JP4734279B2 - 高分子電解質膜、およびその製造方法 - Google Patents

高分子電解質膜、およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、高分子電解質膜、およびその製造方法に関する。
燃料電池の種類は種々があるが、代表的な種類のひとつとして、高分子電解質型燃料電池が挙げられる。高分子電解質型燃料電池とは、プロトン伝導性高分子電解質を電解質膜として用いる燃料電池である。高分子電解質型燃料電池は、水素やメタノールなどの燃料を、酸素または空気を用いて電気化学的に酸化することにより、燃料の化学エネルギーを電気エネルギーに変換して取りだす。高分子電解質型燃料電池には、燃料として、ボンベ、配管などから供給される純水素を用いるタイプのほか、改質器によってガソリンやメタノールから発生させた水素を用いるタイプなどがある。また、燃料としてメタノール水溶液を用いて直接発電を行う直接メタノール型燃料電池(DMFC:DirectMethanol Fuel Cell)も開発されている。
高分子電解質型燃料電池は、高分子電解質膜、ならびに高分子電解質膜の両側に接触して配置される正極および負極を有する。燃料の水素あるいはメタノールは、負極において電気化学的に酸化されてプロトンと電子を生成する。プロトンは高分子電解質膜内を、酸素が供給される正極に移動する。一方、負極で生成した電子は電池に接続された負荷を通って正極に流れ、正極においてプロトンと電子が反応して水を生成する。そのため、電解質膜には高いプロトン伝導性が求められる。
高いプロトン伝導性を有する高分子電解質膜としては、例えばデュポン社製「Nafion(登録商標)」などのプロトン酸基を含有するフッ素系高分子電解質膜が知られている。しかしながらこのフッ素系高分子電解質膜は、例えば80℃以上の高温域になると機械的強度が著しく低減し始め、プロトン伝導性も高温域では低下するおそれがある。さらには煩雑な製造工程を必要とし、実質的に全フッ素型の高分子であるということから非常に高価格である。さらに廃棄時に焼却するとフッ酸ガスを発生し、条件によっては燃料電池の運転条件によってフッ化水素酸(HF)を生じさせるおそれもある。またメタノールの透過性が高いため、DMFCの電解質膜として用いた場合には、メタノールのクロスオーバーによる電圧低下や発電効率低下がおこるおそれがある。
そこで、プロトン酸基を含有する炭化水素系重合体を用いた非フッ素系の高分子電解質膜の開発が進められている。プロトン酸基を含有する炭化水素系重合体は低価格で製造できる優位性があるほか、焼却時のハロゲン系ガス発生の問題もない。特に、芳香族炭化水素系重合体は、ガラス転移温度がプロトン酸基含有フッ素系重合体に比べて高いため、一般に低くとも150℃程度までは熱的機械強度が安定であり、また脂肪族炭化水素系重合体に比べて化学的耐久性に優れるため、数多くの開発がなされてきている(例えば、非特許文献1参照)。
これらプロトン酸基を含有する芳香族炭化水素系重合体からなる高分子電解質膜のプロトン伝導性を高める方法として、高分子電解質膜中のプロトン酸基の含有率を増大させる方法が一般的に知られている。しかしながら、当該膜中のプロトン酸基の含有率が増大すると、例えば水に浸漬するなどの水分が多い環境において、当該膜自体が水分を多量に吸収・保持して膨潤するので、乾燥時と湿潤時での膜の寸法変化が大きくなり、寸法安定性が悪化する。そのため、例えばMEA(膜と電極接合体)として加工して得た燃料電池を、湿度変化が生じる条件で運転すると、当該膜と電極が剥がれることがある。さらに、電池セル(MEAとセパレータのセット)や電池スタック(セルが重なったもの)に応力がかかることで、当該膜と電極がずれたりするなどの支障をきたすおそれがある。すなわち一般的に、プロトン伝導性と膨潤による寸法安定性とは、高分子電解質膜中のプロトン酸基の量を変数因子として、トレードオフの関係にある。
また、これらプロトン酸基を含有する芳香族炭化水素からなる高分子電解質膜は一般的に、湿度が高い条件(目安として相対湿度で80%以上)では、プロトン酸基を含有するフッ素系高分子電解質膜と同レベルか、またはそれ以上のプロトン伝導性を有するが、湿度が低い条件(目安として20〜40%以下)ではプロトン伝導性が著しく低下してしまう特性をもつ(例えば、非特許文献2参照)。定置型の小型燃料電池や自動車用燃料電池のように、水素あるいは改質水素などを燃料とする固体高分子型燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte FuelCell)では特に、燃料に水分が存在しないため、運転条件によっては電解質膜中の湿度が低くなる。加湿装置などで湿度を補う方法も提案されているが、装置の簡略化や小型化、またコスト面から見ても、低湿度条件においても高いプロトン伝導性を有することが期待されている。
これらの課題に対して、疎水性セグメントと親水性セグメントから構成される芳香族ポリエーテルスルホンブロック共重合体の両セグメントの重量分率を最適化することにより、相対湿度が低い条件でも比較的高いプロトン伝導性を有する高分子電解質膜が得られることが報告されている(特許文献1参照)。しかし、例えばイオン交換容量が662g/molと比較的低い電解質膜を用いても、相対湿度40%の条件におけるプロトン伝導度は2.3mS/cmであり、その効果、性能は未だ十分なものではない。また屈曲鋳性に富む、疎水性セグメントと親水性セグメントから構成される芳香族ポリエーテルスルホンブロック共重合体も報告されている
特開2003−31232号公報 Chemical Reviews,Vol.104, No.10,4587−4612 (2004) Macromolecules, Vol.38, 7121−7126 (2005)
本発明の目的は、酸基を含む高分子電解質膜における酸基の含有率を高めることなく、プロトン伝導性の高い高分子電解質膜を提供することである。また、特に低湿度条件(相対湿度20〜40%程度)でのプロトン伝導性の高い芳香族炭化水素系重合体を含む高分子電解質膜を提供する。
本発明者は、酸基を有する親水セグメントと、酸基を有しない疎水セグメントとを含むブロック共重合体を含有する高分子電解質膜において、膜における両セグメントのモルフォロジーが、プロトン伝導性に大きい影響を及ぼすと考えた。特に、親水セグメントが疎水部マトリックスに微分散されているのではなく、連続的なマトリックスを形成することによって、プロトン伝導性が高まると考えた。そして、高分子電解質膜において親水セグメントが連続的なマトリックスを形成するには、前記ブロック共重合体と溶媒を含む組成物(ワニス)を塗布して塗布膜を形成するときに、溶媒の親水性および疎水性を適切に調整することが重要であることを見出した。
また、親水セグメントが連続的なマトリックスを形成すると、膜の粘弾性が向上することを見出した。さらに、特定の温度領域(特に疎水セグメントに対応するポリマーのガラス転移温度付近)における粘弾性の温度プロファイルと、プロトン伝導性とが非常によく相関することも見出した。これらの知見から、粘弾性の温度プロファイルに注目することにより、高いプロトン伝導性を有する高分子電解質膜が得られることを見出した。
すなわち、本発明は以下に示す高分子電解質膜に関する。
[1] 酸基を含有するセグメントAと、酸基を実質的に含有しないセグメントBとを有するブロック共重合体を含み、イオン交換基当量が150〜5000g/molである高分子電解質膜であって、
酸基を実質的に含有しないセグメントBからなるホモポリマーのガラス転移温度(℃)をXとするときに、
X+10(℃)における前記高分子電解質膜の貯蔵弾性率(Pa)が、5.0×10以上であり、かつ
X+10(℃)における前記高分子電解質膜の貯蔵弾性率(Pa)が、X−20(℃)における前記高分子電解質膜の貯蔵弾性率(Pa)に対して、20%以上である、高分子電解質膜。
[2] X+30(℃)における前記高分子電解質膜の貯蔵弾性率(Pa)が、X−20(℃)における前記高分子電解質膜の貯蔵弾性率(Pa)に対して、15%以上である、[1]に記載の高分子電解質膜。
[3] X+30(℃)における前記高分子電解質膜の貯蔵弾性率(Pa)が、X+10(℃)における前記高分子電解質膜の貯蔵弾性率(Pa)に対して、50%以上である、[1]に記載の高分子電解質膜。
[4] 前記高分子電解質膜に含まれるブロック共重合体が有する酸基はプロトン酸基であり、前記貯蔵弾性率は、それに含まれる酸基が塩である前記高分子電解質膜の貯蔵弾性率である、[1]〜[3]のいずれかに記載の高分子電解質膜。
[5]前記イオン交換基当量が、350〜1200g/molである、[1]に記載の高分子電解質膜。
[6] 前記イオン交換基当量が、500〜700g/molである、[1]に記載の高分子電解質膜。
[7] 前記セグメントAが、下記一般式(1)で表される構造の繰り返し単位を有し、かつ前記セグメントBが、下記一般式(2)で表される構造の繰り返し単位を有する、[1]に記載の高分子電解質膜。
Figure 0004734279
(式(1)において、
Ar〜Arはそれぞれ独立して芳香環であり、
〜Xはそれぞれ独立して水素原子または酸基でそのうち少なくとも一つが酸基であり、
〜Aは直接結合、−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−O−、−S−、−SO−または−CO−であって、それぞれ独立しており、
a、bおよびcそれぞれ独立して0または1を示し、
g、h、i、jおよびkはそれぞれ独立して0、1、2または3を示し、
Ar〜Arで示される芳香環の水素原子は、フッ素原子、塩素原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基又はシアノ基にそれぞれ独立して置換されていてもよい)
Figure 0004734279
(式(2)において、
Ar〜Ar10はそれぞれ独立して芳香環であり、
〜Aは直接結合、−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−O−、−S−、−SO−または−CO−であって、それぞれ独立しており、
d、eおよびfはそれぞれ独立して0または1を示し、
Ar〜Ar10で示される芳香環の水素原子は、フッ素原子、塩素原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基又はシアノ基にそれぞれ独立して置換されていてもよい)
[8] 前記酸基が、芳香環に直接結合したスルホン酸基、または脂肪族鎖もしくは芳香族鎖を介して芳香環に結合したスルホン酸基である、[7]に記載の高分子電解質膜。
[9] Ar〜ArおよびAr〜Ar10はそれぞれ独立してベンゼン環またはナフタレン環であり;X〜Xの少なくとも二つが酸基であり;AおよびAがそれぞれ独立して−SO−または−CO−である、[7]または[8]に記載の高分子電解質膜。
[10] 一般式(1)が下記一般式(3)であり、一般式(2)が下記一般式(4)である、[7]〜[9]のいずれかに記載の高分子電解質膜。
Figure 0004734279
(式(3)において、
〜XおよびXはそれぞれ独立して、一般式(3)中のベンゼン環に直接結合したスルホン酸基、または一般式(3)中のベンゼン環に脂肪族鎖もしくは芳香族鎖を介して結合したスルホン酸基であり、
は−SO−または−CO−であり、
は直接結合、−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−O−、−S−、−SO−または−CO−であり、
cは0または1を示し、
gおよびhはそれぞれ独立して1、2または3を示し、
iおよびkはそれぞれ独立して0、1または2を示し、
