以下、本発明に係る内燃機関の可変動弁装置の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態では、ガソリン仕様の直列2気筒の内燃機関に適用され、フロント側の#1気筒が気筒休止可能な気筒、すなわち、吸気弁と排気弁の作動停止が可能な気筒になっていると共に、リア側の#2気筒は気筒休止せず、常時吸気弁と排気弁が作動する常時稼働気筒になっている。
図1は#1気筒と#2気筒の吸気側の動弁装置を示し、図2は#1気筒(休止可能気筒)における吸気側の可変機構を備えた動弁装置と排気側の動弁装置を示している。
まず、#1、#2気筒の吸気側の動弁機構について説明すると、図1及び図2に示すように、シリンダヘッド1内に形成された一対の吸気ポート2、2を開閉する一気筒当たり2つの吸気弁が設けられている。すなわち、#1気筒では第1、第2吸気弁3a,3a、#2気筒では第1、第2吸気弁3b、3bが設けられている。ここで、第1吸気弁はフロント側、第2吸気弁はリア側に配置されている。
前記吸気弁の可変機構は、各気筒の上方側に機関前後方向に沿って配置され、外周に2つの駆動カム5aを有する駆動軸5と、該駆動軸5の外周面に回転自在に支持されて、介装部材である各スイングアーム6を介して前記各吸気弁3を開閉作動させるそれぞれカム面7b、7bを有する一対の揺動カム7と、前記各駆動カム5aの回転力を揺動力に変換して前記各揺動カム7に伝達する伝達機構8と、該伝達機構8を介して前記各吸気弁3a,3a、3b,3bの作動角とリフト量を制御する制御機構9と、から構成されている。
また、シリンダヘッド1に保持されて、前記各スイングアーム6と各吸気弁3a,3a、3b、3bとの間の隙間及び各揺動カム7の各カム面7bのベースサークルとの間の隙間を零ラッシに調整する支点部材(ピボット)である油圧ラッシアジャスタが配設されている。
吸気弁側には、4つの第1〜第4油圧ラッシアジャスタ10a、10a、10b、10bがあり、#1気筒には、第1、第2油圧ラッシアジャスタ10a、10aが配設され、#2気筒には第3、第4油圧ラッシアジャスタ10b、10bが配設されている。
ここで、第1油圧ラッシアジャスタ10aは、#1気筒のフロント側に配設され、第2油圧ラッシアジャスタ10aは、同リア側に配設されている。第3油圧ラッシアジャスタ10bは、#2気筒のフロント側に配設され、第4油圧ラッシアジャスタ10bは同リア側に配設されている。
さらに、機関運転状態に応じて前記#1気筒側の第1、第2油圧ラッシアジャスタ10a、10aを介して前記#1気筒の第1、第2吸気弁3a、3aの開閉作動を停止させる2つのロストモーション機構11を備えている。
なお、前述の前記駆動軸5と揺動カム7、伝達機構8及び制御機構9によって構成される吸気側可変機構を、吸気VELと称する。
また、前記吸気側には、前記駆動軸5のフロント側の端部に、駆動軸5を捻ることにより前記各吸気弁3a〜3bの開閉タイミングを機関運転状態に応じて可変にする図外の例えば油圧ベーンタイプの位相変更型バルブタイミング制御装置(VTC)が設けられている。
以下、#1、#2気筒における各構成部材について説明すると、前記各吸気弁3a〜3bは、各バルブガイド4を介してシリンダヘッド1に摺動自在に保持されていると共に、各ステムエンド3cの近傍に設けられた各スプリングリテーナ3dとシリンダヘッド1の内部上面との間に弾接された各バルブスプリング12によって閉方向に付勢されている。
前記駆動軸5は、シリンダヘッド1の上端部に設けられた複数の軸受部13に前記揺動カム7のカムシャフト7aを介して回転自在に支持され、一端部に設けられた前述のVTCの図外のハウジングに設けられたタイミングプーリを介してクランクシャフトの回転力が図外のタイミングベルトによって伝達されるようになっている。また、駆動軸5の外周に一気筒当たり1つ設けられた前記駆動カム5aは、その軸心Yが駆動軸5の軸心Xから径方向へ偏心していると共に、外周のカムプロフィールが通常のほぼ円形状に形成されている。
前記各スイングアーム6は、一端部6aの平坦状あるいはやや凸状の下面が前記各吸気弁3a〜3bの各ステムエンド3cに当接している一方、他端部6bの下面凹部6cが前記各油圧ラッシアジャスタ10a〜10bの頭部に当接していると共に、中央に形成された収容孔内に、それぞれローラ軸14aを介してローラ14が回転自在に収容配置されている。
前記各揺動カム7は、図1及び図2に示すように、円筒状のカムシャフト7aの両端部に一体的に設けられ、下面にベースサークル面やランプ面及びリフト面からなる前記カム面7bが形成されており、該ベースサークル面とランプ面及びリフト面が、揺動カム7の揺動位置に応じて前記スイングアーム6のローラ14の上面を転接するようになっている。
前記カムシャフト7aは、外周面の軸方向ほぼ中央位置に形成されたジャーナル部が前記複数の軸受部13に微小クリアランスをもって回転自在に支持されていると共に、内周面によって前記駆動軸5の外周面を回転自在に支持するようになっている。
前記伝達機構8は、駆動軸5の上方に配置されたロッカアーム15と、該ロッカアーム15の一端部15aと駆動カム5aとを連係するリンクアーム16と、ロッカアーム15の他端部15bと一つの揺動カム7とを連係するリンクロッド17と、を備えている。
前記ロッカアーム15は、中央に有する筒状の基部が支持孔を介して後述する制御カムに回転自在に支持されていると共に、一端部15aがピン18によってリンクアーム16に回転自在に連結されている一方、他端部15bがリンクロッド17の上端部にピン19を介して回転自在に連結されている。
前記リンクアーム16は、円環状の基部の中央位置に有する嵌合孔16aに前記駆動カム5aのカム本体が回転自在に嵌合している一方、突出端が前記ピン18によってロッカアーム一端部15aに連結されている。
前記リンクロッド17は、下端部がピン20を介して揺動カム7の一方のカム面7bが形成されたカムノーズ部に回転自在に連結されている。
なお、前記各ロッカアーム15の他端部15bとリンクロッド17の上端部との間には、各構成部品の組付時に各吸気弁3a〜3bのリフト量を微調整するアジャスト機構23がそれぞれ設けられている。
前記制御機構9は、駆動軸5の上方位置に同じ軸受部に回転自在に支持された制御軸21と、該制御軸21の外周に前記ロッカアーム15の支持孔に摺動自在に嵌入されて、各ロッカアーム15の揺動支点となる2つの制御カム22が固定されている。
前記制御軸21は、駆動軸5と並行に機関前後方向に配設されていると共に、図5に示すアクチュエータ50によって回転制御されている。一方、前記制御カム22は、円筒状を呈し、軸心位置が制御軸21の軸心から所定分だけ偏倚している。
前記アクチュエータ50は、図5に示すように、図外のハウジングの一端部に固定された電動モータ51と、該ハウジングの内部に設けられて、該電動モータ51の回転駆動力を前記制御軸21に伝達する減速機構として、ボール螺子要素及び変換リンクなどからなるボール螺子機構52と、から構成されている。
前記電動モ−タ51は、比例型のDCモータによって構成され、機関運転状態を検出するコントロールユニット53からの制御信号によって正逆回転制御されるようになっている。
