JP7454772B2 - 積層体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、積層体及びその製造方法に関する。
基材と、前記基材の一方の面上に設けられた金属銀層と、を備えた積層体は、前記金属銀層の配置形態に応じて、種々の用途に利用できる。
例えば、金属銀層が線状である場合には、金属銀層を配線として機能させることができ、その場合の前記積層体は、配線基板として利用できる。
また、例えば、金属銀層の表面積が広目である場合には、金属銀層の表面を鏡面として利用できる。
また、例えば、金属銀層の全体形状が意匠性を有する場合には、前記積層体は、化粧板として利用できる。
なお、ここに挙げたものは、積層体の用途の一例であり、積層体の用途はこれらに限定されない。
このような積層体の製造方法は、これまでにいくつか開示されているが、インクジェット印刷法により、金属銀粒子を含むインクを基材上に吐出し、吐出後のインクを必要に応じて乾燥させた後、金属銀粒子を焼結することにより、金属銀層を基材上に形成して、積層体を得る方法が開示されている。この方法は、インクジェット印刷法を適用することで、簡便なプロセスによって、設計の自由度が高い金属銀層を形成できるため、他の方法よりも有用性が高い。
しかし、インクジェット印刷法を適用する場合には、吐出後のインクが基材上で滲むことがあるため、目的とする形状やサイズを高精度に実現した金属銀層を形成するためには、この滲みを抑制する必要がある。
このような滲みを抑制して、インクジェット印刷法により、金属銀層を基材上に形成する方法としては、撥液性を有する基材上に、濡れ性向上剤と金属銀粒子を含む金属インクを、インクジェット印刷法により吐出し、金属銀粒子を焼結することにより、滲みが抑制された金属銀の配線パターンを形成する方法が開示されている(特許文献1参照)。
また、基材上に絶縁層を形成し、前記絶縁層上にカップリング剤膜を形成し、前記カップリング剤膜上に、金属銀粒子を含む導電性インクを、インクジェット印刷法により吐出し、金属銀粒子を焼結することにより、滲みが抑制された金属銀の配線パターンを形成する方法が開示されている(特許文献2参照)。
また、撥液性を有する基材上に、中間層を形成し、前記中間層上に、金属銀粒子を含む液体材料を、インクジェット印刷法により吐出し、金属銀粒子を焼結することにより、滲みが抑制され、基材との密着性が高い金属銀の配線を形成する方法が開示されている(特許文献3参照)。
特開2019-96442号公報 特開2010-182776号公報 特許第4068883号公報
しかし、特許文献1で開示されている方法では、金属インクが、濡れ性向上剤を含んでいることによって、その保存安定性が低いという問題点があった。
特許文献2で開示されている方法では、基材上に絶縁層を形成し、さらに絶縁層上にカップリング剤膜を形成する必要があるため、積層体の製造方法が煩雑であるという問題点があった。
特許文献3で開示されている方法では、基材の撥液処理と、さらに中間層の形成が必要であるため、積層体の製造方法が煩雑であるという問題点があった。
本発明は、基材と、前記基材上に設けられた金属銀層と、を備えた積層体であって、金属銀層を形成可能で、濡れ性向上剤の配合が不要な銀インク組成物を、インクジェット印刷法によって、基材上に吐出する工程を有し、基材上での銀インク組成物の滲みを抑制でき、かつ簡便な方法で製造可能な、新規の積層体を提供することを課題とする。
本発明は、基材と、前記基材の一方の面上に設けられたシリコーン系樹脂層と、前記シリコーン系樹脂層の前記基材側とは反対側の面上に設けられた金属銀層と、を備えており、前記シリコーン系樹脂層の厚さが1nm以下である、積層体を提供する。
本発明の積層体においては、前記金属銀層が、幅が330μm以下の線状であることが好ましい。
また、本発明は、積層体の製造方法であって、前記積層体は、基材と、前記基材の一方の面上に設けられたシリコーン系樹脂層と、前記シリコーン系樹脂層の前記基材側とは反対側の面上に設けられた金属銀層と、を備えており、前記シリコーン系樹脂層の厚さが1nm以下であり、前記製造方法は、前記基材の一方の面上に、厚さが1nm以下である前記シリコーン系樹脂層を形成する工程と、前記シリコーン系樹脂層の前記基材側とは反対側の面上に、前記金属銀層を形成する工程と、を有し、前記金属銀層を形成する工程において、前記シリコーン系樹脂層の前記基材側とは反対側の面上に、インクジェット印刷法により、金属銀の形成材料が配合されてなる銀インク組成物を吐出し、固化させることにより、前記金属銀層を形成する、積層体の製造方法を提供する。
本発明の積層体の製造方法においては、前記シリコーン系樹脂層を形成する工程において、シリコーン系樹脂を含有する材料を、前記基材の一方の面上に接触させることにより、前記シリコーン系樹脂層を形成することが好ましい。
本発明によれば、基材と、前記基材上に設けられた金属銀層と、を備えた積層体であって、金属銀層を形成可能で、濡れ性向上剤の配合が不要な銀インク組成物を、インクジェット印刷法によって、基材上に吐出する工程を有し、基材上での銀インク組成物の滲みを抑制でき、かつ簡便な方法で製造可能な、新規の積層体が提供される。
本発明の一実施形態に係る積層体の一例を模式的に示す断面図である。 図1に示す積層体を、その上方から見下ろして平面視したときの、形態の一例を示す平面図である。 図1に示す積層体を、その上方から見下ろして平面視したときの、形態の他の例を示す平面図である。 本発明の一実施形態に係る積層体の製造方法の一例を模式的に説明するための断面図である。 実施例1において、シリコーン系樹脂層を形成した基材の、シリコーン系樹脂層側の表面を、TOF-SIMSにより分析したときに取得した、イオン強度の分布データである。 実施例34~38及び比較例18における、金属銀層の線幅(μm)と抵抗値(Ω/mm)の値を示すグラフである。 実施例39~43及び比較例19における、金属銀層の線幅(μm)と抵抗値(Ω/mm)の値を示すグラフである。 実施例44~49及び比較例20における、金属銀層の線幅(μm)と抵抗値(Ω/mm)の値を示すグラフである。 実施例50~55における、金属銀層の線幅(μm)と抵抗値(Ω/mm)の値を示すグラフである。
<<積層体>>
本発明の一実施形態に係る積層体は、基材と、前記基材の一方の面上に設けられたシリコーン系樹脂層と、前記シリコーン系樹脂層の前記基材側とは反対側の面上に設けられた金属銀層と、を備えており、前記シリコーン系樹脂層の厚さが1nm以下である。
本実施形態の積層体は、厚さが1nm以下である前記シリコーン系樹脂層を備えている点で、金属銀層を備えた従来の積層体とは相違する。また、本実施形態の積層体が、厚さが1nm以下である前記シリコーン系樹脂層を備えていることによって、前記金属銀層は、目的とする形状及びサイズを高精度に実現したものとなっている。これは、金属銀層を形成可能な銀インク組成物を、インクジェット印刷法によって、基材上に吐出する工程を経て、前記積層体を製造する過程において、基材上に前記シリコーン系樹脂層を形成することによって、基材上での前記銀インク組成物の滲みを抑制できるためである。このとき、前記銀インク組成物としては、濡れ性向上剤の配合が不要なものを使用できる。この製造方法によれば、基材の複数段階での前処理を必要としないなど、簡便な方法で前記積層体を製造できる。
以下、図面を参照しながら、本実施形態の積層体について、詳細に説明する。
なお、以降の説明で用いる図においては、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
まず、本実施形態の積層体の構造全般について説明する。
図1は、本実施形態の積層体の一例を模式的に示す断面図である。
ここに示す積層体1は、基材11と、基材11の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)11a上に設けられたシリコーン系樹脂層12と、シリコーン系樹脂層12の基材11側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)12a上に設けられた金属銀層13と、を備えて構成されている。すなわち、積層体1は、基材11、シリコーン系樹脂層12及び金属銀層13がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて、構成されている。
基材11は、例えば、フィルム状、シート状又はプレート状であってもよく、これら以外の他の形状であってもよい。
基材11は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。基材11が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
本明細書においては、基材の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよいし、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
基材11の厚さは、特に限定されないが、10~400μmであることが好ましく、50~360μmであることがより好ましく、100~320μmであることがさらに好ましい。基材11の厚さが前記下限値以上であることで、積層体1の構造をより安定して維持できる。基材11の厚さが前記上限値以下であることで、積層体1の厚さが過剰となることが避けられ、例えば、積層体1の取り扱い性がより高くなる。
基材11が複数層からなる場合には、各層の合計の厚さが、上記の好ましい基材11の厚さとなるようにするとよい。
シリコーン系樹脂層12の形状は、シリコーン系樹脂層12の厚さT12が1nm以下であれば、金属銀層13の形状に応じて、任意に選択できる。
シリコーン系樹脂層12の形状は、積層体1中のすべての金属銀層13が、シリコーン系樹脂層12上に設けられることを可能とする形状であることが好ましい。例えば、積層体1を、その金属銀層13側の上方から見下ろして平面視したときの、シリコーン系樹脂層12の平面形状(例えば、シリコーン系樹脂層12の第1面12aの形状)は、金属銀層13の平面形状の相似形であってもよいし、非相似形であってもよい。そして、シリコーン系樹脂層12は、基材11の第1面11aの全域に設けられていてもよい。
シリコーン系樹脂層12は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。シリコーン系樹脂層12が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
シリコーン系樹脂層12の厚さT12は、1nm以下であり、本発明の効果がより高くなる点では、0.1nm以上であることが好ましい。
すなわち、T12は、0.1~1nmであることが好ましい。
シリコーン系樹脂層12が複数層からなる場合には、各層の合計の厚さが、上記の好ましいシリコーン系樹脂層12の厚さとなるようにするとよい。
シリコーン系樹脂層12の厚さT12は、極めて薄いため、観測等により直接測定できないことがある。しかし、基材11上のシリコーン系樹脂層12の形成箇所を、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)により分析することで、厚さT12が1nm以下のシリコーン系樹脂層12の有無を確認できる。
TOF-SIMSでは、分析対象試料の表面から1nm以下の深さに存在する元素又は分子種に関する情報が得られる。したがって、基材11上の目的とする箇所を、TOF-SIMSにより分析したときに、シリコーン系樹脂層12の含有成分に由来するイオン種が検出されれば、基材11上にシリコーン系樹脂層12が存在することを確認できる。そして、このとき同時に、基材11の含有成分に由来するイオン種も検出されれば、シリコーン系樹脂層12の第1面12aから1nm以下の深さに基材11が存在することになり、シリコーン系樹脂層12の厚さは1nm以下であると断定できる。
金属銀層13の形状は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
金属銀層13は、シリコーン系樹脂層12上に設けられているために、目的とする形状及びサイズを高精度に実現したものとなっている。
図2は、図1に示す積層体1を、その金属銀層13側の上方から見下ろして平面視したときの、形態の一例を示す平面図である。
なお、図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図2において、金属銀層13は線状であり、ここに示す範囲では直線状である。
線状の金属銀層13は、後述するドット状の複数個の金属銀層を互いに重ねて(換言すると重複させて)配置することで、形成できる。
金属銀層13が線状である場合、その幅(線幅)W121は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されないが、330μm以下であることが好ましい。幅W121が330μm以下の線状である金属銀層13は、細線状であって、例えば、回路を構成する配線として好適である。
金属銀層13が線状である場合の、その幅(線幅)W121は、例えば、300μm以下、270μm以下、240μm以下、210μm以下、180μm以下、及び150μm以下のいずれかであってもよい。W121が狭い金属銀層13ほど、本発明の適用に好適である。
金属銀層13が線状である場合の、その幅(線幅)W121の下限値は、特に限定されない。例えば、金属銀層13の形成がより容易である点では、W121は50μm以上であることが好ましい。
金属銀層13が線状である場合の、その幅(線幅)W121は、上述の下限値と、いずれかの上限値と、を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、一実施形態において、W121は、50~330μm、50~300μm、50~270μm、50~240μm、50~210μm、50~180μm、及び50~150μm以下のいずれかであってもよい。ただし、これらは、W121の一例である。
図2において、線状の金属銀層13の数は、ここに示す範囲では1であるが、積層体1中の金属銀層13の数は、1であってもよいし、2以上であってもよく、目的に応じて任意に選択できる。
図2において、金属銀層13は直線状であるが、金属銀層13は曲線状であってもよいし、直線状の部分と曲線状の部分をともに有していてもよい。
図3は、図1に示す積層体1を、その金属銀層13側の上方から見下ろして平面視したときの、形態の他の例を示す平面図である。
図3において、金属銀層13はドット状である。
金属銀層13がドット状である場合、その最大径W122は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されないが、W121と同様であることが好ましい。最大径W122がこのような範囲であるドット状の金属銀層13は、例えば、文字、画像等の形成を高精度に行うのに好適である。
金属銀層13がドット状であり、積層体1を、その金属銀層13側の上方から見下ろして平面視したときの、金属銀層13の平面形状が円である場合には、金属銀層13の最大径W122は、前記円の直径である。一方、金属銀層13の前記平面形状が円以外である場合には、金属銀層13の最大径W122は、上記のように平面視したときの、金属銀層13の外周における任意の二点を結ぶ線分の長さの最大値である。
図3において、ドット状の金属銀層13の数は、ここに示す範囲では5であるが、積層体1中の金属銀層13の数は、1であってもよいし、2以上であってもよく、目的に応じて任意に選択できる。
図3において、金属銀層13はドット状であるが、非線状の金属銀層13は、他の形状であってもよい。
図3において、複数個のドット状の金属銀層13は、互いに接触せず、離間して配置されているが、複数個のドット状の金属銀層13が、互いに重なり合って(換言すると、少なくとも一部が重複して)配置されていてもよい。
積層体1中の金属銀層13の数が2以上である場合には、これら金属銀層13は、構成材料、形状又は大きさの点で、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
金属銀層13は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。金属銀層13が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
金属銀層13の厚さは、目的に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。
通常は、金属銀層13の厚さは、金属銀層13の形状によらず、200nm以下であることが好ましく、例えば、150nm以下、100nm以下、50nm以下、及び30nm以下のいずれかであってもよい。厚さが前記上限値以下である金属銀層13は、本発明の適用により好適である。
金属銀層13の厚さの下限値は、特に限定されない。例えば、金属銀層13の形成がより容易である点では、前記厚さは3nm以上であることが好ましい。
金属銀層13の厚さは、上述の下限値と、いずれかの上限値と、を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、一実施形態において、前記厚さは、3~200nm、3~150nm、3~100nm、3~50nm、及び3~30nmのいずれかであってもよい。ただし、これらは、前記厚さの一例である。
金属銀層13が複数層からなる場合には、各層の合計の厚さが、上記の好ましい金属銀層13の厚さとなるようにするとよい。
本実施形態の積層体は、図1~3に示すものに限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、図1~3に示すものにおいて、一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
例えば、図1~3に示す積層体1は、基材11、シリコーン系樹脂層12及び金属銀層13を備えて構成されているが、本実施形態の積層体は、これらのいずれにも該当しない1種又は2種以上の他の層を、1層又は2層以上備えていてもよい。
前記他の層の配置位置は、他の層の種類に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。
前記他の層としては、例えば、積層体の金属銀層側の露出面(基材、シリコーン系樹脂層又は金属銀層の露出面)を被覆する保護層;基材とシリコーン系樹脂層との間に配置され、これらの層の密着性を向上させる密着層;隣接する2層を接着するための接着層等が挙げられる。ただし、前記他の層はこれに限定されない。
ただし、本実施形態の積層体においては、シリコーン系樹脂層及び金属銀層が直接接触して設けられていることが好ましく、シリコーン系樹脂層及び金属銀層が直接接触して設けられ、かつ基材及びシリコーン系樹脂層が直接接触して設けられていることがより好ましい。
前記他の層は、その種類に応じて、適した構成材料を含有していればよい。
前記他の層の厚さも、その種類に応じて、適したものとすればよく、特に限定されない。
前記他の層は、例えば、その構成材料を含有する組成物を用いて形成できる。
ここまでは、本実施形態の積層体の構造全般について説明したが、次いで、前記積層体中の各層の詳細について、説明する。
<基材>
前記基材としては、例えば、樹脂製基材、ガラス製基材等が挙げられる。
前記樹脂製基材は、樹脂のみを含有する(樹脂からなる)か、又は樹脂を主要構成材料とする基材であり、例えば、基材において、基材の総質量に対する、樹脂の含有量の割合が、好ましくは80~100質量%、より好ましくは90~100質量%であるものが挙げられる。
前記ガラス製基材は、ガラスのみを含有する(ガラスからなる)か、又はガラスを主要構成材料とする基材であり、例えば、基材において、基材の総質量に対する、ガラスの含有量の割合が、好ましくは80~100質量%、より好ましくは90~100質量%であるものが挙げられる。
前記基材が前記樹脂を含有する場合、含有する前記樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
前記基材が、前記主要構成材料と、それ以外の他の成分と、を含有する場合、前記他の成分は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
前記他の成分としては、例えば、帯電防止剤、顔料等、当該分野で公知の各種添加剤が挙げられる。
前記基材が含有する前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
好ましい前記基材としては、例えば、ポリカーボネート(PC)製の基材、ポリエチレンテレフタレート(PET)製の基材、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)製の基材、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)の層とポリカーボネート(PC)の層とが積層された2層構造を有する基材、ガラス製の基材等が挙げられる。
ただし、基材が、ポリメタクリル酸メチルの層とポリカーボネートの層とが積層された2層構造を有する基材である場合には、この基材は、前記積層体中において、そのポリメタクリル酸メチルの層が前記シリコーン系樹脂層側に配置されていることが好ましい。
