JP2012207837A - ダクト - Google Patents

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Abstract

【課題】成形したダクトの反りの発生を防止することが可能なダクトを提供する。
【解決手段】本実施形態のダクト(200)は、第1の壁部(201)の平均肉厚と第2の壁部(202)の平均肉厚との差が0.3mm以下であり、ダクト(200)全体の肉厚の変動係数が0.3以下である。また、ダクト(200)全体の平均肉厚が0.7mm以下である。
【選択図】図1

Description

本発明は、ダクトに関する。
ダクトの成形方法として、例えば、押出機により基材樹脂を溶融混練し、これをダイスより押し出して筒状のパリソンを形成し、このパリソンを分割金型で挟み込み、該パリソン内部に加圧気体を吹き込んでブロー成形し、ダクトを成形する方法がある(例えば、特許文献1:特開2004−202998号公報参照)。上述した成形により得られるダクトは、第1の壁部と第2の壁部とがパーティングラインを介して接着して構成することになる。
しかし、上述したパリソンブロー成形方法を用いてダクトを成形する場合は、成形時において基材樹脂の伸びが大きい部分(例えば、ブロー比の高い部分)が存在し、ダクトを構成する壁部の肉厚にばらつきが発生してしまう場合がある。
ダクトを構成する壁部の肉厚にばらつきがあると、成形後のダクトを冷却する際にダクトが変形し、ダクトに反りが発生してしまう場合がある。ダクトを構成する壁部の肉厚のばらつきは、変動係数で表すことができ、変動係数は、壁部の各部位の肉厚から得られた肉厚の標準偏差を各部位の肉厚から得られた肉厚の平均値で割った値である(変動係数=肉厚の標準偏差/肉厚の平均値)。
このようなことから、ダクトの反りの発生を防止するための仕組みの開発が必要視されている。
なお、特許文献2(WO2009/157197)には、下方に垂下する形態で押し出された溶融状態の熱可塑性樹脂シートのドローダウンあるいはネックインを有効に防止することが可能な樹脂成形品の成形方法について開示されている。
なお、ドローダウンとは、時間経過と共にシートの自重により溶融状態のシートが引き延ばされてシートの上方ほど薄肉となる現象をいう。また、ネックインとは、ドローダウンに起因してシートの幅方向に収縮してシート幅が小さくなる現象をいう。
上記特許文献2では、溶融混練した熱可塑性樹脂を所定量貯留し、Tダイに設けられた所定間隔の押出スリットから、上記熱可塑性樹脂を単位時間当たり所定の押出量で間欠的に押し出し、溶融状態の熱可塑性樹脂シートが下方に垂下するように所定の押出速度で溶融状態の熱可塑性樹脂シートを押し出すようにしている。
この場合、上記特許文献2では、熱可塑性樹脂シートが一対のローラに送られている間、一対のローラによる熱可塑性樹脂シートの送出速度が、押出スリットから押し出される熱可塑性樹脂シートの押出速度以上となるように一対のローラの回転速度を調整し、熱可塑性樹脂シートのドローダウンあるいはネックインを有効に防止し、押出方向に一様な厚みの熱可塑性樹脂シートを形成することを可能にしている。
特開2004−202998号公報 WO2009/157197
上記特許文献2の方法のように押出方向に一様な厚みの熱可塑性樹脂シートを用いてダクトを成形することで、ダクトを構成する各壁部(第1の壁部、第2の壁部)の肉厚にばらつきが発生するのを抑制することができる。
しかし、ダクトを構成する第1の壁部の肉厚と第2の壁部の肉厚とが各々異なる場合も、そのダクトを冷却する際にダクトが変形し、ダクトに反りが発生してしまう場合がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、成形したダクトの反りの発生を防止することが可能なダクトを提供することを目的とする。
かかる目的を達成するために、本発明は以下の特徴を有する。
<ダクト>
本発明にかかるダクトは、
パーティングラインを介して接着される第1の壁部と第2の壁部とを有して構成するダクトであって、
前記第1の壁部の平均肉厚と前記第2の壁部の平均肉厚との差が0.3mm以下であり、
ダクト全体の肉厚の変動係数が0.3以下であることを特徴とする。
本発明によれば、成形したダクトの反りの発生を防止することができる。
本実施形態のインパネダクト200の構成例を示す図である。 本実施形態のインパネダクト200を成形する成形装置1の構成例を示す図である。 図2に示す成形装置1において、分割金型32内に熱可塑性樹脂シートPを配置し、分割金型32のキャビティ116間を型枠33により閉じた工程を示す図である。 図3に示す態様から熱可塑性樹脂シートPを、分割金型32のキャビティ116に真空吸引させた工程を示す図である。 図4に示す態様から分割金型32を型締めした状態を示す図である。 図5に示す態様から分割金型32を型開きした状態を示す図である。 図2に示す一対のローラ30の構成例を示す図である。 図2に示す一対のローラ30の構成例を示す図である。 図2に示す一方のローラ30の温度調整装置の構成例を示す図である。 インパネダクト200の平均肉厚、肉厚差、変動係数を示す図である。 ブロー比を説明するための断面図である。
<本実施形態のダクト200の概要>
まず、図1を参照しながら、本実施形態のダクト200について説明する。
本実施形態のダクト200は、パーティングラインPLを介して接着される第1の壁部201と第2の壁部202とを有して構成するダクト200である。
本実施形態のダクト200は、第1の壁部201の平均肉厚と第2の壁部202の平均肉厚との差が0.3mm以下であり、ダクト200全体の肉厚の変動係数が0.3以下である。但し、変動係数は、第1の壁部201の肉厚と第2の壁部202の肉厚とから得られた肉厚の標準偏差を第1の壁部201の肉厚と第2の壁部202の肉厚とから得られた肉厚の平均値で割った値である(変動係数=肉厚の標準偏差/肉厚の平均値)。
