JP2012219689A - 内燃機関の動弁装置 - Google Patents

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明彦 川田
Masaji Katsumata
正司 勝間田
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Abstract

【課題】排気バルブや吸気バルブに対して不必要な動作規制が加わることを避けて、必要な場面での確実なバルブ動作規制を行うことができるように改善された内燃機関の動弁装置を提供することを目的とする。
【解決手段】コイル14への通電の有無によって、磁性流体22により排気バルブ10の動作規制(負荷の付与)の実行と停止を切り換えることができる。コイル14への通電時には、シャフト19および磁性流体22が磁性流体ダンパ(或いは、バルブの運動に負荷を与える付勢部材)として機能することができる。
【選択図】図1

Description

この発明は、内燃機関の動弁装置に関する。
従来、例えば、特開2010−196642号公報に開示されているように、内燃機関の排気バルブが適切に閉じられるようにする構成を備えた内燃機関の動弁装置が知られている。
本来はバルブが閉じているべき期間すなわちカムのベース円期間(ベース円区間)に、バルブが僅かに開弁してしまうことがある。その具体的な原因として、上記公報では、エンジンの運転状態やバルブリフト機構の経時変化が示されている。バルブが僅かに開弁してラッシュアジャスタが余剰に伸びた状態で保持される状態がベース円期間に生ずると、この保持状態が新たな閉弁位置として機能するようにラッシュアジャスタが働いてしまう。そうすると、バルブが半開きの状態が新たな閉弁位置として記憶されて動作してしまうので、ベース円期間であってもバルブが完全に閉じないことになってしまう。
そこで、上記公報にかかるラッシュアジャスタは、排気バルブの開弁が認められた場合に、ラッシュアジャスタ内のチェックボールを押して強制的に油をリークさせて、ラッシュアジャスタが伸び上がった状態でロックされることを解除している。このラッシュアジャスタにより、伸長方向だけでなく収縮方向にも調整可能とすることにより安定した動作と高い精度の隙間調整が得られ、カムのベース円期間に内燃機関の排気バルブを適切に閉じることが図られている。
特開2010−196642号公報 特開平5−149116号公報 特開2006−132480号公報
排気バルブや吸気バルブがベース円区間に確実に閉じられることや、排気バルブや吸気バルブが所望の開閉運動を行うこと、つまり所望の開弁特性を示すことは、動弁装置に対して一般的に求められる事項である。
例えばバルブの確実な閉弁についていえば、バルブが閉じられるべき時期(カムのベース円区間)にはそれらのバルブが閉じた状態に十分、確実に固定されることが好ましい。この点、上記従来の技術では、予定していない排気バルブの開弁が認められた場合に、排気バルブの位置がロックされて隙間が発生するのを避けるようにラッシュアジャスタの伸縮を許容している。これにより、ベース円区間で排気バルブが開いてしまっても、その後に排気バルブが完全に閉じられるという効果が得られる。しかしながら、上記従来の技術の構成は、閉じるべき区間での排気バルブの開弁(「ポンプアップ」とも称される)の後にバルブ位置がロックされないという機能を有するものであり、排気バルブが開いてしまう可能性はあるため、不必要なバルブの開弁を確実に防止することは難しい。
一方、バルブを確実に閉じるために積極的な措置を取る等の目的からバルブに負荷を加えるべき状況は、常に発生しているわけではない。動弁機構の通常の機能でそのような予期しないバルブの開弁を防止できたり、余剰荷重が無くとも所望の開弁特性でバルブを動作させたりすることができるのであれば、バルブへ負荷を加える措置を積極的に取らなくても良い。むしろ、バルブ動作規制が不要な場面においてまで一律にバルブの動作を制限するような力を付与することは、不要な抵抗力をバルブに与えて不必要にバルブの動作を妨げる事態を招いてしまう。
不必要な期間においてバルブの動作を妨げる力が働くのを避けることを念頭に置くと、理想的には、バルブの動作を実際に規制(固定或いは負荷を与える)したい特定区間内で、バルブ動作規制を行うことが好ましい。さらに、そのバルブ動作規制の実行が、動作規制が必要となる区間の到来に応じて速やかに開始され、かつ動作規制が必要となる区間の終了とともに速やかに停止されることが好ましい。このように、排気バルブや吸気バルブの動作規制を行うにあたっては、真に必要な場面において、目的とするバルブの動作規制が確実に達成されることが望ましい。この点について、従来の技術はいまだ改善の余地を残していた。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、排気バルブや吸気バルブに対して不必要な負荷が加わることを抑制しつつ、必要な場面での確実なバルブ動作規制を行うことができるように改善された内燃機関の動弁装置を提供することを目的とする。
第1の発明は、上記の目的を達成するため、内燃機関の動弁装置であって、
内燃機関の燃焼室を開閉する排気バルブと、
付与される磁力に応じて粘性を変化させる磁性流体を収納し、前記排気バルブ自身または前記排気バルブに取り付けられた構成に対して当該磁性流体を接触させる磁性流体収納部と、
前記磁性流体の前記粘性を変化させるように、前記磁性流体への磁力付与状態を変化させることのできる磁力発生部と、
前記排気バルブについてポンプアップが生じている場合又は生じるおそれのある場合に、前記排気バルブを閉じるべき区間において前記磁性流体の粘度を上昇させる磁力の付与を行うように、前記磁力発生部を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする。
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記制御手段は、
前記内燃機関のエンジン回転数が所定値を上回っている場合に前記排気バルブについて前記ポンプアップが生じているおそれがあると判定する回転数判定手段と、
前記内燃機関のトルクが所定値を下回っている場合に前記排気バルブについてポンプアップが生じていると判定するトルク低下判定手段と、
のうち少なくとも一方の判定手段を含むことを特徴とする。
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、
前記磁力発生部は、
前記磁性流体収納部に隣接して設けられた電磁石と、
前記電磁石に対する通電の状態を変化させる通電制御部と、
を含むことを特徴とする。
また、第4の発明は、第1乃至第3の発明の何れか1つにおいて、
前記磁力発生部は、前記排気バルブについてポンプアップが生じている場合又は生じるおそれのある場合に、前記ポンプアップのときに前記排気バルブが受ける力に反して当該排気バルブを静止させる粘度まで前記磁性流体の粘度を上昇させる程度の大きさの磁力を前記磁性流体に付与することを特徴とする。
