JP2012509975A - 架橋性含フッ素エラストマー組成物および該組成物から作製された成形品 - Google Patents

架橋性含フッ素エラストマー組成物および該組成物から作製された成形品 Download PDF

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Abstract

2プラズマ処理およびO2/CF4プラズマ処理に対してともに重量変化が小さく、これらの処理において異物(パーティクル)の発生を顕著に抑制し得る架橋性エラストマー組成物および該組成物から作製される成形品を提供する。該架橋性含フッ素エラストマー組成物は架橋性含フッ素エラストマーと嵩密度が0.15g/cm3以下の炭化ケイ素粒子、さらに要すれば架橋剤を含み、該成形品は前記組成物を架橋して得られる。

Description

[関連出願の相互参照]
本出願は、35 U.S.C.§119(e)の下に、参照により全内容が本明細書に組み込まれている、2008年12月29日出願の米国仮特許出願61/141,209号の利益を請求する。
[技術分野]
本発明は、架橋性含フッ素エラストマー組成物、該組成物から作製された成形品に関する。
含フッ素エラストマー、特にテトラフルオロエチレン(TFE)単位を中心とするパーフルオロエラストマーは、優れた耐薬品性、耐溶剤性および耐熱性を示すことから、過酷な環境下でのシール材などとして広く使用されている。
しかし、技術の進歩に伴い要求される特性はさらに厳しくなり、航空宇宙分野や半導体製造装置分野、化学プラント分野では300℃以上の高温環境下におけるシール性が要求されている。このような高温環境下でのシール材の使用はポリマーの部分的劣化を誘引し、フッ化水素(HF)の発生を促す。高温でのHFの発生はポリマーが接触する部材に悪影響を及ぼすだけでなく、エラストマーの分子鎖や架橋点に対しても攻撃的であり、悪影響を与えることが推測される。
従来、含フッ素エラストマーに、無水ケイ酸(SiO2)を添加することでHFの発生を低減することが試みられている(特許文献1)。このような方法によりHFの発生は充分に低減されるが、SiO2は表面に多量の官能基を含有するため水分量のコントロールが難しく、水のアウトガス発生要因となる。また、大量のSiO2を配合した際に架橋反応の硬化遅延がみられる。
半導体製造工程では、絶縁膜や金属配線薄膜形成工程としてCVD装置、エッチング装置、およびアッシング装置が使用されている。このような装置では、種々の連結部分や可動部分に封止のためにエラストマー性シール材が使用されている。これらのシール材にはシール性だけではなく、O2やフッ素系ガスの耐プラズマ性が要求され、微細化や基板ウェハーの大型化により、高密度(1012〜1013/cm3)という厳しいプラズマ処理条件に耐えられること、および極めて精密な加工が要求される半導体を、汚染しないことが要求される。このような要求に対応できるシール材のエラストマー性材料として架橋性のフッ素系エラストマーが採用されている。さらに、エラストマー単独で架橋された場合よりも充分な機械的強度を達成するために、通常、有機または無機フィラーがエラストマーに配合されている。従来から使用または提案されているフィラーとしては、カーボンブラック、シリカ(特許文献2、特許文献3)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA粉末)、酸化チタン粉末、硫酸バリウムなどがある。
また、半導体製造工程において、オゾン(O3)水を用いてウェハーを洗浄するウェットプロセスがある。よって、シール材は、NF3プラズマ処理だけでなく、O3処理にも安定であることが要求される。
しかし、前記フィラーのなかでも、シリカ、酸化チタンなどのフィラーでは、O3処理には安定であるがNF3プラズマ処理には分解して重量減少を生じてしまったり、一方、カーボンブラック、PTFE粉末などのフィラーでは、NF3プラズマ処理には安定であるがオゾン処理には分解して重量減少を生じてしまったりする。
これらの課題を解消するべく、国際公開第03/051999号パンフレットでは、比表面積が0.5m2/g以上の芳香族環を有する化合物のフィラー、ホウ化物や炭化物、窒化物、ケイ素化物、硫化物、リン化物などの非酸化物フィラーを配合することが提案されている。この提案では、NF3リモートプラズマ耐性や耐O3性で改善効果は現れているが、O2ガスおよびフッ素系ガスでの高密度プラズマ処理における重量減少を最小限に抑えることやパーティクル発生の抑制には改善の余地がある。
特表2002−515525号公報 特許第2783576号公報 特許第2858198号公報 国際公開第03/051999号パンフレット
本発明は、O2プラズマ処理およびO2/CF4プラズマ処理に対してともに重量変化が小さく、これらの処理において異物(パーティクル)の発生を顕著に抑制し得る架橋性含フッ素エラストマー組成物、該組成物から作製された成形品を提供することを目的とする。
ここで述べているパーティクルの発生とは、O−リングにプラズマが照射されたときに、O−リング表面に微粉末成分が堆積残存することをいう。これらの微粉末成分は主にゴムに配合される充填剤、加硫剤、加硫促進剤などに由来する成分である。半導体製造装置において、プラズマ照射によりO−リング表面に微粉末が残存堆積すると、半導体製造プロセス中にO−リング表面から脱離した微粉末がシリコンウェハー上に落下付着し、デバイスに不良を発生させる恐れがあることから、極力、パーティクルの発生を防止することが望まれる。
すなわち、本発明は、架橋性含フッ素エラストマーと嵩密度が0.15g/cm3以下の炭化ケイ素粒子とを含む架橋性含フッ素エラストマー組成物に関する。
用いる炭化ケイ素粒子は、平均粒子径が50nm以下のものが好ましく、さらには実質的に最大粒子径が100nm以下のものが好ましい。
炭化ケイ素粒子は、架橋性含フッ素エラストマー100質量部に対して1〜50質量部含まれていることが、耐プラズマ性、および架橋性含フッ素エラストマー組成物の機械的強度が良好な点から好ましい。
また、架橋性含フッ素エラストマーとしてはパーフルオロエラストマーが好ましく、特にテトラフルオロエチレン(TFE)単位を必須の構成単位とするパーフルオロエラストマー、なかでもTFEとパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)単位を含むパーフルオロエラストマーは、優れた耐薬品性、耐溶剤性および耐熱性を示すことから、過酷な使用環境下でのシール材用の組成物として好ましい。
本発明はまた、本発明の架橋性含フッ素エラストマー組成物と架橋剤とを含む架橋性含フッ素エラストマー組成物に関する。
