JP2012245528A - 自動板厚制御方法及び圧延機 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の圧延機の自動板厚制御方法は、圧延材Wの板厚偏差を計測し、計測した板厚偏差を基に圧延材Wを圧延するワークロール3のロール隙間を算出し、算出したロール隙間に応じて圧下装置7を制御する圧延機の自動板厚制御方法であって、少なくとも2つの圧延速度において圧延材の板厚偏差を計測し、計測された圧延材Wの板厚偏差を周波数成分に分解し、分解された周波数成分から圧延速度に依存しない成分をノイズ成分として排除し、ノイズ成分が排除された板厚偏差を基にワークロール3のロール隙間を算出することを特徴とする。
【選択図】図2
Description
クラスタ圧延機などの多段圧延機で圧延材の圧延を行うにあたって、まず、圧延材の板厚を計測し、計測した板厚を基にロール隙間を演算し、圧下装置によってロール隙間を制御することによって圧延材の板厚を自動的に制御している。
その一つの原因として、自動板厚制御に利用する板厚偏差の計測結果には、板厚の変動に起因した成分以外にもノイズ成分が含まれている。これらのノイズ成分を、板厚の変動に起因した成分と区別することは容易ではなく、自動板厚制御のために用いられる板厚偏差の信号にこれらのノイズ成分が重畳されていると、高精度に板厚を制御することが困難になる。
本発明の圧延機の自動板厚制御方法は、圧延材の板厚偏差を計測し、この計測した板厚偏差を基に前記圧延材を圧延するワークロールのロール隙間を算出し、この算出したロール隙間に応じて圧下装置を制御する自動板厚制御方法であって、少なくとも2つの圧延速度において圧延材の板厚偏差を計測し、この計測した板厚偏差を周波数成分に分解し、この分解された少なくとも2つの圧延速度における周波数成分を比較することによって、圧延速度に依存しない成分をノイズ成分として板厚偏差から排除し、このノイズ成分が排除された板厚偏差を基に前記圧延材を圧延するワークロールのロール隙間を算出することを特徴とするものである。
(i) 圧延速度の変化前後における圧延速度の変化の割合である「速度変化率」を算出する。
(ii) 圧延速度の変化前と変化後とのそれぞれについて、板厚の偏差を計測すると共に計測された偏差を周波数成分に分解する。
(iv) 圧延速度の変化後の各周波数成分に着目し、(iii)で求めた乗算周波数成分と等しくなる周波数成分を抽出する。
(v) 抽出した周波数成分に関して、圧延速度の変化後の振幅から圧延速度の変化前の振幅を差し引くことにより、前記ノイズ成分が排除された周波数成分の振幅を求める。
図1に示すように、本実施の形態に係る圧延機2は、上下一対のワークロール3、中間ロール4、バックアップロール5を複数本組み合わせることによって構成されたクラスタ圧延機である。クラスタ圧延機は、各ロールの配置が側面視で葡萄の房のようになっているものである。図例のクラスタ圧延機6は、上下一対のワークロール3の周りに4本の中間ロール4(上下に2本ずつ)が配置され、中間ロール4の周りに6本のバックアップロール5(上下に3本ずつ)が配置されている12段圧延機である。クラスタ圧延機6は、ステンレス、チタン、特殊鋼、銅などの圧延材Wを冷間圧延して薄板材とするものであり、高精度の自動板厚制御をおこなうことが要求される。それ故、クラスタ圧延機に本発明の自動板厚制御方法を適用するのが好適である。とはいえ、本発明が適用される圧延機2としては、12段以外のクラスタ圧延機(例えば20段圧延機)でもよいし、クラスタ圧延機以外の圧延機であってもよい。
さらに、圧延機6の入側には、圧延材Wの板厚を計測する入側板厚計10が設けられており、圧延機6の出側にも、圧延材Wの板厚を計測する出側板厚計11が設けられている。これらの入側板厚計10及び出側板厚計11は、非接触式の板厚計(例えば、X線板厚計など)で構成されている。なお、これらのリール8、9と板厚計10、11は、逆方向に圧延する場合は、その機能が反対になる。
さらに、圧延機2には、上下のワークロール3のロール隙間を制御する自動板厚制御部1を有している。この自動板厚制御部1は、フィードフォワード制御部12及びフィードバック制御部13を有しており、プロコンやシーケンサ、PLCなどの電気制御機器で構成されている。
図2に示すように、自動板厚制御部1のフィードフォワード制御部12は、概念的には、入側板厚偏差トラッキング手段14、出力タイミング調整手段15、出力量演算器16及び乗算器17から構成されている。ただし、これらの手段が物理的に独立した機器である必要はなく、これらの機能を備えていればよい。
