JP2012254505A - 被加工物を傾けてテーパ加工を行うワイヤ放電加工機 - Google Patents

被加工物を傾けてテーパ加工を行うワイヤ放電加工機 Download PDF

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Abstract

【課題】ワイヤ電極を垂直に、あるいは、テーパ加工における弊害が起こらない、または、軽減できる程度に垂直に近い状態に張ってテーパ加工を行うことが可能なワイヤ放電加工機を提供すること。
【解決手段】XYZの座標系に対して、Y軸回りに45°回転させ、X’Y’Z’の座標系を新しく設ける。被加工物もY軸回りに回転しており、機械のテーブル面(XY平面)から45°傾くことになる。このX’Y’Z’の座標系で45°傾いた加工面を有する直線ブロックABを加工する加工プログラムを運転すると、直線ブロックABは、テーブル面(XY平面)に対して垂直な面となる。そして、この座標系の変換を行うために、通常の加工プログラムに対して「G134W1」、「G134W0」を追加する。
【選択図】図15

Description

本発明は、ワイヤ放電加工機に関し、特に、被加工物を傾けてテーパ加工を行うワイヤ放電加工機に関する。
ワイヤ放電加工機を用いた加工は図1に示されるように、通常、上ノズル10内の上ワイヤガイドと下ノズル11内の下ワイヤガイドとの間に張られたワイヤ電極4に電圧を印加し、ワイヤ電極4に対して相対的に駆動させられる被加工物置き台1上に固定された被加工物(ワーク)3を、水平方向に直交するX軸及びY軸の2軸(図示せず)により軸移動させ、そのワイヤ電極4と被加工物3との間(加工間隙)に生じる連続的な放電により被加工物3を溶融除去させて溝状の加工を行い、所望の形状に加工する方法である。そして、除去された被加工物3は、いわゆる加工屑となって上ノズル10と下ノズル11から噴出される加工液で溝外へ排出される。
図2は、従来のテーパ加工による加工例を説明する図であり、図3は、従来のテーパ加工を行う際にワイヤ電極の動作を説明する図である。図4は図3のテーパ加工を行うプログラム例である。直方体の被加工物3から図3のような45°の傾斜面を持った部材を切り出す加工を例として説明する。そのテーパ加工の際、上ワイヤガイド12の下ワイヤガイド13に対する水平方向位置(XY位置)を相対的にずらせることで、ワイヤ電極4を図示しない被加工物載置面に対して斜めに張った状態とすれば、いわゆるテーパ加工が実行される。テーパ加工は、円錐形状や四角錐形状、または、任意の傾き面を持った形状を得たい際に利用される周知の加工方法である。
上ワイヤガイド12の下ワイヤガイド13に対する相対移動量は、計算によって求めることができる。上,下ワイヤガイドは、一般に、ワイヤ電極4を貫通させる案内孔を有する「ダイスガイド」あるいは「ワイヤダイスガイド」と呼ばれる部材で構成されている。
図4に示される加工プログラム(O0001)において、「M15」の指令コードによってテーパ加工の機能が有効になり、「G92」によって加工プログラム用の座標系と加工開始点(0,−5)が設定される。加工開始点においては、ワイヤ電極4は、テーブル面(XY平面)に対して垂直になっている。そして「G01X−5.0」の指令でワイヤ電極4はA点に向かって移動を始めるが、それと同時に指令された「G51」(ワイヤ左傾斜のコマンド),「T45.0」(「T」はワイヤ電極4の傾斜角度を指令するコマンド)によって次ブロック(直線ブロックAB)での傾斜面の加工に備えてワイヤ電極4の姿勢は傾き始め、A点到達時にワイヤ電極4の傾斜角度は45°になる。次に、「Y60.0」が指令されると、ワイヤ電極4が進行方向に対して左側に45°傾いた状態で傾斜面の加工が始まり、B点まで進む。そして、最後に、「X5.0」の指令でワイヤ電極4は加工終了点に向かって移動を始め、それと同時に指令された「G50」(ワイヤ電極4の傾斜をキャンセルするコマンド),「T0」によってワイヤ電極4の傾きは徐々に戻り始め、加工終了点到達時にワイヤ電極4は垂直状態(ワイヤ電極4の傾斜角度が0°)に戻って加工が終了する。
上記の加工例は、テーパ角度が単一な加工例であるが、複数のテーパ角度を有する加工の場合は次のようになされる。
図5のように、45°と25°のテーパを持つ加工の場合、従来のテーパ加工を行うとワイヤ電極4は垂直状態から最大で45°傾く。図6は、図5に示される45°と25°のテーパを持つ加工を行うプログラム例(O0002)である。「M15」の指令コードによりテーパ加工が有効になり、「G92」によって加工プログラム用の座標系と加工開始点(0,−5)が設定される。加工開始点においては、ワイヤ電極4は、テーブル面(XY平面)に対して垂直になっている。そして「G01X−5.0」の指令でワイヤ電極4はA点に向かって移動を始めるが、それと同時に指令された「G51」,「T45.0」によって次ブロック(直線ブロックAC)での傾斜面の加工に備えてワイヤ電極4の姿勢は傾き始め、A点到達時にワイヤ電極4の傾斜角度は45°になる。次に、「Y30.0」が指令されると、ワイヤ電極4が進行方向に対して左側に45°傾いた状態で傾斜面の加工が始まり、C点まで進む。C点に到達すると、「T25.0」の指令によって、ワイヤ電極4の傾斜角度は25°になる。次に、「Y30.0」が指令されると、ワイヤ電極4が進行方向に対して25°傾いた状態で傾斜面の加工が始まり、B点まで進む。そして、最後に、「X5.0」の指令でワイヤ電極4は加工終了点に向かって移動を始め、それと同時に指令された「G50」,「T0」によってワイヤ電極4の傾きは徐々に戻り始め、加工終了点到達時にワイヤ電極4は垂直状態(ワイヤ電極4の傾斜角度が0°)に戻って加工が終了する。
