JP2012182854A - 弾性表面波装置およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】特性劣化がなく、ウェハ工程にて一括に形成することができ、小型で低背な弾性表面波装置の製造方法を提供する。
【解決手段】弾性表面波装置は、圧電基板1と、前記圧電基板1の一方主面の上に形成され、櫛歯状電極を少なくとも1つ備えるIDT2と、前記一方主面の上において前記IDT2を覆うことによって前記一方主面とともに中空の収容空間7を形成する保護カバー6と、を備え、前記保護カバー6は、貫通穴15を有し、少なくとも一部がフッ素を含む酸発生材を含有する光硬化性材料からなる。貫通孔穴15は、保護カバー6の蓋部のうちIDT2と対向する位置に設けられている。
【選択図】図1

Description

本発明は、移動体通信機器等の無線通信回路に主に用いられる弾性表面波装置およびその製造方法に関し、特に表面実装可能な弾性表面波装置の小型化及びウエハプロセスでパッケージングまで行うことが可能な弾性表面波装置およびその製造方法に関するものである。
近年、移動体通信に用いられる携帯端末装置は小型化、軽量化が進むとともに、複数の通信システムに対応するマルチバンド化及び携帯端末装置の多機能化のため、内蔵する回路が増加してきている。そのため、使用される電子部品はその実装密度向上のため表面実装可能な小型部品が強く要望されている。
携帯端末装置のキーパーツとして弾性表面波装置がある。弾性表面波装置は、弾性表面波が励振される電極面近傍に中空部を設け、振動空間を確保するとともに、この振動空間を気密封止する必要がある。このような弾性表面波装置においても、低損失かつ通過帯域外の遮断特性とともに、表面実装可能な小型の弾性表面波装置が要求されている。
この小型化の要求に対して、圧電基板上に形成された弾性表面波を励振するIDT(Inter Digital Transducer)を囲むように保護カバーを形成して、弾性表面波の振動空間を確保したタイプの実装構造の弾性表面波装置が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)。
図8は、特許文献1、特許文献2に開示された弾性表面波装置を示す要部断面図である。図8に示すように、圧電基板51上に形成した弾性表面波素子のIDT52の周囲を枠体54で囲い、枠体54上に蓋体55を接合して保護カバー56を形成している。ここで、57は弾性表面波の振動空間、53はIDT52と外部回路との接続線を示す。枠体54および蓋体55の材料として、フィルム状のフォトレジスト、樹脂シート等が提案されている。
特開平9−246905号公報 特開平10−270975号公報
しかしながら、図8に示すように、枠体54形成後、蓋体55を形成したとき、蓋体55の材料として、少なくとも一部がフッ素を含む酸発生剤(材)を含有する光硬化性材料を用いた場合には、蓋体55から発生したフッ素が放出される経路が確保されていないので、残留フッ素の影響でIDT52にダメージが発生するため、弾性表面波装置の電気特性が劣化する問題があった。なお、フッ素を含む酸発生剤は、光硬化性材料に感光性を付与するためのものであり、一般に光硬化材料を用いた場合、その感光・硬化過程において材料が含有するフッ素を放出することは想定されておらず、このようなフッ素残留の問題点は発明者が鋭意検討する間に初めて見出されたものである。
従って、保護カバー形成時等に発生するフッ素がIDTに及ぼす影響を抑制できる弾性表面波装置およびその製造方法が提供されることが好ましい。
本発明の弾性表面波装置は、弾性表面波を伝搬させる圧電基板と、前記圧電基板の一方主面の上に形成され、前記弾性表面波の伝搬方向に直交する方向を長手方向とする複数の電極指を有する櫛歯状電極を少なくとも1つ備えるIDTと、フッ素を含む酸発生剤を含有する光硬化性材料により少なくとも一部が構成され、前記IDTを囲繞する枠部と前記枠部の上に備わる平板状の蓋部とを有し、前記一方主面の上において前記IDTの形成領域を覆うことによって前記一方主面とともに中空の収容空間を形成するとともに、前記収容空間を外部と連通させる一又は複数の貫通穴を有する保護カバーと、を備えているものである。
また、本発明の弾性表面波装置の製造方法は、所定の圧電基板の一方主面の上に、前記圧電基板における弾性表面波の伝搬方向に直交する方向を長手方向とする複数の電極指を有する櫛歯状電極を少なくとも1つ備えるIDTを形成するパターン形成工程と、フッ素を含む酸発生剤を含有する光硬化性材料を露光・現像することによって少なくとも一部が構成され、前記IDTを囲繞する枠部と前記枠部の上に備わる平板状の蓋部とを有する保護カバーを、前記一方主面の上において前記IDTの形成領域を覆うように設け、前記一方主面とともに中空の収容空間を形成する収容空間形成工程と、前記保護カバーに前記収容空間を外部と連通させる貫通穴を形成する貫通穴形成工程と、を備えるものである。
本発明によれば、保護カバー形成時等に発生するフッ素がIDTに及ぼす影響を抑制できる。
(a),(b)はそれぞれ本発明の弾性表面波装置の一例を示す断面図である。 本発明の弾性表面波装置の一例を示す断面図である。 本発明の弾性表面波装置の一例を示す透視図である。 本発明の弾性表面波装置の一例を示す透視図である。 (a)〜(e)は、それぞれ本発明の弾性表面波装置の製造方法の一例を示す工程毎の断面図である。 (a)〜(e)は、それぞれ本発明の弾性表面波装置の製造方法の他の例を示す工程毎の断面図である。 (a)〜(h)は、それぞれ本発明の弾性表面波装置の製造方法のさらに他の例を示す、図6(e)に続く工程の工程毎の断面図である。 従来の弾性表面波装置の一例を示す断面図である。 (a)〜(e)は、それぞれ本発明の弾性表面波装置の製造方法のさらに他の例を示す、図6(e)に続く工程の工程毎の断面図である。 図1(a)の弾性表面波装置の外観斜視図である。 図3の弾性表面波装置の外観斜視図である。 図4の弾性表面波装置の外観斜視図である。
以下、本発明の弾性表面波装置について、図面に基づいて詳細に説明する。
図1(a)は、本発明の弾性表面波装置の一例を示す断面図である。なお、以下の図面についても同様であるが、同じ部位には同じ符号を付し、重複する説明を省略している。また、図10は、図1(a)の弾性表面波装置の外観斜視図である。