前記4つの油圧ラッシアジャスタ10a〜10bは、図1〜図4に示すように、シリンダヘッド1の円柱状の各保持穴1a内にそれぞれ保持された有底円筒状のボディ24と、該ボディ24内に上下摺動自在に収容されて、下部に一体に有する隔壁25を介して内部にリザーバ室26を構成するプランジャ27と、前記ボディ24の下部内に形成されて、前記隔壁25に貫通形成された連通孔25aを介して前記リザーバ室26と連通する高圧室28と、該高圧室28の内部に設けられて、前記リザーバ室26内の作動油を高圧室28方向へのみ流入を許容するチェック弁29と、を備えている。また、前記シリンダヘッド1の内部には、前記保持穴1a内の溜まった作動油を外部に排出する排出孔1bが形成されている。
前記ボディ24は、外周面に円筒状の第1凹溝24aが形成されていると共に、該第1凹溝24aの周壁に、前記シリンダヘッド1の内部に形成されて下流端が前記第1凹溝24aに開口した油通路30とボディ24内部とを連通する第1通路孔31が径方向に貫通形成されている。
また、#1気筒側の第1、第2油圧ラッシアジャスタ10a、10aのボディ24は、図3A,Bに示すように、底部24b側が#2気筒側の第3,第4油圧ラッシアジャスタ10b、10b側のボディ24よりも下方向へ延設されてほぼ円柱状に形成されている。
前記油通路30は、シリンダヘッド1内に形成された潤滑油供給用の図外のメインオイルギャラリと連通しており、このメインオイルギャラリには、図5に示すオイルポンプ54から潤滑油が圧送されるようになっている。
前記プランジャ27は、図3、図4に示すように、軸方向のほぼ中央の外周面に円筒状の第2凹溝27aが形成されていると共に、該第2凹溝27aの周壁に前記第1通路孔31とリザーバ室26とを連通する第2通路孔32が径方向に沿って貫通形成されている。また、各プランジャ27の先端頭部27bの先端面が各スイングアーム6の他端部6bの球面状の下面凹部6cとの良好な摺動性を確保するために球面状に形成されている。
なお、この各プランジャ27は、ボディ24の上端部に嵌着固定された円環状のストッパ部材33によってその最大突出量が規制されるようになっている。
前記第2凹溝27aは、その軸方向の幅が比較的大きく形成され、これによってボディ24に対するプランジャ27のいずれの上下摺動位置においても前記第1通路孔31と第2通路孔32とを常時連通するようになっている。
前記各チェック弁29は、前記連通孔25aの下部開口縁(シート)を開閉するチェックボール29aと、該チェックボール29aを閉方向へ付勢する第1コイルばね29bと、該第1コイルばね29bを保持するカップ状のリテーナ29cと、ボディ24の底壁24cの内底面とリテーナ29cの円環状上端部との間に弾装されて、リテーナ29cを隔壁25方向へ付勢しつつプランジャ27全体を上方に付勢する第2コイルばね29dとから構成されている。
そして、揺動カム7のカム面7bのベースサークル区間では、前記第2コイルばね29dによる付勢力による前記プランジャ27の進出移動(上方移動)に伴って高圧室28内が低圧になると、前記油通路30から保持穴1a内に供給された作動油が第1凹溝24aから第1通路孔31と第2凹溝27a及び第2通路孔32を通ってリザーバ室26に流入して、さらにチェックボール29aを第1コイルばね29bのばね力に抗して押し開き、作動油を高圧室28内に流入させる。
これによって、プランジャ27は、スイングアーム6の他端部6bを押し上げてローラ14と揺動カム7との接触を介して揺動カム7とスイングアーム6の一端部6a及び各吸気弁3のステムエンド3aとの間の隙間を零ラッシに調整するようになっている。
そして、前記揺動カム7のリフト区間では、プランジャ27に下方荷重が作用するので、高圧室28内の油圧が上昇し、高圧室28内のオイルがプランジャ27とボディ24の隙間から漏れ出てプランジャ27は僅かに降下する(リークダウン)。
再び、揺動カム7のカム面7bのベースサークル区間になると、前述のように、前記第2コイルばね29dによる付勢力で前記プランジャ27の進出移動(上方移動)により、各部の隙間を零ラッシに調整するのである。
このようなラッシ調整機能を、前記第1〜第4油圧ラッシアジャスタ10a〜10bの全てがもっている。
前記ロストモーション機構(弁停止機構)11は、吸気弁側では前記#1気筒の第1、第2油圧ラッシアジャスタ10a、10a側にのみ設けられ、図3A,Bに示すように、前記各保持穴1aの底部側に連続して形成された円柱状の一対の摺動用穴34と、該各摺動用穴34の底面とボディ24の下面との間に弾装されて、前記第1、第2油圧ラッシアジャスタ10a、10aを上方向へ付勢するロストモーションスプリング35、35と、第1、第2油圧ラッシアジャスタ10a、10aのロストモーションを規制する一対の規制機構36と、から構成されている。なお、#2気筒の吸気側第3、第4ラッシアジャスタ10b、10b側には、ロストモーション機構11が設けられておらず、したがって、通常のピボット機能と零ラッシ調整機能のみを有している。
前記各摺動用穴34は、内径が前記保持穴1aの内径と同一に設定されて前記各ボディ24が前記保持穴1aから連続的に上下方向へ摺動可能に保持するようになっている。
前記各ロストモーションスプリング35は、コイルスプリングによって形成されて、前記ボディ24の底面を上方向へ付勢して前記プランジャ27の先端頭部27bを前記スイングアーム6の他端部6b下面の凹部6cに弾接させるようになっている。
また、前記各ボディ24は、前記シリンダヘッド1の内部に挿通配置されたストッパピン37によって最大上方移動位置が規制されるようになっている。すなわち、前記各ストッパピン37は、シリンダヘッド1内を前記ボディ24に向かって軸直角方向に配置され、先端部37aが前記第1凹溝24a内に摺動可能に臨設配置されて、ボディ24の上方移動に伴い前記先端部37aが第1凹溝24aの下端縁に当接することによってボディ24の最大上方の摺動位置が規制されるようになっている。
したがって、前記各油圧ラッシアジャスタ10aは、スイングアーム6の揺動に伴い前記ロストモーションスプリング35のばね力を介して前記保持穴1aと摺動用穴34との間を上下にストロークしてロストモーションを行うことによって、前記スイングアーム6の揺動支点としての機能が失われて、揺動カム7のリフト作動が吸収され、各吸気弁3aの開閉作動を停止させるようになっている。
前記各規制機構36は、前記ボディ24の底部24bの内部径方向に貫通形成された移動用孔38と、前記シリンダヘッド1内に保持穴1aと軸直角方向に形成された規制用孔39と、前記移動用孔38の内部一端側に固定されたリテーナ40と、前記移動用孔38の内部に摺動自在に設けられて、該移動用孔38から前記規制用孔39に跨って移動可能な規制ピン41と、該規制ピン41の後端と前記リテーナ40との間に弾装されて、前記規制ピン41を規制用孔39方向へ付勢するリターンスプリング42と、から主として構成されている。
前記規制用孔39は、前記ボディ24が前記ストッパピン37によって最大上方位置に規制された際に、前記移動用孔38と軸方向から合致するようになっており、内径が前記移動用孔38とほぼ同一に形成されていると共に、一端側にシリンダヘッド1内に形成された油通路孔43から信号油圧が導入されるようになっている。