上述したように、テーパ加工実行時に必要なワイヤ電極4の傾斜角は、加工面の傾斜角(テーパ角)に対応しており、通常、加工プログラム中で数値をもって指定される。例えば、被加工物載置面をXY平面[Z=0の面]として、“Z方向に対して45度=「T45.0」”、“Z方向に対して25度=「T25.0」”のように指定される。そして、実際のワイヤ電極4の傾斜が指定された傾斜角となるようにするために、上ワイヤガイド12の下ワイヤガイド13に対する相対位置(相対的なXY位置)を、上,下ワイヤガイド12,13が上下に整列された位置から、プログラムで指定された傾きを持った面にワイヤ電極4が正しく沿う位置へと、移動させる。この相対移動は、一方のみのワイヤガイド(例えば、上ワイヤガイド12)を支える駆動部の移動(X軸に平行な軸方向のU軸移動、及びY軸に平行な軸方向のV軸移動)によって行われる。
特許文献1には、ワイヤ放電加工機において、テーブルに載置された被加工物の平行度を補正するためのワイヤ放電加工機の平行度補正方法および装置が開示されている。この方法あるいは装置は、被加工物をテーブルに取り付け、その平行度を測定し、測定値に応じてワイヤ電極が被加工物に対して垂直になるようにワイヤガイドを移動することにより、被加工物の取り付けの調整を行う必要がなく、調整に要する手間と時間を省くことができ、ひいては、加工段取りを大幅に簡素化することができる。また、加工に際しては、制御装置に補正手段を設け、被加工物とワイヤ電極との相対移動距離を指定値に合致させるようにしたので、正確な加工を行うことができる。つまり、テーブル面に対して任意の角度を持って載置された被加工物に対してワイヤ電極が垂直になるように平行度を補正して加工プログラム用の座標系を変換し、変換された座標系に基づいて加工指令値も補正されてワイヤ放電加工が行われる技術が開示されている。これはすなわち、被加工物がテーブル面に対して任意の角度を持って載置されていても、テーブル面に平行に載置されている場合と同様な加工が実現できる、ということである。
特許文献2には、テーパ加工時のワイヤ電極の断線や加工面に発生するスジの問題を、ワイヤガイドの形状を工夫することで解決しようとする技術が開示されている。
特許文献3には、広角なテーパ加工においてもワイヤ電極が振動しないようにし、良好な加工面が得られるようにワイヤガイドの形状を工夫した技術が開示されている。
特許文献4には、所要形状の切刃形状を持った総形工具を高能率、高精度の下に自動加工できる加工装置を用いて、基本形状を前加工した総形工具の素材の切刃形成部分に得るべき所望形状の切刃形状を加工し、かつ、逃げ面を加工するために、テーパ加工機能と割り出し位置決め可能な回転割出軸とを具備したワイヤ放電加工機を備え、かつ、ワイヤ放電加工機を数値制御により制御する制御手段を備え、同ワイヤ放電加工機の回転割出軸に上記総形工具の素材を被加工物として装着し、予め得るべき所望形状の切刃形状に応じて作成された数値制御プログラムに基づいて、ワイヤ電極と被加工物との相対的な移動を制御することによって放電加工により総形工具の切刃形成部分に切刃と逃げ面との加工を自動的に遂行する技術が開示されている。
特許文献5には、被加工物の上面の非一直線上の3点の3次元位置を測定し、測定した3点から、傾いた被加工物に垂直な方向を計算し、ワイヤ電極が被加工物に垂直な方向になるように位置決めし、その位置を基準として加工プログラムで指定された傾きを得るようにワイヤ電極の位置を制御し、被加工物を設置した際の誤差を補正する技術が開示されている。
特許第2667475号公報 特開2000−52153号公報 特開2006−55923号公報 特開平9−267219号公報 特開2006−159396号公報
背景技術で説明した特許文献1に開示された技術は、テーブルに被加工物を載置した後、煩わしい段取り作業を行なわずに加工を行えるようにするものである。しかし、被加工物をテーブル面に載置することを前提にしており、被加工物を故意に傾けて載置することについては記載も示唆もされていないし、テーパ加工の弊害についても記載も示唆もされていない。特許文献2、3に開示された技術は、ワイヤ電極を傾けて張ることを前提としたワイヤガイドの形状に関するものであって、ワイヤ電極をテーブル面に対して垂直に張る場合にはこのような対処は不要である。また、特許文献4に開示された技術は、テーブル面に平行な回転軸に被加工物を取り付けて、回転軸を回転させながら切刃形状や逃げ面を加工するものであるが、被加工物自体が回転軸回りに動くので、被加工物の傾きに合わせて座標系や加工のための指令値を補正するというものではない。加工としては、テーブル面を基準とした直交座標系で、ワイヤ電極を垂直走行姿勢から傾けてテーパ加工を施すという、一般的なテーパ加工の方式になっている。また、特許文献5に開示された技術は、被加工物載置時の被加工物姿勢の誤差を補正するために、被加工物に対してワイヤ電極が垂直になるようにワイヤ垂直位置を調整するものであり、意図的に被加工物を傾けてワイヤ電極をテーブル面に対して垂直に近い状態にしてテーパ加工を行うものではない。
ワイヤ放電加工機において、テーブル面に対して上ワイヤガイド部(上ワイヤガイド12)を平行移動することで、ワイヤガイド部にて支持されたワイヤ電極4を斜めに張って加工するテーパ加工は、ワイヤ電極4を垂直に張って加工を行う垂直加工に比べると、技術的な課題を多く抱えている。例えば、1)加工屑の排出が困難であり加工速度を上げることができない、2)ワイヤガイドでワイヤ電極に摩擦力が加わり、加工精度に悪影響を及ぼす、3)ワイヤガイドで曲げられるワイヤ電極の支点が、ワイヤガイドの形状精度や加工状態により変動するため、高精度な加工が困難であり、4)加工条件を設定することが難しい、5)上下ガイド12,13の移動可能範囲を越えてしまい被加工物を加工できない可能性がある、などである。
