JP2012240701A - 樹脂製多層容器 - Google Patents

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Abstract

【課題】滑り性及び表面光沢に優れた樹脂製多層容器を提供すること。
【解決手段】(A)チーグラー・ナッタ触媒を用いて得られた、結晶融点が125〜165℃であるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、(B)メタロセン触媒を用いて得られた、ポリプロピレンからなる重合体のブロックと、エチレン・プロピレン共重合体からなる重合体のブロックとからなるブロック共重合体、及び(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドを含有する樹脂組成物からなる表層を備える樹脂製多層容器であり、(A)及び(B)の合計に対し、(B)0.5〜40質量%、かつ、(A)及び(B)の合計質量部に対し、(C)100〜4000ppmであり、好ましくは(C)は、HN−CO-(-CH-)-CH=CH-(-CH-)-CH;HN-CO-(-CH-)m−2-CH=CH- (-CH-)-CH;またはHN-CO-(-CH-)k+4-CH=CH-(-CH-)-CH(m、n、kは、6〜10の整数)。
【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂製多層容器に関し、特に、表層の滑り性、及び、表面光沢が改善された樹脂製多層容器に関する。更に詳しくは、該樹脂製多層容器の製造工程、充填工程、及び包装工程などの各工程で最適な滑り性を呈し、充填された内容物の液切れ性に優れ、内容物の視認性に優れた樹脂製多層容器の改善に関するものである。
ソースやケチャップなどの粘稠な内容物が充填される樹脂製多層容器(以下、単に「多層容器」または「容器」ということがある。)は、主にダイレクトブロー成形により、筒状のパリソンが押し出され、続いて、冷却金型内で容器の形状にブロー成形されることによって製造されることが多い。その樹脂材の構成としては、表層(外層及び/または内層)として、ポリオレフィン系樹脂、例えばポリプロピレン系樹脂などを使用し、中間層に、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)などのバリア層を備えた多層構造のものが一般的である。
例えば、特開平6−72424号公報(特許文献1)には、エチレン・ビニルアルコール共重合体等ガスバリヤー性樹脂層、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂の最外層、及び接着性樹脂層等を含む多層材により構成され、ダイレクトブロー成形などにより作成される多層ボトルが開示されている。
樹脂製多層容器には、透明性、光沢、耐衝撃性、容器表面の滑り性などが要求される。例えば、特開2009−248996号公報(特許文献2)には、メタロセン系触媒を用いて重合したエチレン・α−オレフィン共重合体からなる内層及び外層、ガスバリア性樹脂層、接着剤層及びリサイクル層を備える多層プラスチック容器が、透明性、柔軟性、剛性、耐落下強度等のバランスがとれた軟質容器として用いられることが開示されている。一方、特開平11−349650号公報(特許文献3)には、特有のメタロセン系触媒を用いて得られるポリプロピレンのブロックと、エチレン・プロピレン共重合体のブロックを有する、耐衝撃性に優れるブロック共重合体が開示されている。
樹脂製多層容器においては、容器表面、具体的には最外面及び/または最内面における滑り性が求められる。すなわち、樹脂製多層容器においては、容器成形工程、容器の移送工程、ユーザーによる食品等の内容物充填工程、内容物充填後の移送工程、更に容器包装工程など、ラインや温度、湿度等の環境条件を異にする各工程のそれぞれにおいて、安定した連続生産を確保するために、良好な滑り性を発揮することが要求される。例えば、容器成形工程ラインや、内容物充填工程における容器整列ラインにおいて、容器同士または容器とガイド板等との接触が生じても、当該工程や次工程での作業や生産速度に影響しないように、滑り性が要求される。また、容器に内容物が充填された後の移送ラインでは、スムーズな移送を確保するために、移送コンベヤーと容器との間の滑り性が要求される。さらに、容器包装ラインにおいては、通常、外装フィルムによる容器の包装を、高速度で行うので、容器表面とラップフィルムとの間の滑り性が要求される。これらの各工程、ラインでは、温度や湿度等の環境条件が異なるので、様々な環境条件下において、樹脂製多層容器の表面の適正な滑り性が要求される。また、容器に充填されている内容物の液切れ性を改善するために、樹脂製多層容器の内表面の滑り性が要求される。
樹脂製多層容器の滑り性を改善するために、従来、主として最外層または最内層の原料樹脂に、滑剤を添加することが行われている。滑剤は、通常、原料樹脂に、マスターバッチ方式で添加されたり、練り込まれたりする。
滑剤としては、例えば、脂肪酸アミドが汎用され、具体的には、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド(ベヘニン酸アミド)などが使用される。このうち、融点の低い滑剤は、例えばオレイン酸アミドであり、これを添加することにより、容器の温度が低いときに良好な滑り性を発揮する。融点の比較的高い滑剤は、例えばベヘニン酸アミドであり、これを添加することにより、食品などの内容物が高温充填されたときなどのように、容器が高温になる時に良好な滑り性を発揮できるようになる。これらの滑剤は、2種以上を混合して使用することも行われてきた。例えば、特開2009−214914号公報(特許文献4)には、非油性内容物を充填する多層容器において、容器内面のポリオレフィン系樹脂層に、不飽和脂肪族アミドと飽和脂肪族アミドとを配合することが開示されている。さらに、特開2005−307122号公報(特許文献5)には、天然物由来の油脂を原料とするスリップ剤(滑剤)として、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド及びエルカ酸アミドが開示されている。
さらに、樹脂製多層容器においては、表面光沢が劣ると、充填された内容物の状態を直感的に把握できないことがあるので、改善が求められていた。
特開平6−72424号公報 特開2009−248996号公報 特開平11−349650号公報 特開2009−214914号公報 特開2005−307122号公報
本発明の課題は、容器成形工程、容器移送工程、内容物の充填工程、及び包装工程に至るまでのそれぞれ異なるラインや環境条件下で、容器同士、容器と装置、容器と包装フィルムまたは容器と内容物との間などの適正な滑り性、容器に充填されている内容物の改善された液切れ性を満足するとともに、表面光沢が優れた樹脂製多層容器を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決することについて鋭意研究した結果、樹脂製多層容器の表層(最外層及び/または最内層)を、特定の不飽和脂肪酸アミドを含有するポリオレフィン系の樹脂組成物とすることによって、課題を解決できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明によれば、(A)チーグラー・ナッタ触媒を用いて得られた、結晶融点が125〜165℃であるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、(B)メタロセン触媒を用いて得られた、ポリプロピレンからなる重合体のブロックと、エチレン・プロピレン共重合体からなる重合体のブロックと、からなるブロック共重合体、及び(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドを含有する樹脂組成物からなる層を表層として備える樹脂製多層容器であって、
該樹脂組成物が、以下の(I)及び(II):
(I)(A)及び(B)の合計を100質量%としたときに、(B)が0.5〜40質量%;及び
(II)(A)及び(B)の合計質量部に対して、(C)が100〜4000ppm;
を満足することを特徴とする前記の樹脂製多層容器が提供される。
また、本発明によれば、実施の態様として、以下(1)〜(13)の樹脂製多層容器が提供される。
(1)前記の(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドが、以下の(C)、(C)及び(C):
(C)HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、nは、6≦n≦10の範囲の整数);
(C)HN−CO−(−CH−)m−2−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、mは、6≦m≦10の範囲の整数);及び
(C)HN−CO−(−CH−)k+4−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、kは、6≦k≦10の範囲の整数);
からなる群より選ばれる一つの式で表される少なくとも1種の脂肪酸アミドを含有する前記の樹脂製多層容器。
(2)前記の(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドが、前記の(C)の式で表される脂肪酸アミドと、前記の(C)または(C)の式で表される少なくとも1種の脂肪酸アミドとの混合物である前記の樹脂製多層容器。
(3)前記の(C)の式で表される脂肪酸アミドにおけるmが、m=n+1またはm=n−1である前記の樹脂製多層容器。
(4)前記の(C)の式で表される脂肪酸アミドにおけるkが、k=nである前記の樹脂製多層容器。
(5)前記の(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドが、前記の(C)の式で表される脂肪酸アミドと、以下の(C11):
(C11)HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、jは、6≦j≦10の範囲の整数であり、j≠nである。);
の式で表される脂肪酸アミドとの混合物である前記の樹脂製多層容器。
(6)前記の(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドが、分子構造中に不飽和cis構造炭素結合を2結合〜4結合有する化合物を含有する前記の樹脂製多層容器。
(7)前記の樹脂組成物が、更に飽和脂肪酸アミドを含有する前記の樹脂製多層容器。
(8)前記の表層が、最外層または最内層の一方または両方である前記の樹脂製多層容器。
(9)更にバリア層を備える前記の樹脂製多層容器。
(10)前記のバリア層が、エチレンビニルアルコール共重合体またはポリグリコール酸である前記の樹脂製多層容器。
(11)更に回収層を備える前記の樹脂製多層容器。
