JP7171229B2 - 積層体 - Google Patents

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Description

本発明は、積層体に関する。
基材と、この基材上に設けられた導電層と、を備えた積層体は、例えば、導電層をパターニングすることで、回路基板をはじめとする各種配線板として利用可能であり、利用価値が高い。
このような積層体としては、例えば、導電性インクを用いて導電層を形成したものが開示されている(特許文献1参照)。
特開2012-218318号公報
しかし、特許文献1で開示されている積層体は、この積層体を折り曲げたときに、導電性の低下を十分に抑制できるか否かが定かではない。積層体を折り曲げたときに、導電層の一部が欠落して、導電層の形状が過度に損なわれたりすると、導電層の導電性が低下してしまう。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、基材と導電層を備えた積層体であって、この積層体を折り曲げたときに、導電層の導電性の低下を抑制できる積層体を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は、基材と、前記基材上に設けられた導電層と、を備え、前記導電層の幅が5~590μmであり、前記導電層の厚さが0.01~0.2μmである、積層体を提供する。
本発明の積層体においては、前記基材が、ポリカーボネート製シートであるか、又は、ポリエチレンテレフタレート製シートの前記導電層側の面に対して、前記導電層との接着力を向上させるための処理が施されたシートであることが好ましい。
本発明の積層体は、JIS K 5600-5-6に準拠した、前記基材及び導電層の密着性試験において、分類0を満たすことが好ましい。
本発明によれば、基材と導電層を備えた積層体であって、この積層体を折り曲げたときに、導電層の導電性の低下を抑制できる積層体が提供される。
本発明の一実施形態に係る積層体を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る積層体を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る積層体を模式的に示す断面図である。 積層体の折り曲げ方法の一例を模式的に説明するための断面図である。 本発明の一実施形態に係る積層体の製造方法を模式的に説明するための断面図である。 実施例1~63及び比較例1~14における、銀層の幅と厚さとの関係に関するデータをプロットして得られたグラフである。 比較例15~32、36~38における、銀層の幅と厚さとの関係に関するデータをプロットして得られたグラフである。 比較例33~35における、銀層の幅と厚さとの関係に関するデータをプロットして得られたグラフである。
<<積層体>>
本発明の一実施形態に係る積層体は、基材と、前記基材上に設けられた導電層と、を備え、前記導電層の幅が5~590μmであり、前記導電層の厚さが0.01~0.2μmである。
本実施形態の積層体においては、導電層の幅及び厚さが、上記のとおり、特定範囲内であることにより、この積層体を折り曲げたときに、導電層の導電性の低下を抑制できる。
以下、まず、本実施形態の積層体の全体構成について、説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る積層体を模式的に示す断面図である。
ここに示す積層体1は、基材11と、基材11上に設けられた導電層12と、を備える。換言すると、積層体1は、基材11及び導電層12が、これらの厚さ方向において積層されて、構成されている。
積層体1においては、基材11の、導電層12側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)11aの一部の領域に、導電層12が積層されている。
図1は、導電層12の幅方向に対して平行な方向における積層体1の断面図である。
この断面において、導電層12の形状(すなわち断面形状)は、四角形状である。
導電層12の幅W12は、5~590μmであり、導電層12の厚さ(高さ)T12は、0.01~0.2μmである。
導電層12の幅W12は、同じ方向での基材11の幅に対して、同等以下であればよく、ここでは、同じ方向での基材11の幅よりも、狭くなっている場合を示している。
導電層12よりも上方に位置し、導電層12からは離れた箇所から、導電層12を見下ろして平面視したときの、導電層12の形状(すなわち平面形状)は、ここでは直線状である。ここで、導電層12の平面形状は、導電層12の、基材11側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)12aの形状と同義である。
基材11の第1面11aは、基材11の、導電層12側とは反対側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)11bと比較したときに、異なる特性を有するように、表面処理が施されたものであってもよい。
本明細書においては、基材11の前記表面処理が施されている、第1面11a側の層を「第2層」と称し、基材11の前記第2層を除いた領域を「第1層」と称する。
図2は、このような基材を備えた、本発明の一実施形態に係る積層体を模式的に示す断面図である。
なお、図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
ここに示す積層体2は、基材21と、基材21上に設けられた導電層12と、を備える。換言すると、積層体2は、基材21及び導電層12が、これらの厚さ方向において積層されて、構成されている。
積層体2は、基材11に代えて基材21を備えている点以外は、図1に示す積層体1と同じである。
基材21は、導電層12側の第1層211と、導電層12側とは反対側の第2層212と、を有する。
基材21の導電層12側の面、すなわち第1面21aは、基材21の導電層12側とは反対側の面、すなわち第2面21bとは、異なる特性を有する。
基材21において、第1層211は、例えば、第2層212と同じ構成材料からなる単一層のうち、導電層12側となる領域が、化学反応によって、組成が変化して形成された化学的処理層であってもよいし、前記領域が、物理的作用によって、構造が変化して形成された物理的処理層であってもよいし、第2層212と同じ構成材料からなる単一層の、導電層12側となる面において、この層とは組成が異なる化学物質の堆積によって形成された堆積層であってもよい。
前記化学的処理層としては、例えば、前記単一層の導電層12側となる領域が、酸によって処理された層、前記領域が放射線の照射によって処理された層、前記領域が加熱によって処理された層等が挙げられる。
前記物理的処理層としては、例えば、前記単一層の導電層12側となる領域が、微粒子の衝突によって処理(例えば、粗化処理)された層等が挙げられる。
前記堆積層としては、例えば、基材と導電層12との接着性を向上させるために、新たに形成された接着剤層等が挙げられる。
これらの中でも、基材21の第1層211は、前記接着剤層であることが好ましい。
本実施形態の積層体は、図1~図2に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、図1~図2に示すものにおいて、一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
例えば、図1~図2において、導電層の断面形状は、四角形状であるが、他の多角形状であってもよいし、非多角形状であってもよい。非多角形状としては、例えば、円又は楕円の一部の周が曲線から直線に差し替えられた形状、不定形状等が挙げられる。
本実施形態の積層体において、導電層の前記断面形状は、積層体の用途に応じて任意に設定できる。
例えば、図1~図2の断面において、導電層の幅は、導電層の厚さ方向において一定であるが、一定でない場合には、幅の平均値を導電層の幅として採用すればよい。
導電層の厚さも同様である。すなわち、図1~図2の断面において、導電層の厚さは、導電層の幅方向において一定であるが、一定でない場合には、厚さの平均値を導電層の厚さとして採用すればよい。
例えば、図1~図2において、導電層の前記平面形状は、直線状であるが、2本以上の直線が連結された折れ線状であってもよいし、曲線状であってもよいし、1本以上の直線と1本以上の曲線とが連結された複合線状であってもよい。導電層の前記平面形状は、直線のみで構成されていてもよいし、曲線のみで構成されていてもよいし、直線及び曲線で構成されていてもよい。
導電層の前記平面形状は、線状以外の形状であってもよい。
導電層はパターニングされていてもよいし、されていなくてもよい。
本実施形態の積層体において、導電層の前記平面形状は、積層体の用途に応じて任意に設定できる。例えば、パターニングされている導電層は、回路として有用である。
例えば、図1~図2において、これら断面では、導電層の数は1であるが、基材上の導電層の数は、2以上であってもよく、その場合、これら2以上の導電層は、互いに同一でも異なっていてもよい。ここで、「2以上の導電層は、互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての導電層が同一であってもよいし、すべての導電層が異なっていてもよいし、一部の導電層のみが同一であってもよい」ことを意味する。さらに「導電層が互いに異なる」とは、「導電層の構成材料、幅、厚さ及び形状のいずれか一以上が互いに異なる」ことを意味する。
例えば、図1~図2において、導電層の幅は、導電層の長手方向において一定であるが、一定でない場合には、長手方向における幅の平均値を導電層の幅として採用すればよい。
導電層の厚さも同様である。すなわち、図1~図2において、導電層の厚さは、導電層の長手方向において一定であるが、一定でない場合には、長手方向における厚さの平均値を導電層の厚さとして採用すればよい。
例えば、本実施形態の積層体は、基材及び導電層以外の他の層を備えていてもよい。
前記他の層は特に限定されず、その種類、厚さ及び配置位置等は、目的に応じて任意に選択できる。
前記他の層としては、例えば、少なくとも導電層を被覆する被覆層等が挙げられる。
前記被覆層は、導電層の露出面を被覆して、かつ基材の露出面の一部又は全ての領域を被覆していなくてもよいし、導電層を被覆して、かつ基材の露出面の全ての領域を被覆していてもよいし、導電層を被覆して、かつ基材の露出面の一部の領域のみを被覆していてもよい。
前記被覆層は、導電層の露出面の一部の領域のみを被覆していてもよいし、導電層の露出面の全ての領域を被覆していてもよい。
図3は、このような被覆層を備えた、本発明の一実施形態に係る積層体を模式的に示す断面図である。
ここに示す積層体3は、図1に示す積層体1に、さらに被覆層13が設けられたものである。
積層体3は、基材11と、基材11上に設けられた導電層12と、導電層12上に設けられた被覆層13と、を備える。換言すると、積層体3は、導電層12を備える領域においては、基材11、導電層12及び被覆層13がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて、構成され、導電層12を備えていない領域においては、基材11及び被覆層13が、これらの厚さ方向において積層されて、構成されている。
積層体3においては、基材11の第1面11aのうち、一部の領域に、導電層12が積層され、基材11の第1面11aのうち、導電層12が積層されていない領域と、導電層12の第1面12aと、に被覆層13が積層されている。さらに、導電層12の側面12cにも、被覆層13が積層されている。
積層体3は、さらに被覆層13を備えている点以外は、図1に示す積層体1と同じである。
ここでは、図1に示す積層体1がさらに被覆層を備えたものについて説明したが、被覆層を備えた本実施形態の積層体は、これに限定されず、例えば、図2に示す積層体2がさらに被覆層を備えたものであってもよい。そして、被覆層の配置形態も、図3に示すものに限定されず、先に説明したとおり、種々のものが挙げられる。
前記他の層としては、例えば、前記導電層と前記被覆層との間に配置された中間層等も挙げられる。
前記中間層は、本実施形態の積層体に目的とする機能を付与するための層である。
本実施形態の積層体は、基材の第2面(例えば、図1に示す積層体1の場合には、基材11の第2面11b)上に、何らかの層を備えていてもよい。前記第2面上の層としては、これまでに説明した、基材の第1面上のいずれかの層と同様の層が挙げられる。
例えば、前記積層体が、その前記第2面上に、導電層、被覆層及び中間層からなる群から選択される1種又は2種以上の層を備えている場合には、これら層は、基材の第1面上の層と同様の形態であってよく、基材の第1面上の層と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
本実施形態の積層体は、例えば、図1~3に示すように、前記基材に直接接触して、前記導電層が設けられているものが好ましい。
次に、本実施形態の積層体の各構成について、説明する
<基材>
前記基材は、前記導電層の保持が可能であり、積層体全体の折り曲げを可能とするものであれば、特に限定されない。
基材は、シート状又はフィルム状であることが好ましい。
前記基材は、その構成材料として樹脂を含有するものが好ましく、樹脂を主たる構成材料とするものがより好ましく、このような基材としては、例えば、樹脂の含有量が50質量%以上であるものが挙げられる。
好ましい前記樹脂としては、例えば、ポリカーボネート(本明細書においては、「PC」と略記することがある)、ポリエチレンテレフタレート(本明細書においては、「PET」と略記することがある)等が挙げられる。
前記基材は、ポリカーボネート又はポリエチレンテレフタレートを主たる構成材料とする樹脂シートであることが好ましく、前記樹脂シートは、先に説明した表面処理が施されていてもよい。
前記基材は、ポリカーボネート製シートであるか、又は、ポリエチレンテレフタレート製シートの前記導電層側の面(すなわち、第1面)に対して、前記導電層との接着力を向上させるための処理(本明細書においては、「易接着処理」と称することがある)が施されたシートであることが好ましい。ここで、前記易接着処理されたポリエチレンテレフタレート製シートとしては、例えば、図2に示す基材21等が挙げられる。
前記基材は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。基材が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。2層以上の複数層から基材としては、例えば、図2に示す基材21等が挙げられる。
なお、本明細書においては、基材の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよいし、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
前記基材の厚さは、目的に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。
通常、基材の厚さは、10~400μmであることが好ましく、50~350μmであることがより好ましく、100~300μmであることが特に好ましい。基材の厚さが前記下限値以上であることで、前記導電層の構造をより安定して維持できる。基材の厚さが前記上限値以下であることで、前記積層体を折り曲げたときに、導電層の導電性の低下を抑制する効果がより高くなり、また、目的物である積層体の折り曲げが容易となるなど、積層体の取り扱い性がより良好となる。
基材が複数層からなる場合には、各層の合計の厚さが、上記の好ましい基材の厚さとなるようにするとよい。
前記基材の厚さは、例えば、前記基材の種類に応じて、設定してもよい。基材の厚さをこのように設定することで、導電層の導電性の低下を抑制する効果がより高くなることがある。
例えば、前記基材が、ポリエチレンテレフタレートを主たる構成材料とする樹脂シートである場合、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート製シートの前記導電層側の面(すなわち、第1面)に対して、前記導電層との接着力を向上させるための処理(すなわち、前記易接着処理)が施されたシートである場合には、前記基材の厚さは、80~350μm、120~300μm、及び160~270μmのいずれかであってもよい。
例えば、前記基材が、ポリカーボネートを主たる構成材料とする樹脂シートである場合、好ましくは、ポリカーボネート製シートである場合には、前記基材の厚さは、50~300μm、75~250μm、及び100~200μmのいずれかであってもよい。
前記基材は、公知の方法で製造できる。例えば、樹脂を含有する基材は、前記樹脂を含有する樹脂組成物を成形することで製造できる。一方の面が表面処理された基材を製造する場合、前記表面処理は、先に説明した方法で行うことができる。
<導電層>
前記導電層の幅は、先の説明のとおり、5~590μmであり、25~590μmであることが好ましく、50~590μmであることがより好ましく、75~590μmであることがさらに好ましく、例えば、100~580μm、及び115~575μmのいずれかであってもよい。導電層の幅がこのような範囲内であることで、前記積層体を折り曲げたときに、導電層の導電性の低下を抑制できる。
前記導電層の厚さは、先の説明のとおり、0.01~0.2μmであり、0.011~0.19μmであることが好ましい。導電層の厚さがこのような範囲内であることで、前記積層体を折り曲げたときに、導電層の導電性の低下を抑制できる。
前記導電層においては、その幅が上述のいずれかの数値範囲であり、かつ、その厚さが上述のいずれかの数値範囲であることが好ましい。この場合、導電層の幅の数値範囲と、導電層の厚さの数値範囲と、の組み合わせは、任意である。
例えば、一実施形態の導電層においては、好ましくは、その幅が25~590μmであり、かつ、その厚さが0.011~0.19μmであり;より好ましくは、その幅が50~590μmであり、かつ、その厚さが0.011~0.19μmであり;さらに好ましくは、その幅が75~590μmであり、かつ、その厚さが0.011~0.19μmであり、例えば、その幅が100~580μmであり、かつ、その厚さが0.011~0.19μmであってもよいし、その幅が115~575μmであり、かつ、その厚さが0.011~0.19μmであってもよい。ただし、これらは、導電層の幅と、導電層の厚さと、の組み合わせの一例である。
前記導電層の幅及び厚さは、例えば、前記基材の種類に応じて、設定してもよい。
例えば、前記基材が、ポリエチレンテレフタレートを主たる構成材料とする樹脂シートである場合、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート製シートの前記導電層側の面(すなわち、第1面)に対して、前記導電層との接着力を向上させるための処理(すなわち、前記易接着処理)が施されたシートである場合には、前記導電層の幅は、5~590μmであり、25~590μm、50~585μm、75~580μm、100~570μm、及び115~560μmのいずれかであってもよい。また、基材がこのようなものである場合には、前記導電層の厚さは、0.01~0.2μmであり、0.03~0.2μm、0.045~0.2μm、及び0.058~0.2μmのいずれかであってもよい。
