JP2018153943A - ポリオレフィン系樹脂積層フィルム、該積層フィルムを用いた医療用具及び医療用包装体 - Google Patents
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本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、耐寒性と耐熱性の双方に優れ、生産性の効率がよく、かつ医療用具に用いる際に実用性に優れたポリオレフィン系樹脂積層フィルム、該積層フィルムを用いた医療用具及び医療用包装体を提供することを目的とする。
また、本発明において、「X以上」(Xは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
図1は、本実施形態に係るポリオレフィン系樹脂積層フィルムの構造を模式的に示す断面図である。本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルム(以下、単に「積層フィルム」ということがある。)1は、表層12−1、中間層11、裏層12−2の3層を有する。表層12−1は、中間層11の一方の面11A側に積層している。裏層12−2は、中間層11の他方の面11B側に積層している。積層フィルム1は、該3層を有することで、中間層11の柔軟性と、表層12−1及び裏層12−2の耐熱性との両方を具備することができる。また、積層フィルム1は、層間密着性や更なる機能性賦与の観点から、表層12−1、中間層11、裏層12−2の3層以外の層を有し、4層以上を有する構成にしても良い。積層フィルム1は、表層12−1若しくは裏層12−2を2層以上有しても良く、又は中間層11を2層以上有しても良い。上限については特に制限は無いが、生産設備が複雑になり生産性が悪化する可能性がある為、20層以下が好ましい。
本発明の積層フィルム1が有する表層12−1及び裏層12−2(以下、単に「表裏層12−1及び12−2」ということがある)とは、それぞれ外面に接触する層及び内容物に接触する層をいう。表裏層12−1及び12−2のいずれもがポリオレフィン系樹脂を含むことが好ましい。また、表裏層12−1及び12−2は、ポリオレフィン系樹脂のみからなることがより好ましい。
本発明の積層フィルム1が有する中間層11は、表層(12−1)と裏層(12−2)との間に配置される層をいう。
中間層11は、ポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂とを含む。中間層11にポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂とを含めることで、積層フィルム1に良好な柔軟性と耐熱性が賦与される。
ここで、中間層11に含まれるポリエチレン系樹脂とは、エチレンとα−オレフィンとの共重合体をいう。エチレンとα−オレフィンとの共重合体は、積層フィルム1とした際に優れた柔軟性と耐寒性を発現させることができる。エチレンとα−オレフィンとの共重合の規則性については、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体などが挙げられるが、耐熱性の観点でブロック共重合体が好ましい。
エチレンとα−オレフィンとの共重合体におけるα−オレフィンの共重合比率は、30質量%以上50質量%以下であることが好ましい。30質量%以上であることで、積層フィルム1にした際の柔軟性を発現させることができる。50質量%以下であることで、積層フィルム1にした際の耐熱性を発現させることができる。より好ましくは32質量%以上48質量%以下、更に好ましくは34質量%以上46質量%以下である。
試料約200mgを外径10mmのNMR試料管に量りとり、重オルトジクロロベンゼンと重パラジクロロベンゼンとの質量比7/1の混合溶液2.7mLを加えて130℃で溶解した。Variant社製Unity400を用い、周波数100MHz、フリップ角900°、パルス繰り返し時間20s、積算回数3200回、温度130℃にて測定し、エチレン主鎖のシグナルを30.0ppmとして13C−NMRスペクトルを帰属し、α−オレフィンの含有量を求めた。
