JP2013006294A - インクジェット記録用メンテナンス液 - Google Patents

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Abstract

【課題】定着樹脂として、特に水分散性樹脂微粒子を含有する水性顔料インキを使用するインクジェットプリンタに適用する場合にでも、優れたメンテナンス性を有するインクジェット記録用メンテナンス液を提供する。
【解決手段】本発明のインクジェット記録用メンテナンス液は、少なくとも水、特定の構造式で表わされる化合物、2−ピロリドン、保湿剤を含有することを特徴とするインクジェット記録用メンテナンス液。また、少なくとも顔料、顔料分散樹脂、水、水溶性有機溶剤、水分散性樹脂微粒子とを含有する水性インキ組成物と、上記インクジェット記録用メンテナンス液とを有するインクジェット記録用インキセット。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェットプリンタに好適に用いられるインクジェット記録用メンテナンス液、インキセットに関する。
インクジェットプリンタは、低騒音、高速、高解像度のノンインパクトプリンタとして近年広く商品化が行われている。インクジェットプリンタに用いられるインキの溶媒は、臭気、安全性の観点から水、水溶性有機溶媒を用いる水性インキが主流である。また、色材としては、水溶性染料が利用されてきたが、耐光性、耐オゾン褪色性に劣るという欠点があった。そこで、水溶性染料に変えて顔料を使用する顔料インキの検討が行われるようになった。
水性顔料インキは、顔料を水媒体中に微粒子状態で分散したものであり、顔料自身が高い耐光性、耐オゾン褪色性を有するため、得られる画像の保存性は、染料を用いたものと比較して著しく高めることができる。このため、近年、サインディスプレイ市場での大判プリンタとして、顔料インキを使用するインクジェットプリンタの実用化が進んできた。しかしながら、顔料を用いたインキでは、顔料粒子が記録媒体中に染み込まず表面に存在するため、形成した画像の耐擦過性が劣るという課題を抱えている。そのため、その使用に制限を受けたり、あるいは表面にラミネート加工を施して使用するという煩雑さを伴う。
水性顔料インキにより形成した画像の耐擦過性を向上させるために、水性顔料インキ中に水溶性樹脂や水分散性樹脂微粒子などの定着樹脂が添加される。各樹脂を添加することで、画像の耐擦過性は向上する。しかし、インクジェットヘッドの吐出口(ノズル)近傍に付着したインキが、乾燥し樹脂皮膜を形成したりして、インキ吐出時に吐出曲りやノズル閉塞を引き起こす。この様な事態の処置のために様々な対策が講じられている。
吐出口にインキが詰まることを防止するための対策としては、インクジェットプリンタが画像記録動作を行っていない時に吐出口をキャップで蓋をするという技術が、特許文献1(特開昭59−111856号公報)に記録されている。しかし、プリンタを長期にわたり使用しなかった場合、溶媒が蒸発し、ノズル付近のインキ粘度が高くなり、目詰まりを起こしたり、また外気中のゴミ等の異物混入による目詰まりを生じたりして、インキの吐出不良を生じる原因となっていた。この問題の防止策として、不具合が発生した場合にクリーニング液を使用してインキ流路内を洗浄方法や、長期間の装置休止が想定される場合に予めインキをメンテナンス液で置換する方法が考案されている。
クリーニング液またはメンテナンス液の事例として、特許文献2(特開平4−261476)記載のイソチアゾロン系化合物含有の防黴防菌を改善したクリーニング液、特許文献3(特開平11−152499)記載の生菌数、粘度、導電率を規定したクリーニング液、特許文献4(特開2000−109733)記載の特定架橋性インキを使用した場合に提供するpH8〜11のメンテナンス液、特許文献5(特開2000−127419)記載の界面活性剤と塩基性化合物を含有したpH9以上のクリーニング液、特許文献6(特開2005−7703)記載のアルキレングリコールモノアルキルエーテル含有のメンテナンス液、特許文献7(特開2007−119658)記載の水への溶解度が3重量%以上の樹脂溶剤と保湿剤を含有したメンテナンス液等が例示できる。
しかしながら、上記のクリーニング液またはメンテナンス液では、上述した水性顔料インキに定着樹脂として水分散性樹脂微粒子を含有したものに対して、洗浄性とインキとの混合安定性の両立が図れない。つまり、洗浄性が高いメンテナンス液の場合、乾燥して増粘・固化したインキを取り除くには効果があるが、正常なインキ(増粘や固化してない状態)と接触した場合、インキの安定性が維持できず、結果として吐出の不安定、ノズルの目詰まり等の重大な信頼性問題が発生する恐れがあった。
