝形鋼などの形鋼であっても良い。また、挿通孔32a,33aは、挟締ボルト26が螺入されるねじ孔にすることもできる。
図5に示す構造においては、図3に示す構造と比較して、2個の挟締金具20が示されており、これらの挟締金具20を連結する連結金具32や連結金具33、連結金具32を締結するための連結金具用ナット31や連結金具33を締結するための連結金具用ボルト34を備えている点が異なるのみであり、これ以外の構成については図3に示す構造と同じである。
したがって、このような構成によれば、例えば一方の挟締金具20(例えば20a)が傾きかけても、連結金具32や連結金具33を介して連結されている他方の挟締金具20(例えば20b)が抵抗することによって、一方の挟締金具20が傾くのを抑えることができる。これにより、個々の挟締金具20が傾くのを抑えることができるため、これによる耐力の低下等を防ぐことができる。また、これにより、柱梁架構全体の曲げ剛性を上げることができる。したがって、長期にわたって安定して耐震補強構造10が維持されることとなる。
また、ここで、柱梁架構の耐震補強構造10においては、柱梁架構の柱12および梁14がH形鋼または溝形鋼で構成されている場合には、引張力によるフランジの曲げや圧縮力によるウェブの座屈を防止する措置を講じることができる。図6は、図1に示す柱梁架構の耐震補強構造10において、H形鋼の一対のフランジ間に引張力や圧縮力に作用する耐引張圧縮用鋼材が配置固定された状態を示した図である。図7は、図6のA−A断面図である。図8は、図7の変形例であり、耐引張圧縮用鋼材の形状が異なるものの断面図である。
耐引張圧縮用鋼材52は、柱12あるいは梁14を構成するH形鋼の一方のフランジの内側面に面接触させてフランジに沿って配置される第1平板部54aと、H形鋼の他方のフランジの内側面に面接触させてフランジに沿って配置される第2平板部54bと、第1平板部54aの面および第2平板部54bの面に直交する方向に沿って延び第1平板部54a−第2平板部54b間を連結する連結部56とを備えている。連結部56は、第1平板部54aおよび第2平板部54bの両端と両端間の内側に設けられており、補強用リブとして機能し、耐引張圧縮用鋼材52の引張耐力と圧縮耐力を高めている。
耐引張圧縮用鋼材52は、柱12を構成するH形鋼の一対のフランジ12a1,12a2間に配置されている。また、耐引張圧縮用鋼材52は、梁14を構成するH形鋼の一対のフランジ14a1,14a2間に配置されている。梁14を構成するH形鋼を例に挙げて説明すると、H形鋼の一方のフランジ14a1側では、その一方のフランジ14a1とともにガセットプレート18の固定面部18aと耐引張圧縮用鋼材52の第1平板部54aが挟締金具20で挟締され、H形鋼の他方のフランジ14a2側では、その他方のフランジ14a2とともに耐引張圧縮用鋼材52の第2平板部54bが挟締金具60で挟締されることで、耐引張圧縮用鋼材52はH形鋼に固定されている。なお、挟締金具60は、挟締金具20と同じ構成よりなるものである。
図6に示す柱梁架構の耐震補強構造50によれば、耐引張圧縮用鋼材52によって柱12および梁14を構成するH形鋼の引張耐力や圧縮耐力が向上するため、優れた性能が発揮される。
なお、図6に示す柱梁架構の耐震補強構造50においては、H形鋼の一対のフランジ間(12a1−12a2間、あるいは、14a1−14a2間)に耐引張圧縮用鋼材52を固定するために、その両方のフランジ側で挟締金具が用いられているが、例えば他方のフランジ(12a2あるいは14a2)側(奥のフランジ側)にスラブや壁などがある場合には、挟締金具60で挟むことはできない。このような場合には、図8に示すように、他の形状よりなる耐引張圧縮用鋼材62を用いることができる。
