JP6016688B2 - ポリエステルフィルム及びその製造方法 - Google Patents
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Description
また、後加工時の熱処理工程におけるフィルムの寸法変化を抑制するために、ポリエチレンテレフタレートフィルムの熱収縮率およびその均一性、屈折率、破断伸度等を規定したフィルムおよびその製造方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
0.01<X< 2.00 ・・・(I)
0.1 <Y< 20.0 ・・・(II)
成形されたポリエステルフィルムを長手方向に縦延伸する縦延伸工程と、
縦延伸後のポリエステルフィルムを延伸可能な温度に予熱する予熱部、予熱されたポリエステルフィルムを長手方向と直交する幅方向に緊張を与えて横延伸する延伸部、縦延伸及び横延伸を行なった後のポリエステルフィルムを加熱し結晶化させて熱固定する熱固定部、熱固定されたポリエステルフィルムを加熱し、ポリエステルフィルムの緊張を緩和してフィルムの残留歪みを除去する熱緩和部、並びに、熱緩和後のポリエステルフィルムを冷却する冷却部に、ポリエステルフィルムをこの順に搬送して、縦延伸後のポリエステルフィルムを長手方向に直交する幅方向に横延伸する横延伸工程と、を含み
熱固定部および熱緩和部の少なくとも一方において、幅方向のポリエステルフィルムの端部をヒーターにより選択的に輻射加熱し、かつ、冷却部において、ポリエステルフィルムの表面の温度を150℃から70℃まで冷却するときのフィルム幅方向端部における平均冷却速度を、フィルム幅方向の中央部における平均冷却速度の1.01倍〜2倍とするポリエステルフィルムの製造方法である。
予熱部におけるポリエステルフィルムの搬送速度S1と、冷却部の端部におけるポリエステルフィルムの搬送速度S2とが、下記式(2)を満たす<5>または<6>に記載のポリエステルフィルムの製造方法である。
予熱部におけるポリエステルフィルムの幅方向の片端部を把持する把持部材と、該把持部材に隣接する把持部材との間隔よりも、冷却部におけるポリエステルフィルムの幅方向の片端部を把持する把持部材と、該把持部材に隣接する把持部材との間隔を狭めることで、ポリエステルフィルムの搬送速度を小さくする<5>〜<7>のいずれか1つに記載のポリエステルフィルムの製造方法である。
冷却部において、ポリエステルフィルムの表面の温度を150℃から70℃まで冷却するときの平均冷却速度を、2℃/秒〜100℃/秒の範囲とする<5>〜<8>のいずれか1つに記載のポリエステルフィルムの製造方法である。
本発明のポリエステルフィルムは、厚みが100μm以下であり、フィルム幅方向における、フィルム幅方向の単位距離あたりの、フィルム幅方向と直交する方向の熱収縮率変化量x[%/m]の絶対値の最大値X[%/m]と、xの単位距離あたりの変化率yの絶対値の最大値Y[%/m2]とが、下記式(I)および(II)を満たす。
0.01<X< 2.00・・・(I)
0.1 <Y<20.0 ・・・(II)
ポリエステルフィルムの製造方法は、後に詳述するが、薄手のフィルムは、通常、ロール等を用いて搬送し、延伸することにより得られる。このとき、フィルムの搬送方向をMD(Machine Direction)方向とも称する。また、フィルムのMD方向は、フィルムの長手方向とも称される。また、フィルム幅方向とは、長手方向に直交する方向である。フィルム幅方向は、フィルムを搬送しながら製造されたフィルムにおいては、TD(Transverse Direction)方向とも呼ばれる。
本発明においては、フィルム幅方向を、TDまたはTD方向と称し、フィルム幅方向と直交する方向を、MDまたはMD方向と称する。また、MD方向の熱収縮を、MD熱収縮ともいい、その割合をMD熱収縮率という。従って、フィルム幅方向と直交する方向の熱収縮率は、MD熱収縮率とも表現する。
また、ポリエステルの種類は特に制限されず、本発明で用い得るポリエステルの種類は後述するが、特に、ポリエチレンテレフタラート(Polyethylene terephthalate;PET)がよく用いられる。以下、PETというときは、ポリエチレンテレフタラートを指す。
薄手のポリエステルフィルムは、加熱搬送されると、MD方向にポリエステルフィルムが引きつれ、シワが生じる傾向にある。ツレシワが生じたままフィルムが冷却し、固化して、フィルムに残ったフィルム上のツレシワに由来する凹凸を、本発明ではスジバリと称する。ポリエステルフィルムがスジバリを有すると、フィルム上に塗布液を塗布するときに均一に塗布しにくくなる。また、ラミネート層などの機能層がシワのあるフィルム上に貼りつけられるとフィルムと機能層との間に気泡が入る等の故障が生じ易い。
そのため、フィルムに、よりツレシワが生じ易く、従来に比べ、スジバリの発生が顕著になり易かった。
ポリエステルフィルムにおいて、スジバリが主に発生する位置を調べたところ、幅方向(TD)単位距離あたりでMD熱収縮率の変化が局所的に大きい箇所およびMD熱収縮率の変化が急激な箇所に集中して発生することがわかった。
0.01<X< 2.00・・・(I)
0.1 <Y<20.0 ・・・(II)
図1は、本発明の課題を説明するための模式図であり、図2は、本発明の式(I)および(II)説明するための模式図である。
図1には、フィルムのTD端部寄りに、MD方向にスジバリが生じているポリエステルフィルムの模式図と、そのポリエステルフィルムのTD方向のフィルムの位置における、TD方向のMD収縮率分布を表す曲線(DSh)とが重なって示されている。曲線(DSh)は、曲線下側の軸(TD方向のフィルムの位置)および曲線右側の軸(MD熱収縮率)を参照軸とする。
n個(nは1以上)の位置について、位置(Pn)におけるMD熱収縮率(Shn)から、隣接する位置(Pn+1)におけるMD熱収縮率(Shn+1)を差し引いて、更にその値をPnとPn+1間の距離で除して得られる量を、MD熱収縮率の変化量xnとする。これが、「フィルム幅方向における、フィルム幅方向の単位距離あたりの、フィルム幅方向と直交する方向の熱収縮率変化量x[%/m]」である。n個のxnのうち、最も大きいものが「変化量xの最大値X」である。
例えば、位置P1におけるMD熱収縮率(Sh1)と位置P2におけるMD熱収縮率(Sh2)を差し引いて、P1とP2の距離で除したときに得られる量が、x1として算出される。同様にして、図2に示されるx2〜x5が算出される。このうち、例えば、x4が最も大きな変化量であるとき(x4=xmax)、x4が最大値Xである(x4=X)。
例えば、図2においては、x1とx2との差を、P1とP2の中間点と、P2とP3の中間点の距離で除すことでy1が算出され、x2とx3との差を、P2とP3の中間点と、P3とP4の中間点の距離で除すことでy2が算出される。各々算出して得られるy1〜y4のうち、y4が最も大きな変化率であるとき(y4=ymax)、y4が最大値Yである(y4=Y)。
このようにして求められるXとYを、本発明では0.01<X<2.00〔式(I)〕とし、かつ、0.1<Y<20.0〔式(II)〕とすることで、ポリエステルフィルムのスジバリの原因となるMD熱収縮率の局所的な変化を抑制する。XおよびYを小さくすることで、MD熱収縮率の変化量が小さくなり、ポリエステルフィルム全体として熱収縮率が均一になり易くなる。しかし、メカニズムが定かではないが、熱収縮率のばらつきが小さくなってもスジバリが生じやすく、XおよびY共に、下限を規定している。
なお、本発明において、加熱搬送とは、ポリエステルフィルムの搬送中のフィルムの膜面温度が130℃以上に加熱されることをいうが、本発明は、フィルムの膜面温度がより高温となる200℃以上の加熱搬送時にも適用し得る。
本発明において、ポリエステルフィルムの幅方向(TD)における、TD単位距離あたりの、MD熱収縮率変化量x[%/m]の絶対値の最大値X[%/m]は、0.01<X<2.00〔式(I)〕を満たす。
Xが0.01以下であるとメカニズムは不明確だがフィルム全体的にスジバリが発生しやすくなる。Xが2以上であると、局所的に応力が集中する箇所でスジバリが発生しやすくなる。
Xは、0.05<X<1.50が好ましく、0.10<X<1.00がより好ましい。
Yは、0.5<Y<15が好ましく、1<Y<10がより好ましい。
ポリエステルフィルムのTD方向中央部におけるMD熱収縮率は、0.05%以上2%以下であることがより好ましく、0.10%以上1.5%以下であることがさらに好ましい。
