JP2019044241A - 積層体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】基材上に金属銀層を備えた積層体の製造方法であって、銀インク組成物を用いて金属銀層を基材上に形成する工程を有し、銀インク組成物の使用方法が限定されず、特殊な装置を必要とせず、より低温での銀インク組成物の処理によって、光沢度が高い金属銀層を形成できる、積層体の製造方法の提供。【解決手段】銀インク組成物を基材11に付着させて、組成物層120を形成する工程と、70℃以下の温度条件下で、組成物層120を乾燥させて、固形層12’を形成する工程と、固形層12’に液状の還元剤を接触させて、固形層12’から金属銀層12を形成する工程と、を有し、前記銀インク組成物として、有機銀化合物と、含窒素化合物と、が配合されてなるものを用いる製造方法によって、基材11上に金属銀層12を備えた積層体1を製造する。【選択図】図1

Description

本発明は、積層体の製造方法に関する。
有機銀化合物が配合されてなる銀インク組成物のうち、有機銀化合物としてβ−ケトカルボン酸銀を用いたもの(特許文献1参照)は、加熱処理によって、導電性に優れ、かつ光沢度が高い金属銀からなる緻密な膜を形成できる点から、利用価値が高い。
また、このような銀インク組成物は、粘度の調節も容易であり、粒子状の不溶物を低減又は解消できる点から、例えば、インクジェット式印刷法への適用にも好適である。
しかし、このような銀インク組成物は、比較的低温での加熱処理によって、金属銀を形成可能であるが、金属銀の光沢度を向上させたい場合には、例えば、100℃以上等の比較的高温での加熱処理を必要とすることが多い。この場合、金属銀の形成を行う基材としては、ある程度の耐熱性を有するものが必要となり、基材の種類が限定されるという問題点があった。
これに対して、β−ケトカルボン酸銀に加え、還元性化合物が配合されてなる銀インク組成物が開示されている(特許文献2参照)。この銀インク組成物は、より低温での加熱処理によって、金属銀を形成できる。
一方、有機銀化合物としてネオデカン酸銀を含有する溶液を基板上に塗工し、塗工層を紫外線で露光して、ネオデカン酸銀を活性化させた後、この露光後の塗工層を、還元剤を含有する酸性溶液で処理することによって、基板上に金属銀からなる導電性配線を形成する方法が開示されている(特許文献3参照)。
特許第5393988号公報 特開2014−193991号公報 特表2011−506775号公報
しかし、特許文献2に記載の銀インク組成物は、粒子状の不溶物が発生したり、粘度が上昇したりすることがあり、例えば、インクジェット式印刷法へ適用できないことがあり、使用方法が限定されることがあった。さらに、粒子状の不溶物が発生した場合、このような銀インク組成物から形成された金属銀は、光沢度が低下してしまうことがあった。
また、特許文献3に記載の方法では、塗工層を露光させないと、導電性が十分に高い配線(金属銀層)を形成できず、露光装置という特殊な装置が必要であるという問題点があった。さらに、この方法では、光沢度が高い金属銀層を形成できるか、定かではない。
そこで、本発明は、基材上に金属銀層を備えた積層体の製造方法であって、銀インク組成物を用いて金属銀層を基材上に形成する工程を有し、銀インク組成物の使用方法が限定されず、特殊な装置を必要とせず、より低温での銀インク組成物の処理によって、光沢度が高い金属銀層を形成できる、積層体の製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は、基材上に金属銀層を備えた積層体の製造方法であって、銀インク組成物を基材に付着させて、組成物層を形成する工程と、70℃以下の温度条件下で、前記組成物層を乾燥させて、固形層を形成する工程と、前記固形層に液状の還元剤を接触させて、前記固形層から金属銀層を形成する工程と、を有し、前記銀インク組成物は、有機銀化合物と、含窒素化合物と、が配合されてなる、積層体の製造方法を提供する。
本発明の積層体の製造方法においては、JIS Z 8741:1997に準拠した、前記金属銀層の、前記基材側とは反対側の面の20°鏡面光沢度が、600以上であることが好ましい。
本発明によれば、基材上に金属銀層を備えた積層体の製造方法であって、銀インク組成物を用いて金属銀層を基材上に形成する工程を有し、銀インク組成物の使用方法が限定されず、特殊な装置を必要とせず、より低温での銀インク組成物の処理によって、光沢度が高い金属銀層を形成できる、積層体の製造方法が提供される。
本発明の製造方法の一実施形態を模式的に説明するための断面図である。 実施例1及び比較例1での積層体の製造時における、組成物層の乾燥時の温度及び時間と、金属銀層の20°鏡面光沢度と、の関係を表すグラフである。
<<積層体の製造方法>>
本発明の積層体の製造方法は、基材上に金属銀層を備えた積層体の製造方法であって、銀インク組成物を基材に付着させて、組成物層を形成する工程(本明細書においては、「組成物層形成工程」と略記することがある)と、70℃以下の温度条件下で、前記組成物層を乾燥させて、固形層を形成する工程(本明細書においては、「固形層形成工程」と略記することがある)と、前記固形層に液状の還元剤を接触させて、前記固形層から金属銀層を形成する工程(本明細書においては、「金属銀層形成工程」と略記することがある)と、を有し、前記銀インク組成物は、有機銀化合物と、含窒素化合物と、が配合されてなるものである。
前記組成物層形成工程においては、上記のような特定範囲の組成の銀インク組成物を用いることにより、この銀インク組成物の使用方法を限定されることなく、基材上に前記組成物層を形成する。
前記固形層形成工程においては、70℃以下という比較的低温の条件下において、前記組成物層を乾燥させ、前記組成物層を前記固形層とする。
前記金属銀層形成工程においては、前記固形層を液状の還元剤で処理することにより、前記固形層を前記金属銀層とする。
本発明の製造方法は、このような工程を有することにより、露光装置等の特殊な装置を用いることなく、光沢度が高い金属銀層を基材上に備えた積層体の製造を可能としている。
<組成物層形成工程>
本発明の製造方法においては、まず、前記組成物層形成工程を行う。
前記組成物層形成工程においては、銀インク組成物を基材に付着させて、組成物層を形成する。後の工程において、前記組成物層からは、固形層を経て金属銀層が形成され、この金属銀層と前記基材とで、目的とする積層体が構成される。
本工程について、以下においては、まず、銀インク組成物について詳細に説明する。
◎銀インク組成物
前記銀インク組成物は、有機銀化合物と、含窒素化合物と、が配合されてなるものである。
前記有機銀化合物は、一分子中に有機基及び銀原子を有し、分解等の構造変化によって金属銀を生じる化合物である。このような有機銀化合物としては、例えば、有機酸の銀塩、有機銀錯体等が挙げられる。
また、前記含窒素化合物は、分子中に窒素原子を有する化合物である。
銀インク組成物において、有機銀化合物及び含窒素化合物は、それぞれ1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
好ましい銀インク組成物としては、以下に示す銀インク組成物(I)及び銀インク組成物(II)が挙げられる、以下、これら銀インク組成物について説明する。
〇銀インク組成物(I)
銀インク組成物(I)は、前記有機銀化合物として、カルボン酸銀(カルボン酸の銀塩)が配合され、さらに含窒素化合物が配合されてなる。
[カルボン酸銀]
前記カルボン酸銀は、式「−COOAg」で表される基を有する。
本発明において、カルボン酸銀は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
前記カルボン酸銀は、式「−COOAg」で表される基を有していれば特に限定されない。例えば、式「−COOAg」で表される基の数は1個のみでもよいし、2個以上でもよい。また、カルボン酸銀中の式「−COOAg」で表される基の位置も特に限定されない。
前記カルボン酸銀は、下記一般式(1)で表わされるβ−ケトカルボン酸銀(以下、「β−ケトカルボン酸銀(1)」と略記することがある)及び下記一般式(4)で表されるカルボン酸銀(以下、「カルボン酸銀(4)」と略記することがある)からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
なお、本明細書においては、単なる「カルボン酸銀」との記載は、特に断りの無い限り、「β−ケトカルボン酸銀(1)」及び「カルボン酸銀(4)」だけではなく、これらを包括する、「式「−COOAg」で表される基を有するカルボン酸銀」を意味するものとする。
Figure 2019044241
(式中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R−CY −」、「CY −」、「R−CHY−」、「RO−」、「RN−」、「(RO)CY−」若しくは「R−C(=O)−CY −」で表される基であり;
はそれぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子であり;Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であり;Rは炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり;Rは炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であり;R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基であり;Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であり;
はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基、又は一般式「RO−」、「RS−」、「R−C(=O)−」若しくは「R−C(=O)−O−」で表される基であり;
は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基である。)
Figure 2019044241
(式中、Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、カルボキシ基又は式「−C(=O)−OAg」で表される基であり、前記脂肪族炭化水素基がメチレン基を有する場合、1個以上の前記メチレン基はカルボニル基で置換されていてもよい。)
(β−ケトカルボン酸銀(1))
β−ケトカルボン酸銀(1)は、前記一般式(1)で表される。
式中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R−CY −」、「CY −」、「R−CHY−」、「RO−」、「RN−」、「(RO)CY−」若しくは「R−C(=O)−CY −」で表される基である。
Rにおける炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状(脂肪族環式基)のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。また、前記脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基及び不飽和脂肪族炭化水素基のいずれでもよい。そして、前記脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜6であることがより好ましい。Rにおける好ましい前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。
Rにおける直鎖状又は分枝鎖状の前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、1,1−ジメチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、4,4−ジメチルペンチル基、1−エチルペンチル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、4−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、1−プロピルブチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、1−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、4−エチルヘキシル基、5−エチルヘキシル基、1,1−ジメチルヘキシル基、2,2−ジメチルヘキシル基、3,3−ジメチルヘキシル基、4,4−ジメチルヘキシル基、5,5−ジメチルヘキシル基、1,2,3−トリメチルペンチル基、1,2,4−トリメチルペンチル基、2,3,4−トリメチルペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、1,4,4−トリメチルペンチル基、3,4,4−トリメチルペンチル基、1,1,2−トリメチルペンチル基、1,1,3−トリメチルペンチル基、1,1,4−トリメチルペンチル基、1,2,2−トリメチルペンチル基、2,2,3−トリメチルペンチル基、2,2,4−トリメチルペンチル基、1,3,3−トリメチルペンチル基、2,3,3−トリメチルペンチル基、3,3,4−トリメチルペンチル基、1−プロピルペンチル基、2−プロピルペンチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。
Rにおける環状の前記アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、トリシクロデシル基等が挙げられる。
Rにおける前記アルケニル基としては、例えば、Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の1個の単結合(C−C)が二重結合(C=C)に置換された基等が挙げられる。
このような前記アルケニル基としては、例えば、ビニル基(エテニル基、−CH=CH)、アリル基(2−プロペニル基、−CH−CH=CH)、1−プロペニル基(−CH=CH−CH)、イソプロペニル基(−C(CH)=CH)、1−ブテニル基(−CH=CH−CH−CH)、2−ブテニル基(−CH−CH=CH−CH)、3−ブテニル基(−CH−CH−CH=CH)、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル基等が挙げられる。
Rにおける前記アルキニル基としては、例えば、Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の1個の単結合(C−C)が三重結合(C≡C)に置換された基等が挙げられる。
このような前記アルキニル基としては、例えば、エチニル基(−C≡CH)、プロパルギル基(−CH−C≡CH)等が挙げられる。
Rにおける炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい。好ましい前記置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。また、前記脂肪族炭化水素基において、前記置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、すべての置換基が同一であってもよいし、すべての置換基が異なっていてもよく、一部の置換基のみが異なっていてもよい。
Rにおけるフェニル基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい。好ましい前記置換基としては、例えば、炭素数が1〜16の飽和又は不飽和の一価の脂肪族炭化水素基、前記脂肪族炭化水素基が酸素原子に結合してなる一価の基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基(−OH)、シアノ基(−C≡N)、フェノキシ基(−O−C)等が挙げられる。置換基を有する前記フェニル基において、前記置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
