JP6016688B2 - ポリエステルフィルム及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリエステルフィルム及びその製造方法に関する。
ポリエステルは、電気絶縁用途や光学用途などの種々の用途に適用されている。そのうち、電気絶縁用途として、近年では特に、太陽電池の裏面保護用シート(いわゆるバックシート)などの太陽電池用途が注目されている。
溶融押出後に、二軸延伸等をして得られるポリエステルフィルムは、フィルム上に機能性材料を塗布したり貼りつけたりして、機能性フィルムとして利用されることがある。このとき、薄手のポリエステルフィルムをローラー等で搬送しながら製造すると、加熱搬送時に種々の原因で、ポリエステルフィルムにシワやスリキズ等が生じることがある。
上記状況に関連する技術として、寸法安定化の点から、ポリエステルフィルムに金属又は金属系酸化物を含む層が設けられた積層体が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、後加工時の熱処理工程におけるフィルムの寸法変化を抑制するために、ポリエチレンテレフタレートフィルムの熱収縮率およびその均一性、屈折率、破断伸度等を規定したフィルムおよびその製造方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2010−052416号公報 特開2009−149066号公報
特許文献1および特許文献2からは、ポリエステルフィルムの低熱収縮化及びその均一化が、ポリエステルフィルムのシワ等の改良に寄与することが示されているものの、シワ抑制が不十分であった。特に、ポリエステルフィルムの厚みが100μm以下となる薄手のポリエステルフィルムを加熱搬送する際に生じ易い搬送方向(MD;Machine Direction)のツレシワ(以下、「スジバリ」ともいう)を抑制することができなかった。近年は、フィルムを利用した製品の軽量化、原料の節約等から、フィルムの薄手化が進められているため、薄手のポリエステルフィルムのシワ抑制は重要な課題である。
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、厚みが100μm以下となる薄手のポリエステルフィルムを加熱搬送したときでも、搬送方向にシワが生じにくいポリエステルフィルムおよびその製造方法を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
本発明は、薄手のポリエステルフィルムのスジバリが、加熱前のポリエステルフィルムのMD熱収縮率の局所的な変化を小さくすることで解消し得るとの知見を得、かかる知見に基づいて達成されたものである。
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 厚みが100μm以下であり、フィルム幅方向における、フィルム幅方向の単位距離あたりの、フィルム幅方向と直交する方向の熱収縮率変化量x[%/m]の絶対値の最大値X[%/m]と、xの単位距離あたりの変化率yの絶対値の最大値Y[%/m]とが、下記式(I)および(II)を満たすポリエステルフィルムである。
0.01<X< 2.00 ・・・(I)
0.1 <Y< 20.0 ・・・(II)
<2> フィルム幅方向の中央部における、フィルム幅方向と直交する方向の熱収縮率が0.01%以上3%以下である<1>に記載のポリエステルフィルムである。
<3> フィルム幅方向における、フィルム幅方向と直交する方向の熱収縮率のムラが、0.01%以上0.5%以下である<1>又は<2>に記載のポリエステルフィルムである。
<4> フィルム幅方向における、示差走査熱量測定(DSC)で測定されるプレピーク温度のムラが0.5℃以上10℃以下である<1>〜<3>のいずれか1つに記載のポリエステルフィルムである。
<5> ポリエステル原料樹脂をシート状に溶融押出し、キャスティングドラム上で冷却してポリエステルフィルムを成形するフィルム成形工程と、
成形されたポリエステルフィルムを長手方向に縦延伸する縦延伸工程と、
縦延伸後のポリエステルフィルムを延伸可能な温度に予熱する予熱部、予熱されたポリエステルフィルムを長手方向と直交する幅方向に緊張を与えて横延伸する延伸部、縦延伸及び横延伸を行なった後のポリエステルフィルムを加熱し結晶化させて熱固定する熱固定部、熱固定されたポリエステルフィルムを加熱し、ポリエステルフィルムの緊張を緩和してフィルムの残留歪みを除去する熱緩和部、並びに、熱緩和後のポリエステルフィルムを冷却する冷却部に、ポリエステルフィルムをこの順に搬送して、縦延伸後のポリエステルフィルムを長手方向に直交する幅方向に横延伸する横延伸工程と、を含み
熱固定部および熱緩和部の少なくとも一方において、幅方向のポリエステルフィルムの端部をヒーターにより選択的に輻射加熱し、かつ、冷却部において、ポリエステルフィルムの表面の温度を150℃から70℃まで冷却するときのフィルム幅方向端部における平均冷却速度を、フィルム幅方向の中央部における平均冷却速度の1.01倍〜2倍とするポリエステルフィルムの製造方法である。
<6> 輻射加熱は、セラミック製ヒーターで行う<5>に記載のポリエステルフィルムの製造方法である。
<7> 横延伸工程におけるポリエステルフィルムの幅が最大になるときのポリエステルフィルムの幅L1と、冷却部からポリエステルフィルムが離れる冷却部の端部におけるポリエステルフィルムの幅L2とが、下記式(1)を満たし、かつ、
予熱部におけるポリエステルフィルムの搬送速度S1と、冷却部の端部におけるポリエステルフィルムの搬送速度S2とが、下記式(2)を満たす<5>または<6>に記載のポリエステルフィルムの製造方法である。
<8> 横延伸工程は、予熱部、延伸部、熱固定部、熱緩和部、及び冷却部を備え、予熱部においてポリエステルフィルムの幅方向の両端部を、片端部につき、少なくとも2つの把持部材を用いて把持して、予熱部から冷却部までポリエステルフィルムを搬送する2軸延伸装置を用い、
予熱部におけるポリエステルフィルムの幅方向の片端部を把持する把持部材と、該把持部材に隣接する把持部材との間隔よりも、冷却部におけるポリエステルフィルムの幅方向の片端部を把持する把持部材と、該把持部材に隣接する把持部材との間隔を狭めることで、ポリエステルフィルムの搬送速度を小さくする<5>〜<7>のいずれか1つに記載のポリエステルフィルムの製造方法である。
<9>
冷却部において、ポリエステルフィルムの表面の温度を150℃から70℃まで冷却するときの平均冷却速度を、2℃/秒〜100℃/秒の範囲とする<5>〜<8>のいずれか1つに記載のポリエステルフィルムの製造方法である。
本発明によれば、厚みが100μm以下となる薄手のポリエステルフィルムを加熱搬送したときでも、搬送方向にシワが生じにくいポリエステルフィルムおよびその製造方法を提供することができる。
本発明の課題を説明するための模式図である。 本発明の式(I)および(II)説明するための模式図である。 2軸延伸機の一例を上面から示す上面図である。 実施例におけるMD熱収縮率を測定する手法を表す模式図である。
<ポリエステルフィルム>
本発明のポリエステルフィルムは、厚みが100μm以下であり、フィルム幅方向における、フィルム幅方向の単位距離あたりの、フィルム幅方向と直交する方向の熱収縮率変化量x[%/m]の絶対値の最大値X[%/m]と、xの単位距離あたりの変化率yの絶対値の最大値Y[%/m]とが、下記式(I)および(II)を満たす。
0.01<X< 2.00・・・(I)
0.1 <Y<20.0 ・・・(II)
厚みが100μm以下のフィルムを、薄手のフィルムともいう。
ポリエステルフィルムの製造方法は、後に詳述するが、薄手のフィルムは、通常、ロール等を用いて搬送し、延伸することにより得られる。このとき、フィルムの搬送方向をMD(Machine Direction)方向とも称する。また、フィルムのMD方向は、フィルムの長手方向とも称される。また、フィルム幅方向とは、長手方向に直交する方向である。フィルム幅方向は、フィルムを搬送しながら製造されたフィルムにおいては、TD(Transverse Direction)方向とも呼ばれる。
本発明においては、フィルム幅方向を、TDまたはTD方向と称し、フィルム幅方向と直交する方向を、MDまたはMD方向と称する。また、MD方向の熱収縮を、MD熱収縮ともいい、その割合をMD熱収縮率という。従って、フィルム幅方向と直交する方向の熱収縮率は、MD熱収縮率とも表現する。
また、ポリエステルの種類は特に制限されず、本発明で用い得るポリエステルの種類は後述するが、特に、ポリエチレンテレフタラート(Polyethylene terephthalate;PET)がよく用いられる。以下、PETというときは、ポリエチレンテレフタラートを指す。
ポリエステルフィルムは、複数のポリエステルフィルムを積層したり、ポリエステルフィルム上に機能層を積層して、高機能化または複合化することがある。このようなポリエステルフィルムの加工に当たっては、通常、ロール等により搬送されながら、フィルムの加熱や延伸等がなされる。
薄手のポリエステルフィルムは、加熱搬送されると、MD方向にポリエステルフィルムが引きつれ、シワが生じる傾向にある。ツレシワが生じたままフィルムが冷却し、固化して、フィルムに残ったフィルム上のツレシワに由来する凹凸を、本発明ではスジバリと称する。ポリエステルフィルムがスジバリを有すると、フィルム上に塗布液を塗布するときに均一に塗布しにくくなる。また、ラミネート層などの機能層がシワのあるフィルム上に貼りつけられるとフィルムと機能層との間に気泡が入る等の故障が生じ易い。
薄手のプラスチックフィルムは、例えば、磁気テープのように、従来から存在していたが、従来は、一般に、有機溶剤を溶媒とする塗布液が用いられており、溶媒を飛ばすのに要する温度が低かった(例えば、100℃以下)。しかし、近年は、環境保護に向けて水系溶媒(水を含む溶媒)を用いる傾向になってきており、水系溶媒を飛ばすのに150℃程度の高温で加熱することがある。また、硬膜剤のごとく、加熱により硬化する材料をフィルムに積層したり、フィルムが硬膜剤を含むことがあり、この場合、フィルムは、一般に、170℃〜180℃に加熱される。
そのため、フィルムに、よりツレシワが生じ易く、従来に比べ、スジバリの発生が顕著になり易かった。
スジバリの発生について鋭意検討を行ったところ、スジバリは、フィルムの加熱による熱収縮と、フィルム搬送時の張力により、フィルムがツレシワ状に変形し、それが固定化することで生じると考えられる。フィルム搬送時の張力を抑えること等で、ツレシワを抑制することが知られているが、それだけでは不十分である。
ポリエステルフィルムにおいて、スジバリが主に発生する位置を調べたところ、幅方向(TD)単位距離あたりでMD熱収縮率の変化が局所的に大きい箇所およびMD熱収縮率の変化が急激な箇所に集中して発生することがわかった。
幅方向でMD熱収縮率の変化が大きい箇所およびMD熱収縮率の変化が急激な箇所は、フィルムの加熱時に、局所的に収縮ムラが生じ、局所的な長さムラが生じ易い。局所的な長さムラが生じたところに、フィルム搬送の張力がかかると、その位置(局所的な長さムラが生じたところ)で応力のムラが生じ、局所的に応力が集中する箇所が生じると考えられる。その局所的に応力が集中する箇所でスジバリが発生しやすいと考えられる。
それに対し、ポリエステルフィルムを、TD方向における、TD単位距離あたりの、MD熱収縮率変化量x[%/m]の絶対値の最大値X[%/m]と、xの単位距離あたりの変化率yの絶対値の最大値Y[%/m]とが、下記式(I)および(II)を満たすものとすることで、ポリエステルフィルムのスジバリを抑制することできる。
0.01<X< 2.00・・・(I)
0.1 <Y<20.0 ・・・(II)
上記(I)および(II)と、スジバリ抑制との関係を、図1および図2を用いて説明する。
図1は、本発明の課題を説明するための模式図であり、図2は、本発明の式(I)および(II)説明するための模式図である。
図1には、フィルムのTD端部寄りに、MD方向にスジバリが生じているポリエステルフィルムの模式図と、そのポリエステルフィルムのTD方向のフィルムの位置における、TD方向のMD収縮率分布を表す曲線(DSh)とが重なって示されている。曲線(DSh)は、曲線下側の軸(TD方向のフィルムの位置)および曲線右側の軸(MD熱収縮率)を参照軸とする。
薄手のポリエステルフィルムを加熱搬送することで生じやすいスジバリは、ポリエステルフィルムのTD方向の端部寄りに生じ易く、図1では、網目模様で示している。スジバリが生じているポリエステルフィルムについて、TD方向にMD熱収縮率を測定すると、スジバリが生じていない位置ではMD熱収縮率は、ほぼ一定であるが、スジバリが発生している領域(Rで示す破線の領域)において急激に変化し、スジバリが無い領域では、MD熱収縮率の変化量が小さくなる傾向にある。
図2には、ポリエステルフィルムのTD方向に、等間隔(例えば、0.05m間隔)で、P1〜P6の位置(P)が示されている。P1におけるMD熱収縮率をSh1、P2におけるMD熱収縮率をSh2、として、P6まで、各位置(P)におけるMD熱収縮率(Sh)を測定する。
n個(nは1以上)の位置について、位置(Pn)におけるMD熱収縮率(Shn)から、隣接する位置(Pn+1)におけるMD熱収縮率(Shn+1)を差し引いて、更にその値をPnとPn+1間の距離で除して得られる量を、MD熱収縮率の変化量xnとする。これが、「フィルム幅方向における、フィルム幅方向の単位距離あたりの、フィルム幅方向と直交する方向の熱収縮率変化量x[%/m]」である。n個のxnのうち、最も大きいものが「変化量xの最大値X」である。
例えば、位置P1におけるMD熱収縮率(Sh1)と位置P2におけるMD熱収縮率(Sh2)を差し引いて、P1とP2の距離で除したときに得られる量が、x1として算出される。同様にして、図2に示されるx2〜x5が算出される。このうち、例えば、x4が最も大きな変化量であるとき(x4=xmax)、x4が最大値Xである(x4=X)。
また、「xの単位距離あたりの変化率y」は、位置(Pn)におけるMD熱収縮率(Shn)から、隣接する位置(Pn+1)におけるMD熱収縮率(Shn+1)を差し引いて、更にその値をPnとPn+1間の距離で除して得られる量をxnと、位置(Pn+1)におけるMD熱収縮率(Shn+1)から、隣接する位置(Pn+2)におけるMD熱収縮率(Shn+2)を差し引いて、更にその値をPnとPn+1間の距離で除して得られる量xn+1と、の差を、PnとPn+1の中間点と、Pn+1とPn+2の中間点の距離で除すことで得られる。算出されたn−1個のyのうち、最も大きな変化率が、変化率yの最大値Yである。
例えば、図2においては、x1とx2との差を、P1とP2の中間点と、P2とP3の中間点の距離で除すことでy1が算出され、x2とx3との差を、P2とP3の中間点と、P3とP4の中間点の距離で除すことでy2が算出される。各々算出して得られるy1〜y4のうち、y4が最も大きな変化率であるとき(y4=ymax)、y4が最大値Yである(y4=Y)。
図1には、既述のように、MD熱収縮率が急激に変化する領域が、Rとして示されている。図2に示す手法で算出される変化量xは、図1に示される領域RにおけるMD収縮率分布曲線(DSh)の接線Qの傾きであり、TD方向における接線Qの傾きの最大値が、最大値Xである。また、図2に示す手法で算出される変化率yは、図1に示される領域RにおけるMD収縮率分布曲線(DSh)の傾きの変化率であり、TD方向における変化率の最大値が、最大値Yである。
このようにして求められるXとYを、本発明では0.01<X<2.00〔式(I)〕とし、かつ、0.1<Y<20.0〔式(II)〕とすることで、ポリエステルフィルムのスジバリの原因となるMD熱収縮率の局所的な変化を抑制する。XおよびYを小さくすることで、MD熱収縮率の変化量が小さくなり、ポリエステルフィルム全体として熱収縮率が均一になり易くなる。しかし、メカニズムが定かではないが、熱収縮率のばらつきが小さくなってもスジバリが生じやすく、XおよびY共に、下限を規定している。
以下、本発明のポリエステルフィルムおよびその製造方法について、詳細に説明する。
なお、本発明において、加熱搬送とは、ポリエステルフィルムの搬送中のフィルムの膜面温度が130℃以上に加熱されることをいうが、本発明は、フィルムの膜面温度がより高温となる200℃以上の加熱搬送時にも適用し得る。
〔式(I)と(II)〕
本発明において、ポリエステルフィルムの幅方向(TD)における、TD単位距離あたりの、MD熱収縮率変化量x[%/m]の絶対値の最大値X[%/m]は、0.01<X<2.00〔式(I)〕を満たす。
