JP2012252914A - 高分子電解質、およびその利用 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】主鎖がポリベンズイミダゾールおよび/またはポリイミドからなる疎水部オリゴマーと、スルホン酸基を有し主鎖が主に芳香環からなる親水部オリゴマーとからなる、高分子電解質。
【選択図】なし
Description
燃料電池の材料のなかで、重要な部材の一つが電解質である。その電解質からなる、燃料と酸化剤とを隔てる電解質膜としては、これまで様々なものが開発されているが、近年、特にスルホン酸基等のプロトン伝導性官能基を含有する高分子化合物から構成される高分子電解質の開発が盛んである。
また、本発明は、上記疎水部オリゴマーが、ポリベンズイミダゾールのみからなる、上記高分子電解質に関する。
また、本発明は、上記ポリベンズイミダゾールの構造が、下記一般式群(1)に記載の構造の少なくとも1つを繰り返し単位として含むことを特徴とする、上記高分子電解質に関する。
また、本発明は、上記親水部オリゴマーの構造が、下記一般式群(3)に記載の構造の少なくとも1つを繰り返し単位として含むことを特徴とする、上記高分子電解質に関する。
また、本発明は、上記Ar2が、下記式群(5)に記載の構造を有し、かつ、スルホン酸基を少なくとも1つ有する2価の芳香族基であることを特徴とする、上記高分子電解質に関する。
さらに、本発明は、上記高分子電解質を含むことを特徴とする、燃料電池用高分子電解質膜に関する。
さらに、本発明は、上記高分子電解質を含むことを特徴とする、燃料電池用電極形成用高分子電解質バインダーに関する。
さらに、本発明は、上記燃料電池用高分子電解質膜および/または上記燃料電池用電極形成用高分子電解質バインダーを含むことを特徴とする、固体高分子形燃料電池に関する。
また、この高分子電解質を、高分子電解質膜、電極形成用高分子電解質バインダーに用いることによって、高温においても燃料ガスの湿度によらず高い性能を持ち、機械特性に優れることから、長時間使用における信頼性の高い燃料電池を提供することができる。
本発明の高分子電解質は、主鎖がポリベンズイミダゾールおよび/またはポリイミドからなる疎水部オリゴマーと、スルホン酸基を有し主鎖が主に芳香環からなる親水部オリゴマーとからなるものである。
つまり、本発明の高分子電解質は、親水部オリゴマーと疎水部オリゴマーからなるブロック共重合体型高分子電解質である。上記のような親水部オリゴマーと疎水部オリゴマーからなるブロック共重合体型とすることにより、高分子電解質の高温低加湿下でのプロトン伝導性が向上する。
ここで「主鎖が主に芳香環からなる」とは、親水部オリゴマーにおける主鎖の連結基(エーテル基、チオエーテル基、スルホン基、ケトン基、スルフィド基等)以外の部分の分子量を100%とした場合、その70%以上が芳香環からなるということを意味する。
なお、上記一般式群(3)の繰り返し単位が複数回繰り返された場合、複数あるAr1は互いに同じであっても異なっても良い。
これら置換基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)、炭素数1〜6のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等)、フェニル基等が挙げられる。また、当該置換基を1個以上有することができる。
また、親水部オリゴマーは、側鎖を形成する芳香族基を持ち、かつ、この側鎖を形成する芳香族基にスルホン酸基を有すると、本発明の目的の一つである低加湿下における優れたプロトン伝導性をより発現しやすく、好ましい。
側鎖を形成する芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基等が挙げられる。
本発明における疎水部オリゴマーは、親水部との相分離を明確にして、高分子電解質の低加湿下でのプロトン伝導性を向上させ、また、高分子電解質の強度をより効果的に向上させるため、実質的にスルホン酸基を有さないことが好ましい。当該疎水部オリゴマーは、スルホン酸基が全く導入されていないことが好ましいが、親水部オリゴマーに対して相対的に疎水性であればよく、繰り返し単位あたりのスルホン酸基の数が親水部オリゴマーの1/10以下であれば良い。
