本発明は、ポリアミド樹脂とポリエステル樹脂とを含有して得られるポリマーアロイからなる繊維(ポリマーアロイ繊維)に関するものであり、特に溶融紡糸により繊維を製造する時の溶融時のポリマーのゲル化を抑制することで、ゲルのポリマーへの混入等による紡糸操業性不良、および繊維の毛羽や単糸切れ等を大幅に改善することができるポリマーアロイ繊維に関するものである。
さらに、本発明は、当該ポリマーアロイ繊維中に含まれるポリエステルを溶解除去することで得られるポリアミド極細繊維、またはポリアミド多孔繊維に関するものである。
ポリカプラミドやポリヘキサメチレンアジパミドに代表されるポリアミド繊維や、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートに代表されるポリエステル繊維は、力学特性や寸法安定性に優れるため、衣料用途のみならずインテリアや車両内装、産業用途等幅広く利用されている。
繊維に軽量感や吸水性を付与することを目的とした多孔繊維、またソフト性を付与することを目的とした極細繊維を溶融紡糸するに際し、細孔がミクロンサイズの多孔繊維や単糸直径がミクロンサイズの繊維については、単純に易溶解性ポリマーとの複合紡糸をして複合断面糸を得て、易溶解性ポリマーを溶出除去して得るのが通常である。また、ミクロンサイズの繊維についてのみ言えば、紡糸口金設計に主眼した単独ポリマーでの溶融紡糸でも得ることができる。
一方、ナノサイズの細孔を多数有する多孔繊維(以下、単に「多孔繊維」と称することがある。)や、極細繊維と言うのに相応しい単糸直径がナノサイズの極細繊維(以下、単に「極細繊維」と称することがある。)については、種々の製法があるが、易溶解性ポリマーと難溶解性ポリマーとをポリマーブレンドしたアロイ繊維を得て、易溶解性ポリマーを溶出除去して得るのが現在では主流である。
例えば、ポリアミドに親水基共重合ポリエチレンテレフタレートをブレンドして繊維化し、これから親水基共重合ポリエチレンテレフタレートを溶出除去することで多孔ポリアミド繊維が得られることが知られている(特許文献1)。すなわち、特許文献1には、親水基共重合ポリエチレンテレフタレートの含有量をあげても溶融紡糸性、延伸性を損なわないポリマーの組み合わせに着眼した、通常のポリエチレンテレフタレートと比較して溶融紡糸性に優れた多孔ポリアミド繊維が開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載の繊維は2工程法により得られるものであり、高速紡糸での溶融紡糸性については言及されておらず、溶融時のポリマーのゲル生成抑制、曳糸性の観点から高速紡糸性に優れているポリマー構成であるとは言い難いものであった。
この他にも、ナイロン/共重合ポリエチレンテレフタレートブレンド繊維(特許文献2)が開示されているが、特許文献2に記載の繊維は低速巻き取りの2工程法により得られるものであり、高速紡糸での溶融紡糸性、紡糸経時での紡糸安定性については言及されていない。
ポリアミドとポリエステルから構成されたポリマーアロイ繊維において、特許文献1や2に記載の方法を用いて製造するのでは、直接紡糸延伸法、高速紡糸法といった高速巻き取りが困難であるため生産性が落ち、また紡糸に際し経時的に紡糸操業性が悪化していくという課題があった。そこで、高速巻き取りが可能で、かつ紡糸経時でも紡糸操業性が悪化しない、ポリアミドとポリエステルから構成されたポリマーアロイ繊維が求められていた。
特開平2−175965号公報
特開平8−158251号公報
本発明は、特に溶融紡糸により繊維を製造する時の溶融時のポリマーのゲル化を抑制することで、ゲルのポリマーへの混入等による紡糸操業性不良、および繊維の毛羽や単糸切れ等を大幅に改善することができるポリマーアロイ繊維、および当該ポリマーアロイ繊維中に含まれるポリエステルを溶解除去することで得られるポリアミド極細繊維、またはポリアミド多孔繊維を提供するものである。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。すなわち、
(1)ポリアミド樹脂とポリエステル樹脂とを含有して得られるポリマーアロイからなる繊維であって、該ポリマーアロイのエステルアミド交換反応率が2モル%以下であるポリマーアロイ繊維。
(2)前記ポリアミドと前記ポリエステルの重量比が20:80〜90:10の範囲にある、前記(1)に記載のポリマーアロイ繊維。
(3)前記ポリアミドがポリカプラミドである、前記(1)または(2)に記載のポリマーアロイ繊維。
(4)前記ポリエステルが脂肪族ポリエステルである、前記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリマーアロイ繊維。
(5)前記脂肪族ポリエステルがポリ乳酸である、前記(4)に記載のポリマーアロイ繊維。
(6)前記ポリマーアロイ繊維が海島構造状である、前記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリマーアロイ繊維。
(7)前記ポリマーアロイ繊維の島の平均直径が1〜200nmである、前記(6)に記載のポリマーアロイ繊維。