ここで、TD方向におけるMD熱収縮率のムラとは、図2に示すように、n個の位置PにおけるMD熱収縮率Shを測定したときの、MD熱収縮率の最大値と最小値との差をいう。
例えば、ポリエステルフィルムのTD方向に等間隔に並ぶ11個の位置P1〜P11のフィルム片をサンプリングする。P1〜P11におけるフィルム片の各MD熱収縮率Sh1〜Sh11を測定し、Sh1〜Sh11中の最大値と最小値との差を、TD方向におけるMD熱収縮率のムラとすればよい。以下、「TD方向におけるMD熱収縮率のムラ」をΔShともいう。
ポリエステルフィルムのTD方向におけるMD熱収縮率のムラ(ΔSh)が0.01%以上であることで、メカニズムは不明確だがフィルム全体的にスジバリが発生し難くなる。ΔShが0.5%以下であることで、式(I)および式(II)を満たし易くなり、スジバリの発生をより抑制することができる。
ΔShは、4%以下がより好ましく、0.3%以下が更に好ましい。
ここで、DSCとは、示差走査熱量測定 (Differential scanning calorimetry)であり、DSCの「プレピーク温度」とは、ポリエステルフィルムをDSC測定したときに最初に現れるピークの温度である。
DSCのプレピーク温度は、一般に、ポリエステルフィルムの二軸延伸で行われる横延伸工程中の熱固定時におけるポリエステルフィルムの最高到達膜面温度(熱固定温度)に相当する。
なお、DSCのプレピーク温度は、示差走査熱量測定(DSC)で常法により求められる値である。
ポリエステルフィルムのTD方向におけるDSCのプレピーク温度ムラ(ΔTpp)が0.5℃以上であることで、フィルム全体に生じ易いスジバリを抑制することができる。
ΔTppが10℃以下であることで、式(I)および式(II)を満たし易くなり、スジバリの発生をより抑制することができる。
ΔTppは、0.5℃以上7℃以下がより好ましく、0.5℃以上5℃以下が更に好ましく、0.5℃以上4℃以下が最も好ましい。
なお、本明細書中において、「eq/トン」は1トンあたりのモル当量を表す。
AVは、ポリエステルをベンジルアルコール/クロロホルム(=2/3;体積比)の混合溶液に完全溶解させ、指示薬としてフェノールレッドを用い、基準液(0.025N KOH−メタノール混合溶液)で滴定し、その適定量から算出される値である。
本発明のポリエステルフィルムは、後述のように、例えば(A)ジカルボン酸成分と(B)ジオール成分とを周知の方法でエステル化反応及び/又はエステル交換反応させることによって得ることができ、更に好ましくは、これに3官能以上の多官能モノマーを共重合させて得られる。ジカルボン酸成分、ジオール成分、及び多官能モノマー等の例示や好ましい態様などの詳細については、後述する通りである。
カルボン酸基の数(a)と水酸基の数(b)との合計(a+b)が3以上である多官能モノマーに由来の構成単位としては、後述するように、カルボン酸基の数(a)が3以上のカルボン酸並びにこれらのエステル誘導体や酸無水物等、水酸基数(b)が3以上の多官能モノマー、並びに「一分子中に水酸基とカルボン酸基の両方を有し、カルボン酸基の数(a)と水酸基の数(b)との合計(a+b)が3以上であるオキシ酸類」などを挙げることができる。これらの例示及び好ましい態様などの詳細については、後述する通りである。
また、カルボン酸のカルボキシ末端、又は「一分子中に水酸基とカルボン酸基の両方を有する多官能モノマー」のカルボキシ末端に、l−ラクチド、d−ラクチド、ヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸類及びその誘導体、そのオキシ酸類が複数個連なったもの等を付加させたものも好適である。
これらは、一種単独で用いても、必要に応じて、複数種を併用してもよい。
本発明のポリエステルフィルムは、更に、オキサゾリン系化合物、カルボジイミド化合物、及びエポキシ化合物から選ばれる末端封止剤に由来する構造部分を有していることが好ましい。なお、「末端封止剤に由来する構造部分」とは、末端封止剤がポリエステル末端のカルボン酸と反応して末端に結合している構造をさす。
末端封止剤は、ポリエステルフィルムの質量に対して、0.1質量%以上5質量%以下の範囲で含有されていることが好ましく、より好ましくは0.3質量%以上4質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以上2質量%以下である。
ポリエステルフィルム中における末端封止剤の含有比率が0.1質量%以上であることで、塗布層との密着が良好になると共に、AV低下効果による耐候性向上を達成できる上、低熱収縮性も付与することができる。また、ポリエステルフィルム中における末端封止剤の含有比率が5質量%以下であると、塗布層との密着が良好になると共に、末端封止剤の添加によるポリエステルのガラス転移温度(Tg)の低下が抑制され、これによる耐候性の低下や熱収縮の増加を抑制することができる。これは、Tgが低下した分、相対的にポリエステルの反応性が増加することで生じる加水分解性の増加を抑制したり、Tg低下で増加するポリエステル分子の運動性が増加し易くなることで生じる熱収縮が抑制されるためである。
ここで、イソシアネート系ガスは、イソシアネート基をもつガスであり、例えば、ジイソプロピルフェニルイソシアネート、1,3,5−トリイソプロピルフェニルジイソシアネート、2−アミノ−1,3,5−トリイソプロピルフェニル−6−イソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びシクロヘキシルイソシアネートなどが挙げられる。
ビスオキサゾリン化合物としては、例えば、2,2'−ビス(2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−エチル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4,4'−ジエチル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−プロピル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−ブチル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−ヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−シクロヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−ベンジル−2−オキサゾリン)、2,2'−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2'−p−フェニレンビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2'−m−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2'−m−フェニレンビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2'−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−デカメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2'−テトラメチレンビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2'−9,9'−ジフェノキシエタンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−シクロヘキシレンビス(2−オキサゾリン)及び2,2'−ジフェニレンビス(2−オキサゾリン)等を例示することができる。これらの中では、ポリエステルとの反応性が良好で耐候性の向上効果が高い観点から、2,2'−ビス(2−オキサゾリン)が最も好ましい。
ビスオキサゾリン化合物は、本発明の効果を損なわない限り、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
以下、本発明のポリエステルフィルムの製造方法について具体的に説明する。
本発明のポリエステルフィルムの製造方法は、
ポリエステル原料樹脂をシート状に溶融押出し、キャスティングドラム上で冷却してポリエステルフィルムを成形するフィルム成形工程と、