例えば、前記基材が、ポリカーボネートを主たる構成材料とする樹脂シートである場合、好ましくは、ポリカーボネート製シートである場合には、前記導電層の幅は、5~590μmであり、30~590μm、55~590μm、80~585μm、110~581μm、及び130~578μmのいずれかであってもよい。また、基材がこのようなものである場合には、前記導電層の厚さは、0.01~0.2μmであり、0.01~0.17μm、0.01~0.14μm、及び0.01~0.12μmのいずれかであってもよい。
前記積層体を折り曲げたときの、導電層の導電性の低下を抑制する効果は、下記方法により確認できる。
まず、積層体を折り曲げる前に、この積層体中の導電層の体積抵抗率(本明細書においては、「初期体積抵抗率」と称することがある)を求める。導電層の体積抵抗率は、公知の方法で求められる。例えば、導電層の抵抗値を測定し、この測定値に導電層の断面積を乗じ、導電層の長さで除することにより、導電層の体積抵抗率が求められる([導電層の体積抵抗率]=[導電層の抵抗値]×[導電層の断面積]/[導電層の長さ]=[導電層の抵抗値]×[導電層の幅]×[導電層の厚さ]/[導電層の長さ])。ここで、「導電層の断面積」とは、導電層の長さ方向に対して直交する方向の、導電層の断面の面積である。
次いで、この抵抗値を測定した後の積層体を折り曲げる。
図4は、積層体の折り曲げ方法の一例を模式的に説明するための断面図である。ここでは、図1に示す積層体1を折り曲げる場合について説明するが、他の積層体の場合も、同様に折り曲げればよい。
図4は、図1とは異なり、導電層12の幅方向に対して垂直な方向における、折り曲げ後の積層体1の断面図である。
積層体1を折り曲げる場合には、ここに示すように、導電層12が存在する領域において、180°の角度で、積層体1を折り曲げる。
折り曲げの方向は、折り曲げ後の積層体1において、基材11の第1面11aが内側を向き、基材11の第2面11bが外側を向く方向である。この折り曲げによって、積層体1中の互いに離れていた導電層12同士が、これらの第1面12aにおいて密着する。
次いで、この折り曲げた積層体を、その折り曲げ角度が0°となるように、折り曲げられていない元の状態に戻す。そして、この折り曲げを経た積層体について、上記と同じ方法(前記初期体積抵抗率の場合と同じ方法)で、導電層の体積抵抗率(本明細書においては、「折り曲げ後体積抵抗率」と称することがある)を求める。
次いで、求めた初期体積抵抗率と折り曲げ後体積抵抗率とから、下記式に従って、導電層の体積抵抗率変化率を算出する。
[導電層の体積抵抗率変化率(%)]=([導電層の折り曲げ後体積抵抗率]-[導電層の初期体積抵抗率])/[導電層の初期体積抵抗率]×100
前記積層体において、導電層の体積抵抗率変化率は、50%以下であることが好ましく、例えば、40%以下、30%以下、20%以下、及び10%以下のいずれかであってもよい。体積抵抗率変化率が前記上限値以下である積層体は、導電層の導電性の低下を抑制する効果が十分に高い。
前記積層体において、導電層の初期体積抵抗率は、特に限定されず、積層体の用途に応じた値であればよい。通常、導電層の初期体積抵抗率は、310μΩ・cm以下であることが好ましく、例えば、200μΩ・cm以下、130μΩ・cm以下、100μΩ・cm以下、及び80μΩ・cm以下のいずれかであってもよい。このような導電層は、導電性に特に優れている。
前記積層体において、導電層の初期体積抵抗率の下限値は、小さいほど好ましい。通常、初期体積抵抗率が10μΩ・cm以上である導電性は、形成が比較的容易である。
導電層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。導電層が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
導電層が複数層からなる場合には、各層の合計の厚さが、上記の導電層の厚さとなるようにするとよい。
前記積層体においては、これを折り曲げたときに、導電層の導電性の低下を抑制する効果がより高くなり、かつ、導電層の形成がより容易である点では、導電層は1層からなるものが好ましい。
前記導電層は、この導電層を形成するための成分(導電層形成成分)が配合されてなる液状組成物(本明細書においては、「導電層形成用組成物」と称することがある)を用いて形成されたものが好ましい。
導電層は、前記導電層形成用組成物を、導電層の形成対象面に付着させて組成物層を形成し、この組成物層(導電層形成用組成物層)に対して、乾燥処理や加熱(焼成)処理等の固化処理を適宜選択して行うことで形成できる。
導電層は、金属層であることが好ましい。
導電層は、後述するように、導電層形成用組成物の種類によっては、光沢性がより高くなる。
例えば、後述するような、炭素数8~10の分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸が配合されてなる銀インク組成物を用いて形成された銀層は、光反射率、例えば、波長が400~700nmの光の反射率に優れる。
例えば、このような場合、金属銀(銀層)の波長550nmの光の反射率は、好ましくは50%以上であり、例えば、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上及び75%以上等のいずれかであってもよい。ただし、これらは、金属銀の波長550nmの光の反射率の一例である。
また、上述の金属銀(銀層)の、波長550nmの光の反射率の上限値は、特に限定されず、例えば、90%とすることができるが、これは前記上限値の一例である。
前記銀インク組成物を用いて形成した金属銀(銀層)の、波長550nmの光の反射率は、上述のいずれかの下限値と、いずれかの上限値と、を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、前記光の反射率は、好ましくは50~90%であり、例えば、55~90%、60~90%、65~90%、70~90%、及び75~90%のいずれかであってもよい。ただし、これらは、前記光の反射率の一例である。
◎導電層形成用組成物
前記導電層形成用組成物は、前記金属層を形成するための金属インク組成物であることが好ましい。
前記金属インク組成物としては、例えば、金属と、金属の形成材料と、のいずれか一方又は両方が配合されてなる組成物が挙げられる。
配合される前記金属及び金属の形成材料は、いずれも、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に調節できる。
配合される前記金属(単体金属又は合金)は、粒子状又は繊維状(チューブ状、ワイヤー状等)であることが好ましく、ナノ粒子又はナノワイヤーであることがより好ましく、銀ナノ粒子、銀ナノワイヤー、銅ナノ粒子又は銅ナノワイヤーであることがさらに好ましく、銀ナノ粒子又は銀ナノワイヤーであることが特に好ましい。
なお、本明細書において、「ナノ粒子」とは、粒径が1nm以上1000nm未満、好ましくは1~100nmである粒子を意味し、「ナノワイヤー」とは、幅が1nm以上1000nm未満、好ましくは1~100nmであるワイヤーを意味する。
配合される前記金属の形成材料は、該当する金属原子(元素)を有し、分解等の構造変化によって金属を生じるものであればよい。このような金属の形成材料としては、例えば、金属塩、金属錯体、金属-炭素結合を有する化合物等が挙げられる。前記金属塩、金属錯体、金属-炭素結合を有する化合物は、いずれも、有機基を有する金属化合物(有機金属化合物)及び有機基を有しない金属化合物(無機金属化合物)のいずれであってもよい。なかでも金属の形成材料は、金属塩又は金属錯体であることが好ましく、銀塩、銅塩、銀錯体又は銅錯体であることがより好ましく、銀塩又は銀錯体であることが特に好ましい。
前記金属インク組成物のうち、少なくとも金属が配合されてなるものとしては、例えば、金属粒子と、バインダーと、が配合されてなる金属粒子組成物が挙げられる。
前記金属粒子で好ましいものとしては、例えば、銀粒子、銅粒子が挙げられ、銀粒子が好ましい。
前記金属粒子組成物としては、市販品を用いてもよい。
前記金属インク組成物は、少なくとも前記金属の形成材料が配合されてなるものが好ましく、バインダー等の樹脂成分を含有しないものがより好ましく、前記金属の形成材料が均一に分散されたものが特に好ましい。
金属の形成材料を用いることで、この材料から金属が生じ、この金属を主成分として含む金属層(前記導電層)が形成される。この場合の金属層においては、好ましくは前記樹脂成分を用いないことにより、金属層が見かけ上金属だけからなるとみなし得る程度に、前記金属の割合を十分に高くすることができる。この場合、例えば、金属層の全質量に対する、金属層中の金属の合計質量の割合(換言すると、金属層の金属の含有量(質量%))は、好ましくは97質量%以上、より好ましくは98質量%以上、特に好ましくは99質量%以上である。前記割合の上限値は、例えば、100質量%、99.9質量%、99.8質量%、99.7質量%、99.6質量%、99.5質量%、99.4質量%、99.3質量%、99.2質量%及び99.1質量%のいずれかであってもよいが、これらに限定されない。
以下、金属インク組成物として、金属銀の形成材料が配合されてなる銀インク組成物を用いた場合の、金属層(導電層)の形成方法について説明するが、金属種が銀以外の場合にも同様の方法で、金属層を形成できる。
金属銀の形成材料で好ましいものとしては、例えば、有機銀化合物が挙げられる。前記有機銀化合物は、一分子中に有機基及び銀原子を有し、分解等の構造変化によって金属銀を生じる化合物である。
すなわち、前記銀インク組成物は、有機銀化合物が配合されてなるものが好ましく、例えば、有機銀化合物と、炭素数8~10の分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸と、が配合されてなるものであってもよい。そして、前記有機銀化合物は、カルボン酸銀又は有機銀錯体であることが好ましい。
好ましい前記銀インク組成物としては、例えば、カルボン酸銀と、炭素数8~10の分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸と、が配合されてなる銀インク組成物(本明細書においては、「銀インク組成物(I)」と称することがある);カルボン酸銀が配合されてなり、炭素数8~10の分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸が配合されていない銀インク組成物(本明細書においては、「銀インク組成物(II)」と称することがある);有機銀錯体と、炭素数8~10の分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸と、含窒素化合物と、が配合されてなる銀インク組成物(本明細書においては、「銀インク組成物(III)」と称することがある)等が挙げられる。
以下、各銀インク組成物について、詳細に説明する。
〇銀インク組成物(I)
銀インク組成物(I)は、前記有機銀化合物として、カルボン酸銀(カルボン酸の銀塩)が配合され、さらに、炭素数8~10の分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸が配合されてなる。
[カルボン酸銀]
前記カルボン酸銀は、式「-COOAg」で表される基を有する。
前記カルボン酸銀は、式「-COOAg」で表される基を有していれば特に限定されない。例えば、式「-COOAg」で表される基の数は1個のみでもよいし、2個以上でもよい。また、カルボン酸銀中の式「-COOAg」で表される基の位置も特に限定されない。
本実施形態において、カルボン酸銀は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
前記カルボン酸銀は、下記一般式(1)で表わされるβ-ケトカルボン酸銀(以下、「β-ケトカルボン酸銀(1)」と略記することがある)及び下記一般式(4)で表されるカルボン酸銀(以下、「カルボン酸銀(4)」と略記することがある)からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
なお、本明細書においては、単なる「カルボン酸銀」との記載は、特に断りの無い限り、「β-ケトカルボン酸銀(1)」及び「カルボン酸銀(4)」だけではなく、これらを包括する、「式「-COOAg」で表される基を有するカルボン酸銀」を意味するものとする。
Figure 0007171229000001
(式中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R-CY -」、「CY -」、「R-CHY-」、「RO-」、「RN-」、「(RO)CY-」若しくは「R-C(=O)-CY -」で表される基であり;
はそれぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子であり;Rは炭素数1~19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であり;Rは炭素数1~20の脂肪族炭化水素基であり;Rは炭素数1~16の脂肪族炭化水素基であり;R及びRはそれぞれ独立に炭素数1~18の脂肪族炭化水素基であり;Rは炭素数1~19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO-」で表される基であり;
はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基、シアノ基、N-フタロイル-3-アミノプロピル基、2-エトキシビニル基、又は一般式「RO-」、「RS-」、「R-C(=O)-」若しくは「R-C(=O)-O-」で表される基であり;
は、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、チエニル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基である。)
Figure 0007171229000002
(式中、Rは炭素数1~19の脂肪族炭化水素基、カルボキシ基又は式「-C(=O)-OAg」で表される基であり、前記脂肪族炭化水素基がメチレン基を有する場合、1個以上の前記メチレン基はカルボニル基で置換されていてもよい。)
(β-ケトカルボン酸銀(1))
β-ケトカルボン酸銀(1)は、前記一般式(1)で表される。
式中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R-CY -」、「CY -」、「R-CHY-」、「RO-」、「RN-」、「(RO)CY-」若しくは「R-C(=O)-CY -」で表される基である。
Rにおける炭素数1~20の脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状(脂肪族環式基)のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。また、前記脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基及び不飽和脂肪族炭化水素基のいずれでもよい。そして、前記脂肪族炭化水素基は、炭素数が1~10であることが好ましく、1~6であることがより好ましい。Rにおける好ましい前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。
Rにおける直鎖状又は分枝鎖状の前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、3-エチルブチル基、1-エチル-1-メチルプロピル基、n-ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、1,1-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、4,4-ジメチルペンチル基、1-エチルペンチル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、4-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、1-プロピルブチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、5-メチルヘプチル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、5-エチルヘキシル基、1,1-ジメチルヘキシル基、2,2-ジメチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、4,4-ジメチルヘキシル基、5,5-ジメチルヘキシル基、1,2,3-トリメチルペンチル基、1,2,4-トリメチルペンチル基、2,3,4-トリメチルペンチル基、2,4,4-トリメチルペンチル基、1,4,4-トリメチルペンチル基、3,4,4-トリメチルペンチル基、1,1,2-トリメチルペンチル基、1,1,3-トリメチルペンチル基、1,1,4-トリメチルペンチル基、1,2,2-トリメチルペンチル基、2,2,3-トリメチルペンチル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、1,3,3-トリメチルペンチル基、2,3,3-トリメチルペンチル基、3,3,4-トリメチルペンチル基、1-プロピルペンチル基、2-プロピルペンチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。
Rにおける環状の前記アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、トリシクロデシル基等が挙げられる。
Rにおける前記アルケニル基としては、例えば、Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の1個の単結合(C-C)が二重結合(C=C)に置換された基等が挙げられる。
このような前記アルケニル基としては、例えば、ビニル基(エテニル基、-CH=CH)、アリル基(2-プロペニル基、-CH-CH=CH)、1-プロペニル基(-CH=CH-CH)、イソプロペニル基(-C(CH)=CH)、1-ブテニル基(-CH=CH-CH-CH)、2-ブテニル基(-CH-CH=CH-CH)、3-ブテニル基(-CH-CH-CH=CH)、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル基等が挙げられる。
Rにおける前記アルキニル基としては、例えば、Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の1個の単結合(C-C)が三重結合(C≡C)に置換された基等が挙げられる。
