JP2013006916A - 樹脂組成物及び成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い耐熱性と低い複屈折とを有する光学成形体を提供する。
【解決手段】脂環構造含有重合体と、ヒンダードフェノール系酸化防止剤と、シロキサン化合物とを含有する樹脂組成物であって、前記フェノール系酸化防止剤が、両ヒンダードフェノール系酸化防止剤であり、前記シロキサン化合物が、置換基として炭化水素基を有し、1分子中のケイ素原子と酸素原子の合計重量割合が20〜60重量%であることを特徴とする樹脂組成物からなる光学成形体を得る。
【選択図】なし

Description

本発明は、車載用レンズなどの高い耐熱性を要求される光学材料として好適な樹脂組成物及びそれからなる光学用成形体に関する。
ノルボルネン系単量体の開環重合体水素添加物などの脂環構造含有重合体は、優れた透明性、低吸湿性、低複屈折性などから、光学レンズに好適に用いられている。これらの用途において、脂環構造含有重合体には、一般に、酸化防止剤を配合することで、耐候性や透明性を確保している。
ところで、特許文献1においては、このような脂環構造含有重合体に、フェノール系酸化防止剤に、特定構造のジシロキサン化合物を配合することで、長時間の保存によっても高い透明性を維持することが可能になることが知られている。
また、特許文献2によると、かご形シルセスキオキサン化合物が、ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリフェニレンサルファイド樹脂との相溶性を向上させ、両樹脂の特性を併せ持つ、線膨張係数の低いフィルムを提供することができることが報告されている。
特開2008−297454号公報 特開2008−214460号公報
かかる従来技術の下、本発明者らは、特許文献1で用いられる様な、RSiO(Rは置換基を有しても良いフェニル基)で表されるようなシロキサン化合物を含有する樹脂組成物から得られたレンズは、複屈折が小さいことを確認した。
そして本発明者らは、特許文献1で提案されているのとは異なるシロキサン化合物である、置換基として炭化水素基を有し、1分子中のケイ素原子と酸素原子の合計重量割合が20〜60重量%であるシロキサン化合物(以下、特定シロキサン化合物ということがある)を用いると、高い耐熱性と低い複屈折とを有する光学成形体を得ることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、
脂環構造含有重合体と、ヒンダードフェノール系酸化防止剤と、シロキサン化合物とを含有する樹脂組成物であって、
前記フェノール系酸化防止剤が、両ヒンダードフェノール系酸化防止剤であり、
前記シロキサン化合物が、置換基として炭化水素基を有し、1分子中のケイ素原子と酸素原子の合計重量割合が20〜60重量%である
ことを特徴とする樹脂組成物が提供される。
前記シロキサン化合物は、かご形シルセスキオキサン化合物であるのが好ましい。
このかご形シルセスキオキサンは、一般式(1)[RSiO3/2で表されるものであるのが好ましい。
また、前記シロキサン化合物は、1,3−ビス(4−メトキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、又は、一般式(1)[RSiO3/2で表される次の(a)〜(c)のかご形シルセスキオキサンのいずれかであるのが好ましい。
(a)一般式(1)中、7つのRがエチル基であり、1つのRが2−ノルボルネニルエチル基である、C234812Siで表されるかご形シルセスキオキサン
(b)一般式(1)中、7つのRがイソブチル基であり、1つのRがアリル基である、C316812Siで表されるかご形シルセスキオキサン
(c)一般式(1)中、8つのRがすべてフェニル基である、C484012Siで表されるかご形シルセスキオキサン
前記脂環構造含有重合体は、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エンを含む単量体の開環重合体水素添加物であるのが好ましい。
さらに、本発明によれば、上述した樹脂組成物からなる光学成形体が提供される。
本発明の樹脂組成物は、脂環構造含有重合体、フェノール系酸化防止剤、及び特定シロキサン化合物を含有するものである。
・脂環構造含有重合体
本発明で使用される脂環構造含有重合体は、主鎖及び/又は側鎖に脂環式構造を有する、非晶性樹脂(融点を有しない樹脂)であり、機械的強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有するものが好ましい。
重合体の脂環式構造としては、飽和環状炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和環状炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられるが、機械的強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造を有するものが最も好ましい。
脂環式構造を構成する炭素原子数は、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であるときに、機械的強度、耐熱性、及び成形性の特性が高度にバランスされ、好適である。
本発明に使用される脂環構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%である。脂環構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合が過度に少ないと耐熱性に劣り好ましくない。脂環構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位以外の残部は、格別な限定はなく、使用目的に応じて適宜選択される。
