JP2012188631A - ポリエステルフィルム、及びその製造方法、太陽電池用バックシート、並びに、太陽電池モジュール - Google Patents

ポリエステルフィルム、及びその製造方法、太陽電池用バックシート、並びに、太陽電池モジュール Download PDF

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Abstract

【課題】滑り性、密着性及び耐候性に優れるポリエステルフィルム及びその製造方法、並びに、密着性及び耐候性が高い太陽電池用バックシート及び長寿命の太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】固有粘度が0.70〜1.0dl/gであり、末端カルボキシ基濃度が20当量/トン以下である原料ポリエステルを溶融押出して未延伸フィルムを成膜し、未延伸フィルムを長手方向に延伸した後、幅方向に延伸して二軸延伸フィルムを得て、二軸延伸フィルムを170℃〜210℃で熱固定し、熱固定した二軸延伸フィルムを150℃〜190℃で、幅方向の緩和率(X%)と長手方向の緩和率(Y%)との比(X/Y)が0.6〜1.67であり、かつ、XとYとの積(XY)が15〜80となるように熱緩和すし、中心線平均表面粗さRaが10nm〜60nmであるポリエステルフィルムを製造する。
【選択図】図1

Description

本発明は、ポリエステルフィルム、及びその製造方法、太陽電池用バックシート、並びに、太陽電池モジュールに関する。
ポリエステルは、電気絶縁用途や、光学用途等、種々の用途で用いられている。電気絶縁用途としては、近年、特に、太陽電池バックシート等の太陽電池用途が注目されている。
ところで、ポリエステルは分子鎖の末端がカルボキシル基あるいは水酸基からなり、、通常は、その表面・内部にカルボキシル基や水酸基が多く存在している。特に、水分が存在する環境では末端のカルボキシル基が自己触媒作用として働くため、カルボキシル基の含有濃度が20当量/トンを超えて高い場合には加水分解を起こしやすく、経時で劣化する傾向がある。太陽電池モジュールが一般に用いられる環境は、屋外等の常に風雨に曝されるような環境であり、加水分解を起こし易い環境であるため、太陽電池用途においては、ポリエステルの加水分解抑制は重要な課題の一つである。
例えば、特許文献1には、透明導電層と多孔質半導体層の密着性を目的として、200℃で10分間熱処理したときのフィルムの長手方向と幅方向における熱収縮率の差の絶対値が0.8%以下であるポリエステルフィルム、およびその片面に設けられた透明導電層からなり、透明導電層の表面張力が40mN/m以上である、色素増感型太陽電池用積層フィルムが開示されている。
特許文献2には、縦方向に一軸延伸した熱可塑性樹脂フィルムをガラス転移温度以上の温度で横方向に延伸したのち熱固定する二軸延伸フィルムの製造に際し、横延伸直後のフィルム温度をガラス転移温度以下とし、次いでフィルム両側端を把持したまま融点−20℃乃至融点−100℃の範囲の温度で熱固定し、かつ該熱固定温度における最高温度を含む熱固定区間においてたて方向に0.1乃至10%収縮せしめることを特徴とする二軸延伸フィルムの製造方法が開示されている。
特許文献3には、カルボキシル末端基濃度が13eq/ton以下であり、示差走査熱量測定(DSC)により求められる微少吸熱ピーク温度が220℃以下である太陽電池用ポリエステルフィルムが開示されている。
特開2005−216706号公報 特開昭57−57628号公報 国際公開WO2010/110119A1号公報
本発明は、滑り性、密着性及び耐候性に優れるポリエステルフィルム及びその製造方法、並びに、密着性及び耐候性が高い太陽電池用バックシート及び長寿命の太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
<1> 固有粘度が0.70dl/g〜1.0dl/gであり、末端カルボキシ基濃度が20当量/トン以下である原料ポリエステルを溶融押出して未延伸フィルムを成膜する未延伸フィルム成膜工程と、前記未延伸フィルムを長手方向に延伸した後、幅方向に延伸して二軸延伸フィルムを得る二軸延伸工程と、前記二軸延伸フィルムを170℃〜210℃で熱固定する熱固定工程と、前記熱固定した二軸延伸フィルムを、150℃〜190℃で、幅方向の緩和率(X%)と長手方向の緩和率(Y%)との比(X/Y)が0.6〜1.67であり、かつ、前記Xと前記Yとの積(XY)が15〜80となるように熱緩和する熱緩和工程と、を含み、中心線平均表面粗さRaが10nm〜60nmであるポリエステルフィルムを製造するポリエステルフィルムの製造方法。
<2> 前記熱緩和工程は、前記XとYとの比(X/Y)が0.8〜1.25であり、かつ、前記XとYとの積(XY)が25〜70となるように熱緩和を行う<1>に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
<3> 前記ポリエステル樹脂に、平均粒子径が0.03μm以上0.3μm未満であり、かつ、短径に対する長径の比(長径/短径)が1.0〜3.0である球状粒子を0.01質量%〜1.0質量%配合する<1>又は<2>に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
<4> 前記ポリエステルフィルムの面配向度係数が、0.14〜0.18である<1>〜<3>のいずれかに記載のポリエステルフィルムの製造方法。
<5> 前記ポリエステルフィルムの赤外線吸収のスペクトルにおいて、1043cm−1における吸光度I(c)と、1069cm−1における吸光度I(a)との比I(c)/I(a)が、1.2〜2.5である<1>〜<4>のいずれかに記載のポリエステルフィルムの製造方法。
<6> 前記ポリエステルフィルムの示差走査熱量測定で得られる温度に対する温度を示す曲線において、微少吸熱ピークが検出される温度が170℃〜210℃である<1>〜<5>のいずれかに記載のポリエステルフィルムの製造方法。
<7> 前記ポリエステルフィルムの分子配向度MOR(Maximum Oriented Ratio)値が1.0〜1.15である<1>〜<6>のいずれかに記載のポリエステルフィルムの製造方法。
<8> <1>〜<7>のいずれかに記載のポリエステルフィルムの製造方法により製造されたポリエステルフィルムを含む太陽電池用バックシート。
<9> 下記(1)〜(5)を全て満たすポリエステルフィルム。
(1)固有粘度が0.70dl/g〜1.0dl/g
(2)末端カルボキシ基濃度が20当量/トン以下
(3)密度が1.385g/cm〜1.395g/cm
(4)150℃にて30分加熱したときに、幅方向の熱収縮(A%)と長手方向の熱収縮(B%)とが共に0.6%以内であり、かつ、前記Aと前記Bとの比(A/B)が0.6〜1.67
(5)中心線平均表面粗さRaが10nm〜60nm
<10> 前記ポリエステルフィルムの赤外線吸収のスペクトルにおいて、1043cm−1における吸光度I(c)と、1069cm−1における吸光度I(a)との比I(a)/I(a)が、1.2〜2.5である<9>に記載のポリエステルフィルム。
<11> <9>又は<10>に記載のポリエステルフィルムを含む太陽電池用バックシート。
<12> 太陽光が入射する透明性の基板と、太陽電池素子と、<11>に記載の太陽電池用バックシートとを備えた太陽電池モジュール。
本発明によれば、滑り性、密着性及び耐候性に優れるポリエステルフィルム及びその製造方法、並びに、密着性及び耐候性が高い太陽電池用バックシート及び長寿命の太陽電池モジュールを提供することができる。
本発明で用いる2軸延伸機の一例の構成を示す概略図である。
以下、本発明について具体的に説明する。
ポリエステルフィルムに耐候性を付与するには高IV、低末端カルボキシル基にすることが必要であるが、耐候性を維持したまま、加工適性(滑り性)と密着適性を付与することが困難であった。
そこで、本発明者は、密着性を向上させるため、フィルム表面の結晶化度を低下させ、更に接着層との界面に生ずる残留歪を小さくかつMDとTD方向の残留歪のバランスをとることにより密着性を向上させることができると考え、延伸後の熱固定温度を比較的低く設定することでフィルム表面の結晶化度を低下させ、かつ熱緩和率のMDとTDのバランスを保ちながら絶対値自体を大きくすることを考えた。
熱固定は、一般的に230℃程度で行われているが、その後の温度変化が大きく、熱固定後の熱緩和では、フィルムの長手方向の緩和(MD緩和)が大きくなり、シワが発生し易い。
一方、熱固定温度を例えば210℃以下の低温で行うと、残留応力が上昇しやすく、特に厚さが150μm以上となる厚手のポリエステルフィルムを製造する場合に残留応力が問題となる。
そこで、本発明者は、フィルムの長手方向の緩和率と幅方向の緩和率を大きくするとともに、両方向の緩和率のバランスを取ることで残留応力が低減させることを考え、さらに検討を重ねた結果、溶融押出した未延伸フィルムを縦横に逐次延伸した後、熱固定温度を特定の範囲(170〜210℃)に、かつ、熱緩和温度を特定の範囲(150〜190℃)に制御し、更にTD緩和率(X%)とMD緩和率(Y%)との比(X/Y)及び積(XY)をそれぞれ特定の範囲にすることにより、密着界面の歪低減と滑り性付与のために必要な表面凹凸の両立が可能なポリエステルフィルムを製造することができることを見出した。
<ポリエステルフィルムの製造方法>
本発明のポリエステルフィルムの製造方法は、固有粘度が0.70dl/g〜1.0dl/gであり、末端カルボキシ基濃度が20当量/トン以下である原料ポリエステルを溶融押出して未延伸フィルムを成膜する未延伸フィルム成膜工程と、
前記未延伸フィルムを長手方向に延伸した後、幅方向に延伸して二軸延伸フィルムを得る二軸延伸工程と、
前記二軸延伸フィルムを170℃〜210℃で熱固定する熱固定工程と、
前記熱固定した二軸延伸フィルムを、150℃〜190℃で、幅方向の緩和率(X%)と長手方向の緩和率(Y%)との比(X/Y)が0.6〜1.67であり、かつ、前記Xと前記Yとの積が15〜80となるように熱緩和する熱緩和工程と、を含み、
中心線平均表面粗さRaが10nm〜60nmであるポリエステルフィルムを製造するポリエステルフィルムの製造方法である。
(未延伸フィルム成膜工程)
固有粘度(IV)が0.70dl/g〜1.0dl/gであり、末端カルボキシ基濃度(AV)が20当量/トン以下である原料ポリエステルを溶融押出して未延伸フィルムを成膜する。
‐原料ポリエステル‐
まず、IVが0.70dl/g〜1.0dl/gであり、AVが20当量/トン以下である原料ポリエステルを用意する。上記IV及びAVを有する原料ポリエステルは、原料ポリエステルの合成に用いる触媒や、重合方法等を制御することにより得ることができる。
かかるIV及びAVを有する原料ポリエステルは、ジカルボン酸成分と、ジオール成分とを用いて合成してもよいし、市販のポリエステルを用いてもよい。原料ポリエステルは、製造すべきポリエステルフィルムの原料となるポリエステルのほかに、無機粒子や有機粒子のスラリーを含んでいてもよい。また、原料ポリエステルは、触媒由来のチタン元素を含んでいてもよい。また、AV値を有効に低減する方法として、低温でポリエステル樹脂の重合度を上昇させることが可能な固相重合を用いることも好ましい。
特に、本発明では中心線平均表面粗さRaが10nm〜60nmとなるポリエステルフィルムを製造するため、表面粗さRaが上記範囲内となるように、球状粒子を配合することが好ましく、具体的には、平均粒子径が0.03μm以上0.3μm未満であり、更に好ましくは0.04μm以上0.25μm未満であり、特に好ましくは0.05μm以上0.20μm未満である。平均粒径が0.3μm以上では、フィルムの被覆面が粗面化し、フィルムの透明性が低下する傾向がある。一方、0.03μm未満では、加工適性付与に必要な滑り性を十分に付与することが出来ない。
また、短径に対する長径の比(長径/短径)が1.0〜3.0、更に好ましくは1.0〜2.5、特に好ましくは1.0〜2.0である球状粒子を0.01質量%〜1.0質量%更に好ましくは0.02重量%〜0.5重量%、特に好ましくは0.03重量%〜0.3重量%配合することが好ましい。
