JP2012243851A - 太陽電池用ウェーハの製造方法、太陽電池セルの製造方法、および太陽電池モジュールの製造方法 - Google Patents

太陽電池用ウェーハの製造方法、太陽電池セルの製造方法、および太陽電池モジュールの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】シリコンウェーハをはじめとする半導体ウェーハの表面を安全かつ安価に多孔質化し、変換効率の高い太陽電池を作製できる太陽電池用ウェーハを製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、半導体ウェーハの少なくとも片面を多孔質化して太陽電池用ウェーハを製造する方法であって、前記半導体ウェーハの少なくとも前記片面に低級アルコール液を接触させる第1工程(S1)と、該第1工程の後に、前記半導体ウェーハの少なくとも前記片面に金属イオンを含むフッ化水素酸を接触させる第2工程(S2)と、該第2工程の後に前記半導体ウェーハの少なくとも前記片面にアルカリ溶液を接触させる第3工程(S5)と、を有することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、太陽電池用ウェーハの製造方法、太陽電池セルの製造方法、および太陽電池モジュールの製造方法に関する。本発明は、特に、変換効率の高い太陽電池の製造を目的とした、半導体ウェーハの表面を多孔質化する太陽電池用ウェーハの製造方法に関する。
一般に、太陽電池セルは、シリコンウェーハをはじめとする半導体ウェーハを用いて形成される。太陽電池セルの変換効率を高めるためには、太陽電池セルの受光面で反射してしまう光および太陽電池セルを透過してしまう光を低減する必要がある。ここで例えば、シリコンウェーハを用いて結晶系太陽電池を作製する場合、シリコンウェーハは光電変換に寄与する可視光の透過率が低いため、変換効率を向上させるためには、受光面となるシリコンウェーハ表面における可視光の反射ロスを低く抑え、入射する光を有効に太陽電池の中に閉じ込めることを考慮すればよい。
シリコンウェーハ表面における入射光の反射ロスを低減する技術としては、表面に反射防止膜を形成する技術と、表面にテクスチャ構造とよばれるミクロなピラミッド型の凹凸などの凹凸構造を形成する技術とがある。後者の技術のうち、表面にテクスチャ構造を形成する方法は、単結晶シリコンに適した方法であり、(100)単結晶シリコン表面をアルカリ液でエッチングする方法が代表的である。これは、アルカリを用いたエッチングでは、(111)面のエッチング速度が(100)面、(110)面のエッチング速度よりも遅いことを利用するものである。さらに、後者の技術として近年はシリコン表面を多孔質化することによって、表面に凹凸構造を形成し、入射光の反射ロスを低減する手法が提案されている。
例えば、特許文献1には、単結晶シリコン基板を陽極、Ptを陰極としてフッ化水素酸中で電流を流す陽極化成処理により、表面に多数の微細孔を形成する方法が記載されている。また、特許文献2には、反応性イオンエッチングによりシリコン基板を多孔質化する方法が記載されている。
さらに、特許文献3には、ミクロンサイズのテクスチャ構造が形成されたシリコン基板表面にさらに微細なサブミクロンオーダーの凹凸を形成するために、この表面に金属粒子を無電解メッキした後、基板を酸化剤およびフッ化水素酸の混合水溶液でエッチングする技術が記載されている。具体的には、アルカリテクスチャー処理を施したp型の単結晶シリコン基板を過塩素酸銀と水酸化ナトリウムを含む水溶液に浸漬させ、表面に銀微粒子を形成する。その後、過酸化水素水、フッ化水素酸および水の混合溶液に浸漬させ、サブミクロンオーダーの凹凸を形成する。
特開平6−169097号公報 特表2004−506330号公報 特開2007−194485号公報
しかしながら、特許文献1の陽極化成処理による方法では、大型かつ高価な直流電源が必要であり、また、有機溶媒とフッ化水素酸の混合溶液を使用するため、リンス処理時の操作性、安全性に課題が残る。特許文献2の反応性イオンエッチングによる方法では、プロセス専用のイオン注入装置を確保する必要があり、コスト面で問題がある。また、特許文献3に記載の方法の場合、混合水溶液中に酸化剤を含有させることが必須であるが、酸化剤は一般に高価であり、試薬コストが高くなるという問題がある。特に酸化剤として過酸化水素水を用いる場合、廃液規制により過酸化水素水は生態系への影響を考慮した特殊廃液処理が必須であるため、コスト面のみならず、排水処理が複雑になるという問題もある。このため、入射光の反射ロスを低減するためにシリコン表面を多孔質化する手法は、これまで実用化されていないのが実状である。