本実施形態のダクト200は、上記構成を有することで、成形したダクト200の反りの発生を防止することができる。以下、添付図面を参照しながら、本実施形態のダクト200について詳細に説明する。但し、以下の実施形態では、ダクト200として図1に示すインパネダクト200を成形する場合を例に説明する。
<インパネダクト200の構成例>
まず、図1を参照しながら、本実施形態のインパネダクト200の構成例について説明する。図1は、本実施形態のインパネダクト200の構成例を示す図であり、図1(a)は、インパネダクト200の第1の壁部201側を示し、図1(b)は、インパネダクト200の第2の壁部202側を示す。
本実施形態のインパネダクト200は、パーティングラインPLを介して接着した第1の壁部201と第2の壁部202とを有して構成する。
本実施形態のインパネダクト200を構成する第1の壁部201と第2の壁部202との平均肉厚は、0.3〜1.2mmであり、第1の壁部201の平均肉厚と第2の壁部202の平均肉厚との肉厚差は、0.3mm以下である。また、インパネダクト200全体の肉厚の変動係数は、0.3以下である。
平均肉厚は、樹脂成形品の中空延伸方向に約100mmの等間隔で測定した肉厚の平均値を意味する。なお、中空の樹脂成形品であれば、パーティングラインPLを介して接着される第1の壁部201と第2の壁部202との各々の壁部においてそれぞれパーティングラインPL90°方向の位置の肉厚を測定し、その測定した肉厚の平均値を意味する。但し、測定位置に、フランジ部等の分割金型で圧縮された部分を含まないようにしている。中空延伸方向とは、樹脂成形品において中空部が延びる方向であり、流体が流れる方向である。パーティングラインPL90°方向の位置とは、中空延伸方向垂直断面において(図11参照)、一方のパーティングラインL1と他方のパーティングラインL2とを結ぶ線分の中点を通り、当該線分に直交する直線Xと交わる位置を意味する。
なお、本実施形態のインパネダクト200の第1の壁部201側の平均肉厚は、図1(a)に示すインパネダクト200の第1の壁部201側の11〜19,20〜28の18カ所で測定した肉厚の平均値である。また、第2の壁部202側の平均肉厚は、図1(b)に示すインパネダクト200の第2の壁部202側の31〜38,39〜46の16カ所で測定した肉厚の平均値である。インパネダクト200全体の平均肉厚は、第1の壁部201側の平均肉厚と、第2の壁部202側の平均肉厚と、を平均した肉厚である。
インパネダクト200全体の肉厚の変動係数は、樹脂成形品の中空延伸方向に約100mmの等間隔で測定した肉厚のばらつきを示し、樹脂成形品の各部位で測定した肉厚の標準偏差をその各部位の肉厚の平均値で割った値である(変動係数=肉厚の標準偏差/肉厚の平均値)。なお、肉厚の測定位置は、パーティングラインPL90°方向とする。
図1に示すインパネダクト200の両端には、約90度で屈曲した屈曲部203を有している。
本実施形態のインパネダクト200は、ダクト内部に中空部を有し、その中空部を介して空気などの流体を流通させるようにしている。なお、図1に示す形状は一例であり、図1に示す形状に限定するものではなく、様々な形状のダクトを成形することが可能である。なお、図1に示す204〜210は、開口部を示し、インパネダクト200内を流通した流体を開口部を介して流通することになる。また、図1(b)に示すAは、インパネダクト200の両端に位置するフランジ間の距離を示す。
<インパネダクト200の成形方法例>
次に、図2〜図9を参照しながら、本実施形態のインパネダクト200の成形方法例について説明する。図2は、本実施形態のインパネダクト200を成形する成形装置1の構成例を示し、図2〜図6は、本実施形態のインパネダクト200を成形する成形工程例を示し、図7〜図9は、ローラ30の詳細構成例を示す図である。
まず、図2を参照しながら、本実施形態のインパネダクト200を成形する成形装置1の構成例について説明する。
本実施形態のインパネダクト200を成形するための成形装置1は、押出装置12と、型締装置10と、を有して構成し、押出装置12から溶融状態の熱可塑性樹脂シートPを型締装置10に押し出し、型締装置10で熱可塑性樹脂シートPを型締めし、図1に示すインパネダクト200を成形する。
押出装置12は、ホッパ16が付設されたシリンダ18と、シリンダ18内に設けられたスクリュ(図示せず)と、スクリュに連結された電動モータ20と、シリンダ18と連通したアキュムレータ22と、アキュムレータ22と連通したプランジャ24と、Tダイ28と、を有して構成する。
本実施形態の押出装置12は、ホッパ16から投入された樹脂ペレットが、シリンダ18内で電動モータ20によるスクリュの回転により溶融、混練され、溶融状態の樹脂(溶融樹脂)を形成する。次に、溶融樹脂がアキュムレータ22に移送されて一定量貯留され、プランジャ24の駆動により、Tダイ28に向けて溶融樹脂を送り、Tダイ28の押出スリット(図示せず)から連続的なシート状の熱可塑性樹脂シートPを押し出す。Tダイ28の押出スリットから押し出された熱可塑性樹脂シートPは、間隔を隔てて配置された一対のローラ30によって挟圧されながら下方へ向かって送り出されて分割金型32の間に垂下される。これにより、熱可塑性樹脂シートPが上下方向(押出方向)に一様な厚みを有する状態で、分割金型32の間に配置されることになる。
押出装置12の押出能力は、成形する樹脂成形品の大きさ、熱可塑性樹脂シートPのドローダウンあるいはネックイン発生防止の観点から適宜選択する。具体的には、実用的な観点から、間欠押出における1ショットの押出量は、好ましくは1〜10kgであり、押出スリットからの熱可塑性樹脂シートPの押出速度は、数百kg/時以上、より好ましくは、700kg/時以上である。また、熱可塑性樹脂シートPのドローダウンあるいはネックイン発生防止の観点から、熱可塑性樹脂シートPの押出は、なるべく短いことが好ましく、樹脂の種類、MFR値、メルトテンション値に依存するが、一般的に、押出は、40秒以内、より好ましくは10〜20秒以内に完了するのが好ましい。
