JP2012234809A - 面発光体 - Google Patents

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Abstract

【課題】
本発明は、光取り出し効率を高め、かつ外光等による劣化の少ない面発光体を提供せんとするものである。
【解決手段】
紫外線吸収剤を含有するコート層と基材層の2層を少なくとも含む積層フィルムと、透明導電層と、発光層と、背面電極と、封止剤とを、この順に、前記コート層が最表層となるように積層した構造を有する面発光体。
【選択図】なし

Description

本発明は、外部発光効率を高め、かつ長期間の使用に耐えうる面発光体に関する。さらに詳しくは、表層にUV(紫外線)吸収性を有しかつ、光の取り出し効率を高める積層フィルムが表面に設けられてなる面発光体に関する。
有機エレクトロルミネッセンス(以下有機ELという)を初めとする面発光体が、近年注目を集めている。有機ELは自発光型の面発光装置であり、ディスプレイや照明の用途に用いられる。有機ELディスプレイは、従来のCRTやLCD(液晶ディスプレイ)と比較して視認性が高い、視野角依存性が無いといった表示性能の利点を有する。またLCDよりもさらに、ディスプレイを軽量化、薄型化できるといった利点もある。一方、照明として用いられる有機ELは軽量、薄型といった利点に加え、発光体の形状が面状であることから、意匠性に優れていたり、フレキシブル性を付与することでこれまで実現できなかった形状の照明を実現できる可能性を持っている。また、有機ELは一般に、蛍光灯やLEDに比べると発光スペクトルの分布が幅広く、特定の波長にシャープなピークを有するわけではないので、照明として利用した際に演色性がよいなどの利点が挙げられる。
有機ELは一般に、次のような構成をとっている。すなわち、光取り出し面側のガラスや高分子フィルム基板の上に、インジウム−錫酸化物膜(以下、ITO)等からなる透明電極を形成し、発光層が設けられ、さらに反射性を有する電極(銀やアルミニウムが用いられることが多い)が積層されている。また、必要に応じて、電荷輸送層が設けられたり、複数の発光層を積層したりすることもある。これらの素子は水や酸素により劣化することが知られており、背面や側面も封止剤により封止されている。
有機ELは上述のように優れた特徴を有しているが、一般に、発光層を含め構成する各層の屈折率が空気より高く、発光層など有機薄膜層の屈折率は1.6〜2.1程度であることが多い。発光層で発光した光は各界面での全反射や干渉を起こして損失し、発光した光のうち光取り出し面から外部への取り出せる効率は20%程度に留まっている。これらの問題に対応するため、特許文献1、2のように表面にプリズムシートやマイクロレンズフィルム等を設置した有機ELも提案されているが、外光(太陽光など)に含まれる紫外線(UV)により発光層が劣化し、発光効率が低下するという問題があった。
また、特許文献3のようにフィルムと発光パネルとの間に設けられる接着層に紫外線吸収剤を含有させる方法も提案されているが、フィルム自身が紫外線で劣化することに対しては効果が充分ではなく、時間が経つにつれ輝度が低下したり、色が変化してしまうことがあった。
特開平11−8063号公報 特開平10−223367号公報 特開2008−27620号公報
特許文献3では、紫外線吸収層が設けられているものの、当該層がフィルムの最表層にないため、フィルム自身が紫外線で劣化し、時間が経つにつれ光取り出し効率が低下したり、有機ELパネルの見かけの発光色が変化してしまうことがあった。
そこで本発明は、外光からの紫外線による劣化を効果的に抑制し、かつ光の取り出し効率を高めた面発光体を提供することである。
本発明はかかる課題を解決するために、次のような構成を採用する。すなわち本発明の面発光体は、紫外線吸収剤を含有するコート層と基材層の2層を少なくとも含む積層フィルムと、発光素子とを、前記コート層が最表層となるように積層した構造を有する面発光体である。
本発明によれば、光取り出し効率が高く、かつ外光等による劣化の少ない面発光体を提供することができる。
本発明の面発光体の構造の一例を模式的に表した図である。 本発明の面発光体の別の構造の例を模式的に表した図である。
本発明は、前記課題、すなわち光取り出し効率を高め、かつ太陽光等の外光による劣化の少ない平面光源を提供するために鋭意検討したところ、以下のような構成を採用することによりかかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
