JP2012180601A - アルカリ易溶出性ポリエステルからなる海島複合断面繊維 - Google Patents
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Abstract
【課題】複合界面の剥離を抑制することができ、毛羽、糸切れ等を大幅に改善することができる海島型複合断面繊維、及び当該海島複合繊維中に含まれるポリエステルを溶解除去して得られる極細ポリアミド繊維を提供する。
【解決手段】主たる繰返し単位がエチレンテレフタレートより構成され、全酸成分に対し金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分が2.0〜5.5モル%、全酸成分に対するアジピン酸成分が3.0〜6.0モル%含まれるポリエステルであって、ポリエステルに可溶なチタン化合物をチタン元素換算で3〜10ppm含有し、リン化合物をリン元素換算で5〜40ppm含有するアルカリ易溶出性ポリエステルを海成分、ポリアミドを島成分とした海島型複合断面繊維である。
【選択図】なし
【解決手段】主たる繰返し単位がエチレンテレフタレートより構成され、全酸成分に対し金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分が2.0〜5.5モル%、全酸成分に対するアジピン酸成分が3.0〜6.0モル%含まれるポリエステルであって、ポリエステルに可溶なチタン化合物をチタン元素換算で3〜10ppm含有し、リン化合物をリン元素換算で5〜40ppm含有するアルカリ易溶出性ポリエステルを海成分、ポリアミドを島成分とした海島型複合断面繊維である。
【選択図】なし
Description
本発明は、海島型複合断面繊維に関するものである。
ポリカプロアミドやポリヘキサメチレンアジパミドに代表されるポリアミド繊維や、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートに代表されるポリエステル繊維は、力学特性や寸法安定性に優れるため、衣料用途のみならずインテリアや車両内装、産業用途等幅広く利用されている。
繊維に吸着性(吸湿性、吸水性、消臭性等)やソフト性を付与することを目的とした極細繊維を溶融紡糸するに際し、単糸直径がミクロンサイズの繊維については、紡糸口金設計に主眼を置いた単独ポリマーでの溶融紡糸でも得ることができるが、さらに極細の繊維については、易溶解性ポリマーとの複合紡糸をして複合断面繊維を得て、易溶解性ポリマーを溶解除去して得るのが主流である。
例えば、ポリアミドと脂肪族ポリエステルとからなり、脂肪族ポリエステルの少なくとも一部を繊維表面に露出するように配置させた複合断面繊維とし、この複合断面繊維から織物を得、その織物から脂肪族ポリエステルを溶解除去し、ポリアミド極細繊維を得る方法が開示されている(特許文献1)。この他にも、ポリ乳酸を海成分、ポリアミドを島成分とし、島直径、及び島間隔が均一な海島型複合断面繊維を得た後、この複合断面繊維から海成分を溶解除去し、繊維直径が均一なポリアミド極細繊維を得る方法が開示されている(特許文献2)。しかしながら、特許文献1、2に記載の方法では、いずれもポリアミドとの相溶性の乏しいポリマーの組み合わせであり、界面剥離しやすいため、この方法では製糸工程での海島複合界面の剥離による毛羽の発生の問題があった。
ポリアミド極細繊維を得るのに好適な海島型複合断面繊維を得るのに際し、特許文献1に記載のポリアミドと相溶しない易溶解性ポリマーとの組み合わせや、特許文献2に記載の単純な島直径の均一性、島成分の分布を規定した方法のみでは、製糸工程での海島複合界面での剥離を抑制するのは極めて困難であった。そこで、安定した溶融紡糸が可能で、かつ高次通過性も良好な、ポリアミド極細繊維を得るのに好適な海島型複合断面繊維が求められている。
本発明は、従来海成分として用いていたポリエステルでは島成分のポリアミドとの親和性が悪いため問題となっていた製糸時の複合界面の剥離を抑制することができ、毛羽、糸切れ等を大幅に改善することができる海島型複合断面繊維、及び当該海島複合繊維中に含まれるポリエステルを溶解除去して得られる極細ポリアミド繊維を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
(1)主たる繰返し単位がエチレンテレフタレートより構成され、全酸成分に対し金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分が2.0〜5.5モル%、全酸成分に対するアジピン酸成分が3.0〜6.0モル%含有することを特徴とするアルカリ易溶出性ポリエステルを海成分、ポリアミドを島成分とした海島型複合断面繊維。
(2)ポリエステルに可溶なチタン化合物をチタン元素換算で3〜10ppm含有し、リン化合物をリン元素換算で5〜40ppm含有するアルカリ易溶出性ポリエステルを用いた前記(1)記載の海島型複合断面繊維。
(3)ポリエステルと前記ポリアミドの重量比が、5:95〜40:60の範囲にあることを特徴とする前記(1)または(2)記載の海島型複合断面繊維。
(4)伸度が30〜50%であって、繊維糸条の長さ1万m当たりの毛羽数が0〜2個であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の海島型複合断面繊維。
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の海島型複合断面繊維を少なくとも一部に有する布帛。
(6)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の海島型複合断面繊維をアルカリ処理することにより、ポリエステルが溶解除去して形成される極細ポリアミド繊維。
(7)前記(6)に記載の極細ポリアミド繊維を少なくとも一部に有する布帛。
(8)前記(6)に記載の極細ポリアミド繊維を少なくとも一部に有する繊維製品。
(1)主たる繰返し単位がエチレンテレフタレートより構成され、全酸成分に対し金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分が2.0〜5.5モル%、全酸成分に対するアジピン酸成分が3.0〜6.0モル%含有することを特徴とするアルカリ易溶出性ポリエステルを海成分、ポリアミドを島成分とした海島型複合断面繊維。
(2)ポリエステルに可溶なチタン化合物をチタン元素換算で3〜10ppm含有し、リン化合物をリン元素換算で5〜40ppm含有するアルカリ易溶出性ポリエステルを用いた前記(1)記載の海島型複合断面繊維。
(3)ポリエステルと前記ポリアミドの重量比が、5:95〜40:60の範囲にあることを特徴とする前記(1)または(2)記載の海島型複合断面繊維。
(4)伸度が30〜50%であって、繊維糸条の長さ1万m当たりの毛羽数が0〜2個であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の海島型複合断面繊維。
