JP5892643B2 - 高分子電解質膜、およびその利用 - Google Patents

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Description

本発明は、固体高分子形燃料電池に用いられる高分子電解質膜、またそれによって構成される燃料電池に関するものである。
近年、地球温暖化等の環境問題の観点から、燃料電池が注目されている。燃料電池は、水素ガスやメタノール等の燃料と酸素等の酸化剤を、それぞれ電解質で隔てられた電極に供給し、一方で燃料の酸化を、他方で酸化剤の還元を行い、直接発電するものである。
燃料電池の材料のなかで、重要な部材の一つが電解質である。その電解質からなる、燃料と酸化剤とを隔てる電解質膜としては、これまで様々なものが開発されているが、近年、特にスルホン酸基等のプロトン伝導性官能基を含有する高分子化合物から構成される高分子電解質膜の開発が盛んである。
このような背景から、スルホン酸基等のプロトン伝導基の導入範囲を広く調整できる炭化水素系高分子電解質膜の開発が期待されるようになってきた。炭化水素系高分子電解質膜は、化学構造の多様性を持たせやすく、他の材料との複合化、架橋の導入等が比較的容易である等の特性を有している。しかしながら、一般に炭化水素系高分子電解質膜は、含水率が大きいため、乾燥時に比べて含水時の寸法変化が大きく、また破断伸びが小さいため、実際に燃料電池として使用の際に破損しやすいといった問題があった。これを改善するために、膜を多孔質基材で補強することが提案されている。
特許文献1には、フッ素系、炭化水素系等の様々な高分子電解質を、ガラスクロス等の無機繊維と加熱圧着によって複合化する方法が示されている。しかしながら、これで例示されている高分子電解質では、複合化によって強度の改善はできるものの、低加湿下でのプロトン伝導度低下が課題である。特許文献2には、ガラス繊維等の強化材を有する高分子電解質膜が示されている。しかしながら、これで例示される高分子電解質は、アルカリ性ポリマー、酸性ポリマーであり、やはり複合による低加湿下でのプロトン伝導度低下が課題である。
特開2006−128014号公報 特表2009−545841号公報
本発明は、固体高分子形燃料電池の優れた高分子電解質膜を提供することを目的とする。つまり、化学的、熱的に安定なガラス不織布を、特定の構造を持つ高分子電解質と複合化することにより、含水時の寸法変化を抑え、機械強度に優れ、かつ、低加湿下においても高いプロトン伝導性を有する高分子電解質膜を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、実質的にスルホン酸基を有さない疎水部オリゴマーと、スルホン酸基を有し主鎖が主に芳香環からなる親水部オリゴマーとを、主鎖として有してなる高分子電解質と、ガラス不織布が複合されてなることを特徴とする、高分子電解質膜とすることにより、含水時の寸法変化を抑え、機械強度に優れ、かつ、低加湿下においても高いプロトン伝導性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、実質的にスルホン酸基を有さない疎水部オリゴマーと、スルホン酸基を有し主鎖が主に芳香環からなる親水部オリゴマーとを、主鎖として有してなる高分子電解質と、ガラス不織布が複合されてなることを特徴とする、高分子電解質膜に関する。
また、本発明は、上記スルホン酸基を有し主鎖が主に芳香環からなる親水部オリゴマー部分のみのイオン交換容量が、4.0meq./g以上であることを特徴とする、上記高分子電解質膜に関する。
また、本発明は、上記親水部オリゴマーの構造が、下記一般式群(1)に記載の構造の少なくとも1つを繰り返し単位として含むことを特徴とする、上記高分子電解質膜に関する。
(式中、Arは、下記式群(2)に記載の構造を有する2価の基を表し、当該2価の基は置換基を有していてもよく、複数あるArは互いに同じであっても異なっても良い。Arは、スルホン酸基を少なくとも1つ有する2価の芳香族基、nは1〜4の整数、Xは−O−または−S−、Yは−SO−または−CO−を表す。)
また、本発明は、上記Arが、下記式群(3)に記載の構造を有し、かつ、スルホン酸基を少なくとも1つ有する2価の芳香族基であることを特徴とする、上記高分子電解質膜に関する。
また、本発明は、上記疎水部オリゴマーの構造が、下記一般式群(4)に記載の構造の少なくとも1つを繰り返し単位として含むことを特徴とする、上記高分子電解質膜に関する。
(式中、Arは、2価の芳香族基を表す。)
また、本発明は、イオン交換容量が、1.5〜3.5meq./gであることを特徴とする、上記高分子電解質膜に関する。
また、本発明は、上記ガラス不織布が、繊維径10μm以下の耐酸性ガラスからなることを特徴とする、上記高分子電解質膜に関する。
また、本発明は、上記ガラス不織布が、有機バインダーおよび/または無機バインダーによってシート状に形成されていることを特徴とする、上記高分子電解質膜に関する。
また、本発明は、上記ガラス不織布が、厚さ50μm以下(圧力20kPaで測定)であることを特徴とする、上記高分子電解質膜に関する。
また、本発明は、上記高分子電解質膜を含むことを特徴とする、固体高分子形燃料電池に関する。
本発明によれば、化学的、熱的に安定なガラス不織布を、特定の構造を持つ高分子電解質と複合化することにより、含水時の寸法変化を抑え、機械強度に優れ、かつ、低加湿下においても高いプロトン伝導性を有する高分子電解質膜を提供することができる。
また、この高分子電解質膜を用いることによって、燃料ガスの湿度によらず高い性能を持ち、機械強度に優れることから、長時間使用における信頼性の高い燃料電池を提供することができる。
本実施の形態にかかる高分子電解質膜を使用した固体高分子形燃料電池の要部断面の構造模式図である。 実施例1の高分子電解質膜の断面SEM写真である。
本発明の一実施形態について説明すれば以下の通りである。なお、本発明は以下の説明に限定されるものではない。
<1.高分子電解質>
本発明に用いる高分子電解質、つまりガラス不織布と複合する高分子電解質は、実質的にスルホン酸基を有さない疎水部オリゴマーと、スルホン酸基を有し主鎖が主に芳香環からなる親水部オリゴマーとを、主鎖として有してなるものである。
当該高分子電解質は、ブロック共重合体型である。上記のような親水部オリゴマーと疎水部オリゴマーからなるブロック共重合体型とすることにより、高分子電解質の低加湿下でのプロトン伝導性が向上する。
本発明における親水部オリゴマーは、スルホン酸基を有し主鎖が主に芳香環からなるものである。つまり、当該親水部オリゴマーは、スルホン酸基が導入されているオリゴマーである。このように、親水部オリゴマーがスルホン酸基を有するので、高分子電解質のプロトン伝導性が発現し、親水部オリゴマーの主鎖が主に芳香環からなるので、高分子電解質は耐熱性、化学的耐久性に優れるものになる。