(12)前記の樹脂製多層容器が、表層、バリア層、接着層、及び、回収層を備えるものである前記の樹脂製多層容器。
(13)最外層/接着層/バリア層/接着層/回収層/最内層からなる前記の樹脂製多層容器。
本発明によれば、(A)チーグラー・ナッタ触媒を用いて得られた、結晶融点が125〜165℃であるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、(B)メタロセン触媒を用いて得られた、ポリプロピレンからなる重合体のブロックと、エチレン・プロピレン共重合体からなる重合体のブロックと、からなるブロック共重合体、及び(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドを含有する樹脂組成物からなる層を表層として備える樹脂製多層容器であって、
該樹脂組成物が、以下の(I)及び(II):
(I)(A)及び(B)の合計を100質量%としたときに、(B)が0.5〜40質量%;及び
(II)(A)及び(B)の合計質量部に対して、(C)が100〜4000ppm;
を満足することを特徴とする前記の樹脂製多層容器であることによって、容器成形工程、容器移送工程、内容物の充填工程、及び包装工程に至るまでのそれぞれ異なるラインや環境条件下で、容器同士、容器と装置、容器と包装フィルムまたは容器と内容物との間などの適正な滑り性を発揮することができ、また、容器に充填されている内容物の液切れ性が改善され、かつ、優れた表面光沢を有する樹脂製多層容器を提供できるという効果を奏する。
I.表層を形成する樹脂組成物
本発明の樹脂製多層容器は、表層、具体的には、容器の最外層または最内層の一方または両方が、(A)チーグラー・ナッタ触媒を用いて得られた、結晶融点が125〜165℃であるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、(B)メタロセン触媒を用いて得られた、ポリプロピレンからなる重合体のブロックと、エチレン・プロピレン共重合体からなる重合体のブロックと、からなるブロック共重合体、及び(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドを含有する樹脂組成物から形成されたものである点に特徴を有する。
1.(A)チーグラー・ナッタ触媒を用いて得られた、結晶融点が125〜165℃であるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体
本発明の樹脂製多層容器の表層に含有される(A)チーグラー・ナッタ触媒を用いて得られた、結晶融点が125〜165℃であるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(以下、「(A)のチーグラー触媒ランダム共重合体」ということがある。)は、α−オレフィンの立体規則性重合用触媒として周知のチーグラー・ナッタ(Ziegler-Natta)触媒を用いて得られた、それ自体公知のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体である。
チーグラー・ナッタ触媒は、α−オレフィンの立体規則性重合用触媒として周知のものであって、元素周期律表第IV〜VIII族の遷移金属化合物と、周期律表第I〜II族の典型金属の有機化合物と、好ましくは電子供与性化合物の第3成分とからなるものを使用する触媒であり、溶剤重合法または気相重合法など、いずれの重合方法によるα−オレフィンの重合にも用いることができる。チーグラー・ナッタ触媒としては、例えば、四塩化チタンを有機アルミニウム等で還元して得られた三塩化チタンを電子供与性化合物で処理し更に活性化したもの、四塩化チタンを有機アルミニウム化合物で還元し、更に各種の電子供与体及び電子受容体で処理して得られた三塩化チタン組成物と、有機アルミニウム化合物及び芳香族カルボン酸エステルとからなる触媒、及び、ハロゲン化マグネシウムに四塩化チタンと各種の電子供与体からなる担持型触媒等が挙げられる。チーグラー・ナッタ触媒の配位金属としては、元素周期律表の第4周期の遷移金属である第IV族のTiのほか、第4周期の遷移金属である第Va族のV、第4周期の遷移金属である第VIa族のCrなど周知の元素を選ぶことができる。
本発明における(A)のチーグラー触媒ランダム共重合体は、共重合体中のプロピレンから得られるモノマー単位の含有率(以下、「プロピレン含有率」ということがある。)が、100〜94質量%(ただし100質量%を除く。)、好ましくは99.7〜95質量%、より好ましくは99.5〜95.5質量%であり、共重合体中のα−オレフィンから得られるモノマー単位の含有率(以下、「α−オレフィン含有率」ということがある。)が、0〜6質量%(ただし0質量%を除く)、好ましくは0.3〜5質量%、より好ましくは0.5〜4.5質量%の割合であるものである。プロピレンと共重合されるコモノマーであるα−オレフィンとしては、エチレン及び/または炭素数4〜20のα−オレフィンなどが挙げられ、具体的には、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1等を挙げることができる。α−オレフィンは、2種以上を併用することもできる。α−オレフィン含有率が上記範囲内にあると、実用上良好な剛性を保つことができる。特に好ましい共重合体は、エチレン含有率0.3〜5質量%、特に0.5〜4.5質量%であるプロピレン・エチレンランダム共重合体である。α−オレフィン含有率が多すぎると、結晶融点の温度が低くなり、所要の強度が得られなかったり、重合体の流動性が低下したりすることがある。したがって、本発明における(A)のチーグラー触媒ランダム共重合体には、いわゆるエラストマー領域に属する共重合体は実質的に含まれない。なお、プロピレン含有率及びα−オレフィン含有率は、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて測定できる。具体的には、日本電子株式会社製FT−NMRの270MHzの装置により測定することができる。
(A)のチーグラー触媒ランダム共重合体は、通常、密度が0.880〜0.930g/cm、好ましくは0.885〜0.925g/cm程度であり、MFR(温度190℃、荷重21.18N)が0.5〜100g/10分、好ましくは1〜50g/10分程度である。MFRが上記範囲を上回ると衝撃強度が不足する傾向があり、MFRが上記範囲を下回ると成形性が不良となることがある。また、分子量分布の指標である多分散度(Mw/Mn)は、通常1.2〜5、好ましくは1.5〜4.5、より好ましくは2〜4の範囲にあるものが成形性の改善の点で有効である。なお、密度及びMFRは、JIS K6922−2に従って測定したものであり、多分散度(Mw/Mn)は、JIS K7252に従って測定したものである。
〔結晶融点〕
本発明における(A)のチーグラー触媒ランダム共重合体の結晶融点(Tm)は、125〜165℃の範囲であり、好ましくは127〜163℃、より好ましくは130〜161℃の範囲である。結晶融点は、JIS K7121に準拠して、示差走査熱量計(DSC)を使用して、試料を200℃まで昇温し、5分間保持した後に、10℃/分で40℃まで降温して結晶化させ1分間保持した後、10℃/分で200℃まで昇温させた時の融解最大ピーク温度として求めたものである。結晶融点は、共重合モノマーの含有量の増減などにより調節可能である。(A)のチーグラー触媒ランダム共重合体の結晶融点が低すぎる場合は、所要の強度が得られなかったり、溶融成形性が低下したり、得られる樹脂製多層容器の表面光沢や滑り性が悪化したりすることがある。結晶融点が高すぎる場合は、例えばダイレクトブロー成形による成形性が悪化する。いわゆるエラストマー領域に属するランダム型プロピレン・α−オレフィン共重合体は、結晶融点が、通常125℃未満であり、本発明における(A)のチーグラー触媒ランダム共重合体には実質的に含まれない。
本発明における樹脂組成物が、(A)のチーグラー触媒ランダム共重合体を含有することは、以下の方法で確認することができる。すなわち、樹脂ペレットを厚み100μmにガラスにて切断して試料とし、走査電子顕微鏡SEMに敷設して、生じた蛍光X線をエネルギー分配する分析器として、エネルギー分散型X線検出器を装着した走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、FE−SEM−EDX,S−800、検出器Kevex社製)を使用して定性分析を行い、検体に残存する微量の触媒の元素種を検出する。元素周期律表の第4周期の遷移金属である第IVa族のTi(チタニウム)、第4周期の遷移金属である第Va族のV(バナジウム)または第4周期の遷移金属である第VIa族のCr(クロミウム)のエネルギーに相当する出現ピークを確認することにより、チーグラー・ナッタ触媒を用いて重合したポリオレフィンであると判定することができる。該樹脂ペレットは、表層から削りだしたものでもよく、または、樹脂製多層容器の層間を剥離した表面の層を用いてもよい。
本発明における(A)のチーグラー触媒ランダム共重合体としては、合成品を使用することもできるが、市販品を使用してもよい。市販品としては、日本ポリエチレン株式会社製の商品名ノーブレン(登録商標)などがある。
樹脂組成物中の(A)のチーグラー触媒ランダム共重合体の含有量は、特に限定されないが、(A)及び(B)の合計を100質量%としたときに、通常60〜99.5質量%、好ましくは62〜99質量%、より好ましくは65〜98質量%の範囲である。樹脂組成物中の(A)のチーグラー触媒ランダム共重合体の含有量が少なすぎると、表面光沢が不良となることがあり、その含有量が多すぎると、滑り性が低下することがある。
2.(B)メタロセン触媒を用いて得られた、ポリプロピレンからなる重合体のブロックと、エチレン・プロピレン共重合体からなる重合体のブロックと、からなるブロック共重合体
本発明の(A)、(B)及び(C)を含有する樹脂組成物からなる層を表層として有する樹脂製多層容器は、該樹脂組成物中の(B)メタロセン触媒を用いて得られた、ポリプロピレンからなる重合体のブロックと、エチレン・プロ
ピレン共重合体からなる重合体のブロックと、からなるブロック共重合体が、(A)及び(B)の合計を100質量%としたときに、0.5〜40質量%であることを特徴とする。
(B)メタロセン触媒を用いて得られた、ポリプロピレンからなる重合体のブロックと、エチレン・プロピレン共重合体からなる重合体のブロックと、からなるブロック共重合体(以下、「(B)のメタロセン触媒ブロック共重合体」ということがある。)は、ポリプロピレンからなる重合体のブロック(以下「PPブロック」ということがある。)と、エチレン・プロピレン共重合体からなる重合体のブロック(以下「EPブロック」ということがある。)とが、それぞれ1ブロック以上結合してなる、メタロセン触媒を用いて得られたブロック共重合体であって、ポリプロピレンの剛性を保持しつつ、エチレン・プロピレン共重合体により耐衝撃性を改良した高剛性、耐衝撃性をバランスよく発揮する、それ自体公知のブロック共重合体である。
