JP2012250864A - 炭化珪素結晶インゴット、炭化珪素結晶ウエハおよび炭化珪素結晶インゴットの製造方法 - Google Patents

炭化珪素結晶インゴット、炭化珪素結晶ウエハおよび炭化珪素結晶インゴットの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】内部の歪を緩和し、大口径の炭化珪素結晶ウエハに生じる反りを抑制することができる炭化珪素結晶インゴット、炭化珪素結晶ウエハおよび炭化珪素結晶インゴットの製造方法を提供する。
【解決手段】直径が4インチ以上の表面を有し、n型ドーパントの濃度が1×1015個/cm3以上1×1020個/cm3以下であり、金属原子の濃度が1×1014個/cm3以上1×1018個/cm3以下、かつn型ドーパントの濃度以下であって、金属原子の濃度勾配が1×1017個/(cm3・mm)以下である炭化珪素結晶インゴットと、それを用いて作製された炭化珪素結晶ウエハ。前記炭化珪素結晶インゴットは、炭化珪素粉末の結晶中に珪素よりも原子半径の大きな金属原子を格子間原子および置換原子の少なくとも一方として含む原料粉末を酸洗浄した後、前記原料粉末6を用いて炭化珪素結晶インゴット5を気相成長させることにより製造する。
【選択図】図1

Description

本発明は、炭化珪素結晶インゴット、炭化珪素結晶ウエハおよび炭化珪素結晶インゴットの製造方法に関する。
近年、半導体装置の製造に用いられる半導体基板として炭化珪素(SiC)単結晶の利用が進められつつある。SiCは、より一般的に用いられているシリコン(Si)に比べて大きなバンドギャップを有する。そのため、SiCを用いた半導体装置は、耐圧が高く、オン抵抗が低く、また高温環境下での特性の低下が小さい、といった利点を有することから、注目を集めている。
たとえば特許文献1(特許第3876628号公報)には、珪素より小さな原子半径を有するn型ドーパント原子とともに、珪素より大きな原子半径を有するチタン、バナジウムまたはタンタルなどの重金属原子をSiC単結晶インゴットに導入して昇華法によりSiC単結晶インゴットを成長させる方法が開示されている。
特許文献1に記載の方法によれば、珪素より小さな原子半径を有するn型ドーパント原子の導入によってSiC単結晶インゴットの内部に生じる圧縮歪を、珪素より大きな原子半径を有する重金属原子の導入によって打ち消すことによって、SiC単結晶インゴットの内部の歪を緩和することができるとされている(たとえば特許文献1の段落[0038]〜[0046]参照)。
特許第3876628号公報
上記の特許文献1に記載の方法においては、SiC原料粉末にチタン、バナジウムまたはタンタルなどの重金属原子の金属単体、またはその化合物(重金属を主成分とする酸化物若しくは硫化物などの金属化合物)を添加し、昇華法によってSiC単結晶インゴットを種結晶上に成長させている。
しかしながら、重金属原子の金属単体、またはその化合物(重金属を主成分とする酸化物若しくは硫化物などの金属化合物)は非常に昇華しにくく、SiC単結晶インゴットの成長初期においては重金属原子はSiC単結晶インゴットにあまり取り込まれないことから、SiC単結晶インゴットの厚さ方向に重金属原子の濃度差が生じる。すなわち、種結晶に近い側で成長したSiC単結晶インゴットの部分においては重金属原子の濃度が低く、種結晶から離れるにしたがって重金属原子の濃度が高くなっていく。
特許文献1に記載の方法により得られたSiC単結晶インゴットを切り出してSiC単結晶ウエハを製造するときに、SiC単結晶ウエハの口径が小さい場合には、重金属原子の濃度差に起因するSiC単結晶ウエハの反りは生じにくい。
しかしながら、近年のSiC単結晶ウエハの大口径化の要請に応えて、特許文献1に記載の方法により得られたSiC単結晶インゴットを切り出してたとえば直径が4インチ以上の大口径のSiC単結晶ウエハを作製した場合には、SiC単結晶ウエハの上面と下面の重金属原子の濃度差により、SiC単結晶ウエハに反りが生じるという問題があった。
