JP2014110514A - アンテナ構造体、通信機器及びアンテナ構造体の製造方法 - Google Patents

アンテナ構造体、通信機器及びアンテナ構造体の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2014110514A
JP2014110514A JP2012263575A JP2012263575A JP2014110514A JP 2014110514 A JP2014110514 A JP 2014110514A JP 2012263575 A JP2012263575 A JP 2012263575A JP 2012263575 A JP2012263575 A JP 2012263575A JP 2014110514 A JP2014110514 A JP 2014110514A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
conductive layer
silver
antenna structure
ink composition
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2012263575A
Other languages
English (en)
Inventor
Machiko Nakayama
真知子 中山
Tadashige Sakai
喬成 酒井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toppan Edge Inc
Original Assignee
Toppan Forms Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toppan Forms Co Ltd filed Critical Toppan Forms Co Ltd
Priority to JP2012263575A priority Critical patent/JP2014110514A/ja
Publication of JP2014110514A publication Critical patent/JP2014110514A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Abstract

【課題】表面粗さが小さい導電層をアンテナとして備え、簡略化された工程で製造可能なアンテナ構造体、及びその製造方法、並びに前記アンテナ構造体を用いた通信機器の提供。
【解決手段】基材11上に形成された第一の導電層12上に、金属を含む第二の導電層13を形成するに際し、前記金属を、有機基を有する金属化合物から生じさせて、第二の導電層13を、表面粗さが300nm以下の表面13aを有するものとして、アンテナ構造体1を構成する。また、アンテナ構造体1を用い、基材11を筐体として通信機器を構成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、通信性能に優れたアンテナ構造体及びその製造方法、並びに前記アンテナ構造体を用いた通信機器に関する。
各種無線装置や移動体通信機器等の通信機器は、電波を受送信するためのアンテナ構造体を備えて構成される。かかるアンテナ構造体は、基材上にパターニングされた導電層をアンテナとして備え、通常、金属エッチング(特許文献1参照)、金属メッキ、銀等の金属粒子を含む導電性ペーストを用いる方法(特許文献2参照)等によって、基材上に導電層を形成することで製造される。導電層は、最終的にははんだ付け等によって配線される。
しかし、このような方法で形成された導電層は、通信を行う部位の表面粗さが大きく、表面の凹凸によって信号の伝送損失が生じ易くなっており、特に高周波帯域における通信性能に課題がある。
一方、導電層表面の凹凸を低減する方法としては、導電層表面を常温下又は加熱条件下で加圧する方法(特許文献3参照)が開示されている。
特開平5−95216号公報 特開2000−151259号公報 特開2000−105809号公報
しかし、特許文献3で開示されているような方法を適用して、アンテナ構造体を製造する場合には、導電層表面の凹凸を低減するための工程が別途必要になり、製造工程が煩雑化するという問題点があった。
このように従来は、表面粗さが小さい導電層をアンテナとして備え、簡略化された工程で製造可能なアンテナ構造体は無いのが実情であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、表面粗さが小さい導電層をアンテナとして備え、簡略化された工程で製造可能なアンテナ構造体、及びその製造方法、並びに前記アンテナ構造体を用いた通信機器を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、
本発明は、高周波帯域において通信可能であり、基材、第一の導電層及び第二の導電層がこの順に設けられ、前記第二の導電層は、表面粗さが300nm以下の表面を有することを特徴とするアンテナ構造体を提供する。
また、本発明は、前記アンテナ構造体を用い、前記基材を筐体として備えたことを特徴とする通信機器を提供する。
また、本発明は、前記アンテナ構造体の製造方法であって、基材上に形成された第一の導電層上に、金属を含む第二の導電層を形成する工程を有し、前記金属を、有機基を有する金属化合物から生じさせることを特徴とするアンテナ構造体の製造方法を提供する。
本発明によれば、表面粗さが小さい導電層をアンテナとして備え、簡略化された工程で製造可能なアンテナ構造体、及びその製造方法、並びに前記アンテナ構造体を用いた通信機器が提供される。
本発明に係るアンテナ構造体を例示する概略断面図である。 本発明に係るアンテナ構造体の製造方法の例を説明するための概略断面図である。 実施例及び比較例で得られたアンテナ構造体の反射損失(S11)の測定結果を示すグラフである。
<<アンテナ構造体>>
本発明に係るアンテナ構造体は、高周波帯域において通信可能であり、基材、第一の導電層及び第二の導電層がこの順に設けられ、前記第二の導電層は、表面粗さが300nm以下の表面を有することを特徴とする。
かかるアンテナ構造体は、アンテナである第二の導電層において、少なくとも通信を行う部位の表面粗さRaが300nm以下であるため、例えば、S11等で定義される反射損失(伝送損失)が小さく、高周波帯域での通信性能に優れる。
図1は、本発明に係るアンテナ構造体を例示する概略断面図である。
ここに示すアンテナ構造体1は、基材11上に第一の導電層12及び第二の導電層13がこの順に積層されてなるものである。
<基材>
基材11は、目的に応じて任意の形状を選択でき、例えば、フィルム状又はシート状であることが好ましく、厚さが0.5〜5000μmであることが好ましく、0.5〜2000μmであることがより好ましい。
基材11の材質は特に限定されず、目的に応じて選択すればよいが、後述する銀インク組成物の加熱処理による導電層形成時に変質しない耐熱性を有するものが好ましい。
基材11の材質として具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリシクロオレフィン、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)、ポリメタクリル酸ブチル(PBMA)、ポリアクリル酸メチル(PMA)、ポリアクリル酸エチル(PEA)、ポリアクリル酸ブチル(PBA)、AS樹脂、ABS樹脂、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET−G)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリアリレート、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂等の合成樹脂が例示できる。
また、基材11の材質としては、上記以外にも、ガラス、シリコン等のセラミックス;上質紙、薄葉紙、グラシン紙、硫酸紙等の紙類が例示できる。
また、基材11は、ガラスエポキシ樹脂、ポリマーアロイ等の、二種以上の材質を併用したものでもよい。
基材11は、単層からなるものでもよいし、二層以上の複数層からなるものでもよい。基材11が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが異なっていてもよい。そして、複数層が互いに異なる場合、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。ここで、複数層が互いに異なるとは、各層の材質及び厚さの少なくとも一方が互いに異なることを意味する。
なお、基材11が複数層からなる場合には、各層の合計の厚さが、上記の好ましい基材2の厚さとなるようにするとよい。
<第一の導電層>
第一の導電層12は、第二の導電層13の下地層となるものであり、第二の導電層13の形状に応じてパターニングされたものである。すなわち、基材11の主面(第一の導電層12が形成されている表面)11aを上方から見下ろすように、アンテナ構造体1を平面視したときの、第一の導電層12の形状は、第二の導電層13の形状に応じて任意に設定できる。
第一の導電層12の材質は、導電性を有するものであれば特に限定されず、銅、銀等の単体金属や合金が例示できる。
第一の導電層12の厚さは、目的に応じて任意に設定できるが、5〜20μmであることが好ましく、10〜20μmであることがより好ましい。下限値以上であることで、第二の導電層13と共に十分な厚さの導電層を形成することで、導電性をより向上させることができる。また、上限値以下とすることで、アンテナ構造体1を薄層化できる。
第一の導電層12は、単層からなるものでもよいし、二層以上の複数層からなるものでもよい。第一の導電層12が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、基材11の場合と同様に構成できる。
<第二の導電層>
第二の導電層13は、目的に応じてパターニングされたものであり、基材11の主面11aを上方から見下ろすように、アンテナ構造体1を平面視したときの形状は、任意に設定できる。
第二の導電層13は、表面粗さが300nm以下の表面を有する。より具体的には、第二の導電層13において、少なくとも通信を行う部位、例えば、第二の導電層13の露出された表面(第一の導電層12と接触していない表面)13aは、表面粗さが300nm以下である。このように第二の導電層13の表面13aが滑らかであることで、アンテナ構造体1は、信号の伝送損失が抑制され、通信性能に優れており、これは特に高周波帯域において顕著である。
そして、第二の導電層13の前記表面粗さは、250nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましく、150nm以下であることがさらに好ましく、100nm以下であることが特に好ましい。また、第二の導電層13の表面粗さの下限値は、特に限定されない。
なお、本発明において「表面粗さ」とは、JIS B0601:2001(ISO4287:1997)に基づくものであり、算術平均粗さ(Ra)を意味し、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜取り部分の平均線の方向にX軸を、縦倍率の方向にY軸を取り、粗さ曲線をy=f(x)で表したときに、以下の式によって求められた値をナノメートル(nm)単位で表示したものである。以下、この表面粗さを「表面粗さRa」と記載することがある。
Figure 2014110514
また、本発明において「高周波帯域」とは、好ましくは500MHz〜10GHzの帯域を意味する。本発明に係るアンテナ構造体は、このような高周波帯域において、伝送損失を抑制しつつ通信可能である点で、通信性能に優れる。