ベンゼン環の水素原子は、フッ素原子、塩素原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基又はシアノ基にそれぞれ独立して置換されていてもよい)
Figure 0004734279
(式(4)において、
〜Aは直接結合、−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−O−、−S−、−SO−または−CO−であって、それぞれ独立しており、
eおよびfはそれぞれ独立して0または1を示し、
ベンゼン環の水素原子は、フッ素原子、塩素原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基又はシアノ基にそれぞれ独立して置換されていてもよい)
[11] 一般式(3)が下記一般式(5)であり、一般式(4)が一般式(6)である、[10]に記載の高分子電解質膜。
Figure 0004734279
(式(5)において、
〜Xはそれぞれ独立して一般式(5)中のベンゼン環に直接結合したスルホン酸基であり、
は−SO−または−CO−であり、
iはそれぞれ独立して0、1または2を示す)
Figure 0004734279
(式(6)において、
およびAは直接結合、−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−O−、−S−、−SO−または−CO−であって、それぞれ独立しており、
ベンゼン環の水素原子は、メチル基またはt−ブチル基で置換されていてもよい)
[12] 前記セグメントAが、下記一般式(α)で表される構造の繰り返し単位を有し、かつ前記セグメントBが、下記一般式(β)で表される構造の繰り返し単位を有する、[1]に記載の高分子電解質膜。
Figure 0004734279
(式(α)において、
はベンゼン環に直接結合したスルホン酸基、または脂肪族鎖あるいは芳香族鎖を介してベンゼン環に間接的に結合したスルホン酸基であり、
Dは2価の電子吸引性基を示し、
Eは2価の電子供与基または直接結合を示し、
Ar11はスルホン酸基を有する芳香族基を示し、
qは0〜10の整数を示し、
rは0〜10の整数を示し、
sは1〜4の整数を示す)
Figure 0004734279
(一般式(β)において、
〜Rは互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基、アリル基、アリール基およびシアノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を示し、
Wは2価の電子吸引性基または単結合を示し、
Tは単結合または2価の有機基を示し、
tは0または正の整数を示す)
本発明の第2は、以下に示す高分子電解質膜の製造方法に関する。
[13] [1]に記載の高分子電解質膜の製造方法であって、
酸基を含有するセグメントAと、酸基を実質的に含有しないセグメントBとを有するブロック共重合体、ならびに溶媒Cおよび溶媒Dを含むワニスを準備するステップと、前記ワニスの塗布膜から前記溶媒を除去するステップ、を含み、
前記セグメントAにおける酸基の濃度が0.1〜20mmol/gであり、
前記溶媒Cは、セグメントAのみから構成される重合体aを良好に溶解し、かつセグメントBのみから構成される重合体bを溶解せず、
前記溶媒Dは、セグメントBのみから構成される重合体bを良好に溶解し、
溶媒Cの沸点が溶媒Dの沸点よりも高い、製造方法。
[14] 前記溶媒Cが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、グリセリン、ジメチルスルホキシドからなる群から選ばれる1種類以上である、[13]に記載の製造方法。
[15] 前記溶媒Dが、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、クロロホルム、ジクロロメタンからなる群から選ばれる1種類以上である、[13]に記載の製造方法。
[16] 前記ワニスに含まれるブロック共重合体のセグメントAの酸基は塩である、[13]〜[15]のいずれかに記載の製造方法。
[17] 前記溶媒を除去された塗布膜を、酸性溶液に浸漬するステップをさらに含む、[16]に記載の製造方法。
本発明の第3は、以下に示す高分子電解質型燃料電池に関する。
[18] [1]に記載の高分子電解質膜を含む、高分子電解質型燃料電池。
本発明の高分子電解質膜は、酸基を含む高分子の電解質膜において、酸基の含有率を高めることなくプロトン伝導性を高めることができるので、高湿度雰囲気下においても機械強度が低下しにくい。さらに、高分子電解質膜の粘弾性の温度プロファイルに注目することにより、プロトン伝導性の高い高分子電解質膜を得る手法が提供される。本発明の高分子電解質膜は、好ましくは燃料電池に適用される。
1.本発明の高分子電解質膜
本発明の高分子電解質膜は、酸基を含有するセグメントAと、酸基を実質的に含有しないセグメントBとから構成されるブロック共重合体を含む。セグメントAとセグメントBは、一つの高分子においてそれぞれがある程度の固まりとして存在している。それにより、一つの高分子において酸基を含有する固まり部分と、酸基を実質的に含有しない固まり部分が適度に分散して存在する。酸基を含有する固まり部分と、酸基を実質的に含有しない固まり部分の化学的性質は異なる。化学的性質が異なる複数の部分が同一の高分子に含まれるので、両親媒性の高分子となる。このことが本発明の目的を達成する上で重要であると考えられる。
一方、セグメントAとセグメントBとがランダムに結合したランダム共重合体では、二つの化学的性質が平均化され、一つの高分子に異なる化学的性質が併有されない。よって、本発明の高分子電解質膜を構成する高分子をランダム共重合体とすると、十分に効果が発揮されない。
セグメントAについて
ブロック共重合体に含まれるセグメントAは酸基を有する。実質的に、ブロック共重合体のセグメントAの酸基が、プロトン伝導性を発現させて親水性を付与する。セグメントAは、酸基を有するものであればよいが、そのなかでも一般式(1)で示される構造の繰り返し単位を有することが好ましい。
Figure 0004734279
式(1)において、Ar〜Arはそれぞれ独立して芳香環であり;X〜Xはそれぞれ独立して水素原子または酸基であって、そのうち少なくとも一つが酸基であり;A〜Aは直接結合、−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−O−、−S−、−SO−または−CO−であって、それぞれ独立しており;a、bおよびcはそれぞれ独立して0または1を示し;g、h、i、jおよびkはそれぞれ独立して0、1、2または3を示す。Ar〜Arが示す芳香環の水素原子は、フッ素原子、塩素原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基又はシアノ基にそれぞれ独立して置換されていてもよい。
一般式(1)においてX〜Xが示す酸基は、種々のものを用いることができるが、スルホン酸基を含有していることが好ましい。スルホン酸基は、式(1)のAr〜Arで示される芳香環に、直接結合していてもよく、または間接結合していてもよい。間接結合する場合には、スルホン酸基が脂肪族鎖もしくは芳香族鎖を介して芳香環に結合していていればよく、脂肪族鎖あるいは芳香族鎖中には酸素原子などのヘテロ原子が含まれていてもよい。芳香環に結合する酸基の例には、下記の(7)〜(9)が含まれる。
Figure 0004734279
一般式(1)においてAr〜Arはそれぞれ独立してベンゼン環またはナフタレン環であり;X〜Xの少なくとも二つが酸基であり;Aが−SO−または−CO−であることがより好ましい。さらに一般式(1)は、下記一般式(3)であることが好ましい。
Figure 0004734279
一般式(3)において、X〜XおよびXはそれぞれ独立して、一般式(3)中のベンゼン環に直接結合したスルホン酸基、または一般式(3)中のベンゼン環に脂肪族鎖もしくは芳香族鎖を介して結合したスルホン酸基であり;Aは−SO−または−CO−であり;cは0または1を示し;gおよびhはそれぞれ独立して1、2または3を示し;iおよびkはそれぞれ独立して0、1または2を示す。
一般式(3)で示される構造の繰り返し単位は、当該繰り返し単位のみから構成される重合体が、エチレングリコール(以下「EG」という)、ジエチレングリコール(以下「DEG」という)、トリエチレングリコール(以下「TrEG」という)、テトラエチレングリコール(以下「TtEG」という)、グリセリン(以下「GLY」という)、ジメチルスルホキシド(以下「DMSO」という)から選ばれる少なくとも1種類の溶媒に、25℃において20重量%の濃度にて均一に溶解する構造であることが好ましい。さらに、一般式(3)は、下記一般式(5)であることが好ましい。
Figure 0004734279
一般式(5)において、X〜Xはそれぞれ独立して、一般式(5)中のベンゼン環に直接結合したスルホン酸基であり、Aは−SO−または−CO−であり、iはそれぞれ独立して0、1または2を示す。さらに一般式(5)は、式(10)〜(30)の構造であることが好ましい。このような構造であれば、本発明の効果がより効果的に奏される。
Figure 0004734279
Figure 0004734279
Figure 0004734279
またセグメントAは、一般式(α)で示される構造の繰り返し単位を有することが好ましい。
Figure 0004734279
式(α)においてXは、ベンゼン環に直接結合したスルホン酸基、または脂肪族鎖あるいは芳香族鎖を介してベンゼン環に間接的に結合したスルホン酸基である。Xの例には、X〜Xとして例示された基と同様の基が含まれる。
式(α)においてDは2価の電子吸引性基を示す。Dの例には、−CO−、−SO−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF)−(ここで、lは1〜10の整数である)、−C(CF−などが含まれる。
式(α)においてEは2価の電子吸引性基または直接結合を示す。2価の電子供与基の例には、−(CH)−、−C(CH−、−O−、−S−、−CH=CH−、−C≡C―、および以下の基が含まれる。
Figure 0004734279
式(α)においてAr11は、スルホン酸基を有する芳香族基を示す。芳香族基の例には、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナンチル基などが含まれるが、フェニル基、ナフチル基などが好ましい。
qは0〜10、好ましくは0〜 2の整数を示し、rは0〜10、好ましくは0〜2の整数を示し、sは1〜4の整数を示す。
ブロック共重合体のセグメントAにおける酸基の濃度は、酸基を含むセグメントA全体の重量1gに対して、0.1〜20mmolの範囲であることが好ましく、0.5〜15mmolの範囲であることがより好ましく、1〜10mmolの範囲であることがさらに好ましい。例えば、セグメントAが式(10)で表される繰り返し単位からなる場合にはセグメントAにおける酸基の濃度は4.5mmol/gであり;式(11)で表される繰り返し単位からなる場合にはセグメントAにおける酸基の濃度は5.7mmol/gであり;式(12)で表される繰り返し単位からなる場合にはセグメントAにおける酸基の濃度は7.8mmol/gである。これらは本発明において好適な例として挙げることができる。