(8)直径300nm以上の島(以下、本発明において「粗大島」と称することがある。)の総面積が、全ての島の総面積の3%以下である、前記(6)または(7)に記載のポリマーアロイ繊維。
(9)前記(1)〜(8)のいずれかに記載のポリマーアロイ繊維中に含まれるポリエステルを溶解除去して得られるポリアミド極細繊維。
(10)前記(1)〜(8)のいずれかに記載のポリマーアロイ繊維中に含まれるポリエステルを溶解除去して得られるポリアミド多孔繊維。
である。
本発明によれば、特に溶融紡糸により繊維を製造する時の溶融時のポリマーのゲル化を抑制することで、ゲルのポリマーへの混入等による紡糸操業性不良、および繊維の毛羽や単糸切れ等を大幅に改善することができる。
また、本発明のポリマーアロイ繊維中に含まれるポリエステルを溶解除去して、ポリアミド極細繊維、またはポリアミド多孔繊維とすることにより、従来の合成繊維には無い優れた特性を得ることができる。特に吸着性能が高く、例えば、ポリアミド極細繊維であれば吸湿性に優れ、ポリアミド多孔繊維であれば吸水性に優れたものとなる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明は、ポリアミド樹脂とポリエステル樹脂とを含有して得られるポリマーアロイからなる繊維、すなわち、ポリアミドとポリエステルとを有してなるポリマーアロイ繊維であって、該ポリマーアロイのエステルアミド交換反応率が2モル%以下であるポリマーアロイ繊維である。
本発明に用いられるポリアミド樹脂は、いわゆる炭化水素基が主鎖にアミド結合を介して連結された高分子量体からなる樹脂であって、かかるポリアミドとしては、染色性、機械特性に優れており、ポリエステルとのポリマーアロイに好適な、主としてポリカプラミド(ナイロン6)からなることが好ましい。ここで言う「主として」とは、ポリカプラミドを構成するε−カプロラクタム単位として80モル%以上であることを言い、さらに好ましくは90モル%以上である。その他の成分としては、特に限定されないが、例えば、ポリドデカノアミド、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンアゼラミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリヘキサメチレンドデカノアミド、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリヘキサメチレンテレフタラミド、ポリヘキサメチレンイソフタラミド等を構成するモノマーである、アミノカルボン酸、ジカルボン酸、ジアミン等の単位が挙げられる。
また、ポリカプラミドの重合度は、ポリマーアロイ繊維、ポリマーアロイ繊維中に含まれるポリエステルを溶解除去して得られるポリアミド極細繊維やポリアミド多孔繊維、あるいはその加工品の要求特性、またはそれらを安定して得るために適当な範囲より適宜選択して良いが、好ましくは98%硫酸相対粘度で2〜3.3の範囲であり、さらに好ましくは2〜2.8の範囲である。
また、ポリカプラミド中に含有される低分子量残留物量としては、好ましくは熱水抽出法により検出される低分子量残留物量で1.8重量%以下であり、さらに好ましくは1.5重量%以下である。低分子量残留物量が1.8重量%を越えると、溶融時にエステルアミド交換反応が進行しやすくなる可能性があり、その結果として、溶融時にポリマーのゲルが生成し、ゲルのポリマーへの混入等による紡糸操業性不良を引き起こしたり、高次加工において、ゲルに起因する繊維の毛羽や単糸切れ等により高次通過性を悪化させたりする可能性がある。
ポリカプラミド中の低分子量残留物を除去する方法としては、重合されたポリカプラミドチップを、90〜120℃程度の沸騰水に接触させ、低分子量残留物を抽出することが好ましい。ポリカプラミド中の低分子量残留物量は、チップ形状、浴比等によっても異なることがあるが、抽出時間は20〜40hr程度で、必要に応じてヒドラジン等の還元剤を添加することが好ましい。抽出操作を終えたポリカプラミドチップは約10重量%の水分を含有するため、乾燥をすると良い。ポリカプラミドチップの乾燥方法は、1.3kPa以下の減圧下で、バッチ方式で加熱する方法、あるいは、ポリカプラミドチップと加熱された窒素とを連続的に接触させる方法が挙げられる。ポリカプラミドチップを大量生産する場合は、連続運転が可能な後者が有利であり、少量多品種生産をする場合は前者が有利である。通常の場合、乾燥はポリカプラミドの融点以下の温度である100〜120℃において、10〜30hr程度保持することにより、水分率が概ね0.1重量%以下となるまで行うと良い。
