JP6314012B2 - 銀インク組成物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、銀インク組成物の製造方法に関する。
金属銀は、記録材料や印刷刷版の材料として、また、導電性に優れることから高導電性材料として幅広く使用されている。
これまでに金属銀の一般的な製造方法としては、例えば、ベヘン酸銀、ステアリン酸銀、α−ケトカルボン酸銀、β−ケトカルボン酸銀等の有機酸銀を用いる方法が開示されている。例えば、β−ケトカルボン酸銀は、約210℃以下の低温で加熱処理しても速やかに金属銀を形成する(特許文献1参照)。このような優れた特性を生かして、β−ケトカルボン酸銀を溶媒に溶解させて銀インク組成物を調製し、これを基材上に付着させて加熱処理することで、金属銀を形成する方法が開示されている(特許文献1参照)。
一方で、金属銀形成時の加熱処理については、加熱温度のさらなる低温化が期待されている。その理由は、加熱温度が低温となることで、銀インク組成物を印刷して加熱処理を行う基材の材質に関する制約が少なくなり、耐熱性が高くない材質の基材も用いることができるようになり、銀インク組成物の利用範囲が大きく広がるからである。例えば、通信機器の筐体に、このような耐熱性が高くない材質を用いた場合に、筐体の一部を電子回路の基材として用いることが可能になるなど、通信機器の設計の自由度が飛躍的に向上する。
これに対して、ギ酸銀とアミン化合物が混合されてなる液状組成物を基材上に塗工して、90℃で加熱処理を行うことにより、金属銀被膜を形成する方法が開示されている(特許文献2参照)。
特開2009−114232号公報 特開2012−069273号公報
しかしながら、特許文献2に記載の方法では、液状組成物の銀濃度が極めて低いため、十分な導電性を有する金属銀を形成するためには、液状組成物の塗工を繰り返し行う必要があり、十分な導電性を有する金属銀を形成することは、実質的に困難である場合があった。このように、より低温での加熱処理によって、十分な導電性を有する金属銀を形成可能な銀インク組成物は、これまでに開示されていないのが実情であった。
これに対し、発明者らは、式「−COOAg」で表される基を有するカルボン酸銀と、炭素数25以下のアミン化合物及び第4級アンモニウム塩、アンモニア、並びに前記アミン化合物又はアンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩からなる群から選択される一種以上の含窒素化合物と、シュウ酸、ヒドラジン及び下記一般式(5)で表される化合物からなる群から選択される一種以上の還元性化合物と、が混合されてなることを特徴とする銀インク組成物が、より低温での加熱処理によって、十分な導電性を有する金属銀を形成可能であることを見出した。
H−C(=O)−R21 ・・・・(5)
(式中、R21は、炭素数20以下のアルキル基、アルコキシ基若しくはN,N−ジアルキルアミノ基、水酸基又はアミノ基である。)
しかしながら、発明者らは更に、上記の銀インク組成物の製造において、材料を均質に混合し、均質な銀インク組成物を作製することが困難な場合があることを見出した。その結果、銀インク組成物の性能にロットごとのばらつきが生じる場合がある。
そこで、本発明は、より低温での加熱処理によって、十分な導電性を有する金属銀を形成可能な銀インク組成物の製造方法であって、銀インク組成物の材料の混合の均質性が向上された製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、銀インク組成物の製造方法であって、式「−COOAg」で表される基を有するカルボン酸銀と、炭素数25以下のアミン化合物、炭素数25以下の第4級アンモニウム塩、アンモニア及び前記アミン化合物又はアンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩からなる群から選択される一種以上の含窒素化合物と、を炭素数7〜10の炭化水素の共存下で混合し、第1の混合物を得る第1工程と、前記第1の混合物と、シュウ酸、ヒドラジン及び下記一般式(5)で表される化合物からなる群から選択される一種以上の還元性化合物と、を混合し、銀インク組成物を得るとともに前記炭素数7〜10の炭化水素を揮発除去する第2工程と、を含む、製造方法を提供する。
H−C(=O)−R21…(5)
(式中、R21は、炭素数20以下のアルキル基、アルコキシ基若しくはN,N−ジアルキルアミノ基、水酸基又はアミノ基である。)
本発明によれば、より低温での加熱処理によって、十分な導電性を有する金属銀を形成可能な銀インク組成物の製造方法であって、銀インク組成物の材料の混合の均質性が向上された製造方法を提供することができる。
<銀インク組成物>
本発明の製造方法によって製造される銀インク組成物としては、式「−COOAg」で表される基を有するカルボン酸銀(以下、単に「カルボン酸銀」と略記することがある)と、炭素数25以下のアミン化合物、炭素数25以下の第4級アンモニウム塩、アンモニア及び前記アミン化合物又はアンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩からなる群から選択される一種以上の含窒素化合物(以下、単に「含窒素化合物」と略記することがある)と、シュウ酸、ヒドラジン及び下記一般式(5)で表される化合物(以下、「化合物(5)」と略記することがある)からなる群から選択される一種以上の還元性化合物(以下、単に「還元性化合物」と略記することがある)と、が混合されてなるものが好ましい。
H−C(=O)−R21 ・・・・(5)
(式中、R21は、炭素数20以下のアルキル基、アルコキシ基若しくはN,N−ジアルキルアミノ基、水酸基又はアミノ基である。)
前記還元性化合物を混合することで、前記銀インク組成物は、金属銀をより形成し易くなり、例えば、低温での加熱処理でも十分な導電性を有する金属銀層(導電体)を形成できる。
[カルボン酸銀]
金属銀の形成材料としては、式「−COOAg」で表される基を有するカルボン酸銀が例示できる。
本発明において、カルボン酸銀は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
前記カルボン酸銀は、式「−COOAg」で表される基を有していれば特に限定されない。例えば、式「−COOAg」で表される基の数は1個のみでもよいし、2個以上でもよい。また、カルボン酸銀中の式「−COOAg」で表される基の位置も特に限定されない。
前記カルボン酸銀は、下記一般式(1)で表わされるβ−ケトカルボン酸銀(以下、「β−ケトカルボン酸銀(1)」と略記することがある)及び下記一般式(4)で表されるカルボン酸銀(以下、「カルボン酸銀(4)」と略記することがある)からなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
なお、本明細書においては、単なる「カルボン酸銀」との記載は、特に断りの無い限り、「β−ケトカルボン酸銀(1)」及び「カルボン酸銀(4)」だけではなく、これらを包括する、「式「−COOAg」で表される基を有するカルボン酸銀」を意味するものとする。
Figure 0006314012
(式中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R−CY −」、「CY −」、「R−CHY−」、「RO−」、「RN−」、「(RO)CY−」若しくは「R−C(=O)−CY −」で表される基であり;
はそれぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子であり;Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であり;Rは炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり;Rは炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であり;R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基であり;Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であり;
はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基、又は一般式「RO−」、「RS−」、「R−C(=O)−」若しくは「R−C(=O)−O−」で表される基であり;
は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基である。)
Figure 0006314012
(式中、Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、カルボキシ基又は式「−C(=O)−OAg」で表される基であり、前記脂肪族炭化水素基がメチレン基を有する場合、1個以上の該メチレン基はカルボニル基で置換されていてもよい。)
(β−ケトカルボン酸銀(1))
β−ケトカルボン酸銀(1)は、前記一般式(1)で表される。
式中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R−CY −」、「CY −」、「R−CHY−」、「RO−」、「RN−」、「(RO)CY−」若しくは「R−C(=O)−CY −」で表される基である。
Rにおける炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状(脂肪族環式基)のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。また、前記脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基及び不飽和脂肪族炭化水素基のいずれでもよい。そして、前記脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜6であることがより好ましい。Rにおける好ましい前記脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が例示できる。
