JP5929808B2 - 高速電子ビーム照射による方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、変圧器鉄心などの用途に使用される方向性電磁鋼板の製造方法に関し、特に高速電子ビーム照射によって得られる磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
近年、エネルギー使用の効率化が進み、変圧器においても、動作時におけるエネルギー損失の低減が求められている。変圧器で生じる損失には、主に導線に生じる銅損と鉄心に生じる鉄損とがある。さらに、鉄損は、ヒステリシス損と渦電流損とに分けることができ、前者の低減には、素材の結晶方位の改善や不純物の低減などが有効であることが知られている。
例えば、特許文献1には、最終冷延前の焼鈍条件を適正化することによって、磁束密度と鉄損に優れた方向性電磁鋼板を製造する方法が示されている。
一方で、渦電流損は、板厚の低減や、Si添加量の増大の他に、特に板厚が0.30mm以下の鋼板において、レーザやプラズマジェット、電子ビーム(電子線)などで熱歪みを導入するなどの手法によって低減可能であることが知られている。
例えば、特許文献2には、2次再結晶後の鋼板にプラズマアークを照射することにより照射前には0.80W/kg以上であった鉄損W17/50を、0.65W/kg以下まで低減する技術が示されている。また、特許文献3には、被膜厚と、電子ビーム照射によって鋼板面に形成された磁区不連続部の平均幅を適正化することによって、鉄損が低く、騒音が小さいトランス用素材を得る技術が示されている。
このような背景の下、上記した熱歪みの導入を高速化することによって、低鉄損材の生産性を向上させる試みがなされている。
その方法としては、主として、
(1) ビーム速度の高速化、
(2) レーザ発振器や電子銃など照射源の増大(設置台数を増やす)
が考えられてきた。設備コストおよび製造コストの増大抑制や、メンテナンス性の観点からは、照射源の数は可能な限り少ない方が好ましく、コイル全幅を照射できるだけの最小限の数にすることが望ましい。
例えば、特許文献4には、コイル幅1mを4区画に分割して、それぞれの区画を1台の電子銃で処理する例が示されている。このように、同一区画の照射は最小限(1台)として、複数の電子銃で照射して高速処理化する方式は極力避けることが製造コスト上有利である。
特開2012-1741号公報 特開2011-246782号公報 特開2012-52230号公報 特開2012-37316号公報 特公平7-65106号公報 特許第2971518号公報 特開2012-194174号公報
そのため、(1)電子ビーム速度の高速化に注目が集められているが、ビームの高速化には以下に示すような問題がある。
(a) 高速偏向(高速走査)に追随可能な収束電流のビーム偏向位置制御が難しい(電子ビーム照射)。
(b) 低鉄損化するための照射出力が増大化する。
(c) 単位時間に照射される熱量が過度に増大し、照射部の被膜損傷が増大する。
前記(a)について。
電子ビーム照射において、1台の電子銃による偏向角が大きい場合や、ワーキングディスタンス(WD:収束コイルから鋼板までの距離)が大きい場合には、電子ビームの行路差が偏向照射中で大きくなる。このような場合、ビームの収束の強さを司る収束コイル電流が一定であると、照射線上でビーム径が変動し、磁区細分化効果が幅方向で異なってしまう。そこで、かかる問題を解消するため、通常、収束コイル電流は、偏向の位置に応じて変化させることとしており、例えば特許文献5,6に示されている。
しかしながら、ビームの走査速度(偏向速度)が過度に増大した場合には、収束電流位置制御を偏向と同期させることができなかった。この詳細なメカニズムについては不明な点が多いが、ビーム偏向が過度に高速化すると、偏向信号に同期させるための収束信号制御速度が、その固有インピーダンスのために追いつかないためと推定される。