第二の導電層13の材質は、金属を含んでいれば特に限定されず、銀、銅等の単体金属や合金が例示でき、第一の導電層12と同じでもよいし、異なっていてもよい。なかでも、上記のような表面粗さの第二の導電層13を容易に形成できる点から、銀であることが好ましく、後述する金属銀の形成材料を用いて形成されたものがより好ましい。
第二の導電層13の厚さは、目的に応じて任意に設定できるが、0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜3μmであることがより好ましい。下限値以上であることで、第一の導電層12と共に十分な厚さの導電層を形成することで、導電性をより向上させることができる。さらに、第二の導電層13の構造をより安定して維持できる。また、上限値以下とすることで、アンテナ構造体1を薄層化できる。
第二の導電層13は、単層からなるものが好ましい。
アンテナ構造体1は、第一の導電層12及び第二の導電層13を共に覆うようにはんだ付けして配線した場合、第一の導電層12及び第二の導電層13の二層構造としては、はんだとの親和性が高い。また、前記二層構造は基材との密着強度が大きい。したがって、アンテナ構造体1は、安定した配線が可能である。
本発明に係るアンテナ構造体は、図1に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、一部構成が適宜変更されたものでもよい。例えば、基材11上に第一の導電層12及び第二の導電層13以外の層が形成されたものでもよい。
本発明に係るアンテナ構造体は、例えば、基材上に形成された第一の導電層上に、金属を含む第二の導電層を形成する工程を有し、前記金属を、有機基を有する金属化合物から生じさせる製造方法、で製造できる。
図2は、図1に示すアンテナ構造体1の製造方法を説明するための概略断面図である。
アンテナ構造体1を製造するためには、図1(b)に示すような、主面11a上に第一の導電層12が形成された基材11を用いる。
第一の導電層12は、例えば、図1(a)に示すように、導電箔等の所望の材質からなる導電膜12’を、基材11の主面11a上に加熱融着させる方法や、接着剤を用いて主面11a上に接着させる方法で固定し、この導電膜12’をエッチング等の公知の手法でパターニングすることにより形成できる。ここで、前記接着剤としては、例えば、ポリエステル系のものや、エポキシ樹脂を含有するポリウレタン等の公知のものが適宜使用できる。また、第一の導電層12は、後述する第二の導電層13の形成方法の一例である、金属インク組成物を用いる方法で形成することもできる。
次いで、図1(c)に示すように、第一の導電層12上に第二の導電層13を形成することで、アンテナ構造体1が得られる。
第二の導電層13は、例えば、前記金属の形成材料として有機基を有する金属化合物を用いて形成でき、前記金属の形成材料が配合されてなる金属インク組成物を調製し、これを第一の導電層12上に付着させて、乾燥処理や加熱(焼成)処理等の後処理を適宜選択して行うことで形成することが好ましい。加熱処理は、乾燥処理を兼ねて行ってもよい。
前記有機基を有する金属化合物は、有機基及び金属原子(元素)を共に有し、分解等の構造変化によって金属(単体金属)を生じるものであればよく、金属塩、金属錯体、有機金属化合物(金属−炭素結合を有する化合物)等が例示できる。有機基を有する金属化合物から金属が生じることで、この金属を含む第二の導電層13が形成される。この場合の第二の導電層13は、前記金属を主成分とするものであり、前記金属の比率が、見かけ上金属だけからなるとみなし得る程度に十分に高く、第二の導電層13中の金属の比率は、好ましくは99質量%以上である。
金属インク組成物としては、液状のものが好ましく、前記金属の形成材料が均一に分散されたものが好ましい。
以下、金属インク組成物として、有機基を有する銀化合物、すなわち、金属銀の形成材料が配合されてなる銀インク組成物を用いた場合の、第二の導電層13の形成方法について説明するが、金属種が銀以外の場合にも同様の方法で、第二の導電層13を形成できる。
前記金属銀の形成材料は、加熱等によって分解し、金属銀を形成するものであり、表面粗さが小さい第二の導電層13を安定して形成する効果が高い。
本発明において、金属銀の形成材料は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
[カルボン酸銀]
金属銀の形成材料としては、式「−COOAg」で表される基を有するカルボン酸銀が例示できる。
前記カルボン酸銀は、式「−COOAg」で表される基を有していれば特に限定されない。例えば、式「−COOAg」で表される基の数は1個のみでもよいし、2個以上でもよい。また、カルボン酸銀中の式「−COOAg」で表される基の位置も特に限定されない。
前記カルボン酸銀は、下記一般式(1)で表わされるβ−ケトカルボン酸銀(以下、「β−ケトカルボン酸銀(1)」と略記することがある)及び下記一般式(4)で表されるカルボン酸銀(以下、「カルボン酸銀(4)」と略記することがある)からなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
なお、本明細書においては、単なる「カルボン酸銀」との記載は、特に断りの無い限り、「β−ケトカルボン酸銀(1)」及び「カルボン酸銀(4)」だけではなく、これらを包括する、「式「−COOAg」で表される基を有するカルボン酸銀」を意味するものとする。
Figure 2014110514
(式中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R−CY−」、「CY−」、「R−CHY−」、「RO−」、「RN−」、「(RO)CY−」若しくは「R−C(=O)−CY−」で表される基であり;
Yはそれぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子であり;Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であり;Rは炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり;Rは炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であり;R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基であり;Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であり;
Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基、又は一般式「RO−」、「RS−」、「R−C(=O)−」若しくは「R−C(=O)−O−」で表される基であり;
は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基である。)
Figure 2014110514
(式中、Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、カルボキシ基又は式「−C(=O)−OAg」で表される基であり、前記脂肪族炭化水素基がメチレン基を有する場合、1個以上の該メチレン基はカルボニル基で置換されていてもよい。)
(β−ケトカルボン酸銀(1))
β−ケトカルボン酸銀(1)は、前記一般式(1)で表される。
式中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R−CY−」、「CY−」、「R−CHY−」、「RO−」、「RN−」、「(RO)CY−」若しくは「R−C(=O)−CY−」で表される基である。
Rにおける炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状(脂肪族環式基)のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。また、前記脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基及び不飽和脂肪族炭化水素基のいずれでもよい。そして、前記脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜6であることがより好ましい。Rにおける好ましい前記脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が例示できる。
Rにおける直鎖状又は分枝鎖状の前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、1,1−ジメチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、4,4−ジメチルペンチル基、1−エチルペンチル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、4−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、1−プロピルブチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、1−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、4−エチルヘキシル基、5−エチルヘキシル基、1,1−ジメチルヘキシル基、2,2−ジメチルヘキシル基、3,3−ジメチルヘキシル基、4,4−ジメチルヘキシル基、5,5−ジメチルヘキシル基、1−プロピルペンチル基、2−プロピルペンチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基が例示できる。
Rにおける環状の前記アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、トリシクロデシル基が例示できる。
Rにおける前記アルケニル基としては、ビニル基(エテニル基、−CH=CH)、アリル基(2−プロペニル基、−CH−CH=CH)、1−プロペニル基(−CH=CH−CH)、イソプロペニル基(−C(CH)=CH)、1−ブテニル基(−CH=CH−CH−CH)、2−ブテニル基(−CH−CH=CH−CH)、3−ブテニル基(−CH−CH−CH=CH)、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル基等の、Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の1個の単結合(C−C)が二重結合(C=C)に置換された基が例示できる。
Rにおける前記アルキニル基としては、エチニル基(−C≡CH)、プロパルギル基(−CH−C≡CH)等の、Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の1個の単結合(C−C)が三重結合(C≡C)に置換された基が例示できる。
Rにおける炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよく、好ましい前記置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が例示できる。また、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、すべての置換基が同一であってもよいし、すべての置換基が異なっていてもよく、一部の置換基のみが異なっていてもよい。
Rにおけるフェニル基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよく、好ましい前記置換基としては、炭素数が1〜16の飽和又は不飽和の一価の脂肪族炭化水素基、該脂肪族炭化水素基が酸素原子に結合してなる一価の基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基(−OH)、シアノ基(−C≡N)、フェノキシ基(−O−C)等が例示でき、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