この脂環構造含有重合体の具体例としては、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン系重合体、(3)環状共役ジエン系重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素系重合体、及び(1)〜(4)の水素化物などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度等の観点から、ノルボルネン系重合体及びその水素化物が好ましい。
(1)ノルボルネン系重合体
ノルボルネン系重合体は、ノルボルネン骨格を有する単量体であるノルボルネン系単量体を重合してなるものであり、開環重合によって得られるものと、付加重合によって得られるものに大別される。
開環重合によって得られるものとして、ノルボルネン系単量体の開環重合体及びノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体、ならびにこれらの水素化物などが挙げられる。付加重合によって得られるものとしてノルボルネン系単量体の付加重合体及びノルボルネン系単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との付加重合体などが挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系単量体の開環重合体水素化物が、耐熱性、機械的強度等の観点から好ましく、特に、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エンをノルボルネン系単量体として用いたノルボルネン系単量体の開環重合体水素化物が耐熱性に関して著効を示すので好ましい。7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エンをノルボルネン系単量体として用いたノルボルネン系単量体の開環重合体水素化物は、ノルボルネン系単量体中、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エンの割合が好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、とりわけ好ましくは85重量%以上のものである。
ノルボルネン系単量体としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)、トリシクロ[4.3.01,6.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)及びその誘導体、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン:1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)及びその誘導体、などが挙げられる。
置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基、アルキリデン基などが例示でき、上記ノルボルネン系単量体は、これらを2種以上有していてもよい。具体的には、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンなどが挙げられる。
これらのノルボルネン系単量体は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
ノルボルネン系単量体の開環重合体、又はノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体は、単量体成分を、公知の開環重合触媒の存在下で重合して得ることができる。開環重合触媒としては、例えば、ルテニウム、オスミウムなどの金属のハロゲン化物と、硝酸塩又はアセチルアセトン化合物、及び還元剤とからなる触媒、あるいは、チタン、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物又はアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いることができる。
ノルボルネン系単量体と開環共重合可能なその他の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィン系単量体などを挙げることができる。
ノルボルネン系単量体の開環重合体水素化物は、通常、上記開環重合体の重合溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を水素化することにより得ることができる。
ノルボルネン系単量体の付加重合体、又はノルボルネン系単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との付加重合体は、これらの単量体を、公知の付加重合触媒、例えば、チタン、ジルコニウム又はバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いて重合させて得ることができる。
ノルボルネン系単量体と付加共重合可能なその他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンとも言う)などのシクロオレフィン、及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。
これらの、ノルボルネン系単量体と付加共重合可能なその他の単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。ノルボルネン系単量体とこれと付加共重合可能なその他の単量体とを付加共重合する場合は、付加重合体中のノルボルネン系単量体由来の構造単位と付加共重合可能なその他の単量体由来の構造単位との割合が、重量比で通常30:70〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは70:30〜95:5の範囲となるように適宜選択される。
