JP2013007762A - ペリクル用支持枠の製造方法及びペリクル用支持枠並びにペリクル - Google Patents

ペリクル用支持枠の製造方法及びペリクル用支持枠並びにペリクル Download PDF

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Abstract

【課題】十分な黒色化が図られて高エネルギー光の照射下においても耐光性に優れると共に、ヘイズの発生を抑えることができるペリクル用支持枠の製造方法を提供する。また、上記特性を備えたペリクル用支持枠及びペリクルを提供する。
【解決手段】光学的薄膜体を備えてペリクルとして使用されるペリクル用支持枠の製造方法であって、Al−Zn−Mg系アルミニウム合金のT6調質材を150〜350℃の温度で焼鈍した後、酒石酸を含んだアルカリ性水溶液を用いて陽極酸化処理し、Ni、Co、Cu、Sn、Mn及びFeからなる群から選ばれた1種又は2種以上を電解析出処理により析出させて黒色化することを特徴とするペリクル用支持枠の製造方法であり、また、L*値が33以下であり、かつ、酸成分の含有量が少ないペリクル用支持枠及びペリクルである。
【選択図】なし

Description

この発明は、ペリクル用支持枠の製造方法、及びペリクル用支持枠、並びにペリクルに関し、詳しくは、ヘイズ(haze)の発生を可及的に低減でき、かつ、耐光性に優れたペリクル用支持枠を得ることができるペリクル用支持枠の製造方法、及びペリクル用支持枠、並びにペリクルに関する。
LSI、超LSIなどの半導体装置や液晶表示装置(LCD)等に使用される薄膜トランジスタ(TFT)やカラーフィルター(CF)等の製造では、露光装置を用いたフォトリソグラフィー工程が含まれ、この工程では、通常、ペリクルと呼ばれる防塵手段が用いられる。
ペリクルは、一般に、フォトマスクやレティクルに合わせた形状を有する厚さ数ミリ程度のアルミニウム材からなる支持枠の片面側に、厚さ10μm程度のニトロセルロース、セルロース誘導体、フッ素ポリマーなどの透明な高分子膜(光学的薄膜体)を展張して接着したものであり、異物がフォトマスクやレティクル上に直接付着することを防ぐ。また、仮にペリクルに異物が付着したとしても、フォトレジストが塗布されたウエハー上にこれらの異物は結像しないため、異物の像による露光パターンの短絡や断線等を防止でき、フォトリソグラフィー工程の製造歩留まりを向上させることができる。
近年、半導体装置等の高集積化に伴い、より狭い線幅で微細な回路パターンの描画が求められるようになり、フォトリソグラフィー工程で使用される露光光についてもKrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)、F2エキシマレーザー(波長157nm)等のような短波長光が主になっている。これらの短波長の露光光源は高出力であって光のエネルギーが高いことから、支持枠を形成するアルミニウム材の表面の陽極酸化皮膜に硫酸やリン酸等の無機酸が残存すると、露光雰囲気中に存在するアンモニア等の塩基性物質と反応して硫酸アンモニウム等の反応生成物が生じ、この反応生成物(ヘイズ)がペリクルにくもりを生じさせてパターン転写像に影響を与える問題がある。
そこで、酒石酸を含んだアルカリ性水溶液を用いた陽極酸化処理によりアルミニウム材の表面に陽極酸化皮膜を形成してペリクル用の支持枠を得ることで、硫酸やリン酸等の無機酸の含有量を低減して、高エネルギーの光の照射下においてもヘイズの発生を可及的に防止する方法が提案されている(特許文献1参照)。
一方で、ペリクル用支持枠は、光源からの光の反射を防いで鮮明なパターン転写像を得るために、アルミニウム材を陽極酸化処理した後は黒色化する必要があり、例えば、陽極酸化皮膜のポアに有機染料等を浸透させて黒色にする方法が知られている。しかしながら、短波長の高いエネルギーの光が照射されると有機染料が化学変化して色調変化や退色を起すおそれがあることから、陽極酸化皮膜のポア中にNi、Co等を電解析出させて黒色化する方法が提案されている(特許文献2参照)。