他の耐引張圧縮用鋼材62は、梁14を構成するH形鋼の一方のフランジ14a1の内側面に面接触させてフランジ14a1に沿って配置される平板部64と、平板部64から起立するようにH形鋼のウェブ14bの面に面接触させてウェブ14bに沿って配置される起立部66と、平板部64の面および起立部66の面に直交する方向に延び平板部64−起立部66間を連結する連結部68とを備えている。連結部68は、平板部64および起立部66の両端と両端間の内側に設けられており、補強用リブとして機能し、他の耐引張圧縮用鋼材62の引張耐力と圧縮耐力を高めている。
他の耐引張圧縮用鋼材62は、梁14を構成するH形鋼の一対のフランジ14a1,14a2間に配置されている。H形鋼の一方のフランジ14a1側では、その一方のフランジ14a1とともにガセットプレート18の固定面部18aと他の耐引張圧縮用鋼材62の平板部64が挟締金具20で挟締されている。そして、H形鋼のウェブ14b側では、ウェブ14bの面とこれに沿って配置されている起立部66の面を貫通する貫通孔を通してボルト70を用いてボルト締めされ、他の耐引張圧縮用鋼材62の起立部66がH形鋼のウェブ14bに固定されている。なお、図8は、梁14を構成するH形鋼について示しているが、柱12を構成するH形鋼についても同様に他の耐引張圧縮用鋼材62を配置することができる。
図8に示す柱梁架構の耐震補強構造によれば、他の耐引張圧縮用鋼材62によって柱12および梁14を構成するH形鋼の引張耐力や圧縮耐力が向上するため、優れた性能が発揮される。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
例えば上記実施形態においては、図1に示すように、挟締金具20の挟締ボルト26は柱梁架構の内側を向くように配置されているが、これは、挟締ボルト26の締め付けを行いやすくするためであり、挟締ボルト26は柱梁架構の外側を向くように配置されていても良い。
また、上記実施形態においては、図2に示すように、他方の端部22a(上側の端部22a)には固定ボルト28を螺入する雌ネジ孔24aが設けられているが、固定ボルト28を用いない構成にして、他方の端部22a(上側の端部22a)が雌ネジ孔24aを備えていない構成としても良い。この場合、挟締ボルト26に対する受部は他方の端部22a(上側の端部22a)となるが、一方の端部22b(下側の端部22b)の雌ネジ孔24bと共通する軸線上の位置に、他方の端部22a(上側の端部22a)の内面から隆起するボス部を金具本体22に一体的に形成してこれを受部としても良い。
また、上記実施形態においては、図2に示すように、頭部を有する固定ボルト28が示されているが、固定ボルト28を、頭部を有さないボルトとすることもできる。
また、上記実施形態においては、図2に示すように、挟締ボルト26は挟締金具20の一方の端部22b(下側の端部22b)の雌ネジ孔24bに螺入されているが、これは、挟締ボルト26の締め付け工程が少なくて済むためであり、図9に示すように、他方の端部22a(上側の端部22a)の雌ネジ孔24aにも挟締ボルト26と同じ構造の挟締ボルト35が挿入されて、両側の挟締ボルト26,35を回すことで上下方向から挟締される挟締金具36としても良い。
また、上記実施形態においては、図2〜3に示すように、一方の端部22b(下側の端部22b)の雌ネジ孔24bと他方の端部22a(上側の端部22a)の雌ネジ孔24aとは、共通する軸線上に設けられているが、これらは異なる軸線上に設けられていても良い。また、上記実施形態においては、図3に示すように、雌ネジ孔24bおよび挟締ボルト26は一方の端部22b(下側の端部22b)の幅方向に沿って2つ備えられているが、これらはその幅方向に沿って2つ以上備えられていれば良いため、その幅方向に沿って3つ以上備えられていても良い。
また、上記実施形態においては、図5に示すように、挟締金具20a,20b,・・・は、連結金具32や連結金具33を介して連結されているが、連結金具を用いて連結する場合には、連結金具32および連結金具33のいずれか一方のみを介して連結されていても良い。