上記1)〜5)の課題について説明する。
1)加工屑の排出が困難であり加工速度を上げることができない点
ワイヤ放電加工においては、ワイヤ電極4と被加工物3の間で放電を繰り返しながら、被加工物3をワイヤ電極4の周りで溶融除去する加工が行われ、加工溝8を形成しながら加工が進行する。加工中におけるワイヤ電極4、被加工物3、および、加工液の関係は図7に示される。
ワイヤ放電加工中には上,下ノズル10,11から加工液7が噴出され、加工溝(ワイヤ電極4と被加工物3の間)8に溜まった加工屑を加工溝8から排出して、ワイヤ電極4と被加工物3との短絡あるいはワイヤ電極4の断線を防止し、効率よく被加工物3の加工を行えるようになっている。
図7はワイヤ電極4、被加工物3、および加工液7の関係を説明する図である。図7(a)に示されるように、垂直加工を行うとき、図示しないテーブル面に対してワイヤ電極4が垂直に張られて放電加工が行われる。この場合、加工液7の噴出方向とワイヤ電極4の走行方向とが一致することによって、加工液7は加工溝8にスムーズに流れ込み、加工屑を効率よく加工溝8から排出することができる。
一方、図7(b)に示されるように、テーパ加工をおこなうとき、テーブル面に対してワイヤ電極4が傾斜して張られて加工が行われることで、加工液7の噴出方向とワイヤ電極4の走行方向とが一致せず、加工液7は加工溝8に流れ込み難くなって、加工屑を効率よく加工溝8から排出することができなくなる。また、この傾向はテーパ角度θが大きくなるほど顕著になる。なお、テーブル面は、図7において紙面に垂直であり被加工物3の底面に平行な平面である。
さらには、ワイヤ電極4をワイヤガイド部で屈曲させて走行させるため、加工液7の噴出を真っ直ぐにガイドするノズル10,11に干渉することがあり、同じ加工液流量で流速が遅くなる内径の大きなノズルを使用する必要がある。
したがって、テーパ加工の場合には、加工屑の排出効率が悪化して短絡やワイヤ電極4の断線が起こり易くなるので、放電のための加工条件を弱くして加工しなければならず、その結果として速い加工速度で加工することができなくなる。
2)ワイヤガイドでワイヤ電極4に摩擦力が加わり、面粗さに悪影響を及ぼす点
テーブル面に対してワイヤ電極4を斜めに張って加工するテーパ加工では、ワイヤ電極4がワイヤガイド部分で急激に曲げられるため、ワイヤ電極4のワイヤガイド孔内の移動で円滑にされず、振動が生じたりしてワイヤ電極4が断線したり被加工面に筋(スジ)が入り、面粗さが悪化したりすることもある。そして、この傾向はテーパ角度が大きくなるほど顕著になる。このような問題を解消すべく、特許文献2や特許文献3に開示された技術では、ワイヤガイド部の形状を工夫しワイヤ電極4の振動を抑えようと試みているが、ワイヤ電極4とワイヤガイド部との間に発生する摩擦力を完全に無くすことにはならいない。
したがって、図8に示されるように、ワイヤ電極4に生じる振動を完全に押さえ込むことには無理がある。図8はワイヤガイド部におけるワイヤ電極4の屈曲を説明する図である。図8(a)は、曲率半径が小さいワイヤガイド13aを用いた場合を説明する図である。曲率半径が小さいワイヤガイドを用いる場合、ワイヤ電極4が曲がり難く、ワイヤ電極4の振動を抑えることができず、放電加工が不安定となる問題がある。図8(b)は、曲率半径が大きいワイヤガイド13bを用いた場合を説明する図である。曲率半径が大きいワイヤガイドでは、ワイヤ電極4が曲がり易く加工は安定するものの、支点誤差が大きくなり、これも後述するように問題である。
3)ワイヤガイドで曲げられるワイヤ電極4の支点が、ワイヤガイドの形状精度や加工状態により変動するため、高精度な加工が困難である点
図9は、テーパ加工時の角度指令方法を説明する図である。ワイヤ電極4を傾斜させる角度θと上,下ワイヤガイド12,13間距離Hを用いることにより、上ワイヤガイド12の移動量を算出することができる。特許文献3のように曲率半径の大きなワイヤガイドを使用すると、ワイヤ電極4の振動を軽減することが可能であるが、支点誤差という精度に関わる大きな問題が発生する。図10は、曲率半径が大きいワイヤガイドにおいて発生する支点誤差を説明する図である。テーパ角度によりワイヤ電極4の支点位置が異なるため、支点位置のずれによる誤差を補正しないと角度にずれが生じる。
4)加工条件を設定することが難しい点
上記1)の課題において指摘したが、ワイヤ放電加工機によるテーパ加工の場合には、加工屑の排出効率が悪化して短絡やワイヤ電極4の断線が起こり易くなる。その対策として、従来は放電のための加工条件を弱くして加工しなければならなかった。
しかしながら、加工条件を弱くすればするほどワイヤ電極4の断線は少なくなるが、その分、加工速度が遅くなり、加工時間も余計に要してしまう。効率の良い放電加工を行うためには、なるべく加工条件を弱めずに加工したいところである。
ところが、加工屑の排出効率はテーパ角度によっても変わってくることから、どのような角度のときにどれほど加工条件を弱くすればよいのか、調整するのが非常に難しいというのが現実であった。
5)上下ガイド12,13の移動可能範囲を越えてしまう可能性がある点
図11に示されるように、テーブル面に対してワイヤ電極4が傾き、指令されたテーパ角度が大きい場合や、上下ガイド12,13間の距離が長い場合には、上下ガイド12,13の移動量が大きくなり、移動可能範囲を越えて加工できない可能性がある。
これら1)〜5)の課題はワイヤ電極4を斜めに張ることによって生じる課題であり、テーパの角度が大きくなるほど顕著化する性質がある。
そこで本発明の目的は、ワイヤ電極を垂直に、あるいは、テーパ加工における弊害が起こらない、または、軽減できる程度に垂直に近い状態に張ってテーパ加工を行うことが可能なワイヤ放電加工機を提供することである。