上記球状粒子としては、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、シリカーアルミナ複合酸化物粒子、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋ポリスチレン、架橋ポリメチルメタクリレート、架橋アクリル、などの架橋高分子粒子、シリコン樹脂粒子、ポリイミド粒子、フッ素系樹脂粒子、などの耐熱性高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子が挙げられる。なかでも、シリカ粒子はポリエステル樹脂と屈折率が比較的近く、高透明のフィルムを得やすいため最も好適である。
原料ポリエステルを合成する場合は、例えば、(A)ジカルボン酸成分と、(B)ジオール成分とを、周知の方法でエステル化反応及び/又はエステル交換反応させることによって得ることができる。
(A)多価カルボン酸成分としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、イソソルビド、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、などの脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン、9,9’−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン酸等の芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸もしくはそのエステル誘導体が挙げられる。
(B)多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、イソソルビドなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールA、1,3―ベンゼンジメタノール,1,4−ベンセンジメタノール、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、などの芳香族ジオール類等のジオール化合物が挙げられる。
(A)ジカルボン酸成分として、芳香族ジカルボン酸の少なくとも1種が用いられる場合が好ましい。より好ましくは、ジカルボン酸成分のうち、芳香族ジカルボン酸を主成分として含有する。なお、「主成分」とは、ジカルボン酸成分に占める芳香族ジカルボン酸の割合が80質量%以上であることをいう。芳香族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分を含んでもよい。このようなジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸などのエステル誘導体等である。
また、(B)ジオール成分として、脂肪族ジオールの少なくとも1種が用いられる場合が好ましい。脂肪族ジオールとして、エチレングリコールを含むことができ、好ましくはエチレングリコールを主成分として含有する。なお、主成分とは、ジオール成分に占めるエチレングリコールの割合が80質量%以上であることをいう。
脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール)の使用量は、前記芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸)及び必要に応じそのエステル誘導体の1モルに対して、1.015〜1.50モルの範囲であるのが好ましい。該使用量は、より好ましくは1.02〜1.30モルの範囲であり、更に好ましくは1.025〜1.10モルの範囲である。該使用量は、1.015以上の範囲であると、エステル化反応が良好に進行し、1.50モル以下の範囲であると、例えばエチレングリコールの2量化によるジエチレングリコールの副生が抑えられ、融点やガラス転移温度、結晶性、耐熱性、耐加水分解性、耐候性など多くの特性を良好に保つことができる。
エステル化反応及び/又はエステル交換反応には、従来から公知の反応触媒を用いることができる。該反応触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、リン化合物などを挙げることができる。通常、ポリエステルの製造方法が完結する以前の任意の段階において、重合触媒としてアンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物を添加することが好ましい。このような方法としては、例えば、ゲルマニウム化合物を例に取ると、ゲルマニウム化合物粉体をそのまま添加することが好ましい。
例えば、エステル化反応工程は、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを、チタン化合物を含有する触媒の存在下で重合する。このエステル化反応工程では、触媒であるチタン化合物として、有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体を用いると共に、工程中に少なくとも、有機キレートチタン錯体と、マグネシウム化合物と、置換基として芳香環を有しない5価のリン酸エステルとをこの順序で添加する過程を設けて構成される。
まず初めに、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールを、マグネシウム化合物及びリン化合物の添加に先立って、チタン化合物である有機キレートチタン錯体を含有する触媒と混合する。有機キレートチタン錯体等のチタン化合物は、エステル化反応に対しても高い触媒活性を持つので、エステル化反応を良好に行なわせることができる。このとき、ジカルボン酸成分及びジオール成分を混合した中にチタン化合物を加えてもよいし、ジカルボン酸成分(又はジオール成分)とチタン化合物を混合してからジオール成分(又はジカルボン酸成分)を混合してもよい。また、ジカルボン酸成分とジオール成分とチタン化合物とを同時に混合するようにしてもよい。混合は、その方法に特に制限はなく、従来公知の方法により行なうことが可能である。
より好ましいポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)であり、さらに好ましいのはPETである。さらに、PETは、ゲルマニウム(Ge)系触媒、アンチモン(Sb)系触媒、アルミニウム(Al)系触媒、及びチタン(Ti)系触媒から選ばれる1種又は2種以上を用いて重合されるものが好ましく、より好ましくはTi系触媒である。
前記Ti系触媒は、反応活性が高く、重合温度を低くすることができる。そのため、特に重合反応中にポリエステルが熱分解し、COOHが発生するのを抑制することが可能である。すなわち、Ti系触媒を用いることで、熱分解の原因となるポリエステルの末端カルボン酸の量を低減することができ、異物形成を抑制することができる。ポリエステルの末端カルボン酸の量を低減しておくことで、ポリエステルフィルムを製造した後に、ポリエステルフィルムが熱分解することを抑制することもできる。
前記Ti系触媒としては、酸化物、水酸化物、アルコキシド、カルボン酸塩、炭酸塩、蓚酸塩、有機キレートチタン錯体、及びハロゲン化物等が挙げられる。Ti系触媒は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、二種以上のチタン化合物を併用してもよい。
Ti系触媒の例としては、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートテトラマー、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネート等のチタンアルコキシド、チタンアルコキシドの加水分解により得られるチタン酸化物、チタンアルコキシドと珪素アルコキシドもしくはジルコニウムアルコキシドとの混合物の加水分解により得られるチタン−珪素もしくはジルコニウム複合酸化物、酢酸チタン、蓚酸チタン、蓚酸チタンカリウム、蓚酸チタンナトリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸−水酸化アルミニウム混合物、塩化チタン、塩化チタン−塩化アルミニウム混合物、チタンアセチルアセトナート、有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体、等が挙げられる。
ポリエステルを重合する際において、触媒としてチタン(Ti)化合物を、1ppm以上50ppm以下、より好ましくは2ppm以上30ppm以下、さらに好ましくは3ppm以上15ppm以下の範囲で用いて重合を行なうことが好ましい。この場合、原料ポリエステルには、1ppm以上50ppm以下のチタン元素が含まれる。
原料ポリエステルに含まれるチタン元素の量が1ppmよりも少ないと、ポリエステルの重量平均分子量(Mw)を上げることができず、熱分解し易いため、押出機内で異物が増加し易く、好ましくない。原料ポリエステルに含まれるチタン元素の量が50ppmmを超えると、Ti系触媒が異物となり、ポリエステルシートの延伸の際に、延伸むらを引き起こすため、好ましくない。
[チタン化合物]
触媒成分であるチタン化合物として、有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体の少なくとも1種が用いられる。有機酸としては、例えば、クエン酸、乳酸、トリメリット酸、リンゴ酸等を挙げることができる。中でも、クエン酸又はクエン酸塩を配位子とする有機キレート錯体が好ましい。
例えばクエン酸を配位子とするキレートチタン錯体を用いた場合、微細粒子等の異物の発生が少なく、他のチタン化合物に比べ、重合活性と色調の良好なポリエステルが得られる。更に、クエン酸キレートチタン錯体を用いる場合でも、エステル化反応の段階で添加する方法により、エステル化反応後に添加する場合に比べ、重合活性と色調が良好で、末端カルボキシ基の少ないポリエステルが得られる。この点については、チタン触媒はエステル化反応の触媒効果もあり、エステル化段階で添加することでエステル化反応終了時におけるオリゴマー酸価が低くなり、以降の重縮合反応がより効率的に行なわれること、またクエン酸を配位子とする錯体はチタンアルコキシド等に比べて加水分解耐性が高く、エステル化反応過程において加水分解せず、本来の活性を維持したままエステル化及び重縮合反応の触媒として効果的に機能するものと推定される。
また、一般に、末端カルボキシ基量が多いほど耐加水分解性が悪化することが知られており、上記の添加方法によって末端カルボキシ基量が少なくなることで、耐加水分解性の向上が期待される。
前記クエン酸キレートチタン錯体としては、例えば、ジョンソン・マッセイ社製のVERTEC AC−420など市販品として容易に入手可能である。
芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールは、これらが含まれたスラリーを調製し、これをエステル化反応工程に連続的に供給することにより導入することができる。
エステル化反応させる際において、Ti触媒を用い、Ti添加量がTi元素換算値で1ppm以上30ppm以下、より好ましくは3ppm以上20ppm以下、さらに好ましくは5ppm以上15ppm以下の範囲で重合反応させる態様が好ましい。チタン添加量は、1ppm以上であると、重合速度が速くなる点で有利であり、30ppm以下であると、良好な色調が得られる点で有利である。
また、チタン化合物としては、有機キレートチタン錯体以外には一般に、酸化物、水酸化物、アルコキシド、カルボン酸塩、炭酸塩、蓚酸塩、及びハロゲン化物等が挙げられる。本発明の効果を損なわない範囲であれば、有機キレートチタン錯体に加えて、他のチタン化合物を併用してもよい。
このようなチタン化合物の例としては、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートテトラマー、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネート等のチタンアルコキシド、チタンアルコキシドの加水分解により得られるチタン酸化物、チタンアルコキシドと珪素アルコキシドもしくはジルコニウムアルコキシドとの混合物の加水分解により得られるチタン−珪素もしくはジルコニウム複合酸化物、酢酸チタン、蓚酸チタン、蓚酸チタンカリウム、蓚酸チタンナトリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸−水酸化アルミニウム混合物、塩化チタン、塩化チタン−塩化アルミニウム混合物、チタンアセチルアセトナート等が挙げられる。