本発明におけるスルホン酸基としては、例えば、スルホン酸基、スルホン酸塩の基、スルホン酸エステル基等が挙げられる。つまり、スルホン酸基は、例えば、ナトリウム、カリウム等の塩になっていてもよいし、ネオペンチルエステル、メチルエステル、プロピルエステル等のエステル保護状態でもよい。特にオリゴマー合成中や合成後は、塩やエステル等の保護基を有する状態になっているのが好ましいことが多いが、当該高分子電解質が、例えば燃料電池の電解質膜として用いられる場合は、無機酸の水溶液等に浸漬することにより、スルホン酸基に変換して使用されることが多い。よって、本発明においては、スルホン酸基としては、容易にスルホン酸基になる状態の基であれば、塩やエステル等の保護基を有する状態の基も含まれる。
スルホン酸基の量は、親水部オリゴマーを形成する繰り返し単位当たり、1〜6個が好ましく、1〜4個がより好ましい。6個よりスルホン酸基の量が多くなると、親水部オリゴマーの水溶性が高くなり、合成中の取り扱いが難しくなる傾向がある。1個より少ないと十分なプロトン伝導性が発現しにくくなる傾向がある。
本発明における親水部オリゴマーは、主鎖が主に芳香環からなるものである。
ここで「主鎖が主に芳香環からなる」とは、親水部オリゴマーにおける主鎖の連結基(エーテル基、チオエーテル基、スルホン基、ケトン基、スルフィド基等)以外の部分の分子量を100%とした場合、その70%以上が芳香環からなるということを意味する。
芳香環としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、硫黄や窒素等を含む芳香族複素環等が挙げられる。
主鎖が主に芳香環からなると、化学的熱的な安定性が高い。このような主鎖構造としては、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリケトン、ポリスルホン、ポリスルフィド、ポリフェニレン、ポリイミド、ポリベンゾイミダゾール等が例示される。
当該親水部オリゴマーの具体的な例としては、下記一般式群(1)に記載の構造の少なくとも1つを、繰り返し単位として含むもの等が挙げられる。
(式中、Arは、下記式群(2)に記載の構造を有する2価の基を表し、当該2価の基は置換基を有していてもよく、複数あるArは互いに同じであっても異なっても良い。Arは、スルホン酸基を少なくとも1つ有する2価の芳香族基、nは1〜4の整数、Xは−O−または−S−、Yは−SO−または−CO−を表す。)
なお、上記一般式群(1)の繰り返し単位が複数回繰り返された場合、複数あるArは互いに同じであっても異なっても良い。
また、上記Arは、下記式群(3)に記載の構造を有し、かつ、スルホン酸基を少なくとも1つ有する2価の芳香族基であると、つまり、下記式群(3)に記載の構造を有する2価の芳香族基にスルホン酸基が少なくとも1つ導入された構造であると、合成が容易で好ましい。
親水部オリゴマーの具体例としての、一般式群(1)に記載の構造において、ベンゼン環上に置換基を有していてもよい。また、Arにおいて、式群(2)に記載の構造を有する2価の基は、置換基を有していてもよい。さらに、Arにおいて、式群(3)に記載の構造を有する2価の芳香族基は、スルホン酸基以外に、置換基を有していてもよい。
これら置換基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)、炭素数1〜6のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等)、フェニル基等が挙げられる。また、当該置換基を1個以上有することができる。
親水部オリゴマーは、スルホン酸基を有するものであるが、その主鎖、側鎖、両者(主鎖及び側鎖)のいずれに、スルホン酸基を有していてもよい。
親水部オリゴマーを構成するモノマーとしては、例えば、上記一般式群(1)の構造を構成しうるモノマー等が挙げられ、具体的には、下式で表されるモノマー等が好ましく挙げられる。また、上記一般式群(1)においてXが−S−である親水部オリゴマーを作製する場合等には、下式で表されるモノマーにおいて、−OH基の代わりに−SH基としたモノマー等も挙げられる。さらに、後述のように、スルホン酸基を有するモノマーの重合により親水部オリゴマーを作製する場合等には、下式で表されるモノマーにおいて、そのベンゼン環上にスルホン酸基を有しているモノマー等も挙げられる。
親水部オリゴマーのみのイオン交換容量(以下、イオン交換容量をIECと示すこともある)は、高分子電解質膜としてのIECが高く設定でき、また低加湿下で高いプロトン伝導性を発現することができる点から、4.0meq./g以上であることが好ましい。
親水部オリゴマーのIECは、NMRの分析による計算や、ブロック電解質のIEC(従来公知の方法、例えば滴定等により容易に求められる)を、親水部オリゴマーの重量割合で除すること等により求めることができるが、本発明においては後者の方法により求めるものである。つまり、親水部オリゴマーのIECは、実施例に記載の高分子電解質膜のIECの測定方法と同様にして求めた高分子電解質のIECを、親水部オリゴマーの重量割合で除することにより求める。
また、meq./gは、ミリ当量/gを意味する。
その他親水部オリゴマーを構成するモノマーとしては、特開2002−293889号公報で示されるもの等(電子吸引性基および電子供与性基を有するモノマー等)も例示できる。
本発明における疎水部オリゴマーは、実質的にスルホン酸基を有さないものである。これにより、親水部との相分離を明確にして、高分子電解質の低加湿下でのプロトン伝導性を向上させ、また、高分子電解質の強度を向上させる。
当該疎水部オリゴマーは、スルホン酸基が全く導入されていないことが好ましいが、親水部オリゴマーに対して相対的に疎水性であればよく、繰り返し単位あたりのスルホン酸基の数が親水部オリゴマーの1/10以下であれば良い。
つまり「実質的にスルホン酸基を有さない」とは、疎水部オリゴマーがスルホン酸基を全く有さないか、疎水部オリゴマーにおける繰り返し単位あたりのスルホン酸基の数が、親水部オリゴマーにおける繰り返し単位あたりのスルホン酸基の数の1/10以下であることを意味する。
当該疎水部オリゴマーは、耐熱性を有する点から、ポリイミド系、ポリベンズイミダゾール系、ポリエーテル系等で、主鎖が主に芳香環からなる構造が好ましく、また、ポリエーテル系が、合成上の容易さの観点からより好ましい。
ここで「主鎖が主に芳香環からなる」とは、疎水部オリゴマーにおける主鎖の連結基(エーテル基、スルホン基、ケトン基、スルフィド基等)以外の部分の分子量を100%とした場合、その70%以上が芳香環からなるということを意味する。
このような疎水部オリゴマーとしては、下記一般式群(4)に記載の構造の少なくとも1つを繰り返し単位として含むことが好ましい。
(式中、Arは、2価の芳香族基を表す。)
なお、上記一般式群(4)の繰り返し単位が複数回繰り返された場合、複数あるArは互いに同じであっても異なっても良い。
Arの2価の芳香族基としては、例えば、下式(5)で表される基等が好ましく挙げられる。
また、Arの2価の芳香族基は、置換基を有していてもよい。
当該置換基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)、炭素数1〜6のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等)、フェニル基、シアノ基等が挙げられる。また、当該置換基を1個以上有することができる。
