JP2012187546A - 水処理用樹脂担体の製造方法、及び水処理用樹脂担体 - Google Patents

水処理用樹脂担体の製造方法、及び水処理用樹脂担体 Download PDF

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Abstract

【課題】ホウ素吸着剤等として使用可能な、耐薬品性及び耐水性に優れ、水処理用の吸着性基を有する新規な水処理用の樹脂担体を提供する。
【解決手段】実施形態の水処理用樹脂担体の製造方法は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、エポキシ樹脂架橋剤、水処理用の吸着性基及び反応性基を有する化合物並びに金属水酸化物を、水溶性溶媒の存在下において加熱反応させ、前記金属水酸化物及び前記吸着性基を含有してなるエポキシ樹脂組成物を生成する第1の工程を含む。さらに、前記エポキシ樹脂組成物を水中に滴下することにより造粒し、前記金属水酸化物及び前記吸着性基を含有してなる樹脂担体を製造する第2の工程を含む。
【選択図】なし

Description

本発明の実施形態は、水処理用樹脂担体の製造方法に関する。
工業の発達や人口の増加により水資源の有効利用が求められている。そのためには、廃液の再利用が非常に重要である。これらを達成するためには水の浄化、すなわち水中から他の物質を分離することが必要である。
例えば、ホウ素はその特異な性質のため、半導体の製造や原子力発電所の制御棒、ガラスの製造など広い範囲で使用され、ハイテク産業において必要不可欠な元素である。しかしながらホウ素は人体に有害であり、神経毒性や成長阻害を引き起こすため、その排出規制は厳しいものとなっている。
1998年には世界保健機関(WHO)がその毒性評価を見直し、上水の水質基準を0.5 ppmに引き下げており、また日本でも2001年に水質汚濁防止法が制定され、排出基準が10 ppm以下に定められている。さらに、半導体製造工場で使用する純水なども極低濃度のホウ素含有水が望まれているなど、ホウ素除去に関してその技術は必要とされている。
水中において、ホウ素は主としてホウ酸イオンとして存在するが、その除去方法としては、膜による分離や、電気的分離、イオン交換、凝集沈殿などが知られている。この中でも特にランニングコストが少なく、汚泥が発生しにくい除去方法であるイオン交換が広く使用されている。イオン交換では、グルカミン型の吸着剤が知られており、このようなホウ素吸着剤としては、例えば特許文献1に記載のように、親水性であるグリシジルメタクリレートとポリオールのメタクリル酸エステルとからなる架橋型共重合体の基材中に、官能基としてポリヒドロキシルアルキルアミノ基を導入したイオン交換樹脂が提案されている。
しかしながら、上記イオン交換樹脂は、基材を構成するグリシジルメタクリレート中にアルカリ性の溶液に弱いエステル骨格を有するため、アルカリ性や酸性溶液中で分解してしまい耐薬品性に劣るといった問題がある。この結果、上記イオン交換樹脂に対して酸やアルカリを用いた再生処理等を施すことができず、上記イオン交換樹脂を用いて繰り替えし吸着操作を行うことができないという問題があった。また、ポリヒドロキシルアルキルアミノ基を有することからホウ素吸着能は高いものの耐水性に劣り、廃液と接触させてホウ素吸着を行う場合において、廃液中で分解したり溶解したりしてしまうなどの問題があった。
特開2003−64128号
本発明は、ホウ素吸着剤等として使用可能な、耐薬品性及び耐水性に優れ、水処理用の吸着性基を有する新規な水処理用の樹脂担体を提供することを目的とする。
実施形態の水処理用樹脂担体の製造方法は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、エポキシ樹脂架橋剤、水処理用の吸着性基及び反応性基を有する化合物並びに金属水酸化物を、水溶性溶媒の存在下において加熱反応させ、前記金属水酸化物及び前記吸着性基を含有してなるエポキシ樹脂組成物を生成する第1の工程を含む。さらに、前記エポキシ樹脂組成物を水中に滴下することにより造粒し、前記金属水酸化物及び前記吸着性基を含有してなる樹脂担体を製造する第2の工程を含む。
実施例における樹脂担体の顕微鏡断面写真である。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
(水処理用樹脂担体の製造方法)
<第1の工程>
