JP5892643B2 - 高分子電解質膜、およびその利用 - Google Patents
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Description
燃料電池の材料のなかで、重要な部材の一つが電解質である。その電解質からなる、燃料と酸化剤とを隔てる電解質膜としては、これまで様々なものが開発されているが、近年、特にスルホン酸基等のプロトン伝導性官能基を含有する高分子化合物から構成される高分子電解質膜の開発が盛んである。
また、本発明は、上記スルホン酸基を有し主鎖が主に芳香環からなる親水部オリゴマー部分のみのイオン交換容量が、4.0meq./g以上であることを特徴とする、上記高分子電解質膜に関する。
また、本発明は、上記親水部オリゴマーの構造が、下記一般式群(1)に記載の構造の少なくとも1つを繰り返し単位として含むことを特徴とする、上記高分子電解質膜に関する。
また、本発明は、イオン交換容量が、1.5〜3.5meq./gであることを特徴とする、上記高分子電解質膜に関する。
また、本発明は、上記ガラス不織布が、有機バインダーおよび/または無機バインダーによってシート状に形成されていることを特徴とする、上記高分子電解質膜に関する。
また、本発明は、上記ガラス不織布が、厚さ50μm以下(圧力20kPaで測定)であることを特徴とする、上記高分子電解質膜に関する。
また、本発明は、上記高分子電解質膜を含むことを特徴とする、固体高分子形燃料電池に関する。
また、この高分子電解質膜を用いることによって、燃料ガスの湿度によらず高い性能を持ち、機械強度に優れることから、長時間使用における信頼性の高い燃料電池を提供することができる。
本発明に用いる高分子電解質、つまりガラス不織布と複合する高分子電解質は、実質的にスルホン酸基を有さない疎水部オリゴマーと、スルホン酸基を有し主鎖が主に芳香環からなる親水部オリゴマーとを、主鎖として有してなるものである。
当該高分子電解質は、ブロック共重合体型である。上記のような親水部オリゴマーと疎水部オリゴマーからなるブロック共重合体型とすることにより、高分子電解質の低加湿下でのプロトン伝導性が向上する。
ここで「主鎖が主に芳香環からなる」とは、親水部オリゴマーにおける主鎖の連結基(エーテル基、チオエーテル基、スルホン基、ケトン基、スルフィド基等)以外の部分の分子量を100%とした場合、その70%以上が芳香環からなるということを意味する。
なお、上記一般式群(1)の繰り返し単位が複数回繰り返された場合、複数あるAr1は互いに同じであっても異なっても良い。
これら置換基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)、炭素数1〜6のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等)、フェニル基等が挙げられる。また、当該置換基を1個以上有することができる。
親水部オリゴマーのIECは、NMRの分析による計算や、ブロック電解質のIEC(従来公知の方法、例えば滴定等により容易に求められる)を、親水部オリゴマーの重量割合で除すること等により求めることができるが、本発明においては後者の方法により求めるものである。つまり、親水部オリゴマーのIECは、実施例に記載の高分子電解質膜のIECの測定方法と同様にして求めた高分子電解質のIECを、親水部オリゴマーの重量割合で除することにより求める。
また、meq./gは、ミリ当量/gを意味する。
当該疎水部オリゴマーは、スルホン酸基が全く導入されていないことが好ましいが、親水部オリゴマーに対して相対的に疎水性であればよく、繰り返し単位あたりのスルホン酸基の数が親水部オリゴマーの1/10以下であれば良い。
つまり「実質的にスルホン酸基を有さない」とは、疎水部オリゴマーがスルホン酸基を全く有さないか、疎水部オリゴマーにおける繰り返し単位あたりのスルホン酸基の数が、親水部オリゴマーにおける繰り返し単位あたりのスルホン酸基の数の1/10以下であることを意味する。
ここで「主鎖が主に芳香環からなる」とは、疎水部オリゴマーにおける主鎖の連結基(エーテル基、スルホン基、ケトン基、スルフィド基等)以外の部分の分子量を100%とした場合、その70%以上が芳香環からなるということを意味する。
このような疎水部オリゴマーとしては、下記一般式群(4)に記載の構造の少なくとも1つを繰り返し単位として含むことが好ましい。
なお、上記一般式群(4)の繰り返し単位が複数回繰り返された場合、複数あるArは互いに同じであっても異なっても良い。
Arの2価の芳香族基としては、例えば、下式(5)で表される基等が好ましく挙げられる。