このため、熱可塑性樹脂の押出スリットからの単位面積(1cm2)、単位時間(h)当たりの押出量は、50kg/h cm2以上、より好ましくは、150kg/h cm2以上である。例えば、スリット間隔が0.5mm、スリットの幅方向の長さが1000mmのTダイ28の押出スリットから、密度0.9g/cm3の熱可塑性樹脂を用いて、厚さ1.0mm、幅1000mm、押出方向の長さが2000mmの熱可塑性樹脂シートPを15秒間で押し出す場合は、1.8kgの熱可塑性樹脂を1ショット15秒間で押し出したことになり、押出速度は432kg/時であり、単位面積当りの押出速度は約86kg/h cm2と算出することができる。
なお、Tダイ28に設けられる押出スリットは、鉛直下向きに配置され、押出スリットから押し出された熱可塑性樹脂シートPは、そのまま押出スリットから垂下する形態で、鉛直下向きに送られるようになっている。押出スリットは、スリット間隔を可変にすることで、熱可塑性樹脂シートPの厚みを変更することができる。
但し、Tダイ28から押し出された熱可塑性樹脂シートPは、分割金型32間に垂下された状態で、つまり、型締めされる時点において押出し方向の厚みが均一となるように調整することが好ましい。この場合、スリット間隔を押出し開始から徐々に広げ、押出し終了時に最大となるように変動させることもできる。これにより、Tダイ28から押し出される熱可塑性樹脂シートPの厚みは、押出し開始から徐々に厚くなるが、溶融状態で押し出された熱可塑性樹脂シートPは、自重により引き伸ばされてシートの下方から上方へ徐々に薄くなるため、スリット間隔を広げて厚く押し出した分とドローダウン現象により引き伸ばされて薄くなった分とが相殺されて、シート上方から下方にわたって均一な厚みに調整することができる。
本実施形態の成形装置1は、一対のローラ30間に挟み込まれた熱可塑性樹脂シートPを一対のローラ30の回転により下方に送り出すことで、熱可塑性樹脂シートPを延伸薄肉化することができ、Tダイ28により押し出される熱可塑性樹脂シートPの押出速度と、一対のローラ30により送り出される熱可塑性樹脂シートPの送出速度と、の関係を調整することで、熱可塑性樹脂シートPのドローダウンあるいはネックインの発生を防止することができる。このため、採用する樹脂の種類、特に、MFR値、MT値、単位時間当たりの押出量に対する制約を軽減することができる。
一対のローラ30は、押出スリットの下方において、各々の回転軸が互いに平行にほぼ水平に配置され、図7に示すように、一方が回転駆動ローラ30Aであり、他方が被回転駆動ローラ30Bである。より詳細には、図2に示すように、一対のローラ30は、押出スリットから下方に垂下する形態で押し出される熱可塑性樹脂シートPに関して、線対称となるように配置される。
ローラ30の直径およびローラ30の軸方向の長さは、成形すべき熱可塑性樹脂シートPの押出速度、熱可塑性樹脂シートPの押出方向の長さ、幅、樹脂の種類などに応じて適宜設定する。但し、一対のローラ30間に熱可塑性樹脂シートPを挟み込んだ状態で、ローラ30の回転により熱可塑性樹脂シートPを円滑に下方に送り出す点を鑑み、回転駆動ローラ30Aの径は、被回転駆動ローラ30Bの径より若干大きいほうが好ましい。ローラ30の径は、50〜200mmの範囲であることが好ましく、熱可塑性樹脂シートPとの接触においてローラ30の曲率が大きすぎても、また、小さすぎても、熱可塑性樹脂シートPがローラ30に巻き付く原因となる。
また、一対のローラ30のそれぞれの外表面には、凹凸状のシボが設けられている。凹凸状のシボは、ローラ30の外表面において、熱可塑性樹脂シートPと接触する面全体に亘って均一に分布するように設けることが好ましく、その深さや密度は、一対のローラ30により熱可塑性樹脂シートPを円滑に下方に送り出すことが可能なように、一対のローラ30のそれぞれの外表面と、対応する熱可塑性樹脂シートPの表面と、の間に滑りが生じない点を考慮して適宜定めればよい。なお、凹凸状のシボは、例えば、サンドブラスト処理によって形成できるが、ブラスト機において粗さ60番程度を採用して形成することが好ましい。
なお、一対のローラ30のそれぞれに設ける凹凸状のシボは、熱可塑性樹脂シートPの表面にシボ模様を転写するために設けるのではなく、あくまで、一対のローラ30のそれぞれの外表面と、対応する熱可塑性樹脂シートPの表面と、の間に滑りが生じるのを防止するために設けている。
熱可塑性樹脂シートPの表面にシボ模様を転写する場合は、一対のローラ30のうち、一方をシボロールとし、他方をゴムロールとするのが通常であるが、本実施形態の一対のローラ30においては、一対のローラ30のそれぞれの外表面にシボを設けることにより、一対のローラ30のそれぞれが熱可塑性樹脂シートPの対応する表面を確実に把持するようにする半面、一対のローラ30による熱可塑性樹脂シートPの押圧力を制限することで、一対のローラ30により熱可塑性樹脂シートPを送り出す直後に、熱可塑性樹脂シートPの表面にシボ模様を転写しないようにすることができる。
回転駆動ローラ30Aには、ローラ回転駆動手段94(図8参照)、ローラ移動手段96が付設され、ローラ回転駆動手段94により、回転駆動ローラ30Aは、その軸線方向を中心に回転可能となる。また、ローラ移動手段96により、回転駆動ローラ30Aは、一対のローラ30を包含する平面内で被回転駆動ローラ30Bとの平行な位置関係を保持しつつ、被回転駆動ローラ30Bに向かって近づき、あるいは、被回転駆動ローラ30Bから離れるように移動する。
ローラ回転駆動手段94は、図8に示すように、回転駆動ローラ30Aに連結したモータ98を有して構成し、モータ98の回転トルクを、たとえば、歯車減速機構(図示せず)を介して回転駆動ローラ30Aに伝達するようにしている。モータ98は、回転駆動ローラ30Aの回転数を調整することができるように回転数調整装置100が付設されている。この回転数調整装置100は、例えば、電動モータに対する電流値を調整するものでもよく、熱可塑性樹脂シートPが押出スリットから押し出される押出速度と、一対のローラ30の回転により熱可塑性樹脂シートPが下方に送り出される送出速度と、の相対速度差を、熱可塑性樹脂シートPの押出速度に応じて調整するようにしている。熱可塑性樹脂シートPのローラ30による送出速度は、例えば、直径100mmの一対のローラ30を用いて、送出方向に長さ2000mmの熱可塑性樹脂シートPを15秒間で送り出す場合、1ショット15秒間で約6.4回転することになり、ローラ30の回転速度は、約25.5rpmと算出することができる。ローラ30の回転速度を上げ下げすることで熱可塑性樹脂シートPの送出速度を容易に調整することができる。