ブロック共重合体におけるセグメントAの大きさは、1セグメントあたりの酸基の平均数が3〜100となる大きさであることが好ましく、4〜70となる大きさであることがより好ましく、5〜30となる大きさであることがさらに好ましい。例えば、セグメントAが式(11)で表される繰り返し単位からなる場合には、その平均繰り返し数は2.5〜15が好ましく;式(12)で表される繰り返し単位からなる場合には、その平均繰り返し数は1.7〜10が好ましく;式(13)で表される繰り返し単位からなる場合には、その平均繰り返し数は1〜5が好ましい。
本発明の高分子電解質膜において、ブロック共重合体のセグメントAに含まれる酸基を構成するイオンは、プロトンであっても、金属イオンであっても、金属原子を含む錯イオンであってもよいが、燃料電池に適用する場合にはプロトンであることが好ましい。
セグメントBについて
ブロック共重合体に含まれるセグメントBは酸基を実質的に含有しない。酸基を実質的に含有しないとは、酸基を全く含有しないことであってもよく、含有量が少ないことであってもよい。
セグメントBにおける酸基の好ましい濃度は、酸基を含有するセグメントAにおける酸基の濃度との関連性が高く、セグメントAとのバランスを考慮して適宜選択される。通常は、セグメントBの全体の重量1gに対する酸基のモル量が、セグメントA全体の重量1gに対する酸基のモル量の0.3倍以下であることが好ましく、0.2倍以下であることがより好ましく、0.1倍以下であることが更に好ましい。
例えば、セグメントAが式(10)で表される構造の繰り返し単位からなる場合には、セグメントB全体の重量1gに対する酸基のモル量は0.45mmol以下であることが好ましい。セグメントAが式(11)で表される構造の繰り返し単位からなる場合には、セグメントB全体の重量1gに対する酸基のモル量は0.57mmol以下であることが好ましい。セグメントAが式(12)で表される繰り返し単位からなる場合には、セグメントB全体の重量1gに対する酸基のモル量は0.78mmol以下であることが好ましい。
セグメントBの大きさは、セグメントAの構造ならびに大きさと、ブロック共重合体全体の重量1gに対する酸基の全モル量を規定することにより設定される。
セグメントBは、下記一般式(2)で表される構造の繰り返し単位を有することが好ましい。
Figure 0004734279
一般式(2)において、Ar〜Ar10はそれぞれ独立して芳香環であり;A〜Aは直接結合、−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−O−、−S−、−SO−または−CO−であって、それぞれ独立しており;d、eおよびfはそれぞれ独立して0または1を示し;Ar〜Ar10で示される芳香環の水素原子は、フッ素原子、塩素原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基又はシアノ基に、それぞれ独立して置換されていてもよい。
一般式(2)において、Ar〜Ar10のそれぞれが、ベンゼン環またはナフタレン環であり;Aが−SO−または−CO−であることがより好ましい。また一般式(2)は、下記一般式(4)であることがさらに好ましい。
Figure 0004734279
式(4)において、A〜Aは直接結合、−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−O−、−S−、−SO−または−CO−であって、それぞれ独立しており;eおよびfはそれぞれ独立して0または1を示し;ベンゼン環の水素原子は、フッ素原子、塩素原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基又はシアノ基にそれぞれ独立して置換されていてもよい。
一般式(4)で示される繰り返し単位は、当該繰り返し単位のみから構成される重合体が、N−メチル-2-ピロリドン(以下「NMP」という)、N,N-ジメチルアセトアミド(以下「DMAc」という)、N,N-ジメチルホルムアミド(以下「DMF」という)、テトラヒドロフラン(以下「THF」という)、1,4-ジオキサン(以下「DX」という)、クロロホルム(以下「CHCl」という)、ジクロロメタン(以下「CHCl」という。)から選ばれる少なくとも1種類の溶媒に、25℃において5重量%の濃度にて均一に溶解する構造であることが好ましい。
さらに一般式(4)で示される繰り返し単位は、下記一般式(6)で示される繰り返し単位であることが好ましい。一般式(6)においてAおよびAは直接結合、−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−O−、−S−、−SO−または−CO−であって、それぞれ独立しており;ベンゼン環の水素原子は、メチル基またはt−ブチル基で置換されていてもよい。
Figure 0004734279
セグメントBに含まれる繰り返し単位は、式(31)〜(44)であることがさらに好ましい。このような繰り返し単位であれば、本発明の効果がより効果的に発現される。
Figure 0004734279
セグメントBに含まれる繰り返し単位は、下記一般式(β)で示されてもよい。
Figure 0004734279
式(β)においてR〜Rは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基、アリル基、アリール基およびシアノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を示す。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基などが挙げられ、メチル基、エチル基などが好ましい。フッ素置換アルキル基としては、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基などが挙げられ、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基などが好ましい。アリル基としては、プロペニル基などが挙げられ、アリール基としては、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。
式(β)においてWは、単結合または2価の電子吸引性基を示し、Tは単結合または2価の有機基を示す。式(β)において、Tが−O−である場合にはtは2以上の正の整数であり、−O−以外である場合にはtは1以上の正の整数である。tは、その上限が通常100であり、好ましくは10〜80である。
セグメント(A)が式(α)で示される構造の繰り返し単位を含む場合には、セグメント(B)が式(β)で示される構造の繰り返し単位を含むことが好ましい。
ブロック共重合体に含まれるセグメントAおよびセグメントBの数(ブロックの数)は、平均的にそれぞれ1つ以上ずつ含まれていればよく、それぞれ2つ以上ずつ含まれていることがより好ましい。その数は、本発明の効果が損なわれない範囲であれば特に限定されない。
ブロック共重合体のイオン交換基当量EW(Equivalent weight)、つまりイオン交換基である酸基1モルあたりのブロック共重合体の分子量は、150〜5000g/molであることが好ましく、300〜4000g/molであることがより好ましく、500〜3000g/molの範囲であることがさらに好ましい。
ブロック共重合体は、本発明の条件を満たす範囲であれば、セグメントAまたはセグメントBの種類や長さ、酸基の種類、酸基に対応する陽イオン、EWなどが異なる複数のブロック共重合体の混合物でもよい。
ブロック共重合体は任意の方法で製造され、その方法には種々の方法がある。例えば、1)セグメントAを構成するモノマーを重合してセグメントAを得た後に、それにセグメントBを構成するモノマーを重合してブロック共重合体を製造する方法、2)セグメントBを構成するモノマーを重合してセグメントBを得た後に、それにセグメントAを構成するモノマーを重合してブロック共重合体を製造する方法、3)セグメントAを構成するモノマーを重合してセグメントAを得て、別途にセグメントBを構成するモノマーを重合してセグメントBを得て、それらを混合して互いに結合させてブロック共重合体を製造する方法、4)重合体に、部分選択的に酸基を導入する方法、などを好適に挙げることができる。
ブロック共重合体の製法例として、一般式(1)で示される繰り返し単位を含むセグメントAを構成するモノマーを重合してセグメントAを得た後に、それに一般式(2)で示される繰り返し単位を含むセグメントBを構成するモノマーを混合して重合し、ブロック共重合体を製造する方法について具体的に説明する。
適切な溶媒中で、一般式(1)で示される繰り返し単位を含むセグメントAを構成する芳香族ジハライド化合物と、芳香族ジヒドロキシ化合物を、セグメントAの繰り返し単位の平均繰り返し数が所望の値となるようなモル比(1:1以外になる)で混合する。さらに炭酸カリウムなどの塩基を加えて、加熱温度域(例えば140〜180℃)にて脱水重縮合する。このとき、生成する水を効率良く除去するために、例えばトルエンなどの共沸溶剤を用いてもよい。セグメントAを合成する際の反応溶媒の好ましい例にはDMSOなどが含まれる。
混合する芳香族ジハライド化合物と、芳香族ジヒドロキシ化合物とのモル比を、例えば5:4とすれば、セグメントAの繰り返し単位の平均繰り返し数を4.5に制御することができる。このようにして得られたセグメントAの分子量を、35℃における還元粘度として表すと0.02〜0.7dL/gであることが好ましい。ただし、分子量の好ましい範囲はセグメントAの構造にも依存して変化しうる。
得られたセグメントAに、一般式(2)で示される繰り返し単位を含むセグメントBを構成する芳香族ジハライド化合物と、芳香族ジヒドロキシ化合物とを混合する。適切な溶媒中で炭酸カリウムなどを共存させ、加熱温度域(例えば140〜180℃)にて脱水重縮合する。この際にも、生成する水を効率良く除去するために、例えばトルエンなどの共沸溶剤を用いることができる。この工程における反応溶媒の好ましい例には、DMSOなどが含まれるが、セグメントBの溶解性によってはNMPやDMAcなどを用いたり、DMSOとの混合溶媒としたりすることが好ましい。
セグメントBを構成する芳香族ジハライド化合物および芳香族ジヒドロキシ化合物の量は、ブロック共重合体の全体で芳香族ジハライド化合物と芳香族ジヒドロキシ化合物とが等モル量あるいはその近傍となるように調整する。よって、セグメントAを構成する芳香族ジハライド化合物および芳香族ジヒドロキシ化合物の量も考慮して調整することが好ましい。それにより、より高い分子量のブロック共重合体を得ることができる。
得られたブロック共重合体の分子量を35℃における還元粘度として表すと、0.2〜4.0dL/gが好ましく、0.3〜2.0dL/gがより好ましい。ただし分子量の好ましい範囲は、セグメントAやセグメントBの構造、それぞれのセグメントの長さ、その組み合わせなどにも依存して変化しうる。
セグメントAを構成する芳香族ジハライド化合物およびジヒドロキシ化合物、ならびにセグメントBを構成する芳香族ジハライド化合物およびジヒドロキシ化合物としては、特に制限されるものではないが、代表的な具体例として以下のものを挙げることができる。
セグメントAを構成する芳香族ジハライド化合物の好ましい例には、4,4'-ジフルオロベンゾフェノン、4,4'-ジクロロベンゾフェノン、ビス(4-フルオロフェニル)スルホン、ビス(4-クロロフェニル)スルホン、3,3'-ビス(スルホン酸ナトリウム)-4,4'-ジフルオロベンゾフェノン、3,3'-ビス(スルホン酸ナトリウム)-4,4'-ジクロロベンゾフェノン、ビス(3-スルホン酸ナトリウム-4-フルオロフェニル)スルホン、ビス(3-スルホン酸ナトリウム-4-クロロフェニル)スルホン、3,3'-ビス(スルホン酸カリウム)-4,4'-ジフルオロベンゾフェノン、3,3'-ビス(スルホン酸カリウム)-4,4'-ジクロロベンゾフェノン、ビス(3-スルホン酸カリウム-4-フルオロフェニル)スルホン、ビス(3-スルホン酸カリウム-4-クロロフェニル)スルホンなどが含まれる。
