JP2012193065A - 光学ガラス - Google Patents

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Abstract

【課題】(1)環境上好ましくない成分を含有しない、(2)低ガラス転移点を達成しやすい、(3)高屈折率特性を達成しやすい、(4)可視光透過率に優れている、(5)モールドプレス成形時の耐失透性に優れる、(6)耐侯性や化学耐久性に優れる、といった要求をすべて満足することが可能な光学ガラスを提供する。
【解決手段】ガラス組成として、モル%で、SnO 43.5〜90%、P+B+SiO 0.1〜56.5%を含有し、かつ、鉛成分、ヒ素成分およびフッ素成分を実質的に含有しないことを特徴とする光学ガラス。
【選択図】なし

Description

本発明は光学ガラスに関するものである。詳細には、各種光ディスクシステムの光ピックアップレンズ、ビデオカメラ、一般のカメラの撮影用レンズ等に好適な光学ガラスに関する。
CD、MD、DVD、その他各種光ディスクシステムの光ピックアップレンズ、ビデオカメラ、一般のカメラの撮影用レンズは、一般に以下のようにして作製される。
まず、溶融ガラスをノズルの先端から滴下して、液滴状ガラスを作製し(液滴成形)、必要に応じて、研削、研磨、洗浄してプリフォームガラスを作製する。または、溶融ガラスを急冷鋳造して、一旦ガラスインゴットを作製し、研削、研磨、洗浄してプリフォームガラスを作製する。続いて、プリフォームガラスを加熱して軟化し、精密加工を施した金型によって加圧成形し、金型の表面形状をガラスに転写してレンズを作製する。このような成形方法は、一般にモールドプレス成形法(または、精密プレス成形法)と呼ばれている。
モールドプレス成形法を採用する場合、金型の劣化を抑制しつつ、レンズを精密にモールドプレス成形するために、なるべく低いガラス転移点(例えば、600℃以下)を有するガラスが求められており、種々のガラスが提案されている。
一般に、ガラス転移点の低い光学ガラスを作製するためには、アルカリ成分等の、屈折率や、耐侯性または化学耐久性の低下の原因となる成分を多く添加する必要がある。そこで、アルカリ成分等の添加量が少なくても、低ガラス転移点を達成することが可能なガラスとして、ビスマス系ガラスやリン酸塩系ガラスが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
特開2007−106625号公報 特開2001−048574号公報 特開平10−297936号公報
特許文献1には、400℃前後の低ガラス転移点を有するBi−B−SiO系ガラスが記載されているが、Biを多く含有するガラスは、黄色に着色しやすく高い透過率が得られにくい。また、特許文献2および3には、300℃以下の低ガラス転移点を有するガラスとして、P−Sn−O−F系ガラスやSnO−PbO−P系ガラスが記載されているが、これらのガラスは有害なフッ素成分や鉛成分を必須成分として含有しているため、環境上好ましくない。
そこで、本発明は、(1)環境上好ましくない成分を含有しない、(2)低ガラス転移点を達成しやすい、(3)高屈折率特性を達成しやすい、(4)可視光透過率に優れている、(5)モールドプレス成形時の耐失透性に優れる、(6)耐侯性や化学耐久性に優れる、といった要求をすべて満足することが可能な光学ガラスを提供することを課題とする。
本発明者等は種々検討を行った結果、SnOを主成分として多く含有する特定組成のガラスによって前記課題を解決できることを見い出し、本発明として提案する。
すなわち、本発明は、ガラス組成として、モル%で、SnO 43.5〜90%、P+B+SiO 0.1〜56.5%を含有し、かつ、鉛成分、ヒ素成分およびフッ素成分を実質的に含有しないことを特徴とする光学ガラスに関する。
本発明の光学ガラスは、ガラス組成中にSnOを43.5〜90%と多量に含有しているため、高屈折率特性を達成しやすく、かつ、耐侯性や化学耐久性にも優れている。さらに、モールドプレス成形時に、透明性を阻害する失透物が生じにくい。
また、本発明の光学ガラスは、SnOの他に、P、BおよびSiOを合量で0.1〜56.5%含有しているため、着色が生じにくく、可視域または近紫外域の透過率に優れている。さらに、本発明の光学ガラスは、有害成分である鉛成分、ヒ素成分およびフッ素成分を実質的に含有しないため、環境上好ましいガラスである。
