JP2012207188A - トリメチロールアルカンのアルキルジエーテルアルキルモノエステル化合物、潤滑油基油、潤滑油、グリース基油、およびグリース - Google Patents

トリメチロールアルカンのアルキルジエーテルアルキルモノエステル化合物、潤滑油基油、潤滑油、グリース基油、およびグリース Download PDF

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Abstract

【課題】粘度指数が高く、低温流動性にも優れる化合物、この化合物を配合してなる潤滑油基油、グリース基油、およびこれらを用いた潤滑油、グリースを提供する。
【解決手段】トリメチロールアルカンのアルキルジエーテルアルキルモノエステル化合物であって、下記一般式(1)で表されることを特徴とするアルキルジエーテルアルキルモノエステル化合物。
Figure 2012207188

(前記式において、アルキル基R、R’の炭素数は、各々独立に5から18までである。R”は水素、または炭素数が5以下のアルキル基である。)
【選択図】なし

Description

本発明は、トリメチロールアルカンのアルキルジエーテルアルキルモノエステル化合物、これを配合してなる潤滑油基油、潤滑油、グリース基油、およびグリースに関する。
潤滑油は、低温から高温に至るまで幅広い温度環境下で使用される。それ故、例えばハードディスクドライブなどのモーターに用いられる流体軸受や含浸軸受には、高粘度指数で低温流動性の良好な潤滑油が求められる。また、低温から高温に至る幅広い温度範囲で使用されるグリースにも高粘度指数で低温流動性の良好なグリース基油が求められる。
このようなニーズに答えるべく、種々の基油が提案されている。例えば、高粘度指数と低温流動性を兼ね備えた所定のジエステル系基油が潤滑油用あるいはグリース用として提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
特開2003−321691号公報 特開2010−275471号公報 特開2007−039496号公報
しかしながら、特許文献1〜3に記載された基油を用いても、高粘度指数と低温流動性の双方を十分に満たす潤滑油やグリースを提供することは困難である。
本発明は、粘度指数が高く、低温流動性にも優れる化合物、この化合物を配合してなる潤滑油基油、グリース基油、およびこれらを用いた潤滑油、グリースを提供することを目的とする。
前記課題を解決すべく、本発明は以下のようなトリメチロールアルカンのアルキルジエーテルアルキルモノエステル化合物、潤滑油基油、潤滑油、グリース基油、およびグリースを提供するものである。
〔1〕トリメチロールアルカンのアルキルジエーテルアルキルモノエステル化合物であって、下記一般式(1)で表されることを特徴とするアルキルジエーテルアルキルモノエステル化合物。
Figure 2012207188
(前記式において、アルキル基R、R’の炭素数は、各々独立に5から18までである。R”は水素、または炭素数が5以下のアルキル基である。)
〔2〕上述の〔1〕に記載のアルキルジエーテルアルキルモノエステル化合物において、当該化合物の総炭素数が24から42までであることを特徴とするアルキルジエーテルアルキルモノエステル化合物。
〔3〕上述の〔1〕または〔2〕に記載のアルキルジエーテルアルキルモノエステル化合物において、前記トリメチロールアルカンがトリメチロールプロパンまたはトリメチロールエタンであることを特徴とするアルキルジエーテルアルキルモノエステル化合物。
〔4〕上述の〔1〕から〔3〕までのいずれか1つに記載のアルキルジエーテルアルキルモノエステル化合物を配合してなることを特徴とする潤滑油基油。
〔5〕上述の〔4〕に記載の潤滑油基油を配合してなることを特徴とする潤滑油。
〔6〕上述の〔5〕に記載の潤滑油が含油軸受用または流体軸受用であることを特徴とする潤滑油。
〔7〕上述の〔1〕から〔3〕までのいずれか1つに記載のアルキルジエーテルアルキルモノエステル化合物を配合してなることを特徴とするグリース基油。
〔8〕上述の〔7〕に記載のグリース基油を配合してなることを特徴とするグリース。
本発明の新規なアルキルジエーテルアルキルモノエステル化合物によれば、高粘度指数で低温流動性に優れる。それ故、潤滑油の基油として有用であり、含油軸受用あるいは流体軸受用の潤滑油として好適に使用できる。また、グリース用基油およびそれを配合して成るグリースとしても有用である。
実施例における2,2−ビス(ノニルオキシメチル)ブタン―1−オール(中間体)のHNMRチャート。 実施例における2,2−ビス(ノニルオキシメチル)ブタン―1−オール(中間体)のIRチャート。 実施例におけるデカン酸2,2−ビス(ノニルオキシメチル)ブチルエステルのH NMRチャート。 実施例におけるデカン酸2,2−ビス(ノニルオキシメチル)ブチルエステルのIRチャート。
本発明は、以下の一般式(1)で表されるトリメチロールアルカンのアルキルジエーテルアルキルモノエステル化合物を提供するものである。
Figure 2012207188
式(1)において、アルキル基R、R’の炭素数は独立に5から18までである。アルキル基Rの炭素数が4以下であると粘度指数が低くなるおそれがある。
