JP2012241016A - コポリマー、有機半導体材料、並びにこれを用いた有機電子デバイス、光電変換素子及び太陽電池モジュール - Google Patents

コポリマー、有機半導体材料、並びにこれを用いた有機電子デバイス、光電変換素子及び太陽電池モジュール Download PDF

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Abstract

【課題】有機光電変換素子の材料として利用可能な、新規なポリマーとこれを含む有機半導体材料、並びにこれを用いた有機電子デバイス、光電変換素子及び太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】ヘテロ原子を有しても良い炭化水素置換基を有するチエノチオフェンモノマー(Ar)、芳香族モノマー(Ar)からなる繰り返し単位「−Ar−Ar−」と、N−アルキルイミドチオフェンモノマー(Ar)、芳香族モノマー(Ar)からなる繰り返し単位「−Ar−Ar−」を含む事を特徴とするコポリマー、これを含む有機半導体材料、並びにこれを用いた有機電子デバイス、光電変換素子及び太陽電池モジュール。
【選択図】なし

Description

本発明は、特定の繰り返し単位を有するコポリマーとこれを含む有機半導体材料、並びにこれを用いた有機電子デバイス、光電変換素子及び太陽電池モジュールに関する。
有機ELや有機薄膜トランジスタ、有機発光センサー等デバイスの半導体材料として、π共役高分子が応用されており、なかでも高分子有機太陽電池への応用が注目されている。特に有機太陽電池においては、太陽光の吸収効率を向上させることが望まれており、長波長(600nm以上)の光を吸収できるポリマーの開発が重要である。
吸収波長の長波長化を目的として、ドナー性モノマーとアクセプター性モノマーの共重合体(以後、コポリマーということがある)を光電変換素子に用いた例がいくつか報告されている。例えば非特許文献1には、イミドチオフェン骨格とベンゾジチオフェン骨格を主鎖に導入したコポリマーを、光電変換素子に用いる例が開示されている。また特許文献1には、チエノチオフェン骨格とベンゾジチオフェン骨格を主鎖に導入したコポリマーを、光電変換素子に用いる例が開示されている。
国際公開第2010/008672号
J.Am.Chem.Soc. 2010, 132, 7595−7597
有機太陽電池においてさらに高い変換効率を達成するため、また有機太陽電池を塗布成膜により作製するための塗布成膜性、例えば溶解度、を向上するために、さらなるポリマー材料の開発が待たれている。
本発明は、有機光電変換素子の材料として利用可能な、新規なポリマーを提供する。
本発明者らは、チエノチオフェン骨格と芳香族基とで主鎖が構成される繰り返し単位と、イミドチオフェン骨格と芳香族基とで主鎖が構成される繰り返し単位と、を含むコポリマーが、光電変換素子材料として有用であることを見出し、本発明を達成するに至った。即ち、本発明は、以下を要旨とする。
[1]下記一般式(1)で示される繰り返し単位と、下記一般式(2)で示される繰り返し単位とを含むことを特徴とするコポリマー。
(式(1)中、Rはヘテロ原子を有してもよい炭化水素基を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又はヘテロ原子を有してもよい炭化水素基を表し、Arは芳香族基を表す。R、R及びArはそれぞれ独立して、さらに置換基を有していてもよい。)
(式(2)中、Rはヘテロ原子を有してもよい炭化水素基を表し、Arは芳香族基を表す。R及びArはそれぞれ独立して、さらに置換基を有していてもよい。)
[2][1]に記載のコポリマーを含むことを特徴とする、有機半導体材料。
[3][2]に記載の有機半導体材料を含むことを特徴とする、有機電子デバイス。
[4]一対の電極間に有機活性層が配置されてなる光電変換素子であって、該有機活性層が[2]に記載の有機半導体材料を含むことを特徴とする光電変換素子。
[5]前記有機活性層が、フラーレン化合物、ボラン誘導体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、N−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、N−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体およびn型ポリマーよりなる群から選ばれる少なくとも1種のn型半導体化合物を含むことを特徴とする[4]に記載の光電変換素子。
[6]さらに、第16族元素とリン原子との間の二重結合を有するホスフィン化合物を含有するバッファ層を有することを特徴とする、[4]又は[5]に記載の光電変換素子。
[7]太陽電池であることを特徴とする、[4]から[6]の何れかに記載の光電変換素子。
[8][7]に記載の光電変換素子を含有することを特徴とする、太陽電池モジュール。
有機光電変換素子の材料として利用可能な、新規なポリマーを提供できる。
本発明の一実施形態としての光電変換素子の構成を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施形態としての太陽電池の構成を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施形態としての太陽電池モジュールの構成を模式的に示す断面図である。 コポリマーP1の吸収スペクトルを示す図である。
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定はされない。
<1.コポリマー>
本実施形態に係るコポリマーは、下記一般式(1)で示される繰り返し単位と、下記一般式(2)で示される繰り返し単位とを含む。
(式(1)中、Rはヘテロ原子を有してもよい炭化水素基を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又はヘテロ原子を有してもよい炭化水素基を表し、Arは芳香族基を表す。R、R及びArはそれぞれ独立して、さらに置換基を有していてもよい。)
(式(2)中、Rはヘテロ原子を有してもよい炭化水素基を表し、Arは芳香族基を表す。R及びArはそれぞれ独立して、さらに置換基を有していてもよい。)
式(1)(2)におけるAr、Ar、R、R、及びRについて、具体例を以下に説明する。
本明細書において「置換基を有していてもよい」とは、置換基を有さないか又は1以上の置換基を有することをいう。有してもよい置換基としては、特に限定はないが、好ましくはハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、水酸基、シアノ基、アミノ基、エステル基、カルボキシル基、アルキルカルボニル基、アセチル基、スルホニル基、シリル基、ボリル基、シアノ基、ニトロ基、ニトリル基、アルキル基、フッ化アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、芳香族基、等が挙げられる。これらは、隣接する置換基同士で連結して環を形成していてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。これらの中で、フッ素原子が好ましい。
は、ヘテロ原子を有してもよい炭化水素基である。Rはさらに置換基を有していてもよい。ヘテロ原子を有してもよい炭化水素基として具体的には、シアノ基、アミド基、−COR(Rは1価の置換基)、脂肪族基、及び芳香族基等が挙げられる。Rの例としては、アルキル基、芳香族基、アルコキシ基、アリールオキシ基、及びアミノ基等が挙げられ、これらの基は置換基を有していてもよく、例えば置換基としてフッ素原子を有していてもよい。また本明細書において脂肪族基には、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基等の脂肪族炭化水素基、及びヘテロ原子を有する脂肪族基等が含まれる。さらに本明細書において芳香族基には、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が含まれる。
の具体的な例としては、シアノ基、アミド基、水素若しくは置換基を有するカルボニル基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基、が挙げられる。Rは、置換基を有していてもよいアルキルカルボニル基、又は置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基であることが好ましい。置換基を有するカルボニル基の炭素数に特に制限はなく、例えば1以上でもよいが、より溶解度を高くする等、より適した物性を得る観点からは、4以上であることが好ましく、6以上であることがさらに好ましい。また、通常20以下であり、15以下であることが好ましく、12以下であることがさらに好ましい。また、アルキルカルボニル基及びアルコキシカルボニル基の炭素鎖は、直鎖でもよいし、分岐鎖であってもよい。
アルキルカルボニル基としては、例えば、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、i−プロピルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、n−へプチルカルボニル基、1−エチルペンチルカルボニル基、等が挙げられる。アルコキシカルボニル基としては、例えば、メチルエステル基、エチルエステル基、i−プロピルエステル基、n−プロピルエステル基、n−ブチルエステル基、t−ブチルエステル基、n−ヘキシルエステル基、シクロヘキシルエステル基、n−オクチルエステル基、2−エチルヘキシルエステル基、等が挙げられる。
は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又はヘテロ原子を有してもよい炭化水素基を表し、Rはさらに置換基を有していてもよい。ヘテロ原子を有してもよい炭化水素基として具体的には、シアノ基、アミド基、−COR(Rは1価の置換基)、脂肪族基、及び芳香族基が挙げられる。−CORは、置換基を有するカルボニル基である。置換基を有するカルボニル基の例としては、Rについて挙げたものと同様の、炭素数1〜20のものが挙げられる。また置換基を有していてもよい脂肪族基には、脂肪族炭化水素基及び脂肪族複素環基等が含まれる。脂肪族炭化水素基としては、トリフルオロメチル基のようなパーフルオロアルキル基を含むフッ化アルキル基、ジシアノビニル基若しくはトリシアノビニル基のようなシアノアルケニル基、及びフッ化アルケニル基等を含む、炭素数1〜20のものが挙げられる。Rの好ましい例としては、ハロゲン原子及びシアノ基が挙げられ、フッ素原子であることが特に好ましい。
は電子吸引基であることが好ましい。Rが電子吸引基であると、本実施形態に係るコポリマーのアクセプター性が強くなることにより、本実施形態に係るコポリマーのHOMOエネルギー準位が低くなることが期待される。同様の理由により、Rが電子吸引基であることも好ましい。すなわち、RとRとの少なくとも一方が電子吸引基であることが好ましい。
はヘテロ原子を有してもよい炭化水素基を表し、Rは置換基を有していてもよい。Rの具体的な例としては、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、及び置換基を有していてもよい芳香族基が挙げられる。Rをこれらの基とすることにより、ポリマーの有機溶媒への溶解性が優れたものとなりやすく、塗布成膜プロセスにおいて有利となり得るために好ましい。
アルキル基としては、炭素原子数が、通常1以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、一方、通常20以下、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは10以下である。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、3−メチルブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘプチル基、オクチル基、シクロオクチル基、ノニル基、シクロノニル基、デシル基、シクロデシル基、ラウリル基又はシクロラウリル基等が挙げられる。そのなかでも、n−プロピル基、iso−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、3−メチルブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基又はシクロラウリル基が好ましく、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロオクチル基、ノニル基、シクロノニル基、デシル基又はシクロデシル基がより好ましい。
アルケニル基としては、炭素原子数が、通常2以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、一方、通常20以下、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは10以下である。このようなアルケニル基としては、例えば、エテン基、プロペン基、ブテン基、ペンテン基、ヘキセン基、ヘプテン基、オクテン基、ノネン基、デセン基、ウンデセン基、ドデセン基、トリデセン基、テトラデセン基、ペンタデセン基、ヘキサデセン基、ヘプタデセン基、オクタデセン基、ノナデセン基、イコセン基又はゲラニル基等が挙げられる。好ましくは、プロペン基、ブテン基、ペンテン基、ヘキセン基、ヘプテン基、オクテン基、ノネン基、デセン基、ウンデセン基又はドデセン基であり、より好ましくは、ブテン基、ペンテン基、ヘキセン基、ヘプテン基、オクテン基、ノネン基又はデセン基である。
芳香族基としては、炭素原子数が、通常2以上、一方、通常60以下、好ましくは20以下、より好ましくは14以下である。このような芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフタレン基、インダン基、インデン基、フルオレン基、アントラセン基又はアズレン基等の芳香族炭化水素基;チエニル基、フラニル基、ピリジル基、ピリミジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、トリアゾリル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基又はベンゾトリアゾリル基等の芳香族複素環基;が挙げられる。なかでも、フェニル基、ナフタレン基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジル基、チアゾリル基又はオキサゾリル基が好ましい。
を上述のような基とすることにより、コポリマーの有機溶媒への溶解性が優れたものとなりやすく、塗布成膜プロセスにおいて有利となり得るために好ましい。さらに好ましくは、Rは置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族基である。アルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基でありうる。なかでも、直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましい。直鎖状のアルキルはポリマーの結晶性が向上しうるために移動度が大きくなりうる点で好ましく、分岐状のアルキル基はポリマーの溶解性が向上しうる点で好ましい。また、Rが置換基を有していてもよい芳香族基であることは、コポリマーがより長波長の光を吸収しうる点で好ましい。さらにRが置換基を有していてもよい芳香族基であることは、ポリマーの結晶性が向上しうるために移動度が大きくなりうる点で好ましい。
Ar及びArは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を示す。2価の芳香族基とは、1又は2以上の芳香族環を有する2価の基のことを指す。Ar及びArは同じでも、異なっていてもよい。合成の容易性の観点からは、ArとArとが同じ基であることは好ましい。Ar及びArに含まれる芳香族環としては特段の制限はないが、例えば単環芳香族環及び縮合多環芳香族環、並びに単環芳香族環と縮合多環芳香族環とから選択される2以上の環が結合を介して連結した環が、芳香族環の例として挙げられる。Ar又はArの外部の原子には、Ar又はArに含まれる芳香族環の骨格を構成する原子が結合していてもよい。この場合、外部の原子に結合する、芳香族環の骨格を構成する原子は互いに異なる原子でありうる。また、Ar又はArの外部の原子には、Ar又はArに含まれる芳香族環の骨格を構成する原子が有する置換基が結合していてもよい。
芳香族基が有していてもよい特に好適な置換基の例としては、炭素数1〜12のアルコキシ基又は炭素数1〜12のアルキル基が挙げられる。
以下に、Ar及びArが有しうる芳香族環の例について説明する。単環芳香族環としては、炭素数2〜10の単環芳香族炭化水素環及び単環芳香族複素環が挙げられる。例えば、ベンゼン、チオフェン、フラン、ピロール、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール又はシロール等が挙げられ、なかでも、チオフェン、ピロール、チアゾール又はシロールが好ましい。
縮合多環芳香族環の例としては、縮合多環芳香族炭化水素環及び縮合多環芳香族複素環が挙げられる。Ar及びArが縮合多環芳香族環であることは、より長波長の光を吸収しうる点で好ましい。また、Ar及びArが縮合多環芳香族複素環であることは、本実施形態に係るコポリマーの溶媒への溶解性が高くなりうる点で好ましい。
縮合多環芳香族炭化水素環としては、炭素数6〜30のものが好ましく、例えばナフタレン、インダン、インデン、フルオレン、アントラセン、又はアズレン等が挙げられる。なかでも、フルオレン又はアントラセンが好ましい。なお、縮合多環芳香族炭化水素環には、芳香族炭化水素環にシクロペンタンやシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素環が縮合している環も含まれるものとする。
縮合多環芳香族複素環としては、炭素数2〜30のものが好ましく、例えば硫黄原子を有する芳香族複素環を有する縮合多環芳香族複素環、酸素原子を有する芳香族複素環を有する縮合多環芳香族複素環、窒素原子を有する芳香族複素環を有する縮合多環芳香族複素環、シロール環と芳香族炭化水素環とを有する縮合多環芳香族複素環、及びピロール環と芳香族炭化水素環とを有する縮合多環芳香族複素環、等が挙げられる。
縮合多環芳香族複素環の有する環の数は、通常2以上であり、一方、通常8以下、好ましくは6以下、より好ましくは4以下、特に好ましくは3以下である。縮合多環芳香族複素環に含まれるヘテロ原子としては、硫黄原子、酸素原子、窒素原子又はケイ素原子が好ましく、1つの縮合多環芳香族複素環は2種類以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。
ヘテロ原子として硫黄原子を有する例としては、チエノチオフェン、ジベンゾチオフェン、ベンゾチアジアゾール、フェノチアジン、ベンゾジチオフェン、ジチエノシクロペンタジエン、ジチエノピロール、又はジチエノシロール等が挙げられる。なかでも、ベンゾチアジアゾール、ベンゾジチオフェン、ジチエノシクロペンタジエン、ジチエノピロール、及びジチエノシロールが好ましい。特に好ましくは、ジチエノシクロペンタジエン、ジチエノピロール又はジチエノシロールである。チオフェン環を有する縮合多環芳香族複素環化合物は、光の吸収域の長波長化の点で好ましい。
ヘテロ原子として酸素原子を有する例としては、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、ベンゾジフラン、フェノキサジン、又はジベンゾオキサシロール等が挙げられる。なかでも、ジベンゾフラン及びベンゾジフランが好ましい。
ヘテロ原子として窒素原子を有する例としては、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン、又はキノキサリン等が挙げられる。なかでも、ピリジン、ピリミジン、及びキノキサリンが好ましい。
シロール環と芳香族炭化水素環とを有する例としては、ベンゾシロール又はジベンゾシロール等が挙げられる。なかでも、ジベンゾシロールが好ましい。
ピロール環と芳香族炭化水素環とを有する例としては、インドール又はカルバゾール等が挙げられる。なかでも、カルバゾールが好ましい。
上記のなかでも好ましくは、ベンゾジチオフェン、ジチエノシロール、ジチエノシクロペンタジエン、ジチエノピロール、フルオレン、カルバゾール、ジベンゾシロール、チオフェン、ビチオフェン、トリチオフェン、チエノチオフェン、チオフェンフェニレンチオフェンである。上述した環のそれぞれは、さらに置換基を有していてもよい。
Ar及びArが有しうる芳香族環の具体的な例を以下に示す。Ar及びArは、例えば、以下に列挙された化合物から2個の水素原子を除いて得られる基でありうる。Ar及びArは特に、以下に列挙された化合物について、骨格を構成する互いに異なる2つの原子のそれぞれから1つずつの水素原子を除いて得られる基でありうる。
Arと、チエノチオフェンユニット(Ar)との間では、電子の移動が生じることが好ましい。例えば、ArとArとは共役していることが好ましい。同様に、Arと、イミドチオフェンユニット(Ar)との間でも、電子の移動が生じることが好ましい。例えば、ArとArとは共役していることが好ましい。
Ar及びArの特に好適な構造としては、以下の一般式(3)に示される構造が挙げられる。すなわち、ArとArとの少なくとも一方が式(3)の構造を有することが好ましい。
式(3)において、XとXとはそれぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子、水素原子若しくは置換基と結合した窒素原子、水素原子若しくは置換基と結合したリン原子、置換基を有していてもよいメチレン基、又は置換基を有していてもよい芳香族基である。X及びXはそれぞれ独立して、酸素原子又は置換基を有していてもよいメチレン基であることが好ましい。
とRはそれぞれ独立して水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族基(芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基を含む)、あるいは置換基を有していてもよいビニル基である。R及びRはアルキル基であることが好ましく、RとRとは同じアルキル基であってもよいし、異なるアルキル基であってもよい。
アルキル基としては、炭素数1〜20であることが好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、等が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜20であることが好ましく、具体的にはフェニル基等の単環式炭化水素基、フェナントリル基、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基、ピレニル基、ペリレニル基等の縮合多環式炭化水素基、ビフェニル基、ターフェニル基等の多環式炭化水素基等が挙げられる。芳香族複素環基としては炭素数2〜20であることが好ましく、具体的にはピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、イミダゾイル基、ピラゾイル基、チエニル基、フリル基、オキサゾール基、チアゾール基、オキサジアゾール基、ピロール基、トリアゾール基、チアジアゾール基等の単環式複素環基、ベンゾチエニル基、ベンゾフリル基、フラノフリル基、ジベンゾチエニル基、チエノチエニル基、ジベンゾフリル基、フェナントリル基、カルバゾイル基、キノキサリル基、ベンゾキノキサリル基、カルバゾイル基、フェニルカルバゾイル基等の縮合多環式芳香族複素環基、等が挙げられる。
及びXはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアルキルチオ基であることが好ましい。X及びXがこれらの基であることにより、本実施形態に係るポリマーのエネルギーバンドギャップ(Eg)が小さくなりうる点で好ましい。この場合、アルコキシ基、アルキル基、及びアルキルチオ基の炭素数に特に制限はなく、例えば1以上でもよいが、溶解度を高くする等、より適した物性を得る観点からは、4以上であることが好ましく、6以上であることがさらに好ましい。また、通常20以下であり、15以下であることが好ましく、12以下であることがさらに好ましい。また、この場合、アルコキシ基、アルキル基、及びアルキルチオ基の炭素鎖は、直鎖でもよいし、分岐鎖であってもよい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、等が挙げられる。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−オクトキシ基、2−エチルヘキソキシ基、等が挙げられる。アルキルチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、i−プロピルチオ基、n−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、n−オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、等が挙げられる。
アルキル基、アルコキシ基、及びアルキルチオ基が有してもよい置換基の特に好適な例としては、アルキル基、芳香族基、アリールアミノ基、フッ化アルキル基、ハロゲン原子、カルボキシル基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボニル基、オキシカルボニル基、複素環基等が挙げられる。
とXとはそれぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、あるいは水素原子若しくは置換基と結合した窒素原子である。X及びXはそれぞれ独立して、酸素原子又は硫黄原子であることが好ましい。
本実施形態に係るコポリマーは、特に好ましい形態においては、ひとつの繰り返しユニットの中に、電子供与性部位と電子受容性部位とを含む。Arが電子吸引基を置換基として有し、Arが電子供与基を置換基として有することは好ましい。例えば、RとRとの少なくとも一方は電子吸引基であることが好ましく、Arがアルコキシ基のような電子供与基を置換基として有することが好ましい。このような化合物においては、従来の有機薄膜太陽電池によく用いられているP3HTのようなホモポリマーに比べて、エネルギーバンドギャップ(Eg)が小さくなることが知られている。
同様に、Arは電子吸引性を持つカルボニル基を有することから、Arはアルコキシ基のような電子供与基を置換基として有することが好ましい。
本実施形態に係るコポリマーは上述のように、式(1)に示される繰り返し単位と、式(2)に示される繰り返し単位2とを含む。本実施形態に係るコポリマーに含まれる、式(1)に示される繰り返し単位と、式(2)に示される繰り返し単位との比率は任意である。本実施形態に係るコポリマーに含まれる、式(1)に示される繰り返し単位と、式(2)に示される繰り返し単位との比率は、特段の制限は無いが、通常0.01以上、好ましくは0.1以上である。一方、通常100以下、好ましくは10以下である。式(1)に示される繰り返し単位をより多くすることにより、コポリマーのHOMOエネルギー準位が高くなることが期待される。