なお、本発明において、「鉛成分、ヒ素成分およびフッ素成分を実質的に含有しない」とは、これらの成分を意図的にガラス中に添加しないという意味であり、不可避的不純物まで完全に排除することを意味するものではない。客観的には、不純物を含めたこれらの成分の含有量が、質量%で、各々0.1%未満であることを意味する。
第二に、本発明の光学ガラスは、Pの含有量が0.1〜56.5%であることが好ましい。
当該構成によれば、低ガラス転移点を有するガラスが得られやすくなる。
第三に、本発明の光学ガラスは、モル比で、SnO/(P+B+SiO)が1.2以上であることが好ましい。
当該構成によれば、高屈折率特性を有し、かつ、耐侯性および化学耐久性に優れたガラスが得られやすくなる。
第四に、本発明の光学ガラスは、さらに、ガラス組成として、モル%で、CaO+SrO+BaO+MgO+ZnOを0〜30%含有することが好ましい。
当該構成によれば、耐失透性に優れたガラスが得られやすくなる。
第五に、本発明の光学ガラスは、さらに、ガラス組成として、モル%で、LiO+NaO+KOを0〜30%含有することが好ましい。
当該構成によれば、ガラス転移点が低く、耐失透性に優れたガラスが得られやすくなる。
第六に、本発明の光学ガラスは、さらに、ガラス組成として、モル%で、Al+ZrOを0〜10%含有することが好ましい。
当該構成によれば、耐侯性および化学耐久性に優れたガラスが得られやすくなる。
第七に、本発明の光学ガラスは、さらに、ガラス組成として、モル%で、La+Gd+Ta+WO+Nb+TiO+Y+Yb+GeO+Bi+TeOを0〜30%含有することが好ましい。
当該構成によれば、所望の屈折率およびアッベ数を有するガラスが得られやすくなる。
第八に、本発明の光学ガラスは、Fe、NiOおよびCoOの含有量が、それぞれ1000ppm以下であることが好ましい。
Fe、NiOおよびCoOは透過率低下の原因となる成分であるため、これらの成分の含有量を上記範囲に制限することにより、透過率の高いガラスが得られやすくなる。
第九に、本発明の光学ガラスは、Sbの含有量が1000ppm以下であることが好ましい。
Sbは耐失透性を低下させる成分であるため、当該成分の含有量を上記範囲に制限することにより、耐失透性に優れたガラスが得られやすくなる。
第十に、本発明の光学ガラスは、ガラス転移点が500℃以下であることが好ましい。
当該構成によれば、低温でのモールドプレス成形が可能となり、金型の酸化、ガラス成分の揮発による金型の汚染、さらには、ガラスと金型との融着などの問題を抑制することができる。
第十一に、本発明の光学ガラスは、屈折率が1.55以上、かつ、アッベ数が40以下であることが好ましい。
第十二に、本発明の光学ガラスは、アッベ数(νd)および部分分散比(θg、F)の関係式が、(θg、F)≦−0.0047×(νd)+0.76の範囲の光学定数を有することを特徴とする。
光学デバイスにおいては、一般に、低分散かつ部分分散が大きいガラスからなる光学レンズと、高分散かつ部分分散の小さいガラスからなる光学レンズを組み合わせて使用することにより、色収差を補正している。本発明の光学ガラスは、アッベ数および部分分散比が上記関係を満たすことにより、高分散かつ部分分散の小さい光学特性を達成しやすくなり、色収差に優れた光学デバイスを容易に作製することができる。
第十三に、本発明の光学ガラスは、ガラスの着色度λ70が500nm未満であることが好ましい。
ガラス着色度λ70が上記範囲を満たすことにより、可視域または近紫外域における透過率に優れ、各種光学レンズ等の光学素子に好適なガラスを得ることが可能となる。なお、本発明において「着色度λ70」とは、透過率曲線において、透過率が70%になる波長をいう。
第十四に、本発明の光学ガラスは、モールドプレス成形用であることが好ましい。
第十五に、本発明は、前記いずれかの光学ガラスを用いたことを特徴とする光学素子に関する。
本発明の光学ガラスは、ガラス組成として、モル%で、SnO 43.5〜90%、P+B+SiO 0.1〜56.5%を含有し、かつ、鉛成分、ヒ素成分およびフッ素成分を実質的に含有しないことを特徴とする。
以下に、各成分の含有量を上記のように特定した理由を説明する。なお、特に断りがない場合、以下の成分含有量に関する説明において、「%」は「モル%」を意味する。