さらに本発明は、本発明の架橋性含フッ素エラストマー組成物を架橋して得られる成形品にも関する。
本発明の架橋性含フッ素エラストマー組成物、さらには架橋剤を含む架橋性の含フッ素エラストマー組成物によれば、O2プラズマ処理およびO2/CF4プラズマ処理に対してともに重量変化が小さく、これらの処理において異物(パーティクル)の発生を顕著に抑制することができる成形品を提供することができる。
本発明で好適に使用され得る含フッ素エラストマーとしては、従来からシール材用、とくに半導体製造装置のシール材用に用いられているものであればとくに制限はなく、たとえば国際公開第03/051999号パンフレットなどに記載されている架橋性エラストマーが、本発明においても好ましい例示および理由とともに採用できる。
たとえば含フッ素エラストマーとしては、フッ素ゴム(a)、熱可塑性フッ素ゴム(含フッ素多元セグメント化ポリマー)(b)、およびこれらのフッ素ゴムを含むゴム組成物などがあげられる。
フッ素ゴム(a)としては、非パーフルオロフッ素ゴム(a−1)およびパーフルオロフッ素ゴム(a−2)とがあげられる。
非パーフルオロフッ素ゴム(a−1)としては、ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/テトラフルオロエチレン(TFE)系フッ素ゴム、フルオロシリコーン系フッ素ゴム、またはフルオロホスファゼン系フッ素ゴムなどがあげられ、これらをそれぞれ単独で、または本発明の効果を損なわない範囲で任意に組み合わせて用いることができる。
ビニリデンフルオライド系フッ素ゴムとしては、ビニリデンフルオライド45〜85モル%と、ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他の単量体55〜15モル%とからなる含フッ素弾性状共重合体が挙げられる。好ましくは、ビニリデンフルオライド50〜80モル%と、ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他の単量体50〜20モル%とを含む含フッ素弾性状共重合体をいう。
ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他の単量体としては、たとえばテトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、フッ化ビニルなどの含フッ素単量体、エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテルなどの非フッ素単量体があげられる。これらの単量体をそれぞれ単独で、または、任意に組み合わせて用いることができる。これらの単量体のなかでも、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)を用いるのが好ましい。
この場合のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)としては、たとえばパーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)などがあげられ、これらをそれぞれ単独で、または本発明の効果を損なわない範囲で任意に組み合わせて用いることができる。
具体的なゴムとしては、VdF/HFP系ゴム、VdF/HFP/TFE系ゴム、VdF/CTFE系ゴム、VdF/CTFE/TFE系ゴムなどがある。
ビニリデンフルオライド系フッ素ゴムは、常法により得ることができる。
テトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴムとしては、テトラフルオロエチレン45〜70モル%、プロピレン55〜30モル%および架橋部位を与える単量体0〜5モル%を含む含フッ素弾性状共重合体が挙げられる。
架橋部位を与える単量体としては、たとえば特公平5−63482号公報、特開平7−316234号公報に記載されているようなパーフルオロ(6,6−ジヒドロ−6−ヨード−3−オキサ−1−ヘキセン)やパーフルオロ(5−ヨード−3−オキサ−1−ペンテン)などのヨウ素含有単量体、特表平4−505341号公報に記載されている臭素含有単量体、特表平4−505345号公報、特表平5−500070号公報に記載されているようなニトリル基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、アルコキシカルボニル基含有単量体などがあげられる。
テトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴムもまた、常法により得ることができる。
かかる非パーフルオロフッ素ゴム(a−1)のうち市販のものとしては、たとえば、ダイキン工業(株)製のダイエルG−800系、G−900系などがあげられる。
パーフルオロフッ素ゴム(a−2)としては、TFEを含むパーフルオロゴム、たとえばTFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)/架橋部位を与える単量体を含む含フッ素弾性状共重合体があげられる。その組成は、好ましくは、45〜90/10〜50/0〜5(モル%)であり、より好ましくは、45〜80/20〜50/0〜5であり、さらに好ましくは、53〜70/30〜45/0〜2である。これらの組成の範囲を外れると、ゴム弾性体としての性質が失われ、樹脂に近い性質となる傾向がある。
この場合のPAVEとしては、たとえばパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)などがあげられ、これらをそれぞれ単独で、または本発明の効果を損なわない範囲で任意に組み合わせて用いることができる。
架橋部位を与える単量体としては、たとえば、一般式(1):
CX2=CX−RfCHRI
(式中、XはH、FまたはCH3;Rfはフルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロポリオキシアルキレン基またはパーフルオロポリオキシアルキレン基;RはHまたはCH3)で表されるヨウ素含有単量体、一般式(2):
CF2=CFO(CF2CF(CF3))m−O−(CF2n−X
(式中、mは0〜5の整数;nは1〜3の整数;Xはニトリル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基または臭素原子)で表されるような単量体などがあげられ、これらの単量体をそれぞれ単独で、または本発明の効果を損なわない範囲で任意に組み合わせて用いることができる。これらのヨウ素原子やニトリル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、臭素原子が、架橋点として機能する。