本実施形態では、図8に示すように、被回転駆動ローラ30Bが回転駆動ローラ30Aと同調して回転駆動するように、被回転駆動ローラ30Bは、その端周面102に亘ってローラ30の回転軸を中心に回転可能な第1歯車104を有して構成し、回転駆動ローラ30Aは、その端周面107に亘ってローラ30の回転軸を中心に回転可能な第2歯車108を有して構成する。なお、第2歯車108は、第1歯車104と噛み合うようになっている。
ローラ移動手段96は、図7に示すように、ピストンシリンダ機構からなり、ピストンロッド109の先端が、回転駆動ローラ30Aをその軸線方向に回転可能に支持するカバー117に連結され、例えば、空気圧を調整することで、ピストン113をシリンダ115に対して摺動させ、それにより、回転駆動ローラ30Aを水平方向に移動するようにし、一対のローラ30同士の間隔を調整可能にしている。
この場合、本実施形態では、熱可塑性樹脂シートPの最下部が一対のローラ30の間に供給される前に、一対のローラ30同士の間隔を熱可塑性樹脂シートPの厚みより広げて(図7(A)の間隔D1を構成する開位置)、熱可塑性樹脂シートPが円滑に一対のローラ30の間に供給されるようにし、その後、一対のローラ30同士の間隔を狭めて、一対のローラ30により熱可塑性樹脂シートPを挟み込み(図7(B)の間隔D2を構成する閉位置)、ローラ30の回転により熱可塑性樹脂シートPを下方に送り出すようにしている。ピストン113のストロークは、開位置と閉位置との距離となるように設定すればよい。この場合、図7(B)の間隔D2を構成する閉位置において、回転駆動ローラ30Aと被回転駆動ローラ30Bとが間隔D2を隔てつつ、被回転駆動ローラ30Bが回転駆動ローラ30Aと同調して回転駆動するように、第1歯車104の歯先は、被回転駆動ローラ30Bの外周面より突出し、第2歯車108の歯先は、回転駆動ローラ30Aの外周面より突出するように設定している。
これにより、回転駆動ローラ30Aの回転駆動力を被回転駆動ローラ30Bに伝達させることで両ローラ30の回転速度を一致させた状態で、両ローラ30により熱可塑性樹脂シートPを挟み込んで、下方に送り出すことが可能となる。また、空気圧を調整することで、熱可塑性樹脂シートPが一対のローラ30の間を通過する際に、ローラ30から熱可塑性樹脂シートPに作用する押圧力を調整することもできる。押圧力の範囲は、一対のローラ30が回転することにより、一対のローラ30の表面と熱可塑性樹脂シートPの表面との間に滑りが生じない一方で、一対のローラ30により熱可塑性樹脂シートPが引きちぎられることのないようにして熱可塑性樹脂シートPが確実に下方に送り出されるように定め、樹脂の種類に依存するが、例えば、0.05MPa〜6MPaとなる。
一対のローラ30は、金属製、例えば、アルミニウム製であり、一対のローラ30にはそれぞれ、溶融状態の熱可塑性樹脂シートPの温度に応じて、ローラ30の表面温度を調整する表面温度調整手段が付設され、その構成は、ローラ30の内部に冷媒を通し、この冷媒を循環させることにより、ローラ30の表面が一対のローラ30により挟み込まれた溶融状態の熱可塑性樹脂シートPにより過度に加熱されないように熱交換するようにしている。
詳細には、ローラ30は、図8に示す歯車機構104,108が設けられる端部と反対側の端部において、図9に示すように、固定部202に対してベアリング204を介して回転自在に支承される。ローラ30の内部には、ローラ30の軸線方向に延びる冷媒供給管206が固定部202に支持された状態で設けられる。冷媒供給管206は、固定部202において、ジョイント208を介して、冷媒供給源(図示せず)に接続されたホース210に接続され、冷媒である水をホース210、冷媒供給管206を通じてローラ30の内部に供給するようにしている。冷媒供給管206は、ローラ30とほぼ同心状に、開口端212をローラ30の歯車機構が設けられる端部の内面214に対向させて配置される。これにより、開口端212から供給される冷媒は、ローラ30の端部の内面214において流れの向きを反転させ、ローラ30の内周面216と冷媒供給管206の外周面218との間に形成される環状スペース220内を固定部202に向けて流れるようにし、ローラ30の周面全体を内側から冷却するようにしている。環状スペース220内を固定部202に向けて流れる冷媒は、固定部202に設けた排水管路222を通じてローラ30から外部に排出される。
一対のローラ30の外表面は、一対のローラ30が溶融状態の熱可塑性樹脂シートPに接触することにより熱伝導を通じて加熱されるところ、上記の形態で一対のローラ30の外表面を内側から冷却することにより、一対のローラ30により挟み込まれた溶融状態の熱可塑性樹脂シートPがローラ30の外表面にへばり付き、ローラ30の回転によりローラ30に巻き付き、熱可塑性樹脂シートPが下方に送り出されないような事態を防止することにしている。この場合、巻き付き防止の観点から、ローラ30の表面温度を低くするのが好ましいが、後に、熱可塑性樹脂シートPを成形する観点から、ローラ30の表面温度を低くし過ぎると、ローラ30の表面により逆に溶融状態の熱可塑性樹脂シートPが過冷却され、成形時に支障が生じることになる。このため、一対のローラ30のそれぞれの表面温度を一対のローラ30に向かって押し出される溶融状態の熱可塑性樹脂シートPの温度より所定温度の範囲内で低く設定する必要がある。この所定温度の範囲は、溶融状態の熱可塑性樹脂シートPの種類に応じて定められ、例えば、熱可塑性樹脂シートPが非晶性樹脂の場合は、所定温度の範囲が約80℃〜95℃の範囲となり、熱可塑性樹脂シートPが結晶性樹脂の場合は、所定温度の範囲が約50℃〜90℃の範囲となる。この場合、一対のローラ30の表面温度を温度調整するために、一対のローラ30のそれぞれの内部を水冷する際は、熱可塑性樹脂シートPの種類に応じて、冷媒の温度を設定するのがよく、冷媒の温度は、熱可塑性樹脂シートPを成形中、一定温度に保持するようにする。