つまり「実質的にスルホン酸基を有さない」とは、疎水部オリゴマーがスルホン酸基を全く有さないか、疎水部オリゴマーにおける繰り返し単位あたりのスルホン酸基の数が、親水部オリゴマーにおける繰り返し単位あたりのスルホン酸基の数の1/10以下であることを意味する。
ポリベンズイミダゾールとしては、主鎖にベンズイミダゾール基を有するものであれば特に限定されないが、具体的には、下記一般式群(1)に記載の構造の少なくとも1つを繰り返し単位として含むことが好ましい。
なお、上記一般式群(1)の繰り返し単位が複数回繰り返された場合、複数あるArは互いに同じであっても異なっても良い。
Arにおいて、式群(2)に記載の構造を有する2価の基は、置換基を有していてもよいが、当該置換基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)、炭素数1〜6のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等)、フェニル基等が挙げられる。また、当該置換基を1個以上有することができる。
上記各オリゴマー及び高分子電解質の分子量は、実施例に記載の測定方法により求めることができる。
当該高分子電解質のイオン交換容量は、実施例に記載の高分子電解質膜のイオン交換容量の測定方法と同様にして求めることができる。
また、meq./gは、ミリ当量/gを意味する。
まず、前述のモノマーを用いて、親水部オリゴマー前駆体(親水部オリゴマーとなりうるオリゴマー)、疎水部オリゴマーを調製する。これらを得るには、末端に水酸基等の求核性の置換基を有するモノマーと、末端にハロゲン化合物等の脱離基を有するモノマーを縮合する方法や、脱離基を有するモノマー中に触媒を加えて縮合させる方法等が挙げられる。
溶媒としては、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、スルホン系溶媒、スルホキシド系溶媒等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、1,3,5−トリメチルベンゼン等が挙げられる。
ハロゲン系溶媒としては、例えばジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等が挙げられる。
エーテル系溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等が挙げられる。
ケトン系溶媒としては、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
アミド系溶媒としては、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
スルホン系溶媒としては、例えばスルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン等が挙げられる。
スルホキシド系溶媒としては、例えばジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等が挙げられる。
これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
重合反応工程の反応時間は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜500時間、より好ましくは0.5〜300時間である。
親水部オリゴマーは、親水部オリゴマー前駆体とスルホン酸化剤を反応させることにより、合成することができる。
スルホン酸化剤としては、例えばクロロスルホン酸、無水硫酸、発煙硫酸、硫酸、アセチル硫酸等が挙げられ、クロロスルホン酸、発煙硫酸が適度な反応性を有しているために好ましい。
溶媒を用いる場合、溶媒としては、スルホン酸化剤に対して不活性なものであればよく、例えば、炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
炭化水素系溶媒としては、飽和脂肪族炭化水素が挙げられ、特に炭素数5〜15の直鎖状または分岐状の炭化水素が好ましく、溶解度の点から、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンがより好ましい。