本発明においては、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを、チタン化合物を含有する触媒の存在下で重合するとともに、チタン化合物の少なくとも一種が有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体であって、有機キレートチタン錯体とマグネシウム化合物と置換基として芳香環を有しない5価のリン酸エステルとをこの順序で添加する過程を少なくとも含むエステル化反応工程と、エステル化反応工程で生成されたエステル化反応生成物を重縮合反応させて重縮合物を生成する重縮合工程と、を設けて構成されているポリエステルの製造方法により作製されるのが好ましい。
この場合、エステル化反応の過程において、チタン化合物として有機キレートチタン錯体を存在させた中に、マグネシウム化合物を添加し、次いで特定の5価のリン化合物を添加する添加順とすることで、チタン触媒の反応活性を適度に高く保ち、マグネシウムによる静電印加特性を付与しつつ、かつ重縮合における分解反応を効果的に抑制することができるため、結果として着色が少なく、高い静電印加特性を有するとともに高温下に曝された際の黄変色が改善されたポリエステルが得られる。
これにより、重合時の着色及びその後の溶融製膜時における着色が少なくなり、従来のアンチモン(Sb)触媒系のポリエステルに比べて黄色味が軽減され、また、透明性の比較的高いゲルマニウム触媒系のポリエステルに比べて遜色のない色調、透明性を持ち、しかも耐熱性に優れたポリエステルを提供できる。また、コバルト化合物や色素などの色調調整材を用いずに高い透明性を有し、黄色味の少ないポリエステルが得られる。
このポリエステルは、透明性に関する要求の高い用途(例えば、光学用フィルム、工業用リス等)に利用が可能であり、高価なゲルマニウム系触媒を用いる必要がないため、大幅なコスト低減が図れる。加えて、Sb触媒系で生じやすい触媒起因の異物の混入も回避されるため、製膜過程での故障の発生や品質不良が軽減され、得率向上による低コスト化も図ることができる。
エステル化反応させるにあたり、チタン化合物である有機キレートチタン錯体と添加剤としてマグネシウム化合物と5価のリン化合物とをこの順に添加する過程を設ける。このとき、有機キレートチタン錯体の存在下、エステル化反応を進め、その後はマグネシウム化合物の添加を、リン化合物の添加前に開始する。
[リン化合物]
5価のリン化合物として、置換基として芳香環を有しない5価のリン酸エステルの少なくとも一種が用いられる。例えば、炭素数2以下の低級アルキル基を置換基として有するリン酸エステル〔(OR)−P=O;R=炭素数1又は2のアルキル基〕が挙げられ、具体的には、リン酸トリメチル、リン酸トリエチルが特に好ましい。
リン化合物の添加量としては、P元素換算値が50ppm以上90ppm以下の範囲となる量が好ましい。リン化合物の量は、より好ましくは60ppm以上80ppm以下となる量であり、さらに好ましくは60ppm以上75ppm以下となる量である。
[マグネシウム化合物]
ポリエステルにマグネシウム化合物を含めることにより、ポリエステルの静電印加性が向上する。この場合に着色がおきやすいが、本発明においては、着色を抑え、優れた色調、耐熱性が得られる。
マグネシウム化合物としては、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキシド、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム等のマグネシウム塩が挙げられる。中でも、エチレングリコールへの溶解性の観点から、酢酸マグネシウムが最も好ましい。
マグネシウム化合物の添加量としては、高い静電印加性を付与するためには、Mg元素換算値が50ppm以上となる量が好ましく、50ppm以上100ppm以下の範囲となる量がより好ましい。マグネシウム化合物の添加量は、静電印加性の付与の点で、好ましくは60ppm以上90ppm以下の範囲となる量であり、さらに好ましくは70ppm以上80ppm以下の範囲となる量である。
エステル化反応工程においては、触媒成分である前記チタン化合物と、添加剤である前記マグネシウム化合物及びリン化合物とを、下記式(i)から算出される値Zが下記の関係式(ii)を満たすように、添加して溶融重合させる場合が特に好ましい。ここで、P含有量は芳香環を有しない5価のリン酸エステルを含むリン化合物全体に由来するリン量であり、Ti含有量は、有機キレートチタン錯体を含むTi化合物全体に由来するチタン量である。このように、チタン化合物を含む触媒系でのマグネシウム化合物及びリン化合物の併用を選択し、その添加タイミング及び添加割合を制御することによって、チタン化合物の触媒活性を適度に高く維持しつつも、黄色味の少ない色調が得られ、重合反応時やその後の製膜時(溶融時)などで高温下に曝されても黄着色を生じ難い耐熱性を付与することができる。
(i)Z=5×(P含有量[ppm]/P原子量)−2×(Mg含有量[ppm]/Mg原子量)−4×(Ti含有量[ppm]/Ti原子量)
(ii)+0≦Z≦+5.0
これは、リン化合物はチタンに作用のみならずマグネシウム化合物とも相互作用することから、3者のバランスを定量的に表現する指標となるものである。
前記式(i)は、反応可能な全リン量から、マグネシウムに作用するリン分を除き、チタンに作用可能なリンの量を表現したものである。値Zが正の場合は、チタンを阻害するリンが余剰な状況にあり、逆に負の場合はチタンを阻害するために必要なリンが不足する状況にあるといえる。反応においては、Ti、Mg、Pの各原子1個は等価ではないことから、式中の各々のモル数に価数を乗じて重み付けを施してある。
本発明においては、特殊な合成等が不要であり、安価でかつ容易に入手可能なチタン化合物、リン化合物、マグネシウム化合物を用いて、反応に必要とされる反応活性を持ちながら、色調及び熱に対する着色耐性に優れたポリエステルを得ることができる。
前記式(ii)において、重合反応性を保った状態で、色調及び熱に対する着色耐性をより高める観点から、+1.0≦Z≦+4.0を満たす場合が好ましく、+1.5≦Z≦+3.0を満たす場合がより好ましい。
本発明における好ましい態様として、エステル化反応が終了する前に、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールに、1ppm以上30ppm以下のクエン酸又はクエン酸塩を配位子とするキレートチタン錯体を添加後、該キレートチタン錯体の存在下に、60ppm以上90ppm以下(より好ましくは70ppm以上80ppm以下)の弱酸のマグネシウム塩を添加し、該添加後にさらに、60ppm以上80ppm以下(より好ましくは65ppm以上75ppm以下)の、芳香環を置換基として有しない5価のリン酸エステルを添加する態様が挙げられる。
エステル化反応は、少なくとも2個の反応器を直列に連結した多段式装置を用いて、エチレングリコールが還流する条件下で、反応によって生成した水又はアルコールを系外に除去しながら実施することができる。
また、上記したエステル化反応は、一段階で行なってもよいし、多段階に分けて行なうようにしてもよい。
エステル化反応を一段階で行なう場合、エステル化反応温度は230〜260℃が好ましく、240〜250℃がより好ましい。
エステル化反応を多段階に分けて行なう場合、第一反応槽のエステル化反応の温度は230〜260℃が好ましく、より好ましくは240〜250℃であり、圧力は1.0〜5.0kg/cmが好ましく、より好ましくは2.0〜3.0kg/cmである。第二反応槽のエステル化反応の温度は230〜260℃が好ましく、より好ましくは245〜255℃であり、圧力は0.5〜5.0kg/cm、より好ましくは1.0〜3.0kg/cmである。さらに3段階以上に分けて実施する場合は、中間段階のエステル化反応の条件は、前記第一反応槽と最終反応槽の間の条件に設定するのが好ましい。
−重縮合−
重縮合は、エステル化反応で生成されたエステル化反応生成物を重縮合反応させて重縮合物を生成する。重縮合反応は、1段階で行なってもよいし、多段階に分けて行なうようにしてもよい。
エステル化反応で生成したオリゴマー等のエステル化反応生成物は、引き続いて重縮合反応に供される。この重縮合反応は、多段階の重縮合反応槽に供給することにより好適に行なうことが可能である。
例えば、3段階の反応槽で行なう場合の重縮合反応条件は、第一反応槽は、反応温度が255〜280℃、より好ましくは265〜275℃であり、圧力が100〜10torr(13.3×10−3〜1.3×10−3MPa)、より好ましくは50〜20torr(6.67×10−3〜2.67×10−3MPa)であって、第二反応槽は、反応温度が265〜285℃、より好ましくは270〜280℃であり、圧力が20〜1torr(2.67×10−3〜1.33×10−4MPa)、より好ましくは10〜3torr(1.33×10−3〜4.0×10−4MPa)であって、最終反応槽内における第三反応槽は、反応温度が270〜290℃、より好ましくは275〜285℃であり、圧力が10〜0.1torr(1.33×10−3〜1.33×10−5MPa)、より好ましくは5〜0.5torr(6.67×10−4〜6.67×10−5MPa)である態様が好ましい。
上記のようにして合成されたポリエステルには、光安定化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、易滑剤(微粒子)、核剤(結晶化剤)、結晶化阻害剤などの添加剤を更に含有させてもよい。
原料ポリエステルは、固相重合したペレットであることが好ましい。
エステル化反応により重合した後に、さらに固相重合することにより、ポリエステルフィルムの含水率、結晶化度、ポリエステルの酸価、すなわち、ポリエステルの末端カルボキシ基の濃度(Acid Value;AV)、固有粘度(Interisic Viscosity;IV)を制御することができる。
本発明においては、ポリエステルフィルムの耐加水分解性と寸法安定性との両立の観点から、原料ポリエステルの固有粘度(IV)は、0.70〜1.0dl/gにする。
固有粘度が0.70dl/g以上であると、ポリエステルフィルムが加水分解を受けてフィルムが実用強度を下回る、臨界分子量に達するまでの時間を長くすることが出来ることから耐加水分解性を向上させることが出来るだけでなく、ポリエステルの分子運動が阻害されて結晶化しにくくすることができる。一方、1.0dl/g以下であると、押出機内の剪断発熱によるポリエステルの熱分解が起こり過ぎず、結晶化を抑制し、また、酸価(AV)を低く抑えることができるだけでなく、分子の緩和時間が極端に長くならないことからフィルムを延伸した後の緩和処理により歪を有効に低減することが出来るため、密着適性向上の点からも好ましい。
IVは、0.72dl/g以上0.95dl/g以下であることがより好ましく、特に好ましくは0.75dl/g以上0.85dl/g以下である。。
特に、エステル化反応において、Ti触媒を使用し、さらに固相重合して、ポリエステルの固有粘度(IV)を、0.70以上1.0以下とすることで、ポリエステルシートの製造工程における溶融樹脂の冷却工程において、ポリエステルが結晶化することを抑制し易い。
従って、縦延伸及び横延伸に適用するポリエステルフィルムの原料であるポリエステルは、固有粘度が、0.72dl/g以上0.95dl/g以下であることがより好ましく、特に好ましくは0.75dl/g以上0.85dl/g以下であり、さらに触媒(Ti触媒)由来のチタン原子を含有することが好ましい。
固有粘度(IV)は、溶液粘度(η)と溶媒粘度(η0)の比ηr(=η/η0;相対粘度)から1を引いた比粘度(ηsp=ηr−1)濃度で割った値を濃度がゼロの状態に外挿した値である。IVは、ウベローデ型粘度計を用い、ポリエステルを1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノール(=2/3[質量比])混合溶媒に溶解させ、25℃の溶液粘度から求められる。
ポリエステルの固相重合には、既述のエステル化反応により重合したポリエステル又は市販のポリエステルを、ペレット状などの小片形状にしたものを、出発物質として用いればよい。