前記2層構造を有する基材において、ポリメタクリル酸メチルの層の厚さは、ポリカーボネートの層の厚さに対して、例えば、0.1~20%、及び1~14%のいずれかであってもよい。
ポリエチレンテレフタレート製の基材は、これに隣接する層(例えば、シリコーン系樹脂層)との接着力を向上させるための表面処理(本明細書においては、「易接着処理」と称することがある)が施されていてもよい。
基材の表面処理(易接着処理)としては、例えば、メタクリル酸メチル若しくはその誘導体、又は、アクリル酸エチル若しくはその誘導体等の表面処理剤による処理が挙げられる。ただし、これらは、表面処理の一例である。
本明細書においては、ある特定の化合物において、1個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換された構造が想定される場合、このような置換された構造を有する化合物を、上述の特定の化合物の「誘導体」と称する。
本明細書において、「基」とは、特に断りのない限り、複数個の原子が結合して構成された原子団だけでなく、1個の原子も包含するものとする。
基材が前記2層構造を有する基材以外である場合には、この基材は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。
基材は、透明及び不透明のいずれであってもよいし、有色及び無色のいずれであってもよい。
基材は、公知の方法で製造できる。例えば、樹脂を含有する基材は、その樹脂等の構成材料を含有する樹脂組成物を成形することで製造できる。表面処理された基材は、例えば、基材とするための未処理の基材の表面を、表面処理剤で処理することで製造できる。複数層からなる基材は、例えば、各層を構成するフィルム又はシートをラミネートすることで、又は、各層を構成するための樹脂組成物を共押出成形することで、製造できる。
基材としては、市販品を用いてもよい。
<シリコーン系樹脂層>
前記シリコーン系樹脂層は、シリコーン系樹脂を含有する。
本明細書において、「シリコーン系樹脂」とは、シロキサン結合を有する樹脂を意味し、オリゴマー又はポリマーである。
シリコーン系樹脂は、鎖状及び環状のいずれであってもよい。鎖状のシリコーン系樹脂とは、シロキサン結合が鎖状構造のみを構成し、環状構造を構成していない樹脂である。環状のシリコーン系樹脂とは、シロキサン結合が環状構造を構成している樹脂であり、シロキサン結合は、別途、鎖状構造を構成していてもよいし、構成していなくてもよい。
シリコーン系樹脂としては、例えば、ポリジメチルシロキサン等のポリジアルキルシロキサン;ポリジアリールシロキサン;ポリアルキルアリールシロキサン等が挙げられる。
シリコーン系樹脂層が含有するシリコーン系樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
シリコーン系樹脂層は、シリコーン系樹脂のみを含有していてもよい(シリコーン系樹脂からなるものであってもよい)し、シリコーン系樹脂と、それ以外の他の成分と、を含有していてもよい(シリコーン系樹脂と、それ以外の他の成分と、からなるものであってもよい)。
シリコーン系樹脂層が含有する前記他の成分は、特に限定されない。
前記他の成分としては、例えば、帯電防止剤等、当該分野で公知の各種添加剤が挙げられる。
シリコーン系樹脂層が含有する前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
シリコーン系樹脂層において、シリコーン系樹脂層の総質量に対する、シリコーン系樹脂の含有量の割合は、70~100質量%であることが好ましく、80~100質量%であることがより好ましく、90~100質量%であることがさらに好ましく、例えば、95~100質量%、97~100質量%、及び99~100質量%のいずれかであってもよい。
シリコーン系樹脂層は、例えば、シリコーン系樹脂を含有する材料を、シリコーン系樹脂層の形成対象面(例えば、基材の第1面)に接触させることにより、形成できる。
また、シリコーン系樹脂層は、例えば、シリコーン系樹脂又はその誘導体を含有する溶液を、シリコーン系樹脂層の形成対象面(例えば、基材の第1面)に滴下し、乾燥させることでも、形成できる。前記シリコーン系樹脂の誘導体としては、例えば、シリコーン系樹脂として、前記形成対象面に存在する基と結合可能な基を有するものが挙げられる。前記シリコーン系樹脂の誘導体中の前記結合可能な基が、前記形成対象面に存在する基と反応し、結合を形成することで、シリコーン系樹脂層が形成される。
<金属銀層>
前記金属銀層は、金属銀を主要構成材料とする。
前記金属銀層において、金属銀層の総質量に対する、金属銀の質量の割合は、好ましくは97質量%以上、より好ましくは98質量%以上、特に好ましくは99質量%以上である。前記割合の上限値は、例えば、100質量%、99.9質量%、99.8質量%、99.7質量%、99.6質量%、99.5質量%、99.4質量%、99.3質量%、99.2質量%及び99.1質量%のいずれかであってもよいが、これらに限定されない。
金属銀層は、目的とする形状及びサイズを高精度に実現したものとなっている。
例えば、前記シリコーン系樹脂層を形成しなかった点以外は、本実施形態の積層体の場合と同じ方法で製造した、前記シリコーン系樹脂層を備えていない比較用積層体と、本実施形態の積層体と、を用いて、これら積層体中の金属銀層同士の特性を比較することによって、本実施形態の積層体が奏する効果を確認できる。
本明細書においては、比較用積層体中の金属銀層を「比較用金属銀層」と称することがある。また、線状である比較用金属銀層の線幅を「基準線幅」と称することがある。また、ドット状である比較用金属銀層の最大径を「基準最大径」と称することがある。また、線状である比較用金属銀層の抵抗値(Ω/mm)を「基準抵抗値(Ω/mm)」と称することがある。
本実施形態における金属銀層及び比較用金属銀層が線状である場合、本実施形態における金属銀層が、目的とする形状及びサイズを高精度に実現していることは、下記式(i)で算出される線幅比率が小さいことによって、確認できる。
[線幅比率(%)]=[本実施形態の積層体中の金属銀層の線幅]/[基準線幅]×100 (i)
本実施形態において、前記線幅比率は、好ましくは80%以下、より好ましくは75%以下であり、例えば、70%以下、60%以下、50%以下、及び40%以下のいずれかであってもよい。
前記線幅比率の下限値は特に限定されない。例えば、前記線幅比率が30%以上である金属銀層は、より容易に形成できる。
前記線幅比率は、上述の下限値と、いずれかの上限値と、を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜設定できる。例えば、一実施形態において、前記線幅比率は、好ましくは30~80%、より好ましくは30~75%であり、例えば、30~70%、30~60%、30~50%、及び30~40%のいずれかであってもよい。ただし、これらは、前記線幅比率の一例である。
本実施形態における金属銀層及び比較用金属銀層がドット状である場合、本実施形態における金属銀層が、目的とする形状及びサイズを高精度に実現していることは、下記式(i’)で算出される最大径比率が小さいことによって、確認できる。
[最大径比率(%)]=[本実施形態の積層体中の金属銀層の最大径]/[基準最大径]×100 (i’)
本実施形態において、前記最大径比率は、好ましくは80%以下、より好ましくは75%以下であり、例えば、70%以下、60%以下、50%以下、及び40%以下のいずれかであってもよい。
前記最大径比率の下限値は特に限定されない。例えば、前記最大径比率が30%以上である金属銀層は、より容易に形成できる。
前記最大径比率は、上述の下限値と、いずれかの上限値と、を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜設定できる。例えば、一実施形態において、前記最大径比率は、好ましくは30~80%、より好ましくは30~75%であり、例えば、30~70%、30~60%、30~50%、及び30~40%のいずれかであってもよい。ただし、これらは、前記最大径比率の一例である。
本実施形態における金属銀層及び比較用金属銀層が線状である場合、本実施形態における金属銀層が、目的とする形状及びサイズを高精度に実現していることは、下記式(ii)で算出される抵抗値比率によって、確認できる。
[抵抗値比率(%)]=[本実施形態の積層体中の金属銀層の抵抗値(Ω/mm)]/[基準抵抗値(Ω/mm)]×100 (ii)
本実施形態において、前記抵抗値比率は、好ましくは90%以下であり、例えば、75%以下、60%以下、45%以下、30%以下、及び15%以下のいずれかであってもよい。
前記抵抗値比率の下限値は特に限定されない。例えば、前記抵抗値比率が0.5%以上である金属銀層は、より容易に形成できる。
前記抵抗値比率は、上述の下限値と、いずれかの上限値と、を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜設定できる。例えば、一実施形態において、前記抵抗値比率は、好ましくは0.5~90%であり、例えば、0.5~75%、0.5~60%、0.5~45%、0.5~30%、及び0.5~15%のいずれかであってもよい。ただし、これらは、前記抵抗値比率の一例である。
本実施形態において、金属銀層の体積抵抗率は、310μΩ・cm以下であることが好ましく、例えば、200μΩ・cm以下、150μΩ・cm以下、100μΩ・cm以下、及び50μΩ・cm以下のいずれかであってもよい。体積抵抗率が前記上限値以下である金属銀層は、金属としての特性がより高い。
金属銀層の体積抵抗率の下限値は、特に限定されない。例えば、金属銀層の形成がより容易である点では、前記体積抵抗率は3μΩ・cm以上であることが好ましい。
金属銀層の体積抵抗率は、上述の下限値と、いずれかの上限値と、を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、一実施形態において、前記体積抵抗率は、3~310μΩ・cm、3~200μΩ・cm、3~150μΩ・cm、3~100μΩ・cm、及び3~50μΩ・cmのいずれかであってもよい。ただし、これらは、前記体積抵抗率の一例である。
金属銀層の体積抵抗率は、公知の方法で測定できる。例えば、金属銀層の抵抗値(Ω)、幅、厚さ、長さ等を測定し、これら測定値を用いて、下記式により、金属銀層の体積抵抗率を算出できる。
[金属銀層の体積抵抗率]=[金属銀層の抵抗値]×[金属銀層の断面積]/[金属銀層の長さ]=[金属銀層の抵抗値]×[金属銀層の幅]×[金属銀層の厚さ]/[金属銀層の長さ]=[金属銀層の単位長さあたりの抵抗値]×[金属銀層の幅]×[金属銀層の厚さ]
本実施形態における金属銀層が線状である場合、その線幅は、80~350μmであることが好ましく、100~330μmであることがより好ましい。
本実施形態における金属銀層がドット状である場合、その最大径は、80~350μmであることが好ましく、100~330μmであることがより好ましい。
本実施形態における金属銀層が線状である場合、その抵抗値は、5~500Ω/mmであることが好ましく、10~430Ω/mmであることがより好ましい。
金属銀層は、例えば、金属銀の形成材料が配合されてなる銀インク組成物を用いて形成できる。
前記金属銀の形成材料及び前記銀インク組成物については、別途、詳細に説明する。
<<積層体の製造方法>>
本発明の一実施形態に係る積層体の製造方法は、基材と、前記基材の一方の面(第1面)上に設けられたシリコーン系樹脂層と、前記シリコーン系樹脂層の前記基材側とは反対側の面(第1面)上に設けられた金属銀層と、を備え、前記シリコーン系樹脂層の厚さが1nm以下である積層体の製造方法であって、前記製造方法は、前記基材の一方の面(第1面)上に、厚さが1nm以下である前記シリコーン系樹脂層を形成する工程(本明細書においては、「シリコーン系樹脂層形成工程」と略記することがある)と、前記シリコーン系樹脂層の前記基材側とは反対側の面(第1面)上に、前記金属銀層を形成する工程(本明細書においては、「金属銀層形成工程」と略記することがある)と、を有し、前記金属銀層を形成する工程において、前記シリコーン系樹脂層の前記基材側とは反対側の面(第1面)上に、インクジェット印刷法により、金属銀の形成材料が配合されてなる銀インク組成物を吐出し、固化させることにより、前記金属銀層を形成する。
本実施形態の製造方法により、上述の本発明の一実施形態に係る積層体を製造できる。
以下、図1に示す積層体1を例に挙げて、前記積層体の製造方法について説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る積層体の製造方法の一例を模式的に説明するための断面図であり、断面の位置は、図1の場合と同じである。
<シリコーン系樹脂層形成工程>
前記シリコーン系樹脂層形成工程においては、図4(a)~(b)に示すように、基材11の一方の面(第1面)11a上に、厚さT12が1nm以下であるシリコーン系樹脂層12を形成する。
シリコーン系樹脂層12は、例えば、シリコーン系樹脂を含有する材料を、基材11の第1面11a上に接触させることにより、前記シリコーン系樹脂層を形成する。このようにすることで、前記材料中のシリコーン系樹脂が、基材11の第1面11aに転写されることで、シリコーン系樹脂層12が形成されると考えられる。
シリコーン系樹脂層形成工程においては、例えば、シリコーン系樹脂層の形成手段として、シリコーン系樹脂を含有するロールを用い、そのロール面を基材11の第1面11a上に接触させ、前記ロールを基材11の第1面11a上で転がすことによって、基材11の第1面11a上にシリコーン系樹脂層12を形成できる。この場合、シリコーン系樹脂を含有する材料は、前記ロールの構成材料である。このような方法は、厚さT12が薄いシリコーン系樹脂層12を形成する方法として、特に好適である。
シリコーン系樹脂層の形成手段として、前記ロールを用いる場合には、そのロール面をクリーニングしてから用いることが好ましい。このようにすることで、シリコーン系樹脂層12を、より効率的に形成できる。
ロール面のクリーニングとは、ロール面に付着している、ロールの構成材料以外の材料からなる不純物を取り除くことを意味する。
前記ロールを用いる場合、前記ロールを基材11の第1面11a上で転がすときの速度(換言すると移動速度)は、特に限定されないが、5~45cm/sであることが好ましく、例えば、5~36cm/sであってもよい。
前記ロールを用いる場合、前記ロールを基材11の第1面11a上で転がすときに、前記ロールによって基材11に加える圧力は、特に限定されないが、0.005~1MPaであることが好ましく、0.01~0.8MPaであることがより好ましい。
例えば、実施例で後述するように、手動で前記ロールを基材11の第1面11a上で転がす場合には、前記ロールによって基材11に加える圧力は、0.005~0.1MPa、及び0.01~0.05MPaのいずれかであってもよい。
例えば、実施例で後述するように、自動で前記ロールを基材11の第1面11a上で転がす場合には、前記ロールによって基材11に加える圧力は、0.1~1MPa、及び0.2~0.8MPaのいずれかであってもよい。
シリコーン系樹脂層形成工程においては、例えば、シリコーン系樹脂又はその誘導体を含有する溶液を、基材11の第1面11aに滴下し、乾燥させることでも、基材11の第1面11a上にシリコーン系樹脂層12を形成できる。この場合、シリコーン系樹脂自体が、又はシリコーン系樹脂の誘導体が、基材11の第1面11a上で、自己組織化によって単分子膜を形成することで、シリコーン系樹脂層12を形成する。このような方法も、厚さT12が薄いシリコーン系樹脂層12を形成する方法として、特に好適である。
<金属銀層形成工程>
前記金属銀層形成工程においては、図4(d)に示すように、シリコーン系樹脂層12の基材11側とは反対側の面(第1面)12a上に、金属銀層13を形成する。
このとき、図4(c)に示すように、シリコーン系樹脂層12の第1面12a上に、インクジェット印刷法により、金属銀の形成材料が配合されてなる銀インク組成物を吐出し、印刷層13’を形成して、印刷層13’(銀インク組成物)を固化させることにより、金属銀層13を形成する。
以上により、目的とする積層体1が得られる。
金属銀層形成工程においては、銀インク組成物が、濡れ性向上剤が未配合のものであっても、シリコーン系樹脂層12上で、吐出された銀インク組成物(印刷層13’)の滲みが抑制される。これにより、金属銀層13は、目的とする形状及びサイズを高精度に実現したものとなる。その結果発現する金属銀層の特性(線幅、抵抗値、厚さ、体積抵抗率等)は、先に説明したとおりである。
インクジェット印刷時の印刷条件は、適宜調節できる。
インクジェット印刷時の銀インク組成物の吐出量及び吐出回数、並びに銀インク組成物における金属銀の形成材料の配合量を調節することで、金属銀層の線幅及び厚さを調節できる。
例えば、銀インク組成物の液滴量(換言すると、1回の吐出での吐出量)は、4~42pLであることが好ましい。
印刷層13’(銀インク組成物)の固化は、例えば、乾燥により行うことができる。
印刷層13’(銀インク組成物)の乾燥(固化)処理については、後ほど詳細に説明する。
図1に示す積層体1以外の前記積層体も、その構成に応じて、上述と同様の方法で製造できる。積層体1以外の前記積層体は、積層体1との構成の相違に基づいて、必要に応じて、前記シリコーン系樹脂層形成工程と、前記金属銀層形成工程と、のいずれにも該当しない他の工程をさらに有する上述の製造方法によって、製造してもよい。前記他の工程は、目的とする前記積層体の構成を考慮して、適したタイミングで、適した箇所に対して、上述の製造方法に適宜追加して行うことができる。
前記他の工程としては、例えば、先に説明した他の層を設ける工程が挙げられる。
次に、前記銀インク組成物について詳細に説明する。
◎銀インク組成物
前記銀インク組成物は、金属銀の形成材料が配合されてなる。
前記金属銀の形成材料は、加熱等によって分解し、金属銀を形成する材料である。
前記金属銀の形成材料としては、例えば、下記一般式(1):
Figure 0007454772000001
(式中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R-CY -」、「CY -」、「R-CHY-」、「RO-」、「RN-」、「(RO)CY-」若しくは「R-C(=O)-CY -」で表される基であり;
はそれぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子であり;Rは炭素数1~19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であり;Rは炭素数1~20の脂肪族炭化水素基であり;Rは炭素数1~16の脂肪族炭化水素基であり;R及びRはそれぞれ独立に炭素数1~18の脂肪族炭化水素基であり;Rは炭素数1~19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO-」で表される基であり;
はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基、シアノ基、N-フタロイル-3-アミノプロピル基、2-エトキシビニル基、又は一般式「RO-」、「RS-」、「R-C(=O)-」若しくは「R-C(=O)-O-」で表される基であり;
は、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、チエニル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基である。)
で表わされるβ-ケトカルボン酸銀(本明細書においては、「β-ケトカルボン酸銀(1)」と略記することがある)、及び有機銀錯体等が挙げられる。
好ましい前記銀インク組成物としては、例えば、β-ケトカルボン酸銀(1)と、炭素数8~10の分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸と、が配合されてなる銀インク組成物(本明細書においては、「銀インク組成物(I)」と称することがある);β-ケトカルボン酸銀(1)が配合されてなり、炭素数8~10の分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸が配合されていない銀インク組成物(本明細書においては、「銀インク組成物(II)」と称することがある);有機銀錯体と、炭素数8~10の分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸と、含窒素化合物と、が配合されてなる銀インク組成物(本明細書においては、「銀インク組成物(III)」と称することがある)等が挙げられる。
以下、各銀インク組成物について、詳細に説明する。
〇銀インク組成物(I)
[β-ケトカルボン酸銀(1)]
β-ケトカルボン酸銀(1)は、前記一般式(1)で表わされる。
一般式(1)中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R-CY -」、「CY -」、「R-CHY-」、「RO-」、「RN-」、「(RO)CY-」若しくは「R-C(=O)-CY -」で表される基である。
