JP2013023357A - エレベータ制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】エレベータ制御装置のインバータ装置のスイッチング素子の寿命進行や放熱性能低下による破損を未然に防止する。
【解決手段】実施形態によれば、交流電源からの交流電力を直流電力に変換する整流回路と、整流回路で変換された直流電力の脈動を平滑化する平滑コンデンサと、平滑化された直流電力を可変電圧可変周波数の交流電力に変換して出力するインバータと、インバータから出力された交流電力で駆動して乗りかごを昇降させる電動機と、インバータを空冷するためのファンと、インバータ装置内の素子の電圧を測定する電圧測定手段と、インバータ内のスイッチング素子の診断運転開始後、電圧測定手段により測定した電圧値がインバータ内のスイッチング素子の異常を示す所定の条件を満たした場合に、ファンによる空冷能力が向上するようにファンの回転数を制御するファン制御手段とをもつ。
【選択図】 図1

Description

本発明の実施形態は、発熱部品の冷却機能を有するエレベータ制御装置に関する。
エレベータ制御装置のインバータ装置に搭載しているスイッチング素子に電流を通電すると当該スイッチング素子が発熱する。スイッチング素子における接続物質の熱膨張係数には差があるため、その発熱量、および当該スイッチング素子の温度変化の繰り返しによってスイッチング素子内部のはんだ接合部に熱応力がかかることにより当該接合部が脆化して、素子破損に至る場合がある。
このため、スイッチング素子の接合部の脆化度合いを予測するために、スイッチング素子の温度を温度センサによって検出し、この温度が所定の閾値を超えるか否かを常時監視している。
特開2007−28741号公報
しかし、インバータ装置内のスイッチング素子の温度を測定しても、素子内部の放熱性能の変化や寿命進行といった当該素子の特性の異常を正確に検出することはできないため、スイッチング素子の寿命進行や放熱性能の低下による当該スイッチング素子の破損を未然に防止することは困難である。
よって、スイッチング素子の一般的な寿命と見込まれる所定の期間が経過した際、もしくは定期点検の際に、このスイッチング素子が実際に破損しているか否かに関わらず保守員が当該スイッチング素子の交換を行なうことなどして対処しており、交換に係る手間やコストが多大なものとなっている。
本発明が解決しようとする課題は、インバータ装置のスイッチング素子の寿命進行や放熱性能低下による破損を未然に防止することが可能になるエレベータ制御装置を提供することにある。
実施形態によれば、交流電源からの交流電力を直流電力に変換する整流回路と、整流回路で変換された直流電力の脈動を平滑化する平滑コンデンサと、平滑化された直流電力を可変電圧可変周波数の交流電力に変換して出力するインバータと、インバータから出力された交流電力で駆動して乗りかごを昇降させる電動機と、インバータを空冷するためのファンとをもつ。また、この実施形態によれば、インバータ装置内の素子の電圧を測定する電圧測定手段と、インバータ内のスイッチング素子の診断運転開始後、電圧測定手段により測定した電圧値がインバータ内のスイッチング素子の異常を示す所定の条件を満たした場合に、ファンによる空冷能力が向上するようにファンの回転数を制御するファン制御手段とをもつ。
また、別の実施形態によれば、交流電源からの交流電力を直流電力に変換する整流回路と、整流回路で変換された直流電力の脈動を平滑化する平滑コンデンサと、平滑化された直流電力を可変電圧可変周波数の交流電力に変換して出力するインバータと、インバータから出力された交流電力で駆動して乗りかごを昇降させる電動機と、インバータを空冷するためのファンとをもつ。また、この実施形態によれば、エレベータの通常運転時にインバータ装置内の素子の電圧を測定する電圧測定手段と、電圧測定手段により測定した電圧値がインバータ内のスイッチング素子の異常を示す所定のしきい値以上である場合に、ファンによる空冷能力が向上するようにファンの回転数を制御するファン制御手段とをもつ。
第1の実施形態におけるエレベータ制御装置の電力変換部を特記した構成例を示す図。 第1の実施形態におけるエレベータ制御装置のインバータ装置のスイッチング素子の電圧の初期値と寿命進行時の値の一例を示す図。 第1の実施形態におけるエレベータ制御装置のインバータ装置のスイッチング素子の空冷のための処理動作の一例を示すフローチャート。 第2の実施形態におけるエレベータ制御装置の電力変換部を特記した構成例を示す図。 第2の実施形態におけるエレベータ制御装置のインバータ装置のスイッチング素子の電圧の初期値と寿命進行時の値の一例を示す図。 第2の実施形態におけるエレベータ制御装置のインバータ装置のスイッチング素子の空冷のための処理動作の一例を示すフローチャート。 第3の実施形態におけるエレベータ制御装置の電力変換部を特記した構成例を示す図。 第3の実施形態におけるエレベータ制御装置のインバータ装置のスイッチング素子の空冷のための処理動作の一例を示すフローチャート。 第4の実施形態におけるエレベータ制御装置の電力変換部を特記した構成例を示す図。 第4の実施形態におけるエレベータ制御装置のインバータ装置のスイッチング素子の空冷のための処理動作の一例を示すフローチャート。 第5の実施形態におけるエレベータ制御装置の電力変換部を特記した構成例を示す図。 第5の実施形態におけるエレベータ制御装置のインバータ装置のスイッチング素子の空冷のための処理動作の一例を示すフローチャート。
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。
本実施形態は、エレベータ制御装置のインバータ装置の素子の電圧を測定し、この測定結果が、インバータ装置のスイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下を示す所定の電圧となった場合に、ファンの回転数を増加させてスイッチング素子の空冷能力を向上させることで、スイッチング素子の破損を未然に防止することを特徴とするものである。
図1は、第1の実施形態におけるエレベータ制御装置の電力変換部を特記した構成例を示す図である。
まず、このエレベータでは、建屋側配電系統の商用三相交流電源101にコンバータ装置102が接続される。コンバータ装置102はダイオードで構成され、商用三相交流電源101から出力される三相交流電力を直流電力に変換する。コンバータ装置102の直流出力ライン間には平滑コンデンサ103が設けられる。平滑コンデンサ103はコンバータ装置102で変換された直流電力に含まれる脈動分(リプル)を平滑化する。
コンバータ装置102からみた平滑コンデンサ103の後段にはインバータ装置104が設けられる。インバータ装置104はダイオードおよびスイッチング素子、例えばトランジスタで構成され、平滑コンデンサ103で平滑化された直流電力をPWM(Pulse Width Modulation)制御により可変電圧可変周波数の交流電力に変換して電動機105に供給する。
インバータ装置104の近傍には当該インバータ装置104内のスイッチング素子を空冷するためのファン(FAN)108が設けられる。