パーフルオロフッ素ゴム(a−2)も、常法により製造することができる。
かかるパーフルオロフッ素ゴム(a−2)の具体例としては、国際公開97/24381号パンフレット、特公昭61−57324号公報、特公平4−81608号公報、特公平5−13961号公報などに記載されているフッ素ゴムなどがあげられる。
熱可塑性フッ素ゴム(b)としては、国際公開第03/051999号パンフレットに記載されているエラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントと非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントからなり、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントおよび非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントのそれぞれの構成単位の90モル%以上がパーハロオレフィンである含フッ素多元セグメント化ポリマー(b−1)、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの構成単位の少なくとも90モル%がパーハロオレフィンであり、かつ非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントが構成単位として90モル%未満のパーハロオレフィンを含む含フッ素多元セグメント化ポリマー(b−2)、およびエラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントが構成単位として90モル%未満のパーハロオレフィンを含み、かつ非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの構成単位の90モル%以上がパーハロオレフィンであるかまたは構成単位として90モル%未満のパーハロオレフィンを含む含フッ素多元セグメント化ポリマー(b−3)があげられる。
これらの熱可塑性フッ素ゴム(b−1)〜(b−3)の製造法および入手法は国際公開第03/051999号パンフレットなどに記載されているものが本発明においても採用される。
これらの架橋性含フッ素エラストマーには架橋部位を存在させてもよい。架橋部位としては、主鎖または側鎖の末端に存在するヨウ素原子(ヨウ素移動重合法などで製造できる)など、過硫酸アンモニウムなどの重合開始剤を変性させて得られるカルボキシル基など、上記の架橋部位などを与える単量体を共重合して得られる架橋部位などがあげられる。
このような単量体としては、特公平5−63482号公報、特開平7−316234号公報に記載されているようなパーフルオロ(6,6−ジヒドロ−6−ヨード−3−オキサ−1−ヘキセン)やパーフルオロ(5−ヨード−3−オキサ−1−ペンテン)などのヨウ素含有単量体、特表平4−505341号公報に記載されている臭素含有単量体、特表平4−505345号公報、特表平5−500070号公報に記載されているようなニトリル基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、アルコキシカルボニル基含有単量体などがあげられる。
その他、フルオロシリコーンゴムなどもあげられる。
本発明の含フッ素エラストマー組成物に配合するフィラーは、嵩密度が0.15g/cm3以下の炭化ケイ素(SiC)粒子である。炭化ケイ素は国際公開第03/051999号パンフレットに非酸化物フィラーの好ましい例としてあげられているものの嵩密度については記載されていない。また、粒子径およびパーティクルの発生量についても記載されていない。さらに国際公開第03/051999号パンフレットに例示され、実施例で効果があるとされている他の非酸化物フィラーである窒化アルミニウムフィラーや窒化ケイ素フィラー、さらにはカーボンブラック、ポリイミドフィラーが記載されているが、O2プラズマ処理およびO2/CF4プラズマ処理において、重量減少が少ないものはパーティクル発生が多く、パーティクル発生が少ないものは、重量減少が多い。本発明のエラストマー組成物に配合する特定の炭化ケイ素フィラーは、重量減少が少なくかつパーティクルの発生も抑制できる。
本発明で用いる炭化ケイ素粒子は嵩密度が0.15g/cm3以下である。嵩密度が0.15g/cm3を超える炭化ケイ素粒子は同じ平均粒子径でもプラズマ照射時のパーティクルの発生量が多くなり、好ましくない。好ましくは、0.10g/cm3以下、さらに好ましくは0.08g/cm3以下である。下限は、現存する炭化ケイ素粒子としては通常0.02g/cm3程度である。
また、炭化ケイ素粒子の平均粒子径は50nm以下が好ましい。平均粒子径が50nmよりも大きくなるとプラズマ照射時のパーティクル発生量が多くなる傾向にある。好ましい上限はプラズマ照射時のパーティクル発生が少なく良好な点から40nm、さらには嵩密度も小さく、プラズマ照射時のパーティクル発生量がさらに少ない点から30nmである。下限は、現存する炭化ケイ素粒子としては通常10nm程度である。さらに実質的に最大粒子径が100nm以下、さらには50nm以下のものが好ましい。
そして、粒子径分布については50nmを超える粒子の割合が40%以下で、かつ100nmを超える粒子の割合が2%以下であることが好ましい。さらには50nmを超える粒子の割合が20%以下で、かつ100nmを超える粒子の割合が1%以下であること、特に50nmを超える粒子の割合が10%以下で、かつ100nmを超える粒子の割合が0.5%以下であることが好ましい。
こうした炭化ケイ素の微粒子(ナノ粒子)は、たとえばジェットミルなどの粉砕機を用いた粉砕法や原子または分子からの核発生、成長により粉末を形成する方法などにより形成することが好ましい。後者の場合、出発原料の状態により気相法、液相法、固相法に分かれ、たとえばプラズマ化学気相成長法によって形成される炭化ケイ素ナノ粒子などが知られている。
炭化ケイ素粒子の配合量は、架橋性含フッ素エラストマー100質量部に対し1質量部以上が好ましい。少なすぎるとフィラーとしての機能がほとんど発揮できない。好ましい配合量の下限はプラズマ照射による重量減少が少ない点から5質量部である。上限は50質量部であり、これより多くなると成形品の硬度が非常に高くなり、弾性体としての特性が失われることがある。好ましい配合量の上限はシール材などの成形品とした場合の硬度が良好な点から30質量部、さらには耐熱性の指標である圧縮永久歪みが良好な点から20質量部である。
