JP2012219359A - 高純度銀製造廃液の処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の高純度銀製造廃液の処理方法は、銀を含む製錬中間物から亜硫酸塩水溶液により銀を浸出させる銀浸出工程と、浸出した浸出液を中和して塩化銀を析出させる塩化銀析出工程と、析出した塩化銀を酸性水溶液中で酸化処理して精製する塩化銀精製工程と、を有する高純度銀の製造方法において、前記塩化銀析出工程及び/又は前記塩化銀精製工程において発生した廃液に硫酸及び/又は塩酸を添加して前記廃液からSO3 2−を除去する脱SO3 2−工程と、前記脱SO3 2−工程で発生したSO2ガスを水酸化アルカリ金属及び/又は炭酸アルカリ金属塩の水溶液に吸収させて亜硫酸塩水溶液を得る亜硫酸塩水溶液生成工程と、を備え、前記亜硫酸塩水溶液生成工程で得られた亜硫酸塩水溶液を前記銀浸出工程で使用される亜硫酸塩水溶液として利用することを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明の廃液の処理方法が適用される高純度銀の製造方法は、前処理工程と、銀浸出工程と、塩化銀析出工程と、塩化銀精製工程と、銀粉回収工程とを有する(図2)。かかる工程を有する高純度銀の製造方法では、原料として、銀を含む製錬中間物を使用する。該製錬中間物は、特に限定されるものではなく、例えば、難溶性銀化合物と不純物元素とを含む製錬中間物である、銅、鉛等の精錬における電解精製工程で発生するアノードスライムや、めっき液、写真現像液等の銀含有液の処理工程、貴金属の精錬工程等で発生する中間物等が挙げられる。ここで、製錬中間物に含まれる不純物元素としては、例えば、銅、ニッケル、鉛、鉄、コバルト、マンガン、硫黄、亜鉛、カドミウム、スズ、金のほか、ヒ素、アンチモン、ビスマス等のV族元素、セレン、テルル等のVI族元素、白金族元素等が挙げられる。貴金属を多く含むアノードスライムを原料として使用する場合、金やパラジウム等のより高価な貴金属を優先的に回収するため、まず塩素ガスによる浸出で金やパラジウムを浸出する。浸出液は別の工程で処理され、金やパラジウムが回収される。この塩素ガスによる浸出時に同時に生成される浸出残渣には、通常、銀が塩化銀の形でおよそ15〜30質量%含まれている。なお、本発明の製錬中間物には、上記のような塩素ガスによる浸出残渣や後述する前処理工程を経た製錬中間物も含まれる。
前処理工程は、製錬中間物に水を添加し、該製錬中間物をレパルプ洗浄する工程である。レパルプ洗浄は、浸出残渣に付着している不純物、及び浸出残渣中の陰イオン、特にCl−を除去することを目的として行われる。前処理工程は、必須の工程ではないが、不純物の混入量を低減するという観点から行うことが好ましい。また、浸出残渣中にCl−が残存すると浸出時にpHが低下するためpH調整が必要となるが、このpH調整が不要となるという観点からも行うことが好ましい。
銀浸出工程は、製錬中間物から亜硫酸塩水溶液により銀を浸出させる工程であり、製錬中間物に亜硫酸塩水溶液を添加することにより、錯イオンとして溶解した銀の浸出液を得ることができる。以下に、亜硫酸塩が亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)であり、難溶性銀化合物が塩化銀である場合の反応式を示す。
(式)AgCl+Na2SO3→Na[Ag(SO3)]+NaCl
銀浸出工程は、上記銀浸出工程において得られた浸出液を中和して塩化銀を析出させる工程であり、上記浸出液を中和すると錯イオンとして存在することができなくなり、浸出液中の塩化物イオンと結合した塩化銀が析出される。なお、原料として用いる製錬中間物に塩化物以外の難溶性銀化合物が含まれる場合には、塩化銀として析出させるために所定量の塩化物イオンを添加する。塩化物イオンの供給源としては、塩酸、塩化ナトリウム等の水溶性塩化物を用いることが好ましい。
塩化銀精製工程は、上記塩化銀析出工程において得られた析出物中の塩化銀を酸性水溶液中で酸化処理して精製する工程であり、上記析出物を酸化剤で酸化処理すると塩化物として析出しているセレン、テルル等の不純物元素が酸性水溶液中に溶解する。その結果、残った析出物は、実質的に塩化銀となるため、その後の固液分離、洗浄により、高純度塩化銀を得ることができる。
銀粉回収工程は、上記塩化銀精製工程において得られた高純度塩化銀をアルカリ水溶液中で還元剤により還元処理して銀メタル粉を得る工程である。この工程を経た銀粉は、平均粒径が数百μmの粉状であり、99.99質量%以上の高純度である。