置換基である前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1〜16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるYは、それぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子である。そして、一般式「R−CY −」、「CY −」及び「R−C(=O)−CY −」においては、それぞれ複数個のYは、互いに同一でも異なっていてもよい。
RにおけるRは、炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基(C−)である。Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1〜19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるRは、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり、例えば、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるRは、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基である。Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1〜16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるR及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基である。すなわち、R及びRは、互いに同一でも異なっていてもよく、R及びRにおける前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1〜18である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるRは、炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO−」で表される基である。Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1〜19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
Rは、上記の中でも、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、一般式「R−C(=O)−CY −」で表される基、水酸基又はフェニル基であることが好ましい。そして、Rは、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であることが好ましい。
一般式(1)において、Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基(C−CH−)、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基(C−O−CH=CH−)、又は一般式「RO−」、「RS−」、「R−C(=O)−」若しくは「R−C(=O)−O−」で表される基である。
における炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基としては、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
におけるフェニル基及びベンジル基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい。好ましい前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ニトロ基(−NO)等が挙げられる。置換基を有する前記フェニル基及びベンジル基において、前記置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
におけるRは、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基(CS−)、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基(ビフェニル基、C−C−)である。Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1〜10である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。また、Rにおけるフェニル基及びジフェニル基が有する前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等が挙げられる。置換基を有する前記フェニル基及びジフェニル基において、前記置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
がチエニル基又はジフェニル基である場合、これらの、Xにおいて隣接する基又は原子(酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基)との結合位置は、特に限定されない。例えば、チエニル基は、2−チエニル基及び3−チエニル基のいずれでもよい。
一般式(1)において、2個のXは、2個のカルボニル基で挟まれた炭素原子と二重結合を介して1個の基として結合していてもよい。このようなXとしては、例えば、式「=CH−C−NO」で表される基等が挙げられる。
は、上記の中でも、水素原子、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、ベンジル基、又は一般式「R−C(=O)−」で表される基であることが好ましく、少なくとも一方のXが水素原子であることが好ましい。
β−ケトカルボン酸銀(1)は、2−メチルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CH)−C(=O)−OAg)、アセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、2−エチルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CHCH)−C(=O)−OAg)、プロピオニル酢酸銀(CHCH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、イソブチリル酢酸銀((CHCH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、ピバロイル酢酸銀((CHC−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、カプロイル酢酸銀(CH(CHCH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、2−n−ブチルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CHCHCHCH)−C(=O)−OAg)、2−ベンジルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CH)−C(=O)−OAg)、ベンゾイル酢酸銀(C−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、ピバロイルアセト酢酸銀((CHC−C(=O)−CH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、イソブチリルアセト酢酸銀((CHCH−C(=O)−CH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、2−アセチルピバロイル酢酸銀((CHC−C(=O)−CH(−C(=O)−CH)−C(=O)−OAg)、2−アセチルイソブチリル酢酸銀((CHCH−C(=O)−CH(−C(=O)−CH)−C(=O)−OAg)、又はアセトンジカルボン酸銀(AgO−C(=O)−CH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)であることが好ましい。
β−ケトカルボン酸銀(1)を用いて、銀インク組成物(I)の乾燥処理や加熱(焼成)処理等の固化処理により形成された光反射体(導電体、金属銀)においては、残存する原料や不純物の濃度をより低減できる。このような光反射体においては、原料や不純物が少ない程、例えば、形成された金属銀同士の接触が良好となり、導通が容易となり、抵抗率が低下する。
β−ケトカルボン酸銀(1)は、後述するように、当該分野で公知の還元剤等を使用しなくても、好ましくは60〜210℃、より好ましくは60〜200℃という低温で分解し、金属銀を形成できる。そして、β−ケトカルボン酸銀(1)は、還元剤と併用することで、より低温で分解して金属銀を形成する。
本発明において、β−ケトカルボン酸銀(1)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
(カルボン酸銀(4))
カルボン酸銀(4)は、前記一般式(4)で表される。
式中、Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、カルボキシ基(−COOH)又は式「−C(=O)−OAg」で表される基である。
における前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。ただし、Rにおける前記脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜15であることが好ましく、1〜10であることがより好ましい。
における前記脂肪族炭化水素基がメチレン基(−CH−)を有する場合、1個以上の前記メチレン基はカルボニル基で置換されていてもよい。カルボニル基で置換されていてもよいメチレン基の数及び位置は特に限定されず、すべてのメチレン基がカルボニル基で置換されていてもよい。ここで「メチレン基」とは、単独の式「−CH−」で表される基だけでなく、式「−CH−」で表される基が複数個連なったアルキレン基中の1個の式「−CH−」で表される基も含むものとする。
カルボン酸銀(4)は、ピルビン酸銀(CH−C(=O)−C(=O)−OAg)、酢酸銀(CH−C(=O)−OAg)、酪酸銀(CH−(CH−C(=O)−OAg)、イソ酪酸銀((CHCH−C(=O)−OAg)、2−エチルへキサン酸銀(CH−(CH−CH(CHCH)−C(=O)−OAg)、ネオデカン酸銀、シュウ酸銀(AgO−C(=O)−C(=O)−OAg)、又はマロン酸銀(AgO−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)であることが好ましい。また、上記のシュウ酸銀(AgO−C(=O)−C(=O)−OAg)及びマロン酸銀(AgO−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)の2個の式「−COOAg」で表される基のうち、1個が式「−COOH」で表される基となったもの(HO−C(=O)−C(=O)−OAg、HO−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)も好ましい。
カルボン酸銀(4)を用いた場合にも、β−ケトカルボン酸銀(1)を用いた場合と同様に、銀インク組成物(I)の乾燥処理や加熱(焼成)処理等の固化処理により形成された光反射体(金属銀)において、残存する原料や不純物の濃度をより低減できる。そして、カルボン酸銀(4)は、還元剤と併用することで、より低温で分解して金属銀を形成する。
本発明において、カルボン酸銀(4)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
前記カルボン酸銀は、2−メチルアセト酢酸銀、アセト酢酸銀、2−エチルアセト酢酸銀、プロピオニル酢酸銀、イソブチリル酢酸銀、ピバロイル酢酸銀、カプロイル酢酸銀、2−n−ブチルアセト酢酸銀、2−ベンジルアセト酢酸銀、ベンゾイル酢酸銀、ピバロイルアセト酢酸銀、イソブチリルアセト酢酸銀、アセトンジカルボン酸銀、ピルビン酸銀、酢酸銀、酪酸銀、イソ酪酸銀、2−エチルへキサン酸銀、ネオデカン酸銀、シュウ酸銀及びマロン酸銀からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
そして、これらカルボン酸銀の中でも、2−メチルアセト酢酸銀、アセト酢酸銀、イソブチリル酢酸銀及びピバロイル酢酸銀は、後述する含窒素化合物(なかでもアミン化合物)との相溶性に優れ、銀インク組成物(I)の高濃度化に、特に適したものとして挙げられる。
銀インク組成物(I)において、前記カルボン酸銀に由来する銀の含有量は、5質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましい。前記銀の含有量がこのような範囲であることで、形成された光反射体(金属銀)は品質により優れたものとなる。前記銀の含有量の上限値は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、銀インク組成物(I)の取り扱い性等を考慮すると、25質量%であることが好ましい。
なお、本明細書において、「カルボン酸銀に由来する銀」とは、特に断りの無い限り、銀インク組成物(I)の製造時に配合されたカルボン酸銀中の銀と同義であり、配合後も引き続きカルボン酸銀を構成している銀と、配合後にカルボン酸銀の分解で生じた分解物中の銀と、配合後にカルボン酸銀の分解で生じた銀そのもの(金属銀)と、のすべてを含む概念とする。
<含窒素化合物>
前記含窒素化合物は、炭素数25以下のアミン化合物(以下、「アミン化合物」と略記することがある)、炭素数25以下の第4級アンモニウム塩(以下、「第4級アンモニウム塩」と略記することがある)、アンモニア、炭素数25以下のアミン化合物が酸と反応してなるアンモニウム塩(以下、「アミン化合物由来のアンモニウム塩」と略記することがある)、及びアンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩(以下、「アンモニア由来のアンモニウム塩」と略記することがある)からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。すなわち、配合される含窒素化合物は、1種のみでよいし、2種以上でもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
[アミン化合物、第4級アンモニウム塩]
前記アミン化合物は、炭素数が1〜25であり、第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミンのいずれでもよい。また、前記第4級アンモニウム塩は、炭素数が4〜25である。前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩は、鎖状及び環状のいずれでもよい。また、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子(例えば、第1級アミンのアミノ基(−NH)を構成する窒素原子)の数は1個でもよいし、2個以上でもよい。
前記第1級アミンとしては、例えば、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいモノアルキルアミン、モノアリールアミン、モノ(ヘテロアリール)アミン、ジアミン等が挙げられる。
前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、このようなアルキル基としては、例えば、Rにおける前記アルキル基と同様のものが挙げられる。前記アルキル基は、炭素数が1〜19の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。