(2)単環の環状オレフィン系重合体
単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの、単環の環状オレフィン系単量体の付加重合体を用いることができる。
(3)環状共役ジエン系重合体
環状共役ジエン系重合体としては、例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの環状共役ジエン系単量体を1,2−又は1,4−付加重合した重合体及びその水素化物などを用いることができる。
(4)ビニル脂環式炭化水素重合体
ビニル脂環式炭化水素重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサンなどのビニル脂環式炭化水素系単量体の重合体及びその水素化物;スチレン、α−メチルスチレンなどのビニル芳香族系単量体の重合体の芳香環部分の水素化物;などが挙げられ、ビニル脂環式炭化水素重合体やビニル芳香族系単量体と、これらの単量体と共重合可能な他の単量体とのランダム共重合体、ブロック共重合体などの共重合体及びその水素化物など、いずれでもよい。ブロック共重合体としては、ジブロック、トリブロック、又はそれ以上のマルチブロックや傾斜ブロック共重合体などが挙げられ、特に制限はない。
本発明で使用される脂環構造含有重合体の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常5,000以上であり、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは8,000〜200,000、特に好ましくは10,000〜100,000の範囲であるときに、機械的強度と成形加工性とが高度にバランスし、好適である。
本発明で使用される脂環構造含有重合体のガラス転移温度は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常50〜300℃、好ましくは100〜280℃、特に好ましくは115〜250℃、さらに好ましくは130〜200℃の範囲であるときに、耐熱性と成形加工性とが高度にバランスし、好適である。
本発明でいうガラス転移温度とは、JIS K 7121に基づいて測定されたものである。
ちなみに、これらの脂環構造含有重合体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
・フェノール系酸化防止剤
本発明に係るフェノール系酸化防止剤は、両ヒンダードフェノール系酸化防止剤である。両ヒンダードフェノール系酸化防止剤とは、ヒドロキシル基の2位と6位にヒンダード基を有するものである。ここでヒンダード基とは、立体障害性置換基を言い、好適にはt−ブチル基などの三級炭化水素基が挙げられる。一方、ヒンダード基とならない基としては、水素原子の他、メチル基やエチル基など直鎖炭化水素基などが挙げられる。
本発明で好適に用いられるフェノール系酸化防止剤として好ましくは、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートやオクタデシル−3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド、ベンゼンプロパン酸,3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ,C7−C9側鎖アルキルエステル、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−t−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、ヘキサメチレンビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5,−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−t−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノールなど水酸基に隣接する置換基にt−ブチル基を有する両ヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。
これらのフェノール系酸化防止剤は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
両ヒンダードフェノール系酸化防止剤の配合量は、脂環構造含有重合体100重量部に対して、通常0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜2重量部である。
また、本発明において、両ヒンダードフェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤を併用することも可能であるが、その量は、両ヒンダードフェノール系酸化防止剤の量と同量以下で用いるのが好ましい。
・特定シロキサン化合物
本発明に係る特定シロキサン化合物は、置換基として炭化水素基を有し、1分子中のケイ素原子と酸素原子の合計重量割合が20〜60重量%、好ましくは30〜55重量%、より好ましくは35〜55重量%、特に好ましくは40〜50重量%のものである。
このようなシロキサン化合物としては、1,3−ビス(4−メトキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンなどのRR’SiO(Rはメトキシフェニル基であり、R’は、水素原子又はメチル基)や、一般式(1)[RSiO3/2で表されるかご形シルセスキオキサンが挙げられる。