本実施形態の水処理用樹脂担体は、最初に、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂架橋剤、水処理用の吸着性基及び反応性基を有する化合物並びに金属水酸化物を、水溶性溶媒の存在下において加熱反応させ、前記金属水酸化物及び前記吸着性基を含有してなるエポキシ樹脂組成物を生成する。
本実施形態で使用するエポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有することが必要である。これは、少なくとも1つのエポキシ基がエポキシ樹脂架橋剤の反応性基と反応してエポキシ樹脂の架橋反応を実行せしめること、及び少なくとも1つのエポキシ基が水処理用の吸着性基を有する化合物の反応性基と反応して、その吸着性基をエポキシ樹脂に付加させるために要求されるものである。
したがって、上記要件を満足するものであれば、エポキシ樹脂の種類は特に限定されるものではなく、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂等の汎用のエポキシ樹脂を使用することができる。
なお、本実施形態における水処理用樹脂担体の耐薬品性及び耐水性、並びに強度等の付随した特性は、当該担体を構成するエポキシ樹脂組成物、特にエポキシ樹脂及び以下に説明するエポキシ樹脂架橋剤による架橋度に起因するものである。
また、下記一般式(1)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂
Figure 2012187546
(上記一般式(1)中、R1 、R2 、R2'、R3 、R3'、R4 、R4'、R5及びR5'はそれぞれ1価の有機基を表わす。)を用いることもできる。
具体的には、4,4′−ビス( 2,3−エポキシプロポキシ)ビフェニル型エポキシ樹脂, 4,4′−ビス( 2,3−エポキシプロポキシ)−3,3′−5, 5′−テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂, 4,4′−ビス( 2,3−エポキシプロポキシ)−3, 3′−5, 5′−テトラメチル− 2−クロロビフェニル型エポキシ樹脂, 4,4′−ビス( 2,3−エポキシプロポキシ)−3, 3′−5, 5′−テトラメチル− 2−ブロモビフェニル型エポキシ樹脂, 4,4′−ビス( 2,3−エポキシプロポキシ)−3, 3′−5, 5′−テトラエチルビフェニル型エポキシ樹脂, 4,4′−ビス( 2,3−エポキシプロポキシ)−3, 3′−5,5′−テトラブチルビフェニル型エポキシ樹脂, 4,4′−ビス( 2,3−エポキシプロポキシ)−3, 3′−5, 5′−テトラフェニルビフェニル型エポキシ樹脂などが挙げられる。
このようなビフェニル型エポキシ樹脂は、耐水性等が高いだけでなく、耐熱衝撃性の点でもすぐれている。
さらに、下記一般式(2)で表される3官能型のエポキシ樹脂を用いることもできる
Figure 2012187546
(上記一般式(2)中、R6及びR7は1価の有機基であり、nは 0〜10の整数である。)。このようなエポキシ樹脂は、耐熱性及び耐水性の点で特に優れる。
上記3官能型のエポキシ樹脂としては、たとえばEPPN−502 (日本化薬社製,軟化点70℃,エポキシ当量 170),YL−932H(ジャパンエポキシレジン社製,軟化点63℃,エポキシ当量 171), ESX−221 (住友化学社製,軟化点85℃,エポキシ当量 210)などが挙げられる。
また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂を用いることもできる。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、ジャパンエポキシレジン株式会社製の製品名エピコート825,エピコート827,エピコート828,エピコート828EL,エピコート828XA,エピコート834,エピート801,エピコート801P,エピコート802,エピコート802XA,エピコート815,エピコート815XA,エピコート816A,エピコート819が該当する。また、大日本インキ化学株式会社製の製品名850−S,EXA−850CRP,830−S,EXA−830CRP,EXA−835LVが該当する。さらに、旭電化工業株式会社製の製品名EP−4100,EP−4100G,EP−4100E,EP−4100TX,EP−4300E,EP−4340が該当する。また、押出機ストランド加工性を考慮し、高分子量化したフェノキシタイプの使用も可能で、具体例としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製 1256,4250,4275,1256B40,1255HX30、東都化成株式会社製YP−50,YP−50S,YP−55U,YP−70,ZX−1356−2,FX−316,YPB−43C,YPB−43Mなどが挙げられる。