SnOは、高屈折率かつ高分散の光学特性を達成し、化学耐久性を向上させるための必須成分であり、部分分散比(θg、F)を低下させる効果もある。SnOの含有量は43.5〜90%、45〜88%、50〜86%、60〜85%、特に67.5〜83%であることが好ましい。SnOの含有量が少なすぎると、高屈折率特性を達成しにくくなり、また、耐侯性や化学耐久性が低下する傾向がある。一方、SnOの含有量が多すぎると、耐失透性が低下する傾向がある。
、BおよびSiOはガラスの骨格を構成する成分である。また、ガラスの透過率を高める成分であり、紫外域付近の透過率低下を抑制したり、吸収端を低波長側にシフトさせることができる。特に、高屈折率のガラスの場合は、これらの成分による透過率向上の効果が得られやすい。また、失透を抑制する効果も有する。P、BおよびSiOの含有量は、合量で0.1〜56.5%、10〜50%、15〜47.5%、20〜45%、特に25〜37%であることが好ましい。これらの成分の含有量が少なすぎると、前記効果が得られにくくなり、一方、多すぎると、SnOの含有量が相対的に少なくなって、屈折率が低下しやすくなる。
なお、P、BおよびSiOの各成分の好ましい含有量は以下の通りである。
の含有量は0〜56.5%、0.1〜56.5%、1〜50%、3〜47.5%、4〜45%、5〜40%、特に10〜37%であることが好ましい。Pの含有量が多すぎると、屈折率が低下しやすくなる。また、耐侯性や化学耐久性が低下しやすくなる。なお、Pを積極的に添加することにより、ガラス転移点の低いガラスが得られやすくなる。
の含有量は0〜56.5%、0.1〜56.5%、1〜50%、3〜47.5%、4〜45%、5〜40%、特に10〜37%であることが好ましい。Bの含有量が多すぎると、屈折率が低下しやすくなる。また、耐侯性や化学耐久性が低下しやすくなる。
SiOの含有量は0〜56.5%、0.1〜56.5%、1〜50%、3〜47.5%、4〜45%、5〜40%、特に10〜37%であることが好ましい。SiOの含有量が多すぎると、屈折率が低下しやすくなる。また、未溶解による脈理や泡がガラス中に残り、レンズ用ガラスとしての要求品位を満たさなくなる可能性がある。
本発明において、耐侯性や化学耐久性に優れたガラスを得るためには、質量比で、SnO/(P+B+SiO)が1.2以上、1.5以上、2以上、2.05以上、特に2.4以上であることが好ましい。なお、上限は特に限定されないが、当該比率が大きすぎると、SnOがブツとして析出しやすくなるため、9以下、7以下、特に5以下であることが好ましい。
本発明の光学ガラスは、上記成分以外にも以下の成分を含有することができる。
CaO、SrOおよびBaOといったアルカリ土類金属酸化物(RO)や、MgOおよびZnOは、融剤として作用する成分であり、これらの成分を添加することにより、屈折率が大きく低下したり、アッベ数が大きく上昇することもない。また、耐候性を向上させ、研磨洗浄水等の各種洗浄溶液中へのガラス成分の溶出を抑制したり、高温多湿状態でのガラス表面の変質を抑制する効果がある。ただし、これらの成分の含有量が多すぎると、液相温度が上昇(液相粘度が低下)して、溶融または成形工程中に失透物が析出しやすくなり、作業範囲が狭くなる傾向がある。その結果、ガラスを量産化しにくくなる。よって、CaO、SrO、BaO、MgOおよびZnOの含有量は、合量で、0〜30%、0〜20%、0〜10%、特に0.1〜10%であることが好ましい。
なお、各成分の好ましい含有量は以下の通りである。
CaOは、耐候性向上のために有効な成分であり、特に耐水性や耐アルカリ性を向上させる効果が高い。ただし、その含有量が多すぎると着色しやすくなる。したがって、CaOの含有量は0〜30%、0〜20%、特に0.1〜10%であることが好ましい。
SrOは屈折率を高める成分である。また、CaOに比べると、耐水性や耐アルカリ性等の耐候性を向上させる効果が高い。したがって、SrOを積極的に含有することにより、耐候性に優れたガラスが得られやすくなる。ただし、その含有量が多すぎると着色しやすくなる。したがって、SrOの含有量は0〜30%、0〜20%、特に0.1〜10%であることが好ましい。
BaOはCaOに比べ、液相温度の上昇が小さく、また、耐水性や耐アルカリ性を向上させる効果が高い。ただし、その含有量が多すぎると、着色しやすくなる。したがって、BaOの含有量は0〜30%、0〜20%、特に0.1〜10%であることが好ましい。
MgOは屈折率を高める成分である。また、CaOに比べると、耐水性や耐アルカリ性等の耐候性を向上させる効果が高い。したがって、MgOを積極的に含有することにより、耐候性に優れたガラスが得られやすくなる。ただし、その含有量が多すぎると、着色しやすくなる。したがって、MgOの含有量は0〜30%、0〜20%、特に0.1〜10%であることが好ましい。