本願の請求項1に係る発明は、直交する2軸からなる平面と座標系を有して被加工物を載置するテーブルを備え、テーパ加工を行う加工プログラムにしたがってワイヤ電極と該被加工物とを相対移動させながら放電加工を行うワイヤ放電加工機であって、前記被加工物を前記平面に対して傾けて載置する載置部と、傾けて載置された前記被加工物と前記平面とがなす傾斜角度を設定する傾斜角設定部と、前記傾斜角度に基づいて前記座標系を前記傾斜角度傾ける座標系変換部と、前記変換された座標系に基づいて前記加工プログラムによって指令される加工指令値を補正する加工指令値補正部と、を有することを特徴とするワイヤ放電加工機である。
請求項2に係る発明は、前記加工プログラムで指令されるテーパ角度が1つの場合、前記載置部で前記被加工物を傾斜させる角度を、前記加工プログラムで指令されるテーパ部分の角度または指令された角度の近傍とすることを特徴とする請求項1記載のワイヤ放電加工機である。
請求項3に係る発明は、前記加工プログラムで指令されるテーパ角度が複数の場合、前記載置部で前記被加工物を傾斜させる角度を、前記テーパ角度の最大値と最小値の中間の角度または該中間の角度の近傍とすることを特徴とする請求項1記載のワイヤ放電加工機である。
請求項4に係る発明は、前記載置部は角度が設定可能な割り出し盤、割り出し位置決め機能を持った回転軸、あるいは、サインバー構造を有する固定ジグのいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のワイヤ放電加工機である。
請求項5に係る発明は、前記被加工物の板厚毎に用意された加工条件を記憶する加工条件記憶部と、前記傾斜角度で前記被加工物の板厚を補正する板厚補正部と、前記板厚補正部で補正された板厚で加工条件を設定する加工条件設定部と、を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のワイヤ放電加工機である。
請求項6に係る発明は、前記加工指令補正部は、前記変換された座標系における現在のワイヤ電極の角度と指令されるテーパ角度との角度差を演算し、該演算された角度差に基づいてワイヤガイドを移動することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のワイヤ放電加工機である。
本発明により、ワイヤ電極を垂直に、あるいは、テーパ加工における弊害が起こらない、または、軽減できる程度に垂直に近い状態に張ってテーパ加工を行うことが可能なワイヤ放電加工機を提供できる。つまり、本発明では、被加工物を回転して設置し、被加工物に対する垂直方向を基準に指令されたテーパ角度となるようにワイヤ電極の位置を制御し、被加工物の回転角度を指令されるテーパ角度とほぼ同じ値にすることで、ワイヤ電極は、テーブル面に対してほぼ垂直な状態で加工できるので、テーパ加工における従来の弊害を回避することができる。
ワイヤ電極を用いた放電加工を説明する図である。 従来のテーパ加工による加工例を説明する図である。 従来のテーパ加工を行う際にワイヤ電極の動作を説明する図である。 従来のテーパ加工を行う加工プログラム例である。 従来の複数のテーパ角度を持つテーパ加工を説明する図である。 従来の複数のテーパ角度を持つ加工を行う加工プログラム例である。 ワイヤ電極、被加工物、および加工液の関係を説明する図である。 ワイヤガイドにおけるワイヤ電極が屈曲することを説明する図である。 テーパ加工時の角度指令方法を説明する図である。 曲率半径が大きいワイヤガイドにおいて発生する支点誤差を説明する図である。 指令されたテーパ角度が大きいと、上下ガイドの移動量が大きくなり、移動可能範囲を越えて加工できない可能性があることを説明する図である。 被加工物を傾けたときのワイヤ電極と被加工物の相対移動量を説明する図である。 従来のテーパ加工と本発明のテーパ加工とを比較して説明する図である。 垂直加工時の板厚と本発明のテーパ加工を行う際の板厚の関係を説明する図である。 本発明に係るテーパ加工を説明する図である。 本発明に係るテーパ加工を行う加工プログラム例である。 本発明に係る複数のテーパ角度を持つテーパ加工を説明する図である。 本発明に係る複数のテーパ角度を持つテーパ加工を行うプログラム例である。 サインバー構造の被加工物固定治具により被加工物を傾けた加工例を説明する図である。 割り出し盤、割り出し軸により被加工物を傾けた加工例を説明する図である。 本発明の適用が可能なワイヤ放電加工機の基本構成を説明する図である。 本発明の実施形態2に係るテーパ加工を行う処理を説明するフローチャートである。 ワイヤ電極をテーブル面に対してほぼ垂直な状態で被加工物を加工できる本発明の実施形態2を説明する図である。 本発明の実施形態2に係るテーパ加工を行う処理を説明するフローチャートである。
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
まず、本発明の概略を説明する。
背景技術で説明した特許文献1において、テーブル面に対して任意の角度をもって載置された被加工物3に対してワイヤ電極4が垂直になるように平行度を補正して加工プログラム用の座標系を変換し、変換された座標系に基づいて加工指令値も補正されてワイヤ放電加工が行われるという技術が確立されている。換言すれば、被加工物3がテーブル面に対して任意の角度を持って載置されていても、テーブル面に平行に載置されている場合と同様な加工が実現できる、ということである。
本発明は、テーパ加工にこの技術を応用し、ワイヤ電極4をテーブル面に対して垂直に、あるいは、テーパ加工における弊害が起こらない、または、軽減できる程度に垂直に近い状態に張り、ワイヤ電極4を傾ける代わりに被加工物3をテーブル面に対して傾斜させて載置して、テーパ加工を行うというものである。