ハロゲン化炭化水素としては、ハロゲン化飽和脂肪族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素等が挙げられる。
ハロゲン化飽和脂肪族炭化水素としては、例えば、モノクロロメタン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、モノクロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン等が挙げられ、取り扱いの容易さからジクロロメタンが好ましい。
ハロゲン化芳香族炭化水素としては、例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等が挙げられ、取り扱いの容易さからクロロベンゼンが好ましい。
親水部オリゴマー及び疎水部オリゴマーを化学結合させてブロック共重合体化させる方法としては、特に制限は無く、重合するモノマーの反応性によって適宜定める事ができる。重合法の詳細は、一般的な方法(「高分子の合成と反応(2)」p.249−255、(1991)共立出版株式会社)を適用することができる。具体的には、例えば、末端に水酸基等の求核性の置換基を有するオリゴマーを調製し、別途調製した末端にハロゲン化合物等の脱離基を有するオリゴマーを塩基存在下に縮合させることにより、ブロック共重合体化させる。あるいは、末端にハロゲン化合物を有する各オリゴマー同士を遷移金属存在下に縮合させることにより、ブロック共重合体化させることもできる。また、本発明の疎水部オリゴマーのひとつであるポリベンズイミダゾールの重合方法や、親水部オリゴマーとのブロック共重合体化については、従来公知の方法が適用しうるが、例えばJOURNAL OF POLYMER SCIENCE PART A: POLYMER CHEMISTRY DOI 10.1002/POLAに示される方法が簡便で参照しうる。
本発明の高分子電解質膜は、本発明の上記高分子電解質を含んでなるものである。即ち、本発明の高分子電解質膜は、その高分子電解質を含んだ状態で適正な方法で製膜して得られるものである。
当該高分子電解質膜としては、本発明の高分子電解質を単独で用いてもよいし、本発明の高分子電解質とその他の高分子電解質等を混合して用いてもよい。
プロトン伝導性の点から、本発明の高分子電解質膜においては、本発明の高分子電解質が、当該高分子電解質膜全体の70重量%以上を占める主成分であることが好ましい。
また、電解質膜を得た後に、分子配向等を制御するために二軸延伸等の処理を施したり、結晶化度や残存応力を制御するための熱処理を施しても構わない。
さらに、高分子電解質膜の機械強度を上げるために、各種フィラーを添加したり、ガラス不織布等の補強剤と、プレス、含浸等により複合化させることもできる。
また、製膜時に適当な化学的処理を施してもよい。化学的処理としては、例えば、電解質膜の強度を上げるための架橋、伝導性を上げるためのプロトン性化合物の添加、耐久性向上やイオン架橋のための微量の多価金属イオンの添加等が挙げられる。
いずれにしても、本発明の高分子電解質を用いて、従来公知の技術と組み合わせて製造される高分子電解質膜は、本発明の範疇である。
また、本発明の高分子電解質膜において、通常用いられる各種添加剤、例えば相溶性向上のための相溶化剤、樹脂劣化防止のための酸化防止剤、フィルムとしての成型加工における取り扱いを向上させるための帯電防止剤や滑剤等は、電解質膜としての加工や性能に影響を及ぼさない範囲で適宜用いることが可能である。
高分子電解質膜としてのイオン交換容量は、1.5〜4.0meq./gが好ましく、2.0〜4.0meq./gがより好ましい。イオン交換容量が1.5meq./gより小さいと、好ましいプロトン伝導性が発現しにくくなる傾向があり、4.0meq./gより大きいと、機械強度が低下し、十分な強度を有しにくくなる傾向がある。
当該高分子電解質膜のイオン交換容量は、実施例に記載の測定方法により求めることができる。
本発明の燃料電池用電極形成用高分子電解質バインダーは、上記高分子電解質を含むことを特徴とするものである。
