JP2012504673A - 石油ピッチ製造のためのデカント油の蒸留のためのプロセス - Google Patents
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- C10G7/00—Distillation of hydrocarbon oils
- C10G7/12—Controlling or regulating
Abstract
本発明は、蒸留プロセスの開発を通して、優れた物理的及び化学的特性を有するピッチの製造効率を改善するための、デカント油の蒸留のためのプロセスを記載する。該蒸留プロセスは、基本的には、デカント油の蒸留に由来する軽質揮発性化合物を凝縮させる段階を導入することを含み、こうした軽質化合物を蒸留器の高温ゾーンへリサイクルさせ、特定の温度範囲内で及び特定の時間の間、反応系よりも低い粘度を有する溶媒相として働きながら原材料と反応させる。
Description
本発明は、得られるピッチの製造収率及び性質を向上させることを狙いとするデカント油の蒸留のためのプロセスにおける適用を範囲としている。
ピッチは、炭素人工物の製造、特に、優れた力学的特性を有する炭素繊維の製造に用いられる。ピッチはまた、製鉄産業のためのアノード、アルミニウム及びグラファイト電極の製造のために産業における結合剤としての応用もある。
ピッチの製造は、従来原材料としてコールタールを従来用いる。
しかし、コールタールの使用に由来する環境問題、この原材料の供給の不安定さ及びこの素材の価格が大いに変動することが、石油処理の重質残油に由来する代替の原材料源に対する産業の関心を呼び起こした。
従来、デカント油からのピッチの製造には、原材料を蒸留して軽質化合物を除く処理段階が含まれ、周囲温度で固体特性を有するピッチを最終製品として残す。上述したような従来のプロセスでの平均収率は、ピッチがおよそ20%である。
(関連技術)
文献米国特許第4,705,618号(Maruzen Petrochemical Co.,Ltd.)は、参照としてここに組み込まれるが、炭素繊維の調製のためのピッチ結合剤の製造のための、「実質上」光学的に等方性で実質的に均一なピッチ中間体の連続的調製プロセスを記載している。このプロセスでは、石炭を基礎として有する種々の起源からのタール、ナフサ分解の副生成物、ディーゼル分解の副生成物、並びに特定の圧力及び温度で、特定の滞留時間で管式ヒーター中のデカント油から選択され得る群から選択される、5重量%未満のキノリン不溶性分画を含む重質油を加熱することを含んでいる。ヒーターからのこの流れは、蒸留カラムに移され、そこで特定の圧力及び温度で蒸留され、それにより、重質分画に由来する軽質分画が、このカラムの塔頂からの製品として分離して取り出され、重質分画が、このカラムの塔底部から中間体ピッチとして集められる。
文献米国特許第4,705,618号(Maruzen Petrochemical Co.,Ltd.)は、参照としてここに組み込まれるが、炭素繊維の調製のためのピッチ結合剤の製造のための、「実質上」光学的に等方性で実質的に均一なピッチ中間体の連続的調製プロセスを記載している。このプロセスでは、石炭を基礎として有する種々の起源からのタール、ナフサ分解の副生成物、ディーゼル分解の副生成物、並びに特定の圧力及び温度で、特定の滞留時間で管式ヒーター中のデカント油から選択され得る群から選択される、5重量%未満のキノリン不溶性分画を含む重質油を加熱することを含んでいる。ヒーターからのこの流れは、蒸留カラムに移され、そこで特定の圧力及び温度で蒸留され、それにより、重質分画に由来する軽質分画が、このカラムの塔頂からの製品として分離して取り出され、重質分画が、このカラムの塔底部から中間体ピッチとして集められる。
文献米国特許第4,820,401号(Koz Iizuka、Maruzen Petrochemical Co.,Ltd.)は、参照としてここに組み込まれるが、高性能の炭素繊維を製造するための、350℃未満の軟化点を有するピッチを調製するためのプロセスを開示している。そのプロセスは、石油若しくは石炭からの重質油又はその重質油から蒸留により得られた重質成分を、圧力下に特定の滞留時間の間、管式ヒーター中での熱処理又は水素化処理にさらすことを含む。第2段階で、単環の芳香族炭化水素溶媒を熱処理された材料に加え、新たに形成された不溶性成分を、本質的には、高分子量の等方性歴青物として回収する。第3段階で、その前の段階で得られた歴青物を、特定の温度及び圧力で、水素供与体に基礎を置いた溶媒を添加して水素化処理にさらし、本質的には、等方性の水素化ピッチを得て、最終的には第4段階で、第3段階からの化合物を、350℃から500℃の温度範囲で大気圧よりも高い圧力下で、ピッチ結合剤に変換するために熱処理にさらす。
