JP2014043659A - 海島型複合断面繊維およびその製造方法 - Google Patents

海島型複合断面繊維およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】複合界面の剥離を抑制することができ、毛羽、糸切れ等を大幅に改善することができる海島型複合断面繊維、及び当該海島型複合繊維中に含まれるポリエステルを溶解除去して得られる極細ポリアミド繊維を提供する。
【解決手段】主たる繰返し単位がエチレンテレフタレートより構成され、全酸成分に対し金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分が2.0〜5.5モル%、全酸性分に対するアジピン酸成分が3.0〜6.0モル%含有するアルカリ易溶出性ポリエステルを海成分、ポリアミドを島成分とした海島型複合断面繊維であり、該海島型複合断面繊維において、エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の単位反応率が0.0005〜0.0025%・mmであることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、海島型複合断面繊維に関するものである。更に詳しくは、極細ポリアミド繊維を得るために好適な海島型複合断面繊維に関するものである。
ポリカプロアミドやポリヘキサメチレンアジパミドに代表されるポリアミド繊維や、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートに代表されるポリエステル繊維は、力学特性や寸法安定性に優れるため、衣料用途のみならずインテリアや車両内装、産業用途等幅広く利用されている。
繊維に吸着性(吸湿性、吸水性、消臭性等)やソフト性を付与することを目的とした極細繊維を溶融紡糸するに際し、単糸直径がミクロンサイズの繊維については、紡糸口金設計に主眼を置いた単独ポリマーでの溶融紡糸でも得ることができるが、さらに極細の繊維については、易溶解性ポリマーとの複合紡糸をして複合断面繊維を得て、易溶解性ポリマーを溶解除去して得るのが主流である。
例えば、アルカリ易溶性共重合ポリエステルを用いたポリエステル系海島型複合繊維(特許文献1、3)、アルカリ易溶性共重合ポリエステルとナイロン66を用いた海島型複合繊維(特許文献2)が開示されている。しかしながら、特許文献1〜3に記載の共重合ポリエステルを海成分、ポリアミドを島成分とした海島型複合繊維とした際、相溶性の乏しいポリマーの組み合わせであるため、複合界面が剥離しやすく、毛羽が散発する問題が生じ易いという問題があり、またポリエステル分子鎖におけるエステル結合部分やカルボキシル末端部分と、ポリアミド分子鎖におけるアミド結合部分やアミノ末端部分が、溶融時に複合界面において、エステル・アミド交換反応を起こすことによって副生成物を生じ、これに起因して製糸性が悪化するという問題を有していた。
また、極細ポリアミド繊維を得るために好適な海島型複合断面繊維を得るのに際し、海成分であるポリエステルを溶解除去する必要があるため、特許文献1〜3に記載の共重合ポリエステルをポリアミドと組み合わせると、相溶性の乏しいポリマーの組み合わせであり、島成分の均一性に欠け、繊維長手方向でのバラツキの多い繊維であった。さらには、溶解除去工程の時間短縮(コストダウン)も求められている。
また、平均単繊維繊度が0.001dtex以上0.5dtex以下の極細繊維を得るための海島型複合繊維の例として、5−スルホイソフタル酸ナトリウムを共重合したポリエチレンテレフタレートとPETの海島型繊維(特許文献4)が開示されている。例えば、特許文献4に記載の共重合ポリエステルを海成分として用い、PETのかわりにポリアミドを島成分とした海島型複合断面繊維とした際、相溶性の乏しいポリマーの組み合わせであり、複合界面が剥離しやすく、毛羽が散発する問題が生じ、また、製糸性にも劣るものであった。さらには、溶解除去工程の時間短縮(コストダウン)も求められている。
特開2010−70739号公報 特開2004−137319号公報 特開2007−100253号公報 特開2007−177382号公報
本発明は、上述したような従来の問題を解決し、海成分として用いていたポリエステルでは島成分のポリアミドとの親和性が悪いため問題となっていた製糸時の複合界面の剥離を抑制することができ、また、ポリエステル−ポリアミド間のエステル・アミド交換反応物に起因する毛羽、糸切れ等を大幅に改善することができ、アルカリ溶解速度が速く、工業的にも有利な海島型複合断面繊維を提供する。さらには、本発明の海島型複合断面繊維中に含まれるポリエステルを溶解除去して得られる極細ポリアミド繊維を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
(1)主たる繰返し単位がエチレンテレフタレートより構成され、全酸成分に対し金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分を2.0〜5.5モル%、全酸性分に対するアジピン酸成分を3.0〜6.0モル%含有するアルカリ易溶出性ポリエステルを海成分、ポリアミドを島成分とした海島型複合断面繊維であり、該海島型複合断面繊維において、エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の単位反応率が0.0005〜0.0025%・mmである海島型複合断面繊維。
(2)ポリアミドのアミノ末端基量が5×10-5〜5.5×10-5mol/gであることを特徴とする(1)に記載の海島型複合断面繊維。
(3)ポリエステルのカルボキシル末端基量が35〜55eq/tであることを特徴とする(1)または(2)に記載の海島型複合断面繊維。
(4)ポリエステルに可溶なチタン化合物をチタン元素換算で3〜10ppm含有し、リン化合物をリン元素換算で5〜40ppm含有するアルカリ易溶出性ポリエステルを用いた(1)〜(3)のいずれかに記載の海島型複合断面繊維。
(5)前記ポリエステルとポリアミドの重量比が、10:90〜30:70の範囲にあることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の海島型複合断面繊維。
(6)伸度が30〜50%であって、繊維糸条の長さ1万m当たりの毛羽数が0〜2個であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の海島型複合断面繊維。
(7)主たる繰返し単位がエチレンテレフタレートより構成され、全酸成分に対し金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分が2.0〜5.5モル%、全酸性分に対するアジピン酸成分が3.0〜6.0モル%含有することを特徴とするアルカリ易溶出性ポリエステルを海成分、ポリアミドを島成分として溶融紡糸する海島型複合断面繊維の製造方法であり、該海島型複合断面繊維において、エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の単位反応率を0.0005〜0.0025%・mmになるようにすることを特徴とする海島型複合断面繊維の製造方法。
(8)ポリアミドのアミノ末端基量が5×10-5〜5.5×10-5mol/gであることを特徴とする(7)に記載の海島型複合断面繊維の製造方法。
(9)ポリエステルのカルボキシル末端基量が35〜55eq/tであることを特徴とする(7)または(8)に記載の海島型複合断面繊維の製造方法。
(10)(1)〜(6)のいずれかに記載の海島型複合断面繊維を少なくとも一部に有する布帛。
(11)(1)〜(6)のいずれかに記載の海島型複合断面繊維をアルカリ処理することにより、ポリエステルが溶解除去して形成されることを特徴とする極細ポリアミド繊維。
(12)(11)に記載の極細ポリアミド繊維を少なくとも一部に有する布帛。
(13)(11)に記載の極細ポリアミド繊維を少なくとも一部に有する繊維製品。
本発明によれば、海島型複合断面繊維中に含まれるポリエステルは金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分を共重合し、さらにアジピン酸成分を共重合させることにより、製糸時の複合界面の剥離を抑制することができ、また、ポリエステル−ポリアミド間のエステル・アミド交換反応物に起因する毛羽、糸切れ等を大幅に改善することができ、さらには、アルカリ溶解速度が速く、溶解処理時間を短縮でき工業的にも有利な海島型複合断面繊維が得られる。