なお、発明者らの実験によれば、磁区細分化に適正な単位ビーム走査長さ当たりの照射エネルギーは、ビーム径が0.3mm程度と仮定すれば、圧延方向1mm当たり4J/m程度と考えられる。従来知見におけるビーム走査速度、例えば特許文献5における走査速度Vは、一部の照射条件しか示されていないので明確ではないが、圧延方向8mm(照射間隔)当たりの適正な照射エネルギーは、8[mm]×4[J/m/mm]となる。
また、特許文献5では加速電圧は70kV、ビーム電流は10mAであり、所定の走査速度Vで上記の照射エネルギーが与えられることになるので、
8[mm]×4[J/m/mm]=70[kV](加速電圧)×10[mA](ビーム電流)/V[m/s](走査速度)
となり、これより、V≒22m/sとなる。
したがって、従来技術におけるビーム走査速度は30m/sに満たないと考えられる。
前記(b)について。
上述したように、方向性電磁鋼板の磁区細分化において、低鉄損化は適正なエネルギー照射の下で達成されることは、さまざまな従来知見が示すとおりである。
ここで、照射エネルギーは、およそ次式
照射エネルギー=出力/(走査速度×圧延方向照射ビーム繰返し間隔×ビーム径)
で示される。従って、ビーム走査速度が高速化した場合には、出力を増大させるか、圧延方向での照射ビームの繰返し間隔を縮小させるか、ビーム径を縮小させるかの条件変更をしなければ、低鉄損化を達成することができない。
これらのうち、照射ビームの繰返し間隔の縮小は、処理長さを増大させるため、磁区細分化コイルの生産性を損なってしまい、またビーム径は、コイル性能や光学系の制約によって縮小するには限界がある。従って、出力の増大が最も簡便で現実的な手段である。例えば、照射ビームの繰返し間隔:5mmで走査速度:200m/sとする場合には、上記推定式のもと、4kWの出力が必要になる。
しかしながら、ファイバーレーザなどでは、定格出力:1kW以下のものが多く、また電子ビーム装置でも4kWを超える出力用途は溶接用に使われるものが主であり、しかもビーム径が比較的太め(〜0.5mm以上)であるため磁区細分化の用途には適合しない。
また、照射電流増大によって、出力を増大させると、電子間反発が増大するためか、ビーム径が増大する傾向があり、その場合には、ますます高い出力が必要になる。
さらに、レーザ照射の場合には、鋼板の表面粗度に応じて適正出力が大きく変動する。
図1は、低鉄損化に必要な出力(走査速度:30m/s)に及ぼす鋼板表面粗度の影響を示すものである。レーザ波長は1μmである。出力:0.5〜1.5kWの間を0.1kW刻みで変更し、各出力でSST(単板磁気試験)での磁気測定試料を15枚作製し、その平均の鉄損W17/50 が最小になったときの出力を適正出力として示したものである。
同図より、レーザ照射の場合、鋼板の表面粗度に応じて、適正出力は2倍以上変化することが分かる。
このように、鋼板の表面粗度によって適正照射条件が変化する場合には、予め表面粗度を確認して適正条件を決定する必要があり、また装置の定格出力は低粗度材を低鉄損化できるように高めにする必要があるが、やはり大きな装置はランニングコストの増大などの問題がある。
前記(c)について。
さらに、高出力照射は、鋼板被膜を損傷させやすい傾向がある。これは、単位時間当たりに照射されるエネルギーが増大するためであり、低速照射では、熱拡散によって照射表面の局所的な過度な高温化は抑制されるものの、高速照射では拡散する間もなく過大な熱が照射されるため、被膜でその熱を吸収して被膜が蒸発し、損傷してしまう。この傾向は、巨大な熱を照射するパルスレーザなどで特に顕著であるが、一方で、連続照射では抑制されることが従来知見でも明らかとなっている。
ビーム偏向が、偏向と同期させるために行う収束制御よりも高速で行われているとすると、位置xが増大する方向にビームが照射される状況下では、位置xにおいて、適正収束コイル電流I(x)は出力されず、I(x’)(x’<x)が出力されることになる。