Xが0.01以下であるとメカニズムは不明確だがフィルム全体的にスジバリが発生しやすくなる。Xが2以上であると、局所的に応力が集中する箇所でスジバリが発生しやすくなる。
Xは、0.05<X<1.50が好ましく、0.10<X<1.00がより好ましい。
本発明において、xの単位距離あたりの変化率yの絶対値の最大値Y[%/m]は、0.1<Y<20.0〔式(II)〕を満たす。Yが0.1を下回るとメカニズムは不明確だがフィルム全体的にスジバリが発生しやすくなる。Yが20を越えると、局所的に応力が集中する箇所でスジバリが発生しやすくなる。
Yは、0.5<Y<15が好ましく、1<Y<10がより好ましい。
既述のように、スジバリは、薄手のポリエステルフィルムを加熱搬送する際に生じ易く、本発明では、厚みが100μm以下のポリエステルフィルムを対象とする。厚みが100μmを超えるポリエステルフィルムは、スジバリが生じにくい。ポリエステルフィルムの厚みが薄い方が、本発明の効果が得られ易く、ポリエステルフィルムの厚みは、5μm以上75μm以下であることが好ましく、10μm以上63μm以下であることがより好ましい。
スジバリをさらに抑制する観点から、ポリエステルフィルムは、幅方向(TD方向)の中央部におけるMD熱収縮率が0.01%以上3%以下であることが好ましい。ここで、ポリエステルフィルム幅方向の中央部は、ポリエステルフィルムのTD方向の一方の末端と他方の末端との中心の位置をCとしたとき、Cを中心として、TD方向およびMD方向に、各々ポリエステルフィルムのTD方向の全長の±10%となる領域をいう。
ポリエステルフィルムのTD方向中央部におけるMD熱収縮率を0.01%以上とすることで、ポリエステルフィルムの加熱搬送中にベース弛み等が生じにくく、弛みが生じ易い部分でのスジバリの発生を抑制することができる。TD方向中央部におけるMD熱収縮率を3%以下とすることで、熱収縮によるスジバリを抑制することができる。
ポリエステルフィルムのTD方向中央部におけるMD熱収縮率は、0.05%以上2%以下であることがより好ましく、0.10%以上1.5%以下であることがさらに好ましい。
また、ポリエステルフィルムは、スジバリをさらに抑制する観点から、TD方向におけるMD熱収縮率のムラが、0.01%以上0.5%以下であることが好ましい。
ここで、TD方向におけるMD熱収縮率のムラとは、図2に示すように、n個の位置PにおけるMD熱収縮率Shを測定したときの、MD熱収縮率の最大値と最小値との差をいう。
例えば、ポリエステルフィルムのTD方向に等間隔に並ぶ11個の位置P1〜P11のフィルム片をサンプリングする。P1〜P11におけるフィルム片の各MD熱収縮率Sh1〜Sh11を測定し、Sh1〜Sh11中の最大値と最小値との差を、TD方向におけるMD熱収縮率のムラとすればよい。以下、「TD方向におけるMD熱収縮率のムラ」をΔShともいう。
ポリエステルフィルムのTD方向におけるMD熱収縮率のムラ(ΔSh)が0.01%以上であることで、メカニズムは不明確だがフィルム全体的にスジバリが発生し難くなる。ΔShが0.5%以下であることで、式(I)および式(II)を満たし易くなり、スジバリの発生をより抑制することができる。
ΔShは、4%以下がより好ましく、0.3%以下が更に好ましい。
ポリエステルフィルムは、さらに、TD方向における、示差走査熱量測定(DSC)で測定されるプレピーク温度のムラを0.5℃以上10℃以下とすることで、より一層スジバリを抑制することができる。
ここで、DSCとは、示差走査熱量測定 (Differential scanning calorimetry)であり、DSCの「プレピーク温度」とは、ポリエステルフィルムをDSC測定したときに最初に現れるピークの温度である。
DSCのプレピーク温度は、一般に、ポリエステルフィルムの二軸延伸で行われる横延伸工程中の熱固定時におけるポリエステルフィルムの最高到達膜面温度(熱固定温度)に相当する。
なお、DSCのプレピーク温度は、示差走査熱量測定(DSC)で常法により求められる値である。
また、プレピーク温度のムラは、MD熱収縮率のムラ(ΔSh)と同様にして求められる。すなわち、ポリエステルフィルムのTD方向に等間隔に並ぶ11個の位置P1〜P11のフィルム片をサンプリングする。P1〜P11におけるフィルム片についてDSC測定を行い、各プレピーク温度Tpp1〜Tpp11を測定し、Tpp1〜Tpp11中の最大値と最小値との差を、TD方向におけるDSCのプレピーク温度のムラとした。以下、「TD方向におけるDSCのプレピーク温度のムラ」をΔTppともいう。
ポリエステルフィルムのTD方向で、MD熱収縮率が均一になりすぎると、フィルム全体的にスジバリが発生しやすくなる。
ポリエステルフィルムのTD方向におけるDSCのプレピーク温度ムラ(ΔTpp)が0.5℃以上であることで、フィルム全体に生じ易いスジバリを抑制することができる。
ΔTppが10℃以下であることで、式(I)および式(II)を満たし易くなり、スジバリの発生をより抑制することができる。
ΔTppは、0.5℃以上7℃以下がより好ましく、0.5℃以上5℃以下が更に好ましく、0.5℃以上4℃以下が最も好ましい。
ポリエステルフィルムの固有粘度(IV;Intrinsic Viscosity)は、ポリエステルフィルムの耐加水分解性を高めて耐候性を向上させる観点から、0.55dL/g以上0.90dL/g以下であることが好ましく、0.60dL/g以上0.80dL/g以下であることがより好ましく、0.62dL/g以上0.78dL/g以下であることが更に好ましく、0.63dL/g以上0.75dL/g以下であることが最も好ましい。
ポリエステルフィルムの末端カルボキシ基の量〔末端COOH量(酸価ともいう)、AV;Acid Value〕は、5eq/トン以上35eq/トン以下が好ましい。末端COOH量は、6eq/トン以上30eq/トン以下がより好ましく、7eq/トン以上28eq/トン以下が更に好ましい。
なお、本明細書中において、「eq/トン」は1トンあたりのモル当量を表す。
AVは、ポリエステルをベンジルアルコール/クロロホルム(=2/3;体積比)の混合溶液に完全溶解させ、指示薬としてフェノールレッドを用い、基準液(0.025N KOH−メタノール混合溶液)で滴定し、その適定量から算出される値である。
ポリエステルフィルムは、ジカルボン酸成分とジオール成分とを共重合させて合成されるものである。ジカルボン酸成分及びジオール成分の詳細については、後述する。また、本発明のポリエステルフィルムは、カルボン酸基の数(a)と水酸基の数(b)との合計(a+b)が3以上である多官能モノマー(以下、「3官能以上の多官能モノマー」又は単に「多官能モノマー」ともいう。)に由来する構成単位を含むものであることが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、後述のように、例えば(A)ジカルボン酸成分と(B)ジオール成分とを周知の方法でエステル化反応及び/又はエステル交換反応させることによって得ることができ、更に好ましくは、これに3官能以上の多官能モノマーを共重合させて得られる。ジカルボン酸成分、ジオール成分、及び多官能モノマー等の例示や好ましい態様などの詳細については、後述する通りである。
〜多官能モノマーに由来の構成単位〜
カルボン酸基の数(a)と水酸基の数(b)との合計(a+b)が3以上である多官能モノマーに由来の構成単位としては、後述するように、カルボン酸基の数(a)が3以上のカルボン酸並びにこれらのエステル誘導体や酸無水物等、水酸基数(b)が3以上の多官能モノマー、並びに「一分子中に水酸基とカルボン酸基の両方を有し、カルボン酸基の数(a)と水酸基の数(b)との合計(a+b)が3以上であるオキシ酸類」などを挙げることができる。これらの例示及び好ましい態様などの詳細については、後述する通りである。
また、カルボン酸のカルボキシ末端、又は「一分子中に水酸基とカルボン酸基の両方を有する多官能モノマー」のカルボキシ末端に、l−ラクチド、d−ラクチド、ヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸類及びその誘導体、そのオキシ酸類が複数個連なったもの等を付加させたものも好適である。
これらは、一種単独で用いても、必要に応じて、複数種を併用してもよい。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、3官能以上の多官能モノマーに由来の構成単位の含有比率が、ポリエステルフィルム中の全構成単位に対して、0.005モル%以上2.5モル%以下であることが好ましい。多官能モノマーに由来の構成単位の含有比率は、より好ましくは0.020モル%以上1モル%以下であり、更に好ましくは0.025モル%以上1モル%以下であり、更に好ましくは0.035モル%以上0.5モル%以下であり、特に好ましくは0.05モル%以上0.5モル%以下であり、最も好ましくは0.1モル%以上0.25モル%以下である。
ポリエステルフィルム中に3官能以上の多官能モノマーに由来の構成単位が存在することで、3官能以上の多官能モノマーに由来の構成単位からポリエステル分子鎖を枝分かれされた構造が得られ、ポリエステル分子間の絡み合いを促すことができる。その結果、高温高湿環境下に曝されてポリエステル分子が加水分解し分子量が低下しても、ポリエステル分子間に絡み合いが形成されていることにより、ポリエステルフィルムの脆化が抑制され、より優れた耐候性が得られる。さらに、このような絡み合いは、熱収縮の抑制にも有効である。これは、上記のポリエステル分子の絡み合いによりポリエステル分子の運動性が低下するため、熱で分子が収縮しようとしても収縮できず、ポリエステルフィルムの熱収縮が抑制されたものと推定される。
また、3官能以上の多官能モノマーを構成単位として含むことにより、エステル化反応後の重縮合において用いられなかった官能基がポリエステルフィルム上に塗布形成される塗布層中の成分と水素結合、共有結合することで、塗布層とポリエステルフィルムとの密着性がより良好に保たれ、剥離の発生を効果的に防ぐことができる。太陽電池用バックシートに用いられるポリエステルフィルムは、易接着層などの塗布層が塗布形成された後にEVA等の封止剤と密着されるが、屋外等の風雨に曝されるような環境下に長時間置かれた場合においても、剥がれ難い良好な密着性が得られる。
したがって、3官能以上の多官能モノマーに由来の構成単位の含有比率が0.005モル%以上であることで、耐候性、低熱収縮性、及びポリエステルフィルム上に塗布形成される塗布層との密着力がさらに向上し易い。また、3官能以上の多官能モノマーに由来の構成単位の含有比率が2.5モル%以下であることで、3官能以上の多官能モノマーに由来の構成単位は嵩高いため、結晶形成し難くなるのが抑制される。その結果として、結晶を介して形成される低移動成分の形成を促し、加水分解性が低下するのを抑制することができる。さらに、3官能以上の多官能モノマーに由来の構成単位の嵩高さにより、フィルム表面の微細凹凸量が増えるためアンカー効果が発現しやすく、ポリエステルフィルムと該フィルム上に塗布形成される塗布層との密着が向上する。また、当該嵩高さにより、増加する自由体積(分子間の隙間)が抑制され、大きな自由体積中をポリエステル分子がすり抜けることで発生する熱収縮を抑制することができる。また、3官能以上の多官能モノマーに由来の構成単位の添加過剰に伴なうガラス転移温度(Tg)の低下も抑制され、耐候性の低下防止にも有効である。
〜末端封止剤に由来する構造部分〜
本発明のポリエステルフィルムは、更に、オキサゾリン系化合物、カルボジイミド化合物、及びエポキシ化合物から選ばれる末端封止剤に由来する構造部分を有していることが好ましい。なお、「末端封止剤に由来する構造部分」とは、末端封止剤がポリエステル末端のカルボン酸と反応して末端に結合している構造をさす。
末端封止剤がポリエステルフィルム中に含められると、末端封止剤はポリエステル末端のカルボン酸と反応し、ポリエステル末端に結合して存在するため、末端COOH量(AV値)を、既述の好ましい範囲など所望とする値に安定的に維持し易くなる。すなわち、末端カルボン酸により促進されるポリエステルの加水分解が抑制され、耐候性を高く保つことができる。また、ポリエステル末端に結合して分子鎖の末端部分が嵩高くなり、フィルム表面の微細凹凸量が増えるため、アンカー効果が発現しやすくなり、ポリエステルフィルムと該フィルム上に塗布形成される塗布層との密着が向上する。さらに、末端封止剤は嵩高く、ポリエステル分子が自由体積中をすり抜けて移動するのが抑制される。その結果、分子の移動を伴なう熱収縮を抑制する効果も有する。
なお、末端封止剤とは、ポリエステルの末端のカルボキシル基と反応し、ポリエステルのカルボキシル末端量を減少させる添加剤である。
末端封止剤は、1種単独で用いられていてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
末端封止剤は、ポリエステルフィルムの質量に対して、0.1質量%以上5質量%以下の範囲で含有されていることが好ましく、より好ましくは0.3質量%以上4質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以上2質量%以下である。
ポリエステルフィルム中における末端封止剤の含有比率が0.1質量%以上であることで、塗布層との密着が良好になると共に、AV低下効果による耐候性向上を達成できる上、低熱収縮性も付与することができる。また、ポリエステルフィルム中における末端封止剤の含有比率が5質量%以下であると、塗布層との密着が良好になると共に、末端封止剤の添加によるポリエステルのガラス転移温度(Tg)の低下が抑制され、これによる耐候性の低下や熱収縮の増加を抑制することができる。これは、Tgが低下した分、相対的にポリエステルの反応性が増加することで生じる加水分解性の増加を抑制したり、Tg低下で増加するポリエステル分子の運動性が増加し易くなることで生じる熱収縮が抑制されるためである。
本発明における末端封止剤としては、カルボジイミド基、エポキシ基、又はオキサゾリン基を有する化合物が好ましい。末端封止剤の具体例としては、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン系化合物などを好適に挙げることができる。
カルボジイミド基を有するカルボジイミド化合物は、1官能性カルボジイミドと多官能性カルボジイミドがある。1官能性カルボジイミドとしては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t−ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミド及びジ−β−ナフチルカルボジイミドなどが挙げられ、好ましくはジシクロヘキシルカルボジイミドやジイソプロピルカルボジイミドである。
また、多官能性カルボジイミドとしては、重合度3〜15のポリカルボジイミドが好ましい。ポリカルボジイミドは、一般に「−R−N=C=N−」等で表される繰り返し単位を有し、Rは、アルキレン、アリーレン等の2価の連結基を表す。このような繰り返し単位としては、例えば、1,5−ナフタレンカルボジイミド、4,4'−ジフェニルメタンカルボジイミド、4,4'−ジフェニルジメチルメタンカルボジイミド、1,3−フェニレンカルボジイミド、2,4−トリレンカルボジイミド、2,6−トリレンカルボジイミド、2,4−トリレンカルボジイミドと2,6−トリレンカルボジイミドの混合物、ヘキサメチレンカルボジイミド、シクロヘキサン−1,4−カルボジイミド、キシリレンカルボジイミド、イソホロンカルボジイミド、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−カルボジイミド、メチルシクロヘキサンカルボジイミド、テトラメチルキシリレンカルボジイミド、2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド及び1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−カルボジイミドなどが挙げられる。
カルボジイミド化合物は、熱分解によるイソシアネート系ガスの発生が抑えられる点で、耐熱性の高いカルボジイミド化合物が好ましい。耐熱性を高めるためには、分子量(重合度)が高いほど好ましく、より好ましくは、カルボジイミド化合物の末端を耐熱性の高い構造にすることが好ましい。また、ポリエステル原料樹脂を溶融押出する温度を下げることで、カルボジイミド化合物による耐候性の向上効果及び熱収縮の低減効果がより効果的に得られる。
