以下、図面を用いて本発明を適用したコンバインの実施形態を説明する。なお、本実施形態では普通型コンバインを用いて説明するが、本発明は自脱型コンバインにも適用することができる。
〔全体構成〕
図1から図3はそれぞれ本実施形態におけるコンバインの右側面図、左側面図、平面図である。これらの図に示すように、本実施形態におけるコンバインは、走行機体1を備え、走行機体1の前部には刈取搬送装置4が昇降自在に備えられている。また、走行機体1は、機体フレーム11と、機体フレーム11の下方に備えられた左右一対のクローラ式走行装置10を備えている。機体フレーム11の上には、脱穀装置2、穀粒タンク3、キャビン5が備えられている。図3に示すように、機体フレーム11上において、右前部にキャビン5、キャビン5の後方に穀粒タンク3、穀粒タンク3の左側に脱穀装置2が位置している。また、キャビン5に覆われるように運転部9が備えられている。
本実施形態のコンバインのクローラ式走行装置10は、昇降シリンダ(図示せず)を制御することによって、左右各々のクローラ式走行装置10の高さを変更することができる。これにより、地面が走行機体1の左右方向で水平でない場合にも、走行機体1を水平に保つことができる。なお、後述するように、左右各々のクローラ式走行装置10の高さは、操縦者による明示の変更や自動制御(以下、ローリング制御と称する)が可能である。
刈取搬送装置4は、脱穀装置2の前部からキャビン5の左側方を通って前方へ延出された処理物搬送用のフィーダ40、フィーダ40に対して被処理物を供給する刈取部41、刈取部41の上部で植立茎稈の穂先側を掻き寄せるリール装置42を備えている。
図3に示すように、フィーダ40の前部には処理物を受け入れる入り口部40aが形成されている。また、図2に示すように、フィーダ40の内部にはチェーン式の掻き揚げコンベア40bが備えられている。
刈取部41は、植立茎稈を刈り取るバリカン型の刈刃41aと、刈り取られた茎稈(被処理物)をフィーダ40の入り口部40a側へ向けて寄せ集めるための横送りオーガ41bとを備えている。
ここで、茎稈の刈り取り動作を説明する。まず、倒伏状態の茎稈はリール装置42である程度掻き上げられ、刈刃41aで刈り取られる。刈り取られた茎稈は、横送りオーガ41bでフィーダ40の入り口部40aへ向けて搬送される。入り口部40aに到達した茎稈は、掻き揚げコンベア40bによってフィーダ40の底面に沿って掻き揚げ搬送され、脱穀装置2の前端部に投入される。
刈取搬送装置4は、図2に示すように、機体フレーム11上の固定箇所に対して水平方向の横軸芯X周りで上下揺動自在に枢支されている。また、機体フレーム11と刈取部41とは昇降用油圧シリンダ12により接続されている。この昇降用油圧シリンダ12を伸縮操作することで、刈取部41が地面に近接した刈取作業姿勢と、刈取部41が地面から所定高さまで上昇した非刈取作業姿勢とに変更することができる。
脱穀装置2は、全稈投入型に形成され、図2に示すように、前後方向に長い扱胴20を備えている。脱穀装置2は、投入された被処理物を脱穀処理し、被処理物中の塵埃を後方から排出するとともに、脱穀された穀粒を穀粒タンク3へ送り込むように構成されている。
穀粒タンク3は、脱穀装置2側から送り込まれた穀粒を一時的に貯留し、穀粒タンク3から穀粒排出用オーガ30を介して外部へ穀粒が回収されるように構成されている。
キャビン5の下部後方には、図6および図7に示すようにエンジンルーム13が設けられている。エンジンルーム13内には、左から、エンジン14、ラジエータ15が備えられている。
エンジンルーム13の右外側には、図4に示すように、防塵カバー16が設けられている。この防塵カバー16により、ラジエータ15を通して右外側から外気が吸引される際に外部の塵埃等が吸入されるのを防止している。また、ラジエータ15を通して吸入された外気は、エンジン14を冷却した後、エンジンルーム13の左側方(図7中の左側)へ排気されるように構成されている。
〔キャビン〕
キャビン5は、図4から図11に示すように、機体フレーム11に固設された支持材11aを備えている。支持材11aは後述する床板91を支持している。この床板91の上には4本の支柱52(本発明のピラーの例)が立設されている。以下、これらの支柱52を区別する必要があるときは、走行機体1の右前部,左前部,右後部,左後部の支柱52をそれぞれ支柱52a,52b,52c,52dと表記する。