インバータ装置104内のスイッチング素子を空冷するのは、インバータ装置104より電動機105へ電流を供給する際、インバータ装置104に搭載しているスイッチング素子が通電電流量に比例して発熱するためである。
また、電動機105の回転軸にはシーブが取り付けられており、そこに巻き掛けられたロープを介して乗りかご106とカウンタウェイト107が昇降路内をつるべ式に昇降動作する。電動機105は、インバータ装置104から出力された交流電力で駆動して乗りかご106を昇降させる。
また、本実施形態におけるエレベータ制御装置は、電圧測定回路109、比較回路110、ファン制御回路111、ファン制御設定回路112、電圧設定回路113、記憶装置114、制御用マイコン115、異常発報回路116、遠隔点検回路117を備える。
特に、電圧測定回路109、比較回路110、電圧設定回路113、記憶装置114は、インバータ装置104の素子の電圧がスイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下を示す電圧であるか否かを判定する機能を実現するための構成である。
電圧測定回路109は、インバータ装置104に搭載されるスイッチング素子のコレクタ−エミッタ間電圧またはインバータ装置104内のダイオードの順電圧を測定する。
記憶装置114は、初期時、つまりエレベータ設置時における電圧測定回路109によるインバータ装置104内の素子の電圧の測定結果を初期値として記憶する。
電圧設定回路113は、インバータ装置104に搭載されているスイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下の判定基準であるしきい値電圧を内部メモリに記憶する。
このしきい値電圧は、電圧測定回路109による測定値と記憶装置114に記憶された初期値との差分のしきい値であり、電圧測定回路109による測定値と記憶装置114に記憶された初期値との差分が当該しきい値以上となった場合に、インバータ装置104に搭載されているスイッチング素子が寿命進行や放熱能力低下にある事を示すものである。
比較回路110は、エレベータ設置後における、インバータ装置104に搭載されているスイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下の有無を判定するための所定のタイミングにおいて、電圧測定回路109により測定した電圧と記憶装置114に記憶された初期値との差分値を求め、さらに、この差分値と電圧設定回路113に記憶されたしきい値電圧とを比較する。
ファン制御回路111は、ファン108の回転数を制御する。
ファン制御設定回路112は、ファン制御回路111による制御パラメータであるファン回転数を内部メモリに記憶する。このファン回転数は、インバータ装置104に搭載されているスイッチング素子が寿命進行や放熱能力低下にない場合のためのファン回転数および寿命進行や放熱能力低下にある場合のためのファン回転数をそれぞれ含む。このように、2種類のファン回転数を記憶するのは、インバータ装置の素子の電圧の測定結果が、インバータ装置のスイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下を示す所定の電圧となった場合に、ファンの回転数を増加させてスイッチング素子の空冷能力を向上させるためである。
制御用マイコン115は、平滑コンデンサ103で平滑化された直流電力をPWM制御することで可変電圧可変周波数の交流電力に変換して電動機105に供給することで、乗りかご106の昇降を制御する。
遠隔点検回路117は、昇降路外の建物内監視室や遠隔監視センタからの指示信号に従い、定期点検時またはインバータ装置4内のスイッチング素子の点検のための所定のタイミングで、所定の寿命診断運転、例えば、通常運転時より低い所定の速度および所定の荷重条件における最下階と最上階との間の運転を制御する。
異常発報回路116は、比較回路110による比較の結果が、インバータ装置104に搭載されているスイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下を示す場合に、昇降路外の建物内監視室や遠隔監視センタへの異常発報を行なう。
図2は、第1の実施形態におけるエレベータ制御装置のインバータ装置のスイッチング素子の電圧の初期値と寿命進行時の値の一例を示す図である。
図2に示すように、インバータ装置104内のスイッチング素子に印加するゲートーエミッタ間電圧Vgeの一定条件のもと、初期状態においてインバータ装置104内のスイッチング素子に所定のコレクタ電流Iを通電した際の、当該スイッチング素子のコレクターエミッタ間電圧Vceの初期値aに対し、スイッチング素子の寿命進行時や放熱能力低下時において当該スイッチング素子に前述したコレクタ電流Iを通電した際のコレクターエミッタ間電圧Vceの値bの方が高い。
また、インバータ装置104内のスイッチング素子に印加するゲートーエミッタ間電圧Vgeの一定条件のもとにおける、初期状態においてインバータ装置104内のスイッチング素子に所定のコレクタ電流Iを通電した際のインバータ装置104内のダイオード順電圧と、スイッチング素子の放熱能力低下時や寿命進行時において当該スイッチング素子に前述した所定のコレクタ電流Iを通電した際のダイオード順電圧との関係も同様である。
そこで、本実施形態では、初期状態であるエレベータ設置時にインバータ装置104内の素子の電圧であるスイッチング素子のコレクターエミッタ間電圧Vceまたはダイオード順電圧を測定しておき、かつ、設置後においてインバータ装置104内の素子の電圧を再度測定して、これらの測定結果を比較することで、インバータ装置104内のスイッチング素子の特性異常、つまり寿命進行や放熱性能低下の有無を判定する。
以後、インバータ装置104内のスイッチング素子の特性異常の検出のための測定値が当該スイッチング素子のコレクタ−エミッタ間電圧である場合の動作について説明するが、インバータ装置のスイッチング素子の特性異常の検出のための測定値がインバータ装置104内のダイオード順電圧である場合も同様の動作となる。
図3は、第1の実施形態におけるエレベータ制御装置のインバータ装置のスイッチング素子の空冷のための処理動作の一例を示すフローチャートである。ここで説明する動作のうち、本実施形態における第1の特徴である、インバータ装置104のスイッチング素子の電圧の測定結果が、インバータ装置のスイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下を示す所定の電圧となったか否かを判定する動作は以下のステップS1からS5までの動作である。また、第2の特徴である、前述した測定結果がスイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下を示す所定の電圧となった場合に、ファンの回転数を増加させてスイッチング素子の空冷能力を向上させることで、スイッチング素子の破損を未然に防止するための動作は、以下のステップS6およびS7の動作である。
まず、初期状態であるエレベータ設置時において、制御用マイコン115は、遠隔点検回路117からの指示信号にしたがって、乗りかごの前述した所定の寿命診断運転を行なう。この寿命診断運転において、電圧測定回路109は、インバータ装置104に搭載しているスイッチング素子に所定のゲートーエミッタ間電圧を印加して所定のコレクタ電流を通電した時のスイッチング素子のコレクタ−エミッタ間電圧を測定する。この測定結果は、初期値として比較回路110を介して記憶装置114に記憶される。
