JP2012233176A - 銀インク組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
金属銀の一般的な製造方法としては、これまで、無機化合物である酸化銀を還元剤の存在下で加熱処理する方法が幅広く適用されている。このような条件下で加熱することにより、酸化銀が還元され、生じた金属銀が相互に融着して、金属銀を含む被膜が形成される。しかし、この方法では、還元剤が必要であり、約300℃程度と極めて高温で加熱する必要がある。さらに、金属銀を導電性材料として使用する場合には、抵抗を低減するために、微細な酸化銀粒子を使用する必要がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、フレキソ印刷法等の高粘度インクを使用する印刷法への適用に好適な銀インク組成物を提供することを課題とする。
本発明は、下記一般式(1)で表わされるβ−ケトカルボン酸銀と、下記一般式(2)で表わされるアセチレンアルコール類と、炭素数2〜25のアミン化合物及び/又はアンモニウム塩と、が配合されてなる混合物を濃縮して得られ、20℃における粘度が100mPa・s以上であることを特徴とする銀インク組成物を提供する。
Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、一つ以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基、又は一般式「R6O−」、「R6S−」、「R6−C(=O)−」若しくは「R6−C(=O)−O−」で表される基であり;R6は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基、又は一つ以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基である。)
本発明の銀インク組成物においては、前記β−ケトカルボン酸銀が、2−メチルアセト酢酸銀、アセト酢酸銀、2−エチルアセト酢酸銀、プロピオニル酢酸銀、イソブチリル酢酸銀、2−n−ブチルアセト酢酸銀、2−ベンジルアセト酢酸銀及びベンゾイル酢酸銀からなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
本発明の銀インク組成物においては、前記アミン化合物として、2−エチルヘキシルアミン、1−メチルヘプチルアミン、2−フェニルエチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−プロピルアミン、tert−ブチルアミン、エチレンジアミン、N−メチル−n−ヘキシルアミン、n−オクタデシルアミン、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン、N−メチルベンジルアミン及びN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンからなる群から選択される一種以上が配合されたことが好ましい。
本発明の銀インク組成物においては、前記アセチレンアルコール類が、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2−メチル−3−ブチン−2−オール及び3−メチル−1−ペンチン−3−オールからなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
本発明の銀インク組成物は、下記一般式(1)で表わされるβ−ケトカルボン酸銀(以下、「β−ケトカルボン酸銀」と略記する)と、下記一般式(2)で表わされるアセチレンアルコール類(以下、「アセチレンアルコール類」と略記する)と、炭素数2〜25のアミン化合物及び/又はアンモニウム塩と、が配合されてなる混合物を濃縮して得られ、20℃における粘度が100mPa・s以上であることを特徴とする。
Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、一つ以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基、又は一般式「R6O−」、「R6S−」、「R6−C(=O)−」若しくは「R6−C(=O)−O−」で表される基であり;R6は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基、又は一つ以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基である。)
本発明において、β−ケトカルボン酸銀は、前記一般式(1)で表わされる。
Rにおける炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状(脂肪族環式基)のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。また、前記脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基及び不飽和脂肪族炭化水素基のいずれでもよい。そして、前記脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜6であることが好ましい。Rにおける好ましい前記脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が例示できる。
Rにおける環状の前記アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、トリシクロデシル基が例示できる。
Rにおける前記アルキニル基としては、エチニル基(−C≡CH)、プロパルギル基(−CH2−C≡CH)等の、Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の一つの単結合(C−C)が三重結合(C≡C)に置換された基が例示できる。