この4本の支柱52により屋根部53が支持されている。走行機体1の前部側の支柱52a,52bは、床板91のうち最下部の床面9A(詳細は後述)から立設されている。一方、走行機体1の後方側の支柱52c,52dは、床板91のうち床板上部91a(詳細は後述)から立設されている。
走行機体1の前方側の支柱52a,52bの間には、曲面ガラスで構成されたフロントガラス54が設けられている。このフロントガラス54は床面9Aから屋根部53までの全範囲にわたるように設けられている。
また、本実施形態におけるフロントガラス54は、図10,図11に示すように、床面9Aの前縁よりも前方側へ膨出させている。より具体的には、平面視において、水平面に対するフロントガラス54の下方側部分の傾斜角度θ1よりもフロントガラス54の上方側部分の傾斜角度θ2の方が大きくなるように、フロントガラス54の下端側ほど後方に位置するように前方に凸状に湾曲した傾斜面を形成する形状としている。
フロントガラス54の側面視での曲面形状は、図10,図11に示すように、フロントガラス54の上端よりも少し下方側の位置Pが最も前方に突出するように、一定曲率の曲面で形成されたフロントガラス54の取付姿勢を定めている。しかしながら、このフロントガラス54の側面視での曲率は、このような一定曲率のものに限定されるものではない。例えば、下方側部分の曲率が上方側部分の曲率よりも大きいもの、あるいは、逆に下方側部分の曲率が上方側部分の曲率よりも小さいもの等を用いても構わない。
このように、フロントガラス54の最大前方突出位置を、フロントガラス54の上端よりも少し下方側の位置Pとなるように形成しているのは、キャビン5の前方下方を覗き込むとき、操縦者の頭部をフロントガラス54に近づけやすくするためである。
また、フロントガラス54は、図8に示すように、平面視でも左右方向での中央部箇所が左右方向での両端部箇所よりも前方側へ膨出する突曲形状に形成している。したがって、フロントガラス54は、単なる水平方向もしくは上下方向の何れかの軸線周りでの曲率を有した単曲面ではなく、上下方向と左右方向との互いに交差する複数の軸線周りでの曲率を有した複曲面によって構成されている。
本実施形態におけるフロントガラス54の平面視での曲面形状は、左右方向の全体にわたって一定の曲率で形成されたものではなく、中央部箇所では直線に近い緩やかな湾曲面となり、両端部箇所近くでは曲率が中央部箇所近くの曲率よりも大きくなっている。しかしながら、フロントガラス54の平面視における曲面形状はこれに限定されるものではない。例えば、フロントガラス54の平面視での曲率を左右方向の全体にわたって一定としても構わない。
フロントガラス54の左右両端側に位置している支柱52a,52bは、フロントガラス54の横側端縁の形状に沿って、側面視でのフロントガラス54の傾斜面の傾斜と同様な傾斜を有した湾曲形状に形成されている。すなわち、支柱52a,52bは、フロントガラス54と同様に、側面視において、水平面に対する下方側部分の傾斜角度θ1よりも上方側部分での傾斜角度θ2が大きくなり、その下端側ほど後側に位置するように前側に凸状に湾曲した傾斜を有するように形成されている。
キャビン5の右側面には、支柱52aと支柱52cとの間に操縦者が乗り降りするための乗降口が形成されている。この乗降口を開閉するための乗降用ドア55(本発明の右壁の例)が右後方側の支柱52c側に設けたヒンジ55aを介して開閉操作自在に装着されている。
図12は、このヒンジ55a付近の平断面図である。図に示すように、乗降用ドア55の後端部側にはウェザーストリップ55hが両面テープにより取り付けられている。また、支柱52cは、断面形状が略L字状となっており、凹部が形成されている。乗降用ドア55を閉めた際には、ウェザーストリップ55hが支柱52cの凹部の側面に接当することにより、風や雨等がキャビン5内の運転部9に進入することを防止している。
乗降用ドア55を開閉する際には、ウェザーストリップ55hは支柱52cの凹部の側面と摺接するため、ウェザーストリップ55hにはその貼り付け面に水平な方向(以下、剥がし方向と称する)の力が作用する。本実施形態では、上述したように、ウェザーストリップ55hは両面テープで貼り付けられているため、ウェザーストリップ55hに剥がし方向の力が作用すると、ウェザーストリップ55hが剥がれるおそれがある。そのため、ウェザーストリップ55hに作用する剥がし方向の力を低減することが望ましい。