すなわち、本発明の面発光体は、図1,2に示すように紫外線吸収剤を含有するコート層1と基材層2の2層を少なくとも含む積層フィルム9(図1)または10(図2)と、発光素子11(図1)または12(図2)とを、前記コート層1が最表層となるように積層した構造を有する面発光体である(発光素子については後述する)。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の面発光体は面状の発光体であれば特に限定されず、有機ELや無機エレクトロルミネセンス発光体等が挙げられる。面状とは平面に限定されず、一定の曲率を持った曲面や、不定形に曲がった面も含めて面状といい、部分的な凹凸を有するものも含まれる。
本発明にかかる積層フィルム9,10の基材層2として用いられる材料は特に制限されないが、供給性やハンドリング性の観点からプラスチックフィルムが好ましく用いられる。プラスチックフィルムの材料としてはポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリアクリル等が挙げられる。中でもポリエステル系のフィルムが耐久性等の観点から好んで用いられ、ポリエチレンテレフタラート(以下PETという)が供給性にも優れていることから、特に好ましく用いられる。
基材層2として用いられるフィルムは製造工程で1軸あるいは2軸方向の延伸工程を経ていてもよいし、延伸工程を経ないフィルムであってもどちらでもよいが、2軸方向に延伸されたフィルムは強度が高い場合があり、より好ましい。延伸の倍率等については、強度の向上率や製膜性等から総合的に判断すればよい。
基材層2として用いられるフィルムは1種類の材料からなる単膜であってもよいし、複数の材料を積層した複合フィルムであってもよく、求める特性に応じて選択すればよい。
本発明の面発光体において基材層2として用いられるフィルムの厚みは特に制限されないが、1μm以上500μm以下であることが好ましい。1μm未満であると剛性や耐衝撃性が低下しハンドリングが困難になる場合があり、500μmを超えると基材層2として用いられるフィルム内での光の損失が発生したり、逆に剛性が高くなりすぎてハンドリングしにくい場合がある。基材層2として用いられるフィルムの厚みは好ましくは10μm以上300μm以下、さらに好ましくは50μm以上200μm以下である。
また、基材層2として用いられるフィルムは透明であってもよいし、光を拡散する目的で各種の有機及び/または無機の粒子や空洞を含有させ、半透明にしてもよいが、着色していないことが好ましい。
本発明にかかるコート層1は、紫外線吸収剤含むものである。紫外線吸収剤を含まない場合、太陽光等の外光が長時間当たることで、発光層の上に設けられるフィルムあるいは発光層が劣化し、面発光体の寿命が短くなる。
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、シアノアクリレート系、サリチル酸系、ベンゾエート系、蓚酸アニリド系などの有機系の紫外線吸収剤の他、酸化チタンや酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化ジルコニウム等の無機系の紫外線吸収剤も使用することができる。またこれらの紫外線吸収剤をコート層1のバインダー樹脂成分と共重合させることも、ブリードアウトを抑止する効果があり好ましい方法である。
以下、有機系の紫外線吸収剤として用いられる化合物の例を列挙する。
サリチル酸系:p−t−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート
ベンゾフェノン系: 2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2,2’−4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン
ベンゾトリアゾール系: 2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ・t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェノール)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ・t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2(2’ヒドロキシ−5’−メタアクリロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール
シアノアクリレート系: エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート
上記以外: 2−エトキシ−2’−エチルオキザックアシッドビスアニリド、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール
上記の化合物は、単独でも使用できるし、2種類以上を併用してもよい。
これらの紫外線吸収剤は紫外線を吸収するが、紫外線照射により発生する有機ラジカルを捕捉することができないため、このラジカルにより劣化が発生することがある。これらのラジカル等を捕捉するためには、光安定剤を併用することが好ましい。
以下、光安定剤として用いられる化合物の例を列挙する。
ヒンダードアミン系:ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物
ベンゾエート系:2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ・t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ・t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ・t−ブチル−4’−ハイドロキシベンゾエート
ヒンダードフェノール系:オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N‘−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシンナマミド)
これらの中でもヒンダードアミン系化合物が、ラジカル捕捉能が高く、着色が少ないため好適に使用される。
上記の化合物は、単独でも使用できるし、2種類以上を併用してもよい。また、これらの光安定剤を後述するコート層1の樹脂成分と共重合させることも、ブリードアウトを抑止する効果があり好ましい方法である。例えば、アクリルモノマーと紫外線吸収剤、光安定剤の共重合物を有効成分として含む“ハルスハイブリッド”(登録商標)シリーズ((株)日本触媒製)などが好適に使用される。
紫外線吸収剤の含有量に関しては、特に制限されないが、紫外線吸収剤を含むコート層1全体に対する質量比で0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましい。0.1質量%未満であると紫外線吸収能が充分でなく、面発光体の寿命が短くなる場合がある。また30質量%を超えると短波長の可視光領域の吸収が無視できなくなり、発光効率の損失を招いたり、コート層1の強度が不足する場合がある。紫外線吸収剤の量は好ましくは、0.5%質量以上10質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以上5質量%以下である。
なお、ここでいう紫外線吸収剤の量とは、前述したような化合物のコート層1における質量比であり、樹脂成分と共重合されている場合は、紫外線吸収成分の質量比をNMR等の分析により算出することができる。
また、本発明のコート層1に後述する粒子を含む場合、紫外線吸収剤は粒子、バインダー樹脂のいずれか、または、粒子とバインダー樹脂両方に含まれていてもよいが、粒子とバインダー樹脂の両方に含まれているほうが、より好ましい。
前記コート層1を構成する樹脂(コート層1に粒子を含有する場合にはバインダー樹脂)としては、特に限定されないが、有機成分を主体とする樹脂が好ましく、例えばポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は単独で用いてもよく、あるいは2種以上の共重合体もしくは混合物としたものを用いてもよい。中でもポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂もしくはメタクリル樹脂が耐熱性、粒子分散性、塗布性、外観の点から好ましく使用される。また、必要に応じて硬化剤や架橋剤を添加してもよい。