一般式(1)で表されるかご形シルセスキオキサンとしては、一般式(1)中、7つのRがエチル基であり、1つのRが2−ノルボルネニルエチル基である、C234812Siで表されるかご形シルセスキオキサン(NorbornenylethylEthyl POSS(登録商標)、Hybrid Plastics社製);一般式(1)中、7つのRがイソブチル基であり、1つのRがアリル基である、C316812Siで表されるかご形シルセスキオキサン(AllylIsobutyl POSS(登録商標)、Hybrid Plastics社製);一般式(1)中、8つのRがすべてフェニル基である、C484012Siで表されるかご形シルセスキオキサンOctaPhenyl POSS(登録商標)、Hybrid Plastics社製);一般式(1)中、7つのRがt−ブチル基であり、1つのRが2−ノルボルネニルエチル基である、C377612Siで表されるかご形シルセスキオキサン(NorbornenylethylIsobutyl POSS(登録商標)、Hybrid Plastics社製)などが挙げられる。
このほか、C398412Siで表されるシルセスキオキサン(Norbornenylethyl DiSilanolIsobtyl POSS(登録商標)やC6112912Siで表されるシルセスキオキサン(TrisNorbornenylethylDiSilanolIsobtylPOSS(登録商標)などのかご形構造が変形した一般式(1)[RSiO3/2で表されるかご形シルセスキオキサンも、ノルボルネン構造を有することから、本願発明に係る脂環構造含有重合体との相溶性に優れ、本発明の目的に好適な特定シロキサン化合物であると推定される。
特定シロキサン化合物の配合量は、脂環構造含有重合体100重量部に対して、通常0.1〜5重量部、好ましくは0.5〜3重量部である。
・樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、脂環構造含有重合体とフェノール系酸化防止剤と特定シロキサン化合物とを混合して得られる。混合方法としては、重合体中に配合剤が十分に分散する方法であれば、特に限定されない。例えば、ミキサー、一軸混練機、二軸混練機、ロール、ブラベンダー、押出機などで樹脂を溶融状態で混練する方法、適当な溶剤に溶解して分散させて凝固法、キャスト法、又は直接乾燥法により溶剤を除去する方法などがある。
二軸混練機を用いる場合、混練後は、通常は溶融状態で棒状に押出し、ストランドカッターで適当な長さに切り、ペレット化して用いられることが多い。
・その他の成分
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、その他のポリマー、光学成形体に対して通常用いられる各種配合剤を単独で、あるいは2種以上混合して用いることができる。
その他のポリマーとしては、ゴム質重合体;ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、石油樹脂、フェノール樹脂などの樹脂;などのその他のポリマーを例示することができる。
ゴム質重合体としては、ガラス転移温度が40℃以下の熱可塑性エラストマーが挙げられ、その具体例としては、乳化重合又は溶液重合したスチレン・ブタジエン・ゴム、ハイスチレンゴムなどのランダム又はブロック・スチレン・ブタジエン系共重合体、これらの水素添加物;イソプレン・ゴム、その水素添加物;クロロプレンゴム、その水素添加物;エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体などの飽和ポリオレフィンゴム;エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、α−オレフィン・ジエン共重合体、ジエン共重合体、イソブチレン・イソプレン共重合体、イソブチレン・ジエン共重合体などのジエン系重合体、これらのハロゲン化物、ジエン系重合体又はそのハロゲン化物の水素添加物、又は、これらを無水マレイン酸やグリシジルメタクリレートやエポキシ等で変性したものなどが挙げられる。
これらの中でも、成形体の表面平滑性が良いことから、スチレン・ブタジエン・ゴム、ハイスチレンゴムなどのランダム又はブロック・スチレン・ブタジエン系共重合体の水素添加物、及び、これらの無水マレイン酸やグリシジルメタクリレートやエポキシ等の変性体が好ましい。
通常用いられる各種配合剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、近赤外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤などが挙げられる。
酸化防止剤としては、前記両ヒンダードフェノール系酸化防止剤以外のフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられるが、これらの中でも、フェノール系酸化防止剤が好ましく、アルキル置換フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベゾエート系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、アクリレート系紫外線吸収剤、金属錯体系紫外線吸収剤などが挙げられる。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤を挙げることができる。
近赤外線吸収剤は、例えば、シアニン系近赤外線吸収剤;ピリリウム系赤外線吸収剤;スクワリリウム系近赤外線吸収剤;クロコニウム系赤外線吸収剤;アズレニウム系近赤外線吸収剤;フタロシアニン系近赤外線吸収剤;ジチオール金属錯体系近赤外線吸収剤;ナフトキノン系近赤外線吸収剤;アントラキノン系近赤外線吸収剤;インドフェノール系近赤外線吸収剤;アジ系近赤外線吸収剤;等が挙げられる。
可塑剤としては、燐酸トリエステル系可塑剤、脂肪酸一塩基酸エステル系可塑剤、二価アルコールエステル系可塑剤、オキシ酸エステル系可塑剤などが挙げられる。
帯電防止剤としては、多価アルコールの脂肪酸エステルなどが挙げられる。