支柱52cの側面が乗降用ドア55を開閉する際のウェザーストリップ55hの軌跡の接線となる場合に、ウェザーストリップ55hに作用する剥がし方向の力が最大になると考えられる。このことから、ウェザーストリップ55hに作用する剥がし方向の力を低減するための一つの方法として、ウェザーストリップ55hが支柱52cの側面に接当する際の角度を大きくすることが考えられる。そのため、本実施形態では、平面視において、ヒンジ55aの回転軸芯Yが支柱52cの凹部の後端面よりも後部に位置するように構成している。これにより、乗降用ドア55を開閉する際のウェザーストリップ55hと支柱52cの側面との接当/離間角度が大きくなり、ウェザーストリップ55hに作用する前後方向の力を低減している。
また、乗降用ドア55の走行機体1の前方側の端縁は、フロントガラス54の傾斜面の傾斜と同様な傾斜を有した右前方側の支柱52aの湾曲形状に沿った端縁形状に形成している。
また、乗降用ドア55は、図4に示すように、外周枠55bにより囲まれて構成されている。外周枠55bの上下方向の中間位置には横桟部材55cが横方向に掛け渡されている。横桟部材55cの上下方向の位置は、キャビン5内の運転座席90の座面90aよりも高く、後述する操作ボックス6の上面よりも低い高さ位置に設定してある。
この横桟部材55cを境にして、下方側は一枚物の透明ガラス55dによって構成されている。一方、上方側は前後一対の透明ガラス製の引き違い戸でスライド操作により開閉可能に構成されたドア窓55eとなっている。
横桟部材55cのドア内面側には、図8および図9に示すように、キャビン5の室内側から乗降用ドア55を開閉操作する際に把持する内側把持部材55fが備えられている。一方、乗降用ドア55の外方側には、図4に示すように、乗降用ドア55を開閉操作するのに用いる取っ手55gが備えられている。この取っ手55gは、支柱52aに沿った傾斜姿勢で取り付けられている。
キャビン5の左側面では、図6に示すように、左横側壁56の一部に、支柱52bと支柱52dとの間に前後一対の透明ガラス製の引き違い戸でスライド操作により開閉可能に構成された横窓56aが備えられている。この横窓56aの下端は、後述するサイドパネル7の上面付近に位置するように構成されている。一方、横窓56aの上端は、屋根部53の下縁付近に位置するように構成されている。
キャビン5の支柱52cよりも後方側の部分から後側面に至る部分には、図4,図8に示すように、固定窓57が備えられている。固定窓57は、キャビン5の右後方の角部を見通し可能な透明ガラスを嵌め込んで、開閉不能に構成されている。固定窓57および固定窓57が取り付けられたキャビン5の右後方の角部の外壁は、図8に示すように、湾曲した形状に形成されている。
また、キャビン5の後側面には、図7,図8および図11に示すように、後壁58が備えられ、後壁58には後窓58aが形成されている。後窓58aは、固定窓57よりも左側、かつ、運転座席90のシートバック90bの上端よりも上方側から屋根部53の下縁にわたって、左右一対の透明ガラス製の引き違い戸でスライド操作により開閉可能に構成されている。
4本の支柱52によって支持される屋根部53は、図4から図6に示すように、その前端部がフロントガラス54の上端部よりも前方側に突出するように構成されている。屋根部53の前端面には、左右にそれぞれ2基の前照灯53aが取り付けられている。この前照灯53aにより、刈取部41および刈取部41の前方を照らすことができる。
〔運転部〕
運転部9の下面は、上述した床板91と、床板91から立設された運転座席90の支持台、および、ボンネット隔壁を兼ねる床板上部91aにより構成されている。床板91のうち床板上部91aよりも前方の上面(以下、床面9Aと称する)により、床部が構成されている。
上述したように、本実施形態では、平面視におけるフロントガラス54の下端縁の形状が、図8に示すように、左右方向での中央部が左右方向での両端部よりも前方側へ膨出する突曲形状となっている。そのため、床面9Aの前縁形状も左右方向での中央部が左右方向での両端部よりも前方側へ膨出する突曲形状として、フロントガラス54の下端縁の形状に沿うように構成されている。