そして、制御用マイコン115は、定期点検時またはインバータ装置4内のスイッチング素子の寿命進行の点検のための所定のタイミングで遠隔点検回路117から出力された指示信号を入力すると、運転モードを呼び登録に応じた運転である通常運転モードから寿命診断運転モードに切り替えて設定し(ステップS1)、乗りかご106の前述した所定の寿命診断運転を開始する(ステップS2)。
この寿命診断運転において、電圧測定回路109は、初期状態と同じゲートーエミッタ間電圧およびコレクタ電流の条件の下、インバータ装置104に搭載しているスイッチング素子のコレクタ−エミッタ間電圧を測定し、この値を測定値として比較回路110に出力する(ステップS3)。
比較回路110は、記憶装置114に記憶されている、スイッチング素子のコレクタ−エミッタ間電圧の初期値を読み出す(ステップS4)。
次に、比較回路110は、電圧測定回路109により測定した電圧値と記憶装置114に記憶された初期値との差分値を求め、この差分値と電圧設定回路113に記憶されたしきい値電圧とを比較して、スイッチング素子のコレクタ−エミッタ間電圧の測定値と初期値との差分が所定値であるしきい値電圧以上であるか否かを判定する(ステップS5)。この判定を行なうことにより、スイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下がみられるか否かを判定することができる。
比較回路110は、スイッチング素子のコレクタ−エミッタ間電圧の測定値と初期値との差分が所定値未満である場合は(ステップS5のNO)、スイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下がみられないとの判定結果を制御用マイコン115に出力する。
制御用マイコン115は、この判定結果を入力した場合、運転モードを通常運転モードに戻す。これにより、乗りかご106の運転が通常運転に復帰する(ステップS8)。
また、比較回路110は、スイッチング素子のコレクタ−エミッタ間電圧の測定値と初期値との差分が所定値以上である場合は(ステップS5のYES)、スイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下がみられるとの判定結果を制御用マイコン115を介して異常発報回路116に出力し、また、ファン制御回路111にも出力する。
ファン制御回路111は、この判定結果を入力すると、ファン制御設定回路112に記憶される、インバータ装置104内のスイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下時におけるファン回転数をファン108の制御パラメータとして読み出し、この制御パラメータにしたがって、判定前に比して高い回転数でファン108を駆動する(ステップS6)。
これにより、判定前に比して、インバータ装置104に搭載されているスイッチング素子の空冷能力が向上するので、このスイッチング素子の寿命を延ばしつつ放熱能力を改善し、当該スイッチング素子の破損を未然に防止することができる。
また、異常発報回路116は、比較回路110からの判定結果を入力すると、建物内の監視室や遠隔監視センタに対し、インバータ装置104に搭載されているスイッチング素子の特性異常を示す異常発報を行なう(ステップS7)。
このような異常発報を行なうことで、管理者は、インバータ装置104に搭載しているスイッチング素子の特性異常を早期に発見することができ、保守員によるインバータ装置104の修理や交換を適切なタイミングで行なうことが可能となる。
以上のように、第1の実施形態におけるエレベータ制御装置では、エレベータ設置時のインバータ装置の素子の電圧の測定結果とエレベータ設置後のインバータ装置の素子の電圧とを比較することで、インバータ装置のスイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下を定期的かつ早期に検出し、かつ、熱異常によりスィッチング素子が破損する前にスイッチング素子の空冷能力を向上させることができるので、インバータ装置のスイッチング素子の破損を未然に防止することができる。
また、本実施形態では、エレベータ制御装置のインバータ装置104内の素子の電圧の測定値と記憶装置114に記憶される初期値との差分が所定値であるしきい値電圧以上である場合に、スイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下がみられるか否かを判定する構成としたが、これに限らず、素子の電圧の測定値と初期値の比較を行なう代わりに、エレベータ制御装置のインバータ装置104内の素子の電圧の測定値が、スイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下が明らかである所定の値以上である場合に、スイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下がみられると判定する構成としてもよい。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。なお、以下実施形態におけるエレベータの構成のうち図1に示したものと同一部分の説明は省略する。
本実施形態は、インバータ装置内の素子の特性異常の検出の精度向上のために、寿命診断時においてゲート−エミッタ間電圧を増加させた上で、第1の実施形態で説明したインバータ装置内の素子の電圧を測定することを特徴とする。
図4は、第2の実施形態におけるエレベータ制御装置の電力変換部を特記した構成例を示す図である。
図5は、第2の実施形態におけるエレベータ制御装置のインバータ装置のスイッチング素子の電圧の初期値と寿命進行時の値の一例を示す図である。
本実施形態では、第1の実施形態で説明した構成と比較して、ゲート電圧設定回路118およびゲート電圧切替え回路119をさらに備える。
図5に示すように、スイッチング素子のコレクターエミッタ間電圧Vceの初期値a、寿命進行時の値b、初期値a´、寿命進行時の値b´を考える。
初期値aは、初期状態においてインバータ装置104内のスイッチング素子に所定のコレクタ電流Iを通電し、かつ、スイッチング素子にゲート−エミッタ間電圧Vgeの通常運転時の値Aを印加した際の、スイッチング素子のコレクターエミッタ間電圧Vceの値である。
寿命進行時の値bは、スイッチング素子の放熱能力低下時や寿命進行時においてインバータ装置104内のスイッチング素子に前述した所定のコレクタ電流Iを通電し、かつ、スイッチング素子にゲート−エミッタ間電圧Vgeの前述した通常運転時の値Aを印加した際の、スイッチング素子のコレクターエミッタ間電圧Vceの値である。
また、初期値a´は、初期状態においてインバータ装置104内のスイッチング素子に所定のコレクタ電流Iを通電し、かつ、スイッチング素子にゲート−エミッタ間電圧Vgeの値B(>A)を印加した際の、スイッチング素子のコレクターエミッタ間電圧Vceの値である。図5に示すように、この初期値a´は、ゲート−エミッタ間電圧Vgeの通常運転時の値Aを印加した際の、スイッチング素子のコレクターエミッタ間電圧Vceの初期値aより高い。