本発明に用いられるポリエステル樹脂は、いわゆる塩基酸とアルコールがエステル結合を介して連結された高分子量体からなる樹脂であって、かかるポリエステルとしては、溶融時のエステルアミド交換反応が抑制でき、溶解除去が容易であり、また、バイオマス利用、生分解性の観点からも脂肪族ポリエステルであることが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートや、上記特許文献に記載された共重合ポリエチレンテレフタレート等は、脂肪族ポリエステルと比較してエステルアミド交換反応が進行しやすく、エステルアミド交換反応を抑制するには、ポリアミドとポリエステルの重量比、滞留時間、溶融温度の許容範囲が狭くなる場合があり、脂肪族ポリエステルよりもシビアな条件設定が必要となる場合があるため、取り扱いが難しいことがある。
ここで、前記脂肪族ポリエステルを例示すると、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリブチレンサクシネート、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン等が挙げられるが、溶融成形が容易であるという点でポリ乳酸がより好ましい。ポリ乳酸とは乳酸モノマーを重合したものであり、L体またはD体の光学純度が90%以上であると、融点が高くなり好ましい。また、ポリ乳酸の性質を損なわない範囲において、乳酸以外のモノマーを共重合していても良いが、好ましくはポリ乳酸を構成する乳酸単位として80モル%以上であり、さらに好ましくは90モル%以上である。
また、ポリ乳酸の分子量は、ポリマーアロイ繊維、あるいはその加工品の要求特性、またはそれらを安定して得るために適当な範囲より適宜選択して良いが、好ましくは重量平均分子量で5万〜30万の範囲であり、さらに好ましくは5万〜15万の範囲である。
本発明のポリマーアロイ繊維を得るのに用いられるポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲において種々の添加剤を含んでも良い。この添加剤を例示すると、マンガン化合物などの安定剤、酸化チタンなどの着色剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、導電性付与剤、繊維状強化剤等が挙げられる。
本発明のポリマーアロイ繊維は、エステルアミド交換反応率が2モル%以下であることが必要である。ここで言うエステルアミド交換反応率とは、ポリエステルを構成する全塩基酸のうちアミド結合している塩基酸の割合を言う。この値が小さくなるほど、ポリアミド分子鎖とポリエステル分子鎖がお互いに独立して存在していると言え、逆にこの値が大きくなるほど、ポリアミド分子鎖とポリエステル分子鎖が一部共重合され、一種のブロックポリマーが形成されていくと言える。そして、この反応過程においてゲルが生成されていくのである。本発明は、エステルアミド交換反応率を2モル%以下とすることにより、溶融時のポリマーのゲル化が抑制でき、ゲルのポリマーへの混入等による紡糸操業性不良、および繊維の毛羽や単糸切れ等を大幅に改善することができるのである。さらに好ましくは1モル%以下である。
本発明のポリマーアロイ繊維に含まれるポリアミドとポリエステルの重量比は、ポリマーアロイ繊維、ポリマーアロイ繊維中に含まれるポリエステルを溶解除去して得られるポリアミド極細繊維やポリアミド多孔繊維、あるいはその加工品の要求特性、またはそれらを安定して得るために適当な範囲より適宜選択して良いが、20:80〜90:10の範囲であることが好ましい。しかしながら、重量比を50:50のような中心値に近づけるにつれ、海ポリマーと島ポリマーの接触界面が大きくなって相互作用が過大となり、溶融時にエステルアミド交換反応が進行しやすくなり、その結果として、溶融時にポリマーのゲルが生成し、ゲルのポリマーへの混入等による紡糸操業性不良を引き起こしたり、高次加工において、ゲルに起因する繊維の毛羽や単糸切れ等により高次通過性を悪化させたりすることがある。かかる観点から、エステルアミド交換反応が進行しやすいポリエチレンテレフタレート、上記特許文献に記載された共重合ポリエチレンテレフタレート等でポリマーアロイ繊維を設計する場合は、ポリアミドとポリエステルの重量比として20:80〜30:70、80:20〜90:10の範囲とすることが好ましい。
一般的にポリアミドの重量比を小さくすると、ポリマーアロイ繊維として見た場合、ポリアミド成分が少なくなるため、柔らかさ、耐摩耗性といったポリアミドの特徴が発現しにくくなるが、寸法安定性、防シワ性といったポリエステルの特徴は発現しやすくなる。また、ポリアミドの重量比が小さい場合、ポリアミドが島、ポリエステルが海の海島構造状のポリマーアロイとなりやすいため、ポリマーアロイ繊維に含まれるポリエステルを溶解除去して得られるポリアミド極細繊維を得るには好適であると言える。
また、これとは逆に、ポリアミドの重量比を大きくすると、ポリマーアロイ繊維として見た場合、ポリアミド成分が多くなるため、柔らかさ、耐摩耗性といったポリアミドの特徴が発現しやすくなり、寸法安定性、防シワ性といったポリエステルの特徴は発現しにくくなる。また、ポリアミドの重量比が大きい場合、ポリアミドが海、ポリエステルが島の海島構造状のポリマーアロイとなりやすいため、ポリマーアロイ繊維のポリエステルを溶解除去して得られるポリアミド多孔繊維を得るには好適であると言える。