セグメントAを構成する芳香族ジヒドロキシ化合物の好ましい例には、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、4,4'-ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4'-ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、4,4'-メチレンビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4'-(1-メチルエチリデン)ビス(2-(1,1-ジメチルエチル)フェノール)、4,4'-ビフェノール、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ハイドロキノンスルホン酸カリウム、ハイドロキノン-2,5-ジスルホン酸カリウム、ハイドロキノン-2,6-ジスルホン酸カリウムなどが含まれる。
セグメントBを構成する芳香族ジハライド化合物の好ましい例には、4,4'-ジフルオロベンゾフェノン、4,4'-ジクロロベンゾフェノン、ビス(4-フルオロフェニル)スルホン、ビス(4-クロロフェニル)スルホンなどが含まれる。
セグメントBを構成する芳香族ジヒドロキシ化合物の好ましい例には、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、4,4'-ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4'-ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、4,4'-メチレンビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4'-(1-メチルエチリデン)ビス(2-(1,1-ジメチルエチル)フェノール)、4,4'-ビフェノール、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノンなどが含まれる。
また、式(α)で示される繰り返し単位を含むセグメントAと、式(β)で示される繰り返し単位を含むセグメントBを有するブロック共重合体は、特開2005−146145を参照して製造される。例えばセグメントAを構成するモノマーと、セグメントBを構成するオリゴマーとを、触媒の存在下で反応させて得ることができる。
式(α)で示される繰り返し単位を含むセグメントAを作製するモノマーの例には、式(α’)で示される化合物が含まれる。
Figure 0004734279
式(α’)においてZは、フッ素を除くハロゲン原子、OSOZ(ここで、Zはアルキル基、フッ素置換アルキル基またはアリール基を示す)から選ばれる原子または基を示す。Ar12は、Ar11のスルホン酸基がアルキルスルホニルエステル基とされた置換基を示す。Xは、X6のスルホン酸基がアルキルスルホニルエステル基とされた置換基を示す。D、E、q、rおよびsは、それぞれ上記一般式(α)中のD、E、q、rおよびsと同義である。
式(β)で示される繰り返し単位を含むセグメントBを構成するオリゴマーの例には、式(β’)で示される化合物が含まれる。
Figure 0004734279
式(β’)におけるZは、フッ素を除くハロゲン原子、OSOZ(ここで、Zはアルキル基、フッ素置換アルキル基またはアリール基を示す)から選ばれる原子または基を示す。式(β’)におけるR〜R、W、T、tは、式(β)と同様である。
セグメントAを構成するモノマーと、セグメントBを構成するオリゴマーとの反応に用いられる触媒は、触媒系としては、(1)遷移金属塩および配位子となる化合物(「配位子成分」という)、または配位子が配位された遷移金属錯体(銅塩を含む)、および(2) 還元剤を必須成分とし、さらに、重合速度を上げるために「塩」を添加してもよい。
本発明の高分子電解質膜は、セグメントAとセグメントBを含むブロック共重合体を含有するが、そのEW(イオン交換基すなわち酸基1モルあたりの分子量)は、150〜5000g/molであることが好ましく、300〜4000g/molであることがより好ましく、350〜1200g/molであることがさらに好ましく、500〜700g/molであることがよりさらに好ましい。高分子電解質膜のEWは、それに含まれるブロック共重合体のEWを調整して制御される。
本発明の高分子電解質膜は、粘弾性の温度プロファイルに特徴を有する。一般的にポリマーは、ガラス転移温度を超えると、その貯蔵弾性率が急激に低下する性質を有する。セグメントAからなるポリマーのガラス転移温度は、セグメントBからなるポリマーのガラス転移温度に比べて高温度になる傾向があり、セグメントAからなるポリマーのガラス転移温度は、それに含まれる酸基が塩の場合に特に高温度になる。
したがって、セグメントAとセグメントBを含むブロック共重合体を含む高分子電解質膜は、セグメントBからなるポリマーのガラス転移温度付近にガラス転移温度を有し、その温度を超えると貯蔵弾性率が一般的に急激に低下する。
しかしながら、本発明の高分子電解質膜は、セグメントBからなるポリマーのガラス転移温度付近での貯蔵弾性率の低下が抑制されていることを特徴とする。
本発明の高分子電解質膜は、それに含まれるブロック共重合体のセグメントBからなるポリマーのガラス転移温度(℃)をXとするときに、X+10(℃)における貯蔵弾性率(Pa)が、X−20(℃)における貯蔵弾性率に対して、20%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。
また本発明の高分子電解質膜は、X+30(℃)における貯蔵弾性率(Pa)が、X−20(℃)における貯蔵弾性率に対して、15%以上であることが好ましく、30%以上であることがよりこのましい。このように、セグメントBからなるポリマーのガラス転移温度X(℃)よりも低い温度から高い温度へ変化しても、貯蔵弾性率の急激な低下が抑制されていることが好ましい。
さらに本発明の高分子電解質膜は、X+30(℃)における貯蔵弾性率(Pa)が、X+10(℃)における貯蔵弾性率に対して50%以上であることが好ましい。このように、セグメントBからなるポリマーのガラス転移温度(℃)よりも高い温度領域で温度が変化しても、貯蔵弾性率の急激な低下が抑制されていることが好ましい。
また本発明の高分子電解質膜の、X+10(℃)における貯蔵弾性率は、5.0×10(Pa)以上であることが好ましく、1.0×10(Pa)以上であることがより好ましい。膜としての強度を得るためである。
貯蔵弾性率の測定は、後述の実施例に記載の手順と同様にして行なわれる。貯蔵弾性率は、それに含まれる酸基がプロトン酸基である高分子電解質膜の貯蔵弾性率ではなく、塩(例えばリチウム塩)である高分子電解質膜の貯蔵弾性率であることが好ましい。酸基がプロトン酸基である高分子電解質膜は、高温状態において一部分解などと想定される現象が起こることがあり、粘弾性の適切な評価を行えない場合があるからである。よって貯蔵弾性率の測定は、酸基を塩とされた高分子電解質膜を測定試料として用いることが好ましい。
本発明の高分子電解質膜の貯蔵弾性率の低下が抑制されるメカニズムは、特に限定されないが、高分子電解質膜におけるセグメントAの分子レベルにおける立体的配置(モルフォロジー)によるものと考えられる。つまり、高分子電解質膜においてセグメントAは、分子レベルにおいて連続的に貫通した道筋を形成し、かつこの道筋が多岐に渡って枝分かれをして、効率よく網目状に連続性を持って存在していると考えられる。同様に、セグメントBも分子レベルにおいて、連続的に貫通した道筋を形成し、網目状に連続性を持って存在していると考えられる。このように、セグメントAとセグメントBは相互に分子レベルで入り組んだ立体的な網目構造を有しており、しかも両セグメントはお互いに分離して相分離構造を形成していると考えられる。
そのため、セグメントBからなるドメインが、温度Xを超えて上昇してその粘弾性を低下させたとしても、セグメントAが網目状に連続性を持って存在しているので、セグメントAが骨格となって高分子電解質膜の貯蔵弾性率の低下を抑制していると考えられる。
これらのセグメントAの分子レベルにおける立体的配置(モルフォロジー)は、高分子電解質膜の作製においてブロック共重合体を含むワニスの塗布膜を形成するときに、ワニスに含まれる溶媒を適切に選択することにより実現される。この点については、後に詳細に説明する。
本発明の高分子電解質膜は、それに含まれるブロック共重合体の構造やEWなどに影響を受けるが、そのイオン伝導度を高めることができる。
例えば、ブロック共重合体のEWが約1000〜1200g/molの場合、高分子電解質膜の80℃におけるプロトン伝導度は、相対湿度40%において1〜5mS/cmであり、高い伝導度を発現する。
またブロック共重合体のEWが約600〜700g/molの場合、高分子電解質膜の80℃におけるプロトン伝導度は、相対湿度40%において3〜8mS/cmであり、高い伝導度を発現する。
プロトン伝導度の測定は、後述の実施例に記載の手順と同様にして行なわれる。
一般的に、高分子電解質膜のプロトン伝導度を高めるには、高分子電解質膜の高分子に含まれる酸基の含有率を高める必要がある。ところが、酸基の含有率が高めると、水分が多い環境において吸水膨潤するために寸法安定性が低下する。水分が多い環境における吸水膨潤による寸法安定性は、酸基の立体的配置には実質的に関連性が低く、酸基の量自体に主に関連するためである。これに対して、本発明の高分子電解質膜は、酸基の含有率を高めていないにもかかわらず、イオン伝導度が高められている。
前述の通り、本発明の高分子電解質膜においてセグメントAは、分子レベルにおいて連続的に貫通した道筋を形成し、セグメントBのマトリックスと相分離構造を形成していると考えられる。このセグメントAのモルフォロジーが、粘弾性の温度プロファイルに影響を与えていることは前述の通りであるが、このセグメントAが形成する道筋は、プロトンが伝導するための道筋ともなると考えられる。そのため、本発明の高分子電解質膜のプロトン伝導度が高められている。このように、高分子電解質膜のブロック共重合体のセグメントAが、プロトン伝導性の発現に効率よく寄与できるような分子レベルでの立体的配置を自己組織的にとり、ブロック共重合体の潜在的な能力を十分に引き出していると考えられる。
従来の高分子電解質膜では、プロトン伝導性を発現するには酸基の含有率を上げる必要があった。一方、本発明の高分子電解質膜は、酸基の含有率ではなく、酸基を有するセグメントAのモルフォロジーを制御することによって、プロトン伝導性を高める。したがって本発明の高分子電解質膜は、当該寸法安定性の向上と、プロトン伝導性の向上という、従来はトレードオフの関係にある物性を両立している。そのため、本発明の高分子電解質膜の高湿度環境での吸水膨潤は抑制されており、寸法安定性も高い。
本発明の高分子電解質膜の寸法安定性は、構成するブロック共重合体の構造やEWなどに影響を受けるが、例示すると、ブロック共重合体のEWが約1000〜1200g/molの場合、減圧乾燥した後に室温で24時間蒸留水に浸漬させた際の高分子電解質膜の体積膨潤率は15〜30体積%程度であり、寸法安定性に優れる。またブロック共重合体のEWが約600〜700g/molの場合、室温で24時間蒸留水に浸漬させた際の高分子電解質膜の体積膨潤率は50〜80体積%である。