疎水部オリゴマーを構成するモノマーとしては、例えば、上記一般式(4)の構造を構成しうるモノマー等が挙げられ、具体的には、下式で表されるモノマー等が好ましく挙げられる。
親水部オリゴマー、疎水部オリゴマーの分子量は、その化学構造や合成のしやすさ等により異なるが、数平均分子量でそれぞれ700〜30,000g/molが好ましく、2000〜10,000g/molがより好ましい。700g/molより小さいと、ブロック共重合体型高分子電解質としての特性が現れにくくなる傾向があり、30,000g/molより大きいと、溶解性等の問題で合成が困難になりやすい傾向がある。
高分子電解質の分子量は、数平均分子量で10,000〜300,000g/molが好ましく、合成の容易さと溶媒への溶解度のバランスから、30,000〜150,000g/molがより好ましい。
上記各オリゴマー及び高分子電解質の分子量は、実施例に記載の測定方法により求めることができる。
また、高分子電解質のIECは、1.5〜3.5meq./gであると、電解質としての性能を発現し易いために好ましく、1.6〜3.0meq./gであると、低加湿下におけるプロトン伝導性と機械強度のバランスに優れるため、より好ましい。
当該高分子電解質のイオン交換容量は、実施例に記載の高分子電解質膜のイオン交換容量の測定方法と同様にして求めることができる。
また、機械強度をより向上させたり、水分に対する膨潤を抑制するために、高分子電解質に架橋の導入等の化学的変性を行うことも、本発明の範疇である。
本発明の高分子電解質は、従来公知の方法により作製することができる。例えば、親水部オリゴマーとなりうるオリゴマーを作製後、これと疎水部オリゴマーをブロック共重合体化し、ブロック共重合体の親水部となりうるオリゴマーのみをスルホン酸化して、親水部−疎水部ブロック共重合体とする方法;親水部オリゴマーとなりうるオリゴマーを作製後、スルホン酸基を導入して親水部オリゴマーを作製し、これと疎水部オリゴマーをブロック共重合体化する方法;スルホン酸基を有するモノマーの重合により親水部オリゴマーを作製し、これと疎水部オリゴマーをブロック共重合体化する方法;疎水部オリゴマーとスルホン酸基を有する多量のモノマーを重合することにより、結果的に親水部オリゴマーと疎水部オリゴマーのブロック共重合体とする方法;等が例示できる。
以下に、本発明の高分子電解質の製造方法について、一例を挙げて説明する。なお、本発明の高分子電解質の製造方法は、以下に限定されるものではない。
まず、前述のモノマーを用いて、親水部オリゴマーとなりうるオリゴマー(スルホン酸化可能な部位を含むオリゴマー)と、疎水部オリゴマーを調製する。これらを得るには、末端に水酸基等の求核性の置換基を有するモノマーと、末端にハロゲン化合物等の脱離基を有するモノマーを縮合する方法や、脱離基を有するモノマー中に触媒を加えて縮合させる方法等が挙げられる。
重合反応(縮合反応)は、溶媒を用いない溶融状態でも行うことは可能であるが、適当な溶媒中で行うことが好ましい。
溶媒としては、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、スルホン系溶媒、スルホキシド系溶媒等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、1,3,5−トリメチルベンゼン等が挙げられる。
ハロゲン系溶媒としては、例えばジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等が挙げられる。
エーテル系溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等が挙げられる。
ケトン系溶媒としては、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
アミド系溶媒としては、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
スルホン系溶媒としては、例えばスルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン等が挙げられる。
スルホキシド系溶媒としては、例えばジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等が挙げられる。
これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
重合反応工程の反応温度は、重合反応に応じて適宜設定すればよい。具体的には、最適使用範囲の20℃〜250℃に設定すればよく、より好ましくは40℃〜200℃である。20℃よりも低温であれば反応が遅くなる傾向があり、250℃よりも高温であれば主鎖が切れやすくなる傾向がある。
重合反応工程の反応時間は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜500時間、より好ましくは0.5〜300時間である。
上記のようにして、親水部オリゴマーとなりうるオリゴマーと、疎水部オリゴマーを得た後、これらを化学結合させてブロック共重合体化させることにより、ブロック共重合体(親水部オリゴマーとなりうるオリゴマーと、疎水部オリゴマーからなる)を得る。これらオリゴマーを化学結合させてブロック共重合体化させる方法としては、特に制限は無く、重合するモノマーの反応性によって適宜定める事ができる。重合法の詳細は、一般的な方法(「高分子の合成と反応(2)」p.249−255、(1991)共立出版株式会社)を適用することができる。具体的には、例えば、末端に水酸基等の求核性の置換基を有するオリゴマーを調製し、別途調製した末端にハロゲン化合物等の脱離基を有するオリゴマーを塩基存在下に縮合させることにより、ブロック共重合体化させる。あるいは、末端にハロゲン化合物を有する各オリゴマー同士を遷移金属存在下に縮合させることにより、ブロック共重合体化させることもできる。
次いで、上記のようにして得られたブロック共重合体において、親水部となりうるオリゴマーのみをスルホン酸化する。この場合、ベンゼン環の電子密度が比較的高い部分がスルホン酸化される。つまり、当該ブロック共重合体(親水部オリゴマーとなりうるオリゴマーと、疎水部オリゴマーからなる)と、スルホン酸化剤を反応させることにより、親水部オリゴマーと疎水部オリゴマーからなるブロック共重合体(高分子電解質)を合成することができる。
スルホン酸化剤としては、例えばクロロスルホン酸、無水硫酸、発煙硫酸、硫酸、アセチル硫酸等が挙げられ、クロロスルホン酸、発煙硫酸が適度な反応性を有しているために好ましい。
スルホン酸化反応において、溶媒は用いても用いなくてもよい。
溶媒を用いる場合、溶媒としては、スルホン酸化剤に対して不活性なものであればよく、例えば、炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