ポリエステルの固相重合は、連続法(タワーの中に樹脂を充満させ、これを加熱しながらゆっくり所定の時間滞流させた後、順次送り出す方法)でもよく、バッチ法(容器の中に樹脂を投入し、所定の時間加熱する方法)でもよい。
固相重合の温度は、170℃以上240℃以下が好ましく、より好ましくは180℃以上230℃以下であり、さらに好ましくは190℃以上220℃以下である。温度が上記範囲内であると、ポリエステルの酸価(AV)がより大きく低減することの点で好ましい。また、固相重合時間は、5時間以上100時間以下が好ましく、より好ましくは10時間以上75時間以下であり、さらに好ましくは15時間以上50時間以下である。
固相重合時間が上記範囲内であると、原料ポリエステルの酸価(AV)と固有粘度(IV)を本発明の範囲(IV:0.70〜1.0dl/g、AV:20当量/トン以下)に容易に制御できる点で好ましい。固相重合は、真空中あるいは窒素雰囲気下で行なうことが好ましい。
‐溶融押出‐
原料ポリエステルの溶融押出は、例えば、1本または2本以上のスクリューを備えた押出機を用い、原料ポリエステルの融点以上の温度に加熱し、スクリューを回転させて行なう。原料ポリエステルは、加熱およびスクリューによる混練により、押出機内で溶融してメルトとなる。また、押出機内での熱分解(ポリエステルの加水分解)を抑制する観点から、押出機内を窒素置換して、原料ポリエステルの溶融押出しを行なうことが好ましい。
溶融された原料ポリエステル(メルト)は、ギアポンプ、濾過器等を通して、押出ダイから押出す。押出ダイは、単に「ダイ」とも称する〔JIS B8650:2006、a)押出成形機、番号134参照〕。
ダイからメルト(ポリエステル)をキャスティングドラム上に押出すことで、フィルム状に成形(キャスト処理)して未延伸フィルムを得ることができる。このとき、メルトは、単層で押出してもよいし、多層で押出してもよい。
キャスト処理により得られる未延伸フィルムの厚みは特に限定されないが、0.5mm〜5mmであることが好ましく、0.7mm〜4.7mmであることがより好ましく、0.8mm〜4.6mmであることがさらに好ましい。
未延伸フィルムの厚みを5mm以下とすることで、メルトの蓄熱による冷却遅延を回避し、また、0.5mm以上とすることで、耐加水分解性向上に有効な高延伸倍率を行っても必要なフィルム厚みを得ることが可能となる。
押出ダイから押出されたメルトを冷却する手段は、特に制限されないが、静電印加と冷却エアーをスリット状のノズルから吹付ける方法を組み合わせた高効率の冷却方法が一般的に用いられる。また、キャストドラム(冷却キャストドラム)や金属ベルトに接触させて溶融メルトを挟圧したり、また水を噴霧して気化熱を活用することで高効率の冷却を行うことも出来る。冷却手段は、1つのみ行なってもよいし、2つ以上を組み合わせて行なってもよい。静電印加密着法の具体的な方法としては、特に限定されるものではなく、公知の技術が適用できる。静電印加電極としては、例えば、線状電極やブレード電極などが使用され、この形状は、特に限定されるものではなく、静電気の印加効果を向上させるために、線状電極の径を小さくしたり、ブレード電極のエッジ部を鋭くしてもよい。静電印加電極の材質は、金属や炭素などの電気伝導性のものであればよく、特に限定されるものではないが、例えば、タングステン、ニッケル、アモルファス金属が挙げられる。ここで、アモルファス金属とは、適当な金属合金を溶融状態から急冷することにより製造することが出来る非晶質金属合金であり、強靱性、耐食性が優れた材料である。金属合金組成は、通常、鉄、コバルト、ニッケル等の遷移金属の1種または2種以上の主成分金属に、必要に応じ、ベリリウム、マグネシウム、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、銀、インジウム、白金、金などの金属群、ホウ素、炭素、ケイ素、リン、ゲルマニウム、アンチモン等の非金属・半金属群から選択される1種または2種以上を配合したものである。静電印加電極の配置位置は、装置の構造や操作条件によっても変化するため、一概に決定し得ないが、通常、溶融状シートが回転冷却ドラムに着地する位置から3〜50mm、好ましくは5〜15mm離れた位置の溶融シートの近接位置である。また、印加電圧は、例えば、ワイヤー電極の線径、ブレード電極の厚さ、溶融状シートとの距離等によって異なり、限定されるものではないが、直径0.1〜0.4mmのワイヤー電極の場合、通常5000〜15000V程度である。静電印加密着法を適用する際、例えば、静電印加電極を複数にしたり、電極を加熱したり、電極の上面または側面の少なくとも一部にカバーを取り付けたり、溶融状シートに赤外線を照射したり、或いは、絶縁層を設けた回転冷却ドラム、梨地状に表面を粗面化した回転冷却ドラム、液体を塗布した回転冷却ドラム等を使用することが出来る。
冷却手段は、上記の中でも、連続運転時のシート表面へのオリゴマー付着防止の観点から、静電印加と冷却エアーをスリット状のノズルから吹付ける方法を組み合わせた高効率の冷却方法が特に好ましい。
キャストドラム等を用いて冷却された未延伸フィルムは、剥ぎ取りロール等の剥ぎ取り部材を用いて、キャストドラム等の冷却部材から剥ぎ取られる。
(二軸延伸工程)
次いで、得られた未延伸フィルムを長手方向に延伸(縦延伸)した後、幅方向に延伸(横延伸)して二軸延伸フィルムとする。
なお、縦延伸と横延伸は、各々独立に2回以上行なってもよく、縦延伸と横延伸の順序は問わない。例えば、縦延伸→横延伸、縦延伸→横延伸→縦延伸、縦延伸→縦延伸→横延伸、横延伸→縦延伸などの延伸態様が挙げられる。中でも縦延伸→横延伸が好ましい。
‐縦延伸‐
例えば、未延伸フィルムを長手方向に搬送しながら、搬送方向に並べたニップロール間に通して縦延伸することができる。
具体的には、例えば、フィルムの搬送方向上流側に1対のニップロールA、下流側に1対のニップロールBを設置したとき、フィルムを搬送する際に、下流側のニップロールBの回転速度を、上流側のニップロールAの回転速度より速くすることで、フィルムが搬送方向(MD;Machine Direction)に延伸される。
なお、上流側、下流側、それぞれに、各々独立に、2対以上のニップロールを設置してもよい。
また、縦延伸は、上記ニップロールを備えた縦延伸装置を用いて行なってもよい。
縦延伸時における延伸倍率は、2.7倍〜4.5倍が好ましく、2.9倍〜4.0倍がより好ましく、3.1倍〜3.7倍がさらに好ましい。
耐候性付与の点から縦延伸倍率は大きい方が好ましいが、縦延伸倍率が上記範囲を超えた場合には横延伸時後のフィルムの厚み精度が悪化する傾向が見られることから、上記範囲にすることが好ましい。
縦延伸時の温度(以下、「縦延伸温度」とも称する)は、フィルムのガラス転移温度をTgとするとき、Tg−20℃以上Tg+50℃以下であることが好ましく、より好ましくはTg−10℃以上Tg+40℃以下、さらに好ましくはTg以上Tg+30℃以下である。
フィルムを加熱する手段としては、ニップロール等のロールを用いて延伸する場合は、ロール内部にヒーターや温溶媒を流すことのできる配管を設けることで、ロールに接するフィルムを加熱することができる。また、ロールを用いない場合においても、フィルムに温風を吹きかけたり、ヒーター等の熱源に接触させ、又は熱源の近傍を通過させることにより、フィルムを加熱することができる。
‐横延伸‐
縦延伸後、フィルムを幅方向に延伸する。「幅方向」とは、フィルムの長手方向(搬送方向、MD)と直交する方向(TD;Transverse Direction)であり、フィルムの長手方向と垂直(90°)の角度の方向を意図するものであるが、機械誤差の範囲の方向であってもよい。機械誤差の範囲とは、ポリエステルの長手方向と垂直とみなせる角度(90°±5°)の方向をいう。
ここで、2軸延伸機の説明に即して横延伸、さらに、熱固定、熱緩和について説明する。
図1は、2軸延伸機における横延伸、熱固定、熱緩和を行う部分の構成の一例を概略的に示している。図1には、2軸延伸機100と、2軸延伸機100に装着された縦延伸後のポリエステルフィルム200とが示されている。2軸延伸機100は、1対の環状レール60a、60bを備え、環状レール60a、60bはポリエステルフィルム200を挟むように対称的に配置されている。
2軸延伸機100は、ポリエステルフィルム200を予熱する予熱部10と、ポリエステルフィルム200を、MD方向(縦方向)と直交する方向であるTD方向(横方向)に延伸してポリエステルフィルムに緊張を与える延伸部20と、緊張が与えられたポリエステルフィルムに緊張を与えたまま加熱する熱固定部30と、熱固定したポリエステルフィルムを加熱してフィルムの緊張を緩める熱緩和部40と、熱緩和部40を経たポリエステルフィルムを冷却する冷却部50と、に分けられる。
環状レール60aは、レール60aの縁に沿って移動可能な把持部材2a、2b、2e、2f、2i、2jを備え、環状レール60bは、レール60bの縁に沿って移動可能な把持部材2c、2d、2g、2h、2k、2lを備えている。なお、把持部材2a〜2lは、一般に、チャック、クリップ等と称される。
把持部材2a、2b、2e、2f、2i、2jは、ポリエステルフィルム200のTD方向の一方の端部を把持し、把持部材2c、2d、2g、2h、2k、2lは、ポリエステルフィルム200のTD方向の他方の端部を把持している。
把持部材2a、2b、2e、2f、2i、2jは、環状レール60aの縁に沿って反時計回りに移動し、把持部材2c、2d、2g、2h、2k、2lは、環状レール60bの縁に沿って時計回りに移動する。
把持部材2a〜2dは、予熱部10においてポリエステルフィルム200の端部を把持し、そのまま、各把持部材2a〜2dが設けられたレール60a、60bの縁に沿って移動し、延伸部20や、把持部材2e〜2hが示される熱緩和部40を経て、把持部材2i〜2lが示される冷却部50まで進む。その後、把持部材2a、2bと、把持部材2c、2dは、搬送方向順に、冷却部50のMD方向下流側の端部でポリエステルフィルム200の端部を離し、そのまま、環状レール60aまたは60bの縁に沿って進行し、予熱部10に戻る。
その結果、ポリエステルフィルム200は、図1におけるMD方向に移動し、予熱部10と、延伸部20と、熱固定部30と、熱緩和部40と、冷却部50とに、順に搬送される。
把持部材2a〜2lの移動速度が、ポリエステルフィルム200の把持部分における搬送速度となる。
把持部材2a〜2lは、各々独立に、移動速度を変化することができる。
従って、2軸延伸機100は、延伸部20において、ポリエステルフィルム200をTD方向に延伸する横延伸を可能とするものである。なお、把持部材2a〜2lの移動速度を変化させることにより、ポリエステルフィルム200をMD方向にも延伸することができる。
ポリエステルフィルム200のTD方向の端部を把持する把持部材は、図1では、2a〜2lの12個のみを図示しているが、ポリエステルフィルム200を支えるため、2軸延伸機100は、2a〜2lのほかにも、図示しない把持部材を有する。
なお、以下、把持部材2a〜2lを、「把持部材2」と総称することもある。
予熱部10では、ポリエステルフィルム200を予熱する。ポリエステルフィルム200を延伸する前に予め加熱して、ポリエステルフィルム200の横延伸を容易にする。
予熱部終了点における膜面温度(以下、「予熱温度」とも称する)は、ポリエステルフィルム200のガラス転移温度をTgとするとき、Tg−10℃〜Tg+60℃であることが好ましく、Tg℃〜Tg+50℃であることがより好ましい。
なお、予熱部終了点は、ポリエステルフィルム200の予熱を終了する時点、すなわち、予熱部10の領域からポリエステルフィルム200が離れる位置をいう。
横延伸部20では、予熱されたポリエステルフィルム200を、ポリエステルフィルム200の長手方向(搬送方向、MD)に直交する方向(TD)、すなわち幅方向に横延伸してポリエステルフィルム200に緊張を与える。
横延伸部20において、ポリエステルフィルム200に与える横延伸のための緊張(延伸張力)は、0.1t/m〜6.0t/mであることが好ましく、0.5t/m〜3t/mであることが好ましい。
横延伸時のポリエステルフィルム200の延伸倍率は、3.0〜5.0倍であることが好ましく、3.3〜4.9倍であることがより好ましく、3.6〜4.8倍であることが更に好ましい。