Rにおける直鎖状又は分枝鎖状の前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、1,1−ジメチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、4,4−ジメチルペンチル基、1−エチルペンチル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、4−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、1−プロピルブチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、1−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、4−エチルヘキシル基、5−エチルヘキシル基、1,1−ジメチルヘキシル基、2,2−ジメチルヘキシル基、3,3−ジメチルヘキシル基、4,4−ジメチルヘキシル基、5,5−ジメチルヘキシル基、1−プロピルペンチル基、2−プロピルペンチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基が例示できる。
Rにおける環状の前記アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、トリシクロデシル基が例示できる。
Rにおける前記アルケニル基としては、ビニル基(エテニル基、−CH=CH)、アリル基(2−プロペニル基、−CH−CH=CH)、1−プロペニル基(−CH=CH−CH)、イソプロペニル基(−C(CH)=CH)、1−ブテニル基(−CH=CH−CH−CH)、2−ブテニル基(−CH−CH=CH−CH)、3−ブテニル基(−CH−CH−CH=CH)、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル基等の、Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の1個の単結合(C−C)が二重結合(C=C)に置換された基が例示できる。
Rにおける前記アルキニル基としては、エチニル基(−C≡CH)、プロパルギル基(−CH−C≡CH)等の、Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の1個の単結合(C−C)が三重結合(C≡C)に置換された基が例示できる。
Rにおける炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよく、好ましい前記置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が例示できる。また、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、すべての置換基が同一であってもよいし、すべての置換基が異なっていてもよく、一部の置換基のみが異なっていてもよい。
Rにおけるフェニル基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよく、好ましい前記置換基としては、炭素数が1〜16の飽和又は不飽和の一価の脂肪族炭化水素基、該脂肪族炭化水素基が酸素原子に結合してなる一価の基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基(−OH)、シアノ基(−C≡N)、フェノキシ基(−O−C)等が例示でき、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
置換基である前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるYは、それぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子である。そして、一般式「R−CY −」、「CY −」及び「R−C(=O)−CY −」においては、それぞれ複数個のYは、互いに同一でも異なっていてもよい。
RにおけるRは、炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基(C−)であり、Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるRは、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるRは、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であり、炭素数が1〜16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるR及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基である。すなわち、R及びRは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数が1〜18である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるRは、炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であり、Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
Rは、上記の中でも、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、一般式「R−C(=O)−CY −」で表される基、水酸基又はフェニル基であることが好ましい。そして、Rは、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であることが好ましい。
一般式(1)において、Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基(C−CH−)、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基(C−O−CH=CH−)、又は一般式「RO−」、「RS−」、「R−C(=O)−」若しくは「R−C(=O)−O−」で表される基である。
における炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基としては、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
におけるフェニル基及びベンジル基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよく、好ましい前記置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ニトロ基(−NO)等が例示でき、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
におけるRは、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基(CS−)、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基(ビフェニル基、C−C−)である。Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜10である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。また、Rにおけるフェニル基及びジフェニル基の前記置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等が例示でき、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
がチエニル基又はジフェニル基である場合、これらの、Xにおいて隣接する基又は原子(酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基)との結合位置は、特に限定されない。例えば、チエニル基は、2−チエニル基及び3−チエニル基のいずれでもよい。
一般式(1)において、2個のXは、2個のカルボニル基で挟まれた炭素原子と二重結合を介して1個の基として結合していてもよく、このようなものとしては式「=CH−C−NO」で表される基が例示できる。
は、上記の中でも、水素原子、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、ベンジル基、又は一般式「R−C(=O)−」で表される基であることが好ましく、少なくとも一方のXが水素原子であることが好ましい。
β−ケトカルボン酸銀(1)は、2−メチルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CH)−C(=O)−OAg)、アセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、2−エチルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CHCH)−C(=O)−OAg)、プロピオニル酢酸銀(CHCH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、イソブチリル酢酸銀((CHCH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、ピバロイル酢酸銀((CHC−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、カプロイル酢酸銀(CH(CHCH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、2−n−ブチルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CHCHCHCH)−C(=O)−OAg)、2−ベンジルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CH)−C(=O)−OAg)、ベンゾイル酢酸銀(C−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、ピバロイルアセト酢酸銀((CHC−C(=O)−CH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、イソブチリルアセト酢酸銀((CHCH−C(=O)−CH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、2−アセチルピバロイル酢酸銀((CHC−C(=O)−CH(−C(=O)−CH)−C(=O)−OAg)、2−アセチルイソブチリル酢酸銀((CHCH−C(=O)−CH(−C(=O)−CH)−C(=O)−OAg)、又はアセトンジカルボン酸銀(AgO−C(=O)−CH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)であることが好ましい。
