JP2012248569A - 研磨剤および研磨方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】炭化ケイ素単結晶基板等の非酸化物単結晶基板を、高い研磨速度で研磨し、平滑で結晶の原子レベルにおいても表面性状に優れた高品質な表面を得る。
【解決手段】非酸化物単結晶基板を化学的機械的に研磨するための研磨剤であって、酸化還元電位が0.5V以上の遷移金属を含む酸化剤と、平均2次粒子径が0.5μm以下の酸化セリウム粒子と、分散媒とを含有することを特徴とする。本発明の研磨剤において、前記酸化剤は、過マンガン酸イオンであることが好ましい。また、研磨剤のpHは11以下であることが好ましい。
【選択図】図1
【解決手段】非酸化物単結晶基板を化学的機械的に研磨するための研磨剤であって、酸化還元電位が0.5V以上の遷移金属を含む酸化剤と、平均2次粒子径が0.5μm以下の酸化セリウム粒子と、分散媒とを含有することを特徴とする。本発明の研磨剤において、前記酸化剤は、過マンガン酸イオンであることが好ましい。また、研磨剤のpHは11以下であることが好ましい。
【選択図】図1
Description
本発明は、非酸化物単結晶基板を化学的機械的に研磨するための研磨剤および研磨方法に関する。より詳しくは、炭化ケイ素単結晶基板等の仕上げ研磨に適した研磨剤、およびそれを用いた研磨方法に関する。
炭化ケイ素(SiC)半導体は、シリコン半導体よりも絶縁破壊電界、電子の飽和ドリフト速度および熱伝導率が大きいため、炭化ケイ素半導体を用いて、従来のシリコンデバイスよりも高温、高速で動作が可能なパワーデバイスを実現する研究・開発がなされている。なかでも、電動二輪車、電気自動車やハイブリッドカー等のモータを駆動するための電源に使用する高効率なスイッチング素子の開発が注目されている。このようなパワーデバイスを実現するためには、高品質な炭化ケイ素半導体層をエピタキシャル成長させるための表面平滑な炭化ケイ素単結晶基板が必要である。
また、高密度で情報を記録するための光源として、青色レーザダイオードが注目されており、さらに、蛍光灯や電球に替わる光源としての白色ダイオードへのニーズが高まっている。このような発光素子は窒化ガリウム(GaN)半導体を用いて作製され、高品質な窒化ガリウム半導体層を形成するための基板として、炭化ケイ素単結晶基板が使用されている。
こうした用途のための炭化ケイ素単結晶基板には、基板の平坦度、基板表面の平滑性等において高い加工精度が要求される。しかし、炭化ケイ素単結晶は硬度が極めて高く、かつ耐腐食性に優れるため、基板を作製する場合の加工性が悪く、平滑性の高い炭化ケイ素単結晶基板を得ることは難しい。
一般に、半導体単結晶基板の平滑な面は研磨によって形成される。炭化ケイ素単結晶を研磨する場合、炭化ケイ素よりも硬いダイヤモンド等の砥粒を研磨材として表面を機械的に研磨し、平坦な面を形成するが、ダイヤモンド砥粒で研磨した炭化ケイ素単結晶基板の表面には、ダイヤモンド砥粒の粒径に応じた微小なスクラッチが導入される。また、機械的な歪みを有する加工変質層が表面に生じるため、そのままでは炭化ケイ素単結晶基板の表面の平滑性が十分ではない。
半導体単結晶基板の製造では、機械研磨後の半導体基板の表面を平滑にする方法として、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing:以下、CMPということがある。)技術が用いられる。CMPは、酸化等の化学反応を利用して被加工物を酸化物等に変え、生成した酸化物を、被加工物よりも硬度の低い砥粒を用いて除去することにより、表面を研磨する方法である。この方法は、被加工物の表面に歪みを生じさせることなく、極めて平滑な面を形成できるという利点を有する。
従来から、炭化ケイ素単結晶基板の表面をCMPにより平滑に研磨するための研磨剤として、コロイダルシリカを含有するpH4〜9の研磨用組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、シリカ砥粒と過酸化水素のような酸化剤(酸素供与剤)とバナジン酸塩とを含む研磨用組成物も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、特許文献1の研磨用組成物による炭化ケイ素単結晶基板の研磨速度は低く、研磨に要する時間が非常に長くなるというという問題があった。
また、特許文献2の研磨用組成物を使用した場合も、研磨速度が十分でなく、研磨に時間がかかるという問題があった。さらに、特許文献2の研磨用組成物を使用した場合には、研磨後の炭化ケイ素単結晶基板の表面性状を顕微鏡で観察すると、結晶の原子ステップのフロント部に凹凸やえぐれなどのダメージが見られるという問題があった。さらに、酸化性の研磨液の存在下において、酸化ケイ素(シリカ)および酸化セリウム(セリア)砥粒を用いて炭化ケイ素単結晶基板等の表面を平滑に研磨する方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、非特許文献1に記載された方法では、粒子径の非常に大きな砥粒による強い機械的作用により、表面に傷や歪み等のダメージが入るという問題があった。