上記の事情に鑑みて、本発明の目的は、炭化珪素結晶インゴット内部の歪を緩和することができるとともに、大口径の炭化珪素結晶ウエハを作製した場合でもウエハの反りを抑制することができる炭化珪素結晶インゴット、炭化珪素結晶ウエハおよび炭化珪素結晶インゴットの製造方法を提供することにある。
本発明は、直径が4インチ以上の表面を有し、n型ドーパントと、珪素よりも原子半径の大きな金属原子とを含み、n型ドーパントの濃度が1×1015個/cm3以上1×1020個/cm3以下であり、金属原子の濃度が1×1014個/cm3以上1×1018個/cm3以下、かつn型ドーパントの濃度以下であって、金属原子の濃度勾配が1×1017個/(cm3・mm)以下である炭化珪素結晶インゴットである。
また、本発明は、上記の炭化珪素結晶インゴットから切り出すことによって得られた直径が4インチ以上の表面を有する炭化珪素結晶ウエハである。
ここで、本発明の炭化珪素結晶ウエハの厚さは100μm以上2000μm以下であって、炭化珪素結晶ウエハの表面と、炭化珪素結晶ウエハの表面に略平行な低指数面の法線とが為す角度の最大値と最小値との差が0.5°以下であることが好ましい。
また、本発明の炭化珪素結晶ウエハのオフ角度は種結晶の表面に対して1°以上であることが好ましい。
さらに、本発明は、炭化珪素粉末の結晶中に珪素よりも原子半径の大きな金属原子を格子間原子および置換原子の少なくとも一方として含む原料粉末を酸洗浄する工程と、酸洗浄する工程後に原料粉末を用いて炭化珪素結晶インゴットを気相成長させる工程とを含む炭化珪素結晶インゴットの製造方法である。
本発明によれば、炭化珪素結晶インゴット内部の歪を緩和することができるとともに、大口径の炭化珪素結晶ウエハを作製した場合でもウエハの反りを抑制することができる炭化珪素結晶インゴット、炭化珪素結晶ウエハおよび炭化珪素結晶インゴットの製造方法を提供することができる。
本発明における炭化珪素結晶インゴットの製造装置の一例の模式的な断面図である。 (a)は本発明における炭化珪素結晶インゴットの一例の模式的な断面図であり、(b)は(a)に示す炭化珪素結晶インゴット中の金属原子の濃度勾配を示す図である。 本発明の炭化珪素単結晶ウエハの一例の模式的な断面図である。 本発明の炭化珪素単結晶ウエハのオフ角度の一例を図解する模式的な断面図である。
以下、本発明の炭化珪素結晶インゴットの製造方法の一例について説明する。なお、後述する各工程の前後には他の工程が含まれていてもよいことは言うまでもない。
<原料粉末を酸洗浄する工程>
まず、炭化珪素粉末の結晶中に、珪素よりも原子半径の大きな金属原子を格子間原子(炭化珪素結晶の結晶格子間に存在する原子)および置換原子(炭化珪素結晶の結晶格子の珪素原子に置換して存在する原子)の少なくとも一方として含む原料粉末を酸洗浄する工程を行なう。
なお、上記のような原料粉末を得るためには、たとえば市販の原料粉末に金属粉を混ぜて昇華し、再結晶させたものを粉砕するなどの方法が考えられる。
原料粉末を酸洗浄する工程は、たとえば、王水、塩酸、硝酸および硫酸からなる群から選択された少なくとも1種の酸に原料粉末を浸漬させることによって行なうことができる。
ここで、酸洗浄に用いる酸としては、王水を用いることが好ましい。酸洗浄に用いる酸として王水を用いた場合には、原料粉末中に微量含まれるチタン、バナジウムまたはタンタルなどの重金属原子の金属単体、またはその化合物(重金属を主成分とする酸化物若しくは硫化物などの金属化合物)を効率的に除去することができる。
また、原料粉末の酸への浸漬時間は、120分以上3600分以下であることが好ましい。原料粉末の酸への浸漬時間が120分以上3600分以下である場合には、原料粉末中に微量含まれるチタン、バナジウムまたはタンタルなどの重金属原子の金属単体、またはその化合物(重金属を主成分とする酸化物若しくは硫化物などの金属化合物)を十分に除去することができる。