寿命進行時の値b´は、スイッチング素子の放熱能力低下時や寿命進行時においてインバータ装置104内のスイッチング素子に前述した所定のコレクタ電流Iを通電し、かつ、スイッチング素子にゲート−エミッタ間電圧Vgeの前述した値Bを印加した際の、スイッチング素子のコレクターエミッタ間電圧Vceの値である。図5に示すように、この寿命進行時の値b´は、スイッチング素子にゲート−エミッタ間電圧Vgeの前述した通常運転時の値Aを印加した際の、スイッチング素子のコレクターエミッタ間電圧Vce寿命進行時の値bより高い。
ゲート−エミッタ間電圧Vgeの値Aの印加時のコレクターエミッタ間電圧Vceの初期値aと寿命進行時の値bとの差分a−b、および、ゲート−エミッタ間電圧Vgeの値bの印加時のコレクターエミッタ間電圧Vceの初期値a´と寿命進行時の値b´との差分a´−b´を考えると、差分a´−b´の方が差分a−bより大きい。よって、差分a´−b´をもとにスイッチング素子の特性異常の有無の判定を行なう場合の判定精度は、差分a−bをもとにスイッチング素子の特性異常の有無の判定を行なう場合の判定精度に比して高い。
そこで、本実施形態では、通常運転時においてインバータ装置104内のスイッチング素子のコレクターエミッタ間電圧を測定する際に当該スイッチング素子に印加するゲート−エミッタ間電圧の値に対し、エレベータ設置時や設置後にスイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下の有無の判定を行なうための運転である寿命診断運転時においてスイッチング素子のコレクターエミッタ間電圧を測定する際に当該スイッチング素子に印加するゲート−エミッタ間電圧の値を高くする。
つまり、本実施形態では、通常運転時では、ゲート電圧切り替え回路119は、インバータ装置104内のスイッチング素子に印加するゲート−エミッタ間電圧を図5に示した通常用の値Aに切り替え、寿命診断運転時では、ゲート電圧切り替え回路119は、当該スイッチング素子に印加するゲート−エミッタ間電圧を図5に示した値B(>A)に切り替える。
ゲート電圧設定回路118は、通常運転時においてインバータ装置104内のスイッチング素子に印加するゲート−エミッタ間電圧の値Aと、寿命診断運転時において当該スイッチング素子に印加するゲート−エミッタ間電圧の値B(>A)とを内部メモリにそれぞれ記憶する。
ゲート電圧切替え回路119は、現在の運転が通常運転時にあるか寿命診断運転時にあるかによって、インバータ装置104に搭載しているスイッチング素子に印加するゲート−エミッタ間電圧を通常運転時の値Aと寿命診断運転時の値Bとの間で切り替える。
図6は、第2の実施形態におけるエレベータ制御装置のインバータ装置のスイッチング素子の空冷のための処理動作の一例を示すフローチャートである。以後説明する動作のうち、第2の実施形態における特徴的な動作である、インバータ装置104内のスイッチング素子のゲート−エミッタ間電圧を増加させた上で、当該スイッチング素子のコレクターエミッタ間電圧を測定して、スイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下がみられるか否かを判定する動作は、以下のステップS21からS24の動作である。
また、本実施形態では、初期状態であるエレベータ設置時において、制御用マイコン115は、遠隔点検回路117からの指示信号にしたがって、乗りかごの前述した所定の寿命診断を行なう。この寿命診断運転において、電圧測定回路109は、インバータ装置104に搭載しているスイッチング素子に所定のコレクタ電流が通電され、かつ、インバータ装置104内のスイッチング素子に印加するゲート−エミッタ間電圧を図5に示した値B(>A)とした時のスイッチング素子のコレクタ−エミッタ間電圧を測定する。この測定結果は、初期値として比較回路110を介して記憶装置114に記憶される。
制御用マイコン115は、定期点検時またはインバータ装置4内のスイッチング素子の寿命進行の点検のための所定のタイミングで遠隔点検回路117から出力された指示信号を入力すると、運転モードを通常運転モードから寿命診断運転モードに切り替えて設定する(ステップS1)。
制御用マイコン115は、この設定を示す信号をゲート電圧切り替え回路119に出力する。そして、第2の実施形態における特徴的な動作として、ゲート電圧切り替え回路119は、インバータ装置104内のスイッチング素子に印加するゲート−エミッタ間電圧を、ゲート電圧設定回路118に記憶される、図5に示した値B(>A)に変更する(ステップS21)。
そして、制御用マイコン115は、乗りかご106の寿命診断運転を開始する(ステップS2)。この寿命診断運転において、電圧測定回路109は、インバータ装置104に搭載しているスイッチング素子に所定のコレクタ電流が通電された時のスイッチング素子のコレクタ−エミッタ間電圧を測定し、この値を測定値として比較回路110に出力する(ステップS22)。
比較回路110は、記憶装置114に記憶されている、スイッチング素子のコレクタ−エミッタ間電圧の初期値を読み出す(ステップS23)。
次に、比較回路110は、電圧測定回路109により測定した電圧値と記憶装置114に記憶された初期値(ゲート−エミッタ間電圧の値:B)との差分値を求め、この差分値と電圧設定回路113に記憶されたしきい値電圧とを比較して、スイッチング素子のコレクタ−エミッタ間電圧の測定値と初期値との差分が所定値であるしきい値電圧以上であるか否かを判定する(ステップS24)。
ただし、本実施形態では、電圧設定回路113に記憶されるしきい値電圧は、スイッチング素子に印加するゲート−エミッタ間電圧が値Bである場合におけるコレクタ−エミッタ間電圧の測定値と、ゲート−エミッタ間電圧が値Bである場合における記憶装置114に記憶されたコレクタ−エミッタ間電圧の初期値との差分のしきい値である。
前述したように、ゲート−エミッタ間電圧が値B(>A)である場合におけるコレクタ−エミッタ間電圧の測定値は、ゲート−エミッタ間電圧が値Aである場合におけるコレクタ−エミッタ間電圧の測定値より大きい。また、ゲート−エミッタ間電圧が値Bで(>A)ある場合における記憶装置114に記憶されたコレクタ−エミッタ間電圧の初期値は、ゲート−エミッタ間電圧が値Aである場合におけるコレクタ−エミッタ間電圧の初期値より大きい。よって、本実施形態において電圧設定回路113に記憶されるしきい値が、第1の実施形態において電圧設定回路113に記憶されるしきい値より高い事は言うまでもない。
比較回路110は、スイッチング素子のコレクタ−エミッタ間電圧の測定値と初期値との差分がしきい値未満である場合は(ステップS24のNO)、スイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下がみられないとの判定結果を制御用マイコン115に出力する。
制御用マイコン115は、この判定結果を入力した場合、運転モードを通常運転モードに戻す。これにより、乗りかご106の運転が通常運転に復帰する(ステップS8)。