置換基である前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるR2は、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるR3は、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であり、炭素数が1〜16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるR4及びR5は、それぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基である。すなわち、R4及びR5は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数が1〜18である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
Xにおける炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様である。
Xにおけるフェニル基及びベンジル基は、一つ以上の水素原子が置換基で置換されていてもよく、好ましい前記置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ニトロ基(−NO2)等が例示でき、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
XにおけるR6は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基(C4H3S−)、又は一つ以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基(ビフェニル基、C6H5−C6H4−)である。R6における前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜10である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。また、R6におけるフェニル基及びジフェニル基の前記置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等が例示でき、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
R6がチエニル基又はジフェニル基である場合、これらの、Xにおいて隣接する基又は原子(酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基)との結合位置は、特に限定されない。例えば、チエニル基は、2−チエニル基及び3−チエニル基のいずれでもよい。
一般式(1)において、二つのXは、二つのカルボニル基で挟まれた炭素原子と二重結合を介して一つの基として結合していてもよく、このようなものとしては式「=CH−C6H4−NO2」で表される基が例示できる。
本発明において、アセチレンアルコール類は、前記一般式(2)で表わされる。
R’及びR’’における炭素数1〜20のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状(脂肪族環式基)のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。R’及びR’’における前記アルキル基としては、Rにおける前記アルキル基と同様のものが例示できる。
本発明における炭素数2〜25のアミン化合物は、第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミンのいずれでもよい。また、炭素数2〜25のアンモニウム塩とは、かかる炭素数の第4級アンモニウム塩である。前記アミン化合物及びアンモニウム塩は、鎖状及び環状のいずれでもよい。また、アミン又はアンモニウム塩を形成している窒素原子の数は一つでもよいし、二つ以上でもよい。
好ましい前記モノアルキルアミンとして、具体的には、n−プロピルアミン、n−ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、1−メチルヘプチルアミン(2−アミノオクタン)、tert−ブチルアミン、n−オクタデシルアミン(ステアリルアミン)、シクロヘキシルアミンが例示でき、n−プロピルアミン、n−ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、1−メチルヘプチルアミン、tert−ブチルアミンがより好ましい。
前記ヘテロアリール基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、その環員数(環の骨格を構成する原子の数)も特に限定されないが、3〜12員環であることが好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1個有する単環状のものとしては、フラニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1個有する単環状のものとしては、チエニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する単環状のものとしては、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、モルホリニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する単環状のものとしては、チアゾリル基、チアジアゾリル基、チアゾリジニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、窒素原子を1〜5個有する多環状のものとしては、インドリル基、イソインドリル基、インドリジニル基、ベンズイミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、インダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、テトラゾロピリジル基、テトラゾロピリダジニル基、ジヒドロトリアゾロピリダジニル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜3個有する多環状のものとしては、ジチアナフタレニル基、ベンゾチオフェニル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する多環状のものとしては、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する多環状のものとしては、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ジアミンは炭素数が1〜10であることが好ましく、より好ましいものとしてはエチレンジアミンが例示できる。