<炭化珪素結晶インゴットを気相成長させる工程>
次に、原料粉末を酸洗浄する工程を行なった後には、原料粉末を用いて炭化珪素結晶インゴットを気相成長させる工程を行なう。
図1に、本発明における炭化珪素結晶インゴットの製造装置の一例の模式的な断面図を示す。図1に示す製造装置は、黒鉛容器1と、黒鉛容器1の上部に設けられた黒鉛台座2と、黒鉛容器1の下部に設けられた黒鉛坩堝3と、黒鉛台座2に設けられたSiC単結晶からなる直径4インチ以上の表面を有する種結晶4とを備えている。
ここで、黒鉛容器1内において、黒鉛容器1の上部の黒鉛台座2と、下部の黒鉛坩堝3とは互いに向かい合うようにして設けられており、黒鉛容器1の外部から内部にガスを供給するとともに、内部から外部にガスを排出するための開口部8が黒鉛台座2に設けられている。
また、図1に示す製造装置は、黒鉛容器1を収容する真空容器(図示せず)を有しており、この真空容器を真空排気系およびガス供給系に接続することによって、黒鉛容器1の内部の雰囲気および圧力を制御することができるように構成されている。
また、黒鉛容器1の外周には、黒鉛容器1の内部の雰囲気を加熱することができる加熱装置(図示せず)が配置されており、加熱装置への投入パワー等を調節することによって黒鉛容器1の内部の雰囲気の温度を調節することが可能となっている。
以下、図1に示す製造装置を用いて、炭化珪素結晶インゴットを気相成長させる工程の一例について説明する。まず、図1に示す黒鉛坩堝3に、上記の酸洗浄工程を経て得られた原料粉末6を充填する。
ここで、原料粉末6には、炭化珪素粉末の結晶中に珪素よりも原子半径の大きな金属原子が格子間原子および置換原子の少なくとも一方として含まれている。
金属原子としては、軽金属(ナトリウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム等の密度が4g/cm3未満の金属)以外の金属であって、珪素よりも原子半径の大きい金属の原子が用いられる。このような金属原子としては、たとえば原子半径が0.117nm以上0.16nm以下の金属の原子を用いることができ、なかでも、チタン(原子半径:0.146nm)、バナジウム(原子半径:0.135nm)およびタンタル(原子半径:0.147nm)からなる群から選択された少なくとも1種を用いることが好ましい。金属原子として、チタン、バナジウムおよびタンタルからなる群から選択された少なくとも1種を用いた場合には、種結晶4の表面上に気相成長した炭化珪素結晶インゴットの内部に生じる歪を効果的に緩和することができる傾向にある。
次に、黒鉛容器1の上部の開口部8から黒鉛容器1の内部に不活性ガスを導入する。ここで、不活性ガスとしては、たとえば、アルゴン、ヘリウムおよび窒素からなる群から選択された少なくとも1種を含む不活性ガスを導入することができる。
次に、黒鉛容器1の外周に設けられた加熱装置によって黒鉛坩堝3の内部を加熱する。ここで、黒鉛坩堝3の内部はたとえば2000℃以上2500℃以下の温度に加熱され、原料粉末6側から種結晶4側にかけて温度が低下する温度勾配が設けられるように加熱される。
次に、黒鉛容器1の内部の雰囲気の圧力を低下させる。そして、黒鉛容器1の内部の雰囲気の圧力が、所定の圧力(たとえば13.3Pa以上13.3kPa以下)になった時点で、昇華法による炭化珪素結晶インゴット5の気相成長が開始する。
このとき、原料粉末6の炭化珪素粉末からは、炭化珪素粉末の昇華により、たとえばSi、SiC2およびSi2Cからなる群から選択された少なくとも1種を含む原料ガスが生成する。また、原料粉末6の単体金属および/または金属化合物からは、原料粉末6に含まれる金属原子を含むガスが生成する。
さらに、黒鉛容器1の上部の開口部8から、たとえば窒素やリンなどの珪素よりも原子半径の小さいn型ドーパントを含むドーパントガス7を黒鉛容器1の内部に導入する。