(B)のメタロセン触媒ブロック共重合体の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、先に挙げた特開平11−349650号公報などに記載されている、初段重合をポリプロピレンからなる重合体のブロックの重合とし、次いで、エチレン・プロピレン共重合体からなる重合体のブロックの重合を行う、2段階重合方法を採用することができる。
すなわち、(B)のメタロセン触媒ブロック共重合体を構成する一方のブロックであるPPブロックを、メタロセン触媒を用いて、該ブロック共重合体調製時の第一段階目の重合(初段重合)により製造する。該PPブロックは、プロピレン単独重合体、または、プロピレンとプロピレン以外の炭素原子数2〜20、好ましくは2〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体である。該ランダム共重合体におけるα−オレフィンの例としては、エチレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられる。該ランダム共重合体中のこれらα−オレフィン単位の含有率は、10質量%以下、好ましくは0〜5質量%である。また、通常、第一段階目で得られる重合体の量が、全重合体生成量の50〜95質量%となるように重合温度及び重合時間が選ばれる。
次に、第一段階目の重合で生成した重合体の存在下に、第二段階目の重合として、エチレンとプロピレンとの共重合を行い、EPブロック共重合体を製造する。該EPブロック共重合体は、エチレン単位10〜80質量%、好ましくは25〜75質量%、及び、プロピレン単位90〜20質量%、好ましくは75〜25質量%からなる共重合体であり、好ましくは、エチレン・プロピレンランダム共重合体からなる重合体である。いわゆるエチレン・プロピレンゴムは、EPブロック共重合体として、好ましく使用することができる。通常、第二段階目の重合で得られる重合体の量が、全重合体生成量の5〜50質量%となるように重合温度及び重合時間が選ばれる。
メタロセン触媒は、一般に、メタロセン(Metallocene)、すなわち、置換または未置換のシクロペンタジエニル環2個と各種の遷移金属で構成されている錯体からなる遷移金属成分と、有機アルミニウム成分、特にアルミノキサンとからなる触媒の総称である。遷移金属成分としては、周期律表第IVb族、第Vb族または第VIb族の金属、特にジルコニウムまたはハフニウムが挙げられる。触媒中の遷移金属成分としては、一般に下記式
(Cp) MR
(式中、Cpは置換または未置換のシクロペンタジエニル環であり、Mは遷移金属であり、Rはハロゲン原子またはアルキル基である。)で表されるものが一般的に使用されている。
アルミノキサンとしては、有機アルミニウム化合物を水と反応させることにより得られたものであり、線状アルミノキサン及び環状アルミノキサンがある。これらのアルミノキサンは、単独でも、他の有機アルミニウムとの組み合わせでも使用できる。
本発明においては、好ましくは、前記特開平11−349650号公報などに記載されているメタロセン触媒である、すなわち、前記のCpが置換シクロペンタジエニル環であって、該シクロペンタジエニル環に対して縮合するアズレン骨格を2個架橋縮合してなる架橋アズレン型メタロセン触媒を使用することができる。該架橋アズレン型メタロセン触媒においては、粘土鉱物を助触媒として使用することもできる。本発明における(B)のメタロセン触媒ブロック共重合体は、前記メタロセン触媒の存在下、有機溶剤中、液状単量体中または気相法での重合により合成されるが、これら公知のいずれの重合方法によるものでも、前記条件を満足するものは本発明の目的に使用できる。
重合温度は通常0〜100℃、好ましくは20〜90℃である。分子量調節剤としては水素が好ましい。これら第一段階及び第二段階の重合の後、更に第三段階以降の重合として、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合、エチレンの単独重合またはエチレンと他のα−オレフィンとの共重合を行うこともできる。
本発明における(B)のメタロセン触媒ブロック共重合体は、通常、密度が0.880〜0.930g/cm、好ましくは0.885〜0.925g/cm程度であり、MFR(温度190℃、荷重21.18N)が0.5〜100g/10分、好ましくは1〜50g/10分程度である。MFRが上記範囲を上回ると衝撃強度が不足する傾向があり、MFRが上記範囲を下回ると成形性が不良となることがある。(B)のメタロセン触媒ブロック共重合体の結晶融点(Tm)は、80〜120℃の範囲であり、好ましくは85〜115℃、より好ましくは90〜110℃の範囲である。結晶融点は、DSCを使用して、測定したものである。なお、結晶融点は、共重合モノマーの含有量の増減などにより調節可能である。(B)のメタロセン触媒ブロック共重合体の結晶融点が低すぎる場合は、得られる樹脂製多層容器の所要の強度が得られなかったり、溶融成形性が低下したり、樹脂製多層容器の表面光沢や滑り性が悪化したりすることがある。結晶融点が高すぎる場合は、成形性が悪化する。
本発明における(B)のメタロセン触媒ブロック共重合体には、必要に応じて、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、マイカ等の補強材を該ブロック共重合体100質量部に対して10〜60質量部配合することができる。また、抗酸化剤、光劣化防止剤、帯電防止剤または核剤などの添加剤を用いることができる。
さらに、低温耐衝撃性、伸度特性及び成形性を改良するために、他のエラストマーを配合することもできる。該他のエラストマーとしては、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体ゴム、スチレン含有熱可塑性エラストマー等が挙げられ、他のエラストマーは、(B)のメタロセン触媒ブロック共重合体100質量部に対して0.5〜50質量部、好ましくは1〜40質量部配合することができる。
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体ゴムは、エチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとのランダム共重合体であり、α−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等を挙げることができ、なかでも、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンが好ましい。α−オレフィン単位の含有率は、15〜70質量%、好ましくは20〜55質量%である。α−オレフィン単位の含有率が上記範囲よりも少なすぎると低温衝撃強度が劣り、一方、多すぎると伸度特性や成形性が低下するばかりでなく、このエラストマーの形状をペレット状に保持しにくくなって生産する際のハンドリングが著しく低下することがある。
スチレン含有熱可塑性エラストマーは、ポリスチレン部を5〜60質量%、好ましくは10〜30質量%含有するエラストマーである。スチレン含有熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン・エチレン/ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)を挙げることができる。本発明で用いられるSEBSは、ポリスチレン単位を10〜40質量%の量で含有していることが望ましい。SEBSとともに、SBR、SBS、SIS及びSIS水添物などを使用することもできる。
エラストマー成分としては、上述したエチレン・α−オレフィンランダム共重合体ゴムまたはスチレン含有熱可塑性エラストマーを、各々単独で用いてもよいし、これらを適宜組み合わせて用いてもよい。
樹脂組成物中に、該(B)のメタロセン触媒ブロック共重合体が存在することは、以下の方法で確認することができる。すなわち、樹脂のペレットを厚み100μmにガラスにて切断して試料とし、走査電子顕微鏡SEMに敷設して、生じた蛍光X線をエネルギー分配する分析器で測定し、Zr(ジルコニウム)またはHf(ハフニウム)のエネルギーに相当するピークの存在を確認する。該樹脂ペレットは、表層から削りだしたものでもよく、または、樹脂製多層容器の層間を剥離した表面の層を用いてもよい。
該(B)のメタロセン触媒ブロック共重合体は、合成品を使用することができるが、市販品の中から選択して使用することもできる。市販品としては、例えば、日本ポリエチレン株式会社製のカーネル(登録商標)などがある。
樹脂組成物中の(B)のメタロセン触媒ブロック共重合体の含有量は、(A)及び(B)の合計を100質量%としたときに、0.5〜40質量%であり、好ましくは1〜38質量%、より好ましくは2〜35質量%である。樹脂組成物中の(B)のメタロセン触媒ブロック共重合体の含有量が少なすぎると、得られる樹脂製多層容器の表面光沢が低下することがあり、一方、その含有量が多すぎると、得られる樹脂製多層容器の滑り性が悪化し、更に表面光沢が低下することがある。
3.(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド
本発明における(A)、(B)、及び(C)を含有する樹脂組成物は、該樹脂組成物中に、(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドを、(A)及び(B)の合計質量部に対して、100〜4000ppm含有する。
(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(以下、「(C)の不飽和脂肪酸アミド」ということがある。)は、滑剤として機能するものである。(C)の不飽和脂肪酸アミドは、脂肪酸アミドの分子構造中に少なくとも1結合の炭素二重結合を有する不飽和脂肪酸アミドであって、該炭素二重結合のすべてが不飽和cis構造の炭素二重結合である不飽和脂肪族アミドである。不飽和脂肪酸アミドが、trans構造の炭素二重結合を有するものであると、樹脂材料の均一配合が不十分となったり、該trans構造を有する不飽和脂肪酸アミドが容器表面に析出したりすることがあり、滑り性が悪化するとともに、表面光沢が悪くなる場合がある。
(C)の不飽和脂肪酸アミドの含有量は、好ましくは105〜3900ppm、より好ましくは110〜3800ppm、更に好ましくは115〜3700ppm、特に好ましくは120〜3600ppmである。(C)の不飽和脂肪酸アミドの含有量が少なすぎると、得られる樹脂製多層容器の滑り性が不足して、容器の製造中、搬送中または内容物の充填中に、隣接する容器同士または装置類との接触等によって、不良品の発生、製造ラインの停止、装置の故障等が生じるおそれがある。また、得られる樹脂製多層容器の最内層の滑り性が不足すると、内容物の充填がスムーズに行われなかったり、消費者の使用時に内容物の液切れ性が不十分となったりすることがある。(C)の不飽和脂肪酸アミドの含有量が多すぎると、得られる樹脂製多層容器の表面光沢が小さくなり、搬送作業中のベタ付きが多くなる。前記(C)の不飽和脂肪酸アミドが、後述するように2種類以上の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドの混合物である場合は、脂肪酸アミドの合計含有量が上記の範囲に含まれる必要がある。