本発明のポリマーアロイ繊維は、海島構造状のポリマーアロイ繊維であることが好ましい。ここで言う海島構造状とは、繊維横断面において、真円、楕円状等に島ポリマーが微分散しており、かつ繊維軸方向に島ポリマーが細く伸びた筋状に微分散している構造を言う。さらには、筋状構造の繊維軸方向の島の平均長さLと島の平均直径Dの比L/Dが4以上であることが好ましい。上記構造を満足できないと、ポリマーアロイ繊維中の島ポリマー自体が欠点となるため、紡糸操業性不良を引き起こしたり、さらには得られるポリマーアロイ繊維にも毛羽や単糸切れ等が発生しやすくなったりする場合がある。また、ポリマーアロイ繊維に含まれるポリエステルを溶解除去しても、L/Dが小さいため極細繊維としての形態を維持できない可能性があり、また多孔繊維の細孔が微分散しない可能性がある。
本発明のポリマーアロイ繊維の島の平均直径は、ポリマーアロイ繊維、ポリマーアロイ繊維に含まれるポリエステルを溶解除去して得られるポリアミド極細繊維やポリアミド多孔繊維、あるいはその加工品の要求特性、またはそれらを安定して得るために適当な範囲より適宜選択して良いが、好ましくは1〜200nmの範囲であり、さらに好ましくは10〜150nmの範囲である。島の平均直径が1nm未満では、海ポリマーと島ポリマーの接触界面が大きくなって相互作用が過大となり、溶融時にエステルアミド交換反応が進行しやすくなる場合があり、その結果として、溶融時にポリマーのゲルが生成し、ゲルのポリマーへの混入等による紡糸操業性不良を引き起こしたり、高次加工において、ゲルに起因する繊維の毛羽や単糸切れ等により高次通過性を悪化させたりする場合がある。かかる観点から、エステルアミド交換反応が進行しやすいポリエチレンテレフタレート、上記特許文献に記載された共重合ポリエチレンテレフタレート等でポリマーアロイ繊維を設計する場合は、ポリアミドとポリエステルの島の平均直径として50nm以上であることが好ましい。島の平均直径が200nmを越えると、島ポリマー自体が欠点となるため、紡糸操業性不良を引き起こしたり、さらには得られるポリマーアロイ繊維にも毛羽や単糸切れ等が発生しやすくなったりする場合がある。ここで繊維横断面に現れる島は、やや歪んだ楕円状となる場合があり、必ずしも真円とは限らないため、ここで言う島の平均直径とは島の面積から円換算で求めたものを言う。
また、島の大きさがある一定以上のものがある一定量存在している場合、島ポリマー自体が欠点となるため、紡糸操業性不良を引き起こしたり、さらには得られるポリマーアロイ繊維にも毛羽や単糸切れ等が発生しやすくなったりする場合がある。従って、本発明のポリマーアロイ繊維の繊維横断面に現れる直径300nm以上の粗大島の総面積が、全ての島の総面積の3%以下であることが好ましく、さらに好ましくは2%以下である。
本発明のポリマーアロイ繊維の断面形状は、ポリマーアロイ繊維、あるいはその加工品の要求特性から適宜選択して良い。例示すると、真円、楕円、三葉、四葉、十字、中空、扁平、T字、X字、H字断面等が挙げられる。また、その繊維形態は、長繊維、短繊維、不織布、熱成形体等、様々な繊維製品形態を採ることができる。
本発明のポリマーアロイ繊維は、そのまま繊維製品として得ることもできるが、アルカリによりポリマーアロイ繊維中に含まれるポリエステルを一部溶解除去することにより、光沢、触感等の新たな付加価値を得ることが可能である。さらには、ポリエステルを全量溶解除去することにより、ポリアミド極細繊維、またはポリアミド多孔繊維を得ることも可能である。これらの場合、ポリマーアロイ繊維をそのままアルカリで処理、織編物を製造した後にアルカリで処理、いずれの工程でも加工することができる。ここで言うアルカリとは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられるが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強アルカリ(pH=10〜14)を0.5〜20重量%、60〜120℃で処理することが好ましい。
本発明のポリマーアロイ繊維は、ポリエステルを全量溶解除去することにより、ポリアミド極細繊維やポリアミド多孔繊維を得ることが可能である。このポリアミド極細繊維やポリアミド多孔繊維は、通常のポリアミド繊維と比較して比表面積が増大するといったことから、優れた吸着性能を示すメリットがある。すなわち、ポリアミド極細繊維やポリアミド多孔繊維では、吸湿性能の指標であるΔMRが3〜5%に達し、綿とほぼ同等の吸湿性能を示すのである。ここで言うΔMRとは、30℃、90%RH下での吸湿率から、25℃、65%RH下での吸湿率を差し引いた値である。また、このポリアミド極細繊維やポリアミド多孔繊維は、湿気だけでなく、種々の物質の吸着性能にも優れ、例えば消臭繊維としても有用である。さらには綿並の吸水性を発揮する場合もあるだけでなく、ウールのように糸条長手方向に可逆的な水膨潤性を示す場合もあり、合成繊維でありながら天然繊維の機能を発現することも可能である。