さらには、本発明の海島型複合断面繊維中に含まれるポリエステル溶解除去して極細ポリアミド繊維とすることにより、従来のポリアミド繊維にはない優れた特性を得ることができる。特にソフト感に極めて優れた肌触りの良い布帛や繊維製品が得られる。
実施例、比較例で用いた海島型複合紡糸口金の概略図である。
本発明の海島型複合断面繊維は、アルカリ易溶出性ポリエステルが海成分、ポリアミドが島成分の海島型複合断面繊維である。
本発明に用いられるポリアミドは、いわゆる炭化水素基が主鎖にアミド結合を介して連結された高分子量体からなる樹脂であって、かかるポリアミドとしては、染色性、機械特性に優れており、アルカリ易溶出性ポリエステルとの複合溶融紡糸に好適な、主としてポリカプロアミド(ナイロン6)からなることが好ましい。ここで言う「主として」とは、ポリカプロアミドを構成するε−カプロラクタム単位として全モノマー単位中80モル%以上であることを言い、さらに好ましくは90モル%以上である。その他の成分としては、特に限定されないが、例えば、ポリドデカノアミド、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンアゼラミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリヘキサメチレンドデカノアミド、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリヘキサメチレンテレフタラミド、ポリヘキサメチレンイソフタラミド等を構成するモノマーである、アミノカルボン酸、ジカルボン酸、ジアミン等の単位が挙げられる。
また、ポリアミドの重合度は、海島型複合断面繊維、海島型複合断面繊維中に含まれるアルカリ易溶出性ポリエステルを溶解除去して得られる極細ポリアミド繊維、あるいはそれを用いた布帛、繊維製品の要求特性、またはそれらを安定して得るために適当な範囲より適宜選択して良いが、好ましくは25℃での98%硫酸相対粘度で2.0〜3.6の範囲であり、さらに好ましくは2.4〜3.3の範囲である。
本発明の海島型複合断面繊維の海成分に用いるポリエステルは、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体をエステル化または、エステル交換反応させた後に得られるポリエチレンテレフタレートを基本骨格とする。
そのポリエチレンテレフタレートは、全酸成分に対し金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分を2.0〜5.5モル%、全酸成分に対するアジピン酸成分を3.0〜6.0モル%含むアルカリ易溶出性ポリエステルである。
アルカリ易溶出性ポリエステルは、全酸成分に対するアジピン酸成分を3.0〜6.0モル%含むことがアルカリ溶出性、ポリアミドとの親和性を有するために必須である。全酸成分に対するアジピン酸成分はさらに好ましくは3.5〜5.5モル%、最も好ましくは4.0〜5.5モル%である。3.0モル%より少ないと、得られるポリエステルの色調や耐熱性は良好であるが、複合界面での剥離が生じ、アルカリに対する溶出性も低下する。6.0モル%より多いと得られるポリエステルの耐熱性が劣るため、製糸性が悪くなる。
アルカリ易溶出性ポリエステルにおけるアジピン酸成分を構成する単量体には、アジピン酸もしくはアジピン酸のエステル形成誘導体が用いられる。例えば、アジピン酸形成誘導体としては、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル、エチレングリコールエステル等のアジピン酸形成誘導体を用いることが出来る。このアジピン酸成分は、原料調達が容易という点から、アジピン酸やアジピン酸ジメチルが好ましい。
アルカリ易溶出性ポリエステルは、全酸成分に対して金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分を2.0〜5.5モル%含むことが、良好なアルカリ溶出性を有するために必須である。この金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分はさらに好ましくは2.0〜4.0モル%、最も好ましくは2.0〜3.0モル%である。2.0モル%より少ないと、得られるポリエステルの色調や耐熱性は良好であるが、アルカリに対する溶出性が低下する。5.5モル%より多いと、得られるポリエステルの耐熱性が劣るため、製糸性が悪くなる。
アルカリ易溶出性ポリエステルの金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分を生成する単量体には、公知の金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分を使用することが出来るが、好ましくは、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルである。
アルカリ易溶出性ポリエステルは、ポリエステルに可溶なチタン化合物をチタン元素換算で3〜10ppm含有することが好ましい。さらに好ましくは4〜8ppmである。チタン元素換算で3ppmより少ないと、重合反応活性が不足し反応が遅延してしまい、得られるポリエステルが黄味に着色する。チタン元素換算で10ppmより多いと、重合反応の活性は良好であるが、高活性のため得られるポリエステルの色調や耐熱性が悪化する。
アルカリ易溶出性ポリエステルに可溶なチタン化合物としては、チタン錯体であることが好ましく、錯体を形成するキレート剤としては、多価アルコール、多価カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、含窒素カルボン酸などが好ましく挙げられ、これらは1種以上で用いることが、得られるポリエステルの色調や耐熱性の観点から好ましい。
アルカリ易溶出性ポリエステルに可溶なチタン化合物のキレート剤の具体例は、多価アルコールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、マンニトール等が挙げられ、多価カルボン酸として、フタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ヘミリット酸、ピロメリット酸等が挙げられ、ヒドロキシカルボン酸として、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等が挙げられ、含窒素カルボン酸として、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、カルボキシイミノ二酢酸、カルボキシメチルイミノ二プロピオン酸、ジエチレントリアミノ酸、トリエチレンテトラミノ六酢酸、イミノ二酢酸、イミノ二プロピオン酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二プロピオン酸、メトキシエチルイミノ二酢酸等が挙げられる。これらのチタン化合物は単独で用いても、併用して用いても良い。なお繊維等で一般的に使用される酸化チタンは、ポリエステルに可溶ではないため本発明でいうチタン化合物からは除外される。
アルカリ易溶出性ポリエステルは、リン化合物をリン元素換算で5〜40ppm含有することが好ましい。さらに好ましくは9〜35ppmである。リン元素換算で5ppmより少ないと、アジピン酸成分と金属スルホネート基を含有するイソフタル酸性分が共重合されているためポリエステルの分解反応が促進されやすく、得られるポリエステルの色調や耐熱性が悪化する。リン元素換算で40ppmより多いと、重合反応触媒が失活するため重合反応活性が低下し、重合反応が遅延してしまい、得られるポリエステルが黄味に着色する。
リン化合物としては、下記一般式(式1)〜(式5)にて表されるリン化合物を用いることが出来る。この(式1)または(式2)で示されるホスホナイト化合物ならびに(式3)で示されるホスフェイト化合物を用いると、アジピン酸成分と金属スルホネート基を含有するイソフタル酸性分が共重合されているにもかかわらず、アルカリ易溶出性ポリエステルは溶融紡糸時の色調のさらなる改善や耐熱性に優れる点で好ましい。