本実施形態の型締装置14は、分割金型32と、分割金型32を熱可塑性樹脂シートPの供給方向に対して略直交する方向に開位置と閉位置との間で移動させる金型駆動装置(図示せず)と、を有して構成する。
分割金型32は、キャビティ116を対向させた状態で配置され、それぞれのキャビティ116が略鉛直方向を向くように配置される。キャビティ116の表面には、溶融状態の熱可塑性樹脂シートPに基づいて成形される成形品の外形、および表面形状に応じて凹凸部が設けられている。また、分割金型32のキャビティ116の周りには、ピンチオフ部118が形成されている。このピンチオフ部118は、キャビティ116の周りに環状に形成されており、対向する金型32に向かって突出している。これにより、分割金型32を型締めした際に、それぞれのピンチオフ部118の先端部が当接し、成形品の周縁にパーティングラインを形成することができる。
また、分割金型32の外周部には、型枠33が摺動可能に配置されており、その型枠33が分割金型32に対して相対的に移動可能になっている。より詳細には、一方の型枠33Aは、分割金型32Bに向かって突出しており、分割金型32間に配置された熱可塑性樹脂シートPの一方の側面に当接可能であり、また、他方の型枠33Bは、分割金型32Aに向かって突出しており、分割金型32間に配置された熱可塑性樹脂シートPの他方の側面に当接可能である。
分割金型32は、金型駆動装置(図示せず)により駆動し、開位置において、分割金型32の間に、溶融状態の熱可塑性樹脂シートPを配置可能にしている。また、閉位置において、分割金型32のピンチオフ部118が互いに当接し、分割金型32内に密閉空間を形成するようにしている。なお、開位置から閉位置への各分割金型32の移動について、閉位置は、溶融状態の熱可塑性樹脂シートPの中心線の位置とし、各分割金型32が金型駆動装置により駆動されてその位置に向かって移動するようにしている。
熱可塑性樹脂シートPは、ポリプロピレン、ポリオレフィン系樹脂などから形成する。本実施形態の熱可塑性樹脂シートPは、ドローダウン、ネックインなどにより肉厚のバラツキが発生することを防止する観点から溶融張力の高い樹脂材料を用いることが好ましく、一方で分割金型32への転写性、追従性を良好とするため流動性の高い樹脂材料を用いることが好ましい。
具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン、イソプレンペンテン、メチルペンテン等のオレフィン類の単独重合体あるいは共重合体であるポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン)であって、230℃におけるMFR(JIS K-7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)が3.5g/10分以下のものが適用可能である。MFRが3.5g/10分より大きくなると、ドローダウンが激しくなり、薄肉の成形品を成形するのが困難になる。
また、本実施形態の熱可塑性樹脂シートPは、平均肉厚が0.3〜1.2mm、肉厚の変動係数が0.3以下であり、所定以上の角度(60度以上)で屈曲した屈曲部203を有する複雑な形状のインパネダクト200を成形するため、シリカ、マイカ、タルク、炭酸カルシウム等の粉状の無機フィラー、または、ガラス繊維、カーボン繊維等の繊維状の無機フィラーを添加することにしている。これにより、平均肉厚を薄くすることができ、且つ、複雑な形状のインパネダクト200を成形することができる。なお、無機フィラーは、添加量が多くなると、成形品の表面に荒れが発生し、ピンホールが発生し易くなる。このため、成形品の表面の荒れを抑え、且つ、ピンホールを発生し難くするために、無機フィラーは、30重量%未満で添加することが好ましい。また、本実施形態のインパネダクト200を成形する際は、繊維状のフィラーよりも粉状のフィラーを適用することが好ましい。これは、繊維状のフィラーは、繊維が押出し方向を向くため、押出方向と直交する方向の皺を抑え難いためである。また、粉状のフィラーの中でも、特に、タルクを適用することがより好ましい。これは、タルクは、樹脂中での分散性が良いためである。
また、熱可塑性樹脂シートPには、衝撃により割れが生じることを防止するために、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーを30wt%未満、好ましくは15wt%未満の範囲で添加することも可能である。水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレンーエチレン・ブチレンースチレンブロック共重合体、スチレンーエチレン・プロピレンースチレンブロック共重合体、水添スチレンーブタジエンゴムおよびその混合物が適用可能である。
また、熱可塑性樹脂シートPには、可塑剤、安定剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤等を添加することも可能である。
次に、図2〜図6を参照しながら、本実施形態のインパネダクト200の成形工程例について説明する。
まず、図2に示すように、熱可塑性樹脂シートPをTダイ28から押し出し、その押し出した熱可塑性樹脂シートPを一対のローラ30を通過させて熱可塑性樹脂シートPの肉厚を調整し、一対の分割金型32の間に垂下させる。
本実施形態の成形装置1は、熱可塑性樹脂シートPの押出速度と、熱可塑性樹脂シートPが一対のローラ30により下方に送り出される送出速度と、の相対速度差を、一対のローラ30の回転速度で調整し、熱可塑性樹脂シートPが一対のローラ30の間を通過する際に、一対のローラ30により下方に引っ張られ、それにより熱可塑性樹脂シートPが延伸薄肉化され、その結果、ドローダウンあるいはネックインの発生を防止することにしている。