本発明の架橋性含フッ素エラストマー組成物は、半導体関連製造装置などの非汚染性を強く求められる用途の場合、架橋剤などを添加せずに高エネルギー線架橋をするのが好ましい。架橋源としては、X線、α線、β線、γ線、電子線、陽子線、重陽子線、紫外線などが用いられる。この場合の照射量は、0.1〜50Mradであればよい。また、照射温度は、−20〜100℃であればよい。照射雰囲気は、空気、チッ素、アルゴン、ヘリウムの存在下でも真空下でもよいが、成形品表面の酸化劣化防止という点から、不活性ガスであるチッ素、アルゴン、ヘリウムの存在下であるのが好ましく、さらに、真空下であるのがとくに好ましい。
本発明はまた、本発明の架橋性含フッ素エラストマー組成物に架橋剤または架橋助剤を配合してなる架橋性含フッ素エラストマー組成物にも関する。
本発明に採用される架橋系は、たとえばパーオキサイド架橋系、ポリオール架橋系、ポリアミン架橋系、トリアジン架橋系、オキサゾール架橋系、イミダゾール架橋系、チアゾール架橋系などがあげられ、それらの架橋系に適用される架橋剤または架橋助剤が使用できる。
パーオキサイド架橋において用いる架橋剤は、熱や酸化還元系の存在下で容易にパーオキシラジカルを発生し得る有機過酸化物であればよく、具体的には、たとえば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどをあげることができる。なかでも、好ましいものは、ジアルキルタイプのものである。さらに、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンが特に好ましい。一般に活性−O−O−の量、分解温度などを考慮して有機過酸化物の種類並びに使用量が選ばれる。
また、パーオキサイド架橋系においては架橋促進剤を用いてもよい。架橋促進剤としては、パーオキシラジカルとポリマーラジカルに対して反応活性を有する化合物であればよく、たとえばCH2=CH−、CH2=CHCH2−、CF2=CF−などの官能基を有する多官能性化合物があげられる。具体的には、たとえばトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N′−n−フェニレンビスマレイミド、ジプロパルギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタルアミド、トリアリルホスフェート、ビスマレイミド、フッ素化トリアリルイソシアヌレート(1,3,5−トリス(2,3,3−トリフルオロ−2−プロペニル)−1,3,5−トリアジン2,4,6−トリオン)、トリス(ジアリルアミン)−s−トリアジン、亜リン酸トリアリル、N,N−ジアリルアクリルアミド、1,6−ジビニルドデカフルオロヘキサンなどがあげられる。
ポリオール架橋に用いる架橋剤としては、ビスフェノールA、ビスフェノールAFなどの多価アルコール化合物があげられる。
ポリアミン架橋に用いる架橋剤としては、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、4,4’−ビス(アミノシクロヘキシル)メタンカルバメートなどの多価アミン化合物があげられる。
トリアジン架橋系は架橋性含フッ素エラストマーの間で架橋性基がトリアジン環を生成することにより架橋構造が形成される架橋系であり、そのトリアジン環の形成を助けるために架橋助剤が用いられる。そうした架橋助剤としては、テトラフェニルスズ、トリフェニルスズなどの有機スズ化合物;尿素、アンモニウム塩、窒化珪素などがあげられる。
オキサゾール架橋系、イミダゾール架橋系、チアゾール架橋系に使用する架橋剤としては、たとえば一般式(10):
Figure 2012509975
(式中、R1は−SO2−、−O−、−CO−、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜10のパーフルオロアルキレン基または単結合手であり、R2およびR3は一方が−NH2であり他方が−NH2、−OHまたは−SH、好ましくはR2およびR3のいずれも−NH2である)で示されるビスジアミノフェニル系架橋剤、ビスアミノフェノール系架橋剤、ビスアミノチオフェノール系架橋剤、一般式(11):
Figure 2012509975
で示されるビスアミドラゾン系架橋剤やビスアミドキシム系架橋剤、一般式(12)または一般式(13):
Figure 2012509975
(式中、Rfは炭素数1〜10のパーフルオロアルキレン基)、
Figure 2012509975
(式中、nは1〜10の整数)で示されるビスアミドラゾン系架橋剤やビスアミドキシム系架橋剤などがあげられる。これらのビスアミノフェノール系架橋剤、ビスアミノチオフェノール系架橋剤およびビスジアミノフェニル系架橋剤などは従来ニトリル基を架橋点とする架橋系に使用していたものであるが、カルボキシル基およびアルコキシカルボニル基とも反応し、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環を形成し、架橋物を与える。
これらの架橋剤のなかで、耐熱性がとくに優れており、架橋反応性が良好であり、さらに合成が比較的容易という点で、より好ましい架橋剤としては、一般式(14):
Figure 2012509975
(式中、R5はフッ素原子または1価の有機基)で表わされるビスアミノ架橋性官能基を少なくとも2個有するビスジアミノフェニル系架橋剤である。この架橋性官能基と反応可能な官能基としては、ニトリル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基があげられ、反応により、イミダゾール環を形成する。
さらに、より好ましい架橋剤としては、一般式(15):
Figure 2012509975
で示される化合物である。
架橋性反応基における置換基R6は水素以外の1価の有機基またはフッ素原子であり、特にN−H結合よりも高い耐酸化性を有するN−R6結合を形成する置換基が好ましい。ここで「N−H結合よりも高い耐酸化性を有するN−R6結合を形成する置換基」とは、イミダゾール環を形成したときに、N−H結合を有する化合物より酸化しにくい化合物に存在するN−R6結合を形成する置換基のことをいう。
こうしたR6としては、限定的ではないが、置換されていてもよい脂肪族炭化水素基、置換されていてもよいフェニル基またはベンジル基があげられる。
具体例としては、たとえばR6の少なくとも1つが−CH3、−C25、−C37などの炭素数1〜10、特に1〜6の低級アルキル基;−CF3、−C25、−CH2F、−CH2CF3、−CH225などの炭素数1〜10、特に1〜6のフッ素原子含有低級アルキル基;フェニル基;ベンジル基;−C65、−CH265などのフッ素原子で1〜5個の水素原子が置換されたフェニル基またはベンジル基;−C65-n(CF3n、−CH265-n(CF3n(nは1〜5の整数)などの−CF3で1〜5個の水素原子が置換されたフェニル基またはベンジル基などがあげられる。