上述したように、フロントガラス54の下端が運転座席90の座面90aよりも下方、特に、本実施形態では床面9Aにまで達している。そのため、操縦者の脚がフロントガラス54に接触し、フロントガラス54を破損するおそれがある。そのため、図13,図14に示すように、床面9A上にフロアマット92を敷設し、このフロアマット92の前端部に上方に突出する凸部92aを形成している。このように、凸部92aを形成しておくと、操縦者の脚が凸部92aに当たり、操縦者の脚が凸部92aよりも前方にいきにくくなる。すなわち、凸部92aにより脚がフロントガラス54に接触することが阻害されている。これにより、フロントガラスの破損の可能性を低減することができる。
なお、本実施形態では、図8に示すように、凸部92aはフロントガラス54のほぼ全幅にわたって設けているが、一部にのみ設けても構わない。フロアマット92の厚みや凸部92aの突出量は適宜変更可能であるが、凸部92aの突出量が小さすぎると効果が低くなり、一方、突出量が大き過ぎると凸部92aが自立するように、凸部92aの前後方向の長さを大きくしなければならない。後者の場合には、操縦者の運転操作を阻害するおそれがある。そのため、本実施形態では、フロアマット92の厚みを25mm、凸部92aのフロアマット92の上面からの突出量を50mmとしている。
また、図8,図13に示すように、凸部92aはフロントガラス54よりも若干後方に位置している。これにより、図13の点線矢印で示す操縦者の視線が凸部92aにより遮られにくくなり、操縦者の前下方の視界を確保することができる。さらに、凸部92aの前端面は、後方に傾斜するように構成されている。これにより、凸部92aを可能な限り前方に位置させるとともに、操縦者の前下方の視界が凸部92aにより遮られにくくしている。なお、凸部92aの前端面を後方に傾斜させた場合には、凸部92aがフロントガラス54の直近から立ち上がるように形成しても構わない。また、凸部92aの前後方向の位置や、凸部92aの前端面の傾斜角は、座面90aの高さ等に基づいて適宜変更可能である。
図4から図6および図8に示すように、キャビン5の右側面の前側に、支柱52aに対してキャビンガード59を連設している。このキャビンガード59は、側面視でフロントピラーである支柱52aの湾曲形状に沿って湾曲した形状の金属製パイプ材によって形成されており、支柱52aの下端部近くと上端部近くとでボルト連結されている。
キャビンガード59は、支柱52aに対して、横外方側に所定間隔を隔てて位置する第1棒状ガード部59aと、さらにその第1棒状ガード部59aの前方側へ所定間隔を隔てて位置する第2棒状ガード部59bと、から構成されている。
キャビンガード59は、乗降用ドア55を開放して操縦者が乗り降りする際に、第1棒状ガード部59aおよび第2棒状ガード部59bが手摺りとして把持することが可能なように十分な強度を有するとともに、掴みやすい位置に設けてある。
図4および図5に示すように、左右方向で支柱52aと第1棒状ガード部59aとの間に位置し、前後方向で第1棒状ガード部59aと第2棒状ガード部59bとの間に位置し、かつ、上下方向で乗降ドア55の取っ手55gよりも下方に位置するように、ウインカー80が第2棒状ガード部59bに装着されている。
また、図5,図8に示すように、第2棒状ガード部59bには略コの字状のステー59cが平面視で右前方に突出するように取り付けられている。このステー59cの第2棒状ガード部59bに対向する部分にバックミラー81が取り付けられている。このように、ステー59cを介してバックミラー81を取り付けることにより、バックミラー81をキャビン5、特に、乗降用ドア55から離れた位置に設けることができる。これにより、乗降用ドア55を開閉する際にバックミラー81に接触することを回避することができる。また、バックミラー81を使用しない場合には、バックミラー81がステー59cに囲まれた格納姿勢にすることにより、バックミラー81の破損を防ぐこともできる。
図8に示すように、運転部9の左右方向でのほぼ中央に運転座席90が備えられている。運転座席90は、座面90aとシートバック90bとを備えている。また、運転座席90の右前方にステアリング操作等を行うための操作ボックス6が備えられ、運転座席90の左側に変速操作等を行うためのサイドパネルボックス7が備えられている。
〔運転部:操作ボックス〕