ZnOは、屈折率をほとんど低下させることなく、粘度を低下させることが可能な成分である。よって、ガラス転移点を低下させて、金型と融着しにくいガラスを得ることができる。また、耐候性を向上させる効果もある。さらに、CaO、SrO、BaOおよびMgOに比べ失透傾向が強くないため、多量に含有させても、均質なガラスを得ることができる。なお、ZnOはガラスを着色させにくい成分でもある。ZnOの含有量は0〜30%、0〜20%、特に0.1〜10%であることが好ましい。ZnOの含有量が多すぎると、逆に耐候性が低下する傾向がある。また、高屈折率かつ高分散の光学特性が得られにくくなる。
LiOは、アルカリ金属酸化物のなかで最も軟化点を低下させる効果が大きく、液相温度の上昇が少ない成分である。また、部分分散比を低下させる効果がある。さらに、B、SiOまたはAlと置換することにより、屈折率を向上させることができる。ただし、LiOは分相性が強いため、その含有量が多すぎると、液相温度が上昇して失透物が析出しやすくなり、作業性が低下するおそれがある。また、LiOは化学耐久性を低下させやすく、透過率も低下させやすい。したがって、LiOの含有量は0〜30%、0〜20%、特に0.1〜10%であることが好ましい。
NaOは、LiOと同様に軟化点を低下させる効果を有する。また、B、SiO、Alと置換することにより、屈折率を向上させることができる。また、部分分散比を低下させる効果がある。ただし、その含有量が多すぎると、屈折率が大幅に低下したり、脈理の生成を助長する傾向がある。また、液相温度が上昇して、ガラス中に失透物が析出しやすくなる。したがって、NaOの含有量は0〜30%、0〜20%、特に0.1〜10%であることが好ましい。
Oも、LiOと同様に軟化点を低下させる効果を有する。また、B、SiO、Alと置換することにより、屈折率を向上させることができる。また、部分分散比を低下させる効果もある。ただし、その含有量が多すぎると、屈折率が大幅に低下したり、耐候性が低下する傾向がある。また、液相温度が上昇して、ガラス中に失透物が析出しやすくなる。したがって、KOの含有量は0〜30%、0〜20%、特に0.1〜10%であることが好ましい。
なお、LiO、NaOおよびKOの合量は0〜30%、0〜20%、特に0.1〜10%であることが好ましい。これらの成分の合量が多すぎると、失透しやすくなり、化学耐久性も低下する傾向がある。また、所望の光学特性が得られにくくなる。さらに、透過率低下の原因となる。
Alは、SiOやBとともにガラス骨格を構成することが可能な成分である。また、耐候性を向上させる効果があり、特に、ガラス中のP、Bまたはアルカリ金属酸化物等の成分が水中へ選択的に溶出することを抑制する効果が大きい。Alの含有量は0〜10%、特に0.1〜5%であることが好ましい。Alの含有量が多すぎると、失透しやすくなる。また、溶融温度が高くなって、未溶解による脈理や泡がガラス中に残存しやすくなる。その結果、レンズ用ガラスとしての要求品位を満たさなくなる可能性がある。また、透過率が低下する傾向がある。
ZrOは、中間酸化物としてガラスの骨格を形成するため、耐候性を向上させる効果がある。特に、ガラス中のP、Bまたはアルカリ金属酸化物等の成分が水中へ選択的に溶出することを抑制する効果が大きい。ZrOの含有量は0〜10%、特に0.1〜5%であることが好ましい。ZrOの含有量が多すぎると、失透しやすくなる。また、溶融温度が高くなって、未溶解による脈理や泡がガラス中に残存しやすくなる。その結果、レンズ用ガラスとしての要求品位を満たさなくなる可能性がある。また、透過率が低くなる傾向がある。
なお、耐侯性および化学耐久性に優れたガラスを得るためには、Al+ZrOは0〜10%、特に0.1〜5%であることが好ましい。
Laは、透過率をほとんど低下させることなく、屈折率を向上させる成分である。当該効果を得るためには、Laの含有量は0.1%以上、特に1%以上であることが好ましい。ただし、その含有量が多すぎると耐失透性が低下すると同時に、高分散なガラスが得られにくくなる。したがって、Laの含有量の上限は30%以下、20%以下、特に10%以下であることが好ましい。