この場合、一対のローラ30のそれぞれにおいて、ローラ30の表面に凹凸状のシボを設けると共に、ローラ30の一端に歯車機構を設けることにより、回転駆動ローラ30BAの回転駆動力を被回転駆動ローラ30BBに、また、回転駆動ローラ30AAの回転駆動力を被回転駆動ローラ30ABに、それぞれ伝達することにより、回転駆動ローラ30Aと被回転駆動ローラ30Bとの間で回転速度差が生じないようにし、それにより、熱可塑性樹脂シートPの表面に、皺あるいはせん断痕が発生するのを防止している。
また、一対のローラ30のそれぞれにおいて、ローラ30の内部に冷媒を循環させることにより、ローラ30を冷却し、ローラ30のそれぞれの外表面の温度を溶融状態の熱可塑性樹脂シートPの温度より所定温度の範囲内で低く設定し、溶融状態の熱可塑性樹脂シートPが一対のローラ30により挟み込まれる際に、溶融状態の熱可塑性樹脂シートPがローラ30の表面にへばりつき、ローラ30の回転によりローラ30に巻き付くのを防止する一方、成形時に適した溶融状態に保持するようにしている。
なお、一対のローラ30の回転数の調整と共に、押出スリットの間隔調整を連動して行うことも可能である。
図2に示すように、2枚の熱可塑性樹脂シートPを分割金型32の間に配置した後は、図3に示すように、分割金型32の型枠33を熱可塑性樹脂シートPに向かって移動させ、分割金型32の外周に位置する型枠33を熱可塑性樹脂シートPの側面に当接させる。これにより、熱可塑性樹脂シートP、型枠33、キャビティ116により、密閉空間が形成される。
次に、図4に示すように、密閉空間内の空気を真空吸引室120から吸引穴122を介して吸引し、熱可塑性樹脂シートPをキャビティ116に吸着させ、熱可塑性樹脂シートPをキャビティ116の表面に沿った形状に賦形する。
この場合、吸引前の熱可塑性樹脂シートPの上下方向の厚みを一様にしているため、ブロー比により引き起こされる厚みの分布に起因して、賦形工程が満足に行われないような事態を防止することができる。
次に、図5に示すように、型枠33と分割金型32とを一体で、互いに近接するように移動させ、分割金型32の型締めを行い、分割金型33のピンチオフ部118により熱可塑性樹脂シートPの周縁部同士を溶着する。これにより、2枚の熱可塑性樹脂シートPの接合面にパーティングラインが形成されると共に、2枚の熱可塑性樹脂シートPの内部に密閉中空部151が形成される。
次に、図6に示すように、型枠33と分割金型32とを一体で、互いに遠ざかるように移動させ、分割金型32の型開きを行い、成形された樹脂成形品を取り出し、外周部のバリを除去する。これにより、図1に示すインパネダクト200が完成する。
次に、上述した実施形態の実施例について説明する。但し、以下の実施例は、一部の実施例であり、以下の実施例に限定するものではない。
上述した図2〜図6に示す成形方法において、押出スリットから押し出される熱可塑性樹脂シートPの押出速度と、一対のローラ30による熱可塑性樹脂シートPの送出速度と、の関係を適宜変更し、図1に示す屈曲部203を有する複雑な形状のインパネダクト200を成形した。
インパネダクト200は、以下の材料を用いて成形した。
ポリプロピレン系樹脂として、サンアロマー(株)製:商品名 サンアロマー グレード PB170A(MFR=0.35g/10分)を使用した。MFRは、JIS K-7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定した値である。
また、タルクの含有量を10重量%にした。タルクの粒径は、6〜7μmのものを使用した。なお、タルクの粒径が2〜30μmの範囲であると、樹脂中でのタルクの分散性が比較的良いため好ましい。
また、一対のローラ3は、アルミニウム製を使用し、ローラ径は、100mmとした。但し、ローラ30の表面にサンドブラスト処理を施し、ローラ30の表面に凹凸状のシボを形成した。
上述した図2〜図6に示す成形方法において、押出スリットから押し出される熱可塑性樹脂シートPの押出速度と、一対のローラ30による熱可塑性樹脂シートPの送出速度と、の関係を適宜変更し、熱可塑性樹脂シートPの厚みを適宜調整し、図1に示す屈曲部203を有する複雑な形状のインパネダクト200を成形した際の成形品の平均肉厚、肉厚差、変動係数、重量、フランジ間隔の変化、開口部変化を図10に示す。フランジ間隔の変化は、図1(b)に示すフランジAの間隔を示し、開口部変化は、図1に示す開口部204〜210の変化を示す。フランジ間隔の変化、開口部変化は、インパネダクト200を恒温槽にて、-30℃,3時間⇒80℃,3時間⇒常温,3時間の冷熱サイクルで保管し、その冷熱サイクル前後のフランジ間隔、開口部内寸法を測定した。
図10に示す実施例1は、図1に示すインパネダクト200の重量が964gとなるように成形し、実施例2は、インパネダクト200の重量が800gとなるように成形し、実施例3は、インパネダクト200の重量が724gとなるように成形し、実施例4は、インパネダクト200の重量が640gとなるように成形し、実施例5は、インパネダクト200の重量が640gとなるように成形した。
図10に示す平均肉厚は、図1(a)に示すインパネダクト200の第1の壁部201側の平均肉厚(上側)、第2の壁部202側の平均肉厚(下側)、第1の壁部201側と第2の壁部202側との平均肉厚(上下平均)を示す。また、肉厚差は、第1の壁部201と第2の壁部202との肉厚差(上下の肉厚差)を示す。
第1の壁部201側の平均肉厚(上側)は、図1(a)に示すインパネダクト200の第1の壁部201側の11〜19,20〜28の18カ所で測定した肉厚の平均値である。第2の壁部202側の平均肉厚(下側)は、図1(b)に示すインパネダクト200の第2の壁部202側の31〜38,39〜46の16カ所で測定した肉厚の平均値である。第1の壁部201側と第2の壁部202側との平均肉厚(上下平均)は、第1の壁部201側の平均肉厚(上側)と第2の壁部202側の平均肉厚(下側)とを平均した値である。
肉厚差は、第1の壁部201側の平均肉厚(上側)と第2の壁部202側の平均肉厚(下側)との差分である。