一方、アルキル基Rの炭素数が19以上であると動粘度が上昇し、低温度領域での流動性が悪くなり、場合によっては固化してしまうおそれがある。それ故、アルキル基Rの好ましい炭素数は8から16までである。
また、アルキル基R’の炭素数が4以下であると粘度指数が低くなるおそれがあり、万一加水分解を起こしたとき、低級脂肪酸を生成して腐食の原因となるおそれがある。一方、アルキル基R’の炭素数が19以上であると動粘度が上昇し、低温度領域での流動性が悪くなり、場合によっては固化してしまうおそれがある。それ故、アルキル基R’の特に好ましい炭素数は8から16までである。
ここで、R”は、水素、または炭素数が5以下のアルキル基であり、好ましくは炭素数が1または2のアルキル基である。すなわち、式(1)のトリメチロールアルカン構造がトリメチロールエタンまたはトリメチロールプロパンの構造であることが好ましい。R”の炭素数が6以上であると動粘度が高くなるおそれがあり、また原料の入手も困難である。
上述した各アルキル基は直鎖であることが粘度指数向上の点で好ましいが、本発明の効果を阻害しなければ分岐を有していてもよい。
式(1)の化合物における総炭素数は24から42までであることが好ましい。この総炭素数が23以下であると粘度指数の低下と高温度領域での蒸発性が高くなるおそれがある。一方、総炭素数が43以上であると動粘度が上昇し、低温度領域での流動性が悪くなり、場合によっては固化してしまうおそれがある。それ故、総炭素数は26から36までであることが特に好ましい。
上述した式(1)の化合物は、例えば以下の一般式(2)で表される中間体を経由することで容易に製造することができる。
Figure 2012207188
(前記式において、RとR”は式(1)と同様である。)
この式(2)で表される中間体は、例えば、トリメチロールアルカンとアルキルブロミドとを相関移動触媒の存在下、濃アルカリ溶液中で加熱攪拌することによって製造することができる。好ましい反応条件や同定法は以下の通りである。
温度:40〜95℃(より好ましくは60〜80℃)
時間:1〜24時間(8時間程度が好ましい)
触媒:相関移動触媒(テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトライソプロピルアンモニウムブロマイド等)
溶媒:48質量%以上の濃度の水酸化ナトリウム水溶液
(反応中に固体の水酸化ナトリウムを追加補充してもよい。)
同定:反応の推移は、ガスクロマトグラフィで確認することができる。
(質量分析、NMR分析、IR分析などにより詳細な構造を同定できる。)
そして、上述の製造法により得られたモノエーテル、ジエーテル、トリエーテルの混合物からジエーテル(中間体、式(2))を蒸留分離して式(1)の化合物の製造に使用する。具体的には、このジエーテルと、アルキルカルボン酸とを酸触媒の存在下、加熱攪拌してエステル化反応を行わせ、生成する水分を除去すればよい。
また当該ジエーテル(ジエーテルモノアルコール)と、アルキルカルボン酸クロリドとを塩基の存在下室温で反応させても収率よく式(1)の化合物を得ることができる。
いずれの反応においても、得られた化合物は不純物を含むが、蒸留精製することにより潤滑油基油あるいはグリース基油として好ましく使用できる。
以下に、ジエーテルモノアルコールのエステル化反応について好ましい例を2つ挙げる。
(ジエーテルモノアルコール(式(2))とアルキルカルボン酸との反応)
温度 :100〜190℃(好ましくは120〜180℃)
時間 :1〜24時間(8時間程度がより好ましい)
触媒 :硫酸、チタン酸テトラブチル、チタン酸テトライソプロピル、チタン酸テトラエチル
溶媒 :トルエン、キシレン、トリメチルベンゼンなど
反応器:ディーンシュタルク装置を使用して脱水
同定 :反応の推移はガスクロマトグラフィで確認することができる。
(質量分析、NMR分析、IR分析などにより同定できる。
(ジエーテルモノアルコール(式(2))とアルキルカルボン酸クロリドとの反応)
温度 :10〜60℃(より好ましくは20〜40℃)
時間 :1〜24時間(4時間程度がより好ましい)
塩基 :N,N−ジメチルアニリン、トリエチルアミンなど
溶媒 :テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、ジメチルエーテルなど
同定 :反応の推移はガスクロマトグラフィで確認することができる。
(質量分析、NMR分析、IR分析などにより同定できる。)
上述した式(1)の化合物は、高粘度指数で低温流動性に優れる。それ故、潤滑油の基油として有用であり、含油軸受用あるいは流体軸受用の潤滑油として好適に使用できる。また、グリース用基油およびそれを配合してなるグリースとしても有用である。
また、本発明の化合物を潤滑油あるいはグリースの基油として使用する場合、必要に応じて、潤滑油用あるいはグリース用の添加剤を配合することができる。例えば、酸化防止剤、防錆剤、固体潤滑剤、充填剤、油性剤、金属不活性化剤、耐水剤、極圧剤、耐摩耗剤、粘度指数向上剤、着色剤、および粘度調節剤等が挙げられる。