ここで、前記ボディ24の回転方向の規制は、前記ストッパピン37の飛び出し量を僅かに増やすと共に、前記ボディ24の前記第1凹溝24a内に軸長手方向のスリットを設け、前記ストッパピン37先端と係合させることによって容易に実現できる。あるいは、別個の回転規制部材をシリンダヘッド1と前記ボディ24の間に装着してもよい。
前記リテーナ40は、有蓋円筒状に形成されて、底部に規制ピン41の円滑な移動を確保するための呼吸孔40aが貫通形成されていると共に、軸方向の長さが図4Bに示すように、前記規制ピン41が移動用孔38に完全に収容された時点で、先端縁に規制ピン41の後端が当接してそれ以上の後退移動を規制する長さに設定されている。
前記規制ピン41は、中実円柱状に形成されて、外径が前記移動用孔38と規制用孔39の内径よりも僅かに小さく形成されて円滑な摺動性が確保されている。また、この規制ピン41は、前記油通路孔43から規制用孔39に供給された油圧を先端部41aの受圧面によって受けることにより、前記リターンスプリング42のばね力に抗して後退移動して先端部が規制用孔39から抜け出して移動用孔38内に収容されて、規制が解除されるようになっている。
前記油通路孔43(規制用孔39)には、図5に示すように、前記オイルポンプ54から圧送された油圧が電磁切換弁55を介して信号油圧として供給されるようになっている。
前記電磁切換弁55は、図外のバルブボディの内部に摺動自在に設けられたスプール弁を、ソレノイドの電磁力とコイルスプリングのばね力とによって、オン、オフ的に2段階に切り換えるようになっており、前記ソレノイドに、前記電動モータ51の駆動を制御する同じコントロールユニット53から制御電流が通電、非通電されてポンプ吐出通路と油通路孔43とを連通するか、またはポンプ吐出通路を閉止して前記油通路孔43とドレン通路44を連通するように切り換え制御されるようになっており、これによって、信号油圧を大小2段階に制御するようになっている。
前記コントロールユニット53は、クランク角センサやエアーフローメータ、水温センサ、スロットルバルブ角度センサなどの各種センサ類から機関回転数や負荷、スロットルバルブ開度量などの情報信号に基づいて機関運転状態を検出すると共に、この機関運転状態と前記制御軸21の現在の回転位置を検出する図外の回転位置センサからの情報信号(VEL制御軸実位置信号)によって前記電動モータ51を駆動制御して前記制御軸21の回転位置を制御する。これによって、各吸気弁3a〜3bのリフト量と作動角を変化させるようになっている。
すなわち、図11に示すように、吸気弁のリフト量はロストモーション機構11による弁停止が行われない場合は、最小のL1から最大のL4までの範囲で変化させるのである。
吸気弁が最大リフト量L4に制御された場合のVELの作動は、図9、図10に示す通りである。図9は休止可能気筒である#1気筒を示し、ロストモーション機構11が設けられており、一方、図10は常時稼働気筒である#2気筒を示し、ロストモーション機構11が設けられていないという違いはあるが、基本動作は両者同じである。
図6は休止可能気筒である#1気筒に関し、吸気弁が最小リフト量L1に制御された場合のVELの作動を示している。常時稼働気筒である#2気筒に関しては、図示しないが、ロストモーション機構11が設けられていないだけで、前述のような基本動作は#1気筒と同様である。
また、コントロールユニット53は、機関運転状態に応じて前記吸気VTCの図外の電磁切換弁に変換制御信号を出力することにより前記オイルポンプ54から吐出された油圧を介してクランクシャフトに対して図外のベーンロータを進角側あるいは遅角側へ相対回転させて駆動軸5の回転位相を可変にしたり、あるいは前記電磁切換弁を中立位置に制御し、進角側と遅角側の両方共に積極的には油圧を作用させず、進角室内オイルと遅角室内オイルを保持することで回転位相を保持したりする。これによって、各吸気弁3a、3a、3b、3bの開閉タイミングを任意に制御するようになっている。
前記排気側の動弁装置は、#1気筒と#2気筒とも、基本構成は前記吸気側と同様の構成であるが、異なるところは、図2示すように、前述した吸気側のような可変機構(VEL)を有しておらず、また、前述のVTCも備えていない。
すなわち、シリンダヘッド1内に形成された一気筒当たり一対の排気ポート60、60をそれぞれ開閉する一気筒当たり2つの排気弁が設けられており、#1気筒では第1、第2排気弁61a、61a、#2気筒では第1、第2排気弁61b、61bが設けられている。ここで、各第1排気弁61a、61bはフロント側、各第2排気弁61a、61bはリア側に配置されている。
排気側動弁装置として、各気筒の上方側に機関前後方向に沿って配置され、外周に前記各排気弁61a〜61bをバルブスプリング62のばね力に抗して開作動させる卵形の回転カム63aを有する排気カムシャフト63が設けられており、前記各排気弁61a〜61bと回転カム63aとの間に介装された各スイングアーム64を介して前記各排気弁61a〜61bを一定バルブリフト量LEで開閉作動するようになっている。
また、シリンダヘッド1に保持されて、前記各スイングアーム64と各排気弁61a〜61bとの隙間及び各回転カム63aのベースサークルとの間の隙間を零ラッシュ調整する支持部材(ピボット)である油圧ラッシアジャスタは配設されている。排気側には、4つの油圧ラッシアジャスタがあり、#1気筒に第1、第2油圧ラッシアジャスタ65a、65aが配設され、#2気筒に第3、第4油圧ラッシアジャスタ65b、65bが配設されている。
ここで、第1油圧ラッシアジャスタ65aは、#1気筒のフロント側に配設され、第2油圧ラッシアジャスタ65aは、同リア側に配設されている。第3油圧ラッシアジャスタ65bは、#2気筒のフロント側に配設され、第4油圧ラッシアジャスタ65bは、同リア側に配設されている。
そして、図2に示す#1気筒側の前記排気側各第1、第2油圧ラッシアジャスタ65a、65aは、前記#1気筒の吸気側第1、第2油圧ラッシアジャスタ10a、10aと同じくそれぞれロストモーション機構11を備えているが、#2気筒側の前記第1排気側第3、第4油圧ラッシアジャスタ65b、65bは、前記#2気筒の吸気側第3、第4油圧ラッシアジャスタ10b、10bと同様にロストモーション機構11を備えていない。
前記ロストモーション機構11は、図2及び図3に示す吸気側と同じ構造であるから、同一の符番を付して具体的な説明を省略する。すなわち、シリンダヘッド1の各保持穴1aの底部側に連続して形成された円柱状の摺動用穴34と、該摺動用穴34の底面とボディ24の下面との間に弾装されて、前記第1、第2油圧ラッシアジャスタ65a(10a)、65a(10a)を上方向へ付勢するロストモーションスプリング35、35と、前記第1、第2油圧ラッシアジャスタ65a(10a)、65a(10a)のロストモーションを規制する規制機構36、36と、から構成されている。
そして、このロストモーション機構11を備えた#1気筒側の第1、第2排気弁61a、61aは、そのバルブリフト量が図11の破線で示すように、弁停止された場合は零リフトとなり、弁停止されていない場合は、ピークリフト量がLE一定となっており、これは同図実線で示す#1,#2気筒の各吸気弁3a〜3bのやや大きな中リフトL3とほぼ同じであり、最大リフト量L4よりも小さくなるように設定されている。