このような前記アルキニル基としては、例えば、エチニル基(-C≡CH)、プロパルギル基(-CH-C≡CH)等が挙げられる。
Rにおける炭素数1~20の脂肪族炭化水素基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい。好ましい前記置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。また、前記脂肪族炭化水素基において、前記置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、すべての置換基が同一であってもよいし、すべての置換基が異なっていてもよく、一部の置換基のみが異なっていてもよい。
Rにおけるフェニル基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい。好ましい前記置換基としては、例えば、炭素数が1~16の飽和又は不飽和の一価の脂肪族炭化水素基、前記脂肪族炭化水素基が酸素原子に結合してなる一価の基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基(-OH)、シアノ基(-C≡N)、フェノキシ基(-O-C)等が挙げられる。置換基を有する前記フェニル基において、前記置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
置換基である前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1~16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるYは、それぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子である。そして、一般式「R-CY -」、「CY -」及び「R-C(=O)-CY -」においては、それぞれ複数個のYは、互いに同一でも異なっていてもよい。
RにおけるRは、炭素数1~19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基(C-)である。Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1~19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるRは、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基であり、例えば、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるRは、炭素数1~16の脂肪族炭化水素基である。Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1~16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるR及びRは、それぞれ独立に炭素数1~18の脂肪族炭化水素基である。すなわち、R及びRは、互いに同一でも異なっていてもよく、R及びRにおける前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1~18である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるRは、炭素数1~19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO-」で表される基である。Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1~19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
Rは、上記の中でも、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、一般式「R-C(=O)-CY -」で表される基、水酸基又はフェニル基であることが好ましい。そして、Rは、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、水酸基又は式「AgO-」で表される基であることが好ましい。
一般式(1)において、Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基(C-CH-)、シアノ基、N-フタロイル-3-アミノプロピル基、2-エトキシビニル基(C-O-CH=CH-)、又は一般式「RO-」、「RS-」、「R-C(=O)-」若しくは「R-C(=O)-O-」で表される基である。
における炭素数1~20の脂肪族炭化水素基としては、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
におけるフェニル基及びベンジル基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい。好ましい前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ニトロ基(-NO)等が挙げられる。置換基を有する前記フェニル基及びベンジル基において、前記置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
におけるRは、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、チエニル基(CS-)、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基(ビフェニル基、C-C-)である。Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1~10である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。また、Rにおけるフェニル基及びジフェニル基が有する前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等が挙げられる。置換基を有する前記フェニル基及びジフェニル基において、前記置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
がチエニル基又はジフェニル基である場合、これらの、Xにおいて隣接する基又は原子(酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基)との結合位置は、特に限定されない。例えば、チエニル基は、2-チエニル基及び3-チエニル基のいずれでもよい。
一般式(1)において、2個のXは、2個のカルボニル基で挟まれた炭素原子と二重結合を介して1個の基として結合していてもよい。このようなXとしては、例えば、式「=CH-C-NO」で表される基等が挙げられる。
は、上記の中でも、水素原子、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、ベンジル基、又は一般式「R-C(=O)-」で表される基であることが好ましく、少なくとも一方のXが水素原子であることが好ましい。
β-ケトカルボン酸銀(1)は、2-メチルアセト酢酸銀(CH-C(=O)-CH(CH)-C(=O)-OAg)、アセト酢酸銀(CH-C(=O)-CH-C(=O)-OAg)、2-エチルアセト酢酸銀(CH-C(=O)-CH(CHCH)-C(=O)-OAg)、プロピオニル酢酸銀(CHCH-C(=O)-CH-C(=O)-OAg)、イソブチリル酢酸銀((CHCH-C(=O)-CH-C(=O)-OAg)、ピバロイル酢酸銀((CHC-C(=O)-CH-C(=O)-OAg)、カプロイル酢酸銀(CH(CHCH-C(=O)-CH-C(=O)-OAg)、2-n-ブチルアセト酢酸銀(CH-C(=O)-CH(CHCHCHCH)-C(=O)-OAg)、2-ベンジルアセト酢酸銀(CH-C(=O)-CH(CH)-C(=O)-OAg)、ベンゾイル酢酸銀(C-C(=O)-CH-C(=O)-OAg)、ピバロイルアセト酢酸銀((CHC-C(=O)-CH-C(=O)-CH-C(=O)-OAg)、イソブチリルアセト酢酸銀((CHCH-C(=O)-CH-C(=O)-CH-C(=O)-OAg)、2-アセチルピバロイル酢酸銀((CHC-C(=O)-CH(-C(=O)-CH)-C(=O)-OAg)、2-アセチルイソブチリル酢酸銀((CHCH-C(=O)-CH(-C(=O)-CH)-C(=O)-OAg)、又はアセトンジカルボン酸銀(AgO-C(=O)-CH-C(=O)-CH-C(=O)-OAg)であることが好ましい。
β-ケトカルボン酸銀(1)を用いて、銀インク組成物(I)の乾燥処理や加熱(焼成)処理等の固化処理により形成された導電体(金属銀)においては、残存する原料や不純物の濃度をより低減できる。このような導電体においては、原料や不純物が少ない程、例えば、形成された金属銀同士の接触が良好となり、導通が容易となり、抵抗率が低下する。
β-ケトカルボン酸銀(1)は、後述するように、当該分野で公知の還元剤等を使用しなくても、好ましくは60~210℃、より好ましくは60~200℃という低温で分解し、金属銀を形成できる。そして、β-ケトカルボン酸銀(1)は、還元剤と併用することで、より低温で分解して金属銀を形成する。
本発明において、β-ケトカルボン酸銀(1)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
(カルボン酸銀(4))
カルボン酸銀(4)は、前記一般式(4)で表される。
式中、Rは炭素数1~19の脂肪族炭化水素基、カルボキシ基(-COOH)又は式「-C(=O)-OAg」で表される基である。
における前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1~19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。ただし、Rにおける前記脂肪族炭化水素基は、炭素数が1~15であることが好ましく、1~10であることがより好ましい。
における前記脂肪族炭化水素基がメチレン基(-CH-)を有する場合、1個以上の前記メチレン基はカルボニル基で置換されていてもよい。カルボニル基で置換されていてもよいメチレン基の数及び位置は特に限定されず、すべてのメチレン基がカルボニル基で置換されていてもよい。ここで「メチレン基」とは、単独の式「-CH-」で表される基だけでなく、式「-CH-」で表される基が複数個連なったアルキレン基中の1個の式「-CH-」で表される基も含むものとする。
カルボン酸銀(4)は、ピルビン酸銀(CH-C(=O)-C(=O)-OAg)、酢酸銀(CH-C(=O)-OAg)、酪酸銀(CH-(CH-C(=O)-OAg)、イソ酪酸銀((CHCH-C(=O)-OAg)、2-エチルへキサン酸銀(CH-(CH-CH(CHCH)-C(=O)-OAg)、ネオデカン酸銀、シュウ酸銀(AgO-C(=O)-C(=O)-OAg)、又はマロン酸銀(AgO-C(=O)-CH-C(=O)-OAg)であることが好ましい。また、上記のシュウ酸銀(AgO-C(=O)-C(=O)-OAg)及びマロン酸銀(AgO-C(=O)-CH-C(=O)-OAg)の2個の式「-COOAg」で表される基のうち、1個が式「-COOH」で表される基となったもの(HO-C(=O)-C(=O)-OAg、HO-C(=O)-CH-C(=O)-OAg)も好ましい。
カルボン酸銀(4)を用いた場合にも、β-ケトカルボン酸銀(1)を用いた場合と同様に、銀インク組成物(I)の乾燥処理や加熱(焼成)処理等の固化処理により形成された導電体(金属銀)において、残存する原料や不純物の濃度をより低減できる。そして、カルボン酸銀(4)は、還元剤と併用することで、より低温で分解して金属銀を形成する。
本発明において、カルボン酸銀(4)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
前記カルボン酸銀は、2-メチルアセト酢酸銀、アセト酢酸銀、2-エチルアセト酢酸銀、プロピオニル酢酸銀、イソブチリル酢酸銀、ピバロイル酢酸銀、カプロイル酢酸銀、2-n-ブチルアセト酢酸銀、2-ベンジルアセト酢酸銀、ベンゾイル酢酸銀、ピバロイルアセト酢酸銀、イソブチリルアセト酢酸銀、アセトンジカルボン酸銀、ピルビン酸銀、酢酸銀、酪酸銀、イソ酪酸銀、2-エチルへキサン酸銀、ネオデカン酸銀、シュウ酸銀及びマロン酸銀からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
そして、これらカルボン酸銀の中でも、2-メチルアセト酢酸銀、アセト酢酸銀、イソブチリル酢酸銀及びピバロイル酢酸銀は、後述する含窒素化合物(なかでもアミン化合物)との相溶性に優れ、銀インク組成物(I)の高濃度化に、特に適したものとして挙げられる。
銀インク組成物(I)の全質量に対する、銀インク組成物(I)中の前記カルボン酸銀に由来する銀の合計質量の割合(換言すると、銀インク組成物(I)の、前記カルボン酸銀に由来する銀の含有量)は、5質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、形成された導電層(銀層)は、より優れた品質となる。前記割合の上限値は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、銀インク組成物(I)の取り扱い性等を考慮すると、25質量%であることが好ましい。
なお、本明細書において、「カルボン酸銀に由来する銀」とは、特に断りの無い限り、銀インク組成物(I)の製造時に配合されたカルボン酸銀中の銀と同義であり、配合後も引き続きカルボン酸銀を構成している銀と、配合後にカルボン酸銀の分解で生じた分解物中の銀と、配合後にカルボン酸銀の分解で生じた銀そのもの(金属銀)と、のすべてを含む概念とする。
[炭素数8~10の分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸]
銀インク組成物(I)は、前記分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸(本明細書においては、「分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸」と略記することがある)が配合されていることで、光沢性と導電性がより高い銀層を形成できる。
前記分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸は、炭素数8~10の分岐鎖状飽和脂肪族炭化水素の1個又は2個以上の水素原子が、カルボキシ基で置換された構造を有する。換言すると、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸は、1分子中の炭素数が8~10で、かつ、1個又は2個以上のカルボキシ基が分岐鎖状飽和脂肪族炭化水素基に結合している化合物である。
分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸は、1分子中にカルボキシ基を1個のみ有する一価(モノ)カルボン酸、及び1分子中にカルボキシ基を2個以上有する多価カルボン酸、のいずれであってもよい。
分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸が1分子中に有するカルボキシ基の数は、1~3個であることが好ましく、1個又は2個であることがより好ましく、1個であることが特に好ましい。
分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸において、カルボキシ基が結合している炭素原子の位置は、特に限定されない。例えば、カルボキシ基が結合している炭素原子は、分子の末端の炭素原子であってもよいし、分子の末端以外の炭素原子であってもよい。
分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸が多価カルボン酸である場合、すべてのカルボキシ基が、互いに異なる炭素原子に結合していてもよいし、2個又は3個のカルボキシ基が、同一の炭素原子に結合していてもよい。
分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸において、分岐鎖が結合している、主鎖中の炭素原子の位置は、特に限定されない。例えば、分岐鎖が結合している前記炭素原子は、主鎖のカルボキシ基が結合している側の末端の炭素原子であってもよいし、主鎖のカルボキシ基が結合している側とは反対側の末端の炭素原子に隣接する炭素原子(前記反対側の末端から2番目の炭素原子)であってもよいし、上述のカルボキシ基が結合している側の末端の炭素原子と、上述のカルボキシ基が結合している側とは反対側の末端の炭素原子に隣接する炭素原子と、の間に位置する主鎖中の炭素原子であってもよい。
ここで、「主鎖」とは、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸中の鎖状構造のうち、炭素数が最大であるものを意味する。炭素数が最大である鎖状構造が複数ある場合には、いずれの鎖状構造を主鎖として取り扱ってもよい。主鎖の炭素数は、必ず分岐鎖の炭素数以上となる。
分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸は、下記一般式(6)で表されるモノカルボン酸(本明細書においては、「モノカルボン酸(6)」と略記することがある)であることが好ましい。
31-C(=O)-OH ・・・・(6)
(式中、R31は、炭素数7~9の分岐鎖状のアルキル基である。)
31の炭素数7~9の分岐鎖状のアルキル基(一価の飽和脂肪族炭化水素基)としては、例えば、1-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、1,1-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、4,4-ジメチルペンチル基、1-エチルペンチル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、4-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、1-プロピルブチル基等の炭素数7の分岐鎖状のアルキル基;
イソオクチル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、5-メチルヘプチル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、5-エチルヘキシル基、1,1-ジメチルヘキシル基、2,2-ジメチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、4,4-ジメチルヘキシル基、5,5-ジメチルヘキシル基、1,2,3-トリメチルペンチル基、1,2,4-トリメチルペンチル基、2,3,4-トリメチルペンチル基、2,4,4-トリメチルペンチル基、1,4,4-トリメチルペンチル基、3,4,4-トリメチルペンチル基、1,1,2-トリメチルペンチル基、1,1,3-トリメチルペンチル基、1,1,4-トリメチルペンチル基、1,2,2-トリメチルペンチル基、2,2,3-トリメチルペンチル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、1,3,3-トリメチルペンチル基、2,3,3-トリメチルペンチル基、3,3,4-トリメチルペンチル基、1-プロピルペンチル基、2-プロピルペンチル基等の炭素数8の分岐鎖状のアルキル基;