シリコン表面を多孔質化することによって入射光の反射ロスを低減する手法は、通常のテクスチャ構造を形成するよりさらに反射ロスを低減できることが期待されるため、安全面やコスト面の問題が解消された新規な多孔質化の方法が求められている。
また、これまでに知られている多孔質化技術の多くは、シリコンウェーハ表面の反射率を極力下げるとの観点で主に検討されており、これらのウェーハから製造した太陽電池の実際の変換効率まで検討がなされていないものが多い。
そこで本発明は、上記課題に鑑み、シリコンウェーハをはじめとする半導体ウェーハの表面を安全かつ安価に多孔質化し、変換効率の高い太陽電池を作製できる太陽電池用ウェーハを製造する方法、ならびに、この方法を含む太陽電池セルの製造方法および太陽電池モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するべく、本発明者が鋭意検討し、様々な多孔質化処理方法で試行錯誤をくり返した結果、以下に示す方法によれば、半導体ウェーハ表面にサブミクロンオーダーの凹凸を形成し、効果的に表面における光の反射ロスを低減しつつ、このウェーハから製造した太陽電池の変換効率を高くすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、上記の知見および検討に基づくものであり、その要旨構成は以下の通りである。
(1)半導体ウェーハの少なくとも片面に低級アルコールを接触させる第1工程と、
該第1工程の後に、前記半導体ウェーハの少なくとも前記片面に金属イオンを含むフッ化水素酸を接触させる第2工程と、
該第2工程の後に、前記半導体ウェーハの少なくとも前記片面にアルカリ溶液を接触させる第3工程と、
により前記半導体ウェーハの少なくとも前記片面を多孔質化して太陽電池用ウェーハとすることを特徴とする太陽電池用ウェーハの製造方法。
(2)前記半導体ウェーハがシリコンウェーハであり、
前記金属イオンがSiより貴な金属のイオンである上記(1)に記載の太陽電池用ウェーハの製造方法。
(3)前記第2工程の後かつ前記第3工程の前に、前記半導体ウェーハの少なくとも前記片面に、前記金属イオンから析出した金属を前記片面から除去する溶液を接触させる工程を有する上記(1)または(2)に記載の太陽電池用ウェーハの製造方法。
(4)前記片面に作製された多孔質化された層の厚さが50〜400nmとなる、(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の太陽電池用ウェーハの製造方法。
(5)前記第3工程の前記アルカリ溶液のpHが9.0〜14.0である、上記(1)乃至(4)のいずれか1項に記載の太陽電池用ウェーハの製造方法。
(6)前記第3工程の前記アルカリ溶液を接触させる時間が600秒以下である、上記(1)乃至(5)のいずれか1項に記載の太陽電池用ウェーハの製造方法。
(7)上記(1)乃至(6)のいずれか1項に記載の太陽電池用ウェーハの製造方法における工程に加えて、該太陽電池用ウェーハで太陽電池セルを作製する工程をさらに有する太陽電池セルの製造方法。
(8)(7)に記載の太陽電池セルの製造方法における工程に加えて、該太陽電池セルから太陽電池モジュールを作製する工程をさらに有する太陽電池モジュールの製造方法。
本発明によれば、直流電源やイオン注入装置といった大掛かりな装置を必要とせず、かつ、フッ化水素酸を有機溶媒と混合させたり、フッ化水素酸ともに酸化剤を用いる必要がない。よって、従来技術に比べて安全かつ安価に、シリコンウェーハをはじめとする半導体ウェーハの表面を多孔質化して、表面における光の反射ロスを低減した太陽電池用ウェーハを得ることが可能となった。さらに、本発明は、第1および第2工程に続き、アルカリ溶液処理の第3工程を行うので、得られた太陽電池用ウェーハを用いて変換効率の高い太陽電池を作製することができる。
本発明に従う代表的な太陽電池用ウェーハの製造方法のフロー図である。