このフィードフォワード制御はオープンループであるため、この修正量の過不足を出側板厚計11で計測すると共に、この計測値を基にしたフィードバック制御をフィードバック制御部13において併用している。
この入側板厚偏差補正演算部19は、入側板厚計10で測定された入側板厚を基にした板厚偏差を周波数成分に分解し、周波数空間上で一旦ノイズ成分を取り除いた後の値をフィードフォワード制御部12(入側板厚偏差トラッキング手段14)に入力するものである。
図4、図5には、本発明の処理の考え方を示している。
すなわち、図4(a)に示すように、入側板厚計10から取り込まれた入側板厚偏差ΔHAをFFT処理して周波数成分に分解した場合に、[P1]〜[P5]の5つの周波数成分が得られたとする。この5つの周波数成分は、図4(b)に示すノイズを含まない板厚偏差の周波数成分(真の板厚偏差)[P6]及び[P7]と、図4(c)に示すノイズ成分[P8]〜[P11]と、を合成したものとなっている。つまり、図4(a)の[P2]に着目すればその振幅は図4(b)の[P6]の振幅と図4(c)[P9]の振幅との和となっていて、実際にデータとして得られる[P2]の結果だけでは、これを[P6]と[P9]とに分離する(ノイズ成分だけを抽出する)ことはできない。
まず、図3のS1では、圧延材Wの圧延速度Vを計測する。この圧延速度Vの計測は、ワークロール3の回転数に基づいて算出されるものであっても良いし、速度センサなどを用いて計測されるものであっても良い。ここでは、ワークロール3(正確にはワークロール3の中間ロール4)の回転数に基づいて圧延速度V=100mpmが計測された場合を考える。このようにして圧延速度Vが計測した後にS2に進む。
[P1] 振幅0.01μm、周波数1Hz
[P2] 振幅0.83μm、周波数10Hz
[P3] 振幅0.90μm、周波数15Hz
[P4] 振幅0.04μm、周波数20Hz
[P5] 振幅0.02μm、周波数30Hz
この入側板厚偏差ΔHAは、上述した[P1]〜[P5]を用いると式(1)のように示される。
入側板厚偏差ΔHA=0.01sin(2π×1×t)+0.83sin(2π×10×t)+0.9sin(2π×15×t)
+0.04sin(2π×20×t)+0.02sin(2π×30×t) ・・・(1)
このようにして入側板厚偏差ΔHAがそれぞれの周波数成分に分割されたら、S4に進む。
具体的には、圧延材Wの圧延速度Vの変化を所定のサンプリング周期Ts毎に取り込み、連続して取り込まれた圧延速度Vの計測結果の間に所定の変化量以上の変化があるかどうかを判断する。圧延速度Vが所定の変化量以上で変化しているときは「圧延速度Vが変更された」と判断してS5に進み、所定の変化量未満であるときは「圧延速度Vが変更されていない」と判断してS4の最初に戻る。
[P12]振幅0.01μm、周波数1Hz
[P13]振幅0.03μm、周波数10Hz
[P14]振幅0.84μm、周波数20Hz
[P15]振幅0.92μm、周波数30Hz
つまり、この入側板厚偏差ΔHBは式(2)のように示される。
入側板厚偏差ΔHB=0.01sin(2π×1×t)+0.03sin(2π×10×t)
+0.84sin(2π×20×t)+0.92sin(2π×30×t) ・・・(2)
このようにして入側板厚偏差ΔHBがそれぞれの周波数成分に分割されたら、S8に進んで計測された、入側板厚偏差ΔHAの周波数成分と入側板厚偏差ΔHBの周波数成分とを比較する。
具体的には、まず圧延速度の変化倍率(速度変化率)に着目する。上述した例では変化倍率V’/V=2.0であるから、入側板厚偏差ΔHAの周波数成分が発生する周波数1Hz、10Hz、15Hz、20Hz、30Hz(図6(a)参照)にこの速度変化率(2.0倍)を乗算して、周波数2Hz、20Hz、30Hz、40Hz、60Hzという周波数を得る(乗算周波数成分)。得られた周波数で、入側板厚偏差ΔHBの周波数成分が発生しているかどうかをチェックする。
つまり、この周波数20Hzの[P14]及び周波数30Hzの[P15]に、ノイズを含まない板厚偏差の周波数成分が含まれている。ただし、この[P14]及び[P15]にはノイズ成分も含まれている可能性が多いので、S9に進んでノイズ成分を排除する。
ノイズを含まない板厚偏差ΔH=0.84sin(2π×20×t)+0.92sin(2π×30×t)