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の海島型複合断面繊維を少なくとも一部に有する布帛。
(6)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の海島型複合断面繊維をアルカリ処理することにより、ポリエステルが溶解除去して形成される極細ポリアミド繊維。
(7)前記(6)に記載の極細ポリアミド繊維を少なくとも一部に有する布帛。
(8)前記(6)に記載の極細ポリアミド繊維を少なくとも一部に有する繊維製品。
本発明によれば、製糸時の複合界面の剥離を抑制することができ、毛羽、糸切れ等を大幅に改善することができる。
また、本発明の海島型複合断面繊維中に含まれるポリエステルは金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分を共重合し、さらにアジピン酸成分を共重合させることにより、アルカリ溶出性が向上するため、アルカリ溶出速度が速く、工業的にも有利である。
本発明の海島型複合断面繊維中に含まれるポリエステル溶解除去してポリアミド極細繊維とすることにより、従来の合成繊維にはない優れた特性を得ることができる。特にソフト感に極めて優れた肌触りの良い布帛が得られたり、また、繊維比表面積が大きくなるといったことから吸着性能、例えば、吸湿性等にも優れたポリアミド極細繊維が得られる。
本発明の海島型複合断面繊維は、アルカリ易溶出性ポリエステルが海成分、ポリアミドが島成分の海島型複合断面繊維である。
本発明に用いられるポリアミドは、いわゆる炭化水素基が主鎖にアミド結合を介して連結された高分子量体からなる樹脂であって、かかるポリアミドとしては、染色性、機械特性に優れており、アルカリ易溶出性ポリエステルとの複合溶融紡糸に好適な、主としてポリカプロアミド(ナイロン6)からなることが好ましい。ここで言う「主として」とは、ポリカプロアミドを構成するε−カプロラクタム単位として全モノマー単位中80モル%以上であることを言い、さらに好ましくは90モル%以上である。その他の成分としては、特に限定されないが、例えば、ポリドデカノアミド、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンアゼラミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリヘキサメチレンドデカノアミド、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリヘキサメチレンテレフタラミド、ポリヘキサメチレンイソフタラミド等を構成するモノマーである、アミノカルボン酸、ジカルボン酸、ジアミン等の単位が挙げられる。
また、ポリアミドの重合度は、海島型複合断面繊維、海島型複合断面繊維中に含まれるアルカリ易溶出性ポリエステルを溶解除去して得られるポリアミド極細繊維維、あるいはそれらの加工品の要求特性、またはそれらを安定して得るために適当な範囲より適宜選択して良いが、好ましくは25℃での98%硫酸相対粘度で2.0〜3.6の範囲であり、さらに好ましくは2.4〜3.3の範囲である。
本発明の海島型複合断面繊維の海成分に用いるポリエステルは、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体をエステル化または、エステル交換反応させた後に得られるポリエチレンテレフタレートを基本骨格とする。
そのポリエチレンテレフタレートは、全酸成分に対し金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分を2.0〜5.5モル%、全酸成分に対するアジピン酸成分を3.0〜6.0モル%含むアルカリ易溶出性ポリエステルである。
アルカリ易溶出性ポリエステルは、全酸成分に対するアジピン酸成分を3.0〜6.0モル%含むことがアルカリ溶出性、ポリアミドとの親和性を有するために必須である。さらに好ましくは4.0〜5.5モル%である。3.0モル%より少ないと、得られるポリエステルの色調や耐熱性は良好であるが、複合界面での剥離が生じ、アルカリに対する溶出性も低下する。6.0モル%より多いと得られるポリエステルの耐熱性が劣るため、製糸性が悪くなる。
アルカリ易溶出性ポリエステルにおけるアジピン酸成分を構成する単量体には、アジピン酸もしくはアジピン酸のエステル形成誘導体が用いられる。例えば、アジピン酸形成誘導体としては、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル、エチレングリコールエステル等のアジピン酸形成誘導体を用いることが出来る。このアジピン酸成分は、原料調達が容易という点から、アジピン酸やアジピン酸ジメチルが好ましい。
アルカリ易溶出性ポリエステルは、全酸成分に対して金属スルホネート基を含有するイソフタル酸性分を2.0〜5.5モル%含むことが、良好なアルカリ溶出性を有するために必須である。さらに好ましくは2.0モル%から3.0モル%である。2.0モル%より少ないと、得られるポリエステルの色調や耐熱性は良好であるが、アルカリに対する溶出性が低下する。5.5モル%より多いと、得られるポリエステルの耐熱性が劣るため、製糸性が悪くなる。
アルカリ易溶出性ポリエステルの金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分を生成する単量体には、公知の金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分を使用することが出来るが、好ましくは、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルである。
アルカリ易溶出性ポリエステルは、ポリエステルに可溶なチタン化合物をチタン元素換算で3〜10ppm含有することが好ましい。さらに好ましくは4〜8ppmである。3ppmより少ないと、重合反応活性が不足し反応が遅延してしまい、得られるポリエステルが黄味に着色する。10ppmより多いと、重合反応の活性は良好であるが、高活性のため得られるポリエステルの色調や耐熱性が悪化する。
アルカリ易溶出性ポリエステルに可溶なチタン化合物としては、チタン錯体であることが好ましく、錯体を形成するキレート剤としては、多価アルコール、多価カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、含窒素カルボン酸などが好ましく挙げられ、これらは1種以上で用いることが、得られるポリエステルの色調や耐熱性の観点から好ましい。