従って、図2に示すように、収束信号の遅れを予め加味した、偏向中心に対して非対称な収束コイル電流位置制御パターンを入力してやれば、高速照射においても幅方向に均一なビームを照射することが可能になる。パターンの適正化にはさまざまな方法が考えられるが、例えば、照射幅方向に形成された還流磁区形状が均一になるように繰返し調整すれば良い。
なお、このような収束コイル電流位置制御パターンは、フィラメントの交換の度に校正することが好ましいが、その場合には、調整に多くの時間がかかってしまうことが問題である。
しかしながら、上記のような調整をしてもなお、収束制御が照射全幅で不十分になることがある。発明者らは、この原因は、照射初期のビームに適正な収束電流を与えるための、事前調整を行う時間が無いためであることに気づいた。
これに対しては、図3に示すように、試料に照射する前に収束コイル電流を調整する時間を設けることによって、照射初期の焦点ズレを抑制することが可能になる。
ここで、事前調整中の電子ビームは、試料に直接照射されて不必要な熱歪が導入されないように、別途用意した銅板などのアイドルターゲット上に照射しておくことが好ましい。例えば、鋼板上を走査するのに必要な偏向角をθpとしたとき、偏向角θをθ>θpとして、アイドルターゲット上に捨てビーム照射すれば良い(特許文献7参照)。
なお、図3では、収束コイル電流を、図示したように3点を結ぶ直線上に制御しているが、このパターンに限らず、より滑らかな曲線パターンで制御しても何ら問題はない。
ところで、通常、電子ビームを高速で方向性電磁鋼板に照射する場合には、ビーム出力を逐一ON/OFFする時間がないため、ビームは常時出力し続けながら、図4にAとBで示すように往復照射するのが一般的である。ここで、A照射とB照射の間には、鋼板以外のアイドルターゲットに照射することもある。
しかしながら、このような電子ビームの往復走査照射に際しては、「往」工程(A)と「復」工程(B)とで、それぞれ別々の収束コイル電流位置制御パターンを適用しなければならない。すなわち、装置の非対称性などから、偏向中心をx=0としたとして、「往」工程でのパターンI(x)を単にI(-x)にしただけでは、磁区細分化に有利なフォーカス条件にはならないことが多い。このため、フィラメント交換後に、通常実施すべき収束調整に多大な時間を費やす必要が生じ、生産性低下の原因につながる。
そこで、発明者らは、還流磁区を形成させる電子ビームの照射は、「往」工程または「復」工程のいずれかのみとし、もう一方の工程は、ビーム照射始点までの帰還のみを目的として、還流磁区の形成や鋼板への歪導入が生じないように、さらに高速でビーム走査させれば良いのではないかとの考えを得るに至った。
しかしながら、このように往復工程で極端な速度差を付けることが困難な場合や、さらに高速処理したい場合には、両工程で同一の走査速度とし、それぞれ異なる収束コイル電流位置制御パターンを指定しても良いとの考えを得るに至った。
この場合は、A工程およびB工程の往復で磁区細分化に寄与する熱歪を導入できるために、調整の煩わしさを除けば、より高効率な照射が可能となる。
さらに、発明者らは、電子ビーム照射方式であれば、鋼板粗度Rzが小さくても、効率的に熱を導入することが可能であることを確認した(図1参照)。
従来、多用されてきたレーザ照射による磁区細分化では、レーザが鏡面で反射しやすいために、低粗度材の照射には、レーザ反射量を補うだけの出力を照射することが必要であった。また、反射したレーザで光学系が損傷するおそれもあった。さらに、照射幅を大きくするために、照射偏向角を増大させた場合には、照射端部においてレーザが全反射して、鋼板中に入熱されないおそれもあった。
この点、電子ビーム照射は、レーザと比較して、偏向角をより増大することが可能であるだけでなく、出力を抑えて照射することもできるため、より高速化しても磁区細分化に足る熱を導入することができる。また、低出力での照射は、照射エネルギーコストの低減は言うまでもなく、装置寿命増大による製造コストの低減にも有効である。