好ましい前記ジアルキルアミンとして、具体的には、N−メチル−n−ヘキシルアミンが例示できる。
好ましい前記トリアルキルアミンとして、具体的には、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンが例示できる。
前記ジアルキルモノアリールアミンを構成するアリール基は、前記モノアリールアミンを構成するアリール基と同様であり、炭素数が6〜10であることが好ましい。
前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜19であることが好ましい。また、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム一分子中の四つのアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、四つのアルキル基は、すべてが同じでもよいし、すべてが異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。
前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを構成するハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が例示できる。
好ましい前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムとして、具体的には、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラドデシルアンモニウムブロミドが例示できる。
環状アミンであれば、好ましいものとして、ピリジンが例示できる。
前記混合物は、前記β−ケトカルボン酸銀、アセチレンアルコール類、並びにアミン化合物及び/又はアンモニウム塩以外に、本発明の効果を妨げない範囲内において、これらに該当しないその他の成分がさらに配合されていてもよい。
前記その他の成分は特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、好ましいものとして溶媒が例示できる。
前記溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、一つ以上の水素原子がシアノ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい芳香族炭化水素又は脂肪族炭化水素等の各種有機溶媒や、水が例示できる。ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
前記混合物は、前記β−ケトカルボン酸銀、アセチレンアルコール類、アミン化合物及び/又はアンモニウム塩、並びに必要に応じて前記その他の成分を配合することで得られる。
各成分の配合時には、すべての成分を添加してからこれらを混合してもよいし、一部の成分を順次添加しながら混合してもよく、すべての成分を順次添加しながら混合してもよい。
混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法、ミキサーを使用して混合する方法、超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
本発明の銀インク組成物は、20℃における粘度が100mPa・s以上となるように、前記混合物を濃縮して得られたものである。濃縮によって、混合物中のβ−ケトカルボン酸銀以外の成分が優先的に気化して除去されることにより、β−ケトカルボン酸銀の濃度が上昇し、粘度が高い銀インク組成物が得られる。
この時の撹拌方法は、混合物調製時の前記混合方法と同様でよく、また、混合物を収容した容器が回転等の運動が可能であれば、この容器を運動させて混合物を撹拌してもよい。
[実施例1]
2−エチルヘキシルアミン(125.30g)、及び3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール(エアープロダクツジャパン社製「サーフィノール61」)(5.60g)をフラスコ内に添加して撹拌し、さらにここへ、氷冷下2−メチルアセト酢酸銀(96.30g)を添加して撹拌することで、混合物を得た。そして、得られた混合物の粘度(濃縮前の粘度)を下記方法で測定した。各成分の配合量(モル数)を表1に、混合物の粘度を表2に、それぞれ示す。
次いで、得られた混合物全量(227.20g)を、25℃のウオーターバスで温度調節しながら、30hPaの圧力を保ち、60分間減圧濃縮することで、銀インク組成物(204.48g)を得た。得られた銀インク組成物の製造直後の粘度を下記方法で測定した。測定結果を表2に示す。なお、前記混合物から銀インク組成物を得る過程での質量減少率は、10.0%であった。
温度20℃の環境下で、測定対象物である20gの前記混合物又は銀インク組成物中に、超音波式粘度計(CBC社製「VISCOMATE VM−10A」)のセンサー(振動体)を挿入して、前記混合物又は銀インク組成物の粘度を測定した。
表1に示すように、2−エチルヘキシルアミン(86.50g)、及び3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール(エアープロダクツジャパン社製「サーフィノール61」)(2.80g)をフラスコ内に添加して撹拌し、さらにここへ、氷冷下2−メチルアセト酢酸銀(48.15g)を添加して撹拌することで、混合物を得た。そして、得られた混合物の粘度(濃縮前の粘度)を上記方法で測定した。測定結果を表2に示す。
次いで、得られた混合物全量(137.45g)を、25℃のウオーターバスで温度調節しながら、30hPaの圧力を保ち、60分間減圧濃縮することで、銀インク組成物(131.54g)を得た。そして、得られた銀インク組成物の製造直後の粘度を上記方法で測定した。測定結果を表2に示す。なお、前記混合物から銀インク組成物を得る過程での質量減少率は、4.3%であった。
表1に示すように、2−エチルヘキシルアミン(53.95g)、及び3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール(エアープロダクツジャパン社製「サーフィノール61」)(2.85g)をフラスコ内に添加して撹拌し、さらにここへ、氷冷下2−メチルアセト酢酸銀(50.00g)を添加して撹拌することで、比較用の銀インク組成物(106.80g)を得た。そして、得られた銀インク組成物の製造直後の粘度を上記方法で測定した。測定結果を表2に示す。
