本発明の光学ガラスは、質量%で、SiO2 1〜12%、B2O3 1〜14%、ZnO 2.3〜15%、SiO2+ZnO 3.3〜25%、ZrO2 2〜9%、La2O3 25〜55%、Gd2O3 0〜12%、Nb2O5 0〜10%、Ta2O5 0〜5%、WO3 0〜10%、及び、TiO2 0.1〜20%を含有し、かつ、Y2O3、GeO2、鉛成分、ヒ素成分及びフッ素成分を実質的に含有しない。以下に、各成分の含有量をこのように規制した理由を説明する。
SiO2はガラス骨格を形成する成分であり、失透を抑制するとともに、化学的耐久性を向上させる効果や、硬度を高める効果がある。また、着色を抑制する効果がある。SiO2の含有量は1〜12%であり、好ましくは1.5〜11%、より好ましくは2〜10%、さらに好ましくは2.5〜9%である。SiO2の含有量が少なすぎると、上記効果が得られにくくなる。また、熱膨張係数が不当に高くなりやすい。一方、SiO2の含有量が多すぎると、屈折率が低下する傾向がある。
B2O3はガラス骨格を形成する成分であり、失透を抑制するとともに、化学的耐久性を向上させる効果や、硬度を高める効果がある。B2O3の含有量は1〜14%であり、好ましくは1〜12%であり、より好ましくは2〜11%、さらに好ましくは3〜10%である。B2O3の含有量が少なすぎると、ガラスが不安定になって耐失透性が低下したり、透過率が低下しやすくなる。一方、B2O3の含有量が多すぎると、屈折率が低下するとともに、化学的耐久性が低下する傾向がある。
本発明の光学ガラスにおいて、高屈折率かつ優れた耐失透性を得るためには、SiO2及びB2O3の合量を適切に調整することが好ましい。具体的には、SiO2+B2O3の含有量は、好ましくは5〜24%、より好ましくは10〜22%である。SiO2+B2O3の含有量が少なすぎると、失透が生じやすくなるとともに化学的耐久性が低下しやすくなる。一方、SiO2+B2O3の含有量が多すぎると、屈折率が低下する傾向がある。
ZnOは中間酸化物としてガラスの骨格を形成し、液相温度を低下させる成分である。また、粘度を低下させる効果がある。ZnOはSiO2やB2O3に比べ、屈折率を低下させにくいが、その含有量が多すぎると、高屈折率特性が得られにくく、また化学的耐久性が低下する傾向がある。従って、ZnOの含有量は2.3〜15%であり、好ましくは3.1〜14.5%、より好ましくは3.5〜14%、さらに好ましくは4〜13%、特に好ましくは4〜12%である。
本発明の光学ガラスにおいて、高屈折率かつ優れた耐失透性を得るため、SiO2及びZnOの合量が規制される。具体的には、SiO2+ZnOの含有量は3.3〜25%であり、好ましくは5〜24%、より好ましくは7.5〜22%である。SiO2+ZnOの含有量が少なすぎると、失透が生じやすくなる。一方、SiO2+ZnOの含有量が多すぎると、屈折率が低下する傾向がある。
ZrO2は屈折率を高める成分である。また、中間酸化物としてガラス骨格を形成するため、化学的耐久性を向上させる効果もある。ZrO2の含有量は2〜9%であり、好ましくは2.5〜8%、より好ましくは3〜7%、さらに好ましくは4〜6.5%である。ZrO2の含有量が少なすぎると、上記効果が得られにくい。一方、ZrO2の含有量が多すぎると、失透しやすくなる。
La2O3は屈折率を高める成分である。La2O3は、同じく屈折率を高める効果のあるZrO2、Gd2O3、Ta2O5及びNb2O5に比べ失透傾向が強くないため、比較的多量に含有させても均質なガラスが得られやすい。また、高屈折で低分散な光学特性が得られやすい。La2O3の含有量は25〜55%であり、好ましくは27.5〜54.5%、より好ましくは30〜54%、さらに好ましくは35〜53.5%、特に好ましくは37.5〜53%である。La2O3の含有量が少なすぎると、所望の高屈折率特性や低分散特性が得られにくくなる。一方、La2O3の含有量が多すぎると、失透しやすくなる。