図1(a)において、1は圧電基板,2は圧電基板1の一主面に形成された励振電極としてのIDT,3はIDT2に接続され、IDT2と外部回路とを接続するための接続線,6は、IDT2が形成された領域を囲む枠部と、その上面に載置され、IDT2が形成された領域を覆う蓋部とから構成される保護カバー、7はIDT2の振動を確保するための中空の収容空間、8はIDT2を保護する保護膜,15は保護カバー6に形成された貫通穴を示す。
図1(a)に示すように、本発明の弾性表面波装置は、弾性表面波を伝搬させる圧電基板1と、圧電基板1の一方主面の上に形成され、弾性表面波の伝搬方向(図1(a)の紙面左右方向)と直交する方向に長手方向を有する複数の電極指からなる櫛歯状電極を少なくとも1つ備えるIDT2(図3も参照)と、所定の光硬化性材料からなり、IDT2を囲繞する枠部と枠部の上に備わる平板状の蓋部とから構成され、一方主面の上においてIDT2の形成領域を覆うことによって一方主面とともに中空の収容空間7を形成する保護カバー6と、を備える。保護カバー6は、収容空間7と外部とを連通させる貫通穴15を有し、保護カバー6を構成する光硬化性材料は、少なくとも一部がフッ素を含む酸発生剤を含有するものである。
具体的には、以下のような構成とする。
圧電基板1は、例えばタンタル酸リチウム単結晶,ニオブ酸リチウム単結晶等の圧電性を有する単結晶基板である。
IDT2は、圧電基板1の一方の主面(図1(a)に示す断面の場合であれば上側の面、以下、単に上面と称することもある)の上に形成されてなり、1対または複数対の櫛歯状電極からなる。櫛歯状電極は、長手方向が圧電基板1の弾性表面波伝搬方向と直交するように複数の電極指を有し、それぞれの電極指が互いに噛み合うように形成されてなる。IDT2は、例えばAl−Cu合金等のAl合金によって形成される。弾性表面波装置は、所望の特性を得るため、複数のIDT2を直列接続や並列接続等の方式で接続することによってラダー型弾性表面波フィルタや2重モード弾性表面波共振器フィルタ等を構成する態様であってもよい。なお、厳密に言えば、IDT2の両端には、IDT2と同じく、長手方向が圧電基板1の弾性表面波伝搬方向と直交するように複数の電極指が設けられた櫛歯状電極を有する反射器が設けられる。ただし、本実施の形態においては、説明を簡単にするため、この反射器も含めてIDT2と称することとする。
接続線3は、圧電基板1の上に形成されてなる、IDT2を外部回路と接続するための信号線である。接続線3は、例えば、Al−Cu合金等のAl合金によって形成される。
IDT2と接続線3とはいずれも、スパッタリング法、蒸着法またはCVD(Chemical Vapor Deposition)法等の薄膜形成法により形成されたAl合金膜を、縮小投影露光機(ステッパー)とRIE(Reactive Ion Etching)装置とを用いたフォトリソグラフィ法等により所望の形状にパターニングすることによって形成することができる。
保護カバー6は、IDT2を囲繞する枠部と枠部の上に備わる平板状の蓋部とから構成され、IDT2の形成領域を覆うことによって、圧電基板1とともにIDT2を収容する中空の収容空間7が形成されるように、圧電基板1の上に設けられてなる部材である。ここで、収容空間7は、IDT2の電極指の振動空間として確保される空間であり、その大きさは、例えば、500μm(圧電基板1に沿う方向)×500μm(圧電基板1に沿う他の方向)×30μm(圧電基板1に直交する方向)である。保護カバー6の形成には、圧電基板1との間で十分な接合が実現される材料が用いられる。例えば、エポキシ系樹脂やポリイミド樹脂、BCB(ベンゾシクロブテン)、あるいはアクリル系樹脂などのネガ型の光硬化性材料を主たる材料として用いることができる。
ここで、保護カバー6の少なくとも一部を、酸発生剤を混合させたものによって形成するようにしている。ここで、酸発生剤とは、光照射または加熱に感応してプロトン(H)を発生させる物質である。例えば、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートを用いるのが好適な一例である。その他、ベンゾイントシレート、ベンゾインメシレート、ピロガロールトリトシレート、ピロガロールトリメシレート、トリ(ニトロベンジル)フォスフェート、トリアニソインフォスフェート、ジアリールヨードニウム塩、またはトリアリールスルホニウム塩なども適用可能である。保護カバー6は、このような酸発生剤のうち、例えば、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートのようなフッ素を含むものを少なくとも1種含む材料からなる。なお、酸発生剤としてはフッ素を含有しないものも存在するが、光を照射することにより重合を進めるために強酸を発生させることのできるフッ素を含有するものを用いることが好適である。ここで、上述のような酸発生剤は、保護カバー6の枠部のみに設けてもよいし、蓋部のみに設けてもよいし、それぞれの一部のみに設けてもよい。また、保護カバー6の構成材料である材料全体に付与してもよい。
そして、この保護カバー6の一部に貫通穴15を設ける。貫通穴15は、収容空間7を安定して保持するために数μm程度から50μm程度の大きさが好適である。なお、残留フッ素ガスの抜け性、収容空間7内の洗浄性を考えると、ひとつの収容空間7に対して、複数の(例えば2個以上の)貫通穴15を形成することが好ましい。また、貫通穴15の大きさは、IDT2を気密封止するために図2に示すような後述の封止樹脂11で塞ぐことを考慮した場合にも、数μm程度から50μm程度とすることが好ましい。このような貫通穴15は、例えば、枠部,蓋部を形成するときに同時にパターニングして設けてもよいし、枠部,蓋部を形成したあとに、エッチング等により一部を除去して設けてもよい。
なお、図1(a)及び図10では、複数の電極歯よりも少数の円形の貫通穴15が、複数の電極歯の配列方向に沿って1列に配列されている場合を例示している。ただし、貫通穴15の形状は、円形、矩形、長尺状(スリット状)など、適宜に設定されてよい。貫通穴15の数は、電極歯の数と同数であってよいし、電極歯の数よりも多くてもよい。複数の貫通穴15は、2列以上に配列されたり、不規則に配置されたりするなど、2次元的に配列されてよい。
このような構成とすることで、保護カバー6の貫通穴15により、保護カバー6から発生するフッ素のうち保護カバー6の内側(収容空間)内に充満するフッ素が大気へ放出される経路が確保できたり、空間内部を洗浄できたりするようになる。これにより、IDT2のダメージが発生することを抑え、弾性表面波装置の電気特性の劣化を抑制することができ、長期信頼性に優れた小型の弾性表面波装置を実現することができる。
また、保護カバー6を圧電基板1上に設けることより、弾性表面波装置を収容するセラミックパッケージ等が不要となり、小型な弾性表面波装置を提供することができる。