また、本発明にかかるフィルムのコート層1の厚みは特に制限されないが、好ましくは0.1μm以上30μm以下である。コート厚が0.1μm未満の場合、紫外線吸収能が充分ではなく、面発光体の耐久性に劣ることがある。一方コート厚が30μmを超える場合は経済性に劣る。コート層1の厚みはさらに好ましくは1μm以上20μm以下、特に好ましくは3μm以上10μm以下である。
なお、ここでいうコート層1とは紫外線吸収剤を含むコート層1である。基材層と紫外線吸収剤を含むコート層1の他に別の層が設けられてもよく、またこの別の層が基材層とコート層1の間にあっても構わない。
また本発明にかかるコート層1を設ける方法については特に限定されず、グラビアコート、ロールコート、スピンコート、リバースコート、バーコート、スクリーンコート、ブレードコート、エアーナイフコートよびディッピングなどの各種塗布方法を用いることができる。また、基材層として用いられるフィルムの製造時に塗布(インラインコーティング)しても、基材層として用いられるフィルムを製膜後巻き取った後に別のプロセスで塗布(オフラインコーティング)してもどちらでもよい。
本発明にかかる積層フィルムは面発光体の最表層に設けられてなる。最表層に設けられていない場合、前記積層フィルムより外側に位置する部材の外光による劣化を充分に押さえることができず、面発光体の寿命が短くなってしまう。
本発明の面発光体にかかる前記積層フィルムを設ける方法については特に限定されず、基材4として別の基材(樹脂フィルムやガラス板、薄膜ガラス等)を用い、その上にオイルや粘着層3を介して設ける方法や、前記積層フィルム上に直接透明導電層5や発光層6等を設けてもよい。また、水や酸素に対するバリア性を挙げる目的で他の蒸着膜やコート層を挟んで、透明導電層5や発光層6を設けてもよい。なお、粘着層3やオイルを介して設けられている場合は、外観や外部発光効率等の理由により、間に空気を含まないように設けられていることが好ましい。
本発明にかかるコート層1には粒子が含有されてなることが好ましい。粒子の形状は、一義的に限定されるものではなく例えば、星状、葉状や円盤状のような扁平状、菱形状、直方状、針状、金平糖状、不定形状のような非球形状、また球状(必ずしも真球だけを意味するのではなく、粒子の断面形状が円形、楕円形、ほぼ円形、ほぼ楕円形等など曲面で囲まれているものを意味する)等が挙げられ、また、それら形状の粒子が多孔質、無孔質、中空質であっても良く、いずれの形状であっても光取り出し効率の向上が見られるが、さらに好ましくは粒子形状が球状であることである。粒子形状が球状であることにより、発光体内部で発光した光が様々な角度で光取り出し面に達した際に、空気との界面での屈折を起こした後の光の角度がより正面方向に集中しやすく、正面方向が明るい面発光体とすることができるため好ましい。
前記粒子の数平均粒子径は、コート層1のバインダー樹脂の平均積層厚よりも大きいことが、粒子により表面にコート層1表面に凹凸を設けやすいため好ましい。ただし、ここで数平均粒子径とは、コート層1の膜厚方向に測定した粒子径の数平均値をいうものとする。
前記粒子の数平均粒子径は、0.3μm以上30μm以下であるのが好ましい。粒子の数平均粒子径が0.3μm未満であると、粒子によりコート層1表面に設けられる凹凸による光学挙動が波長により変化するため、幅広い波長の発光分布を有する発光体に対して、視角(発光体を観察する角度)により色が大きく変化してしまうことがある。また、粒子の数平均粒子径が30μmを超えると、塗工性が低下し、歩留まりが悪くなることがある。
前記粒子のコート層1に対する含有率は、質量比で3%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。前記含有率が3%未満であると、表面に形成される凹凸が充分ではなく、粒子を添加した効果が充分に得られない場合がある。前記の通り、面発光体の光取り出し効率を向上させるためには、粒子の含有率が高い方が好ましいため、バインダー樹脂と粒子の両方が紫外線吸収剤を含有することが、外光(太陽光など)に含まれる紫外線(UV)による、発光層の上に設けられるフィルムあるいは発光層の劣化防止に対して有効である。
一方、前記粒子のコート層1に対する含有率は、質量比で75%以下であることが好ましい。75%を超えると塗工性が低下し、歩留まりが悪くなることがある。
さらに前記粒子は、有機系化合物、無機物、無機化合物のいずれでもよく一義的に限定されるものではない。さらに異なる粒子形状や材質を有する粒子を混合してもよい。