これにより、黒鉛容器1の上部の種結晶4の表面上に、直径が4インチ以上の表面を有する炭化珪素単結晶インゴット5が昇華法により気相成長し、炭化珪素単結晶インゴット5の内部に珪素よりも原子半径の小さい窒素やリンなどのn型ドーパントとともに、珪素よりも原子半径の大きい金属原子が取り込まれる。
炭化珪素単結晶インゴット5の内部に取り込まれた窒素やリンなどのn型ドーパントは、炭化珪素単結晶インゴット5の抵抗値を低減させる。ここで、炭化珪素単結晶インゴット5のCサイトに入る窒素は炭素より原子半径が小さく、Siサイトに入るリンは珪素よりも原子半径が小さいため、珪素よりも原子半径の小さいn型ドーパントの炭化珪素単結晶インゴット5の内部への導入は、炭化珪素単結晶インゴット5を圧縮させて結晶歪をもたらす方向に作用する。
これに対し、炭化珪素単結晶インゴット5の内部に取り込まれた金属原子は、珪素よりも原子半径が大きいため、金属原子が炭化珪素単結晶インゴット5のSiサイトに入って珪素と置換した場合、および/または炭化珪素単結晶インゴット5の格子間に入った場合には、炭化珪素単結晶インゴット5を拡大する方向に作用する。
したがって、窒素やリンなどの珪素よりも原子半径の小さいn型ドーパントを含むドーパントガス7を黒鉛容器1の内部に導入し、炭化珪素粉末と珪素よりも原子半径の大きな金属原子とを含む原料粉末6を昇華させることによって形成された炭化珪素単結晶インゴット5においては、n型ドーパントの導入による炭化珪素単結晶インゴット5の内部の圧縮歪を金属原子の導入で打ち消すことができるため、炭化珪素単結晶インゴット5の内部の歪を緩和する効果が得られる。
また、炭化珪素単結晶インゴット5の内部の歪が緩和されるため、たとえば6H型炭化珪素単結晶インゴット5の結晶成長時に圧縮歪が生じて結晶面間隔が小さくなることで発生する15R型炭化珪素単結晶などの異種多形の発生を抑制することもできる。
<炭化珪素単結晶インゴット>
さらに、上記のようにして成長させられた、直径が4インチ以上の表面を有する炭化珪素単結晶インゴット5は、以下の(i)、(ii)および(iii)の3つの条件をすべて満たしている。
(i)炭化珪素単結晶インゴット5中のn型ドーパントの濃度が1×1015個/cm3以上1×1020個/cm3以下である。
(ii)炭化珪素単結晶インゴット5中の金属原子の濃度が1×1014個/cm3以上1×1018個/cm3以下であって、かつn型ドーパントの濃度以下である。
(iii)炭化珪素単結晶インゴット5中の金属原子の濃度勾配が1×1017個/(cm3・mm)以下である。
すなわち、上記の(i)の条件を満たすことによって、炭化珪素単結晶インゴット5が良好な低抵抗値を有するとともに、良好な結晶性を有する。
また、上記の(ii)の条件を満たすことによって、n型ドーパントの導入によって炭化珪素単結晶インゴット5の内部に生じた圧縮歪を効果的に緩和することができる。
さらに、上記の(iii)の条件を満たすことによって、炭化珪素単結晶インゴット5から切り出して直径が4インチ以上の表面を有する大口径の炭化珪素結晶ウエハを作製した場合でも、その炭化珪素結晶ウエハに生じる反りを抑制することができる。
炭化珪素単結晶インゴット5中のn型ドーパントの濃度および金属原子の濃度は、それぞれ、たとえばSIMS(Secondary Ion-microprobe Mass Spectrometry)などによって測定することができる。
また、上記の(iii)の条件に示される炭化珪素単結晶インゴット5中の金属原子の濃度勾配は、たとえば以下のようにして測定することができる。
図2(a)に炭化珪素単結晶インゴット5の一例の模式的な断面図を示し、図2(b)に図2(a)に炭化珪素単結晶インゴット5中の金属原子の濃度勾配を示す。
ここで、図2(a)に示す炭化珪素単結晶インゴット5の表面の直径dは4インチ以上となっている。そして、図2(a)に示す炭化珪素単結晶インゴット5の所定の厚さの変化量△t[mm]に対する金属原子濃度の変化量△c[個/cm3]を求め、以下の式(I)により、炭化珪素単結晶インゴット5中の金属原子の濃度勾配を算出することができる。