また、特許文献2の研磨用組成物を使用した場合も、研磨速度が十分でなく、研磨に時間がかかるという問題があった。さらに、特許文献2の研磨用組成物を使用した場合には、研磨後の炭化ケイ素単結晶基板の表面性状を顕微鏡で観察すると、結晶の原子ステップのフロント部に凹凸やえぐれなどのダメージが見られるという問題があった。さらに、酸化性の研磨液の存在下において、酸化ケイ素(シリカ)および酸化セリウム(セリア)砥粒を用いて炭化ケイ素単結晶基板等の表面を平滑に研磨する方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、非特許文献1に記載された方法では、粒子径の非常に大きな砥粒による強い機械的作用により、表面に傷や歪み等のダメージが入るという問題があった。
砥粒加工学会誌Vol.53 No.7 2009 7月 417-420
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、炭化ケイ素単結晶基板等の硬度が高く化学的安定性が高い非酸化物単結晶基板を、高い研磨速度で研磨し、平滑で結晶の原子レベルにおいても表面性状に優れた高品質な表面を得るための研磨剤、および研磨方法を提供することを目的とする。
本発明の研磨剤は、非酸化物単結晶基板を化学的機械的に研磨するための研磨剤であって、酸化還元電位が0.5V以上の遷移金属を含む酸化剤と、平均2次粒子径が0.5μm以下の酸化セリウム粒子と、分散媒とを含有することを特徴とする。
本発明の研磨剤において、前記酸化剤は、過マンガン酸イオンであることが好ましい。そして、前記過マンガン酸イオンの含有量は0.015質量%以上5質量%以下であることが好ましい。また、前記酸化セリウム粒子の平均2次粒子径は、0.2μm以下であることが好ましい。そして、前記酸化セリウム粒子の含有量は、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
さらに、本発明の研磨剤は、pHが11以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。またさらに、前記非酸化物単結晶基板は、炭化ケイ素単結晶基板または窒化ガリウム単結晶基板とすることができる。
本発明の研磨剤方法は、研磨剤を研磨パッドに供給し、研磨対象物である非酸化物単結晶基板の被研磨面と前記研磨パッドとを接触させて、両者間の相対運動により研磨する方法であって、前記研磨剤として前記本発明の研磨剤を使用することを特徴とする。
本発明の研磨剤およびこれを用いた研磨方法によれば、炭化ケイ素単結晶基板や窒化ガリウム単結晶基板のような硬度が高く化学的安定性が高い非酸化物単結晶基板の被研磨面を、高い研磨速度で研磨することができ、平坦かつ平滑で原子レベルにおいても表面性状に優れた被研磨面が得られる。
なお、本発明において、「被研磨面」とは研磨対象物の研磨される面であり、例えば表面を意味する。
なお、本発明において、「被研磨面」とは研磨対象物の研磨される面であり、例えば表面を意味する。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
[研磨剤]
本発明の研磨剤は、非酸化物単結晶基板を化学的機械的に研磨するための研磨剤であって、酸化還元電位が0.5V以上の遷移金属を含む酸化剤と、砥粒である平均2次粒子径が0.5μm以下の酸化セリウム粒子と、分散媒とを含有し、スラリーの形状を有する。
本発明の研磨剤は、非酸化物単結晶基板を化学的機械的に研磨するための研磨剤であって、酸化還元電位が0.5V以上の遷移金属を含む酸化剤と、砥粒である平均2次粒子径が0.5μm以下の酸化セリウム粒子と、分散媒とを含有し、スラリーの形状を有する。
本発明の研磨剤は、酸化還元電位が0.5V以上の遷移金属を含む酸化剤と、平均2次粒子径が0.5μm以下の酸化セリウム粒子を含有しているので、SiC単結晶基板のような硬度が高く化学的安定性が高い研磨対象物の被研磨面を、高い研磨速度で研磨でき、平坦かつ平滑で結晶の原子レベルでの表面性状に優れた表面が得られる。
なお、本発明の研磨剤はpHを11以下とすることが好ましい。pHを11以下に調整するために、pH調整剤を添加できる。研磨剤のpHを11以下とした場合には、酸化剤が効果的に作用するため研磨特性が良好であり、かつ砥粒である酸化セリウム粒子の分散安定性にも優れている。以下、本発明の研磨剤の各成分およびpHについて詳述する。
(酸化剤)
本発明の研磨剤に含有される酸化剤は、後述する研磨対象物(例えば、SiC単結晶基板やGaN単結晶基板)の被研磨面に酸化層を形成するものである。この酸化層を機械的な力で被研磨面から除去することにより、研磨対象物の研磨が促進される。すなわち、SiCやGaN等の化合物半導体は非酸化物であり、難研磨材料であるが、研磨剤中の酸化剤により表面に酸化層を形成できる。形成された酸化層は、研磨対象物に比べて硬度が低く研磨されやすいので、砥粒である酸化セリウム粒子により効果的に除去できる。その結果、高い研磨速度が発現する。