特開2010−237282号公報 特許第3361429号公報
前述したように、ペリクル用支持枠には光学的薄膜体が張着され、その状態を高い精度で保持することなどが求められることから、通常、JIS規定のA7075アルミニウム合金が使用される。ところが、JIS A7075のようなAl−Zn−Mg系アルミニウム合金を陽極酸化処理して、上記特許文献2に記載されるような電解析出処理をしても、十分な黒色化が図れないことが分った。
そこで、本発明者等は、この問題を解決するために鋭意検討した結果、T6調質処理されたAl−Zn−Mg系アルミニウム合金を更に所定の条件で焼鈍することで、陽極酸化処理後の電解析出により十分に黒色化されたペリクル用支持枠が得られることを見出し、本発明を完成させた。
したがって、本発明の目的は、十分な黒色化が図られて高エネルギー光の照射下においても耐光性に優れると共に、ヘイズの発生を可及的に抑えることができるペリクル用支持枠の製造方法を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、上記特性を備えたペリクル用支持枠及びペリクルを提供することにある。
すなわち、本発明は、光学的薄膜体を備えてペリクルとして使用されるペリクル用支持枠の製造方法であって、Al−Zn−Mg系アルミニウム合金のT6調質材を150〜350℃の温度で焼鈍した後、酒石酸を含んだアルカリ性水溶液を用いて陽極酸化処理し、Ni、Co、Cu、Sn、Mn及びFeからなる群から選ばれた1種又は2種以上を電解析出処理により析出させて黒色化することを特徴とするペリクル用支持枠の製造方法である。
また、本発明は、上記の方法によって得られたペリクル用支持枠であって、L*値が33以下であり、かつ、80℃の純水に4時間浸漬させて溶出したイオン濃度を測定するイオン溶出試験において、支持枠表面積100cm2あたりの純水100ml中への溶出濃度が、酢酸イオン0.2ppm以下、ギ酸イオン0.06ppm以下、シュウ酸イオン0.01ppm以下、硫酸イオン0.01ppm以下、硝酸イオン0.02ppm以下、亜硝酸イオン0.02ppm以下、及び塩素イオン0.02ppm以下であることを特徴とするペリクル用支持枠である。
更に、本発明は、上記ペリクル用支持枠に光学的薄膜体を備えたペリクルである。
本発明においては、Al−Zn−Mg系アルミニウム合金のT6調質材を用いるようにし、好ましくはAl−Zn−Mg−Cu系アルミニウム合金のT6調質材を用いるようにして、ペリクル用支持枠を得る。Al−Zn−Mg系アルミニウム合金はアルミニウム合金のなかでも最も強度を有するものであり、高寸法精度が実現されるほか、使用時の外力による変形や傷付きを防ぐことができるなど、ペリクル用支持枠を得る上では好適である。このアルミニウム合金について、残部のAl以外の化学成分としては、Zn5.1〜6.1質量%、Mg2.1〜2.9質量%、及びCu1.2〜2.0質量%であるのが好ましく、更にはCr、Ti、Bのほか、不純物としてFe、Si、Mn、V、Zr、その他の元素を含んでもよい。このような好適なアルミニウム合金の代表例としては、JIS規定のA7075が挙げられる。
Al−Zn−Mg系アルミニウム合金のT6調質材を使用する理由は、時効析出によって強度が付与されたものであることなどが挙げられる。すなわち、従来、ペリクル用支持枠を製造する際には、所定の化学組成を有する鋳塊を押出や圧延加工等により枠状のアルミフレームに加工して溶体化処理を施した後、人工時効硬化処理によって合金元素を含む化合物を時効析出させて、強度を付与することが行われている。したがって、本発明においてもAl−Zn−Mg系アルミニウム合金のT6調質材を用いるようにする。なお、このT6調質材を得るための処理は、JIS H0001記載の調質条件に従えばよい。
