JP2012192448A - 電子ビームの照射方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属ストリップに対し電子ビームを照射する方法において、電子ビームの出力が安定するまでの間、または電子ビームが金属ストリップの外側に照射される間に、別途用意したアイドルターゲットに電子ビームを照射するに際し、
上記アイドルターゲットのビーム照射面を傾斜させ、該アイドルターゲットのビーム照射面に対する電子ビームの照射角度を変更することによって、該アイドルターゲット表面におけるビーム照射径を調整する。
【選択図】図1
Description
電子ビームはビーム出力が安定するまで、数10〜数100 ms ほどの時間がかかる。高出力で被照射体を溶融・変形させる溶接などの用途では、ビーム出力が安定するまで、被照射体上にビームを照射している。一方で、表面改質などの用途においては、被照射体に照射される微妙な熱が、表面性状などに影響してくるため、加工する材料の近傍に設置したアイドルターゲットに電子ビームを照射して、出力を安定化させた後に、加工を開始している(例えば、特許文献1)。
(1)アイドルターゲットの変形・磨耗
(2)金属蒸気の発生による電子銃加工室の真空度低下
(3)金属ストリップへの金属蒸気の付着
(4)アイドルターゲットからの熱伝導による金属ストリップの高温化と変形
上記(2)により、電子ビームの金属ストリップへの照射エネルギが低下し、加工精度の低下を招く。
上記(3)により、金属ストリップの外観等が劣化する。
上記(4)により、電子ビーム源と金属ストリップの間の距離が変化し、加工精度が低下する。
また、特許文献3に、ビーム待機位置で収束電流を変化させることにより、ターゲットの蒸発を抑えることで、基板への不要な蒸着粒子の付着を防止する技術が開示されている。
一方、一般的な解決方法として、アイドルターゲットを大型化したり、アイドルターゲットの素材を変更することが考えられる。
また、同文献には、待機位置からストリップ照射開始点の距離が常に一定となるように、揺動させる電子ビームの形状を円状にさせることによって、上記問題を解消する技術も示されているが、この場合には、待機位置からストリップ照射開始点まで電子ビームを移動させる間に、金属ストリップに電子ビームが照射されてしまうおそれがあった。
(i)加工室内の真空度向上のために、アイドルターゲットを大きく離すような余剰スペースがない、
(ii)電子ビーム源と金属ストリップの間の距離が長い場合には、加工室内でターゲット位置をずらしてもビーム径に大きな変化はない、
(iii)ターゲットが電子銃部に近づくにつれ、ターゲットで気化した物質によるアーキング(異常放電)の頻度が増大する、
(iv)アイドルターゲットを金属ストリップより下方に設置する場合には、幅広の材料に照射するときに考えられるような、幅方向に複数台数の電子銃を使用する場合において、各々の電子銃からの電子ビームが待機できるようにアイドルターゲットを配置することができない、
という場合があった。
また、アイドルターゲットの素材を変更する場合は、例えば、熱伝導度がより高い銀、またはより融点の高いタングステンもしくはモリブデンに変えることによって、上記の問題を軽減または解決することができる。しかしながら、これらの素材はいずれも入手が難しく、またタングステンやモリブデンの場合には加工性に問題がある。
アイドルターゲットに電子ビームを照射する際のアイドルターゲット表面におけるビーム照射径を、上記(i)〜(iv)の課題を解決しつつ、金属ストリップに電子ビームを照射する際の金属ストリップ表面におけるビーム照射径よりも大きくしてやれば、アイドルターゲットのビーム照射面における熱密度を低下させて、アイドルターゲットの局所的な高温化を防止することができる。すなわち、具体的方法としては、アイドルターゲットのビーム照射面を傾斜させ、アイドルターゲットのビーム照射面に対する電子ビームの照射角度を大きくすることによって、アイドルターゲットのビーム照射面の局所的な高温化を効果的に抑制することができる。
この発明は、上記の知見に立脚するものである。
1.金属ストリップに対し電子ビームを照射する方法において、電子ビームの出力が安定するまでの間、または電子ビームが金属ストリップの外側に照射される間に、別途用意したアイドルターゲットに電子ビームを照射するに際し、
上記アイドルターゲットのビーム照射面を傾斜させ、該アイドルターゲットのビーム照射面に対する電子ビームの照射角度を30°以上とすることによって、該アイドルターゲット表面におけるビーム照射径を調整することを特徴とする電子ビームの照射方法。