本発明のポリマーアロイ繊維を用いた繊維製品としては、キャミソール、ショーツ等のインナーウエア、ストッキング、ソックス等のレッグニット、シャツやブルゾン等のスポーツ・カジュアルウエア、パンツ、コート、紳士・婦人衣料等の衣料用途のみならず、カップやパッド等の衣料資材用途、カーテンやカーペット、マット、家具等のインテリア用途、さらにはフィルター等の産業資材用途、車両内装用途にも好適に用いることができる。また、本発明のポリマーアロイ繊維を用いて得られるポリアミド極細繊維やポリアミド多孔繊維を用いた繊維製品としては、従来の合成繊維には無い優れた特性を有することから、上記した用途以外にも、シートコスメ、マスカラといった美容分野、吸水フェルト、研磨布といった工業資材、創傷被覆材といった医療分野にも好適に用いることができる。
本発明のポリマーアロイ繊維の製造方法は、下記の方法を採用することが好ましい。すなわち、ポリアミド樹脂とポリエステル樹脂を溶融混練し、海島構造状のポリマーアロイチップを得る。そして、これを溶融紡糸することにより本発明のポリマーアロイ繊維を得ることができる。また、ポリアミド樹脂とポリエステル樹脂との溶融混練方法も重要であり、押出混練機や静止混練機等により強制的に混練することにより粗大な凝集ポリマーの生成を大幅に抑制することができるのである。強制的に混練する観点から、押出混練機としては二軸押出混練機、静止混練機としては分割数100万割以上のものを用いることが好ましい。
さらには、溶融混練温度としては、ポリマーの組み合わせにより変わるが、可能な限り低温度で溶融混練する方が、溶融混練時でのエステルアミド交換反応が抑制できるため、紡糸性が向上する。具体的には、ポリ乳酸に代表される脂肪族ポリエステルでは、溶融混練温度はポリマーの融点から+30℃以内が好ましく、さらに好ましくは+20℃以内である。逆に、エステルアミド交換反応が進行しやすいポリエチレンテレフタレート、上記特許文献に記載された共重合ポリエチレンテレフタレート等の脂肪族系以外のポリエステルでは、溶融混練温度はポリマーの融点から+10℃以内が好ましく、さらに好ましくは+5℃以内である。ここで言うポリマーの融点とは、溶融混練する前のポリアミドの融点、ポリエステルの融点のうち高い方のポリマーの融点を言う。
融点が高いポリマーの重量比が大きい場合、特に、エステルアミド交換反応が進行しやすいポリエチレンテレフタレート、上記特許文献に記載された共重合ポリエチレンテレフタレート等の脂肪族系以外のポリエステルで低温度での溶融混練を必要とする場合は、溶融ポリマーが固くなり溶融成形性が低下しやすくなるため、単純に重量比を小さくするか、または溶融粘度を下げることが望ましい。
また、溶融紡糸時でのエステルアミド交換反応、ならびに、島ポリマーの再凝集を抑制する観点から、紡糸口金から吐出するまでの滞留時間も重要であり、ポリマーアロイの溶融部先端、例えば、プレッシャーメルタータイプの溶融紡糸機の場合はメルター部から、エクストルーダータイプであればシリンダー入口から、紡糸口金から吐出するまでの時間は20分以内とすることが好ましい。
さらには、溶融紡糸温度としては、ポリマーの組み合わせにより変わるが、可能な限り低温度で溶融紡糸する方が溶融紡糸時でのエステルアミド交換反応が抑制できるため紡糸性が向上する。具体的には、ポリ乳酸に代表される脂肪族ポリエステルでは、溶融紡糸温度はポリマーの融点から+30℃以内が好ましく、さらに好ましくは+20℃以内である。逆に、エステルアミド交換反応が進行しやすいポリエチレンテレフタレート、上記特許文献に記載された共重合ポリエチレンテレフタレート等の脂肪族系以外のポリエステルでは、ポリマーの融点から+10℃以内が好ましく、さらに好ましくは+5℃以内である。ここで言うポリマーの融点とは、溶融混練する前のポリアミドの融点、ポリエステルの融点のうち高い方のポリマーの融点を言う。
融点が高いポリマーの重量比が大きい場合、特に、エステルアミド交換反応が進行しやすいポリエチレンテレフタレート、上記特許文献に記載された共重合ポリエチレンテレフタレート等の脂肪族系以外のポリエステルで低温度での溶融混練を必要とする場合は、溶融ポリマーが固くなり溶融成形性が低下しやすく、高速曳糸性が悪化しやすくなるため、単純に重量比を小さくするか、または溶融粘度を下げることが望ましい。
上記したような製造方法の特徴により、粗大な凝集ポリマーの生成が抑制されるため、ポリマーアロイの粘弾性バランスが崩れにくく、紡糸吐出が安定し、高速曳糸性や糸斑を著しく改善できるという利点もある。さらには、通常の繊維(ポリマーアロイ繊維以外の繊維)を溶融紡糸する口金の吐出孔径よりも大きい吐出孔径を有する口金を用いると、口金吐出孔でのポリマーアロイへの剪断応力を低減し、粘弾性バランスを保つことができるため紡糸性が向上する。具体的には、ポリマーアロイの口金吐出孔での吐出線速度を20m/分以下にできる口金を用いることが好ましい。加えて、糸条の冷却も重要であり、口金から積極的な冷却開始位置までの距離を1〜10cmとすることで、伸長流動が不安定化しやすいポリマーアロイを、迅速に冷却固化させ紡糸性を安定化させることができるのである。