また、ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製の製品名エピコート806,エピコート806L,エピコート807を挙げることができる。さらに、旭電化工業株式会社製の製品名EP−4901,EP−4901E,EP−4950が該当する。
ビスフェノールAD型エポキシ樹脂としては、R−710(三井石油化学社製)を挙げることができる。
ビスフェノールS型エポキシ樹脂としては、エピクロンEXA−1515(大日本インキ化学工業社製)を挙げることができる。
また、下記化学式(3)で示されるジシクロペンタジエンエポキシ樹脂
Figure 2012187546
(上記化学式中、Rはそれぞれ水素原子又は炭素原子数1〜12のアルキル基を示し、nは1以上の整数を示す。)。
上記ジシクロペンタジエンエポキシ樹脂は、ジシクロペンタジエン及びフェノール化合物の重付加物にエピクロルヒドリンを反応させた反応物である。通常は、常温で固形であって、その具体例としては、大日本インキ工業(株)社製のHP−7200L,HP−7200,HP−7200H,HP7200HHなどや、その他、溶媒を含有したHP−7200−80M,HP−7200H−75Mなどが挙げられる。上記一般式において、上記品番の製品は、Rが水素原子で、nが0〜6の範囲で、平均官能基数(個/分子)が2.2〜3.3のものに相当している。
また、一般式(4)で表されるエポキシ樹脂、および一般式(5)で表されるフェノールアラルキル型エポキシ樹脂なども使用することができる。
Figure 2012187546
Figure 2012187546
一般式(4)及び(5)で示されるエポキシ樹脂は、特に耐水性に優れる。なお、これらのエポキシ樹脂は、アミノ基、アリル基、ビニル基、アクリル基等を主鎖に連結することによって、構造鎖を長くすることができる。
また、エポキシ樹脂架橋剤としては、フェノール樹脂又はポリヒドロキシスチレン等の汎用の架橋剤を用いることができる。
フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂及びレゾール樹脂を挙げることができる。
ノボラック型フェノール樹脂としては、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するものが好ましく、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、t-ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック樹脂等を挙げることができる。以上のフェノール樹脂のうち、造粒性、強度等の観点から、特にフェノールノボラック樹脂が好ましい。
上記フェノール樹脂の具体例としては、例えば、ショウノールBRG−555(昭和高分子(株)、軟化点68℃、溶融粘度 125℃で 2.4ps)、ショウノールBRG−556(昭和高分子(株)、軟化点80℃、溶融粘度 150℃で 1.8ps)、ショウノールBRG−557(昭和高分子(株)、軟化点87℃、溶融粘度 150℃で3.0ps)、ショウノールBRG−558(昭和高分子(株)、軟化点97℃、溶融粘度 150℃で 6.2ps)、ショウノールBRM−595M(昭和高分子(株)、分子量 :17,000〜30,000)、ショウノールCRM−990(昭和高分子(株)分子量 :12,000〜18,000)、CRMバーカムTD−2131(大日本インキ(株)、軟化点80℃、溶融粘度 150℃で 3.3ps)、バーカムTD−2093(大日本インキ(株)、軟化点 100℃、溶融粘度 150℃で30ps)等のノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。
ポリヒドロキシスチレンの具体例としては、丸善化学社製 マルカリンカーM,マルカリンカーMB,マルカリンカーPHM-Cなどが挙げられる。軟化温度143℃〜200℃で分子量2000〜20000のものが使用できる。また、アクリル酸系モノマー、メタクリル酸系モノマー、スチレン系モノマーなどと共重合されたものも使用可能である。具体例としては、マルカリンカーCMM、マルカリンカーCHM、マルカリンカーCSTなどが挙げられる。