ポリエチレン系樹脂のMFRはISO 1133に基づき、190℃、2.16kgにて測定される。
ここで、中間層11に含まれるポリプロピレン系樹脂とは、構成単位にプロピレンを有する重合体であり、例えば、ホモポリプロピレン、ランダムプロピレン、ブロックポリプロピレン、ポリプロピレン系エラストマーなどが挙げられる。これらのポリプロピレン系樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
ポリプロピレン系樹脂の融解ピーク温度は、JIS K−7121に準拠し、示差走査型熱量計(パーキルエルマー社製DSC8500)を使用し、−50℃から200℃までの温度範囲を10℃/分の昇温速度にて測定される。
ポリプロピレン系樹脂のMFRはISO 1133に基づき、230℃、2.16kgにて測定される。
本発明の積層フィルム1は、前述の3層以外に、更なる層を有していても良い。更なる層の例としては、層間強度を向上する為の接着層、フィルムの透過性を阻害する為のバリア層、フィルムの視認性を向上する為の着色層などが挙げられる。更なる層は、中間層11中、中間層11と表層12−1との間、又は中間層11と裏層12−2との間のいずれにも配置しても構わない。
本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルム1は、必要に応じて各層に滑材、防曇剤、酸化防止剤、安定剤、アンチブロッキング剤等の添加剤を添加することもでき、Tダイ法、水冷インフレーション法、空冷インフレーション法、ラミネーション法などの製法により製造することができる。これらの中でも衛生性の観点でTダイ法や水冷インフレーション法が好ましい。
本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルム1は医療用具に適用することができる。医療用用具としては、医療用包装体及び医療用チューブなどが挙げられる。医療用包装体は、積層フィルム1を用いて血液等の内容物を収容して包装するものであり、血液バッグ、血小板保存バッグ、輸液(薬液)バッグ、人工透析用バッグ、及び栄養バッグなどが挙げられる。医療用包装体の形状は、内容物の形状や使用目的によって適宜選択され、例えば、内容物の周囲を直線や曲線でシールした袋体、底面に奥行きを持たせた縦置きできるパウチなどが挙げられる。又、医療用包装体をフックに引っ掛ける為にシール部に穴を設けたりすることができる。医療用チューブは、血液、薬液、栄養剤などを輸送するものであり、輸血用チューブ、血管造影用チューブ、気管内チューブ、及び栄養チューブなどが挙げられる。
先ずは、実施例・比較例で得たサンプルの各種物性値の測定方法及び評価方法について説明する。
1/1000mmのダイアルゲージにて、ポリオレフィン系樹脂積層フィルムを不特定に5箇所測定し、その平均値をポリオレフィン系樹脂積層フィルムの厚みとした。
作製したポリオレフィン系樹脂積層フィルムにおいて、その断面SEMを測定することで、表層・裏層のそれぞれの厚みを測定した。なお、本実施例では便宜上、キャスト面側の表裏層を裏層、非キャスト面側の表裏層を表層とした。
作製したポリオレフィン系樹脂積層フィルムにおいて、その断面SEMを測定することで、中間層の厚みを測定した。
作製したポリオレフィン系樹脂積層フィルムの耐寒性を下記の基準で評価した。
なお、脆化温度はJIS K 7216に準拠して測定した。
○:ポリオレフィン系樹脂積層フィルムの脆化温度が−60℃以下である。
△:ポリオレフィン系樹脂積層フィルムの脆化温度が−60℃より高く、−50℃以下である。
×:ポリオレフィン系樹脂積層フィルムの脆化温度が−50℃より高い。
作製したポリオレフィン系樹脂積層フィルムを50mm×100mmの大きさに切り出し、正方20mmピッチの金網の上に乗せ、131℃の熱処理オーブンで1時間熱処理を行なった後、フィルム外観を下記の基準で評価し、耐熱性を評価した。
○:ポリオレフィン系樹脂積層フィルムに外観上の変化がない。
△:金網のピッチに沿ってポリオレフィン系樹脂積層フィルムに変形痕が残る。
×:ポリオレフィン系樹脂積層フィルムが明らかに形状を維持していない。