図10に示す変動係数は、図1(a)に示すインパネダクト200全体の肉厚の変動係数を示す。変動係数は、図1(a)に示すインパネダクト200の第1の壁部201側の11〜19,20〜28の18カ所で測定した肉厚と、図1(b)に示すインパネダクト200の第2の壁部202側の31〜38,39〜46の16カ所で測定した肉厚と、からなる計34カ所の測定値から算出された標準偏差を、上述した第1の壁部201側と第2の壁部202側との平均肉厚で除算した値である(変動係数=標準偏差/平均肉厚)。
<実施例1>
実施例1のインパネダクト200は、図10に示すように、インパネダクト200を構成する第2の壁部202側の平均肉厚(下側)は0.900mmであり、第1の壁部201側(上側)の平均肉厚は1.020mmであり、第1の壁部201側と第2の壁部202側との平均肉厚(上下平均)は、0.960mmであった。また、第1の壁部201と第2の壁部202との肉厚差(上下の肉厚差)は、0.120mmであった。
また、実施例1のインパネダクト200全体の肉厚の変動係数は、0.271であった。
<実施例2>
実施例2のインパネダクト200は、図10に示すように、インパネダクト200を構成する第2の壁部202側の平均肉厚(下側)は0.682mmであり、第1の壁部201側(上側)の平均肉厚は0.808mmであり、第1の壁部201側と第2の壁部202側との平均肉厚(上下平均)は、0.745mmであった。また、第1の壁部201と第2の壁部202との肉厚差(上下の肉厚差)は、0.126mmであった。
また、実施例2のインパネダクト200全体の肉厚の変動係数は、0.266であった。
<実施例3>
実施例3のインパネダクト200は、図10に示すように、インパネダクト200を構成する第2の壁部202側の平均肉厚(下側)は0.580mmであり、第1の壁部201側(上側)の平均肉厚は0.710mmであり、第1の壁部201側と第2の壁部202側との平均肉厚(上下平均)は、0.645mmであった。また、第1の壁部201と第2の壁部202との肉厚差(上下の肉厚差)は、0.130mmであった。
また、実施例3のインパネダクト200全体の肉厚の変動係数は、0.260であった。
<実施例4>
実施例4のインパネダクト200は、図10に示すように、インパネダクト200を構成する第2の壁部202側の平均肉厚(下側)は0.495mmであり、第1の壁部201側(上側)の平均肉厚は0.574mmであり、第1の壁部201側と第2の壁部202側との平均肉厚(上下平均)は、0.535mmであった。また、第1の壁部201と第2の壁部202との肉厚差(上下の肉厚差)は、0.079mmであった。
また、実施例4のインパネダクト200全体の肉厚の変動係数は、0.252であった。
<実施例5>
実施例5のインパネダクト200は、図10に示すように、インパネダクト200を構成する第2の壁部202側の平均肉厚(下側)は0.497mmであり、第1の壁部201側(上側)の平均肉厚は0.770mmであり、第1の壁部201側と第2の壁部202側との平均肉厚(上下平均)は、0.634mmであった。また、第1の壁部201と第2の壁部202との肉厚差(上下の肉厚差)は、0.273mmであった。
また、実施例5のインパネダクト200全体の肉厚の変動係数は、0.250であった。
<比較例1>
比較例1のインパネダクト200は、上述した図2〜図6に示す成形方法において、押出スリットから押し出される熱可塑性樹脂シートPの押出速度と、一対のローラ30による熱可塑性樹脂シートPの送出速度と、の関係を適宜変更し、熱可塑性樹脂シートPの厚みを適宜調整し、図1に示すインパネダクト200の重量が731gとなるように成形した。
比較例1のインパネダクト200は、図10に示すように、インパネダクト200を構成する第2の壁部202側の平均肉厚(下側)は0.490mmであり、第1の壁部201側(上側)の平均肉厚は0.820mmであり、第1の壁部201側と第2の壁部202側との平均肉厚(上下平均)は、0.655mmであった。また、第1の壁部201と第2の壁部202との肉厚差(上下の肉厚差)は、0.330mmであった。
また、比較例1のインパネダクト200全体の肉厚の変動係数は、0.260であった。
<比較例2>
比較例2のインパネダクト200は、パリソンブロー成形方法を用いて図1に示すインパネダクト200の重量が1130gとなるように成形した。
比較例2のインパネダクト200は、図10に示すように、インパネダクト200を構成する第2の壁部202側の平均肉厚(下側)は1.012mmであり、第1の壁部201側(上側)の平均肉厚は1.284mmであり、第1の壁部201側と第2の壁部202側との平均肉厚(上下平均)は、1.148mmであった。また、第1の壁部201と第2の壁部202との肉厚差(上下の肉厚差)は、0.272mmであった。
また、比較例2のインパネダクト200全体の肉厚の変動係数は、0.326であった。
<比較結果>
実施例1〜実施例5と、比較例1と、を比較すると、第1の壁部201の平均肉厚と第2の壁部202の平均肉厚との肉厚差が小さいほど、図1に示すインパネダクト200のフランジ間隔の変化に与える影響が小さいことが判明した。例えば、肉厚差が最も小さい実施例4の場合は、フランジ間隔の変化が最も小さく、肉厚差が最も大きい比較例1の場合は、フランジ間隔の変化が最も大きいことが判明した。
また、実施例1〜実施例5を比較すると、第1の壁部201側と第2の壁部202側との平均肉厚(上下平均)が薄いほど、図1に示すインパネダクト200の開口部変化に与える影響が小さいことが判明した。例えば、平均肉厚が最も小さい実施例4の場合は、開口部変化が最も小さく、平均肉厚が最も大きい実施例1の場合は、開口部変化が最も大きいことが判明した。
また、実施例5と、比較例2と、を比較すると、比較例2は、第1の壁部201の平均肉厚と第2の壁部202の平均肉厚との肉厚差が小さい(0.3mm以下)が、インパネダクト200全体の肉厚の変動係数が大きいため(0.3超)、図1に示すインパネダクト200のフランジ間隔の変化に与える影響が大きく、且つ、開口部変化に与える影響も大きいことが判明した。