カルボジイミド化合物を用いたポリエステルフィルムは、温度300℃で30分間保持した際のイソシアネート系ガスの発生量が0質量%〜0.02質量%であることが好ましい。イソシアネート系ガスの発生量が0.02質量%以下であると、ポリエステルフィルム中に気泡(ボイド)が生成され難く、したがって応力集中する部位が形成されにくいため、ポリエステルフィルム内に生じやすい破壊や剥離を防ぐことができる。これにより、隣接する材料との間の密着が良好になる。
ここで、イソシアネート系ガスは、イソシアネート基をもつガスであり、例えば、ジイソプロピルフェニルイソシアネート、1,3,5−トリイソプロピルフェニルジイソシアネート、2−アミノ−1,3,5−トリイソプロピルフェニル−6−イソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びシクロヘキシルイソシアネートなどが挙げられる。
エポキシ基を有するエポキシ化合物としては、好ましい例として、グリシジルエステル化合物やグリシジルエーテル化合物などが挙げられる。
グリシジルエステル化合物の具体例としては、安息香酸グリシジルエステル、t−Bu−安息香酸グリシジルエステル、P−トルイル酸グリシジルエステル、シクロヘキサンカルボン酸グリシジルエステル、ペラルゴン酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシジルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、パルミチン酸グリシジルエステル、ベヘン酸グリシジルエステル、バーサティク酸グリシジルエステル、オレイン酸グリシジルエステル、リノール酸グリシジルエステル、リノレイン酸グリシジルエステル、ベヘノール酸グリシジルエステル、ステアロール酸グリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル、メチルテレフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、ドデカンジオン酸ジグリシジルエステル、オクタデカンジカルボン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル及びピロメリット酸テトラグリシジルエステル等を挙げられる。
また、グリシジルエーテル化合物の具体例としては、フェニルグリシジルエ−テル、O−フェニルグリシジルエ−テル、1,4−ビス(β,γ−エポキシプロポキシ)ブタン、1,6−ビス(β,γ−エポキシプロポキシ)ヘキサン、1,4−ビス(β,γ−エポキシプロポキシ)ベンゼン、1−(β,γ−エポキシプロポキシ)−2−エトキシエタン、1−(β,γ−エポキシプロポキシ)−2−ベンジルオキシエタン、2,2−ビス−[р−(β,γ−エポキシプロポキシ)フェニル]プロパン及び2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパンや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタンなどのビスフェノールとエピクロルヒドリンの反応で得られるビスグリシジルポリエーテルなどが挙げられる。
オキサゾリン化合物としては、オキサゾリン基を有する化合物の中から適宜選択して用いることができるが、その中ではビスオキサゾリン化合物が好ましい。
ビスオキサゾリン化合物としては、例えば、2,2'−ビス(2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−エチル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4,4'−ジエチル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−プロピル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−ブチル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−ヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−シクロヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−ベンジル−2−オキサゾリン)、2,2'−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2'−p−フェニレンビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2'−m−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2'−m−フェニレンビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2'−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−デカメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2'−テトラメチレンビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2'−9,9'−ジフェノキシエタンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−シクロヘキシレンビス(2−オキサゾリン)及び2,2'−ジフェニレンビス(2−オキサゾリン)等を例示することができる。これらの中では、ポリエステルとの反応性が良好で耐候性の向上効果が高い観点から、2,2'−ビス(2−オキサゾリン)が最も好ましい。
ビスオキサゾリン化合物は、本発明の効果を損なわない限り、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明において、前述の、又は後述する、3官能以上の多官能モノマー、末端封止剤は、それぞれ一種単独で用いてもよいし、これら両方を組み合わせて用いてもよい。
本発明のポリエステルフィルムは、式(I)および(II)を満たす厚み100μm以下のポリエステルフィルムを製造し得る方法であればいずれの方法により作製されてもよい。本発明においては、例えば、以下に示す本発明のポリエステルフィルムの製造方法により最も好適に作製することができる。
以下、本発明のポリエステルフィルムの製造方法について具体的に説明する。
<ポリエステルフィルムの製造方法>
本発明のポリエステルフィルムの製造方法は、
ポリエステル原料樹脂をシート状に溶融押出し、キャスティングドラム上で冷却してポリエステルフィルムを成形するフィルム成形工程と、
成形されたポリエステルフィルムを長手方向に縦延伸する縦延伸工程と、
縦延伸後のポリエステルフィルムを延伸可能な温度に予熱する予熱部、予熱されたポリエステルフィルムを長手方向と直交する幅方向に緊張を与えて横延伸する延伸部、縦延伸及び横延伸を行なった後のポリエステルフィルムを加熱し結晶化させて熱固定する熱固定部、熱固定されたポリエステルフィルムを加熱し、ポリエステルフィルムの緊張を緩和してフィルムの残留歪みを除去する熱緩和部、並びに、熱緩和後のポリエステルフィルムを冷却する冷却部に、ポリエステルフィルムをこの順に搬送して、縦延伸後のポリエステルフィルムを長手方向に直交する幅方向に横延伸する横延伸工程と、を含み
熱固定部および熱緩和部の少なくとも一方において、幅方向のポリエステルフィルムの端部をヒーターにより選択的に輻射加熱し、かつ、冷却部において、ポリエステルフィルムの表面の温度を150℃から70℃まで冷却するときのフィルム幅方向端部における平均冷却速度を、フィルム幅方向の中央部における平均冷却速度の1.01倍〜2倍とする方法である。
本発明のポリエステルフィルムの製造方法は、さらに他の工程を含んでいてもよい。
本発明のポリエステルフィルムの製造方法、大きくは、フィルム成形工程と、縦延伸工程と、横延伸工程と、を含む。縦延伸は、ポリエステルフィルムの長手方向(MD方向)への延伸を意味し、横延伸は、ポリエステルフィルムの幅方向(TD方向)への延伸を意味する。
横延伸工程は、予熱部と、延伸部と、熱固定部と、熱緩和部と、冷却部とに分かれ、ポリエステルフィルムを各部に搬送する。
さらに、本発明のポリエステルフィルムの製造方法では、横延伸工程における熱固定部もしくは熱緩和部、または熱固定部および熱緩和部の両方において、ポリエステルフィルムのTD方向端部を、ヒーターにより選択的に輻射加熱する。
ポリエステルフィルムの製造方法を上記構成とすることで、既述の式(I)および(II)を満たす厚み100μm以下のポリエステルフィルムを製造し易く、加熱搬送したときでもMD方向のシワ(スジバリ)が生じにくいポリエステルフィルムを製造し易い。
既述のように、従来のポリエステルフィルムの製造方法でも、シワを抑制し、寸法安定化を試みているが、本発明のごとき、薄手でありながら式(I)および(II)を満たすポリエステルを製造することはできなかった。
例えば、特許文献2として示す特開2009−149066号公報では、次の1)と2)に示す理由から、式(I)および(II)を満たすポリエステルフィルムを製造することができないと考えられる。
1)フィルム端部周辺のMD熱収縮率変化
ポリエステルフィルムのMD熱収縮率は、一般に、フィルムを構成するポリエステルの結晶化度と、MD方向のポリエステル分子の緩和度合いで決まる。ポリエステルの結晶化度およびポリエステル分子の緩和度合いが進んでいるほど、MD熱収縮率は低くなる傾向にある。
通常、二軸延伸装置等の延伸装置で横延伸されるPETの場合、PETの結晶化度およびPET分子の緩和度合いは、延伸装置の熱固定部の温度で決まる。フィルムの熱固定温度が高いほど、ポリエステルの結晶化度は高く、ポリエステルフィルムのMD熱収縮率が低くなる傾向にある。
延伸装置で横延伸および熱固定をする際、フィルムをクリップなどの把持部材で把持するが、この把持部材は、延伸装置の入口(ポリエステルフィルムが予熱部に入ったとき)から出口(ポリエステルフィルムが冷却部から離れたとき)を通じて約100℃〜150℃程度の温度になることが多い。フィルムの熱固定温度は、PETの場合、通常、200℃前後になるが、把持部材自体の温度は、熱固定温度に比べて低いため、熱が把持部材側に逃げてしまい、必然的にフィルム端部側の熱固定温度が低くなり易い。そのため、フィルムのMD熱収縮率もフィルム端部が大きくなるような分布が形成され易い。従って、フィルム端部周辺で急峻にMD熱収縮率が変化する箇所が生じ、その箇所で加熱搬送時のスジバリが生じ易くなると考えられる。
2)MD熱収縮率の細かい変動
ポリエステルフィルムのMD熱収縮率が細かいピッチで変動する場合も、スジバリの発生を抑制することができない理由の1つと考えられる。
ポリエステルフィルムは、MD熱収縮率の変動量自体が小さくても、変動のピッチが細かいと、MD熱収縮率の『単位距離あたりの変化率』が大きくなるため、スジバリ発生の要因になることがある。この細かいピッチの変動は、詳細なメカニズムは不明であるが、延伸装置の冷却部でフィルムが急冷されることにより、フィルム面内に細かな残留応力ムラが生じることで、起きると考えられる。
薄手のポリエステルフィルムは熱容量が小さいため、延伸装置の冷却部では必然的に急冷される方向になり、上記のような細かなMD熱収縮率変動が生じ易い。それにより加熱搬送時のスジバリの原因となることがある。
従来のポリエステルフィルムでは、上記の1)および2)に対する対策が不十分であるために、フィルムにスジバリが生じてしまうと考えられる。
これに対し、本発明のポリエステルフィルムの製造方法によれば、熱固定部および熱緩和部の少なくとも一方において、幅方向(TD方向)のポリエステルフィルムの端部を、ヒーターにより選択的に輻射加熱し、かつ、冷却部において、フィルムのTD方向端部における平均冷却速度を、フィルムTD方向の中央部における平均冷却速度の1.01倍〜2倍とする。
そのため、延伸装置の把持部材を介してのフィルムTD方向端部の冷却や、フィルムの厚みに起因するフィルムの急冷を回避することができる。特に、冷却部におけるフィルム端部の平均冷却速度を、フィルム中央部の平均冷却速度よりも大きくすることで、フィルムのMD熱収縮率の細かい変動を低減することができる。
その結果、本発明のポリエステルフィルムの製造方法によって作製される薄手のポリエステルフィルムは、既述の式(I)および(II)を満たす。
以下、本発明のポリエステルフィルムの製造方法の詳細を、フィルム成形工程、縦延伸工程、及び横延伸工程の各工程について、それぞれ詳細に説明する。
〔フィルム成形工程〕
フィルム成形工程では、ポリエステル原料樹脂をシート状に溶融押出し、キャスティングドラム上で冷却してポリエステルフィルムを成形する。
ポリエステル原料樹脂を溶融押出する方法、及びポリエステル原料樹脂については、特に限定されないが、ポリエステル原料樹脂の合成に用いる触媒や、重合方法等により固有粘度を所望の固有粘度とすることができる。
まず、ポリエステル原料樹脂について説明する。
(ポリエステル原料樹脂)
ポリエステル原料樹脂は、ポリエステルフィルムの原料となり、ポリエステルを含んでいる材料であれば、特に制限されず、ポリエステルのほかに、無機粒子や有機粒子のスラリーを含んでいてもよい。また、ポリエステル原料樹脂は、触媒由来のチタン元素を含んでいてもよい。
ポリエステル原料樹脂に含まれるポリエステルの種類は特に制限されない。
ジカルボン酸成分と、ジオール成分とを用いて合成してもよいし、市販のポリエステルを用いてもよい。
ポリエステルを合成する場合は、例えば、(A)ジカルボン酸成分と、(B)ジオール成分とを、周知の方法でエステル化反応及び/又はエステル交換反応させることによって得ることができる。
(A)ジカルボン酸成分としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、イソソルビド、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、などの脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルインダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9’−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン酸等の芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸もしくはそのエステル誘導体が挙げられる。
(B)ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、イソソルビドなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールA、1,3―ベンゼンジメタノール,1,4−ベンゼンジメタノール、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、などの芳香族ジオール類等のジオール化合物が挙げられる。
(A)ジカルボン酸成分として、芳香族ジカルボン酸の少なくとも1種が用いられる場合が好ましい。より好ましくは、ジカルボン酸成分のうち、芳香族ジカルボン酸を主成分として含有する。芳香族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分を含んでもよい。このようなジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸などのエステル誘導体等である。
なお、「主成分」とは、ジカルボン酸成分に占める芳香族ジカルボン酸の割合が80質量%以上であることをいう。
また、(B)ジオール成分として、脂肪族ジオールの少なくとも1種が用いられる場合が好ましい。脂肪族ジオールとして、エチレングリコールを含むことができ、好ましくはエチレングリコールを主成分として含有する。
なお、主成分とは、ジオール成分に占めるエチレングリコールの割合が80質量%以上であることをいう。
ジオール成分(例えばエチレングリコール)の使用量は、ジカルボン酸成分(特に芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸))及び必要に応じそのエステル誘導体の1モルに対して、1.015〜1.50モルの範囲であるのが好ましい。該使用量は、より好ましくは1.02〜1.30モルの範囲であり、更に好ましくは1.025〜1.10モルの範囲である。該使用量は、1.015以上の範囲であると、エステル化反応が良好に進行し、1.50モル以下の範囲であると、例えばエチレングリコールの2量化によるジエチレングリコールの副生が抑えられ、融点やガラス転移温度、結晶性、耐熱性、耐加水分解性、耐候性など多くの特性を良好に保つことができる。