太陽電池素子において、開放電圧(Voc)と短絡電流密度(Jsc)とは、p型半導体材料のHOMOエネルギー準位に従って変動する。したがって、高い開放電圧(Voc)と高い短絡電流密度(Jsc)とが同時に得られるHOMOエネルギー準位を有するp型半導体材料を用いることが、高い光電変換効率を得るためには重要である。本実施形態に係るコポリマーを光電変換素子のp型半導体材料として用いると、比較的高い光電変換効率が得られるが、これは本実施形態に係るコポリマーがこのような好適なHOMOエネルギー準位を有するためと考えられる。また、式(1)に示される繰り返し単位と、式(2)に示される繰り返し単位との比率を変化させることにより、さらに好適なHOMOエネルギー準位を有するコポリマーを得ることができる。
また、式(1)に示される繰り返し単位は、本実施形態に係るコポリマーを構成する全ての繰り返し単位の数のうちの通常1%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上を占める。さらに、式(2)に示される繰り返し単位は、本実施形態に係るコポリマーを構成する全ての繰り返し単位の数のうちの通常1%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上を占める。式(1)に示される繰り返し単位と式(2)に示される繰り返し単位とは、あわせて本実施形態に係るコポリマーを構成する全ての繰り返し単位の数のうちの通常2%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上を占める。式(1)に示される繰り返し単位及び式(2)に示される繰り返し単位の配列状態は、交互、ブロック及びランダムのいずれでもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、他の繰り返し単位を含有していてもよい。
本実施形態に係るコポリマーを構成する繰り返し単位のうち、Ar(チエノチオフェンユニット)は合成するために必要な工程数が比較的多いために、得るためのコストが高くなりがちである。一方でAr(イミドチオフェンユニット)は比較的容易に合成することができる。したがって、本実施形態に係る、Ar−Ar及びAr−Arを繰り返し単位として有するコポリマーは、Ar−Arのみを繰り返し単位として有するポリマーと比べ、安価に合成しうる。
本実施形態に係るコポリマーのポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、通常2.0×10以上、好ましくは5.0×10以上、より好ましくは1.0×10以上、さらに好ましくは2.0×10以上、よりさらに好ましくは3.0×10以上、特に好ましくは4.0×10以上である。一方、好ましくは1.0×10以下、より好ましくは5.0×10以下、さらにより好ましくは1.0×10以下、さらに好ましくは9.0×10以下、よりさらに好ましくは5.0×10以下である。光吸収波長の長波長化や高吸光度化の点でこの範囲が好ましい。
本実施形態に係るコポリマーのポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により求めることができる。具体的には、カラムとして、Shim−pack GPC−803、GPC−804(島津製作所製、内径8.0 mm、長さ30 cm)をそれぞれ1本ずつ直列に繋げて用い、ポンプとしてLC−10AT、オーブンとしてCTO−10A、検出器として示差屈折率検出器(島津製作所製:RID−10A)、及びUV−vis検出器(島津製作所製:SPD−10A)を用いることにより測定できる。測定対象のコポリマーをテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、得られた溶液5μLをカラムに注入する。移動相としてTHFを用い、1.0mL/minの流速で測定を行なう。解析にはLC−Solution(島津製作所)を用いる。
本実施形態に係るコポリマーの数平均分子量(Mn)は、通常1.0×10以上、好ましくは3.0×10上、より好ましくは5.0×10以上、さらに好ましくは1.0×10以上、よりさらに好ましくは1.5×10以上、殊更に好ましくは2.0×10以上、特に好ましくは2.5×10以上である。一方、好ましくは1.0×10以下、より好ましくは1.0×10以下、さらに好ましくは9.0×10以下である。光吸収波長を長波長化するという観点、及び高い吸光度を実現するという観点から、数平均分子量がこの範囲にあることが好ましい。本実施形態に係るコポリマーの数平均分子量は、上記重量平均分子量と同様の方法で測定することができる。
本実施形態に係るコポリマーの分子量分布(PDI、(重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)))は、通常1.0以上、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.3以上である。一方、好ましくは20.0以下、より好ましくは15.0以下、さらに好ましくは10.0以下である。コポリマーの溶解度が塗布に適した範囲になりうるという点で、分子量分布がこの範囲にあることが好ましい。本実施形態に係るコポリマーの分子量分布は、上記重量平均分子量と同様の方法で測定することができる。
また、光電変換素子においては、活性層に用いられるp型半導体材料のHOMOエネルギー準位が適当に低い(絶対値の大きいマイナス値である)ことも肝要である。光電変換素子の特性のひとつである開放電圧は、p型半導体のHOMOエネルギー準位とn型半導体のLUMOエネルギー準位との差から決定される。すなわち、p型半導体のHOMOエネルギー準位が不必要に高いと、得られる開放電圧は低くなる。ただし、p型半導体のHOMOエネルギー準位が低すぎると、通常はLUMOエネルギー準位も同時に低くなる。この場合、p型半導体からn型半導体への電子の移動が起こりにくくなるため、短絡電流が低くなる傾向がある。
HOMOエネルギー準位とLUMOエネルギー準位との算出方法は、理論的に計算値で求める方法と実際に測定する方法が挙げられる。理論的に計算値で求める方法としては、半経験的分子軌道法及び非経験的分子軌道法があげられ、実際に測定する方法としては、紫外可視吸収スペクトル測定法又はサイクリックボルタモグラム測定法等があげられる。そのなかでも好ましくは、サイクリックボルタモグラム測定法である。本明細書においては、HOMO及びLUMOのエネルギー準位はサイクリックボルタモグラム測定法を用いて測定するものとする。
また、本実施形態に係るコポリマーは、高分子量である場合にも、比較的高い溶解性を示しうる。高分子量のポリマーを、例えばバルクへテロ型の光電変換素子の活性層における半導体材料として用いる場合、p型半導体層とn型半導体層とが適度に混合しながらも相分離することにより、高い光電変換効率が得られることが期待される。例えば本実施形態に係るコポリマーは、クロロベンゼンのようなハロゲン溶媒に比較的容易に溶解しうる。このように、塗布成膜時の溶媒溶解性が高く、また溶媒そのものの選択の幅も広がるため条件に最適な溶媒を用いやすいため、形成された有機半導体層の膜質を向上させることができる。このことも、本コポリマーを用いた光電変換素子が高い光電変換特性を示す一因であると考えられる。
本実施形態に係るコポリマーの溶解度は、特に限定は無いが、好ましくは25℃におけるクロロベンゼンに対する溶解度が通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上であり、一方、通常30重量%以下、好ましくは20重量%である。溶解性が上がることで、十分な厚さで製膜することができるため好ましい。
ここで、後述する成膜に際して用い得る溶媒としては、コポリマーを均一に溶解又は分散できるものであれば特に限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン又はデカン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、クロロベンゼン又はオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール又はプロパノール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン又はシクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル又は乳酸メチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン又はトリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン又はジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。そのなかでも好ましくは、トルエン、キシレン、クロロベンゼン又はオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類やクロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン又はトリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類である。
本実施形態に係るコポリマーは、好ましくは光吸収極大波長(λmax)が通常470nm以上、好ましくは480nm以上にあり、一方、通常1200nm以下、好ましくは1000nm以下、より好ましくは900nm以下にある。また、半値幅が通常10nm以上、好ましくは20nm以上であり、一方、通常300nm以下である。本実施形態に係るコポリマーを太陽電池用途に用いる場合、コポリマーの吸収波長領域は太陽光の吸収波長領域に近いほど望ましい。
本実施形態に係るコポリマーは分子間で相互作用するものであることが好ましい。本明細書において、分子間で相互作用するということは、分子間でのπ−πスタッキングの相互作用等によってポリマー鎖間の距離が短くなることを意味する。相互作用が強いほど、高い移動度及び/又は結晶性を示す傾向がある。すなわち、分子間で相互作用するコポリマーにおいては分子間での電子移動が起こりやすいため、後述する光電変換素子において活性層103中にこのコポリマーを用いた場合に、活性層103内のp型半導体化合物とn型半導体化合物との混合物層の界面で生成した正孔(ホール)を効率よく電極(アノード)101へ輸送できると考えられる。
本実施形態に係るコポリマーの正孔移動度は、通常1.0×10(−7)cm/(Vs)以上、好ましくは1.0×10(−6)cm/(Vs)以上、より好ましくは1.0×10(−5)cm/(Vs)以上、特に好ましくは1.0×10(−4)cm/(Vs)以上である。一方、本実施形態に係るコポリマーの正孔移動度は通常1.0×10(3)cm/(Vs)以下であり、好ましくは1.0×10(2)cm/(Vs)以下であり、より好ましくは1.0×10(1)cm/(Vs)以下である。高い変換効率を得るためには、n型半導体の移動度と、コポリマーの移動度とのバランスが重要である。p型半導体として用いられる本実施形態に係るコポリマーの移動度とn型半導体の移動度とを近づける点で、本実施形態に係るコポリマーの正孔移動度がこの範囲にあることが好ましい。正孔移動度の測定方法としてはFET法が挙げられる。FET法は公知文献(特開2010−045186)に記載の方法により行うことができる。
本実施形態に係るコポリマー中の不純物は極力少ないほうが好ましい。特に、パラジウム、銅等の遷移金属触媒が残っていると、遷移金属の重原子効果による励起子トラップが生じるために電荷移動を阻害され、結果として光電変換素子に用いた際の光電変換効率を低下させるおそれがある。遷移金属触媒の濃度が、コポリマー1gあたり、通常1000ppm以下、好ましくは500pm以下、より好ましくは100ppm以下である。一方、通常0ppmより大きく、好ましくは1ppm以上、より好ましくは3ppm以上である。
コポリマーの末端残基(後述の式(4)〜(7)でのX〜X)の残存量は、特段の制限は無いが、コポリマー1gあたり、通常6000ppm以下、好ましくは4000ppm以下、より好ましくは3000ppm以下、さらに好ましくは2000ppm以下、よりさらに好ましくは1000ppm以下、特に好ましくは500ppm以下、最も好ましくは200ppm以下である。一方、通常0ppmより大きく、好ましくは1ppm以上、より好ましくは3ppm以上である。
特に、コポリマー中のSn元素の残存量としては、コポリマー1gあたり、通常5000ppm以下、好ましくは4000ppm以下、より好ましくは2500ppm以下、さらに好ましくは1000ppm以下、よりさらに好ましくは750ppm以下、特に好ましくは500ppm以下、最も好ましくは100ppm以下である。一方、通常0ppmより大きく、好ましくは1ppm以上、より好ましくは3ppm以上である。Sn原子の残存量を5000ppm以下にすることにより、熱分解しやすいアルキルスタニル基中のSn元素の残存量が少なくなり、安定性の観点から高性能を得ることができるために、好ましい。
また、ハロゲン元素の残存量は、コポリマー1gあたり、通常5000ppm以下、好ましくは4000ppm以下、より好ましくは2500ppm以下、さらに好ましくは1000ppm以下、よりさらに好ましくは750ppm以下、特に好ましくは500ppm以下、最も好ましくは100ppm以下である。一方、通常0ppmより大きく、好ましくは1ppm以上、より好ましくは3ppm以上である。ハロゲン元素の残存量を5000ppm以下にすることにより、コポリマーの光電変換特性及び耐久性等の性能が向上する傾向にあり、好ましい。
コポリマーの末端残基(後述の式(4)〜(7)でのX〜X)の残存量は、炭素、水素及び窒素以外の元素で同定することができる。測定手法として、得られた高分子量体の元素分析は、臭素イオン(Br)及びヨウ素イオン(I)についてはイオンクロマトグラフィー法又はICP質量分析法で実施することができ、Pd及びSnについてはICP質量分析法で実施することができる。
イオンクロマトグラフィー法は、公知文献(「イオンクロマトグラフィー」:共立出版株式会社)に記載されている方法により実施できる。例えば、イオンクロマトグラフ分析装置(Dionex社製 イオンクロマト分析装置 DX120型又はDX500型)により実施することができる。
ICP質量分析法は、公知文献(「プラズマイオン源質量分析」(学会出版センター))に記載されている方法により実施できる。具体的には、Pd及びSnについて、試料を湿式分解後、分解液中のPd,SnをICP質量分析装置(Agilent Technologies社製 ICP質量分析装置 7500ce型)を用いて検量線法により定量することができる。又、Br及びIについて、試料を試料燃焼装置(三菱化学アナリテック社製 試料燃焼装置 QF−02型)にて燃焼し、燃焼ガスを還元剤入りのアルカリ吸収液に吸収し、吸収液中のBr及びIをICP質量分析装置(Agilent Technologies社製 ICP質量分析装置 7500ce型)を用いて検量線法により定量することができる。
<2.コポリマーの製造方法>
本実施形態に係るコポリマーの製造方法には特に限定はなく、例えばチエノチオフェン誘導体及びイミドチオフェン誘導体を用いて公知の方法で製造することができる。好ましい方法としては、下記一般式(4)で表されるチエノチオフェン誘導体化合物と、下記一般式(5)で表されるイミドチオフェン誘導体化合物と、下記一般式(6)で表されるアリール化合物と、下記一般式(7)で表されるアリール化合物とを、必要であれば適当な触媒の存在下で、重合する方法が挙げられる。この方法を用いる場合、比較的大きな分子量のコポリマーが得られうる。
式(4)〜(7)において、R〜R、及びAr〜Arは、式(1)(2)について説明したものと同様の基を表す。ArとArとが同じ基である場合、式(6)と式(7)でXが共通である場合は、式(6)のアリール化合物と式(7)のアリール化合物とは同じ化合物となる。
及びXは各々独立して、ハロゲン原子、アルキルスタニル基、アルキルスルホ基、アリールスルホ基、アリールアルキルスルホ基、ホウ酸エステル残基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、モノハロゲン化メチル基、ホウ酸残基(−B(OH))、ホルミル基、アルケニル基又はアルキニル基を表す。式(4)〜(7)で表される化合物の合成上の観点及び反応のし易さの観点から、X及びXは各々独立に、ハロゲン原子、アルキルスタニル基、ホウ酸エステル残基、またはホウ酸残基(−B(OH))であることが好ましい。XおよびXにおいて、ハロゲン原子としては、臭素原子又はヨウ素原子が好ましい。式(4)〜(7)のそれぞれについて、Xは通常同じであるが、Xは互いに異なっていてもよい。また、式(4)〜(7)のそれぞれについて、Xも通常同じであるが、Xは互いに異なっていてもよい。
ホウ酸エステル残基としては、例えば、下記式で示される基が挙げられる。
(式中、Meはメチル基を示し、Etはエチル基を示す。)
アルキルスタニル基としては、例えば、下記式で示される基等が挙げられる。
アルケニル基としては、例えば炭素数2〜12のアルケニル基が挙げられる。
本実施形態に係るコポリマーの重合に用いる反応方法としては、Suzuki−Miyauraクロスカップリング反応方法、Stilleカップリング反応方法、Yamamotoカップリング反応方法、Grignard反応方法、ヘック反応方法、園頭反応方法、FeCl等の酸化剤を用いる反応方法、電気化学的な酸化反応を用いる方法、適当な脱離基を有する中間体化合物の分解による反応方法等が挙げられる。これらのなかでも、Suzuki−Miyauraカップリング反応方法、Stilleカップリング反応方法、Yamamotoカップリング反応方法、Grignard反応方法が、構造制御がしやすい点で好ましい。特に、Suzuki−Miyauraクロスカップリング反応方法、Stilleカップリング反応方法、Grignard反応方法が、材料の入手しやすさ、反応操作の簡便さの点からも好ましい。これらの反応は、「クロスカップリング−基礎と産業応用−(CMC出版)」、「有機合成のための遷移金属触媒反応(辻二郎著:有機合成化学協会編)」、「有機合成のための触媒反応103(檜山為次郎:東京化学同人)」等の公知文献の記載の方法に従って行うことができる。以下はStilleカップリング反応方法について述べる。
Stilleカップリング反応方法を用いる場合、上記式(4)〜(7)において例えば、Xはハロゲン原子、且つXはアルキルスタニル基であるか、Xはアルキルスタニル基、且つXはハロゲン原子であるかが好ましい。
式(4)で表されるチエノチオフェン誘導体化合物に対する、式(5)で表されるイミドチオフェン誘導体化合物の量比は、モル比換算にして、通常1モル%以上、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上であり、一方、通常99モル%以下、好ましくは95モル%以下、より好ましくは90モル%以下である。また、式(4)で表されるチエノチオフェン誘導体化合物と式(5)で表されるイミドチオフェン誘導体化合物との合計量に対する、式(6)で表されるアリール化合物と式(7)で表されるアリール化合物との合計量の比は、モル比換算にして、通常0.90以上、好ましくは0.95以上であり、一方、通常1.3以下、好ましくは1.2以下である。上記範囲内にあることにより、より高い収率で高分子量体を取得しうる点で好ましい。
本実施形態に係るコポリマーを有機光電変換素子用の材料として用いる場合、その純度が高いと素子特性に良好であるため、重合前のモノマー(式(4)〜(7)で表される化合物)を蒸留、昇華精製、カラムクロマトグラフィー又は再結晶等の方法で精製した後にカップリング反応させることが好ましい。
本実施形態に係るコポリマーを有機光電変換素子用の材料として用いる場合、モノマー(式(4)〜(7)で表される化合物)の純度は通常90%以上、好ましくは95%以上である。モノマーの純度が高いと、本実施形態に係るコポリマーを有する光電変換素子の素子特性が良好となるため好ましい。
重合においては、重合促進のために、適宜、アルカリ、触媒、補触媒、有機配位子又は相間移動触媒等を添加することができる。これらアルカリや触媒は、重合の種類に応じて選択すればよいが、重合反応に用いる溶媒に十分に溶解するものが好ましい。アルカリとしては、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム等の無機塩基;トリエチルアミン等の有機塩基;等が挙げられる。触媒としては、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh)等のホスフィン化合物を配位子として含むパラジウム錯体又は酢酸パラジウム等のパラジウム(Pd)触媒;Ni(dppp)Cl又はNi(dppe)Cl等のニッケル触媒;塩化鉄等の鉄触媒;ヨウ化銅等の銅触媒等が挙げられる。
ホスフィン化合物を配位子として含むパラジウム錯体としては、具体的には、Pd(PPh、Pd(P(o−tolyl)、Pd(PCy、Pd(dba)3、PdCl(PPh))等が挙げられる(式中、Phはフェニル基を表し、Cyはシクロヘキシル基を表し、o−toylは2−トリル基を表し、dbaはジベンジリデンアセトンを表わす)。Pd(dba)3、PdCl2(PPh等の2価のPd錯体を用いる場合には、PPhやP(o−tolyl)等の有機配位子と併せて使用することが望ましい。
触媒の使用量は、式(4)〜(7)の各モノマーの合計量に対するパラジウム錯体の使用量として、通常1×10−4mol%以上、好ましくは1×10−3mol%以上、より好ましくは1×10−2mol%以上であり、一方、通常1×10mol%以下、より好ましくは5mol%以下である。触媒の使用量がこの範囲にあることは、より低コストかつ高い収率で、より高分子量のコポリマーが得られる傾向にある点で好ましい。
補触媒としてはフッ化セシウム、酸化銅又はハロゲン化銅等の無機塩が挙げられる。補触媒の使用量は、式(4)(5)で表される各モノマーの合計量に対して、通常1×10−4mol%以上、好ましくは1×10−3mol%以上、より好ましくは1×10−2mol%以上であり、一方、通常1×10mol%以下、好ましくは1×10mol%以下、より好ましくは1.5×10mol%以下である。補触媒の使用量がこの範囲にあることは、より低コストかつ高い収率でコポリマーが得られる傾向にある点で好ましい。
相間移動触媒としては、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドやAliquat336(アルドリッチ社製)等が挙げられる。相間移動触媒の使用量は、式(4)(5)で表される各モノマーの合計量に対して、通常1×10−4mol%以上、好ましくは1×10−3mol%以上、より好ましくは1×10−2mol%以上であり、一方、通常5mol%以下、より好ましくは3mol%以下である。相間移動触媒の使用量がこの範囲にあることは、より低コストかつ高い収率でコポリマーが得られる傾向にある点で好ましい。
重合反応に用いられる溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン又はシクロヘキサン等の飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン又はキシレン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン又はトリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール又はt−ブチルアルコール等のアルコール類;水;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン又はジオキサン等のエーテル類;DMF等の非プロトン性有機溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
溶媒の使用量は、式(4)〜(7)で表される各モノマーの合計量1gに対して、通常、1×10−2mL以上、好ましくは1×10−1mL以上、より好ましくは1mL以上であり、一方、通常1×10mL以下、好ましくは1×10mL以下、より好ましくは2×10mL以下である。Stilleカップリング反応の反応温度は、通常0℃以上、好ましくは20℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは60℃以上である。一方、通常300℃以下、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは180℃以下、特に好ましくは160℃以下である。加熱方法としては、特段の制限は無いが、オイルバス加熱、熱電対加熱、赤外線加熱、マイクロウェーブ加熱の他、IHヒーターを用いた接触による加熱等が挙げられる。この反応の時間は、通常1分間以上、好ましくは10分間以上、一方、通常160時間以下、好ましくは120時間以下、より好ましくは100時間以下である。これらの反応条件で反応を行うことにより、より短時間かつ高い収率でコポリマーが得られうる。
重合反応後は、例えば、水でクエンチした後に有機溶媒で抽出し、この有機溶媒を留去する等の通常の後処理で、粗製の高分子を得ることができる。高分子の合成後、再沈精製、ソックスレー、ゲル浸透クロマトグラフィー又はスキャベンジャーによる金属除去等の純化処理をすることが好ましい。
また、Stilleカップリング反応は窒素(N)またはアルゴン(Ar)雰囲気下で行うことが好ましい。
重合反応後のコポリマーに対しては、コポリマーの末端処理を行うことが好ましい。コポリマーの末端処理を行うことにより、コポリマーの臭素(Br)やヨウ素(I)等のハロゲン元素やアルキルスタニル基等の末端残基(上述のX及びX)の残存量を減らすことが可能である。この末端処理は、効率及び耐久性の点でよりよい性能のポリマーを得ることができるために、好ましい。
コポリマーの末端処理方法としては、特段の制限は無いが、以下の方法が挙げられる。Stilleカップリング反応によってコポリマーを重合した場合には、コポリマーの末端に存在する臭素(Br)やヨウ素(I)等のハロゲン元素及びアルキルスタニル基に対する末端処理を行うことができる。
ハロゲン元素の末端処理方法としては、反応系中に末端処理剤としてアリールトリアルキルスズを加えた後、加熱攪拌を行うことにより行うことができる。アリールトリアルキルスズとしてはフェニルトリメチルスズ又はチエニルトリメチルスズ等が挙げられる。末端処理剤の添加量としては、特段の制限は無いが、ハロゲン元素末端付加モノマーに対して、通常1.0×10−2当量以上、好ましくは0.1当量以上、より好ましくは1当量以上であり、一方、通常50当量以下、好ましくは20当量以下、より好ましくは10当量以上である。加熱時間は、特段の制限は無いが、通常30分以上、好ましくは1時間以上であり、一方、通常50時間以下、好ましくは20時間以下である。これらの反応条件で反応を行うことにより、より短時間かつ高い変換率で末端処理を行うことができる。