炭化水素系溶媒としては、飽和脂肪族炭化水素が挙げられ、特に炭素数5〜15の直鎖状または分岐状の炭化水素が好ましく、溶解度の点から、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンがより好ましい。
ハロゲン化炭化水素としては、ハロゲン化飽和脂肪族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素等が挙げられる。
ハロゲン化飽和脂肪族炭化水素としては、例えば、モノクロロメタン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、モノクロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン等が挙げられ、取り扱いの容易さからジクロロメタンが好ましい。
ハロゲン化芳香族炭化水素としては、例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等が挙げられ、取り扱いの容易さからクロロベンゼンが好ましい。
スルホン酸化工程の反応温度は、反応に応じて適宜設定すればよく、具体的にはスルホン酸化剤の最適使用範囲である−80℃〜200℃に設定すればよく、より好ましくは−50℃〜150℃であり、さらに好ましくは−20℃から130℃である。−80℃よりも低温であれば反応が遅くなり、目的とするスルホン酸化が100%まで進行しない傾向があり、200℃よりも高温であれば副反応が起こる傾向がある。
スルホン酸化工程の反応時間は、親水部オリゴマーとなりうるオリゴマーの構造により適宜選択され得るが、通常1分間〜50時間程度の範囲内であればよい。1分間より短いと均一なスルホン酸化が進行しない傾向があり、50時間より長いと副反応が起こる傾向がある。
スルホン酸化工程におけるスルホン酸化剤の添加量は、親水部オリゴマーとなりうるオリゴマーに含まれるスルホン酸化される部位の全量を1当量とした場合、1当量〜50当量であることが好ましい。1当量より少ないと、スルホン酸化される部位が不均一になる傾向があり、一方、50当量より多いと親水部オリゴマーとなりうるオリゴマーの主鎖が切断されやすい傾向がある。
スルホン酸化工程における親水部オリゴマーとなりうるオリゴマーの濃度は、スルホン酸化剤と接触させた場合に均一に反応が進行すれば特に限定されないが、親水部オリゴマーとなりうるオリゴマーが低分子量化等の副反応を起こさないことと、溶媒量抑制によるコスト優位性の観点から、スルホン酸化反応に用いた化合物全体の重量に対して1〜30重量%であることが好ましい。
<2.ガラス不織布>
本発明におけるガラス不織布は、特に限定されず公知のものを適用しうる。ガラス不織布とは、ガラス繊維を不規則に織り込みシート状に加工したものである。
当該ガラス不織布を用いることにより、含水時の寸法変化を抑え、機械強度に優れた高分子電解質膜を得ることができる。
当該ガラス不織布は、複合化後の高分子電解質膜のプロトン伝導性を阻害しない点から、繊維径が10μm以下であることが好ましく、7μm以下がより好ましい。また、繊維径の下限は、強度の点から、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。
各繊維の繊維径は、通常ある程度のバラツキがあるが、本発明でいう繊維径としては、平均値を用いる。10μmより繊維径が太いと、高分子電解質の複合化において、なじみにくく、均質な膜となりにくい傾向がある。
ガラス不織布の繊維径は、光学顕微鏡による観察により測定することができる。より具体的には、ガラス不織布中の任意の約10本の繊維径を上記のようにして測定し、その平均値をガラス不織布の繊維径とする。
当該ガラス不織布は、耐酸性ガラス、いわゆるCガラスやアルカリガラスといわれる耐酸性を持ったガラスからなることが好ましい。複合対象の高分子電解質がスルホン酸基を有することから、このような様態であればガラスの耐久性が保てる。
ここで、Cガラスやアルカリガラスといわれるガラスは、一般にアルカリ含有量が0.8〜20%である組成を有するガラスであり、耐酸性に優れる。
当該ガラス不織布は、繊維径10μm以下の耐酸性ガラスからなることが好ましい。
当該ガラス不織布は、有機バインダーおよび/または無機バインダーによってシート状に形成されていることが好ましい。これにより繊維が容易にほぐれず、シートとして強固になり、当該ガラス不織布と複合した高分子電解質膜の強度もまた向上する。
バインダーとしては、高分子、樹脂、有機繊維等の有機物、シリカ等の無機物等が挙げられる。
当該ガラス不織布は、厚さ(圧力20kPaにての測定値)が50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましい。本発明の高分子電解質膜は、300μm以下が好ましいことから、これと複合するガラス不織布も、機械強度向上の効果を持つ範囲内で薄いことが好ましい。また、当該ガラス不織布の厚さの下限は、強度向上の点から、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。
ガラス不織布の厚さは、ガラス不織布全体に均等な圧力(20kPa)を加え、ダイヤルゲージを用いて測定することができる。より具体的には、ガラス不織布の任意の約10箇所の厚さを上記のようにして測定し、その平均値をガラス不織布の厚さとする。
当該ガラス不織布は、機械強度の向上と複合によるプロトン伝導性低下を最小限に抑えるという点から、空隙率80%以上が好ましく、85〜95%がより好ましい。
ガラス不織布の空隙率は、ガラス不織布の体積と重量から比重を算出し、これをガラスの真比重で除することにより算出することができる。
<3.高分子電解質膜>
本発明の高分子電解質膜は、上記高分子電解質とガラス不織布が複合されてなるものである。つまり、本発明の高分子電解質膜は、実質的にスルホン酸基を有さない疎水部オリゴマーと、スルホン酸基を有し主鎖が主に芳香環からなる親水部オリゴマーとを、主鎖として有してなる高分子電解質と、ガラス不織布が複合されてなるものである。
複合の方法は、従来公知の方法を適用しうる。簡易的な方法としては、ガラス等の基板上にガラス不織布を固定し、この上に高分子電解質溶液をキャストし、溶媒を乾燥する方法;高分子電解質の溶液にガラス不織布をディップすることにより、ガラス不織布の空隙中に高分子電解質溶液を含浸させ、溶液から、溶液を含んだガラス不織布を取り出し、例えば垂直状態で広げた状態で溶媒を乾燥する方法等が例示される。このような手法は、不織布と樹脂の複合材料を作製する際に用いられる方法で一般的である。
なお、高分子電解質溶液とする場合に用いられる溶媒としては、例えばジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。溶媒の乾燥温度は、好ましくは10〜200℃、より好ましくは40〜150℃である。乾燥時間は、枚葉で乾燥する場合は、好ましくは10分間〜24時間、より好ましくは1〜10時間である。連続で乾燥する場合は、乾燥温度を比較的高めに設定し、20秒間〜10分間が好ましい。