Rにおける炭素数1~20の脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状(脂肪族環式基)のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。また、前記脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基及び不飽和脂肪族炭化水素基のいずれでもよい。そして、前記脂肪族炭化水素基は、炭素数が1~10であることが好ましく、1~6であることがより好ましい。Rにおける好ましい前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。
Rにおける直鎖状又は分岐鎖状の前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、3-エチルブチル基、1-エチル-1-メチルプロピル基、n-ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、1,1-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、4,4-ジメチルペンチル基、1-エチルペンチル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、4-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、1-プロピルブチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、5-メチルヘプチル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、5-エチルヘキシル基、1,1-ジメチルヘキシル基、2,2-ジメチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、4,4-ジメチルヘキシル基、5,5-ジメチルヘキシル基、1,2,3-トリメチルペンチル基、1,2,4-トリメチルペンチル基、2,3,4-トリメチルペンチル基、2,4,4-トリメチルペンチル基、1,4,4-トリメチルペンチル基、3,4,4-トリメチルペンチル基、1,1,2-トリメチルペンチル基、1,1,3-トリメチルペンチル基、1,1,4-トリメチルペンチル基、1,2,2-トリメチルペンチル基、2,2,3-トリメチルペンチル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、1,3,3-トリメチルペンチル基、2,3,3-トリメチルペンチル基、3,3,4-トリメチルペンチル基、1-プロピルペンチル基、2-プロピルペンチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。
Rにおける環状の前記アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、トリシクロデシル基等が挙げられる。
Rにおける前記アルケニル基としては、例えば、Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の1個の単結合(C-C)が二重結合(C=C)に置換された基等が挙げられる。
このような前記アルケニル基としては、例えば、ビニル基(エテニル基、-CH=CH)、アリル基(2-プロペニル基、-CH-CH=CH)、1-プロペニル基(-CH=CH-CH)、イソプロペニル基(-C(CH)=CH)、1-ブテニル基(-CH=CH-CH-CH)、2-ブテニル基(-CH-CH=CH-CH)、3-ブテニル基(-CH-CH-CH=CH)、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル基等が挙げられる。
Rにおける前記アルキニル基としては、例えば、Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の1個の単結合(C-C)が三重結合(C≡C)に置換された基等が挙げられる。
このような前記アルキニル基としては、例えば、エチニル基(-C≡CH)、プロパルギル基(-CH-C≡CH)等が挙げられる。
Rにおける炭素数1~20の脂肪族炭化水素基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい。好ましい前記置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。また、前記脂肪族炭化水素基において、前記置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、すべての置換基が同一であってもよいし、すべての置換基が異なっていてもよく、一部の置換基のみが異なっていてもよい。
Rにおけるフェニル基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい。好ましい前記置換基としては、例えば、炭素数が1~16の飽和又は不飽和の一価の脂肪族炭化水素基、前記脂肪族炭化水素基が酸素原子に結合してなる一価の基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基(-OH)、シアノ基(-C≡N)、フェノキシ基(-O-C)等が挙げられる。置換基を有する前記フェニル基において、前記置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
置換基である前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1~16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるYは、それぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子である。そして、一般式「R-CY -」、「CY -」及び「R-C(=O)-CY -」においては、それぞれ複数個のYは、互いに同一でも異なっていてもよい。
RにおけるRは、炭素数1~19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基(C-)である。Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1~19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるRは、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基であり、例えば、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるRは、炭素数1~16の脂肪族炭化水素基である。Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1~16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるR及びRは、それぞれ独立に炭素数1~18の脂肪族炭化水素基である。すなわち、R及びRは、互いに同一でも異なっていてもよく、R及びRにおける前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1~18である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるRは、炭素数1~19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO-」で表される基である。Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1~19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
Rは、上記の中でも、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、一般式「R-C(=O)-CY -」で表される基、水酸基又はフェニル基であることが好ましい。そして、Rは、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、水酸基又は式「AgO-」で表される基であることが好ましい。
一般式(1)において、Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基(C-CH-)、シアノ基、N-フタロイル-3-アミノプロピル基、2-エトキシビニル基(C-O-CH=CH-)、又は一般式「RO-」、「RS-」、「R-C(=O)-」若しくは「R-C(=O)-O-」で表される基である。
における炭素数1~20の脂肪族炭化水素基としては、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
におけるフェニル基及びベンジル基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい。好ましい前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ニトロ基(-NO)等が挙げられる。置換基を有する前記フェニル基及びベンジル基において、前記置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
におけるRは、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、チエニル基(CS-)、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基(ビフェニル基、C-C-)である。Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1~10である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。また、Rにおけるフェニル基及びジフェニル基が有する前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等が挙げられる。置換基を有する前記フェニル基及びジフェニル基において、前記置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
がチエニル基又はジフェニル基である場合、これらの、Xにおいて隣接する基又は原子(酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基)との結合位置は、特に限定されない。例えば、チエニル基は、2-チエニル基及び3-チエニル基のいずれでもよい。
一般式(1)において、2個のXは、2個のカルボニル基で挟まれた炭素原子と二重結合を介して1個の基として結合していてもよい。このようなXとしては、例えば、式「=CH-C-NO」で表される基等が挙げられる。
は、上記の中でも、水素原子、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、ベンジル基、又は一般式「R-C(=O)-」で表される基であることが好ましく、少なくとも一方のXが水素原子であることが好ましい。
β-ケトカルボン酸銀(1)は、2-メチルアセト酢酸銀(CH-C(=O)-CH(CH)-C(=O)-OAg)、アセト酢酸銀(CH-C(=O)-CH-C(=O)-OAg)、2-エチルアセト酢酸銀(CH-C(=O)-CH(CHCH)-C(=O)-OAg)、プロピオニル酢酸銀(CHCH-C(=O)-CH-C(=O)-OAg)、イソブチリル酢酸銀((CHCH-C(=O)-CH-C(=O)-OAg)、ピバロイル酢酸銀((CHC-C(=O)-CH-C(=O)-OAg)、カプロイル酢酸銀(CH(CHCH-C(=O)-CH-C(=O)-OAg)、2-n-ブチルアセト酢酸銀(CH-C(=O)-CH(CHCHCHCH)-C(=O)-OAg)、2-ベンジルアセト酢酸銀(CH-C(=O)-CH(CH)-C(=O)-OAg)、ベンゾイル酢酸銀(C-C(=O)-CH-C(=O)-OAg)、ピバロイルアセト酢酸銀((CHC-C(=O)-CH-C(=O)-CH-C(=O)-OAg)、イソブチリルアセト酢酸銀((CHCH-C(=O)-CH-C(=O)-CH-C(=O)-OAg)、2-アセチルピバロイル酢酸銀((CHC-C(=O)-CH(-C(=O)-CH)-C(=O)-OAg)、2-アセチルイソブチリル酢酸銀((CHCH-C(=O)-CH(-C(=O)-CH)-C(=O)-OAg)、又はアセトンジカルボン酸銀(AgO-C(=O)-CH-C(=O)-CH-C(=O)-OAg)であることが好ましい。
β-ケトカルボン酸銀(1)を用いて、銀インク組成物(I)の乾燥処理や加熱(焼成)処理等の固化処理により形成された導電体(金属銀)においては、残存する原料や不純物の濃度をより低減できる。このような導電体においては、原料や不純物が少ない程、例えば、形成された金属銀同士の接触が良好となり、導通が容易となり、抵抗率が低下する。
β-ケトカルボン酸銀(1)は、後述するように、当該分野で公知の還元剤等を使用しなくても、好ましくは60~210℃、より好ましくは60~200℃という低温で分解し、金属銀を形成できる。そして、β-ケトカルボン酸銀(1)は、還元剤と併用することで、より低温で分解して金属銀を形成する。
本実施形態において、β-ケトカルボン酸銀(1)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
β-ケトカルボン酸銀(1)は、2-メチルアセト酢酸銀、アセト酢酸銀、2-エチルアセト酢酸銀、プロピオニル酢酸銀、イソブチリル酢酸銀、ピバロイル酢酸銀、カプロイル酢酸銀、2-n-ブチルアセト酢酸銀、2-ベンジルアセト酢酸銀、ベンゾイル酢酸銀、ピバロイルアセト酢酸銀、イソブチリルアセト酢酸銀、アセトンジカルボン酸銀、ピルビン酸銀、酢酸銀、酪酸銀、イソ酪酸銀、2-エチルへキサン酸銀、ネオデカン酸銀、シュウ酸銀及びマロン酸銀からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
そして、これらの中でも、2-メチルアセト酢酸銀、アセト酢酸銀、イソブチリル酢酸銀及びピバロイル酢酸銀は、後述する含窒素化合物(なかでもアミン化合物)との相溶性に優れ、銀インク組成物(I)の高濃度化に、特に適したものとして挙げられる。
銀インク組成物(I)の総質量に対する、銀インク組成物(I)中のβ-ケトカルボン酸銀(1)に由来する銀の合計質量の割合(換言すると、銀インク組成物(I)の、β-ケトカルボン酸銀(1)に由来する銀の含有量)は、5質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、形成された導電体(金属銀)は、より優れた品質となる。前記割合の上限値は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、銀インク組成物(I)の取り扱い性等を考慮すると、25質量%であることが好ましい。
なお、本明細書において、「β-ケトカルボン酸銀(1)に由来する銀」とは、特に断りの無い限り、銀インク組成物(I)の製造時に配合されたβ-ケトカルボン酸銀(1)中の銀と同義であり、配合後も引き続きβ-ケトカルボン酸銀(1)を構成している銀と、配合後にβ-ケトカルボン酸銀(1)の分解で生じた分解物中の銀と、配合後にβ-ケトカルボン酸銀(1)の分解で生じた銀そのもの(金属銀)と、のすべてを含む概念とする。
[炭素数8~10の分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸]
銀インク組成物(I)は、前記分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸(本明細書においては、「分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸」と略記することがある)が配合されていることで、光沢性と導電性がより高い金属銀を形成できる。
前記分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸は、炭素数8~10の分岐鎖状飽和脂肪族炭化水素の1個又は2個以上の水素原子が、カルボキシ基で置換された構造を有する。換言すると、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸は、1分子中の炭素数が8~10で、かつ、1個又は2個以上のカルボキシ基が分岐鎖状飽和脂肪族炭化水素基に結合している化合物である。
分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸は、1分子中にカルボキシ基を1個のみ有する一価(モノ)カルボン酸、及び1分子中にカルボキシ基を2個以上有する多価カルボン酸、のいずれであってもよい。
分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸が1分子中に有するカルボキシ基の数は、1~3個であることが好ましく、1個又は2個であることがより好ましく、1個であることが特に好ましい。
分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸において、カルボキシ基が結合している炭素原子の位置は、特に限定されない。例えば、カルボキシ基が結合している炭素原子は、分子の末端の炭素原子であってもよいし、分子の末端以外の炭素原子であってもよい。
分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸が多価カルボン酸である場合、すべてのカルボキシ基が、互いに異なる炭素原子に結合していてもよいし、2個又は3個のカルボキシ基が、同一の炭素原子に結合していてもよい。
分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸において、分岐鎖が結合している、主鎖中の炭素原子の位置は、特に限定されない。例えば、分岐鎖が結合している前記炭素原子は、主鎖のカルボキシ基が結合している側の末端の炭素原子であってもよいし、主鎖のカルボキシ基が結合している側とは反対側の末端の炭素原子に隣接する炭素原子(前記反対側の末端から2番目の炭素原子)であってもよいし、上述のカルボキシ基が結合している側の末端の炭素原子と、上述のカルボキシ基が結合している側とは反対側の末端の炭素原子に隣接する炭素原子と、の間に位置する主鎖中の炭素原子であってもよい。
ここで、「主鎖」とは、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸中の鎖状構造のうち、炭素数が最大であるものを意味する。炭素数が最大である鎖状構造が複数ある場合には、いずれの鎖状構造を主鎖として取り扱ってもよい。主鎖の炭素数は、必ず分岐鎖の炭素数以上となる。
分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸は、下記一般式(6)で表されるモノカルボン酸(本明細書においては、「モノカルボン酸(6)」と略記することがある)であることが好ましい。
31-C(=O)-OH ・・・・(6)
(式中、R31は、炭素数7~9の分岐鎖状のアルキル基である。)
31の炭素数7~9の分岐鎖状のアルキル基(一価の飽和脂肪族炭化水素基)としては、例えば、1-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、1,1-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、4,4-ジメチルペンチル基、1-エチルペンチル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、4-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、1-プロピルブチル基等の炭素数7の分岐鎖状のアルキル基;
イソオクチル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、5-メチルヘプチル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、5-エチルヘキシル基、1,1-ジメチルヘキシル基、2,2-ジメチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、4,4-ジメチルヘキシル基、5,5-ジメチルヘキシル基、1,2,3-トリメチルペンチル基、1,2,4-トリメチルペンチル基、2,3,4-トリメチルペンチル基、2,4,4-トリメチルペンチル基、1,4,4-トリメチルペンチル基、3,4,4-トリメチルペンチル基、1,1,2-トリメチルペンチル基、1,1,3-トリメチルペンチル基、1,1,4-トリメチルペンチル基、1,2,2-トリメチルペンチル基、2,2,3-トリメチルペンチル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、1,3,3-トリメチルペンチル基、2,3,3-トリメチルペンチル基、3,3,4-トリメチルペンチル基、1-プロピルペンチル基、2-プロピルペンチル基等の炭素数8の分岐鎖状のアルキル基;