この際、制御用マイコン115は、通常運転に復帰した事を示す信号をゲート電圧切り替え回路119に出力する。すると、ゲート電圧切り替え回路119は、インバータ装置104内のスイッチング素子に印加するゲート−エミッタ間電圧を、ゲート電圧設定回路118に記憶される、図5に示した値Aに戻す。
また、比較回路110は、スイッチング素子のコレクタ−エミッタ間電圧の測定値と初期値との差分がしきい値以上である場合は(ステップS24のYES)、スイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下がみられるとの判定結果を制御用マイコン115を介して異常発報回路116に出力し、また、この判定結果をファン制御回路111にも出力する。以後、第1の実施形態で説明したステップS6、S7の動作であるファン108の可変制御および異常発報がなされる。
以上説明したように、第2の実施形態では、初期状態であるエレベータ設置時における寿命診断運転時において、インバータ装置内のスイッチング素子に印加するゲート−エミッタ間電圧を通常運転時よりも高くなるように変更して測定したスイッチング素子の電圧と、寿命診断運転時において、インバータ装置内のスイッチング素子に印加するゲート−エミッタ間電圧を通常運転時よりも同じく高くなるように変更して測定したスイッチング素子の電圧とを比較して、この比較により得た差分が、第1の実施形態によるしきい値より大きいしきい値以上である場合に、スイッチング素子の特性異常にあると判定する。
よって、本実施形態では、第1の実施形態と比較して高い測定値と当該第1の実施形態と比較して高い初期値との差分、および第1の実施形態と比較して高いしきい値を用いてスイッチング素子の特性異常の有無を判定することができるので、測定誤差による、特性異常の有無を判定結果への影響を軽減することができ、判定の精度が向上する。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
本実施形態は、インバータ装置104のスイッチング素子の温度を測定し、この測定した温度に応じて、寿命診断運転時のインバータ装置104のスイッチング素子の電圧の測定値を補正することを特徴としている。
このようは補正を行なうのは、インバータ装置104のスイッチング素子の電圧は、寿命進行や放熱能力低下が生じていなくても温度変化に応じて変化し、この変化した値が測定値として表れるので、この測定値をスイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下の有無の判定にそのまま用いたのでは、当該判定が正確に行なえないからである。
図7は、第3の実施形態におけるエレベータ制御装置の電力変換部を特記した構成例を示す図である。
本実施形態では、第2の実施形態で説明した構成に加え、温度センサ120、電圧補正設定回路121、電圧補正回路122、温度検出回路123をさらに備える。
温度センサ120は、インバータ装置104の温度を常時検出する。温度検出回路123は、温度センサ120で検出した値を読み取る。
電圧補正回路122は、温度検出回路123により読み取った温度に応じて、電圧測定回路109による、インバータ装置104内のスイッチング素子のコレクタ−エミッタ間電圧の測定値を、所定の室温に対する温度変化による電圧のずれ分が無くなるように補正する。このずれ分の補正を行なうことにより、電圧測定回路109による電圧測定値は、温度変化による電圧のずれ分を減算した値に補正されるので、インバータ装置104のスイッチング素子の電圧が温度変化に応じて変化した値をスイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下の有無の判定にそのまま用いてしまうことが無くなる。
電圧補正設定回路121は、温度検出回路123により読み取った温度に応じた、電圧測定回路109による、インバータ装置104内のスイッチング素子のコレクタ−エミッタ間電圧の測定値に対する補正値を内部メモリに記憶する。
図8は、第3の実施形態におけるエレベータ制御装置のインバータ装置のスイッチング素子の空冷のための処理動作の一例を示すフローチャートである。
以後説明する動作のうち、本実施形態における特徴的な動作である、インバータ装置104のスイッチング素子の測定温度に応じて、スイッチング素子の電圧の測定値を補正する動作は、以下のステップS31、S32の動作である。
本実施形態では、まず、第2の実施形態で説明したエレベータ設置時の電圧初期値の測定、およびステップS1、S21、S2、S22の動作である、寿命診断運転モードの設定、スイッチング素子に印加するゲート−エミッタ間電圧の変更、寿命診断運転の開始、スイッチング素子のコレクタ−エミッタ間の電圧の測定がなされる。
そして、本実施形態における特徴的な動作として、温度検出回路123は、温度センサ120で検出した値を読み取ることで、インバータ装置104のスイッチング素子の温度を検出する(ステップS31)。
次に、電圧補正回路122は、温度検出回路123により読み取った温度に応じた、電圧測定回路109による電圧測定値に対する補正値を電圧補正設定回路121から読み出し、この読み出した値を電圧測定回路109により測定した、インバータ装置104のスイッチング素子のコレクタ−エミッタ間の電圧測定値に反映することで、当該電圧測定値を温度変化による電圧のずれ分を減算した値に補正して、比較回路110に出力する(ステップS32)。これにより、インバータ装置104のスイッチング素子の測定温度に応じて、スイッチング素子の電圧の測定値を補正することができる。このような電圧測定値の補正は、エレベータ設置時における電圧初期値の取得のためのスイッチング素子のコレクタ−エミッタ間の電圧測定値にも予めなされるのはもちろんである。
以後は、第2の実施形態で説明したステップS23、S24、S6、S7、S8の動作である、電圧測定値と電圧初期値との比較によるスイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下の有無の判定、および判定結果に応じた、ファン108の可変制御、異常発報または通常運転への復帰のいずれかの動作がなされる。
以上説明したように、第3の実施形態では、エレベータの運転が連続することなどによる、インバータ装置104のスイッチング素子の発熱などにより、当該素子の温度が変化した場合に応じて、インバータ装置104のスイッチング素子のコレクタ−エミッタ間の電圧測定値を温度変化による電圧のずれ分がなくなった値に補正した上で、スイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下の有無の判定がなされる。よって、温度変化による電圧のずれ分がなくなった電圧測定値を用いて、スイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下の有無の判定を行なうことができるので、当該判定をスイッチング素子の温度変化の影響を受けずに行なうことができ、判定の精度が向上する。