金属原子の濃度勾配[個/(cm3・mm)]=|△c/△t| …(I)
<炭化珪素単結晶ウエハ>
図3に、本発明の炭化珪素単結晶ウエハの一例の模式的な断面図を示す。図3に示される炭化珪素単結晶ウエハ5aは、たとえば、上記のようにして成長した炭化珪素単結晶インゴット5の一部を成長方向と直交する方向にワイヤソーなどで切り出すことによって作製することができる。このようにして作製された炭化珪素単結晶ウエハ5aの表面5bの直径Dは4インチ以上となる。
上記のようにして作製された炭化珪素単結晶ウエハ5aの厚さTは特に限定されないが、上述のように、本発明の炭化珪素単結晶ウエハ5aは直径Dが4インチ以上の表面5bを有しているにも関わらず、その反りが抑制されている。そのため、たとえば、本発明の炭化珪素単結晶ウエハ5aの厚さTが100μm以上2000μm以下である場合における、炭化珪素結晶ウエハ5aの表面5bと、炭化珪素結晶ウエハ5aの表面5bに略平行な低指数面9の法線10とが為す角度αの最大値と最小値との差を0.5°以下とすることができる。
ここで、低指数面9は、炭化珪素結晶ウエハ5aの表面5bに略平行であって、炭化珪素結晶ウエハ5aの表面5bに最も近い位置に存在する結晶面のことを意味している。なお、炭化珪素結晶ウエハ5aの表面5bに略平行とは、炭化珪素結晶ウエハ5aの表面5bに対する角度が0.5°以下であることを意味する。
また、図4の模式的断面図に示すように、炭化珪素結晶ウエハ5aのオフ角度β(炭化珪素結晶ウエハ5aの表面5aと種結晶4の表面4aとが為す角度)は、種結晶4の表面4aに対して1°以上であることが好ましい。この場合には、炭化珪素結晶ウエハ5aを用いて炭化珪素半導体装置を作製する際に、炭化珪素結晶ウエハ5a上に炭化珪素結晶をホモエピタキシャル成長させるのが容易となる傾向にある。
なお、上記において、角度はすべて0°以上90°以下のいずれかの値が採用され、それ以上の大きさの角度を有する角は補角とされる。補角の角度は、上記の角度の値には採用されない。
<実施例1>
まず、炭化珪素粉末の炭化珪素結晶中に珪素よりも原子半径の大きいチタンを格子間原子および置換原子の少なくとも一方として含む原料粉末を王水に120分以上3600分以下浸漬させることによって、原料粉末の酸洗浄を行なった。
次に、図1に示す製造装置の上部の開口部8から黒鉛容器1の内部にHeからなる不活性ガスを導入し、黒鉛容器1の内部の圧力を66.6kPaとした。
次に、図1に示す製造装置の外周に設けられた加熱装置(図示せず)を用いて原料粉末6の温度が2300℃となり、種結晶4の温度が2200℃となるように、黒鉛容器1の内部の雰囲気を加熱した。ここで、黒鉛容器1の内部の雰囲気の加熱は、原料粉末6から種結晶4にかけて黒鉛容器1の内部の温度が直線的に低下する温度勾配が形成されるように行なった。
次に、黒鉛容器1の内部の圧力を徐々に低下させて13.3kPaとした。そして、黒鉛容器1の内部の圧力が13.3kPaとなった時点で、Heからなる不活性ガスとともに、窒素からなるドーパントガス7を黒鉛容器1の内部に導入した。ここで、窒素は、Heからなる不活性ガスの5体積%の割合となるように不活性ガスに混合されて黒鉛容器1の内部に導入された。
上記のようにして、種結晶4のSi面上に、6H型の炭化珪素単結晶からなり、直径が4インチ以上の表面を有する実施例1の炭化珪素単結晶インゴット5を成長させた。
上記のようにして製造された実施例1の炭化珪素単結晶インゴット5の窒素濃度[個/cm3]およびチタン原子濃度[個/cm3]をそれぞれSIMSにより測定した。また、チタン原子濃度の測定結果から、実施例1の炭化珪素単結晶インゴット5のチタン原子の濃度勾配[個/(cm3・mm)]を算出した。その結果を表1に示す。
表1に示すように、実施例1の炭化珪素単結晶インゴット5の窒素濃度は1×1019[個/cm3]であって、チタン原子濃度は1×1016[個/cm3]であって、チタン原子の濃度勾配は1×1016[個/(cm3・mm)]であった。