好ましい前記モノアルキルアミンとして、具体的には、例えば、n−ブチルアミン、n−へキシルアミン、n−オクチルアミン、n−ドデシルアミン、n−オクタデシルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、3−アミノペンタン、3−メチルブチルアミン、2−ヘプチルアミン(2−アミノヘプタン)、2−アミノオクタン、2−エチルヘキシルアミン、1,2−ジメチル−n−プロピルアミン等が挙げられる。
前記モノアリールアミンを構成するアリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。前記アリール基の炭素数は、6〜10であることが好ましい。
前記モノ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基は、芳香族環骨格を構成する原子として、ヘテロ原子を有するものであり、前記ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、ホウ素原子等が挙げられる。また、芳香族環骨格を構成する前記へテロ原子の数は特に限定されず、1個でもよいし、2個以上でもよい。2個以上である場合、これらへテロ原子は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、これらへテロ原子は、すべて同じでもよいし、すべて異なっていてもよく、一部だけ異なっていてもよい。
前記ヘテロアリール基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、その環員数(環骨格を構成する原子の数)も特に限定されないが、3〜12員環であることが好ましい。
前記ヘテロアリール基で、窒素原子を1〜4個有する単環状のものとしては、例えば、ピロリル基、ピロリニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、ピペリジニル基、ピラゾリジニル基、ピペラジニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1個有する単環状のものとしては、例えば、フラニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1個有する単環状のものとしては、例えば、チエニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する単環状のものとしては、例えば、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、モルホリニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する単環状のものとしては、例えば、チアゾリル基、チアジアゾリル基、チアゾリジニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、窒素原子を1〜5個有する多環状のものとしては、例えば、インドリル基、イソインドリル基、インドリジニル基、ベンズイミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、インダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、テトラゾロピリジル基、テトラゾロピリダジニル基、ジヒドロトリアゾロピリダジニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜3個有する多環状のものとしては、例えば、ジチアナフタレニル基、ベンゾチオフェニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する多環状のものとしては、例えば、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する多環状のものとしては、例えば、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ジアミンは、アミノ基を2個有していればよく、2個のアミノ基の位置関係は特に限定されない。好ましい前記ジアミンとしては、例えば、前記モノアルキルアミン、モノアリールアミン又はモノ(ヘテロアリール)アミンにおいて、アミノ基(−NH)を構成する水素原子以外の1個の水素原子が、アミノ基で置換されたもの等が挙げられる。
前記ジアミンは炭素数が1〜10であることが好ましく、より好ましいものとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン等が挙げられる。
前記第2級アミンとしては、例えば、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいジアルキルアミン、ジアリールアミン、ジ(ヘテロアリール)アミン等が挙げられる。
前記ジアルキルアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、ジアルキルアミン一分子中の2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
好ましい前記ジアルキルアミンとして、具体的には、例えば、N−メチル−n−ヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミン等が挙げられる。
前記ジアリールアミンを構成するアリール基は、前記モノアリールアミンを構成するアリール基と同様であり、炭素数が6〜10であることが好ましい。また、ジアリールアミン一分子中の2個のアリール基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記ジ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基は、前記モノ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基と同様であり、6〜12員環であることが好ましい。また、ジ(ヘテロアリール)アミン一分子中の2個のヘテロアリール基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記第3級アミンとしては、例えば、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいトリアルキルアミン、ジアルキルモノアリールアミン等が挙げられる。
前記トリアルキルアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜19の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、トリアルキルアミン一分子中の3個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、3個のアルキル基は、すべてが同じでもよいし、すべてが異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。
好ましい前記トリアルキルアミンとして、具体的には、例えば、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
前記ジアルキルモノアリールアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、ジアルキルモノアリールアミン一分子中の2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記ジアルキルモノアリールアミンを構成するアリール基は、前記モノアリールアミンを構成するアリール基と同様であり、炭素数が6〜10であることが好ましい。
本発明において、前記第4級アンモニウム塩としては、例えば、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいハロゲン化テトラアルキルアンモニウム等が挙げられる。
前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜19であることが好ましい。また、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム一分子中の4個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、4個のアルキル基は、すべてが同じでもよいし、すべてが異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。
前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを構成するハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
好ましい前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムとして、具体的には、例えば、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
ここまでは、主に鎖状のアミン化合物及び第4級有機アンモニウム塩について説明したが、前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩は、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子が環骨格構造(複素環骨格構造)の一部であるようなヘテロ環化合物であってもよい。すなわち、前記アミン化合物は環状アミンでもよく、前記第4級アンモニウム塩は環状アンモニウム塩でもよい。この時の環(アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子を含む環)構造は、単環状及び多環状のいずれでもよく、その環員数(環骨格を構成する原子の数)も特に限定されず、脂肪族環及び芳香族環のいずれでもよい。
環状アミンであれば、好ましいものとして、例えば、ピリジン等が挙げられる。
前記第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン及び第4級アンモニウム塩において、「置換基で置換されていてもよい水素原子」とは、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子に結合している水素原子以外の水素原子である。この時の置換基の数は特に限定されず、1個でもよいし、2個以上でもよく、前記水素原子のすべてが置換基で置換されていてもよい。置換基の数が複数の場合には、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、複数個の置換基はすべて同じでもよいし、すべて異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。また、置換基の位置も特に限定されない。
前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩における前記置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、トリフルオロメチル基(−CF)等が挙げられる。ここで、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基が置換基を有する場合、前記アルキル基は、置換基としてアリール基を有する、炭素数が1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は置換基として好ましくは炭素数が1〜5のアルキル基を有する、炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。このような置換基を有するモノアルキルアミンとして、具体的には、例えば、2−フェニルエチルアミン、ベンジルアミン、2,3−ジメチルシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
また、置換基である前記アリール基及びアルキル基は、さらに1個以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。このようなハロゲン原子で置換された置換基を有するモノアルキルアミンとしては、例えば、2−ブロモベンジルアミン等が挙げられる。ここで、前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
前記モノアリールアミンを構成するアリール基が置換基を有する場合、前記アリール基は、置換基としてハロゲン原子を有する、炭素数が6〜10のアリール基であることが好ましい。このような置換基を有するモノアリールアミンとして、具体的には、例えば、ブロモフェニルアミン等が挙げられる。ここで、前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
前記ジアルキルアミンを構成するアルキル基が置換基を有する場合、前記アルキル基は、置換基として水酸基又はアリール基を有する、炭素数が1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、このような置換基を有するジアルキルアミンとして、具体的には、例えば、ジエタノールアミン、N−メチルベンジルアミン等が挙げられる。
前記アミン化合物は、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−へキシルアミン、n−オクチルアミン、n−ドデシルアミン、n−オクタデシルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、3−アミノペンタン、3−メチルブチルアミン、2−ヘプチルアミン、2−アミノオクタン、2−エチルヘキシルアミン、2−フェニルエチルアミン、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、N−メチル−n−ヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、N−メチルベンジルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミン、1,2−ジメチル−n−プロピルアミン、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン又はN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンであることが好ましい。
そして、これらアミン化合物の中でも、2−エチルヘキシルアミンは、前記カルボン酸銀との相溶性に優れ、銀インク組成物(I)の高濃度化に特に適しており、さらに金属銀の表面粗さの低減に特に適したものとして挙げられる。表面粗さが低減されている金属銀は、光沢度も高いため、2−エチルヘキシルアミンの使用は、光沢度が高い金属銀層を備えた積層体の製造時に、特に有利である。
[アミン化合物由来のアンモニウム塩]
本発明において、前記アミン化合物由来のアンモニウム塩は、前記アミン化合物が酸と反応してなるアンモニウム塩である。前記酸は、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸でもよいし、酢酸等の有機酸でもよく、酸の種類は特に限定されない。
前記アミン化合物由来のアンモニウム塩としては、例えば、n−プロピルアミン塩酸塩、N−メチル−n−ヘキシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン塩酸塩等が挙げられるが、これらに限定されない。
[アンモニア由来のアンモニウム塩]
本発明において、前記アンモニア由来のアンモニウム塩は、アンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩である。ここで酸としては、前記アミン化合物由来のアンモニウム塩の場合と同じものが挙げられる。
前記アンモニア由来のアンモニウム塩としては、例えば、塩化アンモニウム等が挙げられるが、これに限定されない。
本発明においては、前記アミン化合物、第4級アンモニウム塩、アミン化合物由来のアンモニウム塩及びアンモニア由来のアンモニウム塩は、それぞれ1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