なお、図1(a)に示すように、圧電基板1の一方主面の上に形成され、IDT2に接続されるとともに保護カバー6の外側に端部3aを有する、IDT2と外部回路とを電気的に接続するための接続線3を設けてもよい。これにより、IDT2を封止した状態でIDT2と外部回路とを接続することができるものとなる。
なお、図1(a)に示す断面図においては、IDT2の長手方向に垂直な断面が示されるように(図面に垂直な方向が電極指の長手方向に一致するように)IDT2を図示するとともに、接続線3についてもその断面が示されるように図示しているが、弾性表面波装置におけるIDT2と接続線3との配置関係は、係る状態をみたす態様に限られるものではない。また、図1においては接続線3が圧電基板1の側端部にまで達する態様にて設けられている場合を示しているが、必ずしも係る配置態様に限定されるわけではない。なお、接続線3のIDT2に接続されていない側の端部3aをIDT2に接続されている側や、平面視で保護カバー6の枠部が配置される位置の線幅に比べて幅広にすれば、外部回路との接続が容易となり好ましい。
また、図1に示すように、IDT2を覆うように保護膜8を設けてもよい。保護膜8により、収容空間7内でIDT2とフッ素とが直接接触することを抑制することができ、より信頼性の高い弾性表面波装置を提供することができる。なお、保護膜8は、フッ素とIDT2との接触を抑制することができるが、弾性表面波に及ぼす影響が抑制されるように薄く形成されるので、フッ素とIDT2との接触を完全に防ぐものではない。このため、保護カバー6の貫通穴15と保護膜8との両方でIDT2を保護することが好ましい。保護膜8の厚さは、例えば、電極歯の厚さの1/10である。例えば、電極歯の厚さが100〜200nmの場合に、保護膜8の厚さは10〜20nmである。
さらに、図1に示すように、保護膜8を保護カバー6の枠部を配置する部位においても延在させることが好ましい。このような構成とすることで、接続線3と保護カバー6とが直接接触することを防止することができる。保護カバー6は、酸発生剤により重合が促進されて形成されるが、保護カバー6と導体材料とが接触していると、酸発生剤により発生したプロトンを導体材料が吸収してしまい導体材料と接触する部分における重合が不十分となる恐れがある。これに対して、図1に示す構成とすることで、接続線3を構成する導体材料が保護カバー6と接触することを防止できるので、保護カバー6を安定して形成できるとともに、保護カバー6を圧電基板1と(圧電基板1上に形成された保護膜8と)密着させることができる。
保護膜8は、絶縁性を有するとともに、伝搬する弾性表面波に影響を与えない程度に質量の軽い材料を用いる。例えば、酸化珪素、窒化珪素、あるいはシリコンなどを用いる。このような材料を、例えばCVD法などにより形成すればよい。
また、図1(b)に示すように、本発明の弾性表面波装置は、上記構成において、保護カバー6が、枠部を形成する枠体4と、蓋部を形成する枠体4の上に載置されたフィルム状の蓋体5とを接合することによって形成されてもよい。これにより、同様に保護カバー6の貫通穴15よりフッ素が大気へ放出される経路が確保され、IDT2のダメージが発生することなく、弾性表面波装置の電気特性の劣化が発生しない長期信頼性に優れた小型の弾性表面波装置を実現することができる。また、簡易な工程で確実に弾性表面波素子領域上の振動空間(収容空間7)を確保することができるものとなる。また、枠体4が、フッ素を含む酸発生剤を含む場合には、蓋体5が存在しない状態で、フッ素を放出する感光・硬化過程を行なうことから、枠体4から放出されるフッ素を少なくした後に蓋体5を形成できる。これにより、収容空間7内に残留するフッ素を少なくすることができ、より信頼性の高い弾性表面波装置を提供することができる。
なお、枠体4と蓋体5とは、異なる材料により形成してもよいが、両者の密着性を考慮して同じ材料で形成すれば、保護カバー6の強度を確保することができるとともに、両者の接合部に隙間等のない保護カバー6を構成できるので好ましい。
また、図1(b)のように、蓋体5としてフィルム状のものを用いる場合には、フィルム状で保持しつつ重合を促進させなくてはならないため、図1(a)に示す場合に比べて、より強酸を発生させる必要がある。このため、フッ素を含む酸発生剤の重要性がより高くなり、それに伴い貫通穴15の重要性も高いものとなる。
図2は、本発明の弾性表面波装置の一例を示す断面図である。図2において、10は外部接続用端子電極、11は封止樹脂、12は外部接続用電極を示す。
図2に示す弾性表面波装置は、図1(b)の構成に加えて、接続線3の端部3aの上に略柱状の外部接続用電極12を備え、外部接続用電極12の上端部分を露出させるとともに貫通穴15を塞いで保護カバー6と外部接続用電極12とを封止樹脂11で樹脂封止してなるものである。これにより、同様にIDT2の劣化を防止することができるとともに、さらにIDT2の振動空間(収容空間7)を確保した状態で樹脂封止することにより、気密封止され、外部からの水分の浸入を抑制することができるので、より信頼性の高いものとなる。また、略柱状の外部接続用電極12により表面実装することができるものとなり、取り扱いが容易となる。
図3は、本発明の弾性表面波装置の一例を示す透視状態の平面図である。図11は、図3の弾性表面波装置の外観斜視図である。
図3において、配置位置が明瞭となるように、枠体4の配置位置に斜線を付した。また、蓋体5は枠体4上および枠体4で囲まれる領域上に配置されており、蓋体5に設けられる貫通穴15の配置位置を点線で示した。
図3及び図11に示す構成は、図1(b)に示す構成と貫通穴15を設ける位置のみが異なるので、以下異なる部位のみについて説明する。
図3において、貫通穴15は、蓋体5のうち、IDT2の電極指の間隔が周囲の他の電極指の間隔に比べて狭くなっている領域(狭ピッチ領域)と対向する位置に形成されている。IDT2の電極指の狭ピッチ領域は、電極指の線幅自体も狭くなっており、残留フッ素が存在した場合には、フッ素との反応でIDT2の電極指ダメージが顕著に現れる。例えば、IDT2がアルミニウムからなる場合には、フッ素と反応することにより生成されるフッ化アルミニウムにより電気特性が劣化するのみならず、反応により体積が膨張し、隣り合う電極指同士が接触することもある。しかしながら、蓋体5の、このような狭ピッチ領域と対向する箇所に、すなわち、狭ピッチ領域の直上部に貫通穴15を設けることにより、その影響を抑制することができ、長期信頼性に優れた弾性表面波装置を提供することができる。