また、第5の発明は、第1乃至第4の発明の何れか1つにおいて、
前記排気バルブに取り付けられた前記少なくとも1つの構成は、前記排気バルブのリフタ、コッタ若しくはリテーナを含むことを特徴とする。
また、第6の発明は、第1乃至第5の発明の何れか1つにおいて、
前記内燃機関は、複数の気筒を備え、
前記複数の気筒のそれぞれの前記排気バルブについて、前記磁性流体収納部および前記磁力発生部が1組ずつ設けられており、
前記制御手段は、それぞれの前記磁性流体収納部の前記磁性流体に対して異なる大きさの磁力の付与を行うように、それぞれの前記磁力発生部に異なる制御をする手段を含むことを特徴とする。
第7の発明は、上記の目的を達成するため、内燃機関の動弁装置であって、
内燃機関の燃焼室を開閉する吸気バルブおよび排気バルブと、
付与される磁力に応じて粘性を変化させる磁性流体を収納し、前記吸気バルブ自身若しくは前記吸気バルブに取り付けられた構成または/および前記排気バルブ自身若しくは前記排気バルブに取り付けられた構成に対して当該磁性流体を接触させる磁性流体収納部と、
前記磁性流体の前記粘性を変化させるように、前記磁性流体への磁力付与状態を変化させることのできる磁力発生部と、
前記内燃機関のエンジン回転数が所定回転数よりも大きい場合に、前記吸気バルブを開くべき区間において当該吸気バルブと接触する前記磁性流体粘度を上昇させる磁力の付与を行うように又は/及び前記排気バルブを開くべき区間において当該排気バルブと接触する前記磁性流体の粘度を上昇させる磁力の付与を行うように、前記磁力発生部を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする。
また、第8の発明は、第7の発明において、
前記磁力発生部は、
前記磁性流体収納部に隣接して設けられた電磁石と、
前記電磁石に対する通電の状態を変化させる通電制御部と、
を含むことを特徴とする。
また、第9の発明は、第8の発明において、
前記内燃機関のトルクダウンを検出する手段を備え、
前記通電制御部が、デューティ制御により前記電磁石に対する前記通電の状態を変化させるものであり、
前記制御手段が、前記トルクダウンが検出された場合に、前記磁性流体の前記粘度が上昇するように前記電磁石の通電時間のデューティ比を調節するデューティ制御手段を含むことを特徴とする。
また、第10の発明は、第8または第9の発明において、
前記内燃機関の気筒外への未燃ガス成分の流出を検出する手段を備え、
前記通電制御部が、デューティ制御により前記電磁石に対する前記通電の状態を変化させるものであり、
前記制御手段が、前記未燃ガスの流出を検出した場合に、前記磁性流体の前記粘度が上昇するように前記電磁石の通電時間のデューティ比を調節するデューティ制御手段を含むことを特徴とする。
また、第11の発明は、第7乃至第10の発明の何れか1つにおいて、
前記排気バルブに取り付けられた前記少なくとも1つの構成は、前記排気バルブのリフタ、コッタ若しくはリテーナを含むことを特徴とする。
また、第12の発明は、第7乃至第11の発明の何れか1つにおいて、
前記内燃機関は、複数の気筒を備え、
前記複数の気筒のそれぞれの前記排気バルブについて、前記磁性流体収納部および前記磁力発生部が1組ずつ設けられており、
前記制御手段は、それぞれの前記磁性流体収納部の前記磁性流体に対して異なる大きさの磁力の付与を行うように、それぞれの前記磁力発生部に異なる制御をする手段を含むことを特徴とする。
第1の発明によれば、ポンプアップ(閉じるべき区間での排気バルブの開弁)に対処するように、制御手段が、磁性流体への磁力付与状態を変化させることができる。これにより、必要な場面での確実なバルブ動作規制を行うことができ、その一方で、不必要な場面ではバルブへ負荷を与えるのを控えることができる。
第2の発明によれば、ポンプアップに対処すべき場面か否かを、内燃機関の運転状態から判定することができる。必要な場面での確実なバルブ動作規制と不必要な場面のバルブ負荷抑制との両立を、より一層的確に行うことができる。
第3の発明によれば、電磁石への通電状態を制御することによって、必要な時期に、速やかに、排気バルブの動作を妨げる力の大きさを変化させることができる。
第4の発明によれば、排気バルブを閉じるべき区間において、排気バルブを確実にロックすることができる。しかも、その一方で、磁性流体への通電を止める又は通電量を低減すれば、速やかに排気バルブのロックを解除することができる。
第5の発明によれば、リフタ、コッタ若しくはリテーナに対して磁性流体による負荷を与えることができる。
第6の発明によれば、個々の気筒の燃焼ばらつきなど種々の事情を考慮して、気筒毎に、バルブに与える負荷を最適化することができる。
第7の発明によれば、吸気バルブや排気バルブの速度調整が必要となるような回転数域において磁性流体への磁力付与状態を変化させるように、制御手段が磁力付与状態を制御することができる。これにより、バルブ速度調節の観点から吸気バルブや排気バルブに対してその動作を遅くさせるような負荷を与えることが必要なときに、所望の負荷を与えて確実なバルブ動作規制を行うことができ、その一方で、不必要な場面ではバルブへ負荷を与えるのを控えることができる。
第8の発明によれば、電磁石への通電状態を制御することによって、必要な時期に、速やかに、排気バルブの動作を妨げる力の大きさを変化させることができる。
第9の発明によれば、トルクダウン(トルク低下)の検出が成された場合に、バルブの運動性悪化を回復する措置をとることができる。
第10の発明によれば、気筒外への未燃ガス成分の流出が検出された場合に、バルブの運動性悪化を回復する措置をとることができる。
第11の発明によれば、リフタ、コッタ若しくはリテーナに対して磁性流体による負荷を与えることができる。
第12の発明によれば、個々の気筒の燃焼ばらつきなど種々の事情を考慮して、気筒毎に、バルブに与える負荷を最適化することができる。
本発明の実施の形態1にかかる内燃機関の動弁装置の構成を示す模式図である。 本発明の実施の形態1にかかる内燃機関の動弁装置の動作を説明するための図である。 本発明の実施の形態1にかかる内燃機関の動弁装置の動作を説明するための図である。 本発明の実施の形態1にかかる内燃機関の動弁装置に適用される制御動作について説明するための図である。 本発明の実施の形態1においてECUが実行するルーチンのフローチャートである。 本発明の実施の形態2にかかる内燃機関の動弁装置に適用される制御動作について説明するための図である。 本発明の実施の形態2においてECUが実行するルーチンのフローチャートである。 本発明の実施の形態1および実施の形態2にかかる内燃機関の動弁装置の構成の変形例を示す図である。 本発明の実施の形態1および実施の形態2にかかる内燃機関の動弁装置の構成の変形例を示す図である。 本発明の実施の形態1および実施の形態2にかかる内燃機関の動弁装置の構成の変形例を示す図である。
実施の形態1.