アルカリ易溶出性ポリエステルに可溶なチタン化合物のキレート剤の具体例は、多価アルコールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、マンニトール等が挙げられ、多価カルボン酸として、フタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ヘミリット酸、ピロメリット酸等が挙げられ、ヒドロキシカルボン酸として、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等が挙げられ、含窒素カルボン酸として、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、カルボキシイミノ二酢酸、カルボキシメチルイミノ二プロピオン酸、ジエチレントリアミノ酸、トリエチレンテトラミノ六酢酸、イミノ二酢酸、イミノ二プロピオン酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二プロピオン酸、メトキシエチルイミノ二酢酸等が挙げられる。これらのチタン化合物は単独で用いても、併用して用いても良い。なお繊維等で一般的に使用される酸化チタンは、ポリエステルに可溶ではないため本発明でいうチタン化合物からは除外される。
アルカリ易溶出性ポリエステルは、リン化合物をリン元素換算で5〜40ppm含有することが好ましい。さらに好ましくは9〜35ppmである。リン元素換算で5ppmより少ないと、アジピン酸成分と金属スルホネート基を含有するイソフタル酸性分が共重合されているためポリエステルの分解反応が促進されやすく、得られるポリエステルの色調や耐熱性が悪化する。リン元素換算で40ppmより多いと、重合反応触媒が失活するため重合反応活性が低下し、重合反応が遅延してしまい、得られるポリエステルが黄味に着色する。
リン化合物としては、(式1)〜(式5)にて表されるリン化合物を用いることが出来る。この(式1)または(式2)で示されるホスホナイト化合物ならびに(式3)で示されるホスフェイト化合物を用いると、アジピン酸成分と金属スルホネート基を含有するイソフタル酸性分が共重合されているにもかかわらず、アルカリ易溶出性ポリエステルは溶融紡糸時の色調のさらなる改善や耐熱性に優れる点で好ましい。
(上記(式1)中、R1〜R2は、それぞれ独立に、水酸基または炭素数1〜20の炭化水素基を表している。)
(上記(式2)中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水酸基または炭素数1〜20の炭化水素基を表している。)
(上記(式3)中、R1〜R3は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の炭化水素基を表している。)
ポリエステルの着色や耐熱性の悪化は、飽和ポリエステル樹脂ハンドブック(日刊工業新聞社、初版、P.178〜P.198)に明示されているように、ポリエステル重合反応の副反応によって起こる。このポリエステルの副反応は、金属触媒によってカルボニル酸素が活性化し、β水素が引き抜かれることにより、ビニル末端基成分およびアルデヒド成分が発生する。このビニル末端基によりポリエンが形成されることによってポリエステルが黄味に着色し、また、アルデヒド成分が発生するために、主鎖エステル結合が切断されるため、耐熱性が劣ったポリエステルとなる。特に、アジピン酸成分や金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分をポリエステル骨格に有している場合、金属触媒によるカルボニル酸素への配位が容易に起こりやすく、β水素が引き抜かれやすくなり、ビニル末端機成分およびアルデヒド成分が発生しやすい。このビニル末端基により、ポリエンが形成されることによってポリエステルが黄味に着色し、また、アルデヒド成分が発生するために、主鎖エステル結合が切断されやすくなるため、耐熱性や色調が劣ったポリエステルとなる。
またチタン化合物を重合触媒として用いると、熱による副反応の活性化が強いために、ビニル末端基成分やアルデヒド成分が多く発生し、黄味に着色した耐熱性が劣ったポリエステルとなる。リン化合物は、重合触媒と適度に相互作用することにより、重合触媒の活性を調節する役割を果たすばかりか、アジピン酸成分や金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分のカルボニル酸素へのチタン化合物の配位を起こりにくくする。
アルカリ易溶出性ポリエステルの(式1)または(式2)のホスホナイト化合物および(式3)のホスフェイト化合物を用いると、チタン化合物の重合活性を充分に保持したまま、ポリエステルの耐熱性や色調を飛躍的に向上させることができるため好ましい。
中でも下記の(式4)で表されるリン化合物を用いると、ポリエステルの色調や耐熱性に優れる。
(上記(式4)中、R5〜R7は、それぞれ独立に、水酸基または炭素数1〜10の炭化水素基を表している。なお、炭化水素基は脂環構造、脂肪族の分岐構造、芳香族構造、水酸基および2重結合を1つ以上含んでいても良い。また、a+b+c=0〜5の整数である。)
上記(式4)にて表されるリン化合物としては、例えばaが2、bが0、cが0、R5がtert−ブチル基、R5が2,4位の化合物として、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4‘−ジイルビスホスホナイトがあり、この化合物はIRGAFOS P−EPQ(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)または、Sandostab P−EPQ(クラリアント・ジャパン製)として入手可能である。
中でも、(式5)で表されるリン化合物であることが、得られるポリエステルの色調や耐熱性が特に良好となるため好ましい。
(上記(式5)中、R8〜R10は、それぞれ独立に、水酸基または炭素数1〜10の炭化水素基を表している。なお、炭化水素基は脂環構造、脂肪族の分岐構造、芳香族構造、水酸基および2重結合を1つ以上含んでいても良い。)
上記(式5)にて表されるリン化合物としては、R8がtert−ブチル基、R9=tert−ブチル基、R10がメチル基の化合物として、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−イルビスホスホナイトがあり、この化合物はGSY−P101(大崎工業製)として入手可能である。
さらには、(式3)にて表されるリン化合物として、R1〜R3が全てメチル基であるトリメチルホスフェイトであることが、得られるポリエステルの色調や耐熱性が良好となるため好ましい。この化合物はTMP(大八化学製)として入手可能である。
アルカリ易溶出性ポリエステルは、真比重5以上の元素を実質的に含まないことが好ましい。真比重5以上の元素とは、例えば、重合触媒として一般的に使用されているアンチモン元素や、エステル交換触媒として一般的に使用されるコバルト元素やマンガン元素である。
上記の実質的に含まないとは、含有量が10ppm以下であることを表し、好ましくは5ppm、さらに好ましくは3ppm以下である。