極圧剤としては、ジアルキルジチオリン酸亜鉛,ジアルキルジチオリン酸モリブデン,無灰系ジチオカーバメートや亜鉛ジチオカーバメート、モリブデンジチオカーバメートなどのチオカルバミン酸類、硫黄化合物(硫化油脂、硫化オレフィン、ポリサルファイド、硫化鉱油、チオリン酸類、チオテルペン類、ジアルキルチオジピロピオネート類等)、リン酸エステル、亜リン酸エステル(トリクレジルホスフェート、トリフェニルフォスファイト等)などが挙げられる。油性剤としては、アルコール類、カルボン酸類、グリセライド類、エステル類などが挙げられる。これらの配合量としては、0.1質量%以上、5質量%以下程度(潤滑油あるいはグリース全量基準)が好ましい。
酸化防止剤としては、例えばアルキル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキル化フェニル−α−ナフチルアミン等のアミン系酸化防止剤、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤、硫黄系・ZnDTPなどの過酸化物分解剤等が挙げられ、これらは、通常0.05質量%以上10質量%以下の割合で使用される。
防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、ステアリン酸亜鉛、コハク酸エステル、コハク酸誘導体、チアジアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール誘導体、亜硝酸ナトリウム、石油スルホネート、ソルビタンモノオレエート、脂肪酸石けん、およびアミン化合物等が挙げられる。
固体潤滑剤としては、ポリイミド、PTFE、黒鉛、金属酸化物、窒化硼素、メラミンシアヌレート(MCA)、および二硫化モリブデン等が挙げられる。
また粘度調節剤としてDIOA(ジイソオクチルアジペート)、DIDA(ジイソデシルアジペート)などの潤滑油基油を1質量%以上30質量%以下程度混合して使用してもよい。
次に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの記載内容に何ら制限されるものではない。
表1に、上述の実施形態に記載した方法で得られた製造中間体の具体例と物性を参考までに示す。
Figure 2012207188
以下に、一例として中間体2の具体的製造法を記載する。
(2,2−ビス(ノニルオキシメチル)ブタン―1−オールの製造)
攪拌機、温度計、冷却管、ガス導入管を備えた2Lの反応器に窒素気流下、トリメチロールプロパン107.3g(0.8モル)およびn−ノニルブロマイド249g(1.2モル)、テトラブチルアンモニウムブロミド11.4gを仕込み、50質量/体積%水酸化ナトリウム水溶液360gを加えて、70〜80℃で4時間加熱、攪拌した。反応終了後、一昼夜、放冷静置して白色結晶を析出させ、液層をデカンテーションで分液ロートに移した。下層のアルカリ層を分離除去し、有機層を飽和食塩水400mL、希硫酸水溶液50mLで洗浄し、蒸留水で中性になるまで水洗した後、得られた有機層190gを硫酸マグネシウムで乾燥した。
この有機層をシリカゲル50gのカラム層を通した後、減圧蒸留にて分留した成分の質量分析、NMR分析、IR分析を行い、目的物である2,2−ビス(ノニルオキシメチル)ブタン―1−オールであることを確認した(質量分析結果 m/z=386)。得られた量は、110g(0.28モル)であった(収率=47%)。
この化合物の、H NMRチャートを図1に、IRチャートを図2に示す。
表2に、上述の実施形態に記載した方法で得られた式(1)の化合物および比較用のジエステル化合物について物性を示す。
Figure 2012207188
以下に、一例として化合物2の具体的製造法を記載する。
(デカン酸2,2−ビス(ノニルオキシメチル)ブチルエステルの合成)
攪拌機、温度計、冷却管、ガス導入管付滴下ロートを備えた1L三口フラスコに、2,2−ビス(ノニルオキシメチル)ブタン―1−オール73.4g(0.19モル)、N,N−ジメチルアニリン26.7g(0.22モル)、テトラヒドロフラン150mLを仕込み、窒素気流下、室温で塩化デシル38.1g(0.2モル)を滴下し、攪拌した。滴下後45℃に加熱し、5時間攪拌した。反応後、少量の蒸留水を加えて、生成した白色固形物を溶解させ、分液ロートに移して、水層を分離後、有機層にテトラヒドロフラン50mLを加えて飽和食塩水200mL、希硫酸20mLでそれぞれ洗浄し、蒸留水で中性になるまで水洗した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。エバポレーターで溶媒を除去した後、混合物100gから減圧蒸留にて分留した成分の質量分析、NMR分析、IR分析を行い、目的物のエステルであることを確認した(質量分析結果 m/z=540)。得られた量は61.8g(0.114モル)であった(収率=60%)。
この化合物のH NMRチャートを図3に、IRチャートを図4に示す。
表2より、本発明の化合物と、本発明の所定の構造を有しない比較化合物とを比較した場合、本発明の化合物のほうが高粘度指数であり、低温流動性にも優れることが分かる。それ故、本発明の化合物は、潤滑油やグリースの基油として有用であることも理解できる。