その他、上記特許文献1に示されるように、高分子電解質とガラス不織布を加熱圧着する方法;溶媒を含んだ半凝固状態の高分子電解質膜2枚でガラス不織布を挟み込み、プレス、乾燥による方法等も適用しうる。
上記のようにして、高分子電解質とガラス不織布が複合されてなる、本発明の高分子電解質膜を得ることができる。
本発明の高分子電解質膜における高分子電解質としては、本発明の上記高分子電解質を単独で用いてもよいし、本発明の高分子電解質とその他の高分子電解質等を混合して用いてもよい。
また、本発明の高分子電解質膜は、上記高分子電解質とガラス不織布以外の添加物を含んでいても良い。
プロトン伝導性の点から、本発明の高分子電解質膜においては、本発明の高分子電解質が、当該高分子電解質膜全体の70重量%以上を占める主成分であることが好ましい。
また、電解質膜を得た後に、分子配向等を制御するために二軸延伸等の処理を施したり、結晶化度や残存応力を制御するための熱処理を施しても構わない。
さらに、製膜時に適当な化学的処理を施してもよい。化学的処理としては、例えば、電解質膜の強度を上げるための架橋、伝導性を上げるためのプロトン性化合物の添加、耐久性向上やイオン架橋のための微量の多価金属イオンの添加等が挙げられる。
いずれにしても、本発明における高分子電解質を用いて、従来公知の技術と組み合わせて製造される高分子電解質膜は、本発明の範疇である。
また、本発明の高分子電解質膜において、通常用いられる各種添加剤、樹脂劣化防止のための酸化防止剤、フィルムとしての成型加工における取り扱いを向上させるための帯電防止剤や滑剤等は、電解質膜としての加工や性能に影響を及ぼさない範囲で適宜用いることが可能である。
本発明の高分子電解質膜の厚さとしては、用途に応じて任意の厚さを選択することができる。例えば、燃料電池として用いる際の高分子電解質膜の抵抗を低減することを考慮した場合、高分子電解質膜の厚さは薄い程よい。一方、高分子電解質膜のガス遮断性、ハンドリング性、電極との接合時の耐破れ性等を考慮すると、高分子電解質膜の厚さは薄すぎると好ましくない場合がある。
これらを考慮すると、高分子電解質膜の厚さは、5μm以上300μm以下が好ましく、10μm以上100μm以下がより好ましく、また、燃料電池として出力を重視する場合等は10μm以上50μm以下が特に好ましい。高分子電解質膜の厚さが5μm以上300μm以下であれば、製造が容易であり、膜抵抗と機械強度のバランスが取れており、燃料電池材料として加工する際のハンドリング性にも優れる。
当該高分子電解質膜の厚さは、実施例に記載の測定方法により求めることができる。
本発明の高分子電解質膜のIECは、高分子電解質のIECにより調整することができる。例えば、高分子電解質膜として、高分子電解質以外の材料を含む場合は、それによって高分子電解質膜としてのIECは低下するので、高分子電解質のIECを高めに設定する等、適宜調整しうる。
高分子電解質膜としてのイオン交換容量は、1.5〜3.5meq./gが好ましく、1.7〜3.0meq./gがより好ましい。イオン交換容量が1.5meq./gより小さいと、好ましいプロトン伝導性が発現しにくくなる傾向があり、3.5meq./gより大きいと、機械強度が低下し、十分な強度を有しにくくなる傾向がある。
当該高分子電解質膜のイオン交換容量は、実施例に記載の測定方法により求めることができる。
<4.膜−電極接合体>
本発明における燃料電池用膜−電極接合体(以下MEA(Membrane Electrode Assembly)と示すことがある)は、本発明の上記高分子電解質膜を含んでなるものである。
MEAは、高分子電解質膜と少なくとも片側に配置された電極からなり、さらに拡散層と呼ばれる導電性多孔質体を合わせたものからなる。本発明のMEAは、MEA中の高分子電解質膜として、本発明の高分子電解質膜を含むものである。その他材料や製法としては、従来公知のものが使用できる。これらについては、後述の本発明の燃料電池にて詳細に説明する。
<5.燃料電池>
本発明の固体高分子形燃料電池は、上記高分子電解質膜を含むことを特徴とするものである。
つまり、本発明の燃料電池は、本発明の上記高分子電解質膜を含んでなる燃料電池である。本発明の高分子電解質膜を含んでなる燃料電池は、上述したプロトン伝導性や機械特性等の優れた性能を有する高分子電解質を備えているため、高い発電特性を有する。
次に、本発明の高分子電解質膜を使用した固体高分子形燃料電池の一実施形態について、図面を用いて説明する。なお、本実施の形態では、固体高分子形燃料電池を例に挙げて説明するが、直接液体形燃料電池、直接メタノール形燃料電池についても、固体高分子形燃料電池と同様に実施可能である。
図1は、本実施の形態にかかる高分子電解質膜を使用した固体高分子形燃料電池の要部断面の構造を模式的に示す図である。図1に示すように、本実施の形態にかかる固体高分子形燃料電池10は、高分子電解質膜1、触媒層2、拡散層3、セパレーター4を備えている。
高分子電解質膜1は、固体高分子形燃料電池10のセルのほぼ中心部に位置している。触媒層2は、高分子電解質膜1に接触するように設けられている。拡散層3は、触媒層2に隣接して設けられており、さらにその外側にセパレーター4が配置されている。セパレーター4には、燃料ガスまたは液体(メタノール水溶液等)、並びに、酸化剤を送り込むための流路5が形成されている。これらの部材は、固体高分子形燃料電池10のセルとして構成されていると換言できる。
一般的に、高分子電解質膜1に触媒層2を接合したものや、高分子電解質膜1に触媒層2と拡散層3を接合したものは、MEAと言われ、固体高分子形燃料電池(直接液体形燃料電池、直接メタノール形燃料電池)の基本部材として使用される。
MEAを作製する方法は、従来検討されている、パーフルオロカーボンスルホン酸からなる高分子電解質膜やその他の炭化水素系高分子電解質膜(例えば、スルホン酸化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン酸化ポリエーテルスルホン、スルホン酸化ポリスルホン、スルホン酸化ポリイミド、スルホン酸化ポリフェニレンサルファイド等)で行われる公知の方法が適用可能である。
MEAの具体的作製方法の一例を下記に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
触媒層2を形成するために、まず、高分子電解質の溶液または分散液に、金属担持触媒を分散させて、触媒層形成用の分散溶液を調合する。つまり、高分子電解質は、触媒のバインダーとして機能する。この分散溶液をポリテトラフルオロエチレン等の離型フィルム上にスプレーで塗布して、分散溶液中の溶媒を乾燥・除去し、離型フィルム上に所定の触媒層2を形成させる。この離型フィルム上に形成した触媒層2を、高分子電解質膜1の両面に配置し、所定の加熱・加圧条件下でホットプレスし、高分子電解質膜1と触媒層2を接合し、離型フィルムをはがすことによって、高分子電解質膜1の両面に触媒層2が形成されたMEAを作製できる。