また、本発明における燃料電池用電極は、本発明の上記高分子電解質を、電極形成用高分子電解質バインダーとして含んでなる電極である。燃料電池用電極は、一般に白金等の貴金属を含む触媒、導電性の触媒担持体、そして電極形成用高分子電解質バインダーである高分子電解質、その他撥水剤等の添加物からなる。
本発明の燃料電池用電極においては、その他材料や製法としては従来公知のものが使用できる。これらについては、後述の本発明の燃料電池において詳細に説明する。
本発明における燃料電池用膜−電極接合体(以下MEA(Menbrane Electrode Assembly)と示すことがある)は、本発明の上記高分子電解質を含んでなるものである。
MEAは、高分子電解質膜と少なくとも片側に配置された電極からなり、さらに拡散層と呼ばれる導電性多孔質体を合わせたものからなる。本発明のMEAは、MEA中の高分子電解質膜および/または電極中の電極形成用高分子電解質バインダーとして、本発明の高分子電解質を含むものである。その他材料や製法としては、従来公知のものが使用できる。これらについては、後述の本発明の燃料電池において詳細に説明する。
本発明の固体高分子形燃料電池は、上記燃料電池用高分子電解質膜および/または上記燃料電池用電極形成用高分子電解質バインダーを含むことを特徴とするものである。
つまり、本発明の燃料電池は、上記高分子電解質を含んでなる固体高分子形燃料電池である。このとき、高分子電解質は、電解質膜として、電極形成用高分子電解質バインダーとして、または、この両方として含まれていても良い。
本発明の上記高分子電解質を含んでなる燃料電池は、上述したプロトン伝導性や機械特性等の優れた性能を有する高分子電解質を備えているため、高い発電特性を有する。
触媒層2を形成するために、まず、高分子電解質の溶液または分散液に、金属担持触媒を分散させて、触媒層形成用の分散溶液を調合する。つまり、高分子電解質は、触媒のバインダーとして機能する。この分散溶液をポリテトラフルオロエチレン等の離型フィルム上にスプレーで塗布して、分散溶液中の溶媒を乾燥・除去し、離型フィルム上に所定の触媒層2を形成させる。この離型フィルム上に形成した触媒層2を、高分子電解質膜1の両面に配置し、所定の加熱・加圧条件下でホットプレスし、高分子電解質膜1と触媒層2を接合し、離型フィルムをはがすことによって、高分子電解質膜1の両面に触媒層2が形成されたMEAを作製できる。
担体としては、例えば、活性炭、カーボンブラック、ケッチェンブラック、バルカン、カーボンナノホーン、フラーレン、カーボンナノチューブ等の炭素材料が例示できる。
また、それらの触媒活性の促進や、反応副生物による被毒を抑制するための助触媒を添加しても構わない。助触媒としては、例えば、金、金属酸化物、カーボンアロイ等が挙げられる。
上記加熱条件としては、一般的に高分子電解質膜1や触媒層2に含まれる高分子電解質の熱劣化や熱分解温度以下であって、高分子電解質膜1または触媒層2に含まれる高分子電解質のガラス転移点や軟化点以上の温度であることが好ましい。
上記加圧条件としては、概ね0.1MPa以上20MPa以下であることが、高分子電解質膜1と触媒層2が充分に接触するとともに、使用材料の著しい変形に伴う特性低下がなく、好ましい。特にMEAが高分子電解質膜1と触媒層2とからのみ形成される場合は、拡散層3を触媒層2の外側に配置して特に接合することなく接触させるのみで使用しても構わない。
つまり、固体高分子形燃料電池10について例示した上記実施形態は、そのまま直接液体形燃料電池、直接メタノール形燃料電池についても適用可能といえる。
GPC測定装置:日本分光社製805UV
カラム:SHODEX KF−805L 1本
カラム温度:50℃
移動相溶媒:THF(LiBrを10mmol/dm3になるように添加)
溶媒流量:0.5mL/min
<親水部オリゴマーの作製>
ディーンスタークと窒素出入口を供えた100mLフラスコに、ビス(4−フルオロフェニル)スルホン4.53g(17.8mmol)、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン5.00g(14.3mmol)および炭酸カリウム3.95g(28.6mmol)を、脱水N,N−ジメチルアセトアミド30mLとトルエン15mLの混合溶媒に溶かした。この溶液を145℃で3時間、160℃でさらに3時間加熱することにより、重合反応を行った。反応後、混合物を緩やかに1Lの純水で析出、沈殿させた後、さらに純水で2回洗浄を行った。またさらに1Lのメタノールで2回洗浄を行い、60℃で16時間乾燥することにより、目的の親水部オリゴマー前駆体を得た。この親水部オリゴマー前駆体は白色の固形物であり、収率は約92%であった。