そして、本発明においては、Al−Zn−Mg系アルミニウム合金のT6調質材を150〜350℃の温度、好ましくは250〜300℃の温度で焼鈍する。焼鈍の温度が150℃未満であると、その後の電解析出処理によっても十分に黒色化された支持枠を得ることができず、反対に焼鈍の温度が350℃を超えると、逆にL*値が高くなって白色化の方向に進む。また、焼鈍の時間については、30〜120分であるのが良く、黒色化を良好に進めることができると共に、白色化の進行を抑えることができる。
焼鈍によって黒色化が図れる理由については定かではないが、T6調質処理で固溶していた合金元素がこの熱処理により再度析出し、MgZn2のような析出物が支持枠の黒色化に寄与するものと考える。この析出物は陽極酸化処理によって陽極酸化皮膜中に取り込まれ、一部は溶解してしまう物もあるが、析出物が多くなれば電解析出による着色効果を促進したり、析出物自体が光を吸収して黒色に見えるようになると推察される。一方、析出が少ないとこのような効果が十分得られずに、明るく見えるものと推察される。すなわち、焼鈍の温度が150℃未満であると合金元素の析出が十分でなく、反対に350℃を超えると、析出物が粗大化して上記のような陽極酸化皮膜での作用が認められ難くなり、また、高温になり過ぎるとT6調質材が軟化するおそれがある。ここで、析出物のひとつであるMgZn2に着目すると、本発明において、X線回折法により測定したT6調質材におけるMgZn2の積分回折強度が39以上になるように焼鈍を行うのが好ましい。
T6調質材を焼鈍した後は陽極酸化処理して、その表面に陽極酸化皮膜を形成する。本発明では、ヘイズの最大原因物質である硫酸を用いずに、電解液として酒石酸を含んだアルカリ性水溶液を用いるようにする。
ここで、酒石酸としては、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、酒石酸ナトリウムカリウム、酒石酸アンモニウム等の酒石酸塩を好適に用いることができる。酒石酸の濃度は13〜200g/Lであるのが良く、好ましくは25〜150g/Lであるのが良い。酒石酸の濃度が13g/Lより低いと陽極酸化皮膜は形成され難く、反対に200g/Lより高いと低温での陽極酸化の際に酒石酸塩が析出するおそれがある。また、酒石酸を含んだアルカリ水溶液のpHは12.25〜13.25であるのが良く、好ましくは12.5〜13.0であるのが良い。pHが12.25より低いと皮膜の生成速度が遅く、支持枠を黒色化するのが困難となり、反対に13.25より高くなると皮膜の溶解速度が速くなり、粉吹き等が発生するおそれがある。
酒石酸を含んだアルカリ水溶液を電解液として用いて陽極酸化処理する際は、浴温度を0〜15℃にするのが良く、好ましくは5〜10℃にするのが良い。浴温度が0℃より低くなると皮膜の生成速度が遅くなり効率的ではなく、反対に15℃より高くなると皮膜の溶解速度が速くなり成膜に時間を要し、また、粉吹き等が生じるおそれがある。陽極酸化処理の電圧は10〜60Vであるのが良く、好ましくは20〜40Vであるのが良い。電圧が10Vより低いと皮膜が弱くなるおそれがあり、反対に60Vより高くなるとポアの面積が少なくなり、黒色化が困難となる。更には、陽極酸化に要する電気量は、3〜30C/cm2であるのが良く、好ましくは5〜25C/cm2であるのが良い。
そして、酒石酸の濃度やアルカリ水溶液のpHを含めて、これらの陽極酸化処理条件のもと、好適には焼鈍後のT6調質材の表面に膜厚2〜9μmの陽極酸化皮膜を形成するのが良い。陽極酸化皮膜の膜厚が2μmより小さいと、その後の電解析出処理において十分に黒色化することができずに露光光を散乱させてしまうおそれがある。反対に9μmより大きいと、皮膜内に取り込まれる酸成分の量が多くなりすぎるおそれがある。なお、本発明では、酒石酸を含んだアルカリ性水溶液を用いることで、一般に硫酸等の無機酸を用いて陽極酸化皮膜を形成する場合(通常100〜200g/L程度)に比べて、使用する酸の量を減らしながら所定の陽極酸化皮膜を得ることができる。