Figure 2014043659
(上記(式1)中、R1〜R2は、それぞれ独立に、水酸基または炭素数1〜20の炭化水素基を表している。)
Figure 2014043659
(上記(式2)中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水酸基または炭素数1〜20の炭化水素基を表している。)
Figure 2014043659
(上記(式3)中、R1〜R3は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の炭化水素基を表している。)
ポリエステルの着色や耐熱性の悪化は、飽和ポリエステル樹脂ハンドブック(日刊工業新聞社、初版、P.178〜P.198)に明示されているように、ポリエステル重合反応の副反応によって起こる。このポリエステルの副反応は、金属触媒によってカルボニル酸素が活性化し、β水素が引き抜かれることにより、ビニル末端基成分およびアルデヒド成分が発生する。このビニル末端基によりポリエンが形成されることによってポリエステルが黄味に着色し、また、アルデヒド成分が発生するために、主鎖エステル結合が切断されるため、耐熱性が劣ったポリエステルとなる。特に、アジピン酸成分や金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分をポリエステル骨格に有している場合、金属触媒によるカルボニル酸素への配位が容易に起こりやすく、β水素が引き抜かれやすくなり、ビニル末端機成分およびアルデヒド成分が発生しやすい。このビニル末端基により、ポリエンが形成されることによってポリエステルが黄味に着色し、また、アルデヒド成分が発生するために、主鎖エステル結合が切断されやすくなるため、耐熱性や色調が劣ったポリエステルとなる。
またチタン化合物を重合触媒として用いると、熱による副反応の活性化が強いために、ビニル末端基成分やアルデヒド成分が多く発生し、黄味に着色した耐熱性が劣ったポリエステルとなる。リン化合物は、重合触媒と適度に相互作用することにより、重合触媒の活性を調節する役割を果たすばかりか、アジピン酸成分や金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分のカルボニル酸素へのチタン化合物の配位を起こりにくくする。
アルカリ易溶出性ポリエステルの(式1)または(式2)のホスホナイト化合物および(式3)のホスフェイト化合物を用いると、チタン化合物の重合活性を充分に保持したまま、ポリエステルの耐熱性や色調を飛躍的に向上させることができるため好ましい。
中でも下記一般式(式4)で表されるリン化合物を用いると、ポリエステルの色調や耐熱性に優れる。
Figure 2014043659
(上記(式4)中、R5〜R7は、それぞれ独立に、水酸基または炭素数1〜10の炭化水素基を表している。なお、炭化水素基は脂環構造、脂肪族の分岐構造、芳香族構造、水酸基および2重結合を1つ以上含んでいても良い。また、a,b,cは整数で、a+b+c=0〜5を満たす。)
上記(式4)にて表されるリン化合物としては、例えばaが2、bが0、cが0、R5がtert−ブチル基、R5が2,4位の化合物として、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイトがあり、この化合物はIRGAFOS P−EPQ(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)または、Sandostab P−EPQ(クラリアント・ジャパン社製)として入手可能である。
中でも、下記一般式(式5)で表されるリン化合物であることが、得られるポリエステルの色調や耐熱性が特に良好となるため好ましい。
Figure 2014043659
(上記(式5)中、R8〜R10は、それぞれ独立に、水酸基または炭素数1〜10の炭化水素基を表している。なお、炭化水素基は脂環構造、脂肪族の分岐構造、芳香族構造、水酸基および2重結合を1つ以上含んでいても良い。)
上記(式5)にて表されるリン化合物としては、R8がtert−ブチル基、R9がtert−ブチル基、R10がメチル基の化合物として、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−イルビスホスホナイトがあり、この化合物はGSY−P101(大崎工業社製)として入手可能である。
さらには、前記(式3)にて表されるリン化合物として、R1〜R3が全てメチル基であるトリメチルホスフェイトであることが、得られるポリエステルの色調や耐熱性が良好となるため好ましい。この化合物はTMP(大八化学社製)として入手可能である。
アルカリ易溶出性ポリエステルは、真比重5以上の元素を実質的に含まないことが好ましい。真比重5以上の元素とは、例えば、重合触媒として一般的に使用されているアンチモン元素や、エステル交換触媒として一般的に使用されるコバルト元素やマンガン元素である。
上記の実質的に含まないとは、含有量が10ppm以下であることを表し、好ましくは5ppm、さらに好ましくは3ppm以下である。
その他、本発明の目的を損なわない範囲で公知の添加物を含有することが出来る。例えば、水酸化テトラエチルアンモニウム(以下、EAH)や酢酸リチウム(以下、LAH)などのジエチレングリコール(以下、DEG)の副生抑制剤、酢酸マグネシウム等の金属酢酸塩に代表されるエステル交換反応触媒や、IR1010(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]などに代表されるラジカル捕捉剤、酸化チタンに代表される艶消し剤などである。特に、EAHの含有量は窒素換算で125ppm以下が好ましく、さらに好ましくは40ppm以下である。
LAHの含有量は、リチウム元素として15〜70ppmが好ましく、25〜55ppmがより好ましい。これらDEGの副生抑制剤は併用も出来る。
エステル交換反応触媒として使用される酢酸マグネシウムは、マグネシウム元素の真比重が5以下であり、好ましい。その含有量はマグネシウム元素として、40ppm〜100ppmが好ましく、さらに好ましくは50ppm〜90ppmである。
なお、艶消し剤として使用される酸化チタンを含有しても良く、得られるポリエステルの紡糸を安定的に実施するために、酸化チタン濃度として2.5質量%まで含有することが出来る。
本発明の海島型複合断面繊維に含まれるアルカリ易溶出性ポリエステルとポリアミドの質量比は、海島型複合断面繊維中に含まれるアルカリ易溶出性ポリエステルを溶解除去して得られる極細ポリアミド繊維、あるいはそれを用いた布帛、繊維製品の要求特性、またはそれらを安定して得るために適当な範囲より適宜選択して良いが、通常は5:90〜40〜60の範囲が選択でき、好ましくはアルカリ易溶出性ポリエステルとポリアミドの質量比10:90〜30:70の範囲である。前記ポリアミドの質量比が90を超える場合は、溶融紡糸時に島成分であるポリアミド同士が融合しやすくなるため、アルカリ易溶出性ポリエステルを溶解除去したとき、均一な繊維径を有する極細ポリアミド繊維を得にくくなる。また、前記ポリアミドの質量比が70未満の場合は、アルカリ易溶出性ポリエステルの溶解除去に必要な溶剤が多くなる等、安全性や自然環境保護の観点、また、経済的観点からも好ましくない。また、アルカリ易溶出性ポリエステルを溶解除去して得られる極細ポリアミド繊維自体が溶解除去前の海島型複合断面繊維と比べて細くなりすぎることから、布帛等にした時、布帛密度が荒くなりすぎて、繊維製品の布帛設計が困難となったり、製品バリエーションが少なくなったりする可能性がある。
本発明の海島型複合断面繊維は、エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の単位反応率(A)が0.0005〜0.0025%・mmであることが必須である。ここで言うエステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の単位反応率(A)とは、エステル・アミド結合しているテレフタル酸の交換反応率(T)を海島型複合断面繊維単位体積当たりの島の表面積(S)で除した値である。単位反応率(A)が0.0005%・mm未満の場合、複合界面が剥離しやすく毛羽が散発しやすくなる。また、単位反応率(A)が0.0025%・mmを超える場合、複合界面でのテレフタル酸と反応し、この反応過程においてゲルが生成されやすく、製糸性が悪くなりやすい。さらに好ましくは、0.0009〜0.0020%・mmである。
エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の交換反応率(T)は、1H−NMRスペクトルを測定し、エステル・アミド結合しているテレフタル酸のシグナル定量値(A1)と、全テレフタル酸のシグナル定量値(A2)から、エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の交換反応率について、T=(A1/A2)×100で算出される値である。また、エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の単位反応率(A)は、エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の交換反応率(T)と、海島型複合断面繊維1mm3当たりの島の表面積(S;mm2/mm3)から、A(%・mm)=T/Sで算出される値である。また、エステル・アミド結合しているテレフタル酸のシグナル定量値(A1)、全テレフタル酸のシグナル定量値(A2)、島の表面積(S)は後述の通りである。
エステル・アミド交換反応は、アルカリ易溶出ポリエステルとポリアミドとの複合界面でもっぱら生じる反応と考えられる。本発明においては、エステル・アミド交換反応を制御することにより、より一層の製糸性向上の効果を発揮することができる。また、エステル・アミド結合しているテレフタル酸の交換反応率(T)は、海島型複合断面繊維全体の反応率である。しかしながら、前述したように反応が生じている部分は、複合界面で起きており、複合界面は、単糸繊度、複合比率、島数など海島型複合断面繊維設計により反応が生じうる面積は異なってくる。例えば、単位反応率(A)で算出される値は、交換反応率(T)が同値でも、反応が生じている複合界面の面積が大きい場合、単位反応率(A)は小さくなり界面でのエステル・アミド反応を抑制しており、反応が生じている複合界面の面積が小さい場合、単位反応率(A)は大きくなりエステル・アミド反応が進行していることを言う。従って、本発明では、海島型複合断面繊維単位体積当たりの島の表面積を想定し、交換反応率(T)をその面積で除することにより、エステル・アミド交換反応の状態を評価することにしている。
本発明の海島型複合断面繊維の島成分を構成するポリアミドのアミノ末端基量が、5×10-5〜5.5×10-5mol/gであることが好ましく、さらに好ましくは5.1×10-5〜5.3×10-5mol/gである。ポリアミドのアミノ末端基量が5×10-5mol/g未満の場合、得られる海島型複合断面繊維中に含まれるアルカリ易溶出性ポリエステルを溶出除去して得られる極細ポリアミド繊維の染色性が悪化し、これにより得られる繊維製品を染色した際、発色性が劣位となるのに加え、ポリエステルとポリアミドの複合界面が剥離しやすく、毛羽が散発する傾向にある。またポリアミド成分のアミノ末端基量が5.5×10-5mol/gを越える場合、複合界面において、ポリエステル−ポリアミド間のエステル・アミド交換反応物の発生が増加する結果、糸切れが増大する傾向にある。なお、ポリアミドのアミノ末端基量は、公知の方法により調整することができる。
本発明の海島型複合断面繊維の海成分を構成するポリエステルのカルボキシル末端基量については35〜55eq/t(eqは当量、tはトンを表す。)であることが好ましく、さらに好ましくは40〜50eq/tである。ポリエステルのカルボキシル末端基量が35eq/t未満の場合、ポリエステルとポリアミドの複合界面が剥離しやすく、毛羽が散発する問題が生じる。またポリエステルのカルボキシル末端基量が55eq/tを越える場合、複合界面において、ポリエステル−ポリアミド間のエステル・アミド交換反応物の発生が増加する結果、糸切れが増大する傾向がある。なお、上記本発明の海島型複合断面繊維の海成分を構成するポリエステルのカルボキシル末端基量の調節は、通常のポリエステルのカルボキシ末端基量制御手段を応用でき、例えば最終重合温度を変更することで調節することが可能である。
本発明の海島型複合断面繊維の繊維横断面について、該繊維の単糸横断面の中心を通り互いに90度と直交する2本の直線を引いて該単糸を4等分したとき、その4部分の海成分の面積バラツキ(Scv)を以下の関係式とすると、下記Scvは小さいことが好ましい。
Scv=Sstd/Sx×100
(ただし、Sxは4部分の海成分の面積平均値を表し、Sstdは4部分の海成分の面積の標準偏差(不偏分散の平方根)を表す。)
Scvについて、好ましくは0〜25の範囲であり、さらに好ましくは0〜20の範囲である。かかる範囲とする目的は、島成分であるポリアミドの均一分散であり、ポリアミドの局在的な偏りによるポリアミド同士の融合を抑制することで、アルカリ易溶出性ポリエステルを溶解除去したとき、均一な繊維径を有する極細ポリアミド繊維を得ることができる。また、繊維横断面で見た場合、応力が繊維横断面に均等に分散されるため、例えば繊維長手方向での強伸度バラツキが少ない海島型複合断面繊維を得ることができる。
Scvが25を越えた場合は、島成分であるポリアミドが局在的に偏ることになり、溶融紡糸時にポリアミド同士が融合し、アルカリ易溶出性ポリエステルを溶解除去したとき、均一な繊維径を有するポリアミド極細繊維を得にくくなる。また、繊維長手方向での強伸度バラツキが多い繊維となる。
本発明の海島型複合断面繊維のアルカリ易溶出性ポリエステルを溶解除去して得られる極細ポリアミド繊維の単糸繊度は、好ましくは0.01〜0.5dtexの範囲であり、さらに好ましくは0.01〜0.2dtexの範囲である。この極細ポリアミド繊維の単糸繊度は、海島型複合断面繊維から算出する場合は、海島型複合断面繊維の総繊度、フィラメント数、ポリアミドの島数、ポリアミドの質量比率により算出できる。例えば、総繊度が78dtex、20フィラメント、ポリアミド島数37、ポリアミドの質量比率が80%の場合、78÷20×0.8÷37=0.08dtexと算出する。布帛から求める場合は、布帛から極細ポリアミド繊維糸条を取り出し、初荷重を掛け、サンプリングし、糸長、質量、フィラメント数を測定し、見掛けの総繊度、単糸繊度を算出する。極細ポリアミド繊維の単糸繊度が0.01dtex未満の場合、光の乱反射により発色性に劣り、染色堅牢度が悪くなるなど、布帛、繊維製品の品質面において劣位となりやすい。
一般的に極細ポリアミド繊維の単糸繊度を細くする場合、紡糸口金あたりの総島数を多くする、もしくは紡糸口金あたりのポリアミドの吐出量を下げるといった方法があるが、紡糸口金あたりの総島数が多くなりすぎると、前記と同様に、アルカリ易溶出性ポリエステルを溶解除去したとき、均一な繊維径を有する極細ポリアミド繊維を得にくくなるといった問題がある。また、紡糸口金あたりのポリアミドの吐出量を下げすぎると、紡糸口金での溶融したポリアミドの計量が難しくなる傾向となり、やはり、アルカリ易溶出性ポリエステルを溶解除去したとき、均一な繊維径を有する極細ポリアミド繊維を得ることができなくなるといった問題が残る。
極細ポリアミド繊維の単糸繊度が0.5dtexを超える場合、紡糸口金設計に主眼した単独ポリマーでの一発溶融紡糸でも得ることができるため、海島型複合断面繊維として得るメリットがない。
本発明の布帛、繊維製品について説明する。尚、布帛は、織物、編物、不織布を指す。
本発明の海島型複合断面繊維は、そのまま布帛、繊維製品として得ることもできるが、海島型複合繊維を少なくとも一部に有する布帛とし、アルカリにより海島型複合断面繊維中に含まれるアルカリ易溶出性ポリエステルを溶解除去することにより、ソフト感に優れた極細ポリアミド繊維、布帛を得ることが可能である。
さらには、海島型複合断面繊維中に含まれるアルカリ易溶出性ポリエステルを一部溶解除去することにより、光沢、触感等の新たな付加価値を得ることも可能である。