成形されたポリエステルフィルムを長手方向に縦延伸する縦延伸工程と、
縦延伸後のポリエステルフィルムを延伸可能な温度に予熱する予熱部、予熱されたポリエステルフィルムを長手方向と直交する幅方向に緊張を与えて横延伸する延伸部、縦延伸及び横延伸を行なった後のポリエステルフィルムを加熱し結晶化させて熱固定する熱固定部、熱固定されたポリエステルフィルムを加熱し、ポリエステルフィルムの緊張を緩和してフィルムの残留歪みを除去する熱緩和部、並びに、熱緩和後のポリエステルフィルムを冷却する冷却部に、ポリエステルフィルムをこの順に搬送して、縦延伸後のポリエステルフィルムを長手方向に直交する幅方向に横延伸する横延伸工程と、を含み
熱固定部および熱緩和部の少なくとも一方において、幅方向のポリエステルフィルムの端部をヒーターにより選択的に輻射加熱し、かつ、冷却部において、ポリエステルフィルムの表面の温度を150℃から70℃まで冷却するときのフィルム幅方向端部における平均冷却速度を、フィルム幅方向の中央部における平均冷却速度の1.01倍〜2倍とする方法である。
本発明のポリエステルフィルムの製造方法は、さらに他の工程を含んでいてもよい。
横延伸工程は、予熱部と、延伸部と、熱固定部と、熱緩和部と、冷却部とに分かれ、ポリエステルフィルムを各部に搬送する。
さらに、本発明のポリエステルフィルムの製造方法では、横延伸工程における熱固定部もしくは熱緩和部、または熱固定部および熱緩和部の両方において、ポリエステルフィルムのTD方向端部を、ヒーターにより選択的に輻射加熱する。
例えば、特許文献2として示す特開2009−149066号公報では、次の1)と2)に示す理由から、式(I)および(II)を満たすポリエステルフィルムを製造することができないと考えられる。
ポリエステルフィルムのMD熱収縮率は、一般に、フィルムを構成するポリエステルの結晶化度と、MD方向のポリエステル分子の緩和度合いで決まる。ポリエステルの結晶化度およびポリエステル分子の緩和度合いが進んでいるほど、MD熱収縮率は低くなる傾向にある。
通常、二軸延伸装置等の延伸装置で横延伸されるPETの場合、PETの結晶化度およびPET分子の緩和度合いは、延伸装置の熱固定部の温度で決まる。フィルムの熱固定温度が高いほど、ポリエステルの結晶化度は高く、ポリエステルフィルムのMD熱収縮率が低くなる傾向にある。
延伸装置で横延伸および熱固定をする際、フィルムをクリップなどの把持部材で把持するが、この把持部材は、延伸装置の入口(ポリエステルフィルムが予熱部に入ったとき)から出口(ポリエステルフィルムが冷却部から離れたとき)を通じて約100℃〜150℃程度の温度になることが多い。フィルムの熱固定温度は、PETの場合、通常、200℃前後になるが、把持部材自体の温度は、熱固定温度に比べて低いため、熱が把持部材側に逃げてしまい、必然的にフィルム端部側の熱固定温度が低くなり易い。そのため、フィルムのMD熱収縮率もフィルム端部が大きくなるような分布が形成され易い。従って、フィルム端部周辺で急峻にMD熱収縮率が変化する箇所が生じ、その箇所で加熱搬送時のスジバリが生じ易くなると考えられる。
ポリエステルフィルムのMD熱収縮率が細かいピッチで変動する場合も、スジバリの発生を抑制することができない理由の1つと考えられる。
ポリエステルフィルムは、MD熱収縮率の変動量自体が小さくても、変動のピッチが細かいと、MD熱収縮率の『単位距離あたりの変化率』が大きくなるため、スジバリ発生の要因になることがある。この細かいピッチの変動は、詳細なメカニズムは不明であるが、延伸装置の冷却部でフィルムが急冷されることにより、フィルム面内に細かな残留応力ムラが生じることで、起きると考えられる。
薄手のポリエステルフィルムは熱容量が小さいため、延伸装置の冷却部では必然的に急冷される方向になり、上記のような細かなMD熱収縮率変動が生じ易い。それにより加熱搬送時のスジバリの原因となることがある。
そのため、延伸装置の把持部材を介してのフィルムTD方向端部の冷却や、フィルムの厚みに起因するフィルムの急冷を回避することができる。特に、冷却部におけるフィルム端部の平均冷却速度を、フィルム中央部の平均冷却速度よりも大きくすることで、フィルムのMD熱収縮率の細かい変動を低減することができる。
その結果、本発明のポリエステルフィルムの製造方法によって作製される薄手のポリエステルフィルムは、既述の式(I)および(II)を満たす。
以下、本発明のポリエステルフィルムの製造方法の詳細を、フィルム成形工程、縦延伸工程、及び横延伸工程の各工程について、それぞれ詳細に説明する。
フィルム成形工程では、ポリエステル原料樹脂をシート状に溶融押出し、キャスティングドラム上で冷却してポリエステルフィルムを成形する。
ポリエステル原料樹脂を溶融押出する方法、及びポリエステル原料樹脂については、特に限定されないが、ポリエステル原料樹脂の合成に用いる触媒や、重合方法等により固有粘度を所望の固有粘度とすることができる。
まず、ポリエステル原料樹脂について説明する。
ポリエステル原料樹脂は、ポリエステルフィルムの原料となり、ポリエステルを含んでいる材料であれば、特に制限されず、ポリエステルのほかに、無機粒子や有機粒子のスラリーを含んでいてもよい。また、ポリエステル原料樹脂は、触媒由来のチタン元素を含んでいてもよい。
ポリエステル原料樹脂に含まれるポリエステルの種類は特に制限されない。
ジカルボン酸成分と、ジオール成分とを用いて合成してもよいし、市販のポリエステルを用いてもよい。
(A)ジカルボン酸成分としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、イソソルビド、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、などの脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルインダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9’−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン酸等の芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸もしくはそのエステル誘導体が挙げられる。
なお、「主成分」とは、ジカルボン酸成分に占める芳香族ジカルボン酸の割合が80質量%以上であることをいう。
また、(B)ジオール成分として、脂肪族ジオールの少なくとも1種が用いられる場合が好ましい。脂肪族ジオールとして、エチレングリコールを含むことができ、好ましくはエチレングリコールを主成分として含有する。
なお、主成分とは、ジオール成分に占めるエチレングリコールの割合が80質量%以上であることをいう。
カルボン酸基の数(a)が3以上のカルボン酸(多官能モノマー)の例として、3官能の芳香族カルボン酸としては、例えば、トリメシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、アントラセントリカルボン酸等が、3官能の脂肪族カルボン酸としては、例えば、メタントリカルボン酸、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタントリカルボン酸等が、4官能の芳香族カルボン酸としては、例えば、ベンゼンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、アントラセンテトラカルボン酸、ペリレンテトラカルボン酸等が、4官能の脂肪族カルボン酸として、例えば、エタンテトラカルボン酸、エチレンテトラカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、アダマンタンテトラカルボン酸等が、5官能以上の芳香族カルボン酸として、例えば、ベンゼンペンタカルボン酸、ベンゼンヘキサカルボン酸、ナフタレンペンタカルボン酸、ナフタレンヘキサカルボン酸、ナフタレンヘプタカルボン酸、ナフタレンオクタカルボン酸、アントラセンペンタカルボン酸、アントラセンヘキサカルボン酸、アントラセンヘプタカルボン酸、アントラセンオクタカルボン酸等が、5官能以上の脂肪族カルボン酸として、例えば、エタンペンタカルボン酸、エタンヘプタカルボン酸、ブタンペンタカルボン酸、ブタンヘプタカルボン酸、シクロペンタンペンタカルボン酸、シクロヘキサンペンタカルボン酸、シクロヘキサンヘキサカルボン酸、アダマンタンペンタカルボン酸、アダマンタンヘキサカルボン酸等が挙げられる。