そして、前記含窒素化合物としては、前記アミン化合物、第4級アンモニウム塩、アミン化合物由来のアンモニウム塩及びアンモニア由来のアンモニウム塩からなる群から選択される1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
本発明においては、例えば、前記含窒素化合物として、炭素数が8以上の第1含窒素化合物と、炭素数が7以下の第2含窒素化合物と、を併用してもよい。
前記第1含窒素化合物及び第2含窒素化合物を併用する場合、銀インク組成物(I)において、第1含窒素化合物の配合量に対する第2含窒素化合物の配合量の割合は、0モル%より大きく、18モル%未満であることが好ましく、1〜17モル%であることがより好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、例えば、細線状の銀層をより安定して形成できる。
銀インク組成物(I)において、前記含窒素化合物の配合量は、前記カルボン酸銀の配合量1モルあたり0.3〜15モルであることが好ましく、0.3〜12モルであることがより好ましく、0.3〜8モルであることが特に好ましい。前記含窒素化合物の前記配合量がこのような範囲であることで、銀インク組成物(I)は安定性がより向上し、金属銀の品質がより向上する。さらに、高温による銀インク組成物(I)の処理を行わなくても、より安定して金属銀を形成できる。
<炭素数8〜10の分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸>
銀インク組成物(I)は、前記カルボン酸銀及び含窒素化合物以外に、炭素数8〜10の分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸(本明細書においては、「分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸」と略記することがある)が配合されていてもよい。
前記分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸が配合されている銀インク組成物(I)を用いることで、光沢度が高い金属銀層の形成が容易となることがある。
分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸は、炭素数8〜10の分岐鎖状飽和脂肪族炭化水素の1個又は2個以上の水素原子が、カルボキシ基で置換された構造を有する。換言すると、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸は、1分子中の炭素数が8〜10で、かつ、1個又は2個以上のカルボキシ基が分岐鎖状飽和脂肪族炭化水素基に結合している化合物である。
分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸は、1分子中にカルボキシ基を1個のみ有する一価(モノ)カルボン酸、及び1分子中にカルボキシ基を2個以上有する多価カルボン酸、のいずれであってもよい。
分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸が1分子中に有するカルボキシ基の数は、1〜3個であることが好ましく、1個又は2個であることがより好ましく、1個であることが特に好ましい。
分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸において、カルボキシ基が結合している炭素原子の位置は、特に限定されない。例えば、カルボキシ基が結合している炭素原子は、分子の末端の炭素原子であってもよいし、分子の末端以外の炭素原子であってもよい。
分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸が多価カルボン酸である場合、すべてのカルボキシ基が、互いに異なる炭素原子に結合していてもよいし、2個又は3個のカルボキシ基が、同一の炭素原子に結合していてもよい。
分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸において、分岐鎖が結合している、主鎖中の炭素原子の位置は、特に限定されない。例えば、分岐鎖が結合している前記炭素原子は、主鎖のカルボキシ基が結合している側の末端の炭素原子であってもよいし、主鎖のカルボキシ基が結合している側とは反対側の末端の炭素原子に隣接する炭素原子(前記反対側の末端から2番目の炭素原子)であってもよいし、上述のカルボキシ基が結合している側の末端の炭素原子と、上述のカルボキシ基が結合している側とは反対側の末端の炭素原子に隣接する炭素原子と、の間に位置する主鎖中の炭素原子であってもよい。
ここで、「主鎖」とは、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸中の鎖状構造のうち、炭素数が最大であるものを意味する。炭素数が最大である鎖状構造が複数ある場合には、いずれの鎖状構造を主鎖として取り扱ってもよい。主鎖の炭素数は、必ず分岐鎖の炭素数以上となる。
分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸は、下記一般式(6)で表されるモノカルボン酸(本明細書においては、「モノカルボン酸(6)」と略記することがある)であることが好ましい。
31−C(=O)−OH ・・・・(6)
(式中、R31は、炭素数7〜9の分岐鎖状のアルキル基である。)
31の炭素数7〜9の分岐鎖状のアルキル基(一価の飽和脂肪族炭化水素基)としては、例えば、1−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、1,1−ジメチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、4,4−ジメチルペンチル基、1−エチルペンチル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、4−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、1−プロピルブチル基等の炭素数7の分岐鎖状のアルキル基;
イソオクチル基、1−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、4−エチルヘキシル基、5−エチルヘキシル基、1,1−ジメチルヘキシル基、2,2−ジメチルヘキシル基、3,3−ジメチルヘキシル基、4,4−ジメチルヘキシル基、5,5−ジメチルヘキシル基、1,2,3−トリメチルペンチル基、1,2,4−トリメチルペンチル基、2,3,4−トリメチルペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、1,4,4−トリメチルペンチル基、3,4,4−トリメチルペンチル基、1,1,2−トリメチルペンチル基、1,1,3−トリメチルペンチル基、1,1,4−トリメチルペンチル基、1,2,2−トリメチルペンチル基、2,2,3−トリメチルペンチル基、2,2,4−トリメチルペンチル基、1,3,3−トリメチルペンチル基、2,3,3−トリメチルペンチル基、3,3,4−トリメチルペンチル基、1−プロピルペンチル基、2−プロピルペンチル基等の炭素数8の分岐鎖状のアルキル基;
1−メチルオクチル基、2−メチルオクチル基、3−メチルオクチル基、4−メチルオクチル基、5−メチルオクチル基、6−メチルオクチル基、7−メチルオクチル基、6,6−ジメチルヘプチル基、5,5−ジメチルヘプチル基、4,4−ジメチルヘプチル基、3,3−ジメチルヘプチル基、2,2−ジメチルヘプチル基、1,1−ジメチルヘプチル基、1,2−ジメチルヘプチル基、1,3−ジメチルヘプチル基、1,4−ジメチルヘプチル基、1,5−ジメチルヘプチル基、1,6−ジメチルヘプチル基、2,3−ジメチルヘプチル基、2,4−ジメチルヘプチル基、2,5−ジメチルヘプチル基、2,6−ジメチルヘプチル基、3,4−ジメチルヘプチル基、3,5−ジメチルヘプチル基、3,6−ジメチルヘプチル基、4,5−ジメチルヘプチル基、4,6−ジメチルヘプチル基、5,6−ジメチルヘプチル基、1,2,3−トリメチルヘキシル基、1,2,4−トリメチルヘキシル基、1,2,5−トリメチルヘキシル基、2,3,4−トリメチルヘキシル基、2,3,5−トリメチルヘキシル基、3,4,5−トリメチルヘキシル基、1,1,2−トリメチルヘキシル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、1,1,4−トリメチルヘキシル基、1,1,5−トリメチルヘキシル基、1,2,2−トリメチルヘキシル基、2,2,3−トリメチルヘキシル基、2,2,4−トリメチルヘキシル基、2,2,5−トリメチルヘキシル基、1,3,3−トリメチルヘキシル基、2,3,3−トリメチルヘキシル基、3,3,4−トリメチルヘキシル基、3,3,5−トリメチルヘキシル基、1,4,4−トリメチルヘキシル基、2,4,4−トリメチルヘキシル基、3,4,4−トリメチルヘキシル基、4,4,5−トリメチルヘキシル基、1,5,5−トリメチルヘキシル基、2,5,5−トリメチルヘキシル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、4,5,5−トリメチルヘキシル基、1,2,3,4−テトラメチルペンチル基、1,1,2,3−テトラメチルペンチル基、1,1,2,4−テトラメチルペンチル基、1,1,3,4−テトラメチルペンチル基、1,2,2,3−テトラメチルペンチル基、1,2,2,4−テトラメチルペンチル基、2,2,3,4−テトラメチルペンチル基、1,2,3,3−テトラメチルペンチル基、2,3,3,4−テトラメチルペンチル基、1,3,3,4−テトラメチルペンチル基、1,2,4,4−テトラメチルペンチル基、2,3,4,4−テトラメチルペンチル基、1,3,4,4−テトラメチルペンチル基、1−エチル−1−メチルヘキシル基、1−エチル−2−メチルヘキシル基、1−エチル−3−メチルヘキシル基、1−エチル−4−メチルヘキシル基、1−エチル−5−メチルヘキシル基、2−エチル−1−メチルヘキシル基、2−エチル−2−メチルヘキシル基、2−エチル−3−メチルヘキシル基、2−エチル−4−メチルヘキシル基、2−エチル−5−メチルヘキシル基、3−エチル−1−メチルヘキシル基、3−エチル−2−メチルヘキシル基、3−エチル−3−メチルヘキシル基、3−エチル−4−メチルヘキシル基、3−エチル−5−メチルヘキシル基、4−エチル−1−メチルヘキシル基、4−エチル−2−メチルヘキシル基、4−エチル−3−メチルヘキシル基、4−エチル−4−メチルヘキシル基、4−エチル−5−メチルヘキシル基、1,1−ジエチルペンチル基、1,2−ジエチルペンチル基、1,3−ジエチルペンチル基、2,2−ジエチルペンチル基、2,3−ジエチルペンチル基、3,3−ジエチルペンチル基、1−エチル−1−プロピルブチル基、2−エチル−1−プロピルブチル基等の炭素数9の分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
モノカルボン酸(6)に限定されず、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸1分子中の分岐鎖の数は、1〜3本であることが好ましい。
モノカルボン酸(6)に限定されず、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の1本の分岐鎖の炭素数は、1〜3であることが好ましい。
モノカルボン酸(6)に限定されず、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸は、これらの条件をともに満たすもの、すなわち、1分子中の分岐鎖の数が1〜3本であり、かつ1本の分岐鎖の炭素数が1〜3個であるものがより好ましい。
分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸は、金属銀の光沢性の低下を抑制する適度な反応性を有し、かつ、銀インク組成物(I)中から揮発し難い一方で、銀インク組成物(I)の固化処理時には気化し易い、適度な沸点を有しており、本発明の効果を奏するものとして、特に適した特性を有する。
例えば、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の沸点は、180〜270℃であることが好ましく、200〜260℃であることがより好ましく、215〜255℃であることが特に好ましい。分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の沸点が前記下限値以上であることで、銀インク組成物(I)中からの分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の揮発が抑制されて、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の沸点が前記上限値以下であることで、銀インク組成物(I)の固化処理によって得られた金属銀中での分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の残存が抑制され、光沢性、導電性等が高いなど、より好ましい特性の金属銀が得られる。
分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸(例えば、モノカルボン酸(6))で特に好ましいものとしては、ネオデカン酸(C19COOH)、2−プロピル吉草酸(2−プロピルペンタン酸、(CHCHCHCH(CHCHCH)COOH)、3,5,5−トリメチルヘキサン酸((CHCCHCH(CH)CHCOOH)等が挙げられる。
なお、本明細書において、ネオデカン酸とは、炭素数10の飽和脂肪族モノカルボン酸の異性体の混合物を意味し、前記混合物には炭素数10の分岐鎖状飽和脂肪族モノカルボン酸が必ず含まれる。このように、ネオデカン酸とは、1種の化合物だけを意味するものではない。
そして、ネオデカン酸中の、2種以上の炭素数10の飽和脂肪族モノカルボン酸の組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸を用いる場合、銀インク組成物(I)において、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の配合量は、前記カルボン酸銀中の銀原子の配合量1モルあたり、0.04〜0.5モルであることが好ましく、0.06〜0.4モルであることがより好ましく、0.08〜0.3モルであることが特に好ましい。分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の前記配合量がこのような範囲であることで、光沢度が高い金属銀層の形成がより容易となる。
<アルコール>
銀インク組成物(I)は、前記カルボン酸銀及び含窒素化合物以外に、さらにアルコールが配合されていてもよい。
前記アルコールは、下記一般式(2)で表されるアセチレンアルコール類(以下、「アセチレンアルコール(2)」と略記することがある)であることが好ましい。
Figure 2019044241
(式中、R’及びR’’は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基である。)
[アセチレンアルコール(2)]
アセチレンアルコール(2)は、前記一般式(2)で表される。
式中、R’及びR’’は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基である。
R’及びR’’における炭素数1〜20のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。R’及びR’’における前記アルキル基としては、Rにおける前記アルキル基と同様のものが挙げられる。