300mLの三口フラスコに、ジクロロメタン100mLを入れ、さらにクロロスルホン酸4.4mL(64.0mmol)を加えた。先の親水部オリゴマー前駆体2.00g(0.662mmol)をジクロロメタン60mLに溶かした溶液を、クロロスルホン酸/ジクロロメタン溶液の入った三口フラスコに、滴下漏斗にてゆっくりと滴下した。滴下後、室温にて24時間攪拌し、スルホン酸化反応を行った。この溶液を、冷やした純水100mLに緩やかに加えた後、析出物が得られるまで塩化ナトリウムを添加した。吸引濾過後、沈殿物をもう一度純水100mLに溶解させ、この混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液をpHが7になるまで加えることにより中和し、24時間攪拌を行った。得られた透明な溶液を濾過にて分離し、60℃で16時間乾燥することにより、親水部オリゴマーを得た。この親水部オリゴマーは黄色の固形物であり、収率は約86%であった。
ディーンスタークと窒素出入口を供えた100mLの三口丸底フラスコに、4−ヒドロキシベンゾイックアシッド0.120g(0.871mmol)、ポタシウムターシャリブトキサイド0.20g(1.74mmol)を、ジメチルスルホキシド10mLの溶媒に溶かした。これに、先の親水部オリゴマー2.000g(0.436mmol)を少量のジメチルスルホキシドに溶かした溶液を加えた。この混合物を120℃にて3時間加熱し、オリゴマーの末端反応を行った。この反応物を0.5M塩酸エタノール溶液に注ぎ込み、濾過を行うことにより、(末端カルボン酸化)親水部オリゴマーを得た。この親水部オリゴマーは白色の固形物であり、収率は約94%であった。
メカニカルスターラーと窒素出入口を供えた100mLの三口丸底フラスコに、ポリリン酸15gを入れ、80℃に加熱した。さらに4,4’−ビフェニルジカルボキシリックアシッド0.669g(2.76mmol)と3,3’−ジアミノベンジジン0.740g(3.45mmol)を加え、90℃に加熱、溶解した。この溶液を110℃で8時間、130℃で16時間、160℃で10時間、さらに190℃で15時間加熱することにより、疎水部オリゴマーの重合反応を行った。
これを90℃に冷却した後、先の(末端カルボン酸化)親水部オリゴマーを系中に添加し、110℃で8時間、130℃で16時間、160℃で10時間加熱することにより、ブロック共重合体化を行った。これにより得た粘性の液体を、1Lの純水に注ぎ込み、固形物を析出させ、濾過した。得られた固形物を1Mの水酸化ナトリウム水溶液中に添加し、24時間攪拌した。その後、純水で中性になるまで洗浄し、100℃で48時間乾燥することにより、目的のブロック共重合体(高分子電解質)を得た。図3に、その化学構造及びプロトンNMRチャートを示す。GPCによる分子量は、重量平均分子量295,000g/mol、数平均分子量44,000g/molであった。
ジメチルスルホキシドを溶媒として、ブロック共重合体(高分子電解質)5%溶液を作製した。溶液は均一で粘調な液体であった。この溶液をガラス基材上にキャストし、80℃で24時間、真空乾燥を行った。乾燥後、ガラス基材から膜をはがし、これを、充分量の1規定硫酸水溶液に24時間浸漬し、スルホン酸基を完全な酸型とした。その後、純水に1時間ずつ2回浸漬することにより、余分な酸を取り除き、紙ワイパーに緩やかに挟み、室温で放置することにより、高分子電解質膜を得た。図2に、当該高分子電解質膜の断面STEM写真を示す。これにより、数ナノ〜数十ナノの親水部と疎水部の相分離が確認できる(親水部が写真の黒い部分であり、疎水部が写真の白い部分である)。
<親水部オリゴマーの作製>
実施例1の<親水部オリゴマーの作製>と同様の方法で、(末端処理なしの)親水部オリゴマー、つまり親水部オリゴマーを得た。
<疎水部オリゴマーの作製>