1-メチルオクチル基、2-メチルオクチル基、3-メチルオクチル基、4-メチルオクチル基、5-メチルオクチル基、6-メチルオクチル基、7-メチルオクチル基、6,6-ジメチルヘプチル基、5,5-ジメチルヘプチル基、4,4-ジメチルヘプチル基、3,3-ジメチルヘプチル基、2,2-ジメチルヘプチル基、1,1-ジメチルヘプチル基、1,2-ジメチルヘプチル基、1,3-ジメチルヘプチル基、1,4-ジメチルヘプチル基、1,5-ジメチルヘプチル基、1,6-ジメチルヘプチル基、2,3-ジメチルヘプチル基、2,4-ジメチルヘプチル基、2,5-ジメチルヘプチル基、2,6-ジメチルヘプチル基、3,4-ジメチルヘプチル基、3,5-ジメチルヘプチル基、3,6-ジメチルヘプチル基、4,5-ジメチルヘプチル基、4,6-ジメチルヘプチル基、5,6-ジメチルヘプチル基、1,2,3-トリメチルヘキシル基、1,2,4-トリメチルヘキシル基、1,2,5-トリメチルヘキシル基、2,3,4-トリメチルヘキシル基、2,3,5-トリメチルヘキシル基、3,4,5-トリメチルヘキシル基、1,1,2-トリメチルヘキシル基、1,1,3-トリメチルヘキシル基、1,1,4-トリメチルヘキシル基、1,1,5-トリメチルヘキシル基、1,2,2-トリメチルヘキシル基、2,2,3-トリメチルヘキシル基、2,2,4-トリメチルヘキシル基、2,2,5-トリメチルヘキシル基、1,3,3-トリメチルヘキシル基、2,3,3-トリメチルヘキシル基、3,3,4-トリメチルヘキシル基、3,3,5-トリメチルヘキシル基、1,4,4-トリメチルヘキシル基、2,4,4-トリメチルヘキシル基、3,4,4-トリメチルヘキシル基、4,4,5-トリメチルヘキシル基、1,5,5-トリメチルヘキシル基、2,5,5-トリメチルヘキシル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基、4,5,5-トリメチルヘキシル基、1,2,3,4-テトラメチルペンチル基、1,1,2,3-テトラメチルペンチル基、1,1,2,4-テトラメチルペンチル基、1,1,3,4-テトラメチルペンチル基、1,2,2,3-テトラメチルペンチル基、1,2,2,4-テトラメチルペンチル基、2,2,3,4-テトラメチルペンチル基、1,2,3,3-テトラメチルペンチル基、2,3,3,4-テトラメチルペンチル基、1,3,3,4-テトラメチルペンチル基、1,2,4,4-テトラメチルペンチル基、2,3,4,4-テトラメチルペンチル基、1,3,4,4-テトラメチルペンチル基、1-エチル-1-メチルヘキシル基、1-エチル-2-メチルヘキシル基、1-エチル-3-メチルヘキシル基、1-エチル-4-メチルヘキシル基、1-エチル-5-メチルヘキシル基、2-エチル-1-メチルヘキシル基、2-エチル-2-メチルヘキシル基、2-エチル-3-メチルヘキシル基、2-エチル-4-メチルヘキシル基、2-エチル-5-メチルヘキシル基、3-エチル-1-メチルヘキシル基、3-エチル-2-メチルヘキシル基、3-エチル-3-メチルヘキシル基、3-エチル-4-メチルヘキシル基、3-エチル-5-メチルヘキシル基、4-エチル-1-メチルヘキシル基、4-エチル-2-メチルヘキシル基、4-エチル-3-メチルヘキシル基、4-エチル-4-メチルヘキシル基、4-エチル-5-メチルヘキシル基、1,1-ジエチルペンチル基、1,2-ジエチルペンチル基、1,3-ジエチルペンチル基、2,2-ジエチルペンチル基、2,3-ジエチルペンチル基、3,3-ジエチルペンチル基、1-エチル-1-プロピルブチル基、2-エチル-1-プロピルブチル基等の炭素数9の分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
モノカルボン酸(6)に限定されず、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸1分子中の分岐鎖の数は、1~3本であることが好ましい。
モノカルボン酸(6)に限定されず、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の1本の分岐鎖の炭素数は、1~3であることが好ましい。
モノカルボン酸(6)に限定されず、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸は、これらの条件をともに満たすもの、すなわち、1分子中の分岐鎖の数が1~3本であり、かつ1本の分岐鎖の炭素数が1~3個であるものがより好ましい。
分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸は、導電体(金属銀)の光沢性と導電性の低下を抑制する適度な反応性を有し、かつ、銀インク組成物(I)中から揮発し難い一方で、銀インク組成物(I)の固化処理時には気化し易い、適度な沸点を有しており、先に説明した効果を向上させるものとして、特に適した特性を有する。
例えば、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の沸点は、180~270℃であることが好ましく、200~260℃であることがより好ましく、215~255℃であることが特に好ましい。分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の沸点が前記下限値以上であることで、銀インク組成物(I)中からの分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の揮発が抑制されて、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の沸点が前記上限値以下であることで、銀インク組成物(I)の固化処理によって得られた金属銀中での分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の残存が抑制され、光沢性、導電性等が高いなど、より好ましい特性の金属銀が得られる。
分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸(例えば、モノカルボン酸(6))で特に好ましいものとしては、ネオデカン酸(C19COOH)、2-プロピル吉草酸(2-プロピルペンタン酸、(CHCHCHCH(CHCHCH)COOH)、3,5,5-トリメチルヘキサン酸((CHCCHCH(CH)CHCOOH)等が挙げられる。
なお、本明細書において、ネオデカン酸とは、炭素数10の飽和脂肪族モノカルボン酸の異性体の混合物を意味し、前記混合物には炭素数10の分岐鎖状飽和脂肪族モノカルボン酸が必ず含まれる。このように、ネオデカン酸とは、1種の化合物だけを意味するものではない。
そして、ネオデカン酸中の、2種以上の炭素数10の飽和脂肪族モノカルボン酸の組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
上述のとおり、銀インク組成物(I)は、前記分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸が配合されていることで、銀インク組成物(I)の固化処理によって、光沢性と導電性がより高い金属銀を形成できる。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
すなわち、金属銀の形成対象面に付着した銀インク組成物(I)中においては、カルボン酸銀から銀イオン(Ag)が生じる。この場合、銀インク組成物(I)の初期の固化処理によって、銀イオンに酸素が配位する(Ag・・・O)。次いで、金属銀を形成するための、銀インク組成物(I)の乾燥処理や加熱(焼成)処理等の固化処理によって、酸素が配位した銀イオンから酸化銀(AgO)が生じる。ここで、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸が配合されていない銀インク組成物の場合には、この銀インク組成物の固化処理によって最終的に生成した金属銀中に、副生した酸化銀が不純物として混入し、金属銀の光沢性が低下してしまい、導電性も低下してしまうと推測される。一方で、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸が配合されている銀インク組成物(I)の場合には、この分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸が酸化銀と反応することで、炭素数8~10の分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の銀塩(本明細書においては、「分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸銀」と略記することがある)が生じる。この分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸銀は、β-ケトカルボン酸銀(1)と同様に、銀インク組成物(I)の固化処理によって最終的に金属銀(銀層)を生成する。このように、銀インク組成物(I)を用いることにより、銀インク組成物(I)の固化処理が原因となって生じた酸化銀が、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の作用によって、金属銀の光沢性と導電性の低下原因である不純物ではなく、金属銀そのものに転換されることによって、光沢性と導電性がより高い金属銀を形成できると推測される。
銀インク組成物(I)において、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の配合量は、β-ケトカルボン酸銀(1)中の銀原子の配合量1モルあたり、0.01~1モルであることが好ましく、0.02~0.7モルであることがより好ましく、0.03~0.4モルであることが特に好ましい。分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の前記配合量がこのような範囲であることで、光沢性と導電性が高い金属銀を形成する効果がより高くなる。
分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸以外のカルボン酸にも、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸と同様に、光沢性と導電性がより高い金属銀の形成を可能とするものがある。
このような分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸以外のカルボン酸(本明細書においては「他のカルボン酸」と称することがある)は、一価カルボン酸であってもよいし、二価以上の多価カルボン酸であってもよく、脂肪族カルボン酸であってもよいし、芳香族カルボン酸であってもよい。
前記他のカルボン酸は、ホルミル基(-C(=O)-H)等の還元力を有する基を含まないものが好ましい。このような基を含まない他のカルボン酸が配合されてなる銀インク組成物(I)は、その保存中にカルボン酸銀由来の不溶物の生成が抑制され、取り扱い性がより高い。
前記他のカルボン酸の炭素数は、5~17であることが好ましく、例えば、5~15、5~13及び5~11のいずれかであってもよい。
前記他のカルボン酸の沸点は、150~290℃であることが好ましく、例えば、155~280℃、160~270℃及び160~260℃のいずれかであってもよい。他のカルボン酸の沸点が前記下限値以上であることで、銀インク組成物(I)中からの他のカルボン酸の揮発が抑制されて、他のカルボン酸を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、他のカルボン酸の沸点が前記上限値以下であることで、銀インク組成物(I)の固化処理によって得られた金属銀中での他のカルボン酸の残存が抑制され、光沢性、導電性等が高いなど、より好ましい特性の金属銀が得られる。
前記他のカルボン酸は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
銀インク組成物(I)において、前記他のカルボン酸の配合量は、上述の分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の配合量と同じとすることができる。
[含窒素化合物]
銀インク組成物(I)は、β-ケトカルボン酸銀(1)及び分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸以外に、さらに含窒素化合物が配合されてなるものが好ましい。
前記含窒素化合物は、炭素数25以下のアミン化合物(以下、「アミン化合物」と略記することがある)、炭素数25以下の第4級アンモニウム塩(以下、「第4級アンモニウム塩」と略記することがある)、アンモニア、炭素数25以下のアミン化合物が酸と反応してなるアンモニウム塩(以下、「アミン化合物由来のアンモニウム塩」と略記することがある)、及びアンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩(以下、「アンモニア由来のアンモニウム塩」と略記することがある)からなる群から選択される1種又は2種以上のものである。すなわち、配合される含窒素化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
(アミン化合物、第4級アンモニウム塩)
前記アミン化合物は、炭素数が1~25であり、第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミンのいずれでもよい。また、前記第4級アンモニウム塩は、炭素数が4~25である。前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩は、鎖状及び環状のいずれでもよい。また、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子(例えば、第1級アミンのアミノ基(-NH)を構成する窒素原子)の数は1個でもよいし、2個以上でもよい。
前記第1級アミンとしては、例えば、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいモノアルキルアミン、モノアリールアミン、モノ(ヘテロアリール)アミン、ジアミン等が挙げられる。
前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、このようなアルキル基としては、例えば、Rにおける前記アルキル基と同様のものが挙げられる。前記アルキル基は、炭素数が1~19の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3~7の環状のアルキル基であることが好ましい。
好ましい前記モノアルキルアミンとして、具体的には、例えば、n-ブチルアミン、n-へキシルアミン、n-オクチルアミン、n-ドデシルアミン、n-オクタデシルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、3-アミノペンタン、3-メチルブチルアミン、2-ヘプチルアミン(2-アミノヘプタン)、2-アミノオクタン、2-エチルヘキシルアミン、1,2-ジメチル-n-プロピルアミン等が挙げられる。
前記モノアリールアミンを構成するアリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。前記アリール基の炭素数は、6~10であることが好ましい。
前記モノ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基は、芳香族環骨格を構成する原子として、ヘテロ原子を有するものであり、前記ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、ホウ素原子等が挙げられる。また、芳香族環骨格を構成する前記へテロ原子の数は特に限定されず、1個でもよいし、2個以上でもよい。2個以上である場合、これらへテロ原子は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、これらへテロ原子は、すべて同じでもよいし、すべて異なっていてもよく、一部だけ異なっていてもよい。
前記ヘテロアリール基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、その環員数(環骨格を構成する原子の数)も特に限定されないが、3~12員環であることが好ましい。
前記ヘテロアリール基で、窒素原子を1~4個有する単環状のものとしては、例えば、ピロリル基、ピロリニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、ピペリジニル基、ピラゾリジニル基、ピペラジニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、3~8員環であることが好ましく、5~6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1個有する単環状のものとしては、例えば、フラニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、3~8員環であることが好ましく、5~6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1個有する単環状のものとしては、例えば、チエニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、3~8員環であることが好ましく、5~6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1~2個及び窒素原子を1~3個有する単環状のものとしては、例えば、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、モルホリニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、3~8員環であることが好ましく、5~6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1~2個及び窒素原子を1~3個有する単環状のものとしては、例えば、チアゾリル基、チアジアゾリル基、チアゾリジニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、3~8員環であることが好ましく、5~6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、窒素原子を1~5個有する多環状のものとしては、例えば、インドリル基、イソインドリル基、インドリジニル基、ベンズイミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、インダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、テトラゾロピリジル基、テトラゾロピリダジニル基、ジヒドロトリアゾロピリダジニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、7~12員環であることが好ましく、9~10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1~3個有する多環状のものとしては、例えば、ジチアナフタレニル基、ベンゾチオフェニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、7~12員環であることが好ましく、9~10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1~2個及び窒素原子を1~3個有する多環状のものとしては、例えば、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、7~12員環であることが好ましく、9~10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1~2個及び窒素原子を1~3個有する多環状のものとしては、例えば、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、7~12員環であることが好ましく、9~10員環であることがより好ましい。
前記ジアミンは、アミノ基を2個有していればよく、2個のアミノ基の位置関係は特に限定されない。好ましい前記ジアミンとしては、例えば、前記モノアルキルアミン、モノアリールアミン又はモノ(ヘテロアリール)アミンにおいて、アミノ基(-NH)を構成する水素原子以外の1個の水素原子が、アミノ基で置換されたもの等が挙げられる。
前記ジアミンは炭素数が1~10であることが好ましく、より好ましいものとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン等が挙げられる。
前記第2級アミンとしては、例えば、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいジアルキルアミン、ジアリールアミン、ジ(ヘテロアリール)アミン等が挙げられる。