これらのフェノール樹脂及びポリヒドロキシスチレン等の架橋剤の変性量により、架橋度が調整可能で、耐水性及び強度を制御することができる。なお、これら架橋剤の分子量は1000以上のものが好ましい。分子量が小さいと反応後の担体の耐水性及び強度が弱く、水中で破壊しやすい。
また、エポキシ樹脂架橋剤の配合割合はエポキシ樹脂に対する理論モル当量の30%以下の割合で配合させることが好ましい。例えば、エポキシ樹脂とフェノール樹脂とを反応させる場合において、フェノール水酸基とエポキシ基との反応が30%以下となるようにする。これは、エポキシ樹脂架橋剤の配合割合が理論モル当量の30%を越える、すなわちフェノール水酸基とエポキシ基とが30%を越えて反応すると、エポキシ樹脂における未反応のエポキシ基の割合が減少し、所定の吸着性基を有する化合物の反応性基と反応するエポキシ基の割合が減少して、上記吸着性基のエポキシ樹脂に対する付加量が減少してしまうことによる。
なお、エポキシ樹脂架橋剤の配合割合はエポキシ樹脂に対する理論モル当量の30%以下であることが好ましい。エポキシ樹脂架橋剤の配合量が5%よりも低くなると、エポキシ樹脂架橋剤の配合によるエポキシ樹脂の架橋度を充分に増大させることができず、耐薬品性、耐水性、強度等の諸特性を向上させることができない。好ましいエポキシ樹脂に対する理論モル当量の配合量の範囲は、30%〜5%%であり、さらに好ましくは25%〜7%である。
一方、上記観点から、エポキシ樹脂に対する吸着性基を有する化合物の配合割合は理論モル当量の70%以上であることが好ましい。この場合、エポキシ樹脂に対して上記吸着性基を充分な割合で付加させることができるので、上記吸着性基に起因した所定の水処理を充分効率的に行うことができる。なお、上記化合物の配合量の上限値は、上述したエポキシ樹脂架橋剤の下限値によって規定されるものであって、上述したエポキシ樹脂架橋剤の下限値5%に由来して、その上限値は理論モル当量の95%となる。好ましいエポキシ樹脂に対する吸着性基を有する化合物の範囲は、70%以上であり、さらに好ましく80%以上である。
さらに、金属水酸化物は水中滴下したときに、滴下ポリマーが水面に浮くことがなく、水中に球体として沈降し造粒に寄与するもので、その金属水酸化物の具体例としては、一般式 Mx(OH)y、で表される金属水酸化物が挙げられる。
具体的には、水酸化ジルコニウム、水酸化セリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄(Fe(OH)2, Fe(OH)3)、水酸化マンガン、水酸化アルミニウムなどが挙げることができる。
なお、上述した金属水酸化物の作用効果をより顕著に奏するようにするためには、金属水酸化物の添加量が、エポキシ樹脂に対して2質量%〜50質量%であることが好ましい。好ましい金属水酸化物の添加量は、5質量%〜40質量%である。
金属水酸化物の粒子サイズは0.5μm〜50μmであることが好ましく、さらには1μm〜10μmであることが好ましい。この範囲より粒子サイズが大きいと、以下に示す第2の工程でシリンジ加圧吐出装置を用いて水中滴下を実施した場合、ノズル詰まりが発生し易くなる。一方、上記範囲より粒子サイズが小さいと、水中滴下の際のエポキシ樹脂組成物の粘度が高くなって、シリンジ加圧吐出装置のノズルより吐出できなくなってしまう場合がある。
また、水処理用の吸着性基を有する化合物としては、目的とする水処理に供することのできる任意の吸着性基を有する化合物を用いることができる。但し、この化合物は、上述した説明からも明らかなように、エポキシ樹脂のエポキシ基と反応し、上記吸着性基をエポキシ樹脂に付加できるような反応性を有することが必要である。
例えば、廃液中のホウ素を吸着する場合においては、アミノポリオールを配合し、エポキシ樹脂に対してアミノポリオール基を付加させる必要がある。アミノポリオールとしては、分子中に少なくとも1個のアミノ基と2個以上の水酸基を有する化合物が使用される。具体的には、1−デオキシ−1−( メチルアミノ)ソルビトール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−2−( ヒドロキシメチル)−1 ,3−プロパンジオール、3−アミノ−1,2− プロパンジオール、2−アミノ−1 ,3− プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1 , 3− プロパンジオール、3−ジメチルアミノ−1 , 2−プロパンジオール、3−ジエチルアミノ−1 ,2− プロパンジオール等のポリヒドロアルキルアミンを挙げることができるが、これらの中、1−デオキシ−1− (メチルアミノ) ソルビトール[ 通称: N − メチルグルカミン] 及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンが特に有用である。