これらのうち、耐熱性が特に優れており、架橋反応性が良好であり、さらに合成が比較的容易である点から、フェニル基、−CH3が好ましい。
一般式(15)の化合物において、R7は−SO2−、−O−、−CO−、置換されていてもよいアルキレン基、
Figure 2012509975
または単結合である。
7の置換されていてもよいアルキレン基の好ましい具体例としては、限定的ではないが、たとえば炭素数1〜6の非置換アルキレン基または炭素数1〜10のパーフルオロアルキレン基などであり、パーフルオロアルキレン基としては
Figure 2012509975
などがあげられる。なお、これらのR7としては、特公平2−59177号公報、特開平8−120146号公報などでビスジアミノフェニル化合物において例示された公知の基も使用できる。
7は左右のベンゼン環のうち、いずれの位置に結合していてもよいが、合成が容易で架橋反応が容易に進行することから、NH2基またはNHR7基のいずれかがパラ位になるように結合していることが好ましい。
特に好ましい架橋剤としては、一般式(16):
Figure 2012509975
(式中、R8は同じかまたは異なり、いずれも炭素数1〜10のアルキル基;フッ素原子を含有する炭素数1〜10のアルキル基;フェニル基;ベンジル基;フッ素原子もしくは−CF3で1〜5個の水素原子が置換されたフェニル基またはベンジル基である)で示される化合物である。
限定的ではないが、たとえば2,2−ビス−[3−アミノ−4−(N−メチルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス−[3−アミノ−4−(N−エチルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス−[3−アミノ−4−(N−プロピルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス−[3−アミノ−4−(N−フェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス−[3−アミノ−4−(N−パーフルオロフェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス−[3−アミノ−4−(N−ベンジルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(一般名:ビス(アミノフェノール)AF)、2,2−ビス(3−アミノ−4−メルカプトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、テトラアミノベンゼン、ビス−3,4−ジアミノフェニルメタン、ビス−3,4−ジアミノフェニルエーテル、2,2−ビス(3,4−ジアミノフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどがあげられる。
以上に説明した架橋剤は、機械的強度、耐熱性、耐薬品性に優れ、特に耐熱性と耐薬品性にバランスよく優れた架橋物を与えるものである。
架橋性含フッ素エラストマー組成物の架橋剤の配合量は、架橋性含フッ素エラストマー100質量部に対して、0.05〜10質量部であることが好ましく、1〜5質量部であることがより好ましい。架橋剤が、0.05質量部より少ないと、架橋性含フッ素エラストマーが充分架橋されない傾向があり、10質量部を超えると、架橋物の物性を悪化させる傾向がある。
パーオキサイド架橋を行なう場合、通常の架橋性含フッ素エラストマーの架橋条件下で行なうことができる。たとえば、金型に入れ、加圧下において120〜200℃で1〜60分間保持することによってプレス架橋を行ない、続いて120〜250℃の炉中で0〜48時間オーブン架橋を行なうと、架橋物を得ることができる。
ビスアミノフェノールなどの架橋剤を用いてオキサゾール架橋を行なう場合、通常の架橋性エラストマーの架橋条件下で行なうことができる。たとえば、金型に入れ、加圧下において120〜250℃で1〜60分間保持することによって、プレス架橋を行ない、続いて120〜320℃の炉中で0〜48時間オーブン架橋を行なうと、架橋物を得ることができる。また、公知の架橋性エラストマーの架橋系、たとえば、ポリアミン架橋系やポリオール架橋系、パーオキサイド架橋系の配合にビス(アミノフェノール)AFなどを添加して併用架橋することもできる。
また、カルボキシル基をビスジアミノフェニル系架橋剤で架橋するイミダゾール架橋は、カルボキシル基を末端以外に有するカルボキシル含有ポリマーに最適であり、比較的低い架橋温度(たとえば150〜230℃、好ましくは170〜200℃)で良好な物性をもつ架橋物を与える。
本発明において、とくに高純度かつ非汚染性が要求されない分野では、必要に応じて架橋性エラストマー組成物に配合される通常の添加物、たとえば充填剤、加工助剤、可塑剤、着色剤などを配合することができ、前記のものとは異なる常用の架橋剤や架橋助剤を1種またはそれ以上配合してもよい。
本発明の組成物は、上記の各成分を、通常のエラストマー用加工機械、たとえば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどを用いて混合することにより調製することができる。この他、密閉式混合機を用いる方法やエマルジョン混合から共凝析する方法によっても調製することができる。
上記組成物から予備成形体を得る方法は通常の方法でよく、金型にて加熱圧縮する方法、加熱された金型に圧入する方法、押出機で押出す方法など公知の方法で行なうことができる。ホースや電線などの押出製品の場合は押出後も形を保持することが可能なので、架橋剤を使用せずに押出した予備成形体をそのまま用いることができる。もちろん架橋剤を使用してスチームなどによる加熱架橋を施した予備成形体を用いることも可能である。また、O−リングなどの型物製品で未架橋状態では離型後も形を保持することが困難な場合は、架橋剤を使用してあらかじめ架橋した予備成形体を用いることにより実施可能となる。
上記架橋性組成物を架橋成形して、半導体製造装置用の成形品、特に高度なクリーンさが要求される半導体製造装置、特に高密度プラズマ照射が行なわれる半導体製造装置の封止用のシール材に好適に使用できる。シール材としてはO−リング、角−リング、ガスケット、パッキン、オイルシール、ベアリングシール、リップシールなどがあげられる。
そのほか、半導体製造装置に使用される各種のエラストマー製品、たとえばダイヤフラム、チューブ、ホース、各種ゴムロールなどとしても使用できる。また、コーティング用材料、ラミネート用材料、ライニング用材料としても使用できる。