(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドは、好ましくは、分子構造中に不飽和cis構造の炭素二重結合を1結合有する不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドである。
(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドは、分子構造中に複数の不飽和cis構造の炭素二重結合を有する不飽和脂肪酸アミドでもよく、分子構造中に不飽和cis構造の炭素二重結合を、好ましくは6結合以下、より好ましくは5結合以下、更に好ましくは4結合以下有する化合物である。したがって、本発明において最も好ましく使用される(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドは、分子構造中に不飽和cis構造炭素結合を1結合〜4結合有する不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドである。
不飽和cis構造炭素二重結合を1結合有する(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドとしては、例えば、以下の式(C)〜(C):
(C)HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、nは、6≦n≦10の範囲の整数);
(C)HN−CO−(−CH−)m−2−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、mは、6≦m≦10の範囲の整数);及び
(C)HN−CO−(−CH−)k+4−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、kは、6≦k≦10の範囲の整数);
からなる群より選ばれる式で表される少なくとも1種の脂肪酸アミド化合物が挙げられる。(以下、(C)の式で表される脂肪酸アミドを、「式(C)の脂肪酸アミド」ということがあり、更に単に「式(C)」ということがある。(C)または(C)の式で表される脂肪酸アミドについても同様である。)
好ましい不飽和cis構造炭素二重結合を1結合有する(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドとしては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
式(C):HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、nは、6≦n≦10の範囲の整数)
cis−8,9−hexadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(n=6に相当)
cis−9,10−octadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(n=7に相当)
cis−10, 11−eicosenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(n=8に相当)
cis−11, 12− ethaeicosenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(n=9に相当)
cis−12, 13− tetraeicosenoamide〔HN−CO−(−CH−)10−CH=CH−(−CH−)10−CH〕(n=10に相当)
式(C):HN−CO−(−CH−)m−2−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、mは、6≦m≦10の範囲の整数)
cis−6,7−tetradecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(m=6に相当)
cis−7,8−hexadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(m=7に相当)
cis−8,9−octadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(m=8に相当)
cis−9,10−eicosenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(m=9に相当)
cis−10, 11− ethaeicosenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)10−CH〕(m=10に相当)
式(C):HN−CO−(−CH−)k+4−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、kは、6≦k≦10の範囲の整数)
cis−12,13− eicosenoamide〔HN−CO−(−CH−)10−CH=CH−(−CH−)−CH〕(k=6に相当)
cis−13,14−docosenoamide〔HN−CO−(−CH−)11−CH=CH−(−CH−)−CH〕(k=7に相当)
cis−14,15− tetracosenoamide〔HN−CO−(−CH−)12−CH=CH−(−CH−)−CH〕(k=8に相当)
cis−15,16−hexacosenoamide〔HN−CO−(−CH−)13−CH=CH−(−CH−)−CH〕(k=9に相当)
cis−16,17− octacosenoamide〔HN−CO−(−CH−)14−CH=CH−(−CH−)10−CH〕(k=10に相当)
また、分子構造中に不飽和cis構造炭素結合を2結合〜4結合有する化合物である(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドとしては、例えば、分子構造中に不飽和cis構造の炭素二重結合を4結合有する以下の化合物が挙げられる。
cis−5,6−8,9−11,12−14,15−arachidonic acid amide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−CH−CH=CH−CH−CH=CH−CH−CH=CH−(−CH−)−CH
(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドとしては、前記式(C)〜式(C)の脂肪酸アミド、または、前記の分子構造中に2結合〜4結合の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド等から選ばれる1種類の不飽和脂肪酸アミドを使用すれば、十分所期の効果を奏することができるが、2種以上の(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドの混合物を使用してもよい。該脂肪酸アミドの混合物としては、前記の式(C)の脂肪酸アミドを含有するものであることが好ましい。
したがって、好ましい(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドの混合物は、前記の式(C)の脂肪酸アミドと、前記の(C)または(C)の式で表される少なくとも1種の脂肪酸アミドとの混合物である。該混合物中の式(C)の脂肪酸アミドの割合は、0.05〜99.95質量%、好ましくは0.1〜99.9質量%、より好ましくは0.15〜99.85質量%である。したがって、前記の式(C)の脂肪酸アミド、または、式(C)の脂肪酸アミドの割合は、99.95〜0.05質量%、好ましくは99.9〜0.1質量%、より好ましくは99.85〜0.15質量%である。
特に、(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドの混合物が、前記の式(C)の脂肪酸アミド、すなわち、HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、nは、6≦n≦10の範囲の整数)と、前記の式(C)の脂肪酸アミド、すなわち、HN−CO−(−CH−)m−2−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、mは、6≦m≦10の範囲の整数)であって、m=n+1またはm=n−1である該脂肪酸アミドとの混合物であることが好ましい。
具体的には、
式(C)が、cis−9,10−octadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(n=7に相当)であり、
式(C)が、cis−6,7−tetradecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(m=6=n−1に相当)、または、cis−8,9−octadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(m=8=n+1に相当)である組み合わせの混合物などが好ましく使用できる。
また、(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドの混合物が、前記の式(C)の脂肪酸アミド、すなわち、HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、nは、6≦n≦10の範囲の整数)と、前記の式(C)の脂肪酸アミド、すなわち、HN−CO−(−CH−)k+4−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、kは、6≦k≦10の範囲の整数)であって、k=nである該脂肪酸アミドとの混合物であることが好ましい。
具体的には、
式(C)が、cis−9,10−octadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(n=7に相当)であり、式(C)が、cis−13,14−docosenoamide〔HN−CO−(−CH−)11−CH=CH−(−CH−)−CH〕(k=7=nに相当)である組み合わせの混合物などが好ましく使用できる。
さらに、(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドの混合物としては、前記の式(C)の脂肪酸アミドに属し、nの値が異なる2種以上の化合物の混合物を使用することができる。すなわち、(C)HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、nは、6≦n≦10の範囲の整数)と(C11)HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、jは、6≦j≦10の範囲の整数であり、j≠nである。)との混合物を使用することができる。