これによって、テーパ加工における発明が解決しようとする課題が解決され、テーパ加工における加工性能が飛躍的に向上する。また、通常のテーパ加工用の加工プログラムをそのまま利用することができるので、被加工物3を傾斜させて載置した場合の加工プログラムを改めて検討したり作成したりといった煩わしさがない。
ここで、被加工物3を傾けて加工することについて検討する。
ワイヤ電極4の代わりに被加工物3を傾けたとしても、両者の相対的な位置関係が同じであれば、通常のテーパ加工と同様な加工を実現できるはずである。
しかしながら、ここで一つの問題が発生する。テーブル面と被加工物3のなす角がθのとき、テーブル面における移動量をL、ワイヤ電極4と被加工物3の相対移動量をL’とすると、両者は、数1式の関係になる。図12は、被加工物3を傾けたときのワイヤ電極4と被加工物3の相対移動量を説明する図である。
L’=L*cosθ (数1式)
従来の方法では、被加工物3をテーブル面に平行となるように載置するので、θ=0°ゆえにL’=Lとなって、ワイヤ電極4と被加工物3の相対移動量とテーブル面における移動量は同じになる。ところが、被加工物3をテーブル面に対して傾けて載置した場合には、加工プログラムによってL’の移動量が指令されたときに、数1式の関係で補正してテーブルを移動させなければならない。
しかしながら、この問題を解決するような加工指令値を補正する手段は、例えば、特許文献1に開示されているように容易に実現できる。本発明では、このような補正手段を用いる構造となっている。
従来も、被加工物3のみを傾けて加工を行うというアイデアはあったが、その場合は傾いた被加工物3を加工するための加工プログラムを改めて作り直す必要があり、その労力を考えると現実的ではなかった。しかしながら、傾けた座標系とこの補正手段とを合わせて用いることによって、通常のテーパ加工用の加工プログラムをそのまま使用することが可能となり、余計な労力をかける必要がなくなった。
以下、上述した各課題について検討する。
1)加工屑の排出が困難なので加工速度を上げられない点
図13は、従来のテーパ加工と本発明のテーパ加工とを比較して説明する図である。従来のテーパ加工は図13(a)に示されるように、テーブル面に垂直な位置からワイヤ電極がテーパ角度分だけ傾く。一方、本発明では図13(b)に示されるように、テーブル面から被加工物3をテーパ角度分だけ傾けるが、ワイヤ電極4の被加工物3との相対的な位置関係は、従来のテーパ加工と同じである。
しかしながら、テーブル面に対して垂直な位置を維持しているので、加工液は垂直加工と同様に加工溝(ワイヤ電極4―被加工物3間)にスムーズに流れ込む。したがって、加工屑を効率よく排出することができるので、「加工屑の排出が困難なので加工速度を上げられない」という課題は解消され、垂直加工と同等の加工速度が得られるようになり、加工時間を大幅に短縮することができる。
2)ワイヤガイド部でワイヤ電極4に摩擦力が加わり、面粗さに悪影響を及ぼす点
ワイヤ電極4がテーブル面に対して垂直な位置を維持することができれば、ワイヤ電極4はワイヤガイド部で急激に曲げられることもなくなるので、「ワイヤガイド部でワイヤ電極4に摩擦力が加わり、面粗さに悪影響を及ぼす」という課題も解消され、垂直加工と同等の面粗さが得られるようになる。
3)ワイヤガイド部で曲げられるワイヤ電極4の支点が、ワイヤガイドの形状精度や加工状態により変動し、高精度加工が困難である点
ワイヤ電極4がテーブル面に対して垂直な位置を維持することができれば、ワイヤ電極4はワイヤガイド部で急激に曲げられることもなくなるので、「ワイヤガイド部でワイヤ電極4の支点位置がずれ、精度に悪影響を及ぼす」という課題も解消され、垂直加工と同等の精度が得られるようになる。
4)加工条件を設定するのが難しい点
ワイヤ放電加工における加工条件は、通常、垂直加工用のものが被加工物3の板厚ごとに用意されているが、テーパ加工用のものは用意されていない。それは、「テーパ加工の課題について」でも説明した理由によって、テーパ加工時の最適な加工条件を決めるということは非常に難しいからである。
しかしながら、本発明は、ワイヤ電極4が垂直になっているので、加工屑の排出能力は垂直加工時と同等である。そこで、図14のように、本発明の加工における板厚をt’と考え、被加工物3の本来の板厚をtとすると、数2式の関係が成り立つ。図14は、垂直加工時の板厚と本発明のテーパ加工を行う際の板厚の関係を説明する図である。
t’=t/cosθ (数2式)
これはすなわち、被加工物3の板厚とテーパ角度から本発明の加工における板厚t’を求め、被加工物3の板厚がt’となる垂直加工用の加工条件を設定すれば、テーパ加工用の加工条件が得られるということである。そして、本発明のようなテーパ加工を行えば、このような加工条件設定装置を設けることによって、オペレータが容易にテーパ加工用の加工条件を設定することができる。そして、従来のような加工条件を設定するための労力は不要になり、加工効率が垂直加工と同等で、非常に効率の良いテーパ加工を行うことができるようになる。
5)上,下ガイドの移動可能範囲を越えてしまう可能性がある点
本発明において、ワイヤ電極はテーブル面に対してほぼ垂直な状態で加工できるので、テーパ加工における弊害を解決できる。
本発明のテーパ加工について、図15を用いて説明する。図15は、図3をY軸回りに45°回転させたもので、図3のXYZの座標系に対して、X’Y’Z’の座標系を新しく設けたものである。ただし、この場合、Y軸とY’軸は一致している。