なお、この実施形態では、電圧補正回路122は、温度検出回路123により読み取った温度に応じて、電圧測定回路109による、インバータ装置104内のスイッチング素子のコレクタ−エミッタ間電圧の測定値を、所定の室温に対する温度変化による電圧のずれ分が無くなるように補正すると説明したが、これに限らず、インバータ装置104内のスイッチング素子からの熱が及ばない周囲温度を測定するための周囲温度センサをさらに設け、エレベータ設置時において、電圧補正回路122が、温度検出回路123により読み取った温度に応じて、電圧測定回路109による、インバータ装置104内のスイッチング素子のコレクタ−エミッタ間電圧の測定値を、周囲温度センサにより測定した温度に対する温度変化による電圧のずれ分が無くなるように補正し、また、エレベータ設置後の寿命運転診断時において、電圧補正回路122が、温度検出回路123により読み取った温度に応じて、電圧測定回路109による、インバータ装置104内のスイッチング素子のコレクタ−エミッタ間電圧の測定値を、周囲温度センサにより測定した温度に対する差分による電圧のずれ分が無くなるように補正するようにしてもよい。
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。
本実施形態は、前述した寿命診断運転を行なわずに、通常運転時にインバータ装置内のスイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下の有無の判定を行なうことを特徴としている。また、この実施形態では、第1の実施形態で説明したような電圧初期値と電圧測定値との比較を行なうのでなく、通常運転時のスイッチング素子の電圧測定値が所定のしきい値以上である場合にファン108の回転数が増加するような可変制御を行なう。
図9は、第4の実施形態におけるエレベータ制御装置の電力変換部を特記した構成例を示す図である。
本実施形態では、第1の実施形態で説明した構成と比較して、記憶装置114、遠隔点検回路117を備えない構成である。このような構成としたのは、本実施形態では、第1の実施形態で説明したような電圧初期値と、第1の実施形態で記憶装置114に記憶していた電圧測定値との比較を行なわないからである。
また、電圧設定回路113は、第1の実施形態のように、電圧測定値と電圧初期値との差分と比較するしきい値の代わりに、通常運転時のインバータ装置104の素子の電圧測定値自体と比較するしきい値電圧を内部メモリに記憶する。このしきい値は、電圧測定回路109による電圧測定値が当該しきい値以上となった場合に、インバータ装置104に搭載されているスイッチング素子が寿命進行や放熱能力低下にある事を示すものである。
図10は、第4の実施形態におけるエレベータ制御装置のインバータ装置のスイッチング素子の空冷のための処理動作の一例を示すフローチャートである。
以後説明する動作のうち、本実施形態における特徴的な動作である、通常運転時のインバータ装置内のスイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下の有無の判定結果に応じてファン可変制御を行なう動作は、以下のステップS41、S42、S43、S44の動作である。
まず、制御用マイコン115により通常運転が開始されると(ステップS41)、この通常運転において、電圧測定回路109は、所定のゲートーエミッタ間電圧およびコレクタ電流の条件の下、インバータ装置104に搭載しているスイッチング素子のコレクタ−エミッタ間電圧を測定し、この値を測定値として比較回路110に出力する(ステップS3)。
比較回路110は、電圧設定回路113に記憶されている、スイッチング素子のコレクタ−エミッタ間電圧のしきい値を読み出す(ステップS42)。
次に、比較回路110は、電圧測定回路109により測定した電圧値と電圧設定回路113に記憶されたしきい値電圧とを比較して、スイッチング素子のコレクタ−エミッタ間電圧の測定値がしきい値電圧以上であるか否かを判定する(ステップS43)。
比較回路110は、スイッチング素子のコレクタ−エミッタ間電圧の測定値がしきい値未満である場合は(ステップS43のNO)、スイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下がみられないとの判定結果を制御用マイコン115に出力する。
制御用マイコン115は、この判定結果を入力した場合、運転モードを通常運転モードに戻す。これにより、乗りかご106の運転が通常運転に復帰する(ステップS8)。
また、比較回路110は、スイッチング素子のコレクタ−エミッタ間電圧の測定値がしきい値電圧以上である場合は(ステップS43のYES)、スイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下がみられるとの判定結果を制御用マイコン115を介して異常発報回路116に出力し、また、ファン制御回路111にも出力する。
ファン制御回路111は、この判定結果を入力すると、ファン制御設定回路112に記憶される、インバータ装置104に搭載されているスイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下にある場合のためのファン回転数をファン108の制御パラメータとして読み出し、この制御パラメータにしたがって、判定前に比して高い回転数でファン108を駆動する。これにより、通常運電時において、判定前に比して、インバータ装置104に搭載されているスイッチング素子の寿命を延ばしつつ放熱能力を改善し、当該スイッチング素子の破損を未然に防止することができる(ステップS44)。
そして、第1の実施形態と同様に、異常発報回路116は、比較回路110からの判定結果を入力すると、建物内の監視室や遠隔監視センタに対し、インバータ装置104に搭載されているスイッチング素子の特性異常を示す異常発報を行なう(ステップS7)。
以上のように、第4の実施形態におけるエレベータ制御装置では、エレベータ設置後の通常運転時のインバータ装置の素子の電圧の測定結果をもとに、インバータ装置のスイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下を定期的かつ早期に検出し、かつ、熱異常によりスィッチング素子が破損する前に空冷能力を向上させることができるので、第1の実施形態で説明したような寿命診断運転を行なわずとも、第1の実施形態と同様に、インバータ装置のスイッチング素子の破損を未然に防止することができる。
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。
本実施形態は、インバータ装置のスイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下による当該スイッチング素子の保護を要すると判定した場合に、インバータ装置のスイッチング素子のキャリア周波数を減少させ、かつ、荷重制限、速度制限を行なうことで、保守員によるインバータ装置のスイッチング素子の修理、交換がなされるまで運転制御を継続することを特徴とする。
図11は、第5の実施形態におけるエレベータ制御装置の電力変換部を特記した構成例を示す図である。
本実施形態では、第3の実施形態で説明した構成と比較して、インバータ装置のスイッチング素子の保護を要する場合に、当該スイッチング素子のキャリア周波数を減少させ、かつ、荷重制限、速度制限を行なうためのキャリア周波数設定回路124、キャリア周波数変更回路125、荷重/速度設定回路126、保護レベル設定回路127をさらに備える。