特開昭59−111856号公報 特開平4−261476号公報 特開平11−152499号公報 特開2000−109733号公報 特開2000−127419号公報 特開2005−7703号公報 特開2007−119658公報
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、定着樹脂として、特に水分散性樹脂微粒子を含有する顔料インキを使用するインクジェットプリンタにおいて、メンテナンス性に優れたインクジェット記録用メンテナンス液を提供することを目的とする。
上記目的は、以下の本発明によって達成される。すなわち、
(1)少なくとも水、一般式(I)で表わされる化合物、2−ピロリドン、保湿剤を含有することを特徴とするインクジェット記録用メンテナンス液に関する。
(2)前記一般式(I)で表わされる化合物の含有量が、メンテナンス液に対して5〜20重量%である(1)に記載のインクジェット記録用メンテナンス液に関する。
(3)前記一般式(I)で表わされる化合物のR1が炭素数1〜4である(1)又は(2)に記載のインクジェット記録用メンテナンス液に関する。
(4)前記2−ピロリドンの含有量が、メンテナンス液に対して5〜40重量%である(1)〜(3)のいずれか1つに記載のインクジェット記録用メンテナンス液に関する。
(5)前記保湿剤の含有量が2〜10重量%である(1)から(4)のいずれか1ついに記載のインクジェット記録用メンテナンス液に関する。
(6)少なくとも水、顔料、顔料分散剤、水分散性微粒子を含有する水性インキ組成物と、(1)〜(5)のいずれか1つに記載のインクジェット記録用メンテナンス液とを有するインクジェット記録用インキセットに関する。
本発明における「メンテナンス」とは、インクジェットヘッド内部の流路の洗浄を行い長期間保管することと、ノズル吐出面に付着したインキをワイピング(ゴム製のブレード、布や紙類での拭き取り)することで洗浄し安定的に吐出させることが含まれる。
本発明によれば、定着樹脂として、特に水分散性樹脂微粒子を含有する水性顔料インキを使用するインキジェットプリンタにおいても、優れたメンテナンス性を有するインクジェット記録用メンテナンス液を提供することができる。
次に、本発明について詳細に説明する。
メンテナンス液:
本発明のインクジェット記録用メンテナンス液は、少なくとも水、一般式(I)で表わされる化合物、2−ピロリドン、保湿剤を含有することを特徴とする。このメンテナンス液は、定着樹脂として水分散性樹脂微粒子を含有する水性顔料インキを使用するインクジェットプリンタにおいても安定した吐出性能が維持でき、所望の画像を得ることができる。
一般式(I)


(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜6のエーテル結合を有しても良い炭化水素基であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
この理由は定かでないが以下のように考える。すなわち、定着樹脂として水分散性樹脂微粒子を含有する水性顔料インキにおいて、本発明に含まれる一般式(I)で表わされる化合物は、インキ中の定着樹脂に対して高い溶解性を示すため、インキが乾燥して増粘・固化した物を溶解しやすくする。しかしながら、溶解力が高いため、正常なインキ(増粘・固化していない)と接触・混合した場合、顔料の分散状態が破壊され、凝集物が発生したりする。さらに、ワイピングの際に、溶解力が高いがためにかえって、定着樹脂である水分散性樹脂微粒子の分散状態を破壊し、インキの粘度を上昇させ、ノズルの目詰まりを引き起こす。また、メンテナンス液中における一般式(I)で表わされる化合物の含有量を減らした場合、正常なインキとの混合安定性は向上するが、増粘・固化した物への洗浄性は低下してしまう。
そこで、本発明者らは、インキと混合した際に、インク中の定着樹脂である水分散性樹脂微粒子の分散状態を破壊することなしに、軟化・膨潤させる作用がある2−ピロリドンを併用して使用することで、インキが乾燥して増粘・固化した物への洗浄性とインキとの混合安定性を両立できることを見出した。
さらに、保湿剤を含有させることで、メンテナンス液をヘッドに充填して長期間放置した場合でも、メンテナンス液中の水分蒸発を抑制するため、組成が変わらず効果を維持できる。
以下に好ましい実施の形態を挙げて、本発明のインクジェット記録用メンテナンス液について説明する。