[実施の形態1の構成]
図1は、本発明の実施の形態1にかかる内燃機関の動弁装置の構成を示す模式図である。実施の形態1にかかる内燃機関の動弁装置は、車両等の移動体に好適に用いることができる。図1は、内燃機関の動弁装置の構成のうち、動弁制御の対象バルブおよびその周辺構成を抜き出した、部分断面図である。図1においては、排気バルブ10と、その周辺の各種構成が抜き出して記載されている。実際には、図1に示す構成がシリンダヘッド(図示せず)の排気ポート位置に組み込まれる等して、このシリンダヘッド、シリンダブロック(図示せず)およびピストン(図示せず)により形成される燃焼室が排気バルブ10により開閉される。なお、図1に示す排気バルブ10周辺構成は、基本的には図1紙面左右で中心線Xを基準に対称な形状を有しているため、簡略化して図示を行っている。
実施の形態1にかかる内燃機関の動弁装置は、排気バルブ10を駆動することができる。排気バルブ10は図1の紙面上下方向に移動することができ、その移動は、図1の紙面上方側にあるカム(不図示)により直接に或いはロッカーアーム(不図示)を介して押し下げられることで実現される。なお、図示しないが、バルブクリアランスの調節のためのHLA(ハイドロリックラッシュアジャスタ)を備えていても良い。
排気バルブ10は、バルブガイド12によって案内される。バルブガイド12の内部には、コイル14が設けられている。排気バルブ10には、リテーナ16が取り付けられている。リテーナ16は、バルブスプリング18と当接しており、排気バルブ10が図1紙面下方に押し下げられるのに応じて当該排気バルブ10と一体となって動く。バルブスプリング18は、排気バルブ10が押し下げられるときに反力を生ずる。リテーナ16には、シャフト19の一端が取り付けられている。
バルブガイド12の隣には、封入筐体20が設けられている。封入筐体20は、その内部に磁性流体22を収納している。磁性流体22は、磁力を受けることでその粘性を変化させることができる可変粘性磁性流体である。封入筐体20は、図1の紙面上方側に、穴を備えている。この穴を介して、シャフト19の他端が、封入筐体20の内部に入り込んでいる。これにより、シャフト19の当該他端が、磁性流体22と接触している。シャフト19は、排気バルブ10が図1紙面下方に押し下げられるのに応じて封入筐体20の内部側へと突出する。磁性流体22の粘度が比較的低い状態にあるときは、その突出に応じて、磁性流体22は封入筐体20の内部を移動(流動)することができる。
実施の形態1にかかる内燃機関の動弁装置は、当該内燃機関の制御を担うECU(Electronic Control Unit)70と接続している。ECU70は、具体的には、コイル14への通電状態を変化させることができる。ECU70は、制御上必要と認められるときに、図示しない電源からコイル14へと電流を供給することができる。一方、ECU70は、制御上必要と認められないときには、コイル14への通電を停止することができる。
なお、ECU70は、コイル14への通電についてデューティ制御を行うことができる。コイル14への通電状態は、通電時間についてデューティ比を制御することによってコイル14への通電量(電流値)を調節することで、適宜に制御される。なお、コイル14の通電量を増減する場合には、その具体的構成は必ずしもデューティ制御による調節に限られるものではなく、例えばコイル14への電流量を可変に設定可能な回路を設けても良い。
図2は、本発明の実施の形態1にかかる内燃機関の動弁装置の動作を説明するための図である。図2(a)に示すように、実施の形態1においては、内燃機関の定常状態においてECU70がコイル14への通電をOFFにする。この場合、磁性流体22は比較的低い粘度を持つ液状の状態(粘性流体)にあり、排気バルブ10の開弁動作に応じてシャフト19が封入筐体20内に進出しようとしても、磁性流体22はその進出動作に応じて封入筐体20の内部を流動し、シャフト19には負荷が加わることが無い。
一方、図2(b)に示すように、実施の形態1においては、排気圧がある程度高い状態(高排圧状態)においてECU70がコイル14への通電をONにする。この場合、磁性流体22は、コイル14への通電により発生した磁力を受けて、凝集し、その粘性を増大させる。コイル14の発生する磁力を適切なものとすることで、磁性流体22がいわば半固体の状態となる。これにより、意図に反するシャフト19の進出動作・退出動作を十分に妨げるほどに、ひいてはシャフト19を固定するほどに、磁性流体22の粘度を高いものにすることができる。磁性流体22の粘度上昇に伴ってシャフト19に負荷(図2(b)の「負荷発生」の矢印参照)が加わることにより、シャフト19と一体となっているリテーナ16および排気バルブ10の動作を規制することができる。
以上のように、実施の形態1にかかる構成によれば、コイル14への通電の有無によって、磁性流体22により排気バルブ10の動作規制(負荷の付与)の実行と停止を切り換えることができる。コイル14への通電時には、シャフト19および磁性流体22が磁性流体ダンパ(或いは、バルブの運動に負荷を与える付勢部材)として機能することができる。特に、磁性流体22として、付与される磁力の大きさ等(より具体的にはコイル14の通電量やデューティ比)とその粘度との間に一定の関係がある磁性流体を用いることにより、付与する磁力を調節することによって、排気バルブ10に対して所望の大きさの負荷を精度良く与えることができる。
図3は、本発明の実施の形態1にかかる内燃機関の動弁装置の動作を説明するための図である。図3は、排気バルブ10が閉じるべき区間(閉弁区間)についてカム24を用いて説明するために示す。カム24は、ベース円区間(すなわち閉弁区間)と、リフト区間(すなわち開弁区間)とを備えている。
[実施の形態1の制御動作]
図4は、本発明の実施の形態1にかかる内燃機関の動弁装置に適用される制御動作について説明するための図である。図4には、排気バルブ10のリフト区間とベース円区間に応じて、コイル14への通電OFFと通電ONを切り換える様子が示されている。