なお、本発明でいう半導体製造装置は、特に半導体を製造するための装置に限られるものではなく、広く、液晶パネルやプラズマパネルを製造するための装置など、高度なクリーン度が要求される半導体分野において用いられる製造装置全般を含むものである。
さらに、上記コーティング用材料でエラストマー性成形物を被覆し架橋して、被覆成形品を得ることもできる。
被覆されるエラストマー性成形物としては、各種のエラストマー性の材料で作製された物品が使用できるが、耐熱性の点からフッ素系エラストマーやシリコーン系エラストマーなどが好ましい。
具体的には、次のような半導体製造装置が例示される。
(1)エッチング装置
ドライエッチング装置
プラズマエッチング装置
反応性イオンエッチング装置
反応性イオンビームエッチング装置
スパッタエッチング装置
イオンビームエッチング装置
ウェットエッチング装置
アッシング装置
(2)洗浄装置
乾式エッチング洗浄装置
UV/O3洗浄装置
イオンビーム洗浄装置
レーザービーム洗浄装置
プラズマ洗浄装置
ガスエッチング洗浄装置
抽出洗浄装置
ソックスレー抽出洗浄装置
高温高圧抽出洗浄装置
マイクロウェーブ抽出洗浄装置
超臨界抽出洗浄装置
(3)露光装置
ステッパー
コータ・デベロッパー
(4)研磨装置
CMP装置
(5)成膜装置
CVD装置
スパッタリング装置
(6)拡散・イオン注入装置
酸化拡散装置
イオン注入装置
これらのうち、とくにプラズマ処理が行なわれる装置、たとえばCVD装置、プラズマエッチング装置、反応性イオンエッチング装置、アッシング装置、エキシマレーザー露光機のシール材として優れた性能を発揮する。
つぎに実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
本発明における各種物性はつぎの方法で測定した値である。
(1)嵩密度(タップ密度)(g/cm3
100mlメスシリンダー(内径28mm)に5gの粉末を投入し、2cmの高さから20回タッピングした後の目盛を読み、その体積から算出する。
(2)平均粒子径(粒子径分布)(nm)
走査型電子顕微鏡FE−SEM(JEOL社、JSM−6700F型)を用いて観察を行い、SEM画像から一次粒子をランダムに200個選び、その大きさを測って平均粒子径(最大粒子径、粒子径分布)を算出する。
また、本発明における各種プラズマ処理および測定はつぎの方法で行った。
(プラズマ処理)
使用プラズマ照射装置:
ICP高密度プラズマ装置(SAMCO製 RIE−101iPH)
照射条件:
2:流量:16sccm
2/CF4:流量:16/16sccm
パワー:800W
圧力:2.66Pa
照射温度:70〜200℃
照射時間:30分間
<重量減少率>
P24サイズのO−リングをサンプルとし、1種類につき3個使用する。シャルトリウス(Sartorius)・GMBH(株)製の電子分析天秤2006MPEを使用してプラズマ照射前後の重量を測定(0.01mgの桁を四捨五入)し、プラズマ照射前の重量に対する割合(質量%)を求め、平均値を取る。
<パーティクル評価>
(表面パーティクル量(質量%))
P24サイズのO−リングをサンプルとし、1種類につき3個使用する。プラズマ照射後の重量を測定し、ついで照射後のO−リングを純水中で超音波洗浄して表面に存在するパーティクルを除去した後オーブンで150℃にて1時間乾燥し、再度、重量を測定する。洗浄の前後の重量差が表面パーティクルの重量であり、洗浄前の重量に対する表面パーティクルの重量の割合を算出する。
<テープへのパーティクル転写>
プラズマ照射後のO−リング表面に透明粘着テープを接着し、O−リングから粘着テープへのパーティクル転写の有無を目視で確認する。
<ショアA硬度>
ASTM D2240に準拠して、測定を行う。具体的には、高分子計器株式会社製アナログ硬さ計のA型を用いて測定を行う。
<圧縮永久歪み>
JIS K6301に準じてO−リング(P24サイズ)の300℃における、70時間後の圧縮永久歪みを測定する。
実施例1
架橋性エラストマーとして架橋性含フッ素エラストマー(CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CN(CNVE)に由来する基を架橋基として有するTFE/PMVE(=55〜70/30〜45(モル%))を含むパーフロエラストマー)を用い、この含フッ素エラストマー100質量部に、2,2−ビス[3-アミノ-4-(N-フェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(NphAF)(中外化成(株)製)を0.9質量部、炭化ケイ素粒子(平均粒子径30nm、粒子径が50nm以下のものが100%。嵩密度0.07g/cm3。エネテック総研(株)のFC0708)を10質量部混合し、オープンロールにて混練して架橋性エラストマー組成物を得た。
得られた架橋性エラストマー組成物を、180℃で、20分間かけてプレス架橋を行なったのち、さらに、290℃のエアオーブン中で18時間かけてオーブン架橋し、P24サイズの成形品(O−リング)を得た。
この成形品に対して、硬度および圧縮永久歪み、ならびにO2プラズマおよびO2/CF4プラズマ照射処理を施し、照射後の重量変化(重量減少率)、表面パーティクル量およびパーティクルの転写の有無を調べた。結果を表1に示す。
実施例2
炭化ケイ素粒子の配合量を15質量部としたほかは実施例1と同様にして架橋性エラストマー組成物を調製し、ついで架橋成形してP24サイズの成形品(O−リング)を得た。
この成形品に対して、硬度および圧縮永久歪み、ならびにO2プラズマおよびO2/CF4プラズマ照射処理を施し、照射後の重量変化(重量減少率)、表面パーティクル量およびパーティクルの転写の有無を調べた。結果を表1に示す。
実施例3
炭化ケイ素粒子として平均粒子径が40nm、嵩密度0.10g/cm3の炭化ケイ素粒子(Nanosino社製)を用いたほかは実施例1と同様にして架橋性エラストマー組成物を調製し、ついで架橋成形してP24サイズの成形品(O−リング)を得た。
この成形品に対して、硬度および圧縮永久歪み、ならびにO2プラズマおよびO2/CF4プラズマ照射処理を施し、照射後の重量変化(重量減少率)、表面パーティクル量およびパーティクルの転写の有無を調べた。結果を表1に示す。
実施例4
実施例3で用いた炭化ケイ素粒子の配合量を15質量部としたほかは実施例1と同様にして架橋性エラストマー組成物を調製し、ついで架橋成形してP24サイズの成形品(O−リング)を得た。
この成形品に対して、硬度および圧縮永久歪み、ならびにO2プラズマおよびO2/CF4プラズマ照射処理を施し、照射後の重量変化(重量減少率)、表面パーティクル量およびパーティクルの転写の有無を調べた。結果を表1に示す。
実施例5