メカニカルスターラーと窒素出入口を供えた100mLの三口丸底フラスコに、ポリリン酸15gを入れ、80℃に加熱した。さらに4,4’−ビフェニルジカルボキシリックアシッド0.669g(2.76mmol)と3,3’−ジアミノベンジジン0.740g(3.45mmol)を加え、90℃に加熱、溶解した。この溶液を190℃まで緩やかに加熱した後、90℃まで冷却することにより、疎水部オリゴマーの重合反応を行った。4−ヒドロキシベンゾイックアシッド0.382g(2.76mmol)をこの系中に添加し、緩やかに190℃まで加熱した。これにより得た粘性の液体を、1Lの純水に注ぎ込み、固形物を析出させ、濾過した。得られた固形物を1Mの水酸化ナトリウム水溶液中に添加し、24時間攪拌した。その後、純水で中性になるまで洗浄し、100℃で48時間乾燥することにより、目的の(ヒドロキシ末端)疎水部オリゴマーを得た。
メカニカルスターラーと窒素出入口を供えた100mLの三口丸底フラスコに、(末端処理なしの)親水部オリゴマー0.709g(0.223mmol)、(ヒドロキシ末端)疎水部オリゴマー0.500g(0.223mmol)、炭酸カリウム0.12g(0.894mmol)、炭酸カルシウム0.89g(8.94mmol)を、ジメチルスルホキシド10mLとトルエン5mLの混合溶媒に溶かした。この溶液を140℃で48時間加熱し、ブロック共重合体化を行った。この溶液を1Lの純水に注ぎ込み、固形物を析出させ、濾過した。得られた固形物を1Mの水酸化ナトリウム水溶液中に添加し、24時間攪拌し、その後、純水で中性になるまで洗浄し、100℃で48時間乾燥することにより、目的のブロック共重合体(高分子電解質)を得た。図4に、その化学構造及びプロトンNMRチャートを示す。GPCによる分子量は、重量平均分子量284,000g/mol、数平均分子量78,000g/molであった。
<製膜>
実施例1と同様の方法で製膜を行い、高分子電解質膜を得た。
<親水部オリゴマーの作製と末端化反応>
リービッヒ冷却管とディーンスタークトラップ、メカニカルスターラーを備え、窒素パージしている三口フラスコ中に、ビス(4−フルオロフェニル)スルホン(2.7g、10.5mmol)、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(4.0g、11.4mmol)、炭酸カリウム(3.2g、22.8mmol)を加え、さらに脱水N,N−ジメチルアセトアミド20mLと脱水トルエン10mLを加えた混合溶液を、140℃のオイルバス加熱条件下にて3時間攪拌した後、さらに165℃にて2時間攪拌した。ここに9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(0.4g、1.14mmol)を追加し、165℃にて1時間攪拌した。反応液を純水中に滴下し、生じた白色沈殿を濾取した。固体を温水とメタノールにて洗浄後、再度濾取し、60℃にて真空乾燥することにより、目的物の親水部用オリゴマーを白色固体として6.1g得た。
次に、リービッヒ冷却管とマグネチックスターラーを備え、窒素パージしている三口フラスコ中に、得られた親水部用オリゴマー(3g、1.15mmol)、デカフルオロビフェニル(1.9g、5.75mmol)、炭酸カリウム(0.32g、2.3mmol)を加えた。ここに脱水N,N−ジメチルアセトアミド30mlと脱水シクロヘキサン(5ml)を加えた後、この混合溶液を100℃のオイルバス加熱条件下にて12時間攪拌した。反応終了後、反応液を純水中に滴下し、白色沈殿を濾取した。固体を温水とメタノールにて洗浄後、再度濾取し、60℃にて真空乾燥することにより、目的物のデカフルオロビフェニル由来の末端基を有するオリゴマーを白色固体として4.7g得た。
最後に実施例1の<親水部オリゴマーの作製>と同様の方法でスルホン酸化反応を行い、親水部オリゴマーを得た。
リービッヒ冷却管とディーンスタークトラップ、メカニカルスターラーを備え、窒素パージしている三口フラスコ中に、ビス(4−フルオロフェニル)スルホン(4.8g、18.8mmol)、2,7−ジヒドロキシナフタレン(3.2g、20mmol)、炭酸カリウム(5.5g、40mmol)、脱水N,N−ジメチルアセトアミド40mlおよび脱水トルエン20mlを加えた。この溶液を140℃のオイルバス加熱条件下にて3時間攪拌した後、さらに165℃にて2時間攪拌した。ここに2,7−ジヒドロキシナフタレン(0.3g、2mmol)を追加し、165℃にて1時間攪拌した。反応液を純水中に滴下し、生じた白色沈殿を濾取した。固体を温水とメタノールにて洗浄後、再度濾取し、60℃にて真空乾燥することにより、目的物の疎水部オリゴマーを白色固体として7.0g得た。