ハロゲン元素の末端処理をして、末端が芳香族基に置換されることにより、共役安定効果により、コポリマーがより安定になりうるために、好ましい。
アルキルスタニル基の末端処理方法としては、反応系中に末端処理剤としてアリールハライドを加えたのち、加熱攪拌を行うことにより行うことができる。アリールハライドとしてはヨードチオフェン、ヨードベンゼン、ブロモチオフェン又はブロモベンゼン等が挙げられる。末端処理剤の添加量としては、特段の制限は無いが、アルキルスタニル基末端付加モノマーに対して、通常1.0×10−2当量以上、好ましくは0.1当量以上、より好ましくは1当量以上であり、一方、通常50当量以下、好ましくは20当量以下、より好ましくは10当量以上である。加熱時間は、特段の制限は無いが、通常30分以上、好ましくは1時間以上であり、一方、通常50時間以下、好ましくは10時間以下である。これらの反応条件で反応を行うことにより、より短時間かつ高い変換率で末端処理を行うことができる。
アルキルスタニル基の末端処理をして、末端が芳香族基に置換されることにより、熱分解しやすいアルキルスタニル基中のSn元素がポリマー中に存在しなくなることから、コポリマーの経時劣化が抑えられることが期待される。また、末端が芳香族基に置換されることは、共役安定効果によりコポリマーがより安定になりうる点においても好ましい。
上記の末端処理の操作については、特段の制限は無いが、各々独立に行うことが好ましい。なお、各々の末端処理の操作順序に、特段の制限は無く、適宜選択できる。
また、末端処理の操作については、コポリマーの精製前又はコポリマーの精製後に行ってもよい。末端処理をコポリマー精製後に行う場合には、コポリマーと片方の末端処理剤(アリールハライド又はアリールトリメチルスズ)を有機溶剤に溶解した後、パラジウム触媒等の遷移金属触媒を加え、窒素条件下加熱攪拌を行い、さらにもう片方の末端処理剤(アリールトリメチルスズ又はアリールハライド)を加え、加熱攪拌を行うことにより処理できる。上記処理を行うことにより、末端残基を短時間に効率よく除去できるため、好ましい。
パラジウム触媒等の遷移金属触媒の添加量としては、特段の制限は無いが、コポリマーに対して、通常5.0×10−3当量以上、好ましくは1.0×10−2当量以上であり、一方、通常1.0×10−1当量以下、好ましくは5.0×10−2当量以下である。触媒の添加量がこの範囲にあることにより、より低コストかつ高い変換率で末端処理を行うことができる。
アルキルスタニル基の末端処理剤の添加量としては、特段の制限は無いが、アルキルスタニル基末端付加モノマーに対して、通常1.0×10−2当量以上、好ましくは1.0×10−1当量以上、より好ましくは1当量以上であり、一方、通常50当量以下、好ましくは20当量以下、より好ましくは10当量以上である。末端処理剤の添加量がこの範囲にあることにより、より低コストかつ高い変換率で末端処理を行うことができる。
ハロゲン基の末端処理剤の添加量としては、特段の制限は無いが、ハロゲン基末端付加モノマーに対して、通常通常1.0×10−2当量以上、好ましくは1.0×10−1当量以上、より好ましくは1当量以上であり、一方、通常50当量以下、好ましくは20当量以下、より好ましくは10当量以上である。末端処理剤の添加量がこの範囲にあることにより、より低コストかつ高い変換率で末端処理を行うことができる。
加熱時間は、特段の制限は無いが、通常30分以上、好ましくは1時間以上であり、一方、通常25時間以下、好ましくは10時間以下である。これらの反応条件で反応を行うことにより、より短時間かつ高い変換率で末端処理を行うことができる。
なお、Suzuki−Miyauraクロスカップリング反応方法によりコポリマーを重合した場合には、末端処理の方法として、アリールボロン酸を加えた後加熱攪拌を行う方法が挙げられる。
精製は上記の通り、ソックスレー、ゲル浸透クロマトグラフィー又はスキャベンジャーによる金属除去等の方法により行うことができる。
また、重合反応の原料として用いられる式(4)のチエノチオフェン誘導体(チエノチオフェンモノマー)は、国際公開第2010/008672号記載の方法に準じて製造することができる。また、式(5)のイミドチオフェン誘導体(イミドチオフェンモノマー)は、J.Am.Chem.Soc.,2010,132(22),7595−7597に記載の方法に準じて製造することができる。
また、ArとArとが互いに異なる場合、以下に示す式(8)及び式(9)の化合物、又は式(10)及び式(11)の化合物を用意し、上述の方法に従って重合させてもよい。
<3.有機半導体材料>
本実施形態に係るコポリマーは、溶媒溶解性が良好でありうる。また本実施形態に係るコポリマーは、長波長領域に高い光吸収を持ちうる。このため、本実施形態に係るコポリマーは有機半導体材料として好適である。以下、本実施形態に係る有機半導体材料について説明する。
本実施形態に係る有機半導体材料は、本実施形態に係るコポリマーを少なくとも含有する。本実施形態に係るコポリマーの一種を単独で含有していてもよく、二種以上を任意の組み合わせで含有していてもよい。また、本実施形態に係るコポリマーのみからなるものであってもよいが、その他の成分(例えば、その他の高分子やモノマー、各種の添加剤等)を含有していてもよい。
本実施形態に係る有機半導体材料は、後述する有機電子デバイスの有機半導体層(有機活性層)に好適である。その場合、有機半導体材料を成膜して用いることが好ましく、この際に前述した有機溶剤への可溶性及びその加工性に優れている等の物性が好ましい点として現れる。有機電子デバイスの有機半導体層として用いる際の詳細は後述する。
本実施形態に係る有機半導体材料は、単独でも有機電子デバイスの有機半導体層の材料として十分に作用するが、他の有機半導体材料と混合及び/又は積層して使用することも可能である。本実施形態に係る有機半導体材料と併用可能な他の有機半導体材料としては、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)、ポリ[2,6−(4,4−ビス−[2−エチルヘキシル]−4H−シクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェン)−オルト−4,7−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール)](PCPDTBT)、ベンゾポルフィリン(BP)、ペンタセン、また、n型半導体化合物として知られているペリレン−ビスイミド、[6,6]−フェニル−C61−酪酸メチルエステル([60]PCBM)又はC70等のより大きいフラーレンを有するPCBM、[6,6]−フェニル−C61−酪酸n−ブチルエステル([60]PCBNB)又はC70等のより大きいフラーレンを有するPCBNB、等のフラーレン誘導体等の既知の有機半導体材料が挙げられるが、特にこれらに限定されることはない。
本実施形態に係る有機半導体材料は半導体特性を示し、例えば、電界効果移動度測定において、正孔移動度が通常1.0×10−5cm/Vs以上、好ましくは1.0×10−4cm/Vs以上であり、一方、正孔移動度が通常1.0×10cm/Vs以下、好ましくは1.0×10cm/Vs以下、より好ましくは1.0×10cm/Vs以下である。正孔移動度の測定方法としてはFET法が挙げられる。FET法は、公知文献(特開2010−045186号公報)に記載の方法により実施することができる。
<4.有機電子デバイス>
次に、本実施形態に係る有機電子デバイスについて説明する。本実施形態に係る有機電子デバイスは、上述した本実施形態に係る有機半導体材料を用いて形成されたことを特徴としている。すなわち本実施形態に係る有機電子デバイスは、本実施形態に係る有機半導体材料を含む。本実施形態に係る有機半導体材料を適用可能なものであれば、有機電子デバイスの種類に特に制限はない。例としては、発光素子、スイッチング素子、光電変換素子、光電導性を利用した光センサー等が挙げられる。
発光素子としては、表示デバイスに用いられる各種の発光素子が挙げられる。具体例としては、液晶表示素子、高分子分散型液晶表示素子、電気泳動表示素子、エレクトロルミネッセント素子、エレクトロクロミック素子等が挙げられる。スイッチング素子の具体例としては、ダイオード(pn接合ダイオード、ショットキー・ダイオード、MOSダイオード等)、トランジスタ(バイポーラートランジスタ、電界効果トランジスタ(FET)等)、サイリスタ、更にはそれらの複合素子(例えばTTL等)等が挙げられる。
光電変換素子の具体例としては、薄膜太陽電池、電荷結合素子(CCD)、光電子増倍管、フォトカプラ等が挙げられる。また、光電導性を利用した光センサーとしては、これらの光電変換素子を利用したものが挙げられる。本実施形態に係る有機半導体材料を有機電子デバイスのどの部位に用いるかは特に制限されず、任意の部位に用いることが可能である。特に光電変換素子の場合には、通常は本実施形態に係る有機半導体材料を含有する有機半導体層は有機電子デバイスの有機活性層に使用される。
<5.光電変換素子>
以下に、本実施形態に係る光電変換素子について説明する。本実施形態に係る光電変換素子は、少なくとも有機活性層、及び一対の電極を有する。また、有機活性層は、本実施形態に係る有機半導体材料を含有する。有機活性層及びバッファ層は、電極間に配置されている。図1は一般的な有機薄膜太陽電池に用いられる光電変換素子を表すが、これに限るわけではない。
本発明の一実施形態としての光電変換素子107は、基板106、アノード101、正孔取り出し層102、有機活性層103(p型半導体化合物とn型半導体化合物混合層)、電子取り出し層104、カソード105が順次、形成された層構造を有する。それぞれの各層の間には、後述の各層機能に影響を与えない程度に、別の層が挿入されていてもよい。
<活性層103>
本実施形態に係る光電変換素子において、活性層103は光電変換が行われる層を指し、p型半導体化合物とn型半導体化合物を含む。光電変換素子107が光を受けると、光が活性層103に吸収され、p型半導体化合物とn型半導体化合物の界面で電気が発生し、発生した電気が電極101及び105から取り出される。
活性層103の材料としては無機化合物又は有機化合物のいずれを用いてもよいが、簡易な塗布プロセスにより形成しうることが好ましい。より好ましくは、活性層103は有機化合物からなる有機活性層である。以下では、活性層103が有機活性層であるものとして説明する。
有機活性層の層構成は、p型半導体化合物とn型半導体化合物が積層された薄膜積層型、p型半導体化合物とn型半導体化合物が混合したバルクヘテロ接合型、薄膜積層型の中間層にp型半導体化合物とn型半導体化合物が混合した層(i層)を有する構造等が挙げられる。なかでも、p型半導体化合物とn型半導体化合物が混合したバルクヘテロ接合型が好ましい。
有機活性層103の膜厚は特に限定されないが、通常10nm以上、好ましくは50nm以上であり、一方通常1.0×10nm以下、好ましくは5.0×10nm以下、より好ましくは2.0×10nm以下である。有機活性層の膜厚が10nm以上であることで、均一性が保たれ、短絡を起こしにくくなるため、好ましい。また、有機活性層の厚さが1.0×10nm以下であることで、内部抵抗が小さくなり、かつ電極間の距離が離れず電荷の拡散が良好となるため、好ましい。
有機活性層103の作成方法としては、特段に制限はないが、塗布法が好ましい。塗布法については、以下の任意の方法で行うことができる。例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法、カーテンコート法等が挙げられる。
[p型半導体化合物]
有機活性層103は、本実施形態に係るコポリマーをp型半導体材料として少なくとも含むが、他の半導体材料を混合及び/又は積層して併用することも可能である。以下、併用しうる有機半導体材料、例えば、高分子有機半導体材料や低分子有機半導体材料について説明する。
<高分子有機半導体化合物>
本実施形態で併用しうる高分子有機半導体化合物としては、特に限定はなく、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリアセチレン又はポリアニリン等の共役コポリマー半導体;アルキル基やその他の置換基が置換されたオリゴチオフェン等のコポリマー半導体も挙げられる。また、二種以上のモノマー単位を共重合させた半導体コポリマーも挙げられる。共役コポリマーは、例えば、Handbook of Conducting Polymers,3rd Ed.(全2巻),2007、Materials Science and Engineering,2001,32,1−40、Pure Appl. Chem.2002,74,2031−3044、Handbook of THIOPHENE−BASED MATERIALS(全2巻),2009等の公知文献に記載されたコポリマーやその誘導体、及び記載されているモノマーの組み合わせによって合成し得るコポリマーを用いることができる。
なお、一種の化合物でも複数種の化合物の混合物でもよい。併用しうる高分子有機半導体化合物の具体例としては以下のものが挙げられるが、これに限定されない。
<低分子有機半導体化合物>
本実施形態で併用しうる低分子有機半導体化合物は、特段の制限はないが、具体的には、ナフタセン、ペンタセン又はピレン等の縮合芳香族炭化水素;α−セキシチオフェン等のチオフェン環を4個以上含むオリゴチオフェン類;チオフェン環、ベンゼン環、フルオレン環、ナフタレン環、アントラセン環、チアゾール環、チアジアゾール環及びベンゾチアゾール環のうち少なくとも一つ以上を含み、かつ合計4個以上連結したもの;フタロシアニン化合物及びその金属錯体、又はテトラベンゾポルフィリン等のポルフィリン化合物及びその金属錯体、等の大環状化合物等が挙げられる。好ましくは、フタロシアニン化合物及びその金属錯体又はポルフィリン化合物及びその金属錯体である。
ポルフィリン化合物及びその金属錯体(図中のQがCH)、フタロシアニン化合物及びその金属錯体(図中のQがN)としては、例えば、以下のような構造の化合物が挙げられる。
ここで、Mは金属あるいは2個の水素原子を表し、金属としては、Cu、Zn、Pb、Mg、Co又はNi等の2価の金属のほか、軸配位子を有する3価以上の金属、例えば、TiO、VO、SnCl、AlCl、InCl又はSi等も挙げられる。
〜Yはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜24のアルキル基である。炭素数1〜24のアルキル基とは、炭素数が1〜24の飽和若しくは不飽和の鎖状炭化水素基又は炭素数が3〜24の飽和若しくは不飽和の環式炭化水素である。そのなかでも好ましくは炭素数1〜12の飽和若しくは不飽和の鎖状炭化水素基又は炭素数が3〜12の飽和若しくは不飽和の環式炭化水素である。
フタロシアニン化合物及びその金属錯体のなかでも、好ましくは、29H,31H−フタロシアニン、銅フタロシアニン錯体、亜鉛フタロシアニン錯体、マグネシウムフタロシアニン錯体、鉛フタロシアニン錯体、チタンフタロシアニンオキシド錯体、バナジウムフタロシアニンオキシド錯体、インジウムフタロシアニンハロゲン錯体、ガリウムフタロシアニンハロゲン錯体、アルミニウムフタロシアニンハロゲン錯体、スズフタロシアニンハロゲン錯体、ケイ素フタロシアニンハロゲン錯体、又は銅4,4’,4’’,4’’’−テトラアザ−29H,31H−フタロシアニン錯体であり、より好ましくは、チタンフタロシアニンオキシド錯体、バナジウムフタロシアニンオキシド錯体、インジウムフタロシアニンクロロ錯体、アルミニウムフタロシアニンクロロ錯体である。なお、上記一種の化合物でも複数種の化合物の混合物でもよい。
ポルフィリン化合物及びその金属錯体のなかでも、好ましくは、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンコバルト(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン銅(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン亜鉛(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンニッケル(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンバナジウム(IV)オキシド、5,10,15,20−テトラ(4−ピリジル)−21H,23H−ポルフィン、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィン、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンコバルト(II)、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィン銅(II)、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィン亜鉛(II)、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンニッケル(II)又は29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンバナジウム(IV)オキシドであり、好ましくは、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン又は29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンである。なお、上記一種の化合物でも複数種の化合物の混合物でもよい。
低分子有機半導体化合物の製膜方法としては、蒸着法によって製膜する方法や低分子有機半導体化合物前駆体を塗布後に低分子有機半導体化合物に変換することで製膜する方法がある。塗布製膜できるというプロセス上の利点からは後者が好ましい。
低分子有機半導体化合物前駆体とは、例えば加熱や光照射等の外的刺激を与えることにより、その化学構造が変化し、低分子有機半導体化合物に変換される物質である。本実施形態に係る低分子有機半導体化合物前駆体は成膜性に優れるものが好ましい。特に、塗布法を適用できるようにするためには、前駆体自体が液状で塗布可能であるか又は前駆体が何らかの溶媒に対して溶解性が高く溶液として塗布可能であることが好ましい。このため、低分子有機半導体化合物前駆体の溶媒に対する溶解性は、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上である。一方、上限に特段の制限はないが、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下である。
溶媒の種類としては、半導体前駆体化合物を均一に溶解あるいは分散できるものであれば特に限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン又はデカン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、クロロベンゼン又はオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール又はプロパノール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン又はシクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル又は乳酸メチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン又はトリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン又はジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。なかでも好ましくは、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、クロロベンゼン又はオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン又はシクロヘキサノン等のケトン類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン又はトリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン又はジオキサン等のエーテル類である。より好ましくは、トルエン、キシレン又はシクロヘキシルベンゼン等の非ハロゲン芳香族炭化水素類;シクロペンタノン又はシクロヘキサノン等の非ハロゲン系ケトン類;テトラヒドロフラン又は1,4−ジオキサン等の非ハロゲン系脂肪族エーテル類である。特に好ましくは、トルエン、キシレン又はシクロヘキシルベンゼン等の非ハロゲン芳香族炭化水素類である。なお、溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
さらに、低分子有機半導体化合物前駆体は、容易に半導体化合物に変換できることが好ましい。低分子有機半導体化合物前駆体から半導体化合物への変換工程においてどのような外的刺激を半導体前躯体に与えるかは任意であるが、通常は、熱処理、光処理等を行なう。好ましくは、熱処理である。この場合には、低分子有機半導体化合物前駆体の骨格の一部に逆ディールス・アルダー反応によって脱離可能な所定の溶媒に対する親溶媒性の基を有するものが好ましい。
また、低分子有機半導体化合物前駆体は、変換工程を経て、高い収率で半導体化合物に変換されることが好ましい。この際、低分子有機半導体化合物前駆体から変換して得られる半導体化合物の収率は有機光電変換素子の性能を損なわない限り任意であるが、低分子有機半導体化合物前躯体から得られる低分子有機半導体化合物の収率は、通常90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは99モル%以上である。
低分子有機半導体化合物前駆体は上記特徴を有するものであれば特に制限はないが、具体的には特開2007−324587号公報に記載の化合物等が用いられうる。なかでも好ましい例としては、下記式(A1)で表わされる化合物が挙げられる。
式(A1)において、X及びXの少なくとも一方はπ共役した2価の芳香族環を形成する基を表わし、Z−Zは熱又は光により脱離可能な基であって、Z−Zが脱離して得られるπ共役化合物が顔料分子となるものを表わす。また、X及びXのうちπ共役した2価の芳香族環を形成する基でないものは、置換又は無置換のエテニレン基を表わす。
式(A1)で表わされる化合物は、下記化学反応式に示すように熱又は光によりZ−Zが脱離して、平面性の高いπ共役化合物を生成する。この生成されたπ共役化合物が本実施形態に係る半導体化合物である。本実施形態においては、この半導体化合物が半導体特性を示すことが好ましい。
式(A1)で表わされる化合物の例としては、以下のものが挙げられる。なお、t−Buはt−ブチル基を表わす。Mは、2価の金属原子又は3価以上の金属と他の原子とが結合した原子団を表わす。
低分子有機半導体化合物前駆体の半導体化合物への変換方法は、公知のものを用いうる。
式(A1)で表わされる低分子有機半導体化合物前駆体は、位置異性体が存在する構造であってもよく、またその場合、複数の位置異性体の混合物から成っていてもよい。複数の位置異性体からなる低分子有機半導体化合物前駆体は、単一異性体成分からなる低分子有機半導体化合物前駆体と比較して溶媒に対する溶解度が向上するため、塗布製膜が行いやすく好ましい。複数の位置異性体の混合物とすると溶解度が向上する理由は、詳細なメカニズムは明確ではないが、化合物そのものの結晶性が潜在的に保持されつつも、複数の異性体混合物が溶液内に混在することで、三次元規則的な分子間相互作用が困難になるためと想定される。本実施形態においては、複数の異性体化合物からなる前駆体混合物の非ハロゲン性溶媒への溶解度は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上である。上限に制限は無いが、通常50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。
本実施形態に係るコポリマーと併用しうるp型半導体化合物として、なかでも好ましくは、高分子有機半導体化合物としてはポリチオフェン等の共役コポリマー半導体であり、低分子有機半導体化合物としては、ナフタセン、ペンタセン、ピレン等の縮合芳香族炭化水素、フタロシアニン化合物及びその金属錯体、又はテトラベンゾポルフィリン(BP)等のポルフィリン化合物及びその金属錯体である。なお、上記一種の化合物でも複数種の化合物の混合物でもよい。
本実施形態に係る有機半導体材料を用いたp型半導体化合物層作成方法については、特段の制限はないが、塗布法が好ましい。本実施形態に係るコポリマーは溶媒に易溶解性であるため、塗布成膜性に優れる。塗布法については、以下の任意の方法で行うことができる。例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法又はカーテンコート法等が挙げられる。
高分子有機半導体化合物及び/又は低分子有機半導体化合物は、製膜された状態において、何らかの自己組織化した構造を有するものであっても、アモルファス状態であってもよい。
p型半導体化合物のHOMOエネルギー準位は、特に限定は無いが、後述のn型半導体の種類によって選択することができるが、特にフラーレン化合物と組み合わせるp型半導体のHOMOエネルギー準位は、通常−5.7eV以上、より好ましくは−5.5eV以上であり、一方、通常−4.6eV以下、より好ましくは−4.8eV以下である。p型半導体化合物のHOMOエネルギー準位が−5.7eV以上であることによりp型半導体としての特性が向上し、p型半導体のHOMOエネルギー準位が−4.6eV以下であることにより化合物の安定性が向上し、開放電圧(Voc)も向上する。また、p型半導体のLUMOエネルギー準位は、特に限定は無いが、後述のn型半導体の種類によって選択することができるが、特にフラーレン化合物と組み合わせるp型半導体のLUMOエネルギー準位は、通常−3.7eV以上、好ましくは−3.6eV以上である。一方、通常−2.5eV以下、好ましくは−2.7eV以下である。p型半導体のLUMOエネルギー準位が−2.5eV以下であることにより、バンドギャップが調整され長波長な光エネルギーを有効に吸収することができ、短絡電流密度が向上する。p型半導体のLUMOエネルギー準位が−3.7eV以上であることにより、n型半導体への電子移動が起こりやすくなり短絡電流密度が向上する。
<n型半導体化合物>
n型半導体化合物としては、特段の制限はないが、具体的にはフラーレン化合物、8−ヒドロキシキノリンアルミニウムに代表されるキノリノール誘導体金属錯体;ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド又はペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の縮合環テトラカルボン酸ジイミド類;ペリレンジイミド誘導体、ターピリジン金属錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体、ペリノン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ビススチリル誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、ビピリジン誘導体、ボラン誘導体、アントラセン、ピレン、ナフタセン又はペンタセン等の縮合多環芳香族炭化水素の全フッ化物;単層カーボンナノチューブ、n型ポリマー等が挙げられる。