次に、本発明の廃液の処理方法について説明する。本発明の廃液の処理方法は、上記塩化銀析出工程及び/又は上記塩化銀精製工程において発生した廃液に硫酸及び/又は塩酸を添加して上記廃液からSO3 2−を除去する脱SO3 2−工程と、上記脱SO3 2−工程で発生したSO2ガスを水酸化アルカリ金属及び/又は炭酸アルカリ金属塩の水溶液に吸収させて亜硫酸塩水溶液を得る亜硫酸塩水溶液生成工程と、を備え、上記亜硫酸塩水溶液生成工程で得られた亜硫酸塩水溶液を上記銀浸出工程で使用される亜硫酸塩水溶液として利用することを特徴とする。上記銀浸出工程において使用される亜硫酸塩水溶液が亜硫酸ナトリウム水溶液である本発明の一実施形態に係る廃液の処理方法について、図1に示す高純度銀の製造方法の工程図を用いて説明する。
本発明の一実施形態に係る廃液の処理方法では、図1に示すように、上記塩化銀析出工程及び上記塩化銀精製工程において発生した濾液の全てを廃液として排水処理するのではなく、その一部に硫酸を添加し、廃液からSO3 2−を除去する脱SO3 2−工程を施す。上記塩化銀析出工程において得られた析出物を固液分離した後の濾液には、セレン、テルル等の不純物元素の他に、銀のスルフィト錯塩(Na[Ag(SO3)])から塩化銀に変化した際に分解したSO3 2−が多量に含まれている。上記塩化銀精製工程において酸化処理により残った析出物を固液分離した後の濾液にも、セレン、テルル等の不純物元素の他に、銀のスルフィト錯塩(Na[Ag(SO3)])から塩化銀に変化した際に分解したSO3 2−が含まれている。これら濾液である廃液に、硫酸を添加すると、廃液中に溶存していたSO3 2−がSO2ガスとなり、廃液中からSO2ガスが放出される。
本発明の一実施形態に係る廃液の処理方法における亜硫酸塩水溶液生成工程では、上記脱SO3 2−工程で発生したSO2ガスを回収し、水酸化ナトリウム水溶液に吸収させることにより亜硫酸ナトリウム水溶液を得る。水酸化ナトリウム水溶液の濃度は、特に限定されるものではないが、好ましくは10〜24質量%である。水酸化ナトリウム水溶液の濃度が10質量%未満であると、亜硫酸ナトリウムの濃度が目的に達しない場合がある。水酸化ナトリウム水溶液の濃度が24質量%を超えると、冬季の操業では固結する場合がある。この工程における温度は、特に限定されるものではないが、5〜30℃であることが好ましい。温度が5℃未満であると、亜硫酸ナトリウムの溶解度が低下し、結晶が析出する場合がある。温度が30℃を超えると、加湿が必要となる場合がある。
試験用原料として、銅電解工程で産出されたアノードスライムを塩素ガスにより浸出して得た塩素浸出残渣を用いた。なお、該塩素浸出残渣をICP発光分光分析法(ICP−AES)により分析したところ、表1に示す組成であった。
上記塩素浸出残渣45g(湿潤重量)を容量1Lのビーカーに入れ、合計量が400mlとなるように水を添加し、レパルプした。レパルプ後の残渣は、湿潤重量で47gであり、濾液はおよそ400mlであった。
(2)銀浸出工程A
上記前処理工程Aのレパルプ後の残渣47gに、市販の亜硫酸ナトリウムを用いて調製した亜硫酸ナトリウム水溶液(230g/L)を添加し、1時間撹拌して銀を浸出した。なお、浸出時のpHは、およそ10.5であった。次いで、濾過及び洗浄を行い、浸出液400mlと、残渣23g(湿潤重量)を得た。
上記銀浸出工程Aにて得られた浸出液に薄硫酸水溶液を添加し、pHを4.9に調整後、そのままpHを保持しながら1時間撹拌し、スラリーを得た。得られたスラリーを濾過及び洗浄し、析出物を回収した。反応中は、亜硫酸ナトリウムの分解によりSO2ガスが発生するため、ドラフト内で反応させた。発生した濾液に薄硫酸を添加し、pHを0.9に調整後、そのままpHを保持しながら1時間撹拌し、発生したSO2ガスを回収した(脱SO3 2−工程)。次いで、該SO2ガスを水酸化ナトリウム水溶液に吹き込み、吸収させて、亜硫酸ナトリウム水溶液を得た(亜硫酸塩水溶液生成工程)。なお、SO2ガス回収後の濾液は、処理後水として、別途、回収した。
上記塩素浸出残渣45g(湿潤重量)を容量1Lのビーカーに入れ、合計量が400mlとなるように水を添加し、レパルプした。レパルプ後の残渣は、湿潤重量で47gであり、濾液はおよそ400mlであった。
上記前処理工程Bのレパルプ後の残渣47gに、上記塩化銀析出工程Aにて発生した濾液を利用して調製した亜硫酸ナトリウム水溶液を添加し、1時間撹拌して銀を浸出した。なお、添加した亜硫酸ナトリウム水溶液は、同じく上記塩化銀析出工程Aにて回収した処理後水と水とを容量比30/70で混合した希釈液を用い、亜硫酸ナトリウム濃度を230g/Lに調整した。なお、浸出時のpHを測定したところ、およそ10.5であった。その後、濾過及び洗浄を行い、浸出液400mlと残渣23g(湿潤重量)とを得た。浸出液の銀濃度は20g/L、残渣の銀品位は0.2%(乾燥量ベース)であり、浸出液と残渣とに含まれる銀量の割合から算出した銀浸出率は、およそ99.1%であった。