以下の説明では、閉じるべき区間での排気バルブの開弁を、「排気バルブのポンプアップ」或いは単に「ポンプアップ」とも称す。具体的には、「ポンプアップ」は、カムにより駆動される排気バルブが、ベース円区間において、意に反して開弁してしまう現象である。ポンプアップには、排気バルブの再開き現象(一旦閉じたはずの排気バルブが、再び開いてしまう現象)も含まれる。
本願発明者による鋭意研究の結果、エンジン回転数が一定値以上に上昇した際に排気バルブの再開き現象(ポンプアップ)が発生する傾向があるということが判明した。この知見に基づくと、排気バルブに対する実施の形態1の制御動作を適用すべきかどうかの判定を、エンジン回転数に基づいて行うことが適している。そこで、実施の形態1では、図1に模式的に示すように、「算出エンジン回転数Ne」と「基準エンジン回転数Ner」との比較に基づいて、Ne>Nerの条件が成立した場合に、下記に述べるトルク検出の制御動作を行うこととした。ここで、「算出エンジン回転数Ne」は、クランク角センサに基づいて算出したエンジン回転数であり、「基準エンジン回転数Ner」は、ポンプアップが発生すると考えられる最も低いエンジン回転数を実験的に求めることにより設定した基準値である。
さらに、実施の形態1にかかる内燃機関の動弁装置は、内燃機関のトルクの大きさに応じて、通電ONと通電OFFの切り換えを行うものとする。実際にトルク低下が生じているかどうかを検出することで、コイル14への通電を開始すべきかどうかを精度良く判別するためである。具体的には、エアフローメータ(図示せず)の出力およびエンジン回転数(例えば図示しないクランク角センサ、回転数センサ等により算出した値)に基づいて、内燃機関のトルクを検出することにより、検出トルクTrを求める。この検出トルクTrを予め定めた基準トルクTrAと比較して、検出トルクTrが基準トルクTrAを下回るほどに低い場合には、コイル14への通電を開始するものとする。
基準トルクTrAのデータは、実験的に求められた基準となるトルク値であり、ECU70内にマップとして記憶されたものである。実施の形態1では、このマップから読み出した基準トルクTrAの値と、エンジン動作状態から算出したトルク(検出トルク)との間に不一致(乖離)が認められるかどうかを判定する。
図4には、この様子が示されている。すなわち、リフト区間、ベース円区間ともに通電OFFであるときに、トルク検出により「Tr>TrA」という関係の成立が認められた場合には、その次のベース円区間から、通電ONが開始される。
また、実施の形態1にかかる制御においては、ECU70が、通電ON状態においてA/F検出を行うための処理も実行する。そして、検出したA/Fの値が適切でない場合には、保持Dutyを増大させる処理を実行する。
以上説明した実施の形態1にかかる内燃機関の動弁装置によれば、意に反して排気バルブ10が開くおそれのあるトルクの大きな運転域において磁性流体22への磁力付与状態を変化させるように、制御手段が磁力付与状態を制御することができる。これにより、必要な場面での確実なバルブ動作規制を行うことができ、その一方で、不必要な場面ではバルブへ負荷を与えるのを控えることができる。
[実施の形態1の具体的処理]
以下、図5を用いて、本発明の実施の形態1にかかる内燃機関の動弁装置において行われる具体的処理を説明する。図5は、実施の形態1においてECU70が実行するルーチンのフローチャートである。ECU70は、エンジン始動に応じて図5に示すルーチンの実行を開始するものとする。
図5に示すルーチンでは、先ず、ECU70が、エンジン回転数Nerを算出したうえで、Ne>Nerの条件が成立しているか否かを判定する処理を実行する(ステップS98)。このステップにより、前述した「算出エンジン回転数Ne」と「基準エンジン回転数Ner」との比較に基づいて、Ne>Nerの条件が成立した場合に、後に続く制御処理へと移行することができる。その結果、ポンプアップが生ずるおそれがある程に高いエンジン回転数域か否かを判定することができる。
次に、ECU70が、エアフローメータのセンサ値の検出を行う処理を実行する(ステップS100)。
次に、ECU70が、検出トルクTrが基準トルクTrAよりも小さいか否かの判定(「TrA>Tr」が成立しているかどうかの判定)を行う処理を実行する(ステップS102)。このステップでは、ECU70が、図示しないエアフローメータの出力とエンジン回転数とに基づいて検出トルクTrを検出する処理を実行するとともに、この検出トルクTrを所定の基準トルクTrAと比較する処理を実行する。このステップの処理によって、基準とするトルク値よりも低くなるほどにトルクが低下しているかどうかの判定(いわゆるトルクダウンの判定)を行うことができる。本ステップでトルクダウンが検出された場合、ポンプアップが発生しておりこのポンプアップがトルクダウンを引き起こしているとの判断を下す。検出トルクTrが基準トルクTrAよりも小さいと認められない場合(TrA>Trが不成立の場合)には、ステップS102の条件が成立していないため、処理はステップS100に戻る。
ステップS102の条件が成立している場合には、ECU70が、カム回転位置検出およびクランク回転位置検出を行うための処理を実行する(ステップS104)。この処理は、図示しないカム角センサやクランク角センサの出力値に基づいて行えばよい。
次に、ECU70が、排気バルブ10のカム位置がベース円区間か否かを判定する処理を実行する(ステップS106)。このステップにおいてカム位置がベース円区間ではないと判定されている場合(NOの場合)には処理がステップS104へと戻り、処理はベース円区間の到来を待つ状態となる。
ステップS106の条件が成立している場合、つまり、カム位置がベース円区間にあると認められた場合には、ECU70が、コイル通電をONとする処理を実行する(ステップS108)。これにより、磁性流体22が凝集し、シャフト19に負荷が発生し、排気バルブ10の動作を規制することができる。その後、ECU70が、コイル通電をOFFとする処理を実行する(ステップS110)。