本発明の極細ポリアミド繊維、極細ポリアミド繊維を一部に有する布帛、繊維製品は、かかる海島型複合断面繊維のアルカリ易溶出性ポリエステルをアルカリ処理にて溶解除去して得られる。溶解除去するとは、海島型複合繊維中に含まれるアルカリ易溶出性ポリエステルをアルカリ処理にて97〜100%溶解除去することを言う。この溶解除去に用いるアルカリの種類は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられるが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの強アルカリ(pH=10〜14)を用いることが好ましい。溶解除去におけるアルカリ濃度、温度は任意に設定することができる。例えば、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)を用いる場合、0.5〜20質量%水溶液として、60〜120℃で処理することが好ましい。水溶液濃度が20質量%を超える場合、生産作業者にとっての取り扱いに危険を伴う。0.5質量%未満の場合、加水分解速度が遅くなり溶解除去時間を要するため生産性が低下する。また、その水溶液の温度が120℃を超える場合、ポリアミド(特にナイロン6の場合)は、繊維強度が低下し、布帛の引裂強力、破裂強力など物性が低下する。60℃未満の場合、加水分解速度が遅くなり溶解除去時間を要するため生産性が低下する。
本発明の海島型複合断面繊維を用いた繊維製品、また、海島型複合断面繊維中に含まれるアルカリ易溶出性ポリエステルを溶解除去したときに得られる極細ポリアミド繊維を用いた繊維製品としては、キャミソール、ショーツ等のインナーウエア、ストッキング、ソックス等のレッグニット、シャツやブルゾン等のスポーツ・カジュアルウェア、パンツ、コート、紳士・婦人衣料等の衣料用途のみならず、ブラカップやパッド等の衣料資材用途、カーテンやカーペット、マット、家具等のインテリア用途、吸水フェルト、研磨布といった工業資材用途、さらにはフィルター等の産業資材用途、車両内装用途にも好適に用いることができる。
本発明の海島型複合断面繊維の製造方法について説明する。
本発明の海島型複合断面繊維、海島複合形成性、生産性、コストの観点から、溶融紡糸による製造が最も優れている。また、溶融紡糸による製造方法について、紡糸−延伸工程を連続して行う方法(直接紡糸延伸法)、未延伸糸を一旦巻き取った後に延伸する方法(2工程法)、あるいは紡糸速度を3000m/min以上のように高速として実質的に延伸工程を省略する方法(高速紡糸法)等、いずれの方法においても製造可能である。また、必要に応じて仮撚りや空気交絡等の糸加工を施しても良い。
以下に直接紡糸延伸法での製造について例示する。
まず溶融部について説明する。ポリアミド、アルカリ易溶出性ポリエステルを溶融するに際し、プレッシャーメルター法あるいはエクストルーダー法が挙げられるが、両者とも特に限定されるものではない。溶融温度(いわゆるポリマー配管や紡糸パックまわりの保温温度)としては、可能な限り低温度で溶融紡糸する方が溶融紡糸時でのエステル・アミド交換反応が制御でき製糸性が向上するため好ましい。特に、ポリアミドとアルカリ易溶出性ポリエステルの接合時の紡糸口金内の温度をコントロールすることにより、製糸性が良好となりやすい。そのため、紡糸口金内の温度を直接測定できることが好ましいが、口金吐出面の紡糸温度測定値で代用する。
紡糸温度としては、可能な限り低温度で溶融紡糸する方が溶融紡糸時でのエステル・アミド交換反応が抑制できるため紡糸性が向上する。具体的には、ポリアミド、アルカリ易溶出ポリエステルの融点の低い方のポリマーの融点から+70℃以内が好ましく、さらに好ましくは+60℃以内である。
紡糸パックへ流入したポリアミド、アルカリ易溶出性ポリエステルは、公知の紡糸口金により合流、海島複合断面に形成されて、紡糸口金より吐出される。海島複合紡糸口金については様々な公知例があるが、島成分の流路となる複数のパイプと、これらの島成分をそれぞれ取り囲む海成分の流路(スリット)を設けてなる紡糸口金での海島複合形成が、Scvのコントロールが容易となり好ましい。
図1は、本発明で用いる海島型複合紡糸口金の一例であり、後述する実施例で用いた海島型複合紡糸口金の断面を示す概略図である。島成分流入孔(パイプ)(5)から流入された島成分が、海成分流入孔(4)〜1号板(1)および2号板(2)の隙間(6)〜スリット(7)を通過した海成分によって、合流部(8)でいわばコーティングされる形となる。海成分によってコーティングされた各島成分が、3号板(3)の合流部(9)で合流し、海島複合断面に形成されて、吐出孔(10)より吐出される。Scvを満足する良好な海島複合断面を得るには、特に海成分の計量が充分に行われる必要があり、図1に示すような島成分流入孔(パイプ)(5)におけるパイプが2号板(2)の途中まで進入しているような紡糸口金だと、海成分の計量に必要なスリット(7)長を得ることができ、さらに好ましい。
紡糸口金から吐出された海島型複合断面繊維は、冷却、固化され、油剤が付与された後、引き取られる。紡糸速度は1000〜5000m/minの範囲が好ましく、延伸糸の伸度が30〜50%の範囲となるように適宜延伸倍率を設定し、そして1ゴデッドロールを80〜100℃、2ゴデッドロールを150〜180℃の範囲に熱セット温度を設定し、延伸、熱処理を施し、巻取速度として3000〜5000m/minの範囲で巻き取るのが好ましい。また、巻き取りまでの工程で公知の交絡装置を用い、交絡を施すことも可能である。必要であれば複数回付与することで交絡数を上げることも可能である。さらには、巻き取り直前に、追加で油剤を付与するのも可能である。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。また、本発明の海島型複合断面繊維、極細ポリアミド繊維の物性の測定方法は以下の通りである。
A.ポリエステルの固有粘度IV
試料をオルソクロロフェノールに溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃で測定した。
B.Δ固有粘度280(耐熱性を表す指標)
ポリエステルを、150℃で12時間減圧乾燥させた後、窒素雰囲気下280℃で60分間加熱溶融させた後、上記Aの方法にて固有粘度を測定し、加熱溶融前後の差をΔ固有粘度280として算出した。
C.ポリエステル中のDEG含有量
ポリエステルをモノメタノールアミンで加熱分解後、1,6ヘキサンジオール/メタノールで希釈し、テレフタル酸で中和した後、ガスクロマトグラフィーのピーク面積からDEG含有量を求めた。
D.ポリエステル中のチタン元素、リン元素等の含有量
蛍光X線元素分析装置(堀場製作所社製、MESA−500W型)を用いて、リン元素、マグネシウム元素等の含有金属の元素分析を行った。
なお、ポリエステルに可溶なチタン元素の定量については、ポリエステルに不溶なチタン化合物を次の前処理を行い除去し、蛍光X線分析を行った。すなわち、ポリエステルをオルソクロロフェノールに溶解(溶媒100gに対してポリエステル5g)し、このポリエステル溶液と同量のジクロロメタンを加えて溶液の粘性を調製した後、遠心分離器(回転数18000rpm、1時間)で粒子を沈降させる。その後、傾斜法で上澄み液のみを回収し、上澄み液と同量のアセトンを添加することによりポリエステルを再析出させ、そのあと3G3のガラスフィルター(IWAKI製)で濾過し、濾上物をさらにアセトンで洗浄した後、室温で12時間真空乾燥してアセトンを除去した。以上の前処理を施して得られたポリエステルについてチタン元素の分析を行った。
E.ポリアミドの98%硫酸相対粘度(ηr)
オストワルド粘度計にて下記溶液の25℃での落下秒数を測定し、下式により算出した。ポリカプロアミドを1g/100mlとなるように溶解した98%濃硫酸(T1)、98%濃硫酸(T2)とすると、
(ηr)=T1/T2。
F.アミノ末端基量(10-5mol/g)
ナイロン6チップ約1.0gを精秤し、フェノール・エタノール混合溶媒(83.5:16.5、体積比)25mlに溶解後、0.02N塩酸水溶液を用いて滴定した。なお表1および3に記載したアミノ末端基量の単位は10-5mol/gである。
G.カルボキシル末端基量(eq/t)
ポリエステルチップ約1.5gを精秤し、オルトクレゾール40mlを加えて90℃で溶解し、0.04N水酸化カリウムエタノール溶液を用いて滴定した。
H.融点