架橋性エラストマーとしてテトラフルオロエチレン(TFE)/パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)(TFE/PMVE=67/33(モル%))の架橋性含フッ素エラストマー(ヨウ素含有量:0.3質量%)と、パーオキサイド系架橋剤(パーヘキサ2.5B。日本油脂(株)製)と、架橋促進剤(トリアリルイソシアヌレート(TAIC)(日本化成(株)製))と、実施例1で用いた炭化ケイ素粒子とを質量比100/1/2/15で混合し、オープンロールにて混練して架橋性エラストマー組成物を得た。
得られた架橋性エラストマー組成物を、155℃で、10分間かけて架橋を行なったのち、さらに、180℃のエアオーブン中で4時間かけてオーブン架橋し、P24サイズの成形品(O−リング)を得た。
この成形品に対して、硬度、ならびにO2プラズマおよびO2/CF4プラズマ照射処理を施し、照射後の重量変化(重量減少率)、表面パーティクル量およびパーティクルの転写の有無を調べた。結果を表1に示す。
実施例6
架橋性エラストマーとしてビニリデンフルオライド(VdF)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/テトラフルオロエチレン(TFE)(VdF/HFP/TFE=50/30/20(モル%))の架橋性含フッ素エラストマー(ムーニー粘度ML1+10(121℃):19、ヨウ素含有量:0.3質量%)と、パーオキサイド系架橋剤(パーヘキサ2.5B。日本油脂(株)製)と、架橋促進剤(トリアリルイソシアヌレート(TAIC)(日本化成(株)製))と、実施例1で用いた炭化ケイ素粒子とを質量比100/1.5/4/15で混合し、オープンロールにて混練して架橋性エラストマー組成物を得た。
得られた架橋性エラストマー組成物を、160℃で、10分間かけて架橋を行なったのち、さらに、180℃のエアオーブン中で4時間かけてオーブン架橋し、P24サイズの成形品(O−リング)を得た。
この成形品に対して、硬度、ならびにO2プラズマおよびO2/CF4プラズマ照射処理を施し、照射後の重量変化(重量減少率)、表面パーティクル量およびパーティクルの転写の有無を調べた。結果を表1に示す。
実施例7
架橋性エラストマーとして熱可塑性含フッ素エラストマー(構成単位としてVdF、HFP、TFE、エチレンを含む)の架橋性含フッ素エラストマーと、実施例1で用いた炭化ケイ素粒子とを質量比100/15で混合し、ニーダーにて混練して架橋性エラストマー組成物を得た。
得られた架橋性エラストマー組成物を、240℃で圧縮成形したのち、放射線架橋により、P24サイズの成形品(O−リング)を得た。
この成形品に対して、硬度、ならびにO2プラズマおよびO2/CF4プラズマ照射処理を施し、照射後の重量変化(重量減少率)、表面パーティクル量およびパーティクルの転写の有無を調べた。結果を表1に示す。
実施例8
炭化ケイ素粒子として平均粒子径が40nm、嵩密度0.12g/cm3の炭化ケイ素粒子(エネテック総研(株)製)を用いたほかは実施例1と同様にして架橋性エラストマー組成物を調製し、ついで架橋成形してP24サイズの成形品(O−リング)を得た。
この成形品に対して、硬度および圧縮永久歪み、ならびにO2プラズマおよびO2/CF4プラズマ照射処理を施し、照射後の重量変化(重量減少率)、表面パーティクル量およびパーティクルの転写の有無を調べた。結果を表1に示す。
実施例9
架橋剤として、窒化珪素微粉末(平均粒子径30nm、宇部興産(株)製SA−00の粉砕品)を0.4質量部用いたほかは実施例1と同様にして架橋性エラストマー組成物を調製した。
得られた架橋性エラストマー組成物を、180℃で、20分間かけてプレス架橋を行なったのち、さらに、250℃のエアオーブン中で18時間かけてオーブン架橋し、P24サイズの成形品(O−リング)を得た。
この成形品に対して、硬度および圧縮永久歪み、ならびにO2プラズマおよびO2/CF4プラズマ照射処理を施し、照射後の重量変化(重量減少率)、表面パーティクル量およびパーティクルの転写の有無を調べた。結果を表1に示す。
実施例10
架橋性エラストマーとしてビニリデンフルオライド(VdF)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)(VdF/HFP=78/22(モル%))の架橋性含フッ素エラストマー(ムーニー粘度ML1+10(121℃):23、ヨウ素含有量:0.3質量%)と、パーオキサイド系架橋剤(パーヘキサ2.5B。日本油脂(株)製)と、架橋促進剤(トリアリルイソシアヌレート(TAIC)(日本化成(株)製))と、実施例1で用いた炭化ケイ素粒子とを質量比100/1.5/4/15で混合し、オープンロールにて混練して架橋性エラストマー組成物を得た。
得られた架橋性エラストマー組成物を、160℃で、10分間かけて架橋を行なったのち、さらに、180℃のエアオーブン中で4時間かけてオーブン架橋し、P24サイズの成形品(O−リング)を得た。
この成形品に対して、硬度、ならびにO2プラズマおよびO2/CF4プラズマ照射処理を施し、照射後の重量変化(重量減少率)、表面パーティクル量およびパーティクルの転写の有無を調べた。結果を表1に示す。
比較例1
炭化ケイ素粒子として平均粒子径が45nm、粒子径分布で50nmを超える粒子が50%、100nmを超える粒子が2%、嵩密度0.17g/cm3の炭化ケイ素粒子(エネテック総研(株)製のCH0706)を用いたほかは実施例1と同様にして架橋性エラストマー組成物を調製し、ついで架橋成形してP24サイズの成形品(O−リング)を得た。
この成形品に対して、硬度および圧縮永久歪み、ならびにO2プラズマおよびO2/CF4プラズマ照射処理を施し、照射後の重量変化(重量減少率)、表面パーティクル量およびパーティクルの転写の有無を調べた。結果を表2に示す。
比較例2
炭化ケイ素粒子の配合量を15質量部としたほかは比較例1と同様にして架橋性エラストマー組成物を調製し、ついで架橋成形してP24サイズの成形品(O−リング)を得た。
この成形品に対して、硬度および圧縮永久歪み、ならびにO2プラズマおよびO2/CF4プラズマ照射処理を施し、照射後の重量変化(重量減少率)、表面パーティクル量およびパーティクルの転写の有無を調べた。結果を表2に示す。
比較例3
炭化ケイ素粒子として平均粒子径が40nm、嵩密度0.26g/cm3の炭化ケイ素粒子(Nanosino社製)を用いたほかは実施例1と同様にして架橋性エラストマー組成物を調製し、ついで架橋成形してP24サイズの成形品(O−リング)を得た。
この成形品に対して、硬度および圧縮永久歪み、ならびにO2プラズマおよびO2/CF4プラズマ照射処理を施し、照射後の重量変化(重量減少率)、表面パーティクル量およびパーティクルの転写の有無を調べた。結果を表2に示す。
比較例4