本発明は、上述した種々の知見に基づいて完成されたもので、その要旨構成は次のとおりである。
1.鋼板の圧延方向を横切る向きに、加速電圧:40〜300kV、ビーム径:50〜500μm、照射出力:5kW以下および圧延方向照射ビーム繰返し間隔:3〜15mmの照射条件の下で、電子ビームを直線状に100mm以上にわたり鋼板上を往復走査して、鋼板に線状の還流磁区部を導入する電子ビーム照射方法であって、
電子ビーム照射による還流磁区部の導入を「往」工程または「復」工程のいずれかとする照射パターンにおいて、電子ビーム照射による還流磁区部の導入を行う工程のビーム走査速度をVp(m/s)、電子ビーム照射による還流磁区部の導入を行わない工程のビーム走査速度をVs(m/s)としたとき、これらVpおよびVsについて、次式(1)
30m/s≦Vp≦Vs/3 --- (1)
の関係を満足させ、さらに電子ビーム照射を、収束信号の遅れを予め加味した、偏向中心に対して非対称な収束電流位置制御パターンで行う高速電子ビーム照射による方向性電磁鋼板の製造方法。
2.鋼板の圧延方向を横切る向きに、加速電圧:40〜300kV、ビーム径:50〜500μm、照射出力:5kW以下および圧延方向照射ビーム繰返し間隔:3〜15mmの照射条件の下で、電子ビームを直線状に100mm以上にわたり鋼板上を往復走査して、鋼板に線状の還流磁区部を導入する電子ビーム照射方法であって、
電子ビーム照射による還流磁区部の導入を「往」工程および「復」工程の両工程で行う照射パターンにおいて、電子ビーム照射による還流磁区部の導入を行う際のビーム走査速度をVp(m/s)としたとき、このVpについて、次式(2)
30m/s≦Vp --- (2)
の関係を満足させ、さらに「往」工程および「復」工程で収束電流位置制御パターンを異ならせ、かつそれぞれ、収束信号の遅れを予め加味した、偏向中心に対して非対称なパターンで行う高速電子ビーム照射による方向性電磁鋼板の製造方法。

3.十点平均粗さRzで測定した鋼板の表面粗さが8μm以下の方向性電磁鋼板を通板するに際し、ビーム走査速度Vpが30m/s以上において、照射出力Wを5kW以下とする前記1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
4.前記1乃至3のいずれかにおいて、電子ビーム照射が連続的である方向性電磁鋼板の製造方法。
5.前記1乃至3のいずれかにおいて、電子ビームを加速電圧:60kV以上で発生させる方向性電磁鋼板の製造方法。
6.前記1乃至3のいずれかにおいて、電子ビーム照射の際に鋼板上を走査するのに必要な偏向角をθpとしたとき、実際の偏向角θを
θ≧1.1θp
として、捨てビーム照射を行う方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、従来に比べ、超高速で方向性電磁鋼板の磁区細分化を行うことができる。
また、本発明によれば、電子ビーム出力を増大することなしに、低粗度材についても効果的に磁区細分化を行うことができるため、低いランニングコストで、エネルギー使用効率の高い方向性電磁鋼板の製造が可能になる。
低鉄損化に必要な出力(走査速度:30m/s)に及ぼす鋼板表面粗度の影響を示した図である。 収束信号の遅れを加味して合わせこんだ収束コイル電流位置制御パターンを示した図である。 偏向照射初期も含めて、収束信号の遅れを加味して合わせこんだ収束コイル電流位置制御パターンを示した図である。 本発明に従う電子ビームの照射方向を示した図である。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明は、鉄損低減を目的として、高速の電子ビーム照射を直線状に100mm以上にわたり鋼板上を往復走査することにより磁区細分化を行う方向性電磁鋼板の製造方法である。まず、好適な電子ビームの発生条件について述べる。