さらに本発明の高分子電解質膜の、低湿度条件(特に相対湿度が約20〜40%)でのプロトン伝導性も高い。低湿度条件でのプロトン伝導性も、高分子電解質膜におけるブロック共重合体のセグメントAの分子レベルにおける立体的配置(モルフォロジー)によって高められていると考えられるが、そのメカニズムは特に制限されない。
本発明の高分子電解質膜の形状は、用途に応じて選択すればよいが、通常はフィルム状またはシート状である。高分子電解質膜の厚さには特に制限はないが、自立膜である場合には5〜300μm、塗膜である場合には0.1〜200μmが好適な範囲として挙げることができる。
高分子電解質膜の用途について
本発明の高分子電解質膜は、種々の用途に用いることができる。例えば、電気デバイス用の膜として用いることができ、燃料電池用の膜として用いることができる。電池などにおいては、膜単体の自立膜のみならず、基材、電極膜や他の高分子電解質膜などに密着した塗膜などとして用いることができる。
本発明の高分子電解質膜には、その用途に応じて、電気伝導性を有する導電材;水素の酸化反応や酸素の還元反応を促進する触媒などが含まれていてもよい。また、電気伝導性を有さない酸化物や樹脂などのフィラーが含まれていてもよい。
2.本発明の高分子電解質膜の製造方法
本発明の高分子電解質膜は、本発明の効果を損なわない限り、任意の方法で製造されうるが、好ましくは以下のステップを含む。
ステップ1:酸基を有するセグメントAと、酸基を実質的に含有しないセグメントBを含むブロック共重合体を準備するステップ
ステップ2:セグメントAのみから構成されるポリマーを良好に溶解し、セグメントBのみから構成されるポリマーを溶解しない溶媒Cと、セグメントBのみから構成されるポリマーを溶解し、溶媒Cよりも低い沸点を有する溶媒Dとを含む混合溶媒に、前記ブロック共重合体を溶解させて重合体組成物(ワニス)を得るステップ
ステップ3:前記ワニスの塗布膜から、前記混合溶媒を除去するステップ
ステップ1について
前述の通りステップ1では、ブロック共重合体を準備する。ブロック共重合体は、前述の通り酸基を有するセグメントAと、酸基を実質的に含有しないセグメントBを含む。
ステップ1で準備されるブロック共重合体のセグメントAにおける酸基の濃度は、酸基を含めたセグメントA全体の重量1gに対して、0.1〜20mmolの範囲であることが好ましく、0.5〜15mmolの範囲であることがより好ましく、1〜10mmolの範囲であることがさらに好ましい。
ステップ1で準備されるブロック共重合体におけるセグメントAの酸基は、塩であることが好ましい。セグメントAの酸基を構成するイオンが、プロトン(水素イオン)のみで構成されているよりも、少なくともその一部が塩である方が、製造される高分子電解質膜のプロトン伝導性が高まる。
一般に、酸基を含む重合体から高分子電解質膜を製造する方法では、酸基を構成するイオンがプロトン(水素イオン)である重合体を、適切な溶媒に溶解して溶液(ワニス)を作製し;その溶液を膜状に塗布して塗布膜を形成した後に、溶媒を除去する方法が広く用いられている。一方、本発明の高分子電解質膜を製造するには、酸基に対応する陽イオンがプロトン(水素イオン)のみで構成されている重合体のワニスよりも、一部あるいは全ての陽イオンがナトリウムイオンやカリウムイオンなどの金属イオン、または金属原子を含む錯イオンで構成されている重合体のワニスを用いることが好ましい。
酸基の塩を構成する陽イオンは、特に限定されないが、金属イオンあるいは金属原子を含む錯イオンであることが好ましい。金属イオンの好ましい例には、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンなどが含まれ、より好ましい例にはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオンなど含まれる。金属原子を含む錯イオンの例には、[Co(NH3+などが含まれる。
セグメントAの酸基を構成する陽イオンのうち、金属イオンまたは金属原子を含む錯イオンである比率は高いほうが好ましい。酸基を構成する陽イオン全体に対する、金属イオンまたは金属原子を含む錯イオンの割合は、モル数換算で20%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。
金属イオンまたは金属原子を含む錯イオンは、一種類から構成されていてもよく、複数種類から構成されていてもよい。例えば、酸基としてスルホン酸基が導入されたモノマーを原料にしてブロック型共重合体を製造するには、ナトリウムイオン型やカリウムイオン型のスルホン酸基が導入されたモノマーを重合することが好ましい。得られたブロック共重合体は、必要に応じて溶媒や副生成物からの単離操作を行うが、酸基を構成する陽イオンを変更することなく、ワニスとすることができる。その際には酸基を構成する陽イオンにはナトリウムイオンとカリウムイオンが混在する。
ステップ2について
前述の通りステップ2では、ブロック共重合体を溶媒Cおよび溶媒Dを含む混合溶媒に溶解させて、重合体組成物(ワニス)を得る。
溶媒Cについて
溶媒Cは、セグメントAとの相互親和性が高いほど好ましく、セグメントBとの相互親和性が低いほど好ましい。つまり、溶媒Cは、セグメントAのみからなる重合体aを良好に溶解するが、セグメントBのみからなる重合体bを溶解しない。
具体的には、溶媒Cに重合体aを25℃において溶解させると、溶媒Cと重合体aの合計重量に対して、20重量%以上の重合体aが均一に溶解する。重合体aは、35℃における還元粘度として表される分子量が通常は0.2〜1.5dL/gの範囲にあるが、良好に溶解するのであれば、分子量が1.5dL/gを超えていても構わない。ただし重合体aの分子量が大きすぎると、溶解しているにもかかわらず、見かけ上均一な溶液にならなかったり、均一な溶液になっても粘度が非常に増して擬似的にゲル状態になったりすることがある。また重合体aの分子量が小さい場合には、溶解していないにもかかわらず、見かけ上溶解したような挙動がみられることがある。
また溶媒Cに重合体bを25℃において溶解させると、溶媒Cと重合体bの合計重量に対して20重量%以上の重合体bは均一に溶解しないか、またはゲル状態の溶液となる。好ましくは、溶媒Cに重合体bを、溶媒Cの沸点よりも30℃低い温度において溶解させると、溶媒Cと重合体bの合計重量に対して20重量%以上の重合体bは均一に溶解しないか、またはゲル状態の溶液となる。より好ましくは、溶媒Cに重合体bを、溶媒Cの沸点よりも30℃低い温度において溶解させると、溶媒Cと重合体bの合計重量に対して15重量%以上の重合体bは均一に溶解しないか、またはゲル状態の溶液となる。
重合体bは、35℃における還元粘度として表される分子量が、通常は0.2〜1.5の範囲にあるが、前述の条件で均一に溶解しないか、ゲル状態になるのであれば、分子量が0.2dL/g未満であってもよい。
このように、溶媒CはセグメントAおよびセグメントBに対して、相反する溶解性を併せもつ。後述の通り溶媒Cの特性が、得られる高分子電解質膜の性質に重要な影響を及ぼす。
溶媒Cは、金属イオンとの親和性が高い溶媒であることが好ましい。溶媒Cの例には、EG(沸点198℃)、DEG(沸点246℃)、TrEG(沸点285℃)、TtEG(沸点327℃)、GLY(沸点291℃)、DMSO(沸点189℃)および水などが含まれる。溶媒Cは混合溶媒であってもよく、混合される溶媒の種類の数に特に制限はなく、一種類または二種類以上の溶媒を用いてもよい。
例えば、EG、DEG、TEG、TtEG、GLYおよびDMSOから選ばれる少なくとも1種類の溶媒は、前記一般式(3)で表される繰り返し単位のみからなる重合体を、25℃において20重量%の濃度にて均一に溶解する。
なお、モノオール(例えばメタノールやエタノール、シクロヘキサノールなど)などの、金属イオンとの親和性が高くない溶媒は、溶媒Cとして通常は適さない。
溶媒Dについて
溶媒Dは、セグメントBのみから構成される重合体bを良好に溶解する。
具外的には、溶媒Dに重合体bを25℃において溶解させると、溶媒Dと重合体bとの合計重量に対して、5重量%以上の重合体bが、好ましくは10重量%以上の重合体bが、より好ましくは15重量%の重合体bが、さらに好ましくは20重量%の重合体bが溶解して均一な溶液となる。
重合体bは、通常は35℃における還元粘度として表される分子量が0.2〜1.5dL/gであるが、良好に溶解するのであれば、分子量が1.5dL/gを超えていてもよい。ただし、重合体bの分子量が大きすぎる場合には、溶解しているにもかかわらず、見かけ上均一な溶液にならなかったり、均一な溶液になっても粘度が非常に増して擬似的にゲル状態になったりすることがある。また重合体bの分子量が小さい場合には、溶解していないにもかかわらず、見かけ上溶解するような挙動がみられることがある。
セグメントAのみから構成される重合体aに対する溶媒Dの溶解性は、特に制限されるものではないが低い方が好ましい。
具体的には、溶媒Dに重合体aを25℃において溶解させると、溶媒Dと重合体aとの合計質量に対して20重量%以上の重合体aを均一に溶解できないか、またはゲル状態の溶液となる。好ましくは、溶媒Dに重合体aを、溶媒Dの沸点よりも30℃低い温度において溶解させると、20重量%以上の重合体aを均一に溶解できないか、またはゲル状態の溶液となり、より好ましくは溶媒Dの沸点より30℃低い温度において溶解させると、15重量%以上の重合体aを均一に溶解できないか、またはゲル状態の溶液となる。
重合体aは、通常は35℃における還元粘度として表される分子量が0.2〜1.5dL/gであるが、前述の条件にて均一に溶解できないか、またはゲル状態となるようであれば、分子量が0.2dL/g未満であってもよい。
溶媒Dは、種々のものを用いることができ、芳香族ポリエーテルとの親和性が高い溶媒であることが好ましい。溶媒Dの例には、NMP(沸点202℃)、DMAc(沸点166℃)、DMF(沸点153℃)、THF(沸点66℃)、DX(沸点101℃)、CHCl(沸点61℃)、およびCHCl(沸点40℃)などが含まれる。溶媒Dは混合溶媒であってもよく、混合溶媒に含まれる溶媒の種類の数に制限は特にない。
具体的には、NMP、DMAc、DMF、THF、DX、CHCl及びCHClから選ばれる少なくとも1種類の溶媒は、前記一般式(4)で表される繰り返し単位のみからなる重合体を、25℃において5重量%の濃度にて均一に溶解する。
混合溶媒について
ワニスに含まれる溶媒Cと溶媒Dの混合比は、特に限定されず、ブロック共重合体を均一に溶解し、かつ適度な粘性を有するワニスとなるように適宜選択すればよい。重合体組成物をワニスとして用いるためである。通常は、溶媒Cと溶媒Dが均一溶媒となる比率を選択するが、溶媒Cと溶媒Dが均一溶媒にならない比率であっても、本発明のブロック共重合重合体が共存することによって均一溶液となるのであれば、当該比率としてもよい。
混合溶媒に含まれる溶媒Cの沸点は、溶媒Dの沸点よりも高いことが好ましく、溶媒Dの沸点よりも10℃以上高いことが好ましく、20℃以上高いことがより好ましく、30℃以上高いことがさらに好ましい。後述のステップ3において、ワニスの塗布膜から溶媒Dを優先的に除去するためである。
混合溶媒に含まれる溶媒Cと溶媒Dの組み合わせは、種々の組み合わせが考えられる。溶媒Cと溶媒Dのそれぞれが一種類の溶媒であっても、いずれか一方または両方が二種類以上の溶媒の混合溶媒であってもよい。二種類以上の溶媒を組み合わせる場合は、溶媒Cに含まれる溶媒で最も沸点の高い溶媒の沸点が、溶媒Dに含まれる溶媒で最も沸点の低い溶媒の沸点より高いことが好ましい。