キャリア周波数変更回路125は、インバータ装置104のスイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下による当該スイッチング素子の保護を要すると判定された場合に、インバータ装置のスイッチング素子のキャリア周波数を判定前の値に対して減少させる。
キャリア周波数設定回路124は、キャリア周波数変更回路125による制御パラメータであるキャリア周波数を内部メモリに記憶する。このキャリア周波数は、インバータ装置104に搭載されているスイッチング素子の保護を要しない場合のキャリア周波数fおよび保護を要する場合のためのキャリア周波数f(<f)をそれぞれ含む。
荷重/速度設定回路126は、制御用マイコン115による制御パラメータである、乗りかご106の最大許容荷重値、および走行速度の平均値や最高値を内部メモリに記憶する。
この最大許容荷重値は、インバータ装置104に搭載されているスイッチング素子の保護を要しない場合の最大許容荷重値である第1の最大許容荷重値、および保護を要する場合の最大許容荷重値で第1の最大許容荷重値より低い第2の最大許容荷重値をそれぞれ含む。この低い最大許容荷重値の条件で運転を行なった場合、インバータ装置104のスイッチング素子にかかる発熱量が軽減されるので、当該素子にかかる熱応力が軽減される。
また、走行速度の平均値や最高値は、インバータ装置104に搭載されているスイッチング素子の保護を要しない場合の走行速度の平均値、最高値、および保護を要する場合の走行速度の平均値、最高値をそれぞれ含む。ここで説明した、保護を要する場合の走行速度の平均値、最高値は、保護を要しない場合の走行速度の平均値、最高値より低い。このような低い走行速度で運転を行なった場合、インバータ装置104のスイッチング素子にかかる発熱量が軽減されるので当該素子にかかる熱応力が軽減される。
保護レベル設定回路127は、インバータ装置104に搭載されているスイッチング素子の保護を要するか否かの判定基準である所定の保護レベルの値を内部メモリに記憶する。この保護レベルの値は、電圧測定回路109による測定値が当該保護レベルの値を超える場合に、インバータ装置104に搭載されているスイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下によりスイッチング素子の保護を要するために、スイッチング素子のキャリア周波数の変更、荷重制限、速度制限を行なう必要がある事を示すものである。
図12は、第5の実施形態におけるエレベータ制御装置のインバータ装置のスイッチング素子の空冷のための処理動作の一例を示すフローチャートである。
以後説明する動作のうち、本実施形態における特徴的な動作である、インバータ装置のスイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下による当該スイッチング素子の保護を要すると場合に、スイッチング素子のキャリア周波数を減少させて、荷重制限および速度制限を行なう動作は、以下のステップS51、S52、S53、S54、S55の動作である。
本実施形態では、当初は、まず、第3の実施形態で説明した、エレベータ設置時の電圧初期値の測定、および、ステップS1、S21、S2、S22、S31、S32の動作である、寿命診断運転モードの設定、スイッチング素子に印加するゲート−エミッタ間電圧の変更、寿命診断運転の開始、スイッチング素子のコレクタ−エミッタ間の電圧の測定、スイッチング素子の温度検出、電圧測定値の補正がなされる。
制御用マイコン115は、寿命診断運転モードの設定を行なったことを示す信号をキャリア周波数変更回路125および荷重/速度設定回路126に出力する。そして、本実施形態における特徴的な動作として、比較回路110は、保護レベル設定回路127に記憶されている、スイッチング素子のコレクタ−エミッタ間電圧の保護レベルの値を読み出す(ステップS51)。
次に、比較回路110は、電圧測定回路109により測定した電圧値が保護レベルを超えるか否かを判定する(ステップS52)。
比較回路110は、スイッチング素子のコレクタ−エミッタ間電圧の測定値が保護レベルの値以下である場合は(ステップS52のNO)、スイッチング素子の保護のためのキャリア周波数変更、荷重/速度制限を要しないとの判定結果を制御用マイコン115に出力する。
制御用マイコン115が、この判定結果を入力した場合、第2の実施形態で説明したステップS23、S24、S6、S7、S8の動作である、電圧測定値と電圧初期値との比較によるスイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下の有無の判定、および判定結果に応じた、ファン108の可変制御、異常発報または通常運転への復帰のいずれかの動作がなされる。
一方、比較回路110は、スイッチング素子のコレクタ−エミッタ間電圧の測定値が保護レベルの値を超える場合は(ステップS52のYES)、スイッチング素子の保護のためのキャリア周波数変更、荷重/速度制限を要するとの判定結果を制御用マイコン115を介して異常発報回路116、キャリア周波数変更回路125、荷重/速度設定回路126、ファン制御回路111に出力する。
ファン制御回路111は、この判定結果を入力すると、ファン制御設定回路112に記憶される、インバータ装置104に搭載されているスイッチング素子の寿命進行や放熱能力低下にある場合のためのファン回転数をファン108の制御パラメータとして読み出し、この制御パラメータにしたがって、判定前に比して高い回転数でファン108を駆動する。
そして、キャリア周波数変更回路125は、比較回路110からの判定結果を入力すると、キャリア周波数設定回路124から、インバータ装置104に搭載されているスイッチング素子の保護を要する場合のためのキャリア周波数f(<f)を読み出し、スイッチング素子のキャリア周波数のfへの変更指示をゲート電圧切替え回路119に出力する。ゲート電圧切替え回路119は、変更指示にしたがって、インバータ装置104内のスイッチング素子のキャリア周波数をfに減少させる(ステップS53)。キャリア周波数の減少により、運転に係るインバータ装置104の負荷が減少するので、キャリア周波数の減少前に比して、インバータ装置104内のスイッチング素子の発熱量が減少する。
そして、荷重/速度設定回路126は、比較回路110からの判定結果を入力すると、スイッチング素子の保護を要する場合の最大許容荷重値である第2の最大許容荷重値、同じく保護を要する場合の走行速度の平均値、最高値を制御用マイコン115に出力する。
制御用マイコン115は、荷重/速度設定回路126からの最大許容荷重値、走行速度の平均値、最高値の条件を満たすように運転制御を行なう(ステップS54)。この場合、制御用マイコン115は、この平均値、最高値の条件を満たすように速度パターンを生成する。速度の低下により、運転に係るインバータ装置104の負荷が減少するので、スイッチング素子のキャリア周波数を減少させた場合と同じく、当該スイッチング素子の発熱量が減少する。
また、乗りかご106の着床時に当該最大許容荷重値を超える荷重を図示しない荷重検出装置により検出した場合には、戸閉を行なわずに、図示しないアナウンス装置により最後に乗車した乗客の降車を促すアナウンスを行なう。よって、乗りかご106の積載量が減少することになり、運転に係るインバータ装置104の負荷が減少するので、当該スイッチング素子の発熱量が減少する。