本発明で使用される一般式(I)に該当する化合物は、インク中の定着樹脂を溶解させ、洗浄性を高める目的で使用される。一般式(I)に該当する溶剤の具体例としては、N,N−ジメチル−β−メトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−エトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ブトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ペントキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ヘキソキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ペプトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−オクトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−メトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−エトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ブトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ペントキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ヘキソキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ペプトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−オクトキシプロピオンアミド等がある。一般式(I)で表わされる化合物中のR1の炭素数は、多くなるに従って洗浄性は向上するが、インキとの混合安定性が低下する。好ましくは、洗浄性とインキとの混合安定性の観点からN,N−ジメチル−β−メトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−エトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ブトキシプロピオンアミドである。さらに、好ましくは、N,N−ジメチル−β−メトキシプロピオンアミドである。これらは、単独で使用しても良く、複数を混合して使用することもできる。
本発明において、一般式(I)で表わされる化合物の含有量は、メンテナンス液全体に対して5〜20重量%である。好ましくは、6〜17重量%、より好ましくは7〜15重量%である。5重量%より少ない場合、洗浄性が悪くなり、安定した吐出の維持ができない。また、20重量%より多い場合、インキとの混合性が悪くなり、凝集物が発生し安定した吐出の維持ができない。
本発明で使用される2−ピロリドンは、インク中の定着樹脂を軟化・膨潤させ、一般式(I)で表わされる化合物の洗浄性を助ける目的で使用される。
本発明で使用される2−ピロリドンの含有量は、メンテナンス液全体に対して5〜40重量%である。好ましくは、7〜30重量%、より好ましくは10〜20重量%である。5重量%より少ない場合、軟化・膨潤させる効果が低くなり、その結果洗浄性が低下し、安定した吐出の維持ができない。また、40重量%より多い場合、洗浄後、クリーニング液がノズル近傍に残りやすくなり、吐出曲り等の問題が発生することがある。
本発明で使用される保湿剤は、メンテナンス液の水分蒸発による乾燥を抑制して、メンテナンス液の組成の変質を防ぐことを目的で使用される。このため、ヘッド内に充填されて長期間休止となった場合でも、メンテナンス液の効果が維持できる。
本発明で使用される保湿剤としては、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等を用いることができる。好ましくは、グリセリン、ポリエチレングリコールである。より好ましくは、ポリエチレングリコールである。
保湿剤の含有量は、メンテナンス液全量に対して、2〜10重量%が好ましい。2重量%より少ない場合、上述の効果が期待できない可能性がある。また、10重量%より多い場合、メンテナンス液の粘度が上昇し洗浄後、ノズル近傍にメンテナンス液が残り吐出不良が起こる可能性がある。
本発明で使用される水は、種々のイオンを含有する一般の水でなく、イオン交換水(脱イオン水)を用いることが好ましい。
本発明で使用できる水の含有量としては、特に制限はないが、メンテナンス液の全量の40〜90重量%が好ましい。
さらに、本発明のメンテナンス液は、上述の成分の他に、必要に応じて洗浄性やインキとの混合安定性を損なわない程度に他の水溶性有機溶剤、防腐剤、防黴剤、消泡剤、表面調整剤、pH調整剤等を適宜に添加することができる。これらの添加量の例としては、メンテナンス液の全量に対して、0.05〜10重量%の範囲である。
インキ組成物
本発明におけるインキ組成物は、少なくとも顔料、顔料分散剤、水、水溶性有機溶剤、水分散性樹脂微粒子を含有する。以下、インキ組成物について説明する。