本発明の研磨剤に含有される酸化剤は、後述する研磨対象物(例えば、SiC単結晶基板やGaN単結晶基板)の被研磨面に酸化層を形成するものである。この酸化層を機械的な力で被研磨面から除去することにより、研磨対象物の研磨が促進される。すなわち、SiCやGaN等の化合物半導体は非酸化物であり、難研磨材料であるが、研磨剤中の酸化剤により表面に酸化層を形成できる。形成された酸化層は、研磨対象物に比べて硬度が低く研磨されやすいので、砥粒である酸化セリウム粒子により効果的に除去できる。その結果、高い研磨速度が発現する。
本発明の研磨剤に含有される酸化剤は、酸化還元電位が0.5V以上の遷移金属を含むものである。酸化還元電位が0.5V以上の遷移金属を含む酸化剤としては、例えば、過マンガン酸イオン、バナジン酸イオン、二クロム酸イオン、硝酸セリウムアンモニウム、硝酸鉄(III)九水和物、硝酸銀、リンタングステン酸、ケイタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングストモリブデン酸、リンバナドモリブデン酸等を挙げることができ、特に過マンガン酸イオンが好ましい。過マンガン酸イオンの供給源としては、過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウム等の過マンガン酸塩が好ましい。
SiC単結晶基板の研磨における酸化剤として、過マンガン酸イオンが特に好ましい理由を以下に示す。
(1)過マンガン酸イオンは、SiC単結晶を酸化する酸化力が強い。
酸化剤の酸化力が弱すぎると、SiC単結晶基板の被研磨面との反応が不十分となり、その結果十分に平滑な表面を得られない。酸化剤が物質を酸化する酸化力の指標として、酸化還元電位が用いられる。過マンガン酸イオンの酸化還元電位は1.70Vであり、酸化剤として一般に用いられる過塩素酸カリウム(KClO4)(酸化還元電位1.20V)や次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)(酸化還元電位1.63V)に比べて、酸化還元電位が高い。
(2)過マンガン酸イオンは反応速度が大きい。
過マンガン酸イオンは、酸化力の強い酸化剤として知られている過酸化水素(酸化還元電位1.76V)に比べて、酸化反応の反応速度が大きいので、酸化力の強さを速やかに発揮することができる。
(3)過マンガン酸イオンは、環境負荷が小さい。
(4)過マンガン酸塩は、後述する分散媒(水)に完全に溶解する。したがって、溶解残渣が基板の平滑性に悪影響を与えることがない。
(1)過マンガン酸イオンは、SiC単結晶を酸化する酸化力が強い。
酸化剤の酸化力が弱すぎると、SiC単結晶基板の被研磨面との反応が不十分となり、その結果十分に平滑な表面を得られない。酸化剤が物質を酸化する酸化力の指標として、酸化還元電位が用いられる。過マンガン酸イオンの酸化還元電位は1.70Vであり、酸化剤として一般に用いられる過塩素酸カリウム(KClO4)(酸化還元電位1.20V)や次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)(酸化還元電位1.63V)に比べて、酸化還元電位が高い。
(2)過マンガン酸イオンは反応速度が大きい。
過マンガン酸イオンは、酸化力の強い酸化剤として知られている過酸化水素(酸化還元電位1.76V)に比べて、酸化反応の反応速度が大きいので、酸化力の強さを速やかに発揮することができる。
(3)過マンガン酸イオンは、環境負荷が小さい。
(4)過マンガン酸塩は、後述する分散媒(水)に完全に溶解する。したがって、溶解残渣が基板の平滑性に悪影響を与えることがない。
研磨速度向上の効果を得るために、研磨剤中の過マンガン酸イオンの含有割合(濃度)は、0.015質量%以上5質量%以下が好ましい。0.015質量%未満では、酸化剤としての効果が期待できず、研磨により平滑な面を形成するのに非常に長時間を要したり、あるいは被研磨面にスクラッチが発生するおそれがある。過マンガン酸イオンの含有割合が5質量%を超えると、研磨液の温度によっては、過マンガン酸塩が完全に溶解しきれずに析出し、固体の過マンガン酸塩が被研磨面と接触することによりスクラッチが発生するおそれがある。研磨剤に含まれる過マンガン酸イオンの含有割合は、0.02質量%以上4質量%以下がさらに好ましく、0.05質量%以上3質量%以下が特に好ましい。
(研磨砥粒)
本発明の研磨剤に含有される砥粒である平均2次粒子径0.5μm以下の酸化セリウム(セリア)粒子は、前記酸化剤により被研磨面に形成される酸化層を除去するものである。この酸化層を化学的および機械的作用により研磨することで、研磨が促進される。また、平均2次粒子径0.5μm以下の粒子を使用することで、被研磨面への機械的なダメージによるスクラッチ等を低減できる。酸化セリウム粒子の平均2次粒子径は、0.2μm以下がより好ましい。
本発明の研磨剤に含有される砥粒である平均2次粒子径0.5μm以下の酸化セリウム(セリア)粒子は、前記酸化剤により被研磨面に形成される酸化層を除去するものである。この酸化層を化学的および機械的作用により研磨することで、研磨が促進される。また、平均2次粒子径0.5μm以下の粒子を使用することで、被研磨面への機械的なダメージによるスクラッチ等を低減できる。酸化セリウム粒子の平均2次粒子径は、0.2μm以下がより好ましい。