表1に示すように、2−エチルヘキシルアミン(67.12g)、及び3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール(エアープロダクツジャパン社製「サーフィノール61」)(2.28g)をフラスコ内に添加して撹拌し、さらにここへ、氷冷下2−メチルアセト酢酸銀(40.00g)を添加して撹拌することで、比較用の銀インク組成物(109.40g)を得た。そして、得られた銀インク組成物の製造直後の粘度を上記方法で測定した。測定結果を表2に示す。
上記実施例、参考例及び比較例で得られた銀インク組成物を分割し、4℃、20℃の二通りの温度で7日間静置保存した。そして、この間のこれら銀インク組成物の粘度を上記方法で測定した。また、銀インク組成物の明度(L*)及び色度(a*、b*)をそれぞれ下記方法(測定方法(1))で測定し、得られた測定値から、下記方法で色差(ΔE)を算出した。結果を図1及び2に示す。
透明な10mm角セル中に、銀インク組成物10gを入れ、分光光度計(日立社製「U−3500」)を使用して、銀インク組成物のL*、a*、b*を測定した。測定条件は以下の通りである。
波長領域:380〜780nm
データモード:%T
スキャンスピード:600nm/min
サンプリング間隔:2nm
ランプ:D2
上記で得られたL*、a*、b*の測定値から、下記式(I)にしたがって色差(ΔE)を算出した。
ΔE=[(Lt *−L0 *)2+(at *−a0 *)2+(bt *−b0 *)2]1/2 ・・・(I)
(式中、Lt *は組成物の製造後の特定日におけるL*の値であり、L0 *は組成物の製造直後におけるL*の値であり、at *は組成物の製造後の特定日におけるa*の値であり、a0 *は組成物の製造直後におけるa*の値であり、bt *は組成物の製造後の特定日におけるb*の値であり、b0 *は組成物の製造直後におけるb*の値であり、Lt *、at *及びbt *は同時期の値であり、L0 *、a0 *及びb0 *は同時期の値である。)
比較例1の銀インク組成物は、濃縮を行わずにβ−ケトカルボン酸銀の濃度が実施例1の銀インク組成物と同じとなるように調節したものである。同様に、比較例2の銀インク組成物は、濃縮を行わずにβ−ケトカルボン酸銀の濃度が参考例1の銀インク組成物と同じとなるように調節したものである。
一方、図1及び2から明らかなように、実施例1は比較例1よりも、参考例1は比較例2よりも、それぞれ静置保存中の銀インク組成物の色差の変動が抑制されていた。
[実施例2]
混合物の全量が30gとなるように、各成分の配合比を変えることなく配合量を調節し、表3に示すように、40℃のウオーターバスで温度調節しながら30分間濃縮したこと以外は、実施例1と同様の方法で銀インク組成物(26.25g)を得た。混合物の粘度と、得られた銀インク組成物の製造直後の粘度を上記方法で測定した。測定結果を表4に示す。なお、前記混合物から銀インク組成物を得る過程での質量減少率は、12.5%であった。
混合物の全量が30gとなるように、各成分の配合比を変えることなく配合量を調節し、表3に示すように、70hPaの圧力を保ち、30分間濃縮したこと以外は、実施例1と同様の方法で銀インク組成物(27.21g)を得た。混合物の粘度と、得られた銀インク組成物の製造直後の粘度を上記方法で測定した。測定結果を表4に示す。なお、前記混合物から銀インク組成物を得る過程での質量減少率は、9.3%であった。
混合物の全量が30gとなるように、各成分の配合比を変えることなく配合量を調節し、30分間濃縮したこと以外は、表3に示すように、実施例1と同様の方法で銀インク組成物(26.79g)を得た。混合物の粘度と、得られた銀インク組成物の製造直後の粘度を上記方法で測定した。測定結果を表4に示す。なお、前記混合物から銀インク組成物を得る過程での質量減少率は、10.7%であった。
実施例2の銀インク組成物を使用して、ポリエチレンテレフタレート(PET)製の基材上に、200線/inchのアニロックスローラーによりフレキソ印刷を行った。この時のライン幅の設定値は370μmとした。その結果、β−ケトカルボン酸銀の濃度が同じで、濃縮を行っていない比較用の銀インク組成物を使用した場合よりも、ライン幅が狭く、乾燥後のインクの滲み率は、測定した五ヶ所の平均値で10%低い14%であった。すなわち、実施例2の銀インク組成物を使用することで、滲みの少ないライン(パターン)を印刷できた。また、ラインの断面を顕微鏡で観察したところ、比較用の銀インク組成物の場合には、ラインの表面や内部にピンホールが生じるなど、欠陥が生じていたが、実施例2の銀インク組成物の場合には、このような欠陥が無く、ラインの表面が滑らかでエッジもきれいに立っており、精細なラインが形成されていた。このように、アニロックスローラー150〜300線/inchで良好なパターンを形成できた。
[実施例5]
表5に示すように、製造直後の粘度を151mPa・sとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で銀インク組成物を得た。粘度は上記方法で測定した。なお、混合物から銀インク組成物を得る過程での質量減少率は、6.5%であった。
表5に示すように、製造直後の粘度を356mPa・sとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で銀インク組成物を得た。粘度は上記方法で測定した。なお、混合物から銀インク組成物を得る過程での質量減少率は、12.5%であった。
表5に示すように、製造直後の粘度を95mPa・sとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で銀インク組成物を得た。粘度は上記方法で測定した。なお、混合物から銀インク組成物を得る過程での質量減少率は、3.2%であった。
表5に示すように、比較例1と同様の方法で、製造直後の粘度が69mPa・sである比較用の銀インク組成物を得た。粘度は上記方法で測定した。