また、異常発報回路116は、比較回路110からの判定結果を入力すると、建物内の監視室や遠隔監視センタに対し、インバータ装置104に搭載されているスイッチング素子の特性異常を示す異常発報を行なう(ステップS55)。
以上のように、第5の実施形態におけるエレベータ制御装置では、エレベータ設置後の寿命診断運転時のインバータ装置の素子の電圧の測定結果をもとに、インバータ装置のスイッチング素子の保護を要するか否かを判定し、保護を要すると判定された場合に、スイッチング素子のキャリア周波数を減少させて、荷重/速度制限を行なうことで、スイッチング素子の発熱量を減少させることができるので、保守員によって当該スイッチング素子の修理、交換がされるまで運転継続させることが可能となる。
これらの各実施形態によれば、インバータ装置のスイッチング素子の寿命進行や放熱性能低下による破損を未然に防止することが可能になるエレベータ制御装置を提供することができる。
発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
101…商用三相交流電源、102…コンバータ装置、103…平滑コンデンサ、104…インバータ装置、105…電動機、106…乗りかご、107…カウンタウェイト、108…ファン、109…電圧測定回路、110…比較回路、111…ファン制御回路、112…ファン制御設定回路、113…電圧設定回路、114…記憶装置、115…制御用マイコン、116…異常発報回路、117…遠隔点検回路、118…ゲート電圧設定回路、119…ゲート電圧切替え回路、120…温度センサ、121…電圧補正設定回路、122…電圧補正回路、123…温度検出回路、124…キャリア周波数設定回路、125…キャリア周波数変更回路、126…荷重/速度設定回路、127…保護レベル設定回路。

Claims (9)

  1. 交流電源からの交流電力を直流電力に変換する整流回路と、
    前記整流回路で変換された直流電力の脈動を平滑化する平滑コンデンサと、
    前記平滑化された直流電力を可変電圧可変周波数の交流電力に変換して出力するインバータと、
    前記インバータから出力された交流電力で駆動して乗りかごを昇降させる電動機と、
    前記インバータを空冷するためのファンと、
    前記インバータ装置内の素子の電圧を測定する電圧測定手段と、
    前記インバータ内のスイッチング素子の診断運転開始後、前記電圧測定手段により測定した電圧値が前記インバータ内のスイッチング素子の異常を示す所定の条件を満たした場合に、前記ファンによる空冷能力が向上するように前記ファンの回転数を制御するファン制御手段と
    を備えたことを特徴とするエレベータ制御装置。
  2. 前記インバータ内のスイッチング素子に印加するゲート−エミッタ間の電圧が増加するように可変する印加電圧切り替え手段をさらに備え、
    前記電圧測定手段は、
    前記印加電圧切り替え手段による増加後の前記インバータ装置内の素子の電圧を測定する
    ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ制御装置。
  3. 前記インバータの温度を測定する温度測定手段をさらに備え、
    前記ファン制御手段は、
    前記電圧測定手段により測定した電圧値に対し、前記温度測定手段による測定結果で示される温度により示される前記インバータ内のスイッチング素子の電圧変化分を減算した電圧値が、前記インバータ内のスイッチング素子の異常を示す所定の条件を満たした場合に、前記ファンによる空冷能力が向上するように前記ファンの回転数を制御する
    ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ制御装置。
  4. 交流電源からの交流電力を直流電力に変換する整流回路と、
    前記整流回路で変換された直流電力の脈動を平滑化する平滑コンデンサと、
    前記平滑化された直流電力を可変電圧可変周波数の交流電力に変換して出力するインバータと、
    前記インバータから出力された交流電力で駆動して乗りかごを昇降させる電動機と、
    前記インバータを空冷するためのファンと、
    エレベータの通常運転時に前記インバータ装置内の素子の電圧を測定する電圧測定手段と、
    前記電圧測定手段により測定した電圧値が前記インバータ内のスイッチング素子の異常を示す所定のしきい値以上である場合に、前記ファンによる空冷能力が向上するように前記ファンの回転数を制御するファン制御手段と
    を備えたことを特徴とするエレベータ制御装置。
  5. 前記電圧測定手段により測定した電圧値が前記インバータ内のスイッチング素子の保護を要する所定の条件を満たした場合に、前記インバータ内のスイッチング素子のキャリア周波数を減少させる周波数変更手段と、
    前記周波数変更手段による周波数減少後に、前記乗りかごの最大許容荷重値および速度の少なくとも一方を減少させて当該乗りかごの運転制御を継続する制御手段と
    をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ制御装置。
  6. 前記ファン制御手段は、
    前記インバータ内のスイッチング素子の診断運転開始後、前記電圧測定手段により測定した電圧値と、エレベータ設置時において前記電圧測定手段により測定した電圧値とを比較し、前記診断運転開始後に前記測定した電圧値とエレベータ設置時において前記測定した電圧値との差分が、前記インバータ内のスイッチング素子の異常を示す所定の条件を満たした場合に、前記ファンによる空冷能力が向上するように前記ファンの回転数を制御する
    ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ制御装置。
  7. 前記電圧測定回路は、
    前記インバータ内のスイッチング素子に所定のコレクタ電流を流した際における当該素子のコレクタ−エミッタ間電圧を測定する
    ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ制御装置。
  8. 前記電圧測定回路は、
    前記インバータ内のスイッチング素子に所定のコレクタ電流を流した際における当該スイッチング素子に並列接続されるダイオードの順電圧を測定する
    ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ制御装置。
  9. エレベータ設置時において前記電圧測定手段により測定した電圧値を初期値として記憶する記憶手段をさらに備え、
    前記ファン制御手段は、
    前記電圧測定手段により測定した電圧値と前記初期値との差分が、前記インバータ内のスイッチング素子の異常を示す所定の条件を満たした場合に、前記ファンによる空冷能力が向上するように前記ファンの回転数を制御する
    ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ制御装置。
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