その他、本発明の目的を損なわない範囲で公知の添加物を含有することが出来る。例えば、水酸化テトラエチルアンモニウム(以下、EAH)や酢酸リチウム(以下、LAH)などのジエチレングリコール(以下、DEG)の副生抑制剤、酢酸マグネシウム等の金属酢酸塩に代表されるエステル交換反応触媒や、IR1010などに代表されるラジカル捕捉剤、酸化チタンに代表される艶消し剤などである。特に、EAHの含有量は窒素換算で125ppm以下が好ましく、さらに好ましくは40ppm以下である。
LAHの含有量は、リチウム元素として15〜70ppmが好ましく、25〜55ppmがより好ましい。これらDEGの副生抑制剤は併用も出来る。
エステル交換反応触媒として使用される酢酸マグネシウムは、マグネシウム元素の真比重が5以下であり、好ましい。その含有量はマグネシウム元素として、40ppm〜100ppmが好ましく、さらに好ましくは50ppm〜90ppmである。
なお、艶消し剤として使用される酸化チタンを含有しても良く、得られるポリエステルの紡糸を安定的に実施するために、酸化チタン濃度として2.5wt%まで含有することが出来る。
本発明の海島複合断面繊維には、本発明の効果を損なわない範囲において種々の添加剤を含んでも良い。この添加剤を例示すると、マンガン化合物などの安定剤、酸化チタンなどの着色剤、難燃剤、導電性付与剤、繊維状強化剤等が挙げられる。
本発明の海島型複合断面繊維に含まれるアルカリ易溶出性ポリエステルとポリアミドの重量比は、海島型複合断面繊維、海島型複合断面繊維中に含まれるアルカリ易溶出性ポリエステルを溶解除去して得られるポリアミド極細繊維、あるいはその加工品の要求特性、またはそれらを安定して得るために適当な範囲より適宜選択して良いが、好ましくはアルカリ易溶出性ポリエステルとポリアミドの重量比で5:95〜40:60の範囲であり、さらに好ましくは10:90〜50:50の範囲である。アルカリ易溶出性ポリエステルとポリアミドの重量比が15:95未満では、溶融紡糸時に島成分であるポリアミド同士が融合しやすくなるため、アルカリ易溶出性ポリエステルを溶解除去したとき、均一な繊維径を有するポリアミド極細繊維を得にくくなる。また、アルカリ易溶出性ポリエステルとポリアミドの重量比が40:60を越えると、アルカリ易溶出性ポリエステルの溶解除去に必要な溶剤が多くなる等、安全性や自然環境保護の観点、また、経済的観点からも好ましくない。また、アルカリ易溶出性ポリエステルを溶解除去して得られるポリアミド極細繊維自体が溶解除去前の海島型複合断面繊維と比べて細くなりすぎることから、布帛等にした時、布帛密度が荒くなりすぎて、繊維製品の布帛設計が困難となったり、製品バリエーションが少なくなったりする可能性がある。
本発明の海島型複合断面繊維の繊維横断面について、該繊維の単糸横断面の中心を通り互いに90度と直交する2本の直線を引いて該単糸を4等分したとき、その4部分の海成分の面積バラツキ(Scv)を以下の関係式とすると、下記Scvは小さいことが好ましい。
Scv=Sstd/Sx ×100
(ただし、Sxは4部分の海成分の面積平均値を表し、Sstdは4部分の海成分の面積の標準偏差(不偏分散の平方根)を表す。)
Scv=Sstd/Sx ×100
(ただし、Sxは4部分の海成分の面積平均値を表し、Sstdは4部分の海成分の面積の標準偏差(不偏分散の平方根)を表す。)
Scvについて、好ましくは0〜25の範囲であり、さらに好ましくは0〜20の範囲である。かかる範囲とする目的は、島成分であるポリアミドの均一分散であり、ポリアミドの局在的な偏りによるポリアミド同士の融合を抑制することで、脂肪族ポリエステルを溶解除去したとき、均一な繊維径を有するポリアミド極細繊維を得ることができる。また、繊維横断面で見た場合、応力が繊維横断面に均等に分散されるため、例えば繊維長手方向での強伸度バラツキが少ない海島型複合断面繊維を得ることができる。
Scvが25を越えた場合は、島成分であるポリアミドが局在的に偏ることになり、溶融紡糸時にポリアミド同士が融合し、アルカリ易溶出性ポリエステルを溶解除去したとき、均一な繊維径を有するポリアミド極細繊維を得にくくなる。また、繊維長手方向での強伸度バラツキが多い繊維となる。
本発明の海島型複合断面繊維の繊維横断面について、該繊維の単糸横断面の最外周に配された全島について、その各島と該単糸最外周との間隔バラツキ(Rcv)を以下の関係式とすると、下記Rcvは小さいことが好ましい。
Rcv=Rstd/Rx ×100
(ただし、Rxは最外周に配された各島と単糸最外周との間隔の平均値を表し、Rstdは最外周に配された各島と単糸最外周との間隔の標準偏差(不偏分散の平方根)を表す。最外周に配された各島と単糸最外周との間隔については、島の中心から繊維最外周との最短直線距離で表すものとする。)
Rcv=Rstd/Rx ×100
(ただし、Rxは最外周に配された各島と単糸最外周との間隔の平均値を表し、Rstdは最外周に配された各島と単糸最外周との間隔の標準偏差(不偏分散の平方根)を表す。最外周に配された各島と単糸最外周との間隔については、島の中心から繊維最外周との最短直線距離で表すものとする。)
Rcvについて、好ましくは0〜30の範囲であり、さらに好ましくは0〜20の範囲である。かかる範囲とする目的は、前記と同様に、均一なポリアミド極細繊維を得ること、繊維長手方向での強伸度バラツキが少ない海島型複合断面繊維を得ることにある。
Rcvが30を越えた場合は、最外周に配された島成分であるポリアミドが局在的に偏ることになり、溶融紡糸時にポリアミド同士が融合し、アルカリ易溶出性ポリエステルを溶解除去したとき、均一な繊維径を有するポリアミド極細繊維を得ることができない。また、繊維長手方向での強伸度バラツキが多い繊維となる。
本発明の海島型複合断面繊維のアルカリ易溶出性ポリエステルを溶解除去して得られるポリアミド極細繊維の単糸繊度は、好ましくは0.01〜0.5デシテックス(dtex)の範囲であり、さらに好ましくは0.01〜0.2dtexの範囲である。ポリアミド極細繊維の単糸繊度が0.01dtex未満では、原糸品位を含め、安定した溶融紡糸が困難となる。
一般的にポリアミド極細繊維の単糸繊度を細くする場合、紡糸口金あたりの総島数を多くする、もしくは紡糸口金あたりのポリアミドの吐出量を下げるといった方法があるが、紡糸口金あたりの総島数が多くなりすぎると、前記と同様に、アルカリ易溶出性ポリエステルを溶解除去したとき、均一な繊維径を有するポリアミド極細繊維を得ることができなくなるといった問題がある。また、紡糸口金あたりのポリアミドの吐出量を下げすぎると、紡糸口金での溶融したポリアミドの計量が困難となり、やはり、アルカリ易溶出性ポリエステルを溶解除去したとき、均一な繊維径を有するポリアミド極細繊維を得ることができなくなるといった問題が残る。
ポリアミド極細繊維の単糸繊度が0.5dtexを越えるものは、紡糸口金設計に主眼した単独ポリマーでの一発溶融紡糸でも得ることができるため、海島型複合断面繊維として得るメリットがない。