陽極酸化皮膜を形成した後には、Ni、Co、Cu、Sn、Mn及びFeからなる群から選ばれた1種又は2種以上を電解析出処理(二次電解)により析出させて、支持枠を黒色に着色する。これらの金属は、金属塩や酸化物のほか、コロイド粒子として存在するものなどを使用することができるが、好ましくは、Ni塩、Co塩、Cu塩、Sn塩、Mn塩及びFe塩からなる群から選ばれた1種又は2種以上が添加された電解析出浴を用いるのが良い。より好適には、硫酸ニッケルとホウ酸を含んだ電解析出浴や、酢酸ニッケルとホウ酸を含んだ電解析出浴等が挙げられる。また、この電解析出浴には、溶出したアルミの析出防止やpH調整等の目的から酒石酸、酸化マグネシウム、酢酸等を含めることができる。
また、電解析出処理は、浴温度15〜40℃、電圧10〜30V、時間1〜20分程度の条件によれば、陽極酸化皮膜を黒色に着色することができる。また、この電解析出処理では直流電源又は交流電源によって電圧を印加することができ、開始時に予備電解を実施するようにしてもよい。
電解析出処理により陽極酸化皮膜を黒色化した後には、封孔処理を行うようにするのが良い。封孔処理の条件については特に制限されず、水蒸気や封孔浴を用いるような公知の方法を採用することができるが、なかでも、不純物の混入のおそれを排除しながら、酸成分の封じ込めを行う観点から、水蒸気による封孔処理が望ましい。水蒸気による封孔処理の条件については、例えば、温度105〜130℃、相対湿度90〜100%(R.H.)、圧力0.4〜2.0kg/cm2Gの設定で12〜60分処理するのがよい。なお、封孔処理後は、例えば純水を用いて洗浄するのが望ましい。
また、本発明においては、陽極酸化処理に先駆けて、Al−Zn−Mg系アルミニウム合金のT6調質材の表面をブラスト加工等による機械的手段や、エッチング液を用いる化学的手段によって粗面化処理を行っても良い。このような粗面化処理を事前に施して陽極酸化処理と電解析出処理を行うことで、支持枠は艶消しされたような低反射性の黒色になる。
本発明によって得られたペリクル用支持枠は、Al−Zn−Mg系アルミニウム合金のT6調質材を焼鈍する効果と相まって十分な黒色化が図られ、優れた耐光性を有する。好適にはL*値が33以下、より好適にはL*値が30以下のペリクル用支持枠が得られる。また、同時に、本発明によって得られたペリクル用支持枠は、80℃の純水に4時間浸漬させて溶出したイオン濃度を測定するイオン溶出試験において、以下のような特性を示すことができる。
すなわち、支持枠表面積100cm2あたりの純水100ml中への溶出濃度で、酢酸イオン(CH3COO-)が0.2ppm以下、好ましくは0.1ppm以下であり、ギ酸イオン(HCOO-)が0.06ppm以下、好ましくは0.03ppm以下であり、シュウ酸イオン(C2O4 2-)が0.01ppm以下、好ましくは0.005ppm未満(定量限界)であり、硫酸イオン(SO4 2-)が0.01ppm以下、好ましくは0.005ppm未満(定量限界)であり、硝酸イオン(NO3 -)が0.02ppm以下、好ましくは0.01ppm以下であり、亜硝酸イオン(NO2 -)が0.02ppm以下、好ましくは0.01ppm以下であり、塩酸イオン(Cl-)が0.02ppm以下、好ましくは0.01ppm以下である。これらはヘイズの発生に影響を考えるイオンであり、なかでも、酢酸イオン、ギ酸イオン、硫酸イオン、シュウ酸、及び亜硝酸の溶出量を制御することで、ヘイズの発生を可及的に低減したペリクル用支持枠とすることができる。なお、溶出イオンの検出はイオンクロマトグラフ分析により行うことができ、詳細な測定条件については実施例に記載するとおりである。