そのなかでも、フラーレン化合物、ボラン誘導体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、N−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミドおよびN−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体が好ましく、フラーレン化合物、N−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体、N−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミド又はn型ポリマーがより好ましい。これらの化合物を一種又は二種以上含んでもよく、n型ポリマーを一種又は二種以上含んでもよい。
以下、これらの好ましいn型半導体化合物について説明する。
<フラーレン化合物>
本実施形態で用いられるフラーレン化合物としては、一般式(n1)、(n2)、(n3)及び(n4)で表される部分構造を有することが好ましい。
式中、FLNとは、閉殻構造を有する炭素クラスターであるフラーレンを表わす。フラーレンの炭素数は、通常60〜130の偶数であれば何でもよい。フラーレンとしては、例えば、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C94、C96及びこれらよりも多くの炭素を有する高次の炭素クラスター等が挙げられる。そのなかでも、C60又はC70が好ましい。フラーレンとしては、一部のフラーレン環上の炭素―炭素結合が切れていてもよい。又、一部の炭素原子が、他の原子に置き換えられていてもよい。さらに、金属原子、非金属原子あるいはこれらから構成される原子団をフラーレンケージ内に内包していてもよい。
a、b、c及びdは整数であり、a、b、c及びdの合計が通常1以上であり、一方、通常5以下であり、好ましくは3以下である。(n1)、(n2)、(n3)及び(n4)中の部分構造は、フラーレン骨格中の同一の五員環又は六員環に付加される。一般式(n1)では、フラーレン骨格中の同一の5員環又は6員環上の隣接する2つの炭素原子に対して、−Rと−(CHとがそれぞれ付加している。一般式(n2)では、フラーレン骨格中の同一の5員環又は6員環上の隣接する2つの炭素原子に対して、−C(R10)(R11)−N(R12)−C(R13)(R14)が付加し5員環を形成してなる。一般式(n3)では、フラーレン骨格中の同一の5員環又は6員環上の隣接する2つの炭素原子に対して、−C(R15)(R16)−C−C−C(R17)(R18)が付加し6員環を形成してなる。一般式(n4)では、フラーレン骨格中の同一の5員環又は6員環上の隣接する2つの炭素原子に対して−C(R19)(R20)が付加し3員環を形成してなる。Lは1〜8の整数である。Lとして好ましくは1以上4以下の整数であり、さらに好ましくは1以上2以下の整数である。
一般式(n1)中のRは置換基を有していてもよい炭素数1〜14のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜14のアルコキシ基又は置換基を有していてもよい芳香族基である。アルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基又はイソブチル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましい。アルコキシ基としては、炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜6のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基又はエトキシ基が特に好ましい。芳香族基としては、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数2〜20の芳香族複素環基が好ましく、フェニル基、チエニル基、フリル基又はピリジル基がより好ましく、フェニル基又はチエニル基が更に好ましい。
上記アルキル基、アルコキシ基及び芳香族基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子又はシリル基が好ましい。ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。シリル基としては、ジアリールアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、トリアリールシリル基又はトリアルキルシリル基が好ましく、ジアルキルアリールシリル基がより好ましく、ジメチルアリールシリル基がさらに好ましい。
一般式(n1)中のR〜Rは各々独立して置換基を表し、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜14のアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族基である。
アルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基又はn−ヘキシル基が好ましい。アルキル基が有していてもよい置換基としてはハロゲン原子が好ましい。ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。フッ素原子で置換されたアルキル基としては、パーフルオロオクチル基、パーフルオロヘキシル基又はパーフルオロブチル基が好ましい。
芳香族基は、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数2〜20の芳香族複素環基が好ましく、フェニル基、チエニル基、フリル基又はピリジル基がより好ましく、フェニル基又はチエニル基が更に好ましい。芳香族基が有していてもよい置換基としては、フッ素原子、炭素数1〜14のアルキル基、炭素数1〜14のフッ化アルキル基、炭素数1〜14のアルコキシ基又は炭素数3〜10の芳香族基が好ましく、フッ素原子又は炭素数1〜14のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、n−ブトキシ基又は2−エチルヘキシルオキシ基が更に好ましい。芳香族基が置換基を有する場合、その数に限定は無いが、1以上3以下が好ましく、1がより好ましい。芳香族基が置換基を複数有する場合、その置換基の種類は異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
一般式(n2)中のR10〜R14は各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜14のアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族基である。アルキル基として好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ヘキシル基又はオクチル基であり、より好ましくはメチル基である。芳香族基は、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数2〜20の芳香族複素環基が好ましく、フェニル基又はピリジル基がより好ましく、フェニル基がさらに好ましい。
アルキル基が有していてもよい置換基としてはハロゲン原子が好ましい。ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。フッ素原子で置換されたアルキル基としては、パーフルオロオクチル基、パーフルオロヘキシル基又はパーフルオロブチル基が好ましい。芳香族基が有していてもよい置換基としては、特に限定は無いが、好ましくはフッ素原子、炭素数1〜14のアルキル基、炭素数1〜14のアルコキシ基である。アルキル基にはフッ素原子が置換されていてもよい。さらに好ましくは炭素数1〜14のアルコキシ基であり、さらに好ましくはメトキシ基である。置換基を有する場合、その数に限定は無いが、好ましくは1〜3であり、より好ましくは1である。置換基の種類は異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
一般式(n3)中のArは、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数2〜20の芳香族複素環基であり、好ましくはフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、チエニル基、フリル基、ピリジル基、ピリミジル基、キノリル基又はキノキサリル基であり、さらに好ましくはフェニル基、チエニル基又はフリル基である。有していてもよい置換基として限定は無いが、有していてもよい置換基として限定は無いが、フッ素原子、塩素原子、水酸基、シアノ基、シリル基、ボリル基、アルキル基で置換してもよいアミノ基、炭素数1〜14のアルキル基、炭素数1〜14のアルコキシ基、炭素数1〜14のアルキルカルボニル基、炭素数1〜14のアルキルチオ基、炭素数1〜14のアルケニル基、炭素数1〜14のアルキニル基、エステル基、アリールカルボニル基、アリールチオ基、アリールオキシ基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数2〜20の複素環基が好ましく、フッ素原子、炭素数1〜14のアルキル基、炭素数1〜14のアルコキシ基、エステル基、炭素数1〜14のアルキルカルボニル基又はアリールカルボニル基がより好ましい。炭素数1〜14のアルキル基にはフッ素が置換されていてもよい。
炭素数1〜14のアルキル基としては、メチル基、エチル基又はプロピル基が好ましい。炭素数1〜14のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基又はプロポキシル基が好ましい。炭素数1〜14のアルキルカルボニル基としては、アセチル基が好ましい。エステル基としては、メチルエステル基又はn−ブチルエステル基が好ましい。アリールカルボニル基としては、ベンゾイル基が好ましい。
置換基を有する場合、その数に限定は無いが、1〜4が好ましく、1〜3がより好ましい。置換基が複数の場合、その種類は異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
一般式(n3)中のR15〜R18は各々独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルコキシ基または置換基を有していてもよいアルキルチオ基である。R15またはR16は、R17またはR18との間のいずれか一方と環を形成してもよい。環を形成する場合における構造は、例えば、芳香族基が縮合したビシクロ構造である一般式(n5)で示すことができる。一般式(n5)中におけるfはcと同様であり、Xは、酸素原子、硫黄原子、アミノ基、アルキレン基又はアリーレン基である。アルキレン基としては炭素数1〜2が好ましい。アリーレン基としては炭素数5〜12が好ましく、例えばフェニレン基である。アミノ基は、メチル基やエチル基等の炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよい。
アルキレン基は、メトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数2〜20の芳香族複素環基で置換されていてもよい。アリーレン基は、メトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数2〜20の芳香族複素環基で置換されていてもよい。
一般式(n4)中のR19〜R20は各々独立して、水素原子、アルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜14のアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族基である。
アルコキシカルボニル基におけるアルコキシ基としては、炭素数1〜12のアルコキシ基又は炭素数1〜12のフッ化アルコキシ基が好ましく、炭素数1〜12のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、n−ヘキソキシ基、オクトキシ基、2−プロピルペントキシ基、2−エチルヘキソキシ基、シクロヘキシルメトキシ基又はベンジルオキシ基がさらに好ましく、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基又はn−ヘキソキシ基が特に好ましい。
アルキル基としては、炭素数1〜8の直鎖アルキル基が好ましく、n−プロピル基がより好ましい。アルキル基が有していてもよい置換基には特に限定は無いが、好ましくはアルコキシカルボニル基である。アルコキシカルボニル基のアルコキシ基としては、炭素数1〜14のアルコキシ基又はフッ化アルコキシ基が好ましく、炭素数1〜14の炭化水素基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、n−ヘキソキシ基、オクトキシ基、2−プロピルペントキシ基、2−エチルヘキソキシ基、シクロヘキシルメトキシ基又はベンジルオキシ基がさらに好ましく、メトキシ基又はn−ブトキシ基が特に好ましい。
芳香族基としては、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数2〜20の芳香族複素環基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基、チエニル基、フリル基又はピリジル基が好ましく、フェニル基又はチエニル基がさらに好ましい。芳香族基が有していてもよい置換基としては、炭素数1〜14のアルキル基、炭素数1〜14のフッ化アルキル基又は炭素数1〜14のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜14のアルコキシ基がさらに好ましく、メトキシ基又は2−エチルヘキシルオキシ基が特に好ましい。置換基を有する場合、その数に限定は無いが、好ましくは1以上3以下であり、より好ましくは1である。置換基の種類は異なっていても同一でもよく、好ましくは同一である。
一般式(n4)の構造として好ましくは、R19、R20が共にアルコキシカルボニル基であるか、R19、R20が共に芳香族基であるか又はR19が芳香族基でかつR20が3−(アルコキシカルボニル)プロピル基である。
なお、本実施形態で用いられるn型半導体化合物は一種の化合物でも複数種の化合物の混合物でもよい。
フラーレン化合物は、塗布法に適用できるようにするためには、このフラーレン化合物自体が液状で塗布可能であるか、このフラーレン化合物が何らかの溶媒に対して溶解性が高く溶液として塗布可能であることが好ましい。溶解性の好適な範囲をあげると、25℃でのトルエンに対する溶解度が、通常0.1重量%以上、好ましくは0.4重量%以上、より好ましくは0.7重量%以上である。フラーレン化合物の溶解度が0.1重量%以上であることで、フラーレン化合物の分散安定性が増加し、凝集、沈降、分離等を起こりにくくなるため好ましい。
本実施形態で用いられるフラーレン化合物の溶媒は、非極性有機溶媒であれば、特段に制限はないが、非ハロゲン系溶媒が好ましい。ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒でも可能であるが、環境負荷の面等から代替が求められている。非ハロゲン系溶媒としては、例えば、非ハロゲン系芳香族炭化水素類が挙げられる。そのなかでも好ましくはトルエン、キシレン又はシクロヘキシルベンゼン等である。
<フラーレン化合物の製造方法>
本実施形態で用いられるフラーレン化合物の製造方法としては、特に制限はないが、例えば、部分構造(n1)を有するフラーレン化合物の合成方法としては、国際公開第2008/059771号パンフレットやJ.Am.Chem.Soc.,2008,130(46),15429−15436に記載されている公知文献によって、実施可能である。
部分構造(n2)を有するフラーレン化合物の合成方法としては、J.Am.Chem.Soc.1993,115,9798−9799、Chem.Mater.2007,19,5363−5372及びChem.Mater.2007,19,5194−5199に記載されている公知文献によって、実施可能である。
部分構造(n3)を有するフラーレン化合物の合成方法としては、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1993,32,78−80、Tetrahedron Lett.1997,38,285−288、国際公開第2008/018931号及び国際公開第2009/086210号に記載されている公知文献によって、実施可能である。
部分構造(n4)を有するフラーレン化合物の合成方法としては、J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1,1997 1595、Thin Solid Films 489(2005)251−256、Adv.Funct.Mater.2005,15,1979−1987及びJ.Org.Chem.1995,60,532−538に記載されている公知文献によって、実施可能である。
市販されているフラーレン化合物として、例えばPCBM(フロンティアカーボン社製)、PCBNB(フロンティアカーボン社)等が好適に使用できる。
<N−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体>
本実施形態に係るN−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体は、特段の制限はないが、具体的には国際公開第2008/063609号、国際公開第2009/115513号、国際公開第2009/098250号、国際公開第2009/000756号及び国際公開第2009/091670号に記載されている化合物が挙げられる。電子移動度が高く、可視域に吸収を有するため、電荷輸送と発電との両方に寄与する点から好ましい。
<ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド>
本実施形態に係るナフタレンテトラカルボン酸ジイミドは、特段の制限はないが、具体的には国際公開第2008/063609号、国際公開第2007/146250号及び国際公開第2009/000756号に記載されている化合物が挙げられる。電子移動度が高く、溶解性が高く塗布性に優れている点から好ましい。
<n型ポリマー>
本実施形態に係るn型ポリマーは、特段の制限はないが、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、ペリレンジイミド誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、ビピリジン誘導体及びボラン誘導体のうち少なくとも一つを構成ユニットとするn型ポリマーが挙げられる。
そのなかでも、ボラン誘導体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、N−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミド及びN−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体のうち少なくとも一つを構成ユニットとするポリマーが好ましく、N−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体及びN−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミドのうち少なくとも一つを構成ユニットとするn型ポリマーがより好ましい。これらの化合物を一種又は二種以上含んでもよい。
具体的には国際公開第2009/098253号、国際公開第2009/098250号、国際公開第2010/012710号及び国際公開第2009/098250号に記載されている化合物が挙げられる。可視域に吸収を有するため、発電に寄与し、粘度が高く、塗布性に優れている点から好ましい。n型半導体の最低空分子軌道(LUMO)の値は、特に限定はされないが、例えばサイクリックボルタモグラム測定法により算出される真空準位に対する値が、通常−3.85eV以上、好ましくは−3.80eV以上である。電子供与体層(p型半導体層)から効率良く電子受容体層(n型半導体層)へと電子を移動させるためには、各電子供与体層及び電子受容体層に用いられる材料の最低空軌道(LUMO)の相対関係が重要である。具体的には、電子供与体層の材料のLUMOが、電子受容体層の材料のLUMOより所定のエネルギーだけ上にあること、言い換えると、電子受容体の電子親和力が電子供与体の電子親和力より所定のエネルギーだけ大きいことが好ましい。開放電圧(Voc)は電子供与体層の材料の最高被占軌道(HOMO)と電子受容体層の材料のLUMOの差で決定されるため、電子受容体のLUMOを高くすると、Vocが高くなる傾向がある。一方、LUMOの値は通常−1.0eV以下、好ましくは−2.0eV以下、より好ましくは−3.0eV以下、更に好ましくは−3.3eV以下である。電子受容体のLUMOを低くすることで、電子の移動が起こりやすくなり、短絡電流(Jsc)が高くなる傾向がある。
n型半導体化合物のLUMOの値の算出方法は、理論的に計算値で求める方法と実際に測定する方法が挙げられる。理論的に計算値で求める方法としては、半経験的分子軌道法及び非経験的分子軌道法があげられる。実際に測定する方法としては、紫外可視吸収スペクトル測定法、サイクリックボルタモグラム測定法があげられる。そのなかでも好ましくは、サイクリックボルタモグラム測定法である。具体的には、例えば公知文献(国際公報第2011/016430号)に記載の方法で測定することができる。
n型半導体化合物のHOMOの値は、特に限定は無いが、通常−5.0eV以下、好ましくは−5.5eV以下である。一方、通常−7.0eV以上、好ましくは−6.6eV以上である。n型半導体化合物のHOMOの値が−7.0eV以上であることにより、n型材料の吸収も発電に利用出来る点で好ましい。n型半導体化合物のHOMOの値が−5.0eV以下であることにより、正孔の逆移動を阻止できる点で好ましい。
n型半導体化合物の電子移動度は、特段の制限はないが、通常1.0×10−6cm/Vs以上であり、1.0×10−5cm/Vs以上が好ましく、5.0×10−5cm/Vs以上がより好ましく、1.0×10−4cm/Vs以上がさらに好ましい。一方、通常1.0×10cm/Vs以下であり、1.0×10cm/Vs以下が好ましく、5.0×10cm/Vs以下がより好ましい。n型半導体化合物の電子移動度が1.0×10−6cm/Vs以上であることは、光電変換素子の電子拡散速度向上、短絡電流向上、変換効率向上等の効果が大きくなる傾向にある傾向にあるため、好ましい。移動度の測定方法としてはFET法が挙げられ、公知文献(特開2010−045186)に記載の方法により実施することができる。
n型半導体化合物の25℃でのトルエンに対する溶解度は、通常0.5重量%以上であり、0.6重量%以上が好ましく、0.7重量%以上がより好ましい。一方、通常90重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましく、70重量%以下がさらに好ましい。n型半導体化合物の25℃でのトルエンに対する溶解度を0.5重量%以上とすることにより、溶媒中でのn型半導体材料の分散安定性が向上し、凝集、沈降、分離等を起こしにくくなるため、好ましい。
<バッファ層(102、104)>
本実施形態に係る光電変換素子107は、1対の電極(101、105)、及びその間に配置された有機活性層103の他に、さらにバッファ層を1以上有することが好ましい。バッファ層としては、電子取り出し層104及び正孔取り出し層102に分類することができ、それぞれ、有機活性層103と電極(101、105)の間に設けることができる。バッファ層を設けることで、活性層と電極の間での電子や正孔の移動度が高まるほか、電極間の短絡を防止しうるという利点がある。
電子取り出し層104と正孔取り出し層102とは、1対の電極間(101、105)に、有機活性層103を挟むように配置される。すなわち、本実施形態に係る光電変換素子107が電子取り出し層104と正孔取り出し層102の両者を含む場合、電極101、正孔取り出し層102、有機活性層103、電子取り出し層104、電極105がこの順に配置されている。本実施形態に係る光電変換素子107が電子取り出し層104を含み正孔取り出し層102を含まない場合は、電極101、有機活性層103、電子取り出し層104、電極105がこの順に配置されている。電子取り出し層104と正孔取り出し層102とは積層順序が逆であってもよいし、また電子取り出し層104と正孔取り出し層102との少なくとも一方が異なる複数の膜により構成されていてもよい。
<電子取り出し層104>
電子取り出し層104の材料は、p半導体化合物とn半導体化合物を含む有機活性層103から電極101へ電子の取り出し効率を向上させることが可能な材料であれば特に限定されない。具体的には、無機化合物又は有機化合物が挙げられる。無機化合物の材料としては、Li、Na、K又はCs等のアルカリ金属の塩;酸化チタン(TiOx)や酸化亜鉛(ZnO)のようなn型の酸化物半導体が望ましい。
アルカリ金属塩としては、LiF、NaF、KF又はCsFのようなフッ化物塩が望ましい。このような材料の動作機構は不明であるが、Al等の電子取り出し電極(カソード105)と組み合わされてカソード105の仕事関数を小さくし、太陽電池素子内部に印加される電圧を上げる事が考えられる。
有機化合物の材料としては、具体的には、バソキュプロイン(BCP)、バソフェナントレン(Bphen)、(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)、ホウ素化合物、オキサジアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物(NTCDA)、ペリレンテトラカルボン酸無水物(PTCDA)、又はホスフィンオキサイド化合物若しくはホスフィンスルフィド化合物等の第16族元素とリン原子との間の二重結合を有するホスフィン化合物が挙げられる。なかでも好ましくは、芳香族基で置換されたホスフィンオキサイド化合物又は芳香族基で置換されたホスフィンスルフィド化合物等の芳香族基で置換された第16族元素とリン原子との間の二重結合を有するホスフィン化合物であり、より好ましくは、トリアリールホスフィンオキサイド化合物、トリアリールホスフィンスルフィド化合物、ジアリールホスフィンオキシドユニットを2つ以上有する芳香族炭化水素化合物、ジアリールホスフィンスルフィドユニットを2つ以上有する芳香族炭化水素化合物又はジアリールホスフィンオキシドユニットを2つ以上有する芳香族炭化水素化合物である。上記芳香族基にはフッ素原子又はパーフルオロアルキル基等のフッ素原子が置換されたアルキル基が置換されていてもよい。上記材料に加えてアルカリ金属又はアルカリ土類金属をドープしてもよい。