SiC単結晶基板の研磨において、前記した酸化剤とともに酸化セリウム粒子を使用した場合には、シリカ砥粒を使用した場合と比べて、化学的および機械的作用により研磨速度が高くなり、かつ表面粗さが小さくて平滑な表面が得られる。酸化セリウム粒子が特に好ましい理由は定かではないが、酸化セリウム粒子は、ガラスやCVD(Chemical Vapor Deposition)製膜法による酸化ケイ素膜に対し、化学的な反応を介することで高い研磨速度を示すことが知られている。SiC単結晶基板では、前記酸化剤により被研磨面にケイ素と酸素からなる酸化層が形成されることが予想されるため、ガラスやCVD製膜法による酸化ケイ素膜と同様に、酸化セリウム粒子と形成された酸化層との間で化学的な反応が起きることが考えられ、この反応により研磨促進効果が期待されるという利点がある。
また、砥粒として、前記平均2次粒子径の範囲を超える酸化セリウム粒子を使用した場合には、SiC単結晶基板の被研磨面に与えるダメージが大きく、平滑で高品質な表面が得られない。すなわち、平均2次粒子径が0.5μmを超える酸化セリウム粒子を含む研磨剤を用いて研磨した場合には、研磨後のSiC単結晶基板の結晶原子のステップラインに湾曲や歪み等の、過度な機械的作用によるダメージが見られる。したがって、研磨後の表面にエピタキシャル成長させて形成された炭化ケイ素半導体等の膜に、結晶欠陥等が生じるおそれがある。
なお、砥粒として含有される酸化セリウム粒子は、通常は研磨剤中で1次粒子が凝集した凝集粒子(2次粒子)として存在しているので、酸化セリウム粒子の好ましい粒子径を、平均2次粒子径(平均凝集粒径)で表すものとする。平均2次粒子径は、研磨剤中の酸化セリウム粒子を、例えば動的光散乱を用いた粒度分布計を用いて測定して得られる。
本発明の研磨剤中の酸化セリウム粒子の含有割合(濃度)は、十分な研磨速度を得るために、0.01質量%以上10.0質量%以下とすることが好ましい。酸化セリウム粒子の含有割合が0.01質量%未満では、十分な研磨速度を得ることが難しく、10.0%質量%を超えると分散性が低下により、研磨面でスクラッチが発生するおそれがある。また、スラリーコストが上昇する問題がある。より好ましい含有割合は0.02〜5.0質量%であり、さらに好ましい含有割合は0.03〜2.0質量%である。
(pHおよびpH調整剤)
本発明に係る研磨剤のpHは、研磨特性および砥粒である酸化セリウム粒子の分散安定性の点から、11以下が好ましく、5以下がより好ましく、3以下が特に好ましい。pHが11以上では、酸化セリウム粒子の分散性の低下により、被研磨面の平滑性が悪化するおそれがある。
本発明に係る研磨剤のpHは、研磨特性および砥粒である酸化セリウム粒子の分散安定性の点から、11以下が好ましく、5以下がより好ましく、3以下が特に好ましい。pHが11以上では、酸化セリウム粒子の分散性の低下により、被研磨面の平滑性が悪化するおそれがある。
本発明の研磨剤のpHは、pH調整剤である酸または塩基性化合物の添加・配合により調整することができる。酸としては、硝酸、硫酸、リン酸、塩酸のような無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等の飽和カルボン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸等のヒドロキシ酸、フタル酸、サリチル酸等の芳香族カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸等のジカルボン酸、アミノ酸、複素環系のカルボン酸のような有機酸を使用できる。硝酸およびリン酸の使用が好ましく、中でも硝酸の使用が特に好ましい。塩基性化合物としては、アンモニア、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、テトラメチルアンモニウム等の4級アンモニウム化合物、モノエタノールアミン、エチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、プロピレンジアミン等の有機アミンを使用できる。水酸化カリウム、水酸化ナトリウムの使用が好ましく、中でも水酸化カリウムが特に好ましい。
これらの酸または塩基性化合物の含有割合(濃度)は、研磨剤のpHを所定の範囲(pH11以下、より好ましくは5以下)に調整する量とする。
(分散媒)
本発明の研磨剤においては、分散媒として水が含有される。水は、酸化セリウム粒子を安定に分散させるとともに、酸化剤および必要に応じて添加される後述する任意成分を分散・溶解するための媒体である。水については、特に制限はないが、配合成分に対する影響、不純物の混入、pH等への影響の観点から、純水、超純水、イオン交換水(脱イオン水)が好ましい。
本発明の研磨剤においては、分散媒として水が含有される。水は、酸化セリウム粒子を安定に分散させるとともに、酸化剤および必要に応じて添加される後述する任意成分を分散・溶解するための媒体である。水については、特に制限はないが、配合成分に対する影響、不純物の混入、pH等への影響の観点から、純水、超純水、イオン交換水(脱イオン水)が好ましい。
(研磨剤の調製および任意成分)