[加速電圧Va:40〜300kV]
同一の加速電圧の下では、ビームの高速化に伴い、適正出力が増大し、低鉄損化に好ましくないビーム径の増大が生じる。その抑制には、高加速電圧化が最も有効である。ここに、加速電圧が40kVに満たないと、ビーム径を絞ることが難しくなり鉄損低減効果が小さくなる。一方、300kVを超えると、フィラメントなどの装置寿命が短くなるだけでなく、X線漏洩防止のために装置が過度に巨大化し、メンテナンス性および生産性を減じてしまう。さらに、加速電圧は、より高いほど物質を透過し、被膜での局所的なエネルギー集中を抑制できるため、被膜の損傷を低減することが可能となる。以上の観点から、加速電圧Vaは40〜300kVの範囲とすることが好ましい。より好ましくは60〜150kVの範囲である。
[ビーム径φ:50〜500μm]
ビーム径φが50μmに満たないと、WD(収束コイルから鋼板までの距離)を極度に低減するなどの処置を講じざるを得ず、その場合、1つの電子ビーム源によって偏向照射可能な距離が大幅に減少してしまう。その結果、1200mmほどの広幅コイルを照射するために、多数の電子銃が必要となり、メンテナンス性および生産性を減じる。一方、ビーム径φが500μmを超えると、十分な鉄損低減効果が得られない。というのは、鋼板のビーム照射面積(熱歪み導入部分の体積)が過度に増大して、ヒステリシス損が劣化するためである。それ故、ビーム径φは50〜500μmの範囲とすることが好ましい。
次に、電子ビームの好適走査条件について述べる。
[電子ビームの走査距離:100mm以上]
本発明では、電子ビームを直線状に100mm以上にわたり鋼板上を往復走査して、磁区細分化を実施する。
ここに、電子ビームの走査距離を100mm以上としたのは、100mm未満の走査距離であれば、ビーム変更の中心部と端部とでの過度なビーム行路差が生じず、本発明の根幹である収束電流の位置制御を適用する効果が小さいからである。
[電子ビーム照射パターン]
本発明では、この電子ビーム照射パターンが重要である。
電子ビームを鋼板面上を往復走査して、通板される鋼板の圧延方向を横切る向きに直線状の熱歪を与えていく。このとき、電子ビームの「往」工程と「復」工程のうち一方のみを熱歪導入用の照射とすれば、収束コイル電流位置制御パターンの入力は1種類で済むようになり、フィラメント交換後などに必要となる収束コイル電流調整(焦点調整)の時間が短縮される。このためには、「往」工程または「復」工程のいずれかの工程で行う熱歪導入用の電子ビーム照射の走査速度をVp(m/s)、一方かような電子ビーム照射を行わない工程でのビーム走査速度をVs(m/s)としたとき、これらVpおよびVsについて、次式(1)
30m/s≦Vp≦Vs/3 --- (1)
の関係を満足させることが重要である。
ここに、電子ビームの走査速度が30m/sより小さいと、高い生産性を達成できない。より好ましくは60m/s以上である。また、VsをVpの3倍以上とすることによって、速度Vsで電子ビームを照射している際の鋼板に対する熱歪の導入を抑制し、鋼板内に不要な歪蓄積を避けることができる。というのは、鋼板内に歪を導入するためには、一定以上のエネルギー照射が必要であるが、上記の速度であれば、電子ビームは照射されるものの歪を導入するまでには至らないからである。
一方、Vp≦Vs/3が実現されない場合には、Vp=Vsとして、「往」工程および「復」工程の両工程とも熱歪導入用の電子ビーム照射とする必要がある。ここに、電子ビームの照射を「往」工程および「復」工程の両方で行う照射パターンにおいては、電子ビーム照射を行う際のビーム走査速度をVp(m/s)としたとき、このVpについて、次式(2)
30m/s≦Vp --- (2)
の関係を満足させる必要がある。
また、この場合には、それぞれの工程で別の収束コイル電流位置制御パターンを適用することが必要である。