電子取り出し層104の材料のLUMOの値は、特に限定は無いが、通常−4.0eV以上、好ましくは−3.9eV以上である。一方、通常−1.9eV以下、好ましくは−2.0eV以下である。電子取り出し層104の材料のLUMOの値が−1.9eV以下であることにより、電荷移動が促進される点で好ましい。電子取り出し層104の材料のLUMOの値が−4.0eV以上であることにより、n型材料への逆電子移動が防がれる点で好ましい。
電子取り出し層104の材料のLUMOの値の算出方法としては、サイクリックボルタモグラム測定法が挙げられる。例えば、公知文献(国際公報第2011/016430号)に記載の方法を参考にして実施することができる。
電子取り出し層104の材料のHOMOの値は、特に限定は無いが、通常−9.0eV以上、好ましくは−8.0eV以上である。一方、通常−5.0eV以下、好ましくは−5.5eV以下である。電子取り出し層104の材料のHOMOの値が−5.0eV以下であることにより、正孔が移動してくることを阻止出来る点で好ましい。
電子取り出し層104の材料が有機化合物である場合の、この化合物のDSC法によるガラス転移温度(以下、Tgと記載する場合もある)は、特段の制限はないが、観測されないか、又は55℃以上であることが好ましい。DSC法によるガラス転移温度が観測されないとは、ガラス転移温度がないことを意味する。具体的には400℃以下のガラス転移温度の有無により判別する。DSC法によるガラス転移温度が観測されない材料は、熱的に高い安定性を有している点で好ましい。
又、DSC法によるガラス転移温度が55℃以上の化合物のなかでも、ガラス転移温度が好ましくは65℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上である化合物が望ましい。一方、ガラス転移温度の上限は特に限定はないが、通常400℃以下、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下である。また、電子取り出し層104の材料は、DSC法によるガラス転移温度が30℃以上55度未満に観測されないものであることが好ましい。
本明細書におけるガラス転移温度とは、化合物のアモルファス状態の固体において、熱エネルギーにより局所的な分子運動が開始される温度とされており、比熱が変化する点として定義される。Tgよりさらに温度が上がると、固体構造が変化して結晶化が起こる(この時の温度を結晶化温度(Tc)とする)。さらに温度が上がると、融点(Tm)で融解し液体状態に変化することが一般的である。但し、高温で分子が分解したり、昇華したりして、これらの相転移が見られないこともある。ガラス転移温度は公知の方法で測定すれば良く、たとえばDSC法が挙げられる。
DSC法とは、JIS K−0129“熱分析通則”に定義された熱物性の測定法(示差走査熱量測定法)である。ガラス転移温度は、ガラス状態から分子運動が開始する温度であり、比熱の変化する温度としてDSCで測定できる。ガラス転移温度をより明確に決める為には、一度ガラス転移点以上の温度に加熱したサンプルを急冷した後に測定することが望ましい。例えば、公知文献(国際公報第2011/016430号)に記載の方法により、実施することができる。
電子取り出し層に用いられる化合物のガラス転移温度が55℃以上であることにより、この化合物は、印加される電場、流れる電流、曲げや温度変化による応力等の外部ストレスに対して構造が変化しにくいため、耐久性の面で好ましい。さらに、化合物の薄膜の結晶化が進みにくい傾向も有すことから、使用温度範囲においてこの化合物がアモルファス状態と結晶状態との間で変化しにくくなることにより、電子取り出し層としての安定性が良くなるため、耐久性の面で好ましい。この効果は、材料のガラス転移温度が高ければ高いほど、より顕著に表れる。
電子取り出し層104の膜厚は特に限定はないが、通常0.01nm以上、好ましくは0.1nm以上、より好ましくは0.5nm以上である。一方、通常40nm以下、好ましくは20nm以下である。電子取り出し層104の膜厚が0.01nm以上であることでバッファ材料としての機能を果たすことになり、電子取り出し層104の膜厚が40nm以下であることで、電子が取り出し易くなり、光電変換効率が向上する。
<第16族元素とリン原子との間の二重結合を有するホスフィン化合物>
第16族元素とリン原子との間の二重結合を有するホスフィン化合物としては、下記一般式(B1)で表される化合物が好ましい。下記一般式(B1)で表される化合物を電子取り出し層104の材料として用いることは、光電変換効率が向上する点及び/又は光電変換素子の耐久性が向上する点で好ましい。
式(B1)中、pは1以上の整数を表し、通常6以下であり、5以下であることが好ましく、3以下であることがさらに好ましく、2以下であることが特に好ましい。
21及びR22は各々独立して、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は置換基を有していてもよい複素環基を表し、R21及びR22は互いに結合し環を形成してもよい。炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基としては、アルキル基(シクロアルキル基を含む)等の飽和脂肪族炭化水素基;アルケニル基(シクロアルケニル基を含む)又はアルキニル基等の不飽和脂肪族炭化水素基が挙げられる。なかでも、アルキル基等の飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。複素環基としては、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基が挙げられる。すなわちR21及びR22は、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基のような芳香族基でありうる。
なかでも、R21及びR22のうち少なくとも一つが置換基を有していてもよい飽和脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基であることが好ましい。R21及びR22のうち少なくとも一つが飽和脂肪族炭化水素基であると、溶解性が向上するために、塗布による成膜が容易となる点で好ましい。一方でR21及びR22のうち少なくとも一つが芳香族基であると、熱安定性が向上する点で好ましい。さらに芳香族基は平面性が高いため、R21及びR22のうち少なくとも一つが芳香族化合物である場合、後述する活性層103のn型半導体化合物とホスフィン化合物が相互作用しやすくなることが考えられる。この場合、バッファ層と活性層との間での電荷移動がより起こりやすくなるために、特に好ましい。
pが2以上の場合には複数のR21及び複数のR22が存在することとなるが、複数のR21及び複数のR22は各々独立して異なっていてもよい。また、複数のR21及び複数のR22のうちいずれか2つ以上が、互いに結合して環を形成してもよい。
アルキル基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基およびヘキシル基等が挙げられる。
シクロアルキル基としては、炭素数3〜20のものが好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、炭素数2〜20のものが好ましく、例えば、ビニル基又はスチリル基等が挙げられる。
シクロアルケニル基としては、炭素数3〜20のものが好ましく、例えば、シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、又はシクロヘキセニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、炭素数2〜20のものが好ましく、例えば、メチルエチニル基又はトリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜30のものが好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、ビフェニレニル基、トリフェニレニル基、アントリル基、ピレニル基、フルオレニル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオランテニル基、ナフタセニル基、ペリレニル基、ペンタセニル基又はクオーターフェニル基等が挙げられる。なかでも、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、アントリル基、ピレニル基、フルオレニル基、アセナフテニル基、フルオランテニル基又はペリレニル基が好ましい。
アルコキシ基としては、炭素数2〜20のものが好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基およびt−ブトキシ基、ベンジルオキシ基、エチルヘキシルオキシ基等の直鎖または分岐のアルコキシ基が挙げられる。
脂肪族複素環基としては、炭素数2〜30のものが好ましく、例えば、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、テトラヒドロフラニル基、ジオキサニル基、モルホリニル基又はチオモルホリニル基が挙げられる。なかでも、ピロリジニル基、ピペリジニル基又はピペラジニル基が好ましい。芳香族複素環基としては、炭素数2〜30のものが好ましく、例えば、ピリジル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、フェニルカルバゾリル基、フェノキサチイニル基、キサンテニル基、ベンゾフラニル基、チアントレニル基、インドリジニル基、フェノキサジニル基、フェノチアジニル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、フェナントロリニル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基又はキノキサリニル基等が挙げられる。なかでも、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピラゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、イミダゾリル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、フェナントロリニル基、キノキサリニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、フェニルカルバゾリル、キサンテニル基又はフェノキサジニル基が好ましい。
また、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基は、縮合多環芳香族基であってもよい。縮合多環芳香族基を形成する環としては、置換基を有していてもよい環状アルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基が好ましい。環状アルキル基としては、例えば、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。芳香族複素環基としては、例えば、ピリジル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピラゾリル基又はイミダゾリル基等が挙げられる。これらのなかでも、ピリジル基又はチエニル基が好ましい。
縮合多環芳香族基として、例えば、縮合多環芳香族炭化水素基および縮合多環芳香族複素環基が好適なものとして挙げられる。縮合多環芳香族炭化水素基としては、例えば、フェナントリル基、アントリル基、ピレニル基、フルオランテニル基、ナフタセニル基、ペリレニル基、ペンタセニル基又はトリフェニレニル基等が好適なものとして挙げられる。また、縮合多環芳香族複素環基として、例えば、フェノキサジニル基、フェノチアジニル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基又はフェナントロリニル基等が好適なものとして挙げられる。
縮合多環芳香族基の具体例としては以下のものが挙げられるが、これに限定されることはない。また、下記縮合多環芳香族基において、リン原子と結合する原子の位置は特に限定されない。
23は置換基を有していてもよいp価の炭化水素基、置換基を有していてもよいp価の複素環基、又は置換基を有していてもよい炭化水素基及び置換基を有していてもよい複素環基の少なくとも一方が連結したp価の基を表す。すなわちR23は、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基のような芳香族基でありうる。なお、R23は置換基を有していてもよいp価の縮合多環芳香族基であってもよい。R23は、好ましくは、置換基を有していてもよいp価の芳香族基であり、より好ましくは、置換基を有していてもよいp価の縮合多環芳香族基である。
炭化水素基としては、R21及びR22について説明した1価の炭化水素基又はそれに対応する2価以上6価以下の炭化水素基が挙げられる。炭化水素基の種類としては、R21及びR22と同様に脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基が挙げられる。
複素環基としては、R21及びR22について説明した1価の複素環基又はそれに対応する2価以上6価以下の複素環基が挙げられる。複素環基の種類としては、R21及びR22と同様に脂肪族複素環基又は芳香族複素環基が挙げられる。
縮合多環芳香族基としては、R21及びR22について説明した1価の縮合多環芳香族基又はそれに対応する2価以上6価以下の縮合多環芳香族基が挙げられる。
23が2価の基の場合、以下の具体例が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
21、R22及びR23についての説明における「置換基を有していてもよい」との用語は、置換基を1以上有していてもよいことを意味する。この置換基としては特に限定はないが、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、アミノ基、カルボキシル基、カルボニル基、アセチル基、スルホニル基、シリル基、ボリル基、ニトリル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
アルキル基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基およびシクロヘキシル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、炭素数2〜20のものが好ましく、例えば、ビニル基、スチリル基およびジフェニルビニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、炭素数2〜20のものが好ましく、例えば、メチルエチニル基、フェニルエチニル基およびトリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。
シリル基としては,炭素数2〜20のものが好ましく、例えば、トリメチルシリル基およびトリフェニルシリル基等が挙げられる。
ボリル基としては、例えば、ジメシチルボリル基等の芳香族基置換ボリル基が挙げられる。
アルコキシ基としては、炭素数2〜20のものが好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、エチルヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基およびt−ブトキシ基等の直鎖または分岐のアルコキシ基が挙げられる。
アミノ基としては、例えば、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基又はカルバゾリル基等の芳香族置換アミンが挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、これらは単環基に何ら限定されず、単環芳香族炭化水素基、縮合多環芳香族炭化水素基および環連結芳香族炭化水素基のいずれであってもよい。
単環芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基等が挙げられる。縮合多環芳香族炭化水素基としては、例えば、ビフェニル基、フェナントリル基、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基、ピレニル基又はペリレニル基等が挙げられる。環連結芳香族炭化水素基としては、例えば、ビフェニル基およびターフェニル等が挙げられる。これらのなかでも、フェニル基又はナフチル基が好ましい。
芳香族複素環基としては、炭素数5〜20のものが好ましく、例えば、ピリジル基、チエニル基、フリル基,オキサゾリル基、チアゾリル基、オキサジアゾリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基又はフェニルカルバゾリル基等が挙げられる。これらのなかでも、ピリジル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基又はフェナントリル基が好ましい。
式(B1)においてXは第16族元素を表し、具体的には、酸素、硫黄又はセレンが挙げられる。なかでも、酸素又は硫黄が好ましく、酸素が特に好ましい。式(B1)で表される化合物の具体例(Xは酸素、硫黄又はセレン等の第16族元素を表す。)を以下に例示する。
<正孔取り出し層102>
正孔取り出し層102の材料は、特に限定は無く有機活性層103からアノード101へ正孔の取り出し効率を向上させることが可能な材料であれば特に限定されない。具体的には、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、トリフェニレンジアミン又はポリアニリン等に、スルホン酸及び/又はヨウ素等がドーピングされた導電性ポリマー、スルホニル基を置換基に有するポリチオフェン誘導体、アリールアミン等の導電性有機化合物、後述のp型半導体化合物等が挙げられる。そのなかでも、スルホン酸をドーピングした導電性ポリマーが好ましく、ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)がより好ましい。また、金、インジウム、銀又はパラジウム等の金属等の薄膜も使用することができる。さらに、金属等の薄膜は、単独で形成してもよく、上記の有機材料と組み合わせて用いることもできる。
正孔取り出し層102の膜厚は特に限定はないが、通常2nm以上である。一方、通常40nm以下、好ましくは20nm以下である。正孔取り出し層102の膜厚が2nm以上であることでバッファ材料としての機能を果たすことになり、正孔取り出し層102の膜厚が40nm以下であることで、正孔が取り出し易くなり、光電変換効率が向上する。
電子取り出し層104と正孔取り出し層102の形成方法に制限はない。例えば、昇華性を有する材料を用いる場合は真空蒸着法等により形成することができる。また、例えば、溶媒に可溶な材料を用いる場合は、スピンコートやインクジェット等の湿式塗布法等により形成することができる。正孔取り出し層102に半導体材料を用いる場合は、上述の有機活性層の低分子有機半導体化合物と同様に、前駆体を用いて層を形成した後に前駆体を半導体化合物に変換してもよい。
<電極101、105>
本実施形態に係る電極(101及び105)は、光吸収により生じた正孔及び電子を捕集する機能を有するものである。したがって、一対の電極には、正孔の捕集に適した電極101(以下、アノードと記載する場合もある)と電子の捕集に適した電極105(以下、カソードと記載する場合もある)を用いることが好ましい。1対の電極は、いずれか一方が透光性であればよく、両方が透光性であっても構わない。透光性があるとは太陽光が40%以上透過する程度のものである。また、透明電極の太陽光線透過率が70%以上であることが、透明電極を透過させて活性層に光を到達させるためには、好ましい。なお、光の透過率は、通常の分光光度計で測定可能できる。
正孔の捕集に適した電極101(アノード)とは、一般には仕事関数がカソードよりも高い値を有する導電性材料で、有機活性層103で発生した正孔をスムーズに取り出す機能を有する電極である。
アノード101の材料を挙げると、例えば、酸化ニッケル、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)、インジウムージルコニウム酸化物(IZO)、酸化チタン、酸化インジウム又は酸化亜鉛等の導電性金属酸化物;金、白金、銀、クロム又はコバルト等の金属あるいはその合金が挙げられる。
これらの物質は高い仕事関数を有するため、好ましく、さらに、ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングしたPEDOT/PSSで代表されるような導電性高分子材料を積層することができるため、好ましい。このような導電性高分子を積層する場合には、その導電性高分子材料の仕事関数が高いことから、上記のような高い仕事関数の材料でなくとも、AlやMg等のカソードに適した金属も広く用いることが可能である。
ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングしたPEDOT/PSSや、ポリピロール又はポリアニリン等にヨウ素等のドーピングした導電性高分子材料をアノードの材料として使用することもできる。また、アノード101が透明電極である場合には、ITO、酸化亜鉛又は酸化錫等の透光性がある導電性金属酸化物を用いることが好ましく、特にITOが好ましい。
アノード101の膜厚は特に制限は無いが、通常10nm以上、好ましくは20nm以上、さらに好ましくは、50nm以上である。一方、通常10μm以下、好ましくは1μm以下、さらに好ましくは500nm以下である。アノード101の膜厚が10nm以上であることにより、シート抵抗が抑えられ、アノード101の膜厚が10μm以下であることにより、光透過率が低下せずに効率よく光を電気に変換することができる。透明電極に用いる場合には、光透過率とシート抵抗を両立する膜厚を選ぶ必要がある。アノード101のシート抵抗は、特段の制限はないが、通常1Ω/□以上、一方、1000Ω/□以下、好ましくは500Ω/□以下、さらに好ましくは100Ω/□以下である。
アノード101の形成方法は、蒸着若しくはスパッタ等の真空成膜方法又はナノ粒子や前駆体を含有するインクを塗布して成膜する方法等がある。
電子の捕集に適した電極105(カソード)とは、一般には仕事関数がアノードよりも高い値を有する導電性材料で、有機活性層103で発生した電子をスムーズに取り出す機能を有する電極であり、本実施形態に係る電子取り出し層104と隣接することを特徴とする。
カソード105の材料を挙げると、例えば、白金、金、銀、銅、鉄、錫、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム又はマグネシウム等の金属及びその合金;フッ化リチウムやフッ化セシウム等の無機塩;酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化リチウム又は酸化セシウムのような金属酸化物等が挙げられる。これらの材料は低い仕事関数を有する材料のため、好ましい。カソード105についてもアノード101と同様に、電子取り出し層104にチタニアのようなn型半導体で導電性を有するものを用いることにより、アノード101に適した高い仕事関数を有する材料も用いることができる。電極保護の観点から、アノード101材料として好ましくは、白金、金、銀、銅、鉄、錫、アルミニウム、カルシウム又はインジウム等の金属及びこれらの金属を用いた合金である。
カソード105の膜厚は特に制限は無いが、通常10nm以上、好ましくは20nm以上下、より好ましくは50nm以上である。一方、通常10μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは500nm以下である。透明電極に用いる場合には、光透過率とシート抵抗を両立する膜厚を選ぶ必要がある。カソード105の膜厚が10nm以上であることにより、シート抵抗が抑えられ、カソード105の膜厚が10μm以下であることにより、光透過率が低下せずに効率よく光を電気に変換することができる。
カソード105のシート抵抗は、特に制限は無いが、通常1000Ω/□以下、好ましくは500Ω/□以下、さらに好ましくは100Ω/□以下である。下限に制限は無いが、通常は1Ω/□以上である。
カソード105の形成方法は、蒸着若しくはスパッタ等の真空成膜方法又はナノ粒子や前駆体を含有するインクを塗布して成膜する方法等がある。
さらに、アノード101又はカソード105は2層以上積層してもよく、表面処理により特性(電気特性やぬれ特性等)を改良してもよい。
アノード101及びカソード105を積層した後に、この光電変換素子を通常50℃以上、好ましくは80℃以上、一方、通常300℃以下、好ましくは280℃以下、より好ましくは250℃以下の温度範囲において、加熱することが好ましい(この工程をアニーリング処理工程と称する場合がある)。このアニーリング処理工程の温度を50℃以上にすることで、電子取り出し層104と電極101及び/又は電子取り出し層104と活性層103の密着性が向上する効果が得られるため、好ましい。このアニーリング処理工程の温度が300℃以下にすることで、活性層の有機化合物が熱分解する可能性が低くなるため、好ましい。
なお、温度操作については上記範囲内で段階的に加熱してもよい。加熱する時間としては、通常1分以上、好ましくは3分以上、一方、通常3時間以下、好ましくは1時間以下である。このアニーリング処理は太陽電池性能のパラメータである開放電圧、短絡電流及びフィルファクターが一定の値になったところで終了させることが好ましい。また、このアニーリング処理の雰囲気は常圧下、かつ不活性ガス雰囲気で実施することが好ましい。
このアニーリング処理工程により、電子取り出し層104と電極101及び/又は電子取り出し層104と活性層103の密着性を向上させることで、光電変換素子の熱安定性や耐久性等が向上する効果とともに、有機活性層の自己組織化が促進される効果が得られる。加熱する方法としては、ホットプレート等の熱源にこの光電変換素子を載せてもよいし、オーブン等の加熱雰囲気下にこの光電変換素子を入れてもよい。また、バッチ式であっても連続方式であっても構わない。
<基板106>
本実施形態に係る光電変換素子は、通常は支持体となる基板106を有する。すなわち、基板上に、電極と、活性層、バッファ層とが形成される。基板の材料(基板材料)は本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。基板材料の好適な例を挙げると、石英、ガラス、サファイア又はチタニア等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂フィルム、塩化ビニル又はポリエチレン等のポリオレフィン、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリノルボルネン又はエポキシ樹脂等の有機材料;紙又は合成紙等の紙材料;ステンレス、チタン又はアルミニウム等の金属に、絶縁性を付与するために表面をコート又はラミネートしたもの等の複合材料等が挙げられる。ガラスとしてはソーダガラスや青板ガラスや無アルカリガラス等が挙げられる。ガラスの材質については、ガラスからの溶出イオンが少ない方がよいので無アルカリガラスの方が好ましい。