文献米国特許第4,931,162号(Conoco Inc.)は、参照としてここに組み込まれるが、高品質の炭素繊維を製造するのに適したピッチを調製するためのプロセスを開示している。そのプロセスは、芳香族化合物を含む原料、すなわち大気圧で390℃の初期沸点を有する単相の樹脂を含まない芳香族蒸留物からの蒸留を含む。蒸留物は、メソフェーズを含まないが少なくとも5%の割合のメソフェーズ樹脂を含む蒸留物を得るように、ある時間、大気圧で特定の温度にさらされる。遊離した蒸留物はまた、後者の樹脂をピッチ結合剤に変換するために、不活性気体の存在下に、特定の時間、大気圧下で370℃から420℃の範囲の温度にさらす。
文献米国特許第5,032,250号(Conoco Inc.)は、参照としてここに組み込まれるが、ピッチ結合剤の調製のためのプロセスを開示している。そのプロセスは、メソゲンを含む等方性のピッチを溶媒と混合すること、次いで、これらのメソゲンがピッチ結合剤を形成するように溶媒と会合するようなやり方で、超臨界温度及び圧力の条件下で、溶媒でメソゲンの相分離を行うことを含み、形成されたピッチ結合剤が回収される。
米国特許第5,259,947号(Conoco Inc.)は、参照としてここに組み込まれるが、メソゲンのビヒクル、擬メソゲン又はこれらの混合物を含む、液晶構造を有する溶媒和したメソフェーズピッチを開示している。そのピッチにおいては、溶媒和したメソフェーズピッチは、少なくとも40体積%は光学的に異方性であり、溶媒和したメソフェーズピッチは、メソゲン成分よりも少なくとも40℃低い温度で融解するか又は溶媒和したメソフェーズピッチは擬メソゲンを含み、その際、溶媒和したメソフェーズピッチは、融解するか又は軟化するが、擬メソゲン成分は融解せず、溶媒はメソゲン又は擬メソゲン中に溶解し、かなりの体積の液晶構造を保持している場合に、より低い融点を与える。
上述の既存技術の代表的な例から学び得る事柄から、全てでないにしてもこれらのほとんど全てにおいて、温度の制御が必要であるが、その温度は一般に非常に高温である。同様に、プロセスが大気圧よりも高い圧力下で実行されなければならないことも珍しいことではない。一方、軽質分画がプロセスから効果的に除去され、ほとんど全ての場合に、ピッチを得るためには溶媒を導入する必要があることに留意されたい。最後に、関心は、炭素繊維の製造のためのピッチの物理的及び化学的性質にあり、プロセスそれ自体の効率にはないことがわかる。
本発明は、種々の産業用途での使用に適したものにする、優れた物理的及び化学的性質を有するピッチ結合剤の製造収率を向上させるための、デカント油の蒸留のためのプロセスに関する。
上記の目的は、デカント油の蒸留に由来する軽質で揮発性化合物を凝縮させる段階を導入することを基本的に含む、蒸留プロセスを開発することにより達成された。これらの軽質化合物は、蒸留器の高温ゾーンにリサイクルされ、そこで原材料と反応して、反応系よりも低い粘度を有する溶媒相として働く混合物を形成する。この段階は、特定の温度及び特定の時間の間実行される。
本発明は、優れた物理的及び化学的特性を有するピッチの製造収率を向上させることを狙いとする、デカント油を蒸留するためのプロセスに関する。
すでに述べたように、ピッチは、コールタール及び重質残油を用いて製造され得る。重質残油又はその処理からの残油は、ピッチを得るための主要な材料として広汎に使われている。しかし、実験的に石油ピッチを用いる技術的研究の多くにおいては、原材料として市販のピッチを使用することが述べられている。原材料としてのデカント油からのピッチの製造は、軽質化合物を除去する蒸留を含み、重質材料、周囲温度では固体状態であるピッチを形成することを可能にしている。従来の蒸留により得られるピッチの収率は20%の程度である。蒸留プロセスを加速するが従来のプロセスにおけるよりもさらに低収率となる真空が、蒸留の過程で適用され得る。