次に、ECU70が、A/Fセンサ検出を行うための処理を実行する(ステップS112)。このステップでは、ECU70が、図示しないA/Fセンサの出力に基づいて空燃比を検出する。
続いて、ECU70が、ステップS112で検出したセンサ値にもとづくA/Fと制御A/Fとの差が正常であるか否かを判定する処理を実行する(ステップS114)。このステップでは、具体的には、例えば、A/Fセンサで検出したA/Fと制御A/Fとの差の値が、予め定めた所定値以上であるか否かについての比較判定処理或いは予め定めた所定範囲内の値か否かについての比較判定処理を行えばよい。このステップにおいてA/Fの差が正常であると判定された場合には、処理はステップS100へとリターンする。
ステップS114においてA/Fの差が正常ではないと判定された場合には、ECU70が、保持Dutyを増加する処理を実行する(ステップS116)。これにより、A/Fの差が正常でないと認められる場合には、コイル14への通電量を増大し、ベース円区間において排気バルブ10に与える負荷を増加することができる。
以上の処理によれば、意に反して排気バルブ10が開くおそれのあるトルクの大きな運転域において磁性流体22への磁力付与状態を変化させるように、ECU70がコイル14による磁力付与状態を制御することができる。すなわち、上記実施の形態1にかかる内燃機関の動弁装置によれば、検出トルクと所定の基準トルクとの比較に基づいて、磁性流体22の粘度を変化させるためのコイル14への通電状態を速やかに切り換えることができる。これにより、必要な場面での確実なバルブ動作規制を行うことができ、その一方で、不必要な場面ではバルブへ負荷を与えるのを控えることができる。
すなわち、実施の形態1にかかる内燃機関の動弁装置によれば、エンジン回転数および内燃機関のトルクの大きさに応じて、磁性流体22への磁力付与状態を変化させることができる。磁力付与状態の変化により磁性流体の粘度が変化するので、排気バルブ10が、磁性流体22との接触位置(具体的には、シャフト19と磁性流体22との接触位置)において磁性流体22から受ける力の大きさを変化させることができる。これにより、内燃機関のトルクの大きさに応じて排気バルブ10の動作を妨げる力を発生させることができる。
また、実施の形態1にかかる内燃機関の動弁装置によれば、任意のタイミングで所望の負荷をシャフト19に与えることができる。その結果、排気バルブ10の固定をする必要の無いリフト区間において、過剰な負荷増大を招くことがない。
また、排気圧力が増加する運転域でのみ、シャフト19に負荷を与えることができる。排気圧力による排気バルブ10の押し下げを回避するための荷重をバルブスプリング18が持つ必要がないので、余剰荷重を減少させ、フリクションを低減することができる。その結果、燃費向上が可能である。また、ベース円区間における排気バルブ10の開弁を確実に防ぐことができるから、過大な荷重を受けた時に破損しないような高強度を排気バルブ10に持たせなくてもよくなる。よって、排気バルブ10等の部品の材料を低強度材料へと置換することも可能であり、低コスト化も図れる。
なお、上述した実施の形態1にかかる具体的処理においては、エンジン回転数について「Ne>Nerが成立しているか否か」の判定(ステップS98)を行うとともに、トルクについて「TrA>Trが成立しているか否か」の判定(ステップS102)を行った。しかしながら、本発明はこれに限られない。これら2つの判定のうちいずれか一方のみを行っても良い。
なお、実施の形態1にかかる具体的処理によれば、ステップS102によるトルク検出(トルクダウンの検出)およびステップS114によるA/F検出(未燃ガスの吹き抜けによるA/Fズレを検出)という、二重のセンシングを行うことができる。この二重のセンシングによって、排気バルブの再開き判定を正確に行うことができる。これらの二重のセンシングにおける各センシングの位置づけについては、トルク検出を「主たる判定」として、A/F検出を「補足的な判定(いわば、チューニングとしての役割)」としてもよい。
なお、実施の形態1では、シャフト19を用いたが、必ずしもシャフト(棒状部材)を用いなくとも良く、たとえば、プレート(板状部材)を用いても良い。その場合には、プレートの進出と退出が可能となるように、プレートを差し込むための封入筐体20の挿入孔を適宜に長方形等に形成すればよい。
尚、実施の形態1においては、排気バルブ10を対象にして設けたが、実施の形態1にかかる排気バルブ10を吸気バルブに置換して、コイル14、シャフト19、封入筐体20および磁性流体22の構成を吸気バルブに対して適用することも出来る。これにより、コイル14への通電を適宜に制御することによって、吸気バルブの作動規制(具体的には、例えば、実施の形態1と同様にベース円区間での開弁の抑制や、適宜に負荷を加える等)を行っても良い。
なお、実施の形態1では、一本の排気バルブ10についてその周辺構成を図示することにより説明を行ったが、本発明においては、1つの気筒に複数の吸気バルブや排気バルブが備えられている場合はそれらの個々のバルブに対して1組ずつ実施の形態1の構成(コイル14、シャフト19、封入筐体20および磁性流体22の構成)を適用することもできる。また、複数の気筒を備える内燃機関(特に車両用内燃機関)に対して本発明にかかる動弁装置を適用しようとする場合には、個々の気筒についてそれぞれ別々に実施の形態1の構成(コイル14、シャフト19、封入筐体20および磁性流体22の構成)を設けてもよい。これにより、個々の気筒の燃焼ばらつきなど種々の事情を考慮して、気筒毎に、バルブ動作規制を最適化することができる。
なお、実施の形態1では、カム或いはロッカーアームを含む具体的な動弁機構の構成は既に各種技術が公知のため詳細に説明していないが、可変リフト機構、可変バルブタイミング機構、可変バルブタイミング・リフト機構、あるいはそれらの可変機構を備えない動弁機構を、適宜に用いればよい。
実施の形態2.