本発明においては、これらのエステル誘導体や酸無水物等が例として挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらは、1種単独で用いても、必要に応じて、複数種を併用してもよい。
これらは、1種単独で用いても、必要に応じて、複数種を併用してもよい。
また、これらの多官能モノマーのカルボキシ末端に、l−ラクチド、d−ラクチド、ヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸類及びその誘導体、そのオキシ酸類が複数個連なったもの等を付加させたものも好適に用いられる。
これらは、1種単独で用いても、必要に応じて、複数種を併用してもよい。
Ti系触媒の例としては、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートテトラマー、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネート等のチタンアルコキシド、チタンアルコキシドの加水分解により得られるチタン酸化物、チタンアルコキシドと珪素アルコキシドもしくはジルコニウムアルコキシドとの混合物の加水分解により得られるチタン−珪素もしくはジルコニウム複合酸化物、酢酸チタン、蓚酸チタン、蓚酸チタンカリウム、蓚酸チタンナトリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸−水酸化アルミニウム混合物、塩化チタン、塩化チタン−塩化アルミニウム混合物、チタンアセチルアセトナート、有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体、等が挙げられる。
ポリエステル原料樹脂に含まれるチタン元素の量が1ppm以上であると、ポリエステルの重量平均分子量(Mw)が上がり、熱分解しにくい。そのため、押出機内で異物が軽減される。ポリエステル原料樹脂に含まれるチタン元素の量が50ppm以下であると、Ti系触媒が異物となり難く、ポリエステルフィルムの延伸の際に延伸ムラが軽減される。
触媒成分であるチタン化合物として、有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体の少なくとも1種が用いられることが好ましい。有機酸としては、例えば、クエン酸、乳酸、トリメリット酸、リンゴ酸等を挙げることができる。中でも、クエン酸又はクエン酸塩を配位子とする有機キレート錯体が好ましい。
また、一般に、末端カルボキシ基量が多いほど耐加水分解性が悪化することが知られており、上記の添加方法によって末端カルボキシ基量が少なくなることで、耐加水分解性の向上が期待される。
このようなチタン化合物の例としては、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートテトラマー、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネート等のチタンアルコキシド、チタンアルコキシドの加水分解により得られるチタン酸化物、チタンアルコキシドと珪素アルコキシドもしくはジルコニウムアルコキシドとの混合物の加水分解により得られるチタン−珪素もしくはジルコニウム複合酸化物、酢酸チタン、蓚酸チタン、蓚酸チタンカリウム、蓚酸チタンナトリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸−水酸化アルミニウム混合物、塩化チタン、塩化チタン−塩化アルミニウム混合物、チタンアセチルアセトナート等が挙げられる。
これにより、重合時の着色及びその後の溶融製膜時における着色が少なくなり、従来のアンチモン(Sb)触媒系のポリエステルに比べて黄色味が軽減され、また、透明性の比較的高いゲルマニウム触媒系のポリエステルに比べて遜色のない色調、透明性を持ち、しかも耐熱性に優れたポリエステルを提供できる。また、コバルト化合物や色素などの色調調整材を用いずに高い透明性を有し、黄色味の少ないポリエステルが得られる。
5価のリン化合物として、置換基として芳香環を有しない5価のリン酸エステルの少なくとも一種が用いられる。例えば、炭素数2以下の低級アルキル基を置換基として有するリン酸エステル〔(OR)3−P=O;R=炭素数1又は2のアルキル基〕が挙げられ、具体的には、リン酸トリメチル、リン酸トリエチルが特に好ましい。
ポリエステルにマグネシウム化合物を含めることにより、ポリエステルの静電印加性が向上する。この場合に着色がおきやすいが、本発明においては、着色を抑え、優れた色調、耐熱性が得られる。
マグネシウム化合物としては、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキシド、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム等のマグネシウム塩が挙げられる。中でも、エチレングリコールへの溶解性の観点から、酢酸マグネシウムが最も好ましい。
(i)Z=5×(P含有量[ppm]/P原子量)−2×(Mg含有量[ppm]/Mg原子量)−4×(Ti含有量[ppm]/Ti原子量)
(ii)0≦Z≦+5.0
これは、リン化合物はチタンに作用するのみならずマグネシウム化合物とも相互作用することから、3者のバランスを定量的に表現する指標となるものである。
式(i)は、反応可能な全リン量から、マグネシウムに作用するリン分を除き、チタンに作用可能なリンの量を表現したものである。値Zが正の場合は、チタンを阻害するリンが余剰な状況にあり、逆に負の場合はチタンを阻害するために必要なリンが不足する状況にあるといえる。反応においては、Ti、Mg、Pの各原子1個は等価ではないことから、式中の各々のモル数に価数を乗じて重み付けを施してある。
エステル化反応を一段階で行なう場合、エステル化反応温度は230〜260℃が好ましく、240〜250℃がより好ましい。
エステル化反応を多段階に分けて行なう場合、第一反応槽のエステル化反応の温度は230〜260℃が好ましく、より好ましくは240〜250℃であり、圧力は1.0〜5.0kg/cm2が好ましく、より好ましくは2.0〜3.0kg/cm2である。第二反応槽のエステル化反応の温度は230〜260℃が好ましく、より好ましくは245〜255℃であり、圧力は0.5〜5.0kg/cm2、より好ましくは1.0〜3.0kg/cm2である。さらに3段階以上に分けて実施する場合は、中間段階のエステル化反応の条件は、第一反応槽と最終反応槽の間の条件に設定するのが好ましい。
重縮合は、エステル化反応で生成されたエステル化反応生成物を重縮合反応させて重縮合物を生成する。重縮合反応は、1段階で行なってもよいし、多段階に分けて行なうようにしてもよい。
本発明におけるフィルム成形工程では、上記のようにして得られるポリエステル原料樹脂を溶融押出し、さらに冷却してポリエステルフィルムを成形する。
ポリエステル原料樹脂の溶融押出は、例えば、1本又は2本以上のスクリュを備えた押出機を用い、ポリエステル原料樹脂の融点以上の温度に加熱し、スクリュを回転させて溶融混練しながら行なわれる。ポリエステル原料樹脂は、加熱及びスクリュによる混練により、押出機内で溶融してメルトとなる。また、押出機内での熱分解(ポリエステルの加水分解)を抑制する観点から、押出機内を窒素置換して、ポリエステル原料樹脂の溶融押出しを行なうことが好ましい。押出機は、混練温度が低く抑えられる点で二軸押出機が好ましい。
溶融されたポリエステル原料樹脂(メルト)は、ギアポンプ、濾過器等を通して、押出ダイから押出す。押出ダイは、単に「ダイ」とも称する〔JIS B8650:2006、a)押出成形機、番号134参照〕。
このとき、メルトは、単層で押出してもよいし、多層で押出してもよい。
ポリエステル原料樹脂に末端封止剤を含める工程を設けることで、耐候性が向上する上、熱収縮を低く抑えることができる。また、ポリエステルフィルムを成形した場合において、ポリエステル末端に結合して分子鎖の末端部分が嵩高くなり、フィルム表面の微細凹凸量が増えるため、アンカー効果が発現しやすくなり、ポリエステルフィルムと該フィルム上に塗布形成される塗布層との密着が向上する。