上記実施例、参考例及び比較例で得られた銀インク組成物を分割し、4℃、20℃の二通り(実施例6は20℃のみ)の温度で30日間静置保存した。そして、この間のこれら銀インク組成物の粘度を実施例1と同様の方法で測定した。また、下記方法(測定方法(2))で明度(L*)及び色度(a*、b*)を測定し、実施例1と同様の方法で色差(ΔE)を算出した。粘度の測定結果を図3に、色差の算出結果を図4に、それぞれ示す。また、製造直後(静置保存前)及び30日静置保存時の銀インク組成物の粘度の測定結果をそれぞれ表5に示す。
銀インク組成物10gを透明なサンプル瓶に入れ、X−Rite社製分光測色計を使用して、暗室内においてサンプル瓶の底面側から銀インク組成物に光を照射し、L*、a*、b*を測定した。
[実施例7]
2−エチルヘキシルアミン(16.56g)、及び3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール(エアープロダクツジャパン社製「サーフィノール61」)(0.72g)をフラスコ内に添加して撹拌し、さらにここへ、氷冷下アセト酢酸銀(11.91g)を添加して撹拌することで、混合物を得た。そして、得られた混合物の粘度(濃縮前の粘度)を、実施例1と同様の方法で測定した。各成分の配合量(モル数)を表6に、混合物の粘度を表7に、それぞれ示す。
次いで、得られた混合物全量(29.19g)を、25℃のウオーターバスで温度調節しながら、70hPaの圧力を保ち、30分間減圧濃縮することで、銀インク組成物(26.94g)を得た。得られた銀インク組成物の製造直後の粘度を、実施例1と同様の方法で測定した。測定結果を表7に示す。なお、前記混合物から銀インク組成物を得る過程での質量減少率は、7.7%であった。
アセト酢酸銀(11.91g)に代えて2−メチルアセト酢酸銀(12.70g)を、2−エチルヘキシルアミン(16.56g)に代えて2−アミノオクタン(1−メチルヘプチルアミン)(16.56g)を、それぞれ使用したこと以外は、実施例7と同様の方法で銀インク組成物(29.98g)を得た。混合物の粘度と、得られた銀インク組成物の製造直後の粘度を上記方法で測定した。測定結果を表7に示す。なお、前記混合物から銀インク組成物を得る過程での質量減少率は、7.2%であった。
実施例7の銀インク組成物と同じ組成となるように、2−エチルヘキシルアミン、及び3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール(エアープロダクツジャパン社製「サーフィノール61」)をフラスコ内に添加して撹拌し、さらにここへ、氷冷下アセト酢酸銀を添加して撹拌することで、比較用の銀インク組成物を得た。すなわち、得られた銀インク組成物は、濃縮を行わずにβ−ケトカルボン酸銀の濃度が実施例7の銀インク組成物と同じとなるように調節したものである。
実施例7で得られた銀インク組成物を分割し、4℃、20℃の二通りの温度で13日間静置保存した。そして、このときの3日目及び13日目において、銀インク組成物の粘度を実施例1と同様の方法で測定した。さらに、実施例1と同様の方法で明度(L*)及び色度(a*、b*)を測定し、色差(ΔE)を算出した。結果を表8及び9に示す。
さらに、比較例4で得られた銀インク組成物についても同様に、4℃、20℃の二通りの温度で静置保存したときの、3日目及び13日目における色差(ΔE)を算出した。結果を表9に示す。
Claims (5)
- 下記一般式(1)で表わされるβ−ケトカルボン酸銀と、下記一般式(2)で表わされるアセチレンアルコール類と、炭素数2〜25のアミン化合物及び/又はアンモニウム塩と、が配合されてなる混合物を濃縮して得られ、20℃における粘度が100mPa・s以上であることを特徴とする銀インク組成物。
Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、一つ以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基、又は一般式「R6O−」、「R6S−」、「R6−C(=O)−」若しくは「R6−C(=O)−O−」で表される基であり;R6は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基、又は一つ以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基である。)
- 前記Rが直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、又はフェニル基であり、前記Xが水素原子、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、又はベンジル基であることを特徴とする請求項1に記載の銀インク組成物。
- 前記β−ケトカルボン酸銀が、2−メチルアセト酢酸銀、アセト酢酸銀、2−エチルアセト酢酸銀、プロピオニル酢酸銀、イソブチリル酢酸銀、2−n−ブチルアセト酢酸銀、2−ベンジルアセト酢酸銀及びベンゾイル酢酸銀からなる群から選択される一種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の銀インク組成物。
- 前記アミン化合物として、2−エチルヘキシルアミン、1−メチルヘプチルアミン、2−フェニルエチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−プロピルアミン、tert−ブチルアミン、エチレンジアミン、N−メチル−n−ヘキシルアミン、n−オクタデシルアミン、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン、N−メチルベンジルアミン及びN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンからなる群から選択される一種以上が配合されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の銀インク組成物。
- 前記アセチレンアルコール類が、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2−メチル−3−ブチン−2−オール及び3−メチル−1−ペンチン−3−オールからなる群から選択される一種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の銀インク組成物。
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