なお、100m/s以上の高速走査のためには、偏向コイル制御を可能な限り単純にする方が好ましく、この観点からは、ドット状の照射よりも連続的な電子ビーム照射とすることが好ましい。
[電子ビーム偏向角θ:θ≧1.1θp](θpは、鋼板上を走査するのに必要な偏向角)
電子ビームの走査速度を高速化した場合、収束コイル電流は、収束の応答遅れを加味して設定する必要があるので、実際の電子ビーム偏向角がθpのみであると照射開始点近傍の収束を制御することができない。従って、電子ビーム照射の際に鋼板上を走査するのに必要な偏向角をθpとしたとき、実際の偏向角θはθpの1.1倍以上に増大させることが有利である。そして、増大させた部分を照射している間に、照射開始点近傍の収束命令を発するようにするのが良い。この場合、増大させた部分のビームは、焦点が大きくずれる位置に設置された銅などのアイドルターゲット上に捨てビーム照射をさせておけばよい。
[圧延方向での照射ビームの繰返し間隔:3〜15mm]
電子ビームは、直線状に鋼板の幅端部から、もう一方の幅端部へ照射し、これを圧延方向に周期的に繰り返して行う。この間隔(RDビーム間隔)は3〜15mmとすることが好ましい。このビーム間隔が狭いと、鋼中に形成される歪領域が過度に大きくなって、鉄損(ヒステリシス損)が劣化するだけでなく、生産性を低下させる。一方、広すぎると、いくら深さ方向に還流磁区を拡大しても、磁区細分化効果が乏しくなり鉄損が改善されない。
[照射ビームの走査角度:圧延直角方向に対し±30°以内]
鋼板の幅端部から、もう一方の幅端部への直線状照射において、始点から終点に向かう方向は、圧延直角方向に対し±30°の範囲とする。望ましくは±0°である。この±30°からずれると、歪み導入部の体積が過度に増大してしまうため、ヒステリシス損が劣化する。
なお、本発明において線状とは、直線のみならず、点線や不連続線も含むものとする。ただし、点線や不連続線照射の場合、線状に存在する点と点の間、あるいは連続線と連続線の間のビーム未照射部分の長さは0.8mm以下とすることが好ましい。これは、照射領域が過度に少ないと、渦電流損の改善効果が乏しくなるおそれがあるためである。
[照射出力W≦5kW]
この条件は、表面粗さが十点平均粗さRzで8μm以下の方向性電磁鋼板に対しても適用される。
照射出力が5kWより大きい場合には、装置の定格出力が増大し、装置が過度に大きくなって、メンテナンス性を阻害するだけでなく、カソード形状などの光学系をビーム径が絞りにくいように変更せざるを得なくなるため、磁区細分化に悪影響を及ぼす。
その他の好適条件については次のとおりである。
[加工室圧力:3Pa以下]
加工室の圧力が3Paを超えて大きいと、電子銃から発生した電子が散乱され、地鉄に熱影響を与え、還流磁区を形成する電子のエネルギーが減少するため、十分な磁区細分化がなされず、鉄損が改善しない。
本発明は、従来公知の方向性電磁鋼板すべてに対して適用することができる。
また、電子ビームを照射する方向性電磁鋼板には、絶縁被膜が形成されていても、形成されていなくても、いずれでも良い。
素材として、次に示す3種類の方向性電磁鋼板を用意した。
・素材A(成分組成:3.3%Si、板厚:0.22mm、Rz:3.8μm、W17/50:0.825W/kg)
・素材B(成分組成:3.2%Si、板厚:0.20mm、Rz:0.8μm、W17/50:0.802W/kg)
・素材C(成分組成:3.2%Si、板厚:0.20mm、Rz:1.2μm、W17/50:0.808W/kg)
これらの素材に対し、表1に示す条件で電子ビーム照射を行った。なお、表1中に示す「往復パターン1」は、熱歪導入用の電子ビーム照射を「往」工程または「復」工程のいずれかの工程で行う場合、一方「往復パターン2」は、熱歪導入用の電子ビーム照射を「往」工程または「復」工程の両工程で行う場合である。
コイル照射に用いた電子銃は1台で、400mm幅を照射するように、WDを調整した。また、ビーム径は250〜300μm、ビームの繰返し間隔は5mm、ビーム角度は90°、加工室圧力は0.1Paとした。