具体的には、例えば、cis−9,10−octadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(n=7に相当)と、cis−10, 11−eicosenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(j=8に相当)との混合物などが好ましく使用できる。
さらにまた、分子構造中に不飽和cis構造炭素結合を2結合〜4結合有する化合物である(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドを、単独で、または、他の(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドとの混合物として使用することもできる。該他の(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドとしては、前記の式(C)〜(C)の脂肪酸アミドが好ましく用いられ、特に、式(C)の脂肪酸アミドが好ましい。具体的には、cis−5,6−8,9−11,12−14,15−arachidonic acid amide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−CH−CH=CH−CH−CH=CH−CH−CH=CH−(−CH−)−CH〕と、式(C)で表されるcis−9,10−octadecenoamideとの混合物などが好ましく使用できる。
4.(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドの製造方法
本発明における樹脂組成物に含有される(C)の不飽和脂肪酸アミドは、市販品を使用してもよいし、市販品が混合物であったり、不純物を含有する場合は、所望の不飽和脂肪酸アミドを、抽出等により分離して得てもよい。しかし、例えば、前記の式(C)の脂肪酸アミド、すなわち、(C)HN−CO−(−CH−)m−2−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、mは、6≦m≦10の範囲の整数)は、以下の方法により製造することができるので、合成品として得てもよい。
α,ω位にCHO−CO−末端基と水酸基末端またはカルボン酸末端とを有し、(m−1)連鎖のメチレン基(−CH−)m−1を有する以下の(式a)で表される化合物を出発原料とする。((式a)では、水酸基末端を有する化合物を例示している。)
(式a)CHO−CO−(−CH−)m−1−OH
(式a)で表される化合物の水酸基末端を、四臭化炭素(CBr)を用いて臭素置換し、次いで、トリフェニルフォスフィン(PPh,triphenylphosphine)を用いてシアン化メチル(CHCN)溶媒中で、臭素をPPhと反応させ、(式b)で表されるイオン性中間体を得る。
(式b)[CHO−CO−(−CH−)m−1−PPh]+Br
イオン性中間体(式b)に、デシルアルデヒド(decyl aldehyde)を反応させて、PPh基を不飽和cis構造の炭素二重結合を有するアルキル基末端とした(式c)で表されるα,ω構造化合物とする。
(式c)CHO−CO−(−CH−)m−2−CH=CH−(−CH−)−CH
次いで、(式c)のα,ω構造化合物のCHO−CO−末端基に水酸化リチウムを反応させて水酸基末端とし、これを塩化オキサリル(oxalyl chrolide)と塩化メチレンの溶媒中で飽和アンモニウムと反応させることでアミド基末端に変更し、以下の(式d)で表される不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド、すなわち、(C)の脂肪酸アミドを合成する。
(式d)HN−CO−(−CH−)m−2−CH=CH−(−CH−)−CH
m(ただし、mは、6≦m≦10の範囲の整数)を変更することにより、この合成経路を用いて所望の炭素数を有する不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドを得ることができる。
なお、不飽和炭素二重結合を有する脂肪酸アミドの合成においては、周知のように、不飽和cis構造炭素二重結合を有する化合物と不飽和trans構造炭素二重結合を有する化合物とが同時に得られるので、酢酸エチルとヘキサンとを100質量%(初展開)〜40質量%の濃度勾配を付けた混合溶媒を用いて、クロマトグラフィー展開を行い、不飽和cis構造と不飽和trans構造の異性体を分離する。その際、あらかじめ、クロマトグラフィー展開時間毎の分画液に対して、プロトンH−NMR核磁気共鳴装置を使用して、化学シフト値に応じた同定をAldorich製標準物質を基に行い、分画液を特定する。その分画液を減圧乾燥して、所望する不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドを回収する。
5.その他の配合剤
本発明における樹脂組成物は、必要に応じて、その他の配合剤として、更に熱安定剤、光安定剤、着色用顔料、無機フィラーなどの各種添加剤を含有することができる。また、本発明の樹脂組成物は、その他の配合剤として、本発明の目的を損なわない範囲内において、所望により、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、無水マレイン酸変性ポリオレフィンなどの他のポリマーを含有することができる。これら各種添加剤や他のポリマーの含有量は、樹脂組成物中に、通常20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
各種添加剤としては、他の滑剤を使用することもできる。該他の滑剤としては、飽和脂肪酸アミドが好ましく、該飽和脂肪酸アミドを併用することにより、滑り性や表面光沢を更に改善できるなどの効果が奏される。飽和脂肪酸アミドとしては、通常、滑剤として使用されている化合物を使用することができ、例えば、ブチルアミド、吉草酸アミド、カプロン酸アミド、カプリル酸アミド、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミド、ベヘン酸アミドなどが挙げられ、好ましくは、ステアリン酸アミド(stearic acid amide)、ベヘン酸アミド(behenic acid amide)である。
飽和脂肪酸アミドを含有する場合の含有量は、式(C)の不飽和脂肪酸アミドと該飽和脂肪酸アミドの合計量に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6質量%以下であり、その含有量の下限値は、0.5質量%程度であり、1質量%であれば十分な効果が実現できる。
II.樹脂製多層容器
本発明の樹脂製多層容器は、前記の樹脂組成物からなる層を表層に備える樹脂製多層容器である。本発明の樹脂製多層容器は、前記の樹脂組成物からなる層を、表層として有する2層、3層、4層、5層またはそれ以上の多層構成の樹脂製多層容器を含む。
1.表層
樹脂製多層容器における表層としては、該容器の最外層と最内層とがある。本発明の樹脂製多層容器は、前記の樹脂組成物からなる層、すなわち、前記の(A)、(B)、及び(C)を含有する樹脂組成物からなる層を、該容器の最外層または最内層の一方または両方に備えるものであることができる。
本発明の樹脂組成物からなる層を、樹脂製多層容器の最外層に配置することにより、容器の外表面の滑り性が向上するので、容器の製造中、搬送中または内容物の充填中に、隣接する容器同士または装置類との接触等によって、不良品の発生、製造ラインの停止、装置の故障等が生じることを防止できる効果があるとともに、表面光沢も優れたものとなる。
本発明の樹脂組成物からなる層を、樹脂製多層容器の最内層に配置することにより、容器の内表面の滑り性が向上するので、内容物の充填がスムーズに行われ、消費者の使用時に内容物の液切れ性が優れるなどの効果がある。
本発明の樹脂組成物からなる層を、樹脂製多層容器の最外層及び最内層に配置することにより、前記の最外層に配置した場合と、最内層に配置した場合の両方の効果を併せて実現することができる。
2.バリア層
本発明の樹脂製多層容器は、内容物の保存性を高めるために、更にバリア層を備えることが好ましい。該バリア層は、酸素バリア性、炭酸ガスバリア性等のガスバリア性や、水または水蒸気に対するバリア性を有するものを使用することができる。バリア層は、特に限定されず、容器の種類により、金属または無機酸化物を蒸着した樹脂フィルムの層、金属箔やバリア性樹脂の層などを使用することもできる。
バリア層を形成するバリア性樹脂の好ましい例として、エチレン・ビニルアルコール共重合体またはエチレン・酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物(以下、これらを総称して「EVOH」ということがある。)を挙げることができる。さらに、酸素ガスバリア性のみならず、炭酸ガスバリア性にも優れていることから、ガスバリア性樹脂として、ポリグリコール酸を使用することができる。また、メタキシリレンジアミンとアジピン酸から形成される芳香族ポリアミド(MXD6)や、塩化ビニリデン系共重合体などを使用することができる。
EVOHとしては、エチレン含有率が20〜60モル%、好ましくは25〜55モル%、より好ましくは30〜50モル%であるエチレン・酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは97モル%以上、特に好ましくは99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が使用される。このEVOHは、フィルムを形成し得るに足りる分子量を有するものであり、一般に、MFR(190℃、荷重21.18N)が6g/10分以下、好ましくは5g/10分以下、より好ましくは4g/10分以下である。
3.接着層
本発明の樹脂製多層容器は、層間剥離強度を高める目的で、各層間に接着層を介在させることができる。接着層としては、押出加工が可能で、かつ、各樹脂層に良好な接着性を示すものであることが好ましい。樹脂製多層容器が、後述するブロー成形によって製造される多層ブロー成形容器である場合には、耐熱性や成形加工性の観点から、接着層を介在させなくてもよい場合もあるが、機械的特性や耐衝撃性などが要望される用途には、接着層を介在させることが好ましい。
接着層に用いる樹脂としては、例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン等の酸変性ポリオレフィン;グリシジル基含有エチレンコポリマー、熱可塑性ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリアミド・アイオノマー、ポリアクリルイミドなどを挙げることができる。