末端封止剤の含有比率が0.1質量%以上であることで、AV低下効果による耐候性向上を達成できる上、低熱収縮性及び密着性を付与することができる。また、末端封止剤の含有比率が5質量%以下であると、密着性が向上するほか、末端封止剤の添加によるポリエステルのガラス転移温度(Tg)の低下が抑制され、これによる耐候性の低下や熱収縮の増加を抑制することができる。これは、Tgが低下した分、相対的にポリエステルの反応性が増加することで生じる加水分解性の増加を抑制したり、Tg低下で増加するポリエステル分子の運動性が増加し易くなることで生じる熱収縮が抑制されるためである。
カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、及びオキサゾリン系化合物の例示及び好ましい態様等の詳細は、「ポリエステルフィルム」の項において既述した通りである。
キャスト処理により得られるフィルム状のポリエステル成形体の厚みは、0.1mm〜3mmであることが好ましく、0.2mm〜2mmであることがより好ましく、0.3mm〜1.5mmであることがさらに好ましい。
フィルム状のポリエステル成形体の厚みを3mm以下とすることで、メルトの蓄熱による冷却遅延を回避し、また、0.1mm以上とすることで、押出しから冷却までの間に、ポリエステル中のOH基やCOOH基がポリエステル内部に拡散され、加水分解発生の要因となるOH基及びCOOH基がポリエステル表面に露出することを抑制する。
冷却手段は、上記の中でも、連続運転時のフィルム表面へのオリゴマー付着防止の観点から、冷風による冷却及びキャストドラムを用いた冷却の少なくとも一方が好ましい。さらには、押出機から押出されたメルトを冷風で冷却すると共に、メルトをキャストドラムに接触させて冷却することが特に好ましい。
本発明の縦延伸工程では、フィルム成形工程で成形されたポリエステルフィルムを長手方向に縦延伸する。
また、縦横の延伸倍率の積で表される面積延伸倍率は、延伸前のポリエステルフィルムの面積の6倍〜18倍が好ましく、8倍〜17.5倍であることがより好ましく、10倍〜17倍であることがさらに好ましい。
ポリエステルフィルムの縦延伸時の温度(以下、「縦延伸温度」とも称する)は、ポリエステルフィルムのガラス転移温度をTgとするとき、Tg−20℃以上Tg+50℃以下であることが好ましく、より好ましくはTg−10℃以上Tg+40℃以下、さらに好ましくはTg℃以上Tg+30℃以下である。
なお、「ポリエステルフィルムの長手方向(搬送方向、MD)と直交する方向(TD)」とは、ポリエステルフィルムの長手方向(搬送方向、MD)と垂直(90°)をなす方向を意図するものであるが、機械的な誤差などから実質的に長手方向(すなわち搬送方向)に対する角度が90°とみなせる方向(例えば、MD方向に対し90°±5°の方向)が含まれる。
次に、本発明における横延伸工程について詳細に説明する。
本発明における横延伸工程は、縦延伸後のポリエステルフィルムを長手方向に直交する幅方向に横延伸する工程であるが、この横延伸を、
(a)縦延伸後のポリエステルフィルムを延伸可能な温度に予熱する予熱部、
(b)予熱されたポリエステルフィルムを長手方向と直交する幅方向に緊張を与えて横延伸する延伸部、
(c)縦延伸及び横延伸を行なった後のポリエステルフィルムを加熱し結晶化させて熱固定する熱固定部、
(d)熱固定されたポリエステルフィルムを加熱し、ポリエステルフィルムの緊張を緩和してフィルムの残留歪みを除去する熱緩和部、並びに、
(e)熱緩和後のポリエステルフィルムを冷却する冷却部
に、ポリエステルフィルムをこの順に搬送し、
(c)熱固定部および(d)熱緩和部の少なくとも一方において、ポリエステルフィルムのTD方向端部をヒーターにより選択的に輻射加熱し、かつ、(e)冷却部において、ポリエステルフィルムの表面の温度を150℃から70℃まで冷却するときのフィルム幅方向端部における平均冷却速度を、フィルム幅方向の中央部における平均冷却速度の1.01倍〜2倍とすることにより行う。
本発明における横延伸工程では、上記構成でポリエステルフィルムが横延伸される態様であればその具体的な手段は制限されないが、上記構成をなす各工程の処理が可能な横延伸装置又は2軸延伸機を用いて行なうことが好ましい。
図3に示すように、2軸延伸機100は、1対の環状レール60a及び60bと、各環状レールに取り付けられ、レールに沿って移動可能な把持部材2a〜2lとを備えている。環状レール60a及び60bは、ポリエステルフィルム200を挟んで互いに対称配置されており、把持部材2a〜2lでポリエステルフィルム200を握持し、レールに沿って移動させることによりフィルム幅方向に延伸可能なようになっている。
図3は、2軸延伸機の一例を上面から示す上面図である。
把持部材2a、2b、2e、2f、2i、及び2jは、環状レール60aに沿って反時計回りに移動し、把持部材2c、2d、2g、2h、2k、及び2lは、環状レール60bに沿って時計回りに移動する。
2軸延伸機100は、延伸部20において、ポリエステルフィルム200をTD方向に延伸する横延伸を可能とするものであるが、把持部材2a〜2lの移動速度を変化させることにより、ポリエステルフィルム200をMD方向にも延伸することができる。すなわち、2軸延伸機100を用いて同時2軸延伸を行なうことも可能である。
予熱部では、縦延伸工程で縦延伸した後のポリエステルフィルムを延伸可能な温度に予熱する。
図3に示すように、予熱部10においてポリエステルフィルム200を予熱する。予熱部10では、ポリエステルフィルム200を延伸する前に予め加熱し、ポリエステルフィルム200の横延伸を容易に行なえるようにする。
なお、予熱部終了点は、ポリエステルフィルム200の予熱を終了する時点、すなわち予熱部10の領域からポリエステルフィルム200が離れる位置をいう。
延伸部では、予熱部で予熱されたポリエステルフィルムを長手方向(MD方向)と直交する幅方向(TD方向)に緊張を与えて横延伸する。
図3に示すように、延伸部20では、予熱されたポリエステルフィルム200を、少なくともポリエステルフィルム200の長手方向と直交するTD方向に横延伸してポリエステルフィルム200に緊張を与える。
ポリエステルフィルム200の長手方向(搬送方向、MD)と直交する方向(TD)への延伸(横延伸)は、ポリエステルフィルム200の長手方向(搬送方向、MD)と垂直(90°)の角度の方向に延伸することを意図するものであるが、機械誤差の範囲の方向であってもよい。機械誤差の範囲とは、ポリエステルの長手方向(搬送方向、MD)と垂直とみなせる角度(90°±5°)の方向である。
また、ポリエステルフィルム200の横延伸時の膜面温度(以下、「横延伸温度」ともいう。)は、ポリエステルフィルム200のガラス転移温度をTgとするとき、Tg−10℃以上Tg+100℃以下であることが好ましく、より好ましくはTg℃以上Tg+90℃以下、さらに好ましくはTg+10℃以上Tg+80℃以下である。
横延伸工程でのポリエステルフィルム200の縦延伸は、延伸部20のみで行なってもよいし、後述する熱固定部30、熱緩和部40、又は冷却部50で行なってもよい。複数の箇所で縦延伸を行なってもよい。
熱固定部では、既に縦延伸及び横延伸が施された後のポリエステルフィルムを加熱し結晶化させて熱固定する。
熱固定とは、延伸部20においてポリエステルフィルム200に緊張を与えたまま加熱し、ポリエステルを結晶化させることをいう。
熱固定温度が160℃以上であると、ポリエステルが結晶化し易く、ポリエステル分子を伸びた状態で固定化することができ、ポリエステルフィルムの耐加水分解性を高めることができる。また、熱固定温度が240℃以下であると、ポリエステル分子同士が絡み合った部分で滑りが生じにくく、ポリエステル分子が縮みにくいため、ポリエステルフィルムの耐加水分解性の低下を抑制することができる。換言すれば、熱固定温度が160℃〜240℃となるように加熱することで、ポリエステル分子の結晶を配向させて、ポリエステルフィルムの耐加水分解性を高めることができる。
熱固定温度は、上記同様の理由から、170℃〜230℃の範囲が好ましく、175℃〜225℃の範囲がより好ましい。
なお、最高到達膜面温度(熱固定温度)は、ポリエステルフィルム200の表面に熱電対を接触させて測定される値である。
上記の中では、最高到達膜面温度のバラツキは、上記と同様の理由から、0.5℃以上7.0℃以下がより好ましく、0.5℃以上5.0℃以下が更に好ましく、0.5℃以上4.0℃以下が特に好ましい。