当該置換基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)、炭素数1〜6のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等)、フェニル基、シアノ基等が挙げられる。また、当該置換基を1個以上有することができる。
上記各オリゴマー及び高分子電解質の分子量は、実施例に記載の測定方法により求めることができる。
当該高分子電解質のイオン交換容量は、実施例に記載の高分子電解質膜のイオン交換容量の測定方法と同様にして求めることができる。
まず、前述のモノマーを用いて、親水部オリゴマーとなりうるオリゴマー(スルホン酸化可能な部位を含むオリゴマー)と、疎水部オリゴマーを調製する。これらを得るには、末端に水酸基等の求核性の置換基を有するモノマーと、末端にハロゲン化合物等の脱離基を有するモノマーを縮合する方法や、脱離基を有するモノマー中に触媒を加えて縮合させる方法等が挙げられる。
溶媒としては、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、スルホン系溶媒、スルホキシド系溶媒等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、1,3,5−トリメチルベンゼン等が挙げられる。
ハロゲン系溶媒としては、例えばジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等が挙げられる。
エーテル系溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等が挙げられる。
ケトン系溶媒としては、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
アミド系溶媒としては、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
スルホン系溶媒としては、例えばスルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン等が挙げられる。
スルホキシド系溶媒としては、例えばジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等が挙げられる。
これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
重合反応工程の反応時間は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜500時間、より好ましくは0.5〜300時間である。
スルホン酸化剤としては、例えばクロロスルホン酸、無水硫酸、発煙硫酸、硫酸、アセチル硫酸等が挙げられ、クロロスルホン酸、発煙硫酸が適度な反応性を有しているために好ましい。
溶媒を用いる場合、溶媒としては、スルホン酸化剤に対して不活性なものであればよく、例えば、炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
炭化水素系溶媒としては、飽和脂肪族炭化水素が挙げられ、特に炭素数5〜15の直鎖状または分岐状の炭化水素が好ましく、溶解度の点から、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンがより好ましい。
ハロゲン化炭化水素としては、ハロゲン化飽和脂肪族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素等が挙げられる。
ハロゲン化飽和脂肪族炭化水素としては、例えば、モノクロロメタン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、モノクロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン等が挙げられ、取り扱いの容易さからジクロロメタンが好ましい。
ハロゲン化芳香族炭化水素としては、例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等が挙げられ、取り扱いの容易さからクロロベンゼンが好ましい。
本発明におけるガラス不織布は、特に限定されず公知のものを適用しうる。ガラス不織布とは、ガラス繊維を不規則に織り込みシート状に加工したものである。
当該ガラス不織布を用いることにより、含水時の寸法変化を抑え、機械強度に優れた高分子電解質膜を得ることができる。
当該ガラス不織布は、複合化後の高分子電解質膜のプロトン伝導性を阻害しない点から、繊維径が10μm以下であることが好ましく、7μm以下がより好ましい。また、繊維径の下限は、強度の点から、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。
各繊維の繊維径は、通常ある程度のバラツキがあるが、本発明でいう繊維径としては、平均値を用いる。10μmより繊維径が太いと、高分子電解質の複合化において、なじみにくく、均質な膜となりにくい傾向がある。