接着層に用いる樹脂には、所望により、無機フィラー、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、染料などの各種添加剤を含有させることができる。
4.回収層
本発明の樹脂製多層容器は、容器の強度を高め、また、資源のリサイクル性を高めるために、回収層を備えるものであることが好ましい。
回収層は、本発明の樹脂製多層容器それ自体から回収される材料(バリや製品容器の不要部分、製品規格外のボトルの回収品など)、または、本発明の樹脂製多層容器を製造する工程において回収される材料を、主成分として含有する層である。特に、本発明の樹脂製多層容器が、後述するブロー成形によって製造されるものである場合は、予備成形品であるパリソンにブローエアーを導入した後の成形容器の頭部(以下、「袋部」ということがある。)を切除する必要があるが、該切除された袋部を、破砕機にて粉末化した回収樹脂を原料として、回収層とすることができる。また、ブロー成形容器の前記の袋部以外の部分を切除して回収した樹脂や、成形前のパリソン、更には、樹脂製多層容器の各層を形成する材料や原料などを、主成分として含有するものでもよい。
回収層には、更に本発明の樹脂製多層容器の各層を形成するための原材料、例えば、種々の樹脂原料や配合剤、接着剤等を含有させてもよい。
5.多層容器
本発明の樹脂製多層容器は、前記の(A)、(B)、及び(C)を含有する樹脂組成物からなる層を表層として備えるものであり、好ましくは、層構成として、表層、バリア層、接着層、及び、回収層を備える樹脂製多層容器である。更に好ましくは、最外層/接着層/バリア層/接着層/回収層/最内層からなる層構成を備える樹脂製多層容器である。
本発明の樹脂製多層容器の厚みは、特に限定されないが、容器胴部(側壁)の全層厚みは、通常20μm〜5mm、好ましくは100μm〜3mm、より好ましくは200μm〜1mmの範囲内である。
全層厚みに対する表層の厚み(最外層及び/または最内層の合計厚みを意味する。)は、全層厚みに対して通常50〜90%(厚み比率)である。
表層は、好ましくは55〜85%(厚み比率)、より好ましくは60〜80%(厚み比率)である。回収層は、通常5〜30%(厚み比率)であり、好ましくは10〜25%(厚み比率)、より好ましくは15〜25%(厚み比率)である。バリア層は、通常1〜10%(厚み比率)であり、好ましくは2〜8%(厚み比率)、より好ましくは3〜6%(厚み比率)である。接着層は、合計で、通常0.005〜2%(厚み比率)であり、好ましくは0.007〜1.5%(厚み比率)、より好ましくは0.008〜1.2%(厚み比率)である。
本発明の樹脂製多層容器における表層(最外層及び最内層)のうち最外層の表層全体に占める比率は、特に限定されないが、通常10〜80%(厚み比率)、好ましくは15〜75%(厚み比率)、より好ましくは20〜70%(厚み比率)、特に好ましくは25〜65%(厚み比率)である。
本発明の樹脂製多層容器は、容器全体の厚みが、均一でもよいが、部分により厚みを変化させてもよい。多層容器の底部は、一般に、厚みを大きくすることが好ましい。
本発明の樹脂製多層容器の容積は、特に限定されないが、好ましくは100〜3000cm、より好ましくは200〜2000cm、更に好ましくは300〜1000cmの範囲の容積を有する樹脂製多層容器である。
[表面滑り摩擦係数]
本発明の樹脂製多層容器は、前記の(A)、(B)、及び(C)を含有する樹脂組成物からなる層を表層として備えることにより、滑り性に優れた容器である。該表層が、最外層または最内層の一方または両方であることにより、樹脂製多層容器の外表面及び/または内表面の滑り性を優れたものとすることができる。樹脂製多層容器の滑り性は、JIS K7125に準じる方法で測定した表面滑り摩擦係数によって評価することができる。具体的には、容器に温度23℃の水を満充填した後、低密度ポリエチレン(LDPE)を備える2層構成(アルミニウム/LDPE)のシール材を用いて、シール材のLDPE側を容器の口部に載せて、加熱溶着して、容器の口部を密封する。この容器の口部は、該口部の外周部に蓋を螺着するための螺条を備えている。容器を引っ張るためのワイヤを蓋に固着し、次いで、蓋を容器の口部に螺着する。該容器を、ステンレス鋼の平板上に水平に横置きし、引張圧縮試験機を使用して、容器の口部に取り付けたワイヤを速度86mm/分で約2cm水平に引っ張ったときの最大引張荷重値を求め、該荷重値を容器の総重量で割り算して、容器の表面滑り摩擦係数とする。滑り摩擦が0.40以下であれば、滑り性が良好であるといえ、好ましくは0.38以下、より好ましくは0.35以下である。
[表面光沢]
本発明の樹脂製多層容器は、前記の(A)、(B)、及び(C)を含有する樹脂組成物からなる層を表層として備えることにより、優れた表面光沢を有する容器である。樹脂製多層容器の表面光沢は、JIS Z8528に準じる方法で測定することができる。具体的には、容器の底部から20〜100mm上方の胴部から、容器を立てるときの底部面に対する法線方向(T方向)60mm、容器を立てるときの底部面に対する平行な方向(L方向)80mmを切り出して試料とし、温度23℃の空調雰囲気において、グロスメーターにより該試料の光沢(60°グロス値(%))をT方向及びL方向について測定して、T方向及びL方向の測定値の平均値を容器の表面光沢とする。表面光沢のグロス値が40%以上であれば、光沢が良好であるといえる。
III.容器の製造方法
本発明の樹脂製多層容器は、ブロー成形容器(延伸ブロー成形容器を含む。)、射出成形容器、フィルムまたはシートから折り曲げ及び接着により作製された包装袋、シートを真空成形及び/または圧空成形してなるトレーやカップなど、様々な形状とすることができる。これらの中でも、ブロー成形容器が好ましく、ダイレクトブロー成形容器、すなわち、ダイレクトブロー成形によって成形された樹脂製多層容器がより好ましい。
したがって、本発明の樹脂製多層容器は、ブロー成形(延伸ブロー成形を含む。)、射出成形、フィルムまたはシートの折り曲げ及び接着、シートの真空成形及び/または圧空成形などによって様々な形状の容器を成形して製造することができる。例えば、あらかじめ製造した多層のシートまたはフィルムの三方または四方をシールして、包装用袋である樹脂製多層容器を製造することができる。また、あらかじめ製造した多層のシートまたはフィルムを、シート成形法(真空成形及び/または圧空成形)により、トレー、カップなどの形状の樹脂製多層容器を製造することができる。
これらの中でも、ブロー成形によって樹脂製多層容器を製造することが好ましく、多層のパリソン(以下、「多層パリソン」ということがある。)を、容器形状のキャビティ壁を備える割型内でブロー成形することによって、ブロー成形品である多層容器を製造する。ブロー成形は、多層パリソンを製造した後、常温または室温に冷却しておき、ブロー成形を行うときに所定温度まで加熱するコールドパリソン方式によってもよいし、多層パリソンを製造し、続いてブロー成形を行うホットパリソン方式によってもよい。多層パリソンは、多層射出成形により製造することもできるが、溶融共押出によって筒状(以下、「管状」または「パイプ状」ということがある。)の多層パリソンを製造する方法が好ましく、共押出した多層のパリソンを続けてブロー成形するダイレクトブロー成形によって製造することが好ましい。以下、本発明の樹脂製多層容器をダイレクトブロー成形によって製造する場合について説明する。
1.多層パリソンの製造
所定の多層構成を有する多層パリソンを共押出によって製造する方法としては、管状ダイを用いた共押出法、Tダイを用いた共押出法、インフレーション成形による共押出法などの方法が挙げられるが、いわゆるボトル形状の容器をブロー成形によって製造する場合は、管状ダイを用いた共押出法により筒状(パイプ状)の多層パリソンを製造することが好ましい。管状ダイを用いた共押出法で多層パリソンを製造する場合は、樹脂の種類に対応する数の押出機を使用し、各層に対応する樹脂をそれぞれ管状に展開しながら、ダイ通路内で溶融樹脂を積層体の順序となるように合流させる。表層である最内層と最外層が同種の樹脂からなる場合には、更に分岐チャンネルを経て、他の層を形成する樹脂原料等を挟み込むように分岐させ、その後、押出ダイ内で合流させ、管状形状のダイヘッドから所定の層構成に整列積層した状態で樹脂を押し出す。ダイヘッドの温度は通常120〜240℃であり、好ましくは130〜230℃、より好ましくは140〜220℃の範囲の温度を採用することができる。ダイオリフィスの形状としては、円形のほか偏平形状のものも使用可能である。管状ダイを用いた共押出法によれば、多層パリソンの肉厚の変更制御を比較的容易に行うことができる。
なお、先に述べたように、多層パリソンを共射出成形によって製造することもできる。複数台の射出シリンダを備えた成形機を用いて、単一のパリソン用射出成形金型のキャビティ内に、一回の型締め動作で、1つのゲートから、溶融した表層(最外層及び/または最内層)を形成する樹脂組成物及び他の層を形成する樹脂材料を共射出して有底の多層パリソンを形成する。多層パリソンの底部の一部若しくは全部には、バリア層が存在していなくてもよい。一般に、底部の厚みは胴部の厚みに比べて大きいため、底部が実質的に熱可塑性樹脂組成物層だけでもバリア性を発揮することができる。胴部のみにバリア層を配置することにより、多層容器の機械的強度の低下を防ぐとともに、バリア層の厚みを均一に制御することが容易になる。
2.ブロー成形
ブロー成形では、前記の方法で共押出した筒状の多層パリソンを、割金型で挟んで、下端を融着して塞ぐとともに、上端を切断した後、開口した上端から加圧流体を吹き込んで容器形状に成形した後、不要となる容器口部の上部(頭部または袋部)を切除して、樹脂製多層容器を得る。
ブロー成形用の割金型としては、鏡面仕上げのものでも、サンドブラスト加工したものでも使用でき、割金型の表面温度は一般に10〜50℃の範囲にあることが好ましい。また、ブロー成形用の流体としては、滅菌処理した空気を用いることが好ましく、その圧力は1.0〜15kg/cmの範囲にあるのが適当である。
本発明の樹脂製多層容器は、延伸ブロー成形して製造することもできる。延伸ブロー成形工程では、多層パリソンを延伸可能な温度に調整した後、ブロー成形用金型のキャビティ内に挿入し、空気などの加圧流体を吹き込んで延伸ブロー成形を行う。長さ方向の延伸を行うためには、延伸ロッドを使用してもよい。延伸ブロー成形は、ホットパリソン方式またはコールドパリソン方式のいずれかの方式により行うことができる。全延伸倍率は、通常6〜9倍、耐圧ボトルでは8〜9.5倍、耐熱ボトルでは6〜7.5倍、大型ボトルでは7〜8倍程度である。
内容物の熱充填に適した耐熱性の樹脂製多層容器を製造する場合には、熱充填時の容器の熱収縮・変形を防止するために、ブロー成形用金型の温度を100℃以上に昇温し、金型内で熱処理(熱固定)してもよい。金型温度は、100〜165℃であり、一般耐熱容器の場合は145〜155℃、高耐熱容器の場合には、160〜165℃の範囲とすることが好ましい。熱処理時間は、多層容器の厚みや熱処理温度により変動するが、通常1〜30秒間、好ましくは2〜20秒間である。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を更に説明するが、本発明は、本実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例における樹脂原料及び容器の特性または物性の測定方法は、以下のとおりである。