また、本発明のポリマーアロイ繊維は、紡糸した後に一旦巻き取ることなく引き続き延伸する直接紡糸延伸法、紡糸速度を4000m/分以上のように高速として実質的に延伸工程を省略する高速紡糸法、それらを組合せた高速直接紡糸延伸法、加えて、紡糸した後に一旦巻き取り、巻き取った後に延伸する2工程法等のいずれの製造方法でも可能であるが、未延伸糸の寸法や物性の経時変化を抑制するため、紡糸速度は2000m/分以上として繊維構造を発達させることが好ましい。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。また、本発明のポリマーアロイ繊維の物性の測定方法は以下の通りである。
A.ポリカプラミドの98%硫酸相対粘度(ηr)
オストワルド粘度計にて下記溶液の25℃での落下秒数を測定し、下式により算出した。
ポリカプラミドを1g/100mlとなるように溶解した98%濃硫酸(T1)、98%濃硫酸(T2)とすると、
(ηr)=T1/T2。
B.ポリカプラミド中の低分子量残留物量(MO量)
35メッシュを通過し、115メッシュに留まるポリカプラミド粉末を、水分率が0.03重量%以下となるまで乾燥、その重量を秤量した(W1)。その後、浴比200倍の沸騰水で4hr抽出し、水洗後、再び水分率が0.03重量%以下となるまで乾燥、その重量を秤量した(W2)。下式により算出した。
(MO量)(重量%)={(W1−W2)/W1}×100。
C.ポリ乳酸の重量平均分子量(Mw)
ポリ乳酸のクロロホルム溶液にテトラヒドロフランを混合し測定溶液とした。これをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレン換算でMwを求めた。
D.ポリエチレンテレフタレート(PET)、共重合PET(SST)の固有粘度(IV)
オストワルド粘度計にて下記溶液の25℃での落下秒数を測定し、下式により算出した。
試料を0.8g/10mlとなるように溶解したオルトクロロフェノール(T1)、オルトクロロフェノール(T2)とすると、
(ηr)=T1/T2
(IV)=0.0242ηr+0.2634。
E.核磁気共鳴分光分析(NMR)によるエステルアミド交換反応率
繊維およびチップの1H−NMRスペクトルを測定し、ポリエステルのアミド結合している塩基酸のシグナル強度(a)と、ポリエステルのエステル結合している塩基酸のシグナル強度(b)から、ポリエステルを構成する全塩基酸のうちアミド結合している塩基酸の割合について算出した。
エステルアミド交換反応率(モル%)={2a/(a+b)}×100
1H−NMR測定条件詳細を下記する。
装置:Varian UNITY INOVA600型
観測核:1H
観測周波数:599.5MHz
溶媒:HFIP−d2
濃度:40mg/1g
基準:TMS
温度:25℃
観測幅:8kHz
データ点:64K
flip angle:45°
繰り返し時間:7.0sec
積算回数:128。
F.透過型電子顕微鏡(TEM)による繊維およびペレットの断面観察
繊維については繊維横断面に、ペレットについては任意の断面に超薄切片を切り出し、TEM(日立(株)社製H−7100FA型)で断面を観察した。また、海と島の識別がしやすいようにPTA染色を施した。
G.島ポリマーの直径、平均直径、直径300nm以上の粗大島の総面積の割合
TEMによる繊維およびペレットの断面写真を画像処理ソフト(三谷商事(株)社製WINROOF)を用いて処理し、求めた島ポリマーの面積を円換算して直径を算出した。島ポリマーの平均直径は、得られた個々の直径から数平均して算出した。直径300nm以上の粗大島の総面積の割合は、島の総面積に占める割合で算出した。これらの算出に用いる島ドメイン数は、同一断面内で無作為抽出した300の島ドメインとした。ただし、TEM観察用のサンプルは超薄切片とするため、サンプルに破れや穴あきが発生しやすい。このため、島ポリマーの直径解析時にはサンプルの状況と照らし合わせながら慎重に行った。
H:毛羽数
多点毛羽計数装置(東レエンジニアリング社製MFC−120)を用いて、繊維パッケージから繊維を600m/分で解舒し、5時間測定、装置に表示される毛羽数をカウントした。
I.吸湿性(標準吸湿率、最高吸湿率、吸湿率差)
(1)繊維から編密度が45本/2.54cmの丸編地を作成し、ポリエステル成分がポリ乳酸(PLA)、SSTのポリマーアロイ繊維丸編地については、2%−水酸化ナトリウム水溶液で、95℃で1hr浸透し、ポリエステル成分を溶解除去後、流水で1hr水洗し、1日間風乾した。
ポリエステル成分がPETのポリマーアロイ繊維丸編地については、6%−水酸化ナトリウム水溶液で、95℃で4hr浸透し、ポリエステル成分を溶解除去後、流水で1hr水洗し、1日間風乾した。
なお、ポリカプラミド(PA6)単独繊維丸編地については、流水で1hr水洗し、1日間風乾の操作のみを行った。
(2)上記操作を行った丸編地1gを、重量既知の秤量瓶に入れ、秤量瓶の蓋を開放した状態で、乾燥機中で40℃、10Torr以下で30分間予備乾燥した。
(3)予備乾燥後の丸編地を、20℃、65%RHに設定された恒温恒湿槽中に、秤量瓶の蓋を開放した状態で入れ、24時間調湿した。