また、面積延伸倍率(各延伸倍率の積)は、延伸前のポリエステルフィルム200の面積の6倍〜18倍が好ましく、8倍〜17.5倍であることがより好ましく、10倍〜17倍であることがさらに好ましい。耐加水分解性の点から面積延伸倍率は大きい方が好ましいが、面積倍率が大き過ぎると延伸時にフィルムの破断が発生し易くなり安定生産が出来なくなるため、上記範囲が好ましい。また、縦延伸倍率と横延伸倍率の比率(横延伸倍率/縦延伸倍率)は1〜1.45の範囲が好ましく、より好ましくは1.1〜1.35の範囲である。縦あるいは横延伸倍率のみが高い場合には、延伸倍率の低い方向の耐候性が低いのみでなく、フィルムの熱収縮率に異方性が生じてしまい、その結果密着適性が低下するため好ましくない。
ポリエステルフィルム200の横延伸時の膜面温度(以下、「横延伸温度」とも称する)は、ポリエステルフィルム200のガラス転移温度をTgとするとき、Tg−10℃以上Tg+100℃であることが好ましく、より好ましくはTg℃以上Tg+90℃以下、さらに好ましくはTg+10以上Tg+80℃である。
なお、横延伸工程は、ポリエステルフィルムの横延伸に特化した横延伸装置を用いて行なってもよい。横延伸装置は、少なくとも予熱部、延伸部、熱固定部、及び熱緩和部で構成されていること、及びその機能についても、上記2軸延伸機と同様である。
(熱固定工程)
上記のように逐次延伸によって得た二軸延伸フィルムを170℃〜210℃で熱固定する。
熱固定では、延伸部20においてポリエステルフィルム200に緊張を与えたまま、特定の温度で加熱する。
従来、フィルムの寸法変化を改良するために、縦及び横延伸したポリエステルフィルムを高温(220℃以上)で熱固定処理を行なっていたが、このような高温熱固定処理では、加水分解性に優れる配向した緊張非晶分子が緩和してしまうために長期での耐加水分解性が悪化してしまう。
また、高温熱固定処理では加熱による酸化劣化等の影響を受けフィルムが着色し易いのみならず、フィルム表面に分子量の低いWBL(Weak boundary layer)が形成されるため密着強度の点で不利となる。特に太陽電池用途(例えば太陽光が入射する側と反対側に設けられる裏面保護層であるバックシート)は、ポリエステルフィルムに他の機能フィルム又は機能層を積層、塗布等して作られるが、積層、塗布の加工工程でポリエステルフィルムのカールや積層体の密着剥れなどの問題が生じやすい。
本発明では、熱固定部30において緊張が与えられたポリエステルフィルム200の表面が170℃〜210℃となるように加熱して熱固定することで、ポリエステル分子の結晶を配向させて、耐加水分解性を付与することができる。
なお、熱固定する時間は、2〜60秒が好ましく、3秒〜40秒がより好ましく、4秒〜30秒がさらに好ましい。
熱固定時におけるポリエステルフィルム200の表面の温度(以下、「熱固定温度」、「T熱固定」とも称する)が170℃よりも低いと、ポリエステルの結晶化度が十分に上げられないため、ポリエステル分子を伸びた状態で固定化することができず、耐加水分解性を十分向上することができない。また、熱固定温度が210℃よりも高いと、ポリエステル分子同士の絡み合い箇所で滑りが生じ、加水分解性に優れる配向した緊張非晶分子が緩和してしまうために、耐加水分解性を十分向上することができない。
熱固定温度は、170℃〜200℃であることが好ましく、175℃〜195℃であることがより好ましい。
熱固定温度は、ポリエステルフィルム200の表面に熱電対を接触させることで測定することができる。
(熱緩和工程)
熱緩和部40では、熱固定した二軸延伸フィルム200の表面の温度(「熱緩和温度」)が、150℃〜190℃の範囲内となるようにフィルム200を加熱してフィルム200に与えられている緊張を緩め、幅方向の緩和率(X%)と長手方向の緩和率(Y%)との比(X/Y)が0.6〜1.67であり、かつ、XとYとの積(XY)が15〜80となるように熱緩和を行う。
熱緩和温度が150℃未満であると、ポリエステル分子同士の分子鎖間を縮めにくく、寸法安定性を良化しにくい。一方、熱緩和温度が190℃を超えると、加水分解性に優れる配向した緊張非晶分子が緩和するために、ポリエステルフィルムの耐加水分解性が低下する。
熱緩和温度は、155℃〜185℃であることが好ましく、160℃〜180℃であることがより好ましい。
熱緩和温度は、ポリエステルフィルム200の表面に熱電対を接触させることで測定することができる。
また、フィルムの幅方向の緩和率(X%)と長手方向の緩和率(Y%)との比(X/Y)は0.6〜1.67であることが必要であり、好ましくは0.8〜1.25である。0.6未満では、フィルム幅方向の熱収縮率が大きくなり、密着強度が低下する。
、一方、1.67を超えるとフィルムの長手方向の収縮率が大きくなり密着強度が低下する。
また、フィルムの幅方向の緩和率(X%)と長手方向の緩和率(Y%)との積(XY)は15〜80であることが必要であり、好ましくは25〜70である。積(XY)が15未満であれば、フィルムの熱収縮率が大きくなり密着性が低下するのみでなく、フィルムの平滑性が上がる傾向になり滑り性が低下する。一方、80を超えると フィルム耐候性が低下する傾向が見られるため好ましくない。このような観点から、前記XとYとの比(X/Y)が0.8〜1.25であり、かつ、前記XとYとの積(XY)が25〜70となるように熱緩和を行うことがより好ましい。
緩和工程における二軸延伸フィルムの幅方向(TD)の緩和率(X%)は、3.5%以上10%以下が好ましく、4%以上9%以下が更に好ましい。
一方、二軸延伸フィルムの長手方向(MD)の緩和率(Y%)は、3.5%以上10%以下が好ましく、4%以上9%以下が更に好ましい。
ポリエステルフィルム200の幅方向の緩和率(X%)と長手方向の緩和率(Y%)との比(X/Y)が0.6〜1.67であり、かつ、XとYとの積(XY)が15〜80となるように、TD方向の緩和(TD緩和)及びMD方向の緩和(MD緩和)を行うことで、耐加水分解性を向上しつつ、寸法安定性を改良することができる。
ポリエステルフィルム200のTD方向の緩和およびMD方向の緩和は、ポリエステルフィルム200の搬送速度と、ポリエステルフィルム200の幅(TD方向の長さ)を次のように制御することによって行なうことが好ましい。
‐MD緩和‐
ポリエステルフィルム200のMD方向の緩和は、予熱部10、熱固定部30、熱緩和部40、及び冷却部50の少なくとも一部において行なうことができる。
例えば、MD方向の緩和を熱固定部30または熱緩和部40で行なう場合は、把持部材2a〜2dが熱固定部30または熱緩和部40に到達したときに、把持部材2a〜2dの移動速度を遅くして、ポリエステルフィルム200の搬送速度を小さくし、把持部材2a−2b間の間隔、及び把持部材2c−2d間の間隔を、予熱部10における間隔よりも狭めればよい。
例えば、予熱部10におけるポリエステルフィルム200の搬送速度をS1、冷却部50の前記端部におけるポリエステルフィルム200の搬送速度をS2とすると、ポリエステルフィルムのMD方向(縦方向)の緩和率(MD緩和率)Y(%)は、以下の式(1)によって表される。
[(S1−S2)/S1]×100=Y (1)
上記「予熱部10におけるポリエステルフィルム200の搬送速度S1」は、ポリエステルフィルム200を把持して環状レール60の縁を移動する把持部材2(図1では、2a〜2d)の移動速度に相当する。
また、「冷却部50の前記端部におけるポリエステルフィルム200の搬送速度S2」は、冷却部50に位置し、ポリエステルフィルム200を把持する把持部材2(図1では、把持部材2jおよび2l)が、ポリエステルフィルム200を離すときにおけるポリエステルフィルム200の搬送速度である。換言すると、例えば、把持部材2jがP点において、また、把持部材2lがQ点において、それぞれ、ポリエステルフィルム200を離すとき、「冷却部50の前記端部におけるポリエステルフィルム200の搬送速度S2」は、ポリエステルフィルム200がP点とQ点とを結んだ直線を超えるときの搬送速度に相当する。さらに換言すると、「冷却部50の前記端部におけるポリエステルフィルム200の搬送速度S2」は、把持部材2jおよび2lが、ポリエステルフィルム200を離す直前の把持部材2jおよび2lの移動速度に相当する。
例えば、MD緩和率が3%とは、ポリエステルフィルム200をMD方向に緩和するときは、ポリエステルフィルム200の予熱部10における搬送速度S1が、冷却部50において3%減速するように緩和することを意味する。
‐TD緩和‐
縦延伸の後、横延伸を行い、延伸部20でポリエステルフィルム200の横延伸を開始し、延伸が終了した熱固定部30のポリエステルフィルム200の最大幅をL2、冷却部50からポリエステルフィルム200が離れる冷却部50の端部におけるポリエステルフィルム200の幅をL3とすると、ポリエステルフィルムのTD方向(横方向)の緩和率(TD緩和率)X(%)は、以下の式(2)によって表される。
[(L2−L3)/L2]×100=X (2)
熱緩和部40においては、フィルム200の幅方向(TD方向)における緩和も行なう。かかるTD緩和により、緊張が与えられたポリエステルフィルム200は、幅方向に縮む。幅方向の緩和により、延伸部20においてポリエステルフィルム200に与えた延伸張力は約2%〜90%弱められる。
「延伸部20でポリエステルフィルム200の横延伸を開始するときのポリエステルフィルム200の幅L1」は、図1に示すように、予熱部10におけるポリエステルフィルム200の幅であって、延伸部20でポリエステルフィルム200がTD方向に拡幅される前の幅である。
また、上記「ポリエステルフィルム200が離れる冷却部50の端部におけるポリエステルフィルム200の幅L3」は、冷却部50に位置し、ポリエステルフィルム200を把持する把持部材2(図1では、把持部材2jおよび2l)が、ポリエステルフィルム200を離すときにおけるポリエステルフィルム200の幅である。
ポリエステルフィルム200を把持する把持部材2が、ポリエステルフィルム200を離すことで、ポリエステルフィルム200は、冷却部50の領域から離れる。例えば、把持部材2jがP点において、また、把持部材2lがQ点において、それぞれ、ポリエステルフィルム200を離すとき、冷却部50の端部(MD方向の端部)は、P点とQ点とを結んだ直線で表される。
例えば、TD緩和率が3%とは、ポリエステルフィルム200をTD方向に緩和するときは、ポリエステルフィルム200の熱固定部30における幅(TD方向の長さ)L2が、冷却部50において3%縮まるように緩和することを意味する。
横延伸工程では、更に、熱緩和部を経たポリエステルフィルムを冷却することが好ましい。
冷却部50では、熱緩和部40を経たポリエステルフィルム200を冷却する。
熱固定部30や熱緩和部40で加熱されたポリエステルフィルム200を冷却することにより、ポリエステルフィルム200の形状を固定化することができる。
冷却部50におけるポリエステル200の冷却部出口の膜面温度(以下、「冷却温度」ともいう)は、ポリエステルフィルム200のガラス転移温度Tg+50℃よりも低いことが好ましい。具体的には、25℃〜110℃であることが好ましく、より好ましくは25℃〜95℃、さらに好ましくは25℃〜80℃である。
上記範囲であることで、クリップ把持を解いたあとフィルムが不均一に縮むことを防止することができる。
ここで、冷却部出口とは、ポリエステル200が冷却部50から離れるときの、冷却部50の端部のことであり、ポリエステルフィルム200を把持する把持部材2(図1では、把持部材2jおよび2l)が、ポリエステルフィルム200を離すときの位置をいう。
なお、横延伸工程における予熱、延伸、熱固定、熱緩和、及び冷却において、ポリエステルフィルム200を加熱し、または冷却する温度制御手段としては、ポリエステルフィルム200に温風や冷風を吹きかけたり、ポリエステルフィルム200を、温度制御可能な金属板の表面に接触させ、又は前記金属板の近傍を通過させることが挙げられる。
(ポリエステルフィルム)
本発明のポリエステルフィルムの製造方法によれば、上記工程を経て中心線平均表面粗さRaが10nm〜60nmであるポリエステルフィルムが得られる。さらに、本発明の製造方法によれは、下記(1)〜(5)を全て満たすポリエステルフィルムが得られる。