また、上記のようにして作製した実施例1の炭化珪素単結晶インゴット5をワイヤソーで400μmの厚さに切り出して、直径が4インチ以上の表面を有する実施例1の炭化珪素単結晶ウエハを作製した。ここで、実施例1の炭化珪素単結晶ウエハは、そのオフ角度が、種結晶の表面に対して1°以上となるように切り出して作製された。
そして、実施例1の炭化珪素単結晶ウエハの反りの大きさを評価するために、実施例1の炭化珪素単結晶ウエハの表面と、その表面に略平行な低指数面の法線とが為す角度の最大値と最小値との差を算出した。その結果を表1に示す。表1に示すように、実施例1の炭化珪素単結晶ウエハにおけるその差は、0.2°であった。
なお、上記の差が小さい方が炭化珪素単結晶ウエハの反りが小さいことを示している。
また、上記の差は、実施例1の炭化珪素単結晶ウエハの表面にX線を入射させて回折したX線の回折角度の面内分布を測定することによって算出された。
<実施例2>
原料粉末中の金属チタン(Ti)の含有量を低減させたこと以外は実施例1と同様にして、直径が4インチ以上の表面を有する実施例2の炭化珪素単結晶インゴット5を成長させた。
上記のようにして製造された実施例2の炭化珪素単結晶インゴット5の窒素濃度[個/cm3]、チタン原子濃度[個/cm3]およびチタン原子の濃度勾配[個/(cm3・mm)]をそれぞれ求めた。その結果を表1に示す。
表1に示すように、実施例2の炭化珪素単結晶インゴット5の窒素濃度は1×1019[個/cm3]であって、チタン原子濃度は5×1016[個/cm3]であって、チタン原子の濃度勾配は5×1015[個/(cm3・mm)]であった。
また、上記のようにして作製した実施例2の炭化珪素単結晶インゴット5をワイヤソーで400μmの厚さに切り出して、直径が4インチ以上の表面を有する実施例2の炭化珪素単結晶ウエハを作製した。
そして、実施例1と同様にして、実施例2の炭化珪素単結晶ウエハの反りの大きさを評価するために、実施例2の炭化珪素単結晶ウエハの表面と、その表面に略平行な低指数面の法線とが為す角度の最大値と最小値との差を算出した。その結果を表1に示す。表1に示すように、実施例2の炭化珪素単結晶ウエハにおけるその差は、0.2°であった。
<実施例3>
原料粉末中の金属チタン(Ti)の含有量を実施例2よりもさらに低減したこと以外は実施例1と同様にして、直径が4インチ以上の表面を有する実施例3の炭化珪素単結晶インゴット5を成長させた。
上記のようにして製造された実施例3の炭化珪素単結晶インゴット5の窒素濃度[個/cm3]、チタン原子濃度[個/cm3]およびチタン原子の濃度勾配[個/(cm3・mm)]をそれぞれ求めた。その結果を表1に示す。
表1に示すように、実施例3の炭化珪素単結晶インゴット5の窒素濃度は1×1019[個/cm3]であって、チタン原子濃度は3×1016[個/cm3]であって、チタン原子の濃度勾配は1×1015[個/(cm3・mm)]であった。
そして、実施例1と同様にして、実施例3の炭化珪素単結晶ウエハの反りの大きさを評価するために、実施例3の炭化珪素単結晶ウエハの表面と、その表面に略平行な低指数面の法線とが為す角度の最大値と最小値との差を算出した。その結果を表1に示す。表1に示すように、実施例3の炭化珪素単結晶ウエハにおけるその差は、0.2°であった。
<比較例1>
原料粉末中の金属チタン(Ti)の含有量を実施例1よりも増加したこと以外は実施例1と同様にして、直径が4インチ以上の表面を有する比較例1の炭化珪素単結晶インゴット5を成長させた。
上記のようにして製造された比較例1の炭化珪素単結晶インゴット5の窒素濃度[個/cm3]、チタン原子濃度[個/cm3]およびチタン原子の濃度勾配[個/(cm3・mm)]をそれぞれ求めた。その結果を表1に示す。
表1に示すように、比較例1の炭化珪素単結晶インゴット5の窒素濃度は1×1019[個/cm3]であって、チタン原子濃度は1×1019[個/cm3]であって、チタン原子の濃度勾配は1×1018[個/(cm3・mm)]であった。
