JP2013002741A - マルチ形空気調和装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】暖房運転時に最適な運転点を素早く構築し、インバータ制御の圧縮機回転数を安定させて高COPの運転を可能にしたマルチ形空気調和装置を提供する。
【解決手段】複数台の室内機ユニット30が並列に接続されたマルチ形空気調和装置ACであって、暖房運転時に蒸発器となる室外熱交換器12の上流側にレシーバ20を、レシーバ20と室外熱交換器12との間に室外機電子膨張弁21を各々設置し、制御部50に設けた室外機電子膨張弁21の暖房運転時開度制御モードが、室内機ユニット30の運転台数及び外気条件により規定する動力可変型圧縮機11の実回転数に対応して設定した室外機電子膨張弁暫定開度で所定時間運転するオープンループ制御を備え、室外機電子膨張弁暫定開度を算出するパラメータに、外気温度、室内熱交換器30の総熱交容量値、室内熱交換器30の停止数、動力可変型圧縮機11の吸入過熱及び吐出過熱を用いる。
【選択図】図1

Description

本発明は、1台の室外機ユニットに複数台の室内機ユニットが並列に接続されているマルチ形空気調和装置に関する。
従来、空気調和機においては、1台の室外機ユニットに複数台の室内機ユニットを並列に接続して運転することが行われている。このような空気調和機は、たとえばマルチ形空気調和装置(以下、「マルチエアコン」と呼ぶ)と呼ばれている。
従来のマルチエアコンでは、各室内機ユニットがそれぞれ電子膨張弁(EEV)を備えており、各電子膨張弁の絞り(開度)を調整することにより、各室内機ユニットの適正な運転点や冷媒分配量を制御している。
また、マルチ形空気調和装置の冷媒量制御については、下記のような従来技術が知られている。
下記の特許文献1に開示された多室形空気調和機は、複数ある室内機の運転台数及び冷媒吐出温度に応じて、冷媒循環量を適正に保ち、吐出温度上昇や能力不足を防止するものである。
下記の特許文献2に開示された冷凍サイクルは、冷媒に対して弱溶解性の冷凍機油を用いる場合であっても、冷凍サイクル内部に冷凍機油が溜まり込んで圧縮機の油枯渇に至ることを防止し、かつアキュムレータを無くしても圧縮機へ大量の液バックが生じることを回避できるものである。
下記の特許文献3に開示された多室形空気調和機の運転方法は、冷房運転時にレシーバ内に液冷媒が溜まることを防いで冷凍サイクル中の冷媒循環量を確保し、能力不足状態になることなく適正な運転を可能にするものである。
特開2002−156166号公報 特許第3671850号公報 特開2010−210164号公報
ところで、従来のマルチ形空気調和装置は、室内機ユニットの数が増えると、たとえば6台の室内機ユニットを各々異なる広さの部屋に設置して運転するような場合には、冷房運転時及び暖房運転時に必要となる冷媒量の差(冷暖の必要冷媒差)が大きくなる。このため、必要冷媒量が少なくてすむ暖房運転時には余剰冷媒を適切に処理できず、従って、余剰冷媒が凝縮器として機能する室内熱交換器内に溜まることとなる。このような余剰冷媒の問題は、6台の室内機ユニット中に要求される熱交換容量の大きいものが含まれている場合において、具体的にはリビングルーム等の大空間用室内機ユニットである大母型が含まれているような場合、特に顕著となる。
上述したように、暖房運転時に余剰冷媒が凝縮器に溜まると、冷媒の過冷却度は大きくなる。このような状況において、暖房運転の要求性能を満足させるためには、インバータ制御の圧縮機回転数を大きくする必要があり、従って、非常に効率の悪い運転点での運転となる。
このような背景から、マルチ形空気調和装置の暖房運転時においては、最適な運転点にすばやく到達させることにより、インバータ制御の圧縮機回転数について安定した運転点を確保し、高COP(成績係数:Coefficient Of Performance)の運転点を構築して効率を向上させることが望まれる。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、暖房運転時において、最適な運転点にすばやく到達させることにより、インバータ制御の圧縮機回転数を安定させて高COPの運転を可能にしたマルチ形空気調和装置を提供することにある。