図15を見てわかるように、被加工物3もY軸回りに回転しており、機械のテーブル面(XY平面)から45°傾くことになる。そして、このX’Y’Z’の座標系で先ほどの加工プログラムを運転すると、従来の加工方法の図3では傾斜面として加工していた直線ブロックABは、テーブル面に対して垂直な面となる。そして、この座標系の変換を行うために、通常の加工プログラム(図4参照)に対して図16に示される加工プログラム(O0003)ように、「G134W1」、「G134W0」を追加する。
図16に示される加工プログラム(O0003)にしたがった動きを説明すると、まず、「G134W1」の指令で座標系変換機能を有効にする。座標系傾斜角度は「S」で指令される。すると、本発明のテーパ加工用のX’Y’Z’座標系が設けられ、ワイヤ電極4は加工開始点でX’Y’平面に対して垂直になるように傾く。ここでは「S45.0」であるから、座標系傾斜角度は45°である。
ワイヤ電極4がX’Y’平面に対して垂直になると、「M15」が指令されてテーパ加工機能が有効になり、「G92」によって加工プログラム用の座標系と加工開始点(0,−5)が設定される。加工開始点においては、ワイヤ電極4はX’Y’平面に対して垂直になっている。そして、「G01X−5.0」の指令でワイヤ電極4はA点に向かって移動を始めるが、それと同時に指令された「G51」、「T45.0」によって次ブロック(直線ブロックAB)の加工に備えてワイヤ電極4の姿勢はテーブル面(XY平面)に対して垂直になるように変わり始め、A点到達時にワイヤ電極4はテーブル面に対して垂直になる。次に、「Y60.0」が指令されると、ワイヤ電極4はそのままの姿勢でB点まで進む。そして、「X5.0」の指令でワイヤ電極4は加工終了点に向かって移動を始め、それと同時に指令された「G50」、「T0」によってワイヤ電極4の姿勢はX’Y’平面に対して垂直になるように徐々に戻り始め、加工終了点到達時にワイヤ電極4はX’Y’平面に対して垂直な状態に戻る。そして、最後に、「G134W0」の指令で座標系変換機能は無効になり、ワイヤ電極4はテーブル面に対して垂直な状態に戻って加工が終了する。
上記の例は、本発明の特徴を分かり易く説明するためにテーパ角度が単一な加工を例示したが、図5で示したように複数のテーパ角度を有する加工の場合は次のように対応するとよい。図17のとおり、被加工物3をテーブル面に対して(45+25)/2=35の計算により、35°傾けて本発明によるテーパ加工を行えば、ワイヤ電極4は垂直方向に対して最大でも±10°しか傾かないことになる。確かに、加工時のワイヤ電極4は垂直状態を保つことはできないが、最大45°傾くことに比べれば、各課題が加工に与える影響の度合いは軽微なものとなり、効率よく正確な加工ができるようになることは明らかである。
図17を見てわかるように、被加工物3もY軸回りに回転しており、機械のテーブル面(XY平面)から35°傾くことになる。そして、このX’Y’Z’の座標系で先ほどの加工プログラムを運転すると、図5では45°の傾斜面として加工していた直前ブロックACは、テーブル面に垂直な面からワイヤ電極4の進行方向に対して左側に10°傾いた面、また、25°の傾斜面として加工していた直線ブロックCBは、テーブル面に垂直な面からワイヤ電極4の進行方向に対して右側に10°傾いた面となる。そして、この座標系の変換を行うために、通常の加工プログラム(図6参照)に対して図18に示される加工プログラム(O0004)ように、「G134W1」、「G134W0」を追加する。
図18に示される加工プログラム(O0004)にしたがった動きを説明すると、まず、「G134W1」の指令で座標系変換機能を有効にする。すると、本発明のテーパ加工用のX’Y’Z’座標系が設けられ、ワイヤ電極4は加工開始点でX’Y’平面に対して垂直になるように傾く。座標系傾斜角度は「S」で指令される。ここでは「S35.0」であるから、座標系傾斜角度は35°である。
ワイヤ電極4がX’Y’平面に対して垂直になると、「M15」が指令されてテーパ加工機能が有効になり、「G92」によって加工プログラム用の座標系と加工開始点(0,−5)が設定される。加工開始点においては、ワイヤ電極4はX’Y’平面に対して垂直になっている。そして、「G01X−5.0」の指令でワイヤ電極4はA点に向かって移動を始めるが、それと同時に指令された「G51」、「T45.0」によって次ブロック(直線ブロックAC)の加工に備えてワイヤ電極4の姿勢は変わり始め、A点到達時にワイヤ電極4は次ブロックでのワイヤ電極4の進行方向に対して左側に10°傾いた姿勢になる。次に、「Y30.0」が指令されると、ワイヤ電極4はそのままの姿勢でC点まで進む。
C点に到達すると、「T25.0」によりワイヤ電極4の傾斜角度は進行方向に対して右側に10°傾く。次に、「Y30.0」が指令されると、ワイヤ電極4が進行方向に対して右側に10°傾いた状態で傾斜面の加工が始まり、B点まで進む。そして、「X5.0」の指令でワイヤ電極4は加工終了点に向かって移動を始め、それと同時に指令された「G50」,「T0」によってワイヤ電極4の姿勢はX’Y’平面に対して垂直になるように徐々に戻り始め、加工終了点到達時にワイヤ電極4はX’Y’平面に対して垂直な状態に戻る。そして、最後に、「G134W0」の指令で座標系変換機能は無効になり、ワイヤ電極4はテーブル面に対して垂直な状態に戻って加工が終了する。
次に、被加工物3をテーブルに載置する方法を説明する。図2の座標系変換を行わない場合のテーパ加工例に対し、図19のとおり、まず、角度調整が可能な専用のジグ(サインバー構造20)で被加工物3をテーブルに固定する方法が考えられる。このような、ジグに被加工物3を載置して、加工前の段取り時に傾斜角を正確に調整してから加工を行うようにしてもよい。この方法は段取り時の手間が掛かるが、手間を省いて効率よく加工を行うならば、上ワイヤガイド部に測定子を取り付けて、その測定子によりテーブル面に対する被加工物3の傾斜角を測定するようにしてもよい。