上記銀浸出工程Bにて得られた浸出液に薄硫酸水溶液を添加し、pHを4.9に調整後、そのままpHを保持しながら1時間撹拌し、スラリーを得た。得られたスラリーを濾過及び洗浄し、析出物を回収した。なお、発生した濾液は、次の銀浸出工程において使用する亜硫酸ナトリウム水溶液の調製のために利用し、SO2ガス回収後の濾液も、処理後水として回収した。
塩化銀析出工程にて発生した濾液を利用して調製した亜硫酸ナトリウム水溶液と、SO2ガス回収後の処理後水とを使用しながら、前処理工程B、銀浸出工程B、及び塩化銀析出工程Bを複数回繰り返し、得られた250g(湿潤重量)の塩化銀の析出物を、濃度6mol/Lの塩酸水溶液500mlに懸濁し、このスラリーを60℃に昇温後、濃度35質量%の過酸化水素水50mlを約1時間かけて全量を添加するように滴下して、酸化処理を行った。このスラリーの酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)は、1000mV以上であった。冷却後、スラリーを濾過し、十分に水洗浄して240g(湿潤重量)の精製された塩化銀を得た。
上記塩化銀精製工程にて得られた精製後の塩化銀240g(湿潤重量)を、濃度8.6質量%の水酸化ナトリウム水溶液1000mlに懸濁し、70℃に加温して、更に濃度60質量%のヒドラジンを酸化還元電位が−700mV以下で安定するまで添加することにより還元し、銀粉を回収した。該銀粉を硝酸水溶液に溶解し、ICP発光分光分析法(ICP−AES)及びICP質量分析法(ICP−MS)により分析した。その結果を表2に示す。
塩化銀析出工程において発生した濾液を、脱SO3 2−工程を経ることなく、そのまま上記銀浸出工程Bのレパルプ水(懸濁液)に使用したところ、亜硫酸ナトリウム濃度は、100〜200g/Lの間で安定せず、しかも必要量に対して不足する結果となった。その結果、銀浸出工程Bにて得られた残渣の銀品位は、5.5%(乾燥量ベース)であり、浸出液と残渣とに含まれる銀量の割合から算出した銀浸出率は、76%と低い値であった。このことから、塩化銀析出工程において発生した濾液は、脱SO3 2−工程を経なければ、銀浸出工程への利用には適さないことが明らかとなった。
塩化銀析出工程にて発生した濾液に薄硫酸を添加し、pHを0.9に調整後、そのままpHを保持しながら1時間撹拌し、SO2ガスを放出させ、濾液中のSO3 2−を除去した。そして、このSO3 2−除去後の濾液と水とを容量比50/50で混合し、得られた液を上記(1)の前処理工程におけるレパルプ洗浄液として使用した。そして、得られたレパルプ後の残渣について、試験例1と同様の方法にて、上記銀浸出工程Bを行ったところ、この浸出段階での銀浸出率は85%と低い値となった。このことから、SO3 2−除去後の濾液は、前処理工程におけるレパルプ洗浄液としての利用には適さないことが明らかとなった。
Claims (4)
- 銀を含む製錬中間物から亜硫酸塩水溶液により銀を浸出させる銀浸出工程と、
浸出した浸出液を中和して塩化銀を析出させる塩化銀析出工程と、
析出した塩化銀を酸性水溶液中で酸化処理して精製する塩化銀精製工程と、を有する高純度銀の製造方法において、
前記塩化銀析出工程及び/又は前記塩化銀精製工程において発生した廃液に硫酸及び/又は塩酸を添加して前記廃液からSO3 2−を除去する脱SO3 2−工程と、
前記脱SO3 2−工程で発生したSO2ガスを水酸化アルカリ金属及び/又は炭酸アルカリ金属塩の水溶液に吸収させて亜硫酸塩水溶液を得る亜硫酸塩水溶液生成工程と、を備え、
前記亜硫酸塩水溶液生成工程で得られた亜硫酸塩水溶液を前記銀浸出工程で使用される亜硫酸塩水溶液として利用することを特徴とする高純度銀製造廃液の処理方法。 - 前記脱SO3 2−工程では、硫酸及び/又は塩酸添加後の廃液のpHが0〜4.5となるように硫酸及び/又は塩酸を添加する請求項1に記載の高純度銀製造廃液の処理方法。
- 前記亜硫酸塩水溶液生成工程で得られた亜硫酸塩水溶液の亜硫酸塩濃度を150〜250g/Lに調整した後、当該調整後の亜硫酸塩水溶液を前記銀浸出工程で使用される亜硫酸塩水溶液として利用する請求項1又は2に記載の高純度銀製造廃液の処理方法。
- 前記亜硫酸塩濃度を、前記脱SO3 2−工程でSO3 2−を除去した後の廃液を利用して調整する請求項3に記載の高純度銀製造廃液の処理方法。
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