(1)固有粘度が0.70dl/g〜1.0dl/g
(2)末端カルボキシ基濃度が20当量/トン以下
(3)密度が1.385g/cm〜1.395g/cm
(4)150℃にて30分加熱したときに、幅方向の熱収縮(A%)と長手方向の熱収縮(B%)とが共に0.6%以内であり、かつ、前記Aと前記Bとの比(A/B)が0.6〜1.67
(5)中心線平均表面粗さRaが10nm〜60nm
(1)固有粘度(IV:Intrinsic Viscosity)
本発明のポリエステルフィルムの固有粘度は0.70dl/g〜1.0dl/gであり、好ましくは0.72 dl/g以上0.95dl/g以下であり、より好ましくは0.75dl/g以上0.85dl/g以下である。
ポリエステルフィルムのIVは、原料ポリエステルのIV、固相重合条件等によって制御することができる。
固有粘度(IV)は、溶液粘度(η)と溶媒粘度(η0)の比ηr(=η/η0;相対粘度)から1を引いた比粘度(ηsp=ηr-1)濃度で割った値を濃度がゼロの状態に外挿した値である。IVは、1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノール(=2/3[質量比])混合溶媒中の25℃での溶液粘度から求められる。
(2)末端カルボキシ基濃度(AV:Acid Value)
本発明のポリエステルフィルムの末端カルボキシ基濃度は20当量/トン以下であり、好ましくは5〜15当量/トンであり、より好ましくは5〜12当量/トンである。
ポリエステルフィルムのAVは、原料ポリエステルのAV、固相重合条件等によって制御することができる。
末端COOH量(AV)は、ポリエステルをベンジルアルコール/クロロホルム(=2/3;体積比)の混合溶液に完全溶解させ、指示薬としてフェノールレッドを用い、これを基準液(0.01N KOH−ベンジルアルコール混合溶液)で滴定し、その滴定量から算出される値である。
(3)密度
本発明のポリエステルフィルムの密度(g/cm)は1.385〜1.395であり、好ましくは1.386〜1.392である。
密度は、ポリエステルの結晶性の指標となる。すなわち、密度が大きいほど、ポリエステルは、分子内に結晶部を多く有し(結晶量が多いともいう)、密度が小さいほど結晶部が少ない(結晶量が少ないともいう)。通常の熱固定温度(約230℃)、熱緩和温度(約210℃)では配向した拘束非晶が緩和して、一部結晶化するために、結晶化度は本発明よりも高くなり、1.395〜1.4005の値となる。
ポリエステルフィルムの密度が1.395g/cm以下であることで、配向した拘束非晶が緩和して、一部結晶化することを防止することが出来てフィルムの耐加水分解性が向上する。また、ポリエステルフィルムの強度が大きくなりすぎず、ポリエステルフィルムを裁断した際に、ポリエステルフィルムに微細な欠陥が入り難い。そのため、ポリエステルフィルム上に、バリア層等の機能層を形成した場合にも、欠陥(割れ)が生じにくく、バリア能が低下し難い。一方、ポリエステルフィルムの密度が1.385g/cm以上であることで、ポリエステルフィルムの耐熱性付与に必要な結晶化度に高めることが出来る。また、ポリエステルフィルムの強度が低くなりにくく、ポリエステルフィルムを曲げた際に、折れ目が入りにくい。そのため、フィルムの折れ目から機能層に欠陥が入ることが抑制される。
(4)熱収縮
本発明のポリエステルフィルムは、150℃にて30分加熱したときに、幅方向(TD)の熱収縮(A%)と長手方向(MD)の熱収縮(B%)とが共に0.6%以内であり、かつ、前記Aと前記Bとの比(A/B)が0.6〜1.67である。
一般にポリエステルは、ガラスに比べて、熱膨張係数や吸湿膨張係数が大きいために温湿度変化で応力がかかりやすく、ひび割れや層の剥がれを招来しやすい傾向があるが、熱収縮率が上記範囲内であることにより、ポリエステルフィルムに貼り付けられた機能性の部材シートが剥離したり、ポリエステルフィルムに塗布形成した層のひび割れ等を防止することができる。
本発明のポリエステルフィルムの製造方法を実施することにより、上記熱収縮率を実現することができ、特に、横延伸工程における熱固定および熱緩和における加熱温度(T熱固定およびT熱緩和の少なくとも一方)を制御するによって、上記範囲に調整することができる。
本発明のポリエステルフィルムを150℃で30分間加熱したときの熱収縮率は、幅方向の熱収縮(A%)と長手方向の熱収縮(B%)とが共に0.5%以内であり、かつ、前記Aと前記Bとの比(A/B)が0.7〜1.5であることがさらに好ましい。
熱収縮率は、以下の方法で求められる。
2軸延伸ポリエステルフィルムを裁断し、TD方向30mm、MD方向120mmの大きさの試料片Mを得る。試料片Mに対し、MD方向で100mmの間隔となるように、2本の基準線を入れ、無張力下で150℃の加熱オーブン中に30分間放置する。この放置の後、試料片Mを室温まで冷却して、2本の基準線の間隔を測定し、この値をA(単位;mm)とおき、100×(100−A)/100の式をもってMD方向での加熱収縮率とする。
また、基材フィルムからMD方向30mm、TD方向120mmの大きさの試料片Lを得る。試料片Lに対し、試料片Mと同様に測定と計算とを行い、TD方向での加熱収縮率とする。
(5)中心線平均表面粗さRa
本発明のポリエステルフィルムは、中心線平均表面粗さRaが10nm〜60nmであり、より好ましくは12〜50nm、更に好ましくは15〜45nmである。
中心線平均表面粗さRaは、熱緩和ゾーンでのMD方向とTD方向の緩和率を変化させることによって調整することができる。また、Raの有効な調整の方法としては、平均粒子径が0.03μm以上0.3μm未満のシリカ等の球状粒子を0.01質量%〜1.0質量%配合することも用いることが出来る。
ポリエステルフィルムの中心線平均表面粗さRaが10nm以上であれば、フィルムをハンドリングするに必要な滑り性を付与出来るだけでなく、密着性アップに必要なアンカーリング効果を付与出来、60nm以下であれば、フィルムの透明性の低下を引き起こすことなく、滑り性を付与することが出来る。
中心線平均表面粗さRaは、JIS B 0601に準拠し、表面粗さ測定器(小坂研究所(株)製SE−3F)を用いて測定した。フィルム断面曲線からその中心線の方向に基準長さL(2.5mm)の部分を切り取り、試料フィルム表面から10本の断面曲線を求め、これらの断面曲線から求めた抜き取り部分の中心線平均粗さの平均値で表した。なお、触針の先端半径は2μm、荷重は30mgとし、カットオフ値は0.08mmとした。
本発明のポリエステルフィルムは、上記表面粗さRaを有することにより、長期にわたって優れた耐水分解性を示し、寸法安定性、耐傷つき性、耐電圧性を優れたものとすることができる。
さらに、本発明では、以下の物性を有するポリエステルフィルムが得られる。
(面配向度係数)
アタゴ社(株)製アッベ屈折率計を用い、光源をナトリウムランプとして、フィルム屈折率の測定を行った。
fn= (nMD+nTD)/2 − nZD
上記式におけるnMDは二軸配向フィルムの機械方向の屈折率を表し、nTDは機械方向と直交する方向の屈折率を表し、nZDはフィルム厚み方向の屈折率を表している。本発明のポリエステルフィルムの面配向度係数(fn)は、0.14〜0.18であることが好ましく、より好ましくは0.15〜0.175、更に好ましくは0.16〜0.170である。面配向度係数(fn)が0.14以上であれば耐加水分解性付与するに必要な配向を付与することが出来ており、0.18以下であれば配向によって形成された緊張非晶を緩和させることなく熱固定出来るため好ましい。
ポリエステルフィルムの面配向度の制御は、延伸時の縦及び/又は横延伸倍率や延伸温度、熱固定温度、緩和率を調整することにより行なうことができる。
(吸光度)
ATR−IR(全反射赤外分光法)を用い下記条件で測定できる。すなわち、結晶性に由来する1043cm−1の吸光度(I(c))と非晶性に由来する1069cm−1の吸光度(I(a))の比I(c)/I(a)を1.2以上2.5以下にするのが好ましく、1.3以上2.3以下がより好ましく、1.4以上2.0以下が最も好ましい。ATR−IR測定はKRS−5結晶板を用い、測定するフィルムを結晶板に密着させて、入射角60度で50回積算して測定する。1210cm−1と920cm−1の間を直線で結び、これをベースラインとして1043cm−1と1069cm−1の吸光度を求める。
上記吸光度比I(c)/I(a)が1.2以上であればフィルムの耐熱性付与に必要な結晶化度を有しており、2.5以下であれば密着性を低下させることなくフィルムの耐熱性を付与することが出来る。
上記吸光度比(I(c)/I(a))の制御は、(1)フィルムのMD/TD倍率をアップすること、(2)熱固定温度及び/又は熱緩和温度を低くすることにより値を小さくすることが可能であり、目標とする任意の値に調整することができる。
(微少吸熱ピーク)
本発明のポリエステルフィルムの示差走査熱量測定で得られる温度に対する温度を示す曲線において、微少吸熱ピークが検出される温度(微少吸熱ピーク温度)Tsが170℃〜210℃であることが好ましく、175℃〜200℃であることがより好ましく、180℃〜195℃であることがさらに好ましい。
微少吸熱ピーク温度が170℃以上であればフィルムの耐熱性付与に必要な結晶化を付与することが可能であり、210℃以下であれば配向により形成された拘束非晶を緩和させることなく熱固定可能であり、十分な耐加水分解性を付与することが可能である。
上記微少吸熱ピークは、熱固定温度とほぼ比例の関係にあり、熱固定温度を調整することにより目標とする微少吸熱ピーク温度に調整することができる。
示差走査熱量測定(DSC)により求められる微少吸熱ピーク温度Ts(℃)は、JIS K7122−1987(JISハンドブック1999年版を参照した)に準じて、示差走査型熱量計DSC−50((株)島津製作所製)を用いて測定することができる。測定方法は、あらかじめ秤量したポリエステル樹脂のペレット8mgを測定器にセットし、10℃/minの昇温速度で300℃まで昇温する。この時のガラス転移点のピーク温度をガラス転移温度とし、求めることができる。縦延伸後のフィルムの結晶化温度Tc(℃)についても同様の測定器や方法で求めることができる。すなわち、予め秤量した延伸後のフィルム8mgを測定器にセットし、10℃/minの昇温速度で300℃まで昇温する。この時の昇温結晶化ピーク温度を結晶化温度とし、求めることができる。ここでいう融点直下の微少吸熱ピークTs(℃)とは、フィルムの製膜における熱固定おいて形成される微結晶が融解する温度であり、DSC曲線において、融点の吸熱ピークの前に観察されるものである。微小な吸熱のピークが観測しにくい場合は、データ解析部にてピーク付近を拡大して、ピークを読みとった。
微小吸熱ピークのグラフ読み取り方法は、JISに記載されていないが、以下の方法に基づいて実施した。まず135℃の値と155℃の値で直線を引き、グラフの曲線との吸熱側の面積を求める。同様に140℃と160℃、145℃と165℃、150℃と170℃、155℃と175℃、160℃と180℃、165℃と185℃、170℃と190℃、175℃と195℃、180℃と200℃、185℃と205℃、190℃と210℃、195℃と215℃、200℃と220℃、205℃と225℃、210℃と230℃、215℃と235℃、220℃と240℃の17点についても面積を求める。
微小ピークの吸熱量は、通常、0.2〜5.0J/gであることから、面積が0.2J/g以上5.0J/g以下であるデータのみを有効データとして取り扱うものとする。合計18個の面積データの中から、有効データでありかつ最も大きい面積を示すデータの温度領域における吸熱ピークのピーク温度をもってTs(℃)とする。有効データがない場合、Ts(℃)は無しとする。
(分子配向度)
本発明のポリエステルフィルムは、分子配向度MOR(Maximum Oriented Ratio)値が1.0〜1.15であることが好ましく、より好ましくは1.0〜1.10であり、更に好ましくは1.0〜1.05である。
(MOR)