本発明におけるポリエステル原料樹脂は、カルボン酸基の数(a)と水酸基の数(b)との合計(a+b)が3以上である多官能モノマーを共重合成分(3官能以上の構成成分)として含むことが好ましい。「多官能モノマーを共重合成分(3官能以上の構成成分)として含む」とは、多官能モノマーに由来の構成単位を含むことを意味する。
カルボン酸基の数(a)と水酸基の数(b)との合計(a+b)が3以上である多官能モノマーに由来の構成単位としては、以下に示すカルボン酸に由来の構成単位が挙げられる。
カルボン酸基の数(a)が3以上のカルボン酸(多官能モノマー)の例として、3官能の芳香族カルボン酸としては、例えば、トリメシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、アントラセントリカルボン酸等が、3官能の脂肪族カルボン酸としては、例えば、メタントリカルボン酸、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタントリカルボン酸等が、4官能の芳香族カルボン酸としては、例えば、ベンゼンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、アントラセンテトラカルボン酸、ペリレンテトラカルボン酸等が、4官能の脂肪族カルボン酸として、例えば、エタンテトラカルボン酸、エチレンテトラカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、アダマンタンテトラカルボン酸等が、5官能以上の芳香族カルボン酸として、例えば、ベンゼンペンタカルボン酸、ベンゼンヘキサカルボン酸、ナフタレンペンタカルボン酸、ナフタレンヘキサカルボン酸、ナフタレンヘプタカルボン酸、ナフタレンオクタカルボン酸、アントラセンペンタカルボン酸、アントラセンヘキサカルボン酸、アントラセンヘプタカルボン酸、アントラセンオクタカルボン酸等が、5官能以上の脂肪族カルボン酸として、例えば、エタンペンタカルボン酸、エタンヘプタカルボン酸、ブタンペンタカルボン酸、ブタンヘプタカルボン酸、シクロペンタンペンタカルボン酸、シクロヘキサンペンタカルボン酸、シクロヘキサンヘキサカルボン酸、アダマンタンペンタカルボン酸、アダマンタンヘキサカルボン酸等が挙げられる。
本発明においては、これらのエステル誘導体や酸無水物等が例として挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、上述のカルボン酸のカルボキシ末端に、l−ラクチド、d−ラクチド、ヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸類及びその誘導体、そのオキシ酸類が複数個連なったもの等を付加させたものも好適に用いられる。
これらは、1種単独で用いても、必要に応じて、複数種を併用してもよい。
水酸基数(b)が3以上の多官能モノマーの例として、3官能の芳香族化合物としては、例えば、トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシナフタレン、トリヒドロキシアントラセン、トリヒドロキシカルコン、トリヒドロキシフラボン、トリヒドロキシクマリンが、3官能の脂肪族アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、プロパントリオールが、4官能の脂肪族アルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトール等が挙げられる。また、上述の化合物の水酸基末端にジオール類を付加させた化合物も好ましく用いられる。
これらは、1種単独で用いても、必要に応じて、複数種を併用してもよい。
また、上記以外の他の多官能モノマーとして、一分子中に水酸基とカルボン酸基の両方を有し、カルボン酸基の数(a)と水酸基の数(b)との合計(a+b)が3以上であるオキシ酸類も挙げられる。このようなオキシ酸類の例としては、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシテレフタル酸、ジヒドロキシテレフタル酸、トリヒドロキシテレフタル酸などを挙げることができる。
また、これらの多官能モノマーのカルボキシ末端に、l−ラクチド、d−ラクチド、ヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸類及びその誘導体、そのオキシ酸類が複数個連なったもの等を付加させたものも好適に用いられる。
これらは、1種単独で用いても、必要に応じて、複数種を併用してもよい。
本発明におけるポリエステル原料樹脂においては、多官能モノマーに由来の構成単位のポリエステル原料樹脂中における含有比率が、ポリエステル原料樹脂中の全構成単位に対して、0.005モル%以上2.5モル%以下であることが好ましい。多官能モノマーに由来の構成単位の含有比率は、より好ましくは0.020モル%以上1モル%以下であり、更に好ましくは0.025モル%以上1モル%以下であり、更に好ましくは0.035モル%以上0.5モル%以下であり、特に好ましくは0.05モル%以上0.5モル%以下であり、最も好ましくは0.1モル%以上0.25モル%以下である。
ポリエステル原料樹脂中に3官能以上の多官能モノマーに由来の構成単位が存在することで、上記したように、最終的にポリエステルフィルムを成形した場合において、重縮合に用いられなかった官能基がポリエステルフィルム上に塗布形成される塗布層中の成分と水素結合、共有結合することで、塗布層とポリエステルフィルムとの密着性がより良好に保たれ、剥離の発生を効果的に防ぐことができる。また、3官能以上の多官能モノマーに由来の構成単位からポリエステル分子鎖を枝分かれされた構造が得られ、ポリエステル分子間の絡み合いを促すことができる。
エステル化反応及び/又はエステル交換反応には、従来から公知の反応触媒を用いることができる。該反応触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、リン化合物などを挙げることができる。通常、ポリエステルの製造方法が完結する以前の任意の段階において、重合触媒としてアンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物を添加することが好ましい。このような方法としては、例えば、ゲルマニウム化合物を例に取ると、ゲルマニウム化合物粉体をそのまま添加することが好ましい。
例えば、エステル化反応工程は、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを、チタン化合物を含有する触媒の存在下で重合する。このエステル化反応工程では、触媒であるチタン化合物として、有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体を用いると共に、工程中に少なくとも、有機キレートチタン錯体と、マグネシウム化合物と、置換基として芳香環を有しない5価のリン酸エステルとをこの順序で添加する過程を設けて構成される。
まず初めに、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールを、マグネシウム化合物及びリン化合物の添加に先立って、チタン化合物である有機キレートチタン錯体を含有する触媒と混合する。有機キレートチタン錯体等のチタン化合物は、エステル化反応に対しても高い触媒活性を持つので、エステル化反応を良好に行なわせることができる。このとき、ジカルボン酸成分及びジオール成分を混合した中にチタン化合物を加えてもよいし、ジカルボン酸成分(又はジオール成分)とチタン化合物を混合してからジオール成分(又はジカルボン酸成分)を混合してもよい。また、ジカルボン酸成分とジオール成分とチタン化合物とを同時に混合するようにしてもよい。混合は、その方法に特に制限はなく、従来公知の方法により行なうことが可能である。
より好ましいポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)であり、さらに好ましいのはPETである。さらに、PETは、ゲルマニウム(Ge)系触媒、アンチモン(Sb)系触媒、アルミニウム(Al)系触媒、及びチタン(Ti)系触媒から選ばれる1種又は2種以上を用いて重合されるものが好ましく、より好ましくはTi系触媒である。
Ti系触媒は、反応活性が高く、重合温度を低くすることができる。そのため、特に重合反応中にポリエステルが熱分解し、COOHが発生するのを抑制することが可能である。すなわち、Ti系触媒を用いることで、熱分解の原因となるポリエステルの末端カルボン酸の量を低減することができ、異物形成を抑制することができる。ポリエステルの末端カルボン酸の量を低減しておくことで、ポリエステルフィルムを製造した後に、ポリエステルフィルムが熱分解することを抑制することもできる。
Ti系触媒としては、酸化物、水酸化物、アルコキシド、カルボン酸塩、炭酸塩、蓚酸塩、有機キレートチタン錯体、及びハロゲン化物等が挙げられる。Ti系触媒は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、二種以上のチタン化合物を併用してもよい。
Ti系触媒の例としては、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートテトラマー、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネート等のチタンアルコキシド、チタンアルコキシドの加水分解により得られるチタン酸化物、チタンアルコキシドと珪素アルコキシドもしくはジルコニウムアルコキシドとの混合物の加水分解により得られるチタン−珪素もしくはジルコニウム複合酸化物、酢酸チタン、蓚酸チタン、蓚酸チタンカリウム、蓚酸チタンナトリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸−水酸化アルミニウム混合物、塩化チタン、塩化チタン−塩化アルミニウム混合物、チタンアセチルアセトナート、有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体、等が挙げられる。
ポリエステルを重合する際において、触媒としてチタン(Ti)化合物を、チタン元素換算値で1ppm以上50ppm以下、より好ましくは2ppm以上30ppm以下、さらに好ましくは3ppm以上15ppm以下の範囲で用いて重合を行なうことが好ましい。この場合、ポリエステル原料樹脂には、1ppm以上50ppm以下のチタン元素が含まれる。
ポリエステル原料樹脂に含まれるチタン元素の量が1ppm以上であると、ポリエステルの重量平均分子量(Mw)が上がり、熱分解しにくい。そのため、押出機内で異物が軽減される。ポリエステル原料樹脂に含まれるチタン元素の量が50ppm以下であると、Ti系触媒が異物となり難く、ポリエステルフィルムの延伸の際に延伸ムラが軽減される。
[チタン化合物]
触媒成分であるチタン化合物として、有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体の少なくとも1種が用いられることが好ましい。有機酸としては、例えば、クエン酸、乳酸、トリメリット酸、リンゴ酸等を挙げることができる。中でも、クエン酸又はクエン酸塩を配位子とする有機キレート錯体が好ましい。
例えばクエン酸を配位子とするキレートチタン錯体を用いた場合、微細粒子等の異物の発生が少なく、他のチタン化合物に比べ、重合活性と色調の良好なポリエステルが得られる。更に、クエン酸キレートチタン錯体を用いる場合でも、エステル化反応の段階で添加する方法により、エステル化反応後に添加する場合に比べ、重合活性と色調が良好で、末端カルボキシ基の少ないポリエステルが得られる。この点については、チタン触媒はエステル化反応の触媒効果もあり、エステル化段階で添加することでエステル化反応終了時におけるオリゴマー酸価が低くなり、以降の重縮合反応がより効率的に行なわれること、またクエン酸を配位子とする錯体はチタンアルコキシド等に比べて加水分解耐性が高く、エステル化反応過程において加水分解せず、本来の活性を維持したままエステル化及び重縮合反応の触媒として効果的に機能するものと推定される。
また、一般に、末端カルボキシ基量が多いほど耐加水分解性が悪化することが知られており、上記の添加方法によって末端カルボキシ基量が少なくなることで、耐加水分解性の向上が期待される。
クエン酸キレートチタン錯体としては、例えば、ジョンソン・マッセイ社製のVERTEC AC−420など市販品として容易に入手可能である。
芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールは、これらが含まれたスラリーを調製し、これをエステル化反応工程に連続的に供給することにより導入することができる。
また、チタン化合物としては、有機キレートチタン錯体以外には一般に、酸化物、水酸化物、アルコキシド、カルボン酸塩、炭酸塩、蓚酸塩、及びハロゲン化物等が挙げられる。本発明の効果を損なわない範囲であれば、有機キレートチタン錯体に加えて、他のチタン化合物を併用してもよい。
このようなチタン化合物の例としては、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートテトラマー、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネート等のチタンアルコキシド、チタンアルコキシドの加水分解により得られるチタン酸化物、チタンアルコキシドと珪素アルコキシドもしくはジルコニウムアルコキシドとの混合物の加水分解により得られるチタン−珪素もしくはジルコニウム複合酸化物、酢酸チタン、蓚酸チタン、蓚酸チタンカリウム、蓚酸チタンナトリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸−水酸化アルミニウム混合物、塩化チタン、塩化チタン−塩化アルミニウム混合物、チタンアセチルアセトナート等が挙げられる。
本発明においては、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを、チタン化合物を含有する触媒の存在下で重合するとともに、チタン化合物の少なくとも一種が有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体であって、有機キレートチタン錯体とマグネシウム化合物と置換基として芳香環を有しない5価のリン酸エステルとをこの順序で添加する過程を少なくとも含むエステル化反応工程と、エステル化反応工程で生成されたエステル化反応生成物を重縮合反応させて重縮合物を生成する重縮合工程と、を設けて構成されているポリエステルの製造方法により作製されるのが好ましい。
この場合、エステル化反応の過程において、チタン化合物として有機キレートチタン錯体を存在させた中に、マグネシウム化合物を添加し、次いで特定の5価のリン化合物を添加する添加順とすることで、チタン触媒の反応活性を適度に高く保ち、マグネシウムによる静電印加特性を付与しつつ、かつ重縮合における分解反応を効果的に抑制することができるため、結果として着色が少なく、高い静電印加特性を有するとともに高温下に曝された際の黄変色が改善されたポリエステルが得られる。
これにより、重合時の着色及びその後の溶融製膜時における着色が少なくなり、従来のアンチモン(Sb)触媒系のポリエステルに比べて黄色味が軽減され、また、透明性の比較的高いゲルマニウム触媒系のポリエステルに比べて遜色のない色調、透明性を持ち、しかも耐熱性に優れたポリエステルを提供できる。また、コバルト化合物や色素などの色調調整材を用いずに高い透明性を有し、黄色味の少ないポリエステルが得られる。
このポリエステルは、透明性に関する要求の高い用途(例えば、光学用フィルム、工業用リス等)に利用が可能であり、高価なゲルマニウム系触媒を用いる必要がないため、大幅なコスト低減が図れる。加えて、Sb触媒系で生じやすい触媒起因の異物の混入も回避されるため、製膜過程での故障の発生や品質不良が軽減され、得率向上による低コスト化も図ることができる。
エステル化反応させるにあたり、チタン化合物である有機キレートチタン錯体と添加剤としてマグネシウム化合物と5価のリン化合物とをこの順に添加する過程を設けることが好ましい。このとき、有機キレートチタン錯体の存在下、エステル化反応を進め、その後はマグネシウム化合物の添加を、リン化合物の添加前に開始することができる。