このとき、加熱は、熱固定工程での加熱面における加熱直後の表面温度が、加熱面と反対側の非加熱面の表面温度に比べて0.5℃以上5.0℃以下の範囲で高くなるように行なわれることが好ましい。熱固定時の加熱面の温度がその反対側の面より高く、その表裏間の温度差が0.5〜5.0℃であることで、フィルムのカールがより効果的に解消される。カールの解消効果の観点からは、加熱面とその反対側の非加熱面との間の温度差は、0.7〜3.0℃の範囲がより好ましく、0.8℃以上2.0℃以下が更に好ましい。
熱緩和部40においてフィルムのTD方向端部を輻射加熱するときは、熱固定部30での輻射加熱を省略してもよいし、熱固定部30および熱緩和部40の両方において行ってもよい。
ここで、「ポリエステルフィルムのTD方向端部」とは、ポリエステルフィルムのTD方向の両端の縁および、縁から、ポリエステルフィルムのTD方向の全長(つまり、幅)の10%までの領域をいう。
輻射加熱可能なヒーターとしては、例えば、赤外線ヒーターが挙げられ、特にセラミック製のヒーター(セラミックスヒーター)を用いることが好ましい。
ヒーターの表面温度が300℃〜800℃であるとき、ポリエステルフィルム表面と、ヒーターとの距離を20mm〜250mmとすることが好ましく、ヒーター表面温度400℃〜700℃、かつ、フィルム−ヒーター間の距離を50mm〜200mmとすることがより好ましい。
中でも、滞留時間は、上記同様の理由から、8秒以上40秒以下が好ましく、10秒以上30秒以下がより好ましい。
ポリエステルフィルムのTD方向端部への輻射加熱は、フィルムのTD方向における温度バラツキ、ひいては結晶化度のバラツキを軽減するものであり、MD熱収縮率の局所的な増減を抑制し易くなる。
熱緩和部では、熱固定されたポリエステルフィルムを加熱し、ポリエステルフィルムの緊張を緩和してフィルムの残留歪みを除去する。
既述のように、本発明のポリエステルフィルムの製造方法では、熱固定部および熱緩和部の少なくとも一方において、ポリエステルフィルムのTD方向端部をヒーターにより選択的に輻射加熱する。熱緩和部でのポリエステルフィルムのTD方向端部の選択的輻射加熱は、熱固定部でのポリエステルフィルムのTD方向端部の選択的輻射加熱と同様の方法で行えばよく、加熱温度の数値範囲および好ましい態様も同様である。
図3に示す熱緩和部40において、ポリエステルフィルム200の表面の最高到達膜面温度が、熱固定部30におけるポリエステルフィルム200の最高到達膜面温度(T熱固定)よりも5℃以上低い温度となるように、ポリエステルフィルム200を加熱する態様が好ましい。
以下、熱緩和時におけるポリエステルフィルム200の表面の最高到達膜面温度を「熱緩和温度(T熱緩和)」ともいう。
T熱緩和が「T熱固定−5℃」以下であると、ポリエステルフィルムの耐加水分解性により優れる。また、T熱緩和は、寸法安定性が良好になる点で、100℃以上であることが好ましい。
更には、T熱緩和は、100℃以上で、かつT熱固定よりも15℃以上低い温度領域(100℃≦T熱緩和≦T熱固定−15℃)であることが好ましく、110℃以上で、かつT熱固定よりも25℃以上低い温度領域(110℃≦T熱緩和≦T熱固定−25℃)であることがより好ましく、120℃以上で、かつT熱固定よりも30℃以上低い温度領域(120℃≦T熱緩和≦T熱固定−30℃)であることが特に好ましい。
なお、T熱緩和は、ポリエステルフィルム200の表面に熱電対を接触させることで測定される値である。
冷却部では、熱緩和部で熱緩和した後のポリエステルフィルムを冷却する。
図3に示すように、冷却部50では、熱緩和部40を経たポリエステルフィルム200が冷却される。熱固定部30や熱緩和部40で加熱されたポリエステルフィルム200を冷却することにより、ポリエステルフィルム200の形状が固定化される。
ここで、冷却部出口とは、ポリエステル200が冷却部50から離れるときの、冷却部50の端部をいい、ポリエステルフィルム200を把持する把持部材2(図3では、把持部材2j及び2l)が、ポリエステルフィルム200を離すときの位置をいう。
ここで、平均冷却速度は、冷却ゾーンでのフィルムの膜温を放射温度計により実測することで求められる。すなわち、膜温が150℃になる地点と膜温が70℃になる地点の距離Zmと、フィルムの搬送速度Sm/秒から、150から70℃までの冷却時間(Z÷S)秒を求める。そこから更に(150−70)÷(Z÷S)を計算することにより、平均冷却速度が求められる。
平均冷却速度は、4℃/秒〜80℃/秒がより好ましく、5℃/秒〜50℃/秒が更に好ましい。
フィルム幅方向端部における平均冷却速度の、フィルムTD方向中央部における平均冷却速度に対する倍率(特定冷却倍率ともいう)を、1.01倍以上2倍以下とすることで、式(I)および(II)を満たす薄手のポリエステルフィルムを製造し易くなり、スジバリの発生を抑制し易い。
特定冷却倍率は、1.03倍〜1.7倍が好ましく、1.05倍〜1.5倍がより好ましい。
冷却工程で冷却されたポリエステルフィルム200は、TD方向両端のクリップで握持された把持部分をカットし、ロール状に巻き取られる。
予熱部10においてポリエステルフィルム200の幅方向(TD)の両端部を、片端部につき、少なくとも2つの把持部材を用いて把持する。例えば、ポリエステルフィルム200の幅方向(TD)の片端部の一方を把持部材2a及び2bで把持し、他方を把持部材2c及び2dで把持する。次いで、把持部材2a〜2dを移動させることにより、予熱部10から冷却部50までポリエステルフィルム200を搬送する。
上記のように、把持部材2a−2b間の間隔、及び把持部材2c−2d間の間隔を、MD方向上流側よりも下流側で狭めることで、ポリエステルフィルム200のMD方向の緩和を行なうことができる。したがって、MD方向の緩和を熱固定部30又は熱緩和部40で行なう場合は、把持部材2a〜2dが熱固定部30又は熱緩和部40に到達したときに、把持部材2a〜2dの移動速度を遅くして、ポリエステルフィルム200の搬送速度を小さくし、把持部材2a−2b間の間隔、及び把持部材2c−2d間の間隔を、予熱部における間隔よりも狭めればよい。
すなわち、横延伸工程におけるポリエステルフィルムの幅が最大になるときのポリエステルフィルムの幅L1と、冷却部からポリエステルフィルムが離れる冷却部の端部におけるポリエステルフィルムの幅L2とが、下記式(1)を満たし、かつ、予熱部におけるポリエステルフィルムの搬送速度S1と、冷却部の端部におけるポリエステルフィルムの搬送速度S2とが、下記式(2)を満たすことが好ましい。
図3においては、予熱部10における延伸前のポリエステルフィルム200の幅L0が、延伸部20によりポリエステルフィルム200がTD方向に拡幅されて幅L1となり、熱緩和部40で緊張が解かれて、ポリエステルフィルム200が冷却部50から離れるときに幅L2となっていることが示されている。図3においては、L0<L2<L1の順に幅が大きい。すなわち、L1は、予熱部10〜冷却部50に至る横延伸工程におけるポリエステルフィルム200の最大の幅である。
図3に示すように、延伸部20を過ぎたポリエステルフィルム200は、その後、熱固定部30にて、緊張が与えられたまま加熱されるため、通常、幅L1は、熱固定部30におけるポリエステルフィルム200の幅(TD方向の長さ)ともいえる。
ポリエステルフィルムを把持する把持部材が、ポリエステルフィルムを離すことで、ポリエステルフィルムは、冷却部の領域から離れる。例えば、図3に示す把持部材2jがP点において、また、把持部材2lがQ点において、それぞれ、ポリエステルフィルム200を離すとき、冷却部50の端部(MD方向の端部)は、P点とQ点とを結んだ直線で表される。
また、「冷却部の前記端部におけるポリエステルフィルムの搬送速度S2」は、冷却部に位置し、ポリエステルフィルムを把持する把持部材(図3では、把持部材2jおよび2l)が、ポリエステルフィルムを離すときにおけるポリエステルフィルムの搬送速度である。図3を用いて換言すると、例えば、把持部材2jがP点において、また、把持部材2lがQ点において、それぞれ、ポリエステルフィルム200を離すとき、「冷却部50の前記端部におけるポリエステルフィルム200の搬送速度S2」は、ポリエステルフィルム200がP点とQ点とを結んだ直線を超えるときの搬送速度に相当する。さらに換言すると、「冷却部50の前記端部におけるポリエステルフィルム200の搬送速度S2」は、把持部材2jおよび2lが、ポリエステルフィルム200を離す直前の把持部材2jおよび2lの移動速度に相当する。
式(2)は、ポリエステルフィルム200をMD方向に緩和するときは、ポリエステルフィルム200の予熱部10における搬送速度S1が、冷却部50において2%〜15%減速するように緩和することが好ましいことを意味する。