本発明に使用される顔料は、従来既知のものが使用できる。
本発明で使用することができるブラックの顔料としては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックが挙げられる。例えば、これらのカーボンブラックであって、一次粒子径が11〜40mμm(nm)、BET法による比表面積が50〜400m2/g、揮発分が0.5〜10質量%、pH値が2〜10等の特性を有するものが好適である。このような特性を有する市販品としては下記のものが挙げられる。例えば、
No.33、40、45、52、900、2200B、2300、MA7、MA8、MCF88(以上、三菱化学製)、RAVEN1255(コロンビア製)、REGAL330R、400R、660R、MOGULL(以上、キャボット製)、Nipex 160IQ、Nipex 170IQ、Nipex 75、Printex 85、Printex 95、Printex 90、Printex 35、Printex U(以上、デグサ製)等があり、何れも好ましく使用することができる。
本発明で使用することができるイエローの顔料としては、例えば、
C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、55、74、81、83、109、113、120、128、150、151、155、183等が挙げられる。
本発明で使用することができるマゼンタの顔料としては、例えば、
C.I.Pigment Red5、7、12、22、23、31、48(Ca)、48(Mn)、49、52、53、57(Ca)、57:1、112、122;キナクリドン固溶体、146、147、150、238、269、C.I.PigmentViolet 19等が挙げられる。
本発明で使用することができるシアンの顔料としては、例えば、
C.I.Pigment Blue1、2、3、15:3、15:4、16、22、C.I.VatBlue 4、6等が挙げられる。
本発明で使用することができる顔料としては、上記以外の色の顔料、及び自己分散型顔料等も使用することができる。これらの顔料は、各色インキにおいて、1種または2種以上を併用して使用することができる。
本発明で使用することができる顔料の含有量としては、特に制限はないがインキ中に、重量比で、0.1〜10重量%の範囲である。
本発明のインキに含まれる顔料分散樹脂としては、従来既知のものが使用できるが、一般に、(メタ)アクリル酸共重合物が使用される。これは、顔料表面に吸着した(メタ)アクリル酸共重合物がイオン化した際の電荷反発により、水性溶媒中で、顔料どうしの電荷反発が起こり、安定した顔料分散状態を保つことができるためと考えられる。
本発明のインキに含まれる水としては、種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。
本発明で使用することができる水の含有量としては、インキの全量の10〜90重量%、更に好ましくは、30〜80重量%の範囲である。
本発明のインキに含まれる水溶性有機溶剤としては、従来既知のものが使用できる。
本発明で使用することができる水溶性有機溶剤としては、グリコールエーテル類、ジオール類が良く、中でも(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル、炭素数3〜6のアルカンジオールが好ましい。
グリコールエーテル類の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
ジオール類の具体例としては、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等が挙げられる。
この中でも好ましいのは、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールである。
これらの溶剤は単独で使用しても良く、複数を混合して使用することもできる。
さらに印刷する基材の種類によっては、その溶解性の向上を目的に、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、3−エチル−2−オキサゾリジノン、N,N−ジメチル−β−メトキシジプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−エトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ブトキシプロピオンアミドなどの含窒素化合物を添加することもできる。
本発明で使用することができる水溶性有機溶剤の含有量は、一般的には、インクの全量の3〜60重量%の範囲であり、好ましくは3〜50重量%の範囲である。