前記ジアルキルアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1~9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3~7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、ジアルキルアミン一分子中の2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
好ましい前記ジアルキルアミンとして、具体的には、例えば、N-メチル-n-ヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、ジ(2-エチルへキシル)アミン等が挙げられる。
前記ジアリールアミンを構成するアリール基は、前記モノアリールアミンを構成するアリール基と同様であり、炭素数が6~10であることが好ましい。また、ジアリールアミン一分子中の2個のアリール基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記ジ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基は、前記モノ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基と同様であり、6~12員環であることが好ましい。また、ジ(ヘテロアリール)アミン一分子中の2個のヘテロアリール基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記第3級アミンとしては、例えば、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいトリアルキルアミン、ジアルキルモノアリールアミン等が挙げられる。
前記トリアルキルアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1~19の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3~7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、トリアルキルアミン一分子中の3個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、3個のアルキル基は、すべてが同じでもよいし、すべてが異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。
好ましい前記トリアルキルアミンとして、具体的には、例えば、N,N-ジメチル-n-オクタデシルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
前記ジアルキルモノアリールアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3~7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、ジアルキルモノアリールアミン一分子中の2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記ジアルキルモノアリールアミンを構成するアリール基は、前記モノアリールアミンを構成するアリール基と同様であり、炭素数が6~10であることが好ましい。
前記第4級アンモニウム塩としては、例えば、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいハロゲン化テトラアルキルアンモニウム等が挙げられる。
前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1~19であることが好ましい。また、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム一分子中の4個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、4個のアルキル基は、すべてが同じでもよいし、すべてが異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。
前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを構成するハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
好ましい前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムとして、具体的には、例えば、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
ここまでは、主に鎖状のアミン化合物及び第4級有機アンモニウム塩について説明したが、前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩は、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子が環骨格構造(複素環骨格構造)の一部であるようなヘテロ環化合物であってもよい。すなわち、前記アミン化合物は環状アミンでもよく、前記第4級アンモニウム塩は環状アンモニウム塩でもよい。この時の環(アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子を含む環)構造は、単環状及び多環状のいずれでもよく、その環員数(環骨格を構成する原子の数)も特に限定されず、脂肪族環及び芳香族環のいずれでもよい。
環状アミンであれば、好ましいものとして、例えば、ピリジン等が挙げられる。
前記第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン及び第4級アンモニウム塩において、「置換基で置換されていてもよい水素原子」とは、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子に結合している水素原子以外の水素原子である。この時の置換基の数は特に限定されず、1個でもよいし、2個以上でもよく、前記水素原子のすべてが置換基で置換されていてもよい。置換基の数が複数の場合には、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、複数個の置換基はすべて同じでもよいし、すべて異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。また、置換基の位置も特に限定されない。
前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩における前記置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、トリフルオロメチル基(-CF)等が挙げられる。ここで、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基が置換基を有する場合、前記アルキル基は、置換基としてアリール基を有する、炭素数が1~9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は置換基として好ましくは炭素数が1~5のアルキル基を有する、炭素数が3~7の環状のアルキル基であることが好ましい。このような置換基を有するモノアルキルアミンとして、具体的には、例えば、2-フェニルエチルアミン、ベンジルアミン、2,3-ジメチルシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
また、置換基である前記アリール基及びアルキル基は、さらに1個以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。このようなハロゲン原子で置換された置換基を有するモノアルキルアミンとしては、例えば、2-ブロモベンジルアミン等が挙げられる。ここで、前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
前記モノアリールアミンを構成するアリール基が置換基を有する場合、前記アリール基は、置換基としてハロゲン原子を有する、炭素数が6~10のアリール基であることが好ましい。このような置換基を有するモノアリールアミンとして、具体的には、例えば、ブロモフェニルアミン等が挙げられる。ここで、前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
前記ジアルキルアミンを構成するアルキル基が置換基を有する場合、前記アルキル基は、置換基として水酸基又はアリール基を有する、炭素数が1~9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、このような置換基を有するジアルキルアミンとして、具体的には、例えば、ジエタノールアミン、N-メチルベンジルアミン等が挙げられる。
前記アミン化合物は、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、n-へキシルアミン、n-オクチルアミン、n-ドデシルアミン、n-オクタデシルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、3-アミノペンタン、3-メチルブチルアミン、2-ヘプチルアミン、2-アミノオクタン、2-エチルヘキシルアミン、2-フェニルエチルアミン、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、N-メチル-n-ヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、N-メチルベンジルアミン、ジ(2-エチルへキシル)アミン、1,2-ジメチル-n-プロピルアミン、N,N-ジメチル-n-オクタデシルアミン又はN,N-ジメチルシクロヘキシルアミンであることが好ましい。
そして、これらアミン化合物の中でも、2-エチルヘキシルアミンは、前記カルボン酸銀との相溶性に優れ、銀インク組成物(I)の高濃度化に特に適しており、さらに金属銀の表面粗さの低減に特に適したものとして挙げられる。
(アミン化合物由来のアンモニウム塩)
前記アミン化合物由来のアンモニウム塩は、前記アミン化合物が酸と反応してなるアンモニウム塩である。前記酸は、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸でもよいし、酢酸等の有機酸でもよく、酸の種類は特に限定されない。
前記アミン化合物由来のアンモニウム塩としては、例えば、n-プロピルアミン塩酸塩、N-メチル-n-ヘキシルアミン塩酸塩、N,N-ジメチル-n-オクタデシルアミン塩酸塩等が挙げられるが、これらに限定されない。
(アンモニア由来のアンモニウム塩)
前記アンモニア由来のアンモニウム塩は、アンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩である。ここで酸としては、前記アミン化合物由来のアンモニウム塩の場合と同じものが挙げられる。
前記アンモニア由来のアンモニウム塩としては、例えば、塩化アンモニウム等が挙げられるが、これに限定されない。
前記アミン化合物、第4級アンモニウム塩、アミン化合物由来のアンモニウム塩及びアンモニア由来のアンモニウム塩は、それぞれ1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
そして、前記含窒素化合物としては、前記アミン化合物、第4級アンモニウム塩、アミン化合物由来のアンモニウム塩及びアンモニア由来のアンモニウム塩からなる群から選択される1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
本実施形態においては、例えば、前記含窒素化合物として、炭素数が8以上の第1含窒素化合物と、炭素数が7以下の第2含窒素化合物と、を併用してもよい。
前記第1含窒素化合物及び第2含窒素化合物を併用する場合、銀インク組成物(I)において、第1含窒素化合物の配合量に対する第2含窒素化合物の配合量の割合は、0モル%より大きく、18モル%未満であることが好ましく、1~17モル%であることがより好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、例えば、細線状の銀層をより安定して形成できる。
前記含窒素化合物を用いる場合、銀インク組成物(I)において、前記含窒素化合物の配合量は、β-ケトカルボン酸銀(1)の配合量1モルあたり0.3~15モルであることが好ましく、0.3~12モルであることがより好ましく、0.3~8モルであることが特に好ましく、例えば、1~8モル、2.5~8モル、及び4~8モルのいずれかであってもよい。前記含窒素化合物の前記配合量がこのような範囲であることで、銀インク組成物(I)は安定性がより向上し、金属銀の品質がより向上する。
[アルコール]
銀インク組成物(I)は、前記カルボン酸銀及び分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸以外に、さらにアルコールが配合されてなるものが好ましい。
前記アルコールは、下記一般式(2)で表されるアセチレンアルコール類(以下、「アセチレンアルコール(2)」と略記することがある)であることが好ましい。
Figure 0007454772000002
(式中、R’及びR’’は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~20のアルキル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基である。)
(アセチレンアルコール(2))
アセチレンアルコール(2)は、前記一般式(2)で表される。
式中、R’及びR’’は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~20のアルキル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基である。
R’及びR’’における炭素数1~20のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。R’及びR’’における前記アルキル基としては、Rにおける前記アルキル基と同様のものが挙げられる。
R’及びR’’におけるフェニル基の水素原子が置換されていてもよい前記置換基としては、例えば、炭素数が1~16の飽和又は不飽和の一価の脂肪族炭化水素基、前記脂肪族炭化水素基が酸素原子に結合してなる一価の基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基、シアノ基、フェノキシ基等が挙げられる。これら前記置換基は、Rにおけるフェニル基の水素原子が置換されていてもよい前記置換基と同様のものである。そして、置換基を有する前記フェニル基において、前記置換基の数及び位置は特に限定されず、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
R’及びR’’は、水素原子、又は炭素数1~20のアルキル基であることが好ましく、水素原子、又は炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であることがより好ましい。
好ましいアセチレンアルコール(2)としては、例えば、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、2-プロピン-1-オール、4-エチル-1-オクチン-3-オール、3-エチル-1-ヘプチン-3-オール等が挙げられる。
アセチレンアルコール(2)を用いる場合、銀インク組成物(I)において、アセチレンアルコール(2)の配合量は、β-ケトカルボン酸銀(1)の配合量1モルあたり0.01~0.7モルであることが好ましく、0.02~0.5モルであることがより好ましく、0.02~0.3モルであることが特に好ましい。アセチレンアルコール(2)の前記配合量がこのような範囲であることで、銀インク組成物(I)の安定性がより向上する。
前記アルコールは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
[他の成分]
銀インク組成物(I)は、β-ケトカルボン酸銀(1)と、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸と、含窒素化合物と、アルコールと、のいずれにも該当しない、他の成分(本明細書においては、「他の成分」と略記することがある)が配合されてなるものでもよい。
銀インク組成物(I)における前記他の成分は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。前記他の成分で、好ましいものとしては、例えば、アルコール以外の溶媒等が挙げられ、配合成分の種類や量に応じて任意に選択できる。
銀インク組成物(I)において、前記他の成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
(溶媒)
前記溶媒は、アルコール以外のもの(水酸基を有しないもの)であれば、特に限定されない。
ただし、前記溶媒は、常温で液状であるものが好ましい。
前記溶媒としては、例えば、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン等の芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロオクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、デカヒドロナフタレン等の脂肪族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;酢酸エチル、グルタル酸モノメチル、グルタル酸ジメチル等のエステル;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,2-ジメトキシエタン(ジメチルセロソルブ)等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン等のケトン;アセトニトリル等のニトリル;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド等が挙げられる。
銀インク組成物(I)における前記他の成分の配合量は、前記他の成分の種類に応じて、適宜選択すればよい。
例えば、前記他の成分がアルコール以外の溶媒である場合、前記溶媒の配合量は、銀インク組成物(I)の粘度等、目的に応じて選択すればよい。ただし通常は、銀インク組成物(I)において、配合成分の総質量に対する、前記溶媒の配合量の割合は、35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることが特に好ましい。
例えば、前記他の成分が前記溶媒以外の成分である場合、銀インク組成物(I)において、配合成分の総質量に対する、前記他の成分の配合量の割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
配合成分の総質量に対する、前記他の成分の配合量の割合が0質量%、すなわち他の成分を配合しなくても、銀インク組成物(I)は十分にその効果を発現する。
銀インク組成物(I)においては、配合成分がすべて溶解していてもよいし、一部又は全ての成分が溶解せずに分散した状態であってもよいが、配合成分がすべて溶解していることが好ましく、溶解していない成分は均一に分散していることが好ましい。
○銀インク組成物(I)の製造方法
銀インク組成物(I)は、前記カルボン酸銀、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸、及び、必要に応じて、これら以外の成分を配合することで得られる。各成分の配合後は、得られた配合物をそのまま銀インク組成物(I)としてもよいし、必要に応じて引き続き公知の精製操作を行って得られた精製物を銀インク組成物(I)としてもよい。本実施形態においては、β-ケトカルボン酸銀(1)を用いることで、上記の各成分の配合時において、光沢性及び導電性を低下させる不純物が生成しないか、又はこのような不純物の生成量を極めて少量に抑制できる。したがって、精製操作を行っていない銀インク組成物(I)を用いても、十分な光沢性及び導電性を有する金属銀が得られる。
各成分の配合順序は、特に限定されない。各成分の好ましい配合方法の一例としては、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸を最後に配合する方法が挙げられる。すなわち、前記銀インク組成物(I)の好ましい製造方法の一例としては、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸以外の成分をすべて配合した後、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸を最後に配合する製造方法が挙げられる。
各成分の配合時には、すべての成分を添加してからこれらを混合してもよいし、一部の成分を順次添加しながら混合してもよく、すべての成分を順次添加しながら混合してもよい。