ガラス不織布の繊維径は、光学顕微鏡による観察により測定することができる。より具体的には、ガラス不織布中の任意の約10本の繊維径を上記のようにして測定し、その平均値をガラス不織布の繊維径とする。
ここで、Cガラスやアルカリガラスといわれるガラスは、一般にアルカリ含有量が0.8〜20%である組成を有するガラスであり、耐酸性に優れる。
当該ガラス不織布は、繊維径10μm以下の耐酸性ガラスからなることが好ましい。
バインダーとしては、高分子、樹脂、有機繊維等の有機物、シリカ等の無機物等が挙げられる。
ガラス不織布の厚さは、ガラス不織布全体に均等な圧力(20kPa)を加え、ダイヤルゲージを用いて測定することができる。より具体的には、ガラス不織布の任意の約10箇所の厚さを上記のようにして測定し、その平均値をガラス不織布の厚さとする。
ガラス不織布の空隙率は、ガラス不織布の体積と重量から比重を算出し、これをガラスの真比重で除することにより算出することができる。
本発明の高分子電解質膜は、上記高分子電解質とガラス不織布が複合されてなるものである。つまり、本発明の高分子電解質膜は、実質的にスルホン酸基を有さない疎水部オリゴマーと、スルホン酸基を有し主鎖が主に芳香環からなる親水部オリゴマーとを、主鎖として有してなる高分子電解質と、ガラス不織布が複合されてなるものである。
なお、高分子電解質溶液とする場合に用いられる溶媒としては、例えばジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。溶媒の乾燥温度は、好ましくは10〜200℃、より好ましくは40〜150℃である。乾燥時間は、枚葉で乾燥する場合は、好ましくは10分間〜24時間、より好ましくは1〜10時間である。連続で乾燥する場合は、乾燥温度を比較的高めに設定し、20秒間〜10分間が好ましい。
その他、上記特許文献1に示されるように、高分子電解質とガラス不織布を加熱圧着する方法;溶媒を含んだ半凝固状態の高分子電解質膜2枚でガラス不織布を挟み込み、プレス、乾燥による方法等も適用しうる。
上記のようにして、高分子電解質とガラス不織布が複合されてなる、本発明の高分子電解質膜を得ることができる。
また、本発明の高分子電解質膜は、上記高分子電解質とガラス不織布以外の添加物を含んでいても良い。
プロトン伝導性の点から、本発明の高分子電解質膜においては、本発明の高分子電解質が、当該高分子電解質膜全体の70重量%以上を占める主成分であることが好ましい。
さらに、製膜時に適当な化学的処理を施してもよい。化学的処理としては、例えば、電解質膜の強度を上げるための架橋、伝導性を上げるためのプロトン性化合物の添加、耐久性向上やイオン架橋のための微量の多価金属イオンの添加等が挙げられる。
いずれにしても、本発明における高分子電解質を用いて、従来公知の技術と組み合わせて製造される高分子電解質膜は、本発明の範疇である。
また、本発明の高分子電解質膜において、通常用いられる各種添加剤、樹脂劣化防止のための酸化防止剤、フィルムとしての成型加工における取り扱いを向上させるための帯電防止剤や滑剤等は、電解質膜としての加工や性能に影響を及ぼさない範囲で適宜用いることが可能である。
これらを考慮すると、高分子電解質膜の厚さは、5μm以上300μm以下が好ましく、10μm以上100μm以下がより好ましく、また、燃料電池として出力を重視する場合等は10μm以上50μm以下が特に好ましい。高分子電解質膜の厚さが5μm以上300μm以下であれば、製造が容易であり、膜抵抗と機械強度のバランスが取れており、燃料電池材料として加工する際のハンドリング性にも優れる。
当該高分子電解質膜の厚さは、実施例に記載の測定方法により求めることができる。
高分子電解質膜としてのイオン交換容量は、1.5〜3.5meq./gが好ましく、1.7〜3.0meq./gがより好ましい。イオン交換容量が1.5meq./gより小さいと、好ましいプロトン伝導性が発現しにくくなる傾向があり、3.5meq./gより大きいと、機械強度が低下し、十分な強度を有しにくくなる傾向がある。
当該高分子電解質膜のイオン交換容量は、実施例に記載の測定方法により求めることができる。
本発明における燃料電池用膜−電極接合体(以下MEA(Membrane Electrode Assembly)と示すことがある)は、本発明の上記高分子電解質膜を含んでなるものである。
MEAは、高分子電解質膜と少なくとも片側に配置された電極からなり、さらに拡散層と呼ばれる導電性多孔質体を合わせたものからなる。本発明のMEAは、MEA中の高分子電解質膜として、本発明の高分子電解質膜を含むものである。その他材料や製法としては、従来公知のものが使用できる。これらについては、後述の本発明の燃料電池にて詳細に説明する。