運転部9の右前方に備えられている操作ボックス6は、図8および図9に示すように、支柱52aに対して片持ち状に固定支持されているボックス本体60を備えている。このボックス本体60の上面には、ステアリングレバー61、コンビネーションスイッチ62(本発明の操作スイッチの例)、キースイッチ63(本発明の操作スイッチの例)、およびアームレスト64が装備されている。
図8,図15に示すように、ステアリングレバー61はボックス本体60の左寄りに、コンビネーションスイッチ62およびキースイッチ63はボックス本体60の右寄りに設けられている。このように構成することにより、操作ボックス6を右寄りに配置しつつ、ステアリングレバー61をより操縦者側である左側に配置することができる。また、ステアリングレバー61をキャビン5の右壁である乗降用ドア55、特にドア窓55eから離し、ステアリングレバー61を右に揺動した際にステアリングレバー61がドア窓55eに当たることを回避することができる。さらに、ステアリングレバー61をボックス本体60の左寄りに配置したことに伴って生じるボックス本体60の右側の領域にコンビネーションスイッチ62およびキースイッチ63を配置することにより、操作ボックス6をコンパクトに構成することができる。
操向操作用のステアリングレバー61は、図15に示すように、レバー本体61aとレバー頭部61bとから構成されており、ボックス本体60の内部の揺動支点Zを中心として前後左右の十字方向に揺動操作が可能なように構成されている。ステアリングレバー61の操作位置(揺動方向および揺動量)は、ボックス本体60に内装されている位置検出体(図示せず)によって検出される。
ステアリングレバー61を右方向に揺動操作すると、位置検出体の検出結果に基づいて、クローラ式走行装置10が右方向に旋回するように操向操作される。一方、ステアリングレバー61を左方向に揺動操作すると、位置検出体の検出結果に基づいて、クローラ式走行装置10が左方向に旋回するように操向操作される。
また、ステアリングレバー61を前方に揺動操作すると、位置検出体の検出結果に基づいて、フィーダ40および刈取部41が、ステアリングレバー61の操作位置(揺動量)に対応した速度で下降する。同様に、ステアリングレバー61を後方に揺動操作すると、フィーダ40および刈取部41が、ステアリングレバー61の操作位置(揺動量)に対応した速度で上昇する。なお、本実施形態では、中立位置からの揺動操作量が多い程、下降速度または上昇速度が速くなるように構成されている。また、フィーダ40および刈取部41が昇降中にステアリングレバー61を中立位置に戻すと、フィーダ40および刈取部41はそのときの位置で停止する。
また、図15に示すように、レバー頭部61bの前面(操縦者側の面)には、リール上げスイッチ65a,リール下げスイッチ65b,左下げスイッチ65c,右下げスイッチ65d,第1ポジション設定スイッチ65fが設けられている。また、レバー頭部61bの右側面には第2ポジション設定スイッチ65gが備えられている。さらに、図16に示すように、レバー頭部61bの後面(フロントガラス54側の面)には、水平復帰スイッチ65eが設けられている。この水平復帰スイッチ65eの高さ位置は、操縦者がレバー本体61aを握った際に、人差し指が位置する付近としている。
操縦者がリール上げスイッチ65aを押下すると、スイッチを押下したことを示す「ピッ」という電子音が鳴るとともに、リール装置42が所定位置まで上昇する。一方、操縦者がリール下げスイッチ65bを押下すると、電子音が鳴るとともに、リール装置42が所定位置まで下降する。
上述したように、本実施形態のコンバインは左右各々のクローラ式走行装置10の高さを変更することができる。左下げスイッチ65c,右下げスイッチ65dは、この左右各々クローラ式走行装置10の高さを設定するためのものである。操縦者が左下げスイッチ65cまたは右下げスイッチ65dを押下すると、電子音が鳴るとともに、スイッチを押下している間は走行機体1が所定の傾斜角になるまで左下がりまたは右下がりに傾斜してゆく。操縦者が左下げスイッチ65cまたは右下げスイッチ65dを放すと、その時点の走行機体1の傾斜角が維持されるように制御される。なお、後述する水平自動スイッチ82fが「ON」の場合には、左下げスイッチ65c,右下げスイッチ65dによって設定された左右のクローラ式走行装置10の高さを目標とするローリング制御が行われる。