また、図8Bに示すように、#1気筒の各排気弁61a、61a側の各ロストモーション機構11のロストモーション量はM3と比較的大きく、スイングアーム64とロストモーション方向のなす角度痾3も比較的大きな値になっている。ここで、この角度痾3は、より具体的には、スイングアームの揺動支点とローラの回転中心を結ぶ線と、油圧ラッシアジャスタのロストモーション方向としての軸線とのなす角度である。
しかしながら、この痾3程度であれば、各油圧ラッシアジャスタ65aの頭部と各スウィングアーム64の凹部との当接が浮くことはなく、円滑なロストモーション作動が得られる。逆に言うと、M3(痾3)の値は、円滑なロストモーション作動が得られる範囲内の値となっている。ここで、仮にM3(痾3)がさらに大きくなったと想定すると、前記当接部が不均一ないし局部的な接触となり、両者間のズレが生じ、さらには当接部に浮きが発生するようになり、円滑なロストモーション作動が得られない場合がでてくる。それを考慮し、M3(痾3)の値に制限されるのである。
図8は前記#1気筒の排気側の作動状態を示し、Aは第1、第2排気弁61a、61aがやや大きな一定リフト量LE(≒L3)で作動している状態、Bはロストモーション機構11によって第1、第2ラッシアジャスタ65a、65aのロストモーション作動状態(弁停止状態)を示し、Cは第1、第2排気弁61a、61aの閉弁状態を示している。
一方、前記ロストモーション機構11を有さない#2気筒の排気側の第3、第4ラッシアジャスタ65b、65bは、図4に示す#2気筒の吸気側の第3、第4ラッシアジャスタ10b、10bと同じ構造である。
そして、この#2気筒の各排気弁61b、61bの固定的なバルブリフト量も#1気筒の各排気弁61a、61aと同じくリフト量がLEとなるように回転カム63aのカムプロフィールが同一に設定されている。
なお、図8Aに示すように、ピークリフト状態でのスイングアームとロストモーション方向とのなす角度竈3は理想の90ーに近く、高回転域でバルブのジャンピングなどが発生しても、スイングアームと油圧ラッシアジャスタ頭部との横ずれは発生しにくく、スイングアームの外れなどは発生しにくくなっている。また、吸気側についても、ピークリフト状態でのスイングアームとロストモーション方向とのなす角度竈は、図6Aに示すリフト量L1制御での竈1や、図9A及び図10に示すリフト量L4制御での竈4で示すように、理想の90ーに近い角度になっており、同様にしてスイングアームの外れなどは発生しにくくなっている。
〔可変動弁装置の作動〕
以下、本実施形態における可変動弁装置の作動について説明する。
図12には本実施形態における稼動気筒数マップを示し、横軸は機関回転数、縦軸は機関負荷(トルク)を表し、図13はそれに対応した稼動気筒数と吸排気弁の作動の状況を示している。
図12及び図13に示すように、機関のアイドル運転や低回転、低負荷領域(A領域 (1)(2))では、#1、2気筒とも気筒休止を行わず、全筒運転が行われ、それより回転あるいは負荷がやや高い低中回転、低中負荷領域(B領域(3)(4))では、#1気筒が気筒休止した減筒運転となり、さらに加速や高回転あるいは高負荷領域(C領域(5)〜(7))では、全筒運転が行われるように制御される。
具体的に説明すると、例えば、機関のアイドリング運転領域(図12のA領域(1))では、コントロールユニット53から出力された制御電流によって電動モータ51が回転駆動し、この回転トルクがボール螺子機構52を介して前記制御軸21に伝達される。この制御軸21が一方向へ回転駆動されると、図6A、Bに示すように、制御カム22も一方向に回動して軸心が制御軸21の軸心の回りを同一半径で回転し、肉厚部が駆動軸5から図示のように右下方に離間移動する。これにより、ロッカアーム15の他端部15bとリンクロッド17の枢支点(連結ピン19)は、駆動軸5に対して上方向へ移動し、このため、各揺動カム7は、リンクロッド17を介してカムノーズ部側が強制的に引き上げられる。
よって、駆動カム5aが回転してリンクアーム16を介してロッカアーム15の一端部15aを押し上げると、そのリフト量がリンクロッド17を介して各揺動カム7及び各スイングアーム6に伝達され、各吸気弁3はバルブスプリング12のばね反力に抗して開弁して、そのリフト量は、図6や図11に示すL1のように十分小さくなる。
例えば、機関が高回転、高負荷領域(図12のC領域の(7))に移行した場合は、コントロールユニット53からの制御電流によって電動モータ51が逆回転してボール螺子機構52を同方向へ回転させると、図9A、B(#1気筒)及び図10A、B(#2気筒)に示すように、この回転に伴って制御軸21が制御カム22を他方向へ回転させて、軸心が左下方向へ移動する。
このため、ロッカアーム15は、今度は全体が反時計方向に回転して他端部15bによって揺動カム7のカムノーズ部を、リンクロッド17を介して下方へ押圧して該各揺動カム7全体を所定量だけ図6A、Bに示す位置から反時計方向へ回動させる。したがって、各揺動カム7の各カム面7bの各スイングアーム6のローラ14外周面に対する当接位置が、カムノーズ部側(リフト部側)に移動する。
このため、吸気弁3の開作動時に駆動カム5aが回転してロッカアーム15の一端部15aを、リンクアーム16を介して押し上げると、各スイングアーム6を介して各吸気弁3a、3bが各バルブスプリング12のばね力に抗して開弁して、そのバルブリフト量が図9〜図11に示す最大のL4になるまで連続的に変化しつつ回転の上昇にしたがってL4まで大きくなる。これによって、高回転域の吸気充填効率が向上して出力の向上が図れる。
〔ロストモーション機構の作動〕
前述したA領域であるアイドリング運転や低回転低負荷域を超えたB領域、すなわち、回転あるいは負荷がA領域よりもやや高い運転領域(例えば高速道路での定常運転など)に運転状態が変化すると、前記コントロールユニット53から電磁切換弁55に制御電流が出力されて、オイルポンプ54から大きな吐出油圧が信号油圧として油通路孔43を通って規制用孔39内に導入される。
このため、この大きな信号油圧を受けた規制ピン41は、リターンスプリング42のばね力に抗して後退移動して、先端部41aが規制用孔39から抜け出て、シリンダヘッド1に対する吸気側第1、第2油圧ラッシアジャスタ10a、10a及び排気側第1、第2油圧ラッシアジャスタ65a、65aのロックが解除される。
したがって、第1、第2油圧ラッシアジャスタ10a(65a)、10a(65a)は、全体がロストモーションできるようになり、前記ロストモーションスプリング35のばね力を介して保持穴1aと摺動用孔34内を上下方向へ移動を繰り返してロストモーション状態になる。このため、第1、第2吸気弁3a、3a及び第1、第2排気弁61a、61aは閉弁状態(弁停止状態)となり、#1気筒は気筒休止となる。
ここで、吸気弁が弁停止状態になるまでの弁作動状態について、例えば、吸気弁が最小リフト量L1に制御された状態から弁停止に移行する場合について考えてみると、まず、弁作動状態では、図6Bに示す前記揺動カム7が零リフト(閉弁)となる位置から、Aに示す最大開弁リフト(L1)位置の間で変化し、次に、弁停止制御が行われると、前記揺動カム7が最大限揺動しても、第1、第2油圧ラッシアジャスタ10a、10aは、図6Aに付記するM1のストローク量だけロストモーションし、実際にはバルブリフトを行わない弁停止状態に移行する。