以下、図面を参照しつつ本発明をより詳細に説明する。図1は、本発明に従う代表的な太陽電池用ウェーハの製造方法のフロー図である。まず、本発明に用いる半導体ウェーハは特に限定されないが、以下では、本発明の一実施形態として、単結晶または多結晶シリコンウェーハ(以下、まとめて単に「ウェーハ」ともいう。)を用いて、これらに多孔質化処理を施し、単結晶または多結晶シリコン太陽電池用ウェーハを製造する方法を説明する。
単結晶シリコンウェーハは、チョクラルスキ法(CZ法)などにより育成された単結晶シリコンインゴットをワイヤーソー等でスライスしたものを使用することができる。また、ウェーハ表面の面方位についても、(100),(001)および(111)など、必要に応じて選択することができる。多結晶シリコンウェーハは、多結晶シリコンインゴットからスライス加工により得ることができる。
単結晶シリコンウェーハ、多結晶シリコンウェーハいずれの場合も、インゴットから切り出したウェーハ表面にはスライス加工によりシリコン層へ導入されたクラックや結晶歪などのダメージが生じている。このため、スライス加工後、ウェーハを洗浄し、酸またはアルカリでウェーハ表面にエッチング処理を施し、ダメージが生じている表面を除去することが好ましい。スライス加工由来の上記ダメージの侵入深さは、スライス加工条件により決定される因子であるが、概ね10μm以下の深さである。よって、KOHなどのアルカリもしくはフッ化水素酸(HF)/硝酸(HNO)混合酸により一般的に実施されているエッチング処理で対応可能である。
本発明は、ウェーハの少なくとも片面を多孔質化して太陽電池用ウェーハとする方法である。すなわち、本明細書において「太陽電池用ウェーハ」とは、ウェーハの少なくとも片面を多孔質化処理した状態のウェーハを意味するものである。この片面は、太陽電池セルにおいて受光面となる面である。そして、本発明の特徴的工程は、ウェーハの少なくとも片面に低級アルコール液を接触させる第1工程(ステップS1)と、この第1工程の後に、このウェーハの少なくとも前記片面に金属イオンを含むフッ化水素酸を接触させる第2工程(ステップS2)と、この第2工程の後に、このウェーハの少なくとも前記片面にアルカリ溶液を接触させる第3工程(ステップS5)と、を有することである。
以下、本発明の上記特徴的工程を採用したことの技術的意義を、作用効果とともに具体例で説明する。詳細な工程は実施例で後述するが、本発明者は、酸エッチング処理後、風乾したp型(100)単結晶シリコンウェーハを2−プロパノール(イソプロピルアルコール;IPA)などの低級アルコール中に所定時間浸漬させ、その後銅(Cu)を溶解させたフッ化水素酸中に所定時間浸漬させたところ、外観上ウェーハ表面が黒くなり、可視光全域の波長において反射率が低くなることを見出した。また、ウェーハ表面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を確認したところ、数μm程度の凹凸表面上にさらに微細な多数の凹凸が形成されていた。
さらに、これまでの多孔質化技術では、反射率を低減させることを主眼とした検討がされており、低反射率にするほど太陽電池の変換効率は高いと考えられていた。しかしながら、本発明者の検討によると、ウェーハ表面に対する多孔質化の程度がより大きいほど太陽電池表面の反射率低減により優れる一方、多孔質化がある程度進むと反射率は低いものの太陽電池としての変換効率は逆に低くなることを見出した。
低反射率から期待されるほどの高変換効率が得られない理由としては、太陽電池の発電においては太陽電池用ウェーハ表面に配線した導線に電子が流れる必要があるが、太陽電池用ウェーハ表面上の多くの多孔質化構造に電子がトラップされる表面再結合現象が多発して、電子が導線に届かない現象がおきていることが考えられた。そこで上記の第1および第2工程を含む多孔質化工程にアルカリ溶液処理工程を加え、多孔質化構造に軽度のエッチングを施してウェーハ表面の多孔質化層をわずかに削った。すると、変換効率が向上することがわかった。本発明者は以上の知見に基づき、本発明を完成するに至った。
