JP2012206867A - 三酸化モリブデンの製造方法 - Google Patents
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【解決手段】モリブデン含有液からリンおよびバナジウムを除去する除去工程と、リンおよびバナジウムが除去された処理液に酸を添加してモリブデン酸塩を沈殿分離するモリブデン酸塩回収工程と、モリブデン酸塩回収工程において回収されたモリブデン酸塩を焼成する焼成工程と、を順に行う製造する方法であって、除去工程において、モリブデン含有液に鉄塩とマグネシウム塩とを添加する。不純物の少ない三酸化モリブデンを製造することができる。そして、一工程でバナジウムとリンを除去できるので、作業工程を少なくでき処理効率を向上させることができる。しかも、同一設備で処理できるので、モリブデン含有液から低下する三酸化モリブデンを製造する設備が大型化することを防ぐことができる。
【選択図】図1
Description
廃触媒からバナジウムやモリブデンを回収する方法として、有価金属を水に溶解する可溶性塩としてから回収することが行われている(例えば、特許文献1)。
具体的には、廃触媒と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩(以下、両者を含めてソーダ灰という)とを、酸素が存在する雰囲気においてロータリーキルンによって焙焼する。すると、廃触媒中のモリブデンは、酸化しかつソーダ灰と反応(ソーダ化反応)して可溶性塩(水溶性化合物)となる。この可溶性塩となった有価金属を含む焙焼物を水浸出すると、モリブデンおよびバナジウムを含有する水溶液が得られるので、この水溶液について溶媒抽出を行えば、バナジウムとモリブデンを分離できる。そして、モリブデンを含有する水相について、塩析・酸沈法などを適用すればモリブデン酸アンモニウムの沈殿を生じさせることができ、このモリブデン酸アンモニウムの沈殿を焼成することによって、三酸化モリブデン(MoO3)の製品(固形物)を得ることができる。
しかも、リンは沈殿として除去する一方、バナジウムはイオン交換法で除去するので、バナジウムの除去とリンの除去を同じ設備で行うことができない。したがって、バナジウムの除去とリンの除去を行うため設備を設けなければならず、設備が大型化するという問題も生じる。
第2発明の三酸化モリブデンの製造方法は、第1発明において、前記除去工程において、モリブデン含有液に対して、鉄塩を添加した後、マグネシウム塩を添加することを特徴とする。
第3発明の三酸化モリブデンの製造方法は、第1または第2発明において、前記除去工程では、モリブデン含有液のpHを7.5以上、かつ、温度を30℃以下、に維持することを特徴とする。
第4発明の三酸化モリブデンの製造方法は、第1、第2または第3発明において、前記モリブデン酸塩回収工程では、処理液のpHを0.5以上2.8以下、かつ、温度を60℃以上、に維持することを特徴とする。
第2発明によれば、モリブデン含有液に対して、鉄塩を添加した後、マグネシウム塩を添加するので、バナジウムおよびリンをより効率よく除去することができる。
第3発明によれば、pHが高いので、鉄塩を添加したことによるバナジウム除去効果を高くすることができる。また、温度を常温程度に保つので、バナジウム塩およびリン酸塩の溶解度を抑えることができる。すると、鉄塩とマグネシウム塩を添加することによって形成されたバナジウム塩およびリン酸塩を、より析出させやすくすることができる。
第4発明によれば、モリブデン酸塩回収工程におけるモリブデン酸塩の沈殿を促進することができるので、モリブデン酸塩の回収効率を高くすることができる。
本発明の三酸化モリブデンの製造方法は、モリブデンが溶存しているモリブデン含有液を処理して、モリブデン含有液中に溶存するモリブデンから三酸化モリブデンを製造する方法であり、モリブデン含有液中にリンおよびバナジウムが含有されていても、高純度の三酸化モリブデンを製造できるようにしたことに特徴を有している。
まず、本発明の三酸化モリブデンの製造方法において、モリブデン含有液から三酸化モリブデンを製造する工程を、図1に基づいて簡単に説明する。
図1に示すように、まず、モリブデン含有液(以下、モリブデン始液という)から、リンおよびバナジウムを除去する除去工程を行う。この除去工程では、除去処理槽内に収容されているモリブデン始液に対して、リンおよびバナジウムのイオンと反応する物質を添加する。具体的には、モリブデン始液中のリンおよびバナジウムのイオンと反応して、リンおよびバナジウムの沈殿物を形成する物質を、除去処理槽内に供給する。すると、除去処理槽内にリンおよびバナジウムの沈殿物が形成されるので、リンおよびバナジウムの沈殿物を除去すれば、リンおよびバナジウムをほとんど含まない液(以下、処理液という)が形成される。