β−ケトカルボン酸銀(1)は、乾燥処理や加熱(焼成)処理等の後処理により形成された導電体(金属銀)において、残存する原料や不純物の濃度をより低減できる。原料や不純物が少ない程、例えば、形成された金属銀同士の接触が良好となり、導通が容易となり、抵抗率が低下する。
β−ケトカルボン酸銀(1)は、後述するように、当該分野で公知の還元性化合物等を使用しなくても、好ましくは60〜210℃、より好ましくは60〜200℃という低温で分解し、金属銀を形成することが可能である。そして、還元性化合物と併用することで、より低温で分解して金属銀を形成する。還元性化合物については後ほど説明する。
本発明において、β−ケトカルボン酸銀(1)は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
(カルボン酸銀(4))
カルボン酸銀(4)は、前記一般式(4)で表される
式中、Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、カルボキシ基(−COOH)又は式「−C(=O)−OAg」で表される基である。
における前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。ただし、Rにおける前記脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜15であることが好ましく、1〜10であることがより好ましい。
における前記脂肪族炭化水素基がメチレン基(−CH−)を有する場合、1個以上の該メチレン基はカルボニル基で置換されていてもよい。カルボニル基で置換されていてもよいメチレン基の数及び位置は特に限定されず、すべてのメチレン基がカルボニル基で置換されていてもよい。ここで「メチレン基」とは、単独の式「−CH−」で表される基だけでなく、式「−CH−」で表される基が複数個連なったアルキレン基中の1個の式「−CH−」で表される基も含むものとする。
カルボン酸銀(4)は、ピルビン酸銀(CH−C(=O)−C(=O)−OAg)、酢酸銀(CH−C(=O)−OAg)、酪酸銀(CH−(CH−C(=O)−OAg)、イソ酪酸銀((CHCH−C(=O)−OAg)、2−エチルへキサン酸銀(CH−(CH−CH(CHCH)−C(=O)−OAg)、ネオデカン酸銀(CH−(CH−C(CH−C(=O)−OAg)、シュウ酸銀(AgO−C(=O)−C(=O)−OAg)、又はマロン酸銀(AgO−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)であることが好ましい。また、上記のシュウ酸銀(AgO−C(=O)−C(=O)−OAg)及びマロン酸銀(AgO−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)の2個の式「−COOAg」で表される基のうち、1個が式「−COOH」で表される基となったもの(HO−C(=O)−C(=O)−OAg、HO−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)も好ましい。
カルボン酸銀(4)も、β−ケトカルボン酸銀(1)と同様に、乾燥処理や加熱(焼成)処理等の後処理により形成された導電体(金属銀)において、残存する原料や不純物の濃度をより低減できる。そして、還元性化合物と併用することで、より低温で分解して金属銀を形成する。
本発明において、カルボン酸銀(4)は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
前記カルボン酸銀は、2−メチルアセト酢酸銀、アセト酢酸銀、2−エチルアセト酢酸銀、プロピオニル酢酸銀、イソブチリル酢酸銀、ピバロイル酢酸銀、カプロイル酢酸銀、2−n−ブチルアセト酢酸銀、2−ベンジルアセト酢酸銀、ベンゾイル酢酸銀、ピバロイルアセト酢酸銀、イソブチリルアセト酢酸銀、アセトンジカルボン酸銀、ピルビン酸銀、酢酸銀、酪酸銀、イソ酪酸銀、2−エチルへキサン酸銀、ネオデカン酸銀、シュウ酸銀及びマロン酸銀からなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
そして、これらカルボン酸銀の中でも、2−メチルアセト酢酸銀及びアセト酢酸銀は、後述する含窒素化合物(なかでもアミン化合物)との相溶性に優れ、銀インク組成物の高濃度化に、特に適したものとして挙げられる。
銀インク組成物において、前記金属銀の形成材料に由来する銀の含有量は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。このような範囲であることで、形成された導電体(金属銀)は品質により優れたものとなる。前記銀の含有量の上限値は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、取り扱い性等を考慮すると25質量%であることが好ましい。
なお、本明細書において、「金属銀の形成材料に由来する銀」とは、特に断りの無い限り、銀インク組成物の製造時に配合された前記金属銀の形成材料中の銀を意味し、配合後に引き続き金属銀の形成材料を構成している銀と、配合後に金属銀の形成材料が分解して生じた分解物中の銀及び銀自体と、の両方を含む概念とする。
[含窒素化合物]
前記含窒素化合物は、炭素数25以下のアミン化合物(以下、「アミン化合物」と略記することがある)、炭素数25以下の第4級アンモニウム塩(以下、「第4級アンモニウム塩」と略記することがある)、アンモニア、炭素数25以下のアミン化合物が酸と反応してなるアンモニウム塩(以下、「アミン化合物由来のアンモニウム塩」と略記することがある)、及びアンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩(以下、「アンモニア由来のアンモニウム塩」と略記することがある)からなる群から選択される一種以上のものである。すなわち、配合される含窒素化合物は、一種のみでよいし、二種以上でもよく、二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
(アミン化合物、第4級アンモニウム塩)
前記アミン化合物は、炭素数が1〜25であり、第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミンのいずれでもよい。また、前記第4級アンモニウム塩は、炭素数が4〜25である。前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩は、鎖状及び環状のいずれでもよい。また、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子(例えば、第1級アミンのアミノ基(−NH)を構成する窒素原子)の数は1個でもよいし、2個以上でもよい。
前記第1級アミンとしては、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいモノアルキルアミン、モノアリールアミン、モノ(ヘテロアリール)アミン、ジアミン等が例示できる。
前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、Rにおける前記アルキル基と同様のものが例示でき、炭素数が1〜19の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。
好ましい前記モノアルキルアミンとして、具体的には、n−ブチルアミン、n−へキシルアミン、n−オクチルアミン、n−ドデシルアミン、n−オクタデシルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、3−アミノペンタン、3−メチルブチルアミン、2−ヘプチルアミン(2−アミノヘプタン)、2−アミノオクタン、2−エチルヘキシルアミン、1,2−ジメチル−n−プロピルアミンが例示できる。
前記モノアリールアミンを構成するアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が例示でき、炭素数が6〜10であることが好ましい。
前記モノ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基は、芳香族環骨格を構成する原子として、ヘテロ原子を有するものであり、前記ヘテロ原子としては、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、ホウ素原子が例示できる。また、芳香族環骨格を構成する前記へテロ原子の数は特に限定されず、1個でもよいし、2個以上でもよい。2個以上である場合、これらへテロ原子は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、これらへテロ原子は、すべて同じでもよいし、すべて異なっていてもよく、一部だけ異なっていてもよい。