(4)調湿後、秤量瓶に蓋をした後、速やかに丸編地の入った秤量瓶の総重量を測定し、そこから秤量瓶の重量を差し引き、丸編地の重量(W65%)を算出した。
(5)重量算出後の丸編地を、30℃、90%RHに設定された恒温恒湿槽中に秤量瓶の蓋を開放した状態で入れ、24時間調湿した。
(6)調湿後、秤量瓶に蓋をした後、速やかに丸編地の入った秤量瓶の総重量を測定し、そこから秤量瓶の重量を差し引き、丸編地の重量(W90%)を算出した。
(7)重量算出後の丸編地を、秤量瓶の蓋を開放した状態で、乾燥機中で80℃、10Torr以下で1時間乾燥した。
(8)乾燥後、秤量瓶に蓋をした後、速やかに丸編地の入った秤量瓶の総重量を測定し、そこから秤量瓶の重量を差し引き丸編地の重量(W)を算出した。
(9)上記W65%、W90%、Wから下式により算出した。
標準吸湿率(MR65%)=(W65%−W)/W×100(重量%)
最高吸湿率(MR90%)=(W90%−W)/W×100(重量%)
吸湿率差(ΔMR)=MR90%−MR65%(重量%)。
J.吸水性(バイレック法)
JIS L 1907(1994)のバイレック法に準じて測定した。なお、試料については、繊維から織密度がウェール120本/2.54cm、コース90本/2.54cmの平織地を作成し、ポリエステル成分がポリ乳酸(PLA)、SSTのポリマーアロイ繊維平織地については、2%−水酸化ナトリウム水溶液で、95℃で1hr浸透し、ポリエステル成分を溶解除去後、流水で1hr水洗し、1日間風乾したものを使用した。
ポリエステル成分がPETのポリマーアロイ繊維平織地については、6%−水酸化ナトリウム水溶液で、95℃で4hr浸透し、ポリエステル成分を溶解除去後、流水で1hr水洗し、1日間風乾したものを使用した。
なお、ポリカプラミド(PA6)単独繊維平織地については、流水で1hr水洗し、1日間風乾したものを使用した。
(実施例1、2、3)
ポリアミドとしてηrが2.6、MO量が1重量%のポリカプラミドと、ポリエステルとしてMwが12万のポリ乳酸とを、両者の水分率が0.03重量%以下になるまで乾燥した後、表1に示す重量比で、二軸押出混練機で、240℃で溶融混練して、実施例1、2については、海がポリ乳酸、島がポリカプラミドの海島構造状のポリマーアロイチップを、実施例3については、海がポリカプラミド、島がポリ乳酸の海島構造状のポリマーアロイチップを得た。
そして、これらのポリマーアロイチップを水分率が0.03重量%以下になるまで乾燥した後、プレッシャーメルタータイプ溶融紡糸機で、240℃で溶融吐出し、18℃の冷風で冷却、給油した後に、巻取速度4000m/分で高速直接紡糸延伸を行い、133デシテックス−48フィラメントのポリマーアロイ繊維を得た。得られたポリマーアロイ繊維は、実施例1、2については、海がポリ乳酸、島がポリカプラミドの海島構造状のポリマーアロイ繊維、実施例3については、海がポリカプラミド、島がポリ乳酸の海島構造状のポリマーアロイ繊維であった。
得られたポリマーアロイ繊維について、エステルアミド交換反応率、毛羽数、島の平均直径、直径300nm以上の粗大島の総面積の割合ついて測定した。また、紡糸操業性については、ポリマーアロイ繊維を1t生産した際の紡糸糸切れ回数について評価した。また、得られたポリマーアロイ繊維を2%−水酸化ナトリウム水溶液で、95℃で1hr浸透し、ポリ乳酸を溶解除去した際のポリカプラミド繊維の形態は、実施例1、2については、ナノサイズの極細繊維がバンドル状に収束した形態、実施例3については、ナノサイズの細孔を多数有する多孔繊維となっていた。また、実施例1、2については吸湿性、実施例3については吸水性をあわせて評価した。これらの結果を表1,2に示す。
(実施例4、5)
ポリアミドとしてηrが2.6、MO量が1重量%のポリカプラミドと、ポリエステルとしてIV(固有粘度)が0.653のPETとを、両者の水分率が0.03重量%以下になるまで乾燥した後、表1に示す重量比で、二軸押出混練機で、265℃で溶融混練して、実施例4については、海がPET、島がポリカプラミドの海島構造状のポリマーアロイチップを、実施例5については、海がポリカプラミド、島がPETの海島構造状のポリマーアロイチップを得た。
そして、これらのポリマーアロイチップを265℃で溶融吐出する以外は、実施例1と同様に紡糸し、133デシテックス−48フィラメントのポリマーアロイ繊維を得た。得られたポリマーアロイ繊維は、実施例4については、海がPET、島がポリカプラミドの海島構造状のポリマーアロイ繊維、実施例5については、海がポリカプラミド、島がPETの海島構造状のポリマーアロイ繊維であった。
得られたポリマーアロイ繊維について、実施例1と同様の項目について測定、評価した。また、得られたポリマーアロイ繊維を6%−水酸化ナトリウム水溶液で、95℃で4hr浸透し、PETを溶解除去した際のポリカプラミド繊維の形態は、実施例4については、ナノサイズの極細繊維がバンドル状に収束した形態、実施例5については、ナノサイズの細孔を多数有する多孔繊維となっていた。また、実施例4については吸湿性、実施例5については吸水性をあわせて評価した。これらの結果を表1,2に示す。
(実施例6、7)