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係るマルチ形空気調和装置は、動力可変型圧縮機、室外熱交換器及び四方弁を具備して構成される室外機ユニットと、室内熱交換器及び電子膨張弁を具備して前記室外機ユニットと並列に接続されている複数台の室内機ユニットと、前記室外機ユニット及び前記室内機ユニットの各種運転制御を行う制御部とを備えているマルチ形空気調和装置であって、暖房運転時に蒸発器として機能する前記室外熱交換器の上流側に設置したレシーバと、該レシーバと前記室外熱交換器との間に設置した室外機電子膨張弁とを備え、前記制御部に設けた前記室外機電子膨張弁の暖房運転時開度制御モードが、暖房運転起動時及び前記室内機ユニットの運転台数変化時に、前記室内機ユニットの運転台数及び外気条件により規定される前記動力可変型圧縮機の実回転数に対応して設定される室外機電子膨張弁暫定開度で所定時間運転するオープンループ制御を備え、前記室外機電子膨張弁暫定開度を算出するパラメータに、外気温度、前記室内熱交換器の総熱交容量値、前記室内熱交換器の停止数、前記動力可変型圧縮機の吸入過熱及び吐出過熱を用いることを特徴とするものである。
このような本発明のマルチ形空気調和装置によれば、暖房運転時に蒸発器として機能する室外熱交換器の上流側に設置したレシーバと、該レシーバと室外熱交換器との間に設置した室外機電子膨張弁とを備え、制御部に設けた室外機電子膨張弁の暖房運転時開度制御モードが、暖房運転起動時及び前記室内機ユニットの運転台数変化時に、室内機ユニットの運転台数及び外気条件により規定される動力可変型圧縮機の実回転数に対応して設定される室外機電子膨張弁暫定開度で所定時間運転するオープンループ制御を備え、室外機電子膨張弁暫定開度を算出するパラメータに、外気温度、室内熱交換器の総熱交容量値、室内熱交換器の停止数、動力可変型圧縮機の吸入過熱及び吐出過熱を用いるので、余剰冷媒が凝縮器として機能する室内熱交換器の内部に溜まることを防止できる。
このような室外機電子膨張弁の暖房運転時開度制御モードは、複数台の室内機ユニットに大母型が含まれている場合に好適であり、特に、5台以上の室内機ユニットが接続されているマルチ形空気調和装置に好適である。
上記のマルチ形空気調和装置において、暖房運転時開度制御モードは、暖房運転起動時及び前記室内機ユニットの運転台数変化時に前記オープンループ制御を所定時間実施してからゾーン制御に移行するとともに、運転台数変更後に開始される2回目以降のオープンループ制御では、前記室外機電子膨張弁暫定開度の算出値にオープンループ制御開始直近のゾーン制御積算値を加算した値が用いられることが好ましく、これにより、2回目以降のオープンループ制御における室外機電子膨張弁暫定開度は、運転状況を考慮して最適化されたものとなる。
上述した本発明のマルチ形空気調和装置によれば、暖房運転時において、最適な運転点にすばやく到達させることにより、インバータ制御等による動力可変型圧縮機の回転数を安定させて高COPの運転が可能になる。
本発明に係るマルチ形空気調和装置(マルチエアコン)の一実施形態を示す系統図であり、室内機ユニットが6台の構成例が示されている。 暖房運転時における室外機電子膨張弁の開度制御例(オープンループ制御及びゾーン制御)を示す説明図である。 外気温度及び熱交換機能力合計値により選択される補正係数a,bの一例を示す図である。 室内機ユニット毎に定めた熱交換能力割合の一例を示す図である。 補正係数cの決定に必要な補正パルスαの一例を示す図である。 条件により異なる補正係数Zの一例を示す図である。