本発明に係る電子ビームの代表的な照射要領を、図1を用いて説明する。図1において、1は電子ビーム発生装置(電子銃)、2は金属ストリップ、3は電子ビーム、4はアイドルターゲットである。さて金属ストリップ2は、真空室内を図中に示すY方向に走行しているものとする。電子銃1は、真空室の上方に設置されていて、ストリップ2の上面に向けて電子ビーム3を照射する。この時電子ビーム3は、電子銃1に取り付けられた収束コイルによりその径を絞られ、同じく電子銃1に取り付けられた偏向コイルによりその進行方向が偏向させられる。
なお、照射径rは、金属ストリップまたはアイドルターゲット上に電子ビームを静止したときに照射される照射面積Sを求め、その円相当径(S=πr2、すなわち、r=(S/π)1/2)として求められる。照射面積は、例えば、油性インクを塗布した鋼板にビームを照射すると照射部のインクがはがれるため、そのはがれた部分の面積を求めることで、事前に測定しておくことができる。
図4に示す結果から、この条件下ではΔWDが大きくなるにつれて、アイドルターゲット4が溶融しない最大の照射エネルギが高まる傾向にあることがわかる。
図5に示すように、入射角θを大きくすれば大きくするほど、アイドルターゲット表面におけるビーム照射径を大きくすることができる。ここに、入射角θとは、図1に示したとおり、アイドルターゲット表面のビーム照射位置における法線と電子ビーム軸線とのなす角をいう。
次に、図6に、電子ビームの照射エネルギ(J)を4Jづつ増大させていったときに、アイドルターゲットがはじめて溶融したときの照射エネルギと入射角との関係を調べた結果を示す。ここに、W0は450 mm 、W1は453 mm 、W2は424 mm 、電子銃1の直下(ストリップの中央部)における電子ビームの照射径は0.25 mm とした。また、電子ビーム3のアイドルターゲットにおける照射時間は0.1 秒とした。この結果から、この条件下では、照射角が大きくなるほどアイドルターゲット4が溶融しない照射エネルギ値を高めることができ、この照射角を30°以上とすることで、アイドルターゲットが溶融するようなアイドルターゲットの局所的な高温化をより効果的に抑制することができるということが判明した。好ましくは照射角:50°以上である。
上述したとおり、入射角θの変更の方がアイドルターゲットを昇降移動させる場合よりも良好な結果が得られるが、必要に応じて、この入射角θの変更とアイドルターゲットの昇降移動とを組み合わせても良いのは言うまでもない。
なお、アイドルターゲットの寸法は、大きければ大きいほど、アイドルターゲットの平均温度を低くする上で好ましい。
(1)アイドルターゲットの変形
(2)電子銃加工室の真空度低下
(3)金属ストリップへの金属蒸気付着
(4)金属ストリップの変形
の有無について調べた結果を、表2に示す。なお、金属ストリップの中央部における電子ビームの照射径は0.25 mm の一定とした。また、表1における配置パターン1,2は、それぞれ図1,2に示した配置に対応するものである。
次に、アイドルターゲットを単純に大型化したNo.4の例でも、上記(1)アイドルターゲットの変形や、上記(2)電子銃加工室の真空度低下の問題が生じる。また、No.6に示す例のように、アイドルターゲットを金属ストリップの上方に設置した場合には、アーキングが発生した。これは、電子銃とターゲット位置が近いため、ターゲットから微小に飛散する物質が電子銃部に悪影響を及ぼしやすいことによるものと推定される。
また、No.6に示す例のように、アイドルターゲットに対する入射角を変えた場合でも、その入射角が30°未満である場合は、アイドルターゲットの変形やアーキングが発生した。これは、入射角が小さいため、ビーム径拡大の効果が小さいことによるものと推定される。
以上の実施例により、本発明に従う電子ビームの照射方法によれば、アイドルターゲットの局所的な高温化を効果的に抑制できることが確認された。
2 金属ストリップ
3 電子ビーム
4 アイドルターゲット
Claims (3)
- 金属ストリップに対し電子ビームを照射する方法において、電子ビームの出力が安定するまでの間、または電子ビームが金属ストリップの外側に照射される間に、別途用意したアイドルターゲットに電子ビームを照射するに際し、
上記アイドルターゲットのビーム照射面を傾斜させ、該アイドルターゲットのビーム照射面に対する電子ビームの照射角度を30°以上とすることによって、該アイドルターゲット表面におけるビーム照射径を調整することを特徴とする電子ビームの照射方法。 - 前記アイドルターゲットのビーム照射面に対する電子ビームの照射角度を50°以上とすることを特徴とする請求項1に記載の電子ビームの照射方法。
- 前記アイドルターゲットのビーム照射面に対する電子ビームの照射角度の変更と共に、該アイドルターゲットを昇降移動させることを特徴とする請求項1または2に記載の電子ビームの照射方法。
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