また、図3に示すように、保護膜8を設けた場合であっても、保護膜8の非形成部,ヒビ等の欠陥部からのフッ素の浸入を防ぐために貫通穴15を設け、さらにその位置を図3に示す部位とすることが有効である。なぜならば、IDT2の電極指の間隔が狭くなっている領域は、圧電体基板1の焦電性により電荷がたまりやすくなっており、スパークして保護膜8に欠陥を生じる可能性が高いからである。このように他の部位に比べて、スパークにより保護膜8からIDT2が露出する可能性が高い位置と対向する部位に貫通穴15を設け、収容空間7の内部に残留するフッ素を排出することで、より信頼性の高い弾性表面波装置を提供することができる。
なお、図3及び図11では、貫通穴15が長方形に形成されている場合を例示しているが、貫通穴15の形状等が適宜に設定されてよいことは、上述のとおりである。
図4は、本発明の弾性表面波装置の一例を示す透視状態の平面図である。図12は、図4の弾性表面波装置の外観斜視図である。図3と同様に、枠体4の配置位置に斜線を付している。図4においても、図1(b)に示す構成と貫通穴15を設ける位置のみが異なるので、以下異なる部位のみについて説明する。
図4において、枠体4は、平面視で、IDT2を囲繞する形状の一部に隙間を有し、隙間を貫通穴15とするものである。
これにより、枠体4の貫通穴15を通してフッ素を放出することができるので、IDT2のダメージが発生することを抑え、弾性表面波装置の電気特性の劣化が発生しにくい長期信頼性に優れた小型の弾性表面波装置を実現することができる。さらに、蓋部5および枠部4の一部に貫通穴15が形成されている場合、保護カバー6形成後、水洗工程により、流路が確保され、積極的にフッ素を除去することが容易となり、フッ素によるIDT2のダメージを少なくすることができる。特に枠体4に貫通穴15が設けられている場合には、蓋体5のみに貫通穴15が形成されている場合に比べて、水洗時の水分が収容空間7の底に残留することなく排出することができるので、より信頼性を高めることができる。枠体4に設けられた貫通穴15の厚み方向の大きさ(圧電基板1の主面に直交する方向における直径)は、枠体4の圧電基板1もしくは圧電基板1上に設けられた保護膜8を露出するように、枠体4の厚み(高さ、圧電基板1の主面に直交する方向における大きさ)と同程度の大きさとすることが好ましい。収容空間7の底部に水洗時の水分が残留することを抑制するためである。図4においては、蓋体5および枠体4の両方に貫通穴15が形成された例を示したが、枠体4のみに貫通穴15が形成された構成の保護カバー6を用いてもかまわない。また、図12では、枠体4に形成された貫通穴15が矩形に形成されている場合を例示したが、貫通穴15の形状等が適宜に設定されてよいことは上述のとおりである。
なお、図4に示すように、枠体4に配置される貫通穴15を、IDT2が形成された領域を囲繞する形状のうち、平面視で互いに対向する位置に対となるように設けることで、水洗時の流路がより抵抗の少ないものとなるので好ましい。貫通穴15は、蓋体5に設ける場合には平面視で、枠体4に設ける場合には側面からみたときに、数μm程度から50μm程度の大きさが好適である。
次に、本発明の弾性表面波装置の製造方法について図面に基づいて詳細に説明する。
図5(a)〜(e)は、それぞれ本発明の弾性表面波装置の製造方法の一例を示す工程毎の断面図である。
図5において、16は圧電基板の下面に形成された裏面電極を示す。
次に各工程毎に説明する。
(A工程:パターン形成工程)
図5(a)に示すように、まず、所定の圧電基板1の一方主面の上に、圧電基板1における弾性表面波の伝搬方向と直交する方向に長手方向を有する複数の電極指からなる櫛歯状電極を少なくとも1つ備えるIDT2と、IDT2に接続されIDT2と外部回路とを電気的に接続する接続線3とを形成する。
具体的には、例えばタンタル酸リチウム単結晶,ニオブ酸リチウム単結晶等の圧電性を有する単結晶から成る圧電基板1の一主面上に、弾性表面波を発生させるための励振電極であるIDT2と,IDT2に接続された接続線3とを形成する。これら、IDT2,接続線3は、例えばAl−Cu合金等のAl合金から成る。IDT2,接続線3は、スパッタリング法、蒸着法またはCVD法等の薄膜形成法により形成され、縮小投影露光機(ステッパー)とRIE(Reactive Ion Etching)装置とを用いたフォトリソグラフィ法等によりパターニングされて所望の形状を得る。
このように、圧電基板1上にIDT2,接続線3が形成された領域を弾性表面波素子領域とする。
また、裏面電極16は、例えばAl−Cu合金等のAl合金から成る。裏面電極16は、スパッタリング法、蒸着法またはCVD(Chemical Vapor Deposition)法等の薄膜形成法により形成される。裏面電極16は圧電基板の裏面全面に形成され、これにより、温度変化により圧電基板表面にチャージした電荷を接地することが可能となり、スパーク等による圧電基板の割れや電極間のスパーク等の問題を防ぐことができる。
次に図5(b)に示すように、IDT2等の酸化等を防ぐために、IDT2及び接続線3を酸化珪素,窒化珪素,シリコン等から成る保護膜8で覆う。保護膜8は、CVD法または蒸着法等の薄膜形成法により形成される。また、外部回路と接続するために、フォトリソグラフィ法により接続線3の少なくとも一部(端部)が露出するように保護膜8の一部を除去する。
(B工程:収容空間形成工程1)
次に図5(c)に示すように、弾性表面波素子領域の上方の部分に、犠牲層7aを形成する。犠牲層7aは、いったんは形成するものの後段の工程においてエッチングあるいは溶解等の処理によって除去される層である。犠牲層7aは、例えば二酸化珪素等の酸化珪素,アモルファスシリコン,フォトレジスト,あるいはその他ポリマー材料等によって形成することができる。ここでは、二酸化珪素にて犠牲層7aを形成する場合について説明する。
係る場合、犠牲層7aは、TEOS(テトラエチルオルトシリケート),TEB(テトラエチルボートレート),TMOP(テトラメチルオキシフォスレート)等の原料ガスを用いてプラズマCVD法により形成する方法や、スパッタリング法等の真空プロセスを用いる等の方法で形成することができる。