置換基である前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるYは、それぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子である。そして、一般式「R−CY−」、「CY−」及び「R−C(=O)−CY−」においては、それぞれ複数個のYは、互いに同一でも異なっていてもよい。
RにおけるRは、炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基(C−)であり、Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるRは、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるRは、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であり、炭素数が1〜16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるR及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基である。すなわち、R及びRは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数が1〜18である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるRは、炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であり、Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
Rは、上記の中でも、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、一般式「R−C(=O)−CY−」で表される基、水酸基又はフェニル基であることが好ましい。そして、Rは、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であることが好ましい。
一般式(1)において、Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基(C−CH−)、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基(C−O−CH=CH−)、又は一般式「RO−」、「RS−」、「R−C(=O)−」若しくは「R−C(=O)−O−」で表される基である。
Xにおける炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基としては、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
Xにおけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
Xにおけるフェニル基及びベンジル基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよく、好ましい前記置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ニトロ基(−NO)等が例示でき、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
XにおけるRは、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基(CS−)、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基(ビフェニル基、C−C−)である。Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜10である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。また、Rにおけるフェニル基及びジフェニル基の前記置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等が例示でき、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
がチエニル基又はジフェニル基である場合、これらの、Xにおいて隣接する基又は原子(酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基)との結合位置は、特に限定されない。例えば、チエニル基は、2−チエニル基及び3−チエニル基のいずれでもよい。
一般式(1)において、2個のXは、2個のカルボニル基で挟まれた炭素原子と二重結合を介して1個の基として結合していてもよく、このようなものとしては式「=CH−C−NO」で表される基が例示できる。
Xは、上記の中でも、水素原子、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、又はベンジル基であることが好ましく、少なくとも一方のXが水素原子であることが好ましい。
前記β−ケトカルボン酸銀(1)は、2−メチルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CH)−C(=O)−OAg)、アセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、2−エチルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CHCH)−C(=O)−OAg)、プロピオニル酢酸銀(CHCH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、2−n−ブチルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CHCHCHCH)−C(=O)−OAg)、2−ベンジルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CH)−C(=O)−OAg)、ベンゾイル酢酸銀(C−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、ピバロイルアセト酢酸銀((CHC−C(=O)−CH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、イソブチリルアセト酢酸銀((CHCH−C(=O)−CH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、又はアセトンジカルボン酸銀(AgO−C(=O)−CH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)であることが好ましい。
β−ケトカルボン酸銀(1)は、乾燥処理や加熱(焼成)処理等の後処理により形成された導電体(金属銀)において、残存する原料や不純物の濃度をより低減できる。原料や不純物が少ない程、例えば、形成された金属銀同士の接触が良好となり、導通が容易となり、抵抗率が低下する。
β−ケトカルボン酸銀(1)は、後述するように、当該分野で公知の還元剤等を使用しなくても、好ましくは60〜210℃、より好ましくは60〜200℃という低温で分解し、金属銀を形成することが可能である。そして、還元剤と併用することで、より低温で分解して金属銀を形成する。
本発明において、β−ケトカルボン酸銀(1)は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
(カルボン酸銀(4))
カルボン酸銀(4)は、前記一般式(4)で表される
式中、Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、カルボキシ基(−COOH)又は式「−C(=O)−OAg」で表される基である。
における前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。ただし、Rにおける前記脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜15であることが好ましく、1〜10であることがより好ましい。
における前記脂肪族炭化水素基がメチレン基(−CH−)を有する場合、1個以上の該メチレン基はカルボニル基で置換されていてもよい。カルボニル基で置換されていてもよいメチレン基の数及び位置は特に限定されず、すべてのメチレン基がカルボニル基で置換されていてもよい。ここで「メチレン基」とは、単独の式「−CH−」で表される基だけでなく、式「−CH−」で表される基が複数個連なったアルキレン基中の1個の式「−CH−」で表される基も含むものとする。
カルボン酸銀(4)は、ピルビン酸銀(CH−C(=O)−C(=O)−OAg)、酢酸銀(CH−C(=O)−OAg)、酪酸銀(CH−(CH−C(=O)−OAg)、イソ酪酸銀((CHCH−C(=O)−OAg)、2−エチルへキサン酸銀(CH−(CH−CH(CHCH)−C(=O)−OAg)、ネオデカン酸銀(CH−(CH−C(CH−C(=O)−OAg)、シュウ酸銀(AgO−C(=O)−C(=O)−OAg)、又はマロン酸銀(AgO−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)であることが好ましい。また、上記のシュウ酸銀(AgO−C(=O)−C(=O)−OAg)及びマロン酸銀(AgO−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)の2個の式「−COOAg」で表される基のうち、1個が式「−COOH」で表される基となったもの(HO−C(=O)−C(=O)−OAg、HO−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)も好ましい。
カルボン酸銀(4)も、β−ケトカルボン酸銀(1)と同様に、乾燥処理や加熱(焼成)処理等の後処理により形成された導電体(金属銀)において、残存する原料や不純物の濃度をより低減できる。そして、還元剤と併用することで、より低温で分解して金属銀を形成する。
本発明において、カルボン酸銀(4)は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
銀インク組成物において、金属銀の形成材料に由来する銀の含有量は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。このような範囲であることで、形成された第二の導電層13は品質により優れたものとなる。前記銀の含有量の上限値は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、取り扱い性等を考慮すると25質量%であることが好ましい。
なお、本明細書において、「金属銀の形成材料に由来する銀」とは、特に断りの無い限り、銀インク組成物の製造時に配合された金属銀の形成材料中の銀を意味し、配合後に引き続き金属銀の形成材料を構成している銀と、配合後に金属銀の形成材料が分解して生じた分解物中の銀及び銀自体と、の両方を含む概念とする。
[含窒素化合物]
前記銀インク組成物は、特に金属銀の形成材料が前記カルボン酸銀である場合、金属銀の形成材料以外に、さらに、炭素数25以下のアミン化合物及び第4級アンモニウム塩、アンモニア、並びに前記アミン化合物又はアンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩からなる群から選択される一種以上の含窒素化合物(以下、単に「含窒素化合物」と略記することがある)が配合されてなるものが好ましい。
以下、炭素数25以下のアミン化合物を「アミン化合物」、炭素数25以下の第4級アンモニウム塩を「第4級アンモニウム塩」、炭素数25以下のアミン化合物が酸と反応してなるアンモニウム塩を「アミン化合物由来のアンモニウム塩」、アンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩を「アンモニア由来のアンモニウム塩」と略記することがある。