次に、制御軸を回転させて弁停止移行前の制御リフト量が大きかった場合を考えてみると、弁停止に移行したときのロストモーション量は増加する。例えば、リフト量L3で制御していた状態から弁停止に移行すると、図7に示すように、ロストモーション量はM3まで増加する。その瞬間の第1、第2スイングアーム6、6と第1、第2油圧ラッシアジャスタ10a、10aとの間で形成される開き角度が痾(図7参照)は、揺動カム7がピークリフトとなった位置においては、痾3まで増加する。これは、前述の排気弁が弁停止状態(ロストモーション量M3)における痾3と同程度であり、過度な開き角度にはなっていない。
したがって、前記揺動カム7がピークリフト(最大開弁動作)となってもスムーズな弁停止作動、ロストモ−ション作動が得られるのである。
さらに、弁停止移行前の制御リフト量をL4まで増加した場合を仮に想定してみると、その状態から弁停止移行すると、ロストモ−ション量はさらにM4まで増加し、それに伴い開き角もさらに痾4まで増加し、その結果、各油圧ラッシアジャスタ10aの頭部と各スイングアーム6の凹部との当接部が不均一ないし局部的な接触となり、両者間のズレが生じ、さらには当接部に浮きが発生するようになる。これによって、円滑なロストモーション作動が得られなくなるばかりか、最悪の場合はスイングア−ムが脱落してしまう可能性がでてくる。
しかしながら、本実施形態では、このような問題を回避できる。なぜなら、弁停止に移行する前に、吸気VELによりリフトL3以下のリフト量に減少制御すれば良く、その状態から弁停止移行すれば、最大開き角痾を痾3以下(ロストモ−ション量MをM3以下)とできるのである。
この結果、吸気弁3b、3bの最大制御リフト量をL4と充分高めて、すなわち排気弁のリフト量L3を越えた大きなリフト量とでき、且つ開き角痾を排気弁側の痾3と同等以下にでき、円滑な弁停止作動、ロストモ−ション作動が得られるのである。
また、#1気筒の気筒休止に移行する際には、前記吸気弁側の弁停止移行に同期し、#1気筒の排気側の油圧ラッシアジャスタ65a、65aも、図8A〜Cに示すように、M3のストローク量だけロストモーションし実際にはバルブリフトを行わない弁停止状態に移行するのは前述の通りである。
一方、常時稼動気筒である#2気筒の吸気側や排気側では各油圧ラッシアジャスタ10b、10b、65b、65bが、各スイングアーム6、64に対する通常の揺動支点として機能していることから、各吸気弁3b、3b、61b、61bは依然としてリフト作動を行っているのである。
以上説明してきたように、コントロールユニット53は、機関運転条件に応じて吸気VELのアクチュエータ50や、吸気VTCの油圧切換弁(電磁切換弁)、さらにはロストモーション機構11の電磁切換弁55を制御して、#1気筒及び#2気筒の各吸気弁3a、3a、3b、3bのリフト量や相対回転位相を変更させると共に、#1気筒の各吸気弁3a、3a及び各排気弁61a、61aを停止作動/開閉作動させて#1気筒の気筒休止/稼動を制御するのである。
前記図12に示すように、前記アイドリング運転を含む低回転・低トルク側(A領域)では、前述したように、全筒運転される(第2全筒運転領域)。なぜなら、減筒運転では、爆発間隔が拡大するが、低回転域では爆発間隔の絶対時間が伸びるため機関の回転変動が大きくなり、それに伴い機関振動が増大する傾向にある。しかるに、A領域のアイドリング運転などでは、機関安定性や静粛性・低振動性が特に求められ、そのため燃費の良い減筒運転を使うことができず全筒運転を行っている。
前記A領域より回転ないしトルク(負荷)がやや大きなB領域では、機関安定性や静粛性・低振動性の要求が低くなるので、燃費の良い減筒運転を使う。
前記B領域よりさらに回転ないし負荷が大きくなるC領域では、機関パーフォーマンスが求められ、全筒運転(第1全筒運転領域)としトルクを高めるのである。
図12に示す実線矢印((1)⇒(2)(3)⇒(4)(5)⇒(6)⇒(7))は加速運転を示し、破線矢印((6)⇒(5)(4)⇒(3)(2)⇒(1))は減速運転を示している。
図12、図13の(1)はアイドリング運転であり、本実施形態では、吸気VELにより各吸気弁3a〜3bのバルブリフト量をL1の小さなリフト量に低減できるので、吸気流速を高めて燃焼を改善し、低燃費化することができる。
また、従来技術では燃料霧化を促進するためにスロットルバルブSVを大きく絞って筒内負圧を発達させるのが常だったが、本実施形態では、吸気流速大による霧化も向上でき、また、吸気弁の閉時期の下死点前設定により、スロットルバルブSVの絞りを中開度まで低減できるので、筒内負圧が減少してポンピングロスの増大が抑制されるからこの面からも燃費向上ができる。
(2)はアイドリング運転よりやや回転または負荷の高い領域で、やはり全筒運転となっている。この領域は、(1)よりややバルブリフト量は高いものの、低いリフト量(L2)であり、吸気流速による霧化向上、燃焼改善効果があり、さらに負荷が増えたことによる燃焼改善により、スロットルバルブSVをほぼ全開にできている。吸気弁の閉時期も下死点前であり、いわゆるバルブスロットリングとでポンピングロスも低減し燃費を向上できている。
すなわち、吸気VELによって、排気弁のリフト量L3より小さいリフト域(L1〜L2)までA領域での吸気弁リフト量を減少できるので、上述のように減筒運転できないA領域で特に低燃費化できる。この領域は機関トルクも小さくフリクションの燃費への影響が大きい領域なので、上述の燃焼面からだけでなく、小リフト制御による動弁フリクション低減面からの燃費低減効果も大きいのである。
なお、ここで吸気VTCによって(2)における吸気弁3a〜3bの相対回転位相を(1)よりやや遅角側に制御すればアイドリング運転(1)から僅かにトルク(負荷)や回転数の高い運転領域(2)に変化した場合の吸気弁開時期の変化すなわちバルブオーバーラップの変化が抑制されて、筒内残留ガス量の変化を抑制でき、(1)から(2)に移行した場合の過渡性能が安定化する。
(1)から(7)に至る間のリフトカーブについても、リフト量の増大に合わせて吸気VTCによって適宜遅角に制御するものとし、同様にバルブオーバーラップの変化を抑制して筒内残留ガス量の過渡変化を抑制できる。(以下の説明では、バルブオーバーラップの変化を抑制する吸気VTCの制御に関しては、説明を省略する。)
(3)は(2)より僅かに回転またはトルク(負荷)の高い領域で、A−B境界ラインを超えて減筒運転に移行する。この減筒運転になると、燃焼気筒数当たりの機関トルクである負荷が増大し燃焼状態が向上することに加え、燃焼ガスが触れる筒内表面積の総和が半減することになり(冷却損失低減)、燃費が向上する。本実施形態では、この減筒運転において、さらなる格別の効果が得られる。
すなわち、減筒運転では、燃焼気筒数当たりの負荷増加に対応すべく仮にバルブリフト量をやや増加させるとすると吸気弁3b、3bの閉時期が下死点に近づき、ポンピングロスが増加してしまう。また、バルブリフト量不足もポンピングロス増加につながる。
そこで、図13の(3)#2気筒に示すように、バルブリフト量をL4まで大きく増加させ、吸気弁3b、3bの閉時期を下死点を超えて大きく遅角させるのである。
これにより、バルブリフト量が大きいことと吸気弁3b、3bの閉時期が充分遅いことでポンピングロスを抑制することで、減筒運転での燃費を充分に向上できる。