つぎに、処理液からモリブデン酸塩を沈殿分離するモリブデン酸塩回収工程を行う。このモリブデン酸塩回収工程では、回収処理槽内に収容されている処理液に対して、酸を添加する。すると、回収処理槽内にモリブデン酸塩の沈殿物が形成されるので、処理液と沈殿物とを分離すれば、モリブデン酸塩が沈殿物として回収される。
モリブデン酸塩回収工程において回収されたモリブデン酸塩の沈殿物は、焼成炉において焼成される。すると、モリブデン酸塩が分解して、固体の三酸化モリブデンが製造される。
しかも、モリブデン始液に含まれるリンおよびバナジウムを、除去工程において、リン酸塩およびバナジウム塩として除去できるので、製造された三酸化モリブデンを不純物が少なく、V≦0.007g/L、P≦0.0005g/Lを満たす製品とすることができる。
本発明の三酸化モリブデンの製造方法では、除去工程において、リンおよびバナジウムを沈殿物として同時に除去することができるという特徴を有する。
4(NH4)VO4+2FeCl3+2NH4OH→Fe2V4O13↓+6NH4Cl+H2O
(NH4)3PO4+FeCl3→FePO4↓+3NH4Cl
(NH4)3PO4+MgCl2+6H2O→NH4MgPO4・6H2O↓+2NH4Cl
(NH4)3PO4+MgSO4+6H2O→NH4MgPO4・6H2O↓+(NH4)2SO4
しかも、一つの除去処理槽でバナジウムとリンの両方を除去できるので、モリブデン含有液から三酸化モリブデンを製造する設備が大型化することを防ぐことができる。
また、モリブデン始液に対して薬剤添加して攪拌するだけなので、設備も簡素化できるし、連続処理も容易になる。
したがって、鉄塩によってバナジウムと一部のリンを除去した後、残留しているリンをマグネシウム塩によって除去するようにすれば、マグネシウム塩の投与量を必要最低限の量に抑えることができるので、バナジウムおよびリンをより効率よく除去することができる。
なお、モリブデン始液のpHを調整する方法はとくに限定されないが、モリブデン始液に添加する塩酸およびアンモニアの量を調整することによって調整することができる。
また、鉄塩を添加した後、マグネシウム塩を添加する場合には、鉄塩を添加してから反応終了までの時間が上記時間となるようにすればよいが、鉄塩を添加してバナジウムおよびリンと反応させる時間は15〜60分程度が好ましく、30程度がより好ましい。そして、マグネシウム塩を添加してリンと反応させる時間は15〜60分程度が好ましく、30程度がより好ましい。
モリブデン酸塩回収工程では、除去工程においてバナジウムおよびリンが除去された処理液からモリブデンをモリブデン酸塩として回収するが、モリブデン酸塩回収工程における処理液のpHは、2.8以下が好ましい。pHが2.8よりも高くなると、モリブデン酸塩の粒径が小さくなり、沈殿の固液分離が困難になることおよび、モリブデン酸が沈殿せず液中のモリブデン濃度が高くなりモリブデンのロスが大きくなる。
また、処理液のpHの下限は、とくに限定されないが、pHの下限が低くなりすぎるとモリブデン酸塩の粒径が大きくなり、このモリブデン酸塩を焼成して得られる三酸化モリブデンの粒径も大きくなる。粒径も大きい三酸化モリブデンは、嵩張らないという利点があるので、例えば、pH1程度で製造された三酸化モリブデンは、モリブデンメタルを製造する原料に適している。
一方、粒径の大きい三酸化モリブデンは溶解性が低下するので、三酸化モリブデンを溶かして使用する場合に不具合が生じる。
したがって、モリブデン酸塩回収工程における処理液のpHは、2.8以下が好ましく、0.5〜2.8がより好ましく、0.8〜2.8がさらに好ましい。なお、三酸化モリブデンの溶解性を考えれば、処理液のpHは、1.5〜2.8が好ましい。
また、処理液の温度の上限はとくに限定されず、処理液が沸騰する沸点以下であれば、モリブデン酸塩回収工程は行うことができる。
焼成工程では、回収されたモリブデン酸塩を、例えば、ロータリーキルンなどの焼成炉に投入して焼成する。焼成する温度は、モリブデン酸塩が分解されモリブデン酸塩に含まれるアンモニアを除去することができる温度であればよい。例えば、焼成炉内の温度を400度以上とし、焼成時間を3時間以上、好ましくは4時間程度とすれば、アンモニアが完全に除去されるので高純度の三酸化モリブデンを確実に製造することができる。