なお、上記アミノポリオールを、上記エポキシ基を介して反応させる際には、エポキシ基が開環して反応するようになる。
本実施形態においては、上述したように、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂架橋剤、水処理用の吸着性基を有する化合物及び金属水酸化物を、水溶性溶媒の存在下で加熱反応してエポキシ樹脂組成物を生成する。この際、水溶性溶媒は極性溶媒であるので、上述したエポキシ樹脂等を溶解して反応を均一に行うことができ、均一なエポキシ樹脂組成物が得られるとともに、後に説明する樹脂担体を製造する際の水中滴下によって、水と溶することによりエポキシ樹脂組成物から離脱し、上記樹脂担体を多孔質にするという作用効果を有する。
水溶性溶媒としては、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル2−ピロリドンなどが挙げられ、好ましくはジメチルスルホキシドである。熱処理による除去が難しい高沸点溶媒は好ましくない。
また、水溶性溶媒中での加熱反応は100℃以下、好ましくは50℃〜70℃の範囲内で行う。温度が高すぎると架橋反応が進行し、エポキシ樹脂組成物の粘度が急激に上昇してしまうため、後に説明する樹脂担体を製造する際にシリンジ加圧突出装置を用いる場合において、装置の先端に設けたノズルからエポキシ樹脂組成物が突出できなくなったり、線状に突出されたりするようになる。したがって、水中滴下による造粒を行うことができなくなる。
なお、上述した温度で加熱反応を行うことにより、例えばシリンジ加圧突出装置から水中滴下する際のエポキシ樹脂組成物の粘度を、当該装置のノズルから吐出させるのに適した、10Pa・S程度の粘度(25℃)とすることができる。
以上のような操作及び工程を経ることにより、目的とするエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
なお、このようにして得たエポキシ樹脂組成物に対しては、例えば鉄、および鉄を含む合金、磁鉄鉱、チタン鉄鉱、磁硫鉄鉱、マグネシアフェライト、コバルトフェライト、ニッケルフェライト、バリウムフェライト、などの磁性粒子を含有させることも可能である。この場合、最終的に得た樹脂担体を用いて水処理を実施した後に、磁力を用いて樹脂担体を回収することができるので、水処理後の樹脂担体の回収操作を簡略化することができる。
また、上記エポキシ樹脂組成物は、必要に応じて各種の添加物を含んでも良い。例えば、最終的に得る担体の強度を高めるため、アエロジルなどの微細シリカ、繊維状や層状の充填剤も併用することができる。
繊維状の充填剤としては、チタニア、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸カリウム、塩基性マグネシウム、酸化亜鉛、グラファイト、マグネシア、硫酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム、二ホウ化チタン、α−アルミナ、クリソタイル、ワラストナイトなどのウィスカー類、また、Eガラス繊維、シリカアルミナ繊維、シリカガラス繊維などの非晶質繊維の他チラノ繊維、炭化ケイ素繊維、ジルコニア繊維、γアルミナ繊維、α−アルミナ繊維、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維などの結晶性繊維などがある。
層状の化合物としてはハイドロタルサイト、タルク、層状酸化チタン、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、バイデライト、サポナイト、スチブンサイトなどの使用も可能である。これらの添加剤はエポキシ樹脂への分散性と樹脂担体の最終的な形状を考慮し、粒子サイズを調整し、使用することが可能である。
<第2の工程>
次に、本実施形態においては、上述のようにして得たエポキシ樹脂組成物を、必要に応じて加熱し、滴下できるような粘度とした後、水中に滴下することによって造粒し、上述した金属水酸化物及び吸着性基を含むエポキシ系の樹脂担体を製造する。上述したように、エポキシ樹脂組成物の水中滴下による造粒は、その内部に含まれる金属水酸化物に起因するものである。また、この造粒に際して、エポキシ樹脂組成物中に含まれる水溶性溶媒が水と溶してエポキシ樹脂組成物から抜けるようになるので、造粒して得られる樹脂担体は多孔質となる。