Gd2O3は高屈折率や低分散の光学特性を得るための成分である。また、La2O3と併用することで耐失透性を向上させる効果があり、作業温度範囲を拡大することができる。ただし、多量に含有させると、分相や失透する傾向が強くなり、均質なガラスが得られにくくなる。また、液相温度が上昇する傾向がある。以上に鑑み、Gd2O3の含有量は0〜12%であり、好ましくは0.1〜11%、より好ましくは0.5〜10%、さらに好ましくは1〜9%である。
Nb2O5は屈折率を高める効果が大きい成分である。Nb2O5の含有量は0〜10%であり、好ましくは0.5〜9.5%、より好ましくは1〜9%である。Nb2O5の含有量が多すぎると、失透物がガラス表面に析出(表面失透)しやすくなる。
Ta2O5は屈折率を高める成分である。また、化学的耐久性を高める効果がある。Ta2O5は、Nb2O5、WO3、TiO2等の高屈折率成分に比べると、紫外域〜可視域の透過率を低下させにくい。Ta2O5の含有量は0〜5%であり、好ましくは0.1〜4.5%、より好ましくは0.5〜4%、さらに好ましくは1〜3.5%である。Ta2O5の含有量が多すぎると、分相や失透が生じやすくなる。また、原料バッチコストが高くなるため、経済的観点からも好ましくない。
なお、Nb2O5+Ta2O5の含有量は、好ましくは0〜15%、より好ましくは0.1〜13%である。Nb2O5+Ta2O5の含有量が多すぎると、失透しやすくなる。一方、Nb2O5+Ta2O5の含有量が少なすぎると、高屈折率特性が得られにくくなる。
WO3は屈折率を高める成分である。また、中間酸化物としてガラス骨格を形成するため、耐失透性を向上させる効果もある。WO3はTa2O5やNb2O3に比べ失透傾向が強くないため、多く含有させても均質なガラスが得られやすい。WO3の含有量は0〜10%であり、好ましくは0.5〜7.5%、より好ましくは1〜5%、さらに好ましくは1〜2.5%である。WO3の含有量が多すぎると、短波長領域の可視光透過率が低下しやすくなる。
TiO2は屈折率を高める成分である。また、耐失透性を向上させる効果や、紫外光による変色(ソラリゼーション)を抑制する効果もある。TiO2の含有量は0.1〜20%であり、好ましくは1〜17.5%、より好ましくは3〜15%である。TiO2の含有量が少なすぎると、上記効果が得られにくくなる。一方、TiO2の含有量が多すぎると、短波長領域の透過率が低下して、短波長用レンズとしての使用に支障をきたすおそれがある。
本発明の光学ガラスにおいて、高屈折率かつ優れた耐失透性を得るためには、TiO2に対するNb2O5の比率を適切に調整することが好ましい。具体的には、Nb2O5/TiO2(質量比)は、好ましくは0〜1であり、より好ましくは0.1〜0.9、さらに好ましくは0.2〜0.8である。
本発明の光学ガラスにおいて、高屈折率かつ優れた耐失透性、さらには所望の熱膨張係数を得るためには、SiO2に対するLa2O3及びGd2O3の合量の比率を適切に調整することが好ましい。具体的には、(La2O3+Gd2O3)/SiO2(質量比)は、好ましくは50以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは20以下、特に好ましくは15以下、最も好ましくは10以下である。
本発明の光学ガラスにおいて、高屈折率かつ優れた耐失透性を得るためには、B2O3に対するLa2O3及びGd2O3の合量の比率を適切に調整することが好ましい。具体的には、(La2O3+Gd2O3)/B2O3(質量比)は、好ましくは2〜50、より好ましくは5〜40、さらに好ましくは7.5〜40、特に好ましくは10〜35、最も好ましくは12.5〜30である。(La2O3+Gd2O3)/B2O3が小さすぎると、高屈折率特性が得られにくくなり、一方、大きすぎると、失透しやすくなる。
本発明の光学ガラスにおいて、高屈折率特性を得るためには、La2O3及びGd2O3の合量に対するZnOの比率を適切に調整することが好ましい。具体的には、ZnO/(La2O3+Gd2O3)(質量比)は、0.02〜0.9、好ましくは0.04〜0.8、さらに好ましくは0.6〜0.7、特に好ましくは0.08〜0.6、最も好ましくは1〜0.5である。ZnO/(La2O3+Gd2O3)が大きすぎると、高屈折率特性が得られにくくなる。一方、ZnO/(La2O3+Gd2O3)が小さすぎると、失透が生じやすくなる。