本発明の海島型複合断面繊維は、そのまま繊維製品として得ることもできるが、アルカリにより海島型複合断面繊維中に含まれるアルカリ易溶出性ポリエステルを溶解除去することにより、ソフト感、吸着性能に優れたポリアミド極細繊維を得ることが可能である。さらには、海島型複合断面繊維中に含まれるアルカリ易溶出性ポリエステルを一部溶解除去することにより、光沢、触感等の新たな付加価値を得ることも可能である。これらの場合、海島複合断面繊維から得られた布帛をアルカリで処理する。ここで言うアルカリとは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられるが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強アルカリ(pH=10〜14)を0.5〜20重量%水溶液として、60〜120℃で処理することが好ましい。
本発明の海島型複合断面繊維を用いた繊維製品、また、海島型複合断面繊維中に含まれるアルカリ易溶出性ポリエステルを溶解除去したときに得られるポリアミド極細繊維を用いた繊維製品としては、キャミソール、ショーツ等のインナーウエア、ストッキング、ソックス等のレッグニット、シャツやブルゾン等のスポーツ・カジュアルウェア、パンツ、コート、紳士・婦人衣料等の衣料用途のみならず、ブラカップやパッド等の衣料資材用途、カーテンやカーペット、マット、家具等のインテリア用途、吸水フェルト、研磨布といった工業資材用途、さらにはフィルター等の産業資材用途、車両内装用途にも好適に用いることができる。
本発明の海島型複合断面繊維の製造方法について説明する。本発明の海島型複合断面繊維は公知のいずれの方法でも製造可能であるが、海島複合形成性、生産性、コストの観点から、溶融紡糸による製造が最も優れている。溶融紡糸による製造方法について、紡糸−延伸工程を連続して行う方法(直接紡糸延伸法)、未延伸糸を一旦巻き取った後に延伸する方法(2工程法)、あるいは紡糸速度を3000m/min以上のように高速として実質的に延伸工程を省略する方法(高速紡糸法)等、いずれの方法においても製造可能であり、必要に応じて仮撚りや空気交絡等の糸加工を施しても良い。
以下に直接紡糸延伸法での製造について例示する。
まず溶融部について説明する。ポリアミド、アルカリ易溶出性ポリエステルを溶融するに際し、プレッシャーメルター法あるいはエクストルーダー法が挙げられるが、両者とも特に限定されるものではない。溶融温度は、ポリアミドの場合は240〜280℃が好ましく、アルカリ易溶出性ポリエステルは270〜290℃が好ましい。
紡糸パックへ流入したポリアミド、アルカリ易溶出性ポリエステルは、公知の紡糸口金により合流、海島複合断面に形成されて、紡糸口金より吐出される。海島複合紡糸口金については様々な公知例があるが、島成分の流路となる複数のパイプと、これらの島成分をそれぞれ取り囲む海成分の流路(スリット)を設けてなる紡糸口金での海島複合形成が、Scv、Rcvのコントロールが容易となり好ましい。図1で詳細説明する。図1は、本発明で用い得る海島型複合紡糸口金の一例であり、後述する実施例で用いた海島型複合紡糸口金の断面を示す概略図である。島成分流入孔(パイプ)(5)から流入された島成分が、海成分流入孔(4)〜1号板(1)および2号板(2)の隙間(6)〜スリット(7)を通過した海成分によって、合流部(8)でいわばコーティングされる形となる。海成分によってコーティングされた各島成分が、3号板(3)の合流部(9)で合流し、海島複合断面に形成されて、吐出孔(10)より吐出される。Scv、Rcvを満足する良好な海島複合断面を得るには、特に海成分の計量が充分に行われる必要があり、図1に示すような島成分流入孔(パイプ)(5)におけるパイプが2号板(2)の途中まで進入しているような紡糸口金だと、海成分の計量に必要なスリット(7)長を得ることができ、さらに好ましい。
また、紡糸温度(いわゆるポリマー配管や紡糸パックまわりの保温温度)は、240〜280℃が好ましい。
紡糸口金から吐出された海島型複合断面繊維は、冷却、固化され、油剤が付与された後、引き取られる。引き取り速度は1000〜5000m/minの範囲が好ましく、延伸糸の伸度が30〜50%の範囲となるように適宜延伸倍率を設定し、そして1ゴデッドロールを80〜100℃、2ゴデッドロールを150〜180℃の範囲に熱セット温度を設定し、延伸、熱処理を施し、速度として3000〜5000m/minの範囲で巻き取るのが好ましい。また、巻き取りまでの工程で公知の交絡装置を用い、交絡を施すことも可能である。必要であれば複数回付与することで交絡数を上げることも可能である。さらには、巻き取り直前に、追加で油剤を付与するのも可能である。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。また、本発明の海島型複合断面繊維、ポリアミド極細繊維の物性の測定方法は以下の通りである。
A.ポリエステルの固有粘度IV
試料をオルソクロロフェノールに溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃で測定した。
試料をオルソクロロフェノールに溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃で測定した。
B.ポリエステルの色調
色差計(スガ試験機製、SMカラーコンピュータ型式SM−T45)を用いて、ハンター値(b値)として測定した。バッチ重合においては、吐出工程の重量換算で半分にあたる時間でサンプリングしたポリエステルの色調を用いる。
色差計(スガ試験機製、SMカラーコンピュータ型式SM−T45)を用いて、ハンター値(b値)として測定した。バッチ重合においては、吐出工程の重量換算で半分にあたる時間でサンプリングしたポリエステルの色調を用いる。
C.Δ固有粘度280(耐熱性を表す指標)
ポリエステルを、150℃で12時間減圧乾燥させた後、窒素雰囲気下280℃で60分間加熱溶融させた後、Aの方法にて固有粘度を測定し、加熱溶融前後の差をΔ固有粘度280として算出した。
ポリエステルを、150℃で12時間減圧乾燥させた後、窒素雰囲気下280℃で60分間加熱溶融させた後、Aの方法にて固有粘度を測定し、加熱溶融前後の差をΔ固有粘度280として算出した。
D.ポリエステル中のDEG含有量
ポリエステルをモノメタノールアミンで加熱分解後、1,6ヘキサンジオール/メタノールで希釈し、テレフタル酸で中和した後、ガスクロマトグラフィーのピーク面積から求めた。
ポリエステルをモノメタノールアミンで加熱分解後、1,6ヘキサンジオール/メタノールで希釈し、テレフタル酸で中和した後、ガスクロマトグラフィーのピーク面積から求めた。
E.ポリエステル中のチタン元素、リン元素等の含有量
蛍光X線元素分析装置(堀場製作所製、MESA−500W型)を用いて、リン元素、マグネシウム元素等の含有金属の元素分析を行った。