製膜延伸後のフィルムを分子配向計(MOA−6004:王子計測機器株式会社)を用いてMORを測定する。MOR値とは、マイクロ波透過型分子配向計で測定された透過マイクロ波強度の最大値と最小値の比(最大値/最小値)である。このMOR値は、膜厚を考慮した長手方向と幅方向のバランスを示す指標となる。MOR値の測定はフィルム幅方向に5等分割し、10×10cmの寸法で切り出したものを測定サンプルとし、マイクロ波分子配向計を用いてMOR(Maximum Oriented Ratio)値を測定し、厚み補正を50μmとし、MOR−Cを求め5点の平均値を用いた。このようにして延伸されたポリエステルフィルムは、MOR(Maximum Oriented Ratio)値が上記規定の範囲であることが必要である。この値が大き過ぎる場合にはMD方向とTD方向の配向度のバランスが取れていない状態であるため、密着性が低下する傾向が見られ好ましくない。
MOR値が1.15以下であればMD/TDの配向が均等なため、フィルムの残留歪のバランスも小さなものとなり、密着性が良好となる。更に1.10以下であれば残留歪は更に小さなものとなるため、密着性はより良化する。更に1.05以下であればほぼMD/TDは等方とみなすことが出来、密着性はより良化する傾向が見られる。
これにより、縦横のフィルムのバランスが調整され、機械的強度や耐久性が向上するととともに、積層時のカールの発生も抑制することができ、密着性の向上にも有効である。MOR値を上記範囲にする方法としては、延伸工程における縦横の延伸倍率の比およびMD/TDの緩和率の比を制御することにより行うことができる。
‐厚さ‐
既述の本発明のポリエステルフィルムの製造方法により、厚さ50μm〜400μmのポリエステルフィルムを製造することが好ましい。ポリエステルフィルムの厚さは、主に延伸工程における延伸倍率を制御することで調整される。
ポリエステルフィルムの厚みは、耐候性、密着性、電気絶縁性等の観点から、50μm〜350μmであることが好ましく、75μm〜300μmであることがより好ましい。
<太陽電池用バックシート>
本発明のポリエステルフィルムの用途は特に限定されないが、太陽電池発電モジュールの太陽光入射側とは反対側の裏面に配置される裏面保護シート(いわゆるバックシート)、バリアフィルム基材等の用途に好適である。
<太陽電池発電モジュール>
太陽電池発電モジュールの用途では、電気を取り出すリード配線(不図示)で接続された発電素子(太陽電池素子)をエチレン・酢酸ビニル共重合体系(EVA系)樹脂等の封止剤で封止し、これを、ガラス等の透明基板と、本発明のポリエステルフィルム(バックシート)との間に挟んで互いに張り合わせることによって構成される態様が挙げられる。なお、太陽電池素子の例としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系、銅−インジウム−ガリウム−セレン、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルル、ガリウム−砒素などのIII−V族やII−VI族化合物半導体系など、各種公知の太陽電池素子を適用することができる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、「部」、「%」はとくに記載しない限り、質量基準である。
<原料ポリエステルの合成>
(原料ポリエステル1)
以下に示すように、テレフタル酸及びエチレングリコールを直接反応させて水を留去し、エステル化した後、減圧下で重縮合を行なう直接エステル化法を用いて、連続重合装置によりポリエステル(Ti触媒系PET)を得た。
(1)エステル化反応
第一エステル化反応槽に、高純度テレフタル酸4.7トンとエチレングリコール1.8トンを90分かけて混合してスラリー形成させ、3800kg/hの流量で連続的に第一エステル化反応槽に供給した。更にクエン酸がTi金属に配位したクエン酸キレートチタン錯体(VERTEC AC−420、ジョンソン・マッセイ社製)のエチレングリコール溶液を連続的に供給し、反応槽内温度250℃、攪拌下、平均滞留時間約4.3時間で反応を行なった。このとき、クエン酸キレートチタン錯体は、Ti添加量が元素換算値で9ppmとなるように連続的に添加した。このとき、得られたオリゴマーの酸価は600当量/トンであった。
この反応物を第二エステル化反応槽に移送し、攪拌下、反応槽内温度250℃で、平均滞留時間で1.2時間反応させ、酸価が200当量/トンのオリゴマーを得た。第二エステル化反応槽は内部が3ゾーンに仕切られており、第2ゾーンから酢酸マグネシウムのエチレングリコール溶液を、Mg添加量が元素換算値で75ppmになるように連続的に供給し、続いて第3ゾーンから、リン酸トリメチルのエチレングリコール溶液を、P添加量が元素換算値で65ppmになるように連続的に供給した。
(2)重縮合反応
上記で得られたエステル化反応生成物を連続的に第一重縮合反応槽に供給し、攪拌下、反応温度270℃、反応槽内圧力20torr(2.67×10−3MPa)で、平均滞留時間約1.8時間で重縮合させた。
更に、第二重縮合反応槽に移送し、この反応槽において攪拌下、反応槽内温度276℃、反応槽内圧力5torr(6.67×10−4MPa)で滞留時間約1.2時間の条件で反応(重縮合)させた。
次いで、更に第三重縮合反応槽に移送し、この反応槽では、反応槽内温度278℃、反応槽内圧力1.5torr(2.0×10−4MPa)で、滞留時間1.5時間の条件で反応(重縮合)させ、反応物(ポリエチレンテレフタレート(PET))を得た。
次に、得られた反応物を、冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングしてポリエステルのペレット<断面:長径約4mm、短径約2mm、長さ:約3mm>を作製した。
得られたポリエステルについて、高分解能型高周波誘導結合プラズマ−質量分析(HR-ICP-MS;SIIナノテクノロジー社製AttoM)を用いて以下に示すように測定した結果、Ti=9ppm、Mg=75ppm、P=60ppmであった。Pは当初の添加量に対して僅かに減少しているが、重合過程において揮発したものと推定される。
得られたポリマーは、IV=0.60、末端カルボキシ基濃度AV=22当量/トン、融点=257℃、溶液ヘイズ=0.3%であった。
−固相重合−
上記で重合したPETを、以下のようにして固相重合を実施した。
(原料ポリエステル1)
−予備結晶化工程−
固相重合は、既述のエステル化反応により重合したポリエステルを露点温度−30℃の窒素により140℃で7分間加熱し、固相重合時の固着を防止する目的で予備結晶化を行なった。
−予備結晶化工程−
次に露点温度−30℃の加熱窒素を用いて165℃で4時間乾燥させ、樹脂中の水分率を50ppm以下にした。
−予備加熱〜反応工程−
次に、乾燥させたポリエステル樹脂を205℃に予備加熱した後、図1に示すような構成を有する装置を用い、207℃で25時間窒素循環させることにより固相重合を進行させた。窒素循環条件としては、ガス比(排出する樹脂量に対する循環させる窒素ガス量)を1.5m3/kg、空塔速度0.08m/秒、により固相重合を進行させた。
−冷却工程−
次に反応工程から排出される樹脂(500kg/h)を60℃まで冷却した。得られた樹脂はIV=0.83dl/g、末端カルボキシル基濃度=11当量/トンであった。
(原料ポリエステル2)
原料ポリエステル1の合成において、固相重合時間を40時間に変更したほかは同様にして、原料ポリエステル2(IV=0.95dl/g、末端カルボキシル基濃度=8当量/トン)を得た。
(原料ポリエステル3)
原料ポリエステル1の合成において、固相重合時間を15時間に変更したほかは同様にして、原料ポリエステル3(IV=0.75dl/g、末端カルボキシル基濃度=14当量/トン)を得た。
〔実施例1〕
<未延伸ポリエステルフィルムの製造>
−フィルム成形工程−
原料ポリエステル1を、含水率20ppm以下に乾燥させた後、直径50mmの1軸混練押出機のホッパーに投入した。原料ポリエステル1は、290℃に溶融し、下記押出条件により、ギアポンプ、濾過器(孔径20μm)を介し、ダイから押出した。なお、ポリエステルシートの厚さが3.5mmとなるように、ダイのスリットの寸法を調整した。ポリエステルシートの厚さは、キャストドラムの出口に設置した自動厚み計により測定した。溶融樹脂の押出条件は、圧力変動を1%、溶融樹脂の温度分布を2%として、溶融樹脂をダイから押出した。具体的には、背圧を、押出機のバレル内平均圧力に対して1%加圧し、押出機の配管温度を、押出機のバレル内平均温度に対して2%高い温度で加熱した。
ダイから押出した溶融樹脂は、冷却キャストドラム上に押出し、静電印加法を用い冷却キャストドラムに密着させた。
溶融樹脂の冷却は、冷却キャストドラムの温度を25℃に設定し、冷却キャストドラムに対面して設置された冷風発生装置から、25℃の冷風を吹き出し、溶融樹脂に当てた。冷却キャストドラムに対向配置された剥ぎ取りロールを用いて、冷却キャストドラムから厚さ3.5mmの未延伸ポリエステルフィルム(未延伸ポリエステルフィルム1)を剥離した。
得られた未延伸ポリエステルフィルム1は、固有粘度IV=0.81、末端カルボキシ基濃度AV=13当量/トン、ガラス転移温度Tg=78℃であった。
IVは、未延伸ポリエステルフィルム1を、1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノール(=2/3[質量比])混合溶媒に溶解し、該混合溶媒中の25℃での溶液粘度から求めた。
AVは、未延伸ポリエステルフィルム1をベンジルアルコール/クロロホルム(=2/3;体積比)の混合溶液に完全溶解させ、指示薬としてフェノールレッドを用い、これを基準液(0.025N KOH−メタノール混合溶液)で滴定し、その適定量から算出した。
<2軸延伸ポリエステルフィルムの製造>
得られた未延伸ポリエステルフィルム1について、以下の方法で逐次2軸延伸を施し、次のように延伸して、250μmの2軸延伸ポリエステルフィルム1を得た。
−縦延伸工程−
未延伸ポリエステルフィルム1を周速の異なる2対のニップロールの間に通し、下記条件で縦方向(搬送方向)に延伸した。
予熱温度 :80℃
縦延伸温度:90℃
縦延伸倍率:3.4倍
縦延伸応力:10MPa
−横延伸工程−
縦延伸したポリエステルフィルム1(縦延伸ポリエステルフィルム1)に対し、図1に示す構造を有するテンター(2軸延伸機)を用いて、下記条件にて延伸した。
(予熱部)
予熱温度:110℃とした。
(延伸部)
延伸温度(横延伸温度) :120℃
延伸倍率(横延伸倍率) :4.2倍
延延伸応力(横延伸応力):14MPa
(熱固定部)
熱固定温度(T熱固定):表1に示す温度〔℃〕
(熱緩和部)
熱緩和温度(T熱緩和):表1に示す温度〔℃〕
緩和率
縦方向(MD緩和率)X:表1に示す大きさ〔%〕
横方向(TD緩和率)Y:表1に示す大きさ〔%〕
(冷却部)
冷却温度:65〔℃〕
以上のようにして、厚さ250μmの実施例1の2軸延伸ポリエステルフィルム(PETフィルム)1を製造した。
得られた2軸延伸ポリエステルフィルム1の厚さは、接触式膜厚測定計(アンリツ社製)を用いて行い、長手方向に0.5mに渡り等間隔に50点をサンプリングし、幅方向に製膜全幅にわたり等間隔(幅方向に50等分した点)に50点をサンプリングし、これらの100点の厚みを測定する。これら100点の平均厚みを求め、フィルムの平均厚みとした。
〔実施例2〜実施例7及び比較例1〜比較例7〕
実施例1の2軸延伸ポリエステルフィルム1の製造において、固相重合前の原料ポリエステル、並びに、横延伸工程におけるテンターの熱固定温度、熱緩和温度、縦方向の緩和率(X)及び横方向の熱緩和率(Y)を、それぞれ表1に示すように変更した他は実施例1と同様にして実施例2〜実施例7の2軸延伸ポリエステルフィルム、及び比較例1〜比較例7の2軸延伸ポリエステルフィルムを製造した。
〔実施例8〕
実施例1の2軸延伸ポリエステルフィルム1の製造において、原料ポリエステルの添加剤として、平均粒径0.08μm、粒径比1.0のコロイダルシリカ粒子(日産化学工業株式会社 スノーテックスZL 平均粒子径0.08μmをエチレングリコールスラリー中に投入し、樹脂中の含有濃度が200ppmになるように配合した)を用いた他は実施例1と同様にして、実施例8の2軸延伸ポリエステルフィルム10を製造した。
原料樹脂及び横延伸条件について下記表1に示す。
Figure 2012188631
実施例、比較例で得られた二軸延伸ポリエステルフィルムの物性を測定した。
‐固有粘度(IV)‐