したがって、上記樹脂担体の水処理には、それを構成するエポキシ樹脂組成物に含まれる吸着性基の他に、その多孔質構造に起因した空隙による吸着も寄与するようになる。
なお、上記エポキシ樹脂組成物を水中に滴下するに際しては、シリンジ加圧吐出装置を用いることが好ましい。この装置は、滴下に要する圧力を精密に調整できる圧力レギュレーターを備え、先端には粒子を形作るためのノズルを装着している。ノズル形状は高粘度の材料まで吐出可能なテーパーノズルが好ましく、 ノズルサイズは造粒する粒子サイズにより適宜選択し使用することができる。また、吐出圧力は0.2MPa以下とすることができる。
上述のようにして樹脂担体を得た後は、適宜水洗を行って未反応物を除去する。
(水処理用樹脂担体)
本実施形態における水処理用樹脂担体は、上述のような製造方法によって得たものであるので、水処理用の吸着性基を含むエポキシ樹脂架橋体と、前記エポキシ樹脂架橋体中に分散した金属水酸化物とからなり、多孔質であることを特徴とする。また、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、エポキシ樹脂架橋剤、水処理用の吸着性基及び反応性基を有する化合物並びに金属水酸化物からなり、多孔質であることを特徴とする。
また、上述した製造方法に基づいて、エポキシ樹脂架橋剤の配合割合は、エポキシ樹脂に対する理論モル当量の5%以上30%以下となることが好ましく、エポキシ樹脂に対する吸着性基を有する化合物の配合割合は、理論モル当量の70%以上95%以下となることが好ましい。さらに、金属水酸化物の配合割合は、エポキシ樹脂に対して2質量%〜50質量%であることが好ましい。
次に、本実施形態における水処理の例として廃液中のホウ素を吸着する場合について述べる。この場合、上記製造方法において、吸着性基を有する化合物として例えばポリヒドロキシアミンを用い、エポキシ樹脂にポリヒドロキシアルキルアミノ基を付加させた樹脂担体を得る。
次いで、樹脂担体を、ホウ素を含む廃液中に分散させ、ホウ素吸着剤に対しホウ素の吸着を行う。あるいは、ホウ素吸着剤を所定のカラム中に充填し、このカラム内にホウ素を含む廃液を通水させることによってホウ素の吸着を行う。なお、樹脂担体は、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂組成物、すなわちエポキシ樹脂架橋体を含むので、耐水性及び強度に優れ、上述のように廃水に接触した際においても分解したりすることなく、ホウ素の吸着を良好な条件下で行うことができる。
ホウ素を吸着した後の樹脂担体は適宜再生処理する。この再生処理は、例えば硫酸等の薬剤を含む第1の再生液と、水酸化ナトリウム等の薬剤を含む第2の再生液とを準備し、最初に第1の再生液でホウ素吸着剤を処理して、ホウ素吸着剤より配位した陰イオン、すなわちホウ素を含む化合物陰イオンを脱離させ、その後、第2の再生液でホウ素吸着剤を処理して、その表面にOH基を生成するようにする。
なお、樹脂担体は、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂組成物、すなわちエポキシ樹脂架橋体を含むので、耐薬品性に優れ、上述のように酸やアルカリと接触させた場合においても分解したりすることなく、ホウ素の脱離を良好な条件下で行うことができる。
吸着すべきホウ素は、上述のように廃液中に含まれているので、一般には、廃液中のpHが酸性の領域においては、ホウ酸(HBO)の形態で存在するが、中性からアルカリ性の領域、すなわちpH=6〜11の範囲では、B(OH)4−、B(OH)4−、B(OH) 2−、B(OH) 2−等のポリマーイオンの形態で存在する。
したがって、樹脂担体によるホウ素の吸着に際して、廃液中のホウ素はこのようなポリマーイオンの形態で存在する方が、ポリヒドロキシアルキルアミノ基との反応性が向上する他、アミノポリオール基とのイオン交換能も向上する。このため、上述した樹脂担体によって廃液中のホウ素を吸着する際には、廃液のpHを上記6〜11の範囲に保つことが好ましい。
また、本実施形態における樹脂担体は、多孔質であってエポキシ樹脂を含むので、ホウ素吸着は、樹脂担体の多孔質な形態に依存した空隙への吸着、及びエポキシ基との反応によっても行われることになる。
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