[リン化合物]
5価のリン化合物として、置換基として芳香環を有しない5価のリン酸エステルの少なくとも一種が用いられる。例えば、炭素数2以下の低級アルキル基を置換基として有するリン酸エステル〔(OR)−P=O;R=炭素数1又は2のアルキル基〕が挙げられ、具体的には、リン酸トリメチル、リン酸トリエチルが特に好ましい。
リン化合物の添加量としては、P元素換算値が50ppm以上90ppm以下の範囲となる量が好ましい。リン化合物の量は、より好ましくは60ppm以上80ppm以下となる量であり、さらに好ましくは60ppm以上75ppm以下となる量である。
[マグネシウム化合物]
ポリエステルにマグネシウム化合物を含めることにより、ポリエステルの静電印加性が向上する。この場合に着色がおきやすいが、本発明においては、着色を抑え、優れた色調、耐熱性が得られる。
マグネシウム化合物としては、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキシド、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム等のマグネシウム塩が挙げられる。中でも、エチレングリコールへの溶解性の観点から、酢酸マグネシウムが最も好ましい。
マグネシウム化合物の添加量としては、高い静電印加性を付与するためには、Mg元素換算値が50ppm以上となる量が好ましく、50ppm以上100ppm以下の範囲となる量がより好ましい。マグネシウム化合物の添加量は、静電印加性の付与の点で、好ましくは60ppm以上90ppm以下の範囲となる量であり、さらに好ましくは70ppm以上80ppm以下の範囲となる量である。
エステル化反応工程においては、触媒成分であるチタン化合物と、添加剤であるマグネシウム化合物及びリン化合物とを、下記式(i)から算出される値Zが下記の関係式(ii)を満たすように、添加して溶融重合させる場合が特に好ましい。ここで、P含有量は芳香環を有しない5価のリン酸エステルを含むリン化合物全体に由来するリン量であり、Ti含有量は、有機キレートチタン錯体を含むTi化合物全体に由来するチタン量である。このように、チタン化合物を含む触媒系でのマグネシウム化合物及びリン化合物の併用を選択し、その添加タイミング及び添加割合を制御することによって、チタン化合物の触媒活性を適度に高く維持しつつも、黄色味の少ない色調が得られ、重合反応時やその後の製膜時(溶融時)などで高温下に曝されても黄着色を生じ難い耐熱性を付与することができる。
(i)Z=5×(P含有量[ppm]/P原子量)−2×(Mg含有量[ppm]/Mg原子量)−4×(Ti含有量[ppm]/Ti原子量)
(ii)0≦Z≦+5.0
これは、リン化合物はチタンに作用するのみならずマグネシウム化合物とも相互作用することから、3者のバランスを定量的に表現する指標となるものである。
式(i)は、反応可能な全リン量から、マグネシウムに作用するリン分を除き、チタンに作用可能なリンの量を表現したものである。値Zが正の場合は、チタンを阻害するリンが余剰な状況にあり、逆に負の場合はチタンを阻害するために必要なリンが不足する状況にあるといえる。反応においては、Ti、Mg、Pの各原子1個は等価ではないことから、式中の各々のモル数に価数を乗じて重み付けを施してある。
本発明においては、特殊な合成等が不要であり、安価でかつ容易に入手可能なチタン化合物、リン化合物、マグネシウム化合物を用いて、反応に必要とされる反応活性を持ちながら、色調及び熱に対する着色耐性に優れたポリエステル原料樹脂を得ることができる。
式(ii)において、重合反応性を保った状態で、色調及び熱に対する着色耐性をより高める観点から、+1.0≦Z≦+4.0を満たす場合が好ましく、+1.5≦Z≦+3.0を満たす場合がより好ましい。
本発明における好ましい態様として、エステル化反応が終了する前に、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールに、Ti元素換算値で1ppm以上30ppm以下のクエン酸又はクエン酸塩を配位子とするキレートチタン錯体を添加後、該キレートチタン錯体の存在下に、Mg元素換算値で60ppm以上90ppm以下(より好ましくは70ppm以上80ppm以下)の弱酸のマグネシウム塩を添加し、該添加後にさらに、P元素換算値で60ppm以上80ppm以下(より好ましくは65ppm以上75ppm以下)の、芳香環を置換基として有しない5価のリン酸エステルを添加する態様が挙げられる。
上記において、キレートチタン錯体(有機キレートチタン錯体)とマグネシウム塩(マグネシウム化合物)と5価のリン酸エステルとの各々について、それぞれ全添加量の70質量%以上が、順序で添加される態様が好ましい。
エステル化反応は、少なくとも2個の反応器を直列に連結した多段式装置を用いて、エチレングリコールが還流する条件下で、反応によって生成した水又はアルコールを系外に除去しながら実施することができる。
また、上記したエステル化反応は、一段階で行なってもよいし、多段階に分けて行なうようにしてもよい。
エステル化反応を一段階で行なう場合、エステル化反応温度は230〜260℃が好ましく、240〜250℃がより好ましい。
エステル化反応を多段階に分けて行なう場合、第一反応槽のエステル化反応の温度は230〜260℃が好ましく、より好ましくは240〜250℃であり、圧力は1.0〜5.0kg/cmが好ましく、より好ましくは2.0〜3.0kg/cmである。第二反応槽のエステル化反応の温度は230〜260℃が好ましく、より好ましくは245〜255℃であり、圧力は0.5〜5.0kg/cm、より好ましくは1.0〜3.0kg/cmである。さらに3段階以上に分けて実施する場合は、中間段階のエステル化反応の条件は、第一反応槽と最終反応槽の間の条件に設定するのが好ましい。
−重縮合−
重縮合は、エステル化反応で生成されたエステル化反応生成物を重縮合反応させて重縮合物を生成する。重縮合反応は、1段階で行なってもよいし、多段階に分けて行なうようにしてもよい。
エステル化反応で生成したオリゴマー等のエステル化反応生成物は、引き続いて重縮合反応に供される。この重縮合反応は、多段階の重縮合反応槽に供給することにより好適に行なうことが可能である。
例えば、3段階の反応槽で行なう場合の重縮合反応条件は、第一反応槽は、反応温度が255〜280℃、より好ましくは265〜275℃であり、圧力が100〜10torr(13.3×10−3〜1.3×10−3MPa)、より好ましくは50〜20torr(6.67×10−3〜2.67×10−3MPa)であって、第二反応槽は、反応温度が265〜285℃、より好ましくは270〜280℃であり、圧力が20〜1torr(2.67×10−3〜1.33×10−4MPa)、より好ましくは10〜3torr(1.33×10−3〜4.0×10−4MPa)であって、最終反応槽内における第三反応槽は、反応温度が270〜290℃、より好ましくは275〜285℃であり、圧力が10〜0.1torr(1.33×10−3〜1.33×10−5MPa)、より好ましくは5〜0.5torr(6.67×10−4〜6.67×10−5MPa)である態様が好ましい。
上記のようにして合成されたポリエステル原料樹脂には、光安定化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、易滑剤(微粒子)、核剤(結晶化剤)、結晶化阻害剤などの添加剤を更に含有させてもよい。
本発明においては、ポリエステルフィルムの耐加水分解性の観点から、ポリエステル原料樹脂の固有粘度(IV)は、0.55dL/g以上0.90dL/g以下であることが好ましい。中でも、0.60dL/g以上0.80dL/g以下であることがより好ましく、0.62dL/g以上0.78dL/g以下であることが更に好ましく、0.63dL/g以上0.78dL/g以下であることが最も好ましい。
固有粘度(IV)は、溶液粘度(η)と溶媒粘度(η0)の比ηr(=η/η0;相対粘度)から1を引いた比粘度(ηsp=ηr−1)を濃度で割った値を濃度がゼロの状態に外挿した値である。IVは、ウベローデ型粘度計を用い、ポリエステルを1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノール(=2/3[質量比])混合溶媒に溶解させ、25℃の溶液粘度から求められる。
(溶融押出)
本発明におけるフィルム成形工程では、上記のようにして得られるポリエステル原料樹脂を溶融押出し、さらに冷却してポリエステルフィルムを成形する。
ポリエステル原料樹脂の溶融押出は、例えば、1本又は2本以上のスクリュを備えた押出機を用い、ポリエステル原料樹脂の融点以上の温度に加熱し、スクリュを回転させて溶融混練しながら行なわれる。ポリエステル原料樹脂は、加熱及びスクリュによる混練により、押出機内で溶融してメルトとなる。また、押出機内での熱分解(ポリエステルの加水分解)を抑制する観点から、押出機内を窒素置換して、ポリエステル原料樹脂の溶融押出しを行なうことが好ましい。押出機は、混練温度が低く抑えられる点で二軸押出機が好ましい。
溶融されたポリエステル原料樹脂(メルト)は、ギアポンプ、濾過器等を通して、押出ダイから押出す。押出ダイは、単に「ダイ」とも称する〔JIS B8650:2006、a)押出成形機、番号134参照〕。
このとき、メルトは、単層で押出してもよいし、多層で押出してもよい。
ポリエステル原料樹脂には、オキサゾリン系化合物、カルボジイミド化合物、及びエポキシ化合物から選ばれる末端封止剤を含めることが好ましい。この場合、フィルム成形工程では、末端封止剤が添加されたポリエステル原料樹脂が溶融混練され、溶融混練時に末端封止剤と反応したポリエステル原料樹脂を溶融押出する。
ポリエステル原料樹脂に末端封止剤を含める工程を設けることで、耐候性が向上する上、熱収縮を低く抑えることができる。また、ポリエステルフィルムを成形した場合において、ポリエステル末端に結合して分子鎖の末端部分が嵩高くなり、フィルム表面の微細凹凸量が増えるため、アンカー効果が発現しやすくなり、ポリエステルフィルムと該フィルム上に塗布形成される塗布層との密着が向上する。
末端封止剤の添加時期は、原料の投入から押出までの過程においてポリエステル原料樹脂と共に溶融混練される段階であれば、特に制限はないが、末端封止剤は、原料をシリンダに投入後スクリュでベント口に送られるまでの間に加えられ、原料樹脂と共に溶融混練に供されることが好ましい。例えば、溶融混練を行なうシリンダの原料投入口とベント口との間に末端封止剤を供給する供給口を設け、シリンダ内の原料樹脂に直接加えることができる。このとき、末端封止剤は、加熱混練が開始されているが完全に溶融状態に達していないポリエステル原料樹脂に加えられてもよいし、溶融状態のポリエステル原料樹脂(メルト)に加えられてもよい。
末端封止剤のポリエステル原料樹脂に対する量としては、ポリエステル原料樹脂の全質量に対して、0.1質量%以上5質量%以下が好ましい。末端封止剤のポリエステル原料樹脂に対する好ましい量は、0.3質量%以上4質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以上2質量%以下である。
末端封止剤の含有比率が0.1質量%以上であることで、AV低下効果による耐候性向上を達成できる上、低熱収縮性及び密着性を付与することができる。また、末端封止剤の含有比率が5質量%以下であると、密着性が向上するほか、末端封止剤の添加によるポリエステルのガラス転移温度(Tg)の低下が抑制され、これによる耐候性の低下や熱収縮の増加を抑制することができる。これは、Tgが低下した分、相対的にポリエステルの反応性が増加することで生じる加水分解性の増加を抑制したり、Tg低下で増加するポリエステル分子の運動性が増加し易くなることで生じる熱収縮が抑制されるためである。
本発明における末端封止剤としては、カルボジイミド基、エポキシ基、又はオキサゾリン基を有する化合物が好ましい。末端封止剤の具体例としては、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン系化合物などを好適に挙げることができる。
カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、及びオキサゾリン系化合物の例示及び好ましい態様等の詳細は、「ポリエステルフィルム」の項において既述した通りである。
ダイからメルト(ポリエステル)をキャスティングドラム上に押出すことで、フィルム状に成形(キャスト処理)することができる。
キャスト処理により得られるフィルム状のポリエステル成形体の厚みは、0.1mm〜3mmであることが好ましく、0.2mm〜2mmであることがより好ましく、0.3mm〜1.5mmであることがさらに好ましい。
フィルム状のポリエステル成形体の厚みを3mm以下とすることで、メルトの蓄熱による冷却遅延を回避し、また、0.1mm以上とすることで、押出しから冷却までの間に、ポリエステル中のOH基やCOOH基がポリエステル内部に拡散され、加水分解発生の要因となるOH基及びCOOH基がポリエステル表面に露出することを抑制する。
押出ダイから押出されたメルトを冷却する手段は、特に制限されず、メルトに冷風を当てたり、キャストドラム(冷却キャストドラム)に接触させたり、水を霧吹きすればよい。冷却手段は、1つのみ行なってもよいし、2つ以上を組み合わせて行なってもよい。
冷却手段は、上記の中でも、連続運転時のフィルム表面へのオリゴマー付着防止の観点から、冷風による冷却及びキャストドラムを用いた冷却の少なくとも一方が好ましい。さらには、押出機から押出されたメルトを冷風で冷却すると共に、メルトをキャストドラムに接触させて冷却することが特に好ましい。
また、キャストドラム等を用いて冷却されたポリエステル成形体は、剥ぎ取りロール等の剥ぎ取り部材を用いて、キャストドラム等の冷却部材から剥ぎ取られる。
〔縦延伸工程〕
本発明の縦延伸工程では、フィルム成形工程で成形されたポリエステルフィルムを長手方向に縦延伸する。
フィルムの縦延伸は、例えば、フィルムを挟む1対のニップロールにフィルムを通して、フィルムの長手方向にフィルムを搬送しながら、フィルムの搬送方向に並べた2対以上のニップロール間で緊張を与えることにより行なうことができる。具体的には、例えば、フィルムの搬送方向上流側に1対のニップロールA、下流側に1対のニップロールBを設置したとき、フィルムを搬送する際に、下流側のニップロールBの回転速度を、上流側のニップロールAの回転速度より速くすることで、フィルムが搬送方向(MD方向)に延伸される。なお、上流側、下流側、それぞれに、各々独立に、2対以上のニップロールを設置してもよい。また、ポリエステルフィルムの縦延伸は、上記ニップロールを備えた縦延伸装置を用いて行なってもよい。
縦延伸工程において、ポリエステルフィルムの縦延伸倍率は、2〜5倍であることが好ましく、2.5〜4.5倍であることがより好ましく、2.8〜4倍であることがさらに好ましい。
また、縦横の延伸倍率の積で表される面積延伸倍率は、延伸前のポリエステルフィルムの面積の6倍〜18倍が好ましく、8倍〜17.5倍であることがより好ましく、10倍〜17倍であることがさらに好ましい。
ポリエステルフィルムの縦延伸時の温度(以下、「縦延伸温度」とも称する)は、ポリエステルフィルムのガラス転移温度をTgとするとき、Tg−20℃以上Tg+50℃以下であることが好ましく、より好ましくはTg−10℃以上Tg+40℃以下、さらに好ましくはTg℃以上Tg+30℃以下である。
なお、ポリエステルフィルムを加熱する手段としては、ニップロール等のロールを用いて延伸する場合は、ロール内部にヒーターや温溶媒を流すことのできる配管を設けることで、ロールに接するポリエステルフィルムを加熱することができる。また、ロールを用いない場合においても、ポリエステルフィルムに温風を吹きかけたり、ヒーター等の熱源に接触させ、又は熱源の近傍を通過させることにより、ポリエステルフィルムを加熱することができる。
本発明のポリエステルフィルムの製造方法では、縦延伸工程とは別に、後述する横延伸工程を含む。そのため、本発明のポリエステルフィルムの製造方法では、ポリエステルフィルムを、ポリエステルフィルムの長手方向(搬送方向、MD)と、ポリエステルフィルムの長手方向と直交する方向(TD方向)との少なくとも2軸に延伸することになる。MD方向及びTD方向への延伸は、それぞれ少なくとも1回ずつ行なえばよい。
なお、「ポリエステルフィルムの長手方向(搬送方向、MD)と直交する方向(TD)」とは、ポリエステルフィルムの長手方向(搬送方向、MD)と垂直(90°)をなす方向を意図するものであるが、機械的な誤差などから実質的に長手方向(すなわち搬送方向)に対する角度が90°とみなせる方向(例えば、MD方向に対し90°±5°の方向)が含まれる。