以下、本発明に係るマルチ形空気調和装置(マルチエアコン)の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明するマルチエアコンは、6台の室内機ユニットを並列に接続した構成例とするが、室内機ユニットの接続数が6台に限定されることはない。
図1示す実施形態のマルチエアコンACは、1台の室外機ユニット10に6台の室内機ユニット30A〜30Fが並列に接続された閉回路の冷凍サイクルを構成している。このマルチエアコンACは、室外機ユニット10及び室内機ユニット30A〜30Fの各種運転制御を行う制御部50を備え、冷凍サイクルを循環する冷媒の流れ方向を選択切換することにより、冷房運転や暖房運転を行うことが可能である。
なお、図1の矢印は暖房運転時における冷媒の流れ方向を示しており、以下の説明において、6台の室内機ユニット30A〜30F及びその関連機器類等を区別する必要がない場合には、A〜Fを省略して「室内機ユニット30」のように呼ぶことにする。
室外機ユニット10は、たとえばインバータ制御の電動機により駆動される動力可変型圧縮機(以下、「圧縮機」と呼ぶ)11と、冷媒と外気との間で熱交換を行う室外熱交換器12と、圧縮機11から供給される冷媒の循環方向を選択切換して冷房運転及び暖房運転を行う四方弁13とを具備して構成される。圧縮機11及び四方弁13は、制御部50からの制御信号を受けて回転数や冷媒循環方向が制御されるようになっている。
圧縮機11の吐出側には、冷媒の吐出管センサ温度Tdを検出する吐出温度センサ14が設けられ、圧縮機11の吸入側には、冷媒の吸入管センサ温度Tsを検出する吸入温度センサ15が設けられている。また、室外熱交換器12の適所には、室外熱交液管センサ温度TOを検出する室外熱交温度センサ16が設けられている。
吐出温度センサ14、吸入温度センサ15及び室外熱交温度センサ16で検出した温度検出値(Td,Ts,TO)は、制御部50に入力されて各種の運転制御に使用される。
室内機ユニット30A〜30Fは、それぞれが室内熱交換器31A〜31Fを備えており、室内機ユニット30A〜30Fのそれぞれがヘッダー32A,32Bから分岐して並列に接続された冷媒配管33A〜33Fに設けられている。
冷媒配管33A〜33Fには、室内機ユニット30A〜30Fの両側に、それぞれ電子膨張弁34A〜34F及び開閉弁35A〜35Fが設けられている。図示の構成例において、電子膨張弁34A〜34Fは、暖房運転時の冷媒流れ方向において室内機ユニット30A〜30Fの下流側に設置され、開閉弁35A〜35Fは上流側に設置されている。
この場合、開閉弁35A〜35Fには、たとえば電磁弁のように遠隔操作可能なものが使用されており、従って、開閉弁35A〜35Fは、室内機ユニット30の運転・停止状態に応じて、制御部50から制御信号を受けて開閉動作する。さらに、電子膨張弁34A〜34Fも同様に、制御部50から個別の制御信号を受けて開度制御が行われる。
また、室内機ユニット30A〜30Fの適所には、室内機ユニット毎の室内熱交液管センサ温度TRを検出する室内熱交温度センサ36A〜36Fが設けられている。これらの室内熱交温度センサ36A〜36Fで検出した室内熱交液管センサ温度TRは、いずれの検出値も制御部50に入力されて各種の運転制御に使用される。
そして、本実施形態のマルチエアコンACは、暖房運転時に蒸発器として機能する室外熱交換器12の上流側に、レシーバ20及び室外機電子膨張弁21を備えている。この場合の室外機電子膨張弁21は、レシーバ20と室外熱交換器12との間に配設されているので、暖房運転時の冷媒流れ方向において、レシーバ20が室外機電子膨張弁21の上流側となる。
レシーバ20は、暖房運転時に余剰冷媒をホールドする機能を有する容器、すなわち、暖房運転時に凝縮器として機能する室内熱交換器30で液化した液冷媒を一時的に溜めておくための容器である。