本発明の実施の形態2にかかる内燃機関の動弁装置は、上述した実施の形態1の構成と同様のハードウェア構成を備えている。実施の形態1にかかる内燃機関の動弁装置は、ベース円区間において意に反してバルブが開いてしまうことを抑制するために、ベース円区間において磁性流体22による負荷を発生させている。これに対し、実施の形態2にかかる内燃機関の動弁装置は、リフト区間において、意図的にバルブへの負荷を与えることによって、バルブ動作速度を調節するものである。以下、重複を避けるために、実施の形態1で述べた構成と同一あるいは相当する構成には同じ符号を付し、適宜に説明を省略ないしは簡略化する。
図6は、本発明の実施の形態2にかかる内燃機関の動弁装置に適用される制御動作について説明するための図である。以下の説明では、説明の便宜上まずは実施の形態1と同様に排気バルブ10を対象にして、実施の形態2にかかる磁性流体によるバルブの負荷調節技術を説明する。ただし、実施の形態2にかかる「リフト区間において、意図的にバルブへの負荷を与えることによって、バルブ動作速度を調節する」技術は、吸気バルブに対しても同様に適用することが可能である。
図6には、排気バルブ10のリフト区間とベース円区間に応じて、コイル14への通電OFFと通電ONを切り換える様子が示されている。実施の形態2にかかる内燃機関の動弁装置は、エンジン回転数に応じて、排気バルブ10のリフト区間に、排気バルブ10への負荷を調節することにより、バルブ動作速度を制御する。その負荷の調節は、実施の形態1で説明した磁性流体22への通電制御による負荷調整機構によって実現される。バルブが開くときに磁性流体22による負荷を与えることで、この負荷が、リフタ又はロッカーアームへの押付け荷重として機能することができる。一方、バルブが閉じるときに磁性流体22による負荷を与えることで、この負荷が、バルブ速度の調節すなわち閉弁速度の調節をするための負荷として機能することができる。
エンジン回転数に応じた負荷調節のために、具体的には、先ず、エンジン回転数Ne(例えば図示しない回転数センサにより検出)が所定の基準エンジン回転数Nerを上回っているか否かの検出を行う。ここで、検出したエンジン回転数Neが基準エンジン回転数Nerを上回っていない場合(Ner≧Ne)には、低回転領域と判断する。この低回転領域ではバルブスプリング18の奏する荷重のみを利用し、余剰負荷を与えない。検出したエンジン回転数Neが基準エンジン回転数Nerを上回る場合(Ner<Ne)には、コイル14への通電を開始するものとする。図6には、この様子が示されている。すなわち、図6に示すように、例えばコイル14への通電OFF条件下におけるベース円区間において、エンジン回転数検出によりNer<Neの成立が認められた場合には、その次のリフト区間から、通電ONが開始される。
一方、実施の形態2にかかる制御においては、ECU70が、通電ONを開始した後、トルク低下検出の処理も実行する。トルク低下が認められた場合、実施の形態2ではバルブの運動性が悪化しているという判定を下すものとする(動弁運動性悪化判定)。その場合、保持Dutyを増大させ、排気バルブ10の負荷を増大させるものとする。
[実施の形態2の具体的処理]
以下、図7を用いて、本発明の実施の形態2にかかる内燃機関の動弁装置において行われる具体的処理を説明する。図7は、実施の形態2においてECU70が実行するルーチンのフローチャートである。ECU70は、エンジン始動に応じて図7に示すルーチンの実行を開始するものとする。
図7に示すルーチンでは、先ず、ECU70が、エンジン回転数の検出を行う処理を実行する(ステップS200)。
次に、ECU70が、基準エンジン回転数Nerよりも検出エンジン回転数Neが大きいか否かを判定する処理を実行する(ステップS202)。このステップでは、ECU70が、図示しない回転数センサの出力に基づいてエンジン回転数Neを検出し、このエンジン回転数Neを所定の基準エンジン回転数Nerと比較する。エンジン回転数Neは、回転数センサにより算出すればよい。基準エンジン回転数Nerよりも検出エンジン回転数Neが大きいと認められない場合(Ner<Neが不成立の場合)には、ステップS202の条件が成立していないため、処理はステップS100に戻る。
ステップS202の条件が成立している場合には、ECU70が、カム回転位置検出およびクランク回転位置検出を行うための処理を実行する(ステップS204)。この処理は、図示しないカム角センサやクランク角センサの出力値に基づいて行えばよい。
次に、ECU70が、排気バルブ10のカム位置がリフト区間か否かを判定する処理を実行する(ステップS206)。このステップにおいてカム位置がリフト区間ではないと判定されている場合(NOの場合)には処理がステップS204へと戻り、処理はリフト区間の到来を待つ状態となる。
ステップS206の条件が成立している場合、つまり、カム位置がリフト区間にあると認められた場合には、ECU70が、コイル通電をONとする処理を実行する(ステップS208)。これにより、磁性流体22が凝集し、シャフト19に負荷が発生し、排気バルブ10の動作を規制することができる。その後、ECU70が、コイル通電をOFFとする処理を実行する(ステップS210)。このステップS208、S210の処理においては、エンジン回転数によりリフト区間を算出し、リフト開き区間(バルブの開弁区間)にのみコイル14の通電(すなわち負荷発生)を行うものとする。
次に、ECU70が、エアフローメータのセンサ出力値の検出およびトルク算出を行うための処理を実行する(ステップS212)。
続いて、ECU70が、ステップS212で算出したトルクを基準トルクと比較して、算出したトルク(検出トルク)Trが基準トルクTrAよりも小さいか否かを判定する処理を実行する(ステップS214)。このステップにおいて「算出トルク<基準トルクの関係」が認められない場合には、処理はステップS200へとリターンする。