混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサー、三本ロール、ニーダー又はビーズミル等を使用して混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
銀インク組成物(I)において、溶解していない成分を均一に分散させる場合には、例えば、上記の三本ロール、ニーダー又はビーズミル等を用いて分散させる方法を適用することが好ましい。
配合時の温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、-5~60℃であることが好ましい。そして、配合時の温度は、配合成分の種類及び量に応じて、配合して得られた混合物が撹拌し易い粘度となるように、適宜調節するとよい。
また、配合時間も、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、10分~36時間であることが好ましい。
〇銀インク組成物(II)
銀インク組成物(II)は、前記分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸が配合されていない点以外は、銀インク組成物(I)と同じであってよい。
すなわち、銀インク組成物(II)の配合成分としては、β-ケトカルボン酸銀(1)、前記含窒素化合物、前記アルコール、及び前記他の成分が挙げられる。
銀インク組成物(II)における、β-ケトカルボン酸銀(1)、含窒素化合物、アルコール、及び他の成分の配合量は、銀インク組成物(I)の場合と同じであってよい。
○銀インク組成物(II)の製造方法
銀インク組成物(II)は、前記分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸を配合しない点以外は、銀インク組成物(I)の場合と同じ方法で製造できる。
すなわち、銀インク組成物(II)は、β-ケトカルボン酸銀(1)、及び、必要に応じて任意成分を配合することで得られる。ここで「任意成分」とは、β-ケトカルボン酸銀(1)に該当しない成分を意味する。例えば、銀インク組成物(II)の製造時においては、各成分の配合順序は、特に限定されない。
○銀インク組成物(III)
銀インク組成物(III)は、有機銀錯体と、炭素数8~10の分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸(前記分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸)と、含窒素化合物と、が配合されてなる。
このような銀インク組成物(III)としては、例えば、有機銀錯体の前駆体化合物と、これ以外の含窒素化合物と、の反応によって、有機銀錯体が形成され、かつ余剰の前記含窒素化合物が残存している反応液と、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸と、を含むものが挙げられる。このような銀インク組成物(III)として、より具体的には、「特許第5243409号公報」に記載のものに、さらに分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸が配合されてなるものが挙げられる。
すなわち、銀インク組成物(III)としては、例えば、下記一般式(91)で表される銀化合物(本明細書においては、「銀化合物(91)」と略記することがある)と、下記一般式(92)で表される化合物(本明細書においては、「含窒素化合物(92)」と略記することがある)及び下記一般式(93)で表される化合物(本明細書においては、「含窒素化合物(93)」と略記することがある)からなる群から選択される1種又は2種以上の含窒素化合物と、を反応させて得られた有機銀錯体を含有し、さらに、前記含窒素化合物と、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸と、を含有する液状組成物が挙げられる。
Figure 0007454772000003
(式中、n101は、1~3の整数であり;X101は、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、シアノ基、シアネート基、カーボネート基、ニトレート基、ニトライト基、サルフェート基、ホスフェート基、チオシアネート基、クロレート基、パークロレート基、テトラフルオロボレート基、アセチルアセトネート基、カルボキシレート基、及びこれらの誘導体からなる群よから選択される基であり;R101~R111は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~30の脂肪族若しくは脂環族アルキル基又はアリール基、官能基が置換されたアルキル基又はアリール基、及びヘテロ環式基からなる群から選択される基であり、ただし、R101~R111がすべて水素原子になることはない。)
前記有機銀錯体としては、例えば、下記一般式(95)-1で表される化合物(本明細書においては、「有機銀錯体(95)-1」と略記することがある)、及び下記一般式(95)-2で表される化合物(本明細書においては、「有機銀錯体(95)-2」と略記することがある)が挙げられる。
Figure 0007454772000004
(式中、R101~R111は、上記と同じであり;m101及びm102は、それぞれ独立に、0.5~1.5である。)
[銀化合物(91)]
銀化合物(91)としては、例えば、酸化銀、チオシアネート化銀、シアン化銀、シアネート化銀、炭酸銀、硝酸銀、亜硝酸銀、硫酸銀、リン酸銀、過塩素酸銀、四フッ素ボレート化銀、アセチルアセトネート化銀、酢酸銀、乳酸銀、シュウ酸銀等が挙げられる。
銀化合物(91)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
銀インク組成物(III)において、銀化合物(91)に由来する銀の含有量は、2質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましい。前記銀の含有量がこのような範囲であることで、形成された導電体(金属銀)は品質により優れたものとなる。前記銀の含有量の上限値は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、銀インク組成物(III)の取り扱い性等を考慮すると、20質量%であることが好ましい。
なお、ここで、「銀化合物(91)に由来する銀」とは、特に断りの無い限り、銀インク組成物(III)の製造時に配合された銀化合物(91)中の銀と同義であり、配合後も引き続き銀化合物(91)を構成している銀と、配合後に銀化合物(91)の反応で生じた反応物中の銀と、配合後に銀化合物(91)の反応で生じた銀そのもの(金属銀)と、のすべてを含む概念とする。
[含窒素化合物(92)]
含窒素化合物(92)は、アンモニウムカルバメート系化合物である。
含窒素化合物(92)において、R101~R105は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、シアノエチル基、メトキシエトキシエチル基、メトキシエトキシエトキシエチル基、ヘキサメチレンイミニル基、モルホリノ基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピリジニル基、カルボキシメチル基、トリメトキシシリルプロピル基、トリエトキシシリルプロピル基、フェニル基、メトキシフェニル基、シアノフェニル基、トリル基、ベンジル基、又はこれらの基において一部が置換された基であることが好ましい。ただし、R101~R105がすべて水素原子になることはない。
含窒素化合物(92)としては、例えば、エチルアンモニウム エチルカルバメート、イソプロピルアンモニウム イソプロピルカルバメート、n-ブチルアンモニウム n-ブチルカルバメート、イソブチルアンモニウム イソブチルカルバメート、tert-ブチルアンモニウム tert-ブチルカルバメート、2-エチルヘキシルアンモニウム 2-エチルヘキシルカルバメート、オクタデシルアンモニウム オクタデシルカルバメート、2-メトキシエチルアンモニウム 2-メトキシエチルカルバメート、2-シアノエチルアンモニウム 2-シアノエチルカルバメート、ジブチルアンモニウム ジブチルカルバメート、ジオクタデシルアンモニウム ジオクタデシルカルバメート、メチルデシルアンモニウム メチルデシルカルバメート、ヘキサメチレンイミンアンモニウム ヘキサメチレンイミンカルバメート、モルホリノアンモニウム モルホリノカルバメート、ピリジニウムエチルヘキシルカルバメート、ベンジルアンモニウム ベンジルカルバメート、トリエトキシシリルプロピルアンモニウム トリエトキシシリルプロピルカルバメート等が挙げられる。
そして、これら含窒素化合物(92)の中でも、2-エチルヘキシルアンモニウム 2-エチルヘキシルカルバメートは、銀化合物(91)との相溶性に優れ、銀インク組成物(III)の高濃度化に特に適しており、さらに金属銀の表面粗さの低減に特に適したものとして挙げられる。
含窒素化合物(92)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
含窒素化合物(92)は、公知の方法で製造でき、例えば、「米国特許第4542214号明細書」に記載の方法で製造できる。
[含窒素化合物(93)]
含窒素化合物(93)は、アンモニウムカーボネート系化合物である。
含窒素化合物(93)において、R106~R111は、含窒素化合物(92)におけるR101~R105と同様のものである。ただし、R106~R111がすべて水素原子になることはない。
含窒素化合物(93)としては、例えば、エチルアンモニウム エチルカーボネート、イソプロピルアンモニウム イソプロピルカーボネート、n-ブチルアンモニウム n-ブチルカーボネート、イソブチルアンモニウム イソブチルカーボネート、tert-ブチルアンモニウム tert-ブチルカーボネート、2-エチルヘキシルアンモニウム 2-エチルヘキシルカーボネート、2-メトキシエチルアンモニウム 2-メトキシエチルカーボネート、2-シアノエチルアンモニウム 2-シアノエチルカーボネート、オクタデシルアンモニウム オクタデシルカーボネート、ジブチルアンモニウム ジブチルカーボネート、ジオクタデシルアンモニウム ジオクタデシルカーボネート、メチルデシルアンモニウム メチルデシルカーボネート、ヘキサメチレンイミニルアンモニウム ヘキサメチレンイミニルカーボネート、モルホリノアンモニウム モルホリノカーボネート、ベンジルアンモニウム ベンジルカーボネート、トリエトキシシリルプロピルアンモニウム トリエトキシシリルプロピルカーボネート等が挙げられる。
含窒素化合物(93)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
含窒素化合物(93)は、公知の方法で製造でき、例えば、「米国特許第4542214号明細書」に記載の方法で製造できる。
銀化合物(91)と反応させる含窒素化合物は、1種又は2種以上の含窒素化合物(92)のみであってもよいし、1種又は2種以上の含窒素化合物(93)のみであってもよいし、1種又は2種以上の含窒素化合物(92)と、1種又は2種以上の含窒素化合物(93)と、の両方であってもよい。
銀化合物(91)と、含窒素化合物(92)及び含窒素化合物(93)からなる群から選択される1種又は2種以上と、の反応は、例えば、窒素雰囲気下において、常圧の状態で又は加圧した状態で、溶媒を用いずに行うことができる。
[溶媒]
前記反応は、溶媒を用いて行ってもよい。このときの溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール;エチレングリコール、グリセリン等のグリコール;エチルアセテート、ブチルアセテート、カルビトールアセテート等のアセテート;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;クロロホルム、メチレンクロライド、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
前記溶媒は、銀インク組成物(III)の配合成分であってもよい。
前記反応時において、含窒素化合物(92)及び含窒素化合物(93)の合計使用量は、使用する銀化合物(91)中の銀原子の量に対して、1~4倍モル量である([含窒素化合物(92)及び含窒素化合物(93)の合計使用量(モル)]/[使用する銀化合物(91)中の銀原子の量(モル)]の値が1~4である)ことが好ましい。
[炭素数8~10の分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸]
銀インク組成物(III)における、炭素数8~10の分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸は、銀インク組成物(I)における炭素数8~10の分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸(前記分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸)と同じである。
銀インク組成物(III)における前記分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸は、銀インク組成物(I)における前記分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸と、同様の作用を示すと推測される。
銀インク組成物(III)において、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の配合量は、前記有機銀錯体中の銀原子の配合量1モルあたり、0.01~1モルであることが好ましく、0.02~0.7モルであることがより好ましく、0.03~0.4モルであることが特に好ましい。分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の前記配合量がこのような範囲であることで、印刷対象物を加熱しながら印刷を行った場合であっても、光沢性が高い金属銀を形成する効果がより高くなる。
銀インク組成物(III)の製造時に、前記有機銀錯体の前駆体化合物を用いる場合には、前記前駆体化合物中の銀原子の配合量1モルあたりの、分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の配合量を、上述の数値範囲とすることができる。
上述のとおり、前記銀インク組成物(III)は、前記分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸が配合されていることで、印刷対象物を加熱しながら印刷を行った場合であっても、光沢性が高い金属銀を形成できる。その理由は定かではないが、上述の銀インク組成物(I)の場合と同じであると推測される。
〇銀インク組成物の使用方法
前記金属銀層形成工程においては、銀インク組成物(I)、銀インク組成物(II)及び銀インク組成物(III)の場合に限定されず、前記銀インク組成物を用い、インクジェット印刷法により、前記基材上に銀インク組成物の印刷層を形成できる。
銀インク組成物を乾燥処理する場合には、公知の方法で行えばよい。すなわち前記乾燥処理は、例えば、常圧下、減圧下及び送風条件下のいずれで行ってもよく、大気下及び不活性ガス雰囲気下のいずれでおこなってもよい。そして、乾燥温度も特に限定されず、加熱乾燥及び常温乾燥のいずれであってもよい。加熱処理が不要な場合の好ましい乾燥方法としては、例えば、18~30℃で大気下において乾燥させる方法が挙げられる。
銀インク組成物を加熱(焼成)処理する場合、その条件は、銀インク組成物の配合成分の種類に応じて適宜調節すればよい。通常は、加熱温度が60~370℃であることが好ましく、70~280℃であることがより好ましい。加熱時間は、加熱温度に応じて調節すればよいが、通常は、1分~24時間であることが好ましく、1分~12時間であることがより好ましい。β-ケトカルボン酸銀(1)は、例えば、酸化銀等の金属銀の形成材料とは異なり、当該分野で公知の還元剤等を使用しなくても、低温で分解する。そして、このような分解温度を反映して、前記銀インク組成物は、上記のように、従来のものより極めて低温で金属銀を形成できる。
銀インク組成物を耐熱性が低い目的物に付着させて加熱(焼成)処理する場合には、加熱温度は130℃未満であることが好ましく、125℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが特に好ましい。
銀インク組成物の加熱処理の方法は、特に限定されない。前記加熱処理は、例えば、電気炉による加熱、感熱方式の熱ヘッドによる加熱、遠赤外線照射による加熱、高熱ガスの吹き付けによる加熱、高周波照射による加熱、誘電加熱等で行うことができる。また、前記加熱処理は、大気下で行ってもよいし、不活性ガス雰囲気下で行ってもよく、加湿条件下で行ってもよい。そして、前記加熱処理は、常圧下、減圧下及び加圧下のいずれで行ってもよい。
本明細書において「加湿」とは、特に断りのない限り、湿度を人為的に増大させることを意味し、好ましくは相対湿度を5%以上とすることである。加熱処理時には、処理温度が高いことによって、処理環境での湿度が極めて低くなるため、5%という相対湿度は、明らかに人為的に増大されたものであるといえる。
銀インク組成物の加熱処理を加湿条件下で行う場合の相対湿度は、10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましく、70%以上であることが特に好ましく、90%以上であってもよいし、100%であってもよい。そして、加湿条件下での加熱処理は、100℃以上に加熱した高圧水蒸気の吹き付けにより行ってもよい。このように加湿条件下で加熱処理することにより、短時間でより高純度の金属銀を形成できる。
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
各実施例及び比較例で用いた基材を表1に示す。
Figure 0007454772000005
各実施例及び比較例で用いた、シリコーン系樹脂層の形成手段を、表2に示す。
Figure 0007454772000006
[実施例1]
<<積層体の製造>>
銀インク組成物(I)を用い、以下に示す手順により、図1に示す積層体を製造した。
<銀インク組成物の製造>
ビーカー中に2-エチルヘキシルアミン(後述する2-メチルアセト酢酸銀に対して6.53倍モル量)と、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール(以下、「DMHO」と略記することがある)(後述する2-メチルアセト酢酸銀に対して0.10倍モル量)と、を加えて混合し、メカニカルスターラーを回転させて撹拌しながら、さらにここへ、液温が40℃以下となるように2-メチルアセト酢酸銀を添加して、各配合成分を溶解させ、室温でそのまま1日撹拌を続けた。
次いでこの撹拌液に、液温が30℃以下となるように、ネオデカン酸(2-メチルアセト酢酸銀に対して0.13倍モル量)を滴下して撹拌することにより、銀インク組成物として銀インク組成物(I)-1を得た。
なお、DMHOとしては、日信化学社製「サーフィノール61」を用い、ネオデカン酸としては、ジャパンケムテック社製「バーサティック10」を用いた。これは、以降の実施例及び比較例でも同様である。
各配合成分の種類と配合比を表3に示す。表3中、「含窒素化合物(モル比)」とは、β-ケトカルボン酸銀(1)の配合量1モルあたりの含窒素化合物の配合量(モル数)([含窒素化合物のモル数]/[β-ケトカルボン酸銀(1)のモル数])を意味する。「アルコール(モル比)」も同様に、β-ケトカルボン酸銀(1)の配合量1モルあたりのアルコールの配合量(モル数)([アルコールのモル数]/[β-ケトカルボン酸銀(1)のモル数])を意味する。「分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸(モル比)」も同様に、β-ケトカルボン酸銀(1)の配合量1モルあたりの分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸の配合量(モル数)([分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸のモル数]/[β-ケトカルボン酸銀(1)のモル数])を意味する。
Figure 0007454772000007
<シリコーン系樹脂層の形成(シリコーン系樹脂層形成工程)>
クリーニングパッド(オーディオテクニカ社製「DMT-2032B」、非シリコンポリエチレン系樹脂製)を用いて、シリコーン系樹脂層の形成手段(W)-1のロール面をクリーニングした。
次いで、平面形状が矩形である基材(S)-1の一方の表面に、手動により、クリーニング済みの前記形成手段(W)-1のロール面を接触させ、基材(S)-1の縦方向に、基材(S)-1の両端間で前記形成手段(W)-1を転がして、1往復させた。
次いで、前記クリーニングパッドを用いて、前記形成手段(W)-1のロール面をクリーニングした。