1-メチルオクチル基、2-メチルオクチル基、3-メチルオクチル基、4-メチルオクチル基、5-メチルオクチル基、6-メチルオクチル基、7-メチルオクチル基、6,6-ジメチルヘプチル基、5,5-ジメチルヘプチル基、4,4-ジメチルヘプチル基、3,3-ジメチルヘプチル基、2,2-ジメチルヘプチル基、1,1-ジメチルヘプチル基、1,2-ジメチルヘプチル基、1,3-ジメチルヘプチル基、1,4-ジメチルヘプチル基、1,5-ジメチルヘプチル基、1,6-ジメチルヘプチル基、2,3-ジメチルヘプチル基、2,4-ジメチルヘプチル基、2,5-ジメチルヘプチル基、2,6-ジメチルヘプチル基、3,4-ジメチルヘプチル基、3,5-ジメチルヘプチル基、3,6-ジメチルヘプチル基、4,5-ジメチルヘプチル基、4,6-ジメチルヘプチル基、5,6-ジメチルヘプチル基、1,2,3-トリメチルヘキシル基、1,2,4-トリメチルヘキシル基、1,2,5-トリメチルヘキシル基、2,3,4-トリメチルヘキシル基、2,3,5-トリメチルヘキシル基、3,4,5-トリメチルヘキシル基、1,1,2-トリメチルヘキシル基、1,1,3-トリメチルヘキシル基、1,1,4-トリメチルヘキシル基、1,1,5-トリメチルヘキシル基、1,2,2-トリメチルヘキシル基、2,2,3-トリメチルヘキシル基、2,2,4-トリメチルヘキシル基、2,2,5-トリメチルヘキシル基、1,3,3-トリメチルヘキシル基、2,3,3-トリメチルヘキシル基、3,3,4-トリメチルヘキシル基、3,3,5-トリメチルヘキシル基、1,4,4-トリメチルヘキシル基、2,4,4-トリメチルヘキシル基、3,4,4-トリメチルヘキシル基、4,4,5-トリメチルヘキシル基、1,5,5-トリメチルヘキシル基、2,5,5-トリメチルヘキシル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基、4,5,5-トリメチルヘキシル基、1,2,3,4-テトラメチルペンチル基、1,1,2,3-テトラメチルペンチル基、1,1,2,4-テトラメチルペンチル基、1,1,3,4-テトラメチルペンチル基、1,2,2,3-テトラメチルペンチル基、1,2,2,4-テトラメチルペンチル基、2,2,3,4-テトラメチルペンチル基、1,2,3,3-テトラメチルペンチル基、2,3,3,4-テトラメチルペンチル基、1,3,3,4-テトラメチルペンチル基、1,2,4,4-テトラメチルペンチル基、2,3,4,4-テトラメチルペンチル基、1,3,4,4-テトラメチルペンチル基、1-エチル-1-メチルヘキシル基、1-エチル-2-メチルヘキシル基、1-エチル-3-メチルヘキシル基、1-エチル-4-メチルヘキシル基、1-エチル-5-メチルヘキシル基、2-エチル-1-メチルヘキシル基、2-エチル-2-メチルヘキシル基、2-エチル-3-メチルヘキシル基、2-エチル-4-メチルヘキシル基、2-エチル-5-メチルヘキシル基、3-エチル-1-メチルヘキシル基、3-エチル-2-メチルヘキシル基、3-エチル-3-メチルヘキシル基、3-エチル-4-メチルヘキシル基、3-エチル-5-メチルヘキシル基、4-エチル-1-メチルヘキシル基、4-エチル-2-メチルヘキシル基、4-エチル-3-メチルヘキシル基、4-エチル-4-メチルヘキシル基、4-エチル-5-メチルヘキシル基、1,1-ジエチルペンチル基、1,2-ジエチルペンチル基、1,3-ジエチルペンチル基、2,2-ジエチルペンチル基、2,3-ジエチルペンチル基、3,3-ジエチルペンチル基、1-エチル-1-プロピルブチル基、2-エチル-1-プロピルブチル基等の炭素数9の分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
モノカルボン酸(6)に限定されず、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸1分子中の分岐鎖の数は、1~3本であることが好ましい。
モノカルボン酸(6)に限定されず、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の1本の分岐鎖の炭素数は、1~3であることが好ましい。
モノカルボン酸(6)に限定されず、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸は、これらの条件をともに満たすもの、すなわち、1分子中の分岐鎖の数が1~3本であり、かつ1本の分岐鎖の炭素数が1~3個であるものがより好ましい。
分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸は、金属銀(銀層)の光沢性と導電性の低下を抑制する適度な反応性を有し、かつ、銀インク組成物(I)中から揮発し難い一方で、銀インク組成物(I)の固化処理時には気化し易い、適度な沸点を有しており、先に説明した効果を向上させるものとして、特に適した特性を有する。
例えば、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の沸点は、180~270℃であることが好ましく、200~260℃であることがより好ましく、215~255℃であることが特に好ましい。分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の沸点が前記下限値以上であることで、銀インク組成物(I)中からの分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の揮発が抑制されて、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の沸点が前記上限値以下であることで、銀インク組成物(I)の固化処理によって得られた金属銀中での分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の残存が抑制され、光沢性、導電性等が高いなど、より好ましい特性の金属銀が得られる。
分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸(例えば、モノカルボン酸(6))で特に好ましいものとしては、ネオデカン酸(C19COOH)、2-プロピル吉草酸(2-プロピルペンタン酸、(CHCHCHCH(CHCHCH)COOH)、3,5,5-トリメチルヘキサン酸((CHCCHCH(CH)CHCOOH)等が挙げられる。
なお、本明細書において、ネオデカン酸とは、炭素数10の飽和脂肪族モノカルボン酸の異性体の混合物を意味し、前記混合物には炭素数10の分岐鎖状飽和脂肪族モノカルボン酸が必ず含まれる。このように、ネオデカン酸とは、1種の化合物だけを意味するものではない。
そして、ネオデカン酸中の、2種以上の炭素数10の飽和脂肪族モノカルボン酸の組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
上述のとおり、銀インク組成物(I)は、前記分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸が配合されていることで、銀インク組成物(I)の固化処理によって、光沢性と導電性がより高い金属銀を形成できる。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
すなわち、銀層の形成対象面に付着した銀インク組成物(I)中においては、カルボン酸銀から銀イオン(Ag)が生じる。この場合、銀インク組成物(I)の初期の固化処理によって、銀イオンに酸素が配位する(Ag・・・O)。次いで、金属銀を形成するための、銀インク組成物(I)の乾燥処理や加熱(焼成)処理等の固化処理によって、酸素が配位した銀イオンから酸化銀(AgO)が生じる。ここで、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸が配合されていない銀インク組成物の場合には、この銀インク組成物の固化処理によって最終的に生成した金属銀中に、副生した酸化銀が不純物として混入し、金属銀の光沢性が低下してしまい、導電性も低下してしまうと推測される。一方で、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸が配合されている銀インク組成物(I)の場合には、この分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸が酸化銀と反応することで、炭素数8~10の分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の銀塩(本明細書においては、「分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸銀」と略記することがある)が生じる。この分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸銀は、上述のカルボン酸銀(4)であり、当初から配合されているカルボン酸銀と同様に、銀インク組成物(I)の固化処理によって最終的に金属銀(銀層)を生成する。このように本実施形態の銀インク組成物(I)を用いることにより、銀インク組成物(I)の固化処理が原因となって生じた酸化銀が、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の作用によって、金属銀の光沢性と導電性の低下原因である不純物ではなく、金属銀そのものに転換されることによって、光沢性と導電性がより高い金属銀を形成できると推測される。
銀インク組成物(I)において、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の配合量は、前記有機銀化合物中の銀原子の配合量1モルあたり、0.01~1モルであることが好ましく、0.02~0.7モルであることがより好ましく、0.03~0.4モルであることが特に好ましい。分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の前記配合量がこのような範囲であることで、光沢性と導電性が高い金属銀を形成する効果がより高くなる。
分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸以外のカルボン酸にも、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸と同様に、光沢性と導電性がより高い金属銀の形成を可能とするものがある。
このような分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸以外のカルボン酸(本明細書においては「他のカルボン酸」と称することがある)は、一価カルボン酸であってもよいし、二価以上の多価カルボン酸であってもよく、脂肪族カルボン酸であってもよいし、芳香族カルボン酸であってもよい。
前記他のカルボン酸は、ホルミル基(-C(=O)-H)等の還元力を有する基を含まないものが好ましい。このような基を含まない他のカルボン酸が配合されてなる銀インク組成物(I)は、その保存中にカルボン酸銀由来の不溶物の生成が抑制され、取り扱い性がより高い。
前記他のカルボン酸の炭素数は、5~17であることが好ましく、例えば、5~15、5~13及び5~11のいずれかであってもよい。
前記他のカルボン酸の沸点は、150~290℃であることが好ましく、例えば、155~280℃、160~270℃及び160~260℃のいずれかであってもよい。他のカルボン酸の沸点が前記下限値以上であることで、銀インク組成物(I)中からの他のカルボン酸の揮発が抑制されて、他のカルボン酸を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、他のカルボン酸の沸点が前記上限値以下であることで、銀インク組成物(I)の固化処理によって得られた金属銀中での他のカルボン酸の残存が抑制され、光沢性、導電性等が高いなど、より好ましい特性の金属銀が得られる。
前記他のカルボン酸は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
銀インク組成物(I)において、前記他のカルボン酸の配合量は、上述の分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の配合量と同じとすることができる。
[含窒素化合物]
銀インク組成物(I)は、前記カルボン酸銀及び分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸以外に、さらに含窒素化合物が配合されてなるものが好ましい。
前記含窒素化合物は、炭素数25以下のアミン化合物(以下、「アミン化合物」と略記することがある)、炭素数25以下の第4級アンモニウム塩(以下、「第4級アンモニウム塩」と略記することがある)、アンモニア、炭素数25以下のアミン化合物が酸と反応してなるアンモニウム塩(以下、「アミン化合物由来のアンモニウム塩」と略記することがある)、及びアンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩(以下、「アンモニア由来のアンモニウム塩」と略記することがある)からなる群から選択される1種又は2種以上のものである。すなわち、配合される含窒素化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
(アミン化合物、第4級アンモニウム塩)
前記アミン化合物は、炭素数が1~25であり、第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミンのいずれでもよい。また、前記第4級アンモニウム塩は、炭素数が4~25である。前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩は、鎖状及び環状のいずれでもよい。また、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子(例えば、第1級アミンのアミノ基(-NH)を構成する窒素原子)の数は1個でもよいし、2個以上でもよい。
前記第1級アミンとしては、例えば、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいモノアルキルアミン、モノアリールアミン、モノ(ヘテロアリール)アミン、ジアミン等が挙げられる。
前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、このようなアルキル基としては、例えば、Rにおける前記アルキル基と同様のものが挙げられる。前記アルキル基は、炭素数が1~19の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3~7の環状のアルキル基であることが好ましい。
好ましい前記モノアルキルアミンとして、具体的には、例えば、n-ブチルアミン、n-へキシルアミン、n-オクチルアミン、n-ドデシルアミン、n-オクタデシルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、3-アミノペンタン、3-メチルブチルアミン、2-ヘプチルアミン(2-アミノヘプタン)、2-アミノオクタン、2-エチルヘキシルアミン、1,2-ジメチル-n-プロピルアミン等が挙げられる。
前記モノアリールアミンを構成するアリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。前記アリール基の炭素数は、6~10であることが好ましい。
前記モノ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基は、芳香族環骨格を構成する原子として、ヘテロ原子を有するものであり、前記ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、ホウ素原子等が挙げられる。また、芳香族環骨格を構成する前記へテロ原子の数は特に限定されず、1個でもよいし、2個以上でもよい。2個以上である場合、これらへテロ原子は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、これらへテロ原子は、すべて同じでもよいし、すべて異なっていてもよく、一部だけ異なっていてもよい。
前記ヘテロアリール基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、その環員数(環骨格を構成する原子の数)も特に限定されないが、3~12員環であることが好ましい。
前記ヘテロアリール基で、窒素原子を1~4個有する単環状のものとしては、例えば、ピロリル基、ピロリニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、ピペリジニル基、ピラゾリジニル基、ピペラジニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、3~8員環であることが好ましく、5~6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1個有する単環状のものとしては、例えば、フラニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、3~8員環であることが好ましく、5~6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1個有する単環状のものとしては、例えば、チエニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、3~8員環であることが好ましく、5~6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1~2個及び窒素原子を1~3個有する単環状のものとしては、例えば、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、モルホリニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、3~8員環であることが好ましく、5~6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1~2個及び窒素原子を1~3個有する単環状のものとしては、例えば、チアゾリル基、チアジアゾリル基、チアゾリジニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、3~8員環であることが好ましく、5~6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、窒素原子を1~5個有する多環状のものとしては、例えば、インドリル基、イソインドリル基、インドリジニル基、ベンズイミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、インダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、テトラゾロピリジル基、テトラゾロピリダジニル基、ジヒドロトリアゾロピリダジニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、7~12員環であることが好ましく、9~10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1~3個有する多環状のものとしては、例えば、ジチアナフタレニル基、ベンゾチオフェニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、7~12員環であることが好ましく、9~10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1~2個及び窒素原子を1~3個有する多環状のものとしては、例えば、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、7~12員環であることが好ましく、9~10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1~2個及び窒素原子を1~3個有する多環状のものとしては、例えば、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、7~12員環であることが好ましく、9~10員環であることがより好ましい。