蛍光X線元素分析装置(堀場製作所製、MESA−500W型)を用いて、リン元素、マグネシウム元素等の含有金属の元素分析を行った。
なお、ポリエステルに可溶なチタン元素の定量については、ポリエステルに不溶なチタン化合物を次の前処理を行い除去し、蛍光X線分析を行った。すなわち、ポリエステルをオルソクロロフェノールに溶解(溶媒100gに対してポリエステル5g)し、このポリエステル溶液と同量のジクロロメタンを加えて溶液の粘性を調製した後、遠心分離器(回転数18000rpm、1時間)で粒子を沈降させる。その後、傾斜法で上澄み液のみを回収し、上澄み液と同量のアセトンを添加することによりポリエステルを再析出させ、そのあと3G3のガラスフィルター(IWAKI製)で濾過し、濾上物をさらにアセトンで洗浄した後、室温で12時間真空乾燥してアセトンを除去した。以上の前処理を施して得られたポリエステルについてチタン元素の分析を行った。
F.ポリアミドの98%硫酸相対粘度(ηr)
オストワルド粘度計にて下記溶液の25℃での落下秒数を測定し、下式により算出した。ポリカプロアミドを1g/100mlとなるように溶解した98%濃硫酸(T1)、98%濃硫酸(T2)とすると、
(ηr)=T1/T2。
オストワルド粘度計にて下記溶液の25℃での落下秒数を測定し、下式により算出した。ポリカプロアミドを1g/100mlとなるように溶解した98%濃硫酸(T1)、98%濃硫酸(T2)とすると、
(ηr)=T1/T2。
G.製糸性
複合繊維糸条などを製糸するときの1t当たりの製糸糸切れについて、次の基準をもって示した。
A:糸切れ2回未満(製糸性に極めて優れる)、
B:糸切れ2以上4回未満、
C:糸切れ4以上6回未満、
D:糸切れ6以上8回未満、
E:糸切れ8以上(製糸性に劣る)。
複合繊維糸条などを製糸するときの1t当たりの製糸糸切れについて、次の基準をもって示した。
A:糸切れ2回未満(製糸性に極めて優れる)、
B:糸切れ2以上4回未満、
C:糸切れ4以上6回未満、
D:糸切れ6以上8回未満、
E:糸切れ8以上(製糸性に劣る)。
H.光学顕微鏡による繊維横断面観察
繊維横断方向に必要に応じて繊維を蝋で固める等して約6ミクロンの薄切片を切り出し、光学顕微鏡(Nikon(株)社製80iTP−DPH−S)で繊維横断面を観察した。繊維糸条全体を観察するときは1000倍、単糸を観察するときは3000倍と必要に応じて観察倍率を変更して繊維横断面を観察した。
繊維横断方向に必要に応じて繊維を蝋で固める等して約6ミクロンの薄切片を切り出し、光学顕微鏡(Nikon(株)社製80iTP−DPH−S)で繊維横断面を観察した。繊維糸条全体を観察するときは1000倍、単糸を観察するときは3000倍と必要に応じて観察倍率を変更して繊維横断面を観察した。
I.Scv
前記に記載の光学顕微鏡(3000倍)による繊維横断面写真を画像処理ソフト(三谷商事(株)社製WINROOF)を用いて求めた。詳細は下記の通りとした。
(1)繊維横断面写真から無作為に単糸5本を選択した。
(2)それぞれの単糸について、中心を通り互いに90度と直行する2本の直線を引いて該単糸を4等分した。
(3)それぞれの単糸について、4部分の海成分の面積をWINROOFで計測し、その面積平均値(Sx)、標準偏差(Sstd)を算出した。なお、標準偏差は不偏分散から算出した。
(4)それぞれの単糸について、Scv=Sstd/Sx×100の関係式からScvを算出し、それぞれの単糸のScvからその平均値を算出した。
前記に記載の光学顕微鏡(3000倍)による繊維横断面写真を画像処理ソフト(三谷商事(株)社製WINROOF)を用いて求めた。詳細は下記の通りとした。
(1)繊維横断面写真から無作為に単糸5本を選択した。
(2)それぞれの単糸について、中心を通り互いに90度と直行する2本の直線を引いて該単糸を4等分した。
(3)それぞれの単糸について、4部分の海成分の面積をWINROOFで計測し、その面積平均値(Sx)、標準偏差(Sstd)を算出した。なお、標準偏差は不偏分散から算出した。
(4)それぞれの単糸について、Scv=Sstd/Sx×100の関係式からScvを算出し、それぞれの単糸のScvからその平均値を算出した。
J.Rcv
前記に記載の光学顕微鏡(3000倍)による繊維横断面写真を画像処理ソフト(三谷商事(株)社製WINROOF)を用いて求めた。詳細は下記の通りとした。
(1)繊維横断面写真から無作為に単糸5本を選択した。
(2)それぞれの単糸について、最外周に配された全島の中心と単糸最外周との最短直線距離をWINROOFで計測し、その間隔平均値(Rx)、標準偏差(Rstd)を算出した。なお、標準偏差は不偏分散から算出した。
(3)それぞれの単糸について、Rcv=Rstd/Rx×100の関係式からRcvを算出し、それぞれの単糸のRcvからその平均値を算出した。
前記に記載の光学顕微鏡(3000倍)による繊維横断面写真を画像処理ソフト(三谷商事(株)社製WINROOF)を用いて求めた。詳細は下記の通りとした。
(1)繊維横断面写真から無作為に単糸5本を選択した。
(2)それぞれの単糸について、最外周に配された全島の中心と単糸最外周との最短直線距離をWINROOFで計測し、その間隔平均値(Rx)、標準偏差(Rstd)を算出した。なお、標準偏差は不偏分散から算出した。
(3)それぞれの単糸について、Rcv=Rstd/Rx×100の関係式からRcvを算出し、それぞれの単糸のRcvからその平均値を算出した。
K.伸度
(1)伸度(S)は、JIS L1013(1999)の8.5項に準じた。なお、測定条件としては、定速緊張形試験機(オリエンテック(株)社製テンシロン)を用い、つかみ間隔50cm、引張速度50cm/minとした。
(1)伸度(S)は、JIS L1013(1999)の8.5項に準じた。なお、測定条件としては、定速緊張形試験機(オリエンテック(株)社製テンシロン)を用い、つかみ間隔50cm、引張速度50cm/minとした。
L.毛羽数
多点毛羽計数装置(東レエンジニアリング社製MFC−120)を用いて、繊維パッケージから繊維を600m/分で解舒し、1万m測定し、装置に表示される毛羽数をカウントした。なお、測定点の手前に整経オサ(ステンレス製、オサ間隔1mm)を設けて、そこに繊維を通した。無作為に選択した50パッケージを一斉評価し、その平均数で評価した。
多点毛羽計数装置(東レエンジニアリング社製MFC−120)を用いて、繊維パッケージから繊維を600m/分で解舒し、1万m測定し、装置に表示される毛羽数をカウントした。なお、測定点の手前に整経オサ(ステンレス製、オサ間隔1mm)を設けて、そこに繊維を通した。無作為に選択した50パッケージを一斉評価し、その平均数で評価した。
M.アルカリ溶出性
製織後の布帛小片(20cm×20cm)を4枚準備し、20g/lの水酸化ナトリウム水溶液で、95℃(昇温2℃)処理し、30分、60分、90分、120分ごとに取り出したときのポリエチレンテレフタレートの減量率を測定する。減量率が90%以上に到達するまでに要する時間について、次の基準をもって示した。