(アミン化合物、第4級アンモニウム塩)
前記アミン化合物は、炭素数が1〜25であり、第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミンのいずれでもよい。また、前記第4級アンモニウム塩は、炭素数が4〜25である。前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩は、鎖状及び環状のいずれでもよい。また、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子(例えば、第1級アミンのアミノ基(−NH)を構成する窒素原子)の数は1個でもよいし、2個以上でもよい。
前記第1級アミンとしては、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいモノアルキルアミン、モノアリールアミン、モノ(ヘテロアリール)アミン、ジアミン等が例示できる。
前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、Rにおける前記アルキル基と同様のものが例示でき、炭素数が1〜19の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。
好ましい前記モノアルキルアミンとして、具体的には、n−ブチルアミン、n−へキシルアミン、n−オクチルアミン、n−ドデシルアミン、n−オクタデシルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、3−アミノペンタン、3−メチルブチルアミン、2−アミノオクタン、2−エチルヘキシルアミン、1,2−ジメチル−n−プロピルアミンが例示できる。
前記モノアリールアミンを構成するアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が例示でき、炭素数が6〜10であることが好ましい。
前記モノ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基は、芳香族環骨格を構成する原子として、ヘテロ原子を有するものであり、前記ヘテロ原子としては、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、ホウ素原子が例示できる。また、芳香族環骨格を構成する前記へテロ原子の数は特に限定されず、1個でもよいし、2個以上でもよい。2個以上である場合、これらへテロ原子は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、これらへテロ原子は、すべて同じでもよいし、すべて異なっていてもよく、一部だけ異なっていてもよい。
前記ヘテロアリール基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、その環員数(環骨格を構成する原子の数)も特に限定されないが、3〜12員環であることが好ましい。
前記ヘテロアリール基で、窒素原子を1〜4個有する単環状のものとしては、ピロリル基、ピロリニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、ピペリジニル基、ピラゾリジニル基、ピペラジニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1個有する単環状のものとしては、フラニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1個有する単環状のものとしては、チエニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する単環状のものとしては、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、モルホリニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する単環状のものとしては、チアゾリル基、チアジアゾリル基、チアゾリジニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、窒素原子を1〜5個有する多環状のものとしては、インドリル基、イソインドリル基、インドリジニル基、ベンズイミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、インダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、テトラゾロピリジル基、テトラゾロピリダジニル基、ジヒドロトリアゾロピリダジニル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜3個有する多環状のものとしては、ジチアナフタレニル基、ベンゾチオフェニル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する多環状のものとしては、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する多環状のものとしては、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ジアミンは、アミノ基を2個有していればよく、2個のアミノ基の位置関係は特に限定されない。好ましい前記ジアミンとしては、前記モノアルキルアミン、モノアリールアミン又はモノ(ヘテロアリール)アミンにおいて、アミノ基(−NH)を構成する水素原子以外の1個の水素原子が、アミノ基で置換されたものが例示できる。
前記ジアミンは炭素数が1〜10であることが好ましく、より好ましいものとしてはエチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタンが例示できる。
前記第2級アミンとしては、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいジアルキルアミン、ジアリールアミン、ジ(ヘテロアリール)アミン等が例示できる。
前記ジアルキルアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、ジアルキルアミン一分子中の2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
好ましい前記ジアルキルアミンとして、具体的には、N−メチル−n−ヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミンが例示できる。
前記ジアリールアミンを構成するアリール基は、前記モノアリールアミンを構成するアリール基と同様であり、炭素数が6〜10であることが好ましい。また、ジアリールアミン一分子中の2個のアリール基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記ジ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基は、前記モノ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基と同様であり、6〜12員環であることが好ましい。また、ジ(ヘテロアリール)アミン一分子中の2個のヘテロアリール基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記第3級アミンとしては、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいトリアルキルアミン、ジアルキルモノアリールアミン等が例示できる。
前記トリアルキルアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜19の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、トリアルキルアミン一分子中の3個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、3個のアルキル基は、すべてが同じでもよいし、すべてが異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。
好ましい前記トリアルキルアミンとして、具体的には、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンが例示できる。
前記ジアルキルモノアリールアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、ジアルキルモノアリールアミン一分子中の2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記ジアルキルモノアリールアミンを構成するアリール基は、前記モノアリールアミンを構成するアリール基と同様であり、炭素数が6〜10であることが好ましい。
本発明において、前記第4級アンモニウム塩としては、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいハロゲン化テトラアルキルアンモニウム等が例示できる。
前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜19であることが好ましい。また、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム一分子中の4個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、4個のアルキル基は、すべてが同じでもよいし、すべてが異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。
前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを構成するハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が例示できる。
好ましい前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムとして、具体的には、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミドが例示できる。
ここまでは、主に鎖状のアミン化合物及び第4級有機アンモニウム塩について説明したが、前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩は、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子が環骨格構造(複素環骨格構造)の一部であるようなヘテロ環化合物であってもよい。すなわち、前記アミン化合物は環状アミンでもよく、前記第4級アンモニウム塩は環状アンモニウム塩でもよい。この時の環(アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子を含む環)構造は、単環状及び多環状のいずれでもよく、その環員数(環骨格を構成する原子の数)も特に限定されず、脂肪族環及び芳香族環のいずれでもよい。
環状アミンであれば、好ましいものとして、ピリジンが例示できる。
前記第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン及び第4級アンモニウム塩において、「置換基で置換されていてもよい水素原子」とは、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子に結合している水素原子以外の水素原子である。この時の置換基の数は特に限定されず、1個でもよいし、2個以上でもよく、前記水素原子のすべてが置換基で置換されていてもよい。置換基の数が複数の場合には、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、複数個の置換基はすべて同じでもよいし、すべて異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。また、置換基の位置も特に限定されない。