これに対して、操縦者が水平復帰スイッチ65eを押下すると、左右のクローラ式走行装置10は最低位置まで下降し、左右のクローラ式走行装置10が水平になるよう制御される。すなわち、水平復帰スイッチ65eを押下することにより、左下げスイッチ65c,右下げスイッチ65dによって設定された左右のクローラ式走行装置10の高さがリセットされる。このように、水平復帰スイッチ65eの位置を左下げスイッチ65c,右下げスイッチ65dとは異なる位置に設けることにより、水平復帰スイッチ65eを誤って操作する可能性を低減させている。
操縦者が第2ポジション設定スイッチ65gを押下すると、刈取搬送装置4が所定の最高位置まで上昇する。このとき、リール装置42は所定の高さに下降する。これにより、走行機体1を旋回させる場合に、刈取搬送装置4が畦等に接触することを回避することができる。一方、操縦者が第1ポジション設定スイッチ65fを押下すると、刈取搬送装置4が初期位置まで下降する。
操作ボックス6に装備されているコンビネーションスイッチ62は、図15に示すように、中央の押しボタン62aと、押しボタン62aの周部に設けられたレバー62bと、を備えている。押しボタン62aを押すと警報用のフォーンを鳴らすように構成されている。一方、レバー62bを回動操作すると前照灯53aの入り切り操作を行うように構成されている。
操作ボックス6に装備されているキースイッチ63はキーを差し込み可能に構成されており、差し込んだキーを回すことによりエンジン14を始動および停止可能なスタータスイッチを操作することができる。
なお、図に示すように、コンビネーションスイッチ62およびキースイッチ63は、ステアリングレバー61の上端よりも下方、かつ、揺動支点Zよりも上方に設けられている。
また、図15に示すように、ボックス本体60にはアームレスト64が備えられている。アームレスト64は、ボックス本体60に支持される被支持部64aおよび操縦者の手首付近を支持する支持台64bから構成されている。被支持部64aの一端はボックス本体60の底面の左端付近にネジ留めされており、ボックス本体60の左側を通って操縦者側の斜め上方に延びている。被支持部64aの他端には支持台64bの一端が接続されており、支持台64bはその接続部分からほぼ水平に右側に延びている。ただし、支持台64bの他端はキャビン5の右壁とは接しておらず、支持台64bと右壁との間には空間(隙間)が形成されている。すなわち、アームレスト64はボックス本体60に片持ちされている。操縦者は、この支持台64bに手首付近を載せることにより、操縦時の肩等への負担を低減することができる。
〔運転部:サイドパネルボックス〕
上述したように、運転座席90の左側には、図8から図10に示すようにサイドパネルボックス7が設けられている。このサイドパネルボックス7は、図9および図10に示すように、その上面が運転座席90の座面90aよりも低く形成されている。また、サイドパネルボックス7は、図10に示すように、走行用の主変速レバー72等が配設されたボックス主部70と、ボックス主部70の前方に位置して電装品が配設される電装品配置部71とを備えている。
ボックス主部70は、図8に示すように、運転座席90に遠い側、すなわち、左側の外側部分70Aと、運転座席90に近い側、すなわち、右側の内側部分70Bと、の左右2つの部分に分かれている。外側部分70Aには、走行用の主変速レバー72や副変速レバー73などの各種レバー類が配設されている。一方、内側部分70Bには、各種のスイッチ操作具74が配設されている。
図17に示すように、主変速レバー72の右側面には、上方から順にリール前進スイッチ72a,リール後退スイッチ72b,リール高速スイッチ72cが備えられている。一方、主変速レバー72の前面(走行機体1の後ろ向きの面)には、リール低速スイッチ72dが備えられている。
操縦者がリール前進スイッチ72aまたはリール後退スイッチ72bを押下すると、電子音が鳴るとともに、リール装置42が走行機体1の前方または後方に移動する。リール前進スイッチ72aまたはリール後退スイッチ72bが押下されている間は、リール装置42の移動が継続され、これらのスイッチが放されるか所定の位置に達すると移動が停止される。