これらの各種配合剤は、本発明の目的を損なわれない範囲で用いることができ、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いて良く、その配合量は、脂環構造含有重合体100重量部に対して通常0.001〜5重量部、好ましくは0.01〜1重量部の範囲である。
本発明の樹脂組成物から、本発明の光学成形体を得るには、従来公知の成形方法に従えば良く、射出成形、プレス成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、多層ブロー成形、コネクションブロー成形、二重壁ブロー成形、延伸ブロー成形、真空成形、回転成形などが挙げられる。成形精度からは、射出成形、プレス成形が好ましく、特に射出成形が好ましい。成形時の樹脂の溶融温度は脂環構造含有重合体の種類によっても異なるが、通常200〜400℃、好ましくは250〜350℃である。
射出成形法は、通常、成形材料である本発明の樹脂組成物を射出成形器のホッパーに投入し、成形材料が均一に混合されるように回転数を設定したスクリューで、シリンダーに送られ、次いで、金型へと射出する方法である。シリンダーの温度は、通常150〜400℃、好ましくは200〜350℃、より好ましくは230〜330℃の範囲で適宜選択される。シリンダー温度が過度に低いと流動性が悪化し、成形体にヒケやひずみを生じ、シリンダー温度が過度に高いと成形材料の熱分解によるシルバーストリークが発生したり、成形体が黄変するなどの成形不良が発生するおそれがある。
シリンダーから金型への射出速度は、通常1〜1000cm/秒であるときに、外観形状に優れ、しかも大型の成形体の成形が可能となり好適である。
シリンダーから金型への射出圧は、通常500〜15000kgf/cmの範囲で行われる。このときの射出圧は、金型の設計や使用される成形材料の流動性等の条件を考慮して適宜選択し、設定すればよい。
保圧は、射出圧によって、金型が略充填された後、金型のゲート部分の溶融した成形材料が完全に冷却固化するまでの一定時間かけられる圧力である。保圧の上限値としては一般に金型の締め圧の範囲内で設定されるが、通常2000kgf/cm以下、好ましくは1700kgf/cm以下、より好ましくは1500kgf/cm以下の範囲において設定される。保圧の上限値はこのような範囲とすることで、成形体に歪みなどの成形不良が発生するおそれがなくなる。保圧の下限値としては、少なくとも100kgf/cm以上、好ましくは120kgf/cm以上、より好ましくは150kgf/cm以上の範囲において設定される。保圧の下限値をこのような範囲とすることで、成形体のひけの発生が防止され、成形収縮率を小さくすることができ、寸法精度の優れたものを得ることができる。
このときの金型温度は、成形材料中の脂環構造含有重合体のガラス転移温度(Tg)よりも、通常低い温度で設定され、好ましくはTgよりも0〜50℃低い範囲であり、より好ましくはTgよりも5〜20℃低い範囲の温度において設定される。このような範囲において金型温度を設定することにより、成形体のひずみを低く抑制することができる。
また、成形体の色調低下や酸化物及びボイドの発生を極力低減させる目的で、成形材料の予備乾燥を行ったり、射出成型機のホッパー部から窒素などを流し、空気との置換を行うことが好ましい。予備乾燥の方法は制限されず、例えば、100〜110℃、4〜12時間の真空乾燥によって行う。
・射出成形体
上述した本発明の樹脂組成物を用いて射出成形される成形体は、高い透明性と低い線膨張率を有するため、光学レンズ、プリズム、導光体などの光学部品として好適である。成形体は、球状、棒状、板状、ファイバー状、筒状などの各種の形状に成形して使用することができるが、中でも、棒状や板状で、導光体用として使用するのが最も好適である。導光体としては、上記の形状に限らず、その他複雑な形状を有するものまでいずれにも使用でき、その具体例としては、光ファイバー、車両灯具用導光体、各種計器用ライトガイド、導光板、光導波路などが挙げられる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。以下において、部又は%は、特に断りが無い限り重量基準であり、圧力はゲージ圧力である。
各種物性の測定法は次のとおりである。
(1)分子量
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(MWD)はシクロヘキサンを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による、標準ポリイソプレン換算値として測定した。標準ポリイソプレンとしては、東ソー社製標準ポリイソプレン、Mw=602、1,390、3,920、8,050、13,800、22,700、58,800、71,300、109,000、280,000の計10点を用いた。
測定には、東ソー社製HLC8120GPCを用い、カラムとして東ソー社製TSKgel G5000HXL、TSKgel G4000HXL及びTSKgel G2000HXLを3本直列に繋いで用い、流速1.0ml/分、サンプル注入量100μml、カラム温度40℃の条件で行った。
(2)水素添加率は、H−NMRにより測定した。
(3)ガラス転移温度は、JIS K 7121に基づき、示差走査熱量分析計(製品名「DSC6220S11」、ナノテクロノジー社製)を用い、ガラス転移温度より30℃以上に加熱した後、冷却速度−10℃/分で室温まで冷却し、その後、昇温速度10℃/分で昇温する過程で測定した。
(5)光線透過率は、分光光度計(日本分光社製「V−570」)を用いて、波長400nm、光路長3mmで測定した。
(6)耐熱黄変抑制評価は、色差計(製品名「SE−2000」、日本電色工業社製)を用いて、透過モードにて光路長3mmで測定した。