R’及びR’’におけるフェニル基の水素原子が置換されていてもよい前記置換基としては、例えば、炭素数が1〜16の飽和又は不飽和の一価の脂肪族炭化水素基、前記脂肪族炭化水素基が酸素原子に結合してなる一価の基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基、シアノ基、フェノキシ基等が挙げられる。これら前記置換基は、Rにおけるフェニル基の水素原子が置換されていてもよい前記置換基と同様のものである。そして、置換基を有する前記フェニル基において、前記置換基の数及び位置は特に限定されず、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
R’及びR’’は、水素原子、又は炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であることがより好ましい。
好ましいアセチレンアルコール(2)としては、例えば、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、2−プロピン−1−オール、4−エチル−1−オクチン−3−オール、3−エチル−1−ヘプチン−3−オール等が挙げられる。
前記アルコールは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
アセチレンアルコール(2)を用いる場合、銀インク組成物(I)において、アセチレンアルコール(2)の配合量は、前記カルボン酸銀の配合量1モルあたり0.01〜0.7モルであることが好ましく、0.02〜0.5モルであることがより好ましく、0.02〜0.3モルであることが特に好ましい。アセチレンアルコール(2)の前記配合量がこのような範囲であることで、銀インク組成物(I)の安定性がより向上する。
<その他の成分>
銀インク組成物(I)は、前記カルボン酸銀、含窒素化合物、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸及びアルコール以外の、その他の成分が配合されていてもよい。
銀インク組成物(I)における前記その他の成分は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。前記その他の成分で、好ましいものとしては、例えば、アルコール以外の溶媒等が挙げられ、配合成分の種類や量に応じて任意に選択できる。
前記その他の成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
[溶媒]
前記溶媒は、アルコール以外のもの(水酸基を有しないもの)であれば、特に限定されない。
ただし、前記溶媒は、常温で液状であるものが好ましい。
なお、本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15〜25℃の温度等が挙げられる。
前記溶媒としては、例えば、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン等の芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロオクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、デカヒドロナフタレン等の脂肪族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;酢酸エチル、グルタル酸モノメチル、グルタル酸ジメチル等のエステル;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,2−ジメトキシエタン(ジメチルセロソルブ)等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン等のケトン;アセトニトリル等のニトリル;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド等が挙げられる。
銀インク組成物(I)における前記その他の成分の配合量は、前記その他の成分の種類に応じて、適宜選択すればよい。
例えば、前記その他の成分がアルコール以外の溶媒である場合、前記溶媒の配合量は、銀インク組成物(I)の粘度等、目的に応じて選択すればよい。ただし通常は、銀インク組成物(I)において、配合成分の総量に対する前記溶媒の配合量の割合は、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが特に好ましい。
また、前記その他の成分が前記溶媒以外の成分である場合、銀インク組成物(I)において、配合成分の総量に対する前記その他の成分の配合量の割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
配合成分の総量に対する前記その他の成分の配合量の割合が0質量、すなわちその他の成分を配合しなくても、銀インク組成物(I)は十分にその効果を発現する。
銀インク組成物(I)においては、配合成分がすべて溶解していてもよいし、一部又は全ての成分が溶解せずに分散した状態であってもよいが、配合成分がすべて溶解していることが好ましく、溶解していない成分は均一に分散していることが好ましい。
○銀インク組成物(I)の製造方法
銀インク組成物(I)は、前記カルボン酸銀、含窒素化合物、及び必要に応じて、これら以外の成分を配合することで得られる。各成分の配合後は、得られたものをそのまま銀インク組成物(I)としてもよいし、必要に応じて引き続き公知の精製操作を行って得られたものを銀インク組成物(I)としてもよい。本発明においては、特に前記カルボン酸銀としてβ−ケトカルボン酸銀(1)を用いた場合、上記の各成分の配合時において、金属銀の光沢度及び導電性を低下させる不純物が生成しないか、又はこのような不純物の生成量を極めて少量に抑制できる。したがって、精製操作を行っていない銀インク組成物(I)を用いても、十分な光沢度及び導電性を有する金属銀が得られる。
各成分の配合順序は、特に限定されない。
分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸を用いた銀インク組成物(I)の場合、各成分の好ましい配合方法の一例としては、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸を最後に配合する方法が挙げられる。すなわち、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸を用いた銀インク組成物(I)の好ましい製造方法の一例としては、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸以外の成分をすべて配合した後、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸を最後に配合する製造方法が挙げられる。
各成分の配合時には、すべての成分を添加してからこれらを混合してもよいし、一部の成分を順次添加しながら混合してもよく、すべての成分を順次添加しながら混合してもよい。
混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサー、三本ロール、ニーダー又はビーズミル等を使用して混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
銀インク組成物(I)において、溶解していない成分を均一に分散させる場合には、例えば、上記の三本ロール、ニーダー又はビーズミル等を用いて分散させる方法を適用することが好ましい。
配合時の温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、−5〜60℃であることが好ましい。そして、配合時の温度は、配合成分の種類及び量に応じて、配合して得られた混合物が撹拌し易い粘度となるように、適宜調節するとよい。
また、配合時間も、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、10分〜36時間であることが好ましい。
<二酸化炭素>
銀インク組成物(I)は、さらに二酸化炭素が供給されてなるものでもよい。このような銀インク組成物(I)は高粘度となり、例えば、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、パッド印刷法等の、インクを厚盛りすることが必要な印刷法への適用に好適である。
二酸化炭素は、銀インク組成物(I)製造時のいずれの時期に供給してもよい。
供給される二酸化炭素(CO)は、ガス状及び固形状(ドライアイス)のいずれでもよく、ガス状及び固形状の両方でもよい。供給された二酸化炭素は、供給対象物に溶け込み、いずれかの含有成分に作用することで、得られる銀インク組成物(I)の粘度が上昇すると推測される。
二酸化炭素ガスの供給は、液体中にガスを吹き込む公知の各種方法で行えばよく、適した供給方法を適宜選択すればよい。例えば、配管の一端を供給対象物中に浸漬し、他端を二酸化炭素ガスの供給源に接続して、この配管を通じて二酸化炭素ガスを供給対象物に供給する方法等が挙げられる。この時、配管の端部から直接二酸化炭素ガスを供給してもよいが、例えば、多孔質性のものなど、ガスの流路となり得る空隙部が多数設けられ、導入されたガスを拡散させて微小な気泡として放出することが可能なガス拡散部材を配管の端部に接続し、このガス拡散部材を介して二酸化炭素ガスを供給してもよい。また、供給対象物を撹拌しながら二酸化炭素ガスを供給してもよい。このようにすることで、効率的に二酸化炭素を供給できる。
二酸化炭素ガスの供給量は、供給対象物の量や、目的とする銀インク組成物(I)の粘度等に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。例えば、20〜25℃における粘度が5Pa・s以上である銀インク組成物(I)を100〜1000g程度得るためには、二酸化炭素ガスを100L以上供給することが好ましく、200L以上供給することがより好ましい。なお、ここでは銀インク組成物(I)の20〜25℃における粘度について説明したが、銀インク組成物(I)の使用時の温度は、20〜25℃に限定されるものではなく、任意に選択できる。なお、ここでの「粘度」とは、超音波振動式粘度計を用いて測定したものを意味する。
二酸化炭素ガスの流量は、必要とされる二酸化炭素ガスの供給量を考慮して適宜調節すればよいが、供給対象物1gあたり0.5mL/分以上であることが好ましく、1mL/分以上であることがより好ましい。前記流量の上限値は特に限定されないが、取り扱い性等を考慮すると、供給対象物1gあたり40mL/分であることが好ましい。
そして、二酸化炭素ガスの供給時間は、必要とされる二酸化炭素ガスの供給量や、流量を考慮して適宜調節すればよい。
二酸化炭素ガス供給時の供給対象物の温度は、5〜70℃であることが好ましく、7〜60℃であることがより好ましく、10〜50℃であることが特に好ましい。前記温度が前記下限値以上であることで、より効率的に二酸化炭素を供給でき、前記温度が前記上限値以下であることで、不純物が少ないより良好な品質の銀インク組成物(I)が得られる。
二酸化炭素ガスの流量及び供給時間、並びに二酸化炭素ガス供給時の前記温度は、それぞれの値を相互に考慮しながら適した範囲に調節すればよい。例えば、前記温度を低めに設定しても、二酸化炭素ガスの流量を多めに設定するか、二酸化炭素ガスの供給時間を長めに設定することで、あるいはこの両方を行うことで、効率的に二酸化炭素を供給できる。また、二酸化炭素ガスの流量を少なめに設定しても、前記温度を高めにするか、二酸化炭素ガスの供給時間を長めに設定することで、あるいはこの両方を行うことで、効率的に二酸化炭素を供給できる。すなわち、二酸化炭素ガスの流量、二酸化炭素ガス供給時の前記温度として例示した上記数値範囲の中の数値を、二酸化炭素ガスの供給時間も考慮しつつ柔軟に組み合わせることで、良好な品質の銀インク組成物(I)が効率的に得られる。
二酸化炭素ガスの供給は、供給対象物を撹拌しながら行うことが好ましい。このようにすることで、供給した二酸化炭素ガスがより均一に供給対象物中に拡散し、より効率的に二酸化炭素を供給できる。
この時の撹拌方法は、二酸化炭素を用いない上記の銀インク組成物(I)の製造時における前記混合方法の場合と同様でよい。
ドライアイス(固形状二酸化炭素)の供給は、供給対象物中にドライアイスを添加することで行えばよい。ドライアイスは、全量を一括して添加してもよいし、分割して段階的に(添加を行わない時間帯を挟んで連続的に)添加してもよい。
ドライアイスの使用量は、上記の二酸化炭素ガスの供給量を考慮して調節すればよい。
ドライアイスの添加中及び添加後は、供給対象物を撹拌することが好ましく、例えば、二酸化炭素を用いない上記の銀インク組成物(I)の製造時と同様の方法で撹拌することが好ましい。このようにすることで、効率的に二酸化炭素を供給できる。
撹拌時の温度は、二酸化炭素ガス供給時と同様でよい。また、撹拌時間は、撹拌温度に応じて適宜調節すればよい。
例えば、銀インク組成物(I)をスクリーン印刷法、フレキソ印刷法等の、高粘度インクを使用する印刷法へ適用する場合には、二酸化炭素が供給されてなる銀インク組成物(I)の、20〜25℃における粘度は、1Pa・s以上であることが好ましい。
なお、上記のように二酸化炭素の供給によって、粘度が通常よりも高い銀インク組成物(I)において、カルボン酸銀の少なくとも一部から金属銀が形成され、この金属銀が析出することがある。このとき、銀インク組成物(I)の粘度が高い場合には、析出した金属銀の凝集が抑制され、得られた銀インク組成物(I)中での金属銀の分散性が向上する。このような銀インク組成物(I)を用いて、後述する方法で金属銀を形成して得られた金属銀は、粘度が低い、すなわち二酸化炭素が供給されていない銀インク組成物(I)を用いた場合の金属銀よりも、光沢性が高く、導電性が高く(体積抵抗率が低く)、表面粗さも小さくなり、より好ましい特性を有するものとなる。
〇銀インク組成物(II)
銀インク組成物(II)は、前記有機銀化合物として、有機銀錯体が配合され、さらに含窒素化合物が配合されてなる。
このような銀インク組成物(II)としては、例えば、有機銀錯体の前駆体化合物と、これ以外の含窒素化合物と、の反応によって、有機銀錯体が形成され、かつ余剰の前記含窒素化合物が残存している反応液を含むものが挙げられる。このような銀インク組成物(II)として、より具体的には、特許第5243409号公報に記載のものが挙げられる。
すなわち、銀インク組成物(II)としては、例えば、下記一般式(91)で表される銀化合物(本明細書においては、「銀化合物(91)」と略記することがある)と、下記一般式(92)で表される化合物(本明細書においては、「含窒素化合物(92)」と略記することがある)及び下記一般式(93)で表される化合物(本明細書においては、「含窒素化合物(93)」と略記することがある)からなる群から選択される1種又は2種以上の含窒素化合物と、を反応させて得られた有機銀錯体を含有し、さらに、前記含窒素化合物を含有する液状組成物が挙げられる。
Figure 2019044241
(式中、n101は、1〜3の整数であり;X101は、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、シアノ基、シアネート基、カーボネート基、ニトレート基、ニトライト基、サルフェート基、ホスフェート基、チオシアネート基、クロレート基、パークロレート基、テトラフルオロボレート基、アセチルアセトネート基、カルボキシレート基、及びこれらの誘導体からなる群よから選択される基であり;R101〜R111は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜30の脂肪族若しくは脂環族アルキル基又はアリール基、官能基が置換されたアルキル基又はアリール基、及びヘテロ環式基からなる群から選択される基であり、ただし、R101〜R111がすべて水素原子になることはない。)
前記有機銀錯体としては、例えば、下記一般式(95)−1で表される化合物(本明細書においては、「有機銀錯体(95)−1」と略記することがある)、及び下記一般式(95)−2で表される化合物(本明細書においては、「有機銀錯体(95)−2」と略記することがある)が挙げられる。
Figure 2019044241
(式中、R101〜R111は、上記と同じであり;m101及びm102は、それぞれ独立に、0.5〜1.5である。)
[銀化合物(91)]