本発明の固体高分子形燃料電池は、上記高分子電解質膜を含むことを特徴とするものである。
つまり、本発明の燃料電池は、本発明の上記高分子電解質膜を含んでなる燃料電池である。本発明の高分子電解質膜を含んでなる燃料電池は、上述したプロトン伝導性や機械特性等の優れた性能を有する高分子電解質を備えているため、高い発電特性を有する。
触媒層2を形成するために、まず、高分子電解質の溶液または分散液に、金属担持触媒を分散させて、触媒層形成用の分散溶液を調合する。つまり、高分子電解質は、触媒のバインダーとして機能する。この分散溶液をポリテトラフルオロエチレン等の離型フィルム上にスプレーで塗布して、分散溶液中の溶媒を乾燥・除去し、離型フィルム上に所定の触媒層2を形成させる。この離型フィルム上に形成した触媒層2を、高分子電解質膜1の両面に配置し、所定の加熱・加圧条件下でホットプレスし、高分子電解質膜1と触媒層2を接合し、離型フィルムをはがすことによって、高分子電解質膜1の両面に触媒層2が形成されたMEAを作製できる。
担体としては、例えば、活性炭、カーボンブラック、ケッチェンブラック、バルカン、カーボンナノホーン、フラーレン、カーボンナノチューブ等の炭素材料が例示できる。
また、それらの触媒活性の促進や、反応副生物による被毒を抑制するための助触媒を添加しても構わない。助触媒としては、例えば、金、金属酸化物、カーボンアロイ等が挙げられる。
上記加熱条件としては、一般的に高分子電解質膜1や触媒層2に含まれる高分子電解質の熱劣化や熱分解温度以下であって、高分子電解質膜1または触媒層2に含まれる高分子電解質のガラス転移点や軟化点以上の温度であることが好ましい。
上記加圧条件としては、概ね0.1MPa以上20MPa以下であることが、高分子電解質膜1と触媒層2が充分に接触するとともに、使用材料の著しい変形に伴う特性低下がなく、好ましい。特にMEAが高分子電解質膜1と触媒層2とからのみ形成される場合は、拡散層3を触媒層2の外側に配置して特に接合することなく接触させるのみで使用しても構わない。
つまり、固体高分子形燃料電池10について例示した上記実施形態は、そのまま直接液体形燃料電池、直接メタノール形燃料電池についても適用可能といえる。
GPC測定装置:日本分光社製805UV
カラム:SHODEX KF−805L 1本
カラム温度:50℃
移動相溶媒:THF(LiBrを10mmol/dm3になるように添加)
溶媒流量:0.5mL/min
また、以下の実施例および比較例で得られた高分子電解質膜の厚さは、ダイヤルゲージを用いて測定した(高分子電解質膜の任意の約10箇所の厚さをダイヤルゲージを用いて測定し、その平均値を高分子電解質膜の厚さとした)。
<高分子電解質の作製>
窒素導入口、還流管を付した100mLの三つ口フラスコに、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(4.00g、11.42mmol、東京化成工業社製)と、ビス(4−フルオロフェニル)スルホン(2.58g、10.15mmol、東京化成工業社製)と、炭酸カリウム(3.16g、22.83mmol、関東化学社製)と、脱水N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc、20mL、関東化学社製)と、脱水トルエン(10mL、関東化学社製)とを加えた。三つ口フラスコにDean−Starkトラップを設置し、この混合物を窒素気流下で攪拌して、透明な均一溶液を得た。この溶液を140℃で3時間加熱した後、Dean−Starkトラップを除去し、165℃で12時間加熱した。反応終了後、DMAc(20mL)を加えてから常温まで冷却し、1000mLの純水中に反応溶液をゆっくりと滴下した。得られた沈殿物を吸引ろ過によって回収し、80℃の純水で3時間洗浄した後、メタノールで洗浄し、60℃で15時間真空乾燥することによって、スルホン酸化可能な部位を含むオリゴマーを白色繊維状にて得た。
ここに、先に得たスルホン酸化可能な部位を含むオリゴマー(1.20g)を添加した後、165℃で更に3時間加熱した。反応終了後、DMAc(20mL)を加えてから常温まで冷却し、塩酸水溶液(1000mL、10mLの濃塩酸/1000mL純水)中に反応溶液をゆっくりと滴下した。この作業をもう一度繰り返し、メタノールで洗浄した後に、60℃で15時間真空乾燥することによって、スルホン酸化可能な構造を有する高分子化合物を得た。
また、この高分子電解質のIECは1.80meq./gであり、親水部オリゴマーのみのIECは約6.00meq./gと算出された。