次いで、基材(S)-1の前記形成手段(W)-1を転がしたこの領域内の表面に、手動により、再度クリーニング済みの前記形成手段(W)-1のロール面を接触させ、今度は基材(S)-1の横方向に、基材(S)-1の両端間で前記形成手段(W)-1を転がして、1往復させた。前記縦方向及び横方向のいずれの場合も、前記形成手段(W)-1を転がして、基材(S)-1上を移動させる速度を、40cm/sとし、前記形成手段(W)-1によって基材(S)-1に加える圧力を、0.014~0.036MPaとした。
このように、基材(S)-1の一方の表面上で、互いに直交する2方向において、1往復ずつ前記形成手段(W)-1を手動により転がすことによって、前記表面にシリコーン系樹脂層を形成した。
上記で得られた、シリコーン系樹脂層を形成した基材(S)-1を用いて、そのシリコーン系樹脂層側の表面について、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)により分析した。分析には帯電補正用中和銃を使用した。その他の分析条件は、以下のとおりである。さらに、シリコーン系樹脂層を形成していない基材(S)-1の表面についても、同様に分析した。結果を表4に示す。
[TOF-SIMS分析条件]
照射1次イオン:Bi 2+
1次イオン加速電圧:25kV
測定面積:300μm×300μm
さらに、シリコーン系樹脂層側の表面を分析したときに取得した、イオン強度の分布データを図5に示す。図5で示しているのは、左側から順に、C15Si(m/z 147)の分布データ、正トータルイオン(positive total ion)の分布データ、これら分布データを重ね合わせたデータである。
Figure 0007454772000008
表4に示すとおり、シリコーン系樹脂層を形成していない基材(S)-1の場合には、TOF-SIMSにより、基材(S)-1の含有成分であるメタクリル酸メチル、アクリル酸エチル及びアルキルベンゼンスルホン酸に由来すると考えられるイオン種が検出された。メタクリル酸メチル及びアクリル酸エチルは易接着処理に関係する成分であり、アルキルベンゼンスルホン酸は帯電防止処理に関係する成分であると推測された。一方、シリコーン系樹脂層に関係する成分に由来すると考えられるイオン種は、検出されなかった。
これに対して、シリコーン系樹脂層を形成した基材(S)-1の場合には、TOF-SIMSにより、前記形成手段(W)-1の含有成分であるポリジメチルシロキサンに由来すると考えられるイオン種が検出され、基材(S)-1の表面に確かにシリコーン系樹脂層が形成されていることを確認できた。さらに、基材(S)-1の含有成分であるメタクリル酸メチル、アクリル酸エチル及びアルキルベンゼンスルホン酸に由来すると考えられるイオン種も検出され、シリコーン系樹脂層の厚さが確かに1nm以下であることを確認できた。
図5から明らかなように、基材(S)-1上では、ポリジメチルシロキサンに由来すると考えられるC15Siは、均一に分布し、正トータルイオンも均一に分布しており、これは、基材(S)-1上では、むらなく、厚さの均一性が高い状態でシリコーン系樹脂層が形成されていることを示していた。
<金属銀層の形成(金属銀層形成工程)>
インクジェット印刷装置(コニカミノルタ社製「IJCS-1」、インクジェットヘッド「KM512MH」、液滴量14pL)と、上記で得られた銀インク組成物(I)-1と、を用いて、インクジェット印刷法により、基材(S)-1上のシリコーン系樹脂層の第1面(露出面)上に、3本の直線状の印刷層を互いに平行に形成した。このとき、各印刷層の両端部以外の設計線幅はすべて、銀インク組成物(I)-1の1ドット分とし、各印刷層の印刷回数は1とした。
次いで、前記印刷層に対して、130℃の熱風を5分吹き付けて、印刷層(すなわち銀インク組成物)を加熱処理することにより、印刷層から金属銀を形成して、基材(S)-1上に、3本の直線状の金属銀層を形成した。これら金属銀層の長さはすべて25mmであった。
以上により、目的とする積層体を製造した。
なお、以降のすべての実施例及び比較例においても、形成した金属銀層の長さはすべて25mmであった。
<<積層体の評価>>
<金属銀層の線幅の測定、線幅比率の算出>
レーザー顕微鏡(キーエンス社製「VK-X100」)を用いて、上記で得られた直線状の金属銀層について、その長さ方向における中央部と、両端部の近傍と、の合計3箇所で、線幅を測定した。このような線幅の測定を、3本の金属銀層すべてで行い、合計9つの測定値の平均値を求め、この平均値を本実施例での金属銀層の線幅として採用した。結果を表5に示す。
さらに、比較例1で後述するように、シリコーン系樹脂層の形成を行わなかった点以外は、本実施例の場合と同じ方法で製造した比較用積層体において、本実施例の場合と同じ方法で金属銀層(比較用金属銀層)の線幅(基準線幅)を求め、前記式(i)により、線幅比率を算出した。結果を表5に示す。
<金属銀層の厚さの測定>
上述の金属銀層の線幅の測定時に、同じ箇所での金属銀層の厚さを測定した。このような厚さの測定を、3本の金属銀層すべてで行い、合計9つの測定値の平均値を求め、この平均値を本実施例での金属銀層の厚さとして採用した。結果を表5に示す。
<金属銀層の抵抗値の測定、抵抗値比率の算出>
デジタルマルチメーター(ADC社製「ADCMT 7352A」)を用いて、上記で得られた積層体中の金属銀層の、両端部間の抵抗値(Ω)を測定した。このような抵抗値の算出を、3本の金属銀層すべてで行い、合計3つの測定値の平均値を求め、この平均値を本実施例での金属銀層の抵抗値(Ω)として採用した。そして、得られた抵抗値(Ω)を金属銀層の長さ(25mm)で除して、単位長さあたりの抵抗値(Ω/mm)を算出した。結果を表5に示す。
さらに、前記比較用(比較例1)の積層体において、本実施例の場合と同じ方法で、金属銀層の単位長さあたりの抵抗値(基準抵抗値)(Ω/mm)を求め、前記式(ii)により、抵抗値比率を算出した。結果を表5に示す。
<金属銀層の体積抵抗率の算出>
ここまでで得られた金属銀層の線幅(μm)、厚さ(μm)及び抵抗値(Ω/mm)の値から、金属銀層の体積抵抗率(μΩ・cm)を算出した。結果を表5に示す。
<<積層体の製造及び評価>>
[実施例2]
印刷層の形成時に、前記設計線幅を銀インク組成物(I)-1の1ドット分に代えて2ドット分とした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表5に示す。
[実施例3]
印刷層の形成時に、前記設計線幅を銀インク組成物(I)-1の1ドット分に代えて3ドット分とした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表5に示す。
[比較例1]
シリコーン系樹脂層の形成(シリコーン系樹脂層形成工程)を行わなかった点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表5に示す。
なお、表1中、「抵抗値(Ω)」、「抵抗値(Ω/mm)」及び「基準抵抗値(Ω/mm)」の欄中の「OL」との記載は、その値が大き過ぎて、測定不能(非導通)であったことを意味する。そして、「抵抗値/基準抵抗値×100(%)」の欄中の「算出不能」との記載は、「基準抵抗値(Ω/mm)」が「OL」であったことによって、「抵抗値/基準抵抗値×100(%)」を算出できなかったことを意味する。
また、「厚さ(μm)」の欄中の「-」との記載は、金属銀層の厚さが未測定であることを意味する。
また、「体積抵抗率(μΩ・cm)」の欄中の「算出不能」との記載は、金属銀層の「抵抗値(Ω/mm)」が「OL」であったことによって、金属銀層の「体積抵抗率(μΩ・cm)」を算出できなかったことを意味する。そして、「体積抵抗率(μΩ・cm)」の欄中の「-」との記載は、金属銀層の「厚さ(μm)」が「-」(未測定)であることによって、金属銀層の「体積抵抗率(μΩ・cm)」が未算出であることを意味する。
[比較例2]
シリコーン系樹脂層の形成(シリコーン系樹脂層形成工程)を行わなかった点以外は、実施例2の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表5に示す。
[比較例3]
シリコーン系樹脂層の形成(シリコーン系樹脂層形成工程)を行わなかった点以外は、実施例3の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表5に示す。
[実施例4]
各印刷層の形成時に、その印刷回数を1に代えて3とした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。
本実施例では、1回目の印刷で形成した印刷層の上に、2回目の印刷でさらに印刷層を形成し、2回目の印刷で形成した印刷層の上に、3回目の印刷でさらに印刷層を形成した。
以降で示す実施例及び比較例のうち、印刷回数が2以上のものでも、同様に印刷層を形成している。
結果を表5に示す。
[実施例5]
各印刷層の形成時に、その印刷回数を1に代えて3とした点以外は、実施例2の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表5に示す。
[実施例6]
各印刷層の形成時に、その印刷回数を1に代えて3とした点以外は、実施例3の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表5に示す。
[比較例4]
各印刷層の形成時に、その印刷回数を1に代えて3とした点以外は、比較例1の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表5に示す。
[比較例5]
各印刷層の形成時に、その印刷回数を1に代えて3とした点以外は、比較例2の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表5に示す。
[比較例6]
各印刷層の形成時に、その印刷回数を1に代えて3とした点以外は、比較例3の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表5に示す。
[実施例7]
シリコーン系樹脂層の形成手段(W)-1に代えて(W)-2を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表5に示す。
[実施例8]
シリコーン系樹脂層の形成手段(W)-1に代えて(W)-2を用いた点以外は、実施例2の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表5に示す。
[実施例9]
シリコーン系樹脂層の形成手段(W)-1に代えて(W)-2を用いた点以外は、実施例3の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表5に示す。
[実施例10]
基材(S)-1に代えて基材(S)-2を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表6に示す。
[実施例11]
基材(S)-1に代えて基材(S)-2を用いた点以外は、実施例2の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表6に示す。
[実施例12]
基材(S)-1に代えて基材(S)-2を用いた点以外は、実施例3の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表6に示す。
[比較例7]
シリコーン系樹脂層の形成(シリコーン系樹脂層形成工程)を行わなかった点以外は、実施例10の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表6に示す。
[比較例8]
シリコーン系樹脂層の形成(シリコーン系樹脂層形成工程)を行わなかった点以外は、実施例11の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表6に示す。
[比較例9]
シリコーン系樹脂層の形成(シリコーン系樹脂層形成工程)を行わなかった点以外は、実施例12の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表6に示す。
[実施例13]
基材(S)-1に代えて基材(S)-5を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表6に示す。
[実施例14]
基材(S)-1に代えて基材(S)-5を用いた点以外は、実施例2の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表6に示す。
[実施例15]
基材(S)-1に代えて基材(S)-5を用いた点と、印刷層の形成時に、前記設計線幅を銀インク組成物(I)-1の1ドット分に代えて4ドット分とした点、以外は、実施例1の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表6に示す。
[比較例10]
シリコーン系樹脂層の形成(シリコーン系樹脂層形成工程)を行わなかった点以外は、実施例13の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表6に示す。
[比較例11]
シリコーン系樹脂層の形成(シリコーン系樹脂層形成工程)を行わなかった点以外は、実施例14の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表6に示す。
[比較例12]
シリコーン系樹脂層の形成(シリコーン系樹脂層形成工程)を行わなかった点以外は、実施例15の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表6に示す。
[実施例16]
基材(S)-1に代えて基材(S)-3を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表7に示す。
[実施例17]
基材(S)-1に代えて基材(S)-3を用いた点以外は、実施例2の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表7に示す。
[実施例18]
基材(S)-1に代えて基材(S)-3を用いた点以外は、実施例3の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表7に示す。
[実施例19]
基材(S)-1に代えて基材(S)-4を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表7に示す。
[実施例20]
基材(S)-1に代えて基材(S)-4を用いた点以外は、実施例2の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表7に示す。
[実施例21]
基材(S)-1に代えて基材(S)-4を用いた点以外は、実施例3の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表7に示す。
[実施例22]
基材(S)-1に代えて基材(S)-6を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表7に示す。
[実施例23]
基材(S)-1に代えて基材(S)-6を用いた点以外は、実施例2の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表7に示す。
[実施例24]
基材(S)-1に代えて基材(S)-6を用いた点以外は、実施例3の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表7に示す。
[実施例25]
基材(S)-1に代えて基材(S)-7を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表7に示す。
[実施例26]
基材(S)-1に代えて基材(S)-7を用いた点以外は、実施例2の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表7に示す。
[実施例27]
基材(S)-1に代えて基材(S)-7を用いた点以外は、実施例3の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表7に示す。
[比較例13]
シリコーン系樹脂層の形成(シリコーン系樹脂層形成工程)を行わなかった点以外は、実施例25の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表7に示す。
[比較例14]
シリコーン系樹脂層の形成(シリコーン系樹脂層形成工程)を行わなかった点以外は、実施例26の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表7に示す。
[比較例15]
シリコーン系樹脂層の形成(シリコーン系樹脂層形成工程)を行わなかった点以外は、実施例27の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表7に示す。
[実施例28]
基材(S)-1に代えて基材(S)-8を用いた点と、印刷層の形成時に、前記設計線幅を銀インク組成物(I)-1の1ドット分に代えて2ドット分とした点、以外は、実施例1の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表8に示す。
[実施例29]
シリコーン系樹脂層の形成時に、基材(S)-8上で、互いに直交する2方向において、シリコーン系樹脂層の形成手段(W)-1を1往復させるのに代えて、3往復させた点以外は、実施例28の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。前記形成手段(W)-1のロール面のクリーニングは、前記形成手段(W)-1の最初の1往復のときのみ、行った。結果を表8に示す。
[実施例30]
シリコーン系樹脂層の形成時に、基材(S)-8上で、互いに直交する2方向において、シリコーン系樹脂層の形成手段(W)-1を1往復させるのに代えて、5往復させた点以外は、実施例28の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。前記形成手段(W)-1のロール面のクリーニングは、前記形成手段(W)-1の最初の1往復のときのみ、行った。結果を表8に示す。
[比較例16]
シリコーン系樹脂層の形成(シリコーン系樹脂層形成工程)を行わなかった点以外は、実施例28の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表8に示す。
[実施例31]
基材(S)-1に代えて基材(S)-9を用いた点と、印刷層の形成時に、前記設計線幅を銀インク組成物(I)-1の1ドット分に代えて2ドット分とした点、以外は、実施例1の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表8に示す。
[実施例32]
シリコーン系樹脂層の形成時に、基材(S)-9上で、互いに直交する2方向において、シリコーン系樹脂層の形成手段(W)-1を1往復させるのに代えて、3往復させた点以外は、実施例31の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。前記形成手段(W)-1のロール面のクリーニングは、前記形成手段(W)-1の最初の1往復のときのみ、行った。結果を表8に示す。
[実施例33]
シリコーン系樹脂層の形成時に、基材(S)-9上で、互いに直交する2方向において、シリコーン系樹脂層の形成手段(W)-1を1往復させるのに代えて、5往復させた点以外は、実施例31の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。前記形成手段(W)-1のロール面のクリーニングは、前記形成手段(W)-1の最初の1往復のときのみ、行った。結果を表8に示す。
[比較例17]
シリコーン系樹脂層の形成(シリコーン系樹脂層形成工程)を行わなかった点以外は、実施例31の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表8に示す。
[実施例34]
<<積層体の製造>>
<銀インク組成物の製造>
実施例1の場合と同じ方法で、銀インク組成物(I)-1を製造した。
<シリコーン系樹脂層の形成(シリコーン系樹脂層形成工程)>
クリーニングパッド(オーディオテクニカ社製「DMT-2032B」、非シリコンポリエチレン系樹脂製)を用いて、シリコーン系樹脂層の形成手段(W)-1のロール面をクリーニングした。
次いで、平面形状が矩形である基材(S)-1の一方の表面に、手動により、クリーニング済みの前記形成手段(W)-1のロール面を接触させ、基材(S)-1の縦方向に、基材(S)-1の両端間で前記形成手段(W)-1を転がして、1往復させた。
次いで、前記クリーニングパッドを用いて、前記形成手段(W)-1のロール面をクリーニングした。
次いで、基材(S)-1の前記形成手段(W)-1を転がしたこの領域内の表面に、手動により、再度クリーニング済みの前記形成手段(W)-1のロール面を接触させ、今度は基材(S)-1の横方向に、基材(S)-1の両端間で前記形成手段(W)-1を転がして、1往復させた。前記縦方向及び横方向のいずれの場合も、前記形成手段(W)-1を転がして、基材(S)-1上を移動させる速度を、40cm/sとし、前記形成手段(W)-1によって基材(S)-1に加える圧力を、0.014~0.036MPaとした。