銀化合物(91)としては、例えば、酸化銀、チオシアネート化銀、シアン化銀、シアネート化銀、炭酸銀、硝酸銀、亜硝酸銀、硫酸銀、燐酸銀、過塩素酸銀、四フッ素ボレート化銀、アセチルアセトネート化銀、酢酸銀、乳酸銀、シュウ酸銀等が挙げられる。
銀化合物(91)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
[含窒素化合物(92)]
含窒素化合物(92)は、アンモニウムカルバメート系化合物である。
含窒素化合物(92)において、R101〜R105は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、シアノエチル基、メトキシエトキシエチル基、メトキシエトキシエトキシエチル基、ヘキサメチレンイミニル基、モルホリノ基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピリジニル基、カルボキシメチル基、トリメトキシシリルプロピル基、トリエトキシシリルプロピル基、フェニル基、メトキシフェニル基、シアノフェニル基、トリル基、ベンジル基、又はこれらの基において一部が置換された基であることが好ましい。ただし、R101〜R105がすべて水素原子になることはない。
含窒素化合物(92)としては、例えば、エチルアンモニウム エチルカルバメート、イソプロピルアンモニウム イソプロピルカルバメート、n−ブチルアンモニウム n−ブチルカルバメート、イソブチルアンモニウム イソブチルカルバメート、tert−ブチルアンモニウム tert−ブチルカルバメート、2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート、オクタデシルアンモニウム オクタデシルカルバメート、2−メトキシエチルアンモニウム 2−メトキシエチルカルバメート、2−シアノエチルアンモニウム 2−シアノエチルカルバメート、ジブチルアンモニウム ジブチルカルバメート、ジオクタデシルアンモニウム ジオクタデシルカルバメート、メチルデシルアンモニウム メチルデシルカルバメート、ヘキサメチレンイミンアンモニウム ヘキサメチレンイミンカルバメート、モルホリノアンモニウム モルホリノカルバメート、ピリジニウムエチルヘキシルカルバメート、ベンジルアンモニウム ベンジルカルバメート、トリエトキシシリルプロピルアンモニウム トリエトキシシリルプロピルカルバメート等が挙げられる。
そして、これら含窒素化合物(92)の中でも、2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメートは、銀化合物(91)との相溶性に優れ、銀インク組成物(II)の高濃度化に特に適しており、さらに金属銀の表面粗さの低減に特に適したものとして挙げられる。表面粗さが低減されている金属銀は、光沢度も高いため、2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメートの使用は、光沢度が高い金属銀層を備えた積層体の製造時に、特に有利である。
含窒素化合物(92)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
含窒素化合物(92)は、公知の方法で製造でき、例えば、米国特許第4542214号明細書に記載の方法で製造できる。
[含窒素化合物(93)]
含窒素化合物(93)は、アンモニウムカーボネート系化合物である。
含窒素化合物(93)において、R106〜R111は、含窒素化合物(92)におけるR101〜R105と同様のものである。ただし、R106〜R111がすべて水素原子になることはない。
含窒素化合物(93)としては、例えば、エチルアンモニウム エチルカーボネート、イソプロピルアンモニウム イソプロピルカーボネート、n−ブチルアンモニウム n−ブチルカーボネート、イソブチルアンモニウム イソブチルカーボネート、tert−ブチルアンモニウム tert−ブチルカーボネート、2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカーボネート、2−メトキシエチルアンモニウム 2−メトキシエチルカーボネート、2−シアノエチルアンモニウム 2−シアノエチルカーボネート、オクタデシルアンモニウム オクタデシルカーボネート、ジブチルアンモニウム ジブチルカーボネート、ジオクタデシルアンモニウム ジオクタデシルカーボネート、メチルデシルアンモニウム メチルデシルカーボネート、ヘキサメチレンイミニルアンモニウム ヘキサメチレンイミニルカーボネート、モルホリノアンモニウム モルホリノカーボネート、ベンジルアンモニウム ベンジルカーボネート、トリエトキシシリルプロピルアンモニウム トリエトキシシリルプロピルカーボネート等が挙げられる。
含窒素化合物(93)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
含窒素化合物(93)は、公知の方法で製造でき、例えば、米国特許第4542214号明細書に記載の方法で製造できる。
銀化合物(91)と反応させる含窒素化合物は、1種又は2種以上の含窒素化合物(92)のみであってもよいし、1種又は2種以上の含窒素化合物(93)のみであってもよいし、1種又は2種以上の含窒素化合物(92)と、1種又は2種以上の含窒素化合物(93)と、の両方であってもよい。
銀化合物(91)と、含窒素化合物(92)及び含窒素化合物(93)からなる群から選択される1種又は2種以上と、の反応は、例えば、窒素雰囲気下において、常圧の状態で又は加圧した状態で、溶媒を用いずに行うことができる。
[溶媒]
前記反応は、溶媒を用いて行ってもよい。このときの溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール;エチレングリコール、グリセリン等のグリコール;エチルアセテート、ブチルアセテート、カルビトールアセテート等のアセテート;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;クロロホルム、メチレンクロライド、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
前記溶媒は、銀インク組成物(II)の配合成分であってもよい。
前記反応時において、含窒素化合物(92)及び含窒素化合物(93)の合計使用量は、使用する銀化合物(91)中の銀原子の量に対して、1〜4倍モル量である([含窒素化合物(92)及び含窒素化合物(93)の合計使用量(モル)]/[使用する銀化合物(91)中の銀原子の量(モル)]の値が1〜4である)ことが好ましい。
後述する銀インク組成物の基材への付着方法に応じて、銀インク組成物(銀インク組成物(I)及び銀インク組成物(II)に限定されない)は、適した物性値を有するように、適宜調節することができる。
例えば、後述する印刷法で、二酸化炭素が供給されていない銀インク組成物を基材へ付着させる場合であれば、この銀インク組成物のせん断速度10/s、測定温度25℃の条件下での粘度は、1〜50mPa・sであることが好ましく、5〜20mPa・sであることがより好ましい。測定温度25℃の条件下での前記粘度が、前記上限値よりも高い場合には、せん断速度10/sの条件下での粘度が前記数値範囲内となるように、使用時の銀インク組成物を加熱してもよい。
また、銀インク組成物の密度は、0.5〜3g/cmであることが好ましく、0.7〜1.5g/cmであることがより好ましい。
本工程で用いる銀インク組成物については、以上のとおりである。
次いで、以下においては、銀インク組成物以外の本工程の条件について説明する。
前記組成物層形成工程においては、上述のとおり、銀インク組成物を基材に付着させて、組成物層を形成する。
前記基材の材質は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
基材の好ましい材質としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリアミド(PA)、ポリイミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリアリレート、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂等の合成樹脂が挙げられる。
また、基材の好ましい材質としては、上記以外にも、ガラス、シリコン等のセラミックスや、紙が挙げられる。
また、基材は、ガラスエポキシ樹脂、ポリマーアロイ等の、2種以上の材質を併用したものであってもよい。
また、基材は、後述するように、有色のもの及び不透明のものも好適である。すなわち、基材は、透明及び不透明のいずれであってもよいし、無色及び有色のいずれであってもよい。
基材は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
なお、本明細書においては、基材の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の材質及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
基材の厚さは、目的に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。
例えば、基材がシート状又はフィルム状である場合、基材の厚さは、10〜5000μmであることが好ましく、10〜3000μmであることがより好ましい。基材の厚さが前記下限値以上であることで、組成物層、固形層及び金属銀層の構造をより安定して維持できる。基材の厚さが前記上限値以下であることで、目的物である積層体の取り扱い性がより良好となる。
基材が複数層からなる場合には、各層の合計の厚さが、上記の好ましい基材の厚さとなるようにするとよい。
銀インク組成物は、例えば、印刷法、塗布法、浸漬法等の公知の方法で基材に付着させることができる。
前記印刷法としては、例えば、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、ディップ式印刷法、インクジェット式印刷法、ディスペンサー式印刷法、ジェットディスペンサー式印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、パッド印刷法等が挙げられる。
前記塗布法としては、例えば、スピンコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、グラビアコーター等の各種コーターや、ワイヤーバー等を用いる方法が挙げられる。
組成物層の形成時においては、基材に付着させる銀インク組成物の量、又は銀インク組成物における前記有機銀化合物等の配合量を調節することで、組成物層の厚さを調節できる。そして、組成物層の厚さを調節することで、後述する固形層及び金属銀層の厚さを調節できる。
組成物層の形成時においては、基材が一定以上の耐熱性を有するものである場合には、基材に銀インク組成物を付着させる前に、基材を加熱処理(アニール処理)してもよい。基材を加熱処理しておくことで、例えば、銀インク組成物を加熱乾燥させたときに、基材の収縮が抑制され、寸法安定性が向上する。
銀インク組成物を付着させる前の、基材の加熱処理の条件は、基材の種類に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。例えば、基材は、60℃以上で10〜60分間加熱処理することが好ましく、組成物層の形成時における、銀インク組成物の加熱乾燥処理の条件と同じ条件で処理してもよい。基材の加熱処理温度の上限値は、特に限定されず、基材の耐熱性を考慮して適宜調節すればよい。例えば、基材の加熱処理温度は、100℃以下であってもよいが、これは一例である。
組成物層の形成時においては、銀インク組成物を付着させる前に、基材の表面をプラズマ処理してもよい。基材をプラズマ処理しておくことで、銀インク組成物の滲みが抑制されることがある。
プラズマ処理は公知の方法で行えばよく、例えば、大気圧プラズマ処理の場合には、電圧290〜300W、気流速度1.0〜5.0m/分等の条件で行うことができる。
<固形層形成工程>
本発明の製造方法においては、前記組成物層形成工程後に、前記固形層形成工程を行う。
前記固形層形成工程においては、70℃以下の温度条件下で、前記組成物層を乾燥させて、固形層を形成する。
組成物層の乾燥は、公知の方法で行うことができる。例えば、組成物層の乾燥は、常圧下、減圧下及び送風条件下のいずれで行ってもよく、大気下及び不活性ガス雰囲気下のいずれで行ってもよく、加熱乾燥及び常温乾燥のいずれであってもよい。
組成物層の乾燥温度は、70℃以下であり、67℃以下であることが好ましく、64℃以下であることがより好ましく、62℃以下であることがさらに好ましく、例えば、50℃以下、40℃以下、及び30℃以下のいずれかであってもよい。組成物層の乾燥温度が前記上限値以下であることで、耐熱性が低い基材も使用でき、使用できる基材の種類が限定されずに、基材の汎用性が高くなる。
組成物層の乾燥温度の下限値は、特に限定されない。例えば、組成物層の乾燥温度は、18℃以上であることが好ましい。組成物層の乾燥温度が前記下限値以上であることで、固形層をより速く形成でき、さらに、後述する金属銀層の光沢度がより高くなる。
組成物層の乾燥温度は、上述の下限値及びいずれかの好ましい上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、組成物層の乾燥温度は、好ましくは18〜70℃、より好ましくは18〜67℃、さらに好ましくは18〜64℃、特に好ましくは18〜62℃であり、例えば、18〜50℃、18〜40℃、及び18〜30℃のいずれかであってもよい。ただし、これらは乾燥温度の一例である。
組成物層の乾燥時間は、乾燥温度を考慮して適宜調節すればよく、特に限定されない。例えば、組成物層の乾燥時間は、1分〜36時間であることが好ましく、1分〜24時間であることがより好ましい。組成物層の乾燥時間が前記下限値以上であることで、固形層の乾燥度がより向上する。組成物層の乾燥時間が前記上限値以下であることで、固形層をより速く形成できる。また、組成物層の乾燥時間が前記上限値以下であることで、乾燥中の組成物層又は乾燥後の固形層の周辺の雰囲気中の成分によって引き起こされる、酸化、硫化等の反応が抑制されるため、最終的に固形層の品質劣化が抑制される。
組成物層は、基材に付着させた銀インク組成物に対して、乾燥処理を行っていないものであり、全く固形化していないか又は固形化が不十分な状態となっている。したがって、組成物層に溶媒を接触させた場合、接触後直ちに、組成物層の一部が前記溶媒中に移行してしまい、組成物層は当初の状態を維持できない。
これに対して、固形層は、乾燥によって組成物層が十分に固形化した状態のものであって、固形層に溶媒を接触させた場合、接触後直ちに、固形層の一部が前記溶媒中に移行してしまうことはなく、固形層は、十分な時間だけ当初の状態を維持できる。
上記のとおり、固形層の構造は安定しているが、固形層中において、有機銀化合物からの金属銀の形成が完了せず、金属銀の形成が十分に行われていなくてもよい。銀インク組成物の組成にもよるが、組成物層の乾燥温度が70℃以下であることから、典型的には、固形層中において、有機銀化合物からの金属銀の形成は、十分に行われていない。
<金属銀層形成工程>
本発明の製造方法においては、前記固形層形成工程後に、前記金属銀層形成工程を行う。
前記金属銀層形成工程においては、固形層に液状の還元剤を接触させて、固形層から金属銀層を形成する。本工程を行うことにより、基材上での、有機銀化合物からの金属銀の形成が完了し、目的とする積層体が得られる。
前記還元剤は、還元能を有していればよく、例えば、常温で液状の、還元性を有する化合物(本明細書においては、単に「液状還元性化合物」と略記することがある)自体であってもよいし、常温で固体状又は気体状(すなわち非液状)の、還元性を有する化合物(本明細書においては、単に「非液状還元性化合物」と略記することがある)と、前記液状還元性化合物と、からなる群より選択される1種又は2種以上の還元性化合物が配合されてなる、液状の組成物(本明細書においては、「還元性組成物」と略記することがある)であってもよい。
なお、本明細書においては、液状還元性化合物及び非液状還元性化合物を包括して、「還元性化合物」と称する。
前記還元性化合物は、還元能を有するものであれば、特に限定されない。