基板106の形状に制限はなく、例えば、板、フィルム、シート等の形状を用いることができる。基板106の膜厚に制限はない。ただし、通常5μm以上、なかでも20μm以上であり、一方、通常20mm以下、なかでも10mm以下に形成することが好ましい。基板の膜厚が5μm以上であると、半導体デバイスの強度が不足する可能性は少なくなるため、好ましい。基板の膜厚が20mm以下であることで、コストが抑えられ、かつ重量が重くならず、好ましい。又、基板がガラスの場合の膜厚は、通常0.01mm以上、好ましくは0.1mm以上であり、一方、また、通常1cm以下、好ましくは0.5cm以下である。ガラス基板の膜厚が0.01mm以上であると、機械的強度が増加し、割れにくくなるために、好ましい。ガラス基板の膜厚が0.5cm以下であると、重量が重くならずに好ましい。
<6.太陽電池モジュール>
[太陽電池モジュール13]
本実施形態に係る光電変換素子107は、太陽電池素子として薄膜太陽電池として使用されることが好ましい。図2は本発明の一実施形態としての薄膜太陽電池の構成を模式的に示す断面図である。図2に示すように、本実施形態の薄膜太陽電池14は、耐候性保護フィルム1と、紫外線カットフィルム2と、ガスバリアフィルム3と、ゲッター材フィルム4と、封止材5と、太陽電池素子6と、封止材7と、ゲッター材フィルム8と、ガスバリアフィルム9と、バックシート10とをこの順に備える。そして、耐候性保護フィルム1が形成された側(図中下方)から光が照射されて、太陽電池素子6が発電するようになっている。なお、後述するバックシート10としてアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシート等の防水性の高いシートを用いる場合は、用途によりゲッター材フィルム8及び/又はガスバリアフィルム9を用いなくてもよい。
[耐候性保護フィルム1]
耐候性保護フィルム1は天候変化から太陽電池素子6を保護するフィルムである。太陽電池素子6の構成部品のなかには、温度変化、湿度変化、自然光及び/又は風雨による侵食等により劣化するものがある。そこで、耐候性保護フィルム1で太陽電池素子6を覆うことにより、太陽電池素子6等を天候変化等から保護し、発電能力を高く維持するようにしている。
耐候性保護フィルム1は、薄膜太陽電池14の最表層に位置するため、耐候性、耐熱性、透明性、撥水性、耐汚染性及び/又は機械強度等の、薄膜太陽電池14の表面被覆材として好適な性能を備え、しかもそれを屋外暴露において長期間維持する性質を有することが好ましい。また、耐候性保護フィルム1は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、特に好ましくは95%である。
さらに、薄膜太陽電池14は光を受けて熱せられることが多いため、耐候性保護フィルム1も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、耐候性保護フィルム1の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点を高くすることで薄膜太陽電池14の使用時に耐候性保護フィルム1が融解・劣化する可能性を低減できる。
耐候性保護フィルム1を構成する材料は、天候変化から太陽電池素子6を保護することができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリル系樹脂、各種ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド−イミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース系樹脂、シリコーン系樹脂又はポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
なかでも好ましくはフッ素系樹脂が挙げられ、その具体例を挙げるとポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、4−フッ化エチレン−パークロロアルコキシ共重合体(PFA)、4−フッ化エチレン−6−フッ化プロピレン共重合体(FEP)、2−エチレン−4−フッ化エチレン共重合体(ETFE)、ポリ3−フッ化塩化エチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)又はポリフッ化ビニル(PVF)等が挙げられる。
なお、耐候性保護フィルム1は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。また、耐候性保護フィルム1は単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。耐候性保護フィルム1の厚みは特に規定されないが、通常10μm以上、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上であり、また、通常200μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。厚みを厚くすることで機械的強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まる傾向にある。
また耐候性保護フィルム1には、他のフィルムとの接着性の改良のために、コロナ処理及び/又はプラズマ処理等の表面処理を行なってもよい。
耐候性保護フィルム1は、薄膜太陽電池14においてできるだけ外側に設けることが好ましい。薄膜太陽電池14の構成部材のうちより多くのものを保護できるようにするためである。
[紫外線カットフィルム2]
紫外線カットフィルム2は紫外線の透過を防止するフィルムである。薄膜太陽電池14の構成部品のなかには紫外線により劣化するものがある。また、ガスバリアフィルム3、9等は種類によっては紫外線により劣化するものがある。そこで、紫外線カットフィルム2を薄膜太陽電池14の受光部分に設け、紫外線カットフィルム2で太陽電池素子6の受光面6aを覆うことにより、太陽電池素子6及び必要に応じてガスバリアフィルム3、9等を紫外線から保護し、発電能力を高く維持することができるようになっている。
紫外線カットフィルム2に要求される紫外線の透過抑制能力の程度は、紫外線(例えば、波長300nm)の透過率が50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、特に好ましくは10%以下である。また、紫外線カットフィルム2は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、特に好ましくは95%以上である。
さらに、薄膜太陽電池14は光を受けて熱せられることが多いため、紫外線カットフィルム2も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、紫外線カットフィルム2の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点が低すぎると薄膜太陽電池14の使用時に紫外線カットフィルム2が融解する可能性がある。また、紫外線カットフィルム2は、柔軟性が高く、隣接するフィルムとの接着性が良好であり、水蒸気や酸素をカットしうるものが好ましい。
紫外線カットフィルム2を構成する材料は、紫外線の強度を弱めることができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系又はエステル系の樹脂に紫外線吸収剤を配合して成膜したフィルム等が挙げられる。また、紫外線吸収剤を樹脂中に分散あるいは溶解させたものの層(以下、適宜「紫外線吸収層」という)を基材フィルム上に形成したフィルムを用いてもよい。
紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系のものを用いることができる。なかでもベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系が好ましい。この例としては、ベンゾフェノン系やベンゾトリアゾール系の種々の芳香族系有機化合物等が挙げられる。なお、紫外線吸収剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
まえに述べたように、紫外線吸収フィルムとしては紫外線吸収層を基材フィルム上に形成したフィルムを用いることもできる。このようなフィルムは、例えば、紫外線吸収剤を含む塗布液を基材フィルム上に塗布し、乾燥させることで作製できる。
基材フィルムの材質は特に限定されないが、耐熱性、柔軟性のバランスが良好なフィルムが得られる点で、例えばポリエステルが挙げられる。
塗布は任意の方法で行うことができる。例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法又はカーテンコート法等が挙げられる。また、これらの方法は1種を単独で行なってもよく、2種以上を任意に組み合わせて行うこともできる。
塗布液に用いる溶剤は、紫外線吸収剤を均一に溶解あるいは分散できるものであれば特に限定されない。例えば液状の樹脂を溶剤として用いることができ、その例を挙げると、ポリエステル系、アクリル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリカーボネート系又はポリスチレン系等の各種合成樹脂等が挙げられる。また、例えば、ゼラチンやセルロース誘導体等の天然高分子;水、水とエタノール等のアルコール混合溶液等も溶剤として用いることができる。さらに、溶剤として有機溶剤を使用してもよい。有機溶剤を使用すれば、色素や樹脂を溶解又は分散させることが可能となり、塗工性を向上させることが可能となる。なお、溶剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
塗布液にはさらに界面活性剤も含有させてもよい。界面活性剤の使用により、紫外線吸収色素の樹脂への分散性が向上する。これにより、紫外線吸収層において、微小な泡によるヌケ、異物等の付着による凹み及び/又は乾燥工程でのハジキ等の発生が抑制される。界面活性剤としては、公知の界面活性剤(カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤又はノニオン系界面活性剤)を用いることができる。なかでも、シリコーン系界面活性剤又はフッ素系界面活性剤が好ましい。なお、界面活性剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
なお、塗布液を基材フィルムに塗布した後の乾燥は、例えば熱風乾燥、赤外線ヒーターによる乾燥等の公知の乾燥方法が採用できる。なかでも、乾燥速度が速い熱風乾燥が好適である。
紫外線カットフィルム2の具体的な商品の例を挙げると、カットエース(MKVプラスティック株式会社)等が挙げられる。
なお、紫外線カットフィルム2は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。また、紫外線カットフィルム2は単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。紫外線カットフィルム2の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上であり、また、通常200μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。厚みを厚くすることで紫外線の吸収が高まる傾向にあり、薄くすることで可視光の透過率を増加させられる傾向にある。
紫外線カットフィルム2は、太陽電池素子6の受光面6aの少なくとも一部を覆う位置に設ければよいが、好ましくは太陽電池素子6の受光面6aの全てを覆う位置に設ける。ただし、太陽電池素子6の受光面6aを覆う位置以外の位置にも紫外線カットフィルム2が設けられていてもよい。
[ガスバリアフィルム3]
ガスバリアフィルム3は水及び酸素の透過を防止するフィルムである。
太陽電池素子6は湿気及び酸素に弱い傾向があり、特に、ZnO:Al等の透明電極や、有機太陽電池素子が水分及び酸素により劣化することがある。そこで、ガスバリアフィルム3で太陽電池素子6を被覆することにより、太陽電池素子6を水及び酸素から保護し、発電能力を高く維持することができる。
ガスバリアフィルム3に要求される防湿能力の程度は、太陽電池素子6の種類等に応じて様々である。例えば、太陽電池素子6が有機太陽電池素子である本実施形態の場合には、単位面積(1m)の1日あたりの水蒸気透過率が、1×10−1g/m/day以下であることが好ましく、1×10−2g/m/day以下であることがより好ましく、1×10−3g/m/day以下であることが更に好ましく、1×10−4g/m/day以下であることがなかでも好ましく、1×10−5g/m/day以下であることがとりわけ好ましく、1×10−6g/m/day以下であることが特に好ましい。水蒸気が透過しなければしないほど、太陽電池素子6及び太陽電池素子6のZnO:Al等の透明電極の水分との反応に起因する劣化が抑えられるので、発電効率が上がると共に寿命が延びる。
ガスバリアフィルム3に要求される酸素透過性の程度は、太陽電池素子6の種類等に応じて様々である。例えば、太陽電池素子6が有機太陽電池素子である本実施形態の場合には、単位面積(1m)の1日あたりの酸素透過率が、1×10−1cc/m/day/atm以下であることが好ましく、1×10−2cc/m/day/atm以下であることがより好ましく、1×10−3cc/m/day/atm以下であることが更に好ましく、1×10−4cc/m/day/atm以下であることがなかでも好ましく、1×10−5cc/m/day/atm以下であることがとりわけ好ましく、1×10−6cc/m/day/atm以下であることが特に好ましい。酸素が透過しなければしないほど、太陽電池素子6及び太陽電池素子6のZnO:Al等の透明電極の酸化による劣化が抑えられる。
従来はこのように高い防湿及び酸素遮断能力を有するガスバリアフィルム3の実装が困難であったため、有機太陽電池素子のように優れた太陽電池素子を備えた太陽電池を実現することが困難であったが、このようなガスバリアフィルム3を適用することにより有機太陽電池素子等の優れた性質を活かした薄膜太陽電池14の実施が容易となる。
また、ガスバリアフィルム3は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上、なかでも好ましくは85%以上、とりわけ好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、そのなかでも特に好ましくは97%以上である。太陽光をより多く電気エネルギーに変換するためである。
さらに、薄膜太陽電池14は光を受けて熱せられることが多いため、ガスバリアフィルム3も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、ガスバリアフィルム3の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点を高くすることで薄膜太陽電池14の使用時にガスバリアフィルム3が融解・劣化する可能性を低減できる。
ガスバリアフィルム3の具体的な構成は、太陽電池素子6を水から保護できる限り任意である。ただし、ガスバリアフィルム3を透過しうる水蒸気や酸素の量を少なくできるフィルムほど製造コストが高くなるため、これらの点を総合的に勘案して適切なものを使用することが好ましい。
以下、ガスバリアフィルム3の構成について、例を挙げて説明する。
ガスバリアフィルム3の構成として好ましいものは以下の2例が挙げられる。一つ目の例は、プラスチックフィルム基材に無機バリア層を配置したフィルムである。この際、無機バリア層は、プラスチックフィルム基材の片面のみに形成してもよいし、プラスチックフィルム基材の両面に形成してもよい。両面に形成するときは、両面に形成する無機バリア層の数が、それぞれ一致していていもよく、異なっていてもよい。
二つ目の例は、プラスチックフィルム基材に、無機バリア層とポリマー層とが互いに隣接して配置された2層からなるユニット層が形成されたフィルムである。この際、無機バリア層とポリマー層とが互いに隣接して配置された2層からなるユニット層を1単位として、このユニット層が1単位(無機バリア層1層とポリマー層1層を合わせて1単位の意味)のみを形成してもよいが、2単位以上形成してもよい。例えば2〜5単位、積層してもよい。
ユニット層は、プラスチックフィルム基材の片面のみに形成してもよいし、プラスチックフィルム基材の両面に形成してもよい。両面に形成するときは、両面に形成する無機バリア層及びポリマー層の数が、それぞれ一致していていもよく、異なっていてもよい。また、プラスチックフィルム基材上にユニット層を形成する場合、無機バリア層を形成してからその上にポリマー層を形成してもよいし、ポリマー層を形成してから無機バリア層を形成してもよい。
(プラスチックフィルム基材)
ガスバリアフィルム3に使用されるプラスチックフィルム基材は、上記の無機バリア層及びポリマー層を保持しうるフィルムであれば特に制限はなく、ガスバリアフィルム3の使用目的等から適宜選択することができる。プラスチックフィルム基材の材料の例を挙げると、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂又はアクリロイル化合物が挙げられる。また、スピロビインダン、スピロビクロマンを含む縮合ポリマーを用いるのも好ましい。ポリエステル樹脂のなかでも、二軸延伸を施したポリエチレンテレフタレート(PET)又は同じく二軸延伸したポリエチレンナフタレート(PEN)は、熱的寸度安定性に優れるため、プラスチックフィルム基材として好ましく用いられる。なおプラスチックフィルム基材の材料は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
プラスチックフィルム基材の厚みは特に規定されないが、通常10μm以上、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上であり、また、通常200μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。厚みを厚くすることで機械的強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まる傾向にある。
プラスチックフィルム基材は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上、なかでも好ましくは85%以上、とりわけ好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、そのなかでも特に好ましくは97%以上である。太陽光をより多く電気エネルギーに変換するためである。
プラスチックフィルム基材には、無機バリア層との密着性向上のため、アンカーコート剤の層(アンカーコート層)を形成してもよい。通常、アンカーコート層はアンカーコート剤を塗布して形成される。アンカーコート剤としては、例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、イソシアネート含有樹脂及びこれらの共重合体等が挙げられる。なかでも、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂及びアクリル樹脂の中から選ばれる少なくとも1種類以上の樹脂と、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂及びイソシアネート基含有樹脂の中から選ばれる少なくとも1種類以上の樹脂とを組み合わせたものが好ましい。なお、アンカーコート剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
アンカーコート層の厚さは、通常0.005μm以上、好ましくは0.01μm以上であり、通常5μm以下、好ましくは1μm以下である。この範囲の上限値以下の厚さであれば滑り性が良好であり、アンカーコート層自体の内部応力によるプラスチックフィルム基材からの剥離もほとんどない。また、この範囲の下限値以上の厚さであれば、均一な厚さを保つことができ好ましい。
また、プラスチックフィルム基材へのアンカーコート剤の塗布性、接着性を改良するため、アンカーコート剤の塗布前に、プラスチックフィルム基材に通常の化学処理、放電処理等の表面処理を施してもよい。
(無機バリア層)
無機バリア層は通常は金属酸化物、窒化物又は酸化窒化物により形成される層である。なお、無機バリア層を形成する金属酸化物、窒化物及び酸化窒化物は、1種でもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
金属酸化物としては、例えば、Si、Al、Mg、In、Ni、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce又はTa等の酸化物が挙げられる。なかでも、高いバリア性と高透明性とを両立させるために、酸化アルミニウム又は酸化ケイ素を含むことが好ましく、特に水分の透過性、光線透過性の観点から、酸化ケイ素を含むことが好ましい。
各々の金属原子と酸素原子との比率も任意であるが、無機バリア層の透明度を向上させ着色を防ぐためには、酸素原子の比率が酸化物の化学量論的な比率から極端に少なくないことが望ましい。一方、無機バリア層の緻密性を向上させバリア性を高くするためには、酸素原子を少なくすることが望ましい。この観点から、例えば金属酸化物としてSiOを用いる場合にはxの値は1.5〜1.8が特に好ましい。また、例えば金属酸化物としてAlOを用いる場合にはxの値は1.0〜1.4が特に好ましい。
また、2種以上の金属酸化物より無機バリア層を構成する場合、金属酸化物としては酸化アルミニウム及び酸化ケイ素を含むことが望ましい。なかでも無機バリア層が酸化アルミニウム及び酸化ケイ素からなる場合、無機バリア層中のアルミニウムとケイ素との比率は任意に設定することができるが、Si/Alの比率は、通常1/9以上、好ましくは2/8以上であり、また、通常9/1以下、好ましくは2/8以下である。
無機バリア層の厚みを厚くするとバリア性が高まる傾向にあるが、曲げた際にクラックを生じにくくし割れを防ぐためには、厚みを薄くすることが望ましい。そこで無機バリア層の適正な厚みとしては、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常1000nm以下、好ましくは200nm以下である。
無機バリア層の成膜方法に制限は無いが、一般的にスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等で行うことができる。例えばスパッタリング法では1種類のあるいは複数の金属ターゲットと酸素ガスを原料とし、プラズマを用いた反応性スパッタ方式で形成することができる。
(ポリマー層)
ポリマー層にはいずれのポリマーでも使用することができ、例えば真空チャンバー内で成膜できるものも用いることができる。なお、ポリマー層を構成するポリマーは、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。ポリマーを与える化合物としては多種多様なものを用いることができるが、例えば以下の(i)〜(vii)のようなものが例示される。なお、モノマーは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(i)例えばヘキサメチルジシロキサン等のシロキサンが挙げられる。ヘキサメチルジシロキサンを用いる場合のポリマー層の形成方法の例を挙げると、RF電極を用いた平行平板型のプラズマ装置にヘキサメチルジシロキサンを蒸気として導入し、プラズマ中で重合反応を起こさせ、プラスチックフィルム基材上に堆積させることでポリマー層をポリシロキサン薄膜として形成できる。
(ii)例えばジパラキシリレン等のパラキシリレンが挙げられる。ジパラキシリレンを用いる場合のポリマー層の形成方法の例を挙げると、まず高真空中でジパラキシリレンの蒸気を650℃〜700℃で加熱することで熱分解させて熱ラジカルを発生させる。そして、そのラジカルモノマー蒸気をチャンバー内に導いて、プラスチックフィルム基材へと吸着させると同時にラジカル重合反応を進行させてポリパラキシリレンを堆積させることでポリマー層を形成できる。
(iii)例えば二種のモノマーを交互に繰り返し付加重合させることができるモノマーが挙げられる。これにより得られるポリマーは重付加ポリマーである。重付加ポリマーとしては、例えば、ポリウレタン(ジイソシアナート/グリコール)、ポリ尿素(ジイソシアナート/ジアミン)、ポリチオ尿素(ジチオイソシアナート/ジアミン)、ポリチオエーテルウレタン(ビスエチレンウレタン/ジチオール)、ポリイミン(ビスエポキシ/第一アミン)、ポリペプチドアミド(ビスアゾラクトン/ジアミン)又はポリアミド(ジオレフィン/ジアミド)等が挙げられる。
(iv)例えばアクリレートモノマーが挙げられる。アクリレートモノマーには単官能、2官能又は多官能のアクリレートモノマーがあるが、いずれを用いてもよい。ただし、適切な蒸発速度、硬化度及び/又は硬化速度等を得るために、上述のアクリレートモノマーを2種以上組み合わせて併用することが好ましい。また、単官能アクリレートモノマーとしては、例えば脂肪族アクリレートモノマー、脂環式アクリレートモノマー、エーテル系アクリレートモノマー、環状エーテル系アクリレートモノマー、芳香族系アクリレートモノマー、水酸基含有アクリレートモノマー又はカルボキシ基含有アクリレートモノマー等があるが、いずれも用いることができる。
(v)例えばエポキシ系やオキセタン系等の、光カチオン硬化ポリマーが得られるモノマーが挙げられる。エポキシ系モノマーとしては、例えば、脂環式エポキシ系モノマー、2官能性モノマー又は多官能性オリゴマー等が挙げられる。また、オキセタン系モノマーとしては、例えば、単官能オキセタン、2官能オキセタン又はシルセスキオキサン構造を有するオキセタン等が挙げられる。
(vi)例えば酢酸ビニルが挙げられる。モノマーとして酢酸ビニルを用いると、その重合体をケン化することでポリビニルアルコールが得られ、このポリビニルアルコールをポリマーとして使用できる。
(vii)例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸又は無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸等が挙げられる。これらは、エチレンとの共重合体を構成させ、この共重合体をポリマーとして使用できる。さらに、これらの混合物、あるいはグリシジルエーテル化合物を混合した混合物、さらにはエポキシ化合物との混合物もポリマーとして用いることができる。
上述のモノマーを重合してポリマーを生成させる際、モノマーの重合方法に制限は無い。ただし、通常は、モノマーを含む組成物を塗布又は蒸着して成膜した後で重合を行うようにする。重合方法の例を挙げると、熱重合開始剤を用いたときはヒーター等による接触加熱又は赤外線若しくはマイクロ波等の放射加熱等により重合を開始させる。また、光重合開始剤を用いたときは活性エネルギー線を照射して重合を開始させる。活性エネルギー線を照射する場合には様々な光源を使用することができ、例えば、水銀アークランプ、キセノンアークランプ、蛍光ランプ、炭素アークランプ、タングステンーハロゲン輻射ランプ又は日光による照射光等を用いることができる。また、電子線照射や大気圧プラズマ処理を行うこともできる。