本発明のインキに含まれる水分散性樹脂微粒子としては、従来既知のものが使用できる。
水分散性樹脂微粒子は、特に制限はなく、熱可塑性のアクリル系、エポキシ系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ポリアミド系、ポリエステル系、シリコン系、塩化ビニル系樹脂等、あるいはそれらの共重合体の水分散性樹脂微粒子が使用できる。インキの安定性と塗膜の耐性の観点から、アクリル系、アクリルシリコン系水分散性樹脂微粒子が好ましい。
本発明で使用することができる水分散性樹脂微粒子の含有量は、特に制限はないが、インクの全量の2〜20重量%の範囲であり、好ましくは、5〜15重量%の範囲である。
また、本発明のインキは、上述の成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインキとするために、表面調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、増粘剤、水分散ワックス等の添加剤を適宜に添加することができる。これらの添加剤の添加量の例としては、インキの全量に対して、0.05〜10重量%の範囲であり、好ましくは、0.1〜5重量%の範囲である。
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。なお、実施例中、「部」は、「重量部」を、「%」は、「重量%」をそれぞれ表す。
(1)メンテナンス液の調整
下記表1に示す組成にて本発明のメンテナンス液と、表2に示す組成にて比較用のメンテナンス液とを調整した。各メンテナンス液の調整は、各成分を混合し、充分に攪拌したのち、1μmのメンブランフィルターを用いて濾過を行った。
(2)インキ組成物の調整
(顔料分散樹脂の製造例)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、ブタノール93.4部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱して、ラウリルメタクリレート35.0部、スチレン35.0部、アクリル酸30.0部、およびV−601(和光純薬製)6.0部の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに110℃で3時間反応させた後、V−601(和光純薬製)0.6部を添加し、さらに110℃で1時間反応を続けて、顔料分散樹脂1の溶液を得た。顔料分散樹脂1の重量平均分子量は約16000であった。
さらに、室温まで冷却した後、ジメチルアミノエタノール37.1部添加し中和した。これは、アクリル酸を100%中和する量である。さらに、水を293.4部添加し、水性化した。その後、ブタノールを除去した。これを1gサンプリングして、180℃20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に水性化した樹脂溶液の不揮発分が20%になるように水を加えた。これより、顔料分散樹脂1の不揮発分20%の水性化溶液を得た。
(水分散樹脂微粒子の製造例)
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、イオン交換水55部と乳化剤としてアクアロンKH−10(第一工業製薬株式会社製)0.4部とを仕込み、別途、2−エチルヘキシルアクリレート9部、メチルメタクリレート58部、スチレン30部、アクリル1部、アクリルアミド1部、フタル酸ジアリル1部、イオン交換水30部および乳化剤としてアクアロンKH−10 0.6部をホモミキサーで攪拌混合して調製した乳化液を、5部分取して加えた。内温を70℃に昇温し十分に窒素置換した後、過硫酸カリウムの5%水溶液4.0部、および無水重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液5.0部を添加して重合を開始した。反応開始後、内温を75℃に保ちながら上記の乳化液の残りと過硫酸カリウムの5%水溶液1.5部、および無水重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液5.8部を1.5時間かけて滴下し、さらに2時間攪拌を継続した。反応終了後、温度を30℃まで冷却し、ジメチルアミノエタノールを添加して、pHを8.9とした。さらにイオン交換水で固形分を40%に調整して水分散樹脂微粒子1の水分散体を得た。
(顔料分散液の製造例)
顔料としてC.I.Pigment Blueを20部、顔料分散樹脂1の水溶化液を42.9部、水37.1部をマヨネーズ瓶に仕込み、ディスパーで予備分散した後、直径0.8mmのジルコニアビーズ250部を分散メディアとして仕込み、ペイントシェイカーにて本分散を行い、顔料分散体を得た。