上記高分子電解質を溶質とし、ジメチルアセトアミドを溶媒として20重量%の溶液を作製した。この溶液に、PETフィルムにて周りを固定したガラス不織布(日本板硝子社製TGP003:空隙率約90%、材質耐酸性ガラス、厚さ約30μm、繊維径<10μm)をディップし、緩やかに引き上げながらクリアランス約100μmとしたガラス棒の間を通して過剰な溶液を取り除いた。この高分子電解質溶液が含浸されたガラス不織布を、60℃の通風オーブンで6時間乾燥した。その後、この複合高分子電解質膜を、十分量の1N硫酸に1時間、純水に1時間×3回それぞれ含浸することにより洗浄し、ふたたび60℃の通風オーブンで6時間乾燥した。洗浄済みの複合高分子電解質膜を、80℃、1.47MPa、5分間の条件で緩やかに熱プレスすることにより平滑化し、高分子電解質膜を得た。当該高分子電解質膜の外観は均一で、厚さは35μmであった。この高分子電解質膜の断面SEM像を図2に示す。これより、ガラス不織布(膜中央に繊維状に存在)と高分子電解質が隙間なく複合されていることが分かる。
<高分子電解質膜の作製>
ガラス不織布として、日本板硝子社製TGP005F(空隙率約90%、材質耐酸性ガラス、厚さ約50μm、繊維径<10μm)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で高分子電解質膜を作製した。高分子電解質膜の外観は均一で、厚さは48μmであった。なお、厚さ約50μmのガラス不織布を用いて、厚さ48μmの高分子電解質膜が得られたのは、複合化により、ガラス不織布が膜厚方向に圧縮された状態で存在しているためであると考えられる。
<疎水部オリゴマーの作製>
還流管とDean−Stark管を取り付けた100mlナスフラスコに、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン6.31g、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン4.28g、炭酸カリウム3.59g、ジメチルアセトアミド20mlおよびトルエン5mlを、窒素雰囲気下で混合し、180℃に加熱した。トルエンを還流させて生成した水を除き、40時間後にさらに4,4’−ジクロロジフェニルスルホンを1.0g追加した。6時間後に室温まで冷却後、反応溶液を水に加え、析出した固体をミキサーで細かく粉砕して、ろ過をした後、80℃で12時間乾燥した。さらに固体をジクロロメタンに溶解し、メタノールに加え、析出した固体をろ過後、80℃で12時間乾燥し、ポリマー(以下P2と呼ぶ)を得た。得られたP2の分子量はMn=6000g/molであった。
4,4’−ジクロロベンゾフェノン27gと30%発煙硫酸134gを、窒素雰囲気下で混合し、攪拌しながら130℃に加熱した。20時間後に室温まで冷却した後、反応溶液を氷冷した水に加えた。水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和した後、析出した白色固体をろ過により回収した。残渣を100℃で減圧乾燥し、白色固体(以下S1と呼ぶ)を得た。
還流管とDean−Stark管を取り付けた100mlナスフラスコに、P2(1.0g)と、S1(1.5g)と、ジメチルスルホキシド30mlと、トルエン15mlを、窒素雰囲気下で混合し、180℃に加熱した。トルエンを還流させてフラスコ内の水分を除き、引き続きトルエンを除いてから冷却した。60℃でビピリジン1.5gとビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル2.43gを加え、メカニカルスターラーで攪拌した。5分後80℃に昇温し、2時間後室温まで冷却した。反応溶液をDMSO10mlで希釈し、1N塩酸水溶液に加え、析出した固体をろ過により回収した。固体を80℃で減圧乾燥し、固体を細かく粉砕後、6N塩酸水溶液中で6時間攪拌した。水洗しながらろ過をして、80℃で減圧乾燥し、下式(7)に示す高分子電解質を得た(式中、mとpはそれぞれの平均繰り返し単位数を表し、この実施例においてはp=6.8、m=10.0である)。この高分子電解質の分子量はMn90,000g/mol、IECは2.41meq./gであった。
高分子電解質として実施例3で得られたものを用いた以外は、実施例1と同様の方法で高分子電解質膜を作製した。高分子電解質膜の外観は均一で、厚さは36μmであった。
実施例1で作製した高分子電解質溶液を用いて、ガラス不織布と複合せずに、キャスト法にて高分子電解質膜を作製した。上記高分子電解質を溶質とし、ジメチルアセトアミドを溶媒として20重量%の溶液を作製した。これをガラス基板上に、クリアランス250μmのドクターブレードを用いてキャストした。45℃にセットしたホットプレート上で約2時間、さらに60℃で約2時間処理することにより、溶媒の大半を気化させた。高分子電解質膜を剥離し、十分量の1N硫酸に1時間、純水に1時間×3回それぞれ含浸することにより洗浄し、60℃の通風オーブンで6時間乾燥した。これにより高分子電解質膜を得た。当該高分子電解質膜の厚さは約30μmであった。