また、上記実施形態においては、補強部材として方杖16を例に挙げて本発明を説明しているが、図10に示すように、補強部材として形鋼などで構成されたブレース38を用いた構造にも本発明を適用することができる。図10に示す構造の場合、ガセットプレート40は、柱12のフランジ面12aに面を合わせて設置される固定面部40aと梁14のフランジ面14aに面を合わせて設置される固定面部40bの両方を備えた構成であり、挟締金具20を用いて柱12および梁14の両方に固定されている。ブレース38の端部は、ボルト42でガセットプレート40に固定される。なお、ブレース38を用いる場合においては、ガセットプレートは、柱12および梁14のいずれか一方にのみ固定されるものであっても良い。
そして、図10に示す構造においても、図1に示す構造と同様に、耐引張圧縮用鋼材52あるいは他の耐引張圧縮用鋼材62などを用いてH形鋼または溝形鋼の引張力によるフランジの曲げや圧縮力によるウェブの座屈を防止する措置を講じることができる。なお、図11は、図10に示す柱梁架構の耐震補強構造において、H形鋼の一対のフランジ間(12a1−12a2間、および、14a1−14a2間)に耐引張圧縮用鋼材52が配置固定された状態を示した図である。
また、上記実施形態においては、ガセットプレート18と補強部材16とが別体のものとして説明されているが、本発明においては、これらが一体のものとされていても良いのは勿論である。
また、上記実施形態においては、柱12および梁14はH形鋼よりなるが、溝形鋼などの他の形鋼であっても良い。また、上記実施形態においては、耐震補強を施す建物として鉄骨造のものを例に挙げて本発明を説明しているが、このような耐震補強構造を適用可能な建物としては、鉄骨造のものに限定されず、鉄筋コンクリート造のものや鉄骨鉄筋コンクリート造のものなどであっても良い。
10 柱梁架構の耐震補強構造
12 柱
12a 柱のフランジ
14 梁
14a 梁のフランジ
16 補強部材(方杖)
18 ガセットプレート
18a ガセットプレートの固定面部
20 挟締金具
22 挟締金具の金具本体
24b 雌ネジ孔

Claims (4)

  1. 柱および梁が形鋼で構成された建物の柱梁架構に補強部材が設置されて補強される柱梁架構の耐震補強構造において、
    前記柱または梁のフランジ面に面を合わせて設置される固定面部の面から前記補強部材の端部が取り付けられる取付面部が起立形成された構成のガセットプレートの該固定面部が前記柱または梁のフランジ面に面を合わせて設置され、
    該フランジとともに該ガセットプレートの固定面部が、コ字型の金具本体の上下端部のうち少なくとも一方の端部にその上下方向に貫通形成された雌ネジ孔を該端部の幅方向に沿って2つ以上有し、該雌ネジ孔に対して一方の端部につき2本以上の挟締ボルトが螺入されることによってコ字型の開口部内に配置された部材を上下方向から2箇所以上で挟締する挟締金具で挟締されて、前記柱または梁に該ガセットプレートが固定され、
    前記金具本体の雌ネジ孔に螺入された挟締ボルトには、緩みや取り外しを防止する措置が講じられており、
    この状態で、前記ガセットプレートに前記補強部材の端部が取り付けられていることを特徴とする柱梁架構の耐震補強構造。
  2. 前記緩みや取り外しを防止する措置は、前記金具本体の雌ネジ孔に螺入された挟締ボルトにロックナットを用いることによって講じられていることを特徴とする請求項1に記載の柱梁架構の耐震補強構造。
  3. 前記柱のウェブを境にした同じ面側あるいは前記梁のウェブを境にした同じ面側には2個以上の挟締金具が用いられて該2個以上の挟締金具同士が連結金具によって連結されていることを特徴とする請求項1または2に記載の柱梁架構の耐震補強構造。
  4. 前記柱および梁を構成する形鋼がH形鋼または溝形鋼であり、柱および梁を構成する形鋼の一対のフランジ間に引張力や圧縮力に作用する耐引張圧縮用鋼材が配置固定されて、前記柱および梁を構成する形鋼の引張耐力や圧縮耐力が向上されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の柱梁架構の耐震補強構造。
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