本発明の開発のための実験室における研究の過程での第1の実験を実施するに当たり、従来の装置を用いる設定を用いたが、軽質揮発性化合物の除去を加速し得るカラム加熱のための系とともに、外部に熱が逃げないようにするための熱的遮蔽を共に用いた。結果を下の表1に「試験1」として示してある。
理解をより進めるために、この報告の全ての表に共通の略号を説明する必要がある。
Tint − 蒸留器の内部温度
Ttop − 蒸留カラムの塔頂温度
Time − 蒸留時間
YPitch − ピッチの収率
SP − 軟化点
TI − トルエンに不溶の化合物
QI − キノリンに不溶の化合物
Tint − 蒸留器の内部温度
Ttop − 蒸留カラムの塔頂温度
Time − 蒸留時間
YPitch − ピッチの収率
SP − 軟化点
TI − トルエンに不溶の化合物
QI − キノリンに不溶の化合物
同様の加熱パラメーターを用いてはいるが、カラムの加熱をなくすると、ピッチの収率の増加をもたらすということがわかった。これらの結果により、加熱のためのストーブ(11)を取り付けたより大きい容積の蒸留器(1)を作ることとなった。前記蒸留器(1)は、好ましくは、銅製であり、蒸留カラム(3)を取り囲むコイル(2)を含む還流系を備えていた。水、圧縮空気又は熱交換可能なその他のいかなる流体から選択され得る冷却流体は、コイル(2)を通して流れる。上記の蒸留器は、略図として図1で見ることができる。
すでに上述したように、本発明によるプロセスは、還流を用いる熱処理に基づいている。
デカント油及び還流を加熱すると、揮発させられることにより系から取り除かれる軽質分子を、蒸留器内に戻し、滞留するようにし得る。このことは、単に、ピッチの物理的及び化学的特性を改善する、かなりの芳香族性及びナフテン性水素を有するこれらの軽質分子が存在するために、重質分子が過剰に凝縮されることを低減する。
還流下で熱処理すると、ほとんど完全にパラフィン分画が分解され、アルキル芳香族化合物の脱アルキル化、並びに芳香族成分、特に、より軽質な分画の凝縮をもたらす。
このようにして、ピッチの収率を増加させるために、成分のより均一な分布を得ることができ、ピッチの軟化点(SP)を過剰に上昇させることなく、トルエン不溶性(TI)化合物における増加をもたらす。
このようにして還流を適用してデカント油の蒸留を行うと、低分子量成分の揮発性化を抑制し、それらを凝縮させて系外に出す。一方で、低分子量であるこれらの化合物は、反応系よりも低い粘度を有する溶媒相を形成する。このようにして、これらの低分子量成分は、より高い分子量の成分の迅速な凝縮を抑制し、後者の成分における鎖の切断を助ける。この作用はキノリン不溶性化合物の形成を遅らせ、系中への外部からの溶媒化合物の導入の必要性もほとんど完全に除去する。
表2に値が示されている実験は、試験として表示してもあるが、以下に記載する。
試験3を実行するために、7580gのデカント油を、本発明によって用意された、コイル(2)を備えた蒸留カラム(3)を有する蒸留器(1)中に入れた。蒸留を開始したが、蒸留カラム(3)を冷却することなく、コイル(2)は使用しなかった。蒸留を3時間25分間続けた。蒸留器内の最高温度(Tint)は、445℃に達した。蒸留カラムの塔頂での最高温度は、309℃に達した。こうしたパラメーターとこの手法によりピッチの収率、36.9%が得られた。図2は、この試験3の加熱のグラフを示し、蒸留器の温度(Tint)の変化がグラフ上ひし形でプロットされ、カラムの塔頂での温度(Ttop)の変化が三角形でプロットされている。
試験4を実行するために、7580gのデカント油を、本発明によって用意された、コイル(2)を備えた蒸留カラム(3)を有する蒸留器(1)中に入れた。コイル(2)中に冷却液として水を用いて蒸留カラム(3)を冷却して蒸留を開始し、蒸留器内の温度(Tint)は377℃で安定した。還流させて蒸留を7時間続けたが、その後、冷却水の流れを中止し蒸留プロセスをさらに2時間20分間継続した。蒸留器内の最高温度(Tint)は、435℃に達した。蒸留カラムの塔頂での最高温度は、293℃に達した。こうしたパラメーターとこの手法によりピッチの収率、40.2%が得られた。図3は、この試験4の加熱のグラフを示し、蒸留器の温度(Tint)の変化がグラフ上四角形でプロットされ、カラムの塔頂での温度(Ttop)の変化が黒円形でプロットされている。