Claims (8)

  1. トリメチロールアルカンのアルキルジエーテルアルキルモノエステル化合物であって、
    下記一般式(1)で表される
    ことを特徴とするアルキルジエーテルアルキルモノエステル化合物。
    Figure 2012207188
    (前記式において、アルキル基R、R’の炭素数は、各々独立に5から18までである。R”は水素、または炭素数が5以下のアルキル基である。)
  2. 請求項1に記載のアルキルジエーテルアルキルモノエステル化合物において、
    当該化合物の総炭素数が24から42までである
    ことを特徴とするアルキルジエーテルアルキルモノエステル化合物。
  3. 請求項1または請求項2に記載のアルキルジエーテルアルキルモノエステル化合物において、
    前記トリメチロールアルカンがトリメチロールプロパンまたはトリメチロールエタンである
    ことを特徴とするアルキルジエーテルアルキルモノエステル化合物。
  4. 請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のアルキルジエーテルアルキルモノエステル化合物を配合してなる
    ことを特徴とする潤滑油基油。
  5. 請求項4に記載の潤滑油基油を配合してなる
    ことを特徴とする潤滑油。
  6. 請求項5に記載の潤滑油が含油軸受用または流体軸受用である
    ことを特徴とする潤滑油。
  7. 請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のアルキルジエーテルアルキルモノエステル化合物を配合してなる
    ことを特徴とするグリース基油。
  8. 請求項7に記載のグリース基油を配合してなる
    ことを特徴とするグリース。
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