前記ジアミンは、アミノ基を2個有していればよく、2個のアミノ基の位置関係は特に限定されない。好ましい前記ジアミンとしては、例えば、前記モノアルキルアミン、モノアリールアミン又はモノ(ヘテロアリール)アミンにおいて、アミノ基(-NH)を構成する水素原子以外の1個の水素原子が、アミノ基で置換されたもの等が挙げられる。
前記ジアミンは炭素数が1~10であることが好ましく、より好ましいものとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン等が挙げられる。
前記第2級アミンとしては、例えば、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいジアルキルアミン、ジアリールアミン、ジ(ヘテロアリール)アミン等が挙げられる。
前記ジアルキルアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1~9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3~7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、ジアルキルアミン一分子中の2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
好ましい前記ジアルキルアミンとして、具体的には、例えば、N-メチル-n-ヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、ジ(2-エチルへキシル)アミン等が挙げられる。
前記ジアリールアミンを構成するアリール基は、前記モノアリールアミンを構成するアリール基と同様であり、炭素数が6~10であることが好ましい。また、ジアリールアミン一分子中の2個のアリール基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記ジ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基は、前記モノ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基と同様であり、6~12員環であることが好ましい。また、ジ(ヘテロアリール)アミン一分子中の2個のヘテロアリール基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記第3級アミンとしては、例えば、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいトリアルキルアミン、ジアルキルモノアリールアミン等が挙げられる。
前記トリアルキルアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1~19の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3~7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、トリアルキルアミン一分子中の3個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、3個のアルキル基は、すべてが同じでもよいし、すべてが異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。
好ましい前記トリアルキルアミンとして、具体的には、例えば、N,N-ジメチル-n-オクタデシルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
前記ジアルキルモノアリールアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3~7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、ジアルキルモノアリールアミン一分子中の2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記ジアルキルモノアリールアミンを構成するアリール基は、前記モノアリールアミンを構成するアリール基と同様であり、炭素数が6~10であることが好ましい。
本発明において、前記第4級アンモニウム塩としては、例えば、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいハロゲン化テトラアルキルアンモニウム等が挙げられる。
前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1~19であることが好ましい。また、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム一分子中の4個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、4個のアルキル基は、すべてが同じでもよいし、すべてが異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。
前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを構成するハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
好ましい前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムとして、具体的には、例えば、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
ここまでは、主に鎖状のアミン化合物及び第4級有機アンモニウム塩について説明したが、前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩は、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子が環骨格構造(複素環骨格構造)の一部であるようなヘテロ環化合物であってもよい。すなわち、前記アミン化合物は環状アミンでもよく、前記第4級アンモニウム塩は環状アンモニウム塩でもよい。この時の環(アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子を含む環)構造は、単環状及び多環状のいずれでもよく、その環員数(環骨格を構成する原子の数)も特に限定されず、脂肪族環及び芳香族環のいずれでもよい。
環状アミンであれば、好ましいものとして、例えば、ピリジン等が挙げられる。
前記第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン及び第4級アンモニウム塩において、「置換基で置換されていてもよい水素原子」とは、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子に結合している水素原子以外の水素原子である。この時の置換基の数は特に限定されず、1個でもよいし、2個以上でもよく、前記水素原子のすべてが置換基で置換されていてもよい。置換基の数が複数の場合には、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、複数個の置換基はすべて同じでもよいし、すべて異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。また、置換基の位置も特に限定されない。
前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩における前記置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、トリフルオロメチル基(-CF)等が挙げられる。ここで、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基が置換基を有する場合、前記アルキル基は、置換基としてアリール基を有する、炭素数が1~9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は置換基として好ましくは炭素数が1~5のアルキル基を有する、炭素数が3~7の環状のアルキル基であることが好ましい。このような置換基を有するモノアルキルアミンとして、具体的には、例えば、2-フェニルエチルアミン、ベンジルアミン、2,3-ジメチルシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
また、置換基である前記アリール基及びアルキル基は、さらに1個以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。このようなハロゲン原子で置換された置換基を有するモノアルキルアミンとしては、例えば、2-ブロモベンジルアミン等が挙げられる。ここで、前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
前記モノアリールアミンを構成するアリール基が置換基を有する場合、前記アリール基は、置換基としてハロゲン原子を有する、炭素数が6~10のアリール基であることが好ましい。このような置換基を有するモノアリールアミンとして、具体的には、例えば、ブロモフェニルアミン等が挙げられる。ここで、前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
前記ジアルキルアミンを構成するアルキル基が置換基を有する場合、前記アルキル基は、置換基として水酸基又はアリール基を有する、炭素数が1~9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、このような置換基を有するジアルキルアミンとして、具体的には、例えば、ジエタノールアミン、N-メチルベンジルアミン等が挙げられる。
前記アミン化合物は、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、n-へキシルアミン、n-オクチルアミン、n-ドデシルアミン、n-オクタデシルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、3-アミノペンタン、3-メチルブチルアミン、2-ヘプチルアミン、2-アミノオクタン、2-エチルヘキシルアミン、2-フェニルエチルアミン、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、N-メチル-n-ヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、N-メチルベンジルアミン、ジ(2-エチルへキシル)アミン、1,2-ジメチル-n-プロピルアミン、N,N-ジメチル-n-オクタデシルアミン又はN,N-ジメチルシクロヘキシルアミンであることが好ましい。
そして、これらアミン化合物の中でも、2-エチルヘキシルアミンは、前記カルボン酸銀との相溶性に優れ、銀インク組成物(I)の高濃度化に特に適しており、さらに金属銀の表面粗さの低減に特に適したものとして挙げられる。
(アミン化合物由来のアンモニウム塩)
本実施形態において、前記アミン化合物由来のアンモニウム塩は、前記アミン化合物が酸と反応してなるアンモニウム塩である。前記酸は、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸でもよいし、酢酸等の有機酸でもよく、酸の種類は特に限定されない。
前記アミン化合物由来のアンモニウム塩としては、例えば、n-プロピルアミン塩酸塩、N-メチル-n-ヘキシルアミン塩酸塩、N,N-ジメチル-n-オクタデシルアミン塩酸塩等が挙げられるが、これらに限定されない。
(アンモニア由来のアンモニウム塩)
本発明において、前記アンモニア由来のアンモニウム塩は、アンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩である。ここで酸としては、前記アミン化合物由来のアンモニウム塩の場合と同じものが挙げられる。
前記アンモニア由来のアンモニウム塩としては、例えば、塩化アンモニウム等が挙げられるが、これに限定されない。
本実施形態においては、前記アミン化合物、第4級アンモニウム塩、アミン化合物由来のアンモニウム塩及びアンモニア由来のアンモニウム塩は、それぞれ1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
そして、前記含窒素化合物としては、前記アミン化合物、第4級アンモニウム塩、アミン化合物由来のアンモニウム塩及びアンモニア由来のアンモニウム塩からなる群から選択される1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
本実施形態においては、例えば、前記含窒素化合物として、炭素数が8以上の第1含窒素化合物と、炭素数が7以下の第2含窒素化合物と、を併用してもよい。
前記第1含窒素化合物及び第2含窒素化合物を併用する場合、銀インク組成物(I)において、第1含窒素化合物の配合量に対する第2含窒素化合物の配合量の割合は、0モル%より大きく、18モル%未満であることが好ましく、1~17モル%であることがより好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、例えば、細線状の銀層をより安定して形成できる。
前記含窒素化合物を用いる場合、銀インク組成物(I)において、前記含窒素化合物の配合量は、前記カルボン酸銀の配合量1モルあたり0.3~15モルであることが好ましく、0.3~12モルであることがより好ましく、0.3~8モルであることが特に好ましく、例えば、1~8モル、2.5~8モル、及び4~8モルのいずれかであってもよい。前記含窒素化合物の前記配合量がこのような範囲であることで、銀インク組成物(I)は安定性がより向上し、金属銀の品質がより向上する。
[アルコール]
銀インク組成物(I)は、前記カルボン酸銀及び分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸以外に、さらにアルコールが配合されてなるものが好ましい。
前記アルコールは、下記一般式(2)で表されるアセチレンアルコール類(以下、「アセチレンアルコール(2)」と略記することがある)であることが好ましい。
Figure 0007171229000003
(式中、R’及びR’’は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~20のアルキル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基である。)
(アセチレンアルコール(2))
アセチレンアルコール(2)は、前記一般式(2)で表される。
式中、R’及びR’’は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~20のアルキル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基である。
R’及びR’’における炭素数1~20のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。R’及びR’’における前記アルキル基としては、Rにおける前記アルキル基と同様のものが挙げられる。
R’及びR’’におけるフェニル基の水素原子が置換されていてもよい前記置換基としては、例えば、炭素数が1~16の飽和又は不飽和の一価の脂肪族炭化水素基、前記脂肪族炭化水素基が酸素原子に結合してなる一価の基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基、シアノ基、フェノキシ基等が挙げられる。これら前記置換基は、Rにおけるフェニル基の水素原子が置換されていてもよい前記置換基と同様のものである。そして、置換基を有する前記フェニル基において、前記置換基の数及び位置は特に限定されず、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
R’及びR’’は、水素原子、又は炭素数1~20のアルキル基であることが好ましく、水素原子、又は炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であることがより好ましい。
好ましいアセチレンアルコール(2)としては、例えば、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、2-プロピン-1-オール、4-エチル-1-オクチン-3-オール、3-エチル-1-ヘプチン-3-オール等が挙げられる。
アセチレンアルコール(2)を用いる場合、銀インク組成物(I)において、アセチレンアルコール(2)の配合量は、前記有機銀化合物の配合量1モルあたり0.01~0.7モルであることが好ましく、0.02~0.5モルであることがより好ましく、0.02~0.3モルであることが特に好ましい。アセチレンアルコール(2)の前記配合量がこのような範囲であることで、銀インク組成物(I)の安定性がより向上する。