かかる有機粒子として、高融点である架橋高分子成分を主体とする樹脂が好ましく、例えばポリエステル樹脂、ベンゾグアナミンのようなポリアミド系樹脂粒子、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂粒子、及びそれらの中空粒子などが挙げられる。これらの樹脂は単独で用いてもよく、あるいは2種以上の共重合体もしくは混合物としたものを用いてもよい。
粒子においても、紫外線吸収剤および/または光安定化剤が添加される場合やこれらの樹脂を製造する際に反応性二重結合を有する紫外線吸収剤および/または光安定化剤との共重合により化学結合させる場合がある。該粒子からのブリードアウトが少ないという点では、後者のように化学結合により紫外線吸収剤および/または光安定化剤を固定させることが好ましい。
ここで、紫外線吸収剤および/または光安定化剤を固定させる共重合モノマーとしては、アクリル系、スチレン系などのビニル系モノマーが汎用性が高く、経済的にも好ましい。スチレン系ビニルモノマーは芳香族環を有しているため、黄変しやすいため、耐光性という点では、アクリル系ビニルモノマーとの共重合が最も好ましい。
紫外線吸収剤のベンゾトリアゾールに反応性ビニルモノマーが置換されたものとして、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(商品名:RUVA−93);大塚化学(株)製)を使用することができ、また、光安定剤のヒンダードアミン系化合物に反応性ビニルモノマーが置換されたものとして、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(「アデカスタブ
LA−82」;(株)ADEKA製)を使用することが出来る。
また、かかる無機粒子としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、リン酸カルシウム、シリカ、アルミナ、マイカ、雲母チタン、タルク、クレー、カオリン、フッ化リチウム、フッ化カルシウム等を用いることができる。
本発明においてコート層に含まれる粒子が球状である場合、その体積平均粒子径の変動係数CV(以降、「変動係数」と記すこともある)は30%以下であることが好ましい。ここで、体積平均粒子径の変動係数CVとは、体積平均粒子径の標準偏差を体積平均粒子径で除した値である。この変動係数CVは、例えば後述する実施例に記載の方法により測定される。変動係数CVは、より好ましくは20%以下、特に好ましくは15%以下、最も好ましくは10%以下である。変動係数CVが30%より大きい場合、コート層1表面で飛び出る粒子の曲率の、粒子間でのばらつきが大きくなることから、正面方向への集光度が低下する場合がある。
図1には、発光素子11の好ましい1例として、透明導電層5と、発光層6と、背面電極7と、封止剤8とがこの順に積層された態様を示した。
図1の面発光体では、基材層2の一方の面にコート層1が積層された積層フィルム9に対し、コート層1とは反対の面に透明導電層5、発光層6、背面電極7,封止剤8がこの順に積層された発光素子11が配置されている。かかる構造の面発光体に電圧を印加することで発光層が発光し、その光はコート層1側から外部に放出される。
透明導電層5には、ITO膜などの透明電極が使用できる。透明導電層5の厚みは、通常0.01〜1,000μmであり、表面抵抗値は、通常500Ω/□以下、好ましくは1〜300Ω/□である。また、光透過率は通常70%以上、好ましくは80%以上である。ITO膜は、通常の蒸着、スパッタリング、ペーストの塗布等のコーティング手段により形成する。
発光層6は、注入された正孔および電子が再結合して発光するための層であり、例えば、発光種であるクマリン化合物(C545T)がドーピングされた、Alq(アルミニウムキノリノール錯体)で形成することができる。また、正孔輸送層、電子輸送層を併設してもよい。
背面電極7は、アルミニウム、金、銀、銅、ニッケル、クロム等の金属膜が使用でき、銀、アルミニウムが多く用いられる。金属膜は、たとえば、蒸着膜、スパッタ膜などであり、厚みは通常5nm〜1,000μmである。
封止剤8は、水や酸素を遮蔽するための層であり、不活性ガス、シリコーンオイル、樹脂などからなる。