◎:30分以下、
○:30分超60分以下
△:60分超90分以下
×:90分超または溶解除去不能
製織後の布帛小片(20cm×20cm)を4枚準備し、20g/lの水酸化ナトリウム水溶液で、95℃(昇温2℃)処理し、30分、60分、90分、120分ごとに取り出したときのポリエチレンテレフタレートの減量率を測定する。減量率が90%以上に到達するまでに要する時間について、次の基準をもって示した。
◎:30分以下、
○:30分超60分以下
△:60分超90分以下
×:90分超または溶解除去不能
下記実施例中で用いたチタン化合物の合成方法を示す。
(Ti−乳酸触媒)
窒素置換された反応槽に、反応溶媒としてエチレングリコール40Lに乳酸(和光純薬製)を536.4gを添加し、80℃に加熱する。その後、40℃まで冷却した後、チタンテトライソプロポキシド(日本曹達製)を712g添加し、24時間攪拌した。こうしてTi−乳酸触媒(チタン含有量:2.63g/L)を得た。
窒素置換された反応槽に、反応溶媒としてエチレングリコール40Lに乳酸(和光純薬製)を536.4gを添加し、80℃に加熱する。その後、40℃まで冷却した後、チタンテトライソプロポキシド(日本曹達製)を712g添加し、24時間攪拌した。こうしてTi−乳酸触媒(チタン含有量:2.63g/L)を得た。
(Ti−マンニトール触媒)
窒素置換された反応槽に、反応溶媒としてエチレングリコール40Lにマンニトール(東京化成製)を456.8gを添加し、80℃に加熱して溶解させる。その後、40℃まで冷却した後、チタンテトライソプロポキシド(日本曹達製)を712g添加し、24時間攪拌した。こうしてTi−マンニトール触媒(チタン含有量:2.63g/L)を得た。
窒素置換された反応槽に、反応溶媒としてエチレングリコール40Lにマンニトール(東京化成製)を456.8gを添加し、80℃に加熱して溶解させる。その後、40℃まで冷却した後、チタンテトライソプロポキシド(日本曹達製)を712g添加し、24時間攪拌した。こうしてTi−マンニトール触媒(チタン含有量:2.63g/L)を得た。
〔実施例1〕
(重合方法)
精留塔を備えたエステル交換反応槽にテレフタル酸ジメチルを927重量部とエチレングリコールを595重量部、アジピン酸ジメチルを得られるポリエステル中の全酸成分に対する濃度が5.1モル%となるように仕込み、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルを得られるポリエステル中の全酸成分に対し2.4モル%となるように仕込んだ。その後、Ti−乳酸触媒をチタン元素換算で5ppm、リン化合物としてテトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト(大崎工業化学株式会社製GSY−P101)をリン元素換算で10ppmとなるよう添加し、酢酸マグネシウム・4水和物を600ppm添加し、その後にEAH20(テトラエチルアンモニウムヒドロキサイド 20%、水 67%、メタノール 13%の混合物、三洋化成製)を1200ppm(窒素換算で29.3ppm)添加した。その後、エステル交換反応槽の温度を徐々に昇温し、エステル交換反応時に発生するメタノールを反応系外に留去させながら反応を進行させ、低重合体を得た。その後、エステル交換反応槽から重合反応槽にその低重合体を移液した。移液終了後、ポリエステル中の濃度が0.07wt%になるよう酸化チタンのエチレングリコールスラリーを添加した。さらに5分後に、反応槽内を240℃から280℃まで徐々に昇温するとともに、エチレングリコールを留去しながら、圧力を50Paまで下げた。所定の攪拌機トルク(電力値)となった時点で反応系を窒素パージして常圧に戻し重合反応を停止させ、ストランド状に吐出して冷却後、直ちにカッティングしてポリエステルのペレットを得た。なお、減圧開始から所定の攪拌機トルク到達までの時間はおよそ2時間15分だった。得られたポリエステルは固有粘度0.62、DEG2.0wt%、b値14.0、Δ固有粘度280が0.015であり、色調および耐熱性に優れたポリエステルであった。
(重合方法)
精留塔を備えたエステル交換反応槽にテレフタル酸ジメチルを927重量部とエチレングリコールを595重量部、アジピン酸ジメチルを得られるポリエステル中の全酸成分に対する濃度が5.1モル%となるように仕込み、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルを得られるポリエステル中の全酸成分に対し2.4モル%となるように仕込んだ。その後、Ti−乳酸触媒をチタン元素換算で5ppm、リン化合物としてテトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト(大崎工業化学株式会社製GSY−P101)をリン元素換算で10ppmとなるよう添加し、酢酸マグネシウム・4水和物を600ppm添加し、その後にEAH20(テトラエチルアンモニウムヒドロキサイド 20%、水 67%、メタノール 13%の混合物、三洋化成製)を1200ppm(窒素換算で29.3ppm)添加した。その後、エステル交換反応槽の温度を徐々に昇温し、エステル交換反応時に発生するメタノールを反応系外に留去させながら反応を進行させ、低重合体を得た。その後、エステル交換反応槽から重合反応槽にその低重合体を移液した。移液終了後、ポリエステル中の濃度が0.07wt%になるよう酸化チタンのエチレングリコールスラリーを添加した。さらに5分後に、反応槽内を240℃から280℃まで徐々に昇温するとともに、エチレングリコールを留去しながら、圧力を50Paまで下げた。所定の攪拌機トルク(電力値)となった時点で反応系を窒素パージして常圧に戻し重合反応を停止させ、ストランド状に吐出して冷却後、直ちにカッティングしてポリエステルのペレットを得た。なお、減圧開始から所定の攪拌機トルク到達までの時間はおよそ2時間15分だった。得られたポリエステルは固有粘度0.62、DEG2.0wt%、b値14.0、Δ固有粘度280が0.015であり、色調および耐熱性に優れたポリエステルであった。
(紡糸方法)
このポリエステルチップを水分率0.01重量%以下となるように常法にて乾燥した。また、ポリアミド層として、硫酸相対粘度(ηr)が2.6のナイロン6チップを水分率0.05重量%以下となるよう常法にて乾燥した。
このポリエステルチップを水分率0.01重量%以下となるように常法にて乾燥した。また、ポリアミド層として、硫酸相対粘度(ηr)が2.6のナイロン6チップを水分率0.05重量%以下となるよう常法にて乾燥した。