実施例1〜5、比較例1、2の結果から、インパネダクト200全体の肉厚の変動係数が0.3以下であり、且つ、第1の壁部201の平均肉厚と第2の壁部202の平均肉厚との肉厚差が0.3mm以下であることで、図1に示すインパネダクト200のフランジ間隔の変化に与える影響が小さく、且つ、開口部変化に与える影響が小さいことが判明した。このため、上記条件を満足することで、成形したインパネダクト200に反りが発生しないようにすることができる。
また、第1の壁部201の肉厚と第2の壁部202の肉厚との平均肉厚(上下平均)が0.7mmを越えている実施例1、2に比べて、当該平均肉厚が0.7mm以下である実施例3、4は、開口部の変化が顕著に小さくなっている。このことから、第1の壁部201の肉厚と第2の壁部202の肉厚との平均肉厚が0.7mm以下であることが好ましい。これにより、ダクト内外面の冷却時間差が小さいため、熱に対して形状を安定することができ、成形したインパネダクト200に反りが発生しないようにすることができる。
<本実施形態のインパネダクト200の作用・効果>
このように、本実施形態のインパネダクト200は、インパネダクト200全体の肉厚の変動係数が0.3以下であり、且つ、第1の壁部201の平均肉厚と第2の壁部202の平均肉厚との肉厚差が0.3mm以下であることで、成形したインパネダクト200に反りが発生しないようにすることができる。
なお、本実施形態のインパネダクト200は、上述したシートダイレクト成形で成形することが好ましい。シートダイレクト成形で成形する場合は、第1の壁部201の肉厚と第2の壁部202の肉厚との双方を調整することができるため、第1の壁部201と第2の壁部202との平均ブロー比の差が大きい場合(例えば、0.05以上の場合)でも、双方の肉厚差を小さくすることができるため、冷熱サイクルによるインパネダクト200の変形を抑制することができる。これにより、冷熱サイクルによるインパネダクト200の変形が少なく、且つ、自由度の高い形状のインパネダクト200を成形することができる。
例えば、本実施形態のインパネダクト200をパリソンブロー成形により成形する場合は、第1の壁部201と第2の壁部202との平均ブロー比の差が大きい場合(例えば、0.05以上の場合)は、第1の壁部201の肉厚と第2の壁部202の肉厚との差が顕著になり、冷熱サイクルによるインパネダクト200の変形も顕著になる。
これに対し、本実施形態のインパネダクト200をシートダイレクト成形で成形する場合は、第1の壁部201の肉厚と第2の壁部202の肉厚との双方を調整することができるため、第1の壁部201と第2の壁部202との平均ブロー比の差が大きい場合(例えば、0.05以上の場合)でも、双方の肉厚差を小さくすることができるため、冷熱サイクルによるインパネダクト200の変形を抑制することができる。特に平均ブロー比の差が0.1以上の場合は変形抑制効果が大きい。
なお、本実施形態においてブロー比は、例えば、図11に示すように、中空延伸方向垂直断面において、一方のパーティングラインL1と他方のパーティングラインL2とを結ぶ線分の長さAに対する、この線分と、この線分から最も離れた内壁面との間の距離Bの割合(B/A)である。図11の場合は、断面の形状に凹凸が見られる場合は、ブロー比は、0.5となる。また、平均ブロー比は、樹脂成形品の中空延伸方向に約100mmの等間隔で測定したブロー比の平均値である。
また、冷却された空気や清浄な空気を供給するダクトにおいては、ダクト周辺の壁面に沿わせたり、周辺位置を避けて空気の供給通路を設けたりする必要があるため、その供給通路が曲がりくねった形状であることが少なくない。このため、ブロー成形されたダクトの壁面において、ブロー比の高い部分と低い部分とのギャップがはげしくなり、薄肉部の発生、さらにはピンホールの発生をきたす問題がある。その結果、ブロー比のギャップがはげしい場合は、ピンホール防止のため、ブロー成形の設定肉厚を全体的に厚くすることが行われている。特に、発泡性樹脂をブロー成形する場合は、非発泡の樹脂の場合に比べて、パリソンの伸びが低下するため、ピンホール防止を目的とした厚肉の設定肉厚を余儀なく行っている。その結果、第1の壁部201と第2の壁部202との平均ブロー比の差が大きい場合は、ダクトの肉厚差が大きくなり、ダクトに反りが発生してしまう場合がある。
これに対し、シートダイレクト成形でダクトを成形する場合は、第1の壁部201の肉厚と第2の壁部202の肉厚との双方を調整することができるため、第1の壁部201と第2の壁部202との平均ブロー比の差が大きい場合でも、双方の肉厚差を小さくすることができるため、ダクトに反りが発生しないようにすることができる。
なお、上述した実施形態及び実施例は、本発明の好適な実施形態及び実施例であり、上記実施形態及び実施例のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
P 熱可塑性樹脂シート
200 インパネダクト
201 第1の壁部
202 第2の壁部
PL パーティングライン
203 屈曲部
1 成形装置
12 押出装置
14 型締装置
16 ホッパ
18 シリンダ
20 電動モータ
22 アキュムレータ
24 プランジャ
28 Tダイ
30 ローラ
32 分割金型
33 型枠
116 キャビティ
117 カバー
118 ピンチオフ部
120 真空吸引室
122 吸引穴
151 密閉中空部

Claims (2)

  1. パーティングラインを介して接着される第1の壁部と第2の壁部とを有して構成するダクトであって、
    前記第1の壁部の平均肉厚と前記第2の壁部の平均肉厚との差が0.3mm以下であり、
    ダクト全体の肉厚の変動係数が0.3以下であることを特徴とするダクト。
  2. ダクト全体の平均肉厚が0.7mm以下であることを特徴とする、請求項1記載のダクト。
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