操縦者がリール高速スイッチ72cまたはリール低速スイッチ72dを押下すると、リール装置42の回転速度が高速または低速に変更される。リール高速スイッチ72cまたはリール低速スイッチ72dが押下されている間は回転速度が次第に高速または低速に変更され、これらのスイッチが放されるか所定の速度に達すると回転速度の変更が停止される。リール高速スイッチ72cまたはリール低速スイッチ72dにより設定されたリール装置42の回転速度は、リール装置42を駆動するベルト(図示せず)を無段階に変速することにより実現される。なお、後述するリール変速自動スイッチ86が「ON」に設定されている場合には、リール装置42の回転速度は刈取速度に応じて制御される。
電装品配置部71では、通常の刈取脱穀作業中に目視する頻度の高い計器類を備えた計器表示部71aが樹脂製のケースに収容された状態で設けられている。計器表示部71aは、メータパネルとして機能するものであり、ボックス主部70の走行機体1の前方側の端部に一体的に取り付けられている。
計器表示部71aには、例えば、中央部に実際の作業車速を表示する作業速度計やエンジン回転数からの負荷を表示する負荷表示メータなどが設けられ、その両側にエンジン回転計や燃料計が設けられている。
図18に示すように、サイドパネルボックス7の内側部分70Bには各種のスイッチ操作具74として、ローリング制御スイッチ類82,アクセル設定スイッチ類83,刈取スイッチ類84,オートクラッチ切換スイッチ85,リール変速自動スイッチ86,脱穀スイッチ類87が備えられている。
ローリング制御スイッチ類82は、右上げスイッチ82a,水平スイッチ82b,左上げスイッチ82c,上昇スイッチ82d,下降スイッチ82e,水平自動スイッチ82fから構成されている。右上げスイッチ82a,水平スイッチ82b,左上げスイッチ82cはそれぞれ右下げスイッチ65d,水平復帰スイッチ65e,左下げスイッチ65cと同じ機能を有している。上昇スイッチ82d,下降スイッチ82eは走行機体1を上昇または下降させるためのものである。上昇スイッチ82d,下降スイッチ82eを押下すると、左右のクローラ式走行装置10がともに上昇または下降するように制御される。
水平自動スイッチ82fはON/OFFのトグル式スイッチにより構成されている。上述したように、水平自動スイッチ82fを「ON」に設定した状態では、走行機体1が所定の傾斜角となるように左右のクローラ式走行装置10の高さを制御するローリング制御が行われる。一方、水平自動スイッチ82fを「OFF」に設定した状態では、ローリング制御は行われない。
アクセル設定スイッチ類83は、オートアクセルスイッチ83aおよびエンジン回転数設定ダイヤル83bから構成されている。オートアクセルスイッチ83aはON/OFFのトグル式スイッチにより構成されている。エンジン回転数設定ダイヤル83bは、エンジン14の回転数を設定するためのダイヤル式のスイッチにより構成されている。エンジン回転数設定ダイヤル83bを時計回りに操作するとエンジン回転数は高く設定され、反時計回りに操作するとエンジン回転数は低く設定される。
オートアクセルスイッチ83aが「OFF」に設定されている場合には、エンジン14の回転数はエンジン回転数設定ダイヤル83bにより設定された値となる。一方、オートアクセルスイッチ83aが「ON」に設定されている場合には、脱穀・刈取クラッチ(図示せず)を「入」にする、もみ排出クラッチ(図示せず)を「入」にする、走行機体1を走行させる、と、エンジン回転数設定ダイヤル83bで設定されたエンジン回転数となるように制御が行われる。
刈取スイッチ類84は、自動刈取高さスイッチ84a,刈取高さ調節ダイヤル84b,対地平行自動スイッチ84cから構成されている。自動刈取高さスイッチ84aはON/OFFのトグル式スイッチにより構成されている。刈取高さ調節ダイヤル84bはダイヤル式スイッチにより構成されており、地面に対する刈取部41の高さを設定する。刈取高さ調節ダイヤル84bを時計回りに回すほど、地面に対する刈取部41の高さが高く設定される。自動刈取高さスイッチ84aが「ON」に設定されている場合には、地面に対する刈取部41の高さが刈取高さ調節ダイヤル84bにより設定された高さとなるように制御が行われる。一方、自動刈取高さスイッチ84aが「OFF」に設定されている場合には、刈取部41の高さ制御は行われない。
対地平行自動スイッチ84cはON/OFFのトグル式スイッチにより構成されている。対地平行自動スイッチ84cが「ON」に設定されている場合には、刈取部41が畝の高さに対して一定となり、かつ、平行となるように制御が行われる。一方、対地平行自動スイッチ84cが「OFF」に設定されている場合には、このような制御は行われない。