ポリアミドとしてηrが2.6、MO量が1重量%のポリカプラミドと、ポリエステルとしてIVが0.546の5−ナトリウムスルホイソフタル酸を5モル%共重合したSSTとを、両者の水分率が0.03重量%以下になるまで乾燥した後、表1に示す重量比で、二軸押出混練機で、265℃で溶融混練して、実施例6については、海がSST、島がポリカプラミドの海島構造状のポリマーアロイチップを、実施例7については、海がポリカプラミド、島がSSTの海島構造状のポリマーアロイチップを得た。
そして、これらのポリマーアロイチップを265℃で溶融吐出する以外は、実施例1と同様に紡糸し、133デシテックス−48フィラメントのポリマーアロイ繊維を得た。得られたポリマーアロイ繊維は、実施例6については、海がSST、島がポリカプラミドの海島構造状のポリマーアロイ繊維、実施例7については、海がポリカプラミド、島がSSTの海島構造状のポリマーアロイ繊維であった。
得られたポリマーアロイ繊維について、実施例1と同様の項目について測定、評価した。また、得られたポリマーアロイ繊維を2%−水酸化ナトリウム水溶液で、95℃で1hr浸透し、SSTを溶解除去した際のポリカプラミド繊維の形態は、実施例6については、ナノサイズの極細繊維がバンドル状に収束した形態、実施例7については、ナノサイズの細孔を多数有する多孔繊維となっていた。また、実施例6については吸湿性、実施例7については吸水性をあわせて評価した。これらの結果を表1,2に示す。
(比較例1)
280℃で溶融混練する以外は実施例1と同様に溶融混練し、海がポリ乳酸、島がポリカプラミドの海島構造状のポリマーアロイチップを得た。
そして、このポリマーアロイチップを280℃で溶融吐出する以外は、実施例1と同様に紡糸し、133デシテックス−48フィラメントのポリマーアロイ繊維を得た。得られたポリマーアロイ繊維は、海がポリ乳酸、島がポリカプラミドの海島構造状のポリマーアロイ繊維であった。
得られたポリマーアロイ繊維について、実施例1と同様の項目について測定、評価した。また、得られたポリマーアロイ繊維を2%−水酸化ナトリウム水溶液で、95℃で1hr浸透し、ポリ乳酸を溶解除去した際のポリカプラミド繊維の形態は、ナノサイズの極細繊維がバンドル状に収束した形態となっていた。また、吸湿性もあわせて評価した。これらの結果を表1,2に示す。
(比較例2)
290℃で溶融混練する以外は実施例4と同様に溶融混練し、海がポリエチレンテレフタレート、島がポリカプラミドの海島構造状のポリマーアロイチップを得た。
そして、このポリマーアロイチップを290℃で溶融吐出する以外は、実施例1と同様に紡糸し、133デシテックス−48フィラメントのポリマーアロイ繊維を得た。得られたポリマーアロイ繊維は、海がポリエチレンテレフタレート、島がポリカプラミドの海島構造状のポリマーアロイ繊維であった。しかし、紡糸経時での紡糸操業性が徐々に悪化していき、最終的に紡糸不能となった。
得られたポリマーアロイ繊維について、実施例1と同様の項目について測定、評価した。また、得られたポリマーアロイ繊維を6%−水酸化ナトリウム水溶液で、95℃で4hr浸透し、ポリエチレンテレフタレートを溶解除去した際のポリカプラミド繊維の形態は、ナノサイズの極細繊維がバンドル状に収束した形態となっていた。また、吸湿性もあわせて評価した。これらの結果を表1,2に示す。
(比較例3)
290℃で溶融混練する以外は実施例6と同様に溶融混練し、海がSST、島がポリカプラミドの海島構造状のポリマーアロイチップを得た。
そして、このポリマーアロイチップを290℃で溶融吐出する以外は、実施例1と同様に紡糸し、133デシテックス−48フィラメントのポリマーアロイ繊維を得た。得られたポリマーアロイ繊維は、海がSST、島がポリカプラミドの海島構造状のポリマーアロイ繊維であった。しかし、紡糸経時での紡糸操業性が徐々に悪化していき、最終的に紡糸不能となった。
得られたポリマーアロイ繊維について、実施例1と同様の項目について測定、評価した。また、得られたポリマーアロイ繊維を2%−水酸化ナトリウム水溶液で、95℃で1hr浸透し、SSTを溶解除去した際のポリカプラミド繊維の形態は、ナノサイズの極細繊維がバンドル状に収束した形態となっていた。また、吸湿性もあわせて評価した。これらの結果を表1,2に示す。
(比較例4)
ηrが2.6、MO量が1重量%のポリカプラミドチップを水分率が0.03重量%以下になるまで乾燥した後、プレッシャーメルタータイプ溶融紡糸機で、260℃で溶融吐出し、18℃の冷風で冷却、給油した後に、巻取速度4000m/分で高速直接紡糸延伸を行い、133デシテックス−48フィラメントの繊維を得た。
得られた繊維について毛羽数を測定した。また、紡糸操業性については、繊維を1t生産した際の紡糸糸切れ回数について評価した。また、吸湿性、吸水性もあわせて評価した。これらの結果を表1,2に示す。
表1,2の結果から明らかなように、本発明のポリマーアロイ繊維は、従来ポリマーアロイ繊維と比較して、ゲルのポリマーへの混入等による紡糸操業性不良、ゲルに起因する繊維糸条の毛羽が改善されており、極めて顕著な効果を奏するものであると言える。