本発明の光学ガラスにおいて、優れた耐失透性を得るためには、SiO2に対するTiO2の比率を適切に調整することが好ましい。具体的には、TiO2/SiO2(質量比)は、好ましくは100以下、より好ましくは60以下、さらに好ましくは40以下、特に好ましくは20以下、最も好ましくは10以下である。TiO2/SiO2が大きすぎると、失透が生じやすくなるとともに化学的耐久性が低下しやすくなる。また、熱膨張係数が高くなりやすくなる。なお、TiO2/SiO2が低すぎると、高屈折率特性が得られにくくなるため、0.1以上、さらには0.5以上、特に1以上であることが好ましい。
本発明の光学ガラスにおいて、優れた耐失透性を得るためには、SiO2に対するNb2O5の比率を適切に調整することが好ましい。具体的には、Nb2O5/SiO2(質量比)は、好ましくは150以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは50以下、特に好ましくは25以下、最も好ましくは10以下である。Nb2O5/SiO2が大きすぎると、失透が生じやすくなるとともに化学的耐久性が低下しやすくなる。また、熱膨張係数が高くなりやすくなる。一方、Nb2O5/SiO2が低すぎると、高屈折率特性が得られにくくなるため、0.1以上、さらには0.5以上であることが好ましい。
本発明の光学ガラスにおいて、高屈折率特性を得るためには、ZnOに対するSiO2の比率を適切に調整することが好ましい。具体的には、SiO2/ZnO(質量比)は、0.2〜5、好ましくは0.3〜4.5、さらに好ましくは0.4〜4、特に好ましくは0.5〜3.5以下、最も好ましくは0.6〜3である。SiO2/ZnOが大きすぎると、高屈折率特性が得られにくくなる。一方、SiO2/ZnOが小さすぎると、化学的耐久性が低下しやすくなったり、熱膨張係数が高くなりやすい。
本発明の光学ガラスにおいて、高屈折率特性を得るためには、Nb2O5に対するZnOの比率を適切に調整することが好ましい。具体的には、ZnO/Nb2O5(質量比)は、好ましくは0.4〜30、より好ましくは0.5〜25、さらに好ましくは0.7〜20、特に好ましくは1〜17.5、最も好ましくは1.5〜15である。ZnO/Nb2O5が大きすぎると、高屈折率特性が得られにくくなる。一方、ZnO/Nb2O5が小さすぎると、失透が生じやすくなる。
Y2O3は失透傾向が強く、作業温度範囲を狭める傾向がある。また、脈理が発生させやすい。そのため、本発明の光学ガラスはY2O3を実質的に含有しない。
GeO2は屈折率を高める効果があるが、透過率を低下させやすい。また高価な原料であるため、バッチコストが高くなる傾向がある。よって、本発明の光学ガラスはGeO2を実質的に含有しない。
鉛成分(例えばPbO)、ヒ素成分(例えばAs2O3)及びフッ素成分(例えばF2)は、環境上の理由から、ガラスへの実質的な導入は避けるべきである。よって、本発明の光学ガラスはこれらの成分を実質的に含有しない。
本発明の光学ガラスには、上記成分以外に以下の成分を含有させることができる。
Li2Oは、アルカリ金属酸化物(R’2O)のなかで、最も軟化点を低下させる効果が大きい成分である。また、TiO2を多く含むガラスにおいて透過率の低下を抑制する効果がある。なお、Li2Oは屈折率を比較的低下させにくい成分である。Li2Oの含有量は、好ましくは0〜3%、より好ましくは0.1〜2.75%、さらに好ましくは0.3〜2.5%である。Li2Oは分相性が強いため、その含有量が多すぎると、液相温度が高くなり、失透物が析出しやすくなる。結果として、作業性が低下する傾向がある。
Na2OはLi2Oと同様に軟化点を低下させる効果を有する。ただし、その含有量が多すぎると、屈折率が低下しやすく、溶融時にはB2O3とNa2Oで形成される揮発物が多くなり、脈理の生成を助長してしまう。また、液相温度が高くなりやすい。従って、Na2Oの含有量は、好ましくは0〜3%、より好ましくは0.1〜2.75%、さらに好ましくは0.3〜2.5%である。