第1および第2工程の表面処理によってウェーハ表面を多孔質化できる理由は必ずしも明らかではないが、本発明者は以下のような反応メカニズムで多孔質化されたと推定している。第2工程で、Cuを溶解させたフッ化水素酸にウェーハを浸漬させると、ウェーハ表面の何らかの核を基点として、Cuが微粒子として多数析出する。この反応は、Cu2++2e→Cuの還元反応であり、この際の電荷移動に伴い、ウェーハ表面のSiから電子が奪われ、Cu微粒子の析出箇所ではSiの溶解が発生する。ここで、フッ化水素酸の役割については、Siの溶解箇所でSiが水と反応して生成したSiOをその都度瞬間的に溶解して、多孔質構造を作るとのモデル(大見モデル)と、フッ素イオンがSiを直接酸化するとのモデル(Chemlaモデル)が考えられる。このような反応の詳細は、J. Electrochem. Soc. 144, 3275 (1997)“The Role of Metal Induced Oxidation for Copper Deposition on Silicon Surface”およびJ. Electrochem. Soc. 144, 4175 (1997)“Electrochemical and radiochemical study of copper contamination mechanism from HF solution onto silicon substrates”に詳細に記載されている。そして、本発明においては、第1工程で無極性溶媒である低級アルコールで処理することにより、ウェーハ表面の表面電位を制御し、フッ化水素酸浸漬時に金属析出が進行しやすい状態にすることができ、第2工程におけるSi溶解反応を均一に促進させることができるものと考えられる。さらに、低級アルコールで処理することにより、ウェーハ表面の有機物を除去して、上記反応が進行するようにする作用もあると考えられる。
本発明では、直流電源やイオン注入装置といった大掛かりな装置を必要とせず、かつ、フッ化水素酸を有機溶媒と混合させたり、フッ化水素酸ともに酸化剤を用いる必要がない。よって、従来技術に比べて安全かつ安価に、シリコンウェーハをはじめとする半導体ウェーハの表面を多孔質化して、表面における光の反射ロスを低減した太陽電池用ウェーハを得ることが可能となった。また、第3工程により、多孔質化の程度を多少抑えたので、表面再結合を抑制し、変換効率の高い太陽電池を作製することが可能となった。
本実施形態では、第2工程の後かつ第3工程の前に、このウェーハの少なくとも前記片面に金属イオンを含まないフッ化水素酸を接触させる工程(ステップS3)をさらに行うことが好ましい。具体的には、第2工程後のウェーハを、金属イオンを含まないフッ化水素酸に所定時間浸漬させることができる。この工程により、第2工程で形成された表面凹凸の深さをある程度制御することができる。
また、第2工程および/またはステップS3は、光照射環境下にて行うことが好ましい。第2工程を光照射環境化にて行うことにより、上記の反応メカニズムによる表面の多孔質化がより促進されるためである。また、ステップS3を光照射環境下にて行い、この照射条件を制御することによりウェーハ表面を所望の表面状態とすることができるためである。光照射環境は、具体的には蛍光灯光、ハロゲン光などを反応表面に照射することにより作り出す。
さらに、少なくとも第2工程の後、本実施形態では第3工程の前に、このウェーハの少なくとも前記片面に、前記金属イオンから析出した金属(微粒子)をこの片面から除去する溶液を接触させる工程(ステップS4)をさらに行うことが好ましい。例えば、第2工程でCuを溶解させたフッ化水素酸を用いる場合、前記片面に残留したCu微粒子を除去するべく、前記片面に硝酸溶液を接触させる。この工程により、ウェーハ表面に残存して付着している金属粒子を除去することができる。
そして、以上の工程の後に、このウェーハの少なくとも前記片面にアルカリ溶液を接触させる工程(ステップS5)をさらに行う。具体的には、第2工程、ステップS3またはステップS4後のウェーハを、アルカリ溶液に所定時間浸漬させることができる。この工程により、多孔質層を多少削ることができる。
本実施形態では、このような工程を経て、ウェーハ表面が多孔質化された太陽電池用ウェーハとなる。以下、各工程の好ましい態様について説明する。なお、第1工程の低級アルコール処理、および第2工程の金属イオン含有フッ化水素酸処理、好ましくはステップ3の金属イオン非含有フッ酸処理を合わせて、本明細書においては「多孔質化処理工程」と称する。
(第1工程:低級アルコール処理)