前記ヘテロアリール基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、その環員数(環骨格を構成する原子の数)も特に限定されないが、3〜12員環であることが好ましい。
前記ヘテロアリール基で、窒素原子を1〜4個有する単環状のものとしては、ピロリル基、ピロリニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、ピペリジニル基、ピラゾリジニル基、ピペラジニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1個有する単環状のものとしては、フラニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1個有する単環状のものとしては、チエニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する単環状のものとしては、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、モルホリニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する単環状のものとしては、チアゾリル基、チアジアゾリル基、チアゾリジニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、窒素原子を1〜5個有する多環状のものとしては、インドリル基、イソインドリル基、インドリジニル基、ベンズイミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、インダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、テトラゾロピリジル基、テトラゾロピリダジニル基、ジヒドロトリアゾロピリダジニル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜3個有する多環状のものとしては、ジチアナフタレニル基、ベンゾチオフェニル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する多環状のものとしては、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する多環状のものとしては、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ジアミンは、アミノ基を2個有していればよく、2個のアミノ基の位置関係は特に限定されない。好ましい前記ジアミンとしては、前記モノアルキルアミン、モノアリールアミン又はモノ(ヘテロアリール)アミンにおいて、アミノ基(−NH)を構成する水素原子以外の1個の水素原子が、アミノ基で置換されたものが例示できる。
前記ジアミンは炭素数が1〜10であることが好ましく、より好ましいものとしてはエチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタンが例示できる。
前記第2級アミンとしては、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいジアルキルアミン、ジアリールアミン、ジ(ヘテロアリール)アミン等が例示できる。
前記ジアルキルアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、ジアルキルアミン一分子中の2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
好ましい前記ジアルキルアミンとして、具体的には、N−メチル−n−ヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミンが例示できる。
前記ジアリールアミンを構成するアリール基は、前記モノアリールアミンを構成するアリール基と同様であり、炭素数が6〜10であることが好ましい。また、ジアリールアミン一分子中の2個のアリール基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記ジ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基は、前記モノ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基と同様であり、6〜12員環であることが好ましい。また、ジ(ヘテロアリール)アミン一分子中の2個のヘテロアリール基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記第3級アミンとしては、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいトリアルキルアミン、ジアルキルモノアリールアミン等が例示できる。
前記トリアルキルアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜19の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、トリアルキルアミン一分子中の3個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、3個のアルキル基は、すべてが同じでもよいし、すべてが異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。
好ましい前記トリアルキルアミンとして、具体的には、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンが例示できる。
前記ジアルキルモノアリールアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、ジアルキルモノアリールアミン一分子中の2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記ジアルキルモノアリールアミンを構成するアリール基は、前記モノアリールアミンを構成するアリール基と同様であり、炭素数が6〜10であることが好ましい。
本発明において、前記第4級アンモニウム塩としては、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいハロゲン化テトラアルキルアンモニウム等が例示できる。
前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜19であることが好ましい。
また、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム一分子中の4個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、4個のアルキル基は、すべてが同じでもよいし、すべてが異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。
前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを構成するハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が例示できる。
好ましい前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムとして、具体的には、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミドが例示できる。
ここまでは、主に鎖状のアミン化合物及び第4級有機アンモニウム塩について説明したが、前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩は、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子が環骨格構造(複素環骨格構造)の一部であるようなヘテロ環化合物であってもよい。すなわち、前記アミン化合物は環状アミンでもよく、前記第4級アンモニウム塩は環状アンモニウム塩でもよい。この時の環(アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子を含む環)構造は、単環状及び多環状のいずれでもよく、その環員数(環骨格を構成する原子の数)も特に限定されず、脂肪族環及び芳香族環のいずれでもよい。
環状アミンであれば、好ましいものとして、ピリジンが例示できる。
前記第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン及び第4級アンモニウム塩において、「置換基で置換されていてもよい水素原子」とは、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子に結合している水素原子以外の水素原子である。この時の置換基の数は特に限定されず、1個でもよいし、2個以上でもよく、前記水素原子のすべてが置換基で置換されていてもよい。置換基の数が複数の場合には、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、複数個の置換基はすべて同じでもよいし、すべて異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。また、置換基の位置も特に限定されない。
前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩における前記置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、トリフルオロメチル基(−CF)等が例示できる。ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基が置換基を有する場合、かかるアルキル基は、置換基としてアリール基を有する、炭素数が1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は置換基として好ましくは炭素数が1〜5のアルキル基を有する、炭素数が3〜7の環状のアルキル基が好ましく、このような置換基を有するモノアルキルアミンとして、具体的には、2−フェニルエチルアミン、ベンジルアミン、2,3−ジメチルシクロヘキシルアミンが例示できる。
