本発明は、電動ステアリングシステムのための動力装置と、当該動力装置の組み立てのための方法と、動力装置のための組み立て装置と、に関する。
電動ステアリングシステムにおいては、モータや制御装置からなる装置である動力装置ないしパワーパッケージを用いて、支援トルク(Unterstuetzungsmoment)が生成される。この場合、制御装置(ECU)において、特にはその出力部で、スイッチング損失及びダクト損失(Durchgangsverluste)によって、多くの熱が発生する。通常、当該出力部は、動力装置の半導体(Leistungshalbleitern)から構成されており、当該出力部を損傷から保護するために、その最高接合部温度が超過されてはならない。更に、制御装置は、モータを介して温められる。熱流は、前記出力部からベースプレート及びモータフランジを介して、モータハウジングに到達する。
出力部の最大の熱放射は、典型的には、時間的に非常に短い間のみ、すなわち、数秒のみ発生する。そのため、特に良好な放熱(Entwaermung)が、局所的に出力部において必要である。その場合、短時間の高い電力損失(Verlustleistung)による熱が可能な限り素早く放出可能であり、ベースプレートの基本温度(Grundtemperatur)が、可能な限り低くなる。これらの理由から、モータフランジには、可能な限り小さい熱抵抗が必要である。
制御装置をモータハウジングに締結(ねじ締め)することが知られている。従来技術による制御装置とモータとの締結においては、温度上昇が、ねじ位置に、すなわち、ねじ締めの押圧面に、局所的にのみ発生する。モータと制御装置との電気的な結合は、通常、プラグ接続を介して行われる。
モータ及び制御装置を有する電動ステアリングシステムのための本発明による動力装置において、制御装置が焼嵌め(Schrumpfsitz)によってモータに結合されている、ということが提案される。従って、ねじ締め工程(Schraubvorgang)が不要となる。
この焼嵌め(Schrumpfsitz)は、制御装置とモータとの間の大きな接触面と、互いに当接する面の十分な乃至しっかりした圧力と、を保証する。この態様では、制御装置とモータとの間の良好な熱伝導が保証される。
ある実施の形態では、制御装置は、モータのハウジングに結合されている。通常、このモータハウジングは、例えば周回するフランジのような形態を有しており、その中に制御装置が設置され得る。この態様では、制御装置は、モータハウジングにしっかりと結合されており、これにより、モータにしっかりと結合されている。
当該動力装置において、モータのハウジングが、アルミニウムダイカストからなっている、ということが考慮され得る。この素材は、良好な熱伝導特性及び良好な加工可能性ゆえに、考慮に値する。
更に、当該制御装置は、ベースプレートを有し得る。その場合、通常、特に熱を発生する制御装置の出力部は、当該ベースプレート上に配置される。この場合、制御装置のベースプレートは、一般的に、モータないしモータのハウジングに直接結合される。
出力部から発生される熱は、制御装置のベースプレートを介して、モータないしモータハウジングに伝達される。
本発明の方法は、モータ及び制御装置を備える動力装置の組み立て(組み付け)に役立つ。当該方法は、特には前述のタイプの動力装置の組み立ての際に、使用される。ここで、制御装置とモータとの間の結合は、焼嵌め(Schrumpfsitz)によって実現される。
モータ及び制御装置の組み立ての前に、モータと制御装置との間に温度差がもたらされ得る。
この温度差は、当該方法の実施の際に、少なくとも部分的にモータを温めることによって、もたらされる。例えばモータのハウジングが、制御装置と結合される時に、温められ得る。制御装置がベースプレートを有する場合、一般的に、ベースプレートがモータハウジングと結合される。この場合、モータを温めることによって、当該モータがベースプレートを受容できる、ということが達成される。モータハウジングの冷却後に、焼嵌め(Schrumpfsitz)が生じる。
原理的に、制御装置を冷却することも可能である。
モータを温めるために、誘導コイルが利用され得る。誘導コイルによれば、適温にすべきモータないしモータの一部が、接触無しに温められ得る。
モータないしモータのハウジングは、90℃〜180℃、例えば120℃に温められ得る。この温度は、モータ及び制御装置の大きさ(サイズ)に依存する。
モータ及び制御装置を備えた電動ステアリングシステムの動力装置のための本発明による組み立て装置は、特には前述のタイプの動力装置のために役立つ。当該組み立て装置は、モータのための第一受容部と、制御装置のための第二受容部と、両受容部間の距離を変化させるための移動調整装置と、を備えている。更に、モータと制御装置との間に温度差をもたらすために、温度調整装置(Temperiereinrichtung)が設けられている。