あるいは、ポリシランの感光性を利用して犠牲層7aを形成することも可能である。ポリシランは珪素(Si)原子が鎖状につながった珪素系高分子であり、これに紫外光を照射することにより−Si−Si−結合が光分解し、珪素結合間に酸素原子が配置されたシロキサン結合部位や、酸サイトとして作用するシラノール基が生成される。これをアルカリ性現像液に浸漬すると、シラノール基が生成された部位は現像液に溶解する。すなわち紫外線露光部分を選択的に形成することにより該露光部分のみを溶解除去することができ、任意の平面形状が加工可能である。現像後、再び十分な強度の紫外線を照射して全面を露光した後に、再び酸素雰囲気中で加熱することで、紫外線に反応して珪素間の結合が切れた部位に酸素原子が入り込むことによって酸化珪素膜が形成される。なお、ポリシランの側鎖に修飾される修飾基としては、プロピル基,ヘキシル基,フェニルメチル基,トリフルオロプロピル基,ノナフルオロヘキシル基,トリル基,ビフェニル基,フェニル基,シクロヘキシル基等の種々のものが適宜選択可能である。
また、アモルファスシリコンにて犠牲層7aを形成する場合であれば、HやSiH等の原料ガスを用いてプラズマCVD法により形成する方法や、スパッタリング法等の真空プロセスを用いる等の方法で形成することができる。
犠牲層7aを形成した後、エポキシ系樹脂やポリイミド樹脂、BCB(ベンゾシクロブテン)、あるいはアクリル系樹脂等のネガ型の感光性レジストによってスピンコート法などの手法で図5(d)に示すように犠牲層7aを覆い、露光・現像を行うことによって、保護カバー6を形成する。その際、保護カバーの少なくとも一部にフッ素を含む酸発生剤が含有されるようにする。保護カバー6全体がフッ素を含む酸発生剤を含有する感光性レジストで形成される態様であってもよい。
また、図5(d)では、保護カバー6の枠部を保護膜8上に形成している。これにより、保護カバー6の枠部が酸発生剤を有する場合であっても、電極材料のように酸発生剤が硬化するときに発生するプロトンを吸収することがないので、保護カバー6の枠部と保護膜8との間でも良好に硬化が進み、接合の信頼性が向上するので好ましい。
(C工程:収容空間形成工程2,貫通穴形成工程)
さらに、この保護カバー6に貫通穴15を形成する貫通穴形成工程を行ない、次に、貫通穴15を介して犠牲層7aを除去する犠牲層除去工程を行うことによって、図2(e)に示すように、保護カバー6と圧電基板1との間にIDT2の振動空間としての収容空間7を形成する。
貫通穴15は、通常のフォトリソグラフィ法によりパターニングすればよい。貫通穴15は、その縦断面形状が、収容空間7側の開口が狭くなったテーパー状となっていることが好ましい。これにより封止樹脂11を形成する際に、封止樹脂11が貫通穴15から収容空間7に入り込みにくくなる。
貫通穴15を介して犠牲層7aを除去する方法としては、犠牲層7aをアモルファスシリコンで形成した場合であれば、ドライエッチングあるいはウェットエッチングによる選択的エッチングの手法を適用することができる。例えば、XeF(フッ化キセノンガス)を用いたドライエッチングやフッ硝酸を用いたウェットエッチング等によって犠牲層を除去することができる。また、犠牲層7aを二酸化珪素で形成した場合であれば、フッ酸蒸気によるドライエッチングやバッファフッ酸内に浸漬することによるウェットエッチングなどの手法が利用できる。
このB工程、C工程で収容空間形成工程をなす。なお、貫通穴15は、保護カバーを露光・現像してパターニングする際に、同時にパターニングするようにしてもよい。このように、収容空間形成工程と貫通穴形成工程との順番は必ずしもこの順に行なう必要性はない。
以上の工程を経ることにより、図1(a)に示すような、電気特性の劣化が生じることが防止された、長期信頼性に優れた弾性表面波装置を作製することができる。
次に、本発明の弾性表面波装置の製造方法の他の例について、図6を用いて説明する。図6において、17は第2レジストを示す。なお、図6は図5とA工程部分は同じであるため、重複する説明は省略して、図5と異なるB’工程(図6(c)〜(d)),C’工程(図6(e))について説明する。
(B’工程:収容空間形成工程)
図6(c)に示すように、所定の光硬化性材料からなる第1レジストでIDT2を囲繞する枠部4を形成する(枠部形成工程)。第1レジストとしては、例えば、エポキシ系樹脂やポリイミド樹脂、BCB(ベンゾシクロブテン)、アクリル系樹脂等を用いることができる。第1レジストを、圧電基板1の弾性表面波素子領域上に、例えばスピンコート法,印刷法等で形成する。次に、露光・現像工程を経て、第1レジストをIDT2が形成された領域を取り囲む枠体4にする。ここで、枠体4は、その厚みを数μmから30μm程度とすればよい。特に、後の工程で設ける蓋体5の撓み等を考慮すると、蓋体5と収容空間の底面とが接触しないように、10μm以上の厚さが好ましい。
また、図6(c)では、枠体4を保護膜8上に形成している。これにより、枠体4が酸発生剤を有する場合であっても、電極材料のように酸発生剤が硬化するときに発生するプロトンを吸収することがないので、枠体4と保護膜8との間でも良好に硬化が進み、接合の信頼性が向上するので好ましい。
次に、図6(d)に示すように、枠体4の上に備わる平板状の蓋体5とから構成される保護カバー6を、一方主面の上においてIDT2の形成領域を覆うように設けることによって、一方主面とからなる中空の収容空間7を形成する(蓋部形成工程)。具体的には、枠体4の上面にフィルム状の第2レジスト17を載置してIDT2が形成された領域を覆う。第2レジスト17としては、例えば、エポキシ系樹脂やポリイミド樹脂、BCB(ベンゾシクロブテン)、アクリル系樹脂等を用いることができる。この第2レジスト17はフィルム状であり、枠体4の上面に第2レジストを載置するだけで圧電基板1との間に空間を形成することができる。第2レジスト17を載置するには、貼り付け機を用いて枠体4の上面に貼り付ければよい。
(C’工程:貫通穴形成工程)
次に、図6(e)に示すように、保護カバー6に貫通穴15を形成する(貫通穴形成工程)。具体的には、図6(d)の状態から露光・現像工程を経て、第2レジスト17にて弾性表面波素子領域を覆う蓋体5を形成する。それと同時に、図6(d)の状態から露光・現像工程を経て、第2レジスト17の所定の位置に貫通穴15を形成する。その後、枠体4と蓋体5とを加熱により接合させて保護カバー6とする(接合工程)。接合するための加熱温度は、例えば枠体4、蓋体5にエポキシ系樹脂を用いた場合であれば、150℃程度とすればよい。この保護カバー6により、収容空間(振動空間)を確保することができるとともに、IDT2を封止することができるのでIDT2の酸化等を防ぐことができる。