本発明の研磨剤は、前記した成分が前記所定の割合で含有され、酸化セリウム粒子については均一に分散し、それ以外の成分については均一に溶解した混合状態になるように調製され使用される。混合には、研磨剤の製造に通常用いられる撹拌混合方法、例えば、超音波分散機、ホモジナイザー等による撹拌混合方法を採れる。本発明に係る研磨剤は、必ずしも予め構成する研磨成分をすべて混合したものとして研磨の場に供給する必要はない。研磨の場に供給する際に、研磨成分が混合されて研磨剤の組成になってもよい。
本発明の研磨剤は、前記した成分が前記所定の割合で含有され、酸化セリウム粒子については均一に分散し、それ以外の成分については均一に溶解した混合状態になるように調製され使用される。混合には、研磨剤の製造に通常用いられる撹拌混合方法、例えば、超音波分散機、ホモジナイザー等による撹拌混合方法を採れる。本発明に係る研磨剤は、必ずしも予め構成する研磨成分をすべて混合したものとして研磨の場に供給する必要はない。研磨の場に供給する際に、研磨成分が混合されて研磨剤の組成になってもよい。
本発明の研磨剤には、本発明の趣旨に反しない限り、凝集防止剤または分散剤、潤滑剤、キレート化剤、還元剤、粘性付与剤または粘度調節剤、防錆剤等を必要に応じて適宜含有させることができる。ただし、これらの添加剤が、酸化剤、酸または塩基性化合物の機能を有する場合は、酸化剤、酸または塩基性化合物として扱うものとする。
分散剤とは、砥粒である酸化セリウム粒子を純水等の分散媒中に安定的に分散させるために添加するものである。また、潤滑剤は、研磨対象物との間に生じる研磨応力を適度に調整し、安定した研磨を可能とする。分散剤および潤滑剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性の界面活性剤、多糖類、水溶性高分子等を使用できる。界面活性剤としては、疎水基として脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基を有し、またそれら疎水基内にエステル、エーテル、アミド等の結合基、アシル基、アルコキシル基等の連結基を1つ以上導入したもの、親水基として、カルボン酸、スルホン酸、硫酸エステル、リン酸、リン酸エステル、アミノ酸からなるものを使用できる。多糖類としては、アルギン酸、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、カードラン、プルラン、キサンタンガム、カラギナン、ジェランガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、タマリンド、サイリウム等を使用できる。水溶性高分子としては、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリスチレンスルホン酸等を使用できる。分散剤および潤滑剤を使用する場合、その含有割合は、研磨剤の全質量に対して0.001〜5質量%の範囲とすることが好ましい。
[研磨対象物]
本発明の研磨剤が研磨する研磨対象物は、非酸化物単結晶基板である。非酸化物単結晶基板としては、SiC単結晶基板やGaN単結晶基板のような化合物半導体基板が挙げられる。特に、前記SiC単結晶基板やGaN単結晶基板のような、修正モース硬度が10以上の単結晶基板の研磨に本発明の研磨剤を用いることで、高速研磨の効果をよりいっそう得ることができる。
本発明の研磨剤が研磨する研磨対象物は、非酸化物単結晶基板である。非酸化物単結晶基板としては、SiC単結晶基板やGaN単結晶基板のような化合物半導体基板が挙げられる。特に、前記SiC単結晶基板やGaN単結晶基板のような、修正モース硬度が10以上の単結晶基板の研磨に本発明の研磨剤を用いることで、高速研磨の効果をよりいっそう得ることができる。
[研磨方法]
本発明の研磨剤を用いて、研磨対象物である非酸化物単結晶基板を研磨する方法としては、研磨剤を研磨パッドに供給しながら、研磨対象物の被研磨面と研磨パッドとを接触させ、両者間の相対運動により研磨を行う研磨方法が好ましい。
本発明の研磨剤を用いて、研磨対象物である非酸化物単結晶基板を研磨する方法としては、研磨剤を研磨パッドに供給しながら、研磨対象物の被研磨面と研磨パッドとを接触させ、両者間の相対運動により研磨を行う研磨方法が好ましい。
上記研磨方法において、研磨装置としては従来公知の研磨装置を使用することができる。
図1に、本発明の実施形態に使用可能な研磨装置の一例を示すが、本発明の実施形態に使用される研磨装置はこのような構造のものに限定されるものではない。
図1に、本発明の実施形態に使用可能な研磨装置の一例を示すが、本発明の実施形態に使用される研磨装置はこのような構造のものに限定されるものではない。
図1に示す研磨装置10においては、研磨定盤1がその垂直な軸心C1の回りに回転可能に支持された状態で設けられており、この研磨定盤1は、定盤駆動モータ2により、図に矢印で示す方向に回転駆動されるようになっている。この研磨定盤1の上面には、公知の研磨パッド3が貼り着けられている。
一方、研磨定盤1上の軸心C1から偏心した位置には、下面においてSiC単結晶基板等の研磨対象物4を吸着または保持枠等を用いて保持する基板保持部材(キャリヤ)5が、その軸心C2の回りに回転可能でかつ軸心C2方向に移動可能に支持されている。この基板保持部材5は、図示しないワーク駆動モータにより、あるいは上記研磨定盤1から受ける回転モーメントにより、矢印で示す方向に回転されるように構成されている。基板保持部材5の下面、すなわち上記研磨パッド3と対向する面には、研磨対象物4が保持されている。研磨対象物4は、所定の荷重で研磨パッド3に押圧されるようになっている。