溶媒Cと溶媒Dの組み合わせは、上述の条件を満たすものであれば特に制限されず、ブロック共重合体のセグメントAおよびセグメントB構造や、溶媒に対する溶解性、酸基に対応する陽イオンの種類、各セグメントの長さ、両セグメントの比などによって適宜選択される。代表的な「溶媒Cと溶媒D」の好ましい組み合わせの例には、EGとDMAc、EGとDMF、EGとTHF、EGとDX、DEGとNMP、DEGとDMAc、DEGとDMF、DEGとTHF、DEGとDX、DMSOとDMAc、DMSOとDMF、DMSOとTHF、DMSOとDX、DMSOとCHCl、DMSOとCHCl、水とTHFなどが含まれる。より好ましい例には、EGとDMAc、EGとDMF、EGとTHF、EGとDX、DMSOとDMAc、DMSOとDMF、DMSOとTHF、DMSOとDX、DMSOとCHCl、DMSOとCHClなどが含まれる。
セグメントAおよびセグメントBを含むブロック共重合体は、溶媒Cまたは溶媒Dのみでは、均一に溶解しなかったり、ゲル状態の溶液になったりして、均質な粘性のある溶液(ワニス)にならないおそれがある。そのため、溶媒Cと溶媒Dを含む混合溶媒を用いてワニスを作製する。混合溶媒はブロック共重合体を均一に溶解して粘性のあるワニスとすることができ、高分子電解質膜を製造する際の取り扱いを容易にする。溶媒Dは、沸点が溶媒Cよりも低いため、高分子電解質膜を製造するために作製したワニスの塗布膜から先に消失する。塗布膜から溶媒Dが消失すると、前述のように溶媒Cと、ブロック共重合体の各セグメント(セグメントAとセグメントB)とが相互作用をして、セグメントAが分子レベルにおいて連続的に貫通した道筋を形成した高分子電解質膜を形成すると考えられる。
混合溶媒における溶媒Cと溶媒Dの混合比は、得られるワニスの粘性を考慮して選定するのが好ましい。得られるワニスの粘度は、好ましくは1×10〜1×10mPa・sであり、より好ましくは3×10〜3×10mPa・sである。また一般的には、溶媒Cの割合が高い方が本発明の効果がより高く発現する傾向がみられる。全ての場合にあてはめられるわけではないが、溶媒Cと溶媒Dの合計に対する溶媒Cの割合を、50重量%〜75重量%として、溶媒Cの割合を高めてもよい。
たとえば、溶媒Cを用いて、全質量に対して5〜30重量%のブロック共重合体を含むワニスを作製しようとすると、一般にゲル状態や膨潤状態となるか、またはブロック共重合体の全てもしくは一部が不溶となる(もちろん、ブロック共重合体の分子量にも影響される)。ブロック共重合体が、溶媒Cに対して良溶解性のセグメントAと、貧溶解性のセグメントBの両方を併せ持っているため、溶媒Cのみには溶解しにくいためであると考えられる。そこで、ブロック共重合体の濃度(全質量に対して5〜30重量%)を変えずに、溶媒Dの混合比を増大させていくと、通常はある範囲で粘性のある溶液状態(ワニス)となる。さらに溶媒Dの割合を増大させると、ブロック共重合体の分子量にも影響されるが、一般には再度ゲル状態や膨潤状態になるか、またはブロック共重合体の全てまたは一部が不溶となる。
粘性のある溶液状態のワニスを得るには、ブロック共重合体のセグメントAおよびセグメントBの構造、それらの大きさ、それらの比率、ブロック共重合体全体のEW、酸基に対応する陽イオンの種類、溶媒Cおよび溶媒Dの種類などを考慮する必要がある。また、溶媒Cと溶媒Dの溶媒同士の親和性にも依存することがある。
同一のブロック共重合体であっても、溶媒Cおよび溶媒Dの種類によって、粘性のある溶液状態のワニスが得られる組成は異なる場合がある。さらにセグメントAおよびセグメントBの繰り返し単位の構造が同じで、かつ用いる溶媒Cおよび溶媒Dが同じでも、セグメントAおよびセグメントBの大きさ(すなわち繰り返し単位の数)や、EWによって、粘性のある溶液状態のワニスとなる組成は異なる場合がある。またブロック共重合体全体のEW、セグメントBの構造、用いる溶媒Cおよび溶媒Dが同じでも、セグメントAの酸基の濃度によって、粘性のある溶液状態のワニスとなる組成が異なる場合がある。
一般的に、溶液状態のワニスを得るには、ブロック共重合体のEWが低くなるにつれて(重合体の全体における酸基の含有率が増すにつれて)溶媒Cの割合を増大させることが好ましく;セグメントAにおける酸基の濃度が高くなるにつれて溶媒Cの割合を増大させることが好ましく;溶媒CとセグメントAの親和性が高いほど、また溶媒DとセグメントBの親和性が高いほど溶媒Cの割合を増大させることが好ましい傾向がみられる。
ワニスには、前記ブロック共重合体と溶媒以外にも、用途に応じて任意の成分が含まれていてもよい。例えば、他の高分子重合体、低分子化合物、無機物、溶媒、添加剤などを含んでいてもよい。具体的には、電気伝導性を有する導電材、水素の酸化反応や酸素の還元反応を促進する触媒、電気伝導性を持たない酸化物や樹脂などのフィラーを挙げることができる。
ワニスは、ブロック共重合体、ならびに溶媒Cおよび溶媒Dを、同一容器内で攪拌し、溶解させるなどの操作によって製造できる。溶解を促進させるために、必要に応じて加熱や超音波付与などの処理を行ってもよい。
ステップ3について
前述の通りステップ3では、ステップ2で得られた重合体組成物(ワニス)の塗布膜を形成し、塗布膜から溶媒を除去する。
塗布膜は、ワニスを基板上に塗布して膜状物にして得ることができる。ワニスを塗布する基板の種類は特に限定されないが、例えば基板上に形成した膜を剥離して用いる場合には、高分子電解質膜を剥離しやすい基板であることが好ましい。基板の好適な例には、ガラスや石英などの無機物や無機酸化物;銅、金やアルミニウムなどの金属、またはそれら金属酸化物;ポリエチレンテレフタレート、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンなどの樹脂類などが含まれる。ワニスの塗布前に、必要に応じて基板表面に表面処理などが施されてもよい。
ワニスを基板に塗布する方法も特に限定されるものではなく、バーコート法、スピンコート法などを挙げることができる。ワニスの塗布膜の厚さは、ワニス中のブロック共重合体の濃度や、作製したい高分子電解質膜の厚さなどによって選択できるが、通常は0.01mm〜10mmの範囲である。
ワニスを塗布するときの温度も特に規定されるものではないが、溶媒Cおよび溶媒D、ワニスに含まれる他の揮発性を有する物質の沸点などを考慮して、例えば−20〜100℃程度が好適な範囲として例示することができる。作業効率性などから、10〜40℃程度の領域が選択されることが一般的である。溶媒Cや溶媒Dの沸点に比べて温度が高い条件では、均一に塗布することが通常容易でないため、これらの沸点よりも低い温度条件から選択することが一般的に好適である。
ワニスの塗布膜から溶媒が除去される。溶媒の除去は塗布膜の加熱により行えばよい。加熱温度が、溶媒Cおよび溶媒Dの沸点に対して低すぎると、溶媒が十分に除去されず本発明の効果が十分に発現しない場合がある。したがって加熱温度の下限は、好ましくは溶媒Cの沸点から150℃低い温度であり、より好ましくは沸点から100℃低い温度であり、さらに好ましくは80℃低い温度であり、よりさらに好ましくは溶媒Cの沸点から50℃低い温度である。例えば溶媒CとしてEGを用いた場合には、48℃以上が好ましく、98℃以上がより好ましく、118℃以上が更に好ましく、148℃以上であることが特に好ましい。本発明の効果が損なわれない範囲であれば、加熱温度を溶媒Cの沸点よりも高い温度にしてもよい。
溶媒Cを二種類以上の溶媒の混合溶媒とするときには、それらの沸点や混合の割合などにも影響されるが、通常は、溶媒Cのうち沸点が高い溶媒の沸点を基準とするか、もしくは最も割合の高い溶媒の沸点を基準として、加熱温度を設定することが好ましい。
ワニスにおけるブロック共重合体の酸基に対応する陽イオンの一部または全てが水素イオン(プロトン)であると、加熱条件によってはブロック重合体が変性したり劣化したりすることがある。塗布膜の加熱温度は、このような変性や劣化が起こらない範囲で設定する必要がある。
塗布膜の加熱時間も限定されるものではないが、1分から10時間の範囲が好ましい条件の一例として例示できる。
前述の通りワニスには、前記ブロック共重合体と、ブロック共重合体のセグメントAとの相互親和性が高い溶媒Cと、ブロック共重合体のセグメントBとの相互親和性が高い溶媒Dとを有する。この相互親和性は、ワニスの塗布膜から加熱などにより溶媒を除去して高分子電解質膜を形成する過程において、電解質膜内に形成されるセグメントAとセグメントBの相分離構造に大きく寄与すると考えられる。そして、セグメントAとセグメントBの相分離構造は、プロトンなどのイオンの伝導性に大きく影響すると考えられる。
その結果、セグメントAが分子レベルにおいて連続的で貫通した道筋を形成し、かつこの道筋が多岐に渡って枝分かれし、効率よく網目状に連続性を持って結合する。同様に、セグメントBも分子レベルにおいて、連続的に貫通した道筋を形成し、網目状に連続性を持って結合する。このように、セグメントAとセグメントBは相互に分子レベルで入り組んだ立体的な網目構造を有しており、しかも両セグメントはお互いに分離して相分離構造を形成して存在するようになる。
このような相分離構造を形成するために、溶媒Cのブロック共重合体に対する溶解特性が重要な役割を果たすと考えられる。すなわち溶媒Cにおいて、ブロック共重合体のセグメントB同士は、その貧溶解性から凝集する傾向にある一方で、セグメントAは溶媒Cとの高い親和性によって凝集することなく、全体に広がると推察される。この状態を維持したまま、溶媒Cが加熱などによって揮発して除去されると、セグメントAが上述のような理想的な相分離構造となり、本発明の効果が発現するものと推察される。このとき、セグメントBは主に、高分子電解質膜全体の物理的機械的特性を担う部分となるため、セグメントAの相分離構造は、独立した島状よりもむしろ、ある程度網目状に三次元的にネットワークを形成するような構造であることが好ましいと推察される。島状の構造となると、セグメントAがイオン(プロトン)の通り道になりにくいためである。すなわち、セグメントAからなる網目とセグメントBからなる網目とが、お互いに入り組んだ状態となっていることが好ましい。
後処理について
ワニス中のブロック共重合体の酸基に対応する陽イオンが、金属イオンもしくは金属原子を含む錯イオンであった場合には、基板上に作製された高分子電解質膜を、酸性溶液に浸漬することが好ましい。酸性溶液に浸漬することによって、高分子電解質膜を構成するブロック共重合体の酸基に対応する陽イオンをプロトン(水素イオン)に変換することができる。酸基に対応する陽イオンをプロトンとすることにより、高分子電解質膜のイオン伝導性をより高めることができる。
酸性溶液は特に限定されるものではないが、例えば0.1〜5Nの濃度の十分な量の強酸水溶液であればよい。酸性溶液に高分子電解質膜を浸漬する時間は、たとえば1分〜240時間である。必要に応じて、複数回数浸漬させてもよい。強酸水溶液としては、例えば硫酸水溶液、塩酸水溶液、リン酸水溶液、硝酸水溶液などを例示できる。
3.高分子電解質膜を含む燃料電池
本発明の燃料電池は、前記高分子電解質膜を有する。燃料電池としては、種々公知のものが挙げられ、例えば燃料源として水素、炭化水素またはメタノールなどを用いる燃料電池が挙げられる。本発明の燃料電池は、水分が多い環境における吸水膨潤が少なく寸法安定性があり、さらに相対湿度20〜40%程度の低湿度条件下でのプロトン伝導性が高い高分子電解質膜を用いているため、広範な湿度条件において安定的に効率良く発電することができる。
以下、実施例を参照して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれにより何ら制限されるものではない。室温とは25℃を意味する。実施例における各物性値の測定方法は次に示すとおりである。
(1)還元粘度(ηinh)[dL/g]
重合体0.10gを、所定の溶媒20mLに溶解したのち、35℃においてウベローデ粘度計で測定した。