ここで、吸気弁3b、3bの閉時期を遅角に制御することにより、有効圧縮比が下がるので耐ノック性が良くなり、また、このように、吸気弁3b、3bを遅閉じにすると、冷たい新気を筒内に大量に吸い込み、再度、大量に吐き出すので、その間に筒内冷却が進み、一層耐ノック性が向上するのである。あるいは、本実施形態のような火花点火機関では点火時期を早めることもでき、それによっても熱効率を高め燃費を向上できる。
また、この吸気弁3b、3bの閉時期が下死点に対して充分遅角しているので発生トルク自体も低減できるので、燃費の良い減筒運転領域をより低トルク側まで拡大できる。つまり、A、Bの境界ラインが、より低トルク側まで拡大できるのである。これらにより、車両としての燃費を一層向上できる。
さらに、減筒運転時は、少数気筒が燃焼することに伴い、機関の回転変動や振動が問題になるが、吸気弁3b、3bの閉時期が下死点を超えて大きく遅角しているので、有効圧縮比が下がっており、機関回転変動や振動も有効に低減できる。
すなわち、最大リフト量をL4まで増加できることで、高回転域での機関出力を高められることは既に述べたが、上述のように、リフトを大きくすることで、減筒運転領域であるB領域の燃費を一層向上できたり、燃費の良い減筒運転領域を低トルク側に広げたり、機関回転変動や振動を低減する、といった効果も有するのである。
また、このB領域は、A領域と比較し燃焼トルクが大きく、もってフリクションが燃費に与える影響は小さく、そのため大リフトによる動弁フリクション増による燃費影響は小さいのである。一方、このB領域は減筒態様のため、弁作動気筒も少なく、その面では、動弁フリクションの増加が抑制される。
本実施形態では、この(2)⇒(3)の過渡においても、有効な作用をする。
図14にそのシーケンスを示す。機関トルクないし回転数が低い側の全筒運転領域(A領域)から、負荷ないし回転数がやや高い側の減筒運転領域(B領域)に移行する際、図14(a)に示すように、先行して中リフト量(L3)に増大制御すると共にスロットルバルブSVの開度を絞るのである。こうすることによって、機関トルクの増加を抑制しつつ、減筒運転移行に向け予めリフト量を増加できるのである。
次に、図14(b)に示すように、休止可能気筒である減筒気筒(#1気筒)の吸排気弁3a、3a、61a、61aの作動を停止すると共に(減筒気筒については燃料噴射も停止)、スロットルバルブSVの開度を拡大して機関トルクの低下変化を抑えるのである。
また、各吸気弁3a〜3bと各排気弁が開閉作動する状態と開閉作動を停止する状態(弁停止)とが択一的に切り換わるため、中間段階の小リフトカーブとなる瞬間が存在せず、該小リフトカーブに起因する過渡性能の悪化は生じない。この過渡性能の悪化とは、切り換わる途中で吸気弁の開時期が大幅に遅れるタイミングを通過することによる唐突なエンブレショック(ポンプ損失ピーク)、あるいは特に微小リフト域を通過した時の吸入空気ばらつき大などの性能不安定のことであり、これらは前記択一的、ステップ的変換により抑制できるのである。
従って、例えば、仮に吸気VELそのもので零リフトまで変換することで弁停止を実現する方策も考えられるが、この場合は変換速度が速くないと、連続的にリフトが変化し上記中間段階での小リフト、微小リフトカーブを通ることになるので、上記過渡性能悪化を伴ってしまい、それに対し本発明はこの過渡性能悪化を抑制できるのである。
その後、図14の(3)に示すように、常時稼動気筒(#2気筒)について吸気弁3b、3bの閉時期が下死点を超えて大バルブリフト量に増加制御すると共に、さらにスロットルバルブSVの開度をほぼ全開まで増加させトルクの低下変化を抑制するのである。
これによって、その後はリフト量大(作動角大)による吸気弁3b、3bの遅閉じによりポンプ損失を充分低減し燃費向上できる。また、前記吸気弁遅閉じにより機関トルク自体も減らせるので、燃費の良い減筒領域を機関の低負荷、低回転側に拡大できるのである。
さらに、前記吸気弁遅閉じにより有効圧縮比も下げられ、減筒運転で問題となる振動や回転変動も抑制でき、その面からも減筒運転領域拡大に貢献するのである。また、耐ノック性の向上にも寄与できるのは前述の通りである。
なお、図14(3)において、吸気弁3b、3bの閉時期が下死点を超えて大バルブリフト量に増加制御することで所定機関トルクに制御する代わりに、仮に、吸気弁3b、3bの閉時期が下死点前(所謂早閉じ)を維持しつつリフト量をやや増大させることで所定機関トルクに制御する場合を想定してみると、以下の不都合が生じる。
すなわち、減筒運転移行での燃焼気筒あたりの負荷増加に対応するために、バルブリフト量は比較的低いままなので吸入抵抗から吸気弁3b、3bの閉時期を下死点付近まで遅角することで機関トルクを増大せざるを得ず、その結果、ポンプ損失が増大したり(燃費悪化)、有効圧縮比が増加して振動や回転変動で不利となるので減筒領域も拡大できないのである。
図15には、(2)から(3)に至る間の制御フローを示し、まずステップ1では、クランク角センサなどの各種センサ類によって機関回転数や機関負荷及びスロットルバルブSVの開度量などを検出して、現在の機関運転状態(運転条件)を演算する。
ステップ2では、現在の機関運転状態が前記図12に示すA領域内か否かを判断し、A領域内ではないと判断した場合はリターンし、A領域であると判断した場合は、ステップ3に移行する。
このステップ3では、機関運転状態が図12のAB境界ラインに移行したか否かを判断し、移行していない場合はリターンし、移行している場合は、ステップ4に移行する。
ステップ4では、吸気VELによって吸気弁3a〜3bのバルブリフト量を増大制御して、L2からL3に変化すると共に、吸気VTCによって吸気弁を遅角側に制御する信号を出力する(開時期変化抑制)。また、スロットルバルブSVの開度を減少させる制御信号を出力する(ほぼ全開から中開度)。
次に、ステップ5では、電磁切換弁55にオン信号を出力して、#1気筒の吸気弁3a、3aと排気弁61a、61aを弁停止制御させると共に、スロットルバルブSVの開度量をやや増加させる制御を行う(中開度からやや大開度)。
ステップ6では、吸気VELによって吸気弁のバルブリフト量をL3からL4に増加させる制御を行うと共に、吸気VTCによって吸気弁の閉時期を遅角制御する(開時期変化抑制)。また、スロットルバルブSVの開度を拡大制御する(やや大開度からほぼ全開)。これによって一連の制御処理を終了する。
図12、図13の(4)は、減筒運転領域の(3)に対して、機関トルクないし回転数が高い運転条件である。機関トルクあるいは回転数が上昇するに連れ、吸気弁3b、3bの閉時期を下死点側に連続的に近づけていき、充填効率を要求トルクに応じ、スロットルバルブSVのほぼ全開を維持しつつ高めていく。したがって、ポンプ損失を抑制しつつ良好な燃費が得られる。
さらに、要求機関トルクが高くなると、機関トルクの絶対値不足、有効圧縮比増加によるノッキングの発生によって減筒運転では要求機関トルクを実現できなくなり、(5)で全筒運転に切り換えるのである。
図12及び図13の(5)に示すように、バルブリフト量大(作動角大)で各吸気弁3a〜3bの閉時期を大きく遅角できるので、有効圧縮比を低下させて耐ノック性を向上できるのである。全筒運転における要求充填効率に抑えつつ、スロットルバルブSVの開度もほぼ全開にできるので、ポンプ損失を充分低減し、全筒運転ながら良好な燃費を実現できる。また、この(4)から(5)への過渡運転時においても有効な作用をする。