このようなA工程〜C’工程により、弾性表面波装置を製造することができる。このような工程で製造することにより、犠牲層7aを用いる必要がないので、図5に示す犠牲層7aを用いた場合のように、犠牲層7aを除去する際にエッチャントやエッチングによる残留生成物が、形成した中空構造の内部(収容空間)に残ることがなく、弾性表面波装置の電気特性の特性劣化が発生することを防止できる。その結果、弾性表面波装置の信頼性をより向上させることができる。また、犠牲層7aを用いることなく、収容空間を形成することができるので、犠牲層7aの形成・除去のために必要だった工程が不要となり、収容空間を形成するための工数を少なくすることができ、生産性の高いものとすることができる。
また、他の方法として、枠体4形成後に、別の基体上に形成した蓋体5を貼り合わせて保護カバー6を形成する方法が考えられるが、この場合と比較して、枠体4と蓋体5との貼り合わせに必要な厳しい貼り合わせ精度を要求されることがなく、さらに工程数が増加することもない。
図6に示す例では、枠体4を例えばスピンコート法等で成膜後パターニングして形成しているが、圧電基板1の一方主面の上に枠体4を載置することによって形成してもよい。
枠体4を形成する第1レジストとしてフィルム状のものを用いた場合には、フィルムを載置するだけで、均一な厚みの枠体4を形成することができるので、フィルム状の第2レジスト17を枠体4上に隙間なく載置することができる。このため、簡易な工程で確実に弾性表面波素子領域上の空間を封止することができるものとなる。さらに、フィルム状の第1レジストと第2レジスト17とを同一材料とすれば、枠体4と蓋体5とを加熱して接合した場合に両者を一体化することができ、その接合界面もなくなるので密着強度、気密性を向上させることができ、高信頼性の弾性表面波装置を製造することができる。特に、第1,第2レジストの材料としてエポキシ系樹脂を用いて、100℃から200℃の範囲で加熱した場合にはより重合が促進されるため、密着強度、気密性が向上し好ましい。
次に、本発明の弾性表面波装置の製造方法のさらに他の例について、図7に基づき説明する。
図7(a)〜(h)はそれぞれ、本発明の弾性表面波装置の製造方法のさらに他の例を示す、図6(e)に続く工程の工程毎の断面図である。
図7に示す製造方法は、接続線3の端部3aの上に略柱状の外部接続用電極12(単に柱状部12ということもある)を形成し、外部接続用電極12の上端部分を露出させるとともに貫通穴15を塞いで保護カバー6と外部接続用電極12とを樹脂封止するものである。次に、各工程毎に具体的に説明する。
(D工程:電極形成工程1)
まず、図7(a)に示すように、図6(e)に示す状態から、貫通穴15が設けられた保護カバー6が形成された弾性表面波素子領域を覆うメッキ用下地層23を形成する。
メッキ用下地層23は、略柱状の外部接続用電極12を電気的に析出させたり、化学的に析出させたりする為に使用するものである。メッキ用下地層23の一部は後段の工程でも残り電極の一部として機能する。そのため、略柱状の外部接続用電極12と同一の材料を使用することが好ましい。なお、これらには一般的には、Cuが利用されるが、CuとAlCu配線の密着性を考慮するとCrやTiの密着層を介在させることが好ましい。
メッキ用下地層23は、略柱状の外部接続用電極12を形成する領域を含めた圧電基板1の全面に、例えばTi−Cu等を用いて形成する。このようなメッキ用下地層23により、メッキ用下地層23を介して、例えば電気メッキ法にて外部接続用電極12となる銅等の金属を厚く形成することができる。なお、保護カバー6を含む圧電基板1の上面全体にメッキ用下地層23を形成する場合、少なくとも外部接続用電極12を形成する位置において、その上に外部接続用電極の柱状部12を確実に形成することができる程度にメッキ用下地層23が形成されていればよい。
このようなメッキ用下地層23を、特に、フラッシュメッキ法により形成する場合には、メッキ形成部位のみに電流を流すための配線パターンを形成する必要がない為、チップの小型化が可能となる。
なお、このようにメッキ用下地層23を形成する場合には、メッキ成分である金属が、貫通穴15から収容空間7内へ浸入し、IDT2が形成された領域に付着しないようにする。
そのためには、例えば、貫通穴15の大きさを小さくしたり、貫通穴15をIDT2と対向しない位置に設けたり、保護カバー6の上面に絶縁層(不図示)を設けて貫通穴15を塞いだ後にメッキ用下地層23を形成したりすればよい。
(E工程:電極形成工程2)
次に、図7(b)に示すように、メッキ用下地層23上に、保護カバー6の外側に位置する接続線3上に開口部26を有するメッキ用レジスト24を形成する。
メッキ用レジスト24は、たとえば、スピンコート等の手法で形成される。なお、使用するレジストの粘度やスピンコートによる塗布回数により、レジストの厚さを数μmから数百μmまでコントロールすることが可能となる。また、レジスト24の開口部26は一般的なフォトリソグラフィ法を利用することが好ましい。
(F工程:電極形成工程3)
次に、図7(c)に示すように、開口部26内に露出するメッキ用下地層23上に、メッキ法により略柱状の外部接続用電極12を形成する。
略柱状の外部接続用電極12は、電気メッキ法,無電解メッキ法,スタッドバンプ法等により形成することもできる。好ましくは電気メッキ法が好適である。これは略柱状の外部接続用電極高さの自由度が高く、下地膜との密着性が良好なためである。特に、メッキの厚さはメッキ処理時間に依存することから、30μmを超える厚みを形成する場合には、成長速度が速い電気メッキ法が好ましい。外部接続用電極12の形成材料としては、例えば、はんだ、Cu、Au、Niを用いることができる。特にCuやはんだを用いた場合には、工程が安価となり好ましい。
また、外部接続用電極12は、その上面が保護カバー6の上面よりも高い位置となるように形成する。これは、後段の工程で封止樹脂11の上部を除去する際に、保護カバー6が封止樹脂11に覆われた状態で外部接続用電極12の上面を露出させるためである。
(G工程:電極形成工程4)
次に、図7(d)に示すように、略柱状の外部接続用電極12を残し、メッキ用レジスト24とメッキ用下地層23とを除去する。メッキ用レジスト24はアセトンやIPA等の有機溶剤やジメチルスルフォキシド等のアルカリ性有機溶剤により除去が可能である。さらに、メッキ下地層23のCuは塩化第2鉄や燐酸と過酸化水素水の混合液により除去が可能である。また、メッキ用下地層23のTiは希フッ酸やアンモニアと過酸化水素水の混合液で除去が可能である。中でも、メッキ用下地層23の下層に形成されているSiO膜やAlCu配線へのダメージが少ないものとすれば、Tiの剥離にはアンモニアと過酸化水素水の混合液の使用が好ましい。