作製したポリオレフィン系樹脂積層フィルムを長手方向、幅方向にそれぞれ10mm×200mmの短冊状に切り出し、131℃の熱処理オーブンで1時間熱処理を行なった後に長手方向、幅方向それぞれの短冊の熱収縮率を下記の計算式にて測定し、相加平均したものをポリオレフィン系樹脂積層フィルムの熱収縮率とした。
熱収縮率 = {(熱処理前の長さ)−(熱処理後の長さ)}/(熱処理前の長さ)
作製したポリオレフィン系樹脂積層フィルムを直径3インチのプラスチック製コアに巻取り、その捲回性を以下基準で判断した。
○:フィルム同士が癒着せず、容易に巻き解くことができる。
×:フィルム同士が癒着して、容易に巻き解くことができない。あるいは巻き解けたとしてもフィルムに変形が残る。
ポリエチレン系樹脂(ダウケミカル社製「INFUSE 9000」、α−オレフィンの炭素数:8、MFR:0.5g/10min)70質量部と、ポリプロピレン系樹脂(三菱化学社製「ゼラス 7055」、融解ピーク温度:162℃、MFR:7g/10min)30質量部をブレンドし、東芝機械株式会社製の同方向二軸押出機(口径:40mmφ、L/D:32)に投入し、設定温度200℃で溶融混合後、水槽にてストランドを冷却固化し、ペレタイザーにてストランドをカットし、ポリオレフィン系樹脂のペレットを作製した。
層構造がB/A/Bとなる2種3層構造のTダイに2台の三菱重工株式会社製の32mm単軸押出機を接続し(それぞれA押出機、B押出機と呼ぶ)、A押出機からは、上記にて作製したポリオレフィン系樹脂ペレットを投入し、B押出機からポリプロピレン系樹脂(三菱化学社製「ゼラス MC745」、融解ピーク温度:162℃、MFR:2.5g/min)をそれぞれ厚さ比B:A:B=1:8:1で、200℃で押出し、40℃の冷却ロールにより急冷し巻き取ることにより、2種3層構造の、幅400mm、厚さ300μmの実施例1に係るポリオレフィン系樹脂積層フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
A押出機に投入するポリオレフィン系樹脂ペレットに含まれるポリプロピレン系樹脂(三菱化学社製「ゼラス 7055」)を、日本ポリプロ社製「ウェルネクス RFG4VM」(融解ピーク温度:128℃、MFR:6g/10min)に変更した点以外は、実施例1と同様にして膜状物を得た。評価結果を表1に示す。
B押出機に投入するポリプロピレン系樹脂(三菱化学社製「ゼラス MC745」を、東ソー社製ポリエチレン系樹脂「FY13」(MFR:1.1g/10min)に変更した点以外は、実施例1と同様にして膜状物を得た。評価結果を表1に示す。
ポリエチレン系樹脂(ダウケミカル社製「INFUSE 9000」、α−オレフィンの炭素数:8、MFR:0.5g/10min)65質量部と、ポリプロピレン系樹脂(三菱化学社製「ゼラス 7055」、融解ピーク温度:162℃、MFR:7g/10min)35質量部をブレンドし、東芝機械株式会社製の同方向二軸押出機(口径:40mmφ、L/D:32)に投入し、設定温度200℃で溶融混合後、水槽にてストランドを冷却固化し、ペレタイザーにてストランドをカットし、ポリオレフィン系樹脂のペレットを作製した。その後は実施例1と同様にして膜状物を得た。評価結果を表1に示す。
ポリエチレン系樹脂(ダウケミカル社製「INFUSE 9000」、α−オレフィンの炭素数:8、MFR:0.5g/10min)75質量部と、ポリプロピレン系樹脂(三菱化学社製「ゼラス 7055」、融解ピーク温度:162℃、MFR:7g/10min)25質量部をブレンドし、東芝機械株式会社製の同方向二軸押出機(口径:40mmφ、L/D:32)に投入し、設定温度200℃で溶融混合後、水槽にてストランドを冷却固化し、ペレタイザーにてストランドをカットし、ポリオレフィン系樹脂のペレットを作製した。その後は実施例3と同様にして膜状物を得た。評価結果を表1に示す。
A押出機に投入するポリオレフィン系樹脂ペレットに含まれるポリエチレン系樹脂(ダウケミカル社製「INFUSE 9000」)を、東ソー社製「ペトロセン K175」(LLDPE、MFR:0.6g/10min)に変更した点以外は、実施例1と同様にして膜状物を得た。評価結果を表1に示す。