例えば制御装置のための受容部及び/またはモータのための受容部が、当該移動調整装置によって移動され得る。すなわち、組み立て工程のために、両者は互いに向かって移動される。
ある実施の形態では、例えばパイロメータのような温度センサが、追加して設けられ得る。これによれば、接触無しの温度測定が実施され得る。出口温度に依存して温度制御を実施するため、温度測定は、組み立て工程の前に実施され得る。当然、温度調節(装置)も考慮され得る。
温度調整装置(Temperiereinrichtung)としては、誘導装置(Induktionsanlage)が利用され得る。
本発明の更なる利点及び実施の形態は、明細書及び添付の図面から明らかにされる。
前述及び後述の更に説明される特徴は、それぞれに提示された組み合わせだけでなく、その他の組み合わせ、あるいは、単独の状態においても、本発明の枠組みを逸脱することなく利用可能である、ということが理解される。
本発明は、実施の形態に基づいて図面に示されており、以下に、図面に関して詳述される。
本発明による動力装置の実施の形態の概略図である。
制御装置のための受容部の一実施の形態を示している。
組み立て装置の部分図である。
当該図(図1)は、動力装置の一実施の形態を示しており、全体として符号10で示されている。これ以上は図示されていないモータのハウジング12が認識できる。当該モータは、電動ステアリングシステム内に投入されている。このモータハウジング12は、上へ向かって突出するフランジ14を有しており、当該フランジ14は、上から見ると閉じていて、すなわち、円形に延びている。
モータハウジング14内には、ベースプレート18と、当該ベースプレート18の上にある最終段部(出力部)20と、を有する制御装置16が設置されている。このベースプレート18は、モータハウジング12内に設置されており、焼き嵌め(Schrumpfsitz)によって当該モータハウジング12に結合されている。最終段部20は、作動中に熱を発生させ、矢印21が示すように、その熱をモータハウジング12に放出する。
制御装置16のベースプレート18は、フランジ14の領域において、モータハウジング12より大きな直径を有するように、寸法づけられている。この場合、ベースプレート18の直径を、モータハウジングの直径より、約0.03mm〜0.1mm大きく寸法づけることが考えられる。モータハウジング12内にベースプレート18を設置する前に、モータハウジングが例えば120℃に温められると、モータハウジング12は膨張する。その結果、モータハウジング12の直径は、フランジ14の領域において拡大する。その後、ベースプレート18が、拡大したモータハウジング12内に設置される。これに続く冷却によって、モータハウジング12の直径は小さくなり、制御装置16のベースプレート18にしっかりと密着押圧する。これによって、焼嵌め(Schrumpfsitz)が実現される。
制御装置のベースプレート18とモータフランジ14との間の焼嵌め(Schrumpfsitz)の際に、押圧面は、何倍にも拡大される。焼嵌め(Schrumpfsitz)の際のモータに対する制御装置16の熱抵抗は、焼嵌め(Schrumpfsitz)における高く広範囲の押圧力を介して、従来のねじ締めの際の熱抵抗より、明らかに小さくなる。従って、焼嵌め(Schrumpfsitz)の利用の際には、熱は、最終段部20から非常に良好に放散され得る。それによって、ベースプレート18の基本温度(Grundtemperatur)も、非常に低く維持される。
制御装置16と比較すればモータのサイズは大きいため、モータは、相対的に大きな熱容量を示し、短時間に非常に多くの熱量を制御装置16から受け入れることができる。モータの熱容量を効果的に利用できるようにするためには、制御装置16からモータへの熱の移動を可能な限り少なくすることが前提である。これは、焼嵌め(Schrumpfsitz)によって実現される。
図1は、ある実施の形態を示している。ここでは、制御装置のベースプレート18の外径22が、モータハウジング12の内径24より大きい。モータハウジング12を温めることによって、制御装置のベースプレート18がモータハウジング12の周回するフランジ18の内側に設置され得る、ということが達成される。モータハウジングのその後の冷却が、焼嵌め(Schrumpfsitz)をもたらす。
制御装置のベースプレート18内にモータハウジング12が設置され得て、図1の実施の形態に対して逆の関係になる、というようにモータハウジング12及びベースプレート18が構成される、ということも当然あり得る。この場合、ベースプレート18の内径26が温められることによってモータハウジング12の外径28より大きくなり、モータハウジング12上に設置され得る。その場合、ベースプレート18のその後の冷却が、焼嵌め(Schrumpfsitz)をもたらす。
図2では、制御装置52のための受容部50が、本発明による組み立て装置の構成要素として示されている。この受容部は、制御装置ないし制御装置52のベースプレートの寸法に適合した形態を有しており、そのため、当該制御装置52は、受容部50内に安定して保持され得る。