切り換えのシ−ケンスを見ていくと、図16に示すように、(4)の減筒運転から(c)の全筒運転切り替わる際、前述した中間段階の小リフトや微小リフトが存在しないので、前述のような唐突なエンブレショック(ポンプ損失ピーク)や前述のような性能不安定は生じない。この効果は、前述の(a)の全筒運転から(b)の減筒運転に切り替わる際に、中間段階の小リフトが存在しないことによる効果と同様である。そして、全筒運転化でのトルク増加を抑制するためにスロットルバルブSVの開度を一瞬やや絞るのである。
その後、(5)では、バルブリフト量大(作動角大)とできるので、吸気弁閉時期が下死点より充分遅れ、吸気充填効率が抑えられ、スロットルバルブSVの開度をその分拡大できるので、トルクの変化を抑制できる。つまり、過渡運転においてトルクが変化するトルクショックを抑制できるのである。
図17に制御フローチャートを示し、まず、ステップ21では、クランク角センサなどの各種センサ類によって機関回転数や機関トルク及びスロットルバルブSVの開度量などを検出して、現在の機関運転状態(運転条件)を演算する。
ステップ22では、現在の機関運転状態が図12に示すB領域内か否かを判断し、B領域内ではないと判断した場合はリターンし、B領域であると判断した場合は、ステップ23に移行する。
このステップ23では、機関運転状態が図12のBC境界ラインに移行したか否かを判断し、移行していない場合はリターンし、移行している場合は、次ステップに移行する。
ステップ24では、前記電磁切換弁55にオフ信号を出力して、#1気筒の各吸気弁3a、3aと各排気弁61a、61aの弁作動を開始させると共に(全筒態様へ移行)、スロットルバルブSVの開度量をやや減少させる制御させる信号を出力し(ほぼ全開からやや大開度)、機関トルクの増加変化を抑制する。
次に、ステップ25では、これらの信号を出力してから、タイマーによって所定時間経過するのを待ち、所定時間が経過した場合はステップ26に移行する。
このステップ26では、吸気VELに吸気弁3a〜3bのリフト量(作動角)を増大させる制御信号(中L3、大L4)を出力すると共に、吸気VTCに吸気弁3a〜3bの遅角制御信号を出力して、吸気弁の開時期変化抑制しつつ、スロットルバルブSVの開度を拡大する制御信号(やや大開度のほぼ全開させる)を出力するのである。
これにより、機関トルクの変化を抑制しつつ、図13(5)に示す、第1全筒運転領域(C領域)で燃費の良好な吸気遅閉じのバルブタイミングに移行するのである。
なお、ここで、本実施形態における前述の「これらの信号を出力してから、所定時間経過するのを待ち」という意味は、先行して確実に全筒態様に移行した後に、燃費の良好な吸気弁の閉時期を遅閉じに移行させたいからである。
仮に、全筒態様に移行しない状態、つまり、減筒態様のまま吸気弁の閉時期を遅閉じに移行した場合を想定してみると、機関トルクが急に低下してしまい、エンジンスト−ルが起こってしまうからである。
また、本実施形態における前述した「吸気弁の開時期変化抑制」の意味するところは、吸気弁閉時期の遅閉じを実現するのに、吸気VELのリフト量(作動角)増大だけで行うと、吸気弁の開時期は大きく進角してしまうし(大きな正のオーバーラップ)。逆に、吸気VTCの遅角だけで行うと、吸気弁の開時期は大きく遅角してしまい、大きな負のオーバーラップが生じてしまい、いずれにしても吸気弁開時期の大きな変化により、大きな残留ガス量変化が起こってしまう。
これに対して、本実施形態では、両者を併用することで、吸気VELによる吸気弁3a〜3bの開時期の進角変化と、吸気VTCによる吸気弁3a〜3bの開時期の遅角変化とを相殺し、吸気弁の開時期の変化を抑制するという意味であり、必ずしも吸気弁の開時期を一定に維持しなくても良い。
次に、減速側運転について考察する(図12の破線矢印)。図18には(5)から(4)に減速するシーケンスを示す。
(5)は全筒運転で大リフトであるが、ここから直接減筒運転の(4)に変化するのではなく、全筒運転で中リフトである(c)を経由することで、格別の効果が得られる。
すなわち、仮に吸気弁3a〜3bの大リフト量L4から直接弁停止移行したとすると、減筒運転でありながら、大リフト量L4での吸気弁遅閉じにより充填効率が低下し、その時減筒運転であるので機関トルクは大幅に低下し、エンジンスト−ルが起こってしまうのである。
また、このような性能的な問題に加え、仮に吸気弁3a〜3bの大リフト量L4から直接弁停止移行したとすると、機構的な問題も発生する。すなわち、ロストモ−ション機構が、図7に示す許容ロストモーション量M3を超えてしまい、円滑なロストモーション作動が得られなくなり、#1気筒の各スイングアーム6、6と各油圧ラッシアジャスタ10a、10aの頭部との当接に浮きが生じ、両者間に横ズレが生じ、最悪の場合は、各スイングアーム6が外れて機関故障に繋がるおそれがある。
これに対して、吸気VELにより吸気弁3a、3aを一度中間リフト量L3に変化させてから弁停止移行させるので、ロストモーション量は許容されるM3レベルに抑制でき、もって円滑なロストモーション作動を確保できるのである。
図19に制御フローチャートを示し、まずステップ11では、クランク角センサなどの各種センサ類によって機関回転数や機関トルク(負荷)及びスロットルバルブSVの開度量などを検出して、現在の機関運転状態(運転条件)を演算する。
ステップ12では、現在の機関運転状態が前記図12に示すC領域内か否かを判断し、C領域内ではないと判断した場合はリターンし、C領域であると判断した場合は、ステップ13に移行する。
このステップ13では、機関運転状態が図12のBC境界ラインに移行したか否かを判断し、移行していない場合はリターンし、移行している場合は、ステップ14に移行する。
ステップ14では、吸気VELによって吸気弁のバルブリフト量を減少させる信号を出力して、L4からL3に変換制御すると共に、吸気VTCによって吸気弁を進角側に制御する信号を出力する(開時期変化抑制)。また、スロットルバルブSVの開度を減少させる制御信号を出力し(ほぼ全開からやや大開度)、トルク増大変化を抑制する。
次に、ステップ15では、前記制御軸21の実回転位置を読み込み、ステップ16では、前記吸気弁の実リフト量はL3に達したか否かを判断し、達していないと判断した場合はリターンするが、達していると判断した場合は、ステップ17に移行する。
このステップ17で初めて、前記電磁切換弁55にオン信号を出力して、#1気筒の各吸気弁3a、3aと各排気弁61a、61aを弁停止させると共に、スロットルバルブSVの開度量をやや増大制御させる信号を出力し(やや大開度からほぼ全開に変化)、トルク減少変化を抑制する。これによって一連の制御処理を終了する。
ここで重要なのは、ステップ15,16の実リフト確認部で、実リフトがL3になったのを確認後、弁停止に移行するようになっている。これにより、L3より大きなリフト量の状態(前述の痾が痾3より大きい状態)から直接弁停止移行するのを確実に回避し、確実に上記の円滑なロストモーション作動を確保できるのである。
また、このような機構面での効果以外に、実リフトが高い(吸気弁閉時期が遅い)まま、減筒移行してしまった場合に想定される機関トルク落ち込み(エンジンスト−ル)を防止できる、という性能面の効果が得られるのである。