2軸延伸する方法としては、縦延伸と横延伸とを分離して行なう逐次2軸延伸方法のほか、縦延伸と横延伸を同時に行なう同時2軸延伸方法のいずれであってもよい。縦延伸と横延伸とは、各々独立に2回以上行なってもよく、縦延伸と横延伸の順序は問わない。例えば、縦延伸→横延伸、縦延伸→横延伸→縦延伸、縦延伸→縦延伸→横延伸、横延伸→縦延伸などの延伸態様が挙げられる。中でも縦延伸→横延伸が好ましい。
〔横延伸工程〕
次に、本発明における横延伸工程について詳細に説明する。
本発明における横延伸工程は、縦延伸後のポリエステルフィルムを長手方向に直交する幅方向に横延伸する工程であるが、この横延伸を、
(a)縦延伸後のポリエステルフィルムを延伸可能な温度に予熱する予熱部、
(b)予熱されたポリエステルフィルムを長手方向と直交する幅方向に緊張を与えて横延伸する延伸部、
(c)縦延伸及び横延伸を行なった後のポリエステルフィルムを加熱し結晶化させて熱固定する熱固定部、
(d)熱固定されたポリエステルフィルムを加熱し、ポリエステルフィルムの緊張を緩和してフィルムの残留歪みを除去する熱緩和部、並びに、
(e)熱緩和後のポリエステルフィルムを冷却する冷却部
に、ポリエステルフィルムをこの順に搬送し、
(c)熱固定部および(d)熱緩和部の少なくとも一方において、ポリエステルフィルムのTD方向端部をヒーターにより選択的に輻射加熱し、かつ、(e)冷却部において、ポリエステルフィルムの表面の温度を150℃から70℃まで冷却するときのフィルム幅方向端部における平均冷却速度を、フィルム幅方向の中央部における平均冷却速度の1.01倍〜2倍とすることにより行う。
本発明における横延伸工程では、上記構成でポリエステルフィルムが横延伸される態様であればその具体的な手段は制限されないが、上記構成をなす各工程の処理が可能な横延伸装置又は2軸延伸機を用いて行なうことが好ましい。
−2軸延伸機−
図3に示すように、2軸延伸機100は、1対の環状レール60a及び60bと、各環状レールに取り付けられ、レールに沿って移動可能な把持部材2a〜2lとを備えている。環状レール60a及び60bは、ポリエステルフィルム200を挟んで互いに対称配置されており、把持部材2a〜2lでポリエステルフィルム200を握持し、レールに沿って移動させることによりフィルム幅方向に延伸可能なようになっている。
図3は、2軸延伸機の一例を上面から示す上面図である。
2軸延伸機100は、ポリエステルフィルム200を予熱する予熱部10と、ポリエステルフィルム200を、矢印MD方向と直交する方向である矢印TD方向に延伸してポリエステルフィルムに緊張を与える延伸部20と、緊張が与えられたポリエステルフィルムに緊張を与えたまま加熱する熱固定部30と、熱固定したポリエステルフィルムを加熱して熱固定したポリエステルフィルムの緊張を緩める熱緩和部40と、熱緩和部を経たポリエステルフィルムを冷却する冷却部50と、からなる領域で構成されている。
環状レール60aには、環状レール60aに沿って移動可能な把持部材2a、2b、2e、2f、2i、及び2jが取り付けられており、また環状レール60bには、環状レール60bに沿って移動可能な把持部材2c、2d、2g、2h、2k、及び2lが取り付けられている。把持部材2a、2b、2e、2f、2i、及び2jは、ポリエステルフィルム200のTD方向の一方の端部を把持し、把持部材2c、2d、2g、2h、2k、及び2lは、ポリエステルフィルム200のTD方向の他方の端部を把持する。把持部材2a〜2lは、一般にチャック、クリップ等と称される。
把持部材2a、2b、2e、2f、2i、及び2jは、環状レール60aに沿って反時計回りに移動し、把持部材2c、2d、2g、2h、2k、及び2lは、環状レール60bに沿って時計回りに移動する。
把持部材2a〜2dは、予熱部10においてポリエステルフィルム200の端部を把持し、握持したまま環状レール60a又は60bに沿って移動し、延伸部20や、把持部材2e〜2hが位置する熱緩和部40を経て、把持部材2i〜2lが位置する冷却部50まで進行する。その後、把持部材2a及び2bと、把持部材2c及び2dとは、搬送方向順に、冷却部50のMD方向下流側の端部でポリエステルフィルム200の端部を離した後、さらに環状レール60a又は60bに沿って移動し、予熱部10に戻る。このとき、ポリエステルフィルム200は、矢印MD方向に移動して順次、予熱部10での予熱、延伸部20での延伸、熱固定部30での熱固定、熱緩和部40での熱緩和、冷却部50での冷却が行われ、横延伸される。把持部材2a〜2lの予熱部等の各領域での移動速度が、ポリエステルフィルム200の搬送速度となる。
把持部材2a〜2lは、各々独立に、移動速度を変化することができる。
2軸延伸機100は、延伸部20において、ポリエステルフィルム200をTD方向に延伸する横延伸を可能とするものであるが、把持部材2a〜2lの移動速度を変化させることにより、ポリエステルフィルム200をMD方向にも延伸することができる。すなわち、2軸延伸機100を用いて同時2軸延伸を行なうことも可能である。
ポリエステルフィルム200のTD方向の端部を把持する把持部材は、図3では2a〜2lのみを図示したが、ポリエステルフィルム200を支えるため、2軸延伸機100は、2a〜2lのほかに図示しない把持部材が取り付けられている。なお、以下において、把持部材2a〜2lを「把持部材2」と総称することがある。
(a.予熱部)
予熱部では、縦延伸工程で縦延伸した後のポリエステルフィルムを延伸可能な温度に予熱する。
図3に示すように、予熱部10においてポリエステルフィルム200を予熱する。予熱部10では、ポリエステルフィルム200を延伸する前に予め加熱し、ポリエステルフィルム200の横延伸を容易に行なえるようにする。
予熱部終了点における膜面温度(以下、「予熱温度」ともいう。)は、ポリエステルフィルム200のガラス転移温度をTgとするとき、Tg−10℃〜Tg+60℃であることが好ましく、Tg℃〜Tg+50℃であることがより好ましい。
なお、予熱部終了点は、ポリエステルフィルム200の予熱を終了する時点、すなわち予熱部10の領域からポリエステルフィルム200が離れる位置をいう。
(b.延伸部)
延伸部では、予熱部で予熱されたポリエステルフィルムを長手方向(MD方向)と直交する幅方向(TD方向)に緊張を与えて横延伸する。
図3に示すように、延伸部20では、予熱されたポリエステルフィルム200を、少なくともポリエステルフィルム200の長手方向と直交するTD方向に横延伸してポリエステルフィルム200に緊張を与える。
ポリエステルフィルム200の長手方向(搬送方向、MD)と直交する方向(TD)への延伸(横延伸)は、ポリエステルフィルム200の長手方向(搬送方向、MD)と垂直(90°)の角度の方向に延伸することを意図するものであるが、機械誤差の範囲の方向であってもよい。機械誤差の範囲とは、ポリエステルの長手方向(搬送方向、MD)と垂直とみなせる角度(90°±5°)の方向である。
延伸部20において、ポリエステルフィルム200の面積延伸倍率(各延伸倍率の積)は、延伸前のポリエステルフィルム200の面積の6倍〜18倍が好ましく、8倍〜17.5倍であることがより好ましく、10倍〜17倍であることがさらに好ましい。
また、ポリエステルフィルム200の横延伸時の膜面温度(以下、「横延伸温度」ともいう。)は、ポリエステルフィルム200のガラス転移温度をTgとするとき、Tg−10℃以上Tg+100℃以下であることが好ましく、より好ましくはTg℃以上Tg+90℃以下、さらに好ましくはTg+10℃以上Tg+80℃以下である。
既述のように、把持部材2a〜2lは、各々独立に移動速度を変化させることができる。したがって、例えば、予熱部10における把持部材2の移動速度よりも、延伸部20、熱固定部30等の延伸部20MD方向下流側における把持部材2の移動速度を速めることで、ポリエステルフィルム200を搬送方向(MD方向)に延伸する縦延伸を併せて行なうことも可能である。
横延伸工程でのポリエステルフィルム200の縦延伸は、延伸部20のみで行なってもよいし、後述する熱固定部30、熱緩和部40、又は冷却部50で行なってもよい。複数の箇所で縦延伸を行なってもよい。
(c.熱固定部)
熱固定部では、既に縦延伸及び横延伸が施された後のポリエステルフィルムを加熱し結晶化させて熱固定する。
熱固定とは、延伸部20においてポリエステルフィルム200に緊張を与えたまま加熱し、ポリエステルを結晶化させることをいう。
図3に示す熱固定部30において、緊張が与えられたポリエステルフィルム200に対し、ポリエステルフィルム200の表面の最高到達膜面温度(本明細書中において、「熱固定温度」、「T熱固定」ともいう。)は、160℃〜240℃の範囲に制御して、フィルムを加熱することが好ましい。
熱固定温度が160℃以上であると、ポリエステルが結晶化し易く、ポリエステル分子を伸びた状態で固定化することができ、ポリエステルフィルムの耐加水分解性を高めることができる。また、熱固定温度が240℃以下であると、ポリエステル分子同士が絡み合った部分で滑りが生じにくく、ポリエステル分子が縮みにくいため、ポリエステルフィルムの耐加水分解性の低下を抑制することができる。換言すれば、熱固定温度が160℃〜240℃となるように加熱することで、ポリエステル分子の結晶を配向させて、ポリエステルフィルムの耐加水分解性を高めることができる。
熱固定温度は、上記同様の理由から、170℃〜230℃の範囲が好ましく、175℃〜225℃の範囲がより好ましい。
なお、最高到達膜面温度(熱固定温度)は、ポリエステルフィルム200の表面に熱電対を接触させて測定される値である。
さらに、熱固定温度を160℃〜240℃に制御するとき、フィルム幅方向における最高到達膜面温度のバラツキを0.5℃以上10.0℃以下とすることが好ましい。フィルム幅方向において、フィルムの最高到達膜面温度のバラツキが、0.5℃以上であることで、後工程での搬送時シワの点で有利であり、また、バラツキを10.0℃以下に抑えることで、幅方向における結晶化度のバラツキが抑制される。これにより、フィルム幅方向での弛み差が軽減し、製造過程でのフィルム面への傷の発生が防止され、耐加水分解性が高められる。
上記の中では、最高到達膜面温度のバラツキは、上記と同様の理由から、0.5℃以上7.0℃以下がより好ましく、0.5℃以上5.0℃以下が更に好ましく、0.5℃以上4.0℃以下が特に好ましい。
また、熱固定時のフィルムへの加熱は、フィルムの一方の側からのみ行なってもよいし、両側から行なうようにしてもよい。例えば、フィルム成形工程で溶融押出後にキャスティングドラム上で冷却されたときには、成形されたポリエステルフィルムは一方の面とその反対側の面とで冷やされ方が異なっているため、フィルムがカールしやすくなっている。そのため、本熱固定工程での加熱を、フィルム成形工程でキャスティングドラムと接触させた面に対して行なうようにすることが好ましい。熱固定工程での加熱面をキャスティングドラムと接触させた面、すなわち冷却面とすることで、カールを解消することができる。
このとき、加熱は、熱固定工程での加熱面における加熱直後の表面温度が、加熱面と反対側の非加熱面の表面温度に比べて0.5℃以上5.0℃以下の範囲で高くなるように行なわれることが好ましい。熱固定時の加熱面の温度がその反対側の面より高く、その表裏間の温度差が0.5〜5.0℃であることで、フィルムのカールがより効果的に解消される。カールの解消効果の観点からは、加熱面とその反対側の非加熱面との間の温度差は、0.7〜3.0℃の範囲がより好ましく、0.8℃以上2.0℃以下が更に好ましい。
また、本発明では、熱固定部30および熱緩和部40の少なくとも一方において、ポリエステルフィルムのTD方向端部をヒーターにより選択的に輻射加熱する。かかる輻射加熱を行わないと、作製されるポリエステルフィルムのTD方向におけるMD熱収縮率が下がらず、MD熱収縮率の分布およびMD熱収縮率の変化量が小さくならないため、既述の式(I)および(II)を満たすフィルムを製造することができない。
熱緩和部40においてフィルムのTD方向端部を輻射加熱するときは、熱固定部30での輻射加熱を省略してもよいし、熱固定部30および熱緩和部40の両方において行ってもよい。
ここで、「ポリエステルフィルムのTD方向端部」とは、ポリエステルフィルムのTD方向の両端の縁および、縁から、ポリエステルフィルムのTD方向の全長(つまり、幅)の10%までの領域をいう。
ポリエステルフィルムのTD方向端部の加熱は、輻射加熱可能なヒーターを用いて行われ、ポリエステルフィルムのTD方向の少なくとも一方の端部を選択的に加熱する。局所的なMD熱収縮を抑制する観点から、ポリエステルフィルムのTD方向の両方の端部を加熱することが好ましい。なお、「選択的に加熱」とは、ポリエステルフィルムの端部を含むフィルム全体を加熱するのではなく、フィルム端部を局所的に加熱することを意味する。
輻射加熱可能なヒーターとしては、例えば、赤外線ヒーターが挙げられ、特にセラミック製のヒーター(セラミックスヒーター)を用いることが好ましい。
ポリエステルフィルムのTD方向端部の加熱は、ヒーターの表面温度、及び、ポリエステルフィルム表面と、ヒーターとの距離(直線距離)を調整して行うことが好ましい。
ヒーターの表面温度が300℃〜800℃であるとき、ポリエステルフィルム表面と、ヒーターとの距離を20mm〜250mmとすることが好ましく、ヒーター表面温度400℃〜700℃、かつ、フィルム−ヒーター間の距離を50mm〜200mmとすることがより好ましい。
また、輻射加熱したときには、フィルムTD方向における温度バラツキを0.7℃以上3.0℃以下の範囲に狭めることが好ましく、これによりフィルム幅方向での結晶化度のバラツキを0.5%以上〜3.0%以下の範囲に軽減することができる。このようにすると、MD熱収縮率の局所的な増減を抑制でき、スジバリの発生が抑制されると共に、耐加水分解性をより向上させることができる。
熱固定部において加熱する場合、熱固定部での滞留時間を5秒以上50秒以下とすることが好ましい。滞留時間とは、フィルムが熱固定部内で加熱されている状態が継続している時間である。滞留時間は、5秒以上であると、加熱時間に対する結晶化度変化が小さくなるため幅方向の結晶化度ムラが比較的生じにくくなる点で有利であり、また50秒以下であると、テンターのライン速度を極端に小さくする必要がないため生産性の点で有利である。
中でも、滞留時間は、上記同様の理由から、8秒以上40秒以下が好ましく、10秒以上30秒以下がより好ましい。
本発明においては、熱固定部および熱緩和部の少なくとも一方において、ポリエステルフィルム端部を輻射加熱するが、さらに、予熱部もしくは延伸部、または、予熱部および延伸部の両方において、フィルム端部の選択的輻射加熱を行ってもよい。
ポリエステルフィルムのTD方向端部への輻射加熱は、フィルムのTD方向における温度バラツキ、ひいては結晶化度のバラツキを軽減するものであり、MD熱収縮率の局所的な増減を抑制し易くなる。
(d.熱緩和部)
熱緩和部では、熱固定されたポリエステルフィルムを加熱し、ポリエステルフィルムの緊張を緩和してフィルムの残留歪みを除去する。
既述のように、本発明のポリエステルフィルムの製造方法では、熱固定部および熱緩和部の少なくとも一方において、ポリエステルフィルムのTD方向端部をヒーターにより選択的に輻射加熱する。熱緩和部でのポリエステルフィルムのTD方向端部の選択的輻射加熱は、熱固定部でのポリエステルフィルムのTD方向端部の選択的輻射加熱と同様の方法で行えばよく、加熱温度の数値範囲および好ましい態様も同様である。
ところで、熱緩和は、熱固定されたポリエステルフィルムを加熱し、ポリエステルフィルムの緊張を緩和するものであり、熱緩和部でのポリエステルフィルムへの加熱は、次のように行うことが好ましい。
図3に示す熱緩和部40において、ポリエステルフィルム200の表面の最高到達膜面温度が、熱固定部30におけるポリエステルフィルム200の最高到達膜面温度(T熱固定)よりも5℃以上低い温度となるように、ポリエステルフィルム200を加熱する態様が好ましい。
以下、熱緩和時におけるポリエステルフィルム200の表面の最高到達膜面温度を「熱緩和温度(T熱緩和)」ともいう。
熱緩和部40において、熱緩和温度(T熱緩和)を、熱固定温度(T熱固定)よりも5℃以上低い温度(T熱緩和≦T熱固定−5℃)で加熱して緊張を解く(延伸張力を小さくする)ことで、ポリエステルフィルムの寸法安定性をより向上させることができる。