また、上記分散溶液を、コーター等を用いて拡散層3上に塗工して、分散溶液中の溶媒を乾燥・除去し、拡散層3上に触媒層2が形成された触媒担持ガス拡散電極を作製し、さらに、高分子電解質膜1の両側にその触媒担持ガス拡散電極の触媒層2側を配置し、所定の加熱・加圧条件下でホットプレスすることによって、高分子電解質膜1の両面に触媒層2と拡散層3とが形成されたMEAを製造できる。なお、上記触媒担持ガス拡散電極としては、市販のガス拡散電極(米国E−TEK社製等)を使用しても構わない。
上記高分子電解質の溶液としては、本発明の高分子電解質以外に、パーフルオロカーボンスルホン酸高分子化合物のアルコール溶液(アルドリッチ社製ナフィオン(登録商標)溶液等)や、スルホン酸化された芳香族高分子化合物(例えば、スルホン酸化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン酸化ポリエーテルスルホン、スルホン酸化ポリスルホン、スルホン酸化ポリイミド、スルホン酸化ポリフェニレンサルファイド等)の有機溶媒溶液等が使用できる。
上記金属担持触媒としては、高比表面積の導電性粒子を担体として使用可能である。
担体としては、例えば、活性炭、カーボンブラック、ケッチェンブラック、バルカン、カーボンナノホーン、フラーレン、カーボンナノチューブ等の炭素材料が例示できる。
金属触媒としては、燃料の酸化反応および酸素の還元反応を促進するものであれば使用可能であり、燃料極と酸化剤極で同じであっても異なっていても構わない。例えば、白金、ルテニウム等の貴金属や、それらの合金等が例示できる。
また、それらの触媒活性の促進や、反応副生物による被毒を抑制するための助触媒を添加しても構わない。助触媒としては、例えば、金、金属酸化物、カーボンアロイ等が挙げられる。
上記触媒層形成用の分散溶液は、スプレーで塗布したり、コーターで塗工したりしやすい粘度に調整するため、水や有機溶媒で適宜希釈しても構わない。また、必要に応じて触媒層2に撥水性を付与するため、テトラフルオロエチレン等のフッ素系化合物を混合してもよい。
上記拡散層3としては、カーボンクロスやカーボンペーパー等の多孔質の導電性材料が使用可能である。これらは燃料や酸化剤の拡散性や反応副生物や未反応物質の排出性を促進するため、テトラフルオロエチレン等で被覆して撥水性を付与したものを使用するのが好ましい。また、高分子電解質膜1と触媒層2との間に、必要に応じて前述したような高分子電解質からなる接着層を設けてもよい。
高分子電解質膜1と触媒層2を加熱・加圧条件下でホットプレスする条件は、使用する高分子電解質膜1や触媒層2に含まれる高分子電解質の種類に応じて適宜設定する必要がある。
上記加熱条件としては、一般的に高分子電解質膜1や触媒層2に含まれる高分子電解質の熱劣化や熱分解温度以下であって、高分子電解質膜1または触媒層2に含まれる高分子電解質のガラス転移点や軟化点以上の温度であることが好ましい。
上記加圧条件としては、概ね0.1MPa以上20MPa以下であることが、高分子電解質膜1と触媒層2が充分に接触するとともに、使用材料の著しい変形に伴う特性低下がなく、好ましい。特にMEAが高分子電解質膜1と触媒層2とからのみ形成される場合は、拡散層3を触媒層2の外側に配置して特に接合することなく接触させるのみで使用しても構わない。
上記のような方法で得られたMEAを、燃料ガスまたは液体、並びに、酸化剤を送り込むための流路5が形成された一対のセパレーター4等の間に挿入することにより、本実施の形態にかかる固体高分子形燃料電池10が得られる。
上記セパレーター4としては、カーボングラファイトやステンレス鋼の導電性材料のものが使用できる。特にステンレス鋼等の金属製材料を使用する場合は、耐腐食性の処理を施していることが好ましい。
上記の固体高分子形燃料電池10に対して、燃料ガスまたは液体として、水素を主たる成分とするガスや、メタノールを主たる成分とするガスまたは液体を、また、酸化剤として、酸素を含むガス(酸素または空気)を、それぞれ別個の流路5より、拡散層3を経由して触媒層2に供給することにより、固体高分子形燃料電池は発電する。このとき燃料として、例えば、含水素液体を使用する場合には直接液体形燃料電池となるし、メタノールを使用する場合には直接メタノール形燃料電池となる。
つまり、固体高分子形燃料電池10について例示した上記実施形態は、そのまま直接液体形燃料電池、直接メタノール形燃料電池についても適用可能といえる。
なお、本実施の形態にかかる固体高分子形燃料電池10を、単独で、または、複数積層して、スタックを形成し使用することや、それらを組み込んだ燃料電池システムとすることもできる。
なお、上述した例以外にも、本発明の高分子電解質膜は、特開2000−90944号公報、特開2001−313046号公報、特開2001−313047号公報、特開2001−93551号公報、特開2001−93558号公報、特開2001−93561号公報、特開2001−102069号公報、特開2001−102070号公報、特開2001−283888号公報、特開2000−268835号公報、特開2000−268836号公報、特開2001−283892号公報等で公知になっている固体高分子形燃料電池や直接メタノール形燃料電池の電解質膜として、使用可能である。本発明の高分子電解質膜を用いて、これらの公知文献に基づいて固体高分子形燃料電池や直接メタノール形燃料電池を構成することもできる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
以下の実施例で得られた高分子電解質(ブロック共重合体)の重量平均分子量および数平均分子量は、GPC法により測定した(数平均分子量、重量平均分子量のいずれも、一度の測定で算出できる)。条件は以下の通り。なお、分子量はポリスチレン換算である。
GPC測定装置:日本分光社製805UV
カラム:SHODEX KF−805L 1本
カラム温度:50℃
移動相溶媒:THF(LiBrを10mmol/dmになるように添加)
溶媒流量:0.5mL/min
また、以下の実施例および比較例で得られた高分子電解質膜の厚さは、ダイヤルゲージを用いて測定した(高分子電解質膜の任意の約10箇所の厚さをダイヤルゲージを用いて測定し、その平均値を高分子電解質膜の厚さとした)。
[実施例1]
<高分子電解質の作製>
窒素導入口、還流管を付した100mLの三つ口フラスコに、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(4.00g、11.42mmol、東京化成工業社製)と、ビス(4−フルオロフェニル)スルホン(2.58g、10.15mmol、東京化成工業社製)と、炭酸カリウム(3.16g、22.83mmol、関東化学社製)と、脱水N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc、20mL、関東化学社製)と、脱水トルエン(10mL、関東化学社製)とを加えた。三つ口フラスコにDean−Starkトラップを設置し、この混合物を窒素気流下で攪拌して、透明な均一溶液を得た。この溶液を140℃で3時間加熱した後、Dean−Starkトラップを除去し、165℃で12時間加熱した。反応終了後、DMAc(20mL)を加えてから常温まで冷却し、1000mLの純水中に反応溶液をゆっくりと滴下した。得られた沈殿物を吸引ろ過によって回収し、80℃の純水で3時間洗浄した後、メタノールで洗浄し、60℃で15時間真空乾燥することによって、スルホン酸化可能な部位を含むオリゴマーを白色繊維状にて得た。