(インクの製造例)
得られた顔料分散体を20部、水分散性樹脂微粒子1の水分散体を12.5部、1,2−プロパンジオールを30部、2−ピロリドンを5部、サーフィノール465(AirProductsandChemicals Inc.製)を1部、水を31.5部混合し、10μmのメンブランフィルターでろ過することで、インク1を作製した。
上記各実施例、比較例で得られたインクジェット記録用メンテナンス液以下の項目について評価を行った。結果を表3に示す。
(インキとメンテナンス液との混合安定性評価1)
メンテナンス液100gにインキ1を1g添加・混合後、混合物を70℃の恒温槽に2週間保存し、凝集物の発生の有無を目視で評価した。
<評価基準>
○:凝集物の発生は見られない。
△:わずかに凝集物が見られる。
×:多くの凝集物が見られる。
(インキとメンテナンス液との混合安定性評価2)
株式会社セイコーアイ・インフォテック社製 インクジェットプリンターColor Painter 64S Plusにインキ1を充填した後、メンテナンス液を使用してインキ流路およびヘッド内部を洗浄した。その後、メンテナンス液を充填した状態で、プリンタを40℃環境下で1ヶ月放置した。放置後のヘッドのノズル近傍を顕微鏡により観察し、異物付着具合を評価した。
<評価基準>
○:ノズル近傍に異物の付着がない。
△:ノズル近傍にわずかに異物の付着が観察されるが、目詰まりを起こすほどでない。
×:ノズル近傍に異物の付着が見られ、目詰まりを起こしている。
(メンテナンス液の洗浄性の評価1)
インキ1を1g金属製の容器に測りとり、50℃のオーブンで30分乾燥させ、増粘させたインキにメンテナンス液を3g加えて均一に攪拌し、30分後のインキとメンテナンス液の状態を評価した。
<評価基準>
○:増粘したインキがほとんど溶解していた。
△:増粘したインキは半分ほど溶解していた。
×:増粘したインキはほとんど溶解せず、メンテナンス液に若干色がついた。
(メンテナンス液の洗浄性の評価2)
ヘッドのノズル面をワイピング(ゴム製のブレード、布や紙類での拭き取り)できるように改造した株式会社セイコーアイ・インフォテック社製 インクジェットプリンターColor Painter 64S Plusに、インキ1を充填し1時間連続印刷後、メンテナンス液を染み込ませた布ワイプ(アズピュアワイパー、アズワン製)でワイピングした。その後再印刷を実施し、印字物でノズル抜けを目視で評価した。
<評価基準>
○:ノズル抜け数が、全ノズルに対して5%未満である。
△:ノズル抜け数が、全ノズルに対して5%以上10未満である。
×:ノズル抜け数が、全ノズルに対して10%以上である。
表に示す通り、本発明のメンテナンス液とそれを用いたインキセットは、いずれも優れたメンテナンス性を示し、ヘッドの目詰まりを抑えた。

Claims (6)

  1. 少なくとも水、一般式(I)で表わされる化合物、2−ピロリドン、保湿剤を含有することを特徴とするインクジェット記録用メンテナンス液。
    (式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜6のエーテル結合を有しても良い炭化水素基であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
  2. 前記一般式(I)で表わされる化合物の含有量が、メンテナンス液に対して5〜20重量%であることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録用メンテナンス液。
  3. 前記一般式(I)で表わされる化合物のR1が炭素数1〜4であることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録用メンテナンス液。
  4. 前記2−ピロリドンの含有量が、メンテナンス液に対して5〜40重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録用メンテナンス液。
  5. 前記保湿剤の含有量が、メンテナンス液に対して2〜10重量%であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録用メンテナンス液。
  6. 少なくとも顔料、顔料分散樹脂、水、水溶性有機溶剤、水分散性樹脂微粒子とを含有する水性インキ組成物と、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録用メンテナンス液とを有するインクジェット記録用インキセット。

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