A押出機に投入するポリオレフィン系樹脂ペレットに含まれるポリプロピレン系樹脂(三菱化学社製「ゼラス 7055」を、三菱化学社製「ゼラス 7025」(融解ピーク温度:162℃、MFR:1.6g/10min)に変更した点以外は、実施例1と同様にして膜状物を得た。評価結果を表1に示す。
A押出機に投入するポリオレフィン系樹脂ペレットを、ポリエチレン系樹脂(ダウケミカル社製「INFUSE 9000」、α−オレフィンの炭素数:8、MFR:0.5g/10min)のみに変更した点以外は、実施例1と同様にして膜状物を得た。評価結果を表1に示す。
A押出機に投入するポリオレフィン系樹脂ペレットを、ポリプロピレン系樹脂(三菱化学社製「ゼラス 7055」、融解ピーク温度:162℃、MFR:7g/10min)のみに変更した点以外は、実施例1と同様にして膜状物を得た。評価結果を表1に示す。
B押出機からは何も投入せず、A押出機のみで製膜した点以外は実施例1と同様にして、幅400mm、厚さ300μmの単層フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
市販のポリ塩化ビニル製のバッグを評価した。評価結果を表1に示す。
一方で、比較例1では、中間層中のポリエチレン系樹脂がエチレン−αオレフィン共重合体ではない為、耐熱性が不十分であった。
比較例2では、中間層中のポリプロピレン系エラストマーのMFRが低い為、耐熱性のあるポリプロピレンドメインが中間層中に等方的に分散した為、耐熱性が十分でなかった。
比較例3では、中間層がエチレン−αオレフィン共重合体のみからなる為、耐熱性が十分でなかった。
比較例4はポリプロピレンのみであった為、耐寒性が十分でなかった。
比較例5は、中間層しか存在しない為、捲回性に問題が生じた。また、耐熱性も不十分であった。
比較例6では、ポリオレフィン系樹脂積層フィルムが用いられていない為、脆化温度が高く、耐寒性が不十分であった。
Claims (9)
- 表層、裏層、及び前記表層と前記裏層との間に配置された中間層を有し、
前記中間層が、
(a)エチレンとα−オレフィンとの共重合体で、MFRが0g/minより大きく5g/min以下であるポリエチレン系樹脂と、
(b)融解ピーク温度が125℃以上170℃以下で、MFRが5g/min以上である、ポリプロピレン系樹脂と、
を含むことを特徴とするポリオレフィン系樹脂積層フィルム。 - 前記ポリプロピレン系樹脂のMFRから前記ポリエチレン系樹脂のMFRを差し引いた数値が4g/min以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂積層フィルム。
- 前記α−オレフィンの炭素数は、4以上20以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリオレフィン系樹脂積層フィルム。
- 前記中間層に含まれる前記ポリエチレン系樹脂の質量割合は、前記中間層の総質量に対して40質量%以上90質量%以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂積層フィルム。
- 前記α−オレフィンの共重合比率は30質量%以上50質量%以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂積層フィルム。
- 前記表層及び前記裏層はいずれも131℃における引張貯蔵弾性率が1MPa以上80MPa以下であるポリオレフィン系樹脂を含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂積層フィルム。
- 131℃で1時間熱処理を行なった後の積層構造自体の熱収縮率が1%以下であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂積層フィルム。
- 請求項1から請求項7のいずれかに1項に記載のポリオレフィン系樹脂積層フィルムを用いたことを特徴する医療用具。
- 請求項1から請求項7のいずれかに1項に記載のポリオレフィン系樹脂積層フィルムを用いたことを特徴する医療用包装体。
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