本明細書において「低級アルコール」とは、炭素数10以下の直鎖または分岐の任意のアルコールを意味する。炭素数が10を超えるとアルコールの粘性が高くなり、ウェーハ表面をアルコールでコーティングすることになってしまう。炭素数が10以下であれば、粘性が低い無極性溶媒としてウェーハ表面を無極性状態にすることができる。典型的には、メタノール、エタノール、2−プロパノール、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、グリセリン、ベンジルアルコール、フェニルアルコールなどが挙げられるが、毒性面、価格面を考慮すると、エタノールおよび2−プロパノール(イソプロピルアルコール;IPA)を用いることが好ましい。処理時間、すなわちウェーハに低級アルコール液を接触させる時間(以下、各工程において処理液との接触時間を「処理時間」という)は、特に制限されないが、0.5分以上10分以下とすることが好ましく、3分以下とすることがより好ましい。0.5分以上であれば本発明の反射率の低減効果を十分に得ることができ、10分を超えて処理しても反射率の低減効果は飽和するためである。低級アルコール液の温度は、アルコールが蒸発または凝固しない温度であれば問題なく、常温とすればよい。
(第2工程:金属イオン含有フッ化水素酸処理)
本実施形態において、金属イオンはSiより貴な金属、例えばCu,Ag,Pt,Auなどのイオンであることが好ましい。これにより、第2工程において、ウェーハ表面への金属の微粒子の析出およびSiの溶出が効率的に起こるからである。価格面を考慮すれば、Cuのイオンとすることが好ましい。本発明の反射率の低減効果を十分に得る観点から好ましい条件を以下に挙げる。金属を溶解させたフッ化水素酸において、金属濃度は、10ppm以上1000ppm以下とすることが好ましく、100ppm以上400ppm以下とすることがより好ましい。また、フッ化水素酸の濃度は、好ましくは2質量%以上50質量%以下、より好ましくは10質量%以上40質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上30%質量以下である。さらに、処理時間は、好ましくは0.5分以上30分以下、より好ましくは1分以上10分以下、さらに好ましくは3分以下である。金属含有フッ化水素酸の温度は、処理時間や蒸発損失などを考慮して適宜選択すればよく、常温〜100℃とすることが好ましい。
(金属イオン非含有フッ化水素酸処理)
本実施形態において、ウェーハ表面に形成された多孔質層深さを適切な深さまで拡張するために、フッ化水素酸の濃度は、好ましくは2質量%以上50質量%以下、より好ましくは20質量%以上30質量%以下である。また、本明細書において「金属イオンを含まないフッ化水素酸」とは、厳密に金属イオンの含有量がゼロの場合のみならず、不純物として10ppm未満の金属が含まれている場合をも含むものとする。例えばCu,Ag,Pt,AuなどのSiより貴な金属のイオンが10ppm未満であれば、これらの金属微粒子が新たに析出して、ウェーハ表面に新たな凹凸が形成されるよりも、第2工程ですでに形成された凹凸をより深くする反応が支配的になる。処理時間は、プロセスタクトタイムに合わせて設定すればよく、好ましくは0.5分以上60分以下である。金属非含有フッ化水素酸の温度は、処理時間や蒸発損失などを考慮して適宜選択すればよく、常温〜100℃とすることが好ましい。
(金属除去溶液処理)
本実施形態において、第2工程において金属としてCuを用いる場合、Cu微粒子の除去を硝酸(HNO)溶液で行うことができる。このとき、硝酸濃度は、好ましくは0.001〜70%の範囲であり、より好ましくは0.01%〜0.1%の範囲内である。処理時間は、プロセスタクトタイムに合わせて設定すればよく、好ましくは0.5分以上10分以下であり、より好ましくは1分以上3分未満である。硝酸溶液の温度は、処理時間や蒸発損失などを考慮して適宜選択すればよく、常温〜100℃とすることが好ましい。この工程で用いる処理液は硝酸に限定されず、除去する対象の金属に合わせて、これを溶解可能な溶液を選択すればよい。例えば、Ag,Pt,Auの場合は、王水(HCl/HNO)やヨウ化カリウム溶液(KI)などを用いることができる。好適な濃度および処理時間は、Cuの場合と同様である。
(第3工程:アルカリ溶液処理)