横延伸工程を、上記構成とすることで、ポリエステルフィルムのスジバリを抑制し易くなる。
ΔLおよびΔSが共に2%以上であることで、製造される薄手のポリエステルフィルムが式(I)および(II)を満たしやすくなり、スジバリを抑制し易くなる。ΔLおよびΔSが共に15%以下であることで、ポリエステルフィルムが延伸装置で縮みきり易く、弛みを抑制し得る。
本発明のポリエステルフィルムは、厚みが100μm以下となる薄手のフィルムであるにもかかわらず、加熱搬送されてもスジバリが生じにくく、フィルム上に塗布液や機能性部材シート等を貼りつけても、塗布ムラ、シート貼り合わせ時の気泡混入等の故障を生じにくい。従って、加熱搬送して加工または成形される種々の用途に用いることができる。
例えば、光学用フィルム、電気絶縁用フィルムに好適に用いることができる。
太陽電池モジュールは、一般に、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池素子を、太陽光が入射する透明性の基板と既述の本発明のポリエステルフィルム(太陽電池用バックシート)との間に配置して構成されている。具体的な実施態様として、電気を取り出すリード配線(不図示)で接続された発電素子(太陽電池素子)をエチレン・酢酸ビニル共重合体系(EVA系)樹脂等の封止剤で封止し、これを、ガラス等の透明基板と、本発明のポリエステルフィルム(バックシート)との間に挟んで互いに張り合わせることによって構成される態様に構成されてもよい。
(ポリエステル原料樹脂1)
以下に示すように、テレフタル酸及びエチレングリコールを直接反応させて水を留去し、エステル化した後、減圧下で重縮合を行なう直接エステル化法を用いて、連続重合装置によりポリエステル(Ti触媒系PET)を得た。
第一エステル化反応槽に、高純度テレフタル酸4.7トンとエチレングリコール1.8トンを90分かけて混合してスラリー形成させ、3800kg/hの流量で連続的に第一エステル化反応槽に供給した。更にクエン酸がTi金属に配位したクエン酸キレートチタン錯体(VERTEC AC−420、ジョンソン・マッセイ社製)のエチレングリコール溶液を連続的に供給し、反応槽内温度250℃、攪拌下、平均滞留時間約4.3時間で反応を行なった。このとき、クエン酸キレートチタン錯体は、Ti添加量が元素換算値で9ppmとなるように連続的に添加した。このとき、得られたオリゴマーの酸価は600当量/トンであった。なお、本明細書中において、「当量/t」は1トンあたりのモル当量を表す。
上記で得られたエステル化反応生成物を連続的に第一重縮合反応槽に供給し、攪拌下、反応温度270℃、反応槽内圧力20torr(2.67×10−3MPa)で、平均滞留時間約1.8時間で重縮合させた。
得られたポリマーは、IV=0.67、末端カルボキシ基の量(AV)=23当量/トン、融点=257℃、溶液ヘイズ=0.3%であった。IV及びAVの測定は、以下に示す方法により行なった。
ポリエステル原料樹脂の固有粘度(IV)は、ポリエステル原料樹脂を、1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノール(=2/3[質量比])混合溶媒に溶解し、該混合溶媒中の25℃での溶液粘度から求めた。
ポリエステル原料樹脂の末端COOH量(AV)は、未延伸ポリエステルフィルム1をベンジルアルコール/クロロホルム(=2/3;体積比)の混合溶液に完全溶解させ、指示薬としてフェノールレッドを用い、基準液(0.025N KOH−メタノール混合溶液)で滴定し、その適定量から算出した。
以上のようにして、ポリエステル原料樹脂1を合成した。
ポリエステル原料樹脂1をバッチ法で固相重合を実施した。すなわち、ポリエステルのペレットを容器に投入した後、真空にして撹拌しながら、150℃で予備結晶化処理し、その後190℃で30時間の固相重合反応を行なった。
以上のようにして、ポリエステル原料樹脂2を合成した。
二塩基酸として、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル97.6部(100モル%)及び二価アルコールとしてエチレングリコール49.6部(100モル%)を、エステル交換槽に投入し、メタノールを留去さてエステル交換反応を進行させながら昇温させ、メタノールが理論量まで留出した時点で、反応物を重縮合槽に移して、重縮合触媒として酸化ゲルマニウム0.016部を添加した後、高真空に減圧しながら290℃まで加熱してエチレングリコールを留去した。攪拌トルクが目標値に達したところで反応を終了させ、得られたポリマーを水中に直径2.5mmのストランド状にして取り出した。得られたストランド状のポリマーをチップカッターでチップ状に切断した。得られたポリマーの固有粘度(IV)は、0.60であった。
以上のようにして、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)のポリエステル原料樹脂3を得た。
特開2009−149066号公報の段落番号[0107](実施例1)を参考に、ポリエステル原料樹脂4を用意した。
<未延伸ポリエステルフィルムの作製>
−フィルム成形工程−
ポリエステル原料樹脂1を、含水率20ppm以下に乾燥させた後、直径50mmの1軸混練押出機のホッパーに投入した。ポリエステル原料樹脂1は、300℃に溶融し、下記押出条件により、ギアポンプ、濾過器(孔径20μm)を介し、ダイから押出した。なお、ポリエステルシートの厚さが0.6mmとなるように、ダイのスリットの寸法を調整した。ポリエステルシートの厚さは、キャストドラムの出口に設置した自動厚み計により測定した。
未延伸ポリエステルフィルムの固有粘度(IV)は、未延伸ポリエステルフィルムを、1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノール(=2/3[質量比])混合溶媒に溶解し、該混合溶媒中の25℃での溶液粘度から求めた。
未延伸ポリエステルフィルムの末端COOH量(AV)は、未延伸ポリエステルフィルムをベンジルアルコール/クロロホルム(=2/3;体積比)の混合溶液に完全溶解させ、指示薬としてフェノールレッドを用い、基準液(0.025N KOH−メタノール混合溶液)で滴定し、その適定量から算出した。
得られた未延伸ポリエステルフィルム1について、以下の方法で逐次2軸延伸することによって延伸し、厚み50μm、フィルム幅(TD方向の全長)2.5mの2軸延伸ポリエステルフィルム1を作製した。
未延伸ポリエステルフィルム1を周速の異なる2対のニップロールの間に通し、下記条件で縦方向(搬送方向)に延伸した。
予熱温度 :80℃
縦延伸温度:90℃
縦延伸倍率:3.5倍
縦延伸応力:12MPa
縦延伸したポリエステルフィルム1(縦延伸ポリエステルフィルム1)に対し、図3に示す構造を有するテンター(2軸延伸機)を用いて、下記の方法、条件にて延伸した。
予熱温度を110℃とし、延伸可能なように加熱した。
予熱された縦延伸ポリエステルフィルム1を、縦延伸した方向(長手方向)と直交するフィルム幅方向(TD方向)に下記の条件にて緊張を与え、横延伸した。
<条件>
・延伸温度(横延伸温度) :125℃
・延伸倍率(横延伸倍率) :4.2倍
・延伸応力(横延伸応力):18MPa
次いで、ポリエステルフィルムの最高到達膜面温度(熱固定温度)を下記範囲に制御して加熱し、結晶化させた。
・最高到達膜面温度(熱固定温度T熱固定):220〔℃〕
ここでの熱固定温度T熱固定が、DSCのプレピーク温度〔℃〕である。
熱固定後のポリエステルフィルムを下記の温度に加熱し、フィルムの緊張を緩和した。このとき、フィルム幅方向の両端部を、熱固定と同様にキャスト面側から赤外線ヒータ(ヒータ表面温度:350℃)で輻射加熱した。
・熱緩和温度(T熱緩和):150℃
・熱緩和率:TD方向(TD熱緩和率;ΔL)=5%
MD方向(MD熱緩和率;ΔS)=5%
次に、熱緩和後のポリエステルフィルムを65℃の冷却温度にて冷却した。
このとき、平均冷却速度を40℃/秒とし、フィルム幅方向端部における平均冷却速度の、フィルムTD方向中央部における平均冷却速度に対する倍率(特定冷却倍率、表1中「端部/中央部」と示す)を1.1倍とした。
冷却終了後、ポリエステルフィルムの両端を20cmずつトリミングした。その後、両端に幅10mmで押出し加工(ナーリング)を行なった後、張力25kg/mで巻き取った。
上記で作製した2軸延伸ポリエステルフィルムに対し、下記の測定、評価を行なった。測定、評価の結果は下記表1に示す。