オルソクレゾールノボラック樹脂(EOCN-104S日本化薬) 20g、ポリヒドロキシスチレン(マルカリンカーM S-2P)2gをジメチルスルホキシド 30gに溶解し、65℃で1時間反応させ、次いでN−メチルグルカミン14g、水酸化ジルコニウム20gを添加し、引き続き同じ65度で1時間反応させ、水酸化ジルコニウム及びN−メチルグルカミン基を含むエポキシ樹脂組成物を生成した。
次いで、上記エポキシ樹脂組成物を、ノズルサイズ250μmの滴下ノズルを装着したシリンジ加圧吐出装置に充填し、圧力0.1MPaで攪拌装置を備えた容器中の500mlの水中に滴下し造粒した。造粒時間は10分であった。その後、得られた樹脂担体を風乾し、さらに50℃で8時間乾燥した。
(実施例2)
オルソクレゾールノボラック樹脂に代えて、シクロペンタジエン型エポキシ樹脂(HP7200,日本化薬)を用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂担体を製造した。
(実施例3)
オルソクレゾールノボラック樹脂に代えて、ビフェニル型エポキシ樹脂(NC-3000H,大日本インキ)を用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂担体を製造した。
(実施例4)
オルソクレゾールノボラック樹脂に代えて、多官能エポキシ樹脂(EPPN-502H,大日本インキ)を用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂担体を製造した。
(実施例5)
ポリヒドロキシスチレンに代えて、フェノールノボラック樹脂(昭和高分子 BRG558)を用い、シリンジ加圧吐出装置の圧力を0.1MPaにした以外は、実施例1と同様にして樹脂担体を製造した。
(実施例6)
フェノールノボラック樹脂を2gから3gにした以外は、実施例5と同様にして樹脂担体を製造した。
(実施例7)
フェノールノボラック樹脂を2gから4gにした以外は、実施例5と同様にして樹脂担体を製造した。
(実施例8)
フェノールノボラック樹脂(昭和高分子 BRG558)に代えて、フェノールノボラック樹脂(昭和高分子 BRG558)2gを用いた以外は、実施例5と同様にして樹脂担体を製造した。
(実施例9)
水酸化ジルコニウム20gに代えて水酸化セリウム20gを用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂担体を製造した。
(実施例10)
水酸化ジルコニウム20gに代えて水酸化カルシウム20gを用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂担体を製造した。
(比較例1)
水酸化ジルコニウムを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして樹脂担体を製造した。
(比較例2)
ポリヒドロキシスチレンを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして樹脂担体を製造した。
以上のようにして得た樹脂担体に対して、以下に示す評価を実施し、その結果を表1及び表2に示した。
滴下造粒の状態
シリンジ加圧吐出装置から水中に滴下して得た樹脂担体の状態を観察した。造粒が出来たものをOKとし、造粒ができなかったものについてはコメントを付した。
粒子形状と粒子サイズ
乾燥した樹脂担体の形状観察とふるいによる粒子サイズとを測定した。
多孔質体の観察
内部の多孔状態の観察として、樹脂担体を透明エポキシ樹脂に注型し、表面研磨後、目視および顕微鏡観察により粒子の断面観察をおこなった。
粒子強度
プッシュプルゲージを用い、5個の樹脂担体の圧縮強度を測定し、平均値を示した。
攪拌処理後の粒子の状態
樹脂担体をローターミキサーで12時間攪拌し、粒子の形状変化、及び処理水への着色の有無を観察した。粒子の形状変化、及び処理水への着色がないものをOKとし、その他の場合についてはコメントを付した。
酸・アルカリ耐性
樹脂担体を、それぞれ50%硫酸及び50%NaOH溶液に一週間浸漬し、変質の有無を確認した。
ホウ素吸着試験
ホウ砂(Na2B4O7・10H2O)88.2 mgを500mlの純水に溶解し、20 ppm Bの濃度にして試験溶液を調整した。この溶液に樹脂担体を50 mg加え、NISSIN製ロータリーミキサーで回転速度16rpmにして撹拌した。1時間後の試験溶液中のホウ素濃度をCP発光分析装置にて測定を行い、残留ホウ素濃度から単位グラムあたりのホウ素吸着量(単位:mg-B/g)を算出した。