前記アルコールは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
[他の成分]
銀インク組成物(I)は、前記カルボン酸銀と、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸と、含窒素化合物と、アルコールと、のいずれにも該当しない、その他の成分(本明細書においては、「他の成分」と略記することがある)が配合されてなるものでもよい。
銀インク組成物(I)における前記他の成分は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。前記他の成分で、好ましいものとしては、例えば、アルコール以外の溶媒等が挙げられ、配合成分の種類や量に応じて任意に選択できる。
銀インク組成物(I)において、前記他の成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
(溶媒)
前記溶媒は、アルコール以外のもの(水酸基を有しないもの)であれば、特に限定されない。
ただし、前記溶媒は、常温で液状であるものが好ましい。
前記溶媒としては、例えば、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン等の芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロオクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、デカヒドロナフタレン等の脂肪族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;酢酸エチル、グルタル酸モノメチル、グルタル酸ジメチル等のエステル;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,2-ジメトキシエタン(ジメチルセロソルブ)等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン等のケトン;アセトニトリル等のニトリル;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド等が挙げられる。
銀インク組成物(I)における前記他の成分の配合量は、前記他の成分の種類に応じて、適宜選択すればよい。
例えば、前記他の成分がアルコール以外の溶媒である場合、前記溶媒の配合量は、銀インク組成物(I)の粘度等、目的に応じて選択すればよい。ただし通常は、銀インク組成物(I)において、配合成分の総量に対する前記溶媒の配合量の割合は、35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることが特に好ましい。
例えば、前記他の成分が前記溶媒以外の成分である場合、銀インク組成物(I)において、配合成分の総量に対する前記他の成分の配合量の割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
配合成分の総量に対する前記他の成分の配合量の割合が0質量、すなわち他の成分を配合しなくても、銀インク組成物(I)は十分にその効果を発現する。
銀インク組成物(I)においては、配合成分がすべて溶解していてもよいし、一部又は全ての成分が溶解せずに分散した状態であってもよいが、配合成分がすべて溶解していることが好ましく、溶解していない成分は均一に分散していることが好ましい。
○銀インク組成物(I)の製造方法
銀インク組成物(I)は、前記カルボン酸銀、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸、及び、必要に応じて、これら以外の成分を配合することで得られる。各成分の配合後は、得られた配合物をそのまま銀インク組成物(I)としてもよいし、必要に応じて引き続き公知の精製操作を行って得られた精製物を銀インク組成物(I)としてもよい。本実施形態においては、特に前記カルボン酸銀としてβ-ケトカルボン酸銀(1)を用いた場合、上記の各成分の配合時において、光沢性及び導電性を低下させる不純物が生成しないか、又はこのような不純物の生成量を極めて少量に抑制できる。したがって、精製操作を行っていない銀インク組成物(I)を用いても、十分な光沢性及び導電性を有する金属銀が得られる。
各成分の配合順序は、特に限定されない。各成分の好ましい配合方法の一例としては、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸を最後に配合する方法が挙げられる。すなわち、前記銀インク組成物(I)の好ましい製造方法の一例としては、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸以外の成分をすべて配合した後、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸を最後に配合する製造方法が挙げられる。
各成分の配合時には、すべての成分を添加してからこれらを混合してもよいし、一部の成分を順次添加しながら混合してもよく、すべての成分を順次添加しながら混合してもよい。
混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサー、三本ロール、ニーダー又はビーズミル等を使用して混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
銀インク組成物(I)において、溶解していない成分を均一に分散させる場合には、例えば、上記の三本ロール、ニーダー又はビーズミル等を用いて分散させる方法を適用することが好ましい。
配合時の温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、-5~60℃であることが好ましい。そして、配合時の温度は、配合成分の種類及び量に応じて、配合して得られた混合物が撹拌し易い粘度となるように、適宜調節するとよい。
また、配合時間も、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、10分~36時間であることが好ましい。
[二酸化炭素]
銀インク組成物(I)は、さらに二酸化炭素が供給されてなるものでもよい。このような銀インク組成物(I)は高粘度となり、例えば、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、パッド印刷法等の、インクを厚盛りすることが必要な印刷法への適用に好適である。
二酸化炭素は、銀インク組成物(I)製造時のいずれの時期に供給してもよい。
供給される二酸化炭素(CO)は、ガス状及び固形状(ドライアイス)のいずれでもよく、ガス状及び固形状の両方でもよい。供給された二酸化炭素は、供給対象物に溶け込み、いずれかの含有成分に作用することで、得られる銀インク組成物(I)の粘度が上昇すると推測される。
二酸化炭素ガスの供給は、液体中にガスを吹き込む公知の各種方法で行えばよく、適した供給方法を適宜選択すればよい。例えば、配管の一端を供給対象物中に浸漬し、他端を二酸化炭素ガスの供給源に接続して、この配管を通じて二酸化炭素ガスを供給対象物に供給する方法等が挙げられる。この時、配管の端部から直接二酸化炭素ガスを供給してもよいが、例えば、多孔質性のものなど、ガスの流路となり得る空隙部が多数設けられ、導入されたガスを拡散させて微小な気泡として放出することが可能なガス拡散部材を配管の端部に接続し、このガス拡散部材を介して二酸化炭素ガスを供給してもよい。また、供給対象物を撹拌しながら二酸化炭素ガスを供給してもよい。このようにすることで、効率的に二酸化炭素を供給できる。
二酸化炭素ガスの供給量は、供給対象物の量や、目的とする銀インク組成物(I)の粘度等に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。例えば、20~25℃における粘度が5Pa・s以上である銀インク組成物(I)を100~1000g程度得るためには、二酸化炭素ガスを100L以上供給することが好ましく、200L以上供給することがより好ましい。なお、ここでは銀インク組成物(I)の20~25℃における粘度について説明したが、銀インク組成物(I)の使用時の温度は、20~25℃に限定されるものではなく、任意に選択できる。また、なお、本明細書において「粘度」とは、特に断りのない限り、超音波振動式粘度計を用いて測定したものを意味する。
二酸化炭素ガスの流量は、必要とされる二酸化炭素ガスの供給量を考慮して適宜調節すればよいが、供給対象物1gあたり0.5mL/分以上であることが好ましく、1mL/分以上であることがより好ましい。前記流量の上限値は特に限定されないが、取り扱い性等を考慮すると、供給対象物1gあたり40mL/分であることが好ましい。
そして、二酸化炭素ガスの供給時間は、必要とされる二酸化炭素ガスの供給量や、流量を考慮して適宜調節すればよい。
二酸化炭素ガス供給時の供給対象物の温度は、5~70℃であることが好ましく、7~60℃であることがより好ましく、10~50℃であることが特に好ましい。前記温度が前記下限値以上であることで、より効率的に二酸化炭素を供給でき、前記温度が前記上限値以下であることで、不純物が少ないより良好な品質の銀インク組成物(I)が得られる。
二酸化炭素ガスの流量及び供給時間、並びに二酸化炭素ガス供給時の前記温度は、それぞれの値を相互に考慮しながら適した範囲に調節すればよい。例えば、前記温度を低めに設定しても、二酸化炭素ガスの流量を多めに設定するか、二酸化炭素ガスの供給時間を長めに設定することで、あるいはこの両方を行うことで、効率的に二酸化炭素を供給できる。また、二酸化炭素ガスの流量を少なめに設定しても、前記温度を高めにするか、二酸化炭素ガスの供給時間を長めに設定することで、あるいはこの両方を行うことで、効率的に二酸化炭素を供給できる。すなわち、二酸化炭素ガスの流量、二酸化炭素ガス供給時の前記温度として例示した上記数値範囲の中の数値を、二酸化炭素ガスの供給時間も考慮しつつ柔軟に組み合わせることで、良好な品質の銀インク組成物(I)が効率的に得られる。
二酸化炭素ガスの供給は、供給対象物を撹拌しながら行うことが好ましい。このようにすることで、供給した二酸化炭素ガスがより均一に供給対象物中に拡散し、より効率的に二酸化炭素を供給できる。
この時の撹拌方法は、二酸化炭素を用いない上記の銀インク組成物(I)の製造時における前記混合方法の場合と同様でよい。
ドライアイス(固形状二酸化炭素)の供給は、供給対象物中にドライアイスを添加することで行えばよい。ドライアイスは、全量を一括して添加してもよいし、分割して段階的に(添加を行わない時間帯を挟んで連続的に)添加してもよい。
ドライアイスの使用量は、上記の二酸化炭素ガスの供給量を考慮して調節すればよい。
ドライアイスの添加中及び添加後は、供給対象物を撹拌することが好ましく、例えば、二酸化炭素を用いない上記の銀インク組成物(I)の製造時と同様の方法で撹拌することが好ましい。このようにすることで、効率的に二酸化炭素を供給できる。
撹拌時の温度は、二酸化炭素ガス供給時と同様でよい。また、撹拌時間は、撹拌温度に応じて適宜調節すればよい。
例えば、銀インク組成物(I)をスクリーン印刷法、フレキソ印刷法等の、高粘度インクを使用する印刷法へ適用する場合には、二酸化炭素が供給されてなる銀インク組成物(I)の、20~25℃における粘度は、1Pa・s以上であることが好ましい。
なお、上記のように二酸化炭素の供給によって、粘度が通常よりも高い銀インク組成物(I)において、前記カルボン酸銀の少なくとも一部から金属銀が形成され、この金属銀が析出することがある。このとき、銀インク組成物(I)の粘度が高い場合には、析出した金属銀の凝集が抑制され、得られた銀インク組成物(I)中での金属銀の分散性が向上する。このような銀インク組成物(I)を用いて、後述する方法で金属銀を形成して得られた銀層は、粘度が低い、すなわち二酸化炭素が供給されていない銀インク組成物(I)を用いた場合の銀層よりも、光沢性が高く、導電性が高く(体積抵抗率が低く)、表面粗さも小さくなり、より好ましい特性を有するものとなる。
〇銀インク組成物(II)
銀インク組成物(II)は、前記有機銀化合物として、カルボン酸銀(カルボン酸の銀塩)が配合されてなり、炭素数8~10の分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸が配合されていないものである。
銀インク組成物(II)は、前記分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸が配合されていない点以外は、銀インク組成物(I)と同じであってよい。
すなわち、銀インク組成物(II)の配合成分としては、前記カルボン酸銀、含窒素化合物、アルコール、及び他の成分が挙げられる。
銀インク組成物(II)における、前記カルボン酸銀、含窒素化合物、アルコール、及び他の成分の配合量は、銀インク組成物(I)の場合と同じであってよい。
銀インク組成物(II)は、さらに二酸化炭素が供給されてなるものでもよい。この場合の二酸化炭素の供給方法は、前記分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸が配合成分ではない点を除けば、上述の銀インク組成物(I)の場合と同じである。
[還元剤]
銀インク組成物(II)は、前記カルボン酸銀以外に、さらに還元剤が配合されてなるものでもよい。
前記還元剤は、シュウ酸(HOOC-COOH)、ヒドラジン(HN-NH)及び下記一般式(5)で表される化合物(以下、「化合物(5)」と略記することがある)からなる群から選択される1種又は2種以上のものである。
H-C(=O)-R21 ・・・・(5)
(式中、R21は、炭素数20以下のアルキル基、アルコキシ基若しくはN,N-ジアルキルアミノ基、水酸基又はアミノ基である。)
すなわち、配合される還元剤は、1種のみでよいし、2種以上でもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
前記還元剤としてのヒドラジンは、一水和物(HN-NH・HO)であってもよい。
前記還元剤で好ましいものとしては、例えば、ギ酸(H-C(=O)-OH);ギ酸メチル(H-C(=O)-OCH)、ギ酸エチル(H-C(=O)-OCHCH)、ギ酸ブチル(H-C(=O)-O(CHCH)等のギ酸エステル;プロパナール(H-C(=O)-CHCH)、ブタナール(H-C(=O)-(CHCH)、ヘキサナール(H-C(=O)-(CHCH)等のアルデヒド;ホルムアミド(H-C(=O)-NH)、N,N-ジメチルホルムアミド(H-C(=O)-N(CH)等のホルムアミド類(式「H-C(=O)-N(-)-」で表される基を有する化合物);シュウ酸等が挙げられる。
還元剤を用いる場合、銀インク組成物(II)において、還元剤の配合量は、前記カルボン酸銀の配合量1モルあたり0.04~3.5モルであることが好ましく、0.06~2.5モルであることがより好ましい。還元剤の前記配合量がこのような範囲であることで、銀インク組成物(II)は、より容易に、より安定して金属銀を形成できる。
○銀インク組成物(II)の製造方法
銀インク組成物(II)は、前記分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸を配合せず、必要に応じて前記還元剤を配合する点以外は、銀インク組成物(I)の場合と同じ方法で製造できる。
すなわち、銀インク組成物(II)は、前記カルボン酸銀、及び、必要に応じて任意成分を配合することで得られる。ここで「任意成分」とは、還元剤、及び、前記カルボン酸銀と、還元剤と、のいずれにも該当しない成分、を意味する。例えば、銀インク組成物(II)の製造時においては、各成分の配合順序は、特に限定されない。
〇銀インク組成物(III)
銀インク組成物(III)は、前記有機銀化合物として、有機銀錯体が配合され、さらに、炭素数8~10の分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸(前記分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸)及び含窒素化合物が配合されてなる。
このような銀インク組成物(III)としては、例えば、有機銀錯体の前駆体化合物と、これ以外の含窒素化合物と、の反応によって、有機銀錯体が形成され、かつ余剰の前記含窒素化合物が残存している反応液と、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸と、を含むものが挙げられる。このような銀インク組成物(III)として、より具体的には、特許第5243409号公報に記載のものに、さらに分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸が配合されてなるものが挙げられる。
すなわち、銀インク組成物(III)としては、例えば、下記一般式(91)で表される銀化合物(本明細書においては、「銀化合物(91)」と略記することがある)と、下記一般式(92)で表される化合物(本明細書においては、「含窒素化合物(92)」と略記することがある)及び下記一般式(93)で表される化合物(本明細書においては、「含窒素化合物(93)」と略記することがある)からなる群から選択される1種又は2種以上の含窒素化合物と、を反応させて得られた有機銀錯体を含有し、さらに、前記含窒素化合物と、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸と、を含有する液状組成物が挙げられる。
Figure 0007171229000004
(式中、n101は、1~3の整数であり;X101は、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、シアノ基、シアネート基、カーボネート基、ニトレート基、ニトライト基、サルフェート基、ホスフェート基、チオシアネート基、クロレート基、パークロレート基、テトラフルオロボレート基、アセチルアセトネート基、カルボキシレート基、及びこれらの誘導体からなる群よから選択される基であり;R101~R111は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~30の脂肪族若しくは脂環族アルキル基又はアリール基、官能基が置換されたアルキル基又はアリール基、及びヘテロ環式基からなる群から選択される基であり、ただし、R101~R111がすべて水素原子になることはない。)
前記有機銀錯体としては、例えば、下記一般式(95)-1で表される化合物(本明細書においては、「有機銀錯体(95)-1」と略記することがある)、及び下記一般式(95)-2で表される化合物(本明細書においては、「有機銀錯体(95)-2」と略記することがある)が挙げられる。
Figure 0007171229000005
(式中、R101~R111は、上記と同じであり;m101及びm102は、それぞれ独立に、0.5~1.5である。)
[銀化合物(91)]