オートクラッチ切換スイッチ85は、刈取オートクラッチ(図示せず)の入/切を設定するためのものであり、ON/OFFのトグル式スイッチにより構成されている。オートクラッチ切換スイッチ85が「ON」に設定されている場合には、刈取部41および脱穀装置2が作動している間にステアリングレバー61が操作された際に、刈取部41が地面から一定の高さまで上昇すると刈取搬送装置4を停止し、刈取部41が地面から一定の高さまで下降すると刈取搬送装置4を駆動するように制御が行われる。
リール変速自動スイッチ86はリール装置42の回転速度を調整するためのものであり、ダイヤル式のスイッチにより構成されている。リール変速自動スイッチ86を時計回りに回すほど、リール装置42の回転速度は速く設定される。
脱穀スイッチ類87は、作物選択スイッチ87a,チャフ調整ダイヤル87bから構成されている。作物選択スイッチ87aは複数状態のトグルスイッチにより構成されており、本実施形態では稲/麦/豆の3位置となっている。作物選択スイッチ87aによって設定された作物に応じた脱穀制御が行われる。チャフ調整ダイヤル87bはシーブケース(図示せず)のチャフ(図示せず)の開度を調整するためのものであり、ダイヤル式のスイッチにより構成されている。チャフ調整ダイヤル87bを時計回りに回すほどチャフの開度が大きく設定される。
図6および図10に示すように、電装品配置部71は、上下方向の厚みがボックス主部70よりも薄く構成されており、電装品配置部71の上面がボックス主部70の上面と同一平面上にあるように、ボックス主部70の前端上部から斜め右方前方側へ片持ち状に連設されている。
そのため、電装品配置部71の下面と運転部9の床面9Aとの間には上下方向での空間が形成されている。また、ボックス主部70の前端縁70aとフロントガラス54の内面との間にも前後方向での空間が生じている。すなわち、電装品配置部71の下側に相当する箇所には、運転座席90側からサイドパネルボックス7が存在する側のキャビン5の側部下方を目視可能な開放空間S1が形成されている。
なお、ボックス主部70の前端縁70aは、図6および図10に示すように、フロントガラス54の内面の傾斜に沿って、下方側ほど機体後方側に位置するように傾斜する形状に形成されている。
図8,9および図10に示すように、ボックス主部70の外側部分70Aは、運転部9の床板91から立設された箱状に形成されている。一方、ボックス主部70の内側部分70Bは、外側部分70Aの上部から運転座席90側に張り出すように膨出形成されている。また、内側部分70Bの下方側には、運転座席90から離れる方向に凹入するに凹入空間S2が形成されている。
内側部分70Bは、図8に示すように、その走行機体1の前方側の前端部76が、外側部分70Aと、外側部分70Aに接続される電装品配置部71との接続箇所75よりも走行機体1の後方側に位置するように形成されている。また、内側部分70Bの前端部76は、運転座席90側ほど後方に位置する傾斜している。これによって、内側部分70Bの前端部76と電装品配置部71の内向きの側縁との間で、電装品配置部71とボックス主部70との接続箇所75を含んでその前後に位置するキャビン室内側の側縁部分に、平面視で運転座席90から離れる方向に凹入する形状の凹入部S3が形成されている。
このように、凹入部S3を形成することにより、運転座席90に塔座している操縦者の視点から、キャビン5の前方側の側部下方をさらに目視し易くすることができる。
また、凹入部S3が形成された箇所と平面視で重畳する運転部9の床面9A上には、図8から図10に示すように、駐車ブレーキペダル84が備えられている。これによって、運転座席90に搭座する操縦者が駐車ブレーキペダル84を踏み込む際に、サイドパネルボックス7によって邪魔されることなく、凹入部S3に脚部を入り込ませた状態で駐車ブレーキペダル84を踏み込み操作することができる。
〔別実施形態〕
(1)上述の実施形態では、操作ボックス6は支柱52aに支持されるように構成したが、操作ボックス6の取り付け態様はこれに限定されるものではない。例えば、床面9Aの右前部付近から取り付け用の部材を立設し、その取り付け用の部材によって操作ボックス6を支持するように構成しても構わない。