前記図12の(6)から(7)に向けた実線矢印は、(6)で示す最大機関トルク付近の領域から、さらにアクセルを踏み続け、回転が上昇していきレブリミット付近の最高出力点(7)に至る加速を示している。図13の(6)〜(7)はリフト特性の変化を示している。(6)は吸気弁閉時期が下死点より遅いが下死点に近い位置である。つまり、中回転で最大トルクがでるようなバルブタイミングに設定されている。
次に回転が上昇するにつれ、各吸気弁3a〜3bの閉時期は次第に遅角し、各回転における最大トルクになるタイミングをトレースしていく。また、本発明は効果として最大リフト量をL4と大きくとれるので、(7)に示すように高回転での最大トルクを高め、機関最大出力を高めることができる。
したがって、本実施形態では、排気量当たりの比出力を高めることができ、排気量を小さく設定して燃費をさらに向上させることも可能である。
〔第2実施形態〕
図20〜図23は本発明の第2実施形態を示し、図20はV型2気筒の内燃機関の全体構造を示し、この基本構造は本出願人が先に出願した特開2009−30584号公報に記載されたものと同様であるから概略を説明する。
また、図21〜図23は第1実施形態と同じく吸気VELを示しているが、この吸気VELは弁停止を行うのに前記ロストモーション機構は併用しない構造になっているが、VEL自体の基本構造は第1実施形態と同様の構成であり、同一の符番を付して説明を省略する。
前記V型2気筒の内燃機関の右バンク(RB)#1気筒が休止可能気筒で、左バンク(LB)の#2気筒が常時稼働気筒になっている。
また、気筒休止可能気筒である#1気筒には、吸気弁3a側に吸気可変機構である吸気VELと吸気VTCが設けられていると共に、排気弁61a側に排気VELが設けられている。一方、常時稼働気筒である#2気筒には、吸気弁3b側に吸気VELと吸気VTCが設けられているが、排気弁61b側はVTCなども有さない通常のリフトカーブ固定型になっている。
本実施形態では、#1気筒の弁作動停止(気筒休止)を吸気VEL及び排気VELそのもので行い、第1実施形態に示すようなロストモ−ション機構(弁停止機構)は併用しない構成となっている。
図中01はシリンダブロック09のボア内を往復摺動するピストン、02はピストン01とシリンダブロック09とシリンダヘッド1との間に形成された燃焼室、03はクランクシャフト、04はピストン01とクランクシャフト03を連係するコンロッド、05はコントロールユニットであって、このコントロールユニット05は、各種センサ類から情報信号を入力して現在の機関運転状態を検出すると共に、スロットルバルブSVや燃料噴射弁08、吸気VEL(#1、#2気筒)、吸気VTC(#1、#2気筒)、排気VEL(#1気筒)などに制御信号を出力するようになっている。また、このコントロールユニット05は、図21に示すような各吸気VELの制御軸21の回転位置を検出するポテンショメータ58と、各駆動軸5の回転位置を検出する回転位置センサ59からの実位置信号を入力して各気筒の吸気VELや吸気VTCや#1気筒の排気VELを制御するようになっている。
両バンクの前記各吸気VELは、図21〜図23に示すように、最大リフトL4から零リフトまで連続的に変化できる構造である。そして、アクチュエータ50の電動モータ51の回転力をボ−ル螺子機構52を介して制御軸21を小リフト側に付勢する小側付勢スプリング56と、大リフト側に付勢する大側付勢スプリング57との機械的釣り合い位置が丁度、第1実施形態のリフトL1となるように設定されている。
そして、制御するリフト範囲としては、両バンクで異なっており、気筒休止を行う右バンク(#1気筒)では、零からL4の範囲であり、常時稼働の左バンク(#2気筒)ではL1からL4となっている。
また、吸気VTCは内部に図外の進角側付勢スプリングが内蔵されており、機械的釣り合い位置は最進角位相となっている。
したがって、内燃機関が始動するまでは、第1実施形態の図13(1)に示す吸気リフト特性(リフトL1×最進角)に両バンクともなっている。このため、始動するや否や、アイドル及び始動時に適した、図13(1)のリフト特性となり、良好な始動性を得ることができる。
そして、休止可能気筒である右バンク(RB)は、図13の左列(#1)の特性で零リフトを含めL4まで変化し、常時稼動の左バンク(LB)は図13の右列(#2)の特性でL1からL4まで変化する。
次に排気側であるが、常時稼動気筒左バンク(LB)の方は、可変動弁は用いられておらず固定型になっていることから、一定リフトLE(≒L3)で排気弁61bをリフト(弁作動)する。
一方、休止可能気筒の右バンク(RB)には、図21に示す吸気VELと同様の構造の排気VELが装着されている。この排気VELでは、図20における前述の大リフト側に付勢する大側付勢スプリング59が小側付勢スプリング58に対して、相対的に高荷重に設定されており、従って、機械的釣り合い位置は、吸気VELより高いリフトLE(≒L3)となっている。
従って、内燃機関が始動時には、第1実施形態の排気リフト特性(リフトLE)となっており、所望の始動性を得ることができる。
そして、内燃機関の始動後は、排気リフト特性は図13左列(#1)に示すように、リフトLEとリフト零の間で変化するようになっている。
本実施形態は、図22、図23に示すように、休止可能気筒である右バンク#1気筒は、制御軸21の位相変化に伴ってリフトが零から吸気側であればL4まで連続的に変化する。また、排気側は、リフト制御目標としては、リフト零とLEとを選択するようになっているが、その変換過渡は連続的にリフト変化するようになっている。
したがって、弁作動停止(零リフト)をさせる場合に、第1実施形態のようなロストモ−ション機構が存在しないので、図7に示すような、比較的大リフトからロストモ−ションさせた場合に、α角大などによりロストモ−ション挙動が不安定になる課題自体がなくなるので、作動信頼性が向上する。
一方、逆に、懸念される材料として、弁作動態様から弁作動停止態様に変換される間に、中間段階として、小リフトないし微小リフト作動の瞬間が存在し、それにより性能が不安定になるが、モータ−出力向上などにより変換応答性を高めれば実害なくできるのである。
本発明は、前記各実施形態では、弁作動停止のためにロストモ−ション機構を用いたものと、用いないものの両方を示したが、ロストモ−ション機構を用いるものとしては、第1実施形態に示したスイングア−ム型動弁機構における油圧ラッシアジャスタをロストモ−ションさせるものだけでなく、例えば、特開2010−270633号公報に示すような、油圧ラッシアジャスタを持たないリフタ型の動弁機構に適用し、例えば、特開昭63−16112号公報に示すような、リフタをロストモ−ションさせるロストモ−ション機構としてもよいのである。
さらに、ロストモ−ション機構自体を用いずに弁作動停止するものにも適用できるのは第2実施形態に示す通りである。
すなわち、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の構造、構成に適用できるのである。
また、適用する機関形式は、実施形態に示したような直列エンジンやV型エンジン以外にも水平対向エンジンなどにも適用でき、特に限定されない。また、気筒数も各実施形態に記載した2気筒に限らず、一部の気筒が気筒休止可能となる多気筒エンジンであれば何気筒であっても良い。