室外機電子膨張弁21は、上述した室内機ユニット30毎の電子膨張弁34とは別に、マルチエアコンACのシステム全体について運転点を調節するために設けたものである。この室外機電子膨張弁21は、制御部50から後述する補正を加えた制御信号を受けて絞り量の制御(開度調整)を行うことで、暖房運転時の冷媒流れ方向上流側に配設したレシーバ20に溜め込む余剰冷媒を調整する。すなわち、暖房運転の状況(室内機ユニット30の運転台数等)に応じて室外機電子膨張弁21の開度調整を行うと、レシーバ20に溜まる液冷媒量を調整できるので、余剰冷媒が室内機ユニット30に溜まって過冷却度が大きくなることを防止できる。
さて、制御部50は、冷房運転及び暖房運転の切換や温度設定に応じた運転など、各種の運転制御を行うものであるが、たとえば暖房運転時には、図2に示すようにして室外機電子膨張弁21の開度(以下、「EEVH開度」と呼ぶ)制御が行われる。
暖房運転時のEEVH開度は、制御部50に設けた暖房運転時開度制御モードにより調整される。すなわち、暖房運転時においては、オープンループ制御とゾーン制御とによりEEVH開度の最終的な運転点が決定される。
(1)オープンループ制御では、室内機ユニット30の運転台数・外温条件により規定される圧縮機11の実回転数(N)に対応したEEVH開度を算出し、おおまかな運転点が設定される。
(2)ゾーン制御では、圧縮機11の実回転数(N)に対応する吐出過熱TDSHとなるようにEEVH開度の運転点を制御することで、最終的に圧縮機11の希釈率・使用圧力制限を満足するような運転点に移行させる。
なお、オープンループ制御及びゾーン制御については、たとえば実公平7−14772号公報、特開2003−106608号公報及び特開2003−130426号公報により開示されている。
すなわち、暖房運転時開度制御モードでは、暖房運転起動時及び室内機ユニット30の運転台数変化時に、室内機ユニット30の運転台数及び外気条件により規定される圧縮機11の実回転数(N)に対応して設定される室外機電子膨張弁暫定開度で所定時間運転するオープンループ制御を備えている。このオープンループ制御では、室外機電子膨張弁暫定開度を算出するパラメータとして、外気温度、室内熱交換器30の総熱交容量値、室内熱交換器30の停止数、圧縮機11の吸入過熱SH及び吐出過熱TDSHを用いる。
そして、オープンループ制御により室外機電子膨張弁暫定開度で所定時間運転した後には、圧縮機11の実回転数(N)に対応する吐出過熱TDSHに運転点を制御するゾーン制御に移行する。このゾーン制御は、室内機ユニット30の運転台数に変化が生じるまで継続して行われる。
ここで、図2に示した暖房運転時開度制御モードにについて、EEVH開度制御の一例を説明する。
この制御モードには、オープンループ制御及びゾーン制御があり、マルチエアコンACの運転停止状態ではEEVH開度が全開の初期状態にある。この初期状態からマルチエアコンACが起動されると、最初にオープンループ制御によって室外機電子膨張弁暫定開度R1が算出される。オープンループ制御では、算出した室外機電子膨張弁暫定開度R1に固定して、暖房運転を所定時間(たとえば3分程度)経過するまで継続する。
本実施形態では、暖房運転時のオープンループ制御において、下記の式に基づいて圧縮機11の実回転数(N)に補正をすることにより、室外機電子膨張弁暫定開度R1として室外機電子膨張弁の開度(OP)を算出する。
下記の数式においては、外温及び熱交容量による補正係数a,bと、大母型の有無及び熱交換器容量合計値により決定される補正係数Zが新規に加わった補正係数である。すなわち、他の補正係数であるZ及びZを用いて室外機電子膨張弁の開度を算出する数式については、従来から使用されているものである。
電子膨張弁開度 EEVH OP=(a×N+b+c)×Z×Z×Z
a,b:外温と熱交容量による補正係数
c:全停止・停止ユニットのαパルスの和
:システム全体の吸入過熱を適正に保つための補正係数であり、特に過渡期のオープンループ制御を安定化させることを主目的とする
:システム全体の吐出過熱を適正に保つための補正係数