また、本発明によって得られたペリクル用支持枠は、その片側に光学的薄膜体を貼着することでペリクルとして使用することができる。光学的薄膜体としては特に制限はなく公知のものを使用することができるが、例えば石英等の無機物質や、ニトロセルロース、ポリエチレンテレフタレート、セルロースエステル類、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル等のポリマーなどを例示することができる。また、光学的薄膜体には、CaF2等の無機物やポリスチレン、テフロン(登録商標)等のポリマーからなる反射防止層などを備えるようにしてもよい。
一方、光学的薄膜体を設けた面とは反対側の支持枠端面には、ペリクルをフォトマスクやレティクルに装着するための粘着体を備えるようにする。粘着体としては粘着材単独あるいは弾性のある基材の両側に粘着材が塗布された素材を使用することができる。ここで、粘着材としてはアクリル系、ゴム系、ビニル系、エポキシ系、シリコーン系等の接着剤が挙げることができ、また、基材となる弾性の大きい材料としてはゴムまたはフォームが挙げられ、例えばブチルゴム、発砲ポリウレタン、発砲ポリエチレン等を例示できるが、特にこれらに限定されない。
本発明によれば、十分な黒色化が図られると共に、酸成分の含有量が少ないペリクル用支持枠を得ることができるため、高エネルギー光の照射下においても耐光性に優れ、かつ、ヘイズの発生を可及的に抑えることができる。また、本発明によって得られたペリクル用支持枠は高い寸法精度を有し、傷が付きにくく耐久性に優れ、かつ、発塵のおそれも少ない。そのため、ペリクルとして使用した場合、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー等のような高エネルギーの露光によるフォトリソグラフィーに好適であり、長期に亘って信頼性良く使用することができる。
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明の好適な実施の形態を説明する。
[焼鈍による黒色化の確認実験]
焼鈍による黒色化の効果を確認するために、JIS H0001に示された調質記号T6で処理したJIS A7075アルミニウム合金(JIS A7075−T6)の中空押出し材を表1に示した温度と時間で熱処理したものについて、それぞれ陽極酸化処理及び電解析出処理を行って実験用の表面処理アルミ合金材を得て、L*値を測定した。
なお、この実験では上記JIS A7075−T6の中空押出し材を表1の条件によりそれぞれ大気中で熱処理した後、表面の状態を同じにするために各試料をエメリー♯600で研磨した。次いで、酒石酸ナトリウム2水和物(Na2C4H4O6・2H2O)53g/L、及び水酸化ナトリウム4g/Lが溶解したアルカリ性水溶液(pH=13.0)を電解液として、浴温度5℃、電解電圧20V、及び電気量25C/cm2の条件で陽極酸化処理した。更に、硫酸ニッケル6水和物(NiSO4・6H2O)160g/L、ホウ酸40g/L、酒石酸3g/L、及び酸化マグネシウム1g/Lが溶解した電解析出浴(pH=5)を使って、浴温度30℃、交流電圧15Vの定電圧電解を6分行って電解析出処理した。その後、相対湿度100%(R.H.)2.0kg/cm2G、及び温度、130℃の水蒸気を発生させながら30分の封孔処理をした上で、ハンターの色差式による明度指数L*値を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2013007762
上記結果から分るように、150℃×120分〜350℃×30分の熱処理によってL*値が未処理の場合より下がる(黒色化する)ことが確認された。なかでも200℃〜300℃の熱処理ではいずれもL*値が未処理の場合と比べて、さらに下っており、特に、250℃×120分、300℃×60分、及び300℃×120分の場合は黒色化が顕著に図れることが分った。