また、基板保持部材5の近傍には、滴下ノズル6等が設けられており、図示しないタンクから送出された本発明の研磨剤7が研磨定盤1上に供給されるようになっている。
このような研磨装置10による研磨に際しては、研磨定盤1およびそれに貼り着けられた研磨パッド3と、基板保持部材5およびその下面に保持された研磨対象物4とが、定盤駆動モータ2およびワーク駆動モータによりそれぞれの軸心の回りに回転駆動された状態で、滴下ノズル6等から研磨剤7が研磨パッド3の表面に供給されつつ、基板保持部材5に保持された研磨対象物4がその研磨パッド3に押し付けられる。それにより、研磨対象物4の被研磨面、すなわち研磨パッド3に対向する面が化学的機械的に研磨される。
基板保持部材5は、回転運動だけでなく直線運動をしてもよい。また、研磨定盤1および研磨パッド3も回転運動を行うものでなくてもよく、例えばベルト式で一方向に移動するものであってもよい。
このような研磨装置10による研磨条件には特に制限はないが、基板保持部材5に荷重をかけて研磨パッド3に押し付けることでより研磨圧力を高め、研磨速度を向上させることが可能である。研磨圧力は5〜80kPa程度が好ましく、被研磨面内における研磨速度の均一性、平坦性、スクラッチ等の研磨欠陥防止の観点から、10〜50kPa程度がより好ましい。研磨定盤1および基板保持部材5の回転数は、50〜500rpm程度が好ましいがこれに限定されない。また、研磨剤7の供給量については、被研磨面の構成材料や研磨液の組成、上記研磨条件等により適宜調整され選択される。
研磨パッド3としては、一般的な不織布、発泡ポリウレタン、多孔質樹脂、非多孔質樹脂等からなるものを使用できる。また、研磨パッド3への研磨液7の供給を促進し、あるいは研磨パッド3に研磨液7が一定量溜まるようにするために、研磨パッド3の表面に格子状、同心円状、らせん状などの溝加工が施されていてもよい。さらに、必要により、パッドコンディショナーを研磨パッド3の表面に接触させて、研磨パッド3表面のコンディショニングを行いながら研磨してもよい。
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。例1〜16は本発明の実施例であり、例17〜23は比較例である。
(1)研磨剤の調製
(1−1)
例1〜16の各研磨剤を、以下に示すようにして調製した。まず、表1に示す酸化剤である過マンガン酸カリウムに純水を加え、撹拌翼を用いて10分間撹拌した。次いで、この液に、砥粒である平均2次粒子径が0.18μmの酸化セリウム粒子加え、撹拌翼を用いて10分間撹拌した後、pH調整剤として、リン酸、硝酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムを撹拌しながら徐々に添加して、表1に示す所定のpHに調整し、研磨剤を得た。各実施例において使用した各成分の研磨剤全体に対する含有割合(濃度;質量%)を表1に示す。なお、表1における酸化剤濃度は、イオンである過マンガン酸イオンの濃度ではなく、過マンガン酸カリウムの濃度である。
(1−1)
例1〜16の各研磨剤を、以下に示すようにして調製した。まず、表1に示す酸化剤である過マンガン酸カリウムに純水を加え、撹拌翼を用いて10分間撹拌した。次いで、この液に、砥粒である平均2次粒子径が0.18μmの酸化セリウム粒子加え、撹拌翼を用いて10分間撹拌した後、pH調整剤として、リン酸、硝酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムを撹拌しながら徐々に添加して、表1に示す所定のpHに調整し、研磨剤を得た。各実施例において使用した各成分の研磨剤全体に対する含有割合(濃度;質量%)を表1に示す。なお、表1における酸化剤濃度は、イオンである過マンガン酸イオンの濃度ではなく、過マンガン酸カリウムの濃度である。
(1−2)
例17〜23の各研磨剤を、以下に示すようにして調製した。例17においては、1次粒子径が0.04μm、平均2次粒子径が約0.07μmのシリカ固形分が約40質量%のコロイダルシリカ分散液に、純水を加え、撹拌翼を用いて10分間撹拌した。次いで、この液に、金属塩としてバナジン酸アンモニウムを撹拌しながら加え、最後に過酸化水素水を添加して30分間撹拌し、表1に示す所定の各成分濃度に調整された研磨剤を得た。例18,19においては、平均2次粒子径が0.18μmの酸化セリウム粒子を純水に加え、撹拌翼を用いて10分間撹拌した。次いで、pH調整剤として、リン酸、硝酸を徐々に添加して表1に示す所定のpHに調整し、研磨剤を得た。例20においては、平均2次粒子径が1.3μmの酸化セリウム粒子を使用した以外は、例3と同様の方法で調整し、研磨剤を得た。例21〜23においては、それぞれ酸化剤である過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素に純水を加え、撹拌翼を用いて10分間撹拌した。次いで、この液に、平均2次粒子径が0.18μmの酸化セリウム粒子を加え、撹拌翼を用いて10分間撹拌した。pH調整剤として、水酸化カリウムを必要に応じて添加し、表1に示す所定のpHに調整し、研磨剤を得た。各比較例において使用した各成分の研磨剤全体に対する含有割合(濃度;質量%)を、表1に示す。なお、表1における酸化剤濃度は、イオンである過マンガン酸イオンの濃度ではなく、過マンガン酸カリウムの濃度である。