銀化合物(91)としては、例えば、酸化銀、チオシアネート化銀、シアン化銀、シアネート化銀、炭酸銀、硝酸銀、亜硝酸銀、硫酸銀、燐酸銀、過塩素酸銀、四フッ素ボレート化銀、アセチルアセトネート化銀、酢酸銀、乳酸銀、シュウ酸銀等が挙げられる。
銀化合物(91)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
銀インク組成物(III)の全質量に対する、銀インク組成物(III)中の銀化合物(91)に由来する銀の合計質量の割合(換言すると、銀インク組成物(III)の、銀化合物(91)に由来する銀の含有量)は、2質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、形成された導電層(銀層)は品質により優れたものとなる。前記割合の上限値は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、銀インク組成物(III)の取り扱い性等を考慮すると、20質量%であることが好ましい。
なお、ここで、「銀化合物(91)に由来する銀」とは、特に断りの無い限り、銀インク組成物(III)の製造時に配合された銀化合物(91)中の銀と同義であり、配合後も引き続き銀化合物(91)を構成している銀と、配合後に銀化合物(91)の反応で生じた反応物中の銀と、配合後に銀化合物(91)の反応で生じた銀そのもの(金属銀)と、のすべてを含む概念とする。
[含窒素化合物(92)]
含窒素化合物(92)は、アンモニウムカルバメート系化合物である。
含窒素化合物(92)において、R101~R105は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、シアノエチル基、メトキシエトキシエチル基、メトキシエトキシエトキシエチル基、ヘキサメチレンイミニル基、モルホリノ基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピリジニル基、カルボキシメチル基、トリメトキシシリルプロピル基、トリエトキシシリルプロピル基、フェニル基、メトキシフェニル基、シアノフェニル基、トリル基、ベンジル基、又はこれらの基において一部が置換された基であることが好ましい。ただし、R101~R105がすべて水素原子になることはない。
含窒素化合物(92)としては、例えば、エチルアンモニウム エチルカルバメート、イソプロピルアンモニウム イソプロピルカルバメート、n-ブチルアンモニウム n-ブチルカルバメート、イソブチルアンモニウム イソブチルカルバメート、tert-ブチルアンモニウム tert-ブチルカルバメート、2-エチルヘキシルアンモニウム 2-エチルヘキシルカルバメート、オクタデシルアンモニウム オクタデシルカルバメート、2-メトキシエチルアンモニウム 2-メトキシエチルカルバメート、2-シアノエチルアンモニウム 2-シアノエチルカルバメート、ジブチルアンモニウム ジブチルカルバメート、ジオクタデシルアンモニウム ジオクタデシルカルバメート、メチルデシルアンモニウム メチルデシルカルバメート、ヘキサメチレンイミンアンモニウム ヘキサメチレンイミンカルバメート、モルホリノアンモニウム モルホリノカルバメート、ピリジニウムエチルヘキシルカルバメート、ベンジルアンモニウム ベンジルカルバメート、トリエトキシシリルプロピルアンモニウム トリエトキシシリルプロピルカルバメート等が挙げられる。
そして、これら含窒素化合物(92)の中でも、2-エチルヘキシルアンモニウム 2-エチルヘキシルカルバメートは、銀化合物(91)との相溶性に優れ、銀インク組成物(III)の高濃度化に特に適しており、さらに金属銀の表面粗さの低減に特に適したものとして挙げられる。
含窒素化合物(92)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
含窒素化合物(92)は、公知の方法で製造でき、例えば、米国特許第4542214号明細書に記載の方法で製造できる。
[含窒素化合物(93)]
含窒素化合物(93)は、アンモニウムカーボネート系化合物である。
含窒素化合物(93)において、R106~R111は、含窒素化合物(92)におけるR101~R105と同様のものである。ただし、R106~R111がすべて水素原子になることはない。
含窒素化合物(93)としては、例えば、エチルアンモニウム エチルカーボネート、イソプロピルアンモニウム イソプロピルカーボネート、n-ブチルアンモニウム n-ブチルカーボネート、イソブチルアンモニウム イソブチルカーボネート、tert-ブチルアンモニウム tert-ブチルカーボネート、2-エチルヘキシルアンモニウム 2-エチルヘキシルカーボネート、2-メトキシエチルアンモニウム 2-メトキシエチルカーボネート、2-シアノエチルアンモニウム 2-シアノエチルカーボネート、オクタデシルアンモニウム オクタデシルカーボネート、ジブチルアンモニウム ジブチルカーボネート、ジオクタデシルアンモニウム ジオクタデシルカーボネート、メチルデシルアンモニウム メチルデシルカーボネート、ヘキサメチレンイミニルアンモニウム ヘキサメチレンイミニルカーボネート、モルホリノアンモニウム モルホリノカーボネート、ベンジルアンモニウム ベンジルカーボネート、トリエトキシシリルプロピルアンモニウム トリエトキシシリルプロピルカーボネート等が挙げられる。
含窒素化合物(93)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
含窒素化合物(93)は、公知の方法で製造でき、例えば、米国特許第4542214号明細書に記載の方法で製造できる。
銀化合物(91)と反応させる含窒素化合物は、1種又は2種以上の含窒素化合物(92)のみであってもよいし、1種又は2種以上の含窒素化合物(93)のみであってもよいし、1種又は2種以上の含窒素化合物(92)と、1種又は2種以上の含窒素化合物(93)と、の両方であってもよい。
銀化合物(91)と、含窒素化合物(92)及び含窒素化合物(93)からなる群から選択される1種又は2種以上と、の反応は、例えば、窒素雰囲気下において、常圧の状態で又は加圧した状態で、溶媒を用いずに行うことができる。
[溶媒]
前記反応は、溶媒を用いて行ってもよい。このときの溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール等のアルコール;エチレングリコール、グリセリン等のグリコール;エチルアセテート、ブチルアセテート、カルビトールアセテート等のアセテート;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;クロロホルム、メチレンクロライド、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
前記溶媒は、銀インク組成物(III)の配合成分であってもよい。
前記反応時において、含窒素化合物(92)及び含窒素化合物(93)の合計使用量は、使用する銀化合物(91)中の銀原子の量に対して、1~4倍モル量である([含窒素化合物(92)及び含窒素化合物(93)の合計使用量(モル)]/[使用する銀化合物(91)中の銀原子の量(モル)]の値が1~4である)ことが好ましい。
[炭素数8~10の分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸]
銀インク組成物(III)における、炭素数8~10の分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸は、銀インク組成物(I)における炭素数8~10の分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸(前記分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸)と同じである。
銀インク組成物(III)における前記分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸は、銀インク組成物(I)における前記分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸と、同様の作用を示すと推測される。
銀インク組成物(III)において、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の配合量は、前記有機銀錯体中の銀原子の配合量1モルあたり、0.01~1モルであることが好ましく、0.02~0.7モルであることがより好ましく、0.03~0.4モルであることが特に好ましい。分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の前記配合量がこのような範囲であることで、印刷対象物を加熱しながら印刷を行った場合であっても、光沢性が高い金属銀を形成する効果がより高くなる。
銀インク組成物(III)の製造時に、前記有機銀錯体の前駆体化合物を用いる場合には、前記前駆体化合物中の銀原子の配合量1モルあたりの、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の配合量を、上述の数値範囲とすることができる。
上述のとおり、前記銀インク組成物(III)は、前記分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸が配合されていることで、銀インク組成物(III)を固化処理したときに、光沢性と導電性がより高い金属銀を形成できる。その理由は定かではないが、上述の銀インク組成物(I)の場合と同じであると推測される。
本実施形態で用いる銀インク組成物については、以上のとおりである。
次いで、前記銀インク組成物の使用方法について説明する。
○銀インク組成物の使用方法
銀インク組成物(I)、銀インク組成物(II)及び銀インク組成物(III)の場合に限定されず、前記銀インク組成物は、印刷法、塗布法等の公知の方法によって、目的物へ付着させることができる。これは、銀インク組成物以外の導電層形成用組成物も同様である。
前記印刷法としては、例えば、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、ディップ式印刷法、インクジェット式印刷法、ディスペンサー式印刷法、ジェットディスペンサー式印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、パッド印刷法等が挙げられる。
これらの中でも、前記印刷法は、インクジェット式印刷法であることが好ましい。
前記塗布法としては、例えば、スピンコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、グラビアコーター等の各種コーターを用いる方法;ワイヤーバーを用いる方法;スロットダイ等のコーティング装置を用いる方法;スプレー法等が挙げられる。
銀インク組成物を目的とする箇所に付着させ、この付着後の銀インク組成物の乾燥処理や加熱(焼成)処理等の固化処理により、銀層を形成する場合には、目的とする箇所へ付着させる銀インク組成物の量、又は銀インク組成物における前記有機銀化合物の配合量を調節することで、銀層の形成量や、銀層の厚さを調節できる。
銀インク組成物を乾燥処理する場合には、公知の方法で行えばよい。すなわち前記乾燥処理は、例えば、常圧下、減圧下及び送風条件下のいずれで行ってもよく、大気下及び不活性ガス雰囲気下のいずれでおこなってもよい。そして、乾燥温度も特に限定されず、加熱乾燥及び常温乾燥のいずれでもよい。加熱処理が不要な場合の好ましい乾燥方法としては、例えば、18~30℃で大気下において乾燥させる方法が挙げられる。
銀インク組成物を加熱(焼成)処理する場合、その条件は、銀インク組成物の配合成分の種類に応じて適宜調節すればよい。通常は、加熱温度が60~370℃であることが好ましく、70~280℃であることがより好ましい。加熱時間は、加熱温度に応じて調節すればよいが、通常は、1分~24時間であることが好ましく、1分~12時間であることがより好ましい。前記有機銀化合物の中でも前記カルボン酸銀、特にβ-ケトカルボン酸銀(1)は、例えば、酸化銀等の金属銀の形成材料とは異なり、当該分野で公知の還元剤等を使用しなくても、低温で分解する。そして、このような分解温度を反映して、前記銀インク組成物は、上記のように、従来のものより極めて低温で金属銀を形成できる。
銀インク組成物を耐熱性が低い目的物に付着させて加熱(焼成)処理する場合には、加熱温度は130℃未満であることが好ましく、125℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが特に好ましい。
銀インク組成物の加熱処理の方法は、特に限定されない。前記加熱処理は、例えば、電気炉による加熱、感熱方式の熱ヘッドによる加熱、遠赤外線照射による加熱、高熱ガスの吹き付けによる加熱、高周波照射による加熱、誘電加熱等で行うことができる。また、前記加熱処理は、大気下で行ってもよいし、不活性ガス雰囲気下で行ってもよく、加湿条件下で行ってもよい。そして、前記加熱処理は、常圧下、減圧下及び加圧下のいずれで行ってもよい。
本明細書において「加湿」とは、特に断りのない限り、湿度を人為的に増大させることを意味し、好ましくは相対湿度を5%以上とすることである。加熱処理時には、処理温度が高いことによって、処理環境での湿度が極めて低くなるため、5%という相対湿度は、明らかに人為的に増大されたものであるといえる。
銀インク組成物の加熱処理を加湿条件下で行う場合の相対湿度は、10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましく、70%以上であることが特に好ましく、90%以上であってもよいし、100%であってもよい。そして、加湿条件下での加熱処理は、100℃以上に加熱した高圧水蒸気の吹き付けにより行ってもよい。このように加湿条件下で加熱処理することにより、短時間でより高純度の金属銀を形成できる。
銀インク組成物の加熱処理は、二段階で行ってもよい。例えば、一段階目の加熱処理では、金属銀の形成ではなく銀インク組成物の乾燥を主に行い、二段階目の加熱処理で、金属銀の形成を最後まで行う方法が挙げられる。
一段階目の加熱処理において、加熱温度は、銀インク組成物の配合成分の種類に応じて適宜調節すればよいが、60~120℃であることが好ましく、70~110℃であってもよい。また、加熱時間は、加熱温度に応じて調節すればよいが、通常は、5秒~12時間であることが好ましく、30秒~2時間であることがより好ましい。
二段階目の加熱処理において、加熱温度は、金属銀が良好に形成されるように、銀インク組成物の配合成分の種類に応じて適宜調節すればよいが、60~280℃であることが好ましく、70~260℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、加熱温度に応じて調節すればよいが、通常は、1分~12時間であることが好ましく、1分~10時間であることがより好ましい。
銀インク組成物を耐熱性が低い目的物に付着させて加熱(焼成)処理する場合には、一段階目及び二段階目の加熱処理における加熱温度は、130℃未満であることが好ましく、125℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが特に好ましい。
ここまでで説明した銀インク組成物の加熱処理は、いずれも気相中で行うものであるが、銀インク組成物の加熱処理を二段階で行う場合、二段階目の加熱処理は、気相中ではなく液相中で行ってもよい。一段階目の加熱処理を経て、完全に又はある程度乾燥した銀インク組成物は、加熱した液体と接触させることで、その形状を損なうことなく、二段階目の加熱処理を行うことができる。そして、銀インク組成物の、一段階目の加熱処理を行った後の二段階目の液相中での加熱処理は、加熱した液体に銀インク組成物を浸漬することで行うことが好ましい。この液相中での加熱処理における加熱温度及び加熱時間は、先に説明した二段階目の加熱処理における加熱温度及び加熱時間と同じである。
上記の加熱した液体は湯(加熱した水)であることが好ましく、二段階目の加熱処理は、一段階目の加熱処理を行った銀インク組成物を湯中に浸漬すること、すなわち湯煎によって行うことが好ましい。
二段階目の加熱処理を液相中で行った場合には、この加熱処理によって形成された金属銀を、さらに乾燥させればよい。
銀インク組成物の二段階目の加熱処理を液相中で行う場合、銀インク組成物の一段階目の加熱処理は、非加湿条件下で行うことが好ましい。
なお、本明細書において「非加湿」とは、上述の「加湿」を行わないこと、すなわち、湿度を人為的に増大させないことを意味し、好ましくは相対湿度を5%未満とすることである。
加湿条件下での加熱処理を採用する場合、銀インク組成物の加熱処理は、以下に示す二段階の方法で行うことが特に好ましい。すなわち、一段階目の加熱処理において、非加湿条件下で、上述のように金属銀の形成ではなく銀インク組成物の乾燥を主に行い、二段階目の加熱処理において、加湿条件下で、上述のように金属銀の形成を最後まで行うことにより、銀インク組成物の加熱処理を行うことが特に好ましい。
二段階目の加熱処理を加湿条件下で行う場合、一段階目の非加湿条件下での加熱処理時の加熱温度は、60~120℃であることが好ましく、70~110℃であってもよい。また、加熱時間は、5秒~1時間であることが好ましく、30秒~30分であることがより好ましく、30秒~15分であることが特に好ましい。
一段階目の非加湿条件下での加熱処理に次いで行う、二段階目の加湿条件下での加熱処理時の加熱温度は、60~140℃であることが好ましく、70~130℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、1分~2時間であることが好ましく、1分~1時間であることがより好ましく、1分~30分であることが特に好ましい。
銀インク組成物を耐熱性が低い目的物に付着させて加熱(焼成)処理する場合には、一段階目の非加湿条件下での加熱処理及び二段階目の加湿条件下での加熱処理における加熱温度は、いずれも130℃未満であることが好ましく、125℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが特に好ましい。
<他の層>
前記被覆層、中間層等の、前記他の層は、その種類に応じて、適した構成材料を含有していればよい。
前記他の層の厚さも、その種類に応じて、適したものとすればよく、特に限定されない。
前記他の層は、例えば、その構成材料を含有する組成物を用いて形成できる。
◎基材及び導電層の密着性
前記積層体は、JIS K 5600-5-6に準拠して、前記基材及び導電層の密着性試験を行ったとき、分類0を満たすものが好ましい。このように、基材及び導電層の密着性が高い積層体は、高い導電性を安定して維持できるため、優れた特性を有する。
前記積層体の好ましい一実施形態としては、例えば、前記基材が、ポリカーボネート製シートであるか、又は、ポリエチレンテレフタレート製シートの前記導電層側の面(すなわち、第1面)に対して、前記導電層との接着力を向上させるための処理(すなわち、前記易接着処理)が施されたシートであり、前記密着性試験を行ったとき、分類0を満たすものが挙げられる。