更に、移動調整装置54が図示されており、当該受容部50は、当該移動調整装置54によって、鉛直方向に移動可能である。
図3には、組み立て装置の断面図が示されており、全体として符号70で示されている。モータ74のための受容部72が認識できる。ピン76が、当該モータ74の下側に、電気接触のために設けられている。更に、ガイドバー76が、モータ74のための受容部72が当該ガイドバー76で水平方向に移動可能であるように、設けられている。
以下に、組み立て装置の可能な機能の記述が示される。
まず、モータが、モータ受容部内に挿入される。当該モータを、制御装置ないし当該制御装置のベースプレートに対して径方向及び軸方向に整列させるために、当該モータは、A−軸受フランジの外径を介して、モータ受容部内に収容される。
次のステップで、ベースプレートないしECUカバー(ECU-Deckel)が、制御装置のための受容部内に手動で設置される。この設置の際の回転防止保証は、ECUカバーの幾何形状(Geometrie)によってもたらされる。ボールバネを伴う(Kugelgefederte)ワームスクリュー(Wurmschrauben)が、ECUカバーを受容部内に保持すると共に、組み立てた後にほとんど力を加えること無く当該受容部をECUカバーから離すことを可能にする。モータの角度調整をECU受容部に引き継ぐために、当該受容部は、予めバネ力である位置にセンタリングされている。このバネ力は、追加的に、組み立ての間に、ピンのペアが検出のために相互に調整(整列)される可能性を得るために、不可欠な遊びの空間を提供する。
バネ力による予めのセンタリングは、次のデザイン適合(移動可能なブスバーカバー=モータピンの保持)の際に、位置固定される。そのため、当該ブスバーは、ECUカバーに対するモータの位置が常に一定に保たれるように、調整された移動(Ausgleichsbewegung)を実行しなければならない。これは、パワーパッケージの更なる組み立て(Montage)/検査のために必要である。バネ力でセンタリングされたスライドブロック(Kulissenstein)は、ECUカバー受容部にしっかりとねじ締めされており、軸方向(X/Y軸)の不整合誤差(Fluchtungsfehler)を調整するため、及び、ECUカバーに対してモータをセンタリングするため、に役立つ。不整合誤差は、集積公差(Summentoleranzen)に基づいて、モータ及びECUカバーの製造及び組み立ての際に発生する。ぴったり合わせる(Passsitz)ための面取り(Anfasung)を介して、バネ力を伴う(gefederten)スライドブロックによるECUカバーのモータに対するX/Yセンタリングが可能になる。
オペレータがスタートボタンを押し、光バリア(Lichtschranke)が解除されれば、それ以降は機械のみがフルオートマチックに組み立てを引き継ぐ。
その後、モータは、シリンダを介して、インダクタ−エッジ(Induktor-Kante)のいくぶん上方に導かれる。この位置は、実験により、確定されている。
その後、ECUカバーは、電磁誘導を介して温められている間に電子的な構成要素の損傷が排除される距離をおいて、送り装置(Eilgang)内のモータエッジ(Motorkante)の上方に導かれる。
続いて、温度センサが、モータに当接する温度的に重要な位置に設置される。場合によっては、パイロメータも設置され得る。
当該温度センサは、弱い力で組み立てられるように充分な熱膨張を実現すると共に、過熱によって損傷が生じないこと、を保証するために役立つ。
誘導システムは、様々な段階で(パイロメータ使用時には設定値パラメータ(Sollwertparameter)及び時間パラメータがそれをその設定値に制御する)、モータの組み立て領域を温める。当該領域は、膨張するので、弱い力で組み立てることが可能である。弱い力で組み立てることは、ピンのペアが強圧無しに検出できるようにするために必要である。ピンのペアが、検出を完了した後で、シールリングが、組み立て領域と接触する。
ブロックに導かれる際の部品の損傷を保証するために、パラメータ化可能なリトラクトパワー(Einfahrkraft)の遮断は、力センサを介して監視され、達成時には、軸が停止される。組み立ての最終位置(Fuegeendlage)は、パラメータ化可能なストロークウィンドウ(Weg-Fenster)/フォースウィンドウ(Kraft-Fenster)を介して、監視され評価される。
組み立て領域がパラメータ化可能な温度以下に下がり、目標評価(Soll-Bewertung)/実際評価(Ist-Bewertung)が正常になれば、当該設備は基本位置に戻り、組み立てられた部品は取り出され得る。そうでなければ、オペレータは、組み立てられた部品を取り出すために、最初にエラーメッセージを止めなければならない。