図2の面発光体は、基材層2に対し、一方の面にコート層1が積層された積層フィルム10と、基材4、透明導電層5、発光層6、背面電極7,封止剤8がこの順に粘着層3を介して積層された発光素子12が配置されてなる発光体である。同じく電圧を印加することで発光層が発光し、その光はコート層1側から外部に放出される。
面発光体を薄型化する観点では、図1の構成のほうが、粘着層3と基材4の厚み分薄くできるため好ましく、生産性の観点では、図2の構成のほうが、発光素子と積層フィルムを分けて生産できるため好ましい。
なお、上述した積層の順序はあくまで一例であり、他の方法や順序によっても本発明の面発光体を得ることももちろん可能である。
測定方法および評価方法を以下に示す。
(1)コート層及び粒子の有無、粒子の形状、コート層の厚み、
面発光体を日本ミクロトーム研究所(株)製ロータリー式ミクロトームにて、ナイフ傾斜角度3°にて発光体平面に垂直な方向切断する。面発光体が剛直な材質を含む場合には、表層のフィルム層を剥離した後、前述の方法によりミクロトームで切断してもよい。得られた断面を、トプコン社製走査型電子顕微鏡ABT−32を用いて、フィルム層が視野領域に写し出されるように、観察倍率2500〜10000倍にて、また、画像のコントラストを適宜調節しながら、最表層のコート層の有無、粒子の有無、粒子の形状を観察する。また、同じ断面観察画像を用いてその画像の幅を20等分する点でのコート厚(当該点で粒子や突起が含まれている場合には粒子の厚さを含む)を算出し、両端を含めた21箇所の算術平均値を求める。この作業を同一倍率で5箇所の観察箇所について実施し、その平均値をコート層の膜厚とする。
(2)粒子の体積平均粒子径と分散係数
積層フィルムを有機溶剤に浸漬して、前記積層フィルムからコート層を剥離採取した後、スライドガラスに圧着・摺動することで球状粒子を塗布層から脱落させ集める。細孔電気抵抗法を利用した粒度分布測定装置であるコールターマルチサイザーIII(ベックマン・コールター(株)製)を用いて体積平均粒子径と分散係数を測定する。粒子が細孔を通過する際の粒子体積に相当する電解液分の電気抵抗を測定することによって、粒子の数と体積が測定できる。まず微少量のサンプルを薄い界面活性剤水溶液に分散させ、次いでモニターの表示を見ながらアパチャー(検知部分の細孔)通過率が10〜20%となる量だけ指定電解液の容器に添加した後、通過粒子数が10万個になるまで粒子径の計測を続けて自動計算させ、体積平均粒子径、体積平均粒子径の標準偏差及び変動係数CVを求めた。変動係数CVの値は下記式により求めることができる。
・変動係数CV(%)= 体積平均粒子径の標準偏差(μm)×100/体積平均粒子径
(μm)
(3)紫外線照射試験
面発光体を紫外線劣化促進試験機アイスーパーUVテスターSUV−W151(岩崎電気(株)製)を用い、下記の条件で強制紫外線照射試験を行った。なお、試験中面発光体は点灯させず、発光面に紫外線が照射される向きに設置した。
〈紫外線照射条件〉
照度:100mW/cm2 、温度:60℃、相対湿度:50%RH、照射時間:12時間
(4)正面輝度測定法
面発光体を点灯させ、30分静置した後に真正面の輝度を測定する。測定には2次元輝度計CA−2000(コニカミノルタセンシング(株)製)を用いて、輝度計のレンズと面発光体を30cm離して測定を行い、発光エリア内の輝度の平均値を求めた。面発光体作製直後と前記(3)紫外線照射試験を実施後の2回測定を行った。
(比較例1)
白色有機EL発光パネル “Lumiblade”(登録商標) Rectangle small white engerneering sample(Koninklijke Plilips Electronics N. V.製、発光エリアサイズ:38mm×30mm)(以下発光パネルAという)をそのまま用いて紫外線照射試験前後の輝度を測定した。
(比較例2)
発光パネルAの上に厚さ125μmのPETフィルム“ルミラー”(登録商標)T60
(東レ(株)製)をアクリル系粘着剤TD43A((株)巴川製紙所製)を用いて貼合し、紫外線照射試験前後の輝度を測定した。
(比較例3)
ウレタン変性共重合ポリエステル樹脂 “バイロン UR”(登録商標)シリーズ UR−8200((東洋紡績(株)製、濃度30質量%溶液)10.0gと酢酸エチル5.0g、“TINUVIN”(登録商標) PS(BASFジャパン(株)製)0.06gを混合し、塗材Aを作製した。基材層として用いられるフィルムとして厚さ125μmのPETフィルム“ルミラー”(登録商標)T60(東レ(株)製)を準備し、前記塗液をメタバー#12を使用して塗布し、120℃で1分間加熱乾燥させコート層を形成した。塗布を行った面と同じ面にアクリル系粘着剤TD43A((株)巴川製紙所製)を貼合した。この積層体を発光パネルAの上に空気を噛み込まないように貼合し、紫外線照射試験前後の輝度を測定した。