<ブロック共重合体の作製>
実施例2の<ブロック共重合体の作製>と同様の方法で、ブロック共重合体(高分子電解質)を得た。
<製膜>
実施例1と同様の方法で製膜を行い、高分子電解質膜を得た。
(イオン交換容量の測定)
上記実施例および比較例で得られた高分子電解質膜(0.10mg)をジメチルスルホキシドに溶解させ、既知の方法でプロトンNMRの測定を行った。イオン交換容量は、親水部オリゴマーと疎水部オリゴマーから由来するNMRのピーク面積比を計算し、その計算結果とブロック長に基づいて求めた。なお、ブロック長は、予めそれぞれのオリゴマーをNMRで分析し、末端の割合から計算すること等により求めた。
各試験試料(高分子電解質膜)を、10×40mmの大きさに裁断し、恒温恒湿オーブン中で4端子法により交流インピーダンスを測定した。測定は、温度は80℃、湿度は40、80%RHの各条件で2時間放置、電流値として0.005mAの定電流、掃引周波数は10〜20000Hzで行った。得られたインピーダンスと膜端子間距離(10mm)と膜厚(ダイヤルゲージで測定、約40μm)からプロトン伝導度を算出した。
以上から、本発明の高分子電解質は、優れたプロトン伝導性と機械強度を兼ね備え、固体高分子形燃料電池の材料として優れていることが分かった。
2:触媒層
3:拡散層
4:セパレーター
5:流路
10:固体高分子形燃料電池
Claims (11)
- 主鎖がポリベンズイミダゾールおよび/またはポリイミドからなる疎水部オリゴマーと、スルホン酸基を有し主鎖が主に芳香環からなる親水部オリゴマーとからなる、高分子電解質。
- 上記疎水部オリゴマーが、ポリベンズイミダゾールのみからなる、請求項1に記載の高分子電解質。
- 上記ポリベンズイミダゾールの構造が、下記一般式群(1)に記載の構造の少なくとも1つを繰り返し単位として含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の高分子電解質。
- 上記親水部オリゴマーの構造が、主鎖にイミダゾール構造およびイミド構造を含まないことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の高分子電解質。
- 上記親水部オリゴマーの構造が、下記一般式群(3)に記載の構造の少なくとも1つを繰り返し単位として含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の高分子電解質。
- 上記親水部オリゴマーが、側鎖を形成する芳香族基を有し、かつ、少なくとも側鎖を形成する芳香族基にスルホン酸基を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の高分子電解質。
- 上記Ar2が、下記式群(5)に記載の構造を有し、かつ、スルホン酸基を少なくとも1つ有する2価の芳香族基であることを特徴とする、請求項5に記載の高分子電解質。
- イオン交換容量が、1.5〜4.0meq./gであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の高分子電解質。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の高分子電解質を含むことを特徴とする、燃料電池用高分子電解質膜。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の高分子電解質を含むことを特徴とする、燃料電池用電極形成用高分子電解質バインダー。
- 請求項9に記載の燃料電池用高分子電解質膜および/または請求項10に記載の燃料電池用電極形成用高分子電解質バインダーを含むことを特徴とする、固体高分子形燃料電池。
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