Gdは、Laと同様に透過率を低下させることなく、屈折率を向上させる成分である。当該効果を得るためには、Gdの含有量は0.1%以上、特に1%以上であることが好ましい。ただし、その含有量が多すぎると耐失透性が低下すると同時に、高分散なガラスが得られにくくなる。したがって、Gdの含有量の上限は30%以下、20%以下、特に10%以下であることが好ましい。
Taは、透過率をほとんど低下させることなく、屈折率および分散を高める効果がある。当該効果を得るためには、Taの含有量は0.1%以上、特に1%以上であることが好ましい。ただし、その含有量が多すぎると、耐失透性が低下しやすくなる。したがって、Taの含有量の上限は30%以下、20%以下、特に10%以下であることが好ましい。
WOは、透過率をほとんど低下させることなく、屈折率および分散を高める効果がある。当該効果を得るためには、WOの含有量は0.1%以上、特に1%以上であることが好ましい。ただし、その含有量が多すぎると、耐失透性が低下しやすくなる。したがって、WOの含有量の上限は30%以下、20%以下、特に10%以下であることが好ましい。
Nbは、透過率をほとんど低下させることなく、屈折率および分散を高める効果がある。当該効果を得るためには、Nbの含有量は0.1%以上、特に1%以上であることが好ましい。ただし、その含有量が多すぎると、耐失透性が低下しやすくなる。したがって、Nbの含有量の上限は30%以下、20%以下、特に10%以下であることが好ましい。
TiOは屈折率および分散を高める効果がある成分である。また、Nb、WOに比べて、耐失透性の向上に有効な成分である。当該効果を得るためには、TiOの含有量は0.1%以上、特に1%以上であることが好ましい。ただし、その含有量が多すぎると、透過率が低下する傾向がある。特に、不純物としてFe成分がガラス中に多く含まれる場合(例えば20ppm以上)に透過率が顕著に低下する傾向がある。また、耐失透性が低下しやすくなる。したがって、TiOの含有量は30%以下、20%以下、特に10%以下であることが好ましい。
は、透過率をほとんど低下させることなく、屈折率および分散を高める効果がある。当該効果を得るためには、Yの含有量は0.1%以上、特に1%以上であることが好ましい。ただし、その含有量が多すぎると、耐失透性が低下しやすくなる。したがって、Yの含有量の上限は30%以下、20%以下、特に10%以下であることが好ましい。
Ybは、透過率をほとんど低下させることなく、屈折率および分散を高める効果がある。当該効果を得るためには、Ybの含有量は0.1%以上、特に1%以上であることが好ましい。ただし、その含有量が多すぎると、耐失透性が低下しやすくなる。したがって、Ybの含有量の上限は30%以下、20%以下、特に10%以下であることが好ましい。
GeOは、透過率をほとんど低下させることなく、屈折率および分散を高める効果がある。当該効果を得るためには、GeOの含有量は0.1%以上、特に1%以上であることが好ましい。ただし、その含有量が多すぎると、耐失透性が低下しやすくなる。したがって、GeOの含有量の上限は30%以下、20%以下、特に10%以下であることが好ましい。
Biは、透過率をほとんど低下させることなく、屈折率および分散を高める効果がある。当該効果を得るためには、Biの含有量は0.1%以上、特に1%以上であることが好ましい。ただし、その含有量が多すぎると、耐失透性が低下しやすくなる。したがって、Biの含有量は30%以下、20%以下、特に10%以下であることが好ましい。
TeOは、透過率をほとんど低下させることなく、屈折率および分散を高める効果がある。また、部分分散比を低下させる効果がある。当該効果を得るためには、TeOの含有量は0.1%以上、特に1%以上であることが好ましい。ただし、その含有量が多すぎると、耐失透性が低下しやすくなる。したがって、TeOの含有量の上限は30%以下、20%以下、特に10%以下であることが好ましい。
なお、所望の屈折率およびアッベ数を有するガラスを得るためには、La+Gd+Ta+WO+Nb+TiO+Y+Yb+GeO+Bi+TeOが0.1%以上、特に1%以上であることが好ましい。ただし、これらの成分の合量が多すぎると、耐失透性が低下しやすくなるため、上限は30%以下、20%以下、特に10%以下であることが好ましい。
Fe、NiOおよびCoOは、透過率を低下させる成分である。よって、これら成分の含有量は、それぞれ1000ppm以下であることが好ましい。
なお、Ce、Pr、Nd、Eu、Tb、Erの希土類成分も透過率を低下させるおそれがあるため、これらの成分の含有量は、酸化物換算で、それぞれ1000ppm以下であることが好ましい。