なお、上述のようにメッキ用レジスト24を除去して外部接続用電極12を露出させた後に、メッキ用下地層23を除去する際、外部接続用電極12の下面に位置するメッキ用下地層23は外縁部が一部除去されるものの、それ以外は残存する。すなわち、メッキ用下地層23の除去に際して柱状部12が除去されることはない。
このようなD工程〜G工程までで電極形成工程を構成する。
(H工程:封止工程1)
次に、図7(e)に示すように、弾性表面波素子領域上に、貫通穴15を塞いで保護カバー6と略柱状の外部接続用電極12とを覆う封止樹脂11を形成する。
封止樹脂11材料としては、エポキシ系樹脂が好適である。特に線膨張係数が圧電基板1に近いものを使用したり、また、弾性率が低いものを使用したりして、圧電基板1に加わる応力が少ないものを使用するのが良い。また、封止樹脂11内に気泡が混入すると水蒸気爆発の原因ともなる為、真空印刷法により印刷することも好適である。なお、樹脂の厚さは、略柱状の外部接続用電極12が覆われる程度が好ましい。
貫通穴15の径が数μm〜50μm程度の場合、封止樹脂11の樹脂材料としては、粘度が3000〜5000cp程度のものを使用するとよい。これにより樹脂材料が貫通穴15に入りこみにくくなり封止樹脂11が収容空間7に入るのを抑制することができる。
(I工程:封止工程2)
次に、図7(f)に示すように、封止樹脂11の上面を研削して、略柱状の外部接続用電極12を露出させる。
具体的には、封止樹脂11の上面を、グラインダーにより研磨刃を用いて略柱状の外部接続用電極12が露出するまで研磨する。後述する外部接続用端子電極10と略柱状の外部接続用電極12とを良好に接続するために、バフ研磨等により仕上げ加工を加えても良い。
このH工程,I工程で封止工程を構成する。
好ましくは、このように封止樹脂11が得られた時点で、引き続き、図7(g)に示すように保護層22を形成する。
保護層22は、製造時及び製造後における弾性表面波装置の耐衝撃性を向上させる目的で設けられる。すなわち、保護層22を設けることで、弾性表面波装置の割れ、カケ等の不良の発生が抑制され、製造歩留まりの向上や、信頼性の向上が実現される。また、圧電基板1の底面部が、保護された構造となっているので、圧電基板1と封止樹脂11の界面から水分が浸入してくることを防止し、気密性、耐湿性を向上させた弾性表面波装置を実現することができる。
保護層22は、封止樹脂11と熱膨張係数が略同一の材料で形成することが好ましい。係る場合、封止樹脂11のみが設けられた場合に生じる封止樹脂11による応力が緩和されることから、応力に起因する圧電基板1の反りが発生することを抑制できる。すなわち、より信頼性の高い弾性表面波装置を実現することができる。特に、エポキシ系樹脂材料を用いれば、SiO等のフィラーを添加させることにより熱膨張係数をコントロールできるとともに、透湿性が低く、且つ吸水性が高いため、圧電基板1にかかる応力を上下面で相殺することができるとともに、弾性表面波装置への水分の浸入を抑制することができるので好適である。
また、係る保護層22の形成は、裏面電極16の形成後であればどのタイミングにおいて行うことも可能であるが、上述のように、圧電基板1の上面に封止樹脂11を形成した後に行えば、圧電基板1と封止樹脂11との間の熱膨張係数の違いにより圧電基板1に加わる応力を打ち消すことができ、より信頼性の高い弾性表面波装置を実現することができるので好ましい。
(J工程)
次に、図7(h)に示すように、略柱状の外部接続用電極12の上面に外部接続用端子電極10を形成する。
外部接続用端子電極10は、PbSn半田,鉛フリー半田,AuSn半田,AuGe半田等の半田を用いてバンプを形成してもよいし、導電性を有する材料で薄膜を形成しフラットなパッドを形成してもよい。例えば、クリーム半田を略柱状の外部接続用電極12の上部にスクリーン印刷しリフローすることにより外部接続用端子電極10を形成することができる。
このようなD工程〜J工程を経ることにより、封止樹脂11の上面に露出する略柱状の外部接続用電極12上に外部接続用端子電極10を形成することで、表面実装可能な弾性表面波装置を提供することができる。また、このような弾性表面波装置をウエハレベルで形成することができるので、複雑な工程を経ることなく弾性表面波装置を提供することができる。さらに、弾性表面波装置を実装する実装基板に応じて外部接続用電極12を形成する材料を選択することができるので、実装基板との接合信頼性を向上させることができる。
また、本発明の弾性表面波装置の製造方法により製造した弾性表面波装置を分波器に適用した場合、略柱状の外部接続用電極12を放熱用電極としても用いることができ、IDT2における発熱箇所の近傍に略柱状の外部接続用電極12を配置することにより、放熱性に優れた弾性表面波装置を提供することができる。また、この略柱状の外部接続用電極12の配置、本数、径を工夫することで放熱性を向上させることができる。
以上のようにして本発明の弾性表面波装置の製造方法により、ウェハレベルで弾性表面波装置を形成することができるので、チップ化された弾性表面素子を個別に組み立てる必要がなくなる。このため、処理能力の小さいダイボンダー、シーム溶接機等の組立装置が不要となり、大幅な製造工程の簡略化を達成することができ、量産性を高めることができる。
そして、以上のようにして本発明の弾性表面波装置の製造方法により作製した弾性表面波装置は、小型で低背化された弾性表面波装置を実現することができ、信頼性の高い弾性表面波装置を実現することができる。
なお、G工程において、図7(d)に示すように、略柱状の外部接続用電極12を保護カバー6よりも高くなるように形成し、I工程において、図7(f)に示すように、保護カバー6が封止樹脂11に覆われた状態で封止樹脂11の上面に外部接続用電極12を露出させることが好ましい。このようにすることで、弾性表面波素子領域上から保護カバー6の最上部までの高さに比べ、弾性表面波素子領域上から略柱状の外部接続用電極12の最上部までの高さを大きくすることができる。これにより、弾性表面波装置の励振する弾性表面波の振動空間を確保するための保護カバー6の気密性を十分に確保することができる。
さらに、E工程において、メッキ用レジスト24は、レジスト材料を複数回塗布・硬化を繰り返して形成することが好ましい。このように、複数回に分けてメッキ用レジスト24を形成することにより、被覆性,取り扱い性等に考慮して適宜調整したレジスト材料を用いて、所望の厚みのメッキ用レジスト24を形成することができるので、生産性を高くすることができる。また、メッキ用レジスト24を所望の厚さに形成することができるので、所望の高さの略柱状の外部接続用電極12を形成させることが可能となる。