ポリマー層の形成方法は、例えば、塗布法、真空成膜法等が挙げられる。塗布法でポリマー層を形成する場合、例えば、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、カーテンフローコート、スプレーコート、バーコート等の方法を用いることができる。また、ポリマー層形成用の塗布液をミスト状にして塗布するようにしてもよい。この場合の液滴の平均粒径は適切な範囲に調整すればよく、例えば重合性モノマーを含有する塗布液をミスト状にしてプラスチックフィルム基材上に成膜する場合には、液滴の平均粒径は通常5μm以下、好ましくは1μm以下である。
他方、真空成膜法でポリマー層を形成する場合、例えば、蒸着やプラズマCVD等の成膜方法が挙げられる。
ポリマー層の厚みについては特に限定はないが、通常10nm以上であり、また、通常5000nm以下、好ましくは2000nm以下、より好ましくは1000nm以下である。ポリマー層の厚みを厚くすることで、厚みの均一性が得やすくなり無機バリア層の構造欠陥を効率よくポリマー層で埋めることができ、バリア性が向上する傾向にある。また、ポリマー層の厚みを薄くする事で、曲げ等の外力によりポリマー層自身がクラックを発生しにくくなるためバリア性が向上しうる。
なかでも好適なガスバリアフィルム3としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)或いはポリエチレンナフタレート(PEN)等の基材フィルムにSiOを真空蒸着したフィルム等が挙げられる。
なお、ガスバリアフィルム3は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。また、ガスバリアフィルム3は単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
ガスバリアフィルム3の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上であり、また、通常200μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。厚みを厚くすることでガスバリア性が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まりまた可視光の透過率が向上する傾向にある。
ガスバリアフィルム3は、太陽電池素子6を被覆して湿気及び酸素から保護できればその形成位置に制限は無いが、太陽電池素子6の正面(受光面側の面。図2では下側の面)及び背面(受光面とは反対側の面。図2では上側の面)を覆うことが好ましい。薄膜太陽電池14においてはその正面及び背面が他の面よりも大面積に形成されることが多いためである。本実施形態ではガスバリアフィルム3が太陽電池素子6の正面を覆い、後述するガスバリアフィルム9が太陽電池素子6の背面を覆うようになっている。なお、後述するバックシート10としてアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシート等の防水性の高いシートを用いる場合は、用途によりゲッター材フィルム8及び/又はガスバリアフィルム9を用いなくてもよい。
[ゲッター材フィルム4]
ゲッター材フィルム4は水分及び/又は酸素を吸収するフィルムである。太陽電池素子6の構成部品のなかには上述のように水分で劣化するものがあり、また、酸素によって劣化するものもある。そこで、ゲッター材フィルム4で太陽電池素子6を覆うことにより、太陽電池素子6等を水分及び/又は酸素から保護し、発電能力を高く維持するようにしている。
ここで、ゲッター材フィルム4は上述のガスバリアフィルム3とは異なり、水分の透過を妨げるものではなく、水分を吸収するものである。水分を吸収するフィルムを用いることにより、ガスバリアフィルム3等で太陽電池素子6を被覆した場合に、ガスバリアフィルム3及び9で形成される空間に僅かに浸入する水分をゲッター材フィルム4が捕捉して水分による太陽電池素子6への影響を排除できる。
ゲッター材フィルム4の水分吸収能力の程度は、通常0.1mg/cm以上、好ましくは0.5mg/cm以上、より好ましくは1mg/cm以上である。この数値が高いほど水分吸収能力が高く太陽電池素子6の劣化を抑制しうる。また、上限に制限は無いが、通常10mg/cm以下である。また、ゲッター材フィルム4が酸素を吸収することにより、ガスバリアフィルム3及び9等で太陽電池素子6を被覆した場合に、ガスバリアフィルム3及び9で形成される空間に僅かに浸入する酸素をゲッター材フィルム4が捕捉して酸素による太陽電池素子6への影響を排除できる。
さらに、ゲッター材フィルム4は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上、なかでも好ましくは85%以上、とりわけ好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、そのなかでも特に好ましくは97%以上である。太陽光をより多く電気エネルギーに変換するためである。
さらに、薄膜太陽電池14は光を受けて熱せされることが多いため、ゲッター材フィルム4も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、ゲッター材フィルム4の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点を高くすることで薄膜太陽電池14の使用時にゲッター材フィルム4が融解・劣化する可能性を低減できる。
ゲッター材フィルム4を構成する材料は、水分及び/又は酸素を吸収することができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、水分を吸収する物質としてアルカリ金属、アルカリ土類金属又はアルカリ土類金属の酸化物;アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;シリカゲル、ゼオライト系化合物、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム又は硫酸ニッケル等の硫酸塩;アルミニウム金属錯体又はアルミニウムオキシドオクチレート等の有機金属化合物等が挙げられる。具体的には、アルカリ土類金属としては、Ca、Sr又はBa等が挙げられる。アルカリ土類金属の酸化物としては、CaO、SrO又はBaO等が挙げられる。その他にZr−Al−BaOやアルミニウム金属錯体等も挙げられる。具体的な商品名を挙げると、例えば、OleDry(双葉電子社製)等が挙げられる。
酸素を吸収する物質としては、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、モレキュラーシーブ、酸化マグネシウム又は酸化鉄等が挙げられる。またFe、Mn、Zn、及びこれら金属の硫酸塩・塩化物塩・硝酸塩等の無機塩も挙げられる。
なお、ゲッター材フィルム4は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。また、ゲッター材フィルム4は単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
ゲッター材フィルム4の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上であり、また、通常200μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。厚みを厚くすることで機械的強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まる傾向にある。
ゲッター材フィルム4は、ガスバリアフィルム3及び9で形成される空間内であればその形成位置に制限は無いが、太陽電池素子6の正面(受光面側の面。図2では下側の面)及び背面(受光面とは反対側の面。図2では上側の面)を覆うことが好ましい。薄膜太陽電池14においてはその正面及び背面が他の面よりも大面積に形成されることが多いため、これらの面を介して水分及び酸素が浸入する傾向があるからである。この観点から、ゲッター材フィルム4はガスバリアフィルム3と太陽電池素子6との間に設けることが好ましい。本実施形態ではゲッター材フィルム4が太陽電池素子6の正面を覆い、後述するゲッター材フィルム8が太陽電池素子6の背面を覆い、ゲッター材フィルム4、8がそれぞれ太陽電池素子6とガスバリアフィルム3、9との間に位置するようになっている。なお、後述するバックシート10としてアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシート等防水性の高いシートを用いる場合は、用途によりゲッター材フィルム8及び/又はガスバリアフィルム9を用いなくてもよい。
ゲッター材フィルム4は吸水剤又は乾燥剤の種類に応じて任意の方法で形成することができるが、例えば、吸水剤又は乾燥剤を分散したフィルムを粘着剤で添付する方法、吸水剤又は乾燥剤の溶液をスピンコート法、インクジェット法又はディスペンサー法等で塗布する方法等を用いることができる。また真空蒸着法やスパッタリング法等の成膜法を使用してもよい。
吸水剤又は乾燥剤のためのフィルムとしては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂又はポリカーボネート系樹脂等を用いることができる。なかでも、ポリエチレン系樹脂、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂又はポリカーボネート系樹脂のフィルムが好ましい。なお、樹脂は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
[封止材5]
封止材5は、太陽電池素子6を補強するフィルムである。太陽電池素子6は薄いため通常は強度が弱く、ひいては薄膜太陽電池の強度が弱くなる傾向があるが、封止材5により強度を高く維持することが可能である。
また、封止材5は、薄膜太陽電池14の強度保持の観点から強度が高いことが好ましい。具体的強度については、封止材5以外の耐候性保護フィルム1やバックシート10の強度とも関係することになり一概には規定しにくいが、薄膜太陽電池14全体が良好な曲げ加工性を有し、折り曲げ部分の剥離を生じないような強度を有するのが望ましい。
また、封止材5は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上、なかでも好ましくは85%以上、とりわけ好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、そのなかでも特に好ましくは97%以上である。太陽光をより多く電気エネルギーに変換するためである。
さらに、薄膜太陽電池14は光を受けて熱せられることが多いため、封止材5も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、封止材5の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点を高くすることで薄膜太陽電池14の使用時に封止材5が融解・劣化する可能性を低減できる。
封止材5の厚みは特に規定されないが、通常100μm以上、好ましくは150μm以上、より好ましくは200μm以上であり、また、通常700μm以下、好ましくは600μm以下、より好ましくは500μm以下である。厚みを厚くすることで薄膜太陽電池14全体の強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まりまた可視光の透過率が向上する傾向にある。
封止材5を構成する材料としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂組成物をフィルムにしたもの(EVAフィルム)等を用いることができる。EVAフィルムには通常は耐候性の向上のために架橋剤を配合して架橋構造を構成させる。この架橋剤としては、一般に、100℃以上でラジカルを発生する有機過酸化物が用いられる。このような有機過酸化物としては、例えば、2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ジハイドロペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン又は3−ジ−t−ブチルペルオキシド等を用いることができる。これらの有機過酸化物の配合量は、EVA樹脂100重量部に対して、通常5重量部以下、好ましくは3重量部以下であり、通常1重量部以上である。なお、架橋剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
このEVA樹脂組成物には、接着力向上の目的で、シランカップリング剤を含有させてもよい。この目的に供されるシランカップリング剤としては、例えば、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス−(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン又はβ−(3,4−エトキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらのシランカップリング剤の配合量は、EVA樹脂100重量部に対して、通常5重量部以下、好ましくは2重量部以下であり、通常0.1重量部以上である。なお、シランカップリング剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
更に、EVA樹脂のゲル分率を向上させ、耐久性を向上するために、EVA樹脂組成物に架橋助剤を含有させてもよい。この目的に供される架橋助剤としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート又はトリアリルイソシアネート等の3官能の架橋助剤等の単官能の架橋助剤等が挙げられる。これらの架橋助剤の配合量は、EVA樹脂100重量部に対して、通常10重量部以下、好ましくは5重量部以下であり、また、通常1重量部以上である。なお、架橋助剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
更に、EVA樹脂の安定性を向上する目的で、EVA樹脂組成物に、例えばハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−ベンゾキノン又はメチルハイドロキノン等を含有させてもよい。これらの配合量は、EVA樹脂100重量部に対して、通常5重量部以下である。
しかし、EVA樹脂の架橋処理には1〜2時間程度の比較的長時間を要するため、薄膜太陽電池14の生産速度及び生産効率を低下させる原因となる場合がある。また、長期間使用の際には、EVA樹脂組成物の分解ガス(酢酸ガス)又はEVA樹脂自体が有する酢酸ビニル基が、太陽電池素子6に悪影響を与えて発電効率が低下させる場合がある。
そこで、封止材5としては、EVAフィルムの他に、プロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体からなる共重合体のフィルムを用いることもできる。この共重合体としては、例えば、下記成分1及び成分2が配合された熱可塑性樹脂組成物が挙げられる。
・成分1:プロピレン系重合体が、通常0重量部以上、好ましくは10重量部以上であり、また、通常70重量部以下、好ましくは50重量部以下である。
・成分2:軟質プロピレン系共重合体が、30重量部以上、好ましくは50重量部以上であり、また、通常100重量部以下、好ましくは90重量部以下である。
なお、成分1及び成分2の合計量は100重量部である。上記のように、成分1および成分2が好ましい範囲にあると、封止材5のシートへの成形性が良好であるとともに、得られる封止材5の耐熱性、透明性及び柔軟性が良好となり、薄膜太陽電池14に好適である。
上記の成分1及び成分2が配合された熱可塑性樹脂組成物は、メルトフローレート(ASTM D 1238、230度、荷重2.16kg)が、通常0.0001g/10分以上であり、また、通常1000g/10分以下、好ましくは900g/10分以下、より好ましくは800g/10分以下である。成分1及び成分2が配合された熱可塑性樹脂組成物の融点は、通常100℃以上、好ましくは110℃以上である。また通常140℃以下、好ましくは135℃以下である。また成分1及び成分2が配合された熱可塑性樹脂組成物の密度は、0.98g/cm以下が好ましく、0.95g/cm以下がより好ましく、0.94g/cm以下がさらに好ましい。
この封止材5においては、上記成分1及び成分2に、プラスチック等に対する接着促進剤としてカップリング剤を配合することが可能である。カップリング剤は、シラン系、チタネート系、クロム系の各カップリング剤が好ましく用いられ、特にシラン系のカップリング剤(シランカップリング剤)が好適に用いられる。
上記シランカップリング剤としては公知のものが使用でき、特に制限はないが、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシーエトキシシラン)、γ−グリシドキシプロピルートリピルトリーメトキシシラン又はγ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。なお、カップリング剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、これらは熱可塑性樹脂組成物(成分1及び成分2の合計量)100重量部に対して、上記シランカップリング剤を通常0.1重量部以上含み、また、通常5重量部以下、好ましくは3重量部以下含むことが望ましい。
また、上記カップリング剤は、有機過酸化物を用いて、熱可塑性樹脂組成物にグラフト反応させてもよい。この場合、熱可塑性樹脂組成物(成分1及び成分2の合計量)100重量部に対して、上記カップリング剤を0.1〜5重量部含むことが望ましい。シラングラフト化された熱可塑性樹脂組成物を用いても、ガラスやプラスチックに対して、シランカップリング剤ブレンドと同等以上の接着性が得られる。
有機過酸化物を用いる場合、有機過酸化物は、熱可塑性樹脂組成物(成分1及び成分2の合計量)100重量部に対して、通常0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上であり、また、通常5重量部以下、好ましくは3重量部以下である。
また、封止材5としてエチレン・α−オレフィン共重合体からなる共重合体を用いることもできる。この共重合体としては、下記に示す成分A及び成分Bからなる封止材用樹脂組成物と基材とを積層してなる、ホットタック性が5〜25℃のラミネートフィルムが例示される。
・成分A:エチレン系樹脂。
・成分B:以下の(a)〜(d)の性状を有するエチレンとα−オレフィンとの共重合体。
(a)密度が0.86〜0.935g/cm
(b)メルトフローレート(MFR)が1〜50g/10分。
(c)温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線のピークが1つであり、かつこのピーク温度が100℃以下である。
(d)温度上昇溶離分別(TREF)による積分溶出量が、90℃のとき90%以上である。
成分Aと成分Bとの配合割合(成分A/成分B)は、重量比で、通常50/50以上、好ましくは55/45以上、より好ましくは60/40以上であり、また、通常99/1以下、好ましくは90/10以下、より好ましくは85/15以下である。成分Bの配合量を多くすることで透明性やヒートシール性が高まる傾向にあり、成分Bの配合量を少なくすることでフィルムの作業性が高まる傾向にある。
成分Aと成分Bを配合して生成される封止材用樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は、通常2g/10分以上、好ましくは3g/10分以上であり、通常50g/10分以下、好ましくは40g/10分以下である。なおMFRの測定と評価は、JIS K7210(190℃、2.16kg荷重)に準拠する方法によって実施することができる。
封止材用樹脂組成物の融点は、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上であり、また、通常300℃以下、好ましくは250℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。融点を高くすることで薄膜太陽電池14の使用時に融解・劣化する可能性を低減できる。
封止材用樹脂組成物の密度は、0.80g/cm以上が好ましく、0.85g/cm以上がより好ましく、また、0.98g/cm以下が好ましく、0.95g/cm以下がより好ましく、0.94g/cm以下がさらに好ましい。なお、密度の測定と評価は、JIS K7112に準拠する方法によって実施することができる。
さらに、エチレン・α−オレフィン共重合体を用いた封止材5において、プロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体を用いた場合と同様に、カップリング剤を用いることが可能である。
上述した封止材5は、材料由来の分解ガスを発生することがないため、太陽電池素子6への悪影響がなく、良好な耐熱性、機械強度、柔軟性(太陽電池封止性)及び透明性を有する。また、材料の架橋工程を必要としないため、シート成形時及び薄膜太陽電池14の製造時間が大きく短縮できるとともに、使用後の薄膜太陽電池14のリサイクルも容易となる。
なお、封止材5は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。また、封止材5は単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。封止材5の厚みは、通常2μm以上、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、また、通常500μm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは100μm以下である。厚みを厚くすることで機械的強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まりまた光線透過率が高まる傾向にある。
封止材5を設ける位置に制限は無いが、通常は太陽電池素子6を挟み込むように設ける。太陽電池素子6を確実に保護するためである。本実施形態では、太陽電池素子6の正面及び背面にそれぞれ封止材5及び封止材7を設けるようにしている。
[太陽電池素子6]
太陽電池素子6は、前述の光電変換素子と同様である。
・太陽電池素子同士の接続
太陽電池素子6は、薄膜太陽電池14の1個あたり1個だけを設けてもよいが、通常は2個以上の太陽電池素子6を設ける。具体的な太陽電池素子6の個数は任意に設定すればよい。太陽電池素子6を複数設ける場合、太陽電池素子6はアレイ状に並べて設けられていることが多い。
太陽電池素子6を複数設ける場合、通常は、太陽電池素子6同士は電気的に接続され、接続された一群の太陽電池素子6から生じた電気を端子(図示せず)から取り出すようになっていて、この際、電圧を高めるため通常は太陽電池素子は直列に接続される。このように太陽電池素子6同士を接続する場合には、太陽電池素子6間の距離は小さいことが好ましく、ひいては、太陽電池素子6と太陽電池素子6との間の隙間は狭いことが好ましい。太陽電池素子6の受光面積を広くして受光量を増加させ、薄膜太陽電池14の発電量を増加させるためである。
[封止材7]
封止材7は、上述した封止材5と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他は封止材7と同様のものを同様に用いることができる。また、太陽電池素子6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。
[ゲッター材フィルム8]
ゲッター材フィルム8は、上述したゲッター材フィルム4と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他はゲッター材フィルム4と同様のものを同様に必要に応じて用いることができる。また、太陽電池素子6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。また使用する水分あるいは酸素吸収剤をゲッター材フィルム4よりも多く含有するフィルムを用いることも可能となる。このような吸収剤としては、水分吸収剤としてCaO、BaO又はZr−Al−BaO等が挙げられ、酸素の吸収剤として活性炭やモレキュラーシーブ等が挙げられる。
[ガスバリアフィルム9]
ガスバリアフィルム9は、上述したガスバリアフィルム3と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他はガスバリアフィルム9と同様のものを同様に必要に応じて用いることができる。また、太陽電池素子6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。
[バックシート10]
バックシート10は、上述した耐候性保護フィルム1と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他は耐候性保護フィルム1と同様のものを同様に用いることができる。また、このバックシート10が水及び酸素を透過させ難いものであれば、バックシート10をガスバリア層として機能させることも可能である。
また、太陽電池素子6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。このため、バックシート10としては、以下に説明するもの(i)〜(iv)を用いることが特に好ましい。
(i)バックシート10としては、強度に優れ、耐候性、耐熱性、耐水性及び/又は耐光性に優れた各種の樹脂のフィルム又はシートを使用することができる。例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリルースチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート若しくはポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂又はその他等の各種の樹脂のシートを使用することができる。これらの樹脂のシートのなかでも、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂又はポリエステル系樹脂のシートを使用することが好ましい。なお、これらは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(ii)バックシート10としては、金属薄膜を用いることもできる。例えば、腐蝕防止したアルミニウム金属箔、ステンレス製薄膜等が挙げられる。なお、金属は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(iii)バックシート10としては、例えばアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着した防水性の高いシートを用いてもよい。フッ素系樹脂としては、例えば、一フッ化エチレン(商品名:テドラー、デュポン社製)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとエチレン若しくはプロピレンとのコポリマー(ETFE)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)又はフッ化ビニル系樹脂(PVF)等が挙げられる。なお、フッ素系樹脂は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(iv)バックシート10としては、例えば、基材フィルムの片面又は両面に、無機酸化物の蒸着膜を設け、更に、上記の無機酸化物の蒸着膜を設けた基材フィルムの両面に、耐熱性のポリプロピレン系樹脂フィルムを積層したものを用いてもよい。なお、通常は、基材フィルムにポリプロピレン系樹脂フィルムを積層する場合には、ラミネート用接着剤で張り合わせることで積層する。無機酸化物の蒸着膜を設けることで、水分及び/又は酸素等の侵入を防止する防湿性に優れたバックシート10として使用できる。