:大母型の有無及び熱交換器容量合計値により決定される補正係数(図6の値を参照)
N:圧縮機の実回転数(但し、開度計算時は小数点以下を四捨五入した値を採用)
暖房運転時のオープンループ制御に用いられる補正係数a,bは、たとえば図3に例示するように、接続した室内機ユニット30の熱交換器容量合計値(凝縮器として機能する熱交換器容量の合計値)と外気温度とに基づいて決定される。なお、図3に例示した補正係数a,bは、実験等により予め定められた値である。
上述した室内機ユニット30の熱交換器容量合計値は、たとえば図4に例示した能力値を用いて算出される。図4に例示した熱交換器容量は、各種の室内機ユニット30に設置されている各種の室内熱交換器31について、横列の機種容量(EXD−1〜4)毎に、基準機種を100とした場合の熱交換器容量割合を縦列の形状タイプ(EXT−1〜4)毎に定めた値である。
この場合、横列の機種容量は、たとえば子供部屋のように空間容積の小さい部屋に使用するものや、リビングルームのように空間容積の大きい部屋に使用するもの等のように、室内熱交換器31に対する要求能力を意味している。また、縦列の形状タイプは、たとえば壁掛け型、天井埋込型及び自立型等のように、同じ機種容量でも室内機ユニット30の設置構造等により熱交換器容量割合が異なることを意味している。
以下、図4を用いた熱交換器容量合計値の算出について、一例を示して説明する。
ここでは、マルチエアコンACに6台の室内機ユニット30が接続されており、その内訳は、機種容量EXD−1の形状タイプEXT−1が3台と、機種容量EXD−2の形状タイプEXT−2が2台と、機種容量EXD−4の形状タイプEXT−4が1台とする。この場合、図4より、基準機種である機種容量EXD−1の形状タイプEXT−1は熱交換器容量割合が100、機種容量EXD−2の形状タイプEXT−2は熱交換器容量割合が63、そして、種容量EXD−4の形状タイプEXT−4は熱交換器容量割合が125となる。
従って、この場合の熱交換器容量合計値は、下記の数式により算出される。
熱交換器容量合計値=(100×3)+63+125=488
ところで、上述した機種容量EXD−4の形状タイプEXT−4は、いわゆる大母型と呼ばれているものであり、リビングルーム等のような大空間用機種となる。このような大母型は、内部の熱交換器が多数のサーキットにより構成されているため、熱交換器容量割合が基準値の100以上となる大きな値に設定されている。すなわち、大母型は熱交換器が多サーキットになるため、冷媒流速の低下により冷媒の通過時間が長くなるので、冷媒がホールドされることを防止するためには、熱交換器容量割合を大きく設定して冷媒の流速を上げることが必要となる。
次に、暖房運転時のオープンループ制御に用いられる補正係数cは、下記のようにして決定される。
最初に、たとえば図5に例示したように、運転停止状態にある室内機ユニット30の熱交換器容量割合に応じて補正パルスαを決定する。この後、運転停止中の状態にある全ての室内機ユニット30について、図5から決定した補正パルスαを合計して補正係数cとする。
具体例を示すと、たとえば機種容量EXD−1の形状タイプEXT−1及び機種容量EXD−2の形状タイプEXT−2が1台ずつ停止している場合、機種容量EXD−1の形状タイプEXT−1は熱交換器容量割合が100であるから補正パルスαは5となり、機種容量EXD−2の形状タイプEXT−2は熱交換器容量割合が63であるから補正パルスαは3となる。従って、補正係数cは補正パルスαを合計した値であるから、補正パルスα=5と補正パルスα=3との合計値である8(c=5+3)となる。
補正係数Zは、マルチエアコンACにおけるシステム全体の吸入過熱SHを適正に保つための値であり、従来制御にも使用されている補正値である。この補正係数Zは、吸入管センサ温度Tsと室外熱交液管センサ温度TOとの温度差(SH=Ts−TO)に応じて決定される値である。