また、図20のとおり、テーブルに載置された割り出し位置決め機能を持った回転割出軸22に被加工物3を取り付けて、回転割出軸を回転させることによって傾斜角度を与えるようにしてもよい。この場合は、測定子で傾斜角度を測定してもよいし、回転割出軸の位置決め機能を用いて傾斜角度を確定してもよい。回転割出軸22に替えて割り出し盤を用いてもよい。
そして、このようにして確定した被加工物3の傾斜角度を、座標系の傾斜角度として、上記例のように加工プログラムの引数「S45.0」,「S35.0」や手動入力、あるいは、ソフトウェアによる自動設定でワイヤ放電加工機の制御装置に与えれば、その内部に備えられたワイヤガイド位置決め手段を介してワイヤ電極4と被加工物3とが垂直になる位置にワイヤガイドが移動し(なお、この技術は、例えば、特許第2667475号において確立されている)、本発明によるテーパ加工が可能となる。
なお、上記の例ではX軸を傾ける加工を取り上げて説明したが、Y軸を傾けるような加工の場合、あるいは、X,Yの両軸を傾けるような加工の場合であっても、所望の傾斜角度が確定し、座標系が正しく変換されることは言うまでもない。
図21は、本発明の適用が可能なワイヤ放電加工機の基本構成と動作について説明する図である。同図において、符号1は加工対象とされる被加工物(ワーク)3を設置・固定する被加工物置き台1で、高精度の平坦度を持つ、上向きの被加工物載置面2を有している。加工時に、被加工物3はその底面が被加工物載置面2に接するように被加工物置き台1に設置・固定される。
被加工物3は、上面31の全体が底面32と平行な面となっている。ここでは被加工物3として直方体形状のものが例示されており、上面31の全体が底面32と平行な面となっているが、これも例示であり、例えば上面の一部領域のみが底面と平行な面であっても構わない。被加工物3に放電加工を施すためにワイヤ電極4は、送出しリールから給電ローラ、上ワイヤガイド12等を経て供給されるワイヤ電極4で、加工時には、結線操作により上下ワイヤガイド12,13間に張架され、被加工物3との間に放電を起こさせるための電圧(パルス状電圧)が印加される。
ワイヤ電極4は更に、下ワイヤガイド13、ガイドローラ等を経て、ワイヤ電極4を所定の張力で引っ張る巻取りリールで巻取られる。なお、巻取りリールに換えて、2つのローラで挟み込み回転しながら引っ張り、ワイヤ回収箱に回収することもある。
また、詳細は省略するが、加工箇所には冷却水が注がれたり、あるいは、被加工物3全体を加工液(例えば純水)中に浸漬するなどの手法が採用される。被加工物置き台1の載置面2は水平方向(XY平面に平行な面上)に延在し、被加工物置き台1はXY各軸のサーボモータにより、XY平面に平行な面上で駆動可能となっている。また、上ワイヤガイド12は、UV各軸のサーボモータにより、XY平面に平行な面上で駆動可能であるとともに、Z軸のサーボモータにより、XY平面に垂直な方向(±Z方向)に駆動可能となっている。U軸による移動方向とX軸による移動方向は平行、また、V軸による移動方向とY軸による移動方向は平行となっている。
加工箇所を変えるには、被加工物3とワイヤ電極4の相対的な位置を変えれば良く、ワイヤ電極4の張架方向を変えれば、加工断面の方向が変わる。これらの変化は、XYUVZ各軸の移動の適当な組み合わせで実現できる。これら軸の移動は、数値制御装置から出力される各軸の指令(X軸指令、Y軸指令、U軸指令、V軸指令、及びZ軸指令)により行われ、その指令内容は、通常、加工プログラムで規定される。なお、数値制御装置の構成自体は、CPU、メモリ、サーボ制御装部、各種インターフェイス等を備えた周知のものであり、詳細の説明は省略する。数値制御装置のメモリには、板厚毎に用意された加工条件、傾斜角度で加工物の板厚を補正する板厚補正手段(計算式)、加工プログラムとその「関連データ」が予め格納されている。図21に示されるワイヤ放電加工機を用いて、被加工物の傾斜角度にしたがって板厚が補正され、補正された加工条件にしたがって被加工物を加工することができる。
図22は、例えば、図21に示される数値制御装置において、本発明の実施形態1に係るテーパ加工を行う処理を説明するフローチャートである。なお、被加工物は予め傾きを設定して固定されているものとする。
●[ステップSA01]1ブロックを読み込む。
●[ステップSA02]座標系変換機能を有効にするブロックか否か判断し、有効にするブロックであればステップSA03に移行する。
●[ステップSA03]指令された座標系傾斜角度でテーパ加工用の座標系を設ける。
●[ステップSA04]1ブロック読み込む。
●[ステップSA05]テーパ加工は有効か否か判断し、有効であればステップSA06へ移行し、有効でない場合にはステップSA09へ移行する。なお、ステップSA05は加工プログラムにM15が記述されるブロックがあれば、テーパ加工有効と判断する。M15はモーダル情報として記憶され、テーパ加工無効が記述されるブロックまでの期間、テーパ加工有効として扱われる。
●[ステップSA06]ワイヤ電極の傾き指令があるか否か判断し、ある場合にはステップSA07へ移行し、ない場合にはステップSA13へ移行する。
●[ステップSA07]ワイヤ電極の傾きを指令するテーパ加工用の座標系により変換する。
●[ステップSA08]変換されたワイヤ電極の傾きとなるようにワイヤガイドを移動する。
●[ステップSA09]プログラム終了か否か判断し、終了の場合には処理を終了し、終了でない場合には、ステップSA10へ移行する。
●[ステップSA10]1ブロック読み込む