IVは、二軸延伸ポリエステルフィルムを、1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノール(=2/3[質量比])混合溶媒に溶解し、該混合溶媒中の25℃での溶液粘度から求めた。
‐末端カルボキシル基濃度(AV)‐
AVは、二軸延伸ポリエステルフィルムをベンジルアルコール/クロロホルム(=2/3;体積比)の混合溶液に完全溶解させ、指示薬としてフェノールレッドを用い、これを基準液(0.025N KOH−メタノール混合溶液)で滴定し、その適定量から算出した。
‐面配向度係数‐
アタゴ社(株)製アッベ屈折率計Type 4Tを用い、光源をナトリウムランプとして、フィルム屈折率の測定を行った。
面配向係数=(nMD+nTD)/2−nND
上記式におけるnMDはフィルムの長手方向(MD)の屈折率を表し、nTDはフィルムの直行方向(TD)の屈折率を表し、nNDはフィルム厚み方向の屈折率を表している。
‐吸光度比‐
吸光度比は、パーキンエルマー社製、 フーリエ変換赤外分光分析装置Spectrum400を用いてATR法にて測定した。KRS−5結晶板を用い、測定するフィルムを結晶板に密着させて、入射角60度で50回積算して測定する。1210cm-1と920cm-1の間を直線で結び、これをベースラインとして1043cm-1と1069cm-1の吸光度を求めた。
‐微少吸熱ピーク‐
示差走査熱量測定(DSC)により求められる微少吸熱ピーク温度Ts(℃)は、JIS K7122−1987(JISハンドブック1999年版を参照した)に準じて示差走査型熱量計DSC−50((株)島津製作所製)を用いて測定した。測定方法は、予め秤量した延伸後のフィルム8mgを測定器にセットし、10℃/minの昇温速度で300℃まで昇温する。融点直下の微少吸熱ピークTs(℃)が観測しにくい場合は、データ解析部にてピーク付近を拡大して、ピークを読みとった。
微小吸熱ピークのグラフ読み取り方法は、以下の方法に基づいて実施した。まず135℃の値と155℃の値で直線を引き、グラフの曲線との吸熱側の面積を求める。同様に140℃と160℃、145℃と165℃、150℃と170℃、155℃と175℃、160℃と180℃、165℃と185℃、170℃と190℃、175℃と195℃、180℃と200℃、185℃と205℃、190℃と210℃、195℃と215℃、200℃と220℃、205℃と225℃、210℃と230℃、215℃と235℃、220℃と240℃の17点についても面積を求める。微小ピークの吸熱量は、通常、0.2〜5.0J/gであることから、面積が0.2J/g以上5.0J/g以下であるデータのみを有効データとして取り扱うものとする。合計18個の面積データの中から、有効データでありかつ最も大きい面積を示すデータの温度領域における吸熱ピークのピーク温度をもってTs(℃)とする。有効データがない場合、Ts(℃)は無しとする。
‐分子配向度MOR‐
分子配向度MOR値は、フィルムを幅方向に5等分割し、それぞれの位置で長手方向、幅方向に100mmの正方形サンプルを採取し、マイクロ波透過型分子配向計(王子計測機器(株)MOA−6004)を用いて測定を行った。厚み補正を50μmとし、MOR−Cを求め5点の平均値を用いた。
‐中心線平均表面粗さRa‐
中心線平均表面粗さRaは、JIS B 0601に準拠し、表面粗さ測定器(小坂研究所(株)製SE−3F)を用いて測定した。フィルム断面曲線からその中心線の方向に基準長さL(2.5mm)の部分を切り取り、試料フィルム表面から10本の断面曲線を求め、これらの断面曲線から求めた抜き取り部分の中心線平均粗さの平均値で表した。なお、触針の先端半径は2μm、荷重は30mgとし、カットオフ値は0.08mmとした。
‐熱収縮率(MD収縮率、TD収縮率)‐
2軸延伸ポリエステルフィルムを裁断し、TD方向30mm、MD方向120mmの大きさの試料片Mを得た。試料片Mに対し、MD方向で100mmの間隔となるように、2本の基準線を入れ、無張力下で150℃の加熱オーブン中に30分間放置した。この放置の後、試料片Mを室温まで冷却して、2本の基準線の間隔を測定し、この値をA(単位;mm)とおき、100×(100−A)/100の式をもってMD方向での加熱収縮率とした。
また、フィルムからMD方向30mm、TD方向120mmの大きさの試料片Lを得た。試料片Lに対し、試料片Mと同様に測定と計算とを行い、TD方向での加熱収縮率とした。
‐密度‐
密度は、ノルマルヘプタンと四塩化炭素の混合溶媒を用いて密度勾配管を作成しJIS−K7112に準じた測定条件の下、各ポリエステルフィルムの密度を測定した。
上記測定により得られた値を表2に示した。
Figure 2012188631
<評価>
実施例及び比較例で得られた2軸延伸ポリエステルフィルムについて、下記評価を行なった。結果は表3に示す。
1.耐候性
2軸延伸ポリエステルフィルムの耐加水分解性を、2軸延伸ポリエステルフィルムの破断伸度半減時間によって評価した。
2軸延伸ポリエステルフィルムを、120℃、相対湿度100%の条件で保存した後の2軸延伸ポリエステルフィルムが示す破断伸度(%)が、保存前の2軸延伸ポリエステルフィルムが示す破断伸度(%)に対して50%となる保存時間を、破断伸度半減時間とした。
2軸延伸ポリエステルフィルムの破断伸度(%)は、2軸延伸ポリエステルフィルムを裁断して、1cm×20cmの大きさの試料片Pを得て、試料片Pを、チャック間5cm、20%/分にて引っ張って求めた。
破断伸度半減時間が長い程、2軸延伸ポリエステルフィルムの耐加水分解性が優れていることを示す。
−判定基準−
◎:破断伸度半減時間が90hrを超える。
○:破断伸度半減時間が85hrを超え、90hr以下。
△:破断伸度半減時間が80hrを超え、85hr以下。
×:破断伸度半減時間が80hr未満。
2.滑り性
滑り性は、JIS−K7125法に準じた方法により新東科学株式会社製 HEIDON−14DRを用いて63mm×63mmのサンプル片に200gの荷重をかけ、引張り速度1m/分の条件で測定を行い以下のようにして評価した。
−判定基準−
◎: 動摩擦係数が0.30未満
○: 動摩擦係数が0.30〜0.40
△: 動摩擦係数が0.40〜0.50
×: 動摩擦係数が0.50を超えるもの
3.密着性
密着性は、以下のようにして評価した。フィルム表面を727J/m条件下でコロナ放電処理を行った。そして、この処理面に、下記組成からなる塗布液をバーコート法により塗布して下塗り層を形成した。ここで、塗布量は4.4cc/mとし、180℃で1分乾燥した。
〔下塗り層用塗布液〕
・バインダ(ポリエステル樹脂、大日本インキ化学工業(株)製、ファインテックス ES−650、固形分29%) 44.9質量部
・架橋剤(日清紡(株)製、カルボジライトV−02−L2) 1.3質量部
・滑り剤(中京油脂(株)製、セロゾール524、固形分3%) 8.5質量部
・界面活性剤1(日本油脂(株)、ラピゾールB−90、アニオン性) 1.2質量部
・界面活性剤2(三洋化成工業(株)、ナロアクティー HN−100、ノニオン性)
0.1質量部
上記の各種材料を混合した液の中に、総量が1000質量部となるように蒸留水を添加して下塗り層用の塗布液とした。JIS−K5400の方法に準じて、積層膜に1mm2のクロスカットを100個入れ、積水化学製、#252 25mm幅 SP粘着力:750g/25mm テープをその上に貼り付け、指で強く押し付けた後、90度方向に急速に剥離し、残存した個数により評価を行った。(◎)を密着性良好、(○)を実用上問題ないレベル、(△)を実用上使用限度、(×)実用上問題有りとした。
◎:100/100(残存個数/測定個数)
○:90/100以上、100/100未満
△:70/100以上、90/100未満
×:70/100未満。
4.総合判定
上記1〜3の各評価結果から、下記判定基準に基づき、判定した。
−判定基準−
◎:耐候性、滑り性、密着性何れも◎のもの
○:耐候性、滑り性、密着性何れも○以上の評価であり、◎が2個以下のもの
△:耐候性、滑り性、密着性何れか1項目でも△評価があるもの
×:耐候性、滑り性、密着性何れか1項目でも×のあるもの
Figure 2012188631
2 把持部材
10 予熱部
20 延伸部
30 熱固定部
40 熱緩和部
50 冷却部
60 環状レール
100 2軸延伸機
200 ポリエステルフィルム

Claims (12)

  1. 固有粘度が0.70dl/g〜1.0dl/gであり、末端カルボキシ基濃度が20当量/トン以下である原料ポリエステルを溶融押出して未延伸フィルムを成膜する未延伸フィルム成膜工程と、
    前記未延伸フィルムを長手方向に延伸した後、幅方向に延伸して二軸延伸フィルムを得る二軸延伸工程と、
    前記二軸延伸フィルムを170℃〜210℃で熱固定する熱固定工程と、
    前記熱固定した二軸延伸フィルムを、150℃〜190℃で、幅方向の緩和率(X%)と長手方向の緩和率(Y%)との比(X/Y)が0.6〜1.67であり、かつ、前記Xと前記Yとの積(XY)が15〜80となるように熱緩和する熱緩和工程と、を含み、
    中心線平均表面粗さRaが10nm〜60nmであるポリエステルフィルムを製造するポリエステルフィルムの製造方法。
  2. 前記熱緩和工程は、前記XとYとの比(X/Y)が0.8〜1.25であり、かつ、前記XとYとの積(XY)が25〜70となるように熱緩和を行う請求項1に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
  3. 前記ポリエステル樹脂に、平均粒子径が0.03μm以上0.3μm未満であり、かつ、短径に対する長径の比(長径/短径)が1.0〜3.0である球状粒子を0.01質量%〜1.0質量%配合する請求項1又は請求項2に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
  4. 前記ポリエステルフィルムの面配向度係数が、0.14〜0.18である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
  5. 前記ポリエステルフィルムの赤外線吸収のスペクトルにおいて、1043cm−1における吸光度I(c)と、1069cm−1における吸光度I(a)との比I(c)/I(a)が、1.2〜2.5である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
  6. 前記ポリエステルフィルムの示差走査熱量測定で得られる温度に対する温度を示す曲線において、微少吸熱ピークが検出される温度が170℃〜210℃である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
  7. 前記ポリエステルフィルムの分子配向度MOR(Maximum Oriented Ratio)値が1.0〜1.15である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
  8. 請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムの製造方法により製造されたポリエステルフィルムを含む太陽電池用バックシート。
  9. 下記(1)〜(5)を全て満たすポリエステルフィルム。
    (1)固有粘度が0.70dl/g〜1.0dl/g
    (2)末端カルボキシ基濃度が20当量/トン以下
    (3)密度が1.385g/cm〜1.395g/cm
    (4)150℃にて30分加熱したときに、幅方向の熱収縮(A%)と長手方向の熱収縮(B%)とが共に0.6%以内であり、かつ、前記Aと前記Bとの比(A/B)が0.6〜1.67
    (5)中心線平均表面粗さRaが10nm〜60nm
  10. 前記ポリエステルフィルムの赤外線吸収のスペクトルにおいて、1043cm−1における吸光度I(c)と、1069cm−1における吸光度I(a)との比I(a)/I(a)が、1.2〜2.5である請求項9に記載のポリエステルフィルム。
  11. 請求項9又は請求項10に記載のポリエステルフィルムを含む太陽電池用バックシート。
  12. 太陽光が入射する透明性の基板と、太陽電池素子と、請求項11に記載の太陽電池用バックシートとを備えた太陽電池モジュール。
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