すなわち、圧縮機11の起動や室内機ユニット30の運転台数が変化するような過渡運転時には、吐出過熱TDSH以上に吸入過熱SHが大きく、しかも、吸入過熱SHが早く変動するため、吸入過熱SHをパラメータとして補正係数Zを定め、室外機電子膨張弁の開度(OP)を補正する制御を行うものである。
補正係数Zは、マルチエアコンACにおけるシステム全体の吐出過熱TDSHを適正に保つための値であり、従来制御にも使用されている補正値である。この補正係数Zは、吐出管センサ温度Tdと室内熱交液管センサ温度TRとの温度差(TDSH=Td−TR)に応じて決定される値である。なお、この場合の室内熱交液管センサ温度TRには、暖房運転を行っている室内機ユニット30の中で最も高い温度(最大値)が用いられる。
すなわち、極低温時には吐出過熱TDSHがつきにくく液バック傾向にあるので、圧縮機11の油面が安定しにくくなる。そこで、適正運転点への収束を早めるため、吐出過熱TDSHをパラメータとして補正係数Zを定め、室外機電子膨張弁の開度(OP)を補正する制御を行うものである。
補正係数Zは、大母型(図4に示す機種容量EXD−4の形状タイプEXT−4)の有無及び上述した熱交換器容量合計値により決定される補正係数であり、たとえば図6に示すように定められている。
図6に示す例において、室内機ユニット30の接続ユニットに大母型が含まれていない場合には、補正係数Zを1.0とすることで補正がなされることはない。
しかし、大母型の室内機ユニット30が含まれている場合には、図4を用いた熱交換器容量合計値の算出が所定値(たとえば400)以上か否かに応じて異なる補正係数Zが与えられる。図6に示す例において、熱交換器容量合計値の算出が400未満の場合は補正係数Zを1.3に設定し、熱交換器容量合計値の算出が400以上の場合は補正係数Zを1.5に設定する。
このようにして、各補正係数a,b,c,Z,Z,Zが決まれば、上記の数式から圧縮機11の実回転数(N)が補正され、暖房運転時のオープンループ制御において室外機電子膨張弁21の室外機電子膨張弁暫定開度R1となる開度(OP)が算出される。
こうして算出された室外機電子膨張弁21の室外機電子膨張弁暫定開度R1は、設定後にそのままの状態で所定運転時間まで運転される。この後ゾーン制御に移り、室内機ユニット30の運転台数が増減する変化を生じるまで継続される。すなわち、圧縮機11の実回転数(N)に対応する吐出過熱TDSHとなるようにEEVH開度の運転点を制御することで、最終的に圧縮機11の希釈率・使用圧力制限を満足する運転点に移行させるゾーン制御が継続される。
室内機ユニット30に運転台数の変化が生じた台数変化後は、再度オープンループ制御に移行する。このオープンループ制御においても、上述した起動後と同様の数式に基づく補正をして、運転台数変更後の室外機電子膨張弁暫定開度R2となる開度(OP)が算出される。
しかし、台数変更後に設定される室外機電子膨張弁暫定開度Rrは、算出した室外機電子膨張弁暫定開度R2に直近のゾーン制御積算値ΔRを加算した値(Rr=R2+ΔR)となる。すなわち、実際に設定される室外機電子膨張弁21の開度は、台数変更前の運転状況を反映した値の室外機電子膨張弁暫定開度Rrとなり、この値に固定して所定時間の暖房運転が継続された後には、再度上述したゾーン制御に移行する。
このように、マルチエアコンACを起動して暖房運転を開始すると、室外機電子膨張弁21の開度制御は、最初のオープンループ制御で室外機電子膨張弁暫定開度R1に設定した状態を維持して所定時間の運転を継続した後、運転停止までゾーン制御及びオープンループ制御が繰り返される。そして、運転台数変更後に開始される2回目以降のオープンループ制御では、オープンループ制御開始直近のゾーン制御積算値ΔRを、すなわち、台数変更が行われる直前のゾーン制御積算値ΔRを、再度のオープンループ制御開始により算出した室外機電子膨張弁暫定開度Rn(n≧2)に加算した値の室外機電子膨張弁暫定開度Rr(Rr=Rn+ΔR)とする。