また、置換基である前記アリール基及びアルキル基は、さらに1個以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよく、このようなハロゲン原子で置換された置換基を有するモノアルキルアミンとしては、2−ブロモベンジルアミンが例示できる。ここで、前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
前記モノアリールアミンを構成するアリール基が置換基を有する場合、かかるアリール基は、置換基としてハロゲン原子を有する、炭素数が6〜10のアリール基が好ましく、このような置換基を有するモノアリールアミンとして、具体的には、ブロモフェニルアミンが例示できる。ここで、前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
前記ジアルキルアミンを構成するアルキル基が置換基を有する場合、かかるアルキル基は、置換基として水酸基又はアリール基を有する、炭素数が1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、このような置換基を有するジアルキルアミンとして、具体的には、ジエタノールアミン、N−メチルベンジルアミンが例示できる。
前記アミン化合物は、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−へキシルアミン、n−オクチルアミン、n−ドデシルアミン、n−オクタデシルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、3−アミノペンタン、3−メチルブチルアミン、2−ヘプチルアミン、2−アミノオクタン、2−エチルヘキシルアミン、2−フェニルエチルアミン、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、N−メチル−n−ヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、N−メチルベンジルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミン、1,2−ジメチル−n−プロピルアミン、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン又はN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンであることが好ましい。
そして、これらアミン化合物の中でも、2−エチルヘキシルアミンは、前記カルボン酸銀との相溶性に優れ、銀インク組成物の高濃度化に特に適しており、さらに銀細線の表面粗さの低減に特に適したものとして挙げられる。
(アミン化合物由来のアンモニウム塩)
本発明において、前記アミン化合物由来のアンモニウム塩は、前記アミン化合物が酸と反応してなるアンモニウム塩であり、前記酸は、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸でもよいし、酢酸等の有機酸でもよく、酸の種類は特に限定されない。
前記アミン化合物由来のアンモニウム塩としては、n−プロピルアミン塩酸塩、N−メチル−n−ヘキシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン塩酸塩等が例示できるが、これらに限定されない。
(アンモニア由来のアンモニウム塩)
本発明において、前記アンモニア由来のアンモニウム塩は、アンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩であり、ここで酸としては、前記アミン化合物由来のアンモニウム塩の場合と同じものが例示できる。
前記アンモニア由来のアンモニウム塩としては、塩化アンモニウム等が例示できるが、これに限定されない。
本発明においては、前記アミン化合物、第4級アンモニウム塩、アミン化合物由来のアンモニウム塩及びアンモニア由来のアンモニウム塩は、それぞれ一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
そして、前記含窒素化合物としては、前記アミン化合物、第4級アンモニウム塩、アミン化合物由来のアンモニウム塩及びアンモニア由来のアンモニウム塩からなる群から選択される一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
銀インク組成物において、前記含窒素化合物の配合量は、前記金属銀の形成材料の配合量1モルあたり0.3〜15モルであることが好ましく、0.3〜5モルであることがより好ましい。前記含窒素化合物の前記配合量がこのような範囲であることで、銀インク組成物は安定性がより向上し、導電体(金属銀)の品質がより向上する。さらに、高温による加熱処理を行わなくても、より安定して導電体を形成できる。
[還元性化合物]
銀インク組成物は、前記金属銀の形成材料以外に、さらに還元性化合物が配合されてなるものである。還元性化合物を配合することで、前記銀インク組成物は、金属銀をより形成し易くなり、例えば、低温での加熱処理でも十分な導電性を有する導電体(金属銀)を形成できる。
前記還元性化合物は、シュウ酸(HOOC−COOH)、ヒドラジン(HN−NH)及び下記一般式(5)で表される化合物(化合物(5))からなる群から選択される一種以上のものである。すなわち、配合される還元性化合物は、一種のみでもよいし、二種以上でもよく、二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は任意に調節できる。
H−C(=O)−R21 ・・・・(5)
(式中、R21は、炭素数20以下のアルキル基、アルコキシ基若しくはN,N−ジアルキルアミノ基、水酸基又はアミノ基である。)
21における炭素数20以下のアルキル基は、炭素数が1〜20であり、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、前記一般式(1)のRにおける前記アルキル基と同様のものが例示できる。
21における炭素数20以下のアルコキシ基は、炭素数が1〜20であり、R21における前記アルキル基が酸素原子に結合してなる一価の基が例示できる。
21における炭素数20以下のN,N−ジアルキルアミノ基は、炭素数が2〜20であり、窒素原子に結合している2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよく、該アルキル基はそれぞれ炭素数が1〜19である。ただし、これら2個のアルキル基の炭素数の合計値が2〜20である。
窒素原子に結合している前記アルキル基は、それぞれ直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、炭素数が1〜19である点以外は、前記一般式(1)のRにおける前記アルキル基と同様のものが例示できる。
前記還元性化合物として、ヒドラジンは、一水和物(HN−NH・HO)を用いてもよい。
前記還元性化合物で好ましいものとしては、ギ酸(H−C(=O)−OH);ギ酸メチル(H−C(=O)−OCH)、ギ酸エチル(H−C(=O)−OCHCH)、ギ酸ブチル(H−C(=O)−O(CHCH)等のギ酸エステル;プロパナール(H−C(=O)−CHCH)、ブタナール(H−C(=O)−(CHCH)、ヘキサナール(H−C(=O)−(CHCH)等のアルデヒド;ホルムアミド(H−C(=O)−NH)、N,N−ジメチルホルムアミド(H−C(=O)−N(CH)等のホルムアミド類(式「H−C(=O)−N(−)−」で表される基を有する化合物);シュウ酸が例示できる。
銀インク組成物において、還元剤の配合量は、前記金属銀の形成材料の配合量1モルあたり0.04〜3.5モルであることが好ましく、0.06〜2.5モルであることがより好ましい。還元剤の前記配合量がこのような範囲であることで、銀インク組成物は、より容易に、より安定して導電体(金属銀)を形成できる。
[アルコール]
銀インク組成物は、前記金属銀の形成材料以外に、さらにアルコールが配合されてなるものが好ましい。
前記アルコールは、下記一般式(2)で表されるアセチレンアルコール類(以下、「アセチレンアルコール(2)」と略記することがある)であることが好ましい。
Figure 0006314012
(式中、R’及びR’’は、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基である。)
(アセチレンアルコール(2))
アセチレンアルコール(2)は、前記一般式(2)で表される。
式中、R’及びR’’は、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基である。
R’及びR’’における炭素数1〜20のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。R’及びR’’における前記アルキル基としては、Rにおける前記アルキル基と同様のものが例示できる。
R’及びR’’におけるフェニル基の水素原子が置換されていてもよい前記置換基としては、炭素数が1〜16の飽和又は不飽和の一価の脂肪族炭化水素基、該脂肪族炭化水素基が酸素原子に結合してなる一価の基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基、シアノ基、フェノキシ基等が例示でき、Rにおけるフェニル基の水素原子が置換されていてもよい前記置換基と同様である。そして、置換基の数及び位置は特に限定されず、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
R’及びR’’は、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であることがより好ましい。