K2Oも、Li2Oと同様に軟化点を低下させる効果を有する。ただし、その含有量が多すぎると、屈折率が低下しやすくなる。K2Oの含有量は、好ましくは0〜3%、より好ましくは0.1〜2.75%、さらに好ましくは0.3〜2.5%である。K2Oの含有量が多すぎると、化学的耐久性が低下しやすくなる。また、液相温度が高くなりやすい。
本発明の光学ガラスにおいて、高屈折率特性、高透過率特性、及び、優れた耐失透性を得るためには、Li2O、Na2O及びK2Oの合量を適切に調整することが好ましい。具体的には、Li2O+Na2O+K2Oの含有量は、好ましくは0〜3%、より好ましくは0.1〜2.75%、さらに好ましくは0.3〜2.5%である。Li2O+Na2O+K2Oの含有量が多すぎると、液相温度が高くなり、失透物が析出しやすくなる。結果として、作業性が低下する傾向がある。また、屈折率が低下しやすくなる。
本発明の光学ガラスにおいて、高屈折率特性、高透過率特性、及び、優れた耐失透性を得るためには、Li2O、Na2O、K2O及びTa2O5の合量を適切に調整することが好ましい。具体的には、Li2O+Na2O+K2O+Ta2O5の含有量は、好ましくは0〜10%、より好ましくは0.1〜7.5%、さらに好ましくは0.3〜5%である。
本発明の光学ガラスにおいて、優れた耐失透性及び所望の熱膨張係数を得るためには、Li2Oに対するSiO2の比率を適切に調整することが好ましい。具体的には、SiO2/Li2O(質量比)は、好ましくは5〜150、より好ましくは10〜140、さらに好ましくは20〜135、特に好ましくは30〜130である。
本発明の光学ガラスにおいて、優れた耐失透性及び所望の熱膨張係数を得るためには、Li2Oに対するSiO2及びB2O3の合量の比率を適切に調整することが好ましい。具体的には、(SiO2+B2O3)/Li2O(質量比)は、好ましくは5〜150、より好ましくは10〜140、さらに好ましくは20〜135、特に好ましくは30〜130である。
本発明の光学ガラスにおいて、優れた耐失透性及び透過率特性を得るためには、Li2Oに対するTiO2及びNb2O5の合量の比率を適切に調整することが好ましい。具体的には、(TiO2+Nb2O5)/Li2O(質量比)は、好ましくは5〜150、より好ましくは10〜140、さらに好ましくは20〜135、特に好ましくは30〜130である。
本発明の光学ガラスにおいて、優れた耐失透性及び透過率特性を得るためには、Li2O及びTa2O5の合量を適切に調整することが好ましい。具体的には、Li2O+Ta2O5の含有量は、好ましくは0〜10%、より好ましくは0.1〜7.5%、さらに好ましくは0.5〜5%、特に好ましくは1〜3%である。
Yb2O3は屈折率を高める成分である。また、分相を抑制する効果がある。Yb2O3の含有量は、好ましくは0〜10%、より好ましくは0〜8%である。Yb2O3の含有量が多すぎると、失透しやすくなり、作業温度範囲が狭くなる傾向がある。また、脈理が発生しやすくなる。
Al2O3は、SiO2やB2O3とともにガラス骨格を形成することが可能な成分である。また、化学的耐久性を向上させる効果があり、特にガラス中の成分が水へ選択的に溶出することを抑制する効果が高い。Al2O3の含有量は、好ましくは0〜10%、より好ましくは0.1〜5%である。Al2O3の含有量が多すぎると、失透しやすくなる。また、溶融性が低下して脈理や泡がガラス中に残存しやすくなり、レンズ用ガラスとしての要求品位を満たさなくなるおそれがある。
CaO、SrO及びBaOといったアルカリ土類金属酸化物(RO)は融剤として作用する成分である。ただし、ROの含有量が多すぎると、溶融または成形工程中に失透物が析出しやすくなり、液相温度が上昇して作業温度範囲が狭くなりやすい。その結果、量産化しにくくなる傾向がある。また、ROの含有量が多すぎると、化学的耐久性が低下しやすくなり、ガラス成分の研磨洗浄水や各種洗浄溶液中への溶出が増大したり、高温多湿環境下でガラス表面が顕著に変質する傾向がある。よって、CaO、SrO及びBaOは、合量で5%以下であることが好ましい。