前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩における前記置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、トリフルオロメチル基(−CF)等が例示できる。ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基が置換基を有する場合、かかるアルキル基は、置換基としてアリール基を有する、炭素数が1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は置換基として好ましくは炭素数が1〜5のアルキル基を有する、炭素数が3〜7の環状のアルキル基が好ましく、このような置換基を有するモノアルキルアミンとして、具体的には、2−フェニルエチルアミン、ベンジルアミン、2,3−ジメチルシクロヘキシルアミンが例示できる。
また、置換基である前記アリール基及びアルキル基は、さらに1個以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよく、このようなハロゲン原子で置換された置換基を有するモノアルキルアミンとしては、2−ブロモベンジルアミンが例示できる。ここで、前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
前記モノアリールアミンを構成するアリール基が置換基を有する場合、かかるアリール基は、置換基としてハロゲン原子を有する、炭素数が6〜10のアリール基が好ましく、このような置換基を有するモノアリールアミンとして、具体的には、ブロモフェニルアミンが例示できる。ここで、前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
前記ジアルキルアミンを構成するアルキル基が置換基を有する場合、かかるアルキル基は、置換基として水酸基又はアリール基を有する、炭素数が1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、このような置換基を有するジアルキルアミンとして、具体的には、ジエタノールアミン、N−メチルベンジルアミンが例示できる。
前記アミン化合物は、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−へキシルアミン、n−オクチルアミン、n−ドデシルアミン、n−オクタデシルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、3−アミノペンタン、3−メチルブチルアミン、2−アミノオクタン、2−エチルヘキシルアミン、2−フェニルエチルアミン、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、N−メチル−n−ヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、N−メチルベンジルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミン、1,2−ジメチル−n−プロピルアミン、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン又はN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンであることが好ましい。
また、後述するように、二酸化炭素を供給して銀インク組成物を調製する場合には、二酸化炭素供給時において、銀インク組成物(第二の混合物)中の成分がより均一に分散して、品質が安定することから、前記アミン化合物は分岐鎖状のアルキル基を有するものが好ましい。
(アミン化合物由来のアンモニウム塩)
本発明において、前記アミン化合物由来のアンモニウム塩は、前記アミン化合物が酸と反応してなるアンモニウム塩であり、前記酸は、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸でもよいし、酢酸等の有機酸でもよく、酸の種類は特に限定されない。
前記アミン化合物由来のアンモニウム塩としては、n−プロピルアミン塩酸塩、N−メチル−n−ヘキシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン塩酸塩等が例示できるが、これらに限定されない。
(アンモニア由来のアンモニウム塩)
本発明において、前記アンモニア由来のアンモニウム塩は、アンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩であり、ここで酸としては、前記アミン化合物由来のアンモニウム塩の場合と同じものが例示できる。
前記アンモニア由来のアンモニウム塩としては、塩化アンモニウム等が例示できるが、これに限定されない。
本発明においては、前記アミン化合物、第4級アンモニウム塩、アミン化合物由来のアンモニウム塩及びアンモニア由来のアンモニウム塩は、それぞれ一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
そして、前記含窒素化合物としては、前記アミン化合物、第4級アンモニウム塩、アミン化合物由来のアンモニウム塩及びアンモニア由来のアンモニウム塩からなる群から選択される一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
銀インク組成物において、前記含窒素化合物の配合量は、前記カルボン酸銀の配合量1モルあたり0.4〜15モルであることが好ましく、0.8〜5モルであることがより好ましい。
前記含窒素化合物の配合量を上記のように規定することで、銀インク組成物は安定性がより向上し、導電層の品質がより向上する。さらに、高温による加熱処理を行わなくても、より安定して導電層を形成できる。
[還元剤]
銀インク組成物は、前記金属銀の形成材料以外に、さらに還元剤が配合されてなるものでもよい。還元剤を配合することで、前記銀インク組成物は、金属銀をより形成し易くなり、例えば、低温での加熱処理でも十分な導電性を有する金属銀(導電体)を形成できる。
そして、前記還元剤は、シュウ酸、ヒドラジン及び下記一般式(5)で表される化合物(以下、「化合物(5)」と略記することがある)からなる群から選択される一種以上の還元性化合物(以下、単に「還元性化合物」と略記することがある)であることが好ましい。
H−C(=O)−R21 ・・・・(5)
(式中、R21は、炭素数20以下のアルキル基、アルコキシ基若しくはN,N−ジアルキルアミノ基、水酸基又はアミノ基である。)
(還元性化合物)
前記還元性化合物は、シュウ酸(HOOC−COOH)、ヒドラジン(HN−NH)及び前記一般式(5)で表される化合物(化合物(5))からなる群から選択される一種以上のものである。すなわち、配合される還元性化合物は、一種のみでよいし、二種以上でもよく、二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
式中、R21は、炭素数20以下のアルキル基、アルコキシ基若しくはN,N−ジアルキルアミノ基、水酸基又はアミノ基である。
21における炭素数20以下のアルキル基は、炭素数が1〜20であり、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、前記一般式(1)のRにおける前記アルキル基と同様のものが例示できる。
21における炭素数20以下のアルコキシ基は、炭素数が1〜20であり、R21における前記アルキル基が酸素原子に結合してなる一価の基が例示できる。
21における炭素数20以下のN,N−ジアルキルアミノ基は、炭素数が2〜20であり、窒素原子に結合している2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよく、該アルキル基はそれぞれ炭素数が1〜19である。ただし、これら2個のアルキル基の炭素数の合計値が2〜20である。
窒素原子に結合している前記アルキル基は、それぞれ直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、炭素数が1〜19である点以外は、前記一般式(1)のRにおける前記アルキル基と同様のものが例示できる。
前記還元性化合物として、ヒドラジンは、一水和物(HN−NH・HO)を用いてもよい。
前記還元性化合物は、ギ酸(H−C(=O)−OH)、ギ酸メチル(H−C(=O)−OCH)、ギ酸エチル(H−C(=O)−OCHCH)、ギ酸ブチル(H−C(=O)−O(CHCH)、プロパナール(H−C(=O)−CHCH)、ブタナール(H−C(=O)−(CHCH)、ヘキサナール(H−C(=O)−(CHCH)、ホルムアミド(H−C(=O)−NH)、N,N−ジメチルホルムアミド(H−C(=O)−N(CH)又はシュウ酸であることが好ましい。
銀インク組成物において、還元剤の配合量は、前記金属銀の形成材料の配合量1モルあたり0.04〜3.5モルであることが好ましく、0.06〜2.5モルであることがより好ましい。このように規定することで、銀インク組成物は、より容易に、より安定して導電層を形成できる。
[アルコール]
銀インク組成物は、前記金属銀の形成材料以外に、さらにアルコールが配合されてなるものでもよい。
前記アルコールは、下記一般式(2)で表されるアセチレンアルコール類(以下、「アセチレンアルコール(2)」と略記することがある)であることが好ましい。
Figure 2014110514
(式中、R’及びR’’は、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基である。)
(アセチレンアルコール(2))
アセチレンアルコール(2)は、前記一般式(2)で表される。
式中、R’及びR’’は、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基である。
R’及びR’’における炭素数1〜20のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。R’及びR’’における前記アルキル基としては、Rにおける前記アルキル基と同様のものが例示できる。
R’及びR’’におけるフェニル基の水素原子が置換されていてもよい前記置換基としては、炭素数が1〜16の飽和又は不飽和の一価の脂肪族炭化水素基、該脂肪族炭化水素基が酸素原子に結合してなる一価の基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基、シアノ基、フェノキシ基等が例示でき、Rにおけるフェニル基の水素原子が置換されていてもよい前記置換基と同様である。そして、置換基の数及び位置は特に限定されず、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
R’及びR’’は、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であることがより好ましい。
好ましいアセチレンアルコール(2)としては、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オールが例示できる。
銀インク組成物において、アセチレンアルコール(2)の配合量は、前記金属銀の形成材料の配合量1モルあたり0.03〜0.7モルであることが好ましく、0.05〜0.3モルであることがより好ましい。このような範囲とすることで、銀インク組成物の安定性がより向上する。
前記アルコールは、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合で、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