熱緩和が「T熱固定−5℃」以下であると、ポリエステルフィルムの耐加水分解性により優れる。また、T熱緩和は、寸法安定性が良好になる点で、100℃以上であることが好ましい。
更には、T熱緩和は、100℃以上で、かつT熱固定よりも15℃以上低い温度領域(100℃≦T熱緩和≦T熱固定−15℃)であることが好ましく、110℃以上で、かつT熱固定よりも25℃以上低い温度領域(110℃≦T熱緩和≦T熱固定−25℃)であることがより好ましく、120℃以上で、かつT熱固定よりも30℃以上低い温度領域(120℃≦T熱緩和≦T熱固定−30℃)であることが特に好ましい。
なお、T熱緩和は、ポリエステルフィルム200の表面に熱電対を接触させることで測定される値である。
(e.冷却部)
冷却部では、熱緩和部で熱緩和した後のポリエステルフィルムを冷却する。
図3に示すように、冷却部50では、熱緩和部40を経たポリエステルフィルム200が冷却される。熱固定部30や熱緩和部40で加熱されたポリエステルフィルム200を冷却することにより、ポリエステルフィルム200の形状が固定化される。
冷却部50におけるポリエステル200の冷却部出口におけるポリエステルの表面(膜面)の温度(以下、「冷却温度」ともいう。)は、ポリエステルフィルム200のガラス転移温度Tg+50℃よりも低いことが好ましい。具体的には、25℃〜110℃であることが好ましく、より好ましくは25℃〜95℃、さらに好ましくは25℃〜80℃である。冷却温度が上記範囲であることで、クリップ把持を解いた後にフィルムが不均一に縮むことを防止することができる。
ここで、冷却部出口とは、ポリエステル200が冷却部50から離れるときの、冷却部50の端部をいい、ポリエステルフィルム200を把持する把持部材2(図3では、把持部材2j及び2l)が、ポリエステルフィルム200を離すときの位置をいう。
さらに、冷却部50では、ポリエステルフィルムの表面(膜面)の温度を150℃から70℃まで冷却するときの平均冷却速度を、2℃/秒〜100℃/秒の範囲とすることが好ましい。
ここで、平均冷却速度は、冷却ゾーンでのフィルムの膜温を放射温度計により実測することで求められる。すなわち、膜温が150℃になる地点と膜温が70℃になる地点の距離Zmと、フィルムの搬送速度Sm/秒から、150から70℃までの冷却時間(Z÷S)秒を求める。そこから更に(150−70)÷(Z÷S)を計算することにより、平均冷却速度が求められる。
平均冷却速度を2℃/秒以上とすることで、延伸装置でのポリエステルフィルムの冷却不足が抑制され、ポリエステルフィルムの粘着性が低くなる。そのため、冷却部出口からポリエステルフィルムが離れた後の工程で、ポリエステルフィルムが、フィルム搬送用のロールに粘着する等の故障が生じにくくなる。また、平均冷却速度を100℃/秒以下とすることで、ポリエステルフィルムの急冷が防止され、フィルム面内に残留応力ムラが生じにくく、熱収縮率のムラが抑制され、スジバリが生じ難くなる。
平均冷却速度は、4℃/秒〜80℃/秒がより好ましく、5℃/秒〜50℃/秒が更に好ましい。
ただし、本発明のポリエステルフィルムの製造方法では、冷却部におけるフィルムの平均冷却速度は、フィルム幅方向端部と、フィルム幅方向(TD方向)の中央部とにおいて、異なっている。具体的には、フィルム幅方向端部における平均冷却速度を、フィルムTD方向中央部における平均冷却速度の1.01倍〜2倍とする。これにより、ポリエステルフィルムの細かなMD熱収縮率の変動を少なくし、ポリエステルフィルムのスジバリを抑制し易くなる。
フィルム幅方向端部における平均冷却速度の、フィルムTD方向中央部における平均冷却速度に対する倍率(特定冷却倍率ともいう)を、1.01倍以上2倍以下とすることで、式(I)および(II)を満たす薄手のポリエステルフィルムを製造し易くなり、スジバリの発生を抑制し易い。
特定冷却倍率は、1.03倍〜1.7倍が好ましく、1.05倍〜1.5倍がより好ましい。
横延伸工程における予熱、延伸、熱固定、熱緩和、及び冷却において、ポリエステルフィルム200を加熱し、又は冷却する温度制御手段としては、ポリエステルフィルム200に温風や冷風を吹きかけたり、ポリエステルフィルム200を、温度制御可能な金属板の表面に接触させ、又は金属板の近傍を通過させることが挙げられる
(フィルムの回収)
冷却工程で冷却されたポリエステルフィルム200は、TD方向両端のクリップで握持された把持部分をカットし、ロール状に巻き取られる。
横延伸工程においては、製造されるポリエステルフィルムの耐加水分解性及び寸法安定性を、より高めるために、次の手法により、延伸したポリエステルフィルムの緩和を行なうことが好ましい。
本発明では、横延伸工程を縦延伸工程の後に行なった後、冷却部50でMD方向の緩和を行なうことが好ましい。すなわち、
予熱部10においてポリエステルフィルム200の幅方向(TD)の両端部を、片端部につき、少なくとも2つの把持部材を用いて把持する。例えば、ポリエステルフィルム200の幅方向(TD)の片端部の一方を把持部材2a及び2bで把持し、他方を把持部材2c及び2dで把持する。次いで、把持部材2a〜2dを移動させることにより、予熱部10から冷却部50までポリエステルフィルム200を搬送する。
かかる搬送において、予熱部10におけるポリエステルフィルム200の幅方向(TD方向)の片端部を把持する把持部材2a(2c)と、把持部材2a(2c)に隣接する他の把持部材2b(2d)との間隔よりも、冷却部50におけるポリエステルフィルム200の幅方向の片端部を把持する把持部材2a(2c)と、把持部材2a(2c)に隣接する他の把持部材2b(2d)との間隔を狭めることで、ポリエステルフィルム200の搬送速度を小さくする。かかる手法によって、冷却部50でMD方向の緩和を行なうことができる。
ポリエステルフィルム200のMD方向の緩和は、熱固定部30、熱緩和部40、及び冷却部50の少なくとも一部において行なうことができる。
上記のように、把持部材2a−2b間の間隔、及び把持部材2c−2d間の間隔を、MD方向上流側よりも下流側で狭めることで、ポリエステルフィルム200のMD方向の緩和を行なうことができる。したがって、MD方向の緩和を熱固定部30又は熱緩和部40で行なう場合は、把持部材2a〜2dが熱固定部30又は熱緩和部40に到達したときに、把持部材2a〜2dの移動速度を遅くして、ポリエステルフィルム200の搬送速度を小さくし、把持部材2a−2b間の間隔、及び把持部材2c−2d間の間隔を、予熱部における間隔よりも狭めればよい。
ポリエステルフィルムの搬送速度と、ポリエステルフィルムの幅(フィルムのTD方向の全長)とは、次の関係を満たしていることが好ましい。
すなわち、横延伸工程におけるポリエステルフィルムの幅が最大になるときのポリエステルフィルムの幅L1と、冷却部からポリエステルフィルムが離れる冷却部の端部におけるポリエステルフィルムの幅L2とが、下記式(1)を満たし、かつ、予熱部におけるポリエステルフィルムの搬送速度S1と、冷却部の端部におけるポリエステルフィルムの搬送速度S2とが、下記式(2)を満たすことが好ましい。
ポリエステルフィルムの搬送速度と、ポリエステルフィルムの幅とを、式(1)および(2)に示す関係とすることで、作製されるポリエステルフィルムのMD方向の熱収縮率の絶対値を小さくしやすくなり、それに伴い、MD熱収縮率の分布およびMD熱収縮率の変動を小さくすることができる。
ここで、「横延伸工程におけるポリエステルフィルムの幅が最大になるときのポリエステルフィルムの幅L1」は、ポリエステルフィルムが延伸部でTD方向に拡幅された後の、ポリエステルフィルムのTD方向の最大の長さである。
図3においては、予熱部10における延伸前のポリエステルフィルム200の幅L0が、延伸部20によりポリエステルフィルム200がTD方向に拡幅されて幅L1となり、熱緩和部40で緊張が解かれて、ポリエステルフィルム200が冷却部50から離れるときに幅L2となっていることが示されている。図3においては、L0<L2<L1の順に幅が大きい。すなわち、L1は、予熱部10〜冷却部50に至る横延伸工程におけるポリエステルフィルム200の最大の幅である。
図3に示すように、延伸部20を過ぎたポリエステルフィルム200は、その後、熱固定部30にて、緊張が与えられたまま加熱されるため、通常、幅L1は、熱固定部30におけるポリエステルフィルム200の幅(TD方向の長さ)ともいえる。
また、「ポリエステルフィルムが離れる冷却部の端部におけるポリエステルフィルムの幅L2」は、冷却部に位置し、ポリエステルフィルムを把持する把持部材(図3では、把持部材2jおよび2l)が、ポリエステルフィルムを離すときにおけるポリエステルフィルムの幅である。
ポリエステルフィルムを把持する把持部材が、ポリエステルフィルムを離すことで、ポリエステルフィルムは、冷却部の領域から離れる。例えば、図3に示す把持部材2jがP点において、また、把持部材2lがQ点において、それぞれ、ポリエステルフィルム200を離すとき、冷却部50の端部(MD方向の端部)は、P点とQ点とを結んだ直線で表される。
「予熱部におけるポリエステルフィルムの搬送速度S1」は、ポリエステルフィルムを把持して環状レールの縁を移動する把持部材(図3では、2a〜2d)の移動速度に相当する。
また、「冷却部の前記端部におけるポリエステルフィルムの搬送速度S2」は、冷却部に位置し、ポリエステルフィルムを把持する把持部材(図3では、把持部材2jおよび2l)が、ポリエステルフィルムを離すときにおけるポリエステルフィルムの搬送速度である。図3を用いて換言すると、例えば、把持部材2jがP点において、また、把持部材2lがQ点において、それぞれ、ポリエステルフィルム200を離すとき、「冷却部50の前記端部におけるポリエステルフィルム200の搬送速度S2」は、ポリエステルフィルム200がP点とQ点とを結んだ直線を超えるときの搬送速度に相当する。さらに換言すると、「冷却部50の前記端部におけるポリエステルフィルム200の搬送速度S2」は、把持部材2jおよび2lが、ポリエステルフィルム200を離す直前の把持部材2jおよび2lの移動速度に相当する。
式(1)は、ポリエステルフィルム200を延伸した後、TD方向に緩和するときは、ポリエステルフィルム200の最大の幅(TD方向の長さ)L1が、冷却部50において2%〜15%縮まるように緩和することが好ましいことを意味する。
式(2)は、ポリエステルフィルム200をMD方向に緩和するときは、ポリエステルフィルム200の予熱部10における搬送速度S1が、冷却部50において2%〜15%減速するように緩和することが好ましいことを意味する。
横延伸工程を、上記構成とすることで、ポリエステルフィルムのスジバリを抑制し易くなる。
ΔLは、ポリエステルフィルムのTD方向(横方向)の緩和率を示すことから、ΔLを「TD緩和率」とも称する。また、ΔSは、ポリエステルフィルムのMD方向(縦方向)の緩和率を示すことから、ΔSを「MD緩和率」とも称する。
式(1)および(2)に示すように、ΔLおよびΔSは、共に、2%〜15%(2%≦ΔL≦15%、2%≦ΔS≦15%)であることが好ましい。
ΔLおよびΔSが共に2%以上であることで、製造される薄手のポリエステルフィルムが式(I)および(II)を満たしやすくなり、スジバリを抑制し易くなる。ΔLおよびΔSが共に15%以下であることで、ポリエステルフィルムが延伸装置で縮みきり易く、弛みを抑制し得る。
ΔLは、2%〜10%(2%≦ΔL≦10%)であることがより好ましく、3%〜8%(3%≦ΔL≦8%)であることがさらに好ましい。また、ΔSは、2%〜10%(2%≦ΔS≦10%)であることがより好ましく、3%〜8%(3%≦ΔS≦8%)であることがさらに好ましい。
<ポリエステルフィルムの用途>
本発明のポリエステルフィルムは、厚みが100μm以下となる薄手のフィルムであるにもかかわらず、加熱搬送されてもスジバリが生じにくく、フィルム上に塗布液や機能性部材シート等を貼りつけても、塗布ムラ、シート貼り合わせ時の気泡混入等の故障を生じにくい。従って、加熱搬送して加工または成形される種々の用途に用いることができる。
例えば、光学用フィルム、電気絶縁用フィルムに好適に用いることができる。
また、本発明のポリエステルフィルムを太陽電池モジュール用のフィルムとして用いてもよい。その場合、太陽電池モジュールは、例えば、次のように構成すればよい。
太陽電池モジュールは、一般に、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池素子を、太陽光が入射する透明性の基板と既述の本発明のポリエステルフィルム(太陽電池用バックシート)との間に配置して構成されている。具体的な実施態様として、電気を取り出すリード配線(不図示)で接続された発電素子(太陽電池素子)をエチレン・酢酸ビニル共重合体系(EVA系)樹脂等の封止剤で封止し、これを、ガラス等の透明基板と、本発明のポリエステルフィルム(バックシート)との間に挟んで互いに張り合わせることによって構成される態様に構成されてもよい。
太陽電池素子の例としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系、銅−インジウム−ガリウム−セレン、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルル、ガリウム−砒素などのIII−V族やII−VI族化合物半導体系など、各種公知の太陽電池素子を適用することができる。基板とポリエステルフィルムとの間は、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体等の樹脂(いわゆる封止材)で封止して構成することができる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
<ポリエステル原料樹脂の合成>
(ポリエステル原料樹脂1)
以下に示すように、テレフタル酸及びエチレングリコールを直接反応させて水を留去し、エステル化した後、減圧下で重縮合を行なう直接エステル化法を用いて、連続重合装置によりポリエステル(Ti触媒系PET)を得た。
(1)エステル化反応
第一エステル化反応槽に、高純度テレフタル酸4.7トンとエチレングリコール1.8トンを90分かけて混合してスラリー形成させ、3800kg/hの流量で連続的に第一エステル化反応槽に供給した。更にクエン酸がTi金属に配位したクエン酸キレートチタン錯体(VERTEC AC−420、ジョンソン・マッセイ社製)のエチレングリコール溶液を連続的に供給し、反応槽内温度250℃、攪拌下、平均滞留時間約4.3時間で反応を行なった。このとき、クエン酸キレートチタン錯体は、Ti添加量が元素換算値で9ppmとなるように連続的に添加した。このとき、得られたオリゴマーの酸価は600当量/トンであった。なお、本明細書中において、「当量/t」は1トンあたりのモル当量を表す。
この反応物を第二エステル化反応槽に移送し、攪拌下、反応槽内温度250℃で、平均滞留時間で1.2時間反応させ、酸価が200当量/トンのオリゴマーを得た。第二エステル化反応槽は内部が3ゾーンに仕切られており、第2ゾーンから酢酸マグネシウムのエチレングリコール溶液を、Mg添加量が元素換算値で75ppmになるように連続的に供給し、続いて第3ゾーンから、リン酸トリメチルのエチレングリコール溶液を、P添加量が元素換算値で65ppmになるように連続的に供給した。
(2)重縮合反応
上記で得られたエステル化反応生成物を連続的に第一重縮合反応槽に供給し、攪拌下、反応温度270℃、反応槽内圧力20torr(2.67×10−3MPa)で、平均滞留時間約1.8時間で重縮合させた。
更に、第二重縮合反応槽に移送し、この反応槽において攪拌下、反応槽内温度276℃、反応槽内圧力5torr(6.67×10−4MPa)で滞留時間約1.2時間の条件で反応(重縮合)させた。
次いで、更に第三重縮合反応槽に移送し、この反応槽では、反応槽内温度278℃、反応槽内圧力1.5torr(2.0×10−4MPa)で、滞留時間1.5時間の条件で反応(重縮合)させ、反応物(ポリエチレンテレフタレート(PET))を得た。
次に、得られた反応物を、冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングしてポリエステルのペレット<断面:長径約4mm、短径約2mm、長さ:約3mm>を作製した。
得られたポリエステルについて、高分解能型高周波誘導結合プラズマ−質量分析(HR-ICP-MS;SIIナノテクノロジー社製AttoM)を用いて以下に示すように測定した結果、Ti=9ppm、Mg=75ppm、P=60ppmであった。Pは当初の添加量に対して僅かに減少しているが、重合過程において揮発したものと推定される。