好ましいアセチレンアルコール(2)としては、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オールが例示できる。
アセチレンアルコール(2)を用いる場合、銀インク組成物において、アセチレンアルコール(2)の配合量は、前記金属銀の形成材料の配合量1モルあたり0.03〜0.7モルであることが好ましく、0.05〜0.3モルであることがより好ましい。アセチレンアルコール(2)の前記配合量がこのような範囲であることで、銀インク組成物の安定性がより向上する。
前記アルコールは、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合で、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
[その他の成分]
銀インク組成物は、前記金属銀の形成材料、含窒素化合物、還元剤及びアルコール以外の、その他の成分が配合されてなるものでもよい。
銀インク組成物における前記その他の成分は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されず、好ましいものとしては、アルコール以外の溶媒が例示でき、配合成分の種類や量に応じて任意に選択できる。
銀インク組成物における前記その他の成分は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合で、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
銀インク組成物において、配合成分の総量に対する前記その他の成分の配合量の割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、0質量%、すなわちその他の成分を配合しなくても、銀インク組成物は十分にその効果を発現する。
銀インク組成物は、配合成分がすべて溶解していてもよいし、一部又は全ての成分が溶解せずに分散した状態であってもよいが、配合成分がすべて溶解していることが好ましく、溶解していない成分は均一に分散していることが好ましい。
[銀インク組成物の製造方法]
本発明の銀インク組成物の製造方法は、カルボン酸銀と、含窒素化合物と、をオクタンの共存下で混合し、第1の混合物を得る第1工程と、前記第1の混合物と、還元性化合物と、を混合し、銀インク組成物を得るとともに前記オクタンを揮発除去する第2工程と、を含む。
第1工程及び第2工程のいずれの工程においても、必要に応じてその他の成分を更に混合してもよい。また、第2工程で得られた銀インク組成物はそのまま使用してもよいし、必要に応じて引き続き公知の精製操作を行ってもよい。
本発明においては、上記の各成分の混合時において、導電性を阻害する不純物が生成しないか、又はこのような不純物の生成量を極めて少ない量に抑制できるため、精製操作を行わなくても十分な導電性を有する金属銀層が得られる。
第1工程及び第2工程における材料の混合時の混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサー、三本ロール、ニーダー又はビーズミル等を使用して混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
前記銀インク組成物は、混合成分がすべて溶解していてもよいし、一部の成分が溶解せずに分散した状態であってもよいが、混合成分がすべて溶解していることが好ましく、溶解していない成分は均一に分散していることが好ましい。溶解していない成分を均一に分散させる場合には、例えば、上記の三本ロール、ニーダー又はビーズミル等を用いて分散させる方法を適用するのが好ましい。
第1工程及び第2工程における混合温度は、各混合成分が劣化しない限り特に限定されないが、−5〜60℃であることが好ましい。そして、混合温度は、混合成分の種類及び量に応じて、混合して得られた混合物が撹拌し易い粘度となるように、適宜調節するとよい。
また、混合時間も、各混合成分が劣化しない限り特に限定されないが、例えば10分〜36時間であり、例えば0.5〜12時間である。
(第1工程)
第1工程では、カルボン酸銀と、含窒素化合物と、を炭素数7〜10の炭化水素の共存下で混合し、第1の混合物を得る。第1工程での撹拌性はもともと良好である場合が多いが、炭素数7〜10の炭化水素を共存させることにより、撹拌性が更に向上し、より均質な混合物を得ることができる。また、炭素数7〜10の炭化水素を共存させることにより、特に第2工程での材料の混合の均質性を向上させることができる。
炭素数7〜10の炭化水素は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、水酸基やハロゲン原子等により置換されていてもよい。
例えば、炭素数7〜10の炭化水素は、1気圧、25℃におけるオクタンの揮発速度(モル/時間)を100とした場合の揮発速度が、50〜150であってもよく、80〜120であってもよい。
例えば、炭素数7〜10の炭化水素は、当該炭素数7〜10の炭化水素、前記カルボン酸銀、前記含窒素化合物及び前記還元性化合物の混合物から、50℃以下で2時間以内に完全に揮発するものであってもよい。ここで、完全に揮発するとは、前記混合物を、例えば熱分解GC−MS(ガスクロマトグラフィー質量分析)で測定した場合に、炭素数7〜10の炭化水素の含有量が検出限界以下であることを意味する。
例えば、炭素数7〜10の炭化水素は、沸点が70〜180℃であってもよく、90〜160℃であってもよく、100〜140℃であってもよい。
炭素数7〜10の炭化水素の具体例としては、ヘプタン(沸点約98℃)、オクタン(沸点約125℃)、ノナン(沸点約151℃)、デカン(沸点約174℃)等が挙げられる。
なお、材料の混合の均質性が高いとは、目視で判断した場合に、材料が均一に混合されており、撹拌容器の壁面への材料の付着が少ないことを意味する。また、銀インク組成物のロットごとの性能のばらつきは、製造した銀インク組成物の物性や、銀インク組成物を加熱処理して作製した金属銀層の性能を、ロットごとに測定し比較することにより評価することができる。
炭素数7〜10の炭化水素は、第1工程中のどの時点で材料に添加してもよく、一度に添加しても数回に分けて添加してもよい。炭素数7〜10の炭化水素の添加量は、カルボン酸銀の混合量1モルあたり、0.1モル以上0.4モル未満であることが好ましく、0.1〜0.3モルであることがより好ましい。あるいは、炭素数7〜10の炭化水素の添加量は、含窒素化合物の混合量1モルあたり、0.25モル以上1モル未満であることが好ましく、0.25〜0.75モルであることがより好ましい。添加した炭素数7〜10の炭化水素は、添加直後から揮発して減少していくと考えられる。炭素数7〜10の炭化水素の添加量は、例えば、使用する炭化水素の沸点に応じて、適宜調整すればよい。
(第2工程)
第2工程では、前記第1の混合物と還元性化合物とを混合し、銀インク組成物を得るとともに前記炭素数7〜10の炭化水素を揮発除去する。
第2工程では、炭素数7〜10の炭化水素が添加されていることにより、材料の撹拌性が向上し、撹拌容器の壁面への材料の付着も抑制され、材料の混合の均質性が格段に向上する。この結果、より均質な銀インク組成物を作製することが可能となる。また、銀インク組成物のロットごとの性能のばらつきが抑制され、より高品質な銀インク組成物を製造することが可能となる。
第2工程において、還元性化合物は、滴下しながら混合することが好ましい。また、滴下速度の変動を抑制すると、金属銀層の表面粗さをより低減できる傾向にある。
炭素数7〜10の炭化水素は、第2工程の実施中に揮発して除去され、完成した銀インク組成物中には実質的に存在しない。ここで、炭素数7〜10の炭化水素が実質的に存在しないとは、銀インク組成物を、例えば熱分解GC−MSで測定した場合に、炭素数7〜10の炭化水素の含有量が検出限界以下であることを意味する。本製造方法によれば、炭素数7〜10の炭化水素が最終的に除去されることから、銀インク組成物中の銀濃度を低下させることなく、高品質な銀インク組成物を提供することができる。
炭素数7〜10の炭化水素として、揮発性が高すぎるものを使用した場合、材料の撹拌性の向上が見られない傾向にある。これは、炭化水素の揮発速度が速すぎて、撹拌性の向上の効果が見られる前に炭化水素が揮発してなくなってしまうためであると考えられる。このような場合には、炭化水素の添加量を増加させることにより、撹拌性の向上の効果を高めることができる場合がある。
また、炭素数7〜10の炭化水素として、揮発性が低すぎるものを使用した場合、前記第2工程終了後においても炭化水素が完全には揮発しない場合がある。このため、材料の撹拌性は良好であるが、第2工程において、第1の混合物に還元性化合物を添加したときに、局所的に材料の過度な反応が起こり、突沸する現象がみられる場合がある。この結果、材料の一部が撹拌容器の壁面に付着し、材料中の成分が不均一になってしまう場合がある。
[二酸化炭素]
銀インク組成物は、さらに二酸化炭素が供給されてなるものでもよい。このような銀インク組成物は高粘度となり、例えば、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、パッド印刷法等の、インクを厚盛りすることが必要な印刷法への適用に好適である。
二酸化炭素は、銀インク組成物製造時のいずれの時期に供給してもよい。
例えば、カルボン酸銀及び含窒素化合物がオクタンの共存下で混合されてなる第1の混合物に、二酸化炭素を供給して第2の混合物とし、第2の混合物に、さらに還元性化合物を混合して、銀インク組成物を製造してもよい。
また、前記アルコール又はその他の成分を混合する場合、これらは、第1の混合物及び第2の混合物のいずれか一方又は両方の製造時に混合でき、目的に応じて任意に選択できる。
前記第2の混合物は、混合成分が異なる点以外は、上記と同様の方法で銀インク組成物を製造できる。
第2の混合物は、混合成分がすべて溶解していてもよいし、一部の成分が溶解せずに分散した状態であってもよいが、混合成分がすべて溶解していることが好ましく、溶解していない成分は均一に分散していることが好ましい。