また、上記の実験用表面処理アルミ合金材について、焼鈍によるMgZn2の析出の状態を確認するために、JIS A7075−T6の中空押出し材を熱処理した後(陽極酸化処理及び電解析出処理を行わずに)、X線回折法によりMgZn2のピーク(回折角度2θ=19.7°)について積分回折強度を求めた。得られた積分回折強度と、その中空押出し材を陽極酸化処理及び電解析出処理した実験用表面処理アルミ合金材のL*値の関係についてまとめたものを表2に示す。なお、表面処理前のアルミ合金材のX線回折には、株式会社リガク製X線回折装置RAD−rRを使用し、Bragg−Brentano光学系、集中法で行った。ゴニオメーター半径は185mm、測定の種類は2θ/θ、管球はCuのKα、波長は1.54056Å、モノクロメーター使用し、管電圧は50kV、管電流は200mA、走査範囲は2θ=10°〜70°、軸送り速度は1.0°/min、データサンプル幅は0.010°、試料の内面回転は80回/min、スリットは発散スリット1°、散乱スリット1°、受光スリット0.3mm、モノクロ受光スリット0.3mmとし、シンチレーション検出器を用いて測定した。
Figure 2013007762
[実施例1]
上記JIS A7075−T6の中空押出し材を切断して、支持枠外寸法149mm×122mm×高さ5.8mm、支持枠厚さ2mmとなるように切削研磨し、枠材形状に加工してアルミフレームを用意した。これを大気中で熱処理温度250℃、熱処理時間120分の焼鈍を行った。次に、平均直径約100μmのステンレスを用いて焼鈍後のアルミフレームの表面をショットブラスト処理して、酒石酸ナトリウム2水和物(Na2C4H4O6・2H2O)53g/L、及び水酸化ナトリウム4g/Lが溶解したアルカリ性水溶液(pH=13.0)を電解液として、浴温度5℃、電解電圧30V、及び電気量10C/cm2の条件でアルミフレームを陽極酸化処理した。純水にて洗浄した後、アルミフレームの表面に形成された陽極酸化皮膜を渦電流式膜厚計(株式会社フィッシャー・インストルメンツ社製)にて確認したところ、膜厚は5μmであった。
次いで、陽極酸化処理したアルミフレームを、硫酸ニッケル6水和物(NiSO4・6H2O)160g/L、ホウ酸40g/L、酒石酸3g/L、及び酸化マグネシウム1g/Lが溶解した電解析出浴(pH=5)を使って、浴温度30℃、交流電圧15Vの定電圧電解を6分行い、電解析出処理(二次電解)してアルミフレームを着色した。電解析出後、アルミフレームを蒸気封孔装置に入れ、相対湿度100%(R.H.)、2.0kg/cm2G、及び温度130℃の水蒸気を発生させながら30分の封孔処理を行い、実施例1に係るペリクル用支持枠を得た。この実施例1で採用した条件の一部を表3にまとめて示す。
Figure 2013007762
上記で得られたペリクル用支持枠について、ハンターの色差式による明度指数L*値を測定した。また、ペリクル用支持枠をポリエチレン袋に入れて純水100mlを加えて密封し、80℃に保って4時間浸漬させた。このようにして支持枠からの溶出成分を抽出した抽出水を、セル温度35℃、カラム(IonPacAS11-HC)温度40℃とし、1.5ml/minの条件でイオンクロマトグラフ分析装置(日本ダイオネクス社製ICS-2000)を用いて分析した。この抽出水から酢酸イオン、ギ酸イオン、塩酸イオン、亜硝酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン及びシュウ酸イオンを検出し、支持枠表面積100cm2あたりの純水100ml中への溶出濃度を求めた。これらの結果を表4に示す。なお、実施例で使用したイオンクロマトグラフ分析装置の定量限界(下限)は0.005ppmであり、表4に示した分析結果は、硫酸イオン及びシュウ酸イオンはいずれも検出されなかったことを表す。
Figure 2013007762