本実施形態において、第3工程に使用するアルカリの種類は特に限定されない。例えば、無機アルカリとしては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、ヒドラジン、有機アルカリとしては、水酸化テトラメチルアンモニウム、コリンなどのアルカリを1種以上含む溶液であればよい。また、このアルカリ溶液のpHは、好ましくは9.0〜14.0の範囲であり、より好ましくは10.0〜12.0の範囲内である。pH低減を下回る場合には反応が進行しにくく、pH上限を超える場合は反応速度低下が発生し、かつ試薬コストの増大を招くため好ましくない。このアルカリ溶液を接触させる時間は、好ましくは600秒以下、より好ましくは120秒以下である。例えば、Cu濃度170ppm、HF濃度25%の溶液を用いて、3分の多孔質化処理を行った場合は、1%KOH溶液を用いて30秒程度の処理を行うことで、多孔質化層の厚みを150〜200nmとすることができる。ただし、これらのpH条件および接触時間条件の他、前記片面に作製された多孔質化層の厚さを50〜400nmとすることができるpH条件および接触時間条件であればよい。すなわち、多孔質化処理工程の条件および第3工程のアルカリ処理の条件は多孔質化層の厚さを当該範囲とするように任意に設定すればよい。多孔質化層の厚さを50〜400nmとすることで、変換効率の向上効果と、表面反射率低減効果を両立させることが可能となる。
反応速度を調節するために、このアルカリ溶液中に酸化剤(過酸化水素、オゾンなど)や、界面活性剤(アニオン系界面活性剤、中性界面活性剤など)を添加してもよい。例えば、1%KOHにアミノアルコール系界面活性剤を添加することにより、エッチング速度を1/10以下にすることができる。
各工程において、ウェーハ表面に処理液を接触させる方法としては、例えば浸漬法、スプレー法が挙げられる。また、受光面となるウェーハの片面に処理液を滴下させるキャスト法を用いてもよい。
また、多孔質化処理工程は、第1〜ステップS3の少なくとも1工程の後に、水による洗浄工程を行ってもよい。
以上、本発明の太陽電池用ウェーハの製造方法について、作用効果も含めて説明してきたが、この製造方法の付加的な効果として、以下の2点が挙げられる。第1は、本発明が単結晶シリコンウェーハのみならず、多結晶シリコンウェーハにも適用可能であることである。既述のとおり、テクスチャ構造を形成する方法は、単結晶シリコンに適した方法であり、表面に様々な面方位が出現している多結晶シリコンについては、ウェーハ全面に均一なテクスチャ構造を形成することが困難であった。しかし、本発明の多孔質化処理によって、これまでのテクスチャ構造よりも微細な凹凸をウェーハ表面に形成できるため、多結晶シリコンウェーハの表面の反射率も安全かつ安価な方法で十分に抑制することができる。第2は、本発明では処理液として過酸化水素などの酸化剤を用いる必要がないことである。これにより、排水処理の複雑さを回避することができる。
また、これまで単結晶または多結晶シリコンウェーハから結晶系シリコン太陽電池に用いるための太陽電池用ウェーハを製造することについて述べてきたが、本発明は結晶系シリコンに限られることはなく、アモルファスシリコン太陽電池や薄膜系太陽電池に用いるための太陽電池用ウェーハにも適用可能であることは勿論である。
(太陽電池セルの製造方法)
本発明に従う太陽電池セルの製造方法は、これまで説明した本発明に従う太陽電池用ウェーハの製造方法における工程に加えて、この太陽電池用ウェーハで太陽電池セルを作製する工程をさらに有する。セル作製工程は、ドーパント拡散熱処理でpn接合を形成する工程と、電極を形成する工程とを少なくとも含む。ドーパント拡散熱処理は、p基板に対してはリンを熱拡散させる。
なお、pn接合形成工程は本発明における多孔質化処理工程の前に行ってもよい。すなわち、スライス加工によるダメージ除去のためのエッチング処理後、ドーパント熱拡散処理でpn接合を形成したウェーハの状態で、本発明における多孔質化処理を行う。こうして得た太陽電池用ウェーハに対して電極を形成して、太陽電池セルとすることもできる。
本発明に従う太陽電池セルの製造方法によれば、セルの受光面における入射光の反射ロスの少ない、高い変換効率の太陽電池セルを得ることができる。
(太陽電池モジュールの製造方法)