例17〜23の各研磨剤を、以下に示すようにして調製した。例17においては、1次粒子径が0.04μm、平均2次粒子径が約0.07μmのシリカ固形分が約40質量%のコロイダルシリカ分散液に、純水を加え、撹拌翼を用いて10分間撹拌した。次いで、この液に、金属塩としてバナジン酸アンモニウムを撹拌しながら加え、最後に過酸化水素水を添加して30分間撹拌し、表1に示す所定の各成分濃度に調整された研磨剤を得た。例18,19においては、平均2次粒子径が0.18μmの酸化セリウム粒子を純水に加え、撹拌翼を用いて10分間撹拌した。次いで、pH調整剤として、リン酸、硝酸を徐々に添加して表1に示す所定のpHに調整し、研磨剤を得た。例20においては、平均2次粒子径が1.3μmの酸化セリウム粒子を使用した以外は、例3と同様の方法で調整し、研磨剤を得た。例21〜23においては、それぞれ酸化剤である過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素に純水を加え、撹拌翼を用いて10分間撹拌した。次いで、この液に、平均2次粒子径が0.18μmの酸化セリウム粒子を加え、撹拌翼を用いて10分間撹拌した。pH調整剤として、水酸化カリウムを必要に応じて添加し、表1に示す所定のpHに調整し、研磨剤を得た。各比較例において使用した各成分の研磨剤全体に対する含有割合(濃度;質量%)を、表1に示す。なお、表1における酸化剤濃度は、イオンである過マンガン酸イオンの濃度ではなく、過マンガン酸カリウムの濃度である。
なお、例17で配合されるシリカ粒子の1次粒子径については、BET法で得られた比表面積から換算して求め、平均2次粒子径については、マイクロトラックUPA(日機装社製)により測定した。それ以外の各研磨剤については、平均2次粒子径のみをLA920(堀場製作所製)により測定した。
(1−2)pHの測定
例1〜23で得られた各研磨剤のpHを、横河電機社製のpH81−11を使用し25℃で測定した。測定結果を表1に示す。
例1〜23で得られた各研磨剤のpHを、横河電機社製のpH81−11を使用し25℃で測定した。測定結果を表1に示す。
(2)研磨剤の研磨特性の評価
例1〜23で得られた各研磨剤について、以下の方法で研磨特性の評価を行った。
(2−1)研磨条件
研磨機としては、MAT社製の研磨装置を使用した。研磨パッドとしては、SUBA800−XY−groove(ニッタハース社製)を使用し、研磨前にダイヤディスクを用いてコンディショニングを行った。また、研磨剤の供給速度を25ml/分、研磨定盤の回転数を68rpm、基板保持部材の回転数を68rpm、研磨圧を5psi(34.5kPa)として、30分間研磨を行った。
例1〜23で得られた各研磨剤について、以下の方法で研磨特性の評価を行った。
(2−1)研磨条件
研磨機としては、MAT社製の研磨装置を使用した。研磨パッドとしては、SUBA800−XY−groove(ニッタハース社製)を使用し、研磨前にダイヤディスクを用いてコンディショニングを行った。また、研磨剤の供給速度を25ml/分、研磨定盤の回転数を68rpm、基板保持部材の回転数を68rpm、研磨圧を5psi(34.5kPa)として、30分間研磨を行った。
(2−2)被研磨物
被研磨物として、ダイヤモンド砥粒を用いて予備研磨処理を行った3インチ径の4H−SiC基板を使用し、主面(0001)がC軸に対して0°+0.25°以内のSiC単結晶基板(On-axis基板)と、主面のC軸に対するオフ角が4°±0.5°以内のSiC単結晶基板をそれぞれ使用し、Si面側を研磨し評価した。
被研磨物として、ダイヤモンド砥粒を用いて予備研磨処理を行った3インチ径の4H−SiC基板を使用し、主面(0001)がC軸に対して0°+0.25°以内のSiC単結晶基板(On-axis基板)と、主面のC軸に対するオフ角が4°±0.5°以内のSiC単結晶基板をそれぞれ使用し、Si面側を研磨し評価した。
(2−3)研磨速度の測定
研磨速度は、前記SiC単結晶基板の単位時間当たりの厚さの変化量(nm/hr)で評価した。具体的には、厚さが既知の未研磨基板の質量と各時間研磨した後の基板の質量とを測定し、その差から質量変化を求めた。そして、この質量変化から求めた基板の厚さの時間当たりの変化を、下記の式を用いて算出した。研磨速度の算出結果を表1に示す。
(研磨速度(V)の計算式)
Δm=m0−m1
V=Δm/m0 × T0 × 60/t
(式中、Δm(g)は研磨前後の質量変化、m0(g)は未研磨基板の初期質量、m1(g)は研磨後基板の質量、Vは研磨速度(nm/hr)、T0は未研磨基板の厚さ(nm)、tは研磨時間(min)を表す。)
研磨速度は、前記SiC単結晶基板の単位時間当たりの厚さの変化量(nm/hr)で評価した。具体的には、厚さが既知の未研磨基板の質量と各時間研磨した後の基板の質量とを測定し、その差から質量変化を求めた。そして、この質量変化から求めた基板の厚さの時間当たりの変化を、下記の式を用いて算出した。研磨速度の算出結果を表1に示す。