このように、基材(S)-1の一方の表面上で、互いに直交する2方向において、1往復ずつ前記形成手段(W)-1を手動により転がすことによって、前記表面にシリコーン系樹脂層を形成した。
<金属銀層の形成(金属銀層形成工程)>
インクジェット印刷装置(コニカミノルタ社製「IJCS-1」、インクジェットヘッド「KM512MH」、液滴量14pL)と、上記で得られた銀インク組成物(I)-1と、を用いて、インクジェット印刷法により、基材(S)-1上のシリコーン系樹脂層の第1面(露出面)上に、3本の直線状の印刷層を互いに平行に形成した。このとき、各印刷層の両端部以外の設計線幅はすべて、銀インク組成物(I)-1の2ドット分とし、各印刷層の印刷回数は1とした。
次いで、前記印刷層に対して、130℃の熱風を5分吹き付けて、印刷層(すなわち銀インク組成物)を加熱処理することにより、印刷層から金属銀を形成して、基材(S)-1上に、3本の直線状の金属銀層を形成した。
以上により、目的とする積層体を製造した。
<<積層体の評価>>
上記で得られた積層体を、実施例1の場合と同じ方法で評価した。結果を表9に示す。
[実施例35]
<<積層体の製造>>
<銀インク組成物の製造>
実施例1の場合と同じ方法で、銀インク組成物(I)-1を製造した。
<シリコーン系樹脂層の形成(シリコーン系樹脂層形成工程)>
クリーニングパッド(オーディオテクニカ社製「DMT-2032B」、非シリコンポリエチレン系樹脂製)を用いて、シリコーン系樹脂層の形成手段(W)-1のロール面をクリーニングした。
次いで、平面形状が矩形である基材(S)-1の一方の表面に、手動により、クリーニング済みの前記形成手段(W)-1のロール面を接触させ、基材(S)-1の縦方向に、基材(S)-1の両端間で前記形成手段(W)-1を転がして、1往復させた。
次いで、前記クリーニングパッドを用いて、前記形成手段(W)-1のロール面をクリーニングした。
次いで、基材(S)-1の前記形成手段(W)-1を転がしたこの領域内の表面に、手動により、再度クリーニング済みの前記形成手段(W)-1のロール面を接触させ、今度は基材(S)-1の横方向に、基材(S)-1の両端間で前記形成手段(W)-1を転がして、1往復させた。
次いで、上記のように、前記形成手段(W)-1のロール面をクリーニングし、クリーニング済みの前記形成手段(W)-1を、基材(S)-1の同じ領域内で、縦方向に転がして1往復させ、前記形成手段(W)-1のロール面をクリーニングし、クリーニング済みの前記形成手段(W)-1を、基材(S)-1の同じ領域内で、横方向に転がして1往復させる工程を、もう一度繰り返し行った。4往復(縦方向及び横方向2往復ずつ)のいずれの場合も、前記形成手段(W)-1を転がして、基材(S)-1上を移動させる速度を、40cm/sとし、前記形成手段(W)-1によって基材(S)-1に加える圧力を、0.014~0.036MPaとした。
このように、基材(S)-1の一方の表面上で、互いに直交する2方向において、2往復ずつ、クリーニング済みの前記形成手段(W)-1を手動により転がすことによって、前記表面にシリコーン系樹脂層を形成した。
<金属銀層の形成(金属銀層形成工程)>
上記で得られた、シリコーン系樹脂層を備えた基材(S)-1を用いて、実施例34の場合と同じ方法で、金属銀層を形成した。
以上により、目的とする積層体を製造した。
<<積層体の評価>>
上記で得られた積層体を、実施例1の場合と同じ方法で評価した。結果を表9に示す。
<<積層体の製造及び評価>>
[実施例36]
シリコーン系樹脂層の形成時において、基材(S)-1の縦方向及び横方向での、クリーニング済みの前記形成手段(W)-1の往復回数を、2に代えて3とした点以外は、実施例35の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表9に示す。
[実施例37]
シリコーン系樹脂層の形成時において、基材(S)-1の縦方向及び横方向での、クリーニング済みの前記形成手段(W)-1の往復回数を、2に代えて5とした点以外は、実施例35の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表9に示す。
[実施例38]
シリコーン系樹脂層の形成時において、基材(S)-1の縦方向及び横方向での、クリーニング済みの前記形成手段(W)-1の往復回数を、2に代えて10とした点以外は、実施例35の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表9に示す。
[比較例18]
シリコーン系樹脂層の形成(シリコーン系樹脂層形成工程)を行わなかった点以外は、実施例34の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表9に示す。
[実施例39]
実施例34の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表9に示す。
[実施例40]
<<積層体の製造>>
<銀インク組成物の製造>
実施例1の場合と同じ方法で、銀インク組成物(I)-1を製造した。
<シリコーン系樹脂層の形成(シリコーン系樹脂層形成工程)>
クリーニングパッド(オーディオテクニカ社製「DMT-2032B」、非シリコンポリエチレン系樹脂製)を用いて、シリコーン系樹脂層の形成手段(W)-1のロール面をクリーニングした。
次いで、平面形状が矩形である基材(S)-1の一方の表面に、手動により、クリーニング済みの前記形成手段(W)-1のロール面を接触させ、基材(S)-1の縦方向に、基材(S)-1の両端間で前記形成手段(W)-1を転がして、1往復させた。
次いで、前記クリーニングパッドを用いて、前記形成手段(W)-1のロール面をクリーニングした。
次いで、基材(S)-1の前記形成手段(W)-1を転がしたこの領域内の表面に、手動により、再度クリーニング済みの前記形成手段(W)-1のロール面を接触させ、今度は基材(S)-1の横方向に、基材(S)-1の両端間で前記形成手段(W)-1を転がして、1往復させた。
次いで、前記形成手段(W)-1を、基材(S)-1の同じ領域内で、縦方向に転がして1往復させ、さらに横方向に転がして1往復させる工程を行った。4往復(縦方向及び横方向2往復ずつ)のいずれの場合も、前記形成手段(W)-1を転がして、基材(S)-1上を移動させる速度を、40cm/sとし、前記形成手段(W)-1によって基材(S)-1に加える圧力を、0.014~0.036MPaとした。
このように、基材(S)-1の一方の表面上で、互いに直交する2方向において、クリーニング済みの前記形成手段(W)-1を手動により1往復転がし、さらに、クリーニング未実施の前記形成手段(W)-1を手動により1往復転がすことによって、前記表面にシリコーン系樹脂層を形成した。
<金属銀層の形成(金属銀層形成工程)>
上記で得られた、シリコーン系樹脂層を備えた基材(S)-1を用いて、実施例39の場合と同じ方法で、金属銀層を形成した。
以上により、目的とする積層体を製造した。
<<積層体の評価>>
上記で得られた積層体を、実施例1の場合と同じ方法で評価した。結果を表9に示す。
<<積層体の製造及び評価>>
[実施例41]
シリコーン系樹脂層の形成時において、基材(S)-1の縦方向及び横方向での、クリーニング未実施の前記形成手段(W)-1の往復回数を、1に代えて2とした(縦方向及び横方向での往復回数をそれぞれ合計で3とした)点以外は、実施例40の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表9に示す。
[実施例42]
シリコーン系樹脂層の形成時において、基材(S)-1の縦方向及び横方向での、クリーニング未実施の前記形成手段(W)-1の往復回数を、1に代えて4とした(縦方向及び横方向での往復回数をそれぞれ合計で5とした)点以外は、実施例40の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表9に示す。
[実施例43]
シリコーン系樹脂層の形成時において、基材(S)-1の縦方向及び横方向での、クリーニング未実施の前記形成手段(W)-1の往復回数を、1に代えて9とした(縦方向及び横方向での往復回数をそれぞれ合計で10とした)点以外は、実施例40の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表9に示す。
[比較例19]
シリコーン系樹脂層の形成(シリコーン系樹脂層形成工程)を行わなかった点以外は、実施例39の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表9に示す。
[実施例44]
<<積層体の製造>>
<銀インク組成物の製造>
実施例1の場合と同じ方法で、銀インク組成物(I)-1を製造した。
<シリコーン系樹脂層の形成(シリコーン系樹脂層形成工程)>
クリーニングパッド(オーディオテクニカ社製「DMT-2032B」、非シリコンポリエチレン系樹脂製)と、シリコーン系樹脂層の形成手段(W)-1と、を備えた自動クリーニング装置(オーディオテクニカ社製「TCT-640」)を用いて、前記形成手段(W)-1のロール面をクリーニングした。
次いで、前記自動クリーニング装置を用いて、平面形状が矩形である基材(S)-1の一方の表面に、クリーニング済みの前記形成手段(W)-1のロール面を接触させ、基材(S)-1の縦方向に、基材(S)-1の両端間で前記形成手段(W)-1を転がして、1往復させた。このとき、前記形成手段(W)-1を転がして、基材(S)-1上を移動させる速度を、6.2cm/sとし、前記形成手段(W)-1によって基材(S)-1に加える圧力を、0.5MPaとした。
このように、基材(S)-1の一方の表面上で、1方向において1往復、前記形成手段(W)-1を自動により転がすことによって、前記表面にシリコーン系樹脂層を形成した。
<金属銀層の形成(金属銀層形成工程)>
インクジェット印刷装置(コニカミノルタ社製「IJCS-1」、インクジェットヘッド「KM512MH」、液滴量14pL)と、上記で得られた銀インク組成物(I)-1と、を用いて、インクジェット印刷法により、基材(S)-1上のシリコーン系樹脂層の第1面(露出面)上に、3本の直線状の印刷層を互いに平行に形成した。このとき、各印刷層の両端部以外の設計線幅はすべて、銀インク組成物(I)-1の2ドット分とし、各印刷層の印刷回数は1とした。
次いで、前記印刷層に対して、130℃の熱風を5分吹き付けて、印刷層(すなわち銀インク組成物)を加熱処理することにより、印刷層から金属銀を形成して、基材(S)-1上に、3本の直線状の金属銀層を形成した。
以上により、目的とする積層体を製造した。
<<積層体の評価>>
上記で得られた積層体を、実施例1の場合と同じ方法で評価した。結果を表10に示す。
<<積層体の製造及び評価>>
[実施例45]
シリコーン系樹脂層の形成時において、前記形成手段(W)-1を移動させる速度を、6.2cm/sに代えて、18.5cm/sとした点以外は、実施例44の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表10に示す。
[実施例46]
シリコーン系樹脂層の形成時において、前記形成手段(W)-1を移動させる速度を、6.2cm/sに代えて、25.8cm/sとした点以外は、実施例44の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表10に示す。
[実施例47]
シリコーン系樹脂層の形成時において、前記形成手段(W)-1を移動させる速度を、6.2cm/sに代えて、35.4cm/sとした点以外は、実施例44の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表10に示す。
[実施例48]
シリコーン系樹脂層の形成時において、前記形成手段(W)-1を移動させる速度を、6.2cm/sに代えて、42.2cm/sとした点以外は、実施例44の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表10に示す。
[実施例49]
シリコーン系樹脂層の形成時において、前記形成手段(W)-1を移動させる速度を、6.2cm/sに代えて、43.5cm/sとした点以外は、実施例44の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表10に示す。
[比較例20]
シリコーン系樹脂層の形成(シリコーン系樹脂層形成工程)を行わなかった点以外は、実施例44の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。結果を表10に示す。
[実施例50]
シリコーン系樹脂層の形成時に、基材(S)-1上で、1方向において、シリコーン系樹脂層の形成手段(W)-1を1往復させるのに代えて、2往復させた点以外は、実施例44の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。前記形成手段(W)-1のロール面のクリーニングは、前記形成手段(W)-1の最初の1往復のときのみ、行った。結果を表10に示す。
[実施例51]
シリコーン系樹脂層の形成時に、基材(S)-1上で、1方向において、シリコーン系樹脂層の形成手段(W)-1を1往復させるのに代えて、2往復させた点以外は、実施例45の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。前記形成手段(W)-1のロール面のクリーニングは、前記形成手段(W)-1の最初の1往復のときのみ、行った。結果を表10に示す。
[実施例52]
シリコーン系樹脂層の形成時に、基材(S)-1上で、1方向において、シリコーン系樹脂層の形成手段(W)-1を1往復させるのに代えて、2往復させた点以外は、実施例46の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。前記形成手段(W)-1のロール面のクリーニングは、前記形成手段(W)-1の最初の1往復のときのみ、行った。結果を表10に示す。
[実施例53]
シリコーン系樹脂層の形成時に、基材(S)-1上で、互いに直交する2方向において、シリコーン系樹脂層の形成手段(W)-1を1往復させるのに代えて、2往復させた点以外は、実施例47の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。前記形成手段(W)-1のロール面のクリーニングは、前記形成手段(W)-1の最初の1往復のときのみ、行った。結果を表10に示す。
[実施例54]
シリコーン系樹脂層の形成時に、基材(S)-1上で、1方向において、シリコーン系樹脂層の形成手段(W)-1を1往復させるのに代えて、2往復させた点と、前記形成手段(W)-1を移動させる速度を、42.2cm/sに代えて、39.8cm/sとした点、以外は、実施例48の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。前記形成手段(W)-1のロール面のクリーニングは、前記形成手段(W)-1の最初の1往復のときのみ、行った。結果を表10に示す。
[実施例55]
シリコーン系樹脂層の形成時に、基材(S)-1上で、1方向において、シリコーン系樹脂層の形成手段(W)-1を1往復させるのに代えて、2往復させた点以外は、実施例49の場合と同じ方法で、積層体を製造し、評価した。前記形成手段(W)-1のロール面のクリーニングは、前記形成手段(W)-1の最初の1往復のときのみ、行った。結果を表10に示す。
Figure 0007454772000009
Figure 0007454772000010
Figure 0007454772000011
Figure 0007454772000012
Figure 0007454772000013
Figure 0007454772000014
上記結果から明らかなように、実施例1~55においては、濡れ性向上剤が未配合の銀インク組成物(I)-1を用いて、インクジェット印刷法によって、基材上に金属銀層を形成し、簡便な方法で積層体を製造できた。実施例1~55においては、金属銀層の線幅が323nm以下(110~323nm)であり、金属銀層の線幅比率が71.6%以下(35.7~71.6%)であって、シリコーン系樹脂層を形成することによって、線幅が縮小され、ほぼ設計どおりに細い線幅の金属銀層が形成されていた。これは、基材上での銀インク組成物の滲みが抑制されたことによる効果であった。また、実施例1~55においては、算出可能であった範囲で、金属銀層の抵抗値が428.96Ω/mm以下(11.68~428.96Ω/mm)であり、金属銀層の抵抗値比率が86.9%以下(1.0~86.9%)であって、金属銀層の抵抗値が低めで安定していた。これは、上記のように、銀インク組成物の滲みが抑制されたことで、金属銀層の厚さが一定値以上で安定したことによる効果であった。
実施例34~38及び比較例18における、金属銀層の線幅(μm)と抵抗値(Ω/mm)の値をグラフ化したものを、図6に示す。
図6から明らかなように、クリーニング済みのシリコーン系樹脂層の形成手段(W)-1を基材(S)-1上で1往復させれば、シリコーン系樹脂層を形成したことによる効果が、十分に得られていた。また、その効果は、シリコーン系樹脂層の形成手段(W)-1を用いなかった場合に対して、顕著に高かった。
実施例39~43及び比較例19における、金属銀層の線幅(μm)と抵抗値(Ω/mm)の値をグラフ化したものを、図7に示す。
図7から明らかなように、シリコーン系樹脂層の形成手段(W)-1を基材(S)-1上で往復させる回数によらず、シリコーン系樹脂層を形成したことによる効果は、ほぼ同じであった。換言すると、前記形成手段(W)-1のクリーニングを、最初の1往復のときに行えば、以降の往復のときに行わなくても、シリコーン系樹脂層を形成したことによる効果が十分に得られた。また、その効果は、シリコーン系樹脂層の形成手段(W)-1を用いなかった場合に対して、顕著に高かった。
また、図6と図7との比較から、シリコーン系樹脂層の形成手段(W)-1のクリーニングは、前記形成手段(W)-1の往復時に毎回行った場合の方が、最初の1往復のときだけ行った場合よりも、シリコーン系樹脂層を形成したことによる効果が高いことを確認できた。
実施例44~49及び比較例20における、金属銀層の線幅(μm)と抵抗値(Ω/mm)の値をグラフ化したものを、図8に示す。
また、実施例50~55における、金属銀層の線幅(μm)と抵抗値(Ω/mm)の値をグラフ化したものを、図9に示す。
図8から明らかなように、シリコーン系樹脂層の形成手段(W)-1を1往復させるときには、前記形成手段(W)-1の移動速度が、35.4cm/s以下(6.2~35.4cm/s)の場合に、シリコーン系樹脂層を形成したことによる効果が、より高かった。
一方、図9から明らかなように、シリコーン系樹脂層の形成手段(W)-1を2往復させるときには、前記形成手段(W)-1の移動速度が、35.4cm/s超の場合も、シリコーン系樹脂層を形成したことによる高い効果が得られた。
すなわち、前記形成手段(W)-1の移動速度が速い場合には、前記形成手段(W)-1の往復回数を増やすことで、シリコーン系樹脂層を形成したことによる効果が高くなることを確認できた。
さらに、前記形成手段(W)-1を自動により移動させた(転がした)場合にも、手動の場合と同様の効果が得られた。
本発明は、基材上に金属銀層からなる配線を備えた配線基板をはじめとして、形状に一定程度の精度が求められる金属銀層を基材上に備えた積層体全般として利用可能である。
1・・・積層体、
11・・・基材、11a・・・基材の第1面(一方の面)、
12・・・シリコーン系樹脂層、12a・・・シリコーン系樹脂層の第1面(基材側とは反対側の面)、
13・・・金属銀層、13’・・・印刷層、
12・・・シリコーン系樹脂層の厚さ、
121・・・金属銀層の線幅

Claims (4)

  1. 基材と、前記基材の一方の面上に設けられたシリコーン系樹脂層と、前記シリコーン系樹脂層の前記基材側とは反対側の面上に設けられた金属銀層と、を備えており、
    前記シリコーン系樹脂層の厚さが1nm以下である、積層体。
  2. 前記金属銀層が、幅が330μm以下の線状である、請求項1に記載の積層体。
  3. 積層体の製造方法であって、
    前記積層体は、基材と、前記基材の一方の面上に設けられたシリコーン系樹脂層と、前記シリコーン系樹脂層の前記基材側とは反対側の面上に設けられた金属銀層と、を備えており、
    前記シリコーン系樹脂層の厚さが1nm以下であり、
    前記製造方法は、前記基材の一方の面上に、厚さが1nm以下である前記シリコーン系樹脂層を形成する工程と、前記シリコーン系樹脂層の前記基材側とは反対側の面上に、前記金属銀層を形成する工程と、を有し、
    前記金属銀層を形成する工程において、前記シリコーン系樹脂層の前記基材側とは反対側の面上に、インクジェット印刷法により、金属銀の形成材料が配合されてなる銀インク組成物を吐出し、固化させることにより、前記金属銀層を形成する、積層体の製造方法。
  4. 前記シリコーン系樹脂層を形成する工程において、シリコーン系樹脂を含有する材料を、前記基材の一方の面上に接触させることにより、前記シリコーン系樹脂層を形成する、請求項3に記載の積層体の製造方法。
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