別途、窒素導入口、還流管を付した100mLの三つ口フラスコに、ビス(4−フルオロフェニル)スルホン(2.00g、7.86mmol、東京化成工業社製)と、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン(1.63g、7.61mmol、東京化成工業社製)と、炭酸カリウム(2.17g、15.72mmol、関東化学社製)と、炭酸カルシウム(15.73g、157.20mmol)と、脱水N,N−ジメチルアセトアミド(20mL、関東化学社製)と、脱水トルエン(10mL、関東化学社製)を加えた。三つ口フラスコにDean−Starkトラップを設置し、この混合物を窒素気流下で攪拌して、透明均一溶液を得た。この溶液を140℃で1.5時間加熱した後、Dean−Starkトラップを除去し、165℃で1.5時間加熱することによって、ポリエーテルを含む溶液を得た。
ここに、先に得たスルホン酸化可能な部位を含むオリゴマー(1.20g)を添加した後、165℃で更に3時間加熱した。反応終了後、DMAc(20mL)を加えてから常温まで冷却し、塩酸水溶液(1000mL、10mLの濃塩酸/1000mL純水)中に反応溶液をゆっくりと滴下した。この作業をもう一度繰り返し、メタノールで洗浄した後に、60℃で15時間真空乾燥することによって、スルホン酸化可能な構造を有する高分子化合物を得た。
次に、上記スルホン酸化可能な構造を有する高分子化合物1gを50mlのジクロロメタンに溶解し、1.5重量%の溶液とした。この溶液を、クロロスルホン酸2mlを含むジクロロメタン(50ml)へ滴下し、室温下にて、磁性体の攪拌子を加え、磁力によって攪拌した。15時間後、スルホン酸化高分子化合物を含む混合物を水へ注いで反応を停止し、目的物を白色固体として析出させた。析出したスルホン酸化高分子化合物(スルホン酸化ポリアリールエーテルスルホンケトン、下記式(6)の構造を持つ)(分子量Mn=95,000g/mol、Mw=210,000g/mol、収量1.2g、p=8、m=30)を洗浄水が中性になるまで洗浄し、真空オーブンにて100℃で2時間乾燥し、式(6)に示す高分子電解質を得た。
(式中、mとpはそれぞれの平均繰り返し単位数を表し、この実施例においてはp=8、m=30である)
また、この高分子電解質のIECは1.80meq./gであり、親水部オリゴマーのみのIECは約6.00meq./gと算出された。
<高分子電解質膜の作製>
上記高分子電解質を溶質とし、ジメチルアセトアミドを溶媒として20重量%の溶液を作製した。この溶液に、PETフィルムにて周りを固定したガラス不織布(日本板硝子社製TGP003:空隙率約90%、材質耐酸性ガラス、厚さ約30μm、繊維径<10μm)をディップし、緩やかに引き上げながらクリアランス約100μmとしたガラス棒の間を通して過剰な溶液を取り除いた。この高分子電解質溶液が含浸されたガラス不織布を、60℃の通風オーブンで6時間乾燥した。その後、この複合高分子電解質膜を、十分量の1N硫酸に1時間、純水に1時間×3回それぞれ含浸することにより洗浄し、ふたたび60℃の通風オーブンで6時間乾燥した。洗浄済みの複合高分子電解質膜を、80℃、1.47MPa、5分間の条件で緩やかに熱プレスすることにより平滑化し、高分子電解質膜を得た。当該高分子電解質膜の外観は均一で、厚さは35μmであった。この高分子電解質膜の断面SEM像を図2に示す。これより、ガラス不織布(膜中央に繊維状に存在)と高分子電解質が隙間なく複合されていることが分かる。
[実施例2]
<高分子電解質膜の作製>
ガラス不織布として、日本板硝子社製TGP005F(空隙率約90%、材質耐酸性ガラス、厚さ約50μm、繊維径<10μm)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で高分子電解質膜を作製した。高分子電解質膜の外観は均一で、厚さは48μmであった。なお、厚さ約50μmのガラス不織布を用いて、厚さ48μmの高分子電解質膜が得られたのは、複合化により、ガラス不織布が膜厚方向に圧縮された状態で存在しているためであると考えられる。
[実施例3]
<疎水部オリゴマーの作製>
還流管とDean−Stark管を取り付けた100mlナスフラスコに、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン6.31g、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン4.28g、炭酸カリウム3.59g、ジメチルアセトアミド20mlおよびトルエン5mlを、窒素雰囲気下で混合し、180℃に加熱した。トルエンを還流させて生成した水を除き、40時間後にさらに4,4’−ジクロロジフェニルスルホンを1.0g追加した。6時間後に室温まで冷却後、反応溶液を水に加え、析出した固体をミキサーで細かく粉砕して、ろ過をした後、80℃で12時間乾燥した。さらに固体をジクロロメタンに溶解し、メタノールに加え、析出した固体をろ過後、80℃で12時間乾燥し、ポリマー(以下P2と呼ぶ)を得た。得られたP2の分子量はMn=6000g/molであった。
<親水部モノマーの作製>
4,4’−ジクロロベンゾフェノン27gと30%発煙硫酸134gを、窒素雰囲気下で混合し、攪拌しながら130℃に加熱した。20時間後に室温まで冷却した後、反応溶液を氷冷した水に加えた。水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和した後、析出した白色固体をろ過により回収した。残渣を100℃で減圧乾燥し、白色固体(以下S1と呼ぶ)を得た。
<高分子電解質の作製>
還流管とDean−Stark管を取り付けた100mlナスフラスコに、P2(1.0g)と、S1(1.5g)と、ジメチルスルホキシド30mlと、トルエン15mlを、窒素雰囲気下で混合し、180℃に加熱した。トルエンを還流させてフラスコ内の水分を除き、引き続きトルエンを除いてから冷却した。60℃でビピリジン1.5gとビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル2.43gを加え、メカニカルスターラーで攪拌した。5分後80℃に昇温し、2時間後室温まで冷却した。反応溶液をDMSO10mlで希釈し、1N塩酸水溶液に加え、析出した固体をろ過により回収した。固体を80℃で減圧乾燥し、固体を細かく粉砕後、6N塩酸水溶液中で6時間攪拌した。水洗しながらろ過をして、80℃で減圧乾燥し、下式(7)に示す高分子電解質を得た(式中、mとpはそれぞれの平均繰り返し単位数を表し、この実施例においてはp=6.8、m=10.0である)。この高分子電解質の分子量はMn90,000g/mol、IECは2.41meq./gであった。
<高分子電解質膜の作製>