このように、運転台数変更後に開始される2回目以降のオープンループ制御において、室外機電子膨張弁暫定開度の算出値Rnにオープンループ制御開始直近のゾーン制御積算値ΔRを加算した室外機電子膨張弁暫定開度Rrを用いることにより、マルチエアコンACの運転状況を考慮して最適化した開度設定が可能となり、最適な運転点の構築に要する時間を短縮できる。
このとき、暖房運転中の各室内機ユニット30においては、室内熱交換器31毎に要求される冷媒配分量が室内機ユニット30毎に異なるため、室内機ユニット30毎の圧縮機要求回転数に応じて各電子膨張弁34を制御することで、各電子膨張弁34に最適な運転点をすばやく構築することが可能になる。
このような暖房運転時開度制御モードのEEVH開度制御を行うことにより、マルチエアコンACの暖房運転時においては、最適な運転点にすばやく到達させることにより、インバータ制御の電動機により駆動される圧縮機11の回転数について安定した運転点を確保し、高いCOPの運転点を構築して効率を向上させることが可能になる。
また、上述したゾーン制御時においては、室外電子膨張弁21の開度(絞り)を、室外電子膨張弁21の流量特性に応じたサンプリング時間とすることが望ましい。すなわち、電子膨張弁21の流量特性の差が大きい場合はサンプリング時間を短くすることにより、冷媒挙動を安定化させることができる。
上述した本実施形態の暖房運転時開度制御モードは、複数台の室内機ユニットに大母型が含まれている場合に好適であり、特に、5台以上の室内機ユニット30が並列に接続されているマルチエアコンACに好適である。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
10 室外機ユニット
11 動力可変型圧縮機(圧縮機)
12 室外熱交換器
13 四方弁
14 吐出温度センサ
15 吸入温度センサ
16 室外熱交温度センサ
20 レシーバ
21 室外機電子膨張弁
30(30A〜30F) 室内機ユニット
31(31A〜31F) 室内熱交換器
32A,32B ヘッダー
33(33A〜33F) 冷媒配管
34(34A〜34F) 電子膨張弁
35(35A〜35F) 開閉弁
36(36A〜36F) 室内熱交温度センサ
50 制御部
AC マルチ形空気調和装置(マルチエアコン)

Claims (2)

  1. 動力可変型圧縮機、室外熱交換器及び四方弁を具備して構成される室外機ユニットと、室内熱交換器及び電子膨張弁を具備して前記室外機ユニットと並列に接続されている複数台の室内機ユニットと、前記室外機ユニット及び前記室内機ユニットの各種運転制御を行う制御部とを備えているマルチ形空気調和装置であって、
    暖房運転時に蒸発器として機能する前記室外熱交換器の上流側に設置したレシーバと、該レシーバと前記室外熱交換器との間に設置した室外機電子膨張弁とを備え、
    前記制御部に設けた前記室外機電子膨張弁の暖房運転時開度制御モードが、暖房運転起動時及び前記室内機ユニットの運転台数変化時に、前記室内機ユニットの運転台数及び外気条件により規定される前記動力可変型圧縮機の実回転数に対応して設定される室外機電子膨張弁暫定開度で所定時間運転するオープンループ制御を備え、前記室外機電子膨張弁暫定開度を算出するパラメータに、外気温度、前記室内熱交換器の総熱交容量値、前記室内熱交換器の停止数、前記動力可変型圧縮機の吸入過熱及び吐出過熱を用いることを特徴とするマルチ形空気調和装置。
  2. 暖房運転時開度制御モードは、暖房運転起動時及び前記室内機ユニットの運転台数変化時に前記オープンループ制御を所定時間実施してからゾーン制御に移行するとともに、運転台数変更後に開始される2回目以降のオープンループ制御では、前記室外機電子膨張弁暫定開度の算出値にオープンループ制御開始直近のゾーン制御積算値を加算した値が用いられることを特徴とする請求項1に記載のマルチ形空気調和装置。
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