また、清澄剤として、例えばSbを含有することができる。ただし、Sbは酸化剤としても働き、SnOがブツとして発生しやすくなる。したがって、Sbの含有量は0〜1000ppm、0〜100ppm、特に1〜100ppmであることが好ましい。
鉛成分(例えばPbO)、ヒ素成分(例えばAs)およびフッ素成分(例えばF)は、環境上の理由から、実質的なガラスへの導入は避けるべきである。それゆえ本発明ではこれらの成分は実質的に含有しない。
本発明の光学ガラスの屈折率(nd)は1.55以上、1.6以上、1.65以上、1.7以上、特に1.72以上であることが好ましい。また、本発明の光学ガラスのアッベ数(νd)は40以下、35以下、30以下、28以下、特に25以下であることが好ましい。これらの光学特性を満たすことにより、色分散が少なくなり、高機能で小型の光学デバイス用の光学レンズとして好適となる。
本発明の光学ガラスは、アッベ数(νd)および部分分散比(θg、F)が、(θg、F)≦−0.0047×νd+0.76の関係を満たすことが好ましい。アッベ数および部分分散比が、当該関係を満たさない場合は、高分散かつ低部分分散比の光学特性を達成しにくくなる。
本発明の光学ガラスは、着色度λ70が500nm未満、470nm以下、特に460nm以下であることが好ましい。着色度λ70が大きすぎると、可視域または近紫外域における透過率に劣り、各種光学レンズ等に使用することが困難となる傾向がある。
本発明の光学ガラスは、ガラス転移点が500℃以下、450℃以下、425℃以下、特に420℃以下であることが好ましい。ガラス転移点が高すぎると、低温でのモールドプレス成形が困難となり、金型の酸化、ガラス成分の揮発による金型の汚染、さらには、ガラスと金型との融着などの問題が発生しやすくなる。
次に、本発明の光学ガラスを用いて光ピックアップレンズや撮影用レンズ等の光学素子を製造する方法を説明する。
まず、所望の組成になるようにガラス原料を調合した後、ガラス溶融炉中で溶融を行う。ここで、所定の組成になるように最適なガラス原料を選択して不純物の混入を抑制したり、ガラスの溶融雰囲気を調整することが好ましい。また、ガラス原料には、一旦ガラス化したものを再利用することもできる。特に、溶融雰囲気は中性ないし還元性とすることが好ましい。たとえば、窒素やアルゴン等の不活性雰囲気中で溶融することで、均質なガラスが得られやすくなる。ガラス溶融用容器としては、耐火物、石英ガラス、白金、金、グラッシーカーボン等が使用できる。
次に、溶融ガラスをノズルの先端から滴下して液滴状ガラスを作製し、プリフォームガラスを得る。または、溶融ガラスを急冷鋳造して、一旦ガラスブロックを作製し、研削、研磨、洗浄してプリフォームガラスを得る。
続いて、精密加工を施した金型中にプリフォームガラスを投入し、軟化状態となるまで加熱しながら加圧成形し、金型の表面形状をプリフォームガラスに転写させる(モールドプレス成形)。このようにして、光ピックアップレンズや撮影用レンズ等の光学素子を得ることができる。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1〜3は本発明の実施例(No.1〜23)および比較例(No.24〜26)を示している。
各試料は次のようにして調製した。
まず、表に示す各組成になるようにガラス原料を調合し、窒素雰囲気中にてグラッシーカーボン容器を用い、1000〜1250℃で1時間溶融した。溶融後、ガラス融液をカーボン板上に流し出し、アニール後、各測定に適した試料を作製した。
得られた試料について、屈折率(nd)、アッベ数(νd)、部分分散比(θg、F)、ガラス転移点(Tg)、屈伏点(Tf)、着色度λ70、可視光平均透過率、色度を測定した。また、ガラス化および耐候性について評価した。結果を表1に示す。
屈折率は、ヘリウムランプのd線(587.6nm)に対する測定値で示した。
アッベ数は、上記d線の屈折率と水素ランプのF線(486.1nm)、同じく水素ランプのC線(656.3nm)の屈折率の値を用い、アッベ数(νd)=(nd−1)/(nF−nC)の式から算出した。
部分分散比は、C線(波長656.27nm)における屈折率nC、F線(波長486.13nm)における屈折率nF、g線(波長435.835nm)における屈折率ngを測定し、(θg、F)=(ng−nF)/(nF−nC)の式により算出した。
ガラス転移点および屈伏点は、熱膨張測定装置(dilato meter)にて測定した。