ポリエステルチップを270℃、ナイロン6チップを270℃の溶融温度で、前記ポリエチレンテレフタレートチップを20重量%、ナイロン6チップを80重量%の割合で(表1に示す重量比で)各個別々のプレッシャーメルターで溶融し、紡糸パック、口金に合流、海島複合形成させて紡糸口金より吐出させた。紡糸口金は、図1に示すパイプ(5)が2号板(2)の途中まで進入している紡糸口金とし、単糸(ホール)あたりの島数が37島で、紡糸口金あたりのホール数が20(総島数は740)のものを使用した。また、紡糸温度は270℃とした。紡糸口金より吐出後、18℃の冷風で冷却、給油した後に、2.20倍に延伸して巻取速度4000m/分で巻き取りを行い、78dtex−20フィラメントの海島型複合断面繊維を得た。得られた分割割繊型複合繊維により、島部外接円径(μm)、海島部面積比率を評価した。鞘部のポリエチレンテレフタレート層で、外接円形0.3μmの島部が海島部の島部面積比率20%で存在していた。
(評価方法)
得られた海島型複合断面繊維について、Scv、Rcv、強伸度積、強伸度積バラツキ、毛羽数について評価した。紡糸操業性については、海島型複合断面繊維を1t生産した際の紡糸糸切れ回数について評価した。また、前記に記載の方法で、得られた海島型複合断面繊維のポリエステルを溶解除去して得られたポリアミド極細繊維からなる平織地のソフト性についてもあわせて評価した。これらの結果を表1に示す。
得られた海島型複合断面繊維について、Scv、Rcv、強伸度積、強伸度積バラツキ、毛羽数について評価した。紡糸操業性については、海島型複合断面繊維を1t生産した際の紡糸糸切れ回数について評価した。また、前記に記載の方法で、得られた海島型複合断面繊維のポリエステルを溶解除去して得られたポリアミド極細繊維からなる平織地のソフト性についてもあわせて評価した。これらの結果を表1に示す。
〔実施例2〜8〕
表1、3に記載の条件とする以外は、実施例1と同じ方法で実施した。いずれも製糸性、アルカリ溶出性に優れ、得られた海島複合繊維についても毛羽の発生もほとんどなく良好であった。
表1、3に記載の条件とする以外は、実施例1と同じ方法で実施した。いずれも製糸性、アルカリ溶出性に優れ、得られた海島複合繊維についても毛羽の発生もほとんどなく良好であった。
〔実施例9、10、12,13〕
表2、4に記載の条件とする以外は、実施例1と同じ方法で実施した。いずれも実施例1〜8に比較して製糸性に劣るものの、アルカリ溶出性に優れ、得られた海島複合繊維についても毛羽の発生もほとんどなく良好であった。
表2、4に記載の条件とする以外は、実施例1と同じ方法で実施した。いずれも実施例1〜8に比較して製糸性に劣るものの、アルカリ溶出性に優れ、得られた海島複合繊維についても毛羽の発生もほとんどなく良好であった。
〔実施例11〕
表2、4に記載の条件とする以外は、実施例1と同じ方法で実施した。実施例1〜8に比較して製糸性に劣るものの、アルカリ溶出性に優れ、毛羽の発生もほとんどなく良好であった。
表2、4に記載の条件とする以外は、実施例1と同じ方法で実施した。実施例1〜8に比較して製糸性に劣るものの、アルカリ溶出性に優れ、毛羽の発生もほとんどなく良好であった。
〔比較例1、3、5〕
表5、6に記載の条件とする以外は、実施例1と同じ方法で実施した。いずれも製糸性に優れ、得られた海島複合繊維についてアジピン酸の含有量が少なくなると、毛羽が増加し、アルカリ溶出性に劣るものであった。
表5、6に記載の条件とする以外は、実施例1と同じ方法で実施した。いずれも製糸性に優れ、得られた海島複合繊維についてアジピン酸の含有量が少なくなると、毛羽が増加し、アルカリ溶出性に劣るものであった。
〔比較例2、4、6〕
表5、6に記載の条件とする以外は、実施例1と同じ方法で実施した。いずれもアルカリ溶出性に優れ、得られた海島複合繊維についても毛羽の発生もほとんどなく良好であったが、製糸性に劣るものであった。
表5、6に記載の条件とする以外は、実施例1と同じ方法で実施した。いずれもアルカリ溶出性に優れ、得られた海島複合繊維についても毛羽の発生もほとんどなく良好であったが、製糸性に劣るものであった。
〔比較例7〕
表5、6に記載の条件とする以外は、実施例1と同じ方法で実施した。製糸性に優れ、得られた海島複合繊維について毛羽が多発し、アルカリ溶出性に劣るものであった。
表5、6に記載の条件とする以外は、実施例1と同じ方法で実施した。製糸性に優れ、得られた海島複合繊維について毛羽が多発し、アルカリ溶出性に劣るものであった。
〔比較例8〕
表7に記載の条件とする以外は、実施例1と同じ方法で実施した。海成分のポリ乳酸と島成分のナイロン6との親和性が悪く、毛羽が発生した。
表7に記載の条件とする以外は、実施例1と同じ方法で実施した。海成分のポリ乳酸と島成分のナイロン6との親和性が悪く、毛羽が発生した。
〔比較例9〕
表7に記載の条件とする以外は、実施例1と同じ方法で実施した。海成分のポリ乳酸と島成分のナイロン6の粘度差により、島成分同士が融合し複合異常が発生した。
表7に記載の条件とする以外は、実施例1と同じ方法で実施した。海成分のポリ乳酸と島成分のナイロン6の粘度差により、島成分同士が融合し複合異常が発生した。
1:1号板
2:2号板
3:3号板
4:海成分流入孔
5:島成分流入孔(パイプ)
6:1号板(1)および2号板(2)の隙間
7:スリット
8,9:合流部
10:吐出孔
2:2号板
3:3号板
4:海成分流入孔
5:島成分流入孔(パイプ)
6:1号板(1)および2号板(2)の隙間
7:スリット
8,9:合流部
10:吐出孔
Claims (8)
- 主たる繰返し単位がエチレンテレフタレートより構成され、全酸成分に対し金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分が2.0〜5.5モル%、全酸成分に対するアジピン酸成分が3.0〜6.0モル%含有することを特徴とするアルカリ易溶出性ポリエステルを海成分、ポリアミドを島成分とした海島型複合断面繊維。
- ポリエステルに可溶なチタン化合物をチタン元素換算で3〜10ppm含有し、リン化合物をリン元素換算で5〜40ppm含有するアルカリ易溶出性ポリエステルを用いた請求項1記載の海島型複合断面繊維。
- ポリエステルと前記ポリアミドの重量比が、5:95〜40:60の範囲にあることを特徴とする請求項1または2記載の海島型複合断面繊維。
- 伸度が30〜50%であって、繊維糸条の長さ1万m当たりの毛羽数が0〜2個であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の海島型複合断面繊維。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の海島型複合断面繊維を少なくとも一部に有する布帛。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の海島型複合断面繊維をアルカリ処理することにより、ポリエステルが溶解除去して形成される極細ポリアミド繊維。
- 請求項6に記載の極細ポリアミド繊維を少なくとも一部に有する布帛。
- 請求項6に記載の極細ポリアミド繊維を少なくとも一部に有する繊維製品。
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