第2の混合物製造時の混合温度は、各混合成分が劣化しない限り特に限定されないが、−5〜60℃であることが好ましい。また、混合時間は、混合成分の種類や混合時の温度に応じて適宜調節すればよいが、例えば10分〜36時間であり、例えば0.5〜12時間である。
第1の混合物に供給される二酸化炭素(CO)は、ガス状及び固形状(ドライアイス)のいずれでもよく、ガス状及び固形状の両方でもよい。二酸化炭素が供給されることにより、この二酸化炭素が第1の混合物に溶け込み、第1の混合物中の成分に作用することで、得られる第2の混合物の粘度が上昇すると推測される。
二酸化炭素ガスの供給は、液体中にガスを吹き込む公知の各種方法で行えばよく、適した供給方法を適宜選択すればよい。例えば、配管の一端を第1の混合物中に浸漬し、他端を二酸化炭素ガスの供給源に接続して、この配管を通じて二酸化炭素ガスを第1の混合物に供給する方法が例示できる。この時、配管の端部から直接二酸化炭素ガスを供給してもよいが、例えば、多孔質性のものなど、ガスの流路となり得る空隙部が多数設けられ、導入されたガスを拡散させて微小な気泡として放出することが可能なガス拡散部材を配管の端部に接続し、このガス拡散部材を介して二酸化炭素ガスを供給してもよい。また、第1の混合物の製造時と同様の方法で、第1の混合物を撹拌しながら二酸化炭素ガスを供給してもよい。このようにすることで、効率的に二酸化炭素を供給できる。
二酸化炭素ガスの供給量は、供給先の第1の混合物の量や、目的とする銀インク組成物又は第2の混合物の粘度に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。例えば、20〜25℃において、超音波式粘度計(CBC社製「VISCOMATE VM−10A」)で測定した粘度が5Pa・s以上である銀インク組成物を100〜1000g程度得るためには、二酸化炭素ガスを100L以上供給することが好ましく、200L以上供給することがより好ましい。なお、ここでは銀インク組成物の20〜25℃における粘度について説明したが、銀インク組成物の使用時の温度は、20〜25℃に限定されるものではなく、任意に選択できる。
二酸化炭素ガスの流量は、必要とされる二酸化炭素ガスの供給量を考慮して適宜調節すればよいが、第1の混合物1gあたり0.5mL/分以上であることが好ましく、1mL/分以上であることがより好ましい。流量の上限値は特に限定されないが、取り扱い性等を考慮すると、混合物1gあたり40mL/分であることが好ましい。
そして、二酸化炭素ガスの供給時間は、必要とされる二酸化炭素ガスの供給量や、流量を考慮して適宜調節すればよい
二酸化炭素ガス供給時の第1の混合物の温度は、5〜70℃であることが好ましく、7〜60℃であることがより好ましく、10〜50℃であることが特に好ましい。前記温度が前記下限値以上であることで、より効率的に二酸化炭素を供給でき、前記温度が前記上限値以下であることで、不純物が少ないより良好な品質の銀インク組成物が得られる。
二酸化炭素ガスの流量及び供給時間、並びに二酸化炭素ガス供給時の前記温度は、それぞれの値を相互に考慮しながら適した範囲に調節すればよい。例えば、前記温度を低めに設定しても、二酸化炭素ガスの流量を多めに設定するか、二酸化炭素ガスの供給時間を長めに設定することで、あるいはこの両方を行うことで、効率的に二酸化炭素を供給できる。また、二酸化炭素ガスの流量を少なめに設定しても、前記温度を高めにするか、二酸化炭素ガスの供給時間を長めに設定することで、あるいはこの両方を行うことで、効率的に二酸化炭素を供給できる。すなわち、二酸化炭素ガスの流量、二酸化炭素ガス供給時の前記温度として例示した上記数値範囲の中の数値を、二酸化炭素ガスの供給時間も考慮しつつ柔軟に組み合わせることで、良好な品質の銀インク組成物が効率的に得られる。
二酸化炭素ガスの供給は、第1の混合物を撹拌しながら行うことが好ましい。このようにすることで、供給した二酸化炭素ガスがより均一に第1の混合物中に拡散し、より効率的に二酸化炭素を供給できる。
この時の撹拌方法は、二酸化炭素を用いない上記の銀インク組成物の製造時における前記混合方法の場合と同様でよい。
ドライアイス(固形状二酸化炭素)の供給は、第1の混合物中にドライアイスを添加することで行えばよい。ドライアイスは、全量を一括して添加してもよいし、分割して段階的に(添加を行わない時間帯を挟んで連続的に)添加してもよい。
ドライアイスの使用量は、上記の二酸化炭素ガスの供給量を考慮して調節すればよい。
ドライアイスの添加中及び添加後は、第1の混合物を撹拌することが好ましく、例えば、二酸化炭素を用いない上記の銀インク組成物の製造時と同様の方法で撹拌することが好ましい。このようにすることで、効率的に二酸化炭素を供給できる。
撹拌時の温度は、二酸化炭素ガス供給時と同様でよい。また、撹拌時間は、撹拌温度に応じて適宜調節すればよい。
第2の混合物の粘度は、銀インク組成物又は第2の混合物の取り扱い方法など、目的に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。例えば、銀インク組成物をスクリーン印刷法、フレキソ印刷法等の高粘度インクを使用する印刷法へ適用する場合には、第2の混合物の20〜25℃における粘度は、3Pa・s以上であることが好ましい。なお、ここでは第2の混合物の20〜25℃における粘度について説明したが、第2の混合物の使用時の温度は、20〜25℃に限定されるものではなく、任意に選択できる。
前記第2の混合物に還元性化合物を混合し、さらに必要に応じてアルコール及びその他の成分からなる群から選択される一種以上を混合して、銀インク組成物とすることができる。
このときの銀インク組成物は、混合成分が異なる点以外は、二酸化炭素を用いない上記の銀インク組成物と同様の方法で製造できる。そして、得られた銀インク組成物は、混合成分がすべて溶解していてもよいし、一部の成分が溶解せずに分散した状態であってもよいが、混合成分がすべて溶解していることが好ましく、溶解していない成分は均一に分散していることが好ましい。
前記還元性化合物混合時の温度は、各混合成分が劣化しない限り特に限定されないが、−5〜60℃であることが好ましい。そして、混合時の温度は、混合成分の種類及び量に応じて、混合して得られた混合物が撹拌し易い粘度となるように、適宜調節するとよい。
また、混合時間は、混合成分の種類や混合時の温度に応じて適宜調節すればよいが、例えば10分〜36時間であり、例えば0.5〜12時間である。
前記その他の成分は、先に説明したように、前記第1の混合物及び第2の混合物のいずれかの製造時に混合されてもよく、両方の製造時に混合されてもよい。すなわち、第1の混合物及び第2の混合物を経て銀インク組成物を製造する過程において、二酸化炭素以外の混合成分の総量に対する前記その他の成分の混合量の割合([その他の成分(質量)]/[カルボン酸銀、含窒素化合物、還元性化合物、アルコール、及びその他の成分(質量)]×100)は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、0質量%、すなわちその他の成分を混合しなくても、銀インク組成物は十分にその効果を発現する。
二酸化炭素が供給されてなる銀インク組成物は、例えば、銀インク組成物をスクリーン印刷法、フレキソ印刷法等の高粘度インクを使用する印刷法へ適用する場合には、20〜25℃における粘度が、1Pa・s以上であることが好ましい。
<金属銀層及びその製造方法>
上述の銀インク組成物を、例えば、基材上に付着させ、乾燥処理や加熱(焼成)処理等の後処理を適宜選択して行うことにより、金属銀層を形成することができる。加熱処理は、乾燥処理を兼ねて行ってもよい。上記の金属銀層は、金属銀を主成分とするものである。ここで、「金属銀を主成分とする」とは、金属銀の比率が、見かけ上金属銀だけからなるとみなし得る程度に十分に高いことを意味し、例えば、金属銀層中の金属銀の比率は99質量%以上である。
上記の基材は、フィルム状又はシート状であることが好ましく、厚さが10〜5000μmであることが好ましい。基材の材質は、目的に応じて適宜選択すればよく、特に限定されないが、好ましいものとして具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリアミド(PA)、ポリイミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリアリレート、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂等の合成樹脂が例示できる。
また、基材の材質としては、上記以外にも、ガラス、シリコン等のセラミックスや、紙が例示できる。
また、基材は、ガラスエポキシ樹脂、ポリマーアロイ等の、二種以上の材質からなるものでもよい。
基材は、単層からなるものでもよいし、二層以上の複数層からなるものでもよい。基材が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが異なっていてもよい。そして、複数層が互いに異なる場合、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。ここで、複数層が互いに異なるとは、各層の材質及び厚さの少なくとも一方が互いに異なることを意味する。
なお、基材が複数層からなる場合には、各層の合計の厚さが、上記の好ましい基材の厚さとなるようにするとよい。
銀インク組成物は、例えば、印刷法、塗布法、浸漬法等の公知の方法で基材上に付着させることができる。
前記印刷法としては、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、ディップ式印刷法、インクジェット式印刷法、ディスペンサー式印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、パッド印刷法等が例示できる。
前記塗布法としては、スピンコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、グラビアコーター等の各種コーターや、ワイヤーバー等を用いる方法が例示できる。