-0.04sin(2π×20×t)-0.02sin(2π×30×t)
=0.80sin(2π×20×t)+0.9sin(2π×30×t) ・・・(3)
このようにして、ノイズ成分が排除された板厚偏差ΔHをフィードフォワード制御部12に入力してロール隙間ΔSを制御すれば、ノイズ成分の影響を確実に排除して高精度な自動板厚制御を行うことが可能となる。
S11では、上記したS1〜S10の処理を再度行うか否かを判定する。このS1〜S10の処理は、圧延速度を複数回に亘って変更する場合は変更のたびに行うことができ、そのたびにノイズを排除してより高精度な自動板厚制御を行うことできる。
(i) 圧延速度の変化前後における圧延速度の変化の割合である「速度変化率」を算出する、
(ii) 圧延速度の変化前と変化後とのそれぞれについて、板厚の偏差を計測すると共に計測された偏差を周波数成分に分解する、
(iii) 圧延速度の変化前における各周波数成分の周波数に、算出した速度変化率を乗じて「乗算周波数成分」として求める、
(iv) 圧延速度の変化後の各周波数成分に着目し、(iii)で求めた乗算周波数成分と等しくなる周波数成分を抽出する、
(v) 抽出した周波数成分に関して、圧延速度の変化後の振幅から圧延速度の変化前の振幅を差し引くことにより、前記ノイズ成分が排除された周波数成分の振幅を求める、
という処理を行うことで、ノイズ成分が排除された板厚偏差ΔHを得ることができ、高精度な自動板厚制御を行うことが可能となる。
なお、上記の実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、圧延機の運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、この技術分野において通常実施されている値を採用すればよい。
2 圧延機
3 ワークロール
4 中間ロール
5 バックアップロール
6 圧延機(クラスタ圧延機)
7 圧下装置
8 巻出リール
9 巻取リール
10 入側板厚計
11 出側板厚計
12 フィードフォワード制御部
13 フィードバック制御部
14 入側板厚偏差トラッキング手段
15 出力タイミング調整手段
16 出力量演算器
17 乗算器
18 パルスジェネレータ
19 入側板厚偏差補正演算部
W 圧延材
Claims (3)
- 圧延材の板厚偏差を計測し、この計測した板厚偏差を基に前記圧延材を圧延するワークロールのロール隙間を算出し、この算出したロール隙間に応じて圧下装置を制御する自動板厚制御方法であって、
少なくとも2つの圧延速度において圧延材の板厚偏差を計測し、この計測した板厚偏差を周波数成分に分解し、
この分解された少なくとも2つの圧延速度における周波数成分を比較することによって、圧延速度に依存しない成分をノイズ成分として板厚偏差から排除し、
このノイズ成分が排除された板厚偏差を基に前記圧延材を圧延するワークロールのロール隙間を算出することを特徴とする自動板厚制御方法。 - 分解された周波数成分から、前記圧延速度に依存しない成分をノイズ成分として排除するに際して、以下の(i)〜(v)を行うことを特徴とする請求項1に記載の自動板厚制御方法。
(i) 圧延速度の変化前後における圧延速度の変化の割合である「速度変化率」を算出する。
(ii) 圧延速度の変化前と変化後とのそれぞれについて、板厚の偏差を計測すると共に計測された偏差を周波数成分に分解する。
(iii) 圧延速度の変化前における各周波数成分の周波数に、算出した速度変化率を乗じて乗算周波数成分として求める。
(iv) 圧延速度の変化後の各周波数成分に着目し、(iii)で求めた乗算周波数成分と等しくなる周波数成分を抽出する。
(v) 抽出した周波数成分に関して、圧延速度の変化後の振幅から圧延速度の変化前の振幅を差し引くことにより、前記ノイズ成分が排除された周波数成分の振幅を求める。 - 圧延機の入側での板厚を計測する入側板厚計と、
前記入側板厚計で計測された圧延材の板厚の偏差を周波数成分に分解し、前記分解された周波数成分から、前記圧延速度に依存しない成分をノイズ成分として排除し、前記ノイズ成分が排除された周波数成分を基に板厚偏差を補正する入側板厚偏差補正演算部と、
前記入側板厚偏差補正演算部で得られた補正板厚偏差を基に圧下装置に適用するロール隙間を算出し、算出されたロール隙間を前記圧延機に適用して板厚を制御する自動板厚制御部と、
を備えた圧延機。
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