(2)イオン交換基当量(EW:スルホン酸基1モル当たりの重量[g/mol])
重合体または高分子電解質膜(厚さ約30〜60μm程度)を約50mg分取し、減圧下100℃で2時間乾燥させた後に精秤して、密閉容器中に入れた。そこに過剰量の塩化ナトリウム水溶液を添加して一晩放置した。発生した塩化水素を、0.01N水酸化ナトリウム標準水溶液にてフェノールフタレイン指示薬を用いて滴定し、EWを算出した。
(3)プロトン伝導度[S/cm]
高分子電解質膜(厚さ約30〜60μm)を、幅約5mm、長さ約50mmに切り取り、減圧下100℃で2時間乾燥させた後に、膜の幅および厚さを精密に測定した。高分子電解質膜を、PTFE製ホルダー上に設置し、4本の電極を圧接し、4端子法の交流インピーダンス法で求まる円弧から抵抗率を測定し、伝導度に換算した。電圧端子間は16.3mmとした。
インピーダンスの測定は、LCRメーター(日置電機社製3532)を用いた。高分子電解質膜および電極端子を含めたPTFE製ホルダーは、アルミブロック製の恒温恒湿槽に設置され、恒温恒湿槽内の温度はアルミブロックの加熱により、また湿度は所定濃度の水蒸気を含有する空気を常圧にて恒温恒湿槽に送入することにより、一定温度および一定湿度を維持した。槽内の実温度および実湿度は、Rotronic社製露点計により測定した。
本方法において精密に測定が可能な下限値は、0.01mS/cmであるので、0.01mS/cm未満の値が得られた場合、または伝導度が低いために実質的に測定ができなかった場合には、表1において「測定限界以下」と記載した。
(4)貯蔵弾性率[Pa]
スルホン酸基部分がリチウムイオン型である高分子電解質膜(厚さ約30〜60μm)を、幅約5mm、長さ約40mmに切り取った。切り取った膜を、減圧下において100℃で2時間乾燥させた後に、膜の幅および厚さを精密に測定した。
動的粘弾性測定には、ティー・エイ・インスツルメント社製のRSA−IIIを用いた。本装置系内は常に窒素雰囲気で満たし、乾燥状態を維持した。初期Gapを約10mmとして、試料を装置へ設置した後、100℃で30分間乾燥させた。その後、周波数を1Hz、昇温速度を3℃/minとし、測定温度−60℃〜300℃の範囲で引張モードにて測定を行った。歪みは0.1〜0.2%の範囲とした。得られた応力から、公知の方法によって貯蔵弾性率と損失弾性率を求めた。
(5)ガラス転移温度[℃]
(4)の手順で得られた損失弾性率を温度に対してプロットして、ピークを示す温度をガラス転移温度とした。
以下、化合物(溶媒)の名称を以下のように記載する。
DMSO:ジメチルスルホキシド
EG:エチレングリコール
THF:テトラヒドロフラン
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMAc:N,N-ジメチルアセトアミド
以下のようにして重合体A〜Eを作製した。
[重合体Aの作製]
窒素導入管、温度計、分液器を備えた冷却器、および撹拌装置を備えたフラスコに、4,4'-ジフルオロベンゾフェノン(10.910g、0.05mol)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(16.812g、0.05mol)、および無水炭酸カリウム8.29g(0.06mol)を、窒素ボックス内で精秤した。これにDMAc(160g)およびトルエン(30g)を加えた。得られた混合物を、窒素ガスを通じて撹拌した状態でトルエンを還流させながら、8時間140〜150℃の範囲で加熱して、さらにトルエンを除去してから30時間160℃で加熱して、重合反応を行った。反応中に留出した水を、分液器で回収した。
反応マスを室温まで冷却して、DMAcで適宜希釈した後、ホモミキサーを用いてメタノール中に再沈殿させた。沈殿物を濾取して得られた濾取物を、蒸留水中で攪拌洗浄した。再度濾別して得られた濾取物を、80℃で12時間、さらに150℃で8時間、窒素気流中にて乾燥させた。これによりスルホン酸基を有さない重合体A(22.5g、収率88%、還元粘度1.30dL/g(NMP溶媒))を得た。
[重合体Bの作製]
窒素導入管、温度計、分液器を備えた冷却器、および撹拌装置を備えたフラスコに、3,3'-ビス(スルホン酸ナトリウム)-4,4'-ジフルオロベンゾフェノン(21.959g、0.052mol)、ハイドロキノンスルホン酸カリウム(9.496g、0.0416mol)、および無水炭酸カリウム(6.90g、0.04992mol)を、窒素ボックス内で精秤した。これにDMSO(180g)、およびトルエン(60g)を加えた。得られた混合物を、窒素ガスを通じて撹拌した状態でトルエンを還流させながら、8時間140〜160℃の範囲で加熱して重合反応を行い、最後にトルエンを留去した。反応中に留出した水を分液器より回収した。これにより、スルホン酸基を有するセグメントの平均繰り返し単位数が4.5となるオリゴマー(還元粘度0.16dL/g(DMSO溶媒))を得た。
得られたオリゴマーに、スルホン酸基を有しないセグメント部分を結合させてブロック共重合体Bを合成するため、窒素ボックス内で精秤した4,4'-ジフルオロベンゾフェノン(14.183g、0.065mol)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(25.352g、0.0754mol)および無水炭酸カリウム(12.5g、0.09048mol)を、反応マスに追加した。これにDMSO(50g)およびトルエン(40g)を加えて、窒素ガスを通じて撹拌した状態で、トルエンを還流させながら8時間140〜160℃の範囲で加熱して重合反応を行った。反応中に留出した水を分液器で回収した。続いてトルエンを留去し、NMP100gを加えて、10時間160℃で加熱して、引き続き重合反応を行った。
反応マスを室温まで冷やしてDMSOおよびNMPで適宜希釈した後、ホモミキサーを用いてメタノール中に再沈殿させて濾別した。濾取物を蒸留水中で攪拌して洗浄し、再度濾別した。濾取物を、80℃で12時間、さらに150℃で8時間、窒素気流中にて乾燥させた。これによりブロック共重合体B(46.3g、収率70%、還元粘度1.04dL/g(DMSOとNMPの混合溶媒(体積比1:1))、スルホン酸基部分はナトリウム塩型とカリウム塩型の混合)を得た。
[重合体Cの作製]
窒素導入管、温度計、分液器を備えた冷却器、および撹拌装置を備えたフラスコに、3,3'-ビス(スルホン酸ナトリウム)-4,4'-ジフルオロベンゾフェノン(13.936g、0.033mol)、ハイドロキノンスルホン酸カリウム(6.026g、0.0264mol)、および無水炭酸カリウム(4.38g、0.03168mol)を、窒素ボックス内で精秤した。これにDMSO(120g)およびトルエン(30g)を加え、窒素ガスを流して撹拌した状態で、トルエンを還流させながら8時間140〜160℃の範囲で加熱して重合反応を行い、最後にトルエンを留去した。反応中に留出した水は分液器で回収した。これにより、スルホン酸基を有するセグメントの平均繰り返し単位数が4.5となるオリゴマー(還元粘度0.15dL/g(DMSO溶媒))を得た。
得られたオリゴマーに、スルホン酸基を有しないセグメント部分を結合させてブロック共重合体Cを合成するため、窒素ボックス内で精秤した4,4'-ジフルオロベンゾフェノン(14.325g、0.06565mol)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(24.281g、0.07222mol)、および無水炭酸カリウム(12.0g、0.08666mol)を、反応マスに加えた。これにDMSO(90g)およびトルエン(40g)を加え、窒素ガスを通じて撹拌した状態で、トルエンを還流させながら8時間140〜160℃の範囲で加熱して重合反応を行った。反応中に留出した水は分液器より回収した。続いてトルエンを留去し、NMP(100g)を加え、10時間160℃で加熱して引き続き重合反応を行った。
反応マスを室温まで冷却して、DMSOおよびNMPで適宜希釈した後、ホモミキサーを用いてメタノール中に再沈殿させた。濾別して得られた濾取物を、蒸留水中で攪拌洗浄し、再度濾別した。濾取物を80℃で12時間、さらに150℃で8時間、窒素気流中にて乾燥させた。これによりブロック共重合体C(43.0g、収率79%、還元粘度1.07dL/g(DMSOとNMPの混合溶媒(体積比1:1))、スルホン酸基部分はナトリウム塩型とカリウム塩型の混合)を得た。
[重合体Dの作製]
窒素導入管、温度計、分液器を備えた冷却器、および撹拌装置を備えたフラスコに、3,3'-ビス(スルホン酸ナトリウム)-4,4'-ジフルオロベンゾフェノン9.291g(0.022mol)、ハイドロキノンスルホン酸カリウム4.018g(0.0176mol)、および無水炭酸カリウム2.92g(0.02112mol)を、窒素ボックス内で精秤した。これにDMSO80gおよびトルエン20gを加え、窒素ガスを通じて撹拌した状態で、トルエンを還流させながら8時間140〜160℃の範囲で加熱して、重合反応を行い、最後にトルエンを留去した。反応中に留出した水は分液器より回収した。これによりスルホン酸基を有するセグメントの平均繰り返し単位数が4.5となるオリゴマー(還元粘度0.15dL/g(DMSO溶媒))を得た。
得られたオリゴマーに、スルホン酸基を有しないセグメント部分を結合させてブロック共重合体Dを合成するために、窒素ボックス内で精秤した4,4'-ジフルオロベンゾフェノン16.668g(0.07639mol)、2,2-ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン27.153g(0.08076mol)、および無水炭酸カリウム13.5g(0.09768mol)を、反応マスに追加した。これにDMSO120gおよびトルエン40gを加えて、窒素ガスを通じて撹拌した状態で、トルエンを還流させながら8時間140〜160℃の範囲で加熱して重合反応を行った。反応中に留出した水は分液器より回収した。続いてトルエンを留去して、NMP100gを加え、160℃で10時間加熱して、引き続き重合反応を行った。
反応マスを室温まで冷やしてDMSOおよびNMPで適宜希釈した後、ホモミキサーを用いてメタノール中に再沈殿させた。濾別により得られた濾取物を蒸留水中で攪拌洗浄して、再度濾別した。後に80℃で12時間、さらに150℃で8時間、窒素気流中にて乾燥させ、ブロック共重合体D(42.0g、収率79%、還元粘度0.73dL/g(DMSOとNMPの混合溶媒(体積比1:1))、スルホン酸基部分はナトリウム塩型とカリウム塩型の混合)を得た。
[重合体Eの作製]
窒素導入管、温度計、分液器を備えた冷却器、および撹拌装置を備えたフラスコに、3,3'-ビス(スルホン酸ナトリウム)-4,4'-ジフルオロベンゾフェノン9.502g(0.0225mol)、ハイドロキノンスルホン酸カリウム3.424g(0.015mol)、および無水炭酸カリウム2.49g(0.018mol)を、窒素ボックス内で精秤した。これにDMSO80gおよびトルエン30gを加え、窒素ガスを通じて撹拌した状態で、トルエンを還流させながら8時間140〜160℃の範囲で加熱して重合反応を行い、最後にトルエンを留去した。反応中に留出した水は分液器より回収した。これにより、スルホン酸基を有するセグメントの平均繰り返し単位数が2.5となるオリゴマー(還元粘度0.105dL/g(DMSO溶媒))を得た。