銀インク組成物は、前記金属銀の形成材料、含窒素化合物、還元剤及びアルコール以外の、その他の成分が配合されてなるものでもよい。
前記その他の成分は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されず、好ましいものとしては、アルコール以外の溶媒が例示でき、配合成分の種類や量に応じて任意に選択できる。
銀インク組成物において、配合成分の総量に占める前記その他の成分の配合量の比率は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
前記その他の成分は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合で、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
銀インク組成物中の成分は、すべて溶解していてもよいし、一部又はすべてが溶解していなくてもよいが、溶解していない成分は、均一に分散されていることが好ましい。
銀インク組成物は、前記金属銀の形成材料、及び前記金属銀の形成材料以外の成分を配合することで得られる。
各成分の配合時には、すべての成分を添加してからこれらを混合してもよいし、一部の成分を順次添加しながら混合してもよく、すべての成分を順次添加しながら混合してもよい。
混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法、ミキサーを使用して混合する方法、超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
配合時の温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、−5〜60℃であることが好ましい。
また、配合時間(混合時間)も、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、5〜120分であることが好ましい。
[二酸化炭素]
銀インク組成物は、さらに二酸化炭素が供給されてなるものでもよい。このような銀インク組成物は高粘度となり、例えば、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、パッド印刷法等の、インクを厚盛りすることが必要な印刷法への適用に好適である。
二酸化炭素は、銀インク組成物製造時のいずれの時期に供給してもよい。
そして、本発明においては、例えば、前記金属銀の形成材料及び含窒素化合物が配合されてなる第一の混合物に、二酸化炭素を供給して第二の混合物とし、必要に応じて前記第二の混合物に、さらに、前記還元剤を配合して、銀インク組成物を製造することが好ましい。また、前記アルコール又はその他の成分を配合する場合、これらは、第一の混合物及び第二の混合物のいずれか一方又は両方の製造時に配合でき、目的に応じて任意に選択できる。
前記第一の混合物は、配合成分が異なる点以外は、上記の銀インク組成物と同様の方法で製造できる。
第一の混合物は、配合成分がすべて溶解していてもよいし、一部の成分が溶解せずに分散した状態であってもよいが、配合成分がすべて溶解していることが好ましく、溶解していない成分は均一に分散していることが好ましい。
第一の混合物製造時の配合温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、−5〜30℃であることが好ましい。また、配合時間は、配合成分の種類や配合時の温度に応じて適宜調節すればよいが、例えば、0.5〜12時間であることが好ましい。
第一の混合物に供給される二酸化炭素(CO)は、ガス状及び固形状(ドライアイス)のいずれでもよく、ガス状及び固形状の両方でもよい。二酸化炭素が供給されることにより、この二酸化炭素が第一の混合物に溶け込み、第一の混合物中の成分に作用することで、得られる第二の混合物の粘度が上昇すると推測される。
二酸化炭素ガスの供給は、液体中にガスを吹き込む公知の各種方法で行えばよく、適した供給方法を適宜選択すればよい。例えば、配管の一端を第一の混合物中に浸漬し、他端を二酸化炭素ガスの供給源に接続して、この配管を通じて二酸化炭素ガスを第一の混合物に供給する方法が例示できる。この時、配管の端部から直接二酸化炭素ガスを供給してもよいが、例えば、多孔質性のものなど、ガスの流路となり得る空隙部が多数設けられ、導入されたガスを拡散させて微小な気泡として放出することが可能なガス拡散部材を配管の端部に接続し、このガス拡散部材を介して二酸化炭素ガスを供給してもよい。また、第一の混合物の製造時と同様の方法で、第一の混合物を撹拌しながら二酸化炭素ガスを供給してもよい。このようにすることで、効率的に二酸化炭素を供給できる。
二酸化炭素ガスの供給量は、供給先の第一の混合物の量や、目的とする銀インク組成物又は第二の混合物の粘度に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。例えば、20〜25℃における粘度が5Pa・s以上である銀インク組成物を100〜1000g程度得るためには、二酸化炭素ガスを100L以上供給することが好ましく、200L以上供給することがより好ましい。なお、ここでは銀インク組成物の20〜25℃における粘度について説明したが、銀インク組成物の使用時の温度は、20〜25℃に限定されるものではなく、任意に選択できる。
二酸化炭素ガスの流量は、必要とされる二酸化炭素ガスの供給量を考慮して適宜調節すればよいが、第一の混合物1gあたり0.5mL/分以上であることが好ましく、1mL/分以上であることがより好ましい。流量の上限値は特に限定されないが、取り扱い性等を考慮すると、混合物1gあたり40mL/分であることが好ましい。
そして、二酸化炭素ガスの供給時間は、必要とされる二酸化炭素ガスの供給量や、流量を考慮して適宜調節すればよい
二酸化炭素ガス供給時の第一の混合物の温度は、5〜70℃であることが好ましく、7〜60℃であることがより好ましく、10〜50℃であることが特に好ましい。下限値以上とすることで、より効率的に二酸化炭素を供給でき、上限値以下とすることで、不純物が少ないより良好な品質の銀インク組成物が得られる。
二酸化炭素ガスの流量及び供給時間、並びに二酸化炭素ガス供給時の前記温度は、それぞれの値を相互に考慮しながら適した範囲に調節すればよい。例えば、前記温度を低めに設定しても、二酸化炭素ガスの流量を多めに設定するか、二酸化炭素ガスの供給時間を長めに設定することで、あるいはこの両方を行うことで、効率的に二酸化炭素を供給できる。また、二酸化炭素ガスの流量を少なめに設定しても、前記温度を高めにするか、二酸化炭素ガスの供給時間を長めに設定することで、あるいはこの両方を行うことで、効率的に二酸化炭素を供給できる。すなわち、二酸化炭素ガスの流量、二酸化炭素ガス供給時の前記温度として例示した上記数値範囲の中の数値を、二酸化炭素ガスの供給時間も考慮しつつ柔軟に組み合わせることで、良好な品質の銀インク組成物が効率的に得られる。
二酸化炭素ガスの供給は、第一の混合物を撹拌しながら行うことが好ましい。このようにすることで、供給した二酸化炭素ガスがより均一に第一の混合物中に拡散し、より効率的に二酸化炭素を供給できる。
この時の撹拌方法は、二酸化炭素を用いない上記の銀インク組成物の製造時における前記混合方法の場合と同様でよい。
ドライアイス(固形状二酸化炭素)の供給は、第一の混合物中にドライアイスを添加することで行えばよい。ドライアイスは、全量を一括して添加してもよいし、分割して段階的に(添加を行わない時間帯を挟んで連続的に)添加してもよい。
ドライアイスの使用量は、上記の二酸化炭素ガスの供給量を考慮して調節すればよい。
ドライアイスの添加中及び添加後は、第一の混合物を撹拌することが好ましく、例えば、二酸化炭素を用いない上記の銀インク組成物の製造時と同様の方法で撹拌することが好ましい。このようにすることで、効率的に二酸化炭素を供給できる。
撹拌時の温度は、二酸化炭素ガス供給時と同様でよい。また、撹拌時間は、撹拌温度に応じて適宜調節すればよい。
第二の混合物の粘度は、銀インク組成物又は第二の混合物の取り扱い方法など、目的に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。例えば、銀インク組成物をスクリーン印刷法、フレキソ印刷法等の高粘度インクを使用する印刷法へ適用する場合には、第二の混合物の20〜25℃における粘度は、3Pa・s以上であることが好ましい。なお、ここでは第二の混合物の20〜25℃における粘度について説明したが、第二の混合物の使用時の温度は、20〜25℃に限定されるものではなく、任意に選択できる。
前記第二の混合物には、さらに、必要に応じて前記還元剤、アルコール及びその他の成分からなる群から選択される一種以上を配合して、銀インク組成物とすることができる。
このときの銀インク組成物は、配合成分が異なる点以外は、二酸化炭素を用いない上記の銀インク組成物と同様の方法で製造できる。そして、得られた銀インク組成物は、配合成分がすべて溶解していてもよいし、一部の成分が溶解せずに分散した状態であってもよいが、配合成分がすべて溶解していることが好ましく、溶解していない成分は均一に分散していることが好ましい。
前記還元性化合物配合時の温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、−5〜60℃であることが好ましい。また、配合時間は、配合成分の種類や配合時の温度に応じて適宜調節すればよいが、例えば、0.5〜12時間であることが好ましい。
前記その他の成分は、先に説明したように、前記第一の混合物及び第二の混合物のいずれかの製造時に配合されてもよく、両方の製造時に配合されてもよい。すなわち、第一の混合物及び第二の混合物を経て銀インク組成物を製造する過程において、二酸化炭素以外の配合成分の総量に占める前記その他の成分の配合量の比率([その他の成分(質量)]/[金属銀の形成材料、含窒素化合物、還元剤、アルコール、及びその他の成分(質量)]×100)は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、0質量、すなわちその他の成分を配合しなくても、銀インク組成物は十分にその効果を発現する。
例えば、還元剤の配合時には、得られる配合物(銀インク組成物)は比較的発熱し易い。そして、還元剤の配合時の温度が高い場合、この配合物は、後述する銀インク組成物の加熱処理時と同様の状態になるため、還元剤による前記カルボン酸銀の分解促進作用によって、前記カルボン酸銀の少なくとも一部において金属銀の形成が開始されることがあると推測される。このような金属銀を含有する銀インク組成物は、導電層形成時において、金属銀を含有しない銀インク組成物よりも温和な条件で後処理を行うことにより、導電層(導電体)を形成できることがある。また、還元剤の配合量が十分に多い場合にも、同様に温和な条件で後処理を行うことにより、導電層を形成できることがある。このように、前記カルボン酸銀の分解を促進する条件を採用することで、後処理として、より低温での加熱処理で、あるいは加熱処理を行わずに常温での乾燥処理のみで、導電層を形成できることがある。また、このような金属銀を含有する銀インク組成物は、金属銀を含有しない銀インク組成物と同様に取り扱うことができ、特に取り扱い性が劣ることもない。
本発明においては、還元剤を滴下しながら配合することが好ましく、さらに滴下速度の変動を抑制することで、導電層の表面粗さをより低減できる傾向にある。
二酸化炭素が供給されてなる銀インク組成物は、例えば、銀インク組成物をスクリーン印刷法、フレキソ印刷法等の高粘度インクを使用する印刷法へ適用する場合には、20〜25℃における粘度が、1Pa・s以上であることが好ましい。
銀インク組成物は、例えば、印刷法、塗布法、浸漬法等の公知の方法で基材上に付着させることができる。