(研磨速度(V)の計算式)
Δm=m0−m1
V=Δm/m0 × T0 × 60/t
(式中、Δm(g)は研磨前後の質量変化、m0(g)は未研磨基板の初期質量、m1(g)は研磨後基板の質量、Vは研磨速度(nm/hr)、T0は未研磨基板の厚さ(nm)、tは研磨時間(min)を表す。)
(2−4)原子ステップテラス幅分布の測定
例3および例20の各研磨剤により研磨されたOn−axis基板において、研磨後の表面の幅2μm、高さ1μmの範囲をAFMで測定した。図2に示すように、各原子ステップのテラス幅を0.2μm間隔で測定し、テラス幅の最大値と最小値の差、および標準偏差を求めた。
例3および例20の各研磨剤により研磨されたOn−axis基板において、研磨後の表面の幅2μm、高さ1μmの範囲をAFMで測定した。図2に示すように、各原子ステップのテラス幅を0.2μm間隔で測定し、テラス幅の最大値と最小値の差、および標準偏差を求めた。
(2−5)原子ステップフロント部平均粗さの測定
例3および例17の各研磨剤により研磨されたOn−axis基板において、研磨後の表面の幅2μm、高さ1μmの範囲をAFMで測定した。図2に示すように、各原子ステップのフロント部の断面形状について、粗さ(Ra)を測定しその平均値を求めた。
例3および例17の各研磨剤により研磨されたOn−axis基板において、研磨後の表面の幅2μm、高さ1μmの範囲をAFMで測定した。図2に示すように、各原子ステップのフロント部の断面形状について、粗さ(Ra)を測定しその平均値を求めた。
表1からわかるように、例1〜16の研磨剤を使用した場合は、On−axis基板およびオフ角が4°以内のSiC単結晶基板の両方に対して、高い研磨速度が得られており、高速研磨が可能である。また、AFM測定から得られた原子ステップラインに湾曲が見られず、直線性を維持しており、各原子ステップのテラス幅が均一でかつ原子ステップのフロント部の形状もえぐれ等がなく、平均Raも小さく良好であった。
これに対して、コロイダルシリカと過酸化水素およびバナジン酸アンモニウムを含有する例17の研磨剤を使用した場合は、実施例である例1〜16の研磨剤を使用した場合に比べて研磨速度が低くなっている。さらに、AFM測定で得られる原子ステップフロント部にえぐれが確認され、平均Raが実施例である例3と比較して大きく、原子レベルでの表面性状が不良であった。酸化剤を含まない例18,19の研磨剤を使用した場合は、実施例と比較して研磨速度が著しく低下した。
また、酸化剤として過マンガン酸カリウムを含有し、砥粒として平均2次粒子径が1.3μmの酸化セリウム粒子を含有する例20の研磨剤を使用した場合は、高い研磨速度を示すが、AFM測定から、過度な機械的作用による原子ステップの湾曲により、各原子ステップテラス幅のばらつきが大きく、原子レベルでの表面性状が不良であることがわかった。さらに、酸化剤に過マンガン酸カリウム以外の酸化剤を用いた例21〜23の研磨剤を使用した場合は、実施例に比べて研磨速度が著しく低下した。
本発明によれば、非酸化物単結晶基板、特にSiC単結晶基板やGaN単結晶基板等の硬度が高く化学的安定性の高い化合物半導体基板の高速研磨が可能となり、かつキズがなく平坦性および平滑性に優れた研磨面を得ることが可能となる。したがって、それらの基板の生産性の向上に寄与できる。
1…研磨定盤、2…定盤駆動モータ、3…研磨パッド、4…研磨対象物、5…基板保持部材、6…滴下ノズル、7…研磨剤、10…研磨装置。
Claims (9)
- 非酸化物単結晶基板を化学的機械的に研磨するための研磨剤であって、
酸化還元電位が0.5V以上の遷移金属を含む酸化剤と、平均2次粒子径が0.5μm以下の酸化セリウム粒子と、分散媒とを含有することを特徴とする研磨剤。 - 前記酸化剤は、過マンガン酸イオンである請求項1に記載の研磨剤。
- 前記過マンガン酸イオンの含有量は0.015質量%以上5質量%以下である請求項2に記載の研磨剤。
- 前記酸化セリウム粒子の平均2次粒子径は、0.2μm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の研磨剤。
- 前記酸化セリウム粒子の含有量は、0.01質量%以上10質量%以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の研磨剤。
- pHが11以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の研磨剤。
- pHが5以下である請求項6に記載の研磨剤。
- 前記非酸化物単結晶基板は、炭化ケイ素(SiC)単結晶基板または窒化ガリウム(GaN)単結晶基板である請求項1〜7のいずれか1項に記載の研磨剤。
- 研磨剤を研磨パッドに供給し、研磨対象物である非酸化物単結晶基板の被研磨面と前記研磨パッドとを接触させて、両者間の相対運動により研磨する方法であって、前記研磨剤として請求項1〜8のいずれか1項に記載の研磨剤を使用する研磨方法。
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