(実施例1)
基材層として用いられるフィルムとして厚さ125μmのPETフィルム“ルミラー”(登録商標)T60(東レ(株)製)を準備し、前記基材層として用いられるフィルムの上に塗材Aをメタバー#12を使用して塗布し、120℃で1分間加熱乾燥させコート層を形成した。塗布を行った面と反対の面にアクリル系粘着剤TD43A((株)巴川製紙所製)を貼合した。すなわち塗布層が本実施例の面発光体の最表層に位置している。この積層体を発光パネルAの上に空気を噛み込まないように貼合し、紫外線照射試験前後の輝度を測定した。
(実施例2)
用いる塗材を塗材Bに変更してコート層を形成した以外は実施例1と同様に行った。塗材Bは、ウレタン変性共重合ポリエステル樹脂 “バイロン UR”(登録商標)シリーズ UR−8200((東洋紡績(株)製、濃度30質量%溶液)10.0gと酢酸エチル11.0g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤“TINUVIN”(登録商標)PS(BASFジャパン(株)製)0.09g、シリカ粒子“サイロホービック”(登録商標)100(富士シリシア化学(株)製)1.5gを混合することで作製した。
(実施例3)
用いる塗材を塗材Cに変更してコート層を形成した以外は実施例1と同様に行った。塗材Cは、ベンゾトリアゾール含有アクリル系共重合体樹脂“ハルスハイブリッド”(登録商標)UV−G720T((株)日本触媒製、濃度40質量%溶液)10.0gと酢酸エチル18.0g、シリカ粒子“サイロホービック”(登録商標)100(富士シリシア化学(株)製)2.0gを混合することで作製した。
(実施例4)
用いる塗材を塗材Dに変更してコート層を形成した以外は実施例1と同様に行った。塗材Dは、ベンゾトリアゾール含有アクリル系共重合体樹脂“ハルスハイブリッド”(登録商標)UV−G720T((株)日本触媒製、濃度40質量%溶液)10.0gと酢酸エチル26.0g、アクリル粒子“TECHPOLYMER”MBPシリーズ、MBP−8(積水化成品工業(株)製)3.0gを混合することで作製した。
(実施例5)
用いる塗材を塗材Eに変更してコート層を形成した以外は実施例1と同様に行った。塗材Eは、ベンゾトリアゾール含有アクリル系共重合体樹脂“ハルスハイブリッド”(登録商標)UV−G720T((株)日本触媒製、濃度40質量%溶液)10.0gと酢酸エチル34.0g、アクリル粒子“TECHPOLYMER”MBXシリーズ、XX−09FP(積水化成品工業(株)製)6.0gを混合することで作製した。
(実施例6)
用いる塗材を塗材Fに変更してコート層を形成した以外は実施例1と同様に行った。塗材Fは、ベンゾトリアゾール含有アクリル系共重合体樹脂“ハルスハイブリッド”(登録商標)UV−G720T((株)日本触媒製、濃度40質量%溶液)10.0gと酢酸エチル34.0g、アクリル粒子“TECHPOLYMER” SSXシリーズ、SSX−105(積水化成品工業(株)製)6.0gを混合することで作製した。
(実施例7)
用いる塗材を塗材Gに変更してコート層を形成した以外は実施例1と同様に行った。塗材Gは、ベンゾトリアゾール含有アクリル系共重合体樹脂“ハルスハイブリッド”(登録商標)UV−G720T((株)日本触媒製、濃度40質量%溶液)10.0gと酢酸エチル14.0g、粒子A1.0gを混合することで作製した。
粒子Aは以下の方法で作製した。
攪拌装置と温度計と窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、メタクリル酸メチル70質量部、架橋構造を形成する多官能モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート10質量部、ヒンダードアミン系重合性化合物として2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート3質量部、ベンゾトリアゾール系重合性化合物として2-(2'-ヒドロキシ-5'-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール10質量部、重合開始剤としてラウロイルパーオキサイド1質量部を投入した。さらにこの溶液の分散安定剤としてポリビニルアルコール(PVA-224、クラレ(株)製)1質量部および水200質量部を加えた。これらをホモミキサーを用いて9000rpmの回転数で3分間攪拌して、重合性化合物を水に分散させた。次いで、この分散液を75℃に加熱して2時間、この温度に維持して反応させ、さらに90℃に昇温して3時間共重合反応させた。