試験5を実行するために、7540gのデカント油を、本発明によって用意された、コイル(2)を備えた蒸留カラム(3)を有する蒸留器(1)中に入れた。最初に、コイル(2)中に冷却液として水を用いて蒸留カラム(3)を冷却して蒸留を開始し、蒸留器内の温度(Tint)は376℃で安定した。還流させて蒸留を3時間38分間続けたが、その後、冷却水の流れを中止した。蒸留プロセスをさらに45分間延長し、その後、さらに2時間、冷却流体として圧縮空気を用いた。その後、蒸留カラム(3)の冷却を中止し、さらに1時間10分蒸留を続けた。蒸留器内の最高温度(Tint)は、433℃に達した。蒸留カラムの塔頂での最高温度は、263℃に達した。こうしたパラメーターとこの手法によりピッチの収率、49.3%が得られた。図4は、この試験5の加熱のグラフを示し、蒸留器の温度(Tint)の変化がグラフ上四角形でプロットされ、カラムの塔頂での温度(Ttop)の変化が黒円形でプロットされている。
試験6を実行するために、7480gのデカント油を、本発明によって用意された、コイル(2)を備えた蒸留カラム(3)を有する蒸留器(1)中に入れた。冷却流体として圧縮空気のみを用いて蒸留カラム(3)を冷却して蒸留を開始した。8時間のプロセスを通して蒸留カラム(3)を連続して冷却して蒸留を続けた。蒸留器内の最高温度(Tint)は432℃に達するまで、この8時間を通しての温度を徐々にゆっくりとさせた。加熱をさらに1時間続けた。図5は、この試験6の加熱のグラフを示し、蒸留器の温度(Tint)の変化がグラフ上四角形でプロットされ、カラムの塔頂での温度(Ttop)の変化が黒円形でプロットされている。
理解されるように、本発明によるプロセスを用いると53.3%の程度の収率を得ることが可能であった。
本発明を、好ましい実施形態の形で記載したが、本発明の基底に横たわる主要な概念は、そのために炭素繊維の製造を含む様々な産業用途での使用に適したものにする、優れた物理的及び化学的特性を有するピッチの製造効率を向上させることを目的とした、デカント油の蒸留のためのプロセスであり、その革新的な性質を保持しているが、一方で、当業者は、以下に述べる特許請求の範囲で示された本発明の精神と範囲を超えずに、対象の実施方法に必要で適用可能な、変形、修正、変更、適用等を想定し、なし得る。
Claims (6)
- デカント油の蒸留に由来する化合物を凝縮することを含み、前記化合物を蒸留器(1)のゾーンへリサイクルさせ、7から10時間の全蒸留時間の間、430℃から435℃の最大温度に到達させる、石油ピッチ製造に適したデカント油の蒸留のためのプロセス。
- 蒸留器(1)が、好ましくは、銅製であり、蒸留カラム(3)を取り囲むコイル(2)を含む還流系を備えていること、及び、水、圧縮空気及び熱交換能力要件を満たし得るいかなるその他の流体から選択され得る冷却流体がコイル(2)内を流れることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
- リサイクルされた化合物が、以下、
原材料と反応すること、
反応系のそれより低い粘度を有する溶媒相として働くこと、
より大きな分子量を有する成分の速い凝縮を抑制すること、
キノリンに不溶の化合物の形成を遅らせるより大きな分子量の成分において鎖を切断するのを助けること、及び
外部からの溶媒化合物を系中へ導入する必要をなしで済ますこと、
の1つ又は複数を満たすことを特徴とする、請求項1又は2に記載の蒸留プロセス。 - 化合物を凝縮させる段階が、蒸留器(1)の蒸留カラム(3)の周りに、内部をリサイクルする冷却流体を含むコイル(2)を取り付けることにより、実行されることを特徴とする、請求項1、2又は3に記載のプロセス。
- 前記化合物が、軽質及び/又は揮発性である化合物を含む、請求項1から4までのいずれか一項に記載のプロセス。
- デカント油の蒸留に由来する軽質及び揮発性の化合物を凝縮させる段階であって、7と10時間の間の範囲の全蒸留時間の間、430℃と435℃の間の範囲内の最高温度に到達させ、前記化合物を、改変された蒸留器(1)の高温ゾーンへのリサイクルに適したものにする、上記段階を導入することを含むことを特徴とする、石油ピッチの製造のためのデカント油の蒸留のためのプロセス。
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