(7)複屈折低減効果の評価は、微小面積複屈折計(製品名「KOBRA−CCD」、王子計測器社製)を用い、測定波長650nmにて、ゲートから15mmの位置の位相差で評価した。効果の確認は、シロキサン化合物を含まない脂環式構造含有重合体の成形体(比較例5)を基準とし、位相差の低減割合が、2割以上である時を○、1割以上2割未満である時を△、1割未満である時を×と評価した。
[製造例]
窒素置換した撹拌器付きオートクレーブに、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(以下1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン「MTF」と略すことがある)400重量部、シクロヘキサン600重量部、トルエン300部、1−ヘキセン1.55重量部を入れた。溶液を45℃に加温した後、さらに開環重合触媒としてトリイソブチルアルミニウムの15%トルエン溶液3.7重量部、イソブチルアルコール0.20重量部、ジイソプロピルエーテル0.86重量部、及び六塩化タングステンの0.65重量%シクロヘキサン溶液56.3重量部を添加し、45℃で1時間反応させた。その後イソプロピルアルコール0.7重量部添加して反応を停止した。
この反応溶液にニッケル−シリカ担持触媒(E22U、日揮化学社製)20重量部を添加し、水素圧4.5MPa、温度180℃において、6時間水素添加反応を行った。
反応終了後、この溶液をポアサイズ2μmのフィルターで濾過して水素添加触媒を除去した。濾液を撹拌したイソプロピルアルコール5000重量部中に注いで水素添加物を沈殿させ、濾別して回収した。
得られた水素添加物を1mmHg以下、100℃で24時間乾燥させ、300重量部の開環重合体水素添加物(A)を得た。開環重合体水素添加物(A)の重量平均分子量(Mw)は32,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.1であり、ガラス転移温度は156℃、また、主鎖の水素添加率は、99%以上、芳香環の水素添加率は、99%以上であった。
<実施例1>
製造例で作成した脂環式構造含有重合体100重量部を用い、酸化防止剤としてペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを0.4重量部、シロキサン化合物として一般式(1)中、7つのRがエチル基であり、1つのRが2−ノルボルネニルエチル基である、C234812Siで表されるかご形シルセスキオキサン(NorbornenylethylEthyl POSS(登録商標)1.0重量部をそれぞれドライブレンドにより混合した。その後、真空乾燥機により、100℃で4時間乾燥させ、二軸押し出し機を用い、ペレットを造粒した。得られたペレットを100℃で4時間真空乾燥させ、射出成形により平板状成形品(縦×横×厚み:70mm×30mm×3mm)を得た。
得られた成形品について、光線透過率測定により透明性を評価し、複屈折低減効果を確認した。その後、成形品を耐熱試験(130℃、200時間)にかけ、試験後の黄変を評価した。黄変の評価は、耐熱試験後の黄色度(△YI)から、耐熱試験前の黄色度を差し引いた値(△△YI)にて評価した。これらの結果を表1に示す。
<実施例2〜5、及び比較例1〜5>
酸化防止剤種、シロキサン化合物種を表に記載された通りに変更したこと以外は、上記の実施例と同様の手法で成形品を得た。得られた成形品の評価結果を表1に示す。
Figure 2013006916
この結果から、以下のことがわかる。
シロキサン化合物の、1分子中のケイ素原子と酸素原子の合計重量割合が小さすぎると、複屈折低減効果が不十分であることが判り(比較例1)、逆に、同割合が大きすぎると、初期の透明性に劣ることが判る(比較例3、4)
フェノール系酸化防止剤が、片ヒンダードフェノール系酸化防止剤であると、熱による黄変を抑止する効果が下がることが判る(比較例2)。
また、シロキサン化合物を用いない場合は、初期透明性には優れるものの、熱による黄変が生じることが判る(比較例5)。

Claims (6)

  1. 脂環構造含有重合体と、ヒンダードフェノール系酸化防止剤と、シロキサン化合物とを含有する樹脂組成物であって、
    前記フェノール系酸化防止剤が、両ヒンダードフェノール系酸化防止剤であり、
    前記シロキサン化合物が、置換基として炭化水素基を有し、1分子中のケイ素原子と酸素原子の合計重量割合が20〜60重量%である
    ことを特徴とする樹脂組成物。
  2. シロキサン化合物が、かご形シルセスキオキサン化合物である請求項1記載の樹脂組成物。
  3. かご形シルセスキオキサンが、一般式(1)[RSiO3/2で表されるものである請求項2記載の樹脂組成物。
  4. シロキサン化合物が、1,3−ビス(4−メトキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、又は、一般式(1)[RSiO3/2で表される次の(a)〜(c)のかご形シルセスキオキサンのいずれかである、請求項1記載の樹脂組成物。
    (a)一般式(1)中、7つのRがエチル基であり、1つのRが2−ノルボルネニルエチル基である、C234812Siで表されるかご形シルセスキオキサン
    (b)一般式(1)中、7つのRがイソブチル基であり、1つのRがアリル基である、C316812Siで表されるかご形シルセスキオキサン
    (c)一般式(1)中、8つのRがすべてフェニル基である、C484012Siで表されるかご形シルセスキオキサン
  5. 脂環構造含有重合体が、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エンを含む単量体の開環重合体水素添加物である請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物からなる、光学成形体。
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