なお、CaO、SrO及びBaOのそれぞれの含有量の好ましい範囲は、0〜5%、さらには0.1〜1%である。
なお、CaO、SrO及びBaO以外にも、屈折率を高めるために、MgOを含有させてもよい。MgOの含有量は、好ましくは0〜5%、より好ましくは0.1〜1%である。MgOの含有量が多すぎると、失透しやすくなる。
本発明の光学ガラスにおいて、高屈折率特性、優れた耐失透性及び硬度、所望の熱膨張係数を得るためには、ガラス中に含まれるSi4+及びB3+の各含有量(カチオン%)の比Si4+/B3+を適切に調整することが好ましい。具体的には、Si4+/B3+は、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.8以上、特に好ましくは0.9以上、最も好ましくは1以上である。なお、Si4+/B3+が大きすぎると、液相温度が上昇しやすくなるため、上限は好ましくは10以下、より好ましくは9以下である。
本発明の光学ガラスにおいて、高屈折率かつ優れた耐失透性を得るためには、ガラス中に含まれるSi4+及びB3+の各含有量(カチオン%)の合量Si4++B3+を適切に調整することが好ましい。具体的には、Si4++B3+の含有量は、好ましくは25〜42%、より好ましくは27〜40%である。Si4++B3+の含有量が少なすぎると、失透が生じやすくなるとともに化学的耐久性が低下しやすくなる。一方、Si4++B3+の含有量が多すぎると、屈折率が低下する傾向がある。
本発明の光学ガラスにおいて、高屈折率特性を得るためには、ガラス中に含まれるSi4+とZn2+の各含有量(カチオン%)の合量を適切に調整することが好ましい。具体的には、Si4+Zn2+は、好ましくは2.5〜40、より好ましくは5〜35、さらに好ましくは5〜30である。Si4+Zn2+の含有量が少なすぎると、失透が生じやすくなる。一方、Si4+Zn2+の含有量が多すぎると、高屈折率特性が得られにくい。
本発明の光学ガラスにおいて、高屈折率特性を得るためには、ガラス中に含まれるTi4+及びNb5+の合量に対するSi4+の含有量(カチオン%)の比を適切に調整することが好ましい。具体的には、Si4+/(Ti4++Nb5+)は、好ましくは1.5以下、より好ましくは1以下である。なお、優れた耐失透性、化学的耐久性及び硬度、所望の熱膨張係数を得るためには、Si4+/(Ti4++Nb5+)は、0.1以上であることが好ましい。
本発明の光学ガラスにおいて、高屈折率特性、優れた耐失透性、化学的耐久性及び硬度、所望の熱膨張係数を得るためには、ガラス中に含まれるTi4+及びNb5+の合量に対するSi4+及びB3+の合量(カチオン%)の比を適切に調整することが好ましい。具体的には、(Si4++B3+)/(Ti4++Nb5+)は、好ましくは0.5〜2.5、より好ましくは0.75〜2.1である。(Si4++B3+)/(Ti4++Nb5+)が小さすぎると、失透が生じやすくなるとともに化学的耐久性が低下しやすくなる。また、熱膨張係数が高くなったり、硬度が低下しやすくなる。一方、(Si4++B3+)/(Ti4++Nb5+)が大きすぎると、高屈折率特性が得られにくい。
本発明の光学ガラスにおいて、高屈折率特性を得るためには、ガラス中に含まれるZn2+及びB3+の各含有量(カチオン%)の比Zn2+/B3+を適切に調整することが好ましい。具体的には、Zn2+/B3+は、好ましくは0.2〜3、より好ましくは0.3〜2.5、さらに好ましくは0.4〜2である。Zn2+/B3+が小さすぎると、高屈折率特性が得られにくい。一方、Zn2+/B3+が大きすぎると、失透が生じやすくなったり、化学的耐久性が低下しやすくなる。
本発明の光学ガラスにおいて、高屈折率特性を得るためには、ガラス中に含まれるSi4+、B3+及びZn2+の合量(カチオン%)を適切に調整することが好ましい。具体的には、Si4+B3++Zn2+は、25〜60%、好ましくは30〜55%、より好ましくは30〜52.5%である。一方、Si4+B3++Zn2+が少なすぎると、失透が生じやすくなる。Si4+B3++Zn2+が多すぎると、高屈折率特性が得られにくい。