そして、実施例1と同様にして、比較例1の炭化珪素単結晶ウエハの反りの大きさを評価するために、比較例1の炭化珪素単結晶ウエハの表面と、その表面に略平行な低指数面の法線とが為す角度の最大値と最小値との差を算出した。その結果を表1に示す。表1に示すように、比較例1の炭化珪素単結晶ウエハにおけるその差は、4°であった。
<結果>
Figure 2012250864
表1に示すように、窒素濃度が1×1015個/cm3以上1×1020個/cm3以下であって、チタン原子濃度が1×1014個/cm3以上1×1018個/cm3以下かつ窒素濃度以下であって、チタン原子の濃度勾配が1×1016個/(cm3・mm)以上1×1017個/(cm3・mm)以下である実施例1〜3の炭化珪素単結晶インゴットを切り出して作製された実施例1〜3の炭化珪素単結晶ウエハは、チタン原子の濃度勾配が1×1016個/(cm3・mm)以上1×1017個/(cm3・mm)以下の範囲内にない比較例1の炭化珪素単結晶ウエハよりも反りが低減できていることが確認された。
これは、比較例1の炭化珪素単結晶インゴットにおいては、チタン原子の濃度勾配が大きすぎて、炭化珪素単結晶ウエハの反りを十分に低減することができなかったためと考えられる。
なお、上記の実施例1〜3および比較例1においては、金属原子として金属チタン(Ti)を用いる場合について説明したが、金属チタン(Ti)に代えて、窒化チタン(TiN)、バナジウム(V)、窒化バナジウム(VN)、炭化バナジウム(VC)、タンタル(Ta)、炭化タンタル(TaC)または窒化タンタル(TaN)を用いた場合にも上記と同様の結果が得られた。
また、上記の実施例1〜3および比較例1においては、ドーパントガスとして窒素を用いる場合について説明したが、窒素に代えてリンを含むガスを用いた場合にも上記と同様の結果が得られた。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明は、炭化珪素結晶インゴット、炭化珪素結晶ウエハおよび炭化珪素結晶の製造方法に利用できる可能性がある。
1 黒鉛容器、2 黒鉛台座、3 黒鉛坩堝、4 種結晶、4a 表面、5 炭化珪素単結晶、5a 炭化珪素単結晶ウエハ、5b 表面、6 原料粉末、7 ドーパントガス、8 開口部、9 低指数面、10 法線。

Claims (5)

  1. 直径が4インチ以上の表面を有し、
    n型ドーパントと、
    珪素よりも原子半径の大きな金属原子と、を含み、
    前記n型ドーパントの濃度が1×1015個/cm3以上1×1020個/cm3以下であり、
    前記金属原子の濃度が1×1014個/cm3以上1×1018個/cm3以下、かつ前記n型ドーパントの濃度以下であって、
    前記金属原子の濃度勾配が1×1017個/(cm3・mm)以下である、炭化珪素結晶インゴット。
  2. 請求項1に記載の炭化珪素結晶インゴットから切り出すことによって得られた、直径が4インチ以上の表面を有する、炭化珪素結晶ウエハ。
  3. 前記炭化珪素結晶ウエハの厚さが100μm以上2000μm以下であって、
    前記炭化珪素結晶ウエハの前記表面と、前記炭化珪素結晶ウエハの前記表面に略平行な低指数面の法線とが為す角度の最大値と最小値との差が0.5°以下である、請求項2に記載の炭化珪素結晶ウエハ。
  4. 前記炭化珪素結晶ウエハのオフ角度が、種結晶の表面に対して1°以上である、請求項2または3に記載の炭化珪素結晶ウエハ。
  5. 炭化珪素粉末の結晶中に珪素よりも原子半径の大きな金属原子を格子間原子および置換原子の少なくとも一方として含む原料粉末を酸洗浄する工程と、
    前記酸洗浄する工程後に、前記原料粉末を用いて炭化珪素結晶インゴットを気相成長させる工程と、を含む、炭化珪素結晶インゴットの製造方法。
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