炭化ケイ素粒子として比較例3で用いた炭化ケイ素粒子の配合量を15質量部としたほかは比較例3と同様にして架橋性エラストマー組成物を調製し、ついで架橋成形してP24サイズの成形品(O−リング)を得た。
この成形品に対して、硬度および圧縮永久歪み、ならびにO2プラズマおよびO2/CF4プラズマ照射処理を施し、照射後の重量変化(重量減少率)、表面パーティクル量およびパーティクルの転写の有無を調べた。結果を表2に示す。
比較例5
炭化ケイ素粒子として平均粒子径が130nm、嵩密度0.49g/cm3の炭化ケイ素粒子(ナノアモール社製)を用いたほかは実施例1と同様にして架橋性エラストマー組成物を調製し、ついで架橋成形してP24サイズの成形品(O−リング)を得た。
この成形品に対して、硬度および圧縮永久歪み、ならびにO2プラズマおよびO2/CF4プラズマ照射処理を施し、照射後の重量変化(重量減少率)、表面パーティクル量およびパーティクルの転写の有無を調べた。結果を表2に示す。
比較例6
炭化ケイ素粒子として比較例5で用いた炭化ケイ素粒子の配合量を15質量部としたほかは比較例5と同様にして架橋性エラストマー組成物を調製し、ついで架橋成形してP24サイズの成形品(O−リング)を得た。
この成形品に対して、硬度および圧縮永久歪み、ならびにO2プラズマおよびO2/CF4プラズマ照射処理を施し、照射後の重量変化(重量減少率)、表面パーティクル量およびパーティクルの転写の有無を調べた。結果を表2に示す。
比較例7
実施例5において、炭化ケイ素粒子として比較例1で用いた炭化ケイ素粒子を10質量部用いたほかは、実施例5と同様にして架橋性エラストマー組成物を調製し、ついで架橋成形してP24サイズの成形品(O−リング)を得た。
この成形品に対して、硬度、ならびにO2プラズマおよびO2/CF4プラズマ照射処理を施し、照射後の重量変化(重量減少率)、表面パーティクル量およびパーティクルの転写の有無を調べた。結果を表2に示す。
比較例8
炭化ケイ素粒子に代えて、酸化アルミニウム粒子(平均粒子径30nm、嵩密度0.38g/cm3。住友化学(株)製のAKP−800)を架橋性エラストマー100質量部に対して10質量部用いたほかは実施例1と同様にして架橋性エラストマー組成物を調製し、ついで架橋成形してP24サイズの成形品(O−リング)を得た。
この成形品に対して、硬度および圧縮永久歪み、ならびにO2プラズマおよびO2/CF4プラズマ照射処理を施し、照射後の重量変化(重量減少率)、表面パーティクル量およびパーティクルの転写の有無を調べた。結果を表2に示す。
比較例9
炭化ケイ素粒子に代えて、酸化ケイ素(SiO2)粒子(平均粒子径30nm、嵩密度0.05g/cm3。アエロジル(株)製)を架橋性エラストマー100質量部に対して15質量部用いたほかは実施例1と同様にして架橋性エラストマー組成物を調製し、ついで架橋成形してP24サイズの成形品(O−リング)を得た。
この成形品に対して、硬度および圧縮永久歪み、ならびにO2プラズマおよびO2/CF4プラズマ照射処理を施し、照射後の重量変化(重量減少率)、表面パーティクル量およびパーティクルの転写の有無を調べた。結果を表2に示す。
比較例10
炭化ケイ素粒子に代えて、カーボンブラック粒子(平均粒子径300nm、嵩密度0.68g/cm3。CANCARB(株)製)を架橋性エラストマー100質量部に対して15質量部用いたほかは実施例1と同様にして架橋性エラストマー組成物を調製し、ついで架橋成形してP24サイズの成形品(O−リング)を得た。
この成形品に対して、硬度および圧縮永久歪み、ならびにO2プラズマおよびO2/CF4プラズマ照射処理を施し、照射後の重量変化(重量減少率)、表面パーティクル量およびパーティクルの転写の有無を調べた。結果を表2に示す。
比較例11
炭化ケイ素粒子に代えて、ポリイミド粒子(平均粒子径3000nm、嵩密度0.57g/cm3。宇部興産(株)製のUIP−S粉砕品)を架橋性エラストマー100質量部に対して15質量部用いたほかは実施例1と同様にして架橋性エラストマー組成物を調製し、ついで架橋成形してP24サイズの成形品(O−リング)を得た。
この成形品に対して、硬度および圧縮永久歪み、ならびにO2プラズマおよびO2/CF4プラズマ照射処理を施し、照射後の重量変化(重量減少率)、表面パーティクル量およびパーティクルの転写の有無を調べた。結果を表2に示す。
比較例12
実施例6において、炭化ケイ素粒子として比較例1で用いた炭化ケイ素粒子を用いたほかは、実施例6と同様にして架橋性エラストマー組成物を調製し、ついで架橋成形してP24サイズの成形品(O−リング)を得た。
この成形品に対して、硬度、ならびにO2プラズマおよびO2/CF4プラズマ照射処理を施し、照射後の重量変化(重量減少率)、表面パーティクル量およびパーティクルの転写の有無を調べた。結果を表2に示す。
比較例13
実施例7において、炭化ケイ素粒子として比較例1で用いた炭化ケイ素粒子を用いたほかは、実施例7と同様にして架橋性エラストマー組成物を調製し、ついで架橋成形してP24サイズの成形品(O−リング)を得た。
この成形品に対して、硬度、ならびにO2プラズマおよびO2/CF4プラズマ照射処理を施し、照射後の重量変化(重量減少率)、表面パーティクル量およびパーティクルの転写の有無を調べた。結果を表2に示す。
Figure 2012509975
Figure 2012509975
表1および表2から、嵩密度が0.15g/cm3以下の炭化ケイ素粒子を配合することにより、O2プラズマおよびフッ素系(O2/CF4)プラズマの照射による重量減少が少なく、かつパーティクルの発生を顕著に抑制できるということが分かる。

Claims (6)

  1. 架橋性含フッ素エラストマーと嵩密度が0.15g/cm3以下の炭化ケイ素粒子とを含む架橋性含フッ素エラストマー組成物。
  2. 炭化ケイ素粒子の平均粒子径が50nm以下である請求項1記載の組成物。
  3. 架橋性含フッ素エラストマー100質量部に対して炭化ケイ素粒子を1〜50質量部含む請求項1または2記載の組成物。
  4. 架橋性含フッ素エラストマーが、構成単位としてテトラフルオロエチレン単位とパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)単位とを含む共重合体である請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の架橋性含フッ素エラストマー組成物と架橋剤または架橋助剤とを含む架橋性含フッ素エラストマー組成物。
  6. 請求項1〜5記載の架橋性含フッ素エラストマー組成物を架橋して得られる成形品。
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