着色度λ70は、厚さ10mm±0.1mmの光学研磨されたガラス試料について、分光光度計を用いて、200〜800nmの波長域での透過率を0.5nm間隔で測定し、透過率70%を示す波長により評価した。
可視光平均透過率は、厚さ10mm±0.1mmの光学研磨されたガラス試料について、分光光度計を用いて、380〜780nmの波長域での平均透過率を測定することにより求めた。
色度は、厚さ10mm±0.1mmの光学研磨されたガラス試料について、分光光度計を用いて測定した。
ガラス化は、各試料を顕微鏡により観察し、表面または内部において失透が見られない場合を「○」、失透が見られた場合を「×」とした。
耐候性は、高温高湿試験機を用い、各試料を温度85℃および湿度85%の条件下に500時間晒した後、外観に変化がない場合を「○」、光沢にわずかに変化が見られた場合を「△」、光沢が顕著に失われたり、クラックが入った場合を「×」として評価した。
本発明の光学ガラスは、CD、MD、DVD、その他各種光ディスクシステムの光ピックアップレンズ、ビデオカメラ、一般のカメラの撮影用レンズ等に使用されるモールドプレス成形用硝材として好適である。また、モールドプレス成形以外の成形方法で製造される光通信用等の硝材として使用することも可能である。

Claims (15)

  1. ガラス組成として、モル%で、SnO 43.5〜90%、P+B+SiO 0.1〜56.5%を含有し、かつ、鉛成分、ヒ素成分およびフッ素成分を実質的に含有しないことを特徴とする光学ガラス。
  2. の含有量が0.1〜56.5%であることを特徴とする請求項1に記載の光学ガラス。
  3. モル比で、SnO/(P+B+SiO)が1.2以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学ガラス。
  4. さらに、ガラス組成として、モル%で、CaO+SrO+BaO+MgO+ZnOを0〜30%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学ガラス。
  5. さらに、ガラス組成として、モル%で、LiO+NaO+KOを0〜30%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光学ガラス。
  6. さらに、ガラス組成として、モル%で、Al+ZrOを0〜10%含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光学ガラス。
  7. さらに、ガラス組成として、モル%で、La+Gd+Ta+WO+Nb+TiO+Y+Yb+GeO+Bi+TeOを0〜30%含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光学ガラス。
  8. Fe、NiOおよびCoOの含有量が、それぞれ1000ppm以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光学ガラス。
  9. Sbの含有量が1000ppm以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の光学ガラス。
  10. ガラス転移点が500℃以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の光学ガラス。
  11. 屈折率が1.55以上、かつ、アッベ数が40以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の光学ガラス。
  12. アッベ数(νd)および部分分散比(θg、F)が、(θg、F)≦−0.0047×(νd)+0.76の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の光学ガラス。
  13. ガラスの着色度λ70が500nm未満であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の光学ガラス。
  14. モールドプレス成形用であることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の光学ガラス。
  15. 請求項1〜14のいずれかに記載の光学ガラスを用いたことを特徴とする光学素子。
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