本発明の光学ガラスにおいて、高屈折率特性を得るためには、ガラス中に含まれるB3+の含有量に対するSi4とZn2+の合量(カチオン%)の比を適切に調整することが好ましい。具体的には、(Si4+Zn2+)/B3+は、好ましくは0.5〜5、より好ましくは0.7〜4、さらに好ましくは0.9〜3である。(Si4+Zn2+)/B3+が小さすぎると、高屈折率特性が得られにくい。一方、(Si4+Zn2+)/B3+が大きすぎると、失透が生じやすくなる。
なお、清澄剤として、例えばSb2O3やSnO2を含有させることができる。Sb2O3は、不純物として混入するFe成分の着色を抑制する効果がある。Sb2O3の含有量は、好ましくは0〜1%、より好ましくは0.01〜0.1%である。Sb2O3の含有量が多すぎると、可視域透過率が低下する傾向がある。
なお、不純物であるFe2O3、NiO及びCoOの混入は極力抑制することが好ましい。Fe2O3、NiO及びCoOの含有量は、それぞれ好ましくは10ppm以下、より好ましくは5ppmである。Fe2O3、NiOまたはCoOの含有量が多すぎると、着色が強くなり、レンズ用ガラスとしての要求品位を満たさなくなるおそれがある。
本発明の光学ガラスの屈折率(nd)は1.975以上であり、好ましくは1.995以上、より好ましくは2以上である。屈折率の上限は特に限定されないが、高すぎると失透が生じやすくなるため、好ましくは2.2以下、より好ましくは2.1以下である。また、本発明の光学ガラスのアッベ数(νd)は22〜32であり、好ましくは23〜31、より好ましくは24〜30である。本発明の光学ガラスは、上記光学特性を満たすことにより色分散が補正しやすくなる。その結果、高機能で小型の光学デバイス用の光学レンズとして好適となる。
また、本発明の光学ガラスの波長1310nmにおける屈折率は、好ましくは1.95以上、より好ましくは1.96以上である。本発明の光学ガラスの波長1550nmにおける屈折率は、好ましくは1.945以上、より好ましくは1.95以上である。
本発明の光学ガラスのガラス転移点は、好ましくは630℃以上、より好ましくは640℃以上、さらに好ましくは650℃以上である。このようにガラス転移点が高いガラスは、熱膨張係数が低くなりやすく、硬度が高くなりやすい。
本発明の光学ガラスの30〜300℃における熱膨張係数は、好ましくは70〜95×10−7/℃、より好ましくは72.5〜92.5×10−7/℃、さらに好ましくは75〜90×10−7/℃である。例えば、本発明の光学ガラスからなるレンズは、ガラスや樹脂からなる接着剤を用いて金属部品(アルミナ等)に接合して使用される。この際、レンズと金属部品の熱膨張係数の差が大きいと、接着部分の剥離やレンズの割れが発生するおそれがある。本発明の光学ガラスの熱膨張係数が上記範囲内であれば、そのような問題が発生しにくくなる。
本発明の光学ガラスの液相温度は、好ましくは1300℃以下、より好ましくは1280℃以下である。液相温度が当該範囲を満たすことにより、100.6dPa・s以上の液相粘度を達成しやすく、例えば液滴成形を行った場合でも失透が生じにくくなる。
本発明の光学ガラスの着色度λ70は、好ましくは600nm以下、より好ましくは550nm以下、さらに好ましくは500nm以下、特に好ましくは480nm以下である。着色度λ70が大きすぎると、可視域または近紫外域における透過率に劣り、各種光学レンズ等に使用することが困難となる傾向がある。
着色度λ70を上記範囲に調整するためには、着色成分であるFe、Ni、Cr、Cu等の不純物の混入を抑制する、あるいは、Nb2O5、WO3、TiO2等の透過率を低下させる成分の含有量を適宜調整することが効果的である。
本発明の光学ガラスの1310nm及び1550nmにおける内部透過率は、好ましくは98%以上、より好ましくは98.5%以上、さらに好ましくは99%以上である。1310nm及び1550nmにおける内部透過率が低すぎると、赤外波長域で使用するレンズとしての使用が困難になる傾向がある。