前記還元性化合物としては、例えば、芳香族ヒドロキシ化合物が挙げられる。
前記芳香族ヒドロキシ化合物としては、例えば、芳香族環の環骨格を構成している原子(例えば、芳香族環が芳香族炭化水素環である場合には、この環の環骨格を構成している炭素原子)に、水酸基が結合している構造を有する化合物が挙げられる。
前記芳香族ヒドロキシ化合物は、芳香族環の環骨格を構成している原子に結合している水酸基が2個である、芳香族ジヒドロキシ化合物であることが好ましく、ベンジオール、すなわち、ハイドロキノン、カテコール又はレゾルシノールであることがより好ましい。
前記還元性組成物は、前記還元性化合物が配合されてなるものであれば、特に限定されない。
好ましい還元性組成物としては、例えば、前記還元性化合物及び溶媒が配合されてなるものが挙げられる。
還元性化合物を還元性組成物とはせずに、そのまま使用する場合、還元性化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
還元性組成物において、還元性化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
前記還元性組成物の還元性化合物の含有量は、特に限定されないが、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.3〜10質量%であることがより好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましく、0.7〜3質量%であることが特に好ましい。前記含有量が前記下限値以上であることで、金属銀層をより容易に形成できる。前記含有量が前記上限値以下であることで、還元性化合物の過剰使用がより抑制される。また、前記含有量が前記上限値以下であることで、固形層において、還元反応がより適度な速度で進行し、金属銀層において、クラックの発生を抑制する効果がより高くなる。
還元性組成物における前記溶媒としては、水、有機溶媒が挙げられる。
還元性組成物における前記有機溶媒としては、還元されないもの(酸化作用を有しないもの)又は還元されにくいもの(酸化作用が弱いもの)が挙げられる。このような有機溶媒で好ましいものとしては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコールが挙げられる。
還元性組成物において、溶媒は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
例えば、還元性組成物において、その接触対象である固形層との親和性、又は還元性化合物の溶解性等を調節することで、還元性組成物の金属銀層の形成適性を向上させることができる。例えば、還元性組成物において、溶媒の種類及び含有量のいずれか一方又は両方を調節することで、前記親和性及び溶解性をより容易に調節できる。
一例を挙げれば、還元性組成物において、還元性組成物の固形層との親和性と、還元性組成物での還元性化合物の溶解性と、をともに向上させる溶媒を、1種単独で使用するか、又は2種以上併用することで、還元性組成物の金属銀層の形成適性を向上させることができる。
また、還元性組成物において、還元性組成物の固形層との親和性を向上させる溶媒と、この溶媒とは種類が異なり、かつ還元性組成物での還元性化合物の溶解性を向上させる溶媒と、を併用する(すなわち、混合溶媒を使用する)ことでも、還元性組成物の金属銀層の形成適性を向上させることができる。このような好ましい混合溶媒としては、例えば、水及びアルコールの混合溶媒が挙げられる。
固形層に液状の還元剤を接触させる方法は、固形層と前記還元剤との十分な接触を可能とする限り、特に限定されない。
例えば、固形層に前記還元剤を接触させる方法としては、前記還元剤を固形層に噴霧する方法、前記還元剤を固形層に塗布する方法、前記還元剤に固形層を浸漬する方法等が挙げられる。
前記還元剤の噴霧は、霧吹き又はスプレーガンを用いて行うことができる。
前記還元剤の塗布は、上述の銀インク組成物の場合と同様に、各種コーターやワイヤーバー等を用いて行うことができる。
本工程においては、固形層の露出面である、基材側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)に、前記還元剤を接触させることで、金属銀層を形成できる。
固形層に接触させる前記還元剤の全量における、還元性化合物のモル量は、固形層中の金属銀を形成し得る成分の合計モル量に対して、例えば、1倍以上とすることができる。一方、還元性化合物の前記モル量の上限値は、金属銀層が十分に形成される限り特に限定されず、例えば、固形層中の金属銀を形成し得る成分の合計モル量に対して、大過剰であってもよく、例えば、固形層を備えた基材の大きさ等を考慮して適宜調節できる。還元性化合物の前記モル量は、一例を挙げれば、固形層中の金属銀を形成し得る成分の合計モル量に対して、1〜10倍とすることができる。
ここで、金属銀を形成し得る成分とは、有機銀化合物、又は有機銀化合物由来の成分を意味する。
本工程において、還元性化合物の前記モル量は、例えば、前記組成物層形成工程において、基材上に付着させた銀インク組成物中の金属銀を形成し得る成分の合計モル量に対して、上述の範囲としてもよい。
固形層に前記還元剤を接触させるときの、固形層及び前記還元剤の温度はいずれも、特に限定されないが、10〜35℃であることが好ましく、15〜30℃であることがより好ましい。前記温度がこのような範囲内であることで、光沢度が高い金属銀層をより安定して形成できる。例えば、前記還元剤が、溶媒を含有する還元性組成物である場合など、気化し易い成分を含有する場合には、前記温度がこのような範囲内であることで、このような気化し易い成分の揮発を抑制できるために、光沢度が高い金属銀層をより安定して形成できる。
固形層に前記還元剤を接触させる時間は、例えば、上述の固形層及び前記還元剤の温度等に応じて、適宜調節すればよく、特に限定されない。
例えば、固形層に前記還元剤を接触させる時間は、5秒〜10分であることが好ましく、20秒〜5分であることがより好ましく、30秒〜3分であることが特に好ましい。前記時間がこのような範囲内であることで、光沢度がより高い金属銀層を形成できる。
<他の工程>
本発明の製造方法は、前記組成物層形成工程、固形層形成工程及び金属銀層形成工程以外に、本発明の効果を損なわない範囲内において、これらの工程とは異なる他の工程を有していてもよい。
前記他の工程は、目的に応じて任意に選択できる。
本発明の製造方法が有する他の工程は、1工程のみであってもよいし、2工程以上であってもよい。
他の工程を行うタイミングは、他の工程の内容に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。
[洗浄工程]
好ましい他の工程としては、例えば、形成された前記積層体、特に前記金属銀層を洗浄する洗浄工程が挙げられる。
すなわち、本発明の好ましい製造方法としては、例えば、前記組成物層形成工程、固形層形成工程、金属銀層形成工程及び洗浄工程を、この順に有するものが挙げられる。
前記洗浄工程においては、前記積層体(金属銀層)を溶媒で洗浄すればよい。
洗浄工程における前記溶媒は、前記還元剤の種類に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。
前記溶媒としては、例えば、前記還元性組成物における溶媒と同様のものが挙げられる。
前記溶媒の使用量は特に限定されず、前記積層体を十分に洗浄できる量であればよい。
洗浄を行うときの、前記積層体及び溶媒の温度はいずれも、特に限定されないが、10〜35℃であることが好ましく、15〜30℃であることがより好ましい。前記温度がこのような範囲内であることで、洗浄効果がより向上する。
前記積層体の洗浄後は、積層体から溶媒を除去する必要がある。
積層体からの溶媒の除去は、公知の方法で行えばよく、例えば、溶媒が付着している積層体を乾燥させるか、又は溶媒が付着している積層体にガスを吹きかけて溶媒を吹き飛ばすことにより、行えばよい。
積層体の乾燥は、公知の方法で行えばよく、例えば、常圧下、減圧下及び送風条件下のいずれで行ってもよく、大気下及び不活性ガス雰囲気下のいずれで行ってもよく、加熱乾燥及び常温乾燥のいずれであってもよい。
積層体の乾燥温度及び乾燥時間は、積層体(基材及び金属銀層)が劣化しない限り、特に限定されない。例えば、積層体は、10〜70℃で1分〜24時間乾燥させることができるが、これは一例である。
積層体に吹きかけるガスとしては、空気、不活性ガス等が挙げられる。前記不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等が挙げられる。
積層体にガスを吹きかけるときの、積層体及びガスの温度はいずれも、例えば、10〜70℃とすることができるが、これは一例である。
本発明の製造方法は、基材の一方の面上のみで行ってもよいし、基材の両方の面上で行ってもよい。すなわち、本発明の製造方法の適用対象である積層体は、基材の一方の面上のみに金属銀層を備えていてもよいし、基材の両方の面上に金属銀層を備えていてもよい。
本発明の製造方法を、基材の両方の面上で行う場合、これら両方の面上に、互いに同一の金属銀層を形成してもよいし、互いに異なる金属銀層を形成してもよい。すなわち、本発明の製造方法の適用対象である積層体が、基材の両方の面上に金属銀層を備えている場合、これら両方の面上の金属銀層は、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
本発明の製造方法を、基材の両方の面上で行う場合には、例えば、基材の一方の面上で最終工程を終了してから、基材の他方の面上で最初の工程(例えば、組成物層形成工程)を開始できる。
また、本発明の製造方法を、基材の両方の面上で行う場合には、基材の一方の面上で、本発明の製造方法のいずれかの工程を行いつつ、最終工程を終了する前の段階で、基材の他方の面上で最初の工程(例えば、組成物層形成工程)を開始してもよい。この場合には、基材の一方の面上及び他方の面上のいずれかにおいて、最終工程が先に終了してもよいし、両方の面上で最終工程が同時に終了してもよい。
また、本発明の製造方法を、基材の両方の面上で行う場合には、基材の両方の面上で、同時に最初の工程(例えば、組成物層形成工程)を開始してもよい。この場合にも、基材の一方の面上及び他方の面上のいずれかにおいて、最終工程が先に終了してもよいし、両方の面上で最終工程が同時に終了してもよい。
このように、本発明の製造方法を、基材の両方の面上で行う場合には、前記組成物層形成工程、固形層形成工程、金属銀層形成工程及び他の工程は、基材の一方の面上と他方の面上とでは、それぞれ独立して行ってもよいし、同時に行ってもよい。
本発明の製造方法によれば、得られた積層体において、金属銀層の基材側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)の光沢度を高くでき、金属銀層の基材側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)の光沢度を高くすることも可能である。
一方、基材上に金属銀層を備えた積層体を、従来の方法で製造した場合、通常は、金属銀層の基材側の面(第2面)の光沢度を高くすることは可能であるが、金属銀層の基材側とは反対側の面(第1面)の光沢度を高くすることは困難である。
すなわち、本発明の製造方法は、得られた積層体において、金属銀層の第1面の光沢度を高くできる点で、顕著な効果を奏する。また、金属銀層の第1面の光沢度を高くできることによって、例えば、基材として有色のもの、不透明なもの等、種々の形態のものを用いても、金属銀層の高い光沢度を利用した、目的とする積層体を構成できる点で、有利である。
なお、本明細書において、「金属銀層の光沢度」とは、特に断りのない限り、「金属銀層の第1面の光沢度」を意味する。
本発明の製造方法で得られた積層体において、JIS Z 8741:1997に準拠した、金属銀層の第1面の20°鏡面光沢度は、好ましくは550以上、より好ましくは650以上、さらに好ましくは750以上、特に好ましくは850以上であり、例えば、1000以上、1100以上、1200以上、1300以上、1400以上及び1500以上のいずれかであってもよい。
一方、本発明の製造方法で得られた積層体において、前記20°鏡面光沢度の上限値は特に限定されない。金属銀層の形成がより容易である点では、前記20°鏡面光沢度は、1700以下であることが好ましい。
なお、本明細書において、「20°鏡面光沢度」とは、光沢度計を用いて、測定角を20°として測定した、測定対象物の表面(鏡面)の光沢度を意味する。
前記積層体における金属銀層の第1面の20°鏡面光沢度は、上述のいずれかの好ましい下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、前記20°鏡面光沢度は、好ましくは550〜1700、より好ましくは650〜1700、さらに好ましくは750〜1700、特に好ましくは850〜1700であり、例えば、1000〜1700、1100〜1700、1200〜1700、1300〜1700、1400〜1700、及び1500〜1700のいずれかであってもよい。
前記積層体における金属銀層の第2面の20°鏡面光沢度は、目的に応じて調節できる。
前記積層体の金属銀層において、金属銀の比率は、金属銀層が見かけ上金属銀だけからなるとみなし得る程度に十分に高くすることができる。例えば、金属銀層中の金属銀の比率は、好ましくは97質量%以上、より好ましくは98質量%以上、特に好ましくは99質量%以上である。金属銀層中の金属銀の比率の上限値は、例えば、100質量%、99.9質量%、99.8質量%、99.7質量%、99.6質量%、99.5質量%、99.4質量%、99.3質量%、99.2質量%及び99.1質量%のいずれかとすることができるが、これらに限定されない。
以上の説明のように、本発明の製造方法によれば、前記組成物層形成工程において、銀インク組成物を基材に付着させる方法は、特に限定されず、銀インク組成物の使用方法が限定されない。また、光沢度が高い金属銀層を形成するために、露光装置等の特殊な装置が不要である。また、より低温での銀インク組成物(前記組成物層)の処理(乾燥)によって、光沢度が高い金属銀層を形成でき、基材としても耐熱性を有するものが不要であり、基材の選択の自由度が高い。
図1は、本発明の製造方法の一実施形態を模式的に説明するための断面図である。
本実施形態の組成物層形成工程においては、図1(a)に示すように、銀インク組成物を基材11に付着させて、基材11上に組成物層120を形成する。ここでは、基材11の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)11a上のみに、組成物層120を形成している。
次いで、本実施形態の固形層形成工程においては、70℃以下の温度条件下で、組成物層120を乾燥させて、図1(b)に示すように、固形層12’を形成する。
次いで、本実施形態の金属銀層形成工程においては、固形層12’に液状の還元剤を接触させて、図1(c)に示すように、固形層12’から金属銀層12を形成する。この段階で、目的とする積層体1が得られる。
金属銀層12の形成後は、必要に応じて、形成された積層体1、特に金属銀層12を洗浄する洗浄工程を行い、洗浄工程以外の他の工程を、適したタイミングで行ってもよい。
ここでは、本発明の製造方法を、基材11の第1面11a上のみで行う場合を示しているが、基材11の第1面11a上と、基材11の第1面11aとは反対側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)11b上と、の両方で行ってもよい(図示略)。そして、この場合、基材11の第1面11a上の金属銀層12と、基材11の第2面11b上の金属銀層(図示略)とは、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
積層体1において、金属銀層12の第1面12aは、光沢度が高く、JIS Z 8741:1997に準拠した20°鏡面光沢度は、例えば、上述のような数値範囲となる。さらに、積層体1において、金属銀層12の第2面12bの鏡面光沢度は、目的に応じて調節できる。