●[ステップSA11]座標系変換機能を無効にするブロックであるか否か判断し、無効にするブロックの場合にはステップSA12に移行し、無効にするブロックでない場合にはステップSA05へ移行する。
●[ステップSA12]テーパ加工用の座標系を、元の座標系に戻す。
●[ステップSA13]移動指令のブロックであるか否か判断し、移動指令のブロックであればステップSA14へ移行し、移動指令のブロックでない場合にはステップSA09へ移行する。
●[ステップSA14]移動指令をテーパ加工用の座標系により変換する。
●[ステップSA15]変換された移動指令によりテーブルまたはワイヤガイドを移動する。
以上で上記1)〜4)の課題は解決できるが、図15,図16で「G134W1」の指令で座標系変換機能を有効とし、テーパ加工用のX’Y’Z’の座標系が設けられ、ワイヤ電極は加工開始点でX’Y’平面に対して垂直になるように傾くため、まだ、5)上,下ガイドの移動可能範囲を越えてしまう可能性が残っている。
そこで、上,下ガイドの移動可能範囲を越えてしまう可能性がある弊害を解決できることを図23,図24を用いて説明する。
図23は、ワイヤ電極をテーブル面に対してほぼ垂直な状態で被加工物を加工できる本発明の実施形態2を説明する図である。被加工物3を回転して設置し、その回転角度は座標系傾斜角度で指令される。ここで、座標系変換機能を有効にすると、動作1のように加工開始点で被加工物3に対して垂直になるように傾くため、上,下ガイドの移動可能範囲を越えてしまう可能性がある。そこで、加工指令補正部では、変換された座標系における現在のワイヤ電極の角度と指令されるテーパ角度との角度差を演算し、演算された角度差に基づいてワイヤガイドを制御する。これにより、図23の動作2のようにワイヤ電極4はテーブル面に対してほぼ垂直な状態で移動できるので、上,下ガイドの移動可能範囲を越えてしまう弊害を解決できる。
図24は、例えば、図21に示される数値制御装置において実行される本発明の実施形態2に係るテーパ加工を行う処理を説明するフローチャートである。以下、図23を参照しながら、各ステップに従って説明する。なお、このフローチャートは、座標変換機能を有効とするブロックを含む加工プログラムを前提として記載している。
●[ステップSB01]被加工物の傾きを設定する。例えば、図20に示される手段によって被加工物の傾きを設定する。
●[ステップSB02]傾いた状態で設置された被加工物に対する垂直方向を計算する。
●[ステップSB03]ワイヤ電極の現在の傾きを記憶する。図23を参照すれば、ワイヤ電極の現在の傾き角度は指令されたテーパ角度と同じ値である。
●[ステップSB04]1ブロック読み込む。
●[ステップSB05]ワイヤ電極の傾き指令があるか否か判断し、ある場合にはステップSB06に移行し、ない場合にはステップSB07へ移行する。
●[ステップSB06]被加工物に垂直な方向を基準としてワイヤ電極の次の傾きを計算する。
●[ステップSB07]ワイヤ電極の次の傾きをワイヤ電極の現在の傾きとする。
●[ステップSB08]ブロック終了か否か判断し、終了でない場合にはステップSB04へ移行し、終了の場合には処理を終了する。
1 被加工物置き台
2 載置面
3 被加工物
4 ワイヤ電極

10 上ノズル
11 下ノズル
12 上ワイヤガイド
13 下ワイヤガイド

20 サインバー構造
22 割出軸
31 上面
32 底面

Claims (6)

  1. 直交する2軸からなる平面と座標系を有して被加工物を載置するテーブルを備え、テーパ加工を行う加工プログラムにしたがってワイヤ電極と該被加工物とを相対移動させながら放電加工を行うワイヤ放電加工機であって、
    前記被加工物を前記平面に対して傾けて載置する載置部と、
    傾けて載置された前記被加工物と前記平面とがなす傾斜角度を設定する傾斜角設定部と、
    前記傾斜角度に基づいて前記座標系を前記傾斜角度傾ける座標系変換部と、
    前記変換された座標系に基づいて前記加工プログラムによって指令される加工指令値を補正する加工指令値補正部と、
    を有することを特徴とするワイヤ放電加工機。
  2. 前記加工プログラムで指令されるテーパ角度が1つの場合、前記載置部で前記被加工物を傾斜させる角度を、前記加工プログラムで指令されるテーパ部分の角度または指令された角度の近傍とすることを特徴とする請求項1記載のワイヤ放電加工機。
  3. 前記加工プログラムで指令されるテーパ角度が複数の場合、前記載置部で前記被加工物を傾斜させる角度を、前記テーパ角度の最大値と最小値の中間の角度または該中間の角度の近傍とすることを特徴とする請求項1記載のワイヤ放電加工機。
  4. 前記載置部は角度が設定可能な割り出し盤、割り出し位置決め機能を持った回転軸、あるいは、サインバー構造を有する固定ジグのいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のワイヤ放電加工機。
  5. 前記被加工物の板厚毎に用意された加工条件を記憶する加工条件記憶部と、
    前記傾斜角度で前記被加工物の板厚を補正する板厚補正部と、
    前記板厚補正部で補正された板厚で加工条件を設定する加工条件設定部と、
    を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のワイヤ放電加工機。
  6. 前記加工指令補正部は、前記変換された座標系における現在のワイヤ電極の角度と指令されるテーパ角度との角度差を演算し、該演算された角度差に基づいてワイヤガイドを移動することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のワイヤ放電加工機。
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