得られたポリマーは、IV=0.67、末端カルボキシ基の量(AV)=23当量/トン、融点=257℃、溶液ヘイズ=0.3%であった。IV及びAVの測定は、以下に示す方法により行なった。
〜IV及びAVの測定〜
ポリエステル原料樹脂の固有粘度(IV)は、ポリエステル原料樹脂を、1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノール(=2/3[質量比])混合溶媒に溶解し、該混合溶媒中の25℃での溶液粘度から求めた。
ポリエステル原料樹脂の末端COOH量(AV)は、未延伸ポリエステルフィルム1をベンジルアルコール/クロロホルム(=2/3;体積比)の混合溶液に完全溶解させ、指示薬としてフェノールレッドを用い、基準液(0.025N KOH−メタノール混合溶液)で滴定し、その適定量から算出した。
以上のようにして、ポリエステル原料樹脂1を合成した。
(ポリエステル原料樹脂2)
ポリエステル原料樹脂1をバッチ法で固相重合を実施した。すなわち、ポリエステルのペレットを容器に投入した後、真空にして撹拌しながら、150℃で予備結晶化処理し、その後190℃で30時間の固相重合反応を行なった。
以上のようにして、ポリエステル原料樹脂2を合成した。
(ポリエステル原料樹脂3)
二塩基酸として、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル97.6部(100モル%)及び二価アルコールとしてエチレングリコール49.6部(100モル%)を、エステル交換槽に投入し、メタノールを留去さてエステル交換反応を進行させながら昇温させ、メタノールが理論量まで留出した時点で、反応物を重縮合槽に移して、重縮合触媒として酸化ゲルマニウム0.016部を添加した後、高真空に減圧しながら290℃まで加熱してエチレングリコールを留去した。攪拌トルクが目標値に達したところで反応を終了させ、得られたポリマーを水中に直径2.5mmのストランド状にして取り出した。得られたストランド状のポリマーをチップカッターでチップ状に切断した。得られたポリマーの固有粘度(IV)は、0.60であった。
以上のようにして、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)のポリエステル原料樹脂3を得た。
(ポリエステル原料樹脂4)
特開2009−149066号公報の段落番号[0107](実施例1)を参考に、ポリエステル原料樹脂4を用意した。
(実施例1)
<未延伸ポリエステルフィルムの作製>
−フィルム成形工程−
ポリエステル原料樹脂1を、含水率20ppm以下に乾燥させた後、直径50mmの1軸混練押出機のホッパーに投入した。ポリエステル原料樹脂1は、300℃に溶融し、下記押出条件により、ギアポンプ、濾過器(孔径20μm)を介し、ダイから押出した。なお、ポリエステルシートの厚さが0.6mmとなるように、ダイのスリットの寸法を調整した。ポリエステルシートの厚さは、キャストドラムの出口に設置した自動厚み計により測定した。
このとき、溶融樹脂の押出は、圧力変動を1%、溶融樹脂の温度分布を2%とする条件にて行なった。具体的には、押出機のバレルにおける背圧を、押出機のバレル内平均圧力に対して1%高い圧力とし、押出機の配管温度を、押出機のバレル内平均温度に対して2%高い温度として加熱した。ダイから押出すにあたり、溶融樹脂を冷却用のキャストドラム上に押出し、静電印加法を用いてキャストドラムに密着させた。溶融樹脂の冷却は、キャストドラムの温度を25℃に設定すると共に、キャストドラムに対面して設置された冷風発生装置から25℃の冷風を吹き出して溶融樹脂にあてた。キャストドラムに対向配置された剥ぎ取りロールによって、キャストドラムから厚さ0.6mm、フィルム幅0.9mの未延伸ポリエステルフィルム(未延伸ポリエステルフィルム1)を剥離した。
得られた未延伸ポリエステルフィルム1は、固有粘度IV=0.64dL/g、末端カルボキシ基の量(AV)=25当量/トン、ガラス転移温度(Tg)=72℃であった。
〜IV及びAVの測定〜
未延伸ポリエステルフィルムの固有粘度(IV)は、未延伸ポリエステルフィルムを、1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノール(=2/3[質量比])混合溶媒に溶解し、該混合溶媒中の25℃での溶液粘度から求めた。
未延伸ポリエステルフィルムの末端COOH量(AV)は、未延伸ポリエステルフィルムをベンジルアルコール/クロロホルム(=2/3;体積比)の混合溶液に完全溶解させ、指示薬としてフェノールレッドを用い、基準液(0.025N KOH−メタノール混合溶液)で滴定し、その適定量から算出した。
<2軸延伸ポリエステルフィルムの作製>
得られた未延伸ポリエステルフィルム1について、以下の方法で逐次2軸延伸することによって延伸し、厚み50μm、フィルム幅(TD方向の全長)2.5mの2軸延伸ポリエステルフィルム1を作製した。
−縦延伸工程−
未延伸ポリエステルフィルム1を周速の異なる2対のニップロールの間に通し、下記条件で縦方向(搬送方向)に延伸した。
予熱温度 :80℃
縦延伸温度:90℃
縦延伸倍率:3.5倍
縦延伸応力:12MPa
−横延伸工程−
縦延伸したポリエステルフィルム1(縦延伸ポリエステルフィルム1)に対し、図3に示す構造を有するテンター(2軸延伸機)を用いて、下記の方法、条件にて延伸した。
(予熱部)
予熱温度を110℃とし、延伸可能なように加熱した。
(延伸部)
予熱された縦延伸ポリエステルフィルム1を、縦延伸した方向(長手方向)と直交するフィルム幅方向(TD方向)に下記の条件にて緊張を与え、横延伸した。
<条件>
・延伸温度(横延伸温度) :125℃
・延伸倍率(横延伸倍率) :4.2倍
・延伸応力(横延伸応力):18MPa
(熱固定部)
次いで、ポリエステルフィルムの最高到達膜面温度(熱固定温度)を下記範囲に制御して加熱し、結晶化させた。
・最高到達膜面温度(熱固定温度T熱固定):220〔℃〕
ここでの熱固定温度T熱固定が、DSCのプレピーク温度〔℃〕である。
また、フィルム幅方向(TD方向)の両端部を、フィルム成形工程でキャストドラムと接触したキャスト面側から、セラミック製の赤外線ヒータ(ヒータ表面温度:650℃)で輻射加熱した。このとき、ヒーターと、ポリエステルフィルムとの距離は、170mmとした。
(熱緩和部)
熱固定後のポリエステルフィルムを下記の温度に加熱し、フィルムの緊張を緩和した。このとき、フィルム幅方向の両端部を、熱固定と同様にキャスト面側から赤外線ヒータ(ヒータ表面温度:350℃)で輻射加熱した。
・熱緩和温度(T熱緩和):150℃
・熱緩和率:TD方向(TD熱緩和率;ΔL)=5%
MD方向(MD熱緩和率;ΔS)=5%
(冷却部)
次に、熱緩和後のポリエステルフィルムを65℃の冷却温度にて冷却した。
このとき、平均冷却速度を40℃/秒とし、フィルム幅方向端部における平均冷却速度の、フィルムTD方向中央部における平均冷却速度に対する倍率(特定冷却倍率、表1中「端部/中央部」と示す)を1.1倍とした。
−フィルムの回収−
冷却終了後、ポリエステルフィルムの両端を20cmずつトリミングした。その後、両端に幅10mmで押出し加工(ナーリング)を行なった後、張力25kg/mで巻き取った。
以上のようにして、厚さ50μmの2軸延伸ポリエステルフィルム(PETフィルム)を作製した。
−A.測定・評価−
上記で作製した2軸延伸ポリエステルフィルムに対し、下記の測定、評価を行なった。測定、評価の結果は下記表1に示す。
(1)TD方向におけるMD熱収縮率およびMD熱収縮率ムラ
2軸延伸ポリエステルフィルムを裁断し、TD方向30mm、MD方向120mmの大きさの試料片Mを作成した。試料片Mに対し、MD方向で100mmの間隔となるように、2本の基準線を入れ、無張力下で150℃の加熱オーブン中に30分間放置した。この放置の後、試料片Mを室温まで冷却して、2本の基準線の間隔を測定し、この値をA(単位;mm)とした。測定されたAおよび「100×(100−A)/100」の式から算出された数値をMD熱収縮率(Sh)とした。
かかるMD熱収縮率を、フィルムのTD方向の一方の端部から他方の端部まで、50mm毎(各試料片MのTD方向の中心点間隔で50mm間隔)に測定し、MD熱収縮率の最も大きな数値と、最も小さな数値との差をMD熱収縮率のムラ(ΔSh)として算出した。なお、MD熱収縮率を測定する手法を表す模式図を図4に示す。
(2)フィルムTD方向の単位距離あたりの、MD熱収縮率変化量x[%/m]の絶対値の最大値X[%/m]と、xの単位距離あたりの変化率yの絶対値の最大値Y[%/m]の測定
xは、2軸延伸ポリエステルフィルムをTD方向0.05m毎にMD熱収縮率(150℃30分)を測定し、下記式により算出した。
x=(任意の位置で隣接するMD熱収縮率差)÷0.05m
なお、xは、負の値も取り得る。
Xは、算出されたxの絶対値の幅方向における最大値である。
yはxの単位距離あたりの変化率であるので、下記式により算出した。
y=(任意の位置で隣接するxの差)÷0.05m
なお、yは負の値も取り得る。
Yは、yの絶対値の幅方向における最大値である。
(3)厚みの測定
得られた2軸延伸ポリエステルフィルムの厚みは、以下のようにして求めた。
2軸延伸ポリエステルフィルムに対して、接触式膜厚測定計(アンリツ社製)を用い、縦延伸した方向(長手方向)に0.5mにわたり等間隔に50点をサンプリングし、さらにフィルム幅方向(長手方向に直交する方向)にフィルム全幅にわたり等間隔(幅方向に50等分)に50点をサンプリングした後、これらの100点の厚みを測定した。これら100点の平均の厚みを求め、ポリエステルフィルムの厚みとした。
(4)DSCプレピーク温度ムラ(ΔTpp)
得られた2軸延伸ポリエステルフィルムについて、フィルムのTD方向の一方の端部から他方の端部の全幅に対して、均等に11点をサンプリングし、DSCプレピーク温度(Tpp)を測定した。測定された複数のTpp値の最大値と最小値の差(ΔTpp)を、DSCプレピーク温度のムラとした。
なお、DSCプレピーク温度は、株式会社島津製作所製のDSC−60に、サンプリングした試料片のフィルムを所定量(2〜10mg)セットし、10℃/minの昇温速度で、300℃まで昇温して測定した。ポリエステル(PET)の融解ピーク手前に現れる吸熱ピークのピーク温度をDSCプレピーク温度(Tpp)として読み取った。
(5)スジバリ判定
得られた2軸延伸ポリエステルフィルムについて、目視によりフィルム面のスジバリの程度を観察し、下記の評価基準に従って評価した。
<評価基準>
AA:スジバリの発生はほとんどみられなかった。
A:スジバリの発生が僅かにみられたが、フィルム面は良好であった。
B:スジバリの発生がみられたが、実用上は支障のない程度であった。
C:スジバリの発生が顕著にみられた。
(実施例2〜実施例9、及び、比較例1〜比較例4)
実施例1において、表1に示す条件を変更したほかは、いずれも同様にして、実施例2〜実施例9、及び、比較例1〜比較例4の2軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
また、得られた2軸延伸ポリエステルフィルムについて、実施例1の2軸延伸ポリエステルフィルムと同様の方法で、2軸延伸ポリエステルフィルムの物性評価およびスジバリ評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例5)
特開2009−149066号公報の実施例1に準拠して、2軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られた2軸延伸ポリエステルフィルムについて、実施例1の2軸延伸ポリエステルフィルムと同様の方法で、2軸延伸ポリエステルフィルムの物性評価およびスジバリ評価を行った。結果を表1に示す。
表1に示すように、実施例では、比較例との対比において、スジバリの発生が少なく抑えられていた。
2a〜2l・・・把持部材
10・・・予熱部
20・・・延伸部
30・・・熱固定部
40・・・熱緩和部
50・・・冷却部
60・・・環状レール
100・・・2軸延伸機
200・・・ポリエステルフィルム

Claims (9)

  1. 厚みが100μm以下であり、
    フィルム幅方向における、前記フィルム幅方向の単位距離あたりの、前記フィルム幅方向と直交する方向の0.05m間隔で測定した熱収縮率変化量x[%/m]の絶対値の最大値X[%/m]と、
    前記xの単位距離あたりの変化率yの絶対値の最大値Y[%/m]と
    が、下記式(I)および(II)を満たすポリエステルフィルム。
    0.01<X< 2.00 ・・・(I)
    0.1 <Y< 20.0 ・・・(II)
  2. 前記フィルム幅方向の中央部における、前記フィルム幅方向と直交する方向の熱収縮率が0.01%以上3%以下である請求項1に記載のポリエステルフィルム。
  3. 前記フィルム幅方向における、前記フィルム幅方向と直交する方向の熱収縮率のムラが、0.01%以上0.5%以下である請求項1または請求項2に記載のポリエステルフィルム。
  4. 前記フィルム幅方向における、示差走査熱量測定(DSC)で測定されるプレピーク温度のムラが0.5℃以上10℃以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
  5. ポリエステル原料樹脂をシート状に溶融押出し、キャスティングドラム上で冷却してポリエステルフィルムを成形するフィルム成形工程と、
    成形された前記ポリエステルフィルムを長手方向に縦延伸する縦延伸工程と、
    前記縦延伸後のポリエステルフィルムを延伸可能な温度に予熱する予熱部、予熱された前記ポリエステルフィルムを前記長手方向と直交する幅方向に緊張を与えて横延伸する延伸部、前記縦延伸及び前記横延伸を行なった後の前記ポリエステルフィルムを加熱し結晶化させて熱固定する熱固定部、前記熱固定されたポリエステルフィルムを加熱し、ポリエステルフィルムの緊張を緩和してフィルムの残留歪みを除去する熱緩和部、並びに、熱緩和後のポリエステルフィルムを冷却する冷却部に、前記ポリエステルフィルムをこの順に搬送して、前記縦延伸後のポリエステルフィルムを前記長手方向に直交する幅方向に横延伸する横延伸工程と、を含み
    前記熱固定部および前記熱緩和部の少なくとも一方において、前記幅方向のポリエステルフィルムの端部をヒーターにより選択的に輻射加熱し、かつ、前記冷却部において、ポリエステルフィルムの表面の温度を150℃から70℃まで冷却するときのフィルム幅方向端部における平均冷却速度を、フィルム幅方向の中央部における平均冷却速度の1.01倍〜2倍とするポリエステルフィルムの製造方法。
  6. 前記輻射加熱は、セラミック製ヒーターで行う請求項5に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
  7. 前記横延伸工程における前記ポリエステルフィルムの幅が最大になるときの前記ポリエステルフィルムの幅L1と、前記冷却部から前記ポリエステルフィルムが離れる前記冷却部の端部における前記ポリエステルフィルムの幅L2とが、下記式(1)を満たし、かつ、
    前記予熱部における前記ポリエステルフィルムの搬送速度S1と、前記冷却部の前記端部における前記ポリエステルフィルムの搬送速度S2とが、下記式(2)を満たす請求項5または請求項6に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
  8. 前記横延伸工程は、前記予熱部、前記延伸部、前記熱固定部、前記熱緩和部、及び前記冷却部を備え、前記予熱部において前記ポリエステルフィルムの幅方向の両端部を、片端部につき、少なくとも2つの把持部材を用いて把持して、前記予熱部から前記冷却部まで前記ポリエステルフィルムを搬送する2軸延伸装置を用い、
    前記予熱部における前記ポリエステルフィルムの幅方向の片端部を把持する前記把持部材と、該把持部材に隣接する把持部材との間隔よりも、前記冷却部における前記ポリエステルフィルムの幅方向の片端部を把持する前記把持部材と、該把持部材に隣接する把持部材との間隔を狭めることで、前記ポリエステルフィルムの搬送速度を小さくする請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
  9. 前記冷却部において、ポリエステルフィルムの表面の温度を150℃から70℃まで冷却するときの平均冷却速度を、2℃/秒〜100℃/秒の範囲とする請求項5〜請求項8のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
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