実施例3で作製した高分子電解質を用いて、比較例1と同様の方法で、ガラス不織布と複合させることなく、高分子電解質膜を作製した。当該高分子電解質膜の厚さは35μmであった。
(イオン交換容量の測定)
高分子電解質膜の各試験試料(約50mg、十分に乾燥)を25℃での塩化ナトリウム飽和水溶液(20mL)に浸漬し、ウォーターバス中で60℃、3時間イオン交換反応させた。25℃まで冷却し、次いで高分子電解質膜をイオン交換水で充分に洗浄し、塩化ナトリウム飽和水溶液および洗浄水をすべて回収した。この回収した溶液に、指示薬としてフェノールフタレイン溶液を加え、0.2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定し、乾燥状態の重量と計算することにより、イオン交換容量を算出した。
高分子電解質膜の各試験試料を10×40mmの大きさに裁断し、恒温恒湿オーブン中で4端子法により交流インピーダンスを測定した。測定は、温度は80℃、湿度は30%RHの各条件で2時間放置、電流値として0.005mAの定電流、掃引周波数は10〜20000Hzで行った。得られたインピーダンスと膜端子間距離(10mm)と膜厚(ダイヤルゲージで測定)からプロトン伝導度を算出した。
約3cm角の正方形にカットした高分子電解質膜のサンプルを準備し、これを純水に室温で6時間浸漬した際の平面方向の長さと、その後100℃で2時間の真空乾燥を行って絶乾とした際の平面方向の長さを測定し、純水での膨潤による長さの変化割合を計算した。4辺のそれぞれを計算し、その平均値を結果とした。
以下の条件で起動/停止を含めたOCV(開回路電圧)発電試験を行い、膜割れが原因である急激な電圧低下までの時間を測定した。
発電セル:エレクトロケム社製,電極面積4.84cm2、セル温度:80℃、燃料,空気湿度:20%RH、アノードガス:水素84ml/min、カソードガス:合成空気400ml/min、触媒:田中貴金属社製TEC10F50E,白金担持量0.5mg/cm2、イオノマー:ナフィオンDE−521CS、ガス拡散層:SGL25BC、起動/停止時間:約120時間/約50時間、停止時処理:両極に窒素を約30分流した後に流路遮断
実施例3と比較例2との比較から、他の実施例と同様、イオン交換容量およびプロトン伝導度の低下がわずかに見られたが、平面方向の膨潤が大きく低減(約1/2に低減)されていることが分かり、ガラス不織布による補強の効果が見られた。
2:触媒層
3:拡散層
4:セパレーター
5:流路
10:固体高分子形燃料電池
Claims (9)
- 実質的にスルホン酸基を有さない疎水部オリゴマーと、スルホン酸基を有し主鎖が主に芳香環からなる親水部オリゴマーとを、主鎖として有してなる高分子電解質と、ガラス不織布が複合されてなり、
上記親水部オリゴマーの構造が、下記一般式群(1)に記載の構造の少なくとも1つを繰り返し単位として含むことを特徴とする、高分子電解質膜。
- 上記スルホン酸基を有し主鎖が主に芳香環からなる親水部オリゴマー部分のみのイオン交換容量が、4.0meq./g以上であることを特徴とする、請求項1に記載の高分子電解質膜。
- 疎水部オリゴマーと、スルホン酸基を有し主鎖が主に芳香環からなる親水部オリゴマーとが、炭素−炭素の直接結合で連結されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の高分子電解質膜。
- 上記疎水部オリゴマーの構造が、下記一般式群(4)に記載の構造の少なくとも1つを繰り返し単位として含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の高分子電解質膜。
- イオン交換容量が、1.5〜3.5meq./gであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の高分子電解質膜。
- 上記ガラス不織布が、繊維径10μm以下の耐酸性ガラスからなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の高分子電解質膜。
- 上記ガラス不織布が、有機バインダーおよび/または無機バインダーによってシート状に形成されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の高分子電解質膜。
- 上記ガラス不織布が、厚さ50μm以下(圧力20kPaで測定)であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の高分子電解質膜。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の高分子電解質膜を含むことを特徴とする、固体高分子形燃料電池。
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