本発明に従う太陽電池モジュールの製造方法は、上記太陽電池セルの製造方法における工程に加えて、この太陽電池セルから太陽電池モジュールを作製する工程をさらに有する。モジュール作製工程は、複数の太陽電池セルを配列し、電極を配線する工程と、強化ガラス基板上に配線された太陽電池セルを配置し、樹脂と保護フィルムで封止する工程と、アルミフレームを組み立てて、端子ケーブルを配線と電気的に接続する工程とを含む。
本発明に従う太陽電池モジュールの製造方法によれば、太陽電池セルの受光面における入射光の反射ロスを抑制し、高い変換効率の太陽電池モジュールを得ることができる。
以上、本発明を説明したが、これらは代表的な実施形態の例を示したものであって、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
本発明の効果をさらに明確にするため、以下に説明する実施例・比較例の実験を行った比較評価について説明する。
<試料の作製>
(実施例1)
まず、20mm角のp型(100)単結晶シリコンウェーハ(厚さ:4.25mm)を用意し、50質量%フッ化水素酸/70質量%硝酸/水=1:4:5(体積比)にて調合した酸性溶液を用いて、室温で3分間エッチング処理を施し、その後ウェーハを乾燥させた。以降の工程は全て室温で行った。このウェーハを99質量%のエタノール溶液に1分間浸漬させた。その後、このウェーハを、Cuを1000ppm含む硝酸銅溶液5mLと、50質量%フッ化水素酸15mLと、水10mLとの混合液に3分間浸漬させた。なお、この工程は、通常の室内環境すなわち光照射環境下にておこなった。その後、このウェーハを0.1質量%硝酸に5分間浸漬させ、窒素雰囲気にて乾燥させた。そして、アルカリ溶液処理として1質量%KOHに10秒浸漬し、その後窒素雰囲気にて乾燥させ、太陽電池用ウェーハを製造した。
(実施例2)
実施例2として、アルカリ溶液処理において1質量%KOHに30秒浸漬すること以外は実施例1と同様にして太陽電池用ウェーハを製造した。
(実施例3)
実施例3として、アルカリ溶液処理において1質量%KOHに60秒浸漬すること以外は実施例1と同様にして太陽電池用ウェーハを製造した。
(実施例4)
実施例4として、アルカリ溶液処理において1質量%水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)に30秒浸漬すること以外は実施例1と同様にして太陽電池用ウェーハを製造した。
(実施例5)
実施例5として、アルカリ溶液処理において1質量%ヒドラジンに30秒浸漬すること以外は実施例1と同様にして太陽電池用ウェーハを製造した。
(実施例6)
実施例6として、アルカリ溶液処理において1質量%KOHに100秒浸漬すること以外は実施例1と同様にして太陽電池用ウェーハを製造した。
(実施例7)
実施例7として、アルカリ溶液処理において1質量%KOHに5秒浸漬すること以外は実施例1と同様にして太陽電池用ウェーハを製造した。
(比較例1)
実施例1の製造工程のうち、0.1質量%硝酸に5分間浸漬させ、窒素雰囲気にて乾燥させる工程まで行い、比較例1とした。すなわち、比較例1は本発明におけるアルカリ溶液処理のみを行わない(処理時間0分)ものである。
(比較例2)
実施例1の製造工程のうち、50質量%フッ化水素酸/70質量%硝酸/水=1:4:5(体積比)にて調合した酸性溶液を用いて、室温で3分間エッチング処理を施す工程までを行い、ウェーハを乾燥させ、比較例2とした。すなわち、比較例2は本発明における多孔質化処理およびアルカリ溶液処理を行わないものである。
(比較例3)
実施例1の製造工程のうち、50質量%フッ化水素酸/70質量%硝酸/水=1:4:5(体積比)にて調合した酸性溶液を用いて、室温で3分間エッチング処理を施す工程までを行い、その後、ウェーハを乾燥させ、アルカリ溶液処理として1質量%KOHに30秒浸漬し、および窒素雰囲気にて乾燥させる工程を行い、比較例3とした。すなわち、比較例3は本発明における多孔質化処理のみを行わないものである。
<評価1:反射率測定>
反射率測定器(島津製作所社製:SolidSpec3700)により、ウェーハの被処理面における反射スペクトルを300〜1200nmの範囲で測定した。太陽光には波長500〜700nmの光が多く含まれるため、この波長領域で反射率が低いことが望ましい。そこで、波長600nmと700nmの相対反射率を表1に示す。実施例1〜7と比較例2,3とを比較すると、本発明の多孔質化処理を行うことで、ウェーハの被処理面における反射率が低下することがわかった。また、実施例1〜7より、本発明のアルカリ処理を施すと反射率は多少上昇することがわかった。