得られたオリゴマーに、スルホン酸基を有しないセグメント部分を結合させてブロック共重合体Eを合成するために、窒素ボックス内で精秤した4,4'-ジフルオロベンゾフェノン27.820g(0.1275mol)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン45.391g(0.135mol)、および無水炭酸カリウム22.4g(0.162mol)を反応マスに追加した。これにDMSO160gおよびトルエン40gを加えた。得られた混合物を、窒素ガスを通じて撹拌した状態で、トルエンを還流させながら8時間140〜160℃の範囲で加熱して重合反応を行った。反応中に留出した水は分液器より回収した。続いてトルエンを留去し、NMP100gを加え、60時間160℃で加熱して、引き続き重合反応を行った。
反応マスを室温まで冷やしてDMSOおよびNMPで適宜希釈したのち、ホモミキサーを用いてメタノール中に再沈殿させて濾別した。濾取物を蒸留水中で攪拌洗浄して、再度濾別した。濾取物を80℃で12時間、さらに150℃で8時間、窒素気流中にて乾燥させ、ブロック共重合体E(71.3g、収率90%、還元粘度0.68dL/g(DMSOとNMPの混合溶媒(体積比1:1))、スルホン酸基部分はナトリウム塩型とカリウム塩型の混合)を得た。
[参考例1]
合成例1で得られた重合体AをTHFに入れて室温で攪拌し、均一な粘性のある溶液(ワニス)を得た。重合体Aの濃度を20重量%とした。十分に洗浄したガラス板上に、室温にてバーコーターを用いてワニスを塗布して、厚さ0.5mmの均一の塗布膜を得た。
塗布膜が形成されたガラス板を、窒素が流入されているイナートオーブンにすぐに入れて、室温から200℃まで2時間かけてほぼ一定の昇温速度で昇温し、さらに200℃で4時間保持した。その後に、オーブン内で放冷した。これによりガラス板上に形成された高分子膜を得た。ガラス板を蒸留水に浸すことにより高分子膜を剥がし取り、重合体Aから構成される高分子膜を得た。この膜の膜厚は34μmであり、ガラス転移温度は167℃であった。
[実施例1]
EGとTHFの混合溶媒(重量比2:3)に、合成例2で得られたブロック共重合体Bを加えて室温で攪拌し、均一な粘性のある溶液(ワニス)を得た。重合体Bの濃度を18重量%とした。十分に洗浄したガラス板上に、室温にてバーコーターを用いてワニスを塗布して、厚さ0.45mmの均一な塗布膜を得た。
塗布膜が形成されたガラス板を、窒素が流入されているイナートオーブンにすぐに入れて、室温から200℃まで、2時間かけてほぼ一定の昇温速度で昇温し、さらに200℃で4時間保持した。その後に、オーブン内で放冷した。これによりガラス板上に形成された高分子電解質膜を得た。ガラス板を蒸留水に浸すことにより高分子電解質膜を剥がし取り、スルホン酸基部分がアルカリイオン型(ナトリウムイオンとカリウムイオンの混合)の高分子電解質膜を得た。
次いで、スルホン酸基部分をアルカリイオン型からプロトン型に変えるために、高分子電解質膜を十分な量の2規定の硫酸水溶液に2時間浸漬した。さらに高分子電解質膜を、別の新鮮な2規定の硫酸水溶液に浸漬して20時間保持した。その後、十分な量の蒸留水に2時間浸漬し、さらに別の新鮮な蒸留水に浸漬して20時間保持した。高分子電解質膜を引き上げて、膜表面の水分を拭き取って室温で一晩放置した。得られた膜を減圧下100℃にて2時間乾燥させ、プロトン型の高分子電解質膜(EW515g/mol)を得た。
得られた高分子電解質膜のプロトン伝導度は、温度80℃、相対湿度40%の条件にて11.4mS/cmであった。
さらに、スルホン酸基部分がプロトン型の高分子電解質膜を、スルホン酸基量の100倍のリチウムイオンを含有する0.01規定の水酸化リチウム水溶液に2時間浸漬した。得られた膜を十分な量の蒸留水に2時間浸漬し、さらに別の新鮮な蒸留水に浸漬し直して20時間保持した。その後に高分子電解質膜を引き上げて、表面水分を拭き取った。得られた膜を室温で一晩放置した後、減圧下100℃にて2時間乾燥させてリチウム型の高分子電解質膜を得た。
リチウム型の高分子電解質膜の147℃、177℃および197℃の温度における貯蔵弾性率は、それぞれ3.29×10Pa、2.74×10Paおよび1.90×10Paであった。
[実施例2〜6]
製膜時に用いる溶媒および/または用いるブロック共重合体を表1に示すように変更して、実施例1の手順と同様にして高分子電解質膜を作製した。さらに各物性を測定した。
[比較例1〜5]
製膜時に用いる溶媒および/または用いるブロック共重合体を表1に示すように変更して、実施例1の手順と同様にして高分子電解質膜を作製した。さらに各物性を測定した。
Figure 0004734279
まず表1に示されたように、高分子電解質膜のプロトン伝導度は、イオン交換基当量EWが小さいほど高いことがわかる。つまり、酸基の含有率が高いほど、プロトン伝導度が高まる。
次に、表1に示されたように、実施例1〜6で得られた高分子電解質膜は、重合体Aのガラス転移温度である167℃未満の温度から、167℃超の温度へ変化させても、貯蔵弾性率の低下が小さいことがわかる(表1:貯蔵弾性率比参照)。
例えば、147℃における貯蔵弾性率に対する、177℃における貯蔵弾性率の比率(177/147)は、実施例1〜6の高分子電解質膜ではいずれも20%以上であるのに対して、比較例1〜5ではいずれも20%未満である。
また、147℃における貯蔵弾性率に対する、197℃における貯蔵弾性率の比率(197/147)は、実施例1〜6の高分子電解質膜ではいずれも15%以上であるのに対し、比較例1〜5の高分子電解質膜ではいずれも10%未満である。
そして、実施例1〜6の高分子電解質膜のプロトン伝導度はいずれも、比較例1〜5の高分子電解質膜のプロトン伝導度よりも高いことがわかる。さらに、実施例1〜6に注目すると、貯蔵弾性率の比率(177/147)および(197/147)が高いほど、プロトン伝導度が高くなる傾向がみられる。
このように、酸基を含有するセグメントと、酸基を含有しないセグメントとを有するブロック共重合体を含む高分子電解質膜は、酸基を有しないセグメントからなる重合体のガラス転移温度の前後の温度領域で、貯蔵弾性率が変化しにくいほど、プロトン伝導性が高いことがわかる。
さらに、177℃における貯蔵弾性率に対する、197℃における貯蔵弾性率の比率(197/177)は、実施例1〜6の高分子電解質膜ではいずれも50%以上であるのに対し、比較例は概して低く、特に比較例2,4および5では50%未満である。前述の通り、実施例1〜6の高分子電解質膜のプロトン伝導度はいずれも、比較例1〜5の高分子電解質膜のプロトン伝導度よりも高い。このように、酸基を含有するセグメントと、酸基を含有しないセグメントとを有するブロック共重合体を含む高分子電解質膜は、ガラス転移温度よりも高い温度領域で、貯蔵弾性率が変化しにくいほど、プロトン伝導性が高いことがわかる。
表1に示されたように、イオン伝導率が高い高分子電解質膜、つまり貯蔵弾性率の低下が抑制された高分子電解質膜を得るには、ブロック共重合体のワニスを作製するときの溶媒の選択が重要であることがわかる。
実施例1〜3ではいずれも重合体Bを用いて高分子電解質膜を作製したが、イオン伝導度、および貯蔵弾性率の温度プロファイルが有意に異なる。これは、重合体Bのワニスを作製するときの溶媒に起因する。エチレングルコールEGや、ジメチルスルホキシドDMSOは、酸基を有するセグメントとの親和性が高く、かつ酸基を有しないセグメントとの親和性が低い溶媒である。これに対して、THF、DMF、NMPは酸基を有しないセグメントとの親和性が高い溶媒であるが、これらのうちTHFは最も沸点が低く、比較的速やかにワニスの塗布膜から除去されると考えられる。
酸基を有しないセグメントとの親和性が高い溶媒が除去され、酸基を有するセグメントとの親和性が高い溶媒(EGやDMSO)がより多く選択的に塗布膜に残ると、酸基を有するセグメントのモルフォロジーが適切に制御された高分子電解質膜が形成されると考えられる。その結果、貯蔵弾性率が変化しにくく、プロトン伝導性が高い高分子電解質膜となる。
本発明は、非フッ素系の高分子電解質膜であって、酸基の含有率を高めることなく、イオン伝導度を高めることができる高分子電解質膜である。よって、高分子電解質膜の酸基の含有率を高めた場合に発生する寸法安定性の低下という問題が解消される。さらに本発明は、非フッ素系の高分子電解質膜の欠点の一つとされてきた低湿度条件におけるイオン伝導度の低下という問題も解消される。よって、本発明は特に高分子電解質型燃料電池に好適に用いられる。

Claims (6)

  1. 酸基を含有するセグメントAと、酸基を実質的に含有しないセグメントBとを有するブロック共重合体を含み、イオン交換基当量が350〜1200g/molである高分子電解質膜であって、
    前記セグメントAが、下記一般式(5)で表される構造の繰り返し単位を有し、かつ
    前記セグメントBが、下記一般式(6)で表される構造の繰り返し単位を有し
    酸基を実質的に含有しないセグメントBからなるホモポリマーのガラス転移温度(℃)をXとするときに、
    X+10(℃)における前記高分子電解質膜の貯蔵弾性率(Pa)が、5.0×10以上であり、かつ
    X+10(℃)における前記高分子電解質膜の貯蔵弾性率(Pa)が、X−20(℃)における前記高分子電解質膜の貯蔵弾性率(Pa)に対して、20%以上である、高分子電解質膜。
    Figure 0004734279
    (式(5)において、
    〜X はそれぞれ独立してベンゼン環に直接結合したスルホン酸基であり、
    は−SO −または−CO−であり、
    iはそれぞれ独立して0、1または2を示す)
    Figure 0004734279
    (式(6)において、
    は−SO −または−CO−であり、
    は直接結合、−CH −、−C(CH −、−C(CF −、−O−、−S−、−SO −または−CO−であって、A およびA はそれぞれ独立しており、
    ベンゼン環の水素原子は、メチル基またはt−ブチル基で置換されていてもよい)
  2. 前記貯蔵弾性率は、それに含まれる酸基が塩である前記高分子電解質膜の貯蔵弾性率である、請求項1に記載の高分子電解質膜。
  3. 前記イオン交換基当量が、500〜700g/molである、請求項1に記載の高分子電解質膜。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の高分子電解質膜を含む、高分子電解質型燃料電池。
  5. 請求項1に記載の高分子電解質膜の製造方法であって、
    塩となっている酸基を含有するセグメントAと、酸基を実質的に含有しないセグメントBとを有するブロック共重合体、ならびに溶媒Cおよび溶媒Dを含むワニスを準備するステップと、
    前記ワニスの塗布膜から前記溶媒を除去するステップと、
    前記溶媒を除去された塗布膜を、酸性溶液に浸漬するステップと
    を含み、
    前記セグメントAにおける酸基の濃度が0.1〜20mmol/gであり、
    前記溶媒Cは、セグメントAのみから構成される重合体aを良好に溶解し、かつセグメントBのみから構成される重合体bを溶解せず、
    前記溶媒Dは、セグメントBのみから構成される重合体bを良好に溶解し、
    溶媒Cの沸点が溶媒Dの沸点よりも高い、製造方法。
  6. 前記溶媒Cが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、グリセリン、ジメチルスルホキシドからなる群から選ばれる1種類以上であり、かつ
    前記溶媒Dが、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、クロロホルム、ジクロロメタンからなる群から選ばれる1種類以上である、請求項5に記載の製造方法。
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