[密度及びMFR]
樹脂の密度及びMFR(温度190℃、荷重21.18N)は、JIS K6922−2に従って測定した。
[結晶融点]
樹脂の結晶融点は、JIS K7121に従って測定した。
[多分散度(Mw/Mn)]
樹脂の分子量分布の指標である多分散度(Mw/Mn)は、JIS K7252に従って測定した。
[α−オレフィン含有率]
(A)のチーグラー触媒ランダム共重合体中のα−オレフィン含有率(質量%)は、日本電子株式会社製FT−NMRの270MHzの装置を使用して、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて測定した。
[表面滑り摩擦係数]
容器の表面滑り摩擦係数は、JIS K7125に準じる方法で測定した。具体的には、容器に温度23℃の水を満充填した後、2層構成(アルミニウム/LDPE)のシール材を用いて、シール材のLDPE側を容器の口部に載せて、加熱溶着して、容器の口部を密封する。この容器の口部は、該口部の外周部に蓋を螺着するための螺条を備えている。容器を引っ張るためのワイヤを蓋に固着し、次いで、蓋を容器の口部に螺着する。該容器を、ステンレス鋼の平板上に水平に横置きした。株式会社今田製作所製引張圧縮試験機、製品名SV50を使用し、容器の口部にワイヤを取り付けて、速度86mm/分で約2cm水平に引っ張ったときの最大引張荷重値を求め、容器の総重量で割り算して、容器の表面滑り摩擦係数とした。
[表面光沢]
容器の表面光沢は、表面滑り摩擦係数の測定に用いた容器について、JIS Z8528に準じる方法で測定した。具体的には、容器の底部から20〜100mm上方の胴部から、容器を立てるときの底部面に対する法線方向(T方向)60mm、容器を立てるときの底部面に対する平行な方向(L方向)80mmを切り出して試料とした。温度23℃の空調雰囲気において、市販のグロスメーターにより該試料の光沢(60°グロス値(%))をT方向及びL方向について測定し、T方向及びL方向の測定値の平均値を容器の表面光沢とした。
〔実施例1〕
複数の押出機と多層ダイを用いて、層構成が、最外層/接着層/バリア層/接着層/回収層/最内層である筒状パリソンを押し出し、ロータリー式のダイレクトブロー成形機により、内容積が500cmの多層構成の樹脂製多層容器(以下、「多層容器」という。)を成形した。多層容器の質量は、20gであった。
(1)表層(最外層及び最内層):
(A)チーグラー・ナッタ触媒を用いて得られた、結晶融点が125〜165℃であるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体:日本ポリエチレン株式会社製の商品名ノーブレン(登録商標)〔密度0.905g/cm、MFR(温度190℃、荷重21.18N)3.5g/10分、結晶融点132℃、多分散度(Mw/Mn)=3、α−オレフィン含有率4質量%〕90質量%、及び
(B)メタロセン触媒を用いて得られた、ポリプロピレンからなる重合体のブロックと、エチレン・プロピレン共重合体からなる重合体のブロックと、からなるブロック共重合体:日本ポリエチレン株式会社製の商品名カーネル(登録商標)〔密度0.905g/cm、MFR(温度190℃、荷重21.18N)3.5g/10分、結晶融点97℃〕10質量%
〔ただし、(A)及び(B)の質量%は、(A)及び(B)の合計を100質量%としたときの値である。以下同様。〕、
並びに、
(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド:cis−9,10−octadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(99.8質量%;式(C)の不飽和脂肪酸アミド)及びcis−5,6−8,9−11,12−14,15−arachidonic acid amide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−CH−CH=CH−CH−CH=CH−CH−CH=CH−(−CH−)−CH〕(0.2質量%)の混合物(C)を、(A)と(B)の合計質量部に対して、130ppmとなるように配合した。〔したがって、(C)の合計含有量(ppm)は、(A)及び(B)の合計質量部に対する比率として表される。以下の実施例及び比較例においても同様である。〕
(2)バリア層:株式会社クラレ製の商品名エバール(登録商標)〔エチレン含有率が44モル%であるエチレン・ビニルアルコール共重合体。密度1.140g/cm、MFR(190℃、荷重21.18N)1.7g/10分、結晶融点165℃〕
(3)回収層:本実施例により製造した多層容器をダイレクトブロー成形する際に生じる容器の頭部(=袋部)を切除して、破砕機にてそれを粉末化した樹脂(回収樹脂)を原料とした。
(4)接着層:三菱化学株式会社製の無水マレイン酸変性ポリオレフィン、商品名モディック(登録商標)
(1)〜(4)の層の厚み比率は、75:4:20:1とした。成形された容器の表面滑り摩擦係数(以下、「滑り摩擦」という。)及び表面光沢を測定した結果を表1に示す。
〔実施例2〕
(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドを、cis−9,10−octadecenoamide〔式(C)〕(99.0質量%)、及びcis−8,9−octadecenoamide 〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH;式(C)の不飽和脂肪酸アミド〕(1.0質量%)の混合物(C)に変更し、1500ppmとなるように配合した変更を除いて、実施例1と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器の滑り摩擦及び表面光沢を測定した結果を表1に示す。
〔実施例3〕
(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドを、cis−9,10−octadecenoamide〔式(C)〕 (85.0質量%)及びcis-10,11-eicosenoamide 〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH;式(C11)の不飽和脂肪酸アミド〕(15.0質量%)の混合物(C)に変更し350ppmとなるように配合した変更を除いて、実施例1と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器の滑り摩擦及び表面光沢を測定した結果を表1に示す。
〔実施例4〕
(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドを、cis−9,10−octadecenoamide〔式(C)〕 (98.0質量%)及びcis-13,14-docosenoamide 〔HN−CO−(−CH−)11−CH=CH−(−CH−)−CH;式(C)の不飽和脂肪酸アミド〕(2.0質量%) の混合物(C)に変更し、3500ppmとなるように配合した変更を除いて、実施例1と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器の滑り摩擦及び表面光沢を測定した結果を表1に示す。
〔実施例5〕
(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドを、cis-13,14-docosenoamide〔式(C)〕 (98.0質量%)及びcis−9,10−octadecenoamide〔式(C)〕 (2.0質量%)の混合物(C)に変更したことを除いて、実施例4と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器の滑り摩擦及び表面光沢を測定した結果を表1に示す。
〔実施例6〕
(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドを、cis−9,10−octadecenoamide〔式(C)〕 (95.0質量%)及びcis−13,14−docosenoamide〔式(C)〕(3.0質量%)の割合の混合物(C)に変更し、更に飽和脂肪酸アミドであるbehenic acid amideを2.0質量%の割合で含有させ、これら不飽和脂肪酸アミドと飽和脂肪酸アミドとの合計含有量を1000ppmとなるように配合した変更を除いて、実施例4と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器の滑り摩擦及び表面光沢を測定した結果を表1に示す。
〔実施例7〕
(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドを、cis−9,10−octadecenoamide〔式(C)〕 (92.0質量%)及びcis−13,14−docosenoamide〔式(C)〕 (3.0質量%)の割合の混合物(C)に変更し、更に飽和脂肪酸アミドであるstearic acid amideを5.0質量%の割合で含有させ、これら不飽和脂肪酸アミドと飽和脂肪酸アミドとの合計含有量が1000ppmとなるように配合した変更を除いて、実施例4と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器の滑り摩擦及び表面光沢を測定した結果を表1に示す。
〔比較例1〕
(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドを、trans−9,10−octadecenoamide〔式(C)の不飽和脂肪酸アミドのtrans構造に相当する。〕 (単独使用)に変更したことを除いて、実施例4と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器の滑り摩擦及び表面光沢を測定した結果を表1に示す。
〔比較例2〕
trans−9,10−octadecenoamide〔式(C)の不飽和脂肪酸アミドのtrans構造に相当する。〕 (単独使用)を、trans−9,10−octadecenoamide(98.0質量%)と飽和脂肪酸アミドであるstearic acid amide(2.0質量%)との混合物に変更し、これら不飽和脂肪酸アミドと飽和脂肪酸アミドとの合計含有量が3000ppmとなるように配合した変更を除いて、比較例1と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器の滑り摩擦及び表面光沢を測定した結果を表1に示す。
Figure 2012240701