電子ビーム照射による磁区細分化処理後の鉄損W17/50、コイル1000m当たりの照射時間およびコイル1m当たりの照射線欠陥本数について調べた結果を、表1に示す。ここで、照射線欠陥とは、照射部の被膜が損傷していることをいう。
なお、磁気特性は、電子ビーム照射後の鋼板から100mm幅の試料を幅方向に4枚、長さ方向に8枚採取し、計32枚の試料についてSST測定を行い、その平均値にて導出した。
Figure 0005929808
表1に示したとおり、本発明に従う条件で電子ビーム照射を行うことにより、コイル処理時間が格段に短縮され(1000mを30min以内)、また磁気特性についてもW17/50<0.70W/kg(素材A)、W17/50<0.66W/kg(素材B、素材C)という、優れた鉄損特性を得ることができた。

Claims (6)

  1. 鋼板の圧延方向を横切る向きに、加速電圧:40〜300kV、ビーム径:50〜500μm、照射出力:5kW以下および圧延方向照射ビーム繰返し間隔:3〜15mmの照射条件の下で、電子ビームを直線状に100mm以上にわたり鋼板上を往復走査して、鋼板に線状の還流磁区部を導入する電子ビーム照射方法であって、
    電子ビーム照射による還流磁区部の導入を「往」工程または「復」工程のいずれかとする照射パターンにおいて、電子ビーム照射による還流磁区部の導入を行う工程のビーム走査速度をVp(m/s)、電子ビーム照射による還流磁区部の導入を行わない工程のビーム走査速度をVs(m/s)としたとき、これらVpおよびVsについて、次式(1)
    30m/s≦Vp≦Vs/3 --- (1)
    の関係を満足させ、さらに電子ビーム照射を、収束信号の遅れを予め加味した、偏向中心に対して非対称な収束電流位置制御パターンで行う高速電子ビーム照射による方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 鋼板の圧延方向を横切る向きに、加速電圧:40〜300kV、ビーム径:50〜500μm、照射出力:5kW以下および圧延方向照射ビーム繰返し間隔:3〜15mmの照射条件の下で、電子ビームを直線状に100mm以上にわたり鋼板上を往復走査して、鋼板に線状の還流磁区部を導入する電子ビーム照射方法であって、
    電子ビーム照射による還流磁区部の導入を「往」工程および「復」工程の両工程で行う照射パターンにおいて、電子ビーム照射による還流磁区部の導入を行う際のビーム走査速度をVp(m/s)としたとき、このVpについて、次式(2)
    30m/s≦Vp --- (2)
    の関係を満足させ、さらに「往」工程および「復」工程で収束電流位置制御パターンを異ならせ、かつそれぞれ、収束信号の遅れを予め加味した、偏向中心に対して非対称なパターンで行う高速電子ビーム照射による方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 十点平均粗さRzで測定した鋼板の表面粗さが8μm以下の方向性電磁鋼板を通板するに際し、ビーム走査速度Vpが30m/s以上において、照射出力Wを5kW以下とする請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれかにおいて、電子ビーム照射が連続的である方向性電磁鋼板の製造方法。
  5. 請求項1乃至3のいずれかにおいて、電子ビームを加速電圧:60kV以上で発生させる方向性電磁鋼板の製造方法。
  6. 請求項1乃至3のいずれかにおいて、電子ビーム照射の際に鋼板上を走査するのに必要な偏向角をθpとしたとき、実際の偏向角θを
    θ≧1.1θp
    として、捨てビーム照射を行う方向性電磁鋼板の製造方法。
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