前記印刷法としては、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、ディップ式印刷法、インクジェット式印刷法、ディスペンサー式印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、パッド印刷法等が例示できる。
前記塗布法としては、スピンコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、グラビアコーター等の各種コーターや、ワイヤーバー等を用いる方法が例示できる。
上記の第二の導電層を形成する工程においては、第一の導電層12に付着させる銀インク組成物の量、又は銀インク組成物における前記金属銀の形成材料の配合量を調節することで、第二の導電層13の厚さを調節できる。
第一の導電層12上に付着させた銀インク組成物を乾燥処理する場合には、公知の方法で行えばよく、例えば、常圧下、減圧下及び送風条件下のいずれで行ってもよく、大気下及び不活性ガス雰囲気下のいずれでおこなってもよい。そして、乾燥温度も特に限定されず、加熱乾燥及び常温乾燥のいずれでもよい。加熱処理が不要な場合の好ましい乾燥方法としては、18〜30℃で大気下において乾燥させる方法が例示できる。
第一の導電層12上に付着させた銀インク組成物を加熱(焼成)処理する場合、その条件は、銀インク組成物の配合成分の種類に応じて適宜調節すればよい。通常は、加熱温度が60〜200℃であることが好ましく、70〜180℃であることがより好ましい。加熱時間は、加熱温度に応じて調節すればよいが、通常は、0.2〜12時間であることが好ましく、0.4〜10時間であることがより好ましい。前記カルボン酸銀の中でもβ−ケトカルボン酸銀(1)は、例えば、酸化銀等の金属銀形成材料とは異なり、当該分野で公知の還元剤等を使用しなくても、低温で分解する。そして、このような分解温度を反映して、前記銀インク組成物は、上記のように、従来のものより極めて低温で金属銀を形成できる。
銀インク組成物の加熱処理の方法は特に限定されず、例えば、電気炉による加熱、感熱方式の熱ヘッドによる加熱、遠赤外線照射による加熱等で行うことができる。また、銀インク組成物の加熱処理は、大気下で行ってもよいし、不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。そして、常圧下及び減圧下のいずれで行ってもよい。
銀インク組成物を用いた場合の第二の導電層13は、銀インク組成物の前記後処理により形成された導電体からなる層で、金属銀を主成分とするものである。ここで「金属銀を主成分とする」とは、金属銀の比率が、見かけ上金属銀だけからなるとみなし得る程度に十分に高いことを意味し、例えば、前記導電体中の金属銀の比率は99質量%以上であることが好ましい。
本発明に係るアンテナ構造体は、上記のように、常温下又は加熱条件下で加圧する方法など、導電層表面の凹凸を低減する工程を別途行うことなく、表面粗さが小さい第二の導電層を形成できるので、簡略化された工程で製造可能である。
本発明に係るアンテナ構造体は、前記導電層(第一の導電層及び第二の導電層)をアンテナとすること以外は、公知のデータ受送信体と同様の構成とすることで、データ受送信体とすることができる。例えば、図1に示すアンテナ構造体1において、基材11上に第二の導電層13と電気的に接続されたICチップを設けてアンテナ部とすることにより、非接触型データ受送信体を構成できる。
<<通信機器>>
本発明に係る通信機器は、前記アンテナ構造体を用い、前記基材を筐体として備えたことを特徴とし、例えば、前記アンテナ構造体中の基材で筐体の少なくとも一部を構成したこと以外は、公知の通信機器と同様の構成とすることができる。例えば、前記アンテナ構造体に加え、音声入力部、音声出力部、操作スイッチ、表示部等を組み合わせることにより、携帯電話機を構成できる。
本発明に係る通信機器は、従来よりもさらに、高周波帯域における通信性能を向上させることが可能である。
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。なお、銀インク組成物の粘度は、以下の方法で測定した。
(粘度の測定方法)
測定対象物(5g)について、温度23℃の環境下で、超音波式粘度計(CBC社製「VISCOMATE VM−10A−MH」)のセンサー(振動体)を挿入して、粘度を測定した。
<アンテナ構造体の製造>
[実施例1]
(銀インク組成物の製造)
氷冷下、2−エチルヘキシルアミン(290.3g、下記2−メチルアセト酢酸銀に対して2.4倍モル)に、25℃以下を保つように2−メチルアセト酢酸銀(210.0g)を添加し、添加終了後30分間撹拌することにより、溶液を得た。さらに、このまま1時間撹拌した後、得られた黄色透明の反応液に、これを20℃で撹拌しながら、二酸化炭素ガスを900mL/分の流量で7時間供給し、反応液を増粘させて銀インク組成物を得た。この銀インク組成物の粘度は10Pa・sであった。
(アンテナ構造体の製造)
ポリエチレンテレフタレート製の基材(厚さ50μm)上にポリエステル系接着剤を用いて銅箔(厚さ18μm)を設け、化学薬品によるエッチングでこの銅箔を所定の形状にパターニングすることにより、第一の導電層を形成した。
次いで、第一の導電層上にスクリーン印刷法により、上記で得られた銀インク組成物を付着させた後、これを120℃で1時間、オーブン内で加熱(焼成)処理することにより、第二の導電層として銀層(厚さ1μm)を第一の導電層上に形成し、アンテナ構造体を得た。このとき、第一の導電層及び第二の導電層の二層構造からなる導電層を、全長36mm、幅3mmのダイポールアンテナとした。第二の導電層の厚さは、ハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製「VN−8010」)を用いて測定し、その平均値(平均膜厚)を算出して、その値を厚さとして採用した。これは、以降の実施例及び比較例でも同様である。
[実施例2]
(銀インク組成物の製造)
氷冷下、2−エチルヘキシルアミン(下記2−メチルアセト酢酸銀に対して2.4倍モル)に、2−メチルアセト酢酸銀を添加して、15分間撹拌することにより、液状物を得た。この液状物に、反応液の温度が50℃以下となるように、ギ酸(2−メチルアセト酢酸銀に対して1.0倍モル)を滴下した。ギ酸の滴下終了後、室温(25℃)にて反応液をさらに1時間撹拌することにより、銀インク組成物を得た。この銀インク組成物の粘度は1.5Pa・sであった。
(アンテナ構造体の製造)
上記の粘度が1.5Pa・sの銀インク組成物を用い、オーブン内での加熱(焼成)処理条件を80℃で1時間として、厚さ1μmの第二の導電層を形成したこと以外は、実施例1と同じ方法でアンテナ構造体を得た。
[比較例1]
実施例1と同じ方法で、ポリエチレンテレフタレート製の基材(厚さ50μm)上に銅箔(厚さ18μm)を設け、これをパターニングすることにより、第一の導電層と同じものを形成し、これをそのままダイポールアンテナとして、比較用のアンテナ構造体を得た。
[比較例2]
(銀インク組成物の製造)
氷冷下、2−エチルヘキシルアミン(290.3g、下記2−メチルアセト酢酸銀に対して2.4倍モル)に、25℃以下を保つように2−メチルアセト酢酸銀(210.0g)を添加し、添加終了後30分間撹拌することにより、溶液を得た。さらに、このまま1時間撹拌した後、得られた黄色透明の反応液(第一の混合物)に、これを20℃で撹拌しながら、二酸化炭素ガスを900mL/分の流量で7時間供給し、反応液を増粘させた混合物(第二の混合物)を得た。この第二の混合物の粘度を測定したところ、10Pa・sであった。
次いで、得られた第二の混合物に、上記で添加した2−メチルアセト酢酸銀に対して3倍モル量の鱗片状の銀粉(D10:1.0μm以上、D50(メジアン径):4.5±1.2μm、D90:10μm以下)を添加し、自動乳鉢を用いて25〜30℃で30分間撹拌した後、3本ロールを用いて25〜30℃で10分間、170rpmで混合することにより、比較用の銀インク組成物を得た。
なお、上記の銀粉について、レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置を用いて横幅(最大粒径)を測定したところ、全体の60%が、横幅2〜7μmの範囲に含まれることを確認した。
(アンテナ構造体の製造)
実施例1と同じ方法で、ポリエチレンテレフタレート製の基材(厚さ50μm)上に銅箔(厚さ18μm)を設け、これをパターニングすることにより、第一の導電層と同じものを形成した。
次いで、このパターニングされた銅箔上にスクリーン印刷法により、上記で得られた比較用の銀インク組成物を付着させた後、これを150℃で1時間、オーブン内で加熱(焼成)処理することにより、パターニングされた銅箔上に銀層(厚さ1μm)を形成し、ダイポールアンテナとして、比較用のアンテナ構造体を得た。
<アンテナ構造体の評価>
上記の各実施例及び比較例で得られたアンテナ構造体について、以下の測定を行い、通信性能を評価した。
(導電層の表面粗さの測定)
アンテナ構造体の上層の導電層(実施例1〜2では第二の導電層、比較例1では銅箔、比較例2では銀層、以下、「上層導電層」ということがある)について、ハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製「VN−8010」)を用いて、その露出面の表面粗さRaをJIS B0601:2001(ISO4287:1997)に準拠して測定した。結果を表1に示す。なお、比較例1のアンテナ構造体における銅箔は、実施例1〜2のアンテナ構造体における第二の導電層と同様に、露出面の比率が大きいことから、便宜上、上層導電層に分類している。また、実施例1〜2のアンテナ構造体における第一の導電層、比較例1のアンテナ構造体における銅箔は、それぞれ上層導電層よりも下層に位置するため、以下、下層導電層ということがある。
(反射損失)
上記各実施例及び比較例で得られたアンテナ構造体について、一部の導電層を、その厚さ方向全体を覆うように、すなわち、実施例1〜2では第一の導電層及び第二の導電層を共に覆うように、比較例1では銅箔を覆うように、比較例2では銅箔及び銀層を共に覆うように、それぞれはんだ付けしてケーブル付きのコネクタ(SMAコネクタ)を接続し、このケーブルに測定機器であるネットワークアナライザ(Agilent Technologies社製「E5071B」)を接続して、このアンテナ構造体の反射損失(S11)を測定した。このときの測定結果を図3に示す。また、測定された最小値を表1に示す。なお、図3に示すような反射損失と周波数との関係は、アンテナの長さや太さ等で調節可能なものである。
Figure 2014110514
上記結果から明らかなように、実施例1〜2のアンテナ構造体は、上層導電層である第二の導電層が、銀として2−メチルアセト酢酸銀から生じたもののみで構成され、その表面粗さRaが300nm以下の条件を満たし、反射損失(S11)が小さく、高周波帯域での通信性能に優れていた。また、導電層は、第一の導電層及び第二の導電層が積層された二層構造であることにより、厚膜化され、また、基材との密着強度が大きいために、はんだの冷却時に基材から剥離することがなく、さらに、はんだとの親和性が高いため、安定した配線が可能であった。
これに対して、比較例1のアンテナ構造体は、導電層が二層構造ではなく、銅箔のみから構成され、その表面粗さRaが大きいため、反射損失(S11)が大きく、高周波帯域での通信性能に劣っていた。このような銅箔のエッチングにより形成した導電層は、経時的に酸化によって劣化し易く、さらに表面粗さRaが増大することによって、通信性能の低下が進行し易い。また、比較例2のアンテナ構造体は、上層導電層である第二の導電層が、銀として2−メチルアセト酢酸銀から生じたものと銀粉(金属銀)とから構成され、その表面粗さRaが著しく大きいため、反射損失(S11)が大きく、高周波帯域での通信性能に劣っていた。
本発明は、データ受送信体、又は携帯電話機等の通信機器に利用可能である。
1・・・アンテナ構造体、11・・・基材、12・・・第一の導電層、13・・・第二の導電層、13a・・・第二の導電層の表面