<<積層体の製造方法>>
本実施形態の積層体は、例えば、基材上に導電層を形成する工程(以下、「導電層形成工程」と略記することがある)を有する製造方法で製造できる。
図5は、図1に示す積層体1の製造方法を模式的に説明するための断面図である。
<導電層形成工程>
前記導電層形成工程においては、図5(a)に示す基材11を用い、図5(b)に示すように、この基材11上に導電層12を形成する。
導電層12は、前記導電層形成用組成物を、導電層の形成対象面である、基材11の第1面11aに付着させて組成物層を形成し、この組成物層(導電層形成用組成物層)に対して、乾燥処理や加熱(焼成)処理等の固化処理を適宜選択して行うことで形成できる。
導電層形成用組成物を目的物へ付着させる方法、前記固化処理の方法は、先に説明したとおりである。
ここでは、図1に示す積層体1を例に挙げて、その製造方法について説明したが、本実施形態の他の積層体も、その構造に応じて、同様の方法で製造できる。例えば、前記他の層を備えた積層体は、上述の製造方法において、前記他の層を形成する工程を、適したタイミングで、適した箇所に対して、適宜追加して行うことで、製造できる。
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
実施例又は比較例で用いた基材を表1に示す。
Figure 0007171229000006
[実施例1]
<積層体の製造>
導電層形成用組成物として、銀インク組成物(I)を用い、以下に示す手順により、積層体を製造した。
(銀インク組成物の製造)
ビーカー中に2-エチルヘキシルアミン(後述する2-メチルアセト酢酸銀に対して6.53倍モル量)と、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール(以下、「DMHO」と略記することがある)(後述する2-メチルアセト酢酸銀に対して0.10倍モル量)と、を加えて混合し、メカニカルスターラーを回転させて撹拌しながら、さらにここへ、液温が40℃以下となるように2-メチルアセト酢酸銀を添加して、各配合成分を溶解させ、室温でそのまま1日撹拌を続けた。
次いでこの撹拌液に、液温が30℃以下となるように、ネオデカン酸(2-メチルアセト酢酸銀に対して0.13倍モル量)を滴下して撹拌することにより、導電層形成用組成物として銀インク組成物(I)-1を得た。
なお、DMHOとしては、日信化学社製「サーフィノール61」を用い、ネオデカン酸としては、ジャパンケムテック社製「バーサティック10」を用いた。これは、以降の実施例及び比較例でも同様である。
各配合成分の種類と配合比を表2に示す。表2中、「含窒素化合物(モル比)」とは、有機銀化合物の配合量1モルあたりの含窒素化合物の配合量(モル数)([含窒素化合物のモル数]/[有機銀化合物のモル数])を意味する。「アルコール(モル比)」も同様に、有機銀化合物の配合量1モルあたりのアルコールの配合量(モル数)([アルコールのモル数]/[有機銀化合物のモル数])を意味する。「分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸(モル比)」も同様に、有機銀化合物の配合量1モルあたりの分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の配合量(モル数)([分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸のモル数]/[有機銀化合物のモル数])を意味する。
なお、本実施例において「有機銀化合物」とは、「β-ケトカルボン酸銀(1)」のことである。
(積層体の製造)
インクジェット装置(コニカミノルタ社製「EB100」、インクジェットヘッド「KM512MH」)と、上記で得られた銀インク組成物(I)-1と、を用いて、インクジェット式印刷法により、基材(S)-1の、帯電防止易接着処理が施されている一方の表面上に、ラインアンドスペースパターンを印刷した。
次いで、このパターンに対して、130℃の熱風を10分吹き付けることにより、このパターン(すなわち銀インク組成物)を加熱処理し、基材(S)-1上に、導電層として、パターニングされた銀層を形成した。
以上により、積層体を得た。
<積層体の評価>
(導電層の幅及び厚さの測定)
形状測定レーザマイクロスコープ(キーエンス社製「VK-X100」)を用いて、上記で得られた積層体を観察し、銀層の幅及び厚さを測定して、これらの平均値を求めた。結果を表3に示す。表1中の「導電層」の欄の「幅(μm)」、「厚さ(μm)」は、いずれもこの平均値である。以降の実施例及び比較例においても、導電層(銀層)の幅及び厚さは、いずれも平均値を意味する。この平均値については、先に説明したとおりである。
(導電層の体積抵抗率変化率の算出)
デジタルマルチメーター(ADC社製「ADCMT 7352A」)を用いて、上記で得られた積層体中の銀層の抵抗値を測定した。そして、この測定値と、先に求めた銀層の厚さ、幅、及び長さ(線長=2.5cm)から、先に説明した方法により、銀層の体積抵抗率(初期体積抵抗率)を算出した。結果を表3に示す。
さらに、この銀層の抵抗値を測定した後の積層体を、先に説明した方法によって、銀層が存在する領域において、180°の角度で折り曲げた。すなわち、このとき、折り曲げ後の積層体において、基材の第1面が内側を向き、基材の第2面が外側を向くように、換言すると、互いに離れていた銀層同士が密着するようにした。
次いで、この折り曲げた積層体を、折り曲げられていない元の状態に戻し、この折り曲げ後の積層体について、上記と同じ方法で、銀層の体積抵抗率(折り曲げ後体積抵抗率)を算出した。そして、これら初期体積抵抗率と折り曲げ後体積抵抗率とから、銀層の折り曲げ時の体積抵抗率変化率(%)を算出した。結果を表3に示す。
(基材及び導電層の密着性の評価)
180°の角度で折り曲げる前の前記積層体について、JIS K 5600-5-6に準拠して、基材及び銀層の密着性試験を行った。結果を表3に示す。
<積層体の製造及び評価>
[実施例2~31、比較例1]
インクジェット式印刷法による銀インク組成物の印刷条件を変更して、表3に示すように、銀層の幅及び厚さの少なくとも一方を変更した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表3に示す。
[実施例32]
<積層体の製造>
(銀インク組成物の製造)
実施例1の場合と同じ銀インク組成物を製造した。
(積層体の製造)
インクジェット装置(コニカミノルタ社製「EB100」、インクジェットヘッド「KM512MH」)と、上記で得られた銀インク組成物(I)-1と、を用いて、インクジェット式印刷法により、基材(S)-2の一方の表面上に、ラインアンドスペースパターンを印刷した。
次いで、このパターンに対して、130℃の熱風を10分吹き付けることにより、このパターン(すなわち銀インク組成物)を加熱処理し、基材(S)-2上に、導電層として、パターニングされた銀層を形成した。
以上により、積層体を得た。
<積層体の評価>
上記で得られた積層体について、実施例1の場合と同じ方法で評価した。結果を表4に示す。
<積層体の製造及び評価>
[実施例33~51、比較例2~14]
インクジェット式印刷法による銀インク組成物の印刷条件を変更して、表4に示すように、銀層の幅及び厚さの少なくとも一方を変更した点以外は、実施例32の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表4に示す。
[実施例52]
<積層体の製造>
(銀インク組成物の製造)
実施例1の場合と同じ銀インク組成物を製造した。
(積層体の製造)
インクジェット装置(コニカミノルタ社製「EB100」、インクジェットヘッド「KM512MH」)と、上記で得られた銀インク組成物(I)-1と、を用いて、インクジェット式印刷法により、基材(S)-3の一方の表面上に、ラインアンドスペースパターンを印刷した。
次いで、このパターンに対して、130℃の熱風を10分吹き付けることにより、このパターン(すなわち銀インク組成物)を加熱処理し、基材(S)-3上に、導電層として、パターニングされた銀層を形成した。
以上により、積層体を得た。
<積層体の評価>
上記で得られた積層体について、実施例1の場合と同じ方法で評価した。結果を表5に示す。
<積層体の製造及び評価>
[実施例53~57]
インクジェット式印刷法による銀インク組成物の印刷条件を変更して、表5に示すように、銀層の幅及び厚さを変更した点以外は、実施例52の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表5に示す。
[実施例58]
<積層体の製造>
(銀インク組成物の製造)
実施例1の場合と同じ銀インク組成物を製造した。
(積層体の製造)
インクジェット装置(コニカミノルタ社製「EB100」、インクジェットヘッド「KM512MH」)と、上記で得られた銀インク組成物(I)-1と、を用いて、インクジェット式印刷法により、基材(S)-4の、帯電防止易接着処理が施されている一方の表面上に、ラインアンドスペースパターンを印刷した。
次いで、このパターンに対して、130℃の熱風を10分吹き付けることにより、このパターン(すなわち銀インク組成物)を加熱処理し、基材(S)-4上に、導電層として、パターニングされた銀層を形成した。
以上により、積層体を得た。
<積層体の評価>
上記で得られた積層体について、実施例1の場合と同じ方法で評価した。結果を表5に示す。
<積層体の製造及び評価>
[実施例59~63]
インクジェット式印刷法による銀インク組成物の印刷条件を変更して、表5に示すように、銀層の幅及び厚さを変更した点以外は、実施例58の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表5に示す。
Figure 0007171229000007
Figure 0007171229000008
Figure 0007171229000009
Figure 0007171229000010
上記結果から明らかなように、基材の構成材料がポリエチレンテレフタレートである場合の、実施例1~31、58~63の積層体においては、銀層の体積抵抗率変化率が49%以下(2~49%)であり、これら積層体を折り曲げたときに、銀層の導電性の低下を十分に抑制できた。なお、これら実施例の積層体において、銀層の初期体積抵抗率は305μΩ・cm以下(37~305μΩ・cm)であった。
実施例1~31、58~63においては、銀層の幅が118~555μmであり、銀層の厚さが0.061~0.198μmであった。
これに対して、同じ基材を用いた場合の、比較例1の積層体においては、銀層の体積抵抗率変化率が53%であり、この積層体を折り曲げたときに、銀層の導電性の低下を抑制する効果が劣っていた。
比較例1においては、銀層の幅が408μmであり、銀層の厚さが0.206μmであって、銀層が厚かったために、積層体を折り曲げ後の、銀層の導電性の低下幅が大きかったと推測された。
基材の構成材料がポリカーボネートである場合の、実施例32~57の積層体においては、銀層の体積抵抗率変化率が50%以下(10~50%)であり、これら積層体を折り曲げたときに、銀層の導電性の低下を十分に抑制できた。なお、銀層の初期体積抵抗率は74μΩ・cm以下(16~74μΩ・cm)であった。
実施例32~57においては、銀層の幅が132~574μmであり、銀層の厚さが0.012~0.113μmであった。
これに対して、同じ基材を用いた場合の、比較例2~11、13及び14の積層体においては、銀層の体積抵抗率変化率が52%以上であり、これら積層体を折り曲げたときに、銀層の導電性の低下を抑制する効果が劣っていた。
比較例2~11及び14においては、銀層の幅が603μm以上であり、銀層の厚さが0.025~0.151μmであって、銀層の幅が広かったために、積層体を折り曲げ後の、銀層の導電性の低下幅が大きかったと推測された。
比較例13においては、銀層の幅が458μmであり、銀層の厚さが0.009μmであって、銀層が薄かったために、積層体を折り曲げ後の、銀層の導電性の低下幅が大きかったと推測された。
一方、比較例12の積層体においては、銀層の初期体積抵抗率が測定不能であり(表4中、「OL」と表示している)、銀層の体積抵抗率変化率を求めることができなかった(表4中、「-」と表示している)。比較例12においては、銀層の幅が304μmであり、銀層の厚さが0.007μmであって、銀層が薄かったために、銀層の初期体積抵抗率が極度に大きくなったと推測された。
実施例1~63全体を包括すると、これら実施例では、基材の構成材料が異なる積層体を含むが、銀層の体積抵抗率変化率は50%以下(2~50%)であった。そして、これら実施例では、銀層の幅は118~574μmであり、銀層の厚さは0.012~0.198μmであった。なお、これら実施例では、銀層の初期体積抵抗率は305μΩ・cm以下(16~305μΩ・cm)であった。
一方、比較例1~14全体を包括すると、これら比較例でも、基材の構成材料が異なる積層体を含み、銀層の体積抵抗率変化率は52%以上であった。そして、これら比較例では、銀層の幅が603μm未満であり、かつ、銀層の厚さが0.009μm超であり、かつ、銀層の厚さが0.206μm未満である積層体は、存在しなかった。
実施例1~63及び比較例1~14における、銀層の幅と厚さとの関係に関するデータを、すべてプロットして得られたグラフを、図6に示す。
基材及び導電層の密着性は、実施例1~63、比較例1~14のすべてにおいて、良好であった。
[比較例15]
<積層体の製造>
導電層形成用組成物として、金属銀粒子組成物を用い、以下に示す手順により、積層体を製造した。
スクリーン版(CAL500-18φ23μm B22.5°)と、銀ペースト(トーヨーケム社製「REXALPHA(登録商標) RA FS 059」)と、を用いて、スクリーン印刷法により、基材(S)-1の、帯電防止易接着処理が施されている一方の表面上に、ラインアンドスペースパターンを印刷した。このとき、乳剤厚を9μmとした。前記銀ペーストは、金属銀粒子とバインダー樹脂を含む。
次いで、このパターンを印刷後の基材(S)-1を、オーブン内において、100℃で10分加熱処理することにより、基材(S)-1上に、導電層として、パターニングされた銀層を形成した。
以上により、積層体を得た。
<積層体の評価>
上記で得られた積層体について、実施例1の場合と同じ方法で評価した。結果を表6に示す。
<積層体の製造及び評価>
[比較例16~38]
基材の種類と、スクリーン印刷法による銀ペーストの印刷条件と、のいずれか一方又は両方を変更した点以外は、比較例15の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。基材(S)-1又は基材(S)-9を用いた場合には、これら基材の表面処理が施されている側の表面上に、ラインアンドスペースパターンを印刷した。このときの、各比較例での銀層の幅及び厚さは、表6に示すとおりであった。結果を表6に示す。
Figure 0007171229000011
比較例15~32、36~38の積層体においては、基材の構成材料がいずれもポリエチレンテレフタレートであった。そして、上記結果から明らかなように、これら比較例においては、銀層の体積抵抗率変化率が73%以上であり、この積層体を折り曲げたときに、銀層の導電性の低下を抑制する効果が劣っていた。
比較例15~32、36~38においては、銀層の幅が110~520μmであり、銀層の厚さが5.89μm以上であって、銀層が厚過ぎたために、積層体を折り曲げ後の、銀層の導電性の低下幅が大きかったと推測された。
比較例15~32、36~38における、銀層の幅と厚さとの関係に関するデータをプロットして得られたグラフを、図7に示す。
比較例33~35の積層体においては、基材の構成材料がいずれもポリカーボネートであった。
そして、上記結果から明らかなように、比較例33、34においては、銀層の体積抵抗率変化率が669%以上であり、この積層体を折り曲げたときに、銀層の導電性の低下を抑制する効果が著しく劣っていた。
比較例33、34においては、銀層の幅が323~510μmであり、銀層の厚さが8.28μm以上であって、銀層が厚過ぎたために、積層体を折り曲げ後の、銀層の導電性の低下幅が大きかったと推測された。
一方、比較例35の積層体においては、銀層の折り曲げ後体積抵抗率が測定不能であり、銀層の体積抵抗率変化率を求めることができなかった(表6中、「-」と表示している)。比較例35においては、銀層の幅が109μmであり、銀層の厚さが6.83μmであって、銀層が厚過ぎたたけでなく、銀層の幅が比較的狭かったために、折り曲げ後の銀層の欠落量が多く、銀層の形状が過度に損なわれた結果、銀層の折り曲げ後体積抵抗率が極度に大きくなったと推測された。
比較例33~35における、銀層の幅と厚さとの関係に関するデータをプロットして得られたグラフを、図8に示す。
比較例15~38全体を包括すると、これら比較例では、基材の構成材料が異なる積層体を含み、銀層の体積抵抗率変化率は73%以上であった。そして、これら比較例では、銀層の厚さが5.89μm未満である積層体は、存在しなかった。
基材及び導電層の密着性は、比較例15~38のすべてにおいて、良好であった。
本発明は、回路基板をはじめとする各種配線板として利用可能である。
1,2,3・・・積層体、11,21・・・基材、11a,21a・・・基材の第1面、12・・・導電層、W12・・・導電層の幅、T12・・・導電層の厚さ

Claims (3)

  1. 基材と、前記基材上に設けられた導電層と、を備え、
    前記導電層の幅が5~590μmであり、前記導電層の厚さが0.01~0.2μmであり、
    前記導電層が、カルボン酸銀と、炭素数8~10の分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸と、が配合されてなる銀インク組成物を用いて形成された銀層であり、
    前記基材が、ポリカーボネート製シートであるか、又は、ポリエチレンテレフタレート製シートの前記導電層側の面に対して、前記導電層との接着力を向上させるための処理が施されたシートであり、
    前記処理が、前記ポリエチレンテレフタレート製シートの前記導電層側の面に対する酸処理、放射線照射処理、加熱処理、粗化処理、又は接着剤層の形成処理である、積層体。
  2. 前記基材が、前記ポリカーボネート製シートである場合には、前記導電層の幅が130~578μmであり、前記導電層の厚さが0.01~0.12μmであり、前記基材が、前記ポリエチレンテレフタレート製シートの前記導電層側の面に対して、前記導電層との接着力を向上させるための処理が施されたシートである場合には、前記導電層の幅が115~560μmであり、前記導電層の厚さが0.058~0.2μmである、請求項1に記載の積層体。
  3. JIS K 5600-5-6に準拠した、前記基材及び導電層の密着性試験において、分類0を満たす、請求項1又は2に記載の積層体。
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