2軸延伸ポリエステルフィルムを裁断し、TD方向30mm、MD方向120mmの大きさの試料片Mを作成した。試料片Mに対し、MD方向で100mmの間隔となるように、2本の基準線を入れ、無張力下で150℃の加熱オーブン中に30分間放置した。この放置の後、試料片Mを室温まで冷却して、2本の基準線の間隔を測定し、この値をA(単位;mm)とした。測定されたAおよび「100×(100−A)/100」の式から算出された数値をMD熱収縮率(Sh)とした。
かかるMD熱収縮率を、フィルムのTD方向の一方の端部から他方の端部まで、50mm毎(各試料片MのTD方向の中心点間隔で50mm間隔)に測定し、MD熱収縮率の最も大きな数値と、最も小さな数値との差をMD熱収縮率のムラ(ΔSh)として算出した。なお、MD熱収縮率を測定する手法を表す模式図を図4に示す。
xは、2軸延伸ポリエステルフィルムをTD方向0.05m毎にMD熱収縮率(150℃30分)を測定し、下記式により算出した。
x=(任意の位置で隣接するMD熱収縮率差)÷0.05m
なお、xは、負の値も取り得る。
Xは、算出されたxの絶対値の幅方向における最大値である。
y=(任意の位置で隣接するxの差)÷0.05m
なお、yは負の値も取り得る。
Yは、yの絶対値の幅方向における最大値である。
得られた2軸延伸ポリエステルフィルムの厚みは、以下のようにして求めた。
2軸延伸ポリエステルフィルムに対して、接触式膜厚測定計(アンリツ社製)を用い、縦延伸した方向(長手方向)に0.5mにわたり等間隔に50点をサンプリングし、さらにフィルム幅方向(長手方向に直交する方向)にフィルム全幅にわたり等間隔(幅方向に50等分)に50点をサンプリングした後、これらの100点の厚みを測定した。これら100点の平均の厚みを求め、ポリエステルフィルムの厚みとした。
得られた2軸延伸ポリエステルフィルムについて、フィルムのTD方向の一方の端部から他方の端部の全幅に対して、均等に11点をサンプリングし、DSCプレピーク温度(Tpp)を測定した。測定された複数のTpp値の最大値と最小値の差(ΔTpp)を、DSCプレピーク温度のムラとした。
なお、DSCプレピーク温度は、株式会社島津製作所製のDSC−60に、サンプリングした試料片のフィルムを所定量(2〜10mg)セットし、10℃/minの昇温速度で、300℃まで昇温して測定した。ポリエステル(PET)の融解ピーク手前に現れる吸熱ピークのピーク温度をDSCプレピーク温度(Tpp)として読み取った。
得られた2軸延伸ポリエステルフィルムについて、目視によりフィルム面のスジバリの程度を観察し、下記の評価基準に従って評価した。
<評価基準>
AA:スジバリの発生はほとんどみられなかった。
A:スジバリの発生が僅かにみられたが、フィルム面は良好であった。
B:スジバリの発生がみられたが、実用上は支障のない程度であった。
C:スジバリの発生が顕著にみられた。
実施例1において、表1に示す条件を変更したほかは、いずれも同様にして、実施例2〜実施例9、及び、比較例1〜比較例4の2軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
また、得られた2軸延伸ポリエステルフィルムについて、実施例1の2軸延伸ポリエステルフィルムと同様の方法で、2軸延伸ポリエステルフィルムの物性評価およびスジバリ評価を行った。結果を表1に示す。
特開2009−149066号公報の実施例1に準拠して、2軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られた2軸延伸ポリエステルフィルムについて、実施例1の2軸延伸ポリエステルフィルムと同様の方法で、2軸延伸ポリエステルフィルムの物性評価およびスジバリ評価を行った。結果を表1に示す。
10・・・予熱部
20・・・延伸部
30・・・熱固定部
40・・・熱緩和部
50・・・冷却部
60・・・環状レール
100・・・2軸延伸機
200・・・ポリエステルフィルム
Claims (9)
- 厚みが100μm以下であり、
フィルム幅方向における、前記フィルム幅方向の単位距離あたりの、前記フィルム幅方向と直交する方向の0.05m間隔で測定した熱収縮率変化量x[%/m]の絶対値の最大値X[%/m]と、
前記xの単位距離あたりの変化率yの絶対値の最大値Y[%/m2]と
が、下記式(I)および(II)を満たすポリエステルフィルム。
0.01<X< 2.00 ・・・(I)
0.1 <Y< 20.0 ・・・(II) - 前記フィルム幅方向の中央部における、前記フィルム幅方向と直交する方向の熱収縮率が0.01%以上3%以下である請求項1に記載のポリエステルフィルム。
- 前記フィルム幅方向における、前記フィルム幅方向と直交する方向の熱収縮率のムラが、0.01%以上0.5%以下である請求項1または請求項2に記載のポリエステルフィルム。
- 前記フィルム幅方向における、示差走査熱量測定(DSC)で測定されるプレピーク温度のムラが0.5℃以上10℃以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
- ポリエステル原料樹脂をシート状に溶融押出し、キャスティングドラム上で冷却してポリエステルフィルムを成形するフィルム成形工程と、
成形された前記ポリエステルフィルムを長手方向に縦延伸する縦延伸工程と、
前記縦延伸後のポリエステルフィルムを延伸可能な温度に予熱する予熱部、予熱された前記ポリエステルフィルムを前記長手方向と直交する幅方向に緊張を与えて横延伸する延伸部、前記縦延伸及び前記横延伸を行なった後の前記ポリエステルフィルムを加熱し結晶化させて熱固定する熱固定部、前記熱固定されたポリエステルフィルムを加熱し、ポリエステルフィルムの緊張を緩和してフィルムの残留歪みを除去する熱緩和部、並びに、熱緩和後のポリエステルフィルムを冷却する冷却部に、前記ポリエステルフィルムをこの順に搬送して、前記縦延伸後のポリエステルフィルムを前記長手方向に直交する幅方向に横延伸する横延伸工程と、を含み
前記熱固定部および前記熱緩和部の少なくとも一方において、前記幅方向のポリエステルフィルムの端部をヒーターにより選択的に輻射加熱し、かつ、前記冷却部において、ポリエステルフィルムの表面の温度を150℃から70℃まで冷却するときのフィルム幅方向端部における平均冷却速度を、フィルム幅方向の中央部における平均冷却速度の1.01倍〜2倍とするポリエステルフィルムの製造方法。 - 前記輻射加熱は、セラミック製ヒーターで行う請求項5に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
- 前記横延伸工程における前記ポリエステルフィルムの幅が最大になるときの前記ポリエステルフィルムの幅L1と、前記冷却部から前記ポリエステルフィルムが離れる前記冷却部の端部における前記ポリエステルフィルムの幅L2とが、下記式(1)を満たし、かつ、
前記予熱部における前記ポリエステルフィルムの搬送速度S1と、前記冷却部の前記端部における前記ポリエステルフィルムの搬送速度S2とが、下記式(2)を満たす請求項5または請求項6に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
- 前記横延伸工程は、前記予熱部、前記延伸部、前記熱固定部、前記熱緩和部、及び前記冷却部を備え、前記予熱部において前記ポリエステルフィルムの幅方向の両端部を、片端部につき、少なくとも2つの把持部材を用いて把持して、前記予熱部から前記冷却部まで前記ポリエステルフィルムを搬送する2軸延伸装置を用い、
前記予熱部における前記ポリエステルフィルムの幅方向の片端部を把持する前記把持部材と、該把持部材に隣接する把持部材との間隔よりも、前記冷却部における前記ポリエステルフィルムの幅方向の片端部を把持する前記把持部材と、該把持部材に隣接する把持部材との間隔を狭めることで、前記ポリエステルフィルムの搬送速度を小さくする請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。 - 前記冷却部において、ポリエステルフィルムの表面の温度を150℃から70℃まで冷却するときの平均冷却速度を、2℃/秒〜100℃/秒の範囲とする請求項5〜請求項8のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
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