Claims (3)

  1. 高周波帯域において通信可能であり、基材、第一の導電層及び第二の導電層がこの順に設けられ、前記第二の導電層は、表面粗さが300nm以下の表面を有することを特徴とするアンテナ構造体。
  2. 請求項1に記載のアンテナ構造体を用い、前記基材を筐体として備えたことを特徴とする通信機器。
  3. 請求項1に記載のアンテナ構造体の製造方法であって、
    基材上に形成された第一の導電層上に、金属を含む第二の導電層を形成する工程を有し、
    前記金属を、有機基を有する金属化合物から生じさせることを特徴とするアンテナ構造体の製造方法。
JP2012263575A 2012-11-30 2012-11-30 アンテナ構造体、通信機器及びアンテナ構造体の製造方法 Pending JP2014110514A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012263575A JP2014110514A (ja) 2012-11-30 2012-11-30 アンテナ構造体、通信機器及びアンテナ構造体の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012263575A JP2014110514A (ja) 2012-11-30 2012-11-30 アンテナ構造体、通信機器及びアンテナ構造体の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2014110514A true JP2014110514A (ja) 2014-06-12

Family

ID=51030914

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012263575A Pending JP2014110514A (ja) 2012-11-30 2012-11-30 アンテナ構造体、通信機器及びアンテナ構造体の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2014110514A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2019130691A1 (ja) * 2017-12-25 2019-07-04 住友電気工業株式会社 プリント配線板用基材及びプリント配線板
WO2021166627A1 (ja) * 2020-02-19 2021-08-26 株式会社ダイセル 金属粒子焼結用分散媒及び導電ペースト
WO2021221119A1 (ja) * 2020-05-01 2021-11-04 大日本印刷株式会社 配線基板及び配線基板の製造方法
CN114311702A (zh) * 2021-12-22 2022-04-12 山东工业陶瓷研究设计院有限公司 一种天线罩防潮层的成型方法

Citations (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH02226802A (ja) * 1989-02-28 1990-09-10 Sumitomo Bakelite Co Ltd 平面アンテナ
JP2003031956A (ja) * 2001-07-16 2003-01-31 Ngk Spark Plug Co Ltd セラミック配線基板及びその製造方法
JP2003332714A (ja) * 2002-05-14 2003-11-21 Toppan Forms Co Ltd 導電回路を有するメディアおよびその製造方法
JP2004000932A (ja) * 2002-04-19 2004-01-08 Seiko Epson Corp デバイスの製造方法、デバイス及び電子機器
JP2004220304A (ja) * 2003-01-15 2004-08-05 Toppan Printing Co Ltd 無線タグ用アンテナの形成方法および無線タグ
JP2004345321A (ja) * 2003-05-26 2004-12-09 Toppan Forms Co Ltd 導電性インクジェットインク受容層形成用インクおよびそれを用いた導電回路を有するシート
JP2007288360A (ja) * 2006-04-13 2007-11-01 Toshiba Corp 移動通信端末
JP2009081586A (ja) * 2007-09-25 2009-04-16 Toshiba Corp 筐体及びその製造方法、並びに電子機器
JP2010239259A (ja) * 2009-03-30 2010-10-21 Sumitomo Osaka Cement Co Ltd 透明平面アンテナ及び粘着剤層付き透明平面アンテナ
WO2011074418A1 (ja) * 2009-12-14 2011-06-23 ダイセル化学工業株式会社 多孔質層を有する積層体、及びそれを用いた機能性積層体
JP2011148795A (ja) * 2005-02-07 2011-08-04 Inktec Co Ltd 有機銀錯体化合物、これの製造方法及びこれを用いた薄膜形成方法
JP2011529319A (ja) * 2008-08-06 2011-12-01 イーエムダブリュ カンパニー リミテッド 無線機器における内蔵型アンテナおよびその製造方法
JP2012167181A (ja) * 2011-02-14 2012-09-06 Daicel Corp 無機粒子を含有する多孔質膜及びその製造方法

Patent Citations (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH02226802A (ja) * 1989-02-28 1990-09-10 Sumitomo Bakelite Co Ltd 平面アンテナ
JP2003031956A (ja) * 2001-07-16 2003-01-31 Ngk Spark Plug Co Ltd セラミック配線基板及びその製造方法
JP2004000932A (ja) * 2002-04-19 2004-01-08 Seiko Epson Corp デバイスの製造方法、デバイス及び電子機器
JP2003332714A (ja) * 2002-05-14 2003-11-21 Toppan Forms Co Ltd 導電回路を有するメディアおよびその製造方法
JP2004220304A (ja) * 2003-01-15 2004-08-05 Toppan Printing Co Ltd 無線タグ用アンテナの形成方法および無線タグ
JP2004345321A (ja) * 2003-05-26 2004-12-09 Toppan Forms Co Ltd 導電性インクジェットインク受容層形成用インクおよびそれを用いた導電回路を有するシート
JP2011148795A (ja) * 2005-02-07 2011-08-04 Inktec Co Ltd 有機銀錯体化合物、これの製造方法及びこれを用いた薄膜形成方法
JP2007288360A (ja) * 2006-04-13 2007-11-01 Toshiba Corp 移動通信端末
JP2009081586A (ja) * 2007-09-25 2009-04-16 Toshiba Corp 筐体及びその製造方法、並びに電子機器
JP2011529319A (ja) * 2008-08-06 2011-12-01 イーエムダブリュ カンパニー リミテッド 無線機器における内蔵型アンテナおよびその製造方法
JP2010239259A (ja) * 2009-03-30 2010-10-21 Sumitomo Osaka Cement Co Ltd 透明平面アンテナ及び粘着剤層付き透明平面アンテナ
WO2011074418A1 (ja) * 2009-12-14 2011-06-23 ダイセル化学工業株式会社 多孔質層を有する積層体、及びそれを用いた機能性積層体
JP2012167181A (ja) * 2011-02-14 2012-09-06 Daicel Corp 無機粒子を含有する多孔質膜及びその製造方法

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2019130691A1 (ja) * 2017-12-25 2019-07-04 住友電気工業株式会社 プリント配線板用基材及びプリント配線板
JP2019114680A (ja) * 2017-12-25 2019-07-11 住友電気工業株式会社 プリント配線板用基材及びプリント配線板
JP7032126B2 (ja) 2017-12-25 2022-03-08 住友電気工業株式会社 プリント配線板用基材及びプリント配線板
US11752734B2 (en) 2017-12-25 2023-09-12 Sumitomo Electric Industries, Ltd. Base material for printed circuit board and printed circuit board
WO2021166627A1 (ja) * 2020-02-19 2021-08-26 株式会社ダイセル 金属粒子焼結用分散媒及び導電ペースト
WO2021221119A1 (ja) * 2020-05-01 2021-11-04 大日本印刷株式会社 配線基板及び配線基板の製造方法
CN114311702A (zh) * 2021-12-22 2022-04-12 山东工业陶瓷研究设计院有限公司 一种天线罩防潮层的成型方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6508481B2 (ja) 配線板
WO2014051066A1 (ja) 銀インク組成物、導電体及び通信機器
JP6270913B2 (ja) 回路基板
JP6289841B2 (ja) 銀インク組成物の製造方法
JP2014110514A (ja) アンテナ構造体、通信機器及びアンテナ構造体の製造方法
JP6008676B2 (ja) 積層体、積層体の製造方法及び通信機器
JP6278659B2 (ja) 銀インク組成物、導電体及び電子機器
JP6346486B2 (ja) 積層体、データ受送信体、通信機器及び透明導電膜
JP6712949B2 (ja) 金属銀、金属銀の製造方法及び積層体
JP6604468B2 (ja) 金属銀の製造方法
JP2014049644A (ja) アンテナ構造体、データ受送信体及び通信機器
JP6105352B2 (ja) 積層体及び通信機器
JP6081120B2 (ja) 積層体、データ受送信体及び通信機器
JP6230781B2 (ja) 積層体、データ受送信体、通信機器及び積層体の製造方法
JP2016005908A (ja) 積層体及び電子機器
JP6587092B2 (ja) 積層体及び電子機器
JP6322019B2 (ja) 積層体及び電子機器
JP6289988B2 (ja) 銀インク組成物の製造方法
JP2017183993A (ja) アンテナ
JP2016182740A (ja) 積層体及び電子機器
JP2016195243A (ja) 配線板
JP6596783B2 (ja) 積層体、データ受送信体及び電子機器
JP2016194047A (ja) 金属インク組成物、配線板及び配線の形成方法
JP2014089926A (ja) 銀膜
WO2016159174A1 (ja) 金属インク組成物、配線板及び配線の形成方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20151112

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20151113

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20160920

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160927

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20161124

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20161125

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20170110