本発明の光学ガラスのヌープ硬度(Hk=100)は、好ましくは550以上、より好ましくは600以上、さらに好ましくは650以上である。ヌープ硬度が低すぎると、研磨加工性に劣ったり、表面にキズやカケが生じやすくなる。
本発明の光学ガラスの化学的耐久性は、JOGISに準拠した粉末法により評価した場合、耐酸性で2級以上、耐水性で1級であることが好ましい。
次に、本発明の光学ガラスを用いて光ピックアップレンズや撮影用レンズ等を製造する方法を述べる。
まず、所望の組成になるようにガラス原料を調合した後、ガラス溶融炉中で溶融する。次に、溶融ガラスをノズルの先端から滴下して液滴状ガラスを作製し、プリフォームガラスを得る。得られたプリフォームガラスに研磨加工を施すことにより、所望の形状を有する光ピックアップレンズや撮影用レンズを得ることができる。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1〜3は本発明の実施例(No.1〜24)及び比較例(No.25〜28)を示す。
各試料は次のようにして作製した。
まず、表に示す各組成になるようにガラス原料を調合し、白金ルツボを用いて1250〜1450℃で2時間溶融した。溶融ガラスをカーボン板上に流し出し、さらにアニール後、各測定に適した試料を作製した。
得られた試料について、屈折率(nd、1310nm、1550nm)、アッベ数(νd)、ガラス転移点(Tg)、液相温度(TL)、着色度λ70、熱膨張係数、ヌープ硬度、耐酸性及び耐水性、内部透過率(1310nm、1550nm)を測定した。結果を表1〜3に示す。
なお、上記各特性は以下のようにして測定した。
屈折率はヘリウムランプのd線(587.6nm)及びLD光源(1310nm、1550nm)に対する測定値で示した。
アッベ数は、上記d線の屈折率と、水素ランプのF線(486.1nm)、同じく水素ランプのC線(656.3nm)の屈折率の値を用い、アッベ数(νd)=[(nd−1)/(nF−nC)]の式から算出した。
ガラス転移点及び熱膨張係数(測定温度範囲:30〜300℃)はディラトメーターを用いて測定した。
液相温度は、電気炉で1350℃−0.5時間の条件で試料を再溶融後、温度勾配を設けた電気炉内で16時間保持した後、電気炉から取り出して大気中で放冷し、光学顕微鏡で失透物の析出位置(温度)を求めることで測定した。
着色度λ70は次のようにして測定した。分光光度計(株式会社島津製作所製UV−3100)を用いて、光学研磨された厚さ10mm±0.1mmの試料について、200〜800nmの波長域での透過率を0.5nm間隔で測定し、透過率曲線を作製した。透過率曲線において、透過率70%を示す最短波長を着色度λ70とした。
ヌープ硬度は、温度25℃、湿度50%において、マツザワ精機製MXT50を用いて測定を行なった。具体的には、ガラス試料表面に荷重100gの圧子を15秒押圧し、圧痕の対角線の長さに基づき、ヌープ硬度の算出を行った。
耐酸性及び耐水性は、JOGISに準拠した粉末法により測定を行った。
内部透過率は、まず分光光度計(株式会社島津製作所製UV−3100)を用いて、光学研磨された厚さ5mm±0.1mm及び10mm±0.1mmの各試料について、表面反射損失を含む透過率を0.5nm間隔で測定し、得られた測定値から波長1310nm及び1500nmにおける内部透過率を算出した。
表から明らかなように、本発明の実施例であるNo.1〜24の各試料は、屈折率ndが1.985〜2.055、アッベ数νdが26.1〜29.3という所望の光学定数を有していた。また、ガラス転移点が660℃以上、液相温度が1200℃以下、着色度λ70が460nm以下、熱膨張係数が72〜75×10−7/℃、ヌープ硬度が690以上、耐酸性、耐水性ともに1級、波長1310nm及び1550nmにおける内部透過率がそれぞれ99.6%以上であった。
一方、比較例であるNo.25及び26の試料は、ガラス転移点が450℃以下と低く、熱膨張係数が100×10−7/℃以上と高く、ヌープ硬度が370以下と低かった。またNo.25の試料は耐酸性が4級、No.26の試料は耐酸性が5級、耐水性が2級と化学的耐久性に劣っていた。No.27及び28の試料は、屈折率ndが1.951以下と低かった。