SIIナノテクノロジー社製ロボットDSCRDC220を用い、試料を約5mg採取し、窒素雰囲気下、次の条件で測定した。融点+35℃に昇温して溶融状態とした後、20℃/分の降温速度で、30℃まで降温したときに観測される発熱ピーク(降温結晶化温度:Tc)を求めた。これに続いて、30℃で3分間保持した後、20℃/分の昇温速度で融点+35℃まで昇温したときに観測される吸熱ピークの温度(融点:Tm)を求めた。なお、吸熱ピークが2つ以上観測される場合には、最もピーク強度の大きい点を融点とした。
I.エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の単位反応率(A)
下記のエステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の交換反応率T(%)と、海島型複合断面繊維1mm3当たりの島の表面積S(mm2/mm3)を用いて、下記式にて算出した。
A(%・mm)=T/S
ここで、T:エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の交換反応率(%)
S:海島型複合断面繊維1mm3当たりに含まれる島成分の表面積(mm2/mm3
J.核磁気共鳴分光分析(NMR)によるエステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の交換反応率(T)
繊維(試料40mg)の1H−NMRスペクトルを測定し、7.89〜8.00ppmのピーク面積値(a)と 8.25〜8.34ppmのピーク面積値(b)からエステル・アミド結合しているテレフタル酸の比率を算出した。
エステル・アミド結合しているテレフタル酸の交換反応率:T(%)
T(%)=(A1/A2)×100
エステル・アミド結合しているテレフタル酸のシグナル定量値:A1
A1=(a−b)/2
全テレフタル酸のシグナル定量値:A2
A2=100b/0.55
本発明で用いるアルカリ易溶性共重合ポリエステルのテレフタル酸の1H−NMRスペクトルは通常12Cに結合するメインピークと13Cに結合するサテライトピーク(メインピークの両側(7.89〜8.00ppm付近と8.25〜8.34ppm付近)に等価に二分裂したピーク)が観測される。
そしてエステル・アミド交換が生じたポリエステルは、エステル・アミド結合しているテレフタル酸に由来するシグナルが、前記7.89〜8.00ppm付近に観測される。
なお、7.89〜8.00ppm付近に観測される13Cに結合するサテライトピークと等価なピークである8.25〜8.34ppm付近に観測される13Cに結合するサテライトピークはエステル・アミド交換反応前後で実質的な差はない。
よって、エステル・アミド結合しているテレフタル酸量は、7.89〜8.00ppm付近のピーク面積値から8.25〜8.34ppm付近に観測される13Cに結合するサテライトピーク面積値を差し引き、さらにエステル・アミド結合しているテレフタル酸のカルボキシ基のオルト位のプロトンが2つあるため、2で割ることで得られる。
具体的には(a−b)/2としてエステル・アミド結合しているテレフタル酸のシグナル定量値(A1)を計算した。
13Cに結合するサテライトピークは等価に二分裂したピークとして観測され、13Cの天然存在比率が1.1%であるため100b/0.55として全テレフタル酸、のシグナル定量値(A2)を計算した。
1H−NMR測定条件詳細を下記する。
装置:DRX−500(JEOL社製)
観測周波数:499.8MHz
観測核:1
観測幅:6kHz
溶媒:HFIP−d2
濃度:40mg/1g
化学シフト基準:溶媒の残余プロトン4.4ppm
積算回数:64
温度:25℃
繰り返し時間:10.0sec
スピン:no spin。
K.繊維横断面観察
TEMで繊維横断面を観察した。繊維糸条全体を観察するときは1000倍、単糸を観察するときは3000倍と必要に応じて観察倍率を変更して繊維横断面を観察した。
L.海島型複合断面繊維1mm3当たりに含まれる島の表面積(S)
上記K.記載のTEMで繊維断面を撮影した後、写真により繊維直径、島繊維直径を計測し、下式により算出した。
S(mm2/mm3)=X(mm)×Y(mm/mm3)×補正係数
(a)島部の周長(mm):X
X(mm)=島繊維直径×π×島数
(b)単位体積(1mm3)分の繊維長(mm):Y
Y(mm/mm3)=1÷繊維断面積(算出値)
繊維断面積(mm2)=[繊維直径(算出値)/2]2×π
繊維直径(算出値)(mm)=12.54×√(単糸繊度/海島型複合断面繊維の比重)×10-3
海島型複合断面繊維の比重(g/cm3)=島ポリマーの比重×島比率+海ポリマーの比重×海比率
本実施例に関しては、ナイロン6の比重を1.14g/cm3、アルカリ易溶出性ポリエステルの比重を1.38g/cm3とした。
(c)補正係数=繊維直径(算出値)/繊維直径(実測値)
M.Scv
上記K.記載のTEM(3000倍)による繊維横断面写真を画像処理ソフト(三谷商事(株)社製WINROOF)を用いて求めた。詳細は下記の通りとした。
(1)繊維横断面写真から無作為に単糸5本を選択した。
(2)それぞれの単糸について、中心を通り互いに90度と直行する2本の直線を引いて該単糸を4等分した。
(3)それぞれの単糸について、4部分の海成分の面積をWINROOFで計測し、その面積平均値(Sx)、標準偏差(Sstd)を算出した。なお、標準偏差は不偏分散から算出した。
(4)それぞれの単糸について、Scv=Sstd/Sx×100の関係式からScvを算出し、それぞれの単糸のScvからその平均値を算出した。
N.製糸性
海島型複合断面繊維糸条を製糸するときの1t当たりの製糸糸切れについて、次の5段階の基準をもって示した。
A:糸切れ2回未満(製糸性に極めて優れる)、
B:糸切れ2以上4回未満、
C:糸切れ4以上6回未満、
D:糸切れ6以上8回未満、
E:糸切れ8回以上(製糸性に劣る)。
O.繊度
繊度は、JIS L1013(2010)の8.3.1項 A法に準じた。
公定水分率(%)=島ポリマーの公定水分率×島比率+海ポリマーの公定水分率×海比率
本実施例に関しては、ナイロン6の公定水分率を4.5%、アルカリ易溶出性ポリエステルの公定水分率を0.4%とした。
P.伸度
伸度は、JIS L1013(2010)の8.5.1項に準じた。なお、測定条件としては、定速緊張形試験機(オリエンテック(株)社製テンシロン)を用い、つかみ間隔50cm、引張速度50cm/minとした。
Q.毛羽数
多点毛羽計数装置(東レエンジニアリング社製MFC−120)を用いて、繊維パッケージから繊維を600m/分で解舒し、1万m測定し、装置に表示される毛羽数をカウントした。なお、測定点の手前に整経オサ(ステンレス製、オサ間隔1mm)を設けて、そこに繊維を通した。この上記測定を10回繰り返し、1万mにおける平均値を毛羽数とした。
R.アルカリ溶出性
製織後の布帛小片(20cm×20cm)を4枚準備し、20g/lの水酸化ナトリウム水溶液で、95℃(昇温2℃)処理し、30分、60分、90分、120分ごとに取り出したときのポリエステル成分の減量率を測定する。減量率が90%以上に到達するまでに要する時間について、次の5段階で判定した。
◎:30分で取り出した場合に減量率が90%以上である
○:60分で取り出した場合に減量率が90%以上である
△:90分で取り出した場合に減量率が90%以上である
×:120分で取り出した場合に減量率が90%以上である
××:120分で取り出した場合に減量率が90%未満である
S.布帛のソフト性
得られた海島型複合断面繊維を用いた平織地を、20g/lの水酸化ナトリウム水溶液で、95℃(昇温2℃)×60分の条件でアルカリ溶解処理して得られた布帛のソフト性について、10人の人間による官能評価を行い、以下の4段階の指標を用いて評価した。
◎:10人中9人以上が、得られた布帛は滑らかでソフト性に優れると回答した。
○:10人中7人以上8人以下が、得られた布帛は滑らかでソフト性に優れると回答した。
△:10人中5人以上7人以下が、得られた布帛は滑らかでソフト性に優れると回答した。
×:得られた布帛は滑らかでソフト性に優れると回答した人間が、10人中4人以下であった。
下記実施例中で用いたチタン化合物の合成方法を示す。
(Ti−乳酸触媒)
窒素置換された反応槽に、反応溶媒としてエチレングリコール40Lに乳酸(和光純薬社製)536.4gを添加し、80℃に加熱する。その後、40℃まで冷却した後、チタンテトライソプロポキシド(日本曹達社製)を712g添加し、24時間攪拌した。こうしてTi−乳酸触媒(チタン含有量:2.63g/L)を得た。