ステップS214において「算出トルク<基準トルク」が成立していると判定された場合には、ECU70が、保持Dutyを増加する処理を実行する(ステップS216)。このステップは、「算出トルクが、マップで管理している基準トルクよりも小さい場合」には、トルク低下が発生していると判定する判定処理である。これにより、算出トルクが基準トルクよりも低い状態(トルクダウン)が検出された場合には、コイル14への通電量を増大し、リフト区間において排気バルブ10に与える負荷を増加することができる。これにより、トルクダウン(トルク低下)の検出がされた場合に、バルブの運動性悪化を回復する措置をとることができる。
以上の処理によれば、排気バルブ10の速度調整が必要となるような所定以上の回転数域において磁性流体22への磁力付与状態を変化させるように、ECU70がコイル14による磁力付与状態を制御することができる。すなわち、上記実施の形態2にかかる内燃機関の動弁装置によれば、検出したエンジン回転数が所定の基準エンジン回転数に対して大きいか否かに応じて、磁性流体22の粘度を変化させるためのコイル14への通電状態を速やかに切り換えることができる。これにより、バルブ速度調節の観点から排気バルブ10に対してその動作を遅くさせるような負荷を与えることが必要なときに、所望の負荷を与えて確実なバルブ動作規制を行うことができ、その一方で、不必要な場面ではバルブへ負荷を与えるのを控えることができる。
なお、本実施形態によれば、バルブスプリング18として、内燃機関の運転に必要最小限の押付け荷重のみを有する程度のバルブスプリングを用いることができる。排気バルブ10の速度調整(言い換えれば、動作規制)のために必要な荷重は、磁性流体22を含む実施の形態1にかかる動弁機構の構成によって発生させることができるからである。従って、バルブスプリング18の荷重を低減し、フリクションを低減し、燃費を向上させることができる。また、低強度材への置換による低コスト化も可能である。
なお、前述したように、実施の形態2において、コイル14への通電によりバルブ開弁時に加わる負荷が、リフタ又はロッカーアームへの押付け荷重として機能することができる。さらに、その一方で、実施の形態2において、コイル14への通電によりバルブ閉弁時に加わる負荷が、バルブ速度の調節すなわち閉弁速度の調節をするための負荷として機能することができる。このような負荷は必ずしも両方を付与しなくともよい。バルブ開弁時の負荷のみを付与したり、バルブ閉弁時の負荷のみを選択的(択一的)に付与したりするように、コイル14への通電時期を調節してもよい。
なお、実施の形態1で述べた各種変形例と同様に、必要に応じて実施の形態2にかかる構成を変形しても良い。
なお、前述したとおり、実施の形態2にかかる「リフト区間において、意図的にバルブへの負荷を与えることによって、バルブ動作速度を調節する」技術は、吸気バルブに対しても同様に適用することが可能である。したがって、排気バルブ10に代えて、吸気バルブに対して上記の実施の形態2にかかる構成を適用しても良い。また、吸気バルブと排気バルブの両方に対して、上記の実施の形態2にかかる構成を適用しても良い。
なお、上記の実施の形態2においては、トルクダウン(トルク低下)の検出がされた場合にバルブの運動性悪化を回復する措置をとった。これ以外にも、例えば、内燃機関の気筒外への未燃ガスの流出を検出する手段(例えば未燃成分の存在を感知可能な各種センサによって検出してもよい)で未燃ガスの流出を検出した場合に、コイル14への通電量を増大して、リフト区間において排気バルブ10に与える負荷を増加してもよい。
以下、上述した実施の形態1および実施の形態2にかかる内燃機関の動弁装置における変形例の構成を説明する。図8乃至図10は、それぞれ、本発明の実施の形態1および実施の形態2にかかる内燃機関の動弁装置の構成の変形例を示す図である。
図8に示す構成では、バルブガイド30が、その内部(バルブガイド内に設けた凹部)に磁性流体32を収納している。磁性流体32は、排気バルブ10に接することができる。バルブガイド30の外側には、コイル34が取り付けられている。コイル34は、ECU70に接続しており、実施の形態1で述べたようにその通電状態をECU70によって制御される。このような構成によって、磁性流体32による負荷を排気バルブ10自体に与えても良い。
図9に示す構成では、バルブガイド40には磁性流体についての構成が設けられておらず、ガイド部材としての役割を担うリフタ・コッタ一体部材42を有する構成において、ハウジング48の内部(ハウジング48内の凹部)に磁性流体44を備えている。ハウジング48は、磁性流体44に隣接する位置にコイル46も内蔵している。このような構成において、コイル46への通電状態(通電の有無或いは通電量)を変化させることによって、リフタ・コッタ一体部材42が磁性流体44から受ける負荷を変化させることができる。このように、リフタ・コッタ一体部材42のごときガイド部材に対して、磁性流体32による負荷を与えても良い。
図10に示す構成では、直打動弁系の動弁装置において、リフタに負荷を与える。このような構成において、ハウジング54内の磁性流体44の粘性をコイル46の通電によって制御することにより、リフタ・コッタ一体部材52に対して磁性流体44が与える負荷を変化させてもよい。
実施の形態1および実施の形態2で説明した構成を、上記の図8乃至10に記載した変形例の構成に適宜に変形してもよい。
10 排気バルブ
12 バルブガイド
14 コイル
16 リテーナ
18 バルブスプリング
19 シャフト
20 封入筐体
22 磁性流体
24 カム
30 バルブガイド
32 磁性流体
34 コイル
40 バルブガイド
42 リフタ・コッタ一体部材
44 磁性流体
46 コイル
48 ハウジング
52 リフタ・コッタ一体部材
54 ハウジング

Claims (12)

  1. 内燃機関の燃焼室を開閉する排気バルブと、