表1の結果から、(A)、(B)、及び(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドを含有する樹脂組成物からなる層を表層として備える樹脂製多層容器であって、該樹脂組成物が、(I)(A)及び(B)の合計を100質量%としたときに、(B)が0.5〜40質量%;及び(II)(A)及び(B)の合計質量部に対して、(C)が100〜4000ppm;を満足する、実施例1〜7の樹脂製多層容器は、表面滑り摩擦係数が0.22〜0.38で、表面の滑り性が良好であり、かつ、表面光沢のグロス値が42〜52%で、光沢が良好であり、滑り性と表面光沢がバランスよく改善されていることが分かった。
これに対し、(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドに代えて、不飽和trans構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドを含有させた比較例1及び2の樹脂製多層容器は、表面滑り摩擦係数が0.44または0.43と大きく、ベタ付き感があり、滑り性が不足するものであった。
〔実施例8〕
表層を、(A)97質量%及び(B)3質量%に変更し、また、(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドを400ppmとなるように配合した変更を除いて、実施例2と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器の滑り摩擦及び表面光沢を測定した結果を表2に示す。
〔実施例9〕
表層を、(A)70質量%及び(B)30質量%に変更したことを除いて、実施例8と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器の滑り摩擦及び表面光沢を測定した結果を表2に示す。
〔実施例10]
表層について、結晶融点132℃、α−オレフィン含有率が4質量%である(A)のチーグラー触媒ランダム共重合体を、結晶融点160℃、α−オレフィン(エチレン)含有率が1質量%であるプロピレン・エチレンランダム共重合体に変更したことを除いて、実施例3と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器の滑り摩擦及び表面光沢を測定した結果を表2に示す。
〔比較例3〕
表層を、(A)50質量%及び(B)50質量%に変更し、(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドを5000ppmとなるように配合した変更を除いて、実施例2と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器の滑り摩擦及び表面光沢を測定した結果を表2に示す。
〔比較例4〕
表層を、(B)100質量%〔(A)を含有しない。〕に変更し、(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドを4000ppmとなるように配合した変更を除いて、比較例3と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器の滑り摩擦及び表面光沢を測定した結果を表2に示す。
〔比較例5〕
表層を、(A)100質量%〔(B)を含有しない。〕に変更し、(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドを80ppmとなるように配合した変更を除いて、比較例3と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器の滑り摩擦及び表面光沢を測定した結果を表2に示す。
Figure 2012240701
表2の結果から、(A)、(B)、及び(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドを含有する樹脂組成物からなる層を表層として備える樹脂製多層容器であって、該樹脂組成物が、(I)(A)及び(B)の合計を100質量%としたときに、(B)が0.5〜40質量%;及び(II)(A)及び(B)の合計質量部に対して、(C)が100〜4000ppm;を満足する、実施例8〜10の樹脂製多層容器は、表面滑り摩擦係数が0.34〜0.38で、表面の滑り性が良好であり、かつ、表面光沢のグロス値が49〜51%で、光沢が良好であり、滑り性と表面光沢がバランスよく改善されていることが分かった。
これに対し、表層(最外層及び最内層)が、(B)を多量に含有するとともに、(C)を多量に含有する樹脂組成物からなる比較例3の樹脂製多層容器は、表面光沢のグロス値が35%で、光沢が良好でないことが分かった。さらに、表層(最外層及び最内層)が、(A)を含有しない樹脂組成物からなる比較例4の樹脂製多層容器は、表面光沢のグロス値が36%で、光沢が良好でなく、かつ、表面滑り摩擦係数が0.53と大きく、ベタ付き感があり、滑り性が不足するものであった。さらにまた、表層(最外層及び最内層)が、(B)を含有せず、(C)の含有量が小さい比較例5の樹脂製多層容器は、表面滑り摩擦係数が0.41と大きく、ベタ付き感があり、滑り性が不足するものであった。
本発明は、(A)チーグラー・ナッタ触媒を用いて得られた、結晶融点が125〜165℃であるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、(B)メタロセン触媒を用いて得られた、ポリプロピレンからなる重合体のブロックと、エチレン・プロピレン共重合体からなる重合体のブロックと、からなるブロック共重合体、及び(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドを含有する樹脂組成物からなる層を表層として備える樹脂製多層容器であって、
該樹脂組成物が、以下の(I)及び(II):
(I)(A)及び(B)の合計を100質量%としたときに、(B)が0.5〜40質量%;及び
(II)(A)及び(B)の合計質量部に対して、(C)が100〜4000ppm;
を満足する前記の樹脂製多層容器であることによって、ボトルの成形から、内容物の充填、移送、包装の各工程における様々な環境温度に応じた滑り性を発揮でき、また、容器に充填されている内容物の液切れ性が改善され、かつ、表面光沢にも優れた樹脂製多層容器を提供することができるので、生産性が高く、また、輸送時や保管時の信頼性が高く、かつ、使用者の満足度が向上した樹脂製多層容器を提供することができるので、産業上の利用可能性が高い。

Claims (14)

  1. (A)チーグラー・ナッタ触媒を用いて得られた、結晶融点が125〜165℃であるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、(B)メタロセン触媒を用いて得られた、ポリプロピレンからなる重合体のブロックと、エチレン・プロピレン共重合体からなる重合体のブロックと、からなるブロック共重合体、及び(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドを含有する樹脂組成物からなる層を表層として備える樹脂製多層容器であって、
    該樹脂組成物が、以下の(I)及び(II):
    (I)(A)及び(B)の合計を100質量%としたときに、(B)が0.5〜40質量%;及び
    (II)(A)及び(B)の合計質量部に対して、(C)が100〜4000ppm;
    を満足することを特徴とする前記の樹脂製多層容器。
  2. 前記の(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドが、以下の(C)、(C)及び(C):
    (C)HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、nは、6≦n≦10の範囲の整数);
    (C)HN−CO−(−CH−)m−2−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、mは、6≦m≦10の範囲の整数);及び
    (C)HN−CO−(−CH−)k+4−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、kは、6≦k≦10の範囲の整数);
    からなる群より選ばれる一つの式で表される少なくとも1種の脂肪酸アミドを含有する請求項1に記載の樹脂製多層容器。
  3. 前記の(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドが、前記の(C)の式で表される脂肪酸アミドと、前記の(C)または(C)の式で表される少なくとも1種の脂肪酸アミドとの混合物である請求項2に記載の樹脂製多層容器。
  4. 前記の(C)の式で表される脂肪酸アミドにおけるmが、m=n+1またはm=n−1である請求項3に記載の樹脂製多層容器。
  5. 前記の(C)の式で表される脂肪酸アミドにおけるkが、k=nである請求項3に記載の樹脂製多層容器。
  6. 前記の(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドが、前記の(C)の式で表される脂肪酸アミドと、以下の(C11):
    (C11)HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、jは、6≦j≦10の範囲の整数であり、j≠nである。);
    の式で表される脂肪酸アミドとの混合物である請求項2に記載の樹脂製多層容器。
  7. 前記の(C)不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドが、分子構造中に不飽和cis構造炭素結合を2結合〜4結合有する化合物を含有する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の樹脂製多層容器。
  8. 前記の樹脂組成物が、更に飽和脂肪酸アミドを含有する請求項1乃至7のいずれか1項に記載の樹脂製多層容器。
  9. 前記の表層が、最外層または最内層の一方または両方である請求項1乃至8のいずれか1項に記載の樹脂製多層容器。
  10. 更にバリア層を備える請求項1乃至9のいずれか1項に記載の樹脂製多層容器。
  11. 前記のバリア層が、エチレン・ビニルアルコール共重合体またはポリグリコール酸である請求項10に記載の樹脂製多層容器。
  12. 更に回収層を備える請求項1乃至11のいずれか1項に記載の樹脂製多層容器。
  13. 前記の樹脂製多層容器が、表層、バリア層、接着層、及び、回収層を備えるものである請求項1乃至12のいずれか1項に記載の樹脂製多層容器。
  14. 前記の樹脂製多層容器が、最外層/接着層/バリア層/接着層/回収層/最内層からなる請求項1乃至13のいずれか1項に記載の樹脂製多層容器。
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