〔実施例1〕
(重合方法)
精留塔を備えたエステル交換反応槽にテレフタル酸ジメチルを927重量部とエチレングリコールを595重量部、アジピン酸ジメチルを得られるポリエステル中の全酸成分に対する濃度が5.1モル%となるように仕込み、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルを得られるポリエステル中の全酸成分に対し2.4モル%となるように仕込んだ。その後、チタン化合物としてTi−乳酸触媒をチタン元素換算で5ppm、リン化合物としてテトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト(大崎工業化学株式会社製GSY−P101)をリン元素換算で10ppmとなるよう添加し、酢酸マグネシウム・四水和物を600ppm添加し、その後にEAH20(テトラエチルアンモニウムヒドロキサイド 20%、水 67%、メタノール 13%の混合物、三洋化成社製)を1200ppm(窒素換算で29.3ppm)添加した。その後、エステル交換反応槽の温度を徐々に昇温し、エステル交換反応時に発生するメタノールを反応系外に留去させながら反応を進行させ、低重合体を得た。その後、エステル交換反応槽から重合反応槽にその低重合体を移液した。移液終了後、ポリエステル中の濃度が0.07wt%になるよう酸化チタンのエチレングリコールスラリーを添加した。さらに5分後に、反応槽内を240℃から280℃まで徐々に昇温するとともに、エチレングリコールを留去しながら、圧力を50Paまで下げた。所定の攪拌機トルク(電力値)となった時点で反応系を窒素パージして常圧に戻し重合反応を停止させ、ストランド状に吐出して冷却後、直ちにカッティングしてポリエステルのペレットを得た。なお、減圧開始から所定の攪拌機トルク到達までの時間はおよそ2時間15分だった。
得られたポリエステルチップは固有粘度0.62、DEG2.0質量%、Δ固有粘度280が0.020、カルボキシル末端基量47.4eq/t、融点235℃であった。得られたポリエステルの性状を表1に記載する。
(紡糸方法)
このポリエステルチップを水分率0.01質量%以下となるように常法にて乾燥した。また、ポリアミドとして、硫酸相対粘度(ηr)が2.6、アミノ末端基量5.20×10-5mol/g、融点215℃のナイロン6チップを水分率0.03質量%以下となるよう常法にて乾燥した。
得られたポリエステルチップを270℃、ナイロン6チップを270℃の溶融温度で、前記ポリエステルチップを20質量%、ナイロン6チップを80質量%の割合で各個別々のプレッシャーメルターで溶融し、紡糸パック、口金に合流、海島複合形成させて紡糸口金より吐出させた。紡糸口金は、図1に示すパイプ(5)が2号板(2)の途中まで進入している紡糸口金とし、単糸(ホール)あたりの島数が37島で、紡糸口金あたりのホール数が20(総島数は740)のものを使用した。また、紡糸温度は270℃とした。紡糸口金より吐出後、18℃の冷風で冷却、給油した後に、2.20倍に延伸して巻取速度4500m/分で巻き取りを行い、78dtex−20フィラメントの海島型複合断面繊維を得た。
得られた海島型複合断面繊維より、島部外接円径(μm)、海島部面積比率を評価した。外接円形0.3μmの島部が海島部の島部面積比率20%で存在していた。
(評価方法)
得られた海島型複合断面繊維について、製糸性、Scv、繊度、伸度、毛羽数、エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の単位反応率(A)、アルカリ溶出性、および得られた海島型複合断面繊維の平織地をアルカリ溶解処理して得られた布帛のソフト性について評価した。その結果を表2に示す。
〔実施例2〕
チタン化合物の含有量を15ppmとする以外は、実施例1と同様に重合しポリエステルチップを得た。得られたポリエステルチップは固有粘度0.62、DEG2.0質量%、Δ固有粘度280が0.015、カルボキシル末端基量40.2eq/t、融点235℃であった。また、実施例1と同様に紡糸し、78dtex−20フィラメントの海島型複合断面繊維を得た。
〔実施例3〕
リン化合物の含有量を2ppmとする以外は、実施例1と同様に重合しポリエステルチップを得た。得られたポリエステルチップは固有粘度0.62、DEG0.2質量%、Δ固有粘度280が0.030、カルボ末端基量41.6eq/t、融点235℃であった。また、実施例1と同様に紡糸し、78dtex−20フィラメントの海島型複合断面繊維を得た。
実施例2、3で得られた海島型複合断面繊維について、製糸性、Scv、繊度、伸度、毛羽数、エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の単位反応率(A)、アルカリ溶出性、および得られた海島型複合断面繊維のポリエステルを溶解除去して得られた極細ポリアミド繊維からなる平織地のソフト性について評価した。その結果を表2に示す。
実施例1〜3について、製糸性良好で、毛羽発生が良好であり、アルカリ溶出性に極めて優れるものであった。特に実施例1について、製糸性に極めて優れるものであった。
また、得られた海島型複合断面繊維を用いた平織地を、20g/lの水酸化ナトリウム水溶液で、95℃(昇温2℃)×60分後のポリエステルの溶解率は97%以上であり、平織地の風合い(ソフト性)は、極めて優れるものであった。
〔実施例4〜7〕
ナイロン6チップのアミノ末端基量を表1に記載の条件とする以外は、実施例1と同様に紡糸し、78dtex−20フィラメントの海島型複合断面繊維を得た。
得られた海島型複合断面繊維について、製糸性、Scv、繊度、伸度、毛羽数、エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の単位反応率(A)、アルカリ溶出性、および得られた海島型複合断面繊維のポリエステルを溶解除去して得られた極細ポリアミド繊維からなる平織地のソフト性について評価した。その結果を表2に示す。
実施例4〜7について、製糸性良好で、毛羽発生が少なく、アルカリ溶出性に極めて優れるものであった。特に、実施例4、6については、製糸性に極めて優れるものであった。実施例5、6は毛羽の発生がなく良好であった。
また、得られた海島型複合断面繊維を用いた平織地を、20g/lの水酸化ナトリウム水溶液で、95℃(昇温2℃)×60分後のポリエステルの溶解率は97%以上であり、平織地の風合い(ソフト性)は、極めて優れるものであった。
〔実施例8〜11〕
ポリエステルチップのカルボキシル末端基量を表1に記載の条件となるように重合した以外は、実施例1と同様に紡糸し、78dtex−20フィラメントの海島型複合断面繊維を得た。
得られた海島型複合断面繊維について、製糸性、Scv、繊度、伸度、毛羽数、エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の単位反応率(A)、アルカリ溶出性、および得られた海島型複合断面繊維のポリエステルを溶解除去して得られた極細ポリアミド繊維からなる平織地のソフト性について評価した。その結果を表2に示す。
実施例8〜11について、製糸性良好で、毛羽発生が少なく、アルカリ溶出性に極めて優れるものであった。特に、実施例9、10については、製糸性に極めて優れるものであった。実施例8、10は毛羽の発生がなく良好であった。
また、得られた海島型複合断面繊維を用いた平織地を、20g/lの水酸化ナトリウム水溶液で、95℃(昇温2℃)×60分後のポリエステルの溶解率は97%以上であり、平織地の風合い(ソフト性)は、極めて優れるものであった。
〔実施例12、13〕
ポリエステルチップとナイロン6チップの質量比を表4に記載の条件とする以外は、実施例1と同様に紡糸し、78dtex−20フィラメントの海島型複合断面繊維を得た。
得られた海島型複合断面繊維について、製糸性、Scv、繊度、伸度、毛羽数、エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の単位反応率(A)、アルカリ溶出性、および得られた海島型複合断面繊維のポリエステルを溶解除去して得られた極細ポリアミド繊維からなる平織地のソフト性について評価した。その結果を表4に示す。