    付与される磁力に応じて粘性を変化させる磁性流体を収納し、前記排気バルブ自身または前記排気バルブに取り付けられた構成に対して当該磁性流体を接触させる磁性流体収納部と、
    前記磁性流体の前記粘性を変化させるように、前記磁性流体への磁力付与状態を変化させることのできる磁力発生部と、
    前記排気バルブについてポンプアップが生じている場合又は生じるおそれのある場合に、前記排気バルブを閉じるべき区間において前記磁性流体の粘度を上昇させる磁力の付与を行うように、前記磁力発生部を制御する制御手段と、
    を備えることを特徴とする内燃機関の動弁装置。
  2. 前記制御手段は、
    前記内燃機関のエンジン回転数が所定値を上回っている場合に前記排気バルブについて前記ポンプアップが生じているおそれがあると判定する回転数判定手段と、
    前記内燃機関のトルクが所定値を下回っている場合に前記排気バルブについてポンプアップが生じていると判定するトルク低下判定手段と、
    のうち少なくとも一方の判定手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の動弁装置。
  3. 前記磁力発生部は、
    前記磁性流体収納部に隣接して設けられた電磁石と、
    前記電磁石に対する通電の状態を変化させる通電制御部と、
    を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の動弁装置。
  4. 前記磁力発生部は、前記排気バルブについてポンプアップが生じている場合又は生じるおそれのある場合に、前記ポンプアップのときに前記排気バルブが受ける力に反して当該排気バルブを静止させる粘度まで前記磁性流体の粘度を上昇させる程度の大きさの磁力を前記磁性流体に付与することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の内燃機関の動弁装置。
  5. 前記排気バルブに取り付けられた前記少なくとも1つの構成は、前記排気バルブのリフタ、コッタ若しくはリテーナを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の内燃機関の動弁装置。
  6. 前記内燃機関は、複数の気筒を備え、
    前記複数の気筒のそれぞれの前記排気バルブについて、前記磁性流体収納部および前記磁力発生部が1組ずつ設けられており、
    前記制御手段は、それぞれの前記磁性流体収納部の前記磁性流体に対して異なる大きさの磁力の付与を行うように、それぞれの前記磁力発生部に異なる制御をする手段を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の内燃機関の動弁装置。
  7. 内燃機関の燃焼室を開閉する吸気バルブおよび排気バルブと、
    付与される磁力に応じて粘性を変化させる磁性流体を収納し、前記吸気バルブ自身若しくは前記吸気バルブに取り付けられた構成または/および前記排気バルブ自身若しくは前記排気バルブに取り付けられた構成に対して、当該磁性流体を接触させる磁性流体収納部と、
    前記磁性流体の前記粘性を変化させるように、前記磁性流体への磁力付与状態を変化させることのできる磁力発生部と、
    前記内燃機関のエンジン回転数が所定回転数よりも大きい場合に、前記吸気バルブを開くべき区間において当該吸気バルブと接触する前記磁性流体粘度を上昇させる磁力の付与を行うように又は/及び前記排気バルブを開くべき区間において当該排気バルブと接触する前記磁性流体の粘度を上昇させる磁力の付与を行うように、前記磁力発生部を制御する制御手段と、
    を備えることを特徴とする内燃機関の動弁装置。
  8. 前記磁力発生部は、
    前記磁性流体収納部に隣接して設けられた電磁石と、
    前記電磁石に対する通電の状態を変化させる通電制御部と、
    を含むことを特徴とする請求項7記載の内燃機関の動弁装置。
  9. 前記内燃機関のトルクダウンを検出する手段を備え、
    前記通電制御部が、デューティ制御により前記電磁石に対する前記通電の状態を変化させるものであり、
    前記制御手段が、前記トルクダウンが検出された場合に、前記磁性流体の前記粘度が上昇するように前記電磁石の通電時間のデューティ比を調節するデューティ制御手段を含むことを特徴とする請求項8記載の内燃機関の動弁装置。
  10. 前記内燃機関の気筒外への未燃ガス成分の流出を検出する手段を備え、
    前記通電制御部が、デューティ制御により前記電磁石に対する前記通電の状態を変化させるものであり、
    前記制御手段が、前記未燃ガスの流出を検出した場合に、前記磁性流体の前記粘度が上昇するように前記電磁石の通電時間のデューティ比を調節するデューティ制御手段を含むことを特徴とする請求項8または9に記載の内燃機関の動弁装置。
  11. 前記排気バルブに取り付けられた前記少なくとも1つの構成は、前記排気バルブのリフタ、コッタ若しくはリテーナを含むことを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載の内燃機関の動弁装置。
  12. 前記内燃機関は、複数の気筒を備え、
    前記複数の気筒のそれぞれの前記排気バルブについて、前記磁性流体収納部および前記磁力発生部が1組ずつ設けられており、
    前記制御手段は、それぞれの前記磁性流体収納部の前記磁性流体に対して異なる大きさの磁力の付与を行うように、それぞれの前記磁力発生部に異なる制御をする手段を含むことを特徴とする請求項7乃至11のいずれか1項に記載の内燃機関の動弁装置。
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JP2016118119A (ja) * 2014-12-19 2016-06-30 マツダ株式会社 エンジンのバルブ装置

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