Figure 2012187546
Figure 2012187546
表1に示すように、実施例に係る樹脂担体は、滴下造粒も良好であり、粒子サイズが数百μmの球状であって、均一な空孔を有する多孔質体であることが判明した。一方、金属水酸化物を含まない比較例1の樹脂担体においては、滴下造粒を行うことができず、樹脂担体は膜状となることが判明した。また、エポキシ樹脂架橋剤を含まない比較例2の樹脂担体においては、滴下造粒を行うことができるものの、耐水性に劣り、一部が破壊あるいは水に溶解して団子状となるとともに、不均一な空孔を有する多孔質体しか得られないことが判明した。
また、表2から明らかなように、得られた樹脂担体は、表1に示す樹脂担体の形状等を反映し、実施例に係る樹脂担体は、粒子強度も高く、攪拌処理後においても形状劣化や破壊がなく、処理水への着色も見られなかった。また、酸及びアルカリへの耐性も良好であることが判明し、ホウ素吸着能も優れていることが判明した。一方、比較例に係る樹脂担体は、粒子強度が測定できない程度にもろく、また、攪拌処理後において破壊や処理水への着色が見られた。さらに、酸及びアルカリへの耐性もほとんどなく、ホウ素吸着能も極めて低いことが判明した。
なお、図1に、実施例1で得た樹脂担体の断面構造の顕微鏡写真を示す。図1から明らかなように、実施例で得た樹脂担体は、多孔質形状を有していることが分かる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として掲示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。

Claims (10)

  1. 1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、エポキシ樹脂架橋剤、水処理用の吸着性基及び反応性基を有する化合物並びに金属水酸化物を、水溶性溶媒の存在下において加熱反応させ、前記金属水酸化物及び前記吸着性基を含有してなるエポキシ樹脂組成物を生成する第1の工程と、
    前記エポキシ樹脂組成物を水中に滴下することにより造粒し、前記金属水酸化物及び前記吸着性基を含有してなる樹脂担体を製造する第2の工程と、
    を具えることを特徴とする、水処理用樹脂担体の製造方法。
  2. 前記第1の工程において、前記エポキシ樹脂架橋剤は、前記エポキシ樹脂に対する理論モル当量の30%以下の割合で添加することを特徴とする、請求項1に記載の水処理用樹脂担体の製造方法。
  3. 前記第1の工程において、前記化合物は、前記エポキシ樹脂に対する理論モル当量の70%以上の割合で添加することを特徴とする、請求項2に記載の水処理用樹脂担体の製造方法。
  4. 前記第1の工程において、前記金属水酸化物は、前記エポキシ樹脂に対して2質量%〜50質量%の範囲で添加することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載の水処理用樹脂担体の製造方法。
  5. 前記第1の工程において、前記エポキシ樹脂架橋剤の分子量が1000以上であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載の水処理用樹脂担体の製造方法。
  6. 前記第1の工程において、前記化合物は、ポリヒドロキシアルキルアミンであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一に記載の水処理用樹脂担体の製造方法。
  7. 前記第2の工程において、前記エポキシ樹脂組成物の水中への滴下は、シリンジ加圧突出装置を用いて行うことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一に記載の水処理用樹脂担体の製造方法。
  8. 水処理用の吸着性基を含むエポキシ樹脂架橋体と、前記エポキシ樹脂架橋体中に分散した金属水酸化物とからなり、多孔質であることを特徴とする、水処理用樹脂担体。
  9. 1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、エポキシ樹脂架橋剤、水処理用の吸着性基及び反応性基を有する化合物並びに金属水酸化物からなり、多孔質であることを特徴とする、水処理用樹脂担体。
  10. 前記金属水酸化物は、前記エポキシ樹脂に対して2質量%〜50質量%の範囲で含むことを特徴とする、請求項9に記載の水処理用樹脂担体。
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