上記のように反応させた後、分散液を室温まで冷却した。この分散液を、目開き40μmのメッシュフィルターを用いて濾過して凝集物などを除去した。得られた分散液には凝集物ははく、この分散液の濾過性は非常に良好であった。こうして濾過した分散液中に分散されている粒子の平均粒子径は6.4μmであり、この形状は球状であった。
こうして粒子の分散液を常法に従って洗浄した後、濾過して粒子と分散媒とを分離し、分離した粒子を乾燥させた。次いで分級を経て粒子Aを得た(変動係数28%)。
(実施例8)
用いる塗材を塗材Hに変更してコート層を形成した以外は実施例1と同様に行った。塗材Hは、ベンゾトリアゾール含有アクリル系共重合体樹脂“ハルスハイブリッド”(登録商標)UV−G720T((株)日本触媒製、濃度40質量%溶液)10.0gと酢酸エチル22.0g、粒子A3.0gを混合することで作製した。
(実施例9)
用いる塗材を塗材Iに変更してコート層を形成した以外は実施例1と同様に行った。塗材Iは、ベンゾトリアゾール含有アクリル系共重合体樹脂“ハルスハイブリッド”(登録商標)UV−G720T((株)日本触媒製、濃度40質量%溶液)10.0gと酢酸エチル34.0g、粒子A6.0gを混合することで作製した。
各実施例、比較例について、コート層の紫外線吸収剤有無、コート層の位置、紫外線安定剤の有無、粒子の有無、粒子の形状、粒度分布の変動係数、及び紫外線照射試験前後の輝度及びその低下率を表1にまとめた。
Figure 2012234809
実施例1〜6のいずれにおいても、比較例1〜3と比べて、紫外線照射試験後の面発光体の輝度の低下を抑制することができた。コート層中に粒子を含有させることで初期の輝度も上昇させることができ(実施例2〜6)、光安定剤を添加することで面発光体の輝度の低下をより抑制することができた。さらに、球状粒子を用いることでさらに初期の輝度が向上し(実施例4〜6)、中でも粒子の変動係数が30以下の粒子はさらに初期の輝度が向上し(実施例5、6)、特に変動係数が10以下の粒子を用いると、特に初期の輝度向上が認められた(実施例6)。粒子が紫外線吸収剤および光安定剤を含有する場合は、さらに輝度の低下を抑制することができた(実施例7〜9)。また、比較例3のように紫外線吸収剤を有するコート層が最表層にないものは、紫外線照射後の輝度低下の抑制効果が充分ではなかった。
本発明の面発光体によれば、安価な方法で外部発光効率を高め、また、劣化の少ない面発光体を得ることができるため、従前に比べると同等の明るさを得るための消費電力を抑えることができ、より長寿命な面発光体を提供することが可能となる。
1:コート層
2:基材層
3:粘着層
4:基材
5:透明導電層
6:発光層
7:背面電極
8:封止剤
9:積層フィルム
10:積層フィルム
11:発光素子
12:発光素子

Claims (7)

  1. 紫外線吸収剤を含有するコート層と基材層の2層を少なくとも含む積層フィルムと、発光素子とを、この順に、前記コート層が最表層となるように積層した構造を有する面発光体。
  2. 前記コート層が少なくともバインダー樹脂と粒子とを含有する請求項1に記載の面発光体。
  3. 前記コート層に含まれるバインダー樹脂および粒子の両方が紫外線吸収剤を含有する請求項2に記載の面発光体。
  4. 前記バインダー樹脂および/または粒子が光安定剤を含有する請求項2または3に記載の面発光体。
  5. 前記コート層に含まれる粒子が球状であり、その体積平均粒子径の変動係数が30%以下である請求項2〜4のいずれかに記載の面発光体。
  6. 前記発光素子が、透明導電層と、発光層と、背面電極と、封止剤とを、この順に積層した構造を有するものである請求項1〜5のいずれかに記載の面発光体。
  7. 前記面発光体が照明用の有機エレクトロルミネセンス発光体である請求項1〜6のいずれかに記載の面発光体。
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