高分子電解質として実施例3で得られたものを用いた以外は、実施例1と同様の方法で高分子電解質膜を作製した。高分子電解質膜の外観は均一で、厚さは36μmであった。
[比較例1]
実施例1で作製した高分子電解質溶液を用いて、ガラス不織布と複合せずに、キャスト法にて高分子電解質膜を作製した。上記高分子電解質を溶質とし、ジメチルアセトアミドを溶媒として20重量%の溶液を作製した。これをガラス基板上に、クリアランス250μmのドクターブレードを用いてキャストした。45℃にセットしたホットプレート上で約2時間、さらに60℃で約2時間処理することにより、溶媒の大半を気化させた。高分子電解質膜を剥離し、十分量の1N硫酸に1時間、純水に1時間×3回それぞれ含浸することにより洗浄し、60℃の通風オーブンで6時間乾燥した。これにより高分子電解質膜を得た。当該高分子電解質膜の厚さは約30μmであった。
[比較例2]
実施例3で作製した高分子電解質を用いて、比較例1と同様の方法で、ガラス不織布と複合させることなく、高分子電解質膜を作製した。当該高分子電解質膜の厚さは35μmであった。
上記実施例と比較例の高分子電解質膜について、特性を評価した。方法は以下のとおりである。
(イオン交換容量の測定)
高分子電解質膜の各試験試料(約50mg、十分に乾燥)を25℃での塩化ナトリウム飽和水溶液(20mL)に浸漬し、ウォーターバス中で60℃、3時間イオン交換反応させた。25℃まで冷却し、次いで高分子電解質膜をイオン交換水で充分に洗浄し、塩化ナトリウム飽和水溶液および洗浄水をすべて回収した。この回収した溶液に、指示薬としてフェノールフタレイン溶液を加え、0.2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定し、乾燥状態の重量と計算することにより、イオン交換容量を算出した。
(プロトン伝導度の測定)
高分子電解質膜の各試験試料を10×40mmの大きさに裁断し、恒温恒湿オーブン中で4端子法により交流インピーダンスを測定した。測定は、温度は80℃、湿度は30%RHの各条件で2時間放置、電流値として0.005mAの定電流、掃引周波数は10〜20000Hzで行った。得られたインピーダンスと膜端子間距離(10mm)と膜厚(ダイヤルゲージで測定)からプロトン伝導度を算出した。
(平面方向膨潤)
約3cm角の正方形にカットした高分子電解質膜のサンプルを準備し、これを純水に室温で6時間浸漬した際の平面方向の長さと、その後100℃で2時間の真空乾燥を行って絶乾とした際の平面方向の長さを測定し、純水での膨潤による長さの変化割合を計算した。4辺のそれぞれを計算し、その平均値を結果とした。
(OCVによる膜割れまでの時間)
以下の条件で起動/停止を含めたOCV(開回路電圧)発電試験を行い、膜割れが原因である急激な電圧低下までの時間を測定した。
発電セル:エレクトロケム社製,電極面積4.84cm、セル温度:80℃、燃料,空気湿度:20%RH、アノードガス:水素84ml/min、カソードガス:合成空気400ml/min、触媒:田中貴金属社製TEC10F50E,白金担持量0.5mg/cm、イオノマー:ナフィオンDE−521CS、ガス拡散層:SGL25BC、起動/停止時間:約120時間/約50時間、停止時処理:両極に窒素を約30分流した後に流路遮断
上記実施例および比較例についての評価結果を表1に示す。
実施例1、2と比較例1との比較から、ガラス不織布で補強した実施例は、イオン交換容量が若干低下していることが分かる。また、プロトン伝導度も低下しているが、わずかであり、燃料電池用高分子電解質膜として十分使用できる値である。さらに、実施例は比較例に比べて、平面方向の膨潤が約1/3と大幅に低減されており、また、OCV試験による膜割れまでの時間も顕著に延びていることから、機械強度が向上したことが分かる。
実施例3と比較例2との比較から、他の実施例と同様、イオン交換容量およびプロトン伝導度の低下がわずかに見られたが、平面方向の膨潤が大きく低減(約1/2に低減)されていることが分かり、ガラス不織布による補強の効果が見られた。
以上から、本発明の高分子電解質膜は、優れたプロトン伝導性と機械強度を兼ね備え、固体高分子形燃料電池の材料として優れていることが分かった。
1:高分子電解質膜
2:触媒層
3:拡散層
4:セパレーター
5:流路
10:固体高分子形燃料電池

Claims (9)

  1. 実質的にスルホン酸基を有さない疎水部オリゴマーと、スルホン酸基を有し主鎖が主に芳香環からなる親水部オリゴマーとを、主鎖として有してなる高分子電解質と、ガラス不織布が複合されてなり、
    上記親水部オリゴマーの構造が、下記一般式群(1)に記載の構造の少なくとも1つを繰り返し単位として含むことを特徴とする、高分子電解質膜。
    (式中、Arは、下記式群(2)に記載の構造を有する2価の基を表し、当該2価の基は置換基を有していてもよく、複数あるArは互いに同じであっても異なっても良い。Arは、下記式群(3)に記載の構造を有し、かつ、スルホン酸基を少なくとも1つ有する2価の芳香族基を表す。nは1〜4の整数、Xは−O−または−S−、Yは−SO−または−CO−を表す。)
  2. 上記スルホン酸基を有し主鎖が主に芳香環からなる親水部オリゴマー部分のみのイオン交換容量が、4.0meq./g以上であることを特徴とする、請求項1に記載の高分子電解質膜。
  3. 疎水部オリゴマーと、スルホン酸基を有し主鎖が主に芳香環からなる親水部オリゴマーとが、炭素−炭素の直接結合で連結されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の高分子電解質膜。
  4. 上記疎水部オリゴマーの構造が、下記一般式群(4)に記載の構造の少なくとも1つを繰り返し単位として含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の高分子電解質膜。
    (式中、Arは、2価の芳香族基を表す。)
  5. イオン交換容量が、1.5〜3.5meq./gであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の高分子電解質膜。
  6. 上記ガラス不織布が、繊維径10μm以下の耐酸性ガラスからなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の高分子電解質膜。
  7. 上記ガラス不織布が、有機バインダーおよび/または無機バインダーによってシート状に形成されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の高分子電解質膜。
  8. 上記ガラス不織布が、厚さ50μm以下(圧力20kPaで測定)であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の高分子電解質膜。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の高分子電解質膜を含むことを特徴とする、固体高分子形燃料電池。
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