特に、レジスト材料を保護カバー6の最上部とほぼ同じ高さまで塗布・硬化させた後に、所望の厚みを得るようにさらに塗布・硬化を繰り返す場合には、メッキ用レジスト24の上面を平坦なものとすることができるので好ましい。
次に、本発明の弾性表面波装置の製造方法のさらに他の例について、図9に基づき説明する。
図9(a)〜(e)はそれぞれ、本発明の弾性表面波装置の製造方法のさらに他の例を示す、図6(e)に続く工程の工程毎の断面図である。図7と同様の箇所には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
(K工程:封止工程1)
図9(a)に示すように、図6(e)に示す状態から、貫通穴15が設けられた保護カバー6が形成された弾性表面波素子領域を覆う封止樹脂11を形成する。
封止樹脂11は貫通穴15を塞いで、保護カバー6の圧電基板1からの高さに比べて厚く形成される。なお、樹脂溶液を塗布した後に硬化させて封止樹脂11を得る場合には、貫通穴15を塞ぐために、ベーク時に貫通穴15内に流れ込まないような粘度を有する樹脂溶液を使用すればよい。また、図9(a)に示すように、封止樹脂11を設けるときに、圧電基板1の裏面にも封止樹脂11を構成する材料とほぼ同じ熱膨張係数を有する保護層22を設けることが好ましい。
(L工程:封止工程2,電極形成工程1)
次に、図9(b)に示すように、接続線3の端部3aの上に位置する封止樹脂11の一部を除去して、接続線3を露出させる。封止樹脂11の一部を除去するには、通常のフォトリソグラフィ技術によりパターニング加工してもよいし、レーザー加工によりパターニングしてもよい。レーザー加工で封止樹脂11の一部を除去するときには、導電性材料からなる接続線3がストッピング層の機能を有するので、接続線3を露出させた段階でレーザー加工を停止させることができる。なお、レーザーとしてはCO,UVYAG,エキシマレーザ等を使用することが好ましい。
(M工程:電極形成工程2)
次に、図9(c)に示すように、電解メッキ法により外部接続用電極12を形成する。
(I’工程:封止工程3)
次に、図9(d)に示すように、図7(f)と同様に、外部接続用電極12が封止樹脂11の上面に露出するように、封止樹脂11を研削する。
(J’工程)
次に、図9(e)に示すように、図7(g)と同様に、封止樹脂11の上面に露出する外部接続用電極12上に外部接続用端子電極10を形成して、本発明の弾性表面波装置が形成できる。
なお、図9において、K工程,L工程,I’工程で封止工程を構成し、L工程,M工程で電極形成工程をなす。また、上述のように、封止工程の途中で電極形成工程を設けても何ら問題はない。
図9に示すように形成することで、貫通穴15がある場合であっても収容空間7内のIDT2に影響を与えることなくIDT2を封止できるとともに、IDT2を収容空間の外部に引き出して、IDT2が封止された状態で表面実装可能な弾性表面波装置を簡易な製法で提供することができる。
1:圧電基板
2:IDT
3:接続線
4:枠体
5:蓋体
6:保護カバー
7:中空の収容空間
8:保護膜
10:外部接続用端子電極
11:封止樹脂
12:外部接続用電極
15:貫通穴

Claims (6)

  1. 弾性表面波を伝搬させる圧電基板と、
    前記圧電基板の一方主面の上に形成され、前記弾性表面波の伝搬方向に直交する方向を長手方向とする複数の電極指を有する櫛歯状電極を少なくとも1つ備えるIDTと、
    フッ素を含む酸発生剤を含有する光硬化性材料により少なくとも一部が構成され、前記一方主面の上において前記IDTの形成領域を覆うことによって前記一方主面とともに中空の収容空間を形成するとともに、前記収容空間を外部と連通させる一又は複数の貫通穴を有する保護カバーと、
    を具備する弾性表面波装置であって、
    前記保護カバーは、前記IDTを囲繞する枠部と前記枠部の上に備わる平板状の蓋部とを有し、
    前記一又は複数の貫通穴は、前記蓋部のうち、前記IDTと対向する位置に設けられている弾性表面波装置。
  2. 請求項1に記載の弾性表面波装置であって、
    前記貫通穴を塞ぐ封止樹脂をさらに備える弾性表面波装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の弾性表面波装置であって、
    前記一方主面の上に形成され、前記IDTに接続されるとともに前記保護カバーの外側に端部を有する、前記IDTと外部回路とを電気的に接続するための接続線と、
    前記圧電基板の一方主面に設けられ、少なくとも前記IDTを覆う保護膜とをさらに備え、
    前記枠部は前記保護膜上に配置されている弾性表面波装置。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の弾性表面波装置であって、
    前記貫通穴は、縦断面形状が前記収容空間側の開口が狭くなるようにテーパ状となっている弾性表面波装置。
  5. 弾性表面波装置の製造方法であって、
    所定の圧電基板の一方主面の上に、前記圧電基板における弾性表面波の伝搬方向に直交する方向を長手方向とする複数の電極指を有する櫛歯状電極を少なくとも1つ備えるIDTを形成するパターン形成工程と、
    フッ素を含む酸発生剤を含有する光硬化性材料を露光・現像することによって少なくとも一部が構成され、前記一方主面の上において前記IDTの形成領域を覆うことによって、前記一方主面とともに中空の収容空間を形成する保護カバーを形成する収容空間形成工程と、
    前記保護カバーに前記収容空間を外部と連通させる貫通穴を形成する貫通穴形成工程と、
    を有する弾性表面波装置の製造方法であって、
    前記収容空間形成工程が、
    前記一方主面の上に配置された前記酸発生剤を含有する光硬化性材料を露光・現像して前記IDTを囲繞する枠体を形成する枠部形成工程と、
    前記枠体の上にフィルム状の蓋体を設ける蓋部形成工程と、
    前記枠体と前記蓋体とを接合して前記保護カバーを形成する接合工程と、
    を有し、
    前記貫通穴形成工程において、
    前記貫通穴を、少なくとも前記IDT電極と対向する位置に形成する弾性表面波装置の製造方法。
  6. 請求項5に記載の弾性表面波装置の製造方法であって、
    前記貫通穴を塞ぐエポキシ系樹脂からなる封止樹脂を形成する封止工程をさらに有する弾性表面波装置の製造方法。
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