Figure 2012243851
<評価2:変換効率測定>
実施例および比較例のウェーハに対して、P―OCD(東京応化工業株式会社製 型番P−110211)をスピンコート法にて塗布し、拡散熱処理を施してpn接合を形成し、フッ化水素にて表面のリンガラスを除去した。その後、ウェーハ表面のリン拡散面に反射防止膜としてITO膜をスパッタリング法にて形成した。また、表面にAg電極用のAgペーストを、裏面にAl電極用のAlペーストを塗布し、その後熱処理を施すことでウェーハ表裏面に電極を形成し、太陽電池セルを作製した。そして、変換効率測定器(和泉テック社製:YQ−250BX)によりエネルギー変換効率を測定した結果を表2に示す。各実施例は各比較例よりも高い変換効率となった。特に、実施例1〜7と比較例1とを比較すると、比較例1では実施例1〜7よりも反射率が低いにもかかわらず、変換効率では劣っていた。このように、本発明の多孔質化処理およびアルカリ処理を行うことにより、表面の反射ロスを低減する作用以外の作用によって、より高い変換効率を得ることができることがわかった。更に、多孔質化層の厚さが50〜400nmとなる実施例1〜5では、実施例6および7に比べて更に高い変換効率となることがわかった。なお、本実施例では厚さ425μmとかなり厚いテストピースを用いて実験を行ったため、一般的な試験条件で行う場合よりも数値としては低い値が出ているが、当業界の太陽電池製品用のウェーハに適用した場合の変換効率は表2の結果よりも数パーセント増加すると予測される。
Figure 2012243851
本発明によれば、安全かつ安価に、シリコンウェーハをはじめとする半導体ウェーハの表面を多孔質化して、表面における光の反射ロスが低く変換効率の高い太陽電池を作製できる太陽電池用ウェーハを得ることが可能となった。

Claims (8)

  1. 半導体ウェーハの少なくとも片面に低級アルコールを接触させる第1工程と、
    該第1工程の後に、前記半導体ウェーハの少なくとも前記片面に金属イオンを含むフッ化水素酸を接触させる第2工程と、
    該第2工程の後に、前記半導体ウェーハの少なくとも前記片面にアルカリ溶液を接触させる第3工程と、
    により前記半導体ウェーハの少なくとも前記片面を多孔質化して太陽電池用ウェーハとすることを特徴とする太陽電池用ウェーハの製造方法。
  2. 前記半導体ウェーハがシリコンウェーハであり、
    前記金属イオンがSiより貴な金属のイオンである請求項1に記載の太陽電池用ウェーハの製造方法。
  3. 前記第2工程の後かつ前記第3工程の前に、前記半導体ウェーハの少なくとも前記片面に、前記金属イオンから析出した金属を前記片面から除去する溶液を接触させる工程を有する請求項1または2に記載の太陽電池用ウェーハの製造方法。
  4. 前記片面に作製された多孔質化された層の厚さが50〜400nmとなる、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の太陽電池用ウェーハの製造方法。
  5. 前記第3工程の前記アルカリ溶液のpHが9.0〜14.0である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の太陽電池用ウェーハの製造方法。
  6. 前記第3工程の前記アルカリ溶液を接触させる時間が600秒以下である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の太陽電池用ウェーハの製造方法。
  7. 請求項1乃至6のいずれか1項に記載の太陽電池用ウェーハの製造方法における工程に加えて、該太陽電池用ウェーハで太陽電池セルを作製する工程をさらに有する太陽電池セルの製造方法。
  8. 請求項7に記載の太陽電池セルの製造方法における工程に加えて、該太陽電池セルから太陽電池モジュールを作製する工程をさらに有する太陽電池モジュールの製造方法。
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