本発明の製造方法で得られた積層体は、金属銀層の光沢度が高い特性を利用して、種々の用途で利用できる。例えば、金属銀層がパターニングされたものであれば、前記積層体は、装飾用又は加飾用の各種製品の構成部材として有用である。また、金属銀層が膜状のものであれば、前記積層体は、その膜の表面を鏡面として用いる各種製品の構成部材として有用である。
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
[実施例1]
<銀インク組成物の製造>
ビーカー中に2−エチルヘキシルアミン(78.18g、後述する2−メチルアセト酢酸銀に対して6.53倍モル量)と、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール(以下、「DMHO」と略記することがある)(1.17g、2−メチルアセト酢酸銀に対して0.10倍モル量)と、を加えて混合し、メカニカルスターラーを回転させて撹拌しながら、さらにここへ、液温が40℃以下となるように2−メチルアセト酢酸銀(20.65g)を添加して、各配合成分を溶解させ、室温でそのまま1日撹拌を続けた。
次いでこの撹拌液に、液温が30℃以下となるように、ネオデカン酸(2−メチルアセト酢酸銀に対して0.13倍モル量)を滴下して撹拌することにより、銀インク組成物を得た。
なお、DMHOとしては、日信化学社製「サーフィノール61」を用い、ネオデカン酸としては、ジャパンケムテック社製「バーサティック10」を用いた。これは、以降の実施例及び比較例でも同様である。
各配合成分の種類と配合比を表1に示す。表1中、「含窒素化合物(モル比)」とは、有機銀化合物の配合量1モルあたりの含窒素化合物の配合量(モル数)([含窒素化合物のモル数]/[有機銀化合物のモル数])を意味する。「アルコール(モル比)」も同様に、有機銀化合物の配合量1モルあたりのアルコールの配合量(モル数)([アルコールのモル数]/[有機銀化合物のモル数])を意味する。「分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸のモル比」も同様に、有機銀化合物の配合量1モルあたりの分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の配合量(モル数)([分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸のモル数]/[有機銀化合物のモル数])を意味する。
なお、本実施例において「有機銀化合物」とは「β−ケトカルボン酸銀(1)」のことである。
上記で得られた銀インク組成物の物性の測定方法と、その測定結果を以下に示す。
(粘度)
レオメータ(アントンパール社製「MCR301」)を用いて、せん断速度10/s、測定温度25℃の条件下で、銀インク組成物の粘度を測定したところ、7.6mPa・sであった。
(密度)
密度計(京都電子社製「DA−130N」)を用いて、銀インク組成物の密度を測定したところ、0.924g/cmであった。
(銀含有量)
電気炉を用いて、銀インク組成物を400℃で3時間加熱処理し、この加熱処理前後での質量変化(加熱処理前の銀インク組成物の質量と、銀インク組成物を加熱処理して得られた処理物の質量と、の差)から、銀インク組成物の銀含有量を算出したところ、9.8質量%であった。
<積層体の製造>
ポリカーボネート製シート(三菱ガス化学社製「ユーピロン、品種NF2000,品番552A」、厚さ500μm)を、50mm×50mmの大きさに裁断し、基材とした。
室温下において、この基材の一方の表面上に、上記で得られた銀インク組成物(約0.5mL)を滴下し、スピンコーターを用いて、500rpmで5秒、次いで1000rpmで10秒の回転条件でスピンコートを行い、基材上に組成物層を形成した。組成物層の形成前後の基材の重量から組成物層の重量を算出したところ、約0.025gであった。
次いで、組成物層を形成した基材(組成物層付き基材)を直ちに、60℃に温度調節されたオーブン(エスペック社製「パーフェクトオーブンPH−202」)の内部に15分入れて加熱処理して乾燥させ、取り出した。
次いで、取り出した組成物層付き基材(すなわち固形層付き基材)を、室温下で1分静置して冷却した後、霧吹き(フルプラ社製「ダイヤスプレーエクセレント500」)を用いて、乾燥後の組成物層(すなわち固形層)に液状の還元剤を2回噴霧した。そして、この噴霧後の固形層を備えた基材(固形層付き基材)を1分静置した。前記還元剤は、ハイドロキノン(1質量部、和光純薬工業社製)、99.5%エタノール(60.5質量部、和光純薬工業社製)、及び蒸留水(38.5質量部)が配合されてなる、還元性組成物である。
次いで、室温下において、静置後の前記固形層付き基材(すなわち金属銀層付き基材)全体を、蒸留水ですすいで洗浄した後、圧縮空気を吹きかけることにより、残存している蒸留水を吹き飛ばして除去し、目的物である積層体を得た。
<積層体の評価>
得られた積層体の金属銀層について、光沢度計(日本電色社製「PG−IIM」)を用いて、JIS Z 8741:1997に準拠して、20°鏡面光沢度を測定した。結果を表2に示す。
<積層体の製造及び評価>
さらに、組成物層付き基材の、オーブンによる乾燥時の温度及び時間のいずれか一方又は両方を、表2に示すように変更した点以外は、上記と同じ方法で積層体を製造し、評価した。このとき、乾燥温度が30℃の場合には、乾燥時間を1時間以上とし、乾燥温度が40℃又は50℃の場合には、乾燥時間を0.25時間(15分)以上とし、乾燥温度が60℃の場合には、乾燥時間を0.5時間(30分)以上とした。結果を表2に示す。なお、本実施例においては、表2中の「−」との記載のある乾燥条件では、積層体を製造していない。
さらに、これら積層体の製造時における、組成物層の乾燥温度及び乾燥時間と、金属銀層の20°鏡面光沢度と、の関係を表すグラフを、図2に示す。
[比較例1]
<積層体の製造及び評価>
組成物層付き基材の、オーブンによる乾燥時の温度を30℃とし、乾燥時間を0.25時間(15分)又は0.5時間(30分)とした点以外は、実施例1と同じ方法で積層体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
さらに、これら積層体の製造時における、組成物層の乾燥時の温度及び時間と、金属銀層の20°鏡面光沢度と、の関係を表すグラフを、実施例1の結果と共に図2に示す。
Figure 2019044241
Figure 2019044241
上記結果から明らかなように、実施例1においては、乾燥温度が30℃の場合には、乾燥時間が1時間以上のとき、金属銀層の20°鏡面光沢度は276以上であり、乾燥時間が1.5時間以上のとき、金属銀層の20°鏡面光沢度は823以上であった。
乾燥温度が40℃の場合には、乾燥時間が0.25時間(15分)以上のとき、金属銀層の20°鏡面光沢度は244以上であり、乾燥時間が1時間以上のとき、金属銀層の20°鏡面光沢度は1045以上であった。
乾燥温度が50℃の場合には、乾燥時間が0.25時間(15分)以上のとき、金属銀層の20°鏡面光沢度は762以上であり、乾燥時間が0.5時間(30分)以上のとき、金属銀層の20°鏡面光沢度は1017以上であった。
乾燥温度が60℃の場合には、乾燥時間が0.25時間(15分)以上のとき、金属銀層の20°鏡面光沢度は863以上であり、乾燥時間が1時間以上のとき、金属銀層の20°鏡面光沢度は1315以上であった。
これに対して、比較例1においては、乾燥時間が0.25時間(15分)、0.5時間(30分)の場合には、組成物層の乾燥が不十分であり、有機銀化合物から形成された金属銀が、噴霧した還元剤中に移行してしまい、金属銀を基材上に固定できず、前記固形層及び金属銀層を形成できず、最終的に積層体を製造できなかった。
[参考例1]
<銀インク組成物の製造>
実施例1の場合と同じ方法で、銀インク組成物を製造した。
<積層体の製造>
実施例1の場合と同じ方法で、基材上に組成物層を形成した(組成物層付き基材を製造した)。
次いで、熱風ドライヤー(竹綱製作所社製「HAS−42」)を用いて、この組成物層を形成した基材(組成物層付き基材)に直ちに、風速約10m/sで熱風を吹き付けることにより、組成物層を120℃で15分加熱処理して、組成物層から金属銀層を形成し、目的物である積層体を得た。
すなわち、本参考例においては、固形層形成工程及び金属銀層形成工程を行うのに代えて、上記の120℃、15分の加熱処理工程を行った点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、積層体を製造した。
<積層体の評価>
得られた積層体について、実施例1の場合と同じ方法で評価した。
その結果、金属銀層の20°鏡面光沢度は1380であった。
組成物層の加熱処理温度(換言すると、有機銀化合物の加熱処理温度)が120℃と比較的高温であったため、金属銀層の20°鏡面光沢度が高くなったのは、当然であった。
[実施例2]
<銀インク組成物の製造>
実施例1の場合と同じ方法で、銀インク組成物を製造した。
<積層体の製造>
A4サイズに裁断した白色のポリ塩化ビニル製シート(ミマキエンジニアリング社製「SPC−0706−137G−50」、厚さ90mm)を基材として用い、インクジェットプリンター(FUJIFILM社製「DMP−2831」)を用いて、前記基材の一方の表面に対して、上記で得られた銀インク組成物で印刷を行い、基材上に組成物層を形成した。印刷時には、銀インク組成物の吐出電圧を25V、ヘッド温度を30℃、インク吐出量を10pLとし、解像度を600dpiとして、大きさが20mm×30mmである長方形パターンを印刷(べた印刷)した。
次いで、組成物層を形成した基材(組成物層付き基材)を直ちに、室温下(23〜25℃)の暗所内で12時間静置することにより、組成物層を乾燥させ、固形層を形成した。
次いで、室温下において、霧吹き(フルプラ社製「ダイヤスプレーエクセレント500」)を用いて、形成した固形層に液状の還元剤を2回噴霧した。そして、この噴霧後の固形層を備えた基材(固形層付き基材)を1分静置した。前記還元剤としては、実施例1の場合と同じものを用いた。
次いで、室温下において、静置後の前記固形層付き基材(すなわち金属銀層付き基材)全体を、蒸留水ですすいで洗浄した後、圧縮空気を吹きかけることにより、残存している蒸留水を吹き飛ばして除去し、目的物である積層体を得た。
<積層体の評価>
得られた積層体について、実施例1の場合と同じ方法で評価した。結果を表3に示す。
<積層体の製造及び評価>
さらに、組成物層付き基材の、室温下(23〜25℃)の暗所内での静置時間を、12時間に代えて、18時間及び24時間とした点以外は、上記と同じ方法で積層体を製造し、評価した。結果を表3に示す。
Figure 2019044241
上記結果から明らかなように、乾燥温度が室温(23〜25℃)の場合には、乾燥時間が12時間以上のとき、金属銀層の20°鏡面光沢度は763以上であった。
[実施例3]
<銀インク組成物の製造>
実施例1の場合と同じ方法で、銀インク組成物を製造した。
<積層体の製造>
実施例1の場合と同じ方法で、基材上に組成物層を形成した。
次いで、熱風ドライヤー(竹綱製作所社製「HAS−42」)を用いて、この組成物層を形成した基材(組成物層付き基材)に直ちに、風速約10m/sで熱風を吹き付けることにより、組成物層を60℃で15分加熱処理して乾燥させた。
以降、この乾燥後の組成物層付き基材(すなわち固形層付き基材)を用いて、実施例1の場合と同じ処理を行い、目的物である積層体を得た。
<積層体の評価>
得られた積層体の金属銀層について、実施例1の場合と同じ方法で、20°鏡面光沢度を測定した。結果を表4に示す。
さらに、抵抗率計(三菱ケミカルアナリテック社製「ロレスタ」)を用いて、4端針法により、この金属銀層の表面抵抗率を測定した。結果を表5に示す。
<積層体の製造及び評価>
さらに、組成物層付き基材の、熱風ドライヤーによる乾燥時の温度及び時間のいずれか一方又は両方を、表4又は表5に示すように変更した点以外は、上記と同じ方法で積層体を製造し、評価した。このとき、乾燥温度がいずれの場合も、乾燥時間を0.25時間(15分)以上とした。結果を表4及び表5に示す。
Figure 2019044241
Figure 2019044241
上記結果から明らかなように、実施例3においては、乾燥温度が40℃の場合には、乾燥時間が0.25時間(15分)以上のとき、金属銀層の20°鏡面光沢度は752以上であり、乾燥時間が0.5時間(30分)以上のとき、金属銀層の20°鏡面光沢度は1147以上であった。
乾燥温度が50℃の場合には、乾燥時間が0.25時間(15分)以上のとき、金属銀層の20°鏡面光沢度は1147以上であった。
乾燥温度が60℃の場合には、乾燥時間が0.25時間(15分)以上のとき、金属銀層の20°鏡面光沢度は1046以上であった。
乾燥温度が70℃の場合には、乾燥時間が0.25時間(15分)以上のとき、金属銀層の20°鏡面光沢度は568以上であり、乾燥時間が0.5時間(30分)のとき、金属銀層の20°鏡面光沢度は765であった。
一方、実施例3においては、乾燥温度が40℃の場合には、乾燥時間が1時間以下のとき、金属銀層の表面抵抗率は9.4Ω/□以下であった。
乾燥温度が50℃の場合には、乾燥時間が1時間以下のとき、金属銀層の表面抵抗率は9.7Ω/□以下であった。
乾燥温度が60℃の場合には、乾燥時間が1時間以下のとき、金属銀層の表面抵抗率は9.8Ω/□以下であった。
乾燥温度が70℃の場合には、乾燥時間が1時間以下のとき、金属銀層の表面抵抗率は44.3Ω/□以下であった。
表4及び表5の結果から明らかなように、例えば、20°鏡面光沢度が互いに同じ値であるか、又は近い値である2つの金属銀層に着目すると、これら金属銀層の表面抵抗率は、互いに同じではなく、必ずしも近い値になる訳でもなく、むしろ、互いに全く異なる値を示しているものがある。すなわち、金属銀層において、20°鏡面光沢度と表面抵抗率とは、単純に比例関係を示すとはいえない。これは、金属銀層においては、表面抵抗率等の導電性の指標となる物性値から、20°鏡面光沢度を推測することが、困難であることを示しているといえる。
[比較例2]
<積層体の製造及び評価>
「特表2011−506775号公報」(特許文献3)に記載の実施例1を参考にして、下記手順により、金属銀層の形成を試みた。
すなわち、ネオデカン酸銀(2質量部)をトルエン(3質量部)に溶解させ、スピンコーターを用いて、4000rpmで30秒の回転条件で、得られたトルエン溶液をホウケイ酸ガラススライド上に塗工(スピンコート)した。次いで、濃度が1質量%であるハイドロキノン水溶液中に、この塗工層を形成した前記スライドを5分浸漬した。このとき、塗工層全体が前記ハイドロキノン水溶液中に浸かるようにした。
しかし、前記ハイドロキノン水溶液中に浸漬した塗工層からは、金属銀を十分に形成できず、金属銀層の形成には至らなかった。この製造過程では、トルエン溶液の塗工層を十分に乾燥させておらず、また、この塗工層を露光させておらず、これらが金属銀層を形成できなかった理由であると推測される。
塗工層から形成された層は、当初無色であり、その後わずかに褐色となったが、終始透明性を有しており、光沢性を呈することは無かった。
本発明は、基材上に金属銀層を備え、その金属銀層表面を鏡面として用いる各種製品等に利用可能である。
11・・・基材、11a・・・基材の第1面、11b・・・基材の第2面、12・・・金属銀層、12a・・・金属銀層の第1面、12b・・・金属銀層の第2面、12’・・・固形層、120・・・組成物層

Claims (2)

  1. 基材上に金属銀層を備えた積層体の製造方法であって、
    銀インク組成物を基材に付着させて、組成物層を形成する工程と、
    70℃以下の温度条件下で、前記組成物層を乾燥させて、固形層を形成する工程と、
    前記固形層に液状の還元剤を接触させて、前記固形層から金属銀層を形成する工程と、を有し、
    前記銀インク組成物は、有機銀化合物と、含窒素化合物と、が配合されてなる、積層体の製造方法。
  2. JIS Z 8741:1997に準拠した、前記金属銀層の、前記基材側とは反対側の面の20°鏡面光沢度が、600以上である、請求項1に記載の積層体の製造方法。
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