[実施例2]
実施例1と同様に電解着色まで処理した後、水蒸気封孔にかわり、花見化学社製シーリングXを40ml/L含有する溶液に電解着色後のアルミフレームを入れ、90℃で20分間封孔処理を行ない、その後純水で水洗して実施例2に係るペリクル用支持枠を得た。実施例2のペリクル用支持枠のL*値、及び抽出結果を表4に示す。
[実施例3]
A7075−T6材を350℃で30分熱処理した以外は実施例1と同様にして、実施例3に係るペリクル用支持枠を得た。得られたペリクル用支持枠のL*値、及び抽出結果を表4に示す。
[比較例1]
A7075−T6材を用いて焼鈍を行わなかった以外は実施例1と同様にして、比較例1に係るペリクル用支持枠を得た。得られたペリクル用支持枠のL*値、及び抽出結果を表4に示す。
[比較例2]
焼鈍せずに、かつ、A7075−T6材を20℃、15質量%の硫酸の電解浴を用いて20Vで10C/cm2の陽極酸化を行った以外は実施例2と同様にして、比較例2に係るペリクル用支持枠を得た。得られたペリクル用支持枠のL*値、及び抽出結果を表4に示す。
本発明によって得られたペリクル用支持枠及びペリクルは、種々の半導体装置や液晶表示装置等の製造におけるフォトリソグラフィー工程等で使用することができ、特に高エネルギーの露光環境下においてより一層その効果を発揮する。
Figure 2013007762
Figure 2013007762

Claims (10)

  1. 光学的薄膜体を備えてペリクルとして使用されるペリクル用支持枠の製造方法であって、Al−Zn−Mg系アルミニウム合金のT6調質材を150〜350℃の温度で焼鈍した後、酒石酸を含んだアルカリ性水溶液を用いて陽極酸化処理し、Ni、Co、Cu、Sn、Mn及びFeからなる群から選ばれた1種又は2種以上を電解析出処理により析出させて黒色化することを特徴とするペリクル用支持枠の製造方法。
  2. X線回折法により測定したT6調質材におけるMgZn2の積分回折強度が39以上になるように焼鈍する請求項1に記載のペリクル用支持枠の製造方法。
  3. 焼鈍を30〜120分の時間で行う請求項1又は2に記載のペリクル用支持枠の製造方法。
  4. アルカリ性水溶液が酒石酸を13〜200g/L含有し、かつ、pHが12.25〜13.25である請求項1〜3のいずれかに記載のペリクル用支持枠の製造方法。
  5. 電解析出処理には、Ni塩、Co塩、Cu塩、Sn塩、Mn塩及びFe塩からなる群から選ばれた1種又は2種以上を添加した電解析出浴を使用する請求項1〜4のいずれかに記載のペリクル用支持枠の製造方法。
  6. 陽極酸化処理に先駆けて、Al−Zn−Mg系アルミニウム合金のT6調質材の表面を粗面化処理する請求項1〜5のいずれかに記載のペリクル用支持枠の製造方法。
  7. Al−Zn−Mg系アルミニウム合金が、JIS規定のA7075アルミニウム合金である請求項1〜6のいずれかに記載のペリクル用支持枠の製造方法。
  8. 電解析出処理後に水蒸気により封孔処理を行う請求項1〜7のいずれかに記載のペリクル用支持枠の製造方法。
  9. 請求項1〜7のいずれかに記載の方法により得られたペリクル用支持枠であって、L*値が33以下であり、かつ、80℃の純水に4時間浸漬させて溶出したイオン濃度を測定するイオン溶出試験において、支持枠表面積100cm2あたりの純水100ml中への溶出濃度が、酢酸イオン0.2ppm以下、ギ酸イオン0.06ppm以下、シュウ酸イオン0.01ppm以下、硫酸イオン0.01ppm以下、硝酸イオン0.02ppm以下、亜硝酸イオン0.02ppm以下、及び塩素イオン0.02ppm以下であることを特徴とするペリクル用支持枠。
  10. 請求項9に記載のペリクル用支持枠に光学的薄膜体を備えたペリクル。
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