実施例12,13について、製糸性良好で、毛羽発生が良好であり、アルカリ溶出性に極めて優れるものであった。
〔比較例1〜6〕
アジピン酸成分の含有量、イソフタル酸成分の含有量を表3に記載の条件とする以外は、実施例1と同様に重合、紡糸し、78dtex−20フィラメントの海島型複合断面繊維を得た。
得られた海島型複合断面繊維について、製糸性、Scv、繊度、伸度、毛羽数、エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の単位反応率(A)、アルカリ溶出性、および得られた海島型複合断面繊維のポリエステルを溶解除去して得られた極細ポリアミド繊維からなる平織地のソフト性について評価した。その結果を表4に示す。
〔比較例7,8〕
ポリエステルチップのカルボキシル末端基量を表3に記載の条件となるように重合し、ナイロン6チップのアミノ末端基量を表3に記載の条件とする以外は、実施例1と同様に紡糸し、78dtex−20フィラメントの海島型複合断面繊維を得た。
得られた海島型複合断面繊維について、製糸性、Scv、繊度、伸度、毛羽数、エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の単位反応率(A)、アルカリ溶出性、および得られた海島型複合断面繊維のポリエステルを溶解除去して得られた極細ポリアミド繊維からなる平織地のソフト性について評価した。その結果を表4に示す。
〔比較例9〕
共重合されていないポリエチレンテレフタレートチップ(固有粘度0.62、DEG1.0質量%、Δ固有粘度280が0.026、カルボ末端基量32.8eq/t、融点255℃)を水分率0.01質量%以下となるように常法にて乾燥した。また、ポリアミドとして、チップを硫酸相対粘度(ηr)が2.6、アミノ末端基量4.90×10-5mol/g、融点215℃のナイロン6チップを水分率0.05質量%以下となるように常法にて乾燥した。
得られたポリエステルチップを280℃、ナイロン6チップを280℃の溶融温度、紡糸温度を280℃とした以外は、実施例1と同様に紡糸し、78dtex−20フィラメントの海島型複合断面繊維を得た。
得られた海島型複合断面繊維について、製糸性、Scv、繊度、伸度、毛羽数、エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の単位反応率(A)、アルカリ溶出性、および得られた海島型複合断面繊維のポリエステルを溶解除去して得られた極細ポリアミド繊維からなる平織地のソフト性について評価した。その結果を表4に示す。
比較例1については、製糸性に優れていたが、アジピン酸成分の含有量が少なく、毛羽が増加し、アルカリ溶出性に劣るものであった。また平織地の風合い(ソフト性)にも劣るものであった。
比較例2については、アルカリ溶出性に優れ、毛羽の発生がなく良好であったが、アジピン酸成分の含有量が多く、製糸性に劣るものであった。
比較例3については、製糸性に優れ、毛羽の発生がなく良好であったが、イソフタル成分の含有量が少なく、アルカリ易溶出性に劣るものであった。また平織地の風合い(ソフト性)にも、やや劣るものであった。
比較例4については、アルカリ溶出性に優れ、毛羽の発生がなく良好であったが、イソフタル酸成分の含有量が多く、製糸性に劣るものであった。
比較例5については、製糸性に優れていたが、アジピン酸成分の含有量が少なく、毛羽が増加し、アルカリ溶出性に劣るものであった。また平織地の風合い(ソフト性)にも劣るものであった。
比較例6については、アルカリ溶出性に優れ、毛羽の発生もなく良好であったが、アジピン酸成分の含有量が多く、製糸性に劣るものであった。
比較例7については、製糸性、アルカリ溶出性に優れていたが、毛羽が多発した。
比較例8については、アルカリ溶出性に優れ、毛羽の発生がなく良好であったが、製糸性に劣るものであった。
比較例9については、製糸性に優れていたが、毛羽が多発し、アルカリ溶出性に劣るものであった。また、得られた海島型複合繊維を用いた平織地を、20g/lの水酸化ナトリウム水溶液で、95℃(昇温2℃)×60分後のポリエステルの溶解率は90%未満で、ポリエステルが溶け残っている状態であり、平織地の風合い(ソフト性)は、劣るものあった。
Figure 2014043659
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表1〜4の結果から明らかなように、本発明の海島型複合断面繊維は、従来の海島型複合断面繊維と比較して、極細ポリアミド繊維の剥離による毛羽の発生が大幅に改善されており、紡糸操業性が良好で、アルカリに対しても優れた溶解性を示す、極めて顕著な効果を奏するものであると言える。また、好ましい態様においては、さらに紡糸操業性をさらに改善した海島型複合繊維が得られ、実用性をさらに向上させることができる。
1:1号板
2:2号板
3:3号板
4:海成分流入孔
5:島成分流入孔(パイプ)
6:1号板(1)および2号板(2)の隙間
7:スリット
8,9:合流部
10:吐出孔

Claims (13)

  1. 主たる繰返し単位がエチレンテレフタレートより構成され、全酸成分に対し金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分を2.0〜5.5モル%、全酸性分に対するアジピン酸成分を3.0〜6.0モル%含有するアルカリ易溶出性ポリエステルを海成分、ポリアミドを島成分とした海島型複合断面繊維であり、該海島型複合断面繊維において、エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の単位反応率が0.0005〜0.0025%・mmであることを特徴とする海島型複合断面繊維。
  2. 前記ポリアミドのアミノ末端基量が5×10-5〜5.5×10-5mol/gであることを特徴とする請求項1に記載の海島型複合断面繊維
  3. 前記ポリエステルのカルボキシル末端基量が35〜55eq/tであることを特徴とする、請求項1または2に記載の海島型複合断面繊維。
  4. 前記ポリエステルに可溶なチタン化合物をチタン元素換算で3〜10ppm含有し、リン化合物をリン元素換算で5〜40ppm含有するアルカリ易溶出性ポリエステルを用いた請求項1〜3のいずれかに記載の海島型複合断面繊維。
  5. 前記ポリエステルとポリアミドの重量比が、10:90〜30:70の範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の海島型複合断面繊維。
  6. 伸度が30〜50%であって、繊維糸条の長さ1万m当たりの毛羽数が0〜2個であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の海島型複合断面繊維。
  7. 主たる繰返し単位がエチレンテレフタレートより構成され、全酸成分に対し金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分が2.0〜5.5モル%、全酸性分に対するアジピン酸成分が3.0〜6.0モル%含有することを特徴とするアルカリ易溶出性ポリエステルを海成分、ポリアミドを島成分として溶融紡糸する海島型複合断面繊維の製造方法であり、該海島型複合断面繊維において、エステル・アミド交換反応を起こしたテレフタル酸の単位反応率を0.0005〜0.0025%・mmになるようにすることを特徴とする海島型複合断面繊維の製造方法。
  8. 前記ポリアミドのアミノ末端基量が5×10-5〜5.5×10-5mol/gであることを特徴とする請求項7に記載の海島型複合断面繊維の製造方法
  9. 前記ポリエステルのカルボキシル末端基量が35〜55eq/tであることを特徴とする請求項7または8に記載の海島型複合断面繊維の製造方法。
  10. 請求項1〜6のいずれかに記載の海島型複合断面繊維を少なくとも一部に有する布帛。
  11. 請求項1〜6のいずれかに記載の海島型複合断面繊維をアルカリ処理することにより、ポリエステルが溶解除去して形成されることを特徴とする極細ポリアミド繊維。
  12. 請求項11に記載の極細ポリアミド繊維を少なくとも一部に有する布帛。
  13. 請求項11に記載の極細ポリアミド繊維を少なくとも一部に有する繊維製品。
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