銀インク組成物の乾燥処理は、公知の方法で行えばよく、例えば、常圧下、減圧下及び送風条件下のいずれで行ってもよく、大気下及び不活性ガス雰囲気下のいずれでおこなってもよい。そして、乾燥温度も特に限定されず、加熱乾燥及び常温乾燥のいずれでもよい。加熱処理が不要な場合の好ましい乾燥方法としては、18〜30℃で大気下において乾燥させる方法が例示できる。
銀インク組成物を加熱処理する場合、加熱処理時の温度は、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下とすることができる。加熱処理時の温度の下限値は、金属銀を効率的に形成できる限り特に限定されないが、50℃であることが好ましい。
また、加熱時間は、加熱温度に応じて適宜調節すればよく、例えば、0.1〜6時間とすることができる。
前記金属銀層は、金属銀が十分に形成され、導電性が高い、すなわち体積抵抗率が低いものとすることができ、例えば、体積抵抗率を好ましくは100μΩ・cm以下、より好ましくは10μΩ・cm以下、特に好ましくは7.0μΩ・cm以下とすることができる。
また、前記金属銀層は、表面粗さを十分に低減することができ、好ましくは600nm以下、より好ましくは300nm以下、さらに好ましくは250nm以下とすることができる。
なお、本明細書において「表面粗さ」とは、算術平均粗さ(Ra)を意味し、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さlだけを抜き取り、この抜取り部分の平均線の方向にX軸を、縦倍率の方向にY軸を取り、粗さ曲線をy=f(x)で表したときに、以下の式によって求められた値をナノメートル(nm)単位で表示したものである。以下、この表面粗さを「表面粗さRa」と記載することがある。
Figure 0006314012
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実験例1:添加溶媒の検討]
(実施例1)
液温が50℃以下となるように、容量500mLのビーカー中で2−エチルヘキシルアミン(47.05g)にオクタン(20.79g)及び2−メチルアセト酢酸銀(202.95g)を添加して、メカニカルスターラーを用いて15分間撹拌することにより、液状物を得た。
上述した液状物に、反応液の温度が50℃以下となるように、ギ酸(33.49g)を30分間かけて滴下した。ギ酸の滴下終了後、25℃にて反応液をさらに1.5時間撹拌することにより、実施例1の銀インク組成物を得た。2−メチルアセト酢酸銀の混合量1モルあたりの2−エチルヘキシルアミン及びギ酸の混合量は、それぞれ0.4モル及び0.8モルであった。ギ酸の滴下中及びギ酸の滴下終了後の材料の混合の均質性を目視により評価した。
(比較例1)
オクタンの代わりにヘキサンを添加した点以外は実施例1と同様にして、比較例1の銀インク組成物を作製し、材料の混合の均質性を評価した。
(比較例2)
オクタンの代わりにドデカンを添加した点以外は実施例1と同様にして、比較例2の銀インク組成物を作製し、材料の混合の均質性を評価した。
(比較例3)
オクタンを添加しなかった点以外は実施例1と同様にして、比較例3の銀インク組成物を作製し、材料の混合の均質性を評価した。
表1に実施例1及び比較例1〜3の銀インク組成物の製造時の材料の混合の均質性を評価した結果を示す。材料の混合の均質性は、材料の混合の状態を目視で判断した場合に、材料が均一に混合されており、撹拌容器の壁面への材料の付着が無いか又は少なかった場合を「○」とし、材料の混合が均一でないか又は撹拌容器の壁面への材料の付着が多かった場合を「×」として評価した。
より詳細には、比較例1及び3においては、材料の混合が均一でなく、撹拌容器の壁面への材料の付着も認められた。また、比較例2においては、材料の混合は均一であったものの、材料の突沸により、撹拌容器の壁面への材料の付着が認められた。
Figure 0006314012
[実験例2:銀インク組成物の性能のばらつきの検討]
〔銀インク組成物の作製〕
実施例1と同様にして、実施例2〜4の銀インク組成物を作製した。また、比較例3と同様にして、比較例4〜6の銀インク組成物を作製した。
〔熱分解GC−MS測定〕
実施例2〜4の銀インク組成物については、熱分解GC−MS測定により、完成した銀インク組成物中にオクタンが残存していないことを確認した。具体的には、サンプルカップに実施例2〜4の銀インク組成物をそれぞれ入れ、下記条件で熱分解GC−MS測定を実施し、オクタンが残存していないことを確認した。
(熱分解部)
ファーネス温度400℃、インタフェース温度350℃
(GC部)
注入端温度:300℃
温度条件:初期温度40℃,レート10℃/分,最終温度300℃(5分)
カラム:Ultra ALLOY−5(UA5−30M−0.25F、フロンティアラボ社製)
(質量分析部)
分子量:30〜500
〔積層体の作製〕
実施例2〜4及び比較例4〜6の銀インク組成物をそれぞれ使用して、基材であるポリエチレンテレフタレート(PET)製フィルム(東レ社製「ルミラーS10」、厚さ100μm)上にスクリーン印刷を行った。スクリーン版としては、ステンレス製500メッシュのものを使用し、乳剤厚10μmの条件で、線幅0.5mm、線長30mmのパターンを印刷した。
次いで、得られた各印刷パターンを、80℃で1時間焼成(加熱処理)することにより金属銀層を形成し、実施例2〜4及び比較例4〜6の積層体を得た。
〔銀インク組成物の評価〕
(撹拌性)
実施例2〜4及び比較例4〜6の銀インク組成物について、ギ酸の滴下中及びギ酸の滴下終了後の材料の混合の状態を目視で判断した場合に、材料が均一に混合されていた場合を「○」とし、材料の混合が均一でなかった場合を「×」として評価した。
(撹拌容器の壁面への材料の付着)
実施例2〜4及び比較例4〜6の銀インク組成物について、ギ酸の滴下中及びギ酸の滴下終了後の材料の混合において、撹拌容器の壁面への材料の付着の有無を目視により評価した。
(銀濃度)
実施例2〜4及び比較例4〜6の銀インク組成物を定量してるつぼに入れ、400℃で3時間加熱処理した。加熱処理後にるつぼ内に残った金属銀を定量し、インク組成物中の銀濃度(質量%)を算出した。
(粘度)
実施例2〜4及び比較例4〜6の銀インク組成物について、レオメータ(アントンパール社製「MCR−301」)を用いて、25℃の環境下で、せん断速度が10s−1での粘度を測定した。コーンプレートとしてCP−25−2(直径25mm、コーン角度2°)を使用した。
〔金属銀層の評価〕
(体積抵抗率及び表面粗さ)
実施例2〜4及び比較例4〜6の積層体の金属銀層について、線抵抗値R(Ω)、断面積A(cm)、及び線長L(cm)を測定し、式「ρ=R×A/L」により、体積抵抗率ρ(Ω・cm)を算出した。なお、線抵抗値Rはデジタルマルチメータ(三和電気計器社製「PC5000a」)を用いて測定し、断面積Aは形状測定レーザマイクロスコープ(キーエンス社製「VK−X100」)を用いて測定した。さらに、形状測定レーザマイクロスコープ(キーエンス社製「VK−X100」)を用いて、形成したパターンの表面粗さ(算術平均表面粗さRa)を測定した。このとき、表面粗さは、JISB0601:2001(ISO4287、1997)に従い、λc(輪郭曲線フィルタ)=0.08mmでカットオフして測定した。
実施例2〜4及び比較例4〜6の銀インク組成物の撹拌性及び撹拌容器の壁面への材料の付着の有無についての評価結果を表2に示す。また、実施例2〜4及び比較例4〜6の銀インク組成物の銀濃度及び粘度並びに実施例2〜4及び比較例4〜6の積層体の金属銀層の体積抵抗率及び表面粗さの評価結果を表3に示す。表3においては、各評価項目の測定値の平均及びばらつきの値も記載した。ばらつきの値として、「測定結果の最小値−平均値, 測定結果の最大値−平均値」の計算値を記載した。
Figure 0006314012
Figure 0006314012
実施例2〜4の銀インク組成物は、撹拌性が良好であり、材料が均一に混合されていた。また、撹拌容器の壁面への材料の付着も認められなかった。一方、比較例4〜6の銀インク組成物は、材料の混合が均一でなかった。また、撹拌容器の壁面への材料の付着が認められた。
実施例2〜4の銀インク組成物は、比較例4〜6の銀インク組成物と比較して、粘度のばらつきが小さかった。また、実施例2〜4の積層体の金属銀層は、比較例4〜6の積層体の金属銀層と比較して、体積抵抗率及び表面粗さのばらつきが小さかった。以上の結果は、実施例2〜4の銀インク組成物では、比較例4〜6の銀インク組成物と比較して、材料の混合の均質性が向上されたことを示す。また、実施例1〜5及び比較例1〜3の銀インク組成物の銀濃度の測定値から、オクタンを添加しても銀インク組成物中の銀濃度は変化しないことが確認された。
本発明によれば、より低温での加熱処理によって、十分な導電性を有する金属銀を形成可能な銀インク組成物の製造方法であって、銀インク組成物の材料の混合の均質性が向上された製造方法を提供することができる。

Claims (1)

  1. 銀インク組成物の製造方法であって、
    式「−COOAg」で表される基を有するカルボン酸銀と、炭素数25以下のアミン化合物、炭素数25以下の第4級アンモニウム塩、アンモニア及び前記アミン化合物又はアンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩からなる群から選択される一種以上の含窒素化合物と、を炭素数7〜10の炭化水素の共存下で混合し、第1の混合物を得る第1工程と、
    前記第1の混合物と、シュウ酸、ヒドラジン及び下記一般式(5)で表される化合物からなる群から選択される一種以上の還元性化合物と、を混合し、銀インク組成物を得るとともに前記炭素数7〜10の炭化水素を揮発除去する第2工程と、を含み、前記第1工程において、前記カルボン酸銀1モルあたり、前記炭素数7〜10の炭化水素を0.1モル以上0.4モル未満混合する、製造方法。
    H−C(=O)−R21…(5)
    (式中、R21は、炭素数20以下のアルキル基、アルコキシ基若しくはN,N−ジアルキルアミノ基、水酸基又はアミノ基である。)
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