実験では、添加する鉄塩およびマグネシウム塩の量を変化させた場合のモリブデン含有液に残留するバナジウムおよびリンの量を確認した。
モリブデン含有液:
Mo含有量35.6g/L、V含有量0.046g/L、P含有量0.039g/L
鉄塩 :塩化第二鉄(FeCl3)
マグネシウム塩:塩化マグネシウム(MgCl2)
モリブデン含有液の終液pHおよび温度:pH9.0、温度23〜29℃
撹拌時間:60分
また、モリブデン含有液の終液pH(処理終了時における液のpH)は、pHの測定値に基づいて、pH9.0に維持されるように、塩酸またはアンモニアを適宜添加して調整した。
図3(A)に示すように、鉄塩を、モリブデン含有液に対して添加すると、鉄塩の添加量が1.25g/Lまでは、添加量を増やすことによってリンの残留量を減少させることができることが確認できる。
しかし、図3(A)示すように、マグネシウム塩を添加していない場合には、鉄塩を1.25g/L以上添加しても、リンの残留量を、不純物基準値であるP≦0.0005以下にすることはできなかったことが確認できる。
実験では、モリブデン含有液のpHまたは温度のいずれか一方を変化させた場合において、モリブデン含有液に残留するバナジウムおよびリンの量を確認した。
モリブデン含有液:
Mo含有量35.2g/L、V含有量0.044g/L、P含有量0.035g/L
鉄塩 :塩化第二鉄(FeCl3)、555g/L
モリブデン含有液の終液pH(温度を変化させる場合):pH9.0
モリブデン含有液の温度(pHを変化させる場合):温度60℃
撹拌時間:60分
また、モリブデン含有液の終液pHは、pHの測定値に基づいて、所定のpHに維持されるように、塩酸またはアンモニアを適宜添加して調整した。
さらに、モリブデン含有液の温度は、ヒータによる加熱を制御して調整した。
図3(C)および図5(A)に示すように、pHを6.85から増加させると、pHが高くなるに従って、バナジウムの残留量は減少していく。しかも、pHが7.0よりも高くなると、それまでよりもpHの増加に伴う残留量の減少割合が大きくなる。したがって、鉄塩によってモリブデン含有液からバナジウムを除去する上では、モリブデン含有液のpHは高い方が好ましいことが確認できる。
したがって、モリブデン含有液からバナジウムおよびリンを除去する上では、モリブデン含有液の温度は低い方が好ましいことが確認できる。
実験では、モリブデン含有液のpHを変化させた場合において、モリブデン含有液に残留するモリブデンの量を確認した。
モリブデン含有液:
Mo含有量42.4g/L、V含有量0.0003g/L、P含有量0.0006g/L
モリブデン含有液の温度:70℃、80℃
撹拌時間:180分
また、モリブデン含有液の終液pHは、pHの測定値に基づいて、所定のpHに維持されるように、塩酸またはアンモニアを適宜添加して調整した。
さらに、モリブデン含有液の温度は、ヒータによる加熱を制御して調整した。
図4に示すように、モリブデン含有液の温度に係わらず、pHが1.0〜3.0の間、より詳しく見ると、1.5〜2.8の間では、モリブデン含有液(母液)に残留するモリブデンの量が0.1g/Lよりも少なくなっており、モリブデンを99%以上回収できていることが確認できる。
一方、pHが3.0よりも高くなると、モリブデン含有液に残留するモリブデンの量が急激に多くなり、回収効率が大幅に低下していることが確認できる。
Claims (4)
- モリブデン含有液からリンおよびバナジウムを除去する除去工程と、
リンおよびバナジウムが除去された処理液に酸を添加してモリブデン酸塩を沈殿分離するモリブデン酸塩回収工程と、
モリブデン酸塩回収工程において回収されたモリブデン酸塩を焼成する焼成工程と、を順に行う製造方法であって、
除去工程において、モリブデン含有液に鉄塩とマグネシウム塩とを添加する
ことを特徴とする三酸化モリブデンの製造方法。 - 前記除去工程において、モリブデン含有液に対して、鉄塩を添加した後、マグネシウム塩を添加する
ことを特徴とする請求項1記載の三酸化モリブデンの製造方法。 - 前記除去工程では、
モリブデン含有液のpHを7.5以上、かつ、温度を30℃以下、に維持する
ことを特徴とする請求項1または2記載の三酸化モリブデンの製造方法。 - 前記モリブデン酸塩回収工程では、
処理液のpHを0.5以上2.8以下、かつ、温度を60℃以上、に維持する
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の三酸化モリブデンの製造方法。
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