・基材フィルム
基材フィルムとしては、基本的には、無機酸化物の蒸着膜等との密接着性に優れ、強度に優れ、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性に優れた各種の樹脂のフィルムを使用することができる。例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリルースチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート若しくはポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂又はその他等の各種の樹脂のフィルムを使用することができる。なかでも、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂又はポリエステル系樹脂のフィルムを使用することが好ましい。
上記のような各種の樹脂のフィルムのなかでも、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)又はフッ化ビニル系樹脂(PVF)等のフッ素系樹脂のフィルムを使用することがより好ましい。更に、このフッ素系樹脂のフィルムのなかでも、特に、ポリフッ化ビニル系樹脂(PVF)又はテトラフルオロエチレンとエチレン若しくはプロピレンとのコポリマー(ETFE)からなるフッ素系樹脂のフィルムが、強度等の観点から特に好ましい。なお、樹脂は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、上記のような各種の樹脂のフィルムのなかでも、シクロペンタジエン及びその誘導体又はシクロヘキサジエン及びその誘導体等の環状ポリオレフィン系樹脂のフィルムを使用することもより好ましい。
基材フィルムの膜厚としては、通常12μm以上、好ましくは20μm以上であり、また、通常300μm以下、好ましくは200μm以下である。
・無機酸化物の蒸着膜
無機酸化物の蒸着膜としては、基本的に金属の酸化物を蒸着した薄膜であれば使用可能である。例えば、ケイ素(Si)やアルミニウム(Al)の酸化物の蒸着膜を使用することができる。この際、酸化ケイ素としては例えばSiO(x=1.0〜2.0)を用いることができ、酸化アルミニウムとしては例えばAlO(x=0.5〜1.5)を用いることができる。なお、使用する金属及び無機酸化物の種類は1種でもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。無機酸化物の蒸着膜の膜厚としては、通常50Å以上、好ましくは100Å以上であり、また、通常4000Å以下、好ましくは1000Å以下である。
蒸着膜の作製方法としては、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を用いることができる。具体例を挙げると、基材フィルムの一方の面に、有機ケイ素化合物等の蒸着用モノマーガスを原料とし、キャリヤーガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを使用し、更に、酸素供給ガスとして、酸素ガス等を使用し、低温プラズマ発生装置等を利用する低温プラズマ化学気相成長法を用いて酸化ケイ素等の無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
・ポリプロピレン系樹脂フィルム
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンの単独重合体又はプロピレンと他のモノマー(例えばα−オレフィン等)との共重合体を使用することができる。また、ポリプロピレン系樹脂としては、アイソタクチック重合体を用いることもできる。
ポリプロピレン系樹脂の融点は通常164℃以上であり、一方、通常170℃以下である。ポリプロピレン系樹脂の比重は通常0.90以上であり、一方、通常0.91以下である。ポリプロピレン系樹脂の分子量は通常10万以上であり、一方、通常20万以下である。
ポリプロピレン系樹脂は、その結晶性により性質が大きく支配されるが、アイソタクチックの高いポリマーは、引っ張り強さ、衝撃強度に優れ、耐熱性、耐屈曲疲労強度を良好であり、かつ、加工性は極めて良好なものである。
・接着剤
基材フィルムにポリプロピレン系樹脂フィルムを積層する場合には、通常はラミネート用接着剤を用いる。これにより、基材フィルムとポリプロピレン系樹脂フィルムとはラミネート用接着剤層を介して積層されることになる。
ラミネート用接着剤層を構成する接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル系接着剤、ポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、アミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤又はシリコーン系接着剤等が挙げられる。なお、接着剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記の接着剤の組成系は、水性型、溶液型、エマルジョン型又は分散型等のいずれの組成物形態でもよい。また、その性状は、フィルム・シート状、粉末状、固形状等のいずれの形態でもよい。さらに、接着機構については、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型又は熱圧型等のいずれの形態でもよいものである。上記の接着剤は、例えば、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法又はその他等のコート法あるいは印刷法等によって施すことができる。そのコーティング量としては、乾燥状態で通常0.1g/m以上が望ましく、一方、通常10g/m以下が望ましい。
[寸法等]
本実施形態の薄膜太陽電池14は、通常、膜状の薄い部材である。このように膜状の部材として薄膜太陽電池14を形成することにより、薄膜太陽電池14を建材、自動車又はインテリア等に容易に設置できるようになっている。薄膜太陽電池14は、軽く、割れにくく、従って安全性の高い太陽電池が得られ、また曲面にも適用可能であるため更に多くの用途に使用しうる。薄くて軽いため輸送や保管等流通面でも好ましい。更に、膜状であるためロール・トゥ・ロール式の製造が可能であり大幅なコストカットが可能である。
薄膜太陽電池14の具体的な寸法に制限は無いが、その厚みは、通常300μm以上、好ましくは500μm以上、より好ましくは700μm以上であり、また、通常3000μm以下、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1500μm以下である。
[製造方法]
本実施形態の薄膜太陽電池14の製造方法に制限は無いが、例えば、耐候性保護フィルム1とバックシート10との間に、1個又は2個以上の太陽電池素子6を直列又は並列接続したものを、紫外線カットフィルム2、ガスバリアフィルム3、9、ゲッター材フィルム4、8及び封止材5、7と共に一般的な真空ラミネート装置でラミネートすることで製造できる。この際、加熱温度は通常130℃以上、好ましくは140℃以上であり、通常180℃以下、好ましくは170℃以下である。また、加熱時間は通常10分以上、好ましくは20分以上であり、通常100分以下、好ましくは90分以下である。圧力は通常0.001MPa以上、好ましくは0.01MPa以上であり、通常0.2MPa以下、好ましくは0.1MPa以下である。圧力をこの範囲とすることで封止を確実に行い、かつ、端部からの封止材5、7のはみ出しや過加圧による膜厚低減を抑え、寸法安定性を確保しうる。
[用途]
上述した薄膜太陽電池14の用途に制限はなく任意である。例えば、図3に模式的に示すように、何らかの基材12上に薄膜太陽電池14を設けた太陽電池モジュール13を用意し、これを使用場所に設置して用いればよい。具定例を挙げると、基材12として建材用板材を使用した場合、この板材の表面に薄膜太陽電池14を設けて太陽電池モジュール13として太陽電池パネルを作製し、この太陽電池パネルを建物の外壁等に設置して使用すればよい。
基材12は太陽電池素子6を支持する支持部材である。基材12を形成する材料としては、例えば、ガラス、サファイア又はチタニア等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂フィルム、塩化ビニル、ポリエチレン、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリノルボルネン等の有機材料;紙又は合成紙等の紙材料;ステンレス、チタン又はアルミニウム等の金属に絶縁性を付与するために表面をコート又はラミネートしたもの等の複合材料等が挙げられる。なお、基材の材料は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、これら有機材料あるいは紙材料に炭素繊維を含ませ、機械的強度を補強させてもよい。
本実施形態に係る薄膜太陽電池を適用する分野の例を挙げると、建材用太陽電池、自動車用太陽電池、インテリア用太陽電池、鉄道用太陽電池、船舶用太陽電池、飛行機用太陽電池、宇宙機用太陽電池、家電用太陽電池、携帯電話用太陽電池又は玩具用太陽電池等に用いて好適である。具体例として以下のようなものを挙げることができる。
1.建築用途
1.1 ハウス屋根材として太陽電池
基材として屋根用板材等を使用した場合、この板材の表面に薄膜太陽電池を設けて太陽電池ユニットとして太陽電池パネルを作製し、この太陽電池パネルをハウスの屋根の上に設置して使用すればよい。また、基材として瓦を直接用いることもできる。本実施形態に係る太陽電池が柔軟性を有するという特性を生かし、瓦の曲線に密着させることができるので好適である。
1.2 屋上
ビルの屋上に取り付けることもできる。基材上に薄膜太陽電池を設けた太陽電池ユニットを用意し、これをビルの屋上に設置することもできる。この時基材とともに防水シートを併用し、防水作用備えることが望ましい。さらに、本実施形態に係る薄膜太陽電池が柔軟性を有するという特性を生かし、平面ではない屋根、例えば折半屋根に密着させることもできる。この場合も防水シートを併用するのが望ましい。
1.3 トップライト
エントランスや吹き抜け部分に外装として本実施形態に係る薄膜太陽電池を用いることもできる。何らかのデザイン処理を施されたエントランス等は曲線が用いられている場合が多く、そのような場合において本実施形態に係る薄膜太陽電池の柔軟性が生かされる。またエントランス等ではシースルーである場合があり、このような場合には、有機太陽電池の緑色系の色合いが、環境対策が重要視される時代において意匠的な美観も得られるので好適である。
1.4 壁
基材として建材用板材を使用した場合、この板材の表面に薄膜太陽電池を設けて太陽電池ユニットとして太陽電池パネルを作製し、この太陽電池パネルを建物の外壁等に設置して使用すればよい。また、カーテンウォールに設置することもできる。その他、スパンドレルや方立等への取り付けも可能である。
この場合、基材の形状に制限はないが、通常は板材を使用する。また、基材の材料、寸法等は、その使用環境に応じて任意に設定すればよい。このような基材の例を挙げると、アルポリック(登録商標;三菱樹脂製)等が挙げられる。
1.5 窓
また、シースルーの窓に使用することもできる。有機太陽電池の緑色系の色合いが、環境対策が重要視される時代において意匠的な美観も得られるので好適である。
1.6 その他
その他建築の外装としてひさし、ルーバー、手摺等にも使用できる。このような場合においても、本実施形態に係る薄膜太陽電池の柔軟性が、これら用途にとり好適である。
2.内装
本実施形態に係る薄膜太陽電池はブラインドのスラットに取り付けることもできる。本実施形態に係る薄膜太陽電池は軽量であり、柔軟性に富むことから、このような用途が可能となる。また、内容用窓についても有機太陽電池素子がシースルーである特性を生かし使用することができる。
3.野菜工場
蛍光灯等の照明光を活用する植物工場の設置件数は増えているが、照明に掛かる電気代や光源の交換費用等によって栽培コストを引き下げにくいというのが現状である。そこで本実施形態に係る薄膜太陽電池を野菜工場に設置し、LED又は蛍光灯と組み合わせた照明システムを作製することができる。
このとき蛍光灯よりも寿命が長いLEDと本実施形態に係る太陽電池を組み合わせた照明システムを用いることで、照明に要するコストを現状に比べて30%程度減らせることができるので好適である。また、野菜等を一定温度で輸送するリーファー・コンテナ(reefer container)の屋根や側壁に本実施形態に係る太陽電池を用いることもできる。
4.道路資材・土木
本実施形態に係る薄膜太陽電池は、駐車場の外壁や高速道路の遮音壁や浄水場の外壁等にも用いることができる。
5.自動車
本実施形態に係る薄膜太陽電池は、自動車のボンネット、ルーフ、トランクリッド、ドア、フロントフェンダー、リアフェンダー、ピラー、バンパー又はバックミラー等の表面に用いることができる。なおルーフとしてはトラック車輌の荷台のルーフも含まれる。得られた電力は走行用モータ、モータ駆動用バッテリー、電装品及び電装品用バッテリーのいずれにも供給することができる。太陽電池パネルにおける発電状況と、走行用モータ、モータ駆動用バッテリー、電装品及び電装品用バッテリーにおける電力使用状況とに合わせて電力の供給先を選択する制御手段を備えることで、得られた電力を適正にかつ効率的に使用することができる。この場合、基材12の形状に制限はないが、通常は板材を使用する。また、基材12の材料、寸法等は、その使用環境に応じて任意に設定すればよい。このような基材12の例を挙げると、アルポリック(登録商標;三菱樹脂製)等が挙げられる。
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の例に限定されるものではない。なお、本実施例に記載の項目は以下の方法によって測定した。
(重量平均分子量及び数平均分子量の測定方法)
ポリスチレン換算の重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により求めた。カラムとして、Shim−pack GPC−803、GPC−804(島津製作所社製、内径8.0mm、長さ30cm)をそれぞれ1本ずつ直列に繋げて用いた。ポンプとしてLC−10AT、オーブンとしてCTO−10A、検出器として示差屈折率検出器(島津製作所社製:RID−10A)、検出器としてUV−vis検出器(島津製作所社製:SPD−10A)を用いた。高分子をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、得られた溶液5μLをカラムに注入した。移動相としてTHFを用い、1.0mL/minの流速で測定を行なった。解析はLC−Solution(島津製作所社製)を用いて行った。
(吸収スペクトル)
吸収スペクトル測定には、日立分光光度計U−3500を用いた。コポリマーのクロロホルム溶液(吸光度極大値が0.8以下になるように調整)を、1cm角の石英セルを用いて測定を行った。
(光電変換素子の評価)
光電変換素子に4mm角のメタルマスクを付け、照射光源としてエアマス(AM)1.5G、放射照度100mW/cmのソーラシミュレータを用い、ソースメーター(ケイスレー社製,2400型)により、ITO電極とアルミニウム電極との間における電流−電圧特性を測定した。こうして、開放電圧Voc[V]、短絡電流密度Jsc[mA/cm]、形状因子FF、光電変換効率PCE[%]を測定することができる。
ここで、開放電圧Vocとは電流値=0(mA/cm)の際の電圧値(V)、短絡電流密度Jscとは電圧値=0(V)の際の電流密度(mA/cm)である。形状因子(FF)とは内部抵抗を表すファクターであり、最大出力点をPmaxとすると次式で表される。
FF = Pmax/(Voc×Jsc)
また、光電変換効率PCEは、入射エネルギーをPinとすると次式で与えられる。
PCE = Pmax/Pin=Voc×Jsc×FF/Pin
(保存安定性)
作製した光電変換素子を窒素雰囲気下温度23℃、湿度40%で6日間静置した。6日後の電流−電圧特性を測定し、光電変換効率を算出した。また、作製直後の光電変換効率(初期値)に対する、6日後の光電変換効率の比を保持率(%)として算出した。
[実施例1:コポリマーP1の合成]
(チエノチオフェンモノマーM1の合成)
チエノチオフェンモノマーM1は、国際公開第2010/008672号に記載の方法に従って合成した。合成方法の概略を以下に示す。
(イミドチオフェンモノマーM2の合成)
500mLナスフラスコにチオフェンジカルボン酸(E1,5.3g,30.7mmol)、及び無水酢酸(100mL)を加え140℃で6時間加熱した。減圧留去により溶媒を除去し、トルエンで再結晶を行うことにより、化合物E2(1H,3H−チエノ[3,4−c]フラン−1,3−ジオン,3.5g)を得た。
窒素雰囲気下、100mLナスフラスコ中で化合物E2(3.57g,0.023mol)を脱水N,N−ジメチルホルムアミド(35mL)に溶解した。次いで、氷浴中でn−オクチルアミン(4.2mL,0.025mol)を加えた後、140℃で2時間加熱した。放冷後、水と混合して析出した肌色粉末を濾取し、冷メタノールで洗浄を行うことにより、化合物E3(4−[[1−オクチルアミノ]カルボニル]−3−チエノフェンカルボン酸,5.3g)を得た。
100mLナスフラスコに、化合物E3(5.27g,18.6mmol)と塩化チオニル(18mL)を加え、バス温度を72℃に設定して3時間加熱した。放冷後、1N水酸化ナトリウム水溶液に滴下し、析出した茶色粉末を濾取した。冷メタノールを用いて洗浄し、乾燥させることにより、化合物E4(5−オクチル−4H−チエノ[3,4−c]ピロール−4,6(5H)−ジオン,4.55g,収率91%)を得た。
窒素雰囲気下、200mLナスフラスコ中で化合物E4(2.65g,10mmol)を、トリフルオロ酢酸(50mL)及び濃硫酸(15mL)に溶解した。氷浴中で、更にN−ブロモスクインイミド(NBS,5.33g,30mmol)を加えて溶解するまで攪拌し、氷浴を外して室温まで上昇させさらに20時間攪拌した。氷水と混合してクエンチ後、クロロホルムを用いて生成物を抽出し、溶媒を減圧留去により除去して、カラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:クロロホルム2:1→1:1)にて精製した。ヘキサンを用いて懸濁洗浄することにより、イミドチオフェンモノマーM2(1,3−ジブロモ−5−オクチル−4H−チエノ[3,4−c]ピロール−4,6−(5H)−ジオン,2.58g,収率61%)を得た。
(ベンゾビチオフェンモノマーM3の合成)
ベンゾビチオフェンモノマーM3は、国際公開第2010/008672号に記載の方法に従って合成した。合成方法の概略を以下に示す。
(コポリマーP1の合成)
100mL四口フラスコ内部を窒素で置換した後に、ベンゾビチオフェンモノマーM3(194mg,0.25mmol)、チエノチオフェンモノマーM1(94mg,0.20mmol)、イミドチオフェンモノマーM2(21mg,0.05mmol)、無水トルエン(4.5mL)、及び無水N,N−ジメチルホルムアミド(0.5mL)を加え、さらにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0価)(8.6mg,0.0075mmol)を加えた後、130℃で8時間加熱攪拌した。次にエンドキャップ操作として、ブロモベンゼン(200μL)を加えて1.5時間さらに加熱攪拌し、続けてフェニルスズ(200μL)を加えて1時間さらに加熱攪拌した。
反応終了後、脱気したメタノールを加えて粗生成物を再沈殿させた。得られた粗生成物をクロロホルムに溶解させ、金属除去カラム(アミン・ジアミンシリカ、ジアミン4層・アミン3層)を通した後で、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて分取精製した。さらに再沈殿を行うことにより、コポリマーP1を60mg(重量平均分子量Mw=2.0×10、数平均分子量Mn=7.5×10、PDI(Mw/Mn)=2.7)取得した。
(吸収スペクトル)
得られたコポリマーP1の吸収スペクトルを図4に示す。図4に示されるようにコポリマーP1溶液は、特許文献1に記載されているポリマーPTB4溶液よりも、450〜650nmの範囲で高い光吸収性を示した。
[実施例2:コポリマーP1を用いた光電変換素子]
(有機活性層塗布液の作製)
p型半導体材料である、実施例1で合成したコポリマーP1と、n型半導体材料であるPC71BM(フロンティアカーボン社製 NS−E112)とを重量比が1:1.5となるように混合し、混合物が1.0重量%の濃度となるように窒素雰囲気中でクロロベンゼンに溶解させた。ついでこの溶液に、有機活性層塗布液全体に対して3.2重量%の割合となるように1,8−ジヨードオクタンを添加し、ホットスターラーを用いて80℃にて4時間攪拌混合した。攪拌混合後の溶液を1.0μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過することにより、有機活性層塗布液を得た。
(光電変換素子の作製)
インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜がパターニングされたガラス基板を、界面活性剤による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させた。さらに、基板に対して紫外線オゾン洗浄を行った。
この基板上に、正孔取り出し層としてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)水性分散液(エイチ・シー・スタルク社製「CLEVIOSTM PVP AI4083」)を4000rpm、30秒の条件にてスピンコートにより塗布し、塗布後の基板を120℃のホットプレート上で10分間、大気中で加熱した。正孔取り出し層の膜厚は約30nmであった。
正孔取り出し層を成膜した基板を、窒素雰囲気のグローブボックス内のホットプレート上で、220℃にて3分間加熱処理した。基板が冷却された後に上述のように作製した有機活性層塗布液を265rpmの速度にてスピンコートすることにより、約100nmの厚みの有機活性層を形成した。その後、電子取り出し層として2.5nmの膜厚のPOPyを、さらに電極層として80nmの膜厚のアルミニウムを、抵抗加熱型真空蒸着法により順次成膜させた。こうして、5mm角の光電変換素子を作製した。作製した光電変換素子について、上述のように電流−電圧特性を測定した。測定結果を表1に示す。また、作製した光電変換素子について、上述のように保存安定性を評価した。結果を表2に示す。
[実施例3:コポリマーP1を用いた光電変換素子]
有機活性層塗布液を300rpmの速度にてスピンコートすることにより、約100nmの厚みの有機活性層を形成したことと、電子取り出し層として0.6nmの膜厚のフッ化リチウム(LiF、フルウチ化学社製)を成膜したこととを除き、実施例2と同様に5mm角の光電変換素子を作製した。作製した光電変換素子について、上述のように電流−電圧特性を測定した。測定結果を表1に示す。また、作製した光電変換素子について、上述のように保存安定性を評価した。結果を表2に示す。
表1より、コポリマーP1は、比較的高い分子量を有しながら、比較的良好な光電変換効率を示すことが分かる。
表2より、コポリマーP1は、比較的高い分子量を有しながら、経時変化による光電変換効率の低下が比較的少ないことが分かる。
1 耐候性保護フィルム
2 紫外線カットフィルム
3,9 ガスバリアフィルム
4,8 ゲッター材フィルム
5,7 封止材
6 太陽電池素子
10 バックシート
12 基材
13 太陽電池モジュール
14 薄膜太陽電池
101 アノード
102 正孔取り出し層
103 活性層(p型半導体化合物とn型半導体化合物混合層)
104 電子取り出し層
105 カソード
106 基板
107 光電変換素子

Claims (8)

  1. 下記一般式(1)で示される繰り返し単位と、下記一般式(2)で示される繰り返し単位とを含むことを特徴とするコポリマー。
    (式(1)中、Rはヘテロ原子を有してもよい炭化水素基を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又はヘテロ原子を有してもよい炭化水素基を表し、Arは芳香族基を表す。R、R及びArはそれぞれ独立して、さらに置換基を有していてもよい。)
    (式(2)中、Rはヘテロ原子を有してもよい炭化水素基を表し、Arは芳香族基を表す。R及びArはそれぞれ独立して、さらに置換基を有していてもよい。)
  2. 請求項1に記載のコポリマーを含むことを特徴とする、有機半導体材料。
  3. 請求項2に記載の有機半導体材料を含むことを特徴とする、有機電子デバイス。
  4. 一対の電極間に有機活性層が配置されてなる光電変換素子であって、該有機活性層が請求項2に記載の有機半導体材料を含むことを特徴とする光電変換素子。
  5. 前記有機活性層が、フラーレン化合物、ボラン誘導体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、N−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、N−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体およびn型ポリマーよりなる群から選ばれる少なくとも1種のn型半導体化合物を含むことを特徴とする請求項4に記載の光電変換素子。
  6. さらに、第16族元素とリン原子との間の二重結合を有するホスフィン化合物を含有するバッファ層を有することを特徴とする、請求項4又は5に記載の光電変換素子。
  7. 太陽電池であることを特徴とする、請求項4乃至6の何れか1項に記載の光電変